説明

ヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器

【課題】電子機器などの外装として表出させることが可能なフリーストップ構造のヒンジ装置並びにこのヒンジ装置を用いた電子機器を提供すること。
【解決手段】第二部材2に連結する第二連結部4に枢着軸5を設け、第一部材1に連結する第一連結部3に、枢着軸5を挿通させる軸通し穴7を備えた筒形の外装ケース部6を設け、この軸通し穴7に挿通した枢着軸5に抱き込み被嵌して回動抵抗を生じさせる軸抱込部8を軸通し穴7にスライド挿入して回り止め状態に設け、この軸通し穴7の、この軸通し穴7にスライド挿入した軸抱込部8のスライド方向の両側位置に、枢着軸5を回動自在に軸支する軸受部11を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノート型パソコンや折り畳み式携帯電話などの電子機器の軸部に用いるヒンジ装置並びにこのヒンジ装置を用いた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ノート型パソコンは、操作部を有する本体部(第一部材)とディスプレイ部を有する開閉部(第二部材)とを、枢着軸と軸受部とを回動自在に枢着するが、使用に際してディスプレイ部が見易いように、起立した開閉部の角度を手で押し引きして微調整した際、この角度で停止保持(フリーストップ)されることが好ましい。
【0003】
このフリーストップを実現するヒンジ装置としては、従来、例えば開閉部などの第二部材に連結する第二連結部に枢着軸を設け、本体部などの第一部材に連結する第一連結部に、前記枢着軸を回動自在に支持する軸受部を設けると共に、この枢着軸に抱き込み被嵌して回動抵抗を生じさせる断面C状の軸抱込部を回り止め状態に設けて、前記枢着軸を軸受部に支持することで、第一連結部に対して第二連結部を回動自在に設けると共に、この枢着軸に軸抱込部を抱き込み被嵌することで、軸抱込部の回動抵抗によって所謂フリーストップが実現でき、前述のように起立角度(開放角度)の微調整が簡単に行えることになる軸着構造としているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
一方、従来、ヒンジ装置自体が電子機器などの外装としてそのまま外観上に表出するタイプも実施されている。
【0005】
この外装タイプのヒンジ装置を簡単に説明すると、開閉部などの第二部材に連結する第二連結部に枢着軸を設け、本体部などの第一部材に連結する第一連結部に、前記枢着軸が挿通する軸通し穴を備えた筒形の外装ケース部を設けると共に、この外装ケース部の軸通し穴の一側端部に前記枢着軸を回動自在に支持する軸受部を設け、この軸通し穴に挿通した前記枢着軸に抱き込み被嵌して回動抵抗を生じさせる軸抱込部を軸通し穴の他側端部から軸通し穴にスライド挿入配設すると共に、この軸通し穴に設けた取付用溝部に前記軸抱込部の基部に突設した取付部を嵌入することで軸通し穴に軸抱込部を回り止め状態に設けた構造で、外装ケース部があることによりこの外装ケース部が電子機器などの外装として表出しても外観上の違和感がなく、また、フリーストップも実現できる構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−200662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような外装としても使用できるフリーストップ構造のヒンジ装置は、枢着軸を外装ケース部の軸通し穴の一側端部に設けた軸受部で回動自在に支持する構造であるが、この軸受部が外装ケース部の一側端部にしかなく、一箇所の軸受部による支持構造となっているため、枢着軸が外装ケース部に対して不安定な支持状態となり易く、ガタつきを生じ易いという問題があった。
【0008】
また、枢着軸を抱き込み被嵌する軸抱込部は、外装ケース部の軸通し穴に対してスライド挿入し易いように、その外形状が軸通し穴の穴径寸法よりもやや小さい径寸法を有する形状に形成されていて、軸通し穴内でガタつくようになっている。
【0009】
そのため、枢着軸が外装ケース部に対してガタついてしまうと、開閉部などの第二部材の開閉動作が安定しないばかりか、この枢着軸に抱き込み被嵌している軸抱込部も外装ケース部内で簡単にガタついてしまい、この軸抱込部のガタつきが原因で枢着軸への抱き込み状態(回動抵抗付与状態)が安定しなくなり、フリーストップ効果が安定して得られなくなってしまうこともあった。
【0010】
本発明は、このような外装としても使用可能なフリーストップ構造の従来のヒンジ装置の問題点に注目し、これを解決しようとするもので、枢着軸も軸抱込部もガタつくことなく、安定したフリーストップ動作が発揮される画期的なヒンジ装置並びにこのヒンジ装置を用いた電子機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0012】
第一部材1と第二部材2とを枢着するヒンジ装置Hであって、第一部材1に連結する第一連結部3若しくは第二部材2に連結する第二連結部4に枢着軸5を設け、第二部材2に連結する第二連結部4若しくは第一部材1に連結する第一連結部3に、前記枢着軸5を挿通させる軸通し穴7を備えた筒形の外装ケース部6を設け、この軸通し穴7に挿通した前記枢着軸5に抱き込み被嵌して回動抵抗を生じさせる軸抱込部8を軸通し穴7にスライド挿入すると共に、この軸通し穴7に設けた取付用溝部10に前記軸抱込部8の基部に突設した取付部9を嵌入することで軸通し穴7に軸抱込部8を回り止め状態に設け、この軸通し穴7の、この軸通し穴7にスライド挿入した軸抱込部8のスライド方向の両側位置に、この軸抱込部8が抱き込み被嵌した前記枢着軸5を回動自在に軸支する軸受部11を設けて、この両側の軸受部11で外装ケース部6に挿通した枢着軸5を回動自在に軸支する構成としたことを特徴とするヒンジ装置に係るものである。
【0013】
また、前記軸通し穴7に、前記軸抱込部8をスライド挿入するための挿入用穴部7Aを設けると共に、この挿入用穴部7Aに前記取付用溝部10を設け、この挿入用穴部7Aの、この挿入用穴部7Aにスライド挿入した前記軸抱込部8のスライド方向の両側位置に、前記軸受部11を設けたことを特徴とする請求項1記載のヒンジ装置に係るものである。
【0014】
また、前記挿入用穴部7Aの一側端部に前記軸受部11としての軸受孔11Aを設け、この挿入用穴部7Aにこの挿入用穴部7Aの他側端部から前記軸抱込部8をスライド挿入し、この軸抱込部8が挿入された挿入用穴部7Aの他側端部に、前記軸受部11としての軸受孔11Bを備えた軸受部材12を止着して、この挿入用穴部7Aの一側端部の軸受孔11Aと他側端部の軸受孔11Bとで前記外装ケース部6に挿通した枢着軸5を回動自在に軸支する構成としたことを特徴とする請求項2記載のヒンジ装置に係るものである。
【0015】
また、前記軸受部材12は、前記挿入用穴部7Aの形状に略合致する形状に形成し、この軸受部材12を挿入用穴部7Aの他側端部に嵌入して前記外装ケース部6にカシメ止めしたことを特徴とする請求項3記載のヒンジ装置に係るものである。
【0016】
また、前記軸受部材12に前記取付用溝部10に嵌入する嵌入部13を突設して、この嵌入部13を取付用溝部10に嵌入することにより軸受部材12を前記挿入用穴部7Aの他側端部に対して回り止め状態で嵌入し得るように構成すると共に、この取付用溝部10に嵌入した嵌入部13を前記外装ケース部6にカシメ止めしたことを特徴とする請求項3,4のいずれか1項に記載のヒンジ装置に係るものである。
【0017】
また、前記挿入用穴部7Aの内側面に、前記軸通し穴7の穴長さ方向に沿った長さを有する凹溝を一条形成して、この凹溝を前記取付用溝部10としたことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のヒンジ装置に係るものである。
【0018】
また、前記軸抱込部8の取付部9に、この取付部9を前記取付用溝部10に嵌入した際に取付用溝部10の溝側壁面に対して当接若しくは近接するガタ止め突起14を突設したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒンジ装置に係るものである。
【0019】
また、前記第一部材1を操作部15を有する本体部1とし、前記第二部材2をこの本体部1に重合するディスプレイ部16を有する開閉部2とし、この本体部1と開閉部2とを重合した閉塞状態から伏面が露出する開放方向に起伏回動自在に枢着するヒンジ装置Hに前記請求項1〜7のいずれか1項に記載のヒンジ装置Hを用いた構成としたことを特徴とするヒンジ装置を用いた電子機器に係るものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上述のように構成したから、筒形の外装ケース部を、電子機器などの外装として表出させることが可能なフリーストップ構造のヒンジ装置にして、枢着軸も軸抱込部もガタつかずに安定したフリーストップ動作を確実に発揮することになる極めて実用性に優れたヒンジ装置となる。
【0021】
また、請求項2記載の発明においては、前記作用・効果を確実に発揮する枢着軸の軸支構造を簡易に設計実現可能となる一層実用性に優れた構成のヒンジ装置となる。
【0022】
また、請求項3記載の発明においては、軸抱込部のスライド方向の両側位置に軸受部を設ける構成を確実に実現可能となり、更に請求項4,5記載の発明においては、この構成を極めて容易に設計実現可能となるなど、一層実用性に優れた構成のヒンジ装置となる。
【0023】
また、請求項6記載の発明においては、軸抱込部の取付部並びに軸受部材の嵌入部を嵌入する取付用溝部を簡易に設計実現可能となる一層実用性に優れた構成のヒンジ装置となる。
【0024】
また、請求項7記載の発明においては、軸通し穴での軸抱込部のガタつきが極めて良好に防止される一層実用性に優れた構成のヒンジ装置となる。
【0025】
また、請求項8記載の発明においては、前記作用・効果を発揮する極めて実用性に優れたヒンジ装置を用いた電子機器となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施例の使用状態を示す説明斜視図である。
【図2】本実施例を示す斜視図である。
【図3】本実施例の分解斜視図である。
【図4】本実施例を示す外装ケース部を切り欠いた説明正面図である。
【図5】本実施例を示す側面図である。
【図6】本実施例の軸抱込部並びに軸受部材を示す拡大斜視図である。
【図7】本実施例の軸抱込部の取付部を示す説明断面図である。
【図8】本実施例の外装ケース部の挿入用穴部に軸抱込部を挿入し枢着軸を抱き込み被嵌した状態を示す部分拡大説明側面図である。
【図9】本実施例の外装ケース部の部分拡大説明側面図である。
【図10】図9のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0028】
本発明のヒンジ装置Hは、第二連結部4若しくは第一連結部3に設けた筒形の外装ケース部6を、例えば電子機器などの外装として表出させることが可能である。
【0029】
また、本発明のヒンジ装置Hは、第一連結部3若しくは第二連結部4に設けた枢着軸5を、前記外装ケース部6の軸通し穴7の、この軸通し穴7にスライド挿入して回り止め状態に設けた軸抱込部8のスライド方向の両側位置に設けた軸受部11で回動自在に軸支している。
【0030】
そのため、少なくとも二箇所の軸受部11で軸支された枢着軸5は、外装ケース部6(軸通し穴7)に対してガタつくことなく安定的に回動動作可能であり、よって第一部材1に対する第二部材2の安定した回動動作が行われることになる。
【0031】
また、この際、枢着軸5に抱き込み被嵌する軸抱込部8が、枢着軸5に常に回動抵抗を付与して第一部材1に対する第二部材2のフリーストップを実現しているが、前記したように枢着軸5がガタつかずに安定した回動動作を行うことで、この枢着軸5に抱き込み被嵌する軸抱込部8も軸通し穴7でガタつかず、よってこの軸抱込部8による枢着軸5への回動抵抗が安定的に付与されて、極めて良好なフリーストップが実現することになる。
【実施例】
【0032】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0033】
本実施例は、図1に示すようなノート型パソコン用であって、このノート型パソコンの外装として外観上に表出するタイプのヒンジ装置Hに適用した場合を示している。
【0034】
具体的には、操作部15を備えた本体部1を第一部材1とし、ディスプレイ部16を備えた開閉部2を第二部材2とし、この本体部1と開閉部2とが重合した閉塞状態から伏面が露出する開放方向に開閉部を開放回動自在に枢着するヒンジ装置Hを備えている。
【0035】
本実施例のヒンジ装置Hは、図2〜図4に示すように、前記第一部材1に連結する第一連結部3に、軸通し穴7を備えた筒形の外装ケース部6を設け、前記第二部材2に連結する第二連結部4に、前記軸通し穴7に挿通させる枢着軸5を設けている。
【0036】
具体的には、第一連結部3は、金属ダイキャスト製とし、前記第一部材1に連結固定する第一固定部17に前記外装ケース部6を一体的に連設した構成とし、この外装ケース部6がノート型パソコンの外装として外観上に表出可能な構成としている。
【0037】
また、第二連結部4は、前記第二部材2に連結固定する金属製の第二固定部18に、同じく金属製の前記枢着軸5を回り止め状態に連結して突設した構成としている。
【0038】
また、本実施例では、第一連結部3の外装ケース部6の軸通し穴7に挿通した前記枢着軸5に抱き込み被嵌して回動抵抗を生じさせる軸抱込部8を軸通し穴7にスライド挿入すると共に、この軸通し穴7に設けた取付用溝部10に前記軸抱込部8の基部に突設した取付部9を嵌入することで軸通し穴7に軸抱込部8を回り止め状態に設けている。
【0039】
具体的には、前記外装ケース部6は、その長さ方向の一側端部(図3,図4における右側端部)から中程にかけての軸通し穴7を、他の部位の軸通し穴7より径小な丸穴部に形成し、この径小丸穴部を軸抱込部8がスライド挿入するための挿入用穴部7Aとしている。
【0040】
また、前記挿入用穴部7Aの内側面に、前記軸通し穴7の穴長さ方向に沿った長さを有する凹溝を一条形成して、この凹溝を前記取付用溝部10としている。即ち、本実施例では、前記軸通し穴7の挿入用穴部7Aに取付用溝部10を設けた場合を示している。
【0041】
また、前記軸抱込部8は、図6に示すように、帯状の金属板材を断面C状にカール折曲することで、前記枢着軸5の周面に抱き込み被嵌し面接して回動(摩擦)抵抗を付与し得るように構成し、更に、この断面C状の軸抱込部8を構成する板材の一端部を外方へ折曲突出させて、この突出板部を前記取付部9としている。
【0042】
また、この軸抱込部8は、そのC状部分の径寸法を前記軸通し穴7の挿入用穴部7Aの穴径寸法より径小となる形状に形成すると共に、取付部9(軸抱込部8を構成する板材)の板厚寸法を前記取付用溝部10の溝幅寸法より幅狭となる寸法に設定して、挿入用穴部7Aに対しこの軸抱込部8が隙間を介在して挿入配設し得るように構成している。
【0043】
本実施例では、この挿入用穴部7Aの、この挿入用穴部7Aにスライド挿入した前記軸抱込部8のスライド方向の両側位置に、この軸抱込部8が抱き込み被嵌した前記枢着軸5を回動自在に軸支する軸受部11を設けて、この両側の軸受部11で外装ケース部6に挿通した枢着軸5を回動自在に軸支する構成としている。
【0044】
具体的には、前記外装ケース部6の軸通し穴7の挿入用穴部7Aの一側端部に、この挿入用穴部7Aにスライド挿入する軸抱込部8のC状部分より径小であって、且つ前記枢着軸5の径寸法と略同径寸法の軸受孔11Aを貫通形成してこの軸受孔11Aを前記軸受部11としている。即ち、本実施例の挿入用穴部7Aには、その他側端部から前記軸抱込部8をスライド挿入することができ、挿入した軸抱込部8は、挿入用穴部7Aの一側端部からは挿脱不能状態となる構成としている。
【0045】
また、この軸抱込部8が挿入された挿入用穴部7Aの他側端部に、この他側端部を閉塞するようにして軸受部材12を止着することにより、この挿入用穴部7Aにスライド挿入した軸抱込部8を挿脱不能状態に保持する構成とすると共に、この軸受部材12には、挿入用穴部7A(軸抱込部8のC状部分)より径小であって、且つ前記枢着軸5の径寸法と略同径寸法(前記軸受孔11Aと同径寸法)の軸受孔11Bを貫通形成してこの軸受孔11Bを前記軸受部11としている。
【0046】
従って、本実施例では、挿入用穴部7Aの一側端部に設けた軸受孔11Aと、この軸受孔11Aから間隔を置いて他側端部に設けた軸受孔11Bとの二箇所の軸受部11により、外装ケース部6に挿通した枢着軸5を安定的に軸支する構成としている。
【0047】
また、前記軸受部材12は、軸抱込部8の断面形状と略同形状に形成している。更に詳しくは、軸受部材12は、金属板で構成すると共に、図6に示すように前記挿入用穴部7Aの丸穴部分の形状に略合致する円板状部から、前記取付用溝部10に嵌入する棒状板状の嵌入部13が一体に突設する形状に形成している。即ち、この軸受部材12は、同時に嵌入部13を取付用溝部10に嵌入することにより、挿入用穴部7Aの他側端部に回り止め状態で嵌入し得るように構成している。そして、この軸受部材12の円板状部に、この円板状部と同心円状に前記軸受孔11Bを貫通形成している。
【0048】
この軸受部材12の挿入用穴部7Aへの止着構造は、図9,図10に示すように、取付用溝部10に嵌入した嵌入部13に対して、挿入用穴部7Aの他側端部で嵌入部13の両側に隣接している取付用溝部10周囲部分を圧潰することにより、嵌入部13の外側に圧潰による延設カシメ片19が突出して軸受部材12が外装ケース部6(の挿入用穴部7Aの他側端部)にカシメ止めされる構造としている。従って、他の止着部品などを要することなく、コスト安に軸受部材12を止着可能であると共に、このカシメ止めは、挿入用穴部7Aの他側端部に回り止め状態(位置決め状態)で嵌入された軸受部材12に対して行えるので、作業性にも優れる。
【0049】
また、図面では、挿入用穴部7Aに軸抱込部8を二個並設状態に配設した場合を示しており、挿入用穴部7Aに二個の軸抱込部8を隙間なく並べて配設すると、挿入用穴部7Aの他側端部に、軸受部材12の板厚幅よりやや幅広なスペースが生じるように挿入用穴部7Aの穴長さ寸法並びに軸抱込部8の幅寸法を設定構成し、このスペースに嵌入した軸受部材12に対して前記カシメ止めを行っている(図4参照。)。
【0050】
また、並設する二個の軸抱込部8は、前記枢着軸5に対する抱き込み方向が夫々反対となるようにして配設している。この構成により、単に十分な回動抵抗が容易に得られるだけでなく、どちらの方向に回動する場合も、回動抵抗に差を生じにくく、略等しい回動抵抗が生じることになる。即ち、本実施例で示したような断面C状の軸抱込部8は、抱き込むカール方向、即ち巻き締める方向にこの軸抱込部8を枢着軸5に対して相対的に回動する場合と反対方向即ち巻き緩む方向に相対的に回動する場合とで回動抵抗は等しくないのであるが、本実施例では、二個の軸抱込部8を用いると共に、夫々の枢着軸5に対する抱き込み方向が夫々反対となるようにして配置固定したことで、どちらの方向に回動する場合も、回動抵抗に差を生じにくくしている。
【0051】
また、本実施例では、前記軸抱込部8の取付部9に、前記取付用溝部10の溝側壁面に対して近接するガタ止め突起14を形成し、この取付部9を取付用溝部10に嵌入した際に、この嵌入作業を阻害しない程度にガタ止め突起14が取付用溝部10との隙間を可及的に埋めることにより軸抱込部8を挿入用穴部7A内でガタつきにくくしている(図8参照。)。
【0052】
具体的には、図6,図7に示すように、取付部9の一側板面の一部を、プレスなどにより他側板面の方向に押圧して凹ませることで他側板面の一部を外方へ突出させて、この突出部を前記ガタ止め突起14としている。このような構成のガタ止め突起14は、簡易に設計実現可能である。
【0053】
本実施例では上述ように構成したから、二箇所の軸受部11(挿入用穴部7A一側端部の軸受孔11Aと他側端部の軸受孔11B)で軸支された枢着軸5は、外装ケース部6(軸通し穴7)に対してガタつくことなく安定的に回動動作可能であり、よって第一部材1に対して第二部材2が安定的に回動動作することになる。
【0054】
また、この際、枢着軸5に抱き込み被嵌する軸抱込部8が、枢着軸5に常に回動抵抗を付与するフリーストップ構造を実現しているが、枢着軸5がガタつかずに安定的に回動動作することで、この枢着軸5に抱き込み被嵌する軸抱込部8も軸通し穴7でガタつかず、更にガタ止め突起14によっても軸抱込部8のガタつきが防止されるので、この軸抱込部8による枢着軸5への回動抵抗が安定して確実に付与されて、極めて良好なフリーストップ作動が得られることになる。
【0055】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0056】
1 第一部材(操作部)
2 第二部材(開閉部)
3 第一連結部
4 第二連結部
5 枢着軸
6 外装ケース部
7 軸通し穴
7A 挿入用穴部
8 軸抱込部
9 取付部
10 取付用溝部
11 軸受部
11A 軸受孔
11B 軸受孔
12 軸受部材
13 嵌入部
14 ガタ止め突起
15 操作部
16 ディスプレイ部
H ヒンジ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と第二部材とを枢着するヒンジ装置であって、第一部材に連結する第一連結部若しくは第二部材に連結する第二連結部に枢着軸を設け、第二部材に連結する第二連結部若しくは第一部材に連結する第一連結部に、前記枢着軸を挿通させる軸通し穴を備えた筒形の外装ケース部を設け、この軸通し穴に挿通した前記枢着軸に抱き込み被嵌して回動抵抗を生じさせる軸抱込部を軸通し穴にスライド挿入すると共に、この軸通し穴に設けた取付用溝部に前記軸抱込部の基部に突設した取付部を嵌入することで軸通し穴に軸抱込部を回り止め状態に設け、この軸通し穴の、この軸通し穴にスライド挿入した軸抱込部のスライド方向の両側位置に、この軸抱込部が抱き込み被嵌した前記枢着軸を回動自在に軸支する軸受部を設けて、この両側の軸受部で外装ケース部に挿通した枢着軸を回動自在に軸支する構成としたことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
前記軸通し穴に、前記軸抱込部をスライド挿入するための挿入用穴部を設けると共に、この挿入用穴部に前記取付用溝部を設け、この挿入用穴部の、この挿入用穴部にスライド挿入した前記軸抱込部のスライド方向の両側位置に、前記軸受部を設けたことを特徴とする請求項1記載のヒンジ装置。
【請求項3】
前記挿入用穴部の一側端部に前記軸受部としての軸受孔を設け、この挿入用穴部にこの挿入用穴部の他側端部から前記軸抱込部をスライド挿入し、この軸抱込部が挿入された挿入用穴部の他側端部に、前記軸受部としての軸受孔を備えた軸受部材を止着して、この挿入用穴部の一側端部の軸受孔と他側端部の軸受孔とで前記外装ケース部に挿通した枢着軸を回動自在に軸支する構成としたことを特徴とする請求項2記載のヒンジ装置。
【請求項4】
前記軸受部材は、前記挿入用穴部の形状に略合致する形状に形成し、この軸受部材を挿入用穴部の他側端部に嵌入して前記外装ケース部にカシメ止めしたことを特徴とする請求項3記載のヒンジ装置。
【請求項5】
前記軸受部材に前記取付用溝部に嵌入する嵌入部を突設して、この嵌入部を取付用溝部に嵌入することにより軸受部材を前記挿入用穴部の他側端部に対して回り止め状態で嵌入し得るように構成すると共に、この取付用溝部に嵌入した嵌入部を前記外装ケース部にカシメ止めしたことを特徴とする請求項3,4のいずれか1項に記載のヒンジ装置。
【請求項6】
前記挿入用穴部の内側面に、前記軸通し穴の穴長さ方向に沿った長さを有する凹溝を一条形成して、この凹溝を前記取付用溝部としたことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のヒンジ装置。
【請求項7】
前記軸抱込部の取付部に、この取付部を前記取付用溝部に嵌入した際に取付用溝部の溝側壁面に対して当接若しくは近接するガタ止め突起を突設したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒンジ装置。
【請求項8】
前記第一部材を操作部を有する本体部とし、前記第二部材をこの本体部に重合するディスプレイ部を有する開閉部とし、この本体部と開閉部とを重合した閉塞状態から伏面が露出する開放方向に起伏回動自在に枢着するヒンジ装置に前記請求項1〜7のいずれか1項に記載のヒンジ装置を用いた構成としたことを特徴とするヒンジ装置を用いた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−58607(P2011−58607A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212179(P2009−212179)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(396019022)株式会社ストロベリーコーポレーション (88)
【Fターム(参考)】