説明

フローティングキャリパ型ディスクブレーキ

【課題】 安価且つ軽量な構造で、サポート3aの変形を十分に抑える。
【解決手段】 サポート3aを、ロータよりもインナ側に外れた位置に配置されるインナ側取付部材19と、このインナ側取付部材19のロータの周方向両端部に結合した一対のトルク受け部材20a、20bとから構成する。これら各トルク受け部材20a、20bのアウタ側端部の、ロータの径方向内端寄り部分に設けた第二部分27、27に、その先端部がロータの外径側に屈曲した断面L字形の引きアンカ部28、28を設ける。これら各引きアンカ部28、28に、アウタ側のパッド10bに設けた係合突部39、39を、ロータの周方向に対向させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明に係るフローティングキャリパ型ディスクブレーキは、自動車等の車両の制動を行なう為に利用する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の制動を行なう為のディスクブレーキとして従来から、サポートに対しキャリパを軸方向の変位を自在に支持すると共に、このキャリパのうち、ロータに関して片側のみにシリンダ及びピストンを設けたフローティングキャリパ型のものが、従来から広く知られ、実際に広く使用されている。
【0003】
このフローティングキャリパ型のものは、キャリパの保持方法及び摺動方法の違いにより種々の構造があるが、例えば、現在主流となっているピンスライド型と呼ばれる構造は、サポートに対しキャリパを、案内ピンにより変位自在に支持している。図29〜30は、この様なピンスライド型の構造のうちの特許文献1に記載されたものを示している。このピンスライド型のフローティングキャリパ型ディスクブレーキは、制動時には、車輪(図示せず)と共に回転するロータ1に対しキャリパ2を変位させる。車両への組み付け状態では、このロータ1の一側に隣接させる状態で設けるサポート3を、取付孔4を介して車体(図示せず)に固定する。又、このサポート3に上記キャリパ2を、上記ロータ1の軸方向に変位可能に支持している。
【0004】
この為に、上記ロータ1の回転方向に関する上記キャリパ2の幅方向両端部に一対の案内ピン5を、同じく上記サポート3の両端部に一対の案内孔6を、それぞれ上記ロータ1の中心軸に対し平行に設けている。そして、上記両案内ピン5を上記両案内孔6内に、軸方向の摺動自在に挿入している。これら両案内ピン5の基端部外周面と上記両案内孔6の開口部との間には、防塵用のブーツ7、7を設けている。
【0005】
又、上記サポート3の、上記ロータ1の周方向に離隔した両端部に、回入側、回出側両係合部8、9を、それぞれ設けている。これら各係合部8、9は、上記ロータ1の外周部を図29の上下方向に跨ぐ様に先端がU字形に屈曲しており、これら両係合部8、9にパッド10a、10bを構成するプレッシャプレート11、11の両端部を、上記ロータ1の軸方向に摺動可能に係合させている。又、上記パッド10a、10bを跨ぐ様に、シリンダ部12と爪部13とを有するキャリパ2を配置している。又、このシリンダ部12に、インナ側(車両の幅方向内側で図29の上側)のパッド10aを上記ロータ1に対し押圧するピストン14を、液密に嵌装している。
【0006】
制動を行なう場合には、上記シリンダ部12内に圧油を送り込み、上記ピストン14により上記インナ側のパッド10aのライニング15を、上記ロータ1の内側面に、図29の上から下に押し付ける。すると、この押し付け力の反作用として上記キャリパ2が、上記両案内ピン5と上記両案内孔6との摺動に基づいて、図29の上方に変位し、上記爪部13がアウタ側(車両の幅方向外側で図29の下側)のパッド10bのライニング15を、上記ロータ1の外側面に押し付ける。この結果、このロータ1が内外両側面側から強く挟持されて、制動が行なわれる。
【0007】
上述の図29〜30に示した構造の場合には、サポート3に設けた回入側、回出側各係合部8、9に、各パッド10a、10bを構成するプレッシャプレート11、11の端部を係合させている。この為、車両の前進状態での制動時にこれら各パッド10a、10bに生じる制動トルクが、上記各係合部8、9のうち、ロータ1の回転方向(図29、30に矢印イで示す方向)前側に位置する回出側係合部9のみによりサポート3に受けられる。この場合、回出側係合部9の強度確保を特に考慮しない場合には、この回出側係合部9が制動時に制動トルクを受ける事により変形し易くなる。これに対して、上述の図29〜30に示した構造の場合には、上記回入側、回出側両係合部8、9のアウタ側端部同士を補強部18により連結している。この為、この補強部18の剛性を確保する事により、回出側係合部9の変形を抑える事ができる。但し、この補強部18の剛性を高くする為に、この補強部18の断面積を大きくすると、重量が嵩む原因となる。又、この補強部18が存在する事は、フローティングキャリパ型ディスクブレーキの大幅な重量軽減を図る事を考えた場合に妨げとなり、又、ホイールとのスペース確保が難しい。この為、軽量化を安価に図れる構造で、制動時のサポート3の変形を十分に抑える事ができる構造の実現が望まれている。
尚、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献1の他に、特許文献2〜5がある。
【0008】
【特許文献1】特開平3−194224号公報
【特許文献2】特開昭54−156972号公報
【特許文献3】実開昭54−30180号公報
【特許文献4】特開2001−193769号公報
【特許文献5】実開昭57−165830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明のフローティングキャリパ型ディスクブレーキは、上述の様な事情に鑑みて、安価且つ軽量な構造で、制動時のサポートの変形を十分に抑えるべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のフローティングキャリパ型ディスクブレーキは、従来から知られているフローティングキャリパ型ディスクブレーキと同様に、サポートと、一対のパッドと、キャリパとを備える。
このうちのサポートは、車輪と共に回転するロータに隣接して車体に固定される。
又、上記一対のパッドは、このロータの軸方向両側に配置されると共に、上記サポートによりこのロータの軸方向への移動可能に案内されている。
又、上記キャリパは、上記ロータと一対のパッドとを跨ぐブリッジ部の一方に設けられた爪部と、このブリッジ部の他方に設けられてピストンが嵌装されるシリンダ部とを有する。
そして、このピストンの押し出しに伴い、上記一対のパッドを上記ロータの側面に押圧して制動を行なう。
特に、本発明のフローティングキャリパ型ディスクブレーキに於いては、上記サポートが、上記ロータよりもインナ側に外れた位置に配置されるインナ側取付部材と、このインナ側取付部材の上記ロータの周方向両端部に結合された一対のトルク受け部材とから成る。又、これら一対のトルク受け部材のうちの少なくとも一方のトルク受け部材に、その先端部が上記ロータの径方向に屈曲した引きアンカ部を設けている。そして、この引きアンカ部の先端部内側面である上記ロータの周方向側面と、上記各パッドのうちの少なくとも一方のパッドの一端部に設けた係合部とを、上記ロータの周方向に対向させている。
【発明の効果】
【0011】
上述の様に構成する本発明のフローティングキャリパ型ディスクブレーキの場合、一対のトルク受け部材のうち、他方のトルク受け部材のロータの回転方向後側面により、上記一方のパッドに加わる制動トルクの一部を受け持つ様にする事により、この制動トルクが比較的大きくなった場合に、一方のトルク受け部材に設けた引きアンカ部の先端部でも、上記制動トルクの一部を受け持つ事ができる。この為、上記サポートの一部に集中して過大な制動トルクが加わる事を防止でき、このサポートの変形を十分に抑える事ができる。しかも、一対のトルク受け部材のアウタ側端部同士を連結する補強部をなくす事ができるか、又は補強部が存在する場合でもこの補強部の断面積を小さくできる為、サポートの変形を抑えつつ軽量化を図る事が可能になり、ホイールとのスペースも確保し易い。
【0012】
しかも、本発明の場合には、上記一方のトルク受け部材を小部品とする事ができる為、この一方のトルク受け部材が引きアンカ部を有する複雑な形状となるのにも拘らず、引き抜き、押し出し成形等による異形成形により、引きアンカ部を形成する作業を行ない易くなる。これに対して、一体形状の大型のサポートの一部に引きアンカ部を形成する場合には、切削加工により引きアンカ部を形成する必要があり、加工時間が長くなるだけでなく、狭い空間に切削工具の刃先を入れなければならず、加工作業が困難である。本発明によればこの様な不都合をなくせる。この結果、本発明によれば、安価且つ軽量な構造で、制動時のサポートの変形を十分に抑える事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した様に、キャリパを、このキャリパと一対のパッドとの間に設けた支持手段により、各パッドに対するロータの軸方向への移動を可能にしつつ、サポートに対する係脱を可能に各パッドに支持する。
【0014】
この好ましい構成の場合、各パッドをサポートに支持する事により、前述の図29〜30に示した従来構造の場合と異なり、サポートに対しキャリパをロータの軸方向に移動可能とする為に、このキャリパに結合した案内ピンとサポートに形成した案内孔とを摺動させる構造とする必要がなくなる。この為、上記案内ピンをこのキャリパに結合する為にボルトを使用したり、キャリパにこのボルトを挿通する為の通孔を形成したり、サポートに上記案内孔を形成する必要がなくなり、更に軽量で、且つ安価な構造を得られる。特に、案内孔を形成する場合には、この案内孔の内周面を精度良く加工すると言った面倒な加工作業が必要になるが、請求項2に記載した構成によれば、この様な不都合をなくせる。
【0015】
又、より好ましくは、上記支持手段を、一対のパッドとの係合により、上記ロータの径方向外側への移動を規制された保持部材と、上記キャリパのブリッジ部に上記ロータの径方向に貫通する状態で設けられた開口部に挿通させたこの保持部材に係合して、上記キャリパの上記ロータの径方向への移動を規制する係止部材とにより構成する。
このより好ましい構成によれば、キャリパを各パッドに対しロータの軸方向への移動可能に案内する為に、このキャリパや各パッドに案内ピン挿通用の孔部を形成せずに済み、コストの低減をより図り易くなる。
【0016】
又、より好ましくは、請求項3に記載した様に、一対のトルク受け部材のうち、少なくとも一方のトルク受け部材の長さ方向両端部のうちの少なくとも一端部に引きアンカ部を有するアンカ部を設ける。これと共に、このアンカ部に、ロータの径方向に互いに向かい合う二面の内壁面と、このロータの周方向に互いに向かい合う二面の内壁面とを有する凹溝を設け、更に、この凹溝と、一方のパッドを構成するプレッシャプレートの一端部に設けた係合部とを係合可能とする。
この好ましい構成の場合、引きアンカ部を有するアンカ部が複雑な形状となる。この為、サポートを、ロータよりもインナ側に外れた位置に配置されるインナ側取付部材と、このインナ側取付部材のロータの周方向両端部に結合された一対のトルク受け部材とから構成したものを採用する事により、上記アンカ部を有するトルク受け部材の加工作業を容易に行なえ、製造コストを抑える事ができると言った効果が顕著になる。
【0017】
又、より好ましくは、請求項4に記載した様に、引きアンカ部を、少なくとも一方のトルク受け部材の、ロータに関してアウタ側のみに設ける。
このより好ましい構成によれば、トルク受け部材を成形する作業が、圧造加工(ヘッダー加工)により容易に行なえる。これに対して、請求項4に記載した構成の場合と異なり、トルク受け部材のロータに関してインナ、アウタ両側に一対の引きアンカ部を設けた場合には、これら両引きアンカ部の間にロータを跨ぐ様に凹んだ凹部を設ける必要がある。この場合には、トルク受け部材を構成する素材に加工の為のパンチを、引きアンカ部となる部分の側方から押し付ける事が困難になり、トルク受け部材を圧造加工により成形する事ができない。請求項4に記載した構成によれば、トルク受け部材の1個所のみに引きアンカ部を設ければ良く、上記ロータを跨ぐ様に凹んだ凹部を設ける必要がなくなる為、トルク受け部材を圧造加工により容易に成形できる。
又、各パッドからトルク受け部材に制動トルクが加わる場合、このトルク受け部材がインナ側取付部材の取付部を支点として、アウタ側のパッドからの距離が長く、アウタ側に作用するモーメントが大きい。更に、アウタ側部分同士を連結する補強部をなくすと、アウタ側でインナ側よりも大きく変位する。請求項4に記載した構成によれば、このアウタ側で、制動トルクを一対のトルク受け部材により分担して受け持たせる事ができる為、サポートの変形をより有効に抑える事ができる。これに対して、トルク受け部材のインナ、アウタ両側のうち、インナ側にだけ引きアンカ部を設けて、インナ側だけで制動トルクを一対のトルク受け部材により分担して受け持たせる様にした場合には、インナ側のパッドからトルク受け部材に加わる力の作用点とインナ側取付部材の取付部との距離が近く、インナ側に作用するモーメントが小さいので、分担して受け持たせた事による効果は小さく、サポートのアウタ側部分の変位を抑える効果としては不十分である。この為、サポートの変形を有効に抑える事は難しい。請求項4に記載した構成によれば、この様な不都合をなくす事ができ、サポートの変形を有効に抑える事ができる。
【0018】
又、より好ましくは、請求項5に記載した様に、上記引きアンカ部を、上記各トルク受け部材のうち、車両が前進する場合にロータの回転方向で後側(回入側)となるトルク受け部材の、ロータに関してアウタ側のみに設ける。
このより好ましい構成によれば、サポートに引きアンカ部を1個のみ設ければ良く、トルク受け部材の製造作業をより容易に行なえる。尚、サポートのうち、車両が前進する場合にロータの回転方向で前側(回出側)に引きアンカ部を設けた場合には、この引きアンカ部により制動トルクを受け持つ場合が車両が後進する場合の制動時のみと頻度が少なくなり、しかも、後進の場合の制動トルクは通常小さくて済む。この為、引きアンカ部が回出側に存在しない事による影響は実用上小さい。
【0019】
又、より好ましくは、請求項6に記載した様に、上記トルク受け部材に装着したパッドクリップにより、キャリパにロータの径方向外側且つ周方向に向いた弾力を付与する。
このより好ましい構成によれば、サポートに対する各パッドのがたつきを抑える機能を有するパッドクリップにより、キャリパのがたつきを抑える事ができる。この為、このキャリパのがたつきを抑える為に、ホールドスプリング等、上記パッドクリップとは別の部材を設ける必要がなくなり、部品点数の削減を図れる。又、パッドクリップは、従来から行なわれている方法と同様の方法により、サポートにキャリパを組み付ける以前に、このサポートに容易に取り付ける事ができる。又、サポートにキャリパを組み付ける場合には、このキャリパを、サポートに装着したパッドクリップに弾力に抗して押し付けつつ組み付ければ良く、サポートのロータの周方向両端部の上面に載置して、キャリパに径方向外方に向いた弾力を付与する、ホールドスプリングの様に、脱落しない様、手で抑える等の余計な配慮をする必要がない。この為、組み付け性の向上を図れる。
【0020】
又、より好ましくは、請求項7に記載した様に、上記キャリパの、ロータの周方向に関する両端部に一対の弾性部材を、このロータの外周を跨ぐ状態でこのキャリパに対し脱着自在に係止する。これと共に、これら各弾性部材をサポートに弾性的に押し付ける事により、これら各弾性部材により上記キャリパに、上記ロータの径方向外側且つ周方向に向いた弾力を付与する。
このより好ましい構成によれば、各弾性部材によりキャリパのがたつきを抑える事ができると共に、ディスクブレーキの制動時でも、キャリパと弾性部材とを互いに摺接させずに済む。この為、キャリパのがたつきを抑える為に弾性部材の一部をこのキャリパに押し付けつつ摺接させる場合と異なり、この弾性部材の摺接用の加工面をキャリパに設ける必要がなくなる為、この加工面を精度良く仕上げると言った加工作業が不要になる。しかも、上記キャリパに係止した弾性部材を線材製とした場合には、これら各弾性部材とサポートとの摺接部を線状にでき、サポートに対するキャリパの、ロータの軸方向への変位をより円滑に行なえる。
【実施例1】
【0021】
図1〜15は、請求項1〜4、6に対応する、本発明の実施例1を示している。これら各図のうち、図1〜5、13はフローティングキャリパ型ディスクブレーキの完成品の状態を、図6〜12はこのディスクブレーキの組立途中の状態を、それぞれ示している。本実施例のフローティングキャリパ型ディスクブレーキは、サポート3aと、一対のパッド10a、10bと、キャリパ2aとを備える。このうちのキャリパ2aは、車輪と共に回転するロータ1と一対のパッド10a、10bとを跨ぐブリッジ部17の一方に設けられた爪部13と、このブリッジ部17の他方に設けられてピストン14が嵌装されるシリンダ部12とを有する。又、上記両パッド10a、10bは、ロータ1の軸方向両側に配置した状態で、上記サポート3aに、このロータ1の軸方向(図2の左右方向、図3〜5、13〜15の表裏方向)の摺動を可能に案内支持している。
【0022】
特に、本実施例の場合には、上記サポート3aを、図6〜8に詳示する様に構成している。即ち、このサポート3aは、上記ロータ1よりもインナ側(車両の幅方向中央側で、図1、2、6、8〜12の右側、図3、5、7、13の表側、図4、14、15の裏側)に外れた位置に配置されるインナ側取付部材19と、このインナ側取付部材19とは別の部材である、一対のトルク受け部材20a、20bとを備え、上記インナ側取付部材19のロータ1の周方向両端部にこれら両トルク受け部材20a、20bを結合固定している。このうちのインナ側取付部材19は、一定の厚さを有する鋼板等の金属板を略U字形の平板状に形成したもので、下端部に一対の取付孔4、4を、上記ロータ1の軸方向に貫通する状態で形成している。上記インナ側取付部材19は、これら一対の取付孔4、4を介して、上記ロータ1に隣接して車体に固定される。
【0023】
又、上記インナ側取付部材19の、上記ロータ1の周方向両端部に一対の結合用腕部21、21を設けている。そして、これら結合用腕部21、21の先端部に、上記ロータ1の中心軸に対し平行な一対の通孔22、22を形成している。これら各通孔22、22は、ロータ1の直径方向に関してこのロータ1の外周縁よりも外側に外れた位置に形成している。
【0024】
一方、上記各トルク受け部材20a、20bは、図6〜7に詳示する様に、鋼等の金属により造ったもので、これら各トルク受け部材20a、20b同士で互いに対向する内側に設けた、ロータ1の軸方向(図6の左右方向、図7の表裏方向)に長いアンカ部23a、23bと、このアンカ部23a、23bのアウタ寄り(車両の幅方向外寄りで、図1、2、6、8〜12の左寄り、図3、5、7、13の裏寄り、図4、14、15の表寄り)で、各トルク受け部材20a、20b同士で互いに離れる側の外側に一体成形する状態で連結した腕部24a、24bとを備える。又、これら腕部24a、24bのインナ側面(図6の右側面、図7の表側面)に挿入用突部25、25を、ロータ1の軸方向に突出形成する状態で設けている。
【0025】
又、上記各アンカ部23a、23bは、ロータ1の径方向に関する外端部である、上端部に設けた断面L字形の第一部分26と、この第一部分26のアウタ側端部でロータ1の径方向に関する内端側である、下端側に突出させた第二部分27とを備える。又、この第二部分27の下端部(ロータ1の径方向内端部)に、相手トルク受け部材20b(又は20a)側に突出させ、その先端部をロータ1の径方向外側に向け屈曲させて成る、断面L字形の引きアンカ部28を設けている。又、上記第一部分26の上端部に、相手トルク受け部材20b(又は20a)側に突出させた係止突部29を、長さ方向全長に亙り設けている。この構成により、上記各トルク受け部材20a、20bのアウタ側端部の内側に、ロータ1の径方向に離隔した互いにほぼ平行な第一、第二の内壁面30、31と、ロータ1の周方向に離隔した互いにほぼ平行な第三、第四の内壁面32、33とを有する第一の凹溝34、34が形成される。又、上記各腕部24a、24bのインナ側端部の下側面に、ロータ1の外周縁部との干渉を防止する為の段部35を形成している。
【0026】
それぞれが上述の様に構成する各トルク受け部材20a、20bは、次の様にして前記インナ側取付部材19に結合し、サポート3aを構成する。先ず、このインナ側取付部材19の各結合用腕部21、21の先端部に形成した各通孔22、22に、上記各トルク受け部材20a、20bに設けた挿入用突部25、25を挿入する。言い換えれば、これら各通孔22、22と各挿入用突部25、25とを凹凸係合させる。これと共に、各結合用腕部21、21の先端部の内側面(インナ側取付部材19の幅方向中央側となる面)に形成した断面L字形の段部36、36の内側に、上記各トルク受け部材20a、20bに設けたアンカ部26、26のインナ側端部を進入させる。そしてこの状態で、上記挿入用突部25、25のインナ側端部で上記各通孔22、22から突出させた部分をかしめ広げる事で、かしめ部65、65を形成する事により、上記挿入用突部25、25を上記インナ側取付部材19にかしめ固定している。又、この状態で、各アンカ部26、26のインナ側端部の断面L字形の内面と、上記各段部36の下方に連続する断面L字形の第二の段部37の内側面及び上面とにより、断面略コ字形の一対の第二の凹溝38、38(図3、13)を構成している。これら各第二の凹溝38、38は、ロータ1の径方向外端側に位置する第一の内壁面42と、この第一の内壁面42とほぼ平行な第二の内壁面である、上記第二の段部37の上面と、これら第一の内壁面42と第二の段部37の上面とにより挟まれた第三の内壁面44とを有する。そして、上記各第二の凹溝38、38に、インナ側のパッド10aを構成するプレッシャプレート11の両端部に設けた係合部である、略T字形の係合突部39、39を係合自在としている。
【0027】
又、上記各トルク受け部材20a、20bのアウタ側端部に設けた第一の凹溝34、34に、アウタ側のパッド10bを構成するプレッシャプレート11の両端部に設けた係合部である、略T字形の係合突部39、39を係合自在としている。そして、上記アウタ側のパッド10bを構成するプレッシャプレート11の両端部に設けた係合突部39、39の、パッド10bの幅方向中央側面と、前記各引きアンカ部28、28の先端部内側面である、第四の内壁面33、33とを、ロータ1の周方向に対向させる。
【0028】
又、この様に構成するサポート3aに一対のパッドクリップ40、40を、上記各第一、第二の凹溝34、38の内面と、各トルク受け部材20a、20bのこれら各凹溝34、38同士の間部分とを覆う様に装着している。上記各パッドクリップ40、40は、図8、13に詳示する様に、ステンレス鋼板等の、良好な耐食性及び弾性を有する金属板により一体に造っている。これら各パッドクリップ40、40は、非制動時に上記各パッド10a、10bがサポート3aに対しがたつくのを抑える役目を有すると共に、これら各パッド10a、10bを構成するプレッシャプレート11、11と上記サポート3aとの摺動部が錆び付くのを防止する機能を有する。又、各パッドクリップ40、40の上端部に、押圧用弾性部41、41を設けている。これら各押圧用弾性部41、41は、各パッドクリップ40、40をサポート3aに装着した状態で、各トルク受け部材20a、20bの上面からその基端部が上方に延出する。この様な各押圧用弾性部41、41は、各トルク受け部材20a、20bの上面に押し付け可能な3本の脚部46、46と、これら各脚部46、46の先端部同士を連結する押圧片47、47とを備える。このうちの各脚部46、46は、上記パッドクリップ40、40の本体部48、48の上端部で装着側(各パッドクリップ40、40同士で互いに離れる側で、図13の右側)に向け曲がった部分にそれぞれの基端部を連結しており、それぞれが装着側に伸びた部分の中間部をU字形に折り返し、反装着側(各パッドクリップ40、40同士で互いに近づく側で、図13の左側)に伸びた部分の先端寄り部分を、ロータ1の径方向内側である下側且つ反装着側に向け折り曲げている。又、上記押圧片47、47は、各トルク受け部材20a、20bの全長よりも長い断面S字形で、上記各脚部46、46の先端部同士を連結している。
【0029】
この様な各パッドクリップ40、40は、サポート3aに、前記各第一、第二の凹溝34、38の内面と、各トルク受け部材20a、20bのこれら各凹溝34、38同士の間部分とを覆う様に装着する。又、この状態で、上記各押圧用弾性部41、41の各脚部46、46の下面を各トルク受け部材20a、20bの上面に押し付けると共に、各脚部46、46の先端寄り部分及び押圧片47を、各トルク受け部材20a、20bの上端部内側面(図13の左側面)から内方(図13の左方)に突出させる。これら各押圧片47は、後述する様に、サポート3aにキャリパ2aを、各トルク受け部材20a、20bの間部分に配置する様に支持した状態で、キャリパ2aの幅方向両側面及びこの両側面に設けた段部49、49の下面に弾性的に押し付ける。
【0030】
又、各パッドクリップ40、40のインナ側端部で、上記各第二の凹溝38、38の内面を覆うロータ1の径方向内端寄り(下端寄り)部分の先端部に、ロータ1の径方向外側(上側)に向け折り曲げた折り曲げ部50を設けている。そして、各パッドクリップ40、40をサポート3aに装着した状態で、各パッド10a、10bのプレッシャプレート11、11の両端部に設けた係合突部39、39を、前記各第一、第二の凹溝34、38に、上記各パッドクリップ40、40を介して、上記ロータ1の軸方向への移動を可能に係合自在としている。
【0031】
又、上記サポート3aは、前記インナ側取付部材19に設けた取付孔4、4に挿通した図示しないボルトにより、やはり図示しない懸架装置を構成するナックルに結合固定する。これにより、上記サポート3aは、ロータ1に隣接して車体に固定される。又、この状態で、このサポート3aは、このロータ1の外周部を、図2の左右方向に跨ぐ様に配置される。
【0032】
又、前記キャリパ2aは、上記サポート3aに支持した各パッド10a、10bに対し、これらキャリパ2aと各パッド10a、10bとの間に設けた支持手段51により、上記ロータ1の軸方向への移動を可能に支持している。この支持手段51は、金属板を断面略コ字形に曲げ形成すると共に、下方に開口する両端縁部を互いに近づく方向に曲げ形成する事により造った保持部材52と、この保持部材52の内側に挿通自在な係止部材である、ロックプレート53とから成る。そして、上記各パッド10a、10bを構成するプレッシャプレート11の幅方向中央部に設けた断面略T字形の突部54を、上記保持部材52に、ロータ1の軸方向への相対移動を可能に内嵌している。又、この保持部材52を構成する底板部55の中央部に、ロータ1の軸方向に長い長孔56を形成している。又、保持部材52の開口端縁部に設けた一対の折り曲げ片74、74により、各パッド10a、10bの突部54の先端部が保持部材52の内側からロータ1の径方向内側に抜け出る事を阻止している。
【0033】
又、保持部材52に上記各プレッシャプレート11の突部54を内嵌した状態で、キャリパ2aのブリッジ部17の中央部に形成した透孔57内に保持部材52を、ロータ1の径方向に関して内方から外方に向け挿通させている。そして、この保持部材52の底板部55寄り部分を、ブリッジ部17の外面で上記透孔57の開口端両側部分に設けた溝部58の底面及び段部59の上面から外側に突出させている。そして、上記保持部材52のこの外側に突出させた部分の内側に、ブリッジ部17の外面に載置した上記ロックプレート53を、ロータ1の軸方向に挿入している。このロックプレート53は、金属板製で、図12に詳示する様に、本体部60と、本体部60の幅方向両側縁の長さ方向一端寄り部分(図12の左端寄り部分)に同方向に曲げ形成した一対の腕部61と、この本体部60の長さ方向一端縁(図12の左端縁)に設けた断面L字形の折り曲げ片62とを備える。又、本体部60の中央部に形成したロータ1の軸方向に長いコ字形の切り欠き63の内側部分の先端部をロータ1の径方向外側に曲げ形成する事により、係止突部64を設けている。
【0034】
そして、ブリッジ部17の外面の溝部58の底面及び段部59の上面から突出させた、保持部材52の底板部55寄り部分の内側にロックプレート53をロータ1の軸方向(図12の左右方向)に挿入している。又、この状態で、このロックプレート53の長さ方向両端部を、上記溝部58の底面及び段部59の上面に掛け渡している。即ち、上記本体部60の先端部下面をこの段部59の上面に当接させると共に、上記折り曲げ片62を上記溝部58の底面に当接させている。この構成により、ロックプレート53は、キャリパ2aに対し、ロータ1の径方向内方(図12の下方)への移動を規制されると共に、保持部材52に係合される。
【0035】
更に、ロックプレート53に形成した係止突部64を、保持部材52に形成した長孔56に係合させる事により、上記ロックプレート53が保持部材52の内側からロータ1の軸方向に不用意に抜け出す事を阻止している。ロックプレート53を保持部材52の内側から取り出す場合には、このロックプレート53の係止突部64の先端部を、ロータ1の径方向内側に弾性変形させ、長孔56内から抜け出させた状態で、保持部材52の内側から上記ロックプレート53をロータ1の軸方向に引き抜く。この様にロックプレート53を保持部材52から引き抜く事により、サポート3aに対しキャリパ2aを、ロータ1の径方向外側(図12の上方)に取り外す事が可能になる。この様に、キャリパ2aは、上記保持部材52とロックプレート53とから成る支持手段51により、各パッド10a、10bに対するロータ1の軸方向への移動を可能にしつつ、上記サポート3aに対する係脱を可能に上記各パッド10a、10bに支持される。
【0036】
又、この状態では、サポート3aに装着したパッドクリップ40、40の先端部に設けた押圧片47の先端寄り部分が、上記キャリパ2aの幅方向両側面に設けた段部49の下面に、ロータ1の径方向外側に弾性的に押し付けられる。更に、上記押圧片47の更に先端寄り部分が、上記キャリパ2aのロータ1の周方向側面にこの周方向に弾性的に押し付けられる。そして、この構成により、上記押圧片47がキャリパ2aに、上方且つロータ1の周方向に向いた弾力を付与する。この結果、キャリパ2aは、サポート3aに対しロータ1の径方向外側に弾性的に引き上げられると共に、キャリパ2aに載置したロックプレート53と保持部材52との係合、及び、この保持部材52と各プレッシャプレート11の幅方向中央部に設けた突部54との係合により、キャリパ2aのロータ1の径方向への変位が規制される。又、この状態で、各パッド10a、10bのプレッシャプレート11の両端部に設けた各係合突部39、39の上側面が、各パッドクリップ40、40を介して、各第一、第二の凹溝34、38の第一の内壁面30、42に弾性的に押し付けられる。そして、各パッド10a、10bがサポート3aに対し、ロータ1の軸方向へ移動する事が可能となる。又、この状態で、各パッド10a、10bのプレッシャプレート11に設けた係合突部39、39の、ロータ1の径方向内側面(下側面)と、第一の凹溝34を構成する第二の内壁面31、及び、第二の凹溝38を構成する第二の段部37の上面を覆うパッドクリップ40、40の上側面との間には、僅かな隙間が存在する。この構成により、キャリパ2aはサポート3a及び各パッド10a、10bに対し、ロータ1の軸方向への移動を可能にがたつきなく支持される。
【0037】
上述の様に構成する本実施例のフローティングキャリパ型ディスクブレーキの場合、制動時に、アウタ側のパッド10bにロータ1から加わる制動トルクが、車両の前進時にロータ1の回転方向(図2〜5、14、15に矢印ロで示す方向)前側となる回出側のトルク受け部材20aでサポート3aに受けられるだけでなく、ロータ1の回転方向後側となる回入側のトルク受け部材20bででも、上記制動トルクがサポート3aに受けられる。即ち、車両の前進時に、制動すべく各パッド10a、10bがロータ1の両側面に押し付けられると、各パッド10a、10bがロータ1の回転方向に挙動する。そして、上記制動トルクが比較的小さい場合には、図14に略示する様に、上記各パッド10a、10bのプレッシャプレート11の他端部(図3の左端部、図4、14の右端部)に設けた係合突部39のロータ1の回転方向前側面が、上記回出側のトルク受け部材20aの第一、第二の凹溝34、38(第二の凹溝38に就いては図3、4、13参照)の、ロータ1の回転方向前側面となる第三の内壁面32、44(第三の内壁面44に就いては図3、4、13参照)に押し付けられる。そして、上記回入側、回出側の各トルク受け部材20a、20bのうち、回出側のトルク受け部材20aだけで、上記制動トルクがサポート3aに受けられる。この際、アウタ側のパッド10bを構成するプレッシャプレート11の一端部(図14の左端部)に設けた係合突部39のロータ1の回転方向前側面と、上記回入側のトルク受け部材20bに設けた引きアンカ部28の内面である第四の内壁面33との間には、僅かな隙間dが存在する。
【0038】
これに対して、上記制動トルクが比較的大きくなると、図15に略示する様に、上記各パッド10a、10bのプレッシャプレート11の他端部(図3の左端部、図4、15の右端部)に設けた係合突部39のロータの回転方向前側面が、上記回出側のトルク受け部材20aに設けた第一、第二の凹溝34、38(第二の凹溝38に就いては図3、4、13参照)の第三の内壁面32、44(第三の内壁面44に就いては図3、4、13参照)に、強い力で押し付けられる。この結果、サポート3aの回出側部分の変形が大きくなり、各パッド10a、10bがロータ1の回転方向前側に大きく移動する。この結果、これら各パッド10a、10bのうち、アウタ側のパッド10bを構成するプレッシャプレート11の一端部(図15の左端部)に設けた係合突部39のロータの回転方向前側面が、上記回入側のトルク受け部材20bに設けた引きアンカ部28の先端部の内面である、第四の内壁面33に押し付けられる。そして、回入側、回出側のトルク受け部材20a、20bのうち、回出側のトルク受け部材20aで制動トルクが受けられるだけでなく、回入側のトルク受け部材20bの引きアンカ部28ででも、この制動トルクがサポート3aに受けられる。
【0039】
この結果、上記制動トルクを、回出側と回入側との両トルク受け部材20a、20bで分担して受け持つ事ができ、上記サポート3aの一部に集中して過大な制動トルクが加わる事を防止でき、このサポート3aの変形を十分に抑える事ができる。しかも、本実施例の様に、各トルク受け部材20a、20bのアウタ側端部同士を連結する補強部を設けない場合でも、サポート3aの変形を抑える事ができ、サポート3aの変形を抑えつつ軽量化を図る事が可能になる。
【0040】
しかも、本発明の場合には、サポート3aを、ロータ1よりもインナ側に外れた位置に配置されるインナ側取付部材19と、このインナ側取付部材19のロータ1の周方向両端部に結合された一対のトルク受け部材20a、20bとから構成している。又、これら各トルク受け部材20a、20bのアウタ側端部に引きアンカ部28、28を、それぞれ設けている。この為、各トルク受け部材20a、20bを小部品とする事ができ、これら各トルク受け部材20a、20bが引きアンカ部28、28を有する複雑な形状となるのにも拘らず、引き抜き、押し出し成形等による異形成形により、上記各引きアンカ部28、28を形成する作業を行ない易くなる。これに対して、本実施例の場合と異なり、一体形状の大型のサポートの一部に引きアンカ部を形成する場合には、切削加工により引きアンカ部を形成する必要があり、加工時間が長くなるだけでなく、狭い空間に切削工具の刃先を入れなければならず、加工作業が極めて困難になる。本発明の場合には、この様な不都合をなくせる。この結果、本発明によれば、安価且つ軽量な構造で、制動時のサポート3aの変形を十分に抑える事ができる。
【0041】
又、本実施例の場合には、キャリパ2aと一対のパッド10a、10bとの間に設けた、保持部材52とロックプレート53とから成る支持手段51により、各パッド10a、10bに対するキャリパ2aのロータ1の軸方向への移動を可能にしつつ、このキャリパ2aを、サポート3aに対する係脱を可能にこれら各パッド10a、10bに支持している。この為、本実施例の様に、各パッド10a、10bをサポート3aに支持する事により、前述の図29〜30に示した従来構造の場合と異なり、サポートに対しキャリパをロータの軸方向に移動可能とする為に、キャリパに結合した案内ピンとサポートに形成した案内孔とを摺動させる構造とする必要がなくなる。この為、上記案内ピンをキャリパに結合する為にボルトを使用したり、キャリパにこのボルトを挿通する為の通孔を形成したり、サポートに上記案内孔を形成する必要がなくなり、更に軽量で、且つ安価な構造を得られる。
【0042】
特に、本実施例の場合には、上記保持部材52が、一対のパッド10a、10bとの係合により、上記ロータ1の径方向外側への移動を規制されている。これと共に、上記ロックプレート53は、上記キャリパ2aのブリッジ部17に上記ロータ1の径方向に貫通する状態で設けられた透孔57に挿通させた保持部材52の底板部55寄り部分に係合させて、上記キャリパ2aの、上記ロータ1の径方向への移動を規制している。この為、上記各パッド10a、10bに対してキャリパ2aを、このロータ1の軸方向への移動可能に案内する為に、このキャリパ2aや各パッド10a、10bに案内ピン挿通用の孔部を形成せずに済み、コストの低減をより図り易くなる。
【0043】
更に、本実施例の場合には、上記各トルク受け部材20a、20bのアウタ側端部に引きアンカ部28、28を有するアンカ部23a、23bを設けると共に、これら各アンカ部23a、23bのアウタ側端部に、ロータ1の径方向に互いに離隔した第一、第二の内壁面30、31と、このロータ1の周方向に互いに離隔した第三、第四の内壁面32、33とを有する第一の凹溝34を設け、更に、この第一の凹溝34と、アウタ側のパッド10a、10bを構成するプレッシャプレート11の両端部に設けた係合突部39、39とを係合可能としている。この為、本実施例の場合には、引きアンカ部28、28を有するアンカ部23a、23bが複雑な形状となる。従って、サポート3aを、ロータ1よりもインナ側に外れた位置に配置されるインナ側取付部材19と、このインナ側取付部材19のロータ1の周方向両端部に結合された一対のトルク受け部材20a、20bとから構成したものを採用する事により、上記アンカ部23a、23bを有するトルク受け部材20a、20bの加工作業を容易に行なえ、製造コストを抑える事ができると言った効果が顕著になる。又、上記第一の凹溝34、34が、第一〜第四の内壁面30〜33を有し、これら第一の凹溝34、34の内側にアウタ側のパッド10a、10bの係合突部39、39を係合可能としている。この為、これら係合突部39、39が第一の凹溝34、34内から外れず、アウタ側のパッド10bが変形等により不用意に脱落する事はない。
【0044】
又、本実施例の場合には、上記各トルク受け部材20a、20bのうち、ロータ1に関してアウタ側のみに上記各引きアンカ部28、28を設けている。この為、これら各トルク受け部材20a、20bを成形する作業が、圧造加工(ヘッダー加工)により容易に行なえる。これに対して、本実施例の場合と異なり、トルク受け部材20a、20bのロータ1に関してインナ、アウタ両側に一対の引きアンカ部を設けた場合には、これら両引きアンカ部の間にロータ1を跨ぐ様に凹んだ凹部を設ける必要がある。この場合には、トルク受け部材20a、20bを構成する素材に加工の為のパンチを、引きアンカ部となる部分の側方から押し付ける事が困難になり、トルク受け部材20a、20bを圧造加工により成形する事が難しくなる。本実施例の場合には、各トルク受け部材20a、20bの1個所のみに引きアンカ部28、28を設ければ良く、ロータを跨ぐ様に凹んだ凹部を設ける必要がなくなる為、トルク受け部材20a、20bを圧造加工により容易に成形できる。
【0045】
又、各パッド10a、10bからトルク受け部材20a、20bに制動トルクが加わる場合、トルク受け部材20a、20bがインナ側取付部材19の車体への取付部を支点として、アウタ側のパッド10bからこの取付部までの距離が長く、アウタ側に作用するモーメントが大きい。更に、アウタ側部分同士を連結する補強部をなくすと、アウタ側でインナ側よりも大きく変位する。本実施例の様に、アウタ側にのみ引きアンカ部28、28を設けた場合には、このアウタ側で、制動トルクを回入側と回出側との両トルク受け部材20a、20bにより分担して受け持たせる事ができ、サポート3aの変形をより有効に抑える事ができる。これに対して、本実施例の場合と異なり、トルク受け部材20a、20bのインナ、アウタ両側のうち、インナ側にだけ引きアンカ部を設けて、インナ側だけで制動トルクを回入側と回出側との両トルク受け部材20a、20bにより分担して受け持たせる様にした場合には、インナ側のパッド10aから各トルク受け部材20a、20bに加わる力の作用点とインナ側取付部材19の車体への取付部との距離が近く、インナ側に作用するモーメントが小さいので、分担して受け持たせる事による効果は小さく、サポート3aのアウタ側部分の変位を抑える効果としては不十分である。この為、サポートの変形を有効に抑える事は難しい。本実施例の場合には、この様な不都合をなくす事ができ、サポート3aの変形を有効に抑える事ができる。
【0046】
更に、本実施例の場合には、上記各トルク受け部材20a、20bを覆う状態でこれら各トルク受け部材20a、20bに装着したパッドクリップ40、40により、キャリパ2aにロータ1の径方向外側且つ周方向に向いた弾力を付与している。この為、サポート3aに対する各パッド10a、10bのがたつきを抑える機能を有する上記パッドクリップ40、40により、キャリパ2aのがたつきを抑える事ができる。この為、このキャリパ2aのがたつきを抑える為に、ホールドスプリング等、上記パッドクリップ40、40とは別の部材を設ける必要がなくなり、部品点数の削減を図れる。又、パッドクリップ40、40は、従来から行なわれている方法と同様の方法により、サポート3aにキャリパ2aを組み付ける以前に、このサポート3aに容易に取り付ける事ができる。又、サポート3aにキャリパ2aを組み付ける場合には、このキャリパ2aを、サポート3aに装着したパッドクリップ40、40に弾力に抗して押し付けつつ組み付ければ良く、サポート3aのロータ1の周方向両端部の上面に載置して、キャリパ2aに径方向外方に向いた弾力を付与する、ホールドスプリングの様に、脱落しない様、手で抑える等の余計な配慮をする必要がない。この為、組み付け性の向上を図れる。
【0047】
又、本実施例の場合には、トルク受け部材20a、20bとインナ側取付部材19とを、挿入用突部25、25と通孔22、22とにより凹凸係合させた状態でかしめ固定している。この為、ねじ等の締結部材を使用したり、溶接等の接合手段を使用せずに済み、短時間で且つ安価に、上記各トルク受け部材20a、20bとインナ側取付部材19とを結合できる。
【0048】
又、かしめ作業は、各トルク受け部材20a、20bのインナ側端部にパッド10a、10bを配置する側から治具を突き当てつつ行なう事ができる。この場合には、各トルク受け部材20a、20bのうち、各パッド10a、10bから制動トルクを受ける面の位置決め精度を確保しつつ、インナ側取付部材19の結合用腕部21、21の先端部内側面と各トルク受け部材20a、20bのインナ側端部の外側面とを密着させる事ができる。即ち、かしめ作業に伴って上記結合用腕部21、21の先端部で通孔22、22の周辺部は、広がる様に変形する。これに対して、各トルク受け部材20a、20bのパッド10a、10bを配置する側の面に治具を突き当てれば、これら各トルク受け部材20a、20bの各パッド10a、10bから制動トルクを受ける面の位置決め精度を良好に確保できる。しかも、結合用腕部20a、20bの先端部で広がる様に変形した部分の内側面と、各トルク受け部材20a、20bのインナ側端部の外側面とが密着しつつ、互いに押し付け合う様になる。この為、制動時に各パッド10a、10bに加わった制動トルクの少なくとも一部は、各トルク受け部材20a、20bの腕部24a、24b及び挿入突部25、25を介さずに上記各結合用腕部21、21の先端部内側面と各トルク受け部材20a、20bの外側面との接触部を介して、各トルク受け部材20a、20bのアンカ部23a、23bから上記インナ側取付部材19に伝達される様になる。この結果、制動時での挿入用突部25、25のかしめ部65、65に加わる負担を軽減でき、上記サポート3aの耐久性向上を図れる。
【実施例2】
【0049】
次に、図16〜19は、請求項1〜3、6に対応する、本発明の実施例2を示している。本実施例の場合には、各トルク受け部材20a、20bのインナ側端部(図16〜19の右端部)にも、アウタ側端部(図16〜19の左端部)に設けた引きアンカ部28と同様の、引きアンカ部28a(トルク受け部材20aに設けた引きアンカ部に就いては図示を省略する。)を設けている。この為に本実施例の場合には、各トルク受け部材20a、20bを構成するアンカ部23a、23bの第一部分26、26のインナ側端部に、下側に突出させた第二部分27a、27aを設けている。そして、これら第二部分27a、27aの下端部に先端部が上方に屈曲した断面L字形の引きアンカ部28aを、それぞれ設けている。そして、これら各引きアンカ部28aの先端部に、インナ側のパッド10aを構成するプレッシャプレート11の両端部に設けた係合突部39を係合自在としている。又、上記各トルク受け部材20a、20bのインナ側に引きアンカ部28aを設けた事に伴い、これら引きアンカ部28aをインナ側取付部材19の内側に配置可能とすべく、このインナ側取付部材19の各結合用腕部21、21の基端寄り部分内側面に段部67、67を設けている。上記各トルク受け部材20a、20bをインナ側取付部材19の両端部に結合した状態で、インナ側の引きアンカ部28aの下面は、上記段部67、67の上面に突き当てる。
【0050】
この様な本実施例の場合には、上述の実施例1の場合と異なり、各トルク受け部材20a、20bのインナ側端部にも引きアンカ部28aを設けている為、各トルク受け部材20a、20bの両引きアンカ部28aの間部分にロータ1(図2等参照)を跨ぐ様に凹んだ凹部66が形成される。この為、各トルク受け部材20a、20bを圧造により成形する事が実施例1の場合よりも難しくはなる。但し、本実施例の場合には、インナ側のパッド10aからサポート3aに加わる制動トルクの一部をインナ側の引きアンカ部28aでも受ける事ができる為、ロータ1の回転方向前側となる回出側のトルク受け部材20a(又は20b)が受ける制動トルクをより分散させ、実施例1の場合よりもサポート3aの変形を小さく抑える事ができる。又、上記各トルク受け部材20a、20bを圧造により造る事ができない場合でも、各トルク受け部材20a、20bが小部品である為、切削加工により各部を形成する作業を、一体形状の大型のサポートの一部に切削加工を施して引きアンカ部を設ける場合よりも容易に行なえる。
インナ側のパッド10aに比較的大きな制動トルクが加わる制動時に、ロータ1の回転方向後側となる回入側のトルク受け部材20b(又は20a)のインナ側の引きアンカ部28aにより、制動トルクの一部を受けると言った作用は、上述の実施例1で説明したアウタ側の引きアンカ部28により制動トルクの一部を受ける場合と同様である。
その他の構成及び作用に就いては、上述の実施例1の場合と同様である為、同等部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【実施例3】
【0051】
次に、図20は、請求項1〜6に対応する、本発明の実施例3を示している。本実施例の場合には、上述の各実施例の場合と異なり、車両の前進時にロータ1(図2等参照)の回転方向(図20に矢印ロで示す方向)後側となる回入側のトルク受け部材20bのアウタ側端部のみに、引きアンカ部28を設けている。車両の前進時にロータ1の回転方向前側となる回出側のトルク受け部材20aのインナ、アウタ両端部には、引きアンカ部を設けていない。
【0052】
この様な本実施例の場合には、サポート3aに引きアンカ部28を1個のみ設ければ良く、トルク受け部材20aの製造作業をより容易に行なえる。尚、本実施例の場合と異なり、サポート3aのうち、車両が前進する場合にロータ1の回転方向前側となる回出側に引きアンカ部を設ける場合には、この引きアンカ部により制動トルクを受け持つ場合が車両が後進する場合の制動時のみと頻度が少なくなり、しかも、後進の場合の制動トルクは通常小さくて済む。この為、本実施例の様に、車両が前進する場合にサポート3aの回出側に引きアンカ部が存在しない事による影響は実用上小さい。
その他の構成及び作用に就いては、前述の図1〜15に示した実施例1の場合と同様である為、同等部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【実施例4】
【0053】
次に、図21〜28は、請求項1〜4、7に対応する、本発明の実施例4を示している。本実施例の場合には、上述の各実施例の場合と異なり、サポート3aを構成する各トルク受け部材20a、20bに装着したパッドクリップ40a、40aに、押圧用弾性部41(図1等参照)を設けていない。その代わりに本実施例の場合には、キャリパ2aの幅方向(図21、24、26〜28の左右方向、図22の上下方向)両端部の下側面に、図25に詳示する様な一対の押圧用スプリング68、68を装着し、これら各押圧用スプリング68、68をサポート3aに弾性的に押し付けている。これら各押圧用スプリング68、68は、ばね鋼等の金属製の線材製で、直線状の基部69と、この基部69の両端に連結した一対の脚部70、70と、これら各脚部70、70の一端にそれぞれの基端を連結した略U字形の押圧部71、71とから成る。このうちの各脚部70、70は、上記基部69の両端に連結してハ字形に広がった後、この基部69の長さ方向と直交する方向(図25の下方)に向け湾曲している。又、上記各押圧部71、71の両端は互いにハ字形に広がっており、先端部は上記基部69側(図25の上側)に向いている。
【0054】
そして、図22、27に示す様に、上記キャリパ2aの幅方向(図22の上下方向)両端部下側面の、ロータ1を跨ぐ両側位置(図22の左右方向両側位置)に形成した係止孔72、72に、上記各押圧用スプリング68、68の両端部を、このロータ1の外周を跨ぐ状態で脱着自在に係止している。この状態で、上記基部69、69は、上記キャリパ2aの幅方向両側面から側方に突出している。
【0055】
この様に押圧用スプリング68、68を係止したキャリパ2aは、次の様にしてサポート3aに支持する。即ち、このキャリパ2aに係止した押圧用スプリング68、68の基部69、69を、サポート3aを構成する各トルク受け部材20a、20bのアンカ部23a、23bの上面に形成した段部73、73の上面、及び、これら各段部73、73の内側面(キャリパ2a側の面)に弾性的に押し付けつつ係止する。この為、これら各押圧用スプリング68、68は、自由状態から撓んだ状態になる。そして、これら各押圧用スプリング68、68の押圧部71、71の先端寄り部分により、上記各係止孔72、72に、キャリパ2aの幅方向中央側に向いた弾力を付与する。又、上記押圧部71、71の中間部により、上記キャリパ2aの下側面で係止孔72、72の開口周辺部を、上方に弾性的に押圧する。そして、上記各押圧用スプリング68、68により上記キャリパ2aに、上記ロータ1の径方向外側(上側)且つ周方向に向いた弾力を付与する。又、各パッド10a、10bを構成するプレッシャプレート11、11に設けた突部54(図4、5、9、11等参照)に嵌合させた保持部材52の、底板部55寄り部分で、上記キャリパ2aの透孔57から外方に突出させた部分の内側に、ロックプレート53を挿通させ、このキャリパ2aが各パッド10a、10bに対しロータ1の径方向外側へ移動する事を阻止する。
【0056】
上述の様に構成する本実施例のフローティングキャリパ型ディスクブレーキによれば、各押圧用スプリング68、68によりキャリパ2aのがたつきを抑える事ができると共に、ディスクブレーキの制動時でも、キャリパ2aと各押圧用スプリング68、68とを互いに摺接させずに済む。この為、キャリパ2aのがたつきを抑える為にパッドスプリング等の弾性部材の一部をこのキャリパ2aに押し付けつつ摺接させる場合と異なり、この弾性部材の摺接用の加工面をキャリパ2aに設ける必要がなくなり、この加工面を精度良く仕上げると言った加工作業が不要になる。しかも、本実施例の様に、上記各押圧用スプリング68、68を線材製とした場合には、これら各押圧用スプリング68、68の基部69、69とトルク受け部材20a、20bの段部73、73の上面及び内側面との摺接部が線状になる為、この摺接部の面積を小さくできる。この為、サポート3aに対するキャリパ2aの、ロータ1の軸方向への変位をより円滑に行なえる。
その他の構成及び作用に就いては、前述の図1〜15に示した実施例1の場合と同様である為、同等部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
尚、本実施例に於いて、各押圧用スプリング68、68は、キャリパ2aに、ロータ1の径方向外側且つ周方向に向いた弾力を付与できるものであれば良く、その押圧部の位置等を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施例1のディスクブレーキを、ロータを省略した状態で示す斜視図。
【図2】実施例1のディスクブレーキをロータの外径側から見た図。
【図3】図2の右方から見た図。
【図4】同A−A断面図。
【図5】同B−B断面図。
【図6】サポートの分解斜視図。
【図7】図6の右側のトルク受け部材をインナ側から見た図。
【図8】サポートにパッドクリップを装着する状態を示す斜視図。
【図9】パッドクリップを装着したサポートにパッドを組み付ける状態を示す斜視図。
【図10】サポートに支持した各パッドに保持部材を嵌合させる状態を示す斜視図。
【図11】サポート及び各パッドにキャリパを組み付ける状態を示す斜視図。
【図12】サポート及び各パッドにキャリパを組み付けた後に、保持部材にロックプレートを挿入する状態を示す斜視図。
【図13】図3のC部拡大図。
【図14】制動トルクが比較的小さい制動時に、アウタ側のパッドからサポートに制動トルクが受けられる状態を示す略断面図。
【図15】制動トルクが比較的大きい制動時に、アウタ側のパッドからサポートに制動トルクが受けられる状態を示す略断面図。
【図16】本発明の実施例2を、サポートに一対のパッドを係止した状態で示す斜視図。
【図17】実施例2のディスクブレーキを構成するサポートの分解斜視図。
【図18】同じくサポートにパッドクリップを装着する以前の状態を示す斜視図。
【図19】同じくサポートにパッドクリップを装着した後の状態を示す斜視図。
【図20】本発明の実施例3を示す、図14と同様の図。
【図21】同実施例4のディスクブレーキを、ロータを省略して示す斜視図。
【図22】図21のロータの径方向内側から見た図。
【図23】図22の上方から見た図。
【図24】図23の左方から見た図。
【図25】実施例4で使用する一対の押圧用スプリングを示す斜視図。
【図26】同じくキャリパに押圧用スプリングを係止した状態を、ロータの外径側から見た斜視図。
【図27】同じくロータの径方向内側から見た斜視図。
【図28】同じくサポートにキャリパを支持した後に、保持部材にロックプレートを挿入する状態を示す斜視図。
【図29】従来構造の1例を示すロータの外径側から見た図。
【図30】図29の左半部を下方から見た図。
【符号の説明】
【0058】
1 ロータ
2、2a キャリパ
3、3a サポート
4 取付孔
5 案内ピン
6 案内孔
7 ベローズ
8 回入側係合部
9 回出側係合部
10a、10b パッド
11 プレッシャプレート
12 シリンダ部
13 爪部
14 ピストン
15 ライニング
16 ボルト
17 ブリッジ部
18 補強部
19 インナ側取付部材
20a、20b トルク受け部材
21 結合用腕部
22 通孔
23a、23b アンカ部
24a、24b 腕部
25 挿入用突部
26 第一部分
27、27a 第二部分
28、28a 引きアンカ部
29 係止突部
30 第一の内壁面
31 第二の内壁面
32 第三の内壁面
33 第四の内壁面
34 第一の凹溝
35 段部
36 段部
37 第二の段部
38 第二の凹溝
39 係合突部
40、40a パッドクリップ
41 押圧用弾性部
42 第一の内壁面
44 第三の内壁面
46 脚部
47 押圧片
48 本体部
49 段部
50 折り曲げ部
51 支持手段
52 保持部材
53 ロックプレート
54 突部
55 底板部
56 長孔
57 透孔
58 溝部
59 段部
60 本体部
61 腕部
62 折り曲げ片
63 切り欠き
64 係止突部
65 かしめ部
66 凹部
67 段部
68 押圧用スプリング
69 基部
70 脚部
71 押圧部
72 係止孔
73 段部
74 折り曲げ片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と共に回転するロータに隣接して車体に固定されるサポートと、このロータの軸方向両側に配置されると共に、このサポートによりこのロータの軸方向への移動可能に案内された一対のパッドと、キャリパとを備え、このキャリパは、上記ロータと一対のパッドとを跨ぐブリッジ部の一方に設けられた爪部と、このブリッジ部の他方に設けられてピストンが嵌装されるシリンダ部とを有するものであり、このピストンの押し出しに伴い、上記一対のパッドを上記ロータの側面に押圧して制動を行なうフローティングキャリパ型ディスクブレーキに於いて、
上記サポートが、上記ロータよりもインナ側に外れた位置に配置されるインナ側取付部材と、このインナ側取付部材の上記ロータの周方向両端部に結合された一対のトルク受け部材とから成り、これら一対のトルク受け部材のうちの少なくとも一方のトルク受け部材に、その先端部で上記ロータの径方向に屈曲した引きアンカ部を設けており、この引きアンカ部の先端部内側面である上記ロータの周方向側面と、上記各パッドのうちの少なくとも一方のパッドの一端部に設けた係合部とを、上記ロータの周方向に対向させている事を特徴とするフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。
【請求項2】
キャリパを、このキャリパと一対のパッドとの間に設けた支持手段により、各パッドに対するロータの軸方向への移動を可能にしつつ、サポートに対する係脱を可能に各パッドに支持している、請求項1に記載したフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。
【請求項3】
一対のトルク受け部材のうち、少なくとも一方のトルク受け部材の長さ方向両端部のうちの少なくとも一端部に引きアンカ部を有するアンカ部を設けると共に、このアンカ部に、ロータの径方向に互いに向かい合う二面の内壁面と、このロータの周方向に互いに向かい合う二面の内壁面とを有する凹溝を設けており、この凹溝と、一方のパッドを構成するプレッシャプレートの一端部に設けた係合部とを係合可能としている、請求項1又は請求項2に記載したフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。
【請求項4】
引きアンカ部を、少なくとも一方のトルク受け部材の、ロータに関してアウタ側のみに設けている、請求項1〜3のうち、何れか1項に記載したフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。
【請求項5】
引きアンカ部を、各トルク受け部材のうち、車両が前進する場合にロータの回転方向で後側となるトルク受け部材の、ロータに関してアウタ側のみに設けている、請求項1〜4のうち、何れか1項に記載したフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。
【請求項6】
トルク受け部材に装着したパッドクリップにより、キャリパにロータの径方向外側且つ周方向に向いた弾力を付与している、請求項1〜5のうち、何れか1項に記載したフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。
【請求項7】
キャリパの、ロータの周方向に関する両端部に一対の弾性部材を、このロータの外周を跨ぐ状態でこのキャリパに対し脱着自在に係止すると共に、これら各弾性部材をサポートに弾性的に押し付ける事により、これら各弾性部材により上記キャリパに、上記ロータの径方向外側且つ周方向に向いた弾力を付与している、請求項1〜6のうち、何れか1項に記載したフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2006−322571(P2006−322571A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147563(P2005−147563)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】