説明

ブレーキディスクロータの研削装置および研削方法

【課題】低コストで面触れを十分に低減できる小型かつ省電力のブレーキディスクロータの研削装置および研削方法を提供する。
【解決手段】研削装置10は、上砥石16、下砥石18、テーブル駆動モータ48、支持部材54、支持部材54に回転駆動力を与えるワーク駆動モータ56を備える。ブレーキディスクロータ58は、支持部材54に支持される。テーブル駆動モータ48は、ブレーキディスクロータ58の被研削部がその外周面から上砥石16および下砥石18に接触し、その後、上砥石16と下砥石18との間に進入するように支持部材54を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はブレーキディスクロータの研削装置および研削方法に関し、より特定的には、自動車の制動装置として用いられるディスクブレーキのブレーキディスクロータの研削装置および研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車軸等の回転軸を制動する装置としてディスクブレーキが使用されている。このディスクブレーキは、回転軸に固定され回転軸の回転にともなって回転するブレーキディスクロータの両面を、油圧シリンダ等によって作動するブレーキパッドで挟み付けることによってブレーキディスクロータを制動し、これによって車軸の回転にブレーキをかける構成となっている。
【0003】
ブレーキディスクロータを、たとえば自動車の車軸に取り付けて使用するとき、ブレーキディスクロータが取付部材を介して車軸に取り付けられる。具体的には、図18に示すように、まずブレーキディスクロータ1がボルト2によってハブ3に固定される。そして、ハブ3の外周にベアリング4が取り付けられた状態でハブ3が車軸5の端部に固定される。ベアリング4の内輪4aがハブ3に取り付けられ、内輪4aに同軸状に配置される外輪4bが自動車のフレーム6に取り付けられる。
【0004】
したがって、ハブ3は自動車のフレーム6に対して摺動可能となり、車軸5が回転すると、ハブ3およびブレーキディスクロータ1はベアリング4を基準として回転する。
【0005】
また、最近の自動車のディスクブレーキには、図19に示すように、内輪7aを有するベアリング7がベアリングケース7bに組み付けられ、ベアリングケース7bがフレーム6aに取り付けられる構成としたものもある。このディスクブレーキでは、ベアリングケース7bが、ベアリング7の外輪としての役割を果たしている。
【0006】
このようにディスクブレーキは、ブレーキディスクロータ1が車軸5の回転にともなってベアリング4,7を基準として回転し、回転するブレーキディスクロータ1をディスクパッド(図示せず)が両面から挟み付けることによって、車軸5を制動する。
【0007】
したがって、回転の際にブレーキディスクロータ1に回転振れが生じると、ディスクパッドがうまくブレーキディスクロータ1を挟み付けることができず、制動力が低下したり異音を発生したりするため、ブレーキディスクロータ1は、高精度に加工されることが要求される。具体的には、ブレーキディスクロータ1の面振れを小さくする必要がある。そこで、従来、ブレーキディスクロータ1の面振れを小さくするために、インフィード方式の研削装置によってブレーキディスクロータ1の両面が研削されている(たとえば、特許文献1〜3参照)。
【0008】
図20は、インフィード方式の研削装置を用いたブレーキディスクロータの従来の加工方法の一例を説明するための図である。図20(a)に示すように、従来の加工方法では、ブレーキディスクロータ1は、回転する支持部材8aに支持されるとともにクランパ8bによってクランプされた状態で、上砥石9aおよび下砥石9bの間に挿入される。その後、図20(b)に示すように、上砥石9aおよび下砥石9bがブレーキディスクロータ1を挟み込むようにブレーキディスクロータ1に接触し、ブレーキディスクロータ1の両面が研削される。これにより、ブレーキディスクロータ1の面振れの大きさが、研削加工前の面振れの大きさに対して2分の1〜3分の1程度に低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−263993号公報
【特許文献2】特開2004−243488号公報
【特許文献3】実開昭49−3180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、近年では、面振れが10μm以下のブレーキディスクロータ1の需要が多くなってきている。しかしながら、上述の加工方法によってブレーキディスクロータ1の面振れを10μm以下にするためには、研削加工前のブレーキディスクロータ1の面振れを予め20〜30μm程度に抑えておく必要がある。この場合、研削加工の前工程(旋削加工)において高精度の加工が必要となる。そのためには、旋削機(旋盤)の機能を向上させる必要があり、かつ高精度の旋削加工を維持するために旋削機の刃具を頻繁に交換する必要がある。それにより、ブレーキディスクロータ1の製造コストが大きく上昇する。
【0011】
また、上述のインフィード方式の研削装置では、ブレーキディスクロータ1の両面を上砥石9aおよび下砥石9bで挟むようにしてブレーキディスクロータ1を研削するので、上砥石9aおよび下砥石9bとブレーキディスクロータ1との接触抵抗が大きくなる。この場合、上砥石9aおよび下砥石9bを回転させるために大きな駆動力が必要となるので、大型の駆動装置を用いなければならない。それにより、研削装置を小型な構成にすることが困難になるとともに、研削装置の消費電力が上昇する。
【0012】
それゆえに、この発明の主たる目的は、低コストで面振れを十分に低減できる小型かつ省電力のブレーキディスクロータの研削装置および研削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載のブレーキディスクロータの研削装置は、研削されるべき被研削部を有するブレーキディスクロータの研削装置であって、ブレーキディスクロータを支持する支持部と、支持部に回転駆動力を与えてブレーキディスクロータを回転させる駆動手段と、第1研削位置に配置されかつ回転する上砥石と、第1研削位置よりも下方の第2研削位置に配置されかつ回転する下砥石と、被研削部がその外周面から上砥石および下砥石に接触し、その後、上砥石と下砥石との間に進入するように支持部を移動させる第1移動手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載のブレーキディスクロータの研削装置は、請求項1に記載の研削装置において、上砥石を被研削部の上面に対して進退させる第2移動手段と、下砥石を被研削部の下面に対して進退させる第3移動手段と、上砥石と上面との第1接触位置および下砥石と下面との第2接触位置を検出する検出手段と、第2移動手段および第3移動手段を制御する制御手段とをさらに備え、駆動手段は、電動モータを含み、検出手段は、電動モータの電流値に基づいて第1接触位置および第2接触位置を検出し、制御手段は、被研削部の研削加工の前に第2移動手段および第3移動手段を制御することによって上砥石を上面に接触させるとともに下砥石を下面に接触させ、検出手段によって検出される第1接触位置および第2接触位置に基づいて第1研削位置および第2研削位置を算出することを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載のブレーキディスクロータの研削装置は、請求項2に記載の研削装置において、制御手段は、第1研削位置および第2研削位置を算出した後、第2移動手段および第3移動手段を制御することによって上砥石および下砥石を第1研削位置および第2研削位置に移動させ、第1移動手段を制御することによって被研削部が外周面から第1研削位置の上砥石および第2研削位置の下砥石に接触し、その後、上砥石と下砥石との間に進入するように支持部を移動させることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載のブレーキディスクロータの研削装置は、請求項1から3のいずれかに記載の研削装置において、支持部は、駆動手段によって回転される回転部材と、ブレーキディスクロータを回転部材上に固定するためにブレーキディスクロータ上に設けられるクランパと、回転部材内に設けられ上下方向に進退可能かつクランパに係止可能に構成されるドローバとを含むことを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載のブレーキディスクロータの研削方法は、支持部によって支持されたブレーキディスクロータの被研削部を、回転する上砥石および下砥石によって研削するブレーキディスクロータの研削方法であって、支持部に回転駆動力を与えてブレーキディスクロータを回転させる工程と、上砥石を第1研削位置に配置する工程と、下砥石を第1研削位置よりも下方の第2研削位置に配置する工程と、被研削部がその外周面から上砥石および下砥石に接触し、その後、上砥石と下砥石との間に進入するように支持部を移動させる工程とを備えることを特徴とする。
【0018】
請求項1に記載のブレーキディスクロータの研削装置では、支持部によって支持されたブレーキディスクロータが駆動手段によって回転駆動される。また、上砥石が第1研削位置に配置され、下砥石が上砥石よりも下方の第2研削位置に配置される。この状態において、ブレーキディスクロータの被研削部がその外周面から上砥石および下砥石に接触し、その後、上砥石と下砥石との間に進入するように、第1移動手段によって支持部が移動される。すなわち、この研削装置では、ブレーキディスクロータの被研削部が上砥石および下砥石によって外周側から内周側に向かって徐々に研削される。この場合、上砥石および下砥石から被研削部に対して厚み方向に力が与えられることを防止することができる。それにより、ブレーキディスクロータに曲げ応力が発生することを防止することができるので、ブレーキディスクロータの面振れを十分に低減することができる。また、被研削部は上砥石および下砥石によって外周側から徐々に研削されるので、上砥石と被研削部との間および下砥石と被研削部との間に大きな接触抵抗が発生することを防止することができる。それにより、上砥石および下砥石を回転させるために必要となる駆動力を低減することができるので、上砥石および下砥石を駆動させるための手段(以下、砥石駆動手段と称する。)をより安価な構成にすることができる。また、上砥石および下砥石を回転させるために大きな駆動力が必要ないので、砥石駆動手段を小型な構成にすることができる。その結果、研削装置を小型な構成にできるとともに、研削装置の消費電力を低減することができる。また、上砥石および下砥石とブレーキディスクロータとの間の接触抵抗が低減されるので、支持部材上にブレーキディスクロータを固定するための力(クランプ力)を小さくすることができる。それにより、ブレーキディスクロータ自体の変形を十分に防止できる。請求項5に記載のブレーキディスクロータの研削方法でも同様である。
【0019】
請求項2に記載のブレーキディスクロータの研削装置では、電動モータの電流値に基づいて、検出手段によって上砥石と被研削部の上面との第1接触位置および下砥石と被研削部の下面との第2接触位置を検出することができる。この場合、第1接触位置を検出するための検出手段および第2接触位置を検出するための検出手段を別個に設ける必要がないので、研削装置の製品コストを低減することができる。また、共通の検出手段によって電動モータの電流値を検出することによって、上砥石と被研削部とが接触する際の電流値の変化および下砥石と被研削部とが接触する際の電流値の変化を同一の感度で検出することができる。この場合、被研削部の上面において第1接触位置が検出されるまでに上砥石によって研削される部分の研削深さと、被研削部の下面において第2接触位置が検出されるまでに下砥石によって研削される部分の研削深さとに差が生じることを防止することができる。それにより、第1接触位置と第2接触位置との中間位置が、被研削部の厚み方向における中心位置から大きくずれることを防止できる。したがって、第1接触位置に基づいて算出される第1研削位置と第2接触位置に基づいて算出される第2研削位置との中間位置が、被研削部の厚み方向における中心位置から大きくずれることを防止できる。すなわち、研削加工後の被研削部の厚み方向における中心位置を、理想的な位置(設計上の位置)に容易に近づけることができる。その結果、ブレーキディスクロータの寸法精度を向上させることができる。また、通常、ブレーキディスクロータを駆動するための電動モータの容量は小さいので、電動モータの電流値は、上砥石または下砥石とブレーキディスクロータとが僅かに接触した場合でも俊敏に変化する。したがって、ブレーキディスクロータを駆動するための電動モータの電流値を検出することにより、第1接触位置および第2接触位置を正確かつ迅速に検出することが可能となる。
【0020】
なお、研削加工前の被研削部の上面の面振れを予め測定し、第1接触位置よりもその面振れ分低い位置を第1研削位置として算出してもよい。この場合、被研削部の上面の面振れを確実に低減することができる。同様に、研削加工前の被研削部の下面の面振れを予め測定し、第2接触位置よりもその面振れ分高い位置を第2接触位置として算出してもよい。この場合、被研削部の下面の面振れを確実に低減することができる。
【0021】
請求項3に記載のブレーキディスクロータの研削装置では、制御手段が、上砥石を第1研削位置へ移動させるための第2移動手段の制御、下砥石を第2研削位置へ移動させるための第3移動手段の制御、および被研削部の研削加工を実行するための第1移動手段の制御を行う。すなわち、この研削装置においては、算出された第1研削位置および第2研削位置に従って被研削部の研削加工が自動的に実行される。この場合、複数のブレーキディスクロータを連続的に処理する場合でも、作業者がブレーキディスクロータ毎に第1研削位置および第2研削位置を設定して研削加工を実行する必要がないので、作業効率が向上する。
【0022】
請求項4に記載のブレーキディスクロータの研削装置では、ドローバをクランパに係止させて、ドローバによってクランパを下方に引っ張ることができる。それにより、ブレーキディスクロータがクランパによって下方に押され、回転部材上にブレーキディスクロータが固定される。この場合、回転部材上にブレーキディスクロータを固定するための装置をクランパ上に設ける必要がない。それにより、クランパの上方の空間を作業を行うための空間として利用することができるので、作業効率が向上する。また、研削装置の構成を簡単な構成にすることができるので、研削装置の製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、低コストで面振れを十分に低減できる小型かつ省電力のブレーキディスクロータの研削装置および研削方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)はこの発明の実施形態に係るブレーキディスクロータの研削装置を示す平面図であり、(b)は側面図である。
【図2】上砥石および下砥石を示す拡大図である。
【図3】ブレーキディスクロータが支持部材上に固定された状態を示す図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】図4の状態からドローバを90度回転させた状態を示す図である。
【図6】この発明の実施形態に係る研削装置の制御系を示すブロック図である。
【図7】演算部の制御動作を示すフローチャートである。
【図8】研削開始前における上砥石、下砥石およびブレーキディスクロータの動作を示す図である。
【図9】研削加工時における上砥石、下砥石およびブレーキディスクロータの動作を示す図である。
【図10】研削開始直前の上砥石、下砥石およびブレーキディスクロータの状態を示す図である。
【図11】研削加工前のブレーキディスクロータの面振れの状態を示す図である。
【図12】研削加工前における被研削部の上面の面振れと下面の面振れとの関係を示す図である。
【図13】従来のインフィード方式の研削装置を用いてブレーキディスクロータを研削する際の様子を示す図である。
【図14】この発明の実施形態に係る研削装置を用いてブレーキディスクロータを研削する際の様子を示す図である。
【図15】(a)は比較例における砥石駆動モータの電流値の変化を示すグラフであり、(b)は実施例における砥石駆動モータの電流値の変化を示すグラフである。
【図16】この発明の他の実施形態に係るブレーキディスクロータの研削装置を示す平面図である。
【図17】この発明のさらに他の実施形態に係るブレーキディスクロータの研削装置を示す平面図である。
【図18】ブレーキディスクロータが車軸に取り付けられた使用状態を示す断面図である。
【図19】さらに別の使用状態を示す断面図である。
【図20】従来の技術を示す断面図であり、(a)は研削加工前の状態を示し、(b)は研削加工時の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態に係るブレーキディスクロータの研削装置について説明する。図1を参照して、この発明の一実施形態のブレーキディスクロータの研削装置10は、立型両頭平面研削盤であり、側面視コ字状のコラム12を含む。コラム12の凹部14には、ブレーキディスクロータ58(後述)を研削する上砥石16および下砥石18が間隔をあけて同軸上に対向配置される。図2に示すように、上砥石16は、円板状の基板16aと基板16aの外周面において等間隔に設けられる複数(この実施形態では18個)の砥石セグメント16bとを含む。下砥石18は、円板状の基板18aと基板18aの外周面において等間隔に設けられる複数(この実施形態では18個)の砥石セグメント18bとを含む。砥石セグメント16bおよび砥石セグメント18bの材料としては、たとえば、CBN(立方晶窒化ホウ素)砥粒またはダイヤモンド砥粒を用いることができる。
【0026】
図1に示すように、上砥石16および下砥石18は、それぞれ砥石軸20,22によって回転可能に支持される。砥石軸20,22は、それぞれベルト24,26を介して砥石駆動モータ28,30に連動する。したがって、砥石駆動モータ28,30の回転駆動力がベルト24,26を介して砥石軸20,22に伝達され、これによって上砥石16および下砥石18が回転駆動される。砥石軸20,22には、それぞれ砥石切込装置32,34が設けられる。砥石切込装置32,34は、たとえば電動モータを含む。砥石軸20,22は、砥石切込装置32,34の駆動力に基づいて軸方向に進退する。これにより、上砥石16および下砥石18がブレーキディスクロータ58の被研削部58b(後述の図3参照)に対して進退する。
【0027】
コラム12に隣接する位置には基台36が設けられ、基台36上には調整板38が設けられる。調整板38は、3つの連結部材40を介して基台36に取り付けられる。連結部材40は、調整ネジ40aおよびロックボルト40bを含む。調整ネジ40aは、略円筒形状を有し、その上端部にフランジ部40cを有する。調整ネジ40aは、基台36上において調整板38に螺合される。固定ボルト40bは、調整ネジ40aに挿通されるとともに基台36に螺合される。調整ネジ40aのフランジ部40cとロックボルト40bの頭部との間には図示しないワッシャが設けられており、調整ネジ40aはそのワッシャを介してロックボルト40bによって下方に押される。これにより、調整ネジ40aの上下方向における移動が規制される。
【0028】
調整ネジ40aは、ロックボルト40bに対して回転可能に設けられており、調整ネジ40aを回転させることによって、調整板38における調整ネジ40aに螺合されている部分を上下に移動させることができる。したがって、3つの調整ネジ40aを選択的に回転させることにより、調整板38の水平調整を行うことができる。
【0029】
調整板38上には、一対のレール42が平行に設けられ、一対のレール42上には、スライドテーブル44が設けられる。スライドテーブル44は、レール42上を転動するコロ46を有し、レール42に沿って矢印X方向に移動可能である。また、調整板38上には、テーブル駆動モータ48が固定される。テーブル駆動モータ48の回転軸(図示せず)には、棒状の移動ネジ50の一端が固定される。移動ネジ50の他端側はスライドテーブル44に螺合される。テーブル駆動モータ48の回転駆動力によって移動ネジ50が回転し、スライドテーブル44が矢印X方向に移動する。
【0030】
図1(b)を参照して、スライドテーブル44上には、内部にベアリング52aを有する保持部材52が設けられ、保持部材52上には、筒状の回転軸54a(図3参照)を有する支持部材54が設けられる。回転軸54aは、ベアリング52aによって回転可能に保持されている。回転軸54aには、電動式のワーク駆動モータ56が連結されており、ワーク駆動モータ56の回転駆動力によって回転軸54a(支持部材54)が回転する。なお、図面の煩雑さを避けるために図1には図示していないが、ワーク駆動モータ56には、ワーク駆動モータ56に流れる電流の値を検出する電流検出部86(後述の図6参照)が設けられている。電流検出部86としては、種々の電流センサを用いることができる。
【0031】
ブレーキディスクロータ58は、クランパ60を用いて支持部材54上に固定される。図3は、支持部材54、ブレーキディスクロータ58およびクランパ60を示す一部断面図であり、図4は、図3のA−A線断面図である。なお、図1においては、図面の煩雑さを避けるために、図3および図4に示すクランプ治具62、インロー部材64、ドローバ66、油圧シリンダ68および油圧シリンダ74は図示していない。
【0032】
図3に示すように、ブレーキディスクロータ58は、中空円板状のクランプ治具62を介して支持部材54に支持されている。クランプ治具62上には、クランプ治具62よりも小さい外径を有する中空円板状のインロー部材64が設けられる。支持部材54、クランプ治具62およびインロー部材64の軸心は略一致している。インロー部材64は、ブレーキディスクロータ58の中心の孔58aに挿通されている。これにより、ブレーキディスクロータ58の軸心と支持部材54の軸心とが略一致する。なお、ブレーキディスクロータ58の外周部58bの厚みは、他の部分に比べて大きい。ブレーキディスクロータ58においては、外周部58bが、上砥石16(図2参照)および下砥石18(図2参照)によって研削されるべき被研削部となる。以下、ブレーキディスクロータ58の外周部58bを被研削部58bと称する。
【0033】
支持部材54内には、ドローバ66および油圧シリンダ68が設けられる。ドローバ66は、軸部66aおよび軸部66aの上端に設けられる係止部66bを含み、回転可能かつ上下方向(軸方向)に進退可能に設けられている。軸部66aは、支持部材54の回転軸54aに挿通されている。軸部66aには、ギア溝(ピニオンギア)70が設けられている。図4をも参照して、油圧シリンダ68には、ラックギア72が取り付けられている。ラックギア72は、軸部66aに対して垂直な方向に延びるように設けられており、油圧シリンダ68の駆動力に基づいて進退する。ラックギア72は、軸部66aのギア溝70(図3参照)に噛み合っており、ラックギア72が進退することによってドローバ66が軸周りに回転する。図4を参照して、係止部66bは、平面視において短辺が緩やかに湾曲した略長方形状を有する。図3を参照して、軸部66aの下端には、油圧シリンダ74が取り付けられている。軸部66aは、油圧シリンダ74の駆動力に基づいて上下方向(軸方向)に進退する。なお、油圧シリンダ68,74は、たとえば、図示しないコントローラに接続されており、作業者は、コントローラを操作することによって油圧シリンダ68,74を作動させることができる。
【0034】
クランパ60は、略円柱形状の内部空間76,78を有する。内部空間78は、クランパ60の下面側において開口し、内部空間76は、クランパ60内において内部空間78よりも上側に形成されている。図3および図4を参照して、内部空間76と内部空間78との間には、一対の隔壁80が設けられている。隔壁80と隔壁80との間には、内部空間76と内部空間78とを連通させる連通路82が形成されている。
【0035】
図4を参照して、連通路82は、平面視において短辺が緩やかに湾曲した略長方形状を有する。平面視において、連通路82の幅は、係止部66bの長辺の長さよりも短い。したがって、平面視において係止部66bの長辺が連通路82の長辺に対して略直交する場合には、隔壁80によって係止部66b(ドローバ66)の下方への移動が阻止される。図5を参照して、平面視において、連通路82の長辺の長さは係止部66bの長辺の長さよりも長く、連通路82の幅は係止部66bの幅よりも大きい。したがって、平面視において係止部66bの長辺が連通路82の長辺に対して略平行になる場合には、係止部66bは連通路82内を通過することができる。すなわち、ドローバ66(係止部66b)の下方への移動が可能になる。
【0036】
図3を参照して、支持部材54(クランプ治具62)上にブレーキディスクロータ58を固定する際には、作業者は、まず、孔58a内にインロー部材64が挿通されるように、クランプ治具62上にブレーキディスクロータ58を載せる。次に、油圧シリンダ74を作動させることによってドローバ66を上昇させる。具体的には、係止部66bが図3に示す位置(係止部66bと隔壁80とが接触する位置)よりも上方に位置するようにドローバ66を上昇させる。次に、図5を参照して、係止部66bが連通路82を通って内部空間76に進入するようにブレーキディスクロータ58上にクランパ60を載せる。次に、図4を参照して、油圧シリンダ68を作動させることによって、平面視において係止部66bの長辺が連通路82の長辺に対して略直交するようにドローバ66を回転させる。その後、図3を参照して、油圧シリンダ74を作動させることによってドローバ66を下降させて、係止部66bの下面を隔壁80の上面に係止させる。これにより、ドローバ66によってクランパ60が下方に引っ張られ、ブレーキディスクロータ58がクランパ60によって下方に押される。その結果、支持部材54(クランプ治具62)上にブレーキディスクロータ58が固定される。
【0037】
一方、支持部材54上からブレーキディスクロータ58を取り外す際には、まず、作業者は、油圧シリンダ74を作動させることによってドローバ66を上昇させる。次に、油圧シリンダ68を作動させることによって、図5に示すように、平面視において係止部66bの長辺が連通路82の長辺に対して略平行になるようにドローバ66を回転させる。その後、係止部66bが連通路82を通るようにクランパ60を上方に持ち上げて、ブレーキディスクロータ58上からクランパ60を取り外す。これにより、ブレーキディスクロータ58の取り外しが可能となる。
【0038】
図1(a)を参照して、コラム12には、ECU(電子制御装置)84が設けられている。図6を参照して、ECU84は、判定部88、記憶部90および演算部92を含む。判定部88および演算部92は、たとえばCPU(中央演算処理装置)およびプログラムにより実現される。記憶部90は、たとえばRAM(ランダムアクセスメモリ)およびROM(リードオンリーメモリ)を含み、種々のデータを記憶するとともに演算部92の作業領域として機能する。なお、判定部88または演算部92の一部または全てが電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0039】
砥石駆動モータ28,30、砥石切込装置32,34、テーブル駆動モータ48およびワーク駆動モータ56は、演算部92に電気的に接続され、電流検出部86は、ECU84の判定部88に電気的に接続されている。砥石駆動モータ28,30、砥石切込装置32,34、テーブル駆動モータ48およびワーク駆動モータ56は、演算部92によって制御される。以下、演算部92の制御動作について説明する。
【0040】
図7〜図10は、演算部92の制御動作を説明するための図である。図1、図6および図7を参照して、ブレーキディスクロータ58の研削を開始する際には、演算部92は、まず、ワーク駆動モータ56を起動させることによってブレーキディスクロータ58を回転させる(ステップS1)。ブレーキディスクロータ58の回転速度は、たとえば100rpm〜500rpmであることが好ましい。
【0041】
次に、図8(a)をも参照して、演算部92は、テーブル駆動モータ48を起動させることによってブレーキディスクロータ58の被研削部58bを上砥石16と下砥石18との間に進入させる(ステップS2)。なお、このとき、上砥石16と下砥石18との間隔G1(図8(a)参照)は、被研削部58bの厚みよりも大きい。
【0042】
次に、図8(b)をも参照して、演算部92は、砥石駆動モータ28および砥石切込装置32を起動させることによって、上砥石16を回転させつつ下降させる(ステップS3)。次に、演算部92は、判定部88によって上砥石16と被研削部58bとの接触位置が検出されているか否かを判別する(ステップS4)。ここで、研削装置10においては、上砥石16と被研削部58bとの接触抵抗によってワーク駆動モータ56の電流値が上昇することを利用して、上砥石16と被研削部58bとの接触位置を検出する。具体的には、まず、電流検出部86が、ワーク駆動モータ56の電流値を検出し、検出した電流値に応じた信号を判定部88に与える。次に、判定部88が、電流検出部86から与えられる信号に基づいて、ワーク駆動モータ56の電流値が所定の第1閾値を超えているか否かを判定する。第1閾値については後述する。そして、電流値が第1閾値を超えている場合には、判定部88は、上砥石16と被研削部58bとが接触していると判定し、そのときの上砥石16の位置(高さ)に応じて記憶部90の所定の記憶領域にフラグを立てる。このようにして、判定部88によって上砥石16と被研削部58bとの接触位置が検出される。演算部92は、記憶部90の所定の記憶領域にフラグが立てられた場合に、上砥石16と被研削部58bとの接触位置が検出されたと判定する。
【0043】
ステップS4において、上砥石16と被研削部58bとの接触位置が検出されていない場合、演算部92は、上砥石16と被研削部58bとの接触位置が検出されるまで上砥石16を下降させる。
【0044】
図8(c)をも参照して、ステップS4において上砥石16と被研削部58bとの接触位置が検出された場合、演算部92は、砥石切込装置32を制御することによって上砥石16を元の位置に戻す(ステップS5)。
【0045】
次に、図10をも参照して、演算部92は、ステップS4において検出された上砥石16と被研削部58bとの接触位置に基づいて、上砥石16による被研削部58bの研削位置P1を算出するとともに、算出した研削位置P1を記憶部90に記憶させる(ステップS6)。なお、研削位置P1は、少なくとも被研削部58bの上面58dよりも下方の位置として算出される。研削位置P1の算出方法については後述する。
【0046】
次に、図8(d)をも参照して、演算部92は、砥石駆動モータ30および砥石切込装置34を起動させることによって、下砥石18を回転させつつ上昇させる(ステップS7)。次に、演算部92は、判定部88によって下砥石18と被研削部58bとの接触位置が検出されているか否かを判別する(ステップS8)。下砥石18と被研削部58bとの接触位置は、上述した上砥石16と被研削部58bとの接触位置の検出方法と同様の方法によって検出される。すなわち、電流検出部86によって検出されるワーク駆動モータ56の電流値に基づいて、判定部88によって下砥石18と被研削部58bとの接触位置が検出される。なお、上述のステップS4においては、上砥石16と被研削部58bとの接触位置を検出するために第1閾値が用いられているが、ステップS8においては、下砥石18と被研削部58bとの接触位置を検出するために第2閾値が用いられる。第2閾値については後述する。
【0047】
ステップS8において、下砥石18と被研削部58bとの接触位置が検出されていない場合、演算部92は、下砥石18と被研削部58bとの接触位置が検出されるまで下砥石18を上昇させる。
【0048】
図8(e)をも参照して、ステップS8において下砥石18と被研削部58bとの接触位置が検出された場合、演算部92は、砥石切込装置34を制御することによって下砥石18を元の位置に戻す(ステップS9)。
【0049】
次に、図10をも参照して、演算部92は、ステップS8において検出された下砥石18と被研削部58bとの接触位置に基づいて、下砥石18による被研削部58bの研削位置P2を算出するとともに、算出した研削位置P2を記憶部90に記憶させる(ステップS10)。なお、研削位置P2は、少なくとも被研削部58bの下面58eよりも上方の位置として算出される。研削位置P2の算出方法については後述する。
【0050】
次に、図8(f)をも参照して、演算部92は、テーブル駆動モータ48を制御することによってブレーキディスクロータ58を後退させる(ステップS11)。具体的には、被研削部58bが上砥石16と下砥石18との間の空間よりも外側に位置するように、ブレーキディスクロータ58を後退させる。
【0051】
次に、図9(a)および図10をも参照して、演算部92は、砥石切込装置32,34を制御することによって砥石16および下砥石18をそれぞれ研削位置P1,P2に移動させる(ステップS12)。なお、このとき、上砥石16および下砥石18は回転している。また、研削位置P1と研削位置P2との間の間隔G2(図10参照)は、ブレーキディスクロータ58の被研削部58bの厚みよりも小さい。
【0052】
次に、図9(b)〜図9(d)をも参照して、演算部92は、テーブル駆動モータ48を制御することによってブレーキディスクロータ58の被研削部58bを上砥石16と下砥石18との間に進入させる(ステップS13)。このとき、ブレーキディスクロータ58は回転している。なお、ステップS13においては、図9(b)に示すように、演算部92は、まず、被研削部58bの外周面58cが上砥石16の砥石セグメント16b(図2参照)および下砥石18の砥石セグメント18b(図2参照)に接触するようにブレーキディスクロータ58を上砥石16および下砥石18側へ前進させる。その後、演算部92は、図9(c),(d)に示すように、被研削部58bを上砥石16と下砥石18との間に進入させる。そして、演算部92は、被研削部58bの上面58dおよび下面58eの研削が完了する位置までブレーキディスクロータ58を前進させる。被研削部58bの研削が完了する位置(ブレーキディスクロータ58の前進停止位置)は、記憶部90に予め記憶されている。
【0053】
次に、図9(e)をも参照して、演算部92は、砥石切込装置32,34を制御することによって上砥石16および下砥石18を元の位置に戻す(ステップS14)。最後に、図9(f)をも参照して、演算部92は、テーブル駆動モータ48を制御することによってブレーキディスクロータ58を元の位置に戻す(ステップS15)。これにより、研削装置10によるブレーキディスクロータ58の研削加工が完了する。その後、研削加工後のブレーキディスクロータ58と研削加工前の他のブレーキディスクロータとが取り換えられ、上述のステップS1からステップS15の処理が繰り返される。
【0054】
ここで、上述のステップS6およびステップS10における研削位置P1,P2の算出方法について説明する。
図11および図12は、研削加工前のブレーキディスクロータ58の面振れの状態の一例を示す図である。なお、図11には、被研削部58bにおいて、ブレーキディスクロータ58を1回転させる際に図4のB−B線で示す位置を通過する部分の状態を示している。また、図12には、ブレーキディスクロータ58を1回転させる際に、図4のB−B線で示す位置を通過する上面58d(図11参照)の外縁b1(図11参照)の軌跡(上下方向における高さの変化)、および下面58e(図11参照)の外縁b2(図11参照)の軌跡(上下方向における高さの変化)を示している。なお、図11および図12においては、被研削部58bの厚み方向における中心位置を破線C1で示している。
【0055】
図11および図12を参照して、研削加工前のブレーキディスクロータ58は、上面58d(図11参照)および下面58e(図11参照)にそれぞれ面振れS1,S2(図12参照)を有しており、図4のB−B線を通る外縁b1,b2の1周期あたりの軌跡は略サインカーブとなる。図12を参照して、上述のステップS3において上砥石16を下降させる際には、上砥石16は、上面58dの外縁b1の最大高さと同じ高さになる位置P3まで下降したときに上面58d(外縁b1)に最初に接触する。ここで、上述のステップS4において用いられる第1閾値は、上面58d(外縁b1)が上砥石16によって位置P3から深さd1分研削されたときにワーク駆動モータ56に流れる電流値に等しい。したがって、上述のステップS4においては、上砥石16による上面58dの研削深さが深さd1を超えたときに、ワーク駆動モータ56の電流値が第1閾値を超え、判定部88によって上砥石16と被研削部58b(上面58d)との接触位置が検出される。したがって、判定部88は、上下方向において位置P3よりも深さd1分低い位置P4を、上砥石16と被研削部58b(上面58d)との接触位置として検出する。第1閾値は、たとえば、深さd1が20μm〜30μmになるように設定されることが好ましい。その後、演算部92は、深さd1にさらに深さd2を加算することにより、研削位置P1を算出する。深さd2は、記憶部90に予め記憶される。深さd2は、たとえば、研削位置P1が研削加工前の被研削部58bの上面58dよりも下方の位置になるように設定される。たとえば、研削加工前の上面58dの面振れS1を予め測定し、測定された面振れS1を深さd2として設定してもよい。すなわち、接触位置P4よりも少なくとも面振れS1分低い位置を研削位置P1として算出してもよい。この場合、上面58dの面振れを確実に低減することができる。
【0056】
図12を参照して、上述のステップS7において下砥石18を上昇させる際には、下砥石18は、下面58eの外縁b2の最低高さと同じ高さになる位置P5まで上昇したときに下面58e(外縁b2)に最初に接触する。ここで、上述のステップS8において用いられる第2閾値は、下面58e(外縁b2)が下砥石18によって位置P5から深さd4分研削されたときにワーク駆動モータ56に流れる電流値に等しい。したがって、上述のステップS8においては、下砥石18による下面58eの研削深さが深さd4を超えたときに、ワーク駆動モータ56の電流値が第2閾値を超え、判定部88によって下砥石18と被研削部58b(下面58e)との接触位置が検出される。したがって、判定部88は、上下方向において位置P5よりも深さd4分高い位置P6を、下砥石18と被研削部58b(下面58e)との接触位置として検出する。第2閾値は、たとえば、深さd4が20μm〜30μmになるように設定されることが好ましい。その後、演算部92は、深さd4にさらに深さd5を加算することにより、研削位置P2を算出する。深さd5は、記憶部90に予め記憶される。深さd5は、たとえば、研削位置P2が研削加工前の被研削部58bの下面58eよりも上方の位置になるように設定される。たとえば、研削加工前の下面58eの面振れS2を予め測定し、測定された面振れS2を深さd5として設定してもよい。すなわち、接触位置P5よりも少なくとも面振れS2分高い位置を研削位置P2として算出してもよい。この場合、下面58eの面振れを確実に低減することができる。なお、上述の第1閾値および第2閾値は、研削加工前の被研削部58bの状態(面振れ)に応じて適宜設定され、深さd1および深さd4が互いに等しくなるように設定されることが好ましいが、深さd1および深さd4が異なる値になるように設定されてもよい。
【0057】
この実施形態では、支持部材54、クランパ60、クランプ治具62およびドローバ66が支持部に含まれ、研削位置P1が第1研削位置に相当し、研削位置P2が第2研削位置に相当し、ワーク駆動モータ56が駆動手段に相当し、テーブル駆動モータ48および移動ネジ50が第1移動手段として機能し、砥石切込装置32が第2移動手段に相当し、砥石切込装置34が第3移動手段に相当し、位置P4が第1接触位置に相当し、位置P6が第2接触位置に相当し、電流検出部86および判定部88が検出手段として機能し、演算部92が制御手段に相当し、支持部材54およびクランプ治具62が回転部材に含まれる。
【0058】
次に、従来のインフィード方式の研削装置と比較しつつ、研削装置10の作用効果を説明する。図13は、従来のインフィード方式の研削装置を用いてブレーキディスクロータを研削する際の様子を示す図である。なお、図13は、図20(b)において、ブレーキディスクロータ1、上砥石9aおよび下砥石9bを矢印X1方向に見た図である。また、図13(b)は、図13(a)の状態からブレーキディスクロータ1を180度回転させた状態を示す。
【0059】
図13に示すように、従来のインフィード方式の研削装置では、上砥石9aおよび下砥石9bは、矢印Y1,Y2で示すように、ブレーキディスクロータ1を上下から挟むようにしてブレーキディスクロータ1の上面および下面を研削する。ここで、研削加工前のブレーキディスクロータ1は大きな面振れ(たとえば、50μm程度)を有する。そのため、研削開始時には、ブレーキディスクロータ1の上面および上砥石9aの接触位置と、ブレーキディスクロータ1の下面および下砥石9bの接触位置とは、ブレーキディスクロータ1の周方向において(ブレーキディスクロータ1の軸心方向から見た場合に)互いに大きく離間してしまう。この場合、上砥石9aからブレーキディスクロータ1に対して厚み方向に与えられる力F1(F2)と下砥石9bからブレーキディスクロータ1に対して厚み方向に与えられる力F3(F4)とは、ブレーキディスクロータ1の周方向において互いに大きく離間しかつ逆方向の力となる。そのため、ブレーキディスクロータ1に大きな曲げ応力が生じる。この曲げ応力は、研削終了後に上砥石9aおよび下砥石9bがブレーキディスクロータ1から離れたときに、ブレーキディスクロータ1自体の歪みとなって表れる。その結果、ブレーキディスクロータ1の面振れを十分に低減することができない。
【0060】
一方、図14に示すように、この実施形態の研削装置10では、被研削部58bの研削時には、上砥石16および下砥石18がそれぞれ研削位置P1,P2に配置(固定)される。そして、被研削部58bは、外周面58cから上砥石16および下砥石18に接触し、その後、上砥石16と下砥石18との間に進入するようにして研削される。すなわち、研削装置10においては、被研削部58bは、上砥石16および下砥石18によって外周側から内周側に向かって徐々に研削される。この場合、上砥石16および下砥石18からブレーキディスクロータ58(被研削部58b)に対して厚み方向に力が与えられることを防止することができる。それにより、ブレーキディスクロータ58に曲げ応力が発生することを防止することができるので、ブレーキディスクロータ58の面振れを十分に低減することができる。また、この場合、上砥石9aおよび下砥石9bがブレーキディスクロータ1の両面の全体を同時に研削する従来のインフォード方式の研削装置に比べて、上砥石16と被研削部58bとの間および下砥石18と被研削部58bとの間に大きな接触抵抗が発生することを防止することができる。それにより、上砥石16および下砥石18を回転させるために必要となる駆動力を低減することができるので、砥石駆動モータ28,30としてより安価なモータを用いることができる。また、上砥石16および下砥石18を回転させるために大きな駆動力が必要ないので、砥石駆動モータ28,30を小型な構成にすることができる。その結果、研削装置10を小型な構成にできるとともに、研削装置10の消費電力を低減することができる。
【0061】
また、上砥石16および下砥石18とブレーキディスクロータ58との間の接触抵抗が低減されるので、支持部材54上にブレーキディスクロータ58を固定するための力(クランプ力)を小さくすることができる。それにより、ブレーキディスクロータ58自体の変形を十分に防止できる。
【0062】
また、この実施形態の研削装置10においては、研削位置P1は被研削部58bの上面58dよりも下方に位置し、研削位置P2は被研削部58bの下面58eよりも上方に位置するので、被研削部58bの面振れを確実に低減することができる。
【0063】
また、この実施形態の研削装置10においては、電流検出部86によって検出されるワーク駆動モータ56の電流値に基づいて、判定部88によって上砥石16と被研削部58bとの接触位置および下砥石18と被研削部58bとの接触位置を検出することができる。この場合、上砥石16と被研削部58bとの接触位置を検出するための検出手段および下砥石18と被研削部58bとの接触位置を検出するための検出手段を別個に設ける必要がないので、研削装置10の製品コストを低減することができる。
【0064】
また、共通の電流検出部86によってワーク駆動モータ56の電流値を検出することによって、上砥石16と被研削部58bとが接触する際の電流値の変化および下砥石18と被研削部58bとが接触する際の電流値の変化を同一の感度で検出することができる。この場合、被研削部58bの上面58dにおいて接触位置P4(図12参照)が検出されるまでに上砥石16によって研削される部分の研削深さd1(図12参照)と、下面58eにおいて接触位置P6(図12参照)が検出されるまでに下砥石18によって研削される部分の研削深さd4(図12参照)とに差が生じることを防止することができる。それにより、接触位置P4と接触位置P6との中間位置が、被研削部58bの厚み方向における中心位置C1(図12参照)から大きくずれることを防止できる。したがって、接触位置P4に基づいて算出される研削位置P1と接触位置P6に基づいて算出される研削位置P2との中間位置が、研削加工後の被研削部58bの厚み方向における中心位置から大きくずれることを防止できる。すなわち、研削加工後の被研削部58bの厚み方向における中心位置を、理想的な位置(設計上の位置)に容易に近づけることができる。その結果、ブレーキディスクロータ58の寸法精度を向上させることができる。
【0065】
なお、砥石駆動モータ28,30の電流値を検出することによって上砥石16および下砥石18と被研削部58bとの接触位置を検出することもできるが、ワーク駆動モータ56の電流値を検出することが好ましい。通常、ワーク駆動モータ56の容量は砥石駆動モータ28および砥石駆動モータ30の容量に比べてかなり小さい(10分の1〜15分の1程度)ので、ワーク駆動モータ56の電流値の方が砥石駆動モータ28,30の電流値よりも変化しやすい。そのため、ワーク駆動モータ56の電流値は、上砥石16または下砥石18とブレーキディスクロータ58とが僅かに接触した場合でも俊敏に変化する。したがって、ワーク駆動モータ56の電流値を検出することにより、上砥石16および下砥石18と被研削部58bとの接触位置を正確かつ迅速に検出することが可能となる。
【0066】
また、研削装置10においては、演算部92が、上砥石16および下砥石18を被研削部58bに接触させるための砥石切込装置32,34の制御、研削位置P1,P2の算出、上砥石16および下砥石18を研削位置P1,P2へ移動させるための砥石切込装置32,34の制御、ならびに被研削部58bの研削加工を実行するためのテーブル駆動モータ48の制御を行う。すなわち、研削装置10においては、演算部92の制御によって研削位置P1,P2が自動的に算出されるとともに被研削部58bの研削加工が自動的に実行される。この場合、複数のブレーキディスクロータを連続的に処理する場合でも、作業者がブレーキディスクロータ毎に研削位置P1,P2を設定して研削加工を実行する必要がないので、作業効率が向上する。
【0067】
また、研削装置10においては、支持部材54に設けられたドローバ66によってクランパ60を下方に引っ張ることによって、支持部材54(クランプ治具62)上にブレーキディスクロータ58を固定している。そのため、支持部材54上にブレーキディスクロータ58を固定するための装置をクランパ60上に設ける必要がない。この場合、クランパ60の上方の空間を作業を行うための空間として利用することができるので、作業効率が向上する。また、研削装置10の構成を簡単な構成にすることができるので、研削装置10の製造コストを低減することができる。
【0068】
以下、従来のインフィード方式の研削装置を用いてブレーキディスクロータを研削した場合を比較例として、この実施形態の研削装置10を用いてブレーキディスクロータを研削した場合(実施例)と比較する。
【0069】
比較例においては、図20で説明した方法でブレーキディスクロータを研削した。上砥石および下砥石としては、図2の上砥石16および下砥石18と同様の砥石を用いた。砥石セグメントの材料としては、CBN砥粒を用いた。また、上砥石および下砥石の回転速度はそれぞれ1000rpmとし、ブレーキディスクロータの回転速度は200rpmとした。上砥石および下砥石は、図1の砥石軸20,22、ベルト24,26および砥石駆動モータ28,30と同様の構成要素を用いて回転させた。ブレーキディスクロータは、図1のベアリング52aおよびワーク駆動モータ56と同様の構成要素を用いて回転させた。また、図1の砥石切込装置32,34と同様の構成要素を用いて上砥石および下砥石を上下動させた。なお、比較例では、図7のステップS4およびステップS8における方法と同様の方法で上砥石および下砥石とブレーキディスクロータとの接触位置を検出し、その検出した接触位置を上砥石および下砥石の研削開始位置とした。
【0070】
実施例においては、砥石セグメント16bおよび砥石セグメント18bの材料として、CBN砥粒を用いた。上砥石16および下砥石18の回転速度はそれぞれ1000rpmとし、ブレーキディスクロータの回転速度は200rpmとした。
【0071】
比較例および実施例共に、外径(直径)が296mmのブレーキディスクロータを用いた。比較例では、8個のブレーキディスクロータを研削し、実施例では、20個のブレーキディスクロータを研削した。ブレーキディスクロータの上面および下面における研削量(図12の深さd2および深さd5に相当)は、それぞれ0.12mmに設定した。
【0072】
比較例および実施例の研削結果(面振れの変化)を表1および表2にそれぞれ示す。なお、表1および表2には、ブレーキディスクロータの上面の面振れ(図12の面振れS1参照)が示されている。また、表1および表2における平均値は、小数点以下を四捨五入した値である。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
表1に示すように、比較例では、研削加工前のブレーキディスクロータの面振れが大きい場合には、面振れを十分に低減することができなかった。一方、表2に示すように、実施例では、研削加工前のブレーキディスクロータの面振れが大きい場合でも、面振れを十分に低減することができた。特に、研削加工前の面振れが100μmを超えるような場合でも、面振れを10μm未満に低減させることができた。
【0076】
上述の比較例および実施例では、ブレーキディスクロータの研削加工と同時に、砥石駆動モータの電流値を測定した。その結果を図15に示す。図15(a)は、比較例における測定結果の一例を示し、図15(b)は、実施例における測定結果の一例を示す。また、図15において、実線は、上砥石を駆動する砥石駆動モータの電流値を示し、点線は、下砥石を駆動する砥石駆動モータの電流値を示す。図15(a)に示す比較例においては、期間T1においてブレーキディスクロータの研削加工が行われている。期間T1よりも前のピークA1,A2は、上砥石および下砥石の研削開始位置を算出するために上砥石および下砥石をブレーキディスクロータに接触させたときに生じたものである。図15(b)に示す実施例にいては、期間T2においてブレーキディスクロータの研削加工が行われている。期間T2よりも前のピークA3,A4は、上砥石16および下砥石18の研削位置P1,P2(図12参照)を算出するために上砥石16および下砥石18をブレーキディスクロータに接触させたときに生じたものである。
【0077】
図15に示すように、比較例においては、期間T1において砥石駆動モータの電流値が大幅に上昇しているが、実施例においては、期間T2における砥石駆動モータ28,30の電流値の上昇幅が小さい。このことから、比較例においては、上砥石および下砥石とブレーキディスクロータとの間に大きな接触抵抗が発生しているが、実施例においては、上砥石16および下砥石18とブレーキディスクロータとの間に大きな接触抵抗が発生していないことが分かる。したがって、実施例で用いた研削装置10においては、上砥石16および下砥石18を回転させるために大きな駆動力を要しない。そのため、砥石駆動モータ28,30として高機能のモータを用いる必要がなく、安価なモータを用いることができる。それにより、研削装置10の製品コストを低減することが可能となる。
【0078】
なお、上述の実施形態では、演算部92は、ステップS13において被研削部58bの上面58dおよび下面58eの研削が完了する位置までブレーキディスクロータ58を前進させた後、ステップS14において上砥石16および下砥石18を元の位置に戻しているが、ステップS13よりも後でステップS14よりも前に他の処理を実施してもよい。たとえば、ステップS13が終了した後に、上砥石16を下降させるとともに下砥石18を上昇させることによって、上面58dおよび下面58eの仕上げ研削加工を行ってもよい。また、ステップS13が終了した後、または上述の仕上げ研削加工の後にスパークアウトを行ってもよい。なお、スパークアウトとは、上砥石16および下砥石18の上下方向における位置を固定した状態で、上砥石16および下砥石18の回転を所定時間維持することをいう。
【0079】
また、上述の実施形態では、図1に示したように、矢印X方向においてブレーキディスクロータ58を前進させることによってブレーキディスクロータ58を上砥石16と下砥石18との間に進入させているが、ブレーキディスクロータ58の移動方法は上記の例に限定されない。以下、図面を用いて説明する。
【0080】
図16は、この発明の他の実施形態に係る研削装置10aを示す平面図である。図16に示す研削装置10aが図1に示した研削装置10と異なるのは以下の点である。
【0081】
図16に示すように、研削装置10aにおいては、調整板38上に一対のレール42が矢印Z方向(平面視において図1の矢印X方向に直交する方向)に延びるように設けられている。スライドテーブル44は、レール42上を転動するコロ46を有し、レール42に沿って矢印Z方向に移動可能である。また、調整板38上には、テーブル駆動モータ48が固定される。テーブル駆動モータ48の回転軸(図示せず)には、棒状の移動ネジ50が固定される。移動ネジ50の先端側はスライドテーブル44に螺合される。テーブル駆動モータ48の回転駆動力によって移動ネジ50が回転し、スライドテーブル44が矢印Z方向に移動する。スライドテーブル44上においてコラム12側には、図1の保持部材52および図1の支持部材54と同様の保持部材(図示せず)および支持部材(図示せず)が設けられ、その支持部材上にブレーキディスクロータ58が固定されている。このような構成において、スライドテーブル44を矢印Z方向に移動させることによって、ブレーキディスクロータ58を上砥石16と下砥石18との間に進入させることができる。
【0082】
図17は、この発明のさらに他の実施形態に係る研削装置10bを示す平面図である。図17に示す研削装置10bが図1に示した研削装置10と異なるのは以下の点である。
【0083】
図17に示すように、研削装置10bにおいては、基台36上に回転テーブル94が回転可能に設けられている。基台36内には、テーブル回転モータ96が設けられ、テーブル回転モータ96の回転軸98に回転テーブル94が固定されている。テーブル回転モータ96の回転駆動力が回転軸98を介して回転テーブル94に伝達され、回転テーブル94が矢印R方向に回転する。回転テーブル94上において、回転テーブル94の軸心に対して偏心するように図1の保持部材52および図1の支持部材54と同様の保持部材(図示せず)および支持部材(図示せず)が設けられ、その支持部材上にブレーキディスクロータ58が固定されている。このような構成において、回転テーブル94を矢印R方向に回転させることによって、ブレーキディスクロータ58を上砥石16と下砥石18との間に進入させることができる。この実施形態では、回転テーブル94、テーブル回転モータ96および回転軸98が第1移動手段として機能する。
【0084】
また、上述の実施形態においては、ワーク駆動モータ56の電流値の変化に基づいて上砥石16と被研削部58bとの接触位置および下砥石18と被研削部58bとの接触位置を検出しているが、上砥石16と被研削部58bとの接触位置および下砥石18と被研削部58bとの接触位置を検出する方法は、上記の例に限定されない。たとえば、ワーク駆動モータ56の駆動トルクまたは砥石駆動モータ28,30の駆動トルクの変化に基づいて上砥石16と被研削部58bとの接触位置および下砥石18と被研削部58bとの接触位置を検出してもよい。この場合、ワーク駆動モータ56または砥石駆動モータ28,30にトルクセンサが設けられる。
【0085】
また、上述の実施形態においては、研削位置P1,P2を算出するために上砥石16を被研削部58bに接触させた後に、下砥石18を被研削部58bに接触させているが、研削位置P1,P2の算出方法は上述の例に限定されない。たとえば、上砥石16および下砥石18を同時に被研削部58bに接触させて研削位置P1,P2を算出してもよく、下砥石18を被研削部58bに接触させた後に、上砥石16を被研削部58bに接触させて研削位置P1,P2を算出してもよい。
【0086】
なお、上述の実施形態では、研削位置P1は被研削部58bの上面58dよりも下方に位置し、研削位置P2は被研削部58bの下面58eよりも上方に位置しているが、上砥石16および下砥石18の研削位置は上記の例に限定されない。たとえば、上砥石16の研削位置が図12の位置P7(上面58dの外縁b1が最も低くなる位置)よりも上方であってもよく、下砥石18の研削位置が図12の位置P8(下面58eの外縁b2が最も高くなる位置)よりも下方であってもよい。
【符号の説明】
【0087】
10,10a,10b 研削装置
12 コラム
16 上砥石
18 下砥石
20,22 砥石軸
28,30 砥石駆動モータ
32,34 砥石切込装置
36 基台
38 調整板
48 テーブル駆動モータ
50 移動ネジ
54 支持部材
56 ワーク駆動モータ
58 ブレーキディスクロータ
58b 被研削部
58d 上面
58e 下面
60 クランパ
66 ドローバ
84 ECU
94 回転テーブル
96 テーブル回転モータ
98 回転軸
P1,P2 研削位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削されるべき被研削部を有するブレーキディスクロータの研削装置であって、
前記ブレーキディスクロータを支持する支持部と、
前記支持部に回転駆動力を与えて前記ブレーキディスクロータを回転させる駆動手段と、
第1研削位置に配置されかつ回転する上砥石と、
前記第1研削位置よりも下方の第2研削位置に配置されかつ回転する下砥石と、
前記被研削部がその外周面から前記上砥石および前記下砥石に接触し、その後、前記上砥石と前記下砥石との間に進入するように前記支持部を移動させる第1移動手段とを備える、ブレーキディスクロータの研削装置。
【請求項2】
前記上砥石を前記被研削部の上面に対して進退させる第2移動手段と、
前記下砥石を前記被研削部の下面に対して進退させる第3移動手段と、
前記上砥石と前記上面との第1接触位置および前記下砥石と前記下面との第2接触位置を検出する検出手段と、
前記第2移動手段および前記第3移動手段を制御する制御手段とをさらに備え、
前記駆動手段は、電動モータを含み、
前記検出手段は、前記電動モータの電流値に基づいて前記第1接触位置および前記第2接触位置を検出し、
前記制御手段は、前記被研削部の研削加工の前に前記第2移動手段および前記第3移動手段を制御することによって前記上砥石を前記上面に接触させるとともに前記下砥石を前記下面に接触させ、前記検出手段によって検出される前記第1接触位置および前記第2接触位置に基づいて前記第1研削位置および前記第2研削位置を算出する、請求項1に記載のブレーキディスクロータの研削装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1研削位置および前記第2研削位置を算出した後、前記第2移動手段および前記第3移動手段を制御することによって前記上砥石および前記下砥石を前記第1研削位置および前記第2研削位置に移動させ、前記第1移動手段を制御することによって前記被研削部が前記外周面から前記第1研削位置の前記上砥石および前記第2研削位置の前記下砥石に接触し、その後、前記上砥石と前記下砥石との間に進入するように前記支持部を移動させる、請求項2に記載のブレーキディスクロータの研削装置。
【請求項4】
前記支持部は、前記駆動手段によって回転される回転部材と、前記ブレーキディスクロータを前記回転部材上に固定するために前記ブレーキディスクロータ上に設けられるクランパと、前記回転部材内に設けられ上下方向に進退可能かつ前記クランパに係止可能に構成されるドローバとを含む、請求項1から3のいずれかに記載のブレーキディスクロータの研削装置。
【請求項5】
支持部によって支持されたブレーキディスクロータの被研削部を、回転する上砥石および下砥石によって研削するブレーキディスクロータの研削方法であって、
支持部に回転駆動力を与えてブレーキディスクロータを回転させる工程と、
上砥石を第1研削位置に配置する工程と、
下砥石を前記第1研削位置よりも下方の第2研削位置に配置する工程と、
前記被研削部がその外周面から前記上砥石および前記下砥石に接触し、その後、前記上砥石と前記下砥石との間に進入するように前記支持部を移動させる工程とを備える、ブレーキディスクロータの研削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−156606(P2011−156606A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18630(P2010−18630)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【出願人】(594050670)日清工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】