説明

プリント基板の製造方法及びこれを用いたプリント基板

【課題】アウトグロースが発生しても、電気的な特性が安定し、さらに基板表面の平坦化を向上することができ、厚銅のパターンを形成する場合であってもこれに合わせた高さのレジストが不要となるプリント基板の製造方法及びこれを用いたプリント基板を提供する。
【解決手段】支持板上に金属層を形成し、金属層上にマスク層を形成し、マスク層高さまでめっきされた柄部7と、マスク層高さよりも高く盛り上げてめっきされ、一部がマスク層の表面にはみ出したアウトグロース8aを有する傘部8とを含むパターンめっき6を形成し、支持板、薄胴層及びパターンめっき6の三者からなる導電回路板に前記絶縁基材10を積層してパターンめっき6が前記絶縁基材10に埋設された基板中間体を形成し、前記支持板及び前記金属層を除去し、前記導電パターンの前記柄部7が除去されるまで機械的に研磨し、前記露出面上での前記導電パターンの線幅を増大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写法を用いたプリント基板の製造方法及びこれを用いたプリント基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レジストで予めパターンとなる部分を露出させておいて、この部分にめっきを施した場合、めっき高さがレジスト高さよりも高くなると、レジストの上にめっきが広がっていく。このように、予めレジストで設定したパターンの幅を超えて、レジスト上に盛り上がっためっき部分をアウトグロースという。このようなアウトグロースは特許文献1に開示されている。
【0003】
一方で、基板表面を平滑にするために、パターンを絶縁基材に埋め込んで基板を形成する転写法が知られている(例えば特許文献2参照)。この転写法は、めっきで形成されたパターンと絶縁樹脂とを圧着させる工程を含むものである。
【0004】
しかしながら、上記アウトグロースが発生している基板中間体と絶縁樹脂とを圧着させ、転写法により基板を形成する場合、パターンとしてのめっきの断面形状が複雑となっているので、電気特性の予測が困難となり、取扱い性が悪くなってしまう。アウトグロースを発生させないためには、レジストを高くすればよいが、厚銅のめっきを施す場合は、その高さのレジストを形成することが困難な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−217755号公報
【特許文献2】特開平5−37157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであって、アウトグロースが発生しても、電気的な特性が安定し、さらに基板表面の平坦化を向上することができ、厚銅のパターンを形成する場合であってもこれに合わせた高さのレジストが不要となるプリント基板の製造方法及びこれを用いたプリント基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、支持板上に金属層を形成し、該金属層上にレジスト層を形成し、導電パターンとなるべき溝を露出域として該露出域の前記レジスト層が除去されたマスク層を形成し、前記露出域にめっき処理を施してパターンめっきを形成するに際し、前記溝の横断面でみて前記マスク層高さまでめっきされた柄部と、前記マスク層高さよりも高く盛り上げてめっきされ、一部が前記マスク層の表面にはみ出したアウトグロースを有する傘部とを含むパターンめっきを形成し、前記支持板、前記金属層及び前記パターンめっきの三者からなる導電回路板に前記絶縁基材を積層して前記パターンめっきが前記絶縁基材に埋設された基板中間体を形成し、前記基板中間体から前記支持板及び前記金属層を除去して前記導電パターン及び前記絶縁基材が露出する露出面を形成し、前記露出面を前記パターンめっきの前記柄部が除去されるまで機械的に研磨し、前記露出面上での前記導電パターンの線幅を前記溝幅よりも増大させることを特徴とするプリント基板の製造方法を提供する。
【0008】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記マスク層は、前記めっき処理の後に除去されることを特徴としている。
請求項3の発明では、請求項1の発明において、前記マスク層は、前記積層時に前記導電回路板の一部としてそのまま残っていることを特徴としている。
また、請求項4の発明では、請求項1に記載のプリント基板の製造方法で製造されたプリント基板を提供する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、柄部を除去するとともにアウトグロースが露出する位置までパターン露出面を機械的に研磨して平坦化するため、この後の工程におけるソルダレジストでの被覆性が向上し、さらに部品実装も安定して行うことができる。また、アウトグロースが発生しても、機械的な研磨によりパターンめっきの断面形状が複雑なものとはならないので、電気的な特性が安定する。また、厚銅のパターンめっきを形成する場合であっても、これに合わせた高さのレジスト層(マスク層)が不要となり、厚銅高さを自由に設定できる。
【0010】
請求項2の発明によれば、アウトグロースと金属層とで挟まれた部分のマスク層は、一般的に剥離液が届きにくいため、マスク層が一部残った場合でも、この残ったマスク層を機械的な研磨で確実に除去することができる。したがって、一部残ったマスク層が積層後に剥がれ落ちていわゆるボイド(樹脂の欠損)となる現象を確実に防止できる。
【0011】
請求項3の発明によれば、マスク層がいわゆる永久レジストである場合でも、このマスク層は柄部とともに機械的な研磨で確実に除去される。したがって、マスク層とめっきとの間で剥離が生じ、品質に影響が与えられることを防止できる。
請求項4の発明によれば、上記効果を有するプリント基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るプリント基板の製造方法を順番に示す概略図である。
【図2】本発明に係るプリント基板の製造方法を順番に示す概略図である。
【図3】本発明に係るプリント基板の製造方法を順番に示す概略図である。
【図4】本発明に係るプリント基板の製造方法を順番に示す概略図である。
【図5】本発明に係るプリント基板の製造方法を順番に示す概略図である。
【図6】本発明に係るプリント基板の製造方法を順番に示す概略図である。
【図7】本発明に係るプリント基板の製造方法を順番に示す概略図である。
【図8】本発明に係るプリント基板の製造方法を順番に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、支持板1上に金属層2を形成し、その上にレジスト層3を形成する。支持板1は、転写基材としての導電性のあるSUS板等で形成されている。金属層2は、下地となるめっきであり、例えば電解銅めっきを12μm施したものである。レジスト層3は、ドライフィルム等で形成されている。そして、図2に示すように、露光現像装置等(不図示)を用いて所定の位置のレジスト層3を除去し、マスク層4を形成する。レジスト層3の除去は、導電パターンとなるべき部分(溝)を露出域5として、この露出域5における金属層2の表面が露出するように行われる。したがって、金属層2の表面には、マスク層4と露出域5が形成されている。
【0014】
次に、図3に示すように、露出域5にめっき処理が施される。したがって、露出域5にはパターンめっき6が配される。パターンめっき6は上述した溝の横断面で見て、柄部7と傘部8とを有している。柄部7は、マスク層4の高さまでめっきされた部分である。傘部8は、マスク層3の高さを超えてめっきされた部分である。パターンめっき6は、このようにマスク層3よりも高く形成されるため、傘部8はマスク層3の表面にまで広がっている。このマスク層3の表面上に盛られた部分がアウトグロース8aである。したがって、アウトグロース8aは傘部8の一部を形成している。そして、図4に示すように、マスク層3を剥離液等で除去する。これにより、導電回路板9が形成される。すなわち、導電回路板9は、支持板1と、金属層2と、パターンめっき6で形成されている。ただし、後述するように、マスク層3として永久レジストを用いた場合は、マスク層3も導電回路板9を形成する一つの要素となる。
【0015】
次に、図5に示すように、導電回路板9と絶縁基材10とを用意し、図6に示すように、これらを圧接させる。図では、基板両面にパターンが形成された両面板を作成する場合を例にして説明している。すなわち、プリプレグ等の絶縁基材10を挟んで、両側に導電回路板9を配する。このとき、導電回路板9のめっき処理面であるパターンめっき6が形成された側の面を絶縁基材10側に向ける。そして、両者を圧接することにより、図6に示すように導電回路板9と絶縁基材10が積層され、基板中間体13が形成される。積層時、絶縁基材10はパターンめっき6同士の間、さらにアウトグロース8aと金属層2との間に入り込む。したがって、パターンめっき6は絶縁基材10に埋設される。なお、基板の片面にパターンが形成された片面板の場合は、絶縁基材10の片側にのみ導電回路板9を配して積層する。このようにして形成された両面板及び片面板は、多層板の中間層及び最外層としても当然に利用可能である。
【0016】
そして、図7に示すように、基板中間体13から支持板1及び金属層2を除去して導電パターン11及び絶縁基材10が露出する露出面14を形成する。導電パターン11は、柄部7が露出している面である。そして、図8に示すように、露出面14(図では両面)を機械的に研磨して平坦化する。これにより、この後の工程におけるソルダレジストでの被覆性が向上し、さらに部品実装も安定して行うことができる。また、物理研磨は、柄部7を全て除去するように、そしてアウトグロース8aが露出する位置まで行われる。すなわち、導電パターン11の線幅は、アウトグロース8aが露出するために増大される。これにより、アウトグロース8aが発生しても、機械的研磨によりパターンめっき6の断面形状が複雑なものとはなっていないので、製造されたプリント基板12の電気的な特性が安定する。このようにアウトグロース8aをあえて設けるため、厚銅のパターンめっき6を形成する場合であっても、これに合わせた高さのレジスト層3(マスク層4)が不要となり、厚銅高さを自由に設定できる。
【0017】
機械的な研磨としては、不織布系バフロールを用いた湿式研磨、セラミックバフロールを用いた湿式研磨、研磨ベルトを用いた湿式研磨(いわゆるベルトサンダー)等を適用できる。
【0018】
また、上述した例では、マスク層4がめっき処理の後に除去されるものを示した。アウトグロース8aと金属層2とで挟まれた部分のマスク層3は、一般的に剥離液が届きにくい。このため、マスク層3が一部残っていても、この残ったマスク層3を物理研磨で確実に除去することができる。したがって、一部残ったマスク層3が積層後に剥がれ落ちていわゆるボイド(樹脂の欠損)となる現象を確実に防止できる。
【0019】
一方で、上述したように、マスク層3として永久レジストを用い、絶縁基材10との積層時に導電回路板9の一部としてそのまま残していてもよい。このような場合であっても、残ったマスク層3は柄部7とともに機械研磨で確実に除去される。したがって、マスク層3とパターンめっき6との間で剥離が生じ、品質に影響が与えられることを防止できる。
【符号の説明】
【0020】
1 支持板
2 金属層
3 レジスト層
4 マスク層
5 露出域
6 パターンめっき
7 柄部
8 傘部
8a アウトグロース
9 導電回路板
10 絶縁基材
11 パターン
12 プリント基板
13 基板中間体
14 露出面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持板上に金属層を形成し、
該金属層上にレジスト層を形成し、
導電パターンとなるべき溝を露出域として該露出域の前記レジスト層が除去されたマスク層を形成し、
前記露出域にめっき処理を施してパターンめっきを形成するに際し、前記溝の横断面でみて前記マスク層高さまでめっきされた柄部と、前記マスク層高さよりも高く盛り上げてめっきされ、一部が前記マスク層の表面にはみ出したアウトグロースを有する傘部とを含むパターンめっきを形成し、
前記支持板、前記金属層及び前記パターンめっきの三者からなる導電回路板に前記絶縁基材を積層して前記パターンめっきが前記絶縁基材に埋設された基板中間体を形成し、
前記基板中間体から前記支持板及び前記金属層を除去して前記導電パターン及び前記絶縁基材が露出する露出面を形成し、
前記露出面を前記パターンめっきの前記柄部が除去されるまで機械的に研磨し、前記露出面上での前記導電パターンの線幅を前記溝幅よりも増大させることを特徴とするプリント基板の製造方法。
【請求項2】
前記マスク層は、前記めっき処理の後に除去されることを特徴とする請求項1に記載のプリント基板の製造方法。
【請求項3】
前記マスク層は、前記積層時に前記導電回路体の一部としてそのまま残っていることを特徴とする請求項1に記載のプリント基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載のプリント基板の製造方法で製造されたプリント基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−228605(P2011−228605A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99519(P2010−99519)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000243906)株式会社メイコー (34)
【Fターム(参考)】