説明

ポリイミド金属積層体の製造方法

【課題】レーザー加工によるビア形成工程において基板樹脂内に発生するストレスに起因して発生する基板樹脂のダメージを防止し、信頼性の高い回路基板を得る。
【解決手段】ポリイミドフィルム16,17の両側に金属層2を有し、ポリイミドフィルムの両側の金属層をビア104を介して電気的に接続したポリイミド金属積層体51の製造方法であり、レーザーを用いて、ポリイミドフィルムにビアを形成するビア形成工程、レーザーでポリイミドフィルム内に発生したストレスをポリイミドのβ緩和により低減させるストレス緩和工程、湿式化学デスミア処理を行なう化学デスミア工程、ビア形成工程で形成したビアを介して、ポリイミドフィルムの両側を導通させる導通工程、とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドフィルムの両面に直接または接着剤層を介して金属層を有し、ポリイミドフィルムにレーザーを用いてビアを形成し、ポリイミドフィルムの両側がビアを介して電気的に接続されたポリイミド金属積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の電子機器の小型化、高密度実装化、高性能化の要求に対し、導体パターンの細線化、部品孔等の孔の小孔化、ランド、パッド等の小径化および配線板のフレキシブル化及び多層化のために、両面金属積層体にスルーホールを設けるかブラインドビアホールを設けたフレキシブル両面基板が提供されている。
【0003】
スルーホールを設ける場合はドリルやパンチングなどによって両面の銅箔およびポリイミド層に貫通孔が形成され、ブラインドビアホールを設ける場合は片側の金属箔にエッチング加工にて孔加工を施した後、炭酸ガス、UV−YAGあるいはエキシマレーザーなどのレーザーを照射してブラインドビアホ−ルが形成される。
例えば、特許文献1には、2層CCLを使用し、片面の銅箔にフォトレジストコーティングしてパタ−ンを形成した後、炭酸ガスレーザーでパターンに対応する部分のポリイミドフィルムを除去してブラインドホールを形成し、ブラインドホール底部に堆積したポリイミド膜をデスミアした後、底部の銅箔の一部および微量のポリイミドをエッチングおよびデスミアして除去し、導電化処理した後、銅めっきしてブラインドビアホールを形成した例が記載されている。
【0004】
従来、このようなビア形成工程で発生する、ビア内やビア周辺樹脂残渣であるスミアのクリ−ニングはデスミアと呼ばれ、加熱下でアルカリ性過マンガン酸塩水溶液等を用いる湿式化学デスミア処理が広く用いられ、樹脂を分解・膨潤除去して行う。しかし、レーザー加工では局部的に非常に強く加熱され、ビア周辺の基板樹脂には強いストレスが残留している為、湿式化学デスミア処理で樹脂が膨潤する際に、ストレスを生じた部分に亀裂が生じるなどのダメ−ジが生じやすい。この問題を解決するために、特許文献2には、ウェットブラストを用いて化学的処理を行なうことなくデスミア処理を行う方法が示されており、残留ストレスにより誘起されたダメージを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−154730号公報
【特許文献2】特開2003−318519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記対応でも最近の薄型化要求を受けて樹脂基板と金属箔が薄い場合などはブラスト処理の衝撃が樹脂基板にまで影響を与えて寸法の伸びを生じるといった影響を受ける場合がある。さらに、樹脂基板に直接ブラスト処理を施す場合も寸法の伸びが顕著に影響を受けるたり変形する場合がある。
また、炭酸ガスレ−ザ−などの長波長の赤外光を利用してブラインドビアを形成する場合には、ビア底部に厚い樹脂加工残りが発生しやすい。これは、ビア底の金属層の反射で生じる定在波の周期が長く、定在波の節における強度低下の影響が大きいためと考えられている。このように量の多い樹脂残渣を湿式化学デスミア処理で除去する為には、高温にする、薬品濃度を高くする、処理時間を長くする等の組合せにより強力なデスミア処理が必要になるため、前記ダメージが特に著しいものとなる。このようなダメージは、積層板の実使用時や製造工程中に亀裂が成長して接続信頼性を低下さる原因となったり、また、亀裂内に製造工程で薬液が浸入したり、実使用時に亀裂に沿ってマイグレーションが成長するなど絶縁信頼性を劣化させる原因となるなど、製品の品質に悪影響を与えることがあった。一方、ウェットブラスト処理においては上記ダメージを受けることは無いものの、処理を長時間行ったり打圧を上昇させるなどの必要があり、樹脂基板と金属箔の構成が特に薄い場合などには寸法の伸びが顕著になる可能性があり、寸法に正確さが求められる場合などは挙動を厳密に管理する必要がある。
【0007】
従って、この発明の目的は、レーザー加工によるビア形成工程において基板樹脂内に発生するストレスに起因して、湿式化学デスミア処理時に発生する基板樹脂のダメージを防止し、信頼性の高い回路基板などに用いることが出来るポリイミドフィルムの両面の金属層、またはポリイミドフィルムの両側がビアを介して電気的に接続されたポリイミド金属積層体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリイミドフィルムの(一部または全部の)両側に(直接または絶縁層(ポリイミド以外の素材)を介して)金属層を有し、ポリイミドフィルムの両側の金属層をビアを介して電気的に接続したポリイミド金属積層体の製造方法であり、
1)レーザーを用いて、ポリイミドフィルムにビアを形成するビア形成工程、
2)レーザーでポリイミドフィルム内に発生したストレスを、ポリイミドのβ緩和により低減させるストレス緩和工程
3)湿式化学デスミア処理を行なう化学デスミア工程、
4)上記1)のビア形成工程で形成したビアを介して、ポリイミドフィルムの両側を導通させる導通工程、
とを有することを特徴とするポリイミド金属積層体の製造方法に関する。
本発明は、ポリイミドフィルムの一部または全部の両側(両面)に、直接(ポリイミド層)または絶縁層を介して金属層を有し、ポリイミドフィルムの両側の金属層をビアを介して電気的に接続したポリイミド金属積層体の製造方法である。
【0009】
レーザー加工でポリイミドフィルムにビア形成を行なった場合、レーザー光によるアブレーションで飛ばされたポリイミド樹脂がビア内部やビア周辺にスミアとして再付着したり、除去が不十分であった所謂樹脂残りによるスミアも存在し、特にブラインドビアを炭酸ガスレーザーに代表される長波長光で加工した場合には、定在波の節によりビア底に比較的厚い樹脂加工残りが発生しやすい。
これらスミアがビア内に残留したままで、無電解金属めっきやダイレクトプレーティング法あるいは導電性ペーストでポリイミドフィルムの両面の金属層を電気的に導通させた場合、スミアによる接触不良や密着性低下による接続信頼性の低下を引き起こす原因となる。
特にブラインドビアの場合には反対側の金属層の上(ビア底)にめっき層や導電性ペーストを形成して導通させるため、ビア底のスミア残りにより接続信頼性が著しく低下する。また、表面の金属層上に付着したスミアはめっき不良やパターニング不良の原因となるためスミアを除去する必要がある。
このため一般に湿式化学デスミア処理でスミアを分解・除去するが、レーザー加工によるビア形成工程においては、ポリイミド樹脂が局所的に非常に高温さらされており、ビアの内面を含め周辺部のポリイミド樹脂に大きなストレスが残留する。そしてポリイミドのストレス残留部は、化学デスミアなどにより膨潤させることで亀裂が発生する。亀裂はフィルム内部(基板内部)に成長したり、あるいは樹脂の一部が脱落するなどの異常が発生する。これらの亀裂は破壊に至らない場合であっても、亀裂を伝ったマイグレーションが成長するなど絶縁信頼性を低下させる原因となり、ビアの一部脱落に起因してビア接続工程の際にボイドが発生したり、不めっきの原因となって接続信頼性の低下につながる。逆に亀裂の発生を抑える為に、デスミア処理を弱めると、スミアが残留して接続不良を引き起こしたり接続信頼性の低下の原因となる。
本発明の製造方法によれば、レーザーによりビア形成後に、レーザーによりポリイミドフィルムに発生したストレスをポリイミドのβ緩和により低減させる、例えば、レーザーでポリイミドフィルムに発生したストレスをポリイミドフィルムの強いβ緩和が支配する領域温度で熱処理を行ない、残留ストレスを除去あるいは低減してから、湿式化学デスミア処理を行なう。このことにより、膨潤による亀裂の発生を抑制して十分に孔内のクリ−ニング処理を行なうことが出来る為、ビアを介して上記ポリイミドフィルムの両面の金属層を確実に電気的に導通させることが出来、信頼性の高いポリイミドフィルムの両面の金属層がビアを介して電気的に接続されたポリイミド積層体を製造することができる。特に、長波長レーザー加工によりブラインドビアを形成した場合、ビア底の厚い残渣を除去するために強力な湿式化学デスミア処理が必要になり、亀裂が特に発生しやすいため、本発明の効果が顕著である。
【0010】
本発明の好ましい態様を以下に示し、これら態様は任意に複数組合せることができる。
(1)上記2)のストレス緩和工程は、レーザーでポリイミドフィルム内に発生したストレスを、ポリイミドフィルムの強いβ緩和が支配する領域温度である、[Tβ−1/4×(Tβ−T1)]の温度以上から[Tβ+3/4×(T2−Tβ)]の温度以下の範囲で熱処理を行うストレス緩和工程、であること。
(2)上記3)の化学デスミア工程は、酸化性を有するアルカリ水溶液による処理を含むこと。
(3)上記1)のビア形成工程は、長波長の赤外光を利用したレーザーを用いて行うこと。
(4)上記1)のビア形成工程は、ポリイミドフィルムに直接レーザーを照射する(但し、レーザー照射側に金属層を有する場合は、ビア周辺部の金属層に照射してもよい)、こと。
(5)ポリイミドフィルムの厚みは、5〜38μmの範囲であること。
(6)上記4)の導通工程は、
無電解金属めっき、ダイレクトプレーティング法および導電性ペーストより選ばれる方法により電気的に導通させること。
(7)上記4)の導通工程は、少なくともビア内面の一部または全部に金属層を形成すること。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レーザー加工によりビアを形成する際に、局所的に生じたポリイミドフィルム内の残留ストレスを、強いβ緩和が支配する領域温度で熱処理を行なうなどのポリイミドのβ緩和により低減させてから、湿式化学デスミア処理によりビアのクリ−ニング処理を行なうことにより、湿式化学デスミアの膨潤作用により前記ストレス部に亀裂が入ることを防止または低減して、ビアを介して上記ポリイミドフィルムの両側(両面)の金属層を電気的に導通させるため、亀裂による不良や信頼性の低下を防止した、ポリイミド金属積層体、特に金属配線パターンを形成したポリイミド金属基板を得ることができる。また、湿式化学デスミアの膨潤による亀裂の発生にとらわれることなく、十分に湿式化学デスミアを行うことができ、結果としてビア内及び周辺部のクリーニングを十分に行なうことが出来る。そのためスミア残りによる接続信頼性の低下を防止したポリイミド金属積層体、特に金属配線パターンを形成したポリイミド金属基板、他の基材と積層したビルドアップ基材などの多層基材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のポリイミドフィルム、ビアを形成しているポリイミドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明のポリイミド金属積層体の製造方法の一例と、このポリイミド金属積層体を用いる両面プリント配線板の製造工程の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】実施例で用いた多層の熱圧着性ポリイミドフィルムの動的粘弾性測定における損失係数(tanδ)と温度との関係を示す図である。
【図4】実施例3で得られたブラインドビア形成部の断面の顕微鏡写真である。
【図5】実施例8で得られたブラインドビア形成部の断面の顕微鏡写真である。
【図6】比較例3で得られたブラインドビア形成部の断面の顕微鏡写真である。
【図7】比較例2で得られたブラインドビア形成部の断面の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のポリイミド金属積層体の製造方法について説明する。
【0014】
1)レーザーを用いて、ポリイミドフィルムにビアを形成するビア形成工程について説明する。
【0015】
ビア形成工程に用いるポリイミドフィルムは、少なくとも動的粘弾性測定でβ緩和に係わるtanδのピーク温度(Tβ)およびα緩和に係わるtanδのピーク温度(Tα)を有するポリイミド単独のフィルムまたはポリイミド層を有するフィルムである。
ポリイミドフィルムは、単層でも多層でもよく、フィルムの片側または両側の一部または全部に金属層を有していてもよく、また金属層を有していなくてもよい。
ポリイミドフィルムは、ポリイミド層の片側(片面)または両側(両面)に絶縁層を有しても良く、またポリイミド層と金属層の間に絶縁層を有していてもよい。
ポリイミドフィルムは、少なくとも1層の公知のポリイミド層を有し、ポリイミド層は、特に制限はないが、フィルム状に成形でき、絶縁性、耐熱性、強度など物性に優れた、配線基板に好ましく用いることができるポリイミドが好ましく、特に薄くても十分な強度を有する上に曲げにも強い芳香族ポリイミドが好ましい。
【0016】
本発明において、図面の各図は、レーザー照射側を図面上側として図示している。
図1(a)に用いるポリイミドフィルムの一例を、番号11から18として、さらにポリイミドフィルムが他の基材と積層されている積層基材の一例を番号19から21として、模式的断面として示す。
図1では、ポリイミド層を番号1で、レーザーによるビア形成部に金属のある金属層を番号2で、レーザーによるビア形成部に金属の無い金属層を番号2aで、ポリイミド以外の絶縁層を番号3で示す。
金属層2,2aは、配線形状や面形状などどのような形状でも良く、配線や回路に利用されていてもよい。
ポリイミド層1はポリイミド層が単層でも多層でもよく、ポリイミドのコア層の片面または両面に他のポリイミド層(例えば、金属等との熱圧着性を有するポリイミド層、金属等と接着性や密着性に優れるポリイミド層など)が積層していてもよい。
ポリイミドフィルムでは、ポリイミド層1は、片面にポリイミド以外の絶縁層を有するポリイミド層31、または両面にポリイミド以外の絶縁層を有するポリイミド層32に置き換えることができる。
ポリイミドフィルム11は、ポリイミドフィルムの両側に金属層を有しないか、または両側の面のポリイミドのビア形成部分に金属層を有しないフィルムである。
ポリイミドフィルム12は、ポリイミドフィルムのレーザー照射側に金属層を有し、少なくともレーザー照射側の面のポリイミドのビア形成部分に金属(層)を有するポリイミドフィルムである。
ポリイミドフィルム13は、ポリイミドフィルムのレーザー照射側に金属層を有し、レーザー照射側の面の少なくともポリイミドのビア形成部分に金属(層)がないフィルムである。
ポリイミドフィルム14は、ポリイミドフィルムのレーザー照射側の反対側のみ金属層を有し、レーザー照射側と反対側の面の少なくともポリイミドのビア形成部分に金属層を有するポリイミドフィルムである。
ポリイミドフィルム15は、ポリイミドフィルムのレーザー照射側の反対側のみ金属層を有し、レーザー照射側と反対側の面の少なくともポリイミドのビア形成部分に金属(層)を有しないポリイミドフィルムである。
ポリイミドフィルム16は、ポリイミドフィルムの両側に金属層を有し、両側の面の少なくともポリイミドのビア形成部分に金属層を有するポリイミドフィルムである。
ポリイミドフィルム17は、ポリイミドフィルムの両側に金属層を有し、レーザー照射側の面の少なくともポリイミドのビア形成部分に金属(層)を有しないポリイミドフィルムである。
ポリイミドフィルム18は、ポリイミドフィルムの両側に金属層を有し、レーザー照射側と反対側の面の少なくともポリイミドのビア形成部分に金属(層)を有しないポリイミドフィルムである。
【0017】
積層基材19は、ポリイミド層1、金属層2および絶縁層4(ポリイミド層1も可)が直接積層されている多層基材である。
積層基材20は、金属層2、ポリイミド層1、金属層2および絶縁層4(ポリイミド層1も可)が直接積層されている多層基材である。
積層基材21は、金属層2a、ポリイミド層1、金属層2および絶縁層4(ポリイミド層1も可)が直接積層されている多層基材である。
【0018】
積層基材19〜21では、ポリイミド層と金属層(2または2a)はポリイミドフィルム11〜13を用いている場合を図示しているが、ポリイミドフィルム11〜13をポリイミドフィルム14〜18に換えて、またはこれらを複数組み合わせてもよい。
レーザー照射によるビア形成部に金属(層)の無い金属層2aは、金属層の一部をエッチングして形成してもよく、または金属層形成時に金属の一部のない配線などの形状で形成されていてもよい。
ビアの形成に用いるポリイミドフィルムは、番号11〜番号18などを複数有するものをもちいることができる。
【0019】
図1(b)には、ポリイミドフィルム(11〜18)を用いて、レーザー照射によりスルーホールビアを形成されているポリイミドフィルム(11a〜18a)の模式的な断面を示す。
図1(c)には、ポリイミドフィルム(14、16、17)と積層基材(19〜21)を用いて、レーザー照射によりブラインドビアを形成されているポリイミドフィルム(14b、16b、17b)と積層基材(19b〜21b)の模式的な断面を示す。
ポリイミド11〜15と積層基材19では、金属層を有しないポリイミド層または絶縁層は、表面にめっき等の公知の方法で金属層が形成出来る物であることが好ましい。
図1(b)および図1(c)で、金属層を番号2bとして示す。
【0020】
ポリイミド層1を構成するポリイミドは、脂肪族ポリイミド、脂環族ポリイミド、芳香族ポリイミドおよびこれらを組み合わせたポリイミドを用いることが出来、特に芳香族ポリイミドが好ましい。
芳香族ポリイミドとしては、例えば、テトラカルボン酸二無水物の例として、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ビス(ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2−ビス(ジカルボキシフェニル−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパン二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、p−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2−ビス〔(ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物から選ばれる一種あるいは二種以上のテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンの例として、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジアミノ安息香酸などのベンゼン核1つのジアミン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルメタン、ビス(トリフルオロメチル)ジアミノビフェニル、ジメチルジアミノジフェニルメタン、ジカルボキシジアミノジフェニルメタン、テトラメチルジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフィド、ジアミノベンズアニリド、ジクロロベンジジン、ジメチルベンジジン、ジメトキシベンジジン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノジメトキシベンゾフェノン、2,2−ビス(アミノフェニル)プロパン、ビス(アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ジアミノジフェニルスルホキシドなどのベンゼン核2つのジアミン、ビス(アミノフェニル)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)トリフルオロメチルベンゼン、ビス(アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、ビス(アミノフェニルイソプロピル)ベンゼン、などのベンゼン核3つのジアミン、ビス(アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(アミノフェノキシ)フェニルエーテル、ビス(アミノフェノキシ)フェニルケトン、ビス(アミノフェノキシ)フェニルスルフィド、ビス(アミノフェノキシ)フェニルスルホン、2,2−ビス(アミノフェノキシ)フェニルプロパン、2,2−ビス(アミノフェノキシ)フェニル−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのベンゼン核4つのジアミンから選ばれる一種あるいは二種以上のジアミンの組み合わせからなるポリイミドを用いることができる。
特にポリイミド層1は、単層でも多層でも、レーザーを用いてビアを形成する場合に、耐薬品性に優れるため強い湿式化学デスミアが必要となるポリイミドである、酸成分100モル%中にピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸より選ばれた成分を70モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に95モル%以上含む酸成分と、ジアミン成分100モル%中にp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび3,4’−ジアミノジフェニルエーテルより選ばれた成分を70モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に95モル%以上含むジアミン成分より得られる芳香族ポリイミドの層を含むフィルムが本発明の効果が顕著である。
【0021】
ポリイミド層1は、ポリイミドが2層以上の多層に積層されている場合、対象とするポリイミドのβ緩和は、
i)多層を構成する層のうち主体となる所謂コア層を対象とすればよい。あるいは、コア層以外が特に厚く形成されている場合や、特にダメージを受けやすい層、あるいは特にダメージの悪影響が大きい層が有る場合など特にコア層以外に着目する必要がある場合には、製品の目的や仕様に応じて対象とする層を決定してもよい。判別が可能であれば積層されたポリイミドで動的粘弾性測定を行っても良いが、代表的には対象とするポリイミド単独で動的粘弾性測定を行い、β緩和に係わるtanδのピーク温度(Tβ)等を求めれば良く、
ii)レーザーを用いてビアを形成する場合に、耐薬品性に優れるため強い湿式化学デスミアが必要となるポリイミドである、酸成分100モル%中にピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸より選ばれた成分を70モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に95モル%以上含む酸成分と、ジアミン成分100モル%中にp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび3,4’−ジアミノジフェニルエーテルより選ばれた成分を70モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に95モル%以上含むジアミン成分より得られる芳香族ポリイミドの層を、対象とすることが好ましい。
【0022】
絶縁層3としては、ポリイミド層1以外の絶縁性を有する樹脂層であり、接着剤など特に制限はなくシート状でも、溶液を塗布や吹きつけなどの方法で形成してもよい。接着剤層などの絶縁層の形成は特に制限はなく、ポリイミド層の表面に形成してもよく、金属箔などの金属層の表面に形成してもよく、ポリイミド層と金属箔とをシート状の接着剤層を用いてはりあわせることにより形成してもよく、これらを複数組み合わせても良い。
【0023】
絶縁層4は、フィルム状やシート状などの絶縁性を有する樹脂やセラミックなどを挙げることができ、好ましくはポリイミド層1を用いることができる。
絶縁層4は、単層でも多層でも良い。
絶縁層4がポリイミド層1の場合は、絶縁層4の層構成とポリイミド層1の層構成とは同じでも異なっていても良い。
【0024】
ポリイミドフィルム12〜18などのポリイミドフィルムの片側または両側に金属層2、2aなどの金属層を形成する方法としては、公知の方法を用いることが出来、
・ポリイミド層のポリイミドまたはポリイミド層上の接着剤層などの絶縁層に、スパッタリングやめっきなどの手法で金属層を形成する方法、
・ポリイミド層のポリイミドまたはポリイミド層上の接着剤層などの絶縁層に、金属箔を圧着や熱圧着等の方法ではりあわせる方法、
・金属箔に、ポリイミド溶液、ポリイミド前駆体溶液、または接着剤層などの絶縁層の溶解溶液を塗布して、加熱や乾燥などにより金属箔にポリイミド層などを形成する方法、
などを挙げることができる。
また、金属層が予めポリイミドフィルムの表面に形成されたものを用いても良いし、後から金属層を形成しても良く、特に4)のビアの導通化工程と同時に形成しても良い。
【0025】
ポリイミドフィルム16、17、18など両側に金属層を有するポリイミドフィルムの形態としては、金属層は両全面に形成されていてもよく、片面の全面と他面の一部に形成されていてもよく、両面の一部に形成されていてもよい。特に両面に金属層を有するポリイミドフィルムの形態としては、金属層に配線パターンが形成された所謂プリント配線板であることが好ましく、ここでは両面に配線パターンが形成されていても良いし、一方の面に配線パターンが形成されてもう一方の面がほぼ全面に金属層が形成されてもよい。ポリイミドフィルムの両面に形成された配線パターンで構成された両面配線基板でも良い。
ポリイミドフィルム11〜18などポリイミドフィルムは、表面に金属配線パターンが形成された予め製造された配線基板に、直接あるいは接着剤層などの絶縁層を介して、例えば真空熱プレスなどの公知の方法により、一体化して、所謂多層配線基板やビルドアップ配線基板の一部として、積層基材を形成してもよい。
【0026】
金属層は、導電性の金属であれば特に制限はないが、銅、銅合金、ニッケル、クロム、アルミニウム、ステンレスなどを挙げることができる。金属層は、導電性が高く容易に入手できる銅が好適であり広く用いられる。金属層の厚みは特に制約はないがプリント配線板として取り扱いが容易な0.5から40μmの範囲が好ましく、特に0.5から18μmの範囲が配線の高精細化と薄型化への対応が可能でありより好ましい。逆に放熱作用を高める場合には、金属層は12から500μmとしても好ましく用いることができる。また、両面の金属層の厚みは同じでも異なっていても良く、製造する製品の仕様に適したものを選択できる。
金属層は、金属箔を用いることができ、金属箔の厚みは、目的に応じて適宜選択すればよいが、0.5〜40μmの範囲、さらに0.5〜18μmの範囲が好ましい。
金属箔としては、圧延銅箔、電解銅箔、アルミニウム箔などを用いることが出来、特に圧延銅箔、電解銅箔が好ましい。
【0027】
レーザーを照射してポリイミドフィルムにビアを形成する場合、レーザーの照射はビアを形成する部分、またはさらにその周辺部を含めて行うことができる。例えば、ポリイミドフィルム13で一例を示すと、ビア形成のためのレーザーの照射は、(a)ビア形成するポリイミド層のみに直接照射する、または(b)ビア形成するポリイミド層以外に、ビア周辺部の金属層に照射する、ことができる。
【0028】
レーザーとしては、UV−YAGレーザーやエキシマレーザーなどの紫外光に代表される短波長レーザー、炭酸ガスレーザーの赤外光に代表される長波長レーザーなどを用いることが出来る。
レーザー加工によるビア形成は公知の方法を用いる事が可能であり、レーザーの強い光を照射する事により、直接分子結合を切断したり局所的に高温にして蒸発させる事により必要な部位を除去する。具体的方法としては、ひとつはレーザーを金属層に直接照射して、金属層とポリイミド層を、または金属層と絶縁層とポリイミド層を実質同時に除去するもので、直接金属加工が可能なUV−YAGレーザーやエキシマレーザーなどの紫外光に代表される短波長レーザーが主として用いることが出来、加工したい部位に選択的にレーザー光を照射することが好ましい。
レーザーを照射する側と反対の面にある金属層も貫通させるスルーホールビアを形成する場合は、一度に加工する事で良好に形成することが出来るが、反対の面の金属層を残すブラインドビア形成の場合は、表面の金属層(樹脂層の一部を含んでも良い)をレーザーで除去し、続けてレーザー照射強度を弱めて残りの樹脂層を除去する一連の操作で実質同時に良好なビアが安定して形成できる。また、ビアサイズや加工条件に応じてレーザービームを例えば螺旋状にスキャンさせてもよい。また炭酸ガスレーザーのような長波長レーザーを用いる場合は表面の金属層に吸収されないので、金属表面を黒化処理するなどしたうえで加工する事ができる。
【0029】
また、金属層を有するポリイミドフィルムにレーザーを照射してビアを形成する場合、ビアを形成する部位の表面金属層を予めエッチングなどの方法により除去した後に、残った表面金属をマスクとしてポリイミド層に直接レーザーを照射し除去することも可能で、この方法によれば一度に広い面積の穴加工が可能である。主として金属に吸収されにくい炭酸ガスレーザーなどの長波長レーザーが用いられる。
なお、ポリイミドフィルムは、レーザーによるビア形成後に、ポリイミドフィルムの片面または両面に金属層を形成する事も可能であり、レーザーを照射する面の金属層を後から形成する場合は、ポリイミド層をレーザー加工すればよく、ビアを形成する部位に選択的にレーザー光を照射してポリイミドを除去すればよい。なお、金属層が接着剤などの絶縁層を介してポリイミドに積層される場合は、ポリイミドと合わせて接着剤層などの絶縁層を除去すればよい。
ビア形成工程では、ポリイミドフィルムに形成するビア径は特に制限は無いが、好適には高密度化が可能でドリル加工やパンチ加工では形成が難しい領域である5〜100μmφ、特に接続信頼性に優れる10〜100μmφの孔が好適である。
【0030】
2)レーザーでポリイミドフィルムに発生したストレスを、ポリイミドのβ緩和により低減させるストレス緩和工程について説明する。
レーザーでポリイミドフィルムに発生したストレスを低減する方法として、ポリイミドのβ緩和により低減させる方法を挙げることができ、特にポリイミドの強いβ緩和が支配する領域温度で熱処理する方法を挙げることができる。
ポリイミドのβ緩和またはポリイミドの強いβ緩和が支配する領域温度は、動的粘弾性測定における損失係数(tanδ)の温度カーブより知ることが出来る。動的粘弾性測定は、JIS・K0129 熱分析通則によって規定されるもので、具体的には印加応力の周波数と昇温速度を規定して動的粘弾性測定を行い、温度に対するtanδの曲線より各緩和の温度を求めることができ、以下に示す。
γ緩和に係わるtanδのピーク温度をTγ、
β緩和に係わるtanδのピーク温度をTβ、
α緩和に係わるtanδのピーク温度Tα、
β緩和の低温側の裾となる温度あるいはTγとTβの間の谷または変曲点となる温度をT1、
β緩和の高温側の裾となる温度あるいはTβとTαの間の谷または変曲点となる温度をT2とする。
【0031】
レーザー加工によりポリイミドフィルムにビアを形成する場合、
・レーザーによるアブレーションで飛ばされたポリイミドまたはこれらの熱分解物がビア内面、ビア周辺のフィルム表面にスミアとして再付着する、
・レーザーで除去が不十分であったポリイミドなどの樹脂残りによるスミアも存在する、特にブラインドビアを炭酸ガスレーザーに代表される長波長の光で加工した場合には、定在波の節の影響によりビア(ブラインドビア)底に厚い樹脂加工残りが存在しやすい。
スミアを除去することなくビア内に残留した状態で、ビア内(またはビア内面)を導通化して、ポリイミドフィルムの両側を電気的に導通した場合には、スミアによる密着性の低下による接続不良や接続信頼性を低下させる原因となる。特にブラインドビアの場合には反対側の金属層の上(ビア底)にめっき層や導電性ペーストを形成して導通させるため、ビア底のスミア残りにより接続信頼性が著しく低下する。また、ポリイミド層、絶縁層または金属層上に付着したスミアはめっき不良やパターニング不良の原因となる。従って、スミアの除去を行う必要がある。
このようにレーザー加工によりビアを形成したポリイミドフィルムは、レーザー加工による局所的高温によって生じたストレスが、ポリイミドフィルムのビア内面部やポリイミドフィルム表面のビア周辺部に残留している。この為、このまま湿式化学デスミア処理を行うと、ポリイミドフィルムのビア内面部やビア周辺部に亀裂が発生する場合がある。
【0032】
本発明では、3)の化学デスミア工程の湿式化学デスミア処理によるスミアの除去の前に、ポリイミドフィルムのビア内面部やフィルム表面のビア周辺部に、レーザーにより生じたストレスを解消もしくは低減する目的で、ポリイミド層の強いβ緩和が支配する領域温度で熱処理などによりポリイミドのβ緩和によるストレス低減を行う。
ポリイミドのβ緩和によるストレス低減は、ポリイミド層の強いβ緩和が支配する領域温度で熱処理を行なう事が重要である。β緩和が支配する領域温度とは、高分子の緩和挙動においてβ緩和が支配的となる温度からα緩和が支配的となる手前の温度までの範囲を指す。β緩和とは高分子材料の緩和現象のひとつであり、β緩和が支配する領域温度では基本形状は維持される一方でセグメントレベルのすべり移動程度の緩和が起こる。このなかでも、強いβ緩和が支配する領域温度では形状を乱す事なく効果的に残留ストレスを除去あるいは低減する事が可能である。一方、β緩和が弱い温度領域では緩和の作用が限定的であるため本発明の効果が十分得られない場合がありうる。また、α緩和は分子鎖の移動を伴う緩和であり、α緩和の起こる温度では容易に残留ストレスを除去する事が可能である一方で、形状も変化してしまい構造や寸法を正確に維持する事が困難となる。
【0033】
強いβ緩和が支配する領域温度は、β緩和に係わるtanδの山のとなる温度範囲の中で、山のピークとなる温度近傍を選択する事で得られ、この領域の温度で熱処理を行なえば良い。なお、ここでいうピークはβ緩和に係わるピークであり、実際の測定においては他の緩和も合わせて測定されるため変曲点となる場合もありうる。
強いβ緩和が支配する領域温度での熱処理時間は、ストレスが解消または低減される時間を選択すればよく特に制限されないが、おおむね10秒から50時間、好ましくは30秒から5時間であり、強いβ緩和が支配する領域温度のうちTβより低温側においては5分から5時間が好ましく、強いβ緩和が支配する領域温度のうちTβ以上の高温側においては30秒から90分が好ましい。
強いβ緩和が支配する領域温度での熱処理時の加熱雰囲気は空気中でも良いが、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気、真空中や減圧下で処理を行なうと金属の酸化を防止することが出来るために好ましい。
強いβ緩和が支配する領域温度での熱処理は、ポリイミドフィルム、またはポリイミドフィルムを積層している積層基材を加熱できるものであれば特に制限はなく、オーブン内に静地しても良いし、赤外線の照射によって直接加熱しても良いし、これらを組合せても良くポリイミドフィルムが所定温度範囲に保たれることが重要である。また、ロールツーロールで搬送しつつ上記方法や組合せによって所定時間加熱されるようにしても良いし、レーザー加工機の出口側で加工の終了した部位を上記方法や組合せにて加熱出来るようにしてもよい。
【0034】
β緩和を用いた熱処理を行なえば本発明の効果は有効であり特に制約されるものではないが、実用面で効果に優れる好ましいポリイミドの強いβ緩和が支配する領域温度を以下に示す。
強いβ緩和が支配する領域温度のうち、Tβより低い温度範囲ではβ緩和の作用は緩やかであり、好ましくは[Tβ−1/4×(Tβ−T1)]の温度以上、さらに好ましくは[Tβ−1/8×(Tβ−T1)]の温度以上からTβ未満の温度である。ここでは緩和作用が緩やかに働くため、時間をかけて熱処理を行なうことで効果が得られ、構成材の耐熱性や熱膨張不整合などの悪影響を抑える場合に有用である。上記未満の温度では、β緩和の作用は微弱であり本発明の効果が得られにくい場合がある。
強いβ緩和が支配する領域温度のうち、Tβ以上の高い温度範囲では短時間で熱処理の効果が得られ、Tβ以上の温度から、[Tβ+3/4×(T2−Tβ)]の温度以下、好ましくは[Tβ+1/2×(T2−Tβ)]の温度以下、さらに好ましくは[Tβ+1/4×(T2−Tβ)]の温度以下の範囲であり、上記を超える温度では、β緩和の作用が強く時間の制御がしにくい場合があり、またはα緩和の作用が支配的となり変形を生じる恐れがある。
最も好ましいのは下限温度として[Tβ−1/8×(Tβ−T1)]の温度以上、好ましくはTβ以上で、上限温度として[Tβ+1/2×(T2−Tβ)]の温度以下、好ましくは[Tβ+1/4×(T2−Tβ)]の温度以下の範囲である。
なお、tanδカーブにおいて、ピークが重なるなど裾や谷や変極点が不明瞭な場合もあり、このような場合には、強いβ緩和が支配する領域温度の下限温度は、好ましくは(Tβ−40℃)、さらに好ましくは(Tβ−20℃)であり、強いβ緩和が支配する領域温度の上限温度は(Tβ+55℃)、好ましくは(Tβ+30℃)、さらに好ましくは(Tβ+15℃)である。
【0035】
3)湿式化学デスミア処理を行なう化学デスミア工程について説明する。
湿式化学デスミアは、プリント配線板の製造等に用いられる一般的な化学デスミアを用いることが出来、スミアを除去する条件は適宜選択すればよい。
湿式化学デスミアは、強アルカリ水溶液、過マンガン酸塩水溶液やクロム酸塩水溶液などの酸化剤、あるいはヒドラジンなどを用いることが出来る。
例えばスミアの残留が軽度である場合には、強アルカリ水溶液に浸漬またはスプレーにより処理すればよく、具体的には水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの5〜20重量%水溶液を40〜80℃で5〜60分処理することが出来る。より確実にスミアを除去したい場合は、強アルカリ性に調整した過マンガン酸塩などの酸化剤の水溶液に浸漬することが好ましく、より具体的には5〜20重量%過マンガンカリウムと3〜15重量%水酸化ナトリウムの混合水溶液に30〜75℃で2〜30分浸漬処理を行なう方法などが挙げられる。ここで、膨潤を補助してスミアの除去を容易にするために事前にエチレンジアミン溶液などで処理しても良い。次に、酸洗浄により中和処理を行ない反応を停止させる。これらの工程は膨潤を伴ってポリイミド表面を除去するものであるが、強いβ緩和が支配する領域温度による熱処理によりレーザー加工時の残留ストレスが緩和されているため、亀裂の発生を防止または著しく減少することが出来る。
特にブラインドビアの場合は、ビア底のスミア残りにより接続信頼性が著しく低下するので、強いデスミア処理を行うため、更にブラインドビアを炭酸ガスレーザーで代表される長波長光で加工した場合などビア底にポリイミドの比較的厚い加工残渣がある場合には、特に強力なデスミア処理によって除去する必要があるため、強いβ緩和が支配する領域温度で熱処理を行なうなどのポリイミドのβ緩和によるストレス緩和処理は効果が優れる。
特にビア底の大半がポリイミドやスミアの残渣で覆われている場合、例えばビア底の面積の70%以上が覆われている場合は、ビア底の大半を、例えば70%以上を露出させるために、強力なデスミア処理が必要となるため、強いβ緩和が支配する領域温度で熱処理を行なうなどのポリイミドのβ緩和によるストレス緩和処理は効果が優れる。
特にピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸より選ばれた成分を含む酸成分と、p−フェニレンジアミン4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび3,4’−ジアミノジフェニルエーテルより選ばれた成分を含むジアミン成分より得られる芳香族ポリイミドは特に耐薬品性に優れる為、強い湿式化学デスミアが必要となり、強いβ緩和が支配する領域温度で熱処理を行なうなどのポリイミドのβ緩和によるストレス緩和処理は効果が優れる。
【0036】
4)上記1)のビア形成工程で形成したビアを介して、ポリイミドフィルムの両側を導通させる導通工程について説明する。
導通工程では、ポリイミドフィルムの両側(両面)に金属層を有する場合は、ビアを介して電気的に導通(接続)させてもよいし、ポリイミドフィルムの片側(片面)または両側(両面)に金属層を有しない場合は、金属層を有しない側(面)に金属層を形成すると同時に、ビアを介して電気的に導通(接続)を行なって、ポリイミドフィルムの両側の金属層をビアを介して電気的に接続したポリイミド金属積層体を製造することができる。
ビアを介して上記ポリイミドフィルムの両側を電気的に導通させる工程としては、プリント配線板の製造等に用いられる公知の方法を用いることが出来る。例えば、乾式の真空プロセスで銅などの金属薄膜を成長させて導電性皮膜を形成する方法、あるいはダイレクトプレーティングシステムや無電解金属めっきなどの市販の湿式プロセスにより導電性皮膜を形成する方法などを挙げることができる。ダイレクトプレーティングシステムでは、パラジウムや炭素などの導電性被膜を形成するプロセスが提供されており、無電解金属めっきでは、銅やニッケルなどの導電性皮膜を形成するプロセスが広く提供されている。これらの中で、ダイレクトプレーティングシステムまたは無電解金属めっきは煩雑な真空プロセスを用いないことから好適に用いることが出来る。また、別の導通の方法としてビア内に導電性ペーストや導電性金属粉末を塗布や充填の後に熱などを加えるなどして両側の金属層を電気的に導通させることが出来る。
上記の種々の方法と電解金属めっきとを組み合わせて行っても良く、上記の種々の方法の後に電解金属めっきを行っても良い。
【0037】
本発明のポリイミド金属積層体は、プリント配線板、フレキシブルプリント基板、TAB用テープ、COF用テープあるいは金属配線など、また、金属配線、ICチップなどのチップ部材などのカバー基材、液晶ディスプレー、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー、電子ペーパー、太陽電池などのベース基材等の電子部品や電子機器類の素材、他の配線基材との積層用として用いることができる。
【0038】
以下に、図を用いて本発明の好ましい実施の形態の一例を説明するが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0039】
図1に示すポリイミドフィルム16を用いて、両面の金属層が電気的に接続されたポリイミド積層体であるポリイミド両面金属積層板ならびに両面プリント配線板の製造方法の一例を図2に示す。
【0040】
ポリイミドフィルム16は、ポリイミド層1の両面に極薄金属層2を貼着している。金属層2は代表的には金属箔の圧着、あるいはスパッタリングと電解めっきの組み合わせなどの方法で形成される。
工程100では、ビアを形成する部位の金属層を除去してポリイミド露出させて開口部103を形成し、ポリイミド17を得る。金属層を除去する方法としては公知の方法を用いれば良いが、フォトプロセスなどを用いて金属層上に開口部となる部位を除いて保護レジストを形成し、塩化第二鉄の水溶液などを用いたエッチングで開口部の金属層を除去した後、保護レジストを除去する方法が広く用いられている。
【0041】
工程101はレーザーを用いて、ポリイミドフィルムにビアを形成するビア形成工程であり、ポリイミド17の開口部103を包含する形でレーザー光をポリイミド層に直接照射して、ポリイミド層を除去し、ブラインドビア104を形成する。ここで、金属層はマスクとして働き開口部のみにビア加工が施される。ここで用いるレーザーはポリイミドを除去できるものであれば特に制約はないが、容易に高出力が得られ広範囲を効率よく処理出来ることから波長が9−11μmの炭酸ガスレーザーが広く用いられる。レーザー加工にともない、主にポリイミド樹脂やこれらの変質物によるスミア111がビア内面や金属層上に生じる。また、ビア底には加工残りによるスミア112も存在し、特に炭酸ガスレーザーのように長波長の光を用いる場合は定在波の節の影響と考えられる比較的厚い樹脂加工残りが発生する。また、レーザー加工においては局部的に極めて高温になるため、ビア内面とビア周辺部のポリイミド層には、熱によるストレスが残留する(番号113として模式的に示す)。
【0042】
工程102は、2)レーザーでポリイミドフィルムに発生したストレスを、ポリイミドのβ緩和により低減させるストレス緩和工程であり、
ビア形成後のポリイミドフィルムを、ポリイミド層を構成するポリイミドの強いβ緩和が支配する領域温度で熱処理を行ない、残留ストレス113を除去または低減(緩和)させる。
熱処理は、オーブン内に静置しても良いし、赤外線の照射によって直接加熱しても良いし、これらを組合せても良くポリイミドフィルムを所定温度に保つことが重要である。代表的にはβ緩和に係わるtanδのピーク温度近傍で、30秒から5時間保持することで残留ストレスを減少する、特に強いβ緩和が支配する領域温度のうちtanδのピーク温度以上の高温側で、30秒から90分保持することで、より短時間で残留ストレスを減少することが出来るためより好ましい。
【0043】
工程103は湿式化学デスミア処理を行なう化学デスミア工程であり、湿式化学デスミア処理でスミア111及び112を取り除く。代表的には15%程度の過マンガン酸ソーダ水溶液に10%程度の水酸化ナトリウムを加えて強アルカリ性に調整し、75℃程度に加熱した状態で10から20分程度浸漬してスミアを加水分解や酸化作用で分解・膨潤除去し、続いて希硫酸などに浸漬して中和処理を行う。
スミアの除去は、化学デスミアとブラストなどを組み合わせて行ってもいが、化学デスミアのみで行うことが好ましい。
【0044】
工程104と工程105は上記1)のビア形成工程で形成したビアを介して、ポリイミドフィルムの両側を導通させる導通工程である。
工程104は、両面の金属層をビアを介して接続する為に、ビア内の樹脂が露出した部位に導電性皮膜105を形成する工程である。
導電性皮膜105の形成は、無電解金属めっきやダイレクトプレーティングシステム(DPS)などの公知の方法を用いることが出来るが、DPSは直接導通層を形成するため工程が容易であり、樹脂の露出部だけに導電性皮膜を形成することが容易な為好ましく用いることが出来る。市販のDPSとしてはカーボンを導通剤とするブラックホールシステム(マクダーミット製)やパラジウムを析出させるライザトロンDPSシステム(荏原ユージライト製)などが利用できる。導通性皮膜だけで製品の特性を満たす場合は、これで両面の金属層の導通を完了としても良いが、通常は導通性皮膜を給電層として電解金属めっきを行うことにより電気特性や信頼性を確保する。
【0045】
工程105は、電解金属めっき工程であり、公知の電解金属めっき法を用いて所定の膜厚まで金属層106を形成するとともに、ビアを介したポリイミドフィルムの両面の金属層の電気的導通を完成させ、ポリイミドフィルムの両側の金属層をビアを介して電気的に接続したポリイミド金属積層体51を得ることが出来る。
めっきする金属は特に制約されるものではないが、導電性が高くめっきシステムが普及している銅が好適である。市販の電解銅めっき液としては、キューブライト(荏原ユージライト製)やスルカップ(上村工業製)などが利用可能である。
【0046】
ポリイミド金属積層体51はさらに配線パターンを形成して、プリント配線基板を形成することが出来る。工程106から工程107はサブトラクティブ法により、ポリイミド金属積層体51を用いてプリント配線基板を形成する工程であり、工程106はエッチングレジストパターンを形成する工程であり、例えば市販の感光性ドライフィルムレジストをロールラミネータで両面の金属層106上に積層して、配線パターンが必要な部位を露光したのち現像を行うことで、露光した部位を保護するレジスト層107を形成する。工程107は金属層の不要な部位を除去して配線パターンを形成する工程であり、塩化第二鉄水溶液等によるエッチングによりレジスト層107の形成されていない部位の金属層を除去したのち、剥離液を吹き付けてレジスト層107を除去して配線パターン108を得て、両面配線基板52を製造できる。
なお、ここではサブトラクティブ法を用いた配線パターン形成を示したが、セミアディティブ法により配線パターンを形成してもよい。また、金属層が予め形成されていないポリイミドフィルムを用いて、ビアの導通と表面金属層の形成を同時に行ってもよく、ここでは、サブトラクティブ法、セミアディティブ法、フルアディティブ法の何れの方法によってもパターン形成が可能である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
(動的粘弾性測定の測定)
動的粘弾性測定は、JISK7244−1で定義された損失係数を、測定機械:RSAIII(TAインスツルメントジャパン製)、印加応力の周波数10Hz、昇温速度:3℃/分、測定歪:0.2%(オート設定;応力2g以上で保持)で測定し、温度に対する損失係数の曲線より各緩和のピーク温度を求めた。
【0049】
[実施例1〜10、比較例1〜3]
(両面銅張りポリイミド積層板)
多層の熱圧着性ポリイミドフィルムは、両表面にポリイミドの熱圧着層を有し、コア部分(厚み約20μm)が3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンからなるポリイミドである多層の熱圧着性ポリイミドフィルム(厚み25μm)を用いた。多層の熱圧着性ポリイミドフィルムの両面に、厚さ9μmの電解銅箔(市販)を熱圧着した両面銅張りポリイミド積層板を準備した。
【0050】
(コア部分のポリイミドフィルムの動的粘弾性測定)
コア部分のポリイミドフィルムの動的粘弾性測定を行い、結果を図3に示す。温度に対する損失係数の曲線より各緩和に係わる温度を求めた。
Tβ:175℃、
T1:0℃、
T2:235℃であった。
【0051】
(ビア形成部の銅箔除去)
準備した両面銅張りポリイミド積層板の一方の面に市販のドライフィルムレジストをロールラミネータで貼着し、i線を主光線とする露光器でマスクパターンを転写してレーザービアを形成する部位を除いてレジストを露光した。レジストの保護膜を剥がした後、30℃の1%炭酸ナトリウム水を30秒間スプレーして現像を行ないビア形成する部位の銅箔を円形状に露出させた。続いて、反対の面を保護して40℃の40ボーメの塩化第二鉄水溶液を30秒間スプレーして露出部の銅箔をエッチング除去し、直径60μmの銅開口部を形成したのち、40℃2%苛性ソーダ水を30秒間スプレー処理して残りのフォトレジストを除去した。
【0052】
(レーザーを用いてビアを形成する)
次に波長10.6μmの炭酸ガスレーザーを用いて、エネルギー7Jのパルスを繰り返し300Hzで14ショット、直径60μmの銅開口部を包含するようにレーザー光を照射してポリイミドを除去し、ブラインドビアを形成した。ビア周辺の銅箔表面にレーザーアブレーション時の再付着と思われるスミアが認められるとともに、ビア底を蛍光顕微鏡で観察した結果、定在波の節の影響と思われるポリイミド残渣がほぼ全面に残っており、断面観察の結果、ポリイミド残渣は厚さ0.2〜0.5μmであった。
【0053】
(ストレス緩和工程)
つぎにレーザーによりビアを形成した試料に、以下の熱処理によりポリイミドのβ緩和によるストレス低減を行った。
ブラインドビア形成試料をフリーな状態で、表1に示す熱処理条件でオーブン中に放置した後、室温にて自然冷却した。
ただし比較例3のみストレス緩和工程は行っていない。実施例9および実施例10では、資料の急激な熱衝撃を避ける為、200℃の加熱前に、150℃で15秒の予備加熱を行なった。
【0054】
(化学デスミア工程)
つぎにブラインドビア形成試料を以下の条件で湿式化学デスミアを行った。湿式化学デスミア処理後、ビア底を蛍光顕微鏡で観察した結果ポリイミドに起因する発光は無く、残渣はほぼ全て除去されポリイミドフィルムを貫通して、銅が露出していることを確認した。
(湿式化学デスミア条件)
湿式化学デスミアには、市販のデスミアプロセスであるマキュダイザープロセス(日本マグダーミット製)を用いた。
1)前処理はエチレングリコールを主要成分とする膨潤処理液(9221−S:450mL/L、9276:25mL/L 水溶液)を用いて55℃で3分間浸漬処理した。
2)エッチングは過マンガン酸カリウムを主要成分としアルカリで調整したデスミア液(9275:50g/L、9276:50mL/L水溶液)を用いて75℃で15分浸漬処理した。
3)後処理は酸性の中和還元液(9279:100mL/L、2%硫酸 水溶液)にて43℃5分浸漬処理した。
なお、各工程の後は流水洗浄を行った。
【0055】
(導通工程)
湿式化学デスミアを行ったブラインドビア形成試料を用いて、パラジウム皮膜を形成する市販のライザトロンDPSプロセス(荏原ユ−ジライト製)により導電性皮膜を形成した。その後以下の条件で電解銅めっきを行った。
銅めっき後、ブラインドビア形成部を5穴ミクロトームで断面形成し、顕微鏡でビア側面とビア周辺部のクラック発生状況を、目視で観察し、結果を表1に示す。
表1において、クラック発生状況の評価は以下の内容である。
◎:クラック発生なし
○:軽微なクラックが稀に発生
×:軽微なクラック発生
××:頻繁にクラック発生
(電解銅めっき条件)
脱脂・酸洗後、硫酸銅めっき浴中で銅箔をカソード電極として2A/dmの電流密度で25℃、5分から30分間電解銅めっきを行い、導電化皮膜を形成したビア内部と銅箔上に銅めっき層を形成した。
【0056】
【表1】

【0057】
(比較例4)
実施例1のブラインドビア形成試料を、α緩和域の温度である350℃で、3分間にオーブンで加熱した。冷却後に熱処理時のフリー形状が残って変形し、配線基板として利用出来ない状態であった。
【0058】
実施例1〜5および比較例1〜3は、Tβ未満の温度で熱処理を行った。実施例6〜10および比較例4は、Tβを超える温度で熱処理を行った。
1)実施例1および実施例2では、十分にストレスが低減され、クラックは発生しなかった。
2)実施例3では、ストレス低減の効果が認められ実用上問題とならない軽微なクラックが1穴に確認される程度であった。実施例3で得られたブラインドビア形成部の断面の顕微鏡写真を、図4に示す。

3)実施例4および実施例5では、実施例1より熱処理時間を短くしたが、ストレス低減の効果が認められ実用上問題とならない軽微なクラックが1穴に確認される程度であった。
4)実施例6〜9では、十分ストレスが低減され、クラックは発生しなかった。実施例10では、熱処理1分と短時間の熱処理においてもストレス低減の効果が認められ実用上問題とならない軽微なクラックが1穴に確認される程度であった。
実施例8で得られたブラインドビア形成部の断面の顕微鏡写真を、図5に示す。
5)比較例1および比較例2では、レーザー加工時のストレス解消は限定的でビア近傍にクラックが発生していた。120℃以下の温度では、加熱処理時間を長くすることで、ストレス低減の効果を得ることが出来ると考えるが、加熱時間を長時間行うことは実用的に好ましくない。
比較例2で得られたブラインドビア形成部の断面の顕微鏡写真を、図7に示す。
6)比較例3では、熱処理を行っていないためレーザー加工時のストレス残留によりビア内面に顕著なクラックが発生していた。比較例3で得られたブラインドビア形成部の断面の顕微鏡写真を、図6に示す。
【符号の説明】
【0059】
1:ポリイミド層、
2:レーザー照射部に金属のある金属層、
2a:レーザー照射部に金属のない金属層、
2b:金属層、
3:ポリイミド以外の絶縁層、
4:絶縁層、
11,12,13,14,15,16,17,18:ポリイミドフィルム、
19,20,21:積層基材、
51:ポリイミドフィルムの両側の金属層をビアを介して電気的に接続したポリイミド金属積層体、
52:両面配線基板、
103:開口部、
104:ブラインドビア、
105:、
106:めっきによる金属層、
107:レジスト層、
108:配線パターン、
111:スミア、
112:ビア底の加工残りによるスミア、
113:ポリイミド層の熱によるストレス残留部の模式的表示。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドフィルムの一部または全部の両側に金属層を有し、ポリイミドフィルムの両側の金属層をビアを介して電気的に接続したポリイミド金属積層体の製造方法であり、
1)レーザーを用いて、ポリイミドフィルムにビアを形成するビア形成工程、
2)レーザーでポリイミドフィルムに発生したストレスを、ポリイミドのβ緩和により低減させるストレス緩和工程
3)湿式化学デスミア処理を行なう化学デスミア工程、
4)上記1)のビア形成工程で形成したビアを介して、ポリイミドフィルムの両側を導通させる導通工程、
とを有することを特徴とするポリイミド金属積層体の製造方法。
【請求項2】
上記2)のストレス緩和工程は、レーザーでポリイミドフィルム内に発生したストレスを、ポリイミドフィルムの強いβ緩和が支配する領域温度である、[Tβ−1/4×(Tβ−T1)]の温度以上から[Tβ+3/4×(T2−Tβ)]の温度以下の範囲で熱処理を行うストレス緩和工程、であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド金属積層体の製造方法。
(但し、γ緩和に係わるtanδのピーク温度をTγ、
β緩和に係わるtanδのピーク温度をTβ、
α緩和に係わるtanδのピーク温度Tα、
β緩和の低温側の裾となる温度あるいはTγとTβの間の谷または変曲点となる温度をT1、
β緩和の高温側の裾となる温度あるいはTβとTαの間の谷または変曲点となる温度をT2とする。)
【請求項3】
上記1)のビア形成工程は、長波長の赤外光を利用したレーザーを用いて行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポリイミド金属積層体の製造方法。
【請求項4】
上記3)の化学デスミア工程は、酸化性を有するアルカリ水溶液による処理を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミド金属積層体の製造方法。
【請求項5】
上記1)のビア形成工程は、ポリイミドフィルムに直接レーザーを照射する、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリイミド金属積層体の製造方法。
【請求項6】
ポリイミドフィルムの厚みは、5〜38μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリイミド金属積層体の製造方法。
【請求項7】
上記4)の導通工程は、
無電解金属めっき、ダイレクトプレーティング法および導電性ペーストより選ばれる方法により電気的に導通させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリイミド金属積層体の製造方法。
【請求項8】
上記4)の導通工程は、
少なくともビア内面の一部または全部に金属層を形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリイミド金属積層体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−186377(P2012−186377A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49383(P2011−49383)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】