説明

ポリブタジエンを含んだ変性ポリイミド樹脂、その組成物及び硬化絶縁膜

【課題】 本発明は、加熱処理することによって得られた硬化絶縁膜(保護膜)が、反りが発生し難く(非カール性)、柔軟性があり、耐熱性、耐半田性が優れ、配線パターン、ポリイミドフィルム及び封止材料との密着性が良好であり、更に耐溶剤性、耐薬品性、耐屈曲性及び電気特性などが優れた絶縁膜用組成物の樹脂成分として好適な変性ポリイミド、及びその変性ポリイミドとエポキシ化合物とを用いた絶縁膜用組成物、その硬化絶縁膜などを提供することを目的とする。
【解決手段】 (a)ジイソシアネート化合物、(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含む一種類以上のジオール化合物、及び(c)2官能性水酸基末端イミドオリゴマーを反応して得られる変性ポリイミド樹脂、その変性ポリイミドとエポキシ化合物とを用いた絶縁膜用組成物及びの硬化絶縁膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶媒に可溶であり、耐熱性、柔軟性、封止材料との密着性に優れた変性ポリイミド樹脂と、それを用いた溶液組成物に関する。本発明の溶液組成物は、フレキシブル配線基板などの基材上にスクリーン印刷などの方法で良好に塗布が可能であり、低温硬化性を有する。本発明の溶液組成物を基材に塗布後加熱処理することによって得られる硬化膜は、反りが発生し難く(非カール性)、柔軟性があり、耐熱性、耐半田性が優れ、配線パターン、ポリイミドフィルム及び封止材料との密着性が良好であり、更に耐溶剤性、耐薬品性、耐屈曲性及び電気特性などが優れるため、電気電子部品などの絶縁膜(保護膜、ソルダレジスト、層間絶縁層など)として好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
近年、フレキシブル配線基板などの絶縁保護膜として、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂組成物が用いられている。それらの組成物の樹脂成分には、柔軟なオリゴマー成分としてポリブタジエン、ポリシロキサン、ポリカーボネートなどが導入されて、硬化膜に柔軟性、屈曲性、低そり性が付与されている。これらの中で、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性などに優れる樹脂組成物として、ポリイミド樹脂組成物(例えば特許文献1、2)が知られている。
【0003】
前記のポリイミド樹脂組成物は、テトラカルボン酸成分とジアミノポリシロキサン、芳香族ジアミンからなるジアミン成分とから得られるポリイミドシロキサンを主成分とし、これにエポキシ樹脂を加えた組成物であり、加熱処理による架橋反応によって、前記特性に加え、優れた柔軟性を有し、反りが小さく、基材への密着性及び電気的特性が優れた硬化絶縁膜を形成することができる。しかしながら、この硬化絶縁膜は、主成分のポリイミドシロキサンに含有されたポリシロキサン成分のために、封止材料との密着性が劣るという問題があった。
【0004】
硬化膜表面の密着性が優れた樹脂組成物として、ポリブタジエンを主鎖中に含有した変性ポリイミド樹脂を含むポリブタジエン含有ポリウレタンの樹脂組成物(例えば特許文献3)が知られている。この樹脂組成物は、基材として用いられるポリイミドフィルム、配線パターン及び封止材料との密着性を有し、またポリブタジエンが本来有している高い絶縁性のために絶縁信頼性に優れている。しかしながら、この硬化膜は、配線パターンのインナーリード部にICチップなどの電子部品を金バンプを用いて接続する場合、接続部において短時間ではあるが400℃程度以上の加熱処理がなされるため、接続部際の硬化膜に膨れを生じたり、半田を用いた電子部品の接続する場合、半田浴に浸漬すると膨れや剥がれが生じたりするなど、硬化膜の耐熱性が低いという問題があり、また硬化後に反りが残るという問題があった。
【0005】
一方、ポリイミドは耐熱性に優れるが、溶媒への溶解性や主鎖が剛直であるため柔軟なフィルムが得られないなどの問題がある。ポリイミドをオリゴマー化して溶解性を高めて他の樹脂成分との組成物へ組み込み易くし、更にオリゴマーの末端に水酸基を導入することで他の樹脂成分との高い反応性を付与した水酸基末端イミドオリゴマーと、エポキシ化合物との組成物(例えば特許文献4)が知られている。しかし、この水酸基末端イミドオリゴマーの組成物を加熱処理して得られる絶縁膜は、剛直であり、柔軟性や屈曲性に劣るという問題があった。
以上のように、柔軟性を有し、更に耐熱性と表面の密着性特に封止材料との密着性の両方を同時に満足する硬化絶縁膜を得ることは現状では困難であり、それらの性能を全て満足できる改良された絶縁膜用組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−36321号公報
【特許文献2】特開平7−304950号公報
【特許文献3】特開平11−199669号公報
【特許文献4】特開平2−191623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、加熱処理することによって得られた硬化絶縁膜(保護膜)が、反りが発生し難く(非カール性)、柔軟性があり、耐熱性、耐半田性が優れ、配線パターン、ポリイミドフィルム及び封止材料との密着性が良好であり、更に耐溶剤性、耐薬品性、耐屈曲性及び電気特性が優れる絶縁膜用組成物の樹脂成分として好適な変性ポリイミド、及びその変性ポリイミドとエポキシ化合物とを用いた絶縁膜用組成物、その硬化絶縁膜などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(a)ジイソシアネート化合物、(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含む一種類以上のジオール化合物、及び(c)下記化学式(1)で示される2官能性水酸基末端イミドオリゴマーを反応して得られる変性ポリイミド樹脂に関する。
【0009】
【化1】

(式中、Rは2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を示し、Xはテトラカルボン酸のカルボキシル基を除いた残基を示し、Yはジアミンのアミノ基を除いた残基を示し、mは0〜20の整数を示す。)
【0010】
また、本発明は、(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含む一種類以上のジオール化合物が(b)数平均分子量が500〜10000の2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含んでなること、(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含む一種類以上のジオール化合物が2官能性水酸基末端ポリブタジエン以外に(b)反応性極性基含有ジオール化合物を含んでなることに関し、また、(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含む一種類以上のジオール化合物が、(b)数平均分子量が500〜10000の2官能性水酸基末端ポリブタジエンと(b)反応性極性基含有ジオールとからなり、モル比で〔(b)+(b)〕/(a)が0.5〜2.5、且つ(b)/(b)が10以下の範囲内であることに関する。
【0011】
また、本発明は、下記化学式(2)で示される変性ポリイミド樹脂に関する。
【0012】
【化2】

(式中、Rは2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を示し、Xはテトラカルボン酸のカルボキシル基を除いた残基を示し、Yはジアミンのアミノ基を除いた残基を示し、mは0〜20の整数を示し、Zは2官能性水酸基末端ポリブタジエンの水酸基を除いた残基を示し、Wは2官能性水酸基末端ポリブタジエン以外のジオール化合物の水酸基を除いた残基を示し、Aはジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基を示し、s及びuはそれぞれ独立に1〜100の整数を示し、tは0〜100の整数を示す。)
【0013】
さらに、本発明は、(a)ジイソシアネート化合物と(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含む一種類以上のジオール化合物とを反応して得られる下記化学式(3)で示されるジイソシアネート化合物と、(c)下記化学式(4)で示される2官能性水酸基末端イミドオリゴマーとを反応することを特徴とする変性ポリイミド樹脂の製造方法に関する。
【0014】
【化3】

(式中、Zは2官能性水酸基末端ポリブタジエンの水酸基を除いた残基を示し、Wは2官能性水酸基末端ポリブタジエン以外のジオール化合物の水酸基を除いた残基を示し、Aはジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基を示し、sは1〜100の整数を示し、tは0〜100の整数を示す。)
【0015】
【化4】

(式中、Rは2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を示し、Xはテトラカルボン酸のカルボキシル基を除いた残基を示し、Yはジアミンのアミノ基を除いた残基を示し、mは0〜20の整数を示す。)
【0016】
さらに、本発明は、(A)前記の変性ポリイミド樹脂100重量部、(B)エポキシ化合物1〜50重量部、及び(C)有機溶媒とからなる変性ポリイミド樹脂組成物に関し、また、前記変性ポリイミド樹脂組成物が、さらに(D)硬化触媒を含有すること、さらに(E)微細なフィラーを含有することに関する。
【0017】
さらに、本発明は、前記の変性ポリイミド樹脂組成物を加熱処理して得られる硬化絶縁膜、及び前記の変性ポリイミド樹脂組成物を基材の塗布後、50〜210℃で加熱処理して硬化絶縁膜を形成する方法に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、有機溶媒に可溶であり、耐熱性、柔軟性、封止材料との密着性に優れた変性ポリイミド樹脂とその溶液組成物を得ることができる。本発明の溶液組成物は、フレキシブル配線基板などの基材上にスクリーン印刷などの方法で良好に塗布が可能であり、低温硬化性を有する。本発明の溶液組成物を基材に塗布後加熱処理することによって得られる硬化膜は、反りが発生し難く(非カール性)、柔軟性があり、耐熱性、耐半田性が優れ、配線パターン、ポリイミドフィルム及び封止材料との密着性が良好であり、更に耐溶剤性、耐薬品性、耐屈曲性及び電気特性などが優れるため、電気電子部品などの絶縁膜(保護膜、ソルダレジスト、層間絶縁層など)として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】参考例1で得られた2官能性水酸基末端イミドオリゴマーAのH−NMRスペクトルである。
【図2】参考例2で得られた2官能性水酸基末端イミドオリゴマーBのH−NMRスペクトルである。
【図3】参考例3で得られた2官能性水酸基末端イミドオリゴマーCのH−NMRスペクトルである。
【図4】実施例1で得られた変性ポリイミド樹脂のH−NMRスペクトルである。
【図5】実施例2で得られた変性ポリイミド樹脂のH−NMRスペクトルである。
【図6】実施例3で得られた変性ポリイミド樹脂のH−NMRスペクトルである。
【図7】実施例4で得られた変性ポリイミド樹脂のH−NMRスペクトルである。
【図8】実施例5で得られた変性ポリイミド樹脂のH−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の変性ポリイミド樹脂は、(a)ジイソシアネート化合物、(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含む一種類以上のジオール化合物、及び(c)下記化学式(5)で示される2官能性水酸基末端イミドオリゴマーを反応して得られる。
【0021】
【化5】

(式中、Rは2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を示し、Xはテトラカルボン酸のカルボキシル基を除いた残基を示し、Yはジアミンのアミノ基を除いた残基を示し、mは0〜20の整数を示す。)
【0022】
本発明の(a)ジイソシアネート化合物としては、1分子中にイソシアネ−ト基を2個有するものであればどのようなものでもよい。例えば、脂肪族、脂環族又は芳香族のジイソシアネ−ト、好ましくはイソシアネート基を除いて炭素数が2〜30の脂肪族、脂環族又は芳香族のジイソシアネ−トであり、具体的には1,4−テトラメチレンジイソシアネ−ト、1,5−ペンタメチレンジイソシアネ−ト、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、2,2,4−トリメチル−1,6−へキサメチレンジイソシアネ−ト、リジンジイソシアネ−ト、3−イソシアネ−トメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネ−ト(イソホロンジイソシアネ−ト)、1,3−ビス(イソシアネ−トメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ−ト、トリレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、1,5−ナフタレンジイソシアネ−ト、トリジンジイソシアネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト等を好適に例示することができる。
【0023】
また、本発明のジイソシアネ−ト化合物は、イソシアネ−ト基をブロック化剤でブロックしたブロックジイソシアネ−トを用いることができる。
前記ブロック化剤としては、例えばアルコ−ル系、フェノ−ル系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾ−ル系、尿素系、オキシム系、アミン系、イミド系化合物、ピリジン系化合物等があり、これらを単独あるいは混合して使用してもよい。具体的なブロック化剤としては、アルコ−ル系としてメタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、ブタノ−ル、2−エチルヘキサノ−ル、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルピト−ル、ベンジルアルコ−ル、シクロヘキサノ−ル等、フェノ−ル系として、フェノ−ル、クレゾ−ル、エチルフェノ−ル、ブチルフェノ−ル、ノニルフェノ−ル、ジノニルフェノ−ル、スチレン化フェノ−ル、ヒドロキシ安息香酸エステル等、活性メチレン系として、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等、メルカプタン系として、ブチルメルカプタン、 ドデシルメルカプタン等、酸アミド系として、アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等、酸イミド系として、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、イミダゾ−ル系として、イミダゾ−ル、2−メチルイミダゾ−ル、尿素系として、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等、オキシム系として、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等、アミン系として、ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール等、イミン系として、エチレンイミン、ポリエチレンイミン等、重亜硫酸塩として、重亜硫酸ソ−ダ等、ピリジン系として、2−ヒドロキシピリジン、2−ヒドロキシキノリン等が挙げられる。
【0024】
本発明の(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含む一種類以上のジオール化合物で用いられる、2官能性水酸基末端ポリブタジエンは、数平均分子量が500〜10000のものが好ましく、1000〜5000のものがより好ましい。数平均分子量が500未満になると好適な柔軟性が得難くなり、また数平均分子量が10000を越えると耐熱性や耐溶剤性が悪くなることがあるので前記程度のものが好適である。また、2官能性水酸基末端ポリブタジエンは、分子内に二重結合を有していても、分子内の二重結合を水添したものであってもよいが、分子内に二重結合が残っていると架橋反応を起こして柔軟性がなくなる場合があるので、特に好ましくは分子内の二重結合を水添されたものである。本発明で用いられる2官能性水酸基末端ポリブタジエンは、具体的には日本曹達株式会社製のGI−1000、GI−2000、出光石油化学株式会社製のR−45EPI、三菱化学株式会社製のポリテールHなどを好適に挙げることができる。
【0025】
本発明の(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含む一種類以上のジオール化合物は、2官能性水酸基末端ポリブタジエン単独でも、又は2官能性水酸基末端ポリブタジエンと他のジオール化合物との組合せでも構わない。本発明において、(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含む一種類以上のジオール化合物は、2官能性水酸基末端ポリブタジエンが(b)数平均分子量が500〜10000の2官能性水酸基末端ポリブタジエンであることが好ましく、また2官能性水酸基末端ポリブタジエンと組合せる他のジオール化合物が(b)反応性極性基含有ジオール化合物であることが好ましい。
本発明において、(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含む一種類以上のジオール化合物は、(b)数平均分子量が500〜10000の2官能性水酸基末端ポリブタジエンと(b)反応性極性基含有ジオール化合物とを含んでなること、特に(b)数平均分子量が500〜10000の2官能性水酸基末端ポリブタジエンと(b)反応性極性基含有ジオール化合物との組合せからなることが好適である。
【0026】
本発明において、2官能性水酸基末端ポリブタジエンと組合せて用いることが好適な反応性極性基含有ジオール化合物とは、分子中にエポキシ基あるいはイソシアネート基との反応性を有する極性基を持ったジオール化合物である。このような反応性極性基を変性ポリイミドの分子内に導入することによって、変性ポリイミド樹脂組成物を架橋する際に、効果的に架橋することが可能となり、得られる硬化絶縁膜の耐熱性や耐溶剤性を更に増大することができる。
前記反応性極性基含有ジオール化合物としては、特に限定するものではないが、置換基として活性水素を有するジオール化合物、例えばカルボキシル基やフェノール性水酸基を持ったジオール化合物が好ましく、特に置換基としてカルボキシル基やフェノール性水酸基を持った炭素数が1〜30更に炭素数が2〜20のジオール化合物が好適である。具体的には、カルボキシル基を有するジオール化合物として、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸などを挙げることができる。フェノール性水酸基を有するジオール化合物として、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾールなどを挙げることができる。
【0027】
本発明の(c)2官能性水酸基末端イミドオリゴマーは、下記化学式(6)で示すことができる。
【0028】
【化6】

(式中、Rは2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を示し、Xはテトラカルボン酸成分のカルボキシル基を除いた残基を示し、Yはジアミンのアミノ基を除いた残基を示し、mは0〜20の整数を示す。)
【0029】
この2官能性水酸基末端イミドオリゴマーは、テトラカルボン酸成分と、ジアミン化合物及び水酸基を1個有するモノアミン化合物からなるアミン成分とから得られる。前記式中mは0〜20の整数を示し、特に0〜10であり、更に好ましくは0〜5である。mが20以上では得られる絶縁膜の耐屈曲性が悪くなることがあるので前記程度のものが好適である。
【0030】
2官能性水酸基末端イミドオリゴマーのテトラカルボン酸成分としては、芳香族テトラカルボン酸、又はそれらの酸二無水物や低級アルコ−ルのエステル化物が、得られる変性ポリイミド樹脂の耐熱性が優れているのでの好適である。具体的には、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルエ−テルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ベンゼンジカルボン酸)ヘキサフルオロプロパン、ピロメリット酸、1,4−ビス(3,4−ベンゼンジカルボン酸)ベンゼン、2,2−ビス〔4−(3,4−フェノキシジカルボン酸)フェニル〕プロパン、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタンなどの芳香族テトラカルボン酸、又はそれらの酸二無水物や低級アルコ−ルのエステル化物、及びシクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2,4,5−テトラカルボン酸などの脂環族系テトラカルボン酸、又はそれらの酸二無水物や低級アルコ−ルのエステル化物を好適に挙げることができる。これらのなかでも特に2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルエ−テルテトラカルボン酸、及び2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、又はそれらの酸二無水物や低級アルコ−ルのエステル化物は、変性ポリイミドとしたときの有機溶媒に対する溶解性が優れているので好適である。
本発明において、テトラカルボン酸成分は、ジアミンと反応させることが容易なテトラカルボン酸二無水物を用いることが好ましい。
【0031】
本発明において、2官能性水酸基末端イミドオリゴマーを構成するアミン成分中のジアミン化合物は、特に限定されるものではなく、芳香族、脂環式及び脂肪族のジアミンを用いることができる。芳香族ジアミンは、具体的には1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2,5−ジハロゲノベンゼンなどのベンゼン1個を含むジアミン類、ビス(4−アミノフェニル)エ−テル、ビス(3−アミノフェニル)エ−テル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、ビス(3−アミノフェニル)メタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、o−ジアニシジン、o−トリジン、トリジンスルホン酸類などのベンゼン2個を含むジアミン類、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼンなどのベンゼン3個を含むジアミン類、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4’−(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、5,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセンなどのベンゼン4個以上を含むジアミン類などのジアミン化合物が挙げられる。脂環式ジアミンは、具体的にはイソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンなどを挙げることができる。脂肪族ジアミンは、具体的にはヘキサメチレンジアミン、ジアミノドデカンなどを挙げることができる。
【0032】
これらのジアミン化合物のうち、脂環式ジアミンを用いて得られた変性ポリイミド樹脂は、溶剤に対する溶解性が良好になって、均一に溶解した溶液にすることが容易になり、しかも耐熱性が優れ且つ密着性が良好になるので好適である。脂環式ジアミンとしては炭素数が4〜20のものが特に好適である。芳香族ジアミンを用いて得られた変性ポリイミドは、分子中にポリブタジエンユニットと芳香族イミドオリゴマーユニットが共存し、これらのユニットが溶解し易い溶媒種が互いに相反するために、均一に溶解した溶液にするのが困難になることがある。また、脂肪族ジアミンを用いると溶解性では問題を生じ難いが耐熱性が劣る場合がある。
【0033】
本発明において、2官能性水酸基末端イミドオリゴマーを構成するアミン成分中の水酸基を1個有するモノアミン化合物としては、分子中に水酸基とアミノ基とを各1個有する化合物であれば特に限定するものではないが、アミノエタノール、アミノプロパノール、アミノブタノールなどの水酸基を有する脂肪族モノアミン化合物特に炭素数が1〜10の水酸基を有する脂肪族モノアミン化合物、アミノシクロヘキサノールなどの水酸基を有する脂環式モノアミン化合物特に炭素数が3〜20の水酸基を有する脂環式モノアミン化合物、アミノフェノール、アミノクレゾール、4−ヒドロキシ−4’−アミノジフェニルエーテル、4−ヒドロキシ−4’−アミノビフェニル、アミノベンジルアルコール、アミノフェニチルアルコールなどの水酸基を有する芳香族モノアミン化合物特に炭素数が6〜20の水酸基を有する芳香族モノアミン化合物を好適に挙げることができる。
【0034】
本発明の2官能性水酸基末端イミドオリゴマーは、とりわけ、前記化学式(6)のmが0〜20の整数特に1〜20の整数であり、Xが4価の芳香族基、Yが炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基、且つRが炭素数1〜10の2価の脂肪族炭化水素基であるものが、溶解性や耐熱性が良好なので好適である。
【0035】
本発明において、2官能性水酸基末端イミドオリゴマーは、テトラカルボン酸成分と、ジアミン化合物及び水酸基を1個有するモノアミン化合物からなるアミン成分とを、テトラカルボン酸成分の酸無水物基(あるいは隣接する二個のカルボキル基等)の当量数と、アミン成分のアミノ基の当量数とが略等量となるようにして、有機溶媒中で重合及びイミド化反応させて得ることができる。具体的には、テトラカルボン酸成分(特にテトラカルボン酸二無水物)と、ジアミン化合物と水酸基を有するモノアミン化合物からなるアミン成分とを、酸無水基(または隣接するジカルボン酸基)とアミン成分のアミノ基とが略当量となるような割合で使用して、各成分を有機極性溶媒中で、約100℃以下、特に80℃以下の反応温度で反応させてアミド−酸結合を有するオリゴマーを生成し、次いで、そのアミド−酸オリゴマー(アミック酸オリゴマーともいう)を、約0℃〜140℃の低温でイミド化剤を添加するか或いは140℃〜250℃の高温で加熱して脱水・イミド化させる方法によって得ることができる。脱水・イミド化反応のとき、トルエンやキシレンを加えて、共沸によって縮合水を除去しながら反応させてもよい。
【0036】
2官能性水酸基末端イミドオリゴマーを製造する際に使用される有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、などのアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスホルムアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホンなどの硫黄原子を含有する溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノールなどのフェノール系溶媒、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラグライムなどのジグライム系溶媒、γ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒、イソホロン、シクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、ピリジン、エチレングリコール、ジオキサン、テトラメチル尿素などの其の他の溶媒、また必要に応じてベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらの有機溶媒は単独で用いても複数種を混合して用いても構わない。
【0037】
前述のようにして製造した2官能性水酸基末端イミドオリゴマーは、前記化学式(2)中のmが異なる複数の2官能性水酸基末端イミドオリゴマーからなる混合物になることがあるが、本発明において、mが異なる複数の2官能性水酸基末端イミドオリゴマーからなる混合物は、それぞれのイミドオリゴマーに分離して用いても構わないが、分離しないで混合物のままで好適に用いることができる。なお、2官能性水酸基末端イミドオリゴマーのm(混合物の場合はmの平均値)は、製造時のアミン成分中のジアミン化合物とモノアミン化合物との仕込み比(モル比)によって制御することができる。
また、前述のようにして製造した2官能性水酸基末端イミドオリゴマーは、その反応液を、そのまま又は適宜濃縮あるいは希釈して、変性イミドオリゴマー溶液として使用してもよい。また、その反応液を水等の非溶解性溶媒に注ぎ込んで、粉末状の生成物として単離して、必要な時にその粉末生成物を有機極性溶媒に溶解して使用してもよい。
【0038】
本発明の変性ポリイミド樹脂は、(a)ジイソシアネート化合物、(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含む一種類以上のジオール化合物、および(c)2官能性水酸基末端イミドオリゴマーとを反応して得られる。(a)(b)(c)各成分の組成比は、各成分合計の水酸基数/イソシアネート基数、具体的成分で示せば〔(b)+(c)〕/(a)のモル比が、0.5〜3.0好ましくは0.8〜2.5特に0.9〜2.0の割合にすることが好適である。(a)成分が多すぎると重合液が増粘することがあり好ましくない。さらに、(b)と(c)とは(b)/(c)のモル比が100〜0.01好ましくは10〜0.1の割合にすることが好ましい。(b)成分が多過ぎると耐熱性に劣り、(c)成分が多過ぎると柔軟性に劣るため好ましくない。
【0039】
また、本発明の変性ポリイミド樹脂の(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含む一種類以上のジオール化合物が、(b)数平均分子量が500〜10000の2官能性水酸基末端ポリブタジエンと(b)反応性極性基含有ジオール化合物との組合せからなる時には、(a)と〔(b)+(b)〕とは〔(b)+(b)〕/(a)のモル比が0.5〜2.5好ましくは0.8〜2.5の割合であって、且つ(b)と(b)とは(b)/(b)のモル比が0〜10好ましくは0〜5の割合であることが好適である。〔(b)+(b)〕/(a)の値が小さ過ぎると(c)成分の含有量が多くなり柔軟性に劣り、〔(b)+(b)〕/(a)の値が大きすぎると(c)成分の含有量が少なくなり耐熱性が劣るので、前記範囲の割合が好ましい。また、(b)と(b)との割合において、(b)反応性極性基含有ジオール化合物の割合が多過ぎると、変性ポリイミド樹脂溶液の粘度が高くなり過ぎたり、得られる硬化膜の吸湿性が大きくなり過ぎたりすることがあるので好ましくない。一方、(b)反応性極性基含有ジオール化合物の割合が少なすぎると、架橋密度が低くなり得られる硬化膜の耐熱性が低下し易くなるので好ましくない。
【0040】
本発明の変性ポリイミド樹脂は、好ましくは下記化学式(7)で示される変性ポリイミド樹脂である。
【0041】
【化7】

(式中、Rは2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を示し、Xはテトラカルボン酸のカルボキシル基を除いた残基を示し、Yはジアミンのアミノ基を除いた残基を示し、mは0〜20の整数を示し、Zは2官能性水酸基末端ポリブタジエンの水酸基を除いた残基を示し、Wは2官能性水酸基末端ポリブタジエン以外のジオール化合物の水酸基を除いた残基を示し、好ましくはWは反応性極性基含有ジオール化合物の水酸基を除いた残基を示し、Aはジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基を示し、s及びuはそれぞれ独立に1〜100の整数を示し、tは0〜100の整数好ましくは1〜100の整数を示す。)
本発明の前記化学式(7)の変性ポリイミドは、とりわけ、Rが炭素数1〜10の2価の脂肪族炭化水素基、Xが4価の芳香族基、Yが炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基、mが0〜20の整数特に1〜20の整数、Zが数平均分子量が500〜10000の2価の炭化水素基、Wがカルボキシル基を含有する炭素数が2〜20の炭化水素基、且つAが炭素数が2〜30の炭化水素基であるものが、溶解性や耐熱性が良好なので好適である。
なお、化学式(7)は、ウレタン結合を介して、2官能性水酸基末端ポリブタジエンユニット、反応性極性基含有ジオール化合物ユニット、及び2官能性水酸基末端イミドオリゴマーユニットが共重合したものであり、s、t、及びuは2官能性水酸基末端ポリブタジエンユニット、反応性極性基含有ジオール化合物ユニット、及び2官能性水酸基末端イミドオリゴマーユニットの重合度と構成比を示しているが、前記の各ユニットがブロック共重合していることを限定的に示しているのではない。化学式(7)では、2官能性水酸基末端ポリブタジエンユニット、反応性極性基含有ジオール化合物ユニット、及び2官能性水酸基末端イミドオリゴマーユニットがブロック共重合でもランダム共重合でも構わない。さらに、化学式(7)では、末端は明示していないが、末端は、そこに位置したジイソシアネート化合物又は前記各ユニットによって、イソシアネート基か又は水酸基になっている。
【0042】
本発明の変性ポリイミド樹脂は、(a)ジイソシアネート化合物、(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含む一種類以上のジオール化合物、および(c)2官能性水酸基末端イミドオリゴマーを有機溶媒中で反応して得られる。
【0043】
本発明においては、変性ポリイミド樹脂は、すべての成分を同時に有機溶媒に溶解して反応してもよいが、(c)2官能性水酸基末端イミドオリゴマーユニットがブロック的に連続した分子鎖が生成すると溶媒に不溶となって沈殿を生じ易くなるので、予め(a)ジイソシアネート化合物と(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含む一種類以上のジオール化合物とを、イソシアネート基が水酸基に対して過剰で反応して、下記化学式(8)で表わされる両末端イソシアネート化合物を合成し、次いで(c)2官能性水酸基末端イミドオリゴマーと反応させることが溶解性を保つうえで好ましい。
【0044】
【化8】

(式中、Zは2官能性水酸基末端ポリブタジエンの水酸基を除いた残基を示し、Wは2官能性水酸基末端ポリブタジエン以外のジオール化合物の水酸基を除いた残基を示し、好ましくはWは反応性極性基含有ジオール化合物の水酸基を除いた残基を示し、Aはジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基を示し、sは1〜100の整数を示し、tは0〜100の整数好ましくは1〜100の整数を示す。)
なお、化学式(8)は、ウレタン結合を介して、2官能性水酸基末端ポリブタジエンユニット及び反応性極性基含有ジオール化合物ユニットが共重合したものであり、s及びtは2官能性水酸基末端ポリブタジエンユニット及び反応性極性基含有ジオール化合物ユニットの重合度と構成比を示しているが、前記の各ユニットがブロック共重合していることを限定的に示しているのではない。化学式(8)では、2官能性水酸基末端ポリブタジエンユニット及び反応性極性基含有ジオール化合物ユニットがブロック共重合でもランダム共重合でも構わない。
【0045】
本発明の変性ポリイミド樹脂の製造方法を具体的に説明すると、(a)ジイソシアネート化合物と(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含む一種類以上のジオール化合物との反応は、無溶媒あるいは有機溶媒に溶解して行うことができる。反応温度は30℃〜150℃好ましくは30℃〜120℃であり、反応時間は通常1〜10時間である。この反応はイソシアネートが水分によって失活するのを防ぐために窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0046】
得られた一般式(4)で表わされるジイソシアネート化合物と(c)2官能性水酸基末端イミドオリゴマーとの反応は、有機溶媒中で、反応温度30℃〜150℃好ましくは30℃〜120℃、反応時間1〜10時間、窒素雰囲気下で好適に行うことができる。尚、この反応では、一般式(4)で表わされるジイソシアネート化合物のイソシアネート基数に対する(c)2官能性水酸基末端イミドオリゴマーの水酸基数の比(水酸基数/イソシアネート基数)は、0.5〜2.5好ましくは1.5〜2.5であることが好適である。0.5以下であれば、得られる変性ポリイミド樹脂の耐熱性が低く、2.5以上であれば硬化膜とした場合に硬くなりすぎるため、前述の範囲であることが好ましい。
【0047】
変性ポリイミド樹脂を製造する反応で好適に用いることができる有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタムなどのアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスホルムアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホンなどの硫黄原子を含有する溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノールなどのフェノール系溶媒、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラグライムなどのジグライム系溶媒、γ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒、イソホロン、シクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、ピリジン、エチレングリコール、ジオキサン、テトラメチル尿素などの其の他の溶媒、また必要に応じてベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらの溶媒は単独でもいくつかの溶媒の混合物であっても構わない。
【0048】
これらの溶媒の中でも、イソホロンは、変性ポリイミド樹脂に含まれる2官能性水酸基末端ポリブタジエンユニットと2官能性水酸基末端イミドオリゴマーユニットとの両方に対する溶解性が大きいために、変性ポリイミド樹脂を高濃度に溶解することができるので特に好適である。さらに反応溶媒であるイソホロンを変性ポリイミド樹脂組成物の溶媒にそのまま用いると、吸湿性が低く、沸点が高く揮発性が小さいために、スクリーン印刷インクの溶媒としても優れているために好適である。
【0049】
本発明において、変性ポリイミド樹脂は、有機溶媒に少なくとも3重量%以上、好ましくは5〜60重量%、特に5〜50%程度の高濃度で溶解させることができるもので、その溶液の25℃の溶液粘度(E型回転粘度計)が1〜10000ポイズ、特に1〜400ポイズであることが、本発明の変性ポリイミド樹脂組成物(溶液組成物)を好適に得ることができるので好ましい。
変性ポリイミド樹脂の分子量は、あまり大きくなりすぎると粘度が高くなりすぎて合成時に攪拌が困難になる。また、本発明の変性ポリイミド樹脂組成物の製造時や得られた樹脂組成物をスクリーン印刷などの方法で塗布する時の作業性が低下する。したがって、本発明の変性ポリイミド樹脂の数平均分子量は、3000〜50000であることが好ましく、4000〜40000であることがより好ましく、4000〜30000であることが特に好ましい。数平均分子量が3000以下であると、硬化絶縁膜の耐熱性や力学特性が低下する傾向がある。
【0050】
本発明の変性ポリイミド樹脂組成物は、前述の(A)変性ポリイミド樹脂100重量部、(B)エポキシ化合物1〜50重量部好ましくは2〜40重量部特に5〜35重量部、及び(C)有機溶媒とを含んで構成される。
前記エポキシ化合物としては、エポキシ当量が100〜4000程度であって、分子量が300〜10000程度である液状又は固体状のエポキシ樹脂が好ましい。例えば、ビスフェノールA型やビスフェノールF型のエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製:エピコート806、エピコート825、エピコート828、エピコート1001、エピコート1002、エピコート1003、エピコート1004、エピコート1055、エピコート1004AF,エピコート1007、エピコート1009、エピコート1010など)、3官能以上のエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製:エピコート152、エピコート154、エピコート180シリ−ズ、エピコート157シリ−ズ、エピコート1032シリ−ズ、住友化学工業株式会社製:スミエポキシELM100、ダイセル化学工業株式会社製:EHPE3150、チバガイギ−製:MT0163など)、末端エポキシ化オリゴマー(宇部興産株式会社製のハイカーETBN1300×40、ナガセケムテックス株式会社製のデナレックスR−45EPTなど)、エポキシ化ポリブタジエン(日本石油化学株式会社製:ポリブタジエンE−1000−8、E−1800−6.5、ダイセル化学工業株式会社製:エポリードPB3600など)、などを挙げることができる。
【0051】
本発明の変性ポリイミド樹脂組成物は、前記(A)(B)及び(c)に加えて、さらに(F)ブロック多価イソシアネート化合物1〜50重量部好ましくは2〜40重量部特に5〜35重量部を含んで構成されてもよい。エポキシ化合物及びブロック多価イソシアネート化合物の使用量は、多すぎると硬化後の絶縁膜の電気絶縁性が低下し、少なすぎると硬化後の絶縁膜の耐熱性、耐薬品性が悪くなるので前記範囲が好ましい。
【0052】
前記ブロック多価イソシアネ−ト化合物としては、特に、大日本インキ化学工業株式会社製のバーノックD−500(トリレンジイソシアネ−トブロック化体)、D−550(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−トブロック化体)、三井武田ケミカル株式会社製のタケネートタケネートB−830(トリレンジイソシアネ−トブロック化体)、B−815N(4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)ブロック化体)、B−842N(1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンブロック化体)、B−846N(1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンブロック化体)、B−874N(イソホロンンジイソシアネ−トブロック化体)、B−882N(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−トブロック化体)、旭化成株式会社製のデュラネートMF−B60X(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートブロック化体)、デュラネートMF−K60X(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートブロック化体)、第一工業製薬社製のエラストロンBN−P17(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト ブッロク化体)、エラストロンBN−04、エラストロンBN−08、エラストロンBN−44、エラストロンBN−45(以上、ウレタン変性多価イソシアネートブッロク化体1分子当たり3〜5官能、いずれも水エマルジョン品で乾燥単離後使用可能)などを好適に使用することができる。
【0053】
本発明の変性ポリイミド樹脂組成物は、封止材料との密着性を増大するために、前記(A)(B)及び(c)に加えて、さらに(G)2官能性水酸基末端ポリカーボネートを含有することができる。2官能性水酸基末端ポリカーボネートの添加量は、前述の(A)変性ポリイミド樹脂100重量部に対して1〜20重量部好ましくは1〜15重量部特に1〜10重量部である。2官能性水酸基末端ポリカーボネートの使用量は、前記範囲よりも多すぎると硬化後の絶縁膜の耐薬品性やタック性が低下し、少なすぎると硬化後の絶縁膜の封止材量との密着性が改良されないので前記範囲が好ましい。
前記2官能性水酸基末端ポリカーボネートとしては、数平均分子量が500〜10000のものが好ましく、500〜5000のものがより好ましい。数平均分子量が500未満になるとタック性が現れ易くなり、また数平均分子量が10000を越えると耐溶剤性が悪くなることがあるので前記程度のものが好適である。本発明で用いられる2官能性水酸基末端ポリカーボネートは、具体的には宇部興産株式会社製のエタナコールUH−CARB、エタナコールUN−CARB、エタナコールUD−CARB、エタナコールUC−CARB、ダイセル化学工業株式会社製のPLACCEL CD−PL、PLACCEL CD−H、クラレ株式会社製のクラレポリオールCなどを好適に挙げることができる。これらのポリカーボネートジオールは、単独で、または二種類以上組合せて用いられる。
【0054】
本発明の変性ポリイミド樹脂組成物は、異方性導電材料などとの密着性を増大するために、前記(A)(B)及び(c)に加えて、さらに(H)フェノール性水酸基を有する化合物を含有することができる。フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニルや、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール樹脂を挙げることができる。フェノール樹脂としては、明和化成株式会社製フェノールノボラックH−1、H−2、H−3、H−4、H−5、オルソクレゾールノボラックMER−130、トリフェノールメタン型MEH−7500、テトラキスフェノール型MEH−7600、ナフトール型MEH−7700、フェノールアラルキル型MEH−7800、MEH−7851、トリフェノール型R−3、ビスフェノールノボラック型MEP−6309、MEP−6309E、液状フェノールノボラックMEH−8000H、MEH−8005、MEH−8010、MEH−8015、MEH−8205などを挙げることができる。フェノール性水酸基を2個以上有する化合物を加える場合には、(A)変性ポリイミド樹脂100重量部に対して、0.1〜18重量部、好ましくは0.3〜15重量部、更に好ましくは0.5〜10重量部程度を添加するのが好適である。
【0055】
本発明の変性ポリイミド樹脂組成物には、更に変性ポリイミド樹脂とエポキシ化合物との間の架橋反応を促進するための(D)硬化触媒を含有することが好ましい。硬化促進触媒としては、イミダゾール類や3級アミン類が例示できる。硬化促進触媒の量は、エポキシ化合物100重量部に対して0.01〜25重量部程度特に0.1〜15重量部程度が好ましい。
【0056】
前記イミダゾール類としては、例えば2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−イミダゾールなど挙げることができる。
【0057】
前記3級アミンとしては、例えば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBUと略記することもある。以下同様)、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、トリエチレンジアミン(TEDA)、2−ジメチルアミノメチルフェノール(DMP−10)、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)、ジモルホリノジエチルエーテル(DMDEE)、1,4−ジメチルピペラジン、シクロヘキシルジメチルアミンなどを挙げることができる。
【0058】
本発明の変性ポリイミド樹脂組成物を構成する(C)有機溶媒としては、変性ポリイミド樹脂を合成する際に使用した有機溶媒をそのまま使用することができるが、好適には、含窒素系溶媒、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタムなど、含硫黄原子溶媒、例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ヘキサメチルスルホルアミドなど、含酸素溶媒、例えばフェノ−ル系溶媒、例えばクレゾ−ル、フェノ−ル、キシレノ−ルなど、ジグライム系溶媒例えばジエチレングリコ−ルジメチルエ−テル(ジグライム)、トリエチレングリコ−ルジメチルエ−テル(トリグライム)、テトラグライムなど、ケトン系溶媒例えば、アセトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、シクロヘキサノン、イソホロンなどエチレングリコール、ジオキサン、テトラヒドロフランなど、ラクトン系溶媒、例えばγ−ブチロラクトンなど、を挙げることができる。特に、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、トリエチレングリコ−ルジメチルエ−テルなどを好適に使用することができる。
【0059】
更に、本発明の変性ポリイミド樹脂組成物においては、(E)微細なフィラーを含有することが好ましい。微細なフィラ−であれば、どのような大きさ、形態のものでもよいが、平均粒子径が0.001〜15μm、特に0.005〜10μmのものが好ましい。この範囲外のものを使用すると得られる硬化絶縁膜が屈曲したときに亀裂が発生したり、折り曲げ部が白化したり、微細配線間を短絡することがあるので好ましくない。微細なフィラ−としては、例えば微粉状シリカ、タルク、硫酸バリウムなどの微細無機フィラ−や架橋NBR微粒子などの微細有機フィラ−を好適に挙げることができる。
【0060】
微細なフィラ−の使用量は、変性ポリイミド樹脂100重量部に対して、合計で5〜150重量部、好ましくは10〜125重量部である。使用量が、余り多すぎたり、余り少なすぎると塗膜の折り曲げによりクラックが発生したり、印刷性、半田耐熱性が影響を受けるので上記範囲が好適である。また、微細無機フィラー、特に微粉状シリカとタルク、マイカあるいは硫酸バリウムの少なくとも1種とを組合せて使用し、微粉状シリカを変性ポリイミド樹脂100重量部に対して1〜50重量部、特に5〜40重量部、タルク、マイカあるいは硫酸バリウムの少なくとも1種を変性ポリイミド樹脂100重量部に対して、5〜130重量部使用することが、印刷性や得られる絶縁膜の性能を考慮すると特に好ましい。
【0061】
また、本発明の変性ポリイミド樹脂組成物においては、有機着色顔料、無機着色顔料などの顔料を所定量、例えば変性ポリイミド樹脂100重量部に対して、0.1〜100重量部程度使用することができる。
また、本発明の変性ポリイミド樹脂組成物においては、消泡剤を所定量、例えば変性ポリイミド樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部程度使用することができる。
【0062】
本発明の変性ポリイミド樹脂組成物(溶液組成物)は、変性ポリイミド樹脂、エポキシ化合物、微細なフィラーおよび有機溶媒などの所定量を均一に、撹拌・混合することによって容易に得ることができる。有機溶媒に変性ポリイミド樹脂、エポキシ化合物、微細なフィラーなどを混合して変性ポリイミド樹脂組成物にすることができる。また変性ポリイミド樹脂を製造した時の反応溶液に、又はその反応溶液に適当な有機溶媒で追加して希釈したものにエポキシ化合物、微細なフィラーなど混合して変性ポリイミド樹脂組成物にすることができる。変性ポリイミド樹脂組成物で用いられる有機溶媒としては、前記変性ポリイミド樹脂を得る際に使用できる有機極性溶媒を挙げることができるが、沸点140℃以上で220℃以下のものを使用することが好ましい。特に沸点180℃以上、特に200℃以上である有機溶媒、例えばトリグライム(沸点216℃)、γ−ブチロラクトン(沸点204℃)、イソホロン(沸点213℃)などを使用すると、溶媒の蒸発による散逸が極めて減少するので、又その印刷インクを使用してスクリーン印刷などで印刷を支障なく好適に行うことができるので最適である。有機溶媒は、変性ポリイミド樹脂100重量部に対して30〜500重量部程度好ましくは60〜200重量部程度使用する。
【0063】
本発明の変性ポリイミド樹脂組成物は、特に限定するものではないが、室温(25℃)での溶液粘度が50〜10000ポイズ特に100〜1000ポイズ更に100〜600ポイズであることがスクリーン印刷などの作業性や溶液物性、得られる硬化絶縁膜の特性上などから適当である。
【0064】
本発明の変性ポリイミド樹脂組成物は、ICチップなどのチップ部品を実装する電気電子部品の絶縁膜(保護膜)を形成するために好適に用いることができる。
例えば、導電性金属箔で形成された配線パタ−ンを有する絶縁フィルムのパタ−ン面に、乾燥膜の厚さが3〜60μm程度となるようにスクリ−ン印刷などによって印刷して塗布した後、50〜100℃程度の温度で5〜60分間程度加熱処理して溶媒を除去し、次いで100〜210℃程度好適には110〜200℃で5〜120分間好適には10〜60分間程度で加熱処理して硬化させ、好適には弾性率が10〜500MPaの硬化絶縁膜を形成することが好ましい。本発明の変性ポリイミド樹脂用組成物は、反りが発生し難く、柔軟性が高く、導電性金属、基材及び封止材料との密着性が良好であり、耐熱性、半田耐熱性、耐溶剤性(例えば、アセトン、イソプロパノ−ル、メチルエチルケトン、N−メチル−2−ピロリドンに対する耐溶剤性)、耐薬品性、耐屈曲性及び電気特性が優れた硬化絶縁膜(保護膜)を形成することができる。
更に、本発明の変性ポリイミド樹脂絶縁膜用組成物は、50〜210℃程度特に60〜160℃の比較的低温の加熱処理によって硬化させて前記のような良好な性能を持った絶縁膜を形成することができる。
【0065】
また、本発明の変性ポリイミド樹脂組成物は、前記程度の低温圧着が可能でしかも耐熱性の接着剤として使用でき、多層配線基板の層間接着剤などに好適に使用することもできる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
以下の各例において測定、評価は次の方法で行った。
〔1H−NMRスペクトル〕
H−NMRスペクトルは、核磁気共鳴スペクトロメータ−(日本電子株式会社製AL−300)を用いて、試料を重ジメチルスルホキシドまたは重クロロホルムに溶解して測定した。
【0068】
〔溶液粘度〕
東機産業株式会社製粘度計TV−20を用い、温度25℃で、回転数10rpmにて測定した。
【0069】
〔GPC〕
島津製作所株式会社製LC−10(GPCカラムKF−80M×2、KF−802)を用い、THFを溶媒として測定を行い、ポリスチレン標準試料を用い、数平均分子量を求めた。
【0070】
〔引張弾性率〕
厚さがおよそ100μmになるように硬化させたシート状試料を、幅1cm、長さ7cmに切り出して試験に用いた。温度25℃、湿度50%RH、クロスヘット速度50mm/分、チャック間距離5cmで測定した。
なお、実施例6〜20及び比較例1〜2は80℃で30分間次いで150℃で60分間、実施例21〜22は80℃で30分間次いで120℃で90分間加熱処理して硬化させたシート状試料サンプルを用いた。
【0071】
〔硬化絶縁膜の評価〕
変性ポリイミド組成物を厚さ35μmの電解銅箔の光沢面に絶縁膜用組成物を厚さ約50μm厚に塗布し、80℃で30分間次いで120℃で60分間加熱処理、80℃で30分間次いで120℃で90分間加熱処理、又は80℃で30分間次いで150℃で60分間加熱処理し厚さ約20μm厚の絶縁膜を形成した。この硬化絶縁膜サンプルを用いて、以下の方法によって、折り曲げ性、封止材との密着性、半田耐熱性及び耐溶剤性を評価した。
【0072】
折り曲げ性の評価:
硬化絶縁膜サンプルをはぜ折りし、折り曲げ部の絶縁膜表面を観察した。異常なしの場合を○、クラック発生の場合を×で示した。
なお、実施例6〜20及び比較例1〜2は80℃で30分間次いで150℃で60分間、実施例21〜22は80℃で30分間次いで120℃で90分間加熱処理した硬化絶縁膜サンプルを用いた。
【0073】
封止材料との密着性の評価:
硬化絶縁膜サンプルの絶縁膜上にICチップ封止材料CEL−C−5020(日立化成工業株式会社製)を約1mm厚、直径0.5cm程度の円状に滴下して塗布し150℃で1時間加熱処理して封止材料を硬化させた。その後、手でサンプルを折り曲げ、封止樹脂のはがれ具合を観察した。絶縁膜で凝集破壊の場合及び絶縁膜/銅箔界面剥離の場合を可とし、絶縁膜/封止樹脂界面剥離の場合を不可とし、可の面積が70%以上の場合を○、30%〜70%の場合を△、30%以下の場合を×で示した。
なお、実施例6〜20及び比較例1〜2は80℃で30分間次いで120℃で60分間、実施例21〜22は80℃で30分間次いで120℃で90分間加熱処理した硬化絶縁膜サンプルを用いた。
【0074】
半田耐熱性の評価:
硬化絶縁膜サンプルの絶縁膜上にロジン系フラックス(サンワ化学工業株式会社製:SUNFLUX SF−270)を塗布した後、サンプルの絶縁膜を260℃の半田浴に10秒間接触させた。その後のサンプルの状態を観察して評価した。異常が生じない場合を◎、表面がやや荒れた場合を○、膨れたり融解した場合を×で示した。
なお、実施例6〜20及び比較例1〜2は80℃で30分間次いで150℃で60分間、実施例21〜22は80℃で30分間次いで120℃で90分間加熱処理した硬化絶縁膜サンプルを用いた。
【0075】
耐溶剤性の評価:
硬化絶縁膜サンプルを25℃のアセトンに1時間間浸漬した後、アセトンをしみ込ませた綿棒でラビング(荷重300−500g,ラビング角 45°)した。銅箔が見えるまでのラビング回数を測定した。
なお、実施例6〜20及び比較例1〜2は80℃で30分間次いで150℃で60分間、実施例21〜22は80℃で30分間次いで120℃で90分間加熱処理した硬化絶縁膜サンプルを用いた。
【0076】
電気絶縁性(体積抵抗)の測定:
80℃で30分間次いで150℃で60分間加熱処理した硬化絶縁膜サンプルをJIS C−2103によって測定した。
【0077】
以下の各例で使用した化合物、エポキシ樹脂、硬化触媒及び充填材について説明する。
〔テトラカルボン酸〕
2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(宇部興産株式会社製)
〔ジアミン〕
2,4−ジアミノトルエン(和光純薬株式会社製)
イソホロンジアミン(和光純薬株式会社製)
〔アミノアルコール〕
3−アミノプロパノール(和光純薬株式会社製)
〔反応性極性基含有ジオール〕
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(東京化成株式会社社製)
〔2官能性水酸基末端ポリブタジエン〕
水添ポリブタジエンポリオールGI−1000(日本曹達株式会社製、水酸基価:68.72KOHmg/g)
水添ポリブタジエンポリオールGI−2000(日本曹達株式会社製、水酸基価:46.2KOHmg/g)
〔ジイソシアネート化合物〕
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製)
〔溶剤〕
ジメチルアセトアミド(和光純薬株式会社製)
トルエン(和光純薬株式会社製)
シクロヘキサノン(和光純薬株式会社製)
イソホロン(和光純薬株式会社製)
γ―ブチロラクトン(和光純薬株式会社製)
〔エポキシ樹脂〕
エピコート157S70(ジャパンエポキシレジン株式会社製、エポキシ当量:200〜220)
エピコート828EL(ジャパンエポキシレジン株式会社製、エポキシ当量:184〜194)
エポリードPB3600(ダイセル化学工業株式会社製、エポキシ当量:194)
EHPE3150(ダイセル化学工業株式会社製、エポキシ当量:156)
日石ポリブタジエンE−1000−8(新日本石油化学株式会社製、エポキシ当量:200)
スミエポキシELM100(住友化学工業株式会社製、エポキシ当量:97)
〔ブロック多価イソシアネート化合物〕
バーノックD−550(大日本インキ化学工業株式会社製、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートブロック化体、ブロック化剤:メチルエチルケトオキシム)
〔2官能性水酸基末端ポリカーボネート〕
エタナコールUH−CARB200(宇部興産株式会社製、平均分子量2000)
クラレポリオールC−2015(株式会社クラレ製、平均分子量2000)
〔フェノール性水酸基を有する化合物〕
H−1(明和化成株式会社製、フェノールノボラック)
H−3(明和化成株式会社製、フェノールノボラック)
〔硬化触媒〕
キュアゾール2E4MZ(四国化成工業株式会社製、2−エチル−4−メチルイミダゾール)
〔微粉状シリカ〕
アエロジル130(日本アエロジル社製 比表面積(BET法):130m/g)
アエロジルR972:日本アエロジル社製 比表面積(BET法):110m/g)
アエロジルR974:日本アエロジル社製 比表面積(BET法):170m/g)
アエロジルR805:日本アエロジル社製 比表面積(BET法):150m/g)
アエロジルR812S:日本アエロジル社製 比表面積(BET法):220m/g)
アエロジルRX200:日本アエロジル社製 比表面積(BET法):140m/g)
【0078】
〔参考例1〕2官能性水酸基末端イミドオリゴマーAの製造
窒素導入管、ディーンスタークレシバー、冷却管を備えた容量500ミリリットルのガラス製セパラブルフラスコに、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物58.8g(0.20モル)、3−アミノプロパノール30g(0.40モル)、及びジメチルアセトアミド200ミリリットルを仕込み、窒素雰囲気下、100℃で1時間撹拌した。次いで、トルエン50ミリリットルを加え、180℃4時間加熱し、イミド化反応により生じた水をトルエンと共沸により除いた。反応溶液を水2リットルに投入して、生じた沈殿を濾取し、水洗後減圧乾燥し、2官能性水酸基末端イミドオリゴマーAの粉末43.16gを得た。この2官能性水酸基末端イミドオリゴマーAのH−NMRスペクトルを図1に示す。図1から、2官能性水酸基末端イミドオリゴマーAは化学式(1)のmが0の2官能性水酸基末端イミドオリゴマーであることが確認できた。
【0079】
〔参考例2〕2官能性水酸基末端イミドオリゴマーBの製造
窒素導入管、ディーンスタークレシバー、冷却管を備えた容量500ミリリットルのガラス製セパラブルフラスコに、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物58.8g(0.20モル)、イソホロンジアミン17.0g(0.10モル)、3−アミノプロパノール15.0g(0.20モル)、及びジメチルアセトアミド200ミリリットルを仕込み、窒素雰囲気下、100℃で1時間撹拌した。次いで、トルエン50ミリリットルを加え、180℃4時間加熱し、イミド化反応により生じた水をトルエンと共沸により除いた。反応溶液を水2リットルに投入して、生じた沈殿を濾取し、水洗後減圧乾燥し、2官能性水酸基末端イミドオリゴマーBの粉末78.8gを得た。この2官能性水酸基末端イミドオリゴマーBのH−NMRスペクトルを図2に示す。図2のプロパノールの2位メチレンプロトン(1.65〜1.85ppm)とビフェニルテトラカルボン酸イミドのフェニレンプロトン(7.50〜8.20ppm)の積分強度比から、2官能性水酸基末端イミドオリゴマーBは化学式(1)のm(平均値)が1の2官能性水酸基末端イミドオリゴマーであることが確認できた。
【0080】
〔参考例3〕2官能性水酸基末端イミドオリゴマーCの製造
窒素導入管、ディーンスタークレシバー、冷却管を備えた容量500ミリリットルのガラス製セパラブルフラスコに、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物29.4g(0.10モル)、2,4−ジアミノトルエン7.43g(0.061モル)、3−アミノプロパノール5.89g(0.078モル)、ジメチルアセトアミド100ミリリットルを仕込み、窒素雰囲気下、100℃で1時間撹拌した。次いで、トルエン50ミリリットルを加え、180℃4時間加熱し、イミド化反応により生じた水をトルエンと共沸により除いた。反応溶液を水2リットルに投入して、生じた沈殿を濾取し、水洗後減圧乾燥し、2官能性水酸基末端イミドオリゴマーCの粉末38.5gを得た。この2官能性水酸基末端イミドオリゴマーCのH−NMRスペクトルを図3に示す。図3のプロパノールの2位メチレンプロトン(1.65〜2.00ppm)とビフェニルテトラカルボン酸イミド及びトリレンのフェニレンプロトン(7.35〜8.30ppm)の積分強度比から、2官能性水酸基末端イミドオリゴマーCは化学式(1)のm(平均値)が1.6の2官能性水酸基末端イミドオリゴマーであることが確認できた。
【0081】
〔実施例1〕(a)ジイソシアネート化合物が4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンがGI−1000、及び(c)2官能性水酸基末端イミドオリゴマーが参考例1で製造した2官能性水酸基末端イミドオリゴマーA(化学式(1)のmが0、Rが3―アミノプロパノールのアミノ基を除いた残基)からなる変性ポリイミド樹脂の製造
窒素導入管を備えた容量100ミリリットルのガラス製フラスコに、GI−1000 10.0g(6.4ミリモル)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート3.20g(12.8ミリモル)、シクロヘキサノン13.2gを仕込み、窒素雰囲気下、80℃で1.5時間撹拌した。次いで、参考例1で製造した2官能性水酸基末端イミドオリゴマーA2.61g(6.4ミリモル)、シクロヘキサノン23.7gを加え、80℃で1.5時間撹拌した。得られた変性ポリイミド樹脂溶液は、ポリマ−固形分濃度40重量%、溶液粘度2.4Pa・sの溶液であった。GPCから求めた数平均分子量は20400であった。この変性ポリイミド樹脂のH−NMRスペクトルを図4に示す。
【0082】
〔実施例2〕(a)ジイソシアネート化合物が4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンがGI−1000、(b)反応性極性基含有ジオールが2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、及び(c)2官能性水酸基末端イミドオリゴマーが参考例2で製造した2官能性水酸基末端イミドオリゴマーB(化学式(1)のm(平均値)が1、Yがイソホロンジアミンのアミノ基を除いた残基、Rが3―アミノプロパノールのアミノ基を除いた残基)からなる変性ポリイミド樹脂の製造
窒素導入管を備えた容量100ミリリットルのガラス製フラスコに、GI−1000 7.86g(5.0ミリモル)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸0.168g(1.25ミリモル)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート2.56g(10.2ミリモル)、イソホロン10gを仕込み、窒素雰囲気下、80℃で1.5時間撹拌した。次いで、参考例2で合成した2官能性水酸基末端イミドオリゴマーB4.17g(5.0ミリモル)、イソホロン12.1gを加え、80℃で1.5時間撹拌した。得られた変性ポリイミド樹脂溶液は、ポリマ−固形分濃度40重量%、粘度6.3Pa・sの溶液であった。GPCから求めた数平均分子量は11000であった。この変性ポリイミド樹脂のH−NMRスペクトルを図5に示す。
【0083】
〔実施例3〕(a)ジイソシアネート化合物が4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンがGI−1000、(b)反応性極性基含有ジオールが2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、及び(c)2官能性水酸基末端イミドオリゴマーが参考例1で製造した2官能性水酸基末端イミドオリゴマーA(化学式(1)のmが0、Rが3―アミノプロパノールのアミノ基を除いた残基)からなる変性ポリイミド樹脂の製造
窒素導入管を備えた容量100ミリリットルのガラス製フラスコに、GI−1000 15.71g(10.0ミリモル)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸1.34g(10.0ミリモル)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート10.01g(40.0ミリモル)、イソホロン27.1gを仕込み、窒素雰囲気下、80℃で1.5時間撹拌した。次いで、参考例1で合成した2官能性水酸基末端イミドオリゴマーA8.16g(20.0ミリモル)、イソホロン25.8gを加え、80℃で1.5時間撹拌した。得られた変性ポリイミド樹脂溶液は、ポリマ−固形分濃度40重量%、粘度190Pa・sの溶液であった。GPCから求めた数平均分子量は20500であった。この変性ポリイミド樹脂のH−NMRスペクトルを図6に示す。
【0084】
〔実施例4〕(a)ジイソシアネート化合物が4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンがGI−2000、(b)反応性極性基含有ジオールが2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、及び(c)2官能性水酸基末端イミドオリゴマーが参考例2で製造した2官能性水酸基末端イミドオリゴマーB(化学式(1)のm(平均値)が1、Yがイソホロンジアミンのアミノ基を除いた残基、Rが3―アミノプロパノールのアミノ基を除いた残基)からなる変性ポリイミド樹脂の製造
窒素導入管を備えた容量100ミリリットルのガラス製フラスコに、GI−2000 11.0g(5.0ミリモル)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸0.335g(2.50ミリモル)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート3.33g(13.3ミリモル)、イソホロン10gを仕込み、窒素雰囲気下、80℃で1.5時間撹拌した。次いで、参考例2で合成した2官能性水酸基末端イミドオリゴマーB6.26g(7.5ミリモル)、イソホロン21.4gを加え、80℃で1.5時間撹拌した。得られた変性ポリイミド樹脂溶液は、ポリマ−固形分濃度40重量%、粘度5.5Pa・sの溶液であった。GPCから求めた数平均分子量は7400であった。この変性ポリイミド樹脂のH−NMRスペクトルを図7に示す
【0085】
〔実施例5〕(a)ジイソシアネート化合物が4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンがGI−1000、及び(c)2官能性水酸基末端イミドオリゴマー2官能性水酸基末端イミドオリゴマーが参考例3で製造した2官能性水酸基末端イミドオリゴマーC(化学式(1)のm(平均値)が1.6、Yが2,4−ジアミノトルエンのアミノ基を除いた残基、Rが3―アミノプロパノールのアミノ基を除いた残基)からなる変性ポリイミド樹脂の製造
窒素導入管を備えた容量100ミリリットルのガラス製フラスコに、GI−1000 10.0g(6.4ミリモル)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート3.20g(12.8ミリモル)を仕込み、窒素雰囲気下、80℃で1.5時間撹拌した。次いで、参考例3で合成した2官能性水酸基末端イミドオリゴマーC6.46g(6.4ミリモル)、γ−ブチロラクトン29.5gを加え、80℃で1.5時間撹拌した。得られた変性ポリイミド樹脂溶液は、ポリマ−固形分濃度40重量%、粘度1.7Pa・sの溶液であった。GPCから求めた数平均分子量は6300であった。この変性ポリイミド樹脂のH−NMRスペクトルを図8に示す
【0086】
〔実施例6〕
ガラス製容器に、実施例1で得た変性ポリイミド樹脂溶液、変性ポリイミド樹脂100重量部に対してエポキシ樹脂のエピコート157S70を10重量部、及びアミン系硬化触媒の2E4MZを0.4重量部加え、均一に撹拌・混合して変性ポリイミド樹脂組成物を得た。この変性ポリイミド樹脂組成物の硬化時の引張弾性率を測定した。またこの変性ポリイミド組成物を銅箔に塗布し加熱処理して硬化絶縁膜サンプルを作成し、折り曲げ性、封止材料との密着性、半田耐熱性、耐溶剤性および電気絶縁性について評価した。それらの結果を表2に示す。
【0087】
〔実施例7〜20〕
表1に示す種類と量の組成成分を配合した以外は実施例6と同様にして、変性ポリイミド樹脂組成物を得た。これらの変性ポリイミド樹脂組成物について、実施例6と同様にして、引張弾性率、折り曲げ性、封止材料との密着性、半田耐熱性、耐溶剤性および電気絶縁性について測定した。それらの結果を表2に示す。
【0088】
〔比較例1〕
窒素導入管を備えた容量300ミリリットルのガラス製セパラブルフラスコに、GI−1000 40.0g(25.5ミリモル)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート12.8g(51.0ミリモル)を仕込み、窒素雰囲気下、120℃で1.5時間撹拌した。次いで2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物7.50g(25.5ミリモル)、シクロヘキサノン87.1gを加え、180℃で4時間撹拌した。得られた変性ポリイミド樹脂溶液は、変性ポリイミド樹脂がジイソシアネート化合物と2官能性水酸基末端ポリブタジエンを用いたが、化学式(1)で示される2官能性水酸基末端イミドオリゴマーは用いないで、その代わりに芳香族テトラカルボン酸成分を用いたものであり、ポリマ−固形分濃度40重量%、粘度130Pa・sの溶液であった。GPCから求めた数平均分子量は9400であった。この変性ポリイミド樹脂溶液に、実施例6と同様に変性ポリイミド固形分100重量部に対してエポキシ樹脂のエピコート157S70を10重量部、アミン系硬化触媒の2E4MZを0.4重量部加えて、均一に撹拌・混合して変性ポリイミド樹脂組成物を得た。この変性ポリイミド樹脂組成物について、実施例6と同様の測定・評価を行った結果を表2に示す。
【0089】
〔比較例2〕
ガラス製容器に、参考例1で合成した2官能性水酸基末端イミドオリゴマーA100重量部、硬化材としてフェノール・ホルムアルデヒド樹脂H−3 60重量部、γ−ブチロラクトン80重量部を加え、80℃に加熱して溶解し、その後室温まで冷却した。さらにエポキシ樹脂のエピコート828EL 200重量部、2E4MZ 2重量部を加え均一に撹拌混合して、2官能性水酸基末端イミドオリゴマー組成物を得た。この2官能性水酸基末端イミドオリゴマー組成物について、実施例6と同様の測定・評価を行った結果を表2に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【0092】
〔実施例21〕
ガラス製容器に、実施例2で得た変性ポリイミド樹脂溶液、変性ポリイミド樹脂100重量部に対してエポキシ樹脂のエポリードPB3600を10重量部、多価イソシアネートのバーノックD−550を20重量部、ポリカーボネートジオールのクラレポリオールC−2015を2.5重量部、アミン系硬化触媒の2E4MZを0.8重量部、微粉状シリカのアエロジルR972を20重量部を加え、均一に撹拌・混合して変性ポリイミド樹脂組成物を得た。この変性ポリイミド樹脂組成物の硬化時の引張弾性率を測定した。またこの変性ポリイミド組成物を銅箔に塗布し加熱処理して硬化絶縁膜サンプルを作成し、折り曲げ性、封止材料との密着性、半田耐熱性、耐溶剤性および電気絶縁性について評価した。それらの結果を表3に示す。
【0093】
〔実施例22〕
ガラス製容器に、実施例2で得た変性ポリイミド樹脂溶液、変性ポリイミド樹脂100重量部に対してエポキシ樹脂のエポリードPB3600を10重量部、多価イソシアネートのバーノックD−550を20重量部、ポリカーボネートジオールのエタナコールUH−CARB200を2.5重量部、フェノール性水酸基を有する化合物のH−1を2.5重量部、アミン系硬化触媒の2E4MZを0.8重量部、微粉状シリカのアエロジルR972を20重量部を加え、均一に撹拌・混合して変性ポリイミド樹脂組成物を得た。この変性ポリイミド樹脂組成物の硬化時の引張弾性率を測定した。またこの変性ポリイミド組成物を銅箔に塗布し加熱処理して硬化絶縁膜サンプルを作成し、折り曲げ性、封止材料との密着性、半田耐熱性、耐溶剤性および電気絶縁性について評価した。それらの結果を表3に示す。
【0094】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、加熱処理することによって得られた硬化絶縁膜(保護膜)が、反りが発生し難く(非カール性)、柔軟性があり、耐熱性、耐半田性が優れ、配線パターン、ポリイミドフィルム及び封止材料との密着性が良好であり、更に耐溶剤性、耐薬品性、耐屈曲性及び電気特性などが優れた絶縁膜用組成物の樹脂成分として好適な変性ポリイミド、及びその変性ポリイミドとエポキシ化合物とを用いた絶縁膜用組成物、その硬化絶縁膜などを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ジイソシアネート化合物、(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含む一種類以上のジオール化合物、及び(c)下記化学式(1)で示される2官能性水酸基末端イミドオリゴマーを反応して得られる変性ポリイミド樹脂。
【化1】

(式中、Rは2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を示し、Xはテトラカルボン酸のカルボキシル基を除いた残基を示し、Yはジアミンのアミノ基を除いた残基を示し、mは0〜20の整数を示す。)
【請求項2】
(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含む一種類以上のジオール化合物が、(b)数平均分子量が500〜10000の2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含んでなることを特徴とする請求項1に記載の変性ポリイミド樹脂。
【請求項3】
(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含む一種類以上のジオール化合物が、2官能性水酸基末端ポリブタジエン以外に(b)反応性極性基含有ジオール化合物を含んでなることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の変性ポリイミド樹脂。
【請求項4】
(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含む一種類以上のジオール化合物が、(b)数平均分子量が500〜10000の2官能性水酸基末端ポリブタジエンと(b)反応性極性基含有ジオールとからなり、モル比で〔(b)+(b)〕/(a)が0.5〜2.5、且つ(b)/(b)が0〜10の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の変性ポリイミド樹脂。
【請求項5】
下記化学式(2)で示される変性ポリイミド樹脂。
【化2】

(式中、Rは2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を示し、Xはテトラカルボン酸のカルボキシル基を除いた残基を示し、Yはジアミンのアミノ基を除いた残基を示し、mは0〜20の整数を示し、Zは2官能性水酸基末端ポリブタジエンの水酸基を除いた残基を示し、Wは2官能性水酸基末端ポリブタジエン以外のジオール化合物の水酸基を除いた残基を示し、Aはジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基を示し、s及びuはそれぞれ独立に1〜100の整数を示し、tは0〜100の整数を示す。)
【請求項6】
(a)ジイソシアネート化合物と(b)2官能性水酸基末端ポリブタジエンを含む一種類以上のジオール化合物とを反応して得られる下記化学式(3)で示されるジイソシアネート化合物と、(c)下記化学式(4)で示される2官能性水酸基末端イミドオリゴマーとを反応することを特徴とする変性ポリイミド樹脂の製造方法。
【化3】

(式中、Zは2官能性水酸基末端ポリブタジエンの水酸基を除いた残基を示し、Wは2官能性水酸基末端ポリブタジエン以外のジオール化合物の水酸基を除いた残基を示し、Aはジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基を示し、sは1〜100の整数を示し、tは0〜100の整数を示す。)
【化4】

(式中、Rは2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を示し、Xはテトラカルボン酸のカルボキシル基を除いた残基を示し、Yはジアミンのアミノ基を除いた残基を示し、mは0〜20の整数を示す。)
【請求項7】
(A)請求項1〜5のいずれかに記載の変性ポリイミド樹脂100重量部、(B)エポキシ化合物1〜50重量部、及び(C)有機溶媒とからなる変性ポリイミド樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、(D)硬化触媒を含有することを特徴とする請求項7に記載の変性ポリイミド樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、(E)微細なフィラーを含有することを特徴とする請求項7〜8のいずれかに記載の変性ポリイミド樹脂組成物。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の変性ポリイミド樹脂組成物を加熱処理して得られる硬化絶縁膜。
【請求項11】
請求項7〜9のいずれかに記載の変性ポリイミド樹脂組成物を基材の塗布後、50〜210℃で加熱処理して硬化絶縁膜を形成する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−52220(P2011−52220A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224580(P2010−224580)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【分割の表示】特願2005−262831(P2005−262831)の分割
【原出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】