説明

ポータブルトイレ

【課題】排泄物容器を水により洗浄できるポータブルトイレを提供する。
【解決手段】ポータブルトイレは、使用者が着座する着座部1と、排泄物を受ける排泄物容器3と、着座部1及び排泄物容器3を有する基体4とを具備する。排泄物容器3を洗浄する排泄物容器洗浄部8が設けられている。排泄物容器洗浄部8により排泄物容器3を洗浄できるため、排泄物容器3を衛生的に維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衛生性を高めたポータブルトイレに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、使用者が着座する着座部と、使用者の排泄物を受ける排泄物容器と、着座部及び排泄物容器を有する基体とを備えるポータブルトイレが開示されている。排泄物容器は、使用者から排出された排泄物等の排泄物を受けるものである。このものによれば、着座部に着座している使用者の尻部の排便後の局部を洗浄する第1の局部洗浄ノズルが使用者の排便後の局部に対面可能となるように基体に据え付けられている。
【0003】
更に、使用者が高齢者や障害者等である場合には、第1の局部洗浄ノズルによる洗浄だけでは、排便後の局部を十分に洗浄できないおそれがある。このため、介助者が使用者の局部を洗浄するための局部洗浄用の第2の洗浄ノズルが設けられている。そして、介助者が第2の局部洗浄ノズルを操作し、第2の局部洗浄ノズルから吐出される水を、使用者(被介助者)の排便後の局部に当てて、使用者(被介助者)の排便後の局部を洗浄できるようにしている。この公報にかかる技術によれば、第2の洗浄ノズルは、介助者が使用者(被介助者)の局部を洗浄するための局部洗浄用のものであることが記載されている。この公報にかかる技術によれば、第1の局部洗浄ノズルへの給水、第2の局部洗浄ノズルへの給水は共通のポンプにより行われる。
【特許文献1】特開2002−209796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したポータブルトイレはベッド等の近傍に位置するように居住室内に設置されることが多いため、排泄物容器が汚れていると、周囲に悪臭を招く。このため排泄物容器は常に衛生的であることが要請されている。
【0005】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、排泄物容器を水により洗浄でき、排泄物容器の衛生性を高めることができるポータブルトイレを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係るポータブルトイレは、使用者が着座する着座部と、使用者の排泄物を受ける排泄物容器と、着座部及び排泄物容器を有する基体とを具備するポータブルトイレにおいて、排泄物容器を洗浄する排泄物容器洗浄部が設けられていることを特徴とするものである。この場合、排泄物容器洗浄部から吐出される水により排泄物容器内を洗浄できるため、排泄物容器を衛生的に維持できる。
【0007】
第2発明に係るポータブルトイレは、使用者が着座する着座部と、使用者の排泄物を受ける排泄物容器と、着座部及び排泄物容器を有する基体とを具備するポータブルトイレにおいて、着座部に着座している使用者の局部を洗浄する局部洗浄部が設けられており、且つ、排泄物容器を洗浄する排泄物容器洗浄部が設けられていることを特徴とするものである。この場合、着座部に着座している使用者の局部を、局部洗浄部 から吐出される水により洗浄できるため、使用者の局部を衛生的にできる。更に、排泄物容器洗浄部から吐出される水により排泄物容器内を洗浄できるため、排泄物容器を衛生的に維持できる。
【発明の効果】
【0008】
第1発明に係るポータブルトイレによれば、排泄物容器洗浄部から吐出される水により排泄物容器の排泄物収容室等を洗浄できるため、排泄物容器を衛生的に維持できる。
【0009】
第2発明に係るポータブルトイレによれば、着座部に着座している使用者の局部を局部洗浄部により洗浄できるため、着座部に着座する使用者の局部を衛生的にできる。更に、排泄物容器が汚れているときであっても、排泄物容器洗浄部から吐出される水により排泄物容器の排泄物収容室等を洗浄できるため、排泄物容器を衛生的に維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係るポータブルトイレは、使用者が着座する着座部と、使用者の排泄物を受ける排泄物容器と、着座部及び排泄物容器を有する基体と、排泄物容器を洗浄する排泄物容器洗浄部とを備える。排泄物容器洗浄部は、水を吐出させて排泄物容器の壁面に付着している汚れを清掃するためのものである。排泄物容器洗浄部については、ポータブルトイレに搭載されている水タンク等の給水源から給水しても良いし、あるいは、ポータブルトイレとは別体の給水源(例えば水道管)から給水しても良い。
【0011】
好ましくは、排泄物容器洗浄部に給水可能な水タンクと、水タンクの水を排泄物容器洗浄部に給水する第1給水手段とが、基体に設けられている。水タンクは基体に対して着脱式でも良いし、基体に固定されている固定式でも良い。水タンクは、基体の後部側に設けられていても良いし、基体の底部側または側面側に設けられていても良い。第1給水手段は水タンクの水を排泄物容器洗浄部に給水するものであり、モータを有する電動ポンプ、あるいは、手動ポンプを例示できる。
【0012】
好ましくは、着座部に着座している使用者の局部を洗浄する局部洗浄部が設けられている。この場合、局部洗浄部に給水可能な水タンクの他に、水タンクの水を局部洗浄部に給水する第2給水手段が、基体に設けられていることが好ましい。水タンクと着座部との間に位置すると共に水タンクへの給水作業を保護する仕切部材が基体に設けられている形態を例示できる。この場合、水タンクへの給水作業が仕切部材により保護される。故に、高齢者や障害者等の使用者が着座部に着座しているときにおいても、使用者に邪魔されることなく、介助者等は水タンクに水を補給する補給作業を良好に行うことができる。仕切り機能を高めるため、仕切部材の上面の高さ位置は、水タンクの上面よりも高いことが好ましい。なお仕切部材は背もたれ部を兼用することができる。
【0013】
排泄物容器洗浄部に繋がる給水経路と、局部洗浄部に繋がる給水経路とは互いに独立している形態を例示できる。この場合、排泄物容器洗浄部に繋がる給水経路に第1給水手段が設けられている形態を採用できる。また、局部洗浄部に繋がる給水経路に第2給水手段が設けられている形態を採用できる。更には、排泄物容器洗浄部に繋がる給水経路と、局部洗浄部に繋がる給水経路とは一体的である形態を採用しても良い。排泄物容器洗浄部に繋がる給水経路にはヒータが設けられている形態を例示することができる。この場合、排泄物容器洗浄部を温水で洗浄できるため、排泄物容器の汚れを除去し易い。また、排泄物容器洗浄部から吐出される温水の温度を可変に調整する温度調整スイッチが設けられている形態を例示することができる。この場合、温水の温度を調整できるため、排泄物容器を洗浄するのに有利である。
【0014】
排泄物容器洗浄部は、基体から所定長持ち運び可能であり、使用者の局部および/または下半身に対面して洗浄可能である形態を例示することができる。この場合、排泄物容器洗浄部を給水ホース等の可撓配管につなげることができる。この場合、排泄後の使用者(被介護者)の局部および/または下半身を水または温水により洗浄することができる。この場合、身体が不自由であるため浴室に頻繁には行くことができないものの、かといってベッドまたは布団の上に横たわった状態で介護者に局部洗浄してもらうまでには至らぬ不自由さをもつ被介護者にとっては、朗報となる。
【0015】
また、局部洗浄部に繋がる給水経路にヒータが設けられている形態を例示することができる。この場合、使用者の局部(排便局部または女性局部のうちの少なくとも一方)を温水で洗浄できる。また、排泄物容器洗浄部に繋がる給水経路にはヒータが設けられておらず、局部洗浄部に繋がる給水経路にはヒータが設けられている形態を例示することができる。この場合、使用者の局部を洗浄する水を加熱できるため、使用者の局部を洗浄する際における不快感を無くし得る。また排泄物容器を洗浄する水を加熱しないため、熱エネルギーを節約することができる。
【0016】
あるいは、排泄物容器洗浄部に繋がる給水経路にはヒータが設けられており、且つ、局部洗浄部に繋がる給水経路にもヒータが設けられている形態を例示することができる。この場合、使用者の局部を温水で洗浄するばかりか、排泄物容器を温水で洗浄できるため、排泄物容器の汚れを除去し易い。
【0017】
好ましくは、着座部に前かがみ姿勢で着座している使用者の腕部を支えると共に使用者の前面に対面するレスト部が基体の前部側に設けられている形態を例示できる。排便時に使用者が前かがみの姿勢で長い時間着座部に着座するときであっても、使用者の前かがみの姿勢をレスト部により良好に維持できるため、便秘気味の高齢者の排便に適する。但し、レスト部が設けられていないタイプでも良い。
【0018】
好ましくは、着座部に着座する使用者の顔が指向する方向を前方とし、着座部に着座する使用者の背中が指向する方向を後方とし、前方と前記後方とを結ぶ方向に対して交差する方向を幅方向とするとき、基体は、前方に向けて引き出し可能なスライド部材と、スライド部材の下方に位置して基体の前部に設けられ着座部に着座する使用者の脚に対面する前板部とを有する形態を採用することができる。この場合、平面視において、スライド部材及び前板部は、幅方向の中央部が幅方向の両端部よりも前方に突出している。このため、使用者が着座部に着座するとき、使用者の脚部(左脚部、右脚部)の脚もとのスペースが確保され易くなり、使用者は着座部に着座し易くなる利点が得られる。
【0019】
また、好ましくは、着座部に着座する使用者の顔が指向する方向を前方とし、着座部に着座する使用者の背中が指向する方向を後方とし、前方と後方とを結ぶ方向に沿った断面において、基体は、基体の前部に設けられ着座部に着座する使用者の脚に対面する前板部を有する形態を採用することができる。この場合、前板部の前面の下部は、前板部の前面の上部よりも後方に退避している。このように前板部の前面の下部が前板部の前面の上部よりも後方に退避していると、着座部に着座している使用者の脚もとのスペースを良好に確保できる。従って、使用者が着座部に着座するとき、使用者の脚部の足首付近のスペースが確保され易くなり、使用者は着座部に着座し易くなる利点が得られる。更に、着座部に着座している使用者が立ち上がり易くなる利点が得られる。殊に、前板部の下部が前板部の上部よりも後方に退避するように、前板部の前面が傾斜していることが好ましい。
【実施例1】
【0020】
以下、本発明の実施例1について図1〜図11を参照して具体的に説明する。本実施例に係るポータブルトイレは、図1に示すように、使用者の尻部が着座する着座部1を有する局部洗浄装置2と、排泄物を受ける排泄物容器3と、着座部1及び排泄物容器3を有する基体4とを備える。基体4は、木質系の固定フレーム40と、固定フレーム40に前方(矢印F方向)に引き出し可能に設けられた木質系のスライド部材7とを備える。ここで前方とは、着座部1に着座する使用者の顔が向く方向を意味する。後方とは、着座部1に着座する使用者の背中が向く方向を意味する。固定フレーム40は、外バケツ5を収容可能な容器収容室42と、床面側に配置された底板部43と、基体4の前部側に設けられた前支柱44mと、底板部43よりも上側に設けられた中板部45と、使用者の肘掛けとして機能する肘掛け部46と、基体4の後部4r側において底板部43から上方に向けて縦方向に延設された後支柱として機能する背板部47と、背板部47に架設され使用者の背中に対面する比較的厚肉のクッション性を有する背もたれ部48と、着座部1の高さ位置を調整する高さ調整機構49とを有する。なお、固定フレーム40は後部側に、移動用の転動可能なキャスター40wを有する。固定フレーム40の前側を持ち上げれば、キャスター40wによりポータブルトイレを容易に移動させることができる。
【0021】
局部洗浄装置2は、局部洗浄部20を搭載する本体部21と、本体部21に上下方向に揺動可能に枢支された便座で形成された着座部1とを備える。局部洗浄部20は、使用者の排便後の局部を洗浄する第1局部洗浄部20fと、女性局部を洗浄するビデ用の第2局部洗浄部20sとで形成されている。局部洗浄部20はノズル式とされており、基体4のうち着座部1の後部側に設けられており、着座部1に着座する使用者の局部に対面可能とされている。但し、第1局部洗浄部20f及びビデ用の第2局部洗浄部20sとのうちのいずれか一方としても良い。
【0022】
図1に示すように、排泄物容器3は、上面に開口30を有する排泄物収容室31をもつ樹脂を基材とする内バケツで形成されており、後部3r側に凹部35を有する。排泄物容器3は回動可能な取っ手32を有する。排泄物容器3の開口30を閉鎖する着脱可能な容器蓋36が設けられている。容器蓋36は、指先で摘む摘み部37を有する。更に、外バケツ5は樹脂を基材としており、上面に形成された開口50を有すると共に排泄物容器3を収容可能な収容室51と、上面の開口50から外方に鍔状に延設されたフランジ部52と、フランジ部52の後部に設けられた凹部55とを有する。凹部55は排泄物容器3の凹部35と対面する。凹部35,55は、主として、局部洗浄部20(20f,20s)との衝突を避けるために凹んでいるものである。
【0023】
フランジ部52の上面には、着座部1を載せて支持する載置面53が形成されている。外バケツ5は基体4の固定フレーム40の容器収容室42内に着脱可能に収容される。排泄物容器3は外バケツ5の収容室51内に着脱可能に収容される。
【0024】
図2に示すように、排泄物容器3内に挿入されて排泄物容器3内を洗浄する棒状をなす排泄物容器洗浄部8が設けられている。排泄物容器洗浄部8は基体4に対して別体をなしており、所定距離持ち運び可能とされており、先端部に水を噴出するノズル部8kと、指先で掴むことが可能な把手部8hとを有する。ノズル部8kは、棒状の排泄物容器洗浄部8の軸芯PA方向に沿って水を吐出する。この場合、ノズル部8kから吐出される水の水圧は、設計の単純化を図るため一段でも良いし、あるいは、複数段に切替可能であっても良い。ノズル部8kから吐出される水としては、水の噴出の拡開角度が大きいシャワー噴出の形態でも良いし、あるいは、シャワー噴出でない形態でも良い。周囲への水の飛散を抑えるためには、水の噴出の拡開角度はあまり大きくない方が良いといえる。
【0025】
排泄物容器洗浄部8は、水の噴出停止、水の噴出を切り替えるスイッチ部80を有する。排泄物容器洗浄部8に給水可能な水タンク84が基体4に設けられている。水タンク84は基体4の後部4r、つまり、着座部1に着座する使用者の背中側においてタンクホルダ部4xを介して設けられている。水タンク84は後方を向いている。水タンク84は、縦長の偏平容器状をなす四角タンク形状をなしており、上面84u、側面84s、後面84r、前面84fとをもつ。水タンク84は、厚み寸法t1は幅寸法、高さ寸法に比較して小さいので、水タンク84がポータブルトイレに搭載されていても、ポータブルトイレの設置スペースの増大は防止されている。水タンク84は、水タンク84の上部に設けられ水道水等の水を補給する補給口85と、補給口85を開閉する着脱可能な蓋部材86とを有する。補給口85は水タンク84の上部に設けられているため、給水作業に有利である。補給口85の高さ位置は、背もたれ部48(仕切部材)の上面48u、背板部47の上端47uよりも低く設定されている。このため介助者が水タンク84の補給口85に給水しているとき、背もたれ部48は、着座部1に着座している使用者と、介助者による給水作業との分離性を高めることができる。また、背もたれ部48が着座部1と水タンク84との間に設けられているため、使用者の背中が水タンク84に直接的に接触することが抑制される。
【0026】
図2に示すように、水タンク84には水量を示すインジケータ84wが設けられている。図2に示すように、ワイヤ等の線状体で形成された支持部87が水タンク84の後面84rに掛けられて水タンク84の支持性が高められている。水タンク84の側面84sの下部には給水具88が設けられている。なお、水タンク84の側面84sには、排泄物容器洗浄部8を引っかけて仮保持するホルダー84xが設けられている。
【0027】
図2に示すように、可撓性を有する給水管としての給水ホース89(可撓配管)の一端部89aは給水具88に接続されており、給水ホース89の他端部89cは排泄物容器洗浄部8の基端部に接続されている。給水ホース89は3次元的な可撓性を有すると共に、所定の長さを有する。従って、排泄物容器洗浄部8は給水ホース89の長さに相当するぶん移動可能とされている。なお、排泄物容器3を基体4から外したときであっても、排泄物容器3が基体4の近傍に設置されていれば、給水ホース89により排泄物容器洗浄部8は排泄物容器3に届くようになっている。従って排泄物容器洗浄部8から吐出される水により排泄物容器3を掃除することができる。
【0028】
図3に示すように、水タンク84は、上側に設けられ水を収容可能なタンク室84aと、タンク室84aの下側に設けられた制御室84cとを有する。タンク室84aの水容量は、排泄物容器3の洗浄処理と使用者の局部洗浄処理とをそれぞれ所定回数実行できるように設定されている。
【0029】
図3に示すように、制御室84cは、タンク室84aに互いに独立して繋がる第1給水経路91及び第2給水経路92と、第1給水経路91に設けられ排泄物容器洗浄部8に給水可能な第1給水手段93と、第2給水経路92に設けられ局部洗浄部20(20f、20s)に給水可能な第2給水手段96と、コントローラ99とを有する。コントローラ99は、第1信号線93sを介して第1給水手段93を制御すると共に、第2信号線96sを介して第2給水手段96を制御する。第1給水手段93は、給水機能を有する第1電動ポンプ94と、第1電動ポンプ94を駆動させる第1モータ95とを備えている。第2給水手段96は、給水機能を有する第2電動ポンプ97と、第2電動ポンプ97を駆動させる第2モータ98とを備えている。コントローラ99にはアダプタ90を介して商用電源(AC100ボルト)が接続される。
【0030】
上記した第1給水手段93の第1電動ポンプ94及び第2給水手段96の第2電動ポンプ97は、互いに独立して駆動する。故に、第1電動ポンプ94が故障等により停止したとしても、第2電動ポンプ97は駆動可能である。第2電動ポンプ97が故障等により停止したとしても、第1電動ポンプ94は駆動可能である。
【0031】
上記したように本実施例によれば、第1給水手段93の第1電動ポンプ94及び第2給水手段96の第2電動ポンプ97とは互いに独立して駆動するように設定されている。このため排泄物容器洗浄部8に給水する水圧と、局部洗浄部20(20f、20s)に給水する水圧とを同じとしても良いし、異なる値とすることもでき、水圧設定の自由度を高めることができる。また、排泄物容器洗浄部8に給水する単位時間あたりの水量と、局部洗浄部20(20f、20s)に給水する単位時間当たりの水量とを同じとしても良いし、異なる値とすることもでき、水量設定の自由度を高めることができる。換言すると、排泄物容器洗浄部8に給水する水圧P1と、局部洗浄部20(20f、20s)に給水する水圧P2とを、排泄物容器3の洗浄に要請される洗浄力、局部洗浄に要請される洗浄力等に応じて個別に設定できる。なお、P1=P2またはP1≒P2でも良いし、P1>P2でも良いし、P1<P2でも良い。また排泄物容器洗浄部8に給水する単位時間当たりの水量V1と、局部洗浄部20(20f、20s)に給水する単位時間当たりの水量V2とを、排泄物容器3の洗浄に要請される洗浄力、局部洗浄に要請される洗浄力等に応じて個別に設定できる。なお、V1=V2またはV1≒V2でも良いし、V1>V2でも良いし、V1<V2でも良い。
【0032】
なお、コストダウンを考慮すると、第1給水手段93の第1電動ポンプ94及び第2給水手段96の第2電動ポンプ97は、同種のものを採用できる。
【0033】
タンク室84aには水位検知手段84eが設けられている。水位検知手段84eの水位信号は信号線84fを介してコントローラ99に入力される。水タンク84内の水は局部洗浄部20と排泄物容器洗浄部8の双方に共用される。なお、タンク室84aの水位が過剰に低減すると、コントローラ99は第1給水手段93及び第2給水手段96を停止させ、表示LED等の報知手段によりその旨を報知する。
【0034】
第2給水経路92は、水タンク84のタンク室84aと局部洗浄部20(20f、20s)とを繋ぐ給水通路であり、局部洗浄装置2に内蔵されている。第2給水経路92の水を加熱する電気式のヒータ25が局部洗浄装置2に組み込まれている。本実施例によれば、局部洗浄部20(20f、20s)に供給させる水をヒータ25により加熱できるため、使用者の局部を温水により洗浄することができる。このため局部洗浄時における不快感を発生させない。これに対して、第1給水経路91は排泄物容器洗浄部8に繋がるものであるが、第1給水経路91の水は使用者の局部に直接触れるものではないため、水を加熱する要請は少なく、ヒータは設けられていない。従って、排泄物容器洗浄部8に供給される水の温度は基本的にはタンク室84aの水温である。このため電気エネルギの低減に貢献できる。
【0035】
本実施例によれば、図4はスライド部材7の平面視を示す。図4に示すようにスライド部材7は枠状をなしており、前側に形成された引き出し操作部70と、外バケツ5を収容する開口72mを有する枠部72とを備えている。スライド部材7の枠部72の上面には、外バケツ5のフランジ部52が載置可能される載置面73が形成されている。従ってスライド部材7の枠部72の上面の載置面73に外バケツ5のフランジ部52を載せ得るようにされている。図5は、スライド部材7の開口72mに外バケツ5を嵌め込みつつ、スライド部材7の枠部72の上面の載置面73に外バケツ5のフランジ部52を載せた状態を示す。
【0036】
本実施例によれば、使用者が着座部1に着座するときには、着座部1に着座している荷重は着座部1を介して外バケツ5のフランジ部52に伝わる。ここで、スライド部材7は前後に分割した分割部品ではなく、単一部品である。このため外バケツ5のフランジ部52の全体を単一部品であるスライド部材7の載置面53に載せるため、荷重の支持性を高めることができる。
【0037】
スライド部材7の引き出し操作部70は、基体4の固定フレーム40に対して前方(矢印F方向)に引出し可能とされている。スライド部材7の引き出し操作部70を前方(矢印F方向)に引き出せば、スライド部材7は基体4の固定フレーム40から引き出し可能とされているため、スライド部材7に保持されている外バケツ5も前方(矢印F方向)に引き出され、外バケツ5に収容されている排泄物容器3も前方(矢印F方向)に引き出される。
【0038】
局部洗浄機能を有しない従来のポータブルトイレによれば、局部洗浄装置2が基体4に設けられていない。このため従来のポータブルトイレによれば、排泄物容器3の後部3rと局部洗浄部20との干渉が発生しないため、着座部1を上方に揺動させた状態で、排泄物容器3を基体4の固定フレーム40に対してそのまま上方に持ち上げれば、排泄物容器3を固定フレーム40から取り外すことができるものであった。
【0039】
しかしながら、局部洗浄機能を有するタイプのポータブルトイレによれば、局部洗浄装置2が基体4に設けられており、ノズル式の局部洗浄部20の先端部の水吐出口が排泄物容器3の排泄物収容室31に臨むように配置されることが多い。更に、局部洗浄部20の先端部の水吐出口から吐出される水を排泄物収容室3が受け止め必要があるため、排泄物収容室3の後部3rは局部洗浄部20の後方に位置することになる。この場合、着座部1を上方に揺動させた状態で、排泄物容器3をそのまま上方に持ち上げれば、排泄物容器3の後部3rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20とが干渉する(図5参照)。
【0040】
そこで本実施例によれば、前方(矢印F方向)にスライド可能なスライド部材7の載置面73に外バケツ5のフランジ部52を載せると共に、その外バケツ5内に排泄物容器3を収容する方式が採用されている。そして排泄物容器3内の排泄物を廃棄するとき、図6に示すように、排泄物容器3を収容する外バケツ5のフランジ部52を載せたスライド部材7の引き出し操作部70を介助者等が前方(矢印F方向)に向けて少しスライド(ΔS)させる。このスライドに伴い、図6に示すように、外バケツ5の後部5r、排泄物容器3の後部3rが前方(矢印F方向)に移動し、排泄物容器3の後部3rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20との干渉が回避される。更に、外バケツ5の後部5rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20との干渉が回避される。
【0041】
上記のように干渉を回避した状態で、介助者等が排泄物容器3を上方(矢印Y1方向)に持ち上げれば、排泄物容器3の後部3rと局部洗浄部20とを干渉させることなく、排泄物容器3を持ち上げて外バケツ5から離脱させることができる。そして、離脱させた排泄物容器3内に溜まっている排泄物Wを廃棄することができ、排泄物容器3の清掃処理に便利である。また、上記のように干渉を回避した状態で、外バケツ5を上方(矢印Y1方向)に持ち上げれば、局部洗浄部20と外バケツ5の後部5rとを干渉させることなく、外バケツ5を持ち上げて基体4の容器収容室42から離脱させることができる。従って、外バケツ5の清掃処理も便利である。
【0042】
ところで、スライド部材7を前方に引き出す際に、スライド部材7に支持されている排泄物容器3や外バケツ5の全体が基体4の固定フレーム40から完全に離脱するまで、スライド部材7を前方に移動させる方式も考えられる。しかしながらこの場合には、排泄物容器3を前方にスライドさせる距離が長い関係上、排泄物容器3の排泄物収容室31内に貯留されている汚水の水面WAがスライドに伴い揺動して、汚水が排泄物容器3の周囲に飛散するおそれがあり、好ましくない。この点本実施例によれば、スライド部材7に支持されている排泄物容器3や外バケツ5の全体が基体4の固定フレーム40から離脱するまでスライド部材7を前方に移動させずとも良い。即ち、前記したようにスライド部材7のスライド(スライド量ΔS)により、排泄物容器3の後部3rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20との干渉を回避でき、また、外バケツ5の後部5rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20との干渉を回避できる。上記のように干渉を回避した状態で、排泄物容器3を上方に持ち上げたり、外バケツ5を上方に持ち上げる方式が採用されている。このため排泄物容器3を載せたスライド部材7をスライドさせる距離 (ΔS)が少しで済み、スライド部材7に支持されている排泄物容器3の排泄物収容室31内の汚水の水面WAの揺動を抑えることができ、汚水の飛散を抑えることができる。
【0043】
本実施例に係るポータブルトイレの一般的な清掃方法について説明を加える。まず、排泄物容器3の開口30が露出している状態において、図7に示すように、棒状の排泄物容器洗浄部8を排泄物容器3の排泄物収容室31に対面させつつ挿入する。そして、排泄物容器洗浄部8のスイッチ80を操作し、第1給水手段93を駆動させる。これにより第1電動ポンプ94により排泄物容器洗浄部8に給水し、排泄物容器洗浄部8のノズル部8kから水を吐出させる。このように排泄物容器洗浄部8のノズル部8kから吐出した水により、排泄物容器3内を洗浄することができ、排泄物容器3を衛生的にできる。
【0044】
また外バケツ5を清掃したいときには、外バケツ5を露出させる。この状態において、棒状の排泄物容器洗浄部8を外バケツ5の収容室51に挿入し、排泄物容器洗浄部8から噴出した水により外バケツ5内を洗浄する。給水ホース89は可撓性を有するため、排泄物容器洗浄部8の位置、向きを任意に変えることができるため、排泄物容器3や外バケツ5の清掃に便利である。排泄物容器3に水を貯めておきたいときには、排泄物容器洗浄部8のノズル部8kから水を排泄物容器3内に吐出させれば良い。なお、排泄物容器洗浄部8のノズル部8kから吐出される水は、局部洗浄の場合とは異なり、ヒータ25で加熱されていないため、一般的には常温水である。
【0045】
更に説明を加える。図8に示すように、排泄物容器3に容器蓋36が被着されているときには、排泄物容器3の容器蓋36の後部36rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20(20f,20s)とが干渉し、容器蓋36を上方に持ち上げることができず、ひいては容器蓋36を外すことができないおそれがある。そこで前述したように、図9に示すように、着座部1を上方に揺動させて退避位置にさせた状態で、容器蓋36を被着した排泄物容器3をセットしているスライド部材7を前方(矢印F方向)に少しスライド(スライド量=ΔS)させれば、排泄物容器3の容器蓋36の後部36rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20との干渉が直ちに回避される(図9参照)。このため図10に示すように容器蓋36を上方に持ち上げて排泄物容器3から外すことができる。そして、容器蓋36を外した状態で、排泄物容器洗浄部8を排泄物容器3内に挿入し、排泄物容器洗浄部8から吐出した水により排泄物容器3を洗浄することができる。必要に応じて、図11に示すように排泄物容器3を持ち上げて外バケツ5の収容室51から取り外すこともできる。
【0046】
本実施例によれば、図2に示すように、水タンク84は基体4の後部4rの背もたれ部48の後方に、つまり、着座部1に着座する使用者の背中側において設けられている。更に、背もたれ部48の上面48uの高さ位置は補給口85の高さ位置よりも高く設定されている。このため、背もたれ部48の後方においてやかん等の貯水容器または水道ホース等を用いて水タンク4の補給口85へ介助者等が給水作業している作業中において、着座部1に着座している使用者が動いたとしても、使用者の身体がやかん等の貯水容器または水道ホース等に当たることが抑制され、水タンク84の補給口85への給水作業を損なうことが抑えられている。従って背もたれ部48は、着座部1に着座する使用者に対する背もたれ機能を有する他に、着座スペースとタンクスペースとを仕切る仕切部材としての機能を有する。
【0047】
更に、本実施例の実施例効果について図4(A)(B)を参照して説明を加える。ここで、前記したように、着座部1に着座する使用者の顔が指向する方向を前方(矢印F方向)とし、着座部1に着座する使用者の背中が指向する方向を後方(矢印R方向)とし、前方と前記後方とを結ぶ方向に対して交差する方向を幅方向(矢印W方向)とする。スライド部材7の前端部に形成されている引き出し操作部70、前板部44は、着座部1に着座する使用者の脚部に対面する。この場合、図4(A)に示す平面視において、スライド部材7の引き出し操作部70では、幅方向の中央部70cが幅方向の両端部70eよりも前方(矢印F方向)に突出している。換言すると、スライド部材7の引き出し操作部70では、幅方向の中央部70cよりも、幅方向の両端部70eは後方(矢印R方向)に退避している。
【0048】
スライド部材7の引き出し操作部70と重なる前板部44(基体4の一部)についても同様である。すなわち、図7に示すように、前板部44の前面44fでは、幅方向の中央部44cが幅方向の両端部44eよりも前方(矢印F方向)に突出している。換言すると、前板部44の前面44fでは、幅方向の中央部44cよりも幅方向の両端部44eがポータブルトイレの前後方向の後方(矢印R方向)に向けて退避している。このため、比較例として、スライド部材の引き出し操作部の前面、前板部の前面を幅方向(矢印W方向)に沿った仮想線WA(図4(A)参照)に設定している形態に比較し、仮想線WAの後方にスペースS100が確保される。故に、使用者が着座部1に着座するとき、使用者の脚部(左脚部、右脚部)のスペースが確保され易くなり、使用者は着座部1に着座し易くなる利点が得られ、高齢者、障害者などの使用に適する。便座である着座部1について、幅方向の中央部が幅方向の両端部よりも突出しているためである。
【0049】
また本実施例によれば、前方と後方とを結ぶ方向に沿った断面(図4(B))に示すように、着座している使用者の脚が対面する前板部44については、これの下部44dがこれの上部44uよりも後方(矢印R方向)に退避するように、前板部44の前面44fが傾斜している。このように前板部44の前面44fが後方(矢印R方向)に退避するように傾斜していれば、着座部1に着座している使用者の脚もとのスペースを一層確保できるため、使用者の身体を支える足首を後方に寄らせて身体の重心に近づけることができ、使用者は着座部1に着座し易くなる利点が得られる。更に着座中の使用者が立ち上がるときにも、立ち上がりが楽となり、高齢者、障害者などの使用に適する。
【0050】
また本実施例によれば、排泄後の使用者(被介護者)の局部を局部洗浄部20で洗浄する他に、排泄物容器洗浄部8は給水ホース89の長さ相当ぶん持ち運び可能であるため、排泄後の使用者(被介護者)の局部および/または下半身を、排泄物容器洗浄部8のノズル部8kから吐出される水により洗浄することも期待できる。この場合、身体が不自由であるため浴室に頻繁には行くことができないものの、かといってベッドまたは布団の上に横たわった状態で介護者に局部洗浄してもらうまでには至らぬ不自由さをもつ被介護者にとっては、朗報となる。
【実施例2】
【0051】
図12は実施例2を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。排泄物容器洗浄部8の給水ホース89の一端部89aに繋がる接続部89mは、カプラ式とされている。カプラ式の接続部89mは、水タンク84の給水具88から着脱可能とされている。排泄物容器洗浄部8を長期間使用しない場合には、排泄物容器洗浄部8の給水ホース89に繋がるカプラ式の接続部89mを、水タンク84の給水具88から外しておく。このようにすれば、排泄物容器洗浄部8が邪魔にならない。なお、このように給水具88と接続部89mとを離脱させた状態でも、水タンク84の給水具88から水が漏れないように設定されている。給水具88は、弁口と、弁口を開閉する弁体と、弁体を閉鎖方向に付勢するバネ部材とを有するためである。給水具88と接続部89mとを離脱させた状態では、バネ部材のバネ力により弁体で弁口を閉鎖するが、このとき弁口から水が漏れないようにバネ部材のバネ力によりシールされる。給水具88と接続部89mとを接続させた状態では、バネ部材に抗しつつ弁口を開放する。
【0052】
本実施例において、排泄物容器洗浄部8から吐出される水で排泄物容器3を洗浄するときには、カプラ式の接続部89mを水タンク84の給水具88に接続する。そして前述したように、着座部1を上方に揺動させて退避させると共に、排泄物容器洗浄部8を排泄物容器3の開口30に対面させつつ挿入する。この状態で、排泄物容器洗浄部8のスイッチ80を操作し、第1給水手段93を駆動させて第1電動ポンプ94により排泄物容器洗浄部8に給水し、排泄物容器洗浄部8から水を噴出させる。
【実施例3】
【0053】
図13は実施例3を示す。本実施例は実施例2と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。排泄物容器洗浄部8か給水ホース89の一端部89aに繋がる接続部89mはカプラ式とされている。なお、給水具88と接続部89mとを離脱させた状態でも、水タンク84の給水具88から水が漏れないように設定されている。
【0054】
カプラ式の接続部89mは、水タンク84の給水具88から着脱可能とされている。カプラ式の接続部89mを水タンク84の給水具88から外すと共に、水タンク84の側面84sに付設されているホルダ部84tから給水ホース89を取り外す。更に、支持部87を上方に回動させて水タンク84から外す。これにより水タンク84を基体4から取り外す。
【0055】
このように基体4から取り外した水タンク84を、水道の蛇口等の給水設備に移送する。そして給水設備から水タンク84の補給口85に水を供給する。このうように水を水タンク84に供給したら、水タンク84を再び基体4にセットすると共に、支持部87を下方に回動操作させて水タンク84に掛けることにより水タンク84の支持性を高める。更に給水ホース89のカプラ式の接続部89mを水タンク84の給水具88に接続する。
【実施例4】
【0056】
図14は実施例4を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。図14に示すように、着座部1に着座している使用者の腕部を支えるレスト部100が基体4の前部4f側に設けられている。レスト部100は、着座部1に着座している使用者の前面に対面する。排便時には、一般的に、使用者は前かがみの姿勢で長い時間、着座部1に着座することが多い。特に高齢者等には便秘気味な者が多く、便秘気味の使用者は、着座部1に着座しつつ、長い時間、前かがみの姿勢となることが多い。このため、着座部1に着座している使用者の腕部を支えるレスト部100が基体4の前部4f側に設けられている。レスト部100は、着座部1に着座している使用者の腕部を支える使用位置(図14参照)と、着座部1に着座している使用者の腕部を支えない退避位置とに切替可能とされている。このため本実施例によれば、レスト部100を使用位置に切り替えれば、使用者は前かがみの姿勢で長い時間着座部1に着座するときであっても、使用者の前かがみの姿勢をレスト部100により良好に維持できるため、便秘気味の高齢者の排便に適する。使用者が前かがみの姿勢となると、ポータブルトイレの重心が前方に寄るが、水を貯留する水タンク84が基体4の固定フレーム40の後部側に設けられているため、基体4の安定性は確保される。
【0057】
使用者がポータブルトイレの移乗するとき、レスト部100が邪魔になるため、レスト部100は、着座部1に着座している使用者の腕部を支えない退避位置に切替られる。退避位置に設定するにあたり、レスト部100は基体4の肘掛け部46に対して完全に分離可能とされている。あるいは、レスト部100の一端部100aをヒンジ機構100bにより矢印U1,U2方向に揺動可能に枢支している。この場合、レスト部100の他端部100cを上方向(矢印U1方向)に揺動させて180度以上回動させる。
【実施例5】
【0058】
図15は実施例5を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。図15に示すように本実施例によれば、実施例1と同様に、局部洗浄部20(20f、20s)に供給させる水をヒータ25により加熱できるため、使用者の局部を温水により洗浄することができる。このため局部洗浄時における不快感を発生させない。更に、排泄物容器洗浄部8に繋がる第1給水経路91にもヒータ25Bが付設されている。従って、排泄物容器洗浄部8に供給する水を加熱して温水にできる。故に、使用者の局部を局部洗浄部20の温水で洗浄するばかりか、排泄物容器洗浄部8のノズル部8kから吐出される温水で排泄物容器3を洗浄することができるため、排泄物容器3の汚れを除去し易い。ヒータ25およびヒータ25Bはコントローラ99により制御される。
【0059】
本実施例によれば、排泄物容器洗浄部8の給水ホース89は可撓性を有するため、三次元的に容易に位置調整できる。従って、排泄後の使用者(被介護者)の局部および/または下半身を排泄物容器洗浄部8の温水により洗浄することも期待できる。この場合、身体が不自由であるため浴室に頻繁には行くことができないものの、かといってベッドまたは布団の上に横たわった状態で介護者に局部洗浄してもらうまでには至らぬ不自由さをもつ被介護者にとっては、朗報となる。
【0060】
本実施例によれば、ヒータ25により加熱され局部洗浄部20(20f、20s)から吐出される温水の温度をTAとし、ヒータ25Bにより加熱され排泄物容器洗浄部8から吐出される温水の温度をTBとすると、TA=TB、TA≒TB(TA/TB=0.9〜1.1)、TA<TB、TA>TBのうちのいずれかに設定されている。TA=TB、TA≒TBであれば、排泄物容器洗浄部8から吐出される温水で使用者の局部を洗浄するときでも、局部洗浄部20(20f、20s)の温水との違和感を小さくできる。TA<TBであれば、排泄物容器洗浄部8から吐出される温水の温度を相対的に高めにできるため、排泄物容器3の汚れがひどいときであっても、汚れを除去し易い。TA>TBであれば、排泄物容器洗浄部8から吐出される温水の温度を相対的に低めにできるため、熱エネルギを節約できる。
【実施例6】
【0061】
図16は実施例6を示す。本実施例は実施例5と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。図16に示すように局部洗浄部20(20f、20s)に供給させる水をヒータ25により加熱できるため、使用者の局部を温水により洗浄することができる。更に、排泄物容器洗浄部8に繋がる第1給水経路91にもヒータ25Bが付設されている。更に、ヒータ25Bの単位時間当たりの発熱量を調整し、排泄物容器洗浄部8から吐出される温水の温度TBを調整する温度調整スイッチ200が設けられている。温度調整スイッチ200の信号はコントローラ99に入力される。温度調整スイッチ200の操作により、TA=TB、TA≒TB(TA/TB=0.9〜1.1)、TA<TB、TA>TBのうちのいずれについても、好みに応じて容易に設定可能である。
【実施例7】
【0062】
図17は実施例7を示す。本実施例は実施例5と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。図17に示すように、排泄物容器洗浄部8に繋がる給水ホース89および第2給水通路92が流路切替弁300(三方弁)を介して第1給水経路91に接続されている。第1給水経路91にはヒータ25が付設されている。ヒータ25により第1給水経路91の水が加熱されて温水となる。ここで、手動またはコントローラ99により流路切替弁300が所定の流路に切り替えられると、温水を給水ホース89を介して排泄物容器洗浄部8に供給できる。また流路切替弁300が他の流路に切り替えられると、温水を第2給水経路92を介して局部洗浄部20(20f、20s)に供給できる。本実施例では、ヒータ25は、排泄物容器洗浄部8および局部洗浄部20に共通している。これは、排泄物容器洗浄部8および局部洗浄部20を同時に使用する確率は実質的に少ないことに着目したものである。更に、ヒータ25の単位時間あたりの発熱量を調整する温度調整スイッチ200が設けられており、温水の温度を好みに応じて変更できる。
【0063】
(その他)本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。上記した記載から次の技術的思想も把握できる。
[付記項1]
使用者が着座する着座部と、使用者の排泄物を受ける排泄物容器と、前記着座部及び前記排泄物容器を有する基体とを具備するポータブルトイレにおいて、
前記着座部に着座する使用者の顔が指向する方向を前方とし、前記着座部に着座する使用者の背中が指向する方向を後方とし、前記前方と前記後方とを結ぶ方向に対して交差する方向を幅方向とするとき、
前記基体は、前記前方に向けて引き出し可能なスライド部材と、前記スライド部材の下方に位置して前記基体の前部に設けられ前記着座部に着座する使用者の脚に対面する前板部とを有しており、
平面視において、前記スライド部材及び前記前板部は、前記幅方向の中央部が前記幅方向の両端部よりも前方に突出していることを特徴とするポータブルトイレ。着座している使用者の脚部のスペースが確保され易いため、着座しやすい。
[付記項2]
付記項1において、前記着座部に着座する使用者の顔が指向する方向を前方とし、前記着座部に着座する使用者の背中が指向する方向を後方とし、前記前方と前記後方とを結ぶ方向に沿った断面において、前記基体は、前記基体の前部に設けられ前記着座部に着座する使用者の脚に対面する前板部を有しており、前記前板部の前面の下部は、前記前板部の前面の上部よりも後方に退避していることを特徴とするポータブルトイレ。この場合、使用者の脚部のスペースが確保され易いため、着座しやすい。更に、着座中の使用者が立ち上がる作業が楽になる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は高齢者、障害者、負傷者、健常者等が使用するポータブルトイレに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】ポータブルトイレから排泄物容器、容器蓋、外バケツを外した状態を示す斜視図である。
【図2】排泄物容器、容器蓋、外バケツを取り付けたポータブルトイレを後方から視認した斜視図である。
【図3】水タンク付近を示す構成図である。
【図4】図4(A)はスライダ部材の平面図であり、図4(B)は着座中の使用者の脚部がスライダ部材の引き出し操作部及び前板部に対面している状態を示す構成図である。
【図5】排泄物容器を収容する外バケツのフランジ部をスライダ部材に載せている状態を模式的に示す断面図である。
【図6】排泄物容器を収容する外バケツのフランジ部をスライダ部材に載せつつ、スライダ部材を前方にスライドさせた状態を模式的に示す断面図である。
【図7】排泄物容器、容器蓋、外バケツを取り付けたポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図8】着座部を上方に揺動させた状態のポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図9】着座部を上方に揺動させた状態で、スライド部材を前方にスライドさせた状態のポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図10】着座部を上方に揺動させた状態で、スライド部材を前方にスライドさせ、更に容器蓋を排泄物容器から外す状態のポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図11】着座部を上方に揺動させた状態で、スライド部材を前方にスライドさせ、更に排泄物容器を外バケツから外す状態のポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図12】実施例2にかかり、排泄物容器、容器蓋、外バケツを取り付けたポータブルトイレを後方から視認した斜視図である。
【図13】実施例3にかかり、排泄物容器、容器蓋、外バケツを取り付けたポータブルトイレを後方から視認した斜視図である。
【図14】実施例4にかかり、排泄物容器、容器蓋、外バケツを取り付けたポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図15】実施例5にかかり、水タンク付近を示す構成図である。
【図16】実施例6にかかり、水タンク付近を示す構成図である。
【図17】実施例7にかかり、水タンク付近を示す構成図である。
【符号の説明】
【0066】
図中、1は着座部、2は局部洗浄装置、20は局部洗浄部、21は本体部、25はヒータ、25Bはヒータ、3は排泄物容器、31は排泄物収容室、36は容器蓋、4は基体、40は固定フレーム、48は背もたれ部(仕切部材)、5は外バケツ、52はフランジ部、8は排泄物容器洗浄部、80はスイッチ、84は水タンク、89は給水ホース、93は第1給水手段、96は第2給水手段、200は温度調整スイッチを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が着座する着座部と、使用者の排泄物を受ける排泄物容器と、前記着座部及び前記排泄物容器を有する基体とを具備するポータブルトイレにおいて、
前記排泄物容器を洗浄する排泄物容器洗浄部が設けられていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項2】
請求項1において、前記排泄物容器洗浄部に給水可能な水タンクと、前記水タンクの水を前記排泄物容器洗浄部に給水する第1給水手段とが、前記基体に設けられていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項3】
使用者が着座する着座部と、使用者の排泄物を受ける排泄物容器と、前記着座部及び前記排泄物容器を有する基体とを具備するポータブルトイレにおいて、
前記着座部に着座している使用者の局部を洗浄する局部洗浄部が設けられており、且つ、前記排泄物容器を洗浄する排泄物容器洗浄部が設けられていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項4】
請求項3において、前記局部洗浄部に給水可能な水タンクと、前記水タンクの水を前記局部洗浄部に給水すると共に前記第1給水手段に対して独立して作動する第2給水手段とが、前記基体に設けられていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項5】
請求項2または請求項4において、前記水タンクは前記基体の後部側に固定的または着脱可能に設けられていることを特徴とすることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項6】
請求項5において、前記水タンクと着座部との間に位置すると共に前記水タンクへの給水作業を保護する仕切部材が前記基体に設けられていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のうちのいずれか一項において、前記着座部に前かがみ姿勢で着座している使用者の腕部を支えると共に使用者の前面に対面するレスト部が前記基体の前部側に設けられていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のうちのいずれか一項において、前記排泄物容器洗浄部に繋がる給水経路にはヒータが設けられていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のうちのいずれか一項において、前記排泄物容器洗浄部は、前記基体から所定長持ち運び可能であり、前記着座部に着座している使用者の局部および/または下半身に対面して洗浄可能であることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項10】
請求項3〜請求項9のうちのいずれか一項において、前記局部洗浄部に繋がる給水経路にはヒータが設けられていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項11】
請求項1〜請求項7のうちのいずれか一項において、前記排泄物容器洗浄部に繋がる給水経路と、前記局部洗浄部に繋がる給水経路とは互いに独立しており、且つ、
前記排泄物容器洗浄部に繋がる給水経路にはヒータが設けられておらず、前記局部洗浄部に繋がる給水経路にはヒータが設けられていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項12】
請求項1〜請求項10のうちのいずれか一項において、前記排泄物容器洗浄部に繋がる給水経路と、前記局部洗浄部に繋がる給水経路とは互いに独立しており、且つ、
前記排泄物容器洗浄部に繋がる給水経路にはヒータが設けられており、且つ、前記局部洗浄部に繋がる給水経路にもヒータが設けられていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項13】
請求項12において、前記局部洗浄部から吐出される温水の温度をTAとし、前記排泄物容器洗浄部から吐出される温水の温度をTBとすると、TA=TB、TA≒TB(TA/TB=0.9〜1.1)、TA<TB、TA>TBのうちのいずれかに設定されているか、あるいは、設定可能であることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項14】
請求項1〜13のうちのいずれか一項において、前記排泄物容器洗浄部から吐出される温水の温度を可変に調整する温度調整スイッチが設けられていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項15】
請求項1〜請求項14のうちのいずれか一項において、前記着座部に着座する使用者の顔が指向する方向を前方とし、前記着座部に着座する使用者の背中が指向する方向を後方とし、前記前方と前記後方とを結ぶ方向に対して交差する方向を幅方向とするとき、
前記基体は、前記前方に向けて引き出し可能なスライド部材と、前記スライド部材の下方に位置して前記基体の前部に設けられ前記着座部に着座する使用者の脚に対面する前板部とを有しており、
平面視において、前記スライド部材及び前記前板部は、前記幅方向の中央部が前記幅方向の両端部よりも前方に突出していることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項16】
請求項1〜請求項15のうちのいずれか一項において、前記着座部に着座する使用者の顔が指向する方向を前方とし、前記着座部に着座する使用者の背中が指向する方向を後方とし、前記前方と前記後方とを結ぶ方向に沿った断面において、前記基体は、前記基体の前部に設けられ前記着座部に着座する使用者の脚に対面する前板部を有しており、
前記前板部の前面の下部は、前記前板部の前面の上部よりも後方に退避していることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項17】
請求項16において、前記前板部の下部が前記前板部の上部よりも後方に退避するように、前記前板部の前面は傾斜していることを特徴とするポータブルトイレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−122664(P2006−122664A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−269861(P2005−269861)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】