説明

モータ応用家電機器のインバータ

【課題】異常電圧の検出を、低コストで確実に行うことができるモータ応用家電機器のインバータを提供する。
【解決手段】洗濯乾燥機を制御するマイコン40にA/D変換回路50,51を内蔵し、それらの入力端子に、入力チャネル切換器52を介してインバータ回路33に供給される直流電源電圧を監視するための電圧信号VINを与え、その電圧信号が正常範囲外になったと判断すると、異常電圧検出信号を、自身の一部であるCPUを介すことなく緊急停止回路58又は69に直接出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家電機器に使用されるモータを駆動するインバータ回路と、このインバータ回路を制御するマイクロコンピュータとを備えるモータ応用家電機器のインバータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータが駆動制御されている状態を逸脱して空転した場合に、モータが発生する異常高電圧を抑制して回路素子を保護する技術が開示されている。具体的には、インバータ回路に供給される直流電源電圧を分圧して電圧比較回路に入力し、その電圧比較回路が所定レベル以上の電圧の発生を検出した場合に、インバータ回路を構成する上アーム側のスイッチング素子に対応して配置されているドライバの入力部を強制的にOFFさせる回路と、下アーム側のスイッチング素子に対応して配置されているドライバの入力部を強制的にONさせる回路とを備えた構成となっている。
【0003】
上記の構成によれば、制御が誤動作することでモータが高速で空転した場合は、モータ巻線とインバータ回路の下アーム側スイッチング素子との間に短絡ループを形成して短絡制動を作用させ、巻線において発電されるエネルギーを消費させることができる。したがって、巻線が発生する高レベルの回生電圧がインバータ回路側に逆流し、回路部品の耐圧限界を超えて破損することを防止できる。
【特許文献1】特開2002−101689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成には、以下のような問題があった。第1に、電圧比較回路やドライバを強制的にON/OFFさせる回路を構成するため、基板上にトランジスタやコンパレータ等の部品を個別に搭載する必要があり、回路サイズが大きくなってコスト高になり、信頼性も低下する。第2に、回路の配線長が長くなるためノイズによる誤動作が多くなる。また、インバータ回路におけるスイッチングノイズの影響により、電圧比較回路が誤動作し易い。
【0005】
その他、特許文献1と同様の技術課題を解決する周知技術としては、直流電源電圧を分圧してマイクロコンピュータがA/D変換して読み込み、その変換結果をソフトウエア処理することで異常高電圧,異常低電圧を判定するものがある。そして、異常高電圧を判定すると、特許文献1と同様に短絡制動制御による保護動作を行い、異常低電圧を判定するとインバータ回路の動作を停止して出力をOFFする。この場合、家電機器の制御用マイコンが通常は内蔵しているA/D変換器を使用するので、電圧を判定するための回路部品が不要である。また、連続した複数回のA/D変換結果に基づき判定を行うようにマイコンのプログラムを設定すれば、ノイズの影響による誤判定を防止することもできる。
【0006】
しかしながら、上記技術は、異常電圧が発生した時点から保護動作が実行されるまでの応答速度が遅く、例えば異常高電圧が発生した場合に、短絡制動が開始された時点で回路部品の耐圧限界を超えてしまうおそれがある。また、高レベルのノイズが発生するとマイコンのCPUが暴走することも想定され、その場合、異常電圧に対する保護動作が全く行われなくなってしまう。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、異常電圧の検出を、低コストで確実に行うことができるモータ応用家電機器のインバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のモータ応用家電機器のインバータは、家電用のモータを駆動するインバータ回路と、このインバータ回路を制御するマイクロコンピュータとを備えて構成されるものにおいて、
前記マイクロコンピュータは、
A/D変換回路を内蔵しており、前記A/D変換回路の入力端子には、前記インバータ回路に供給される直流電源電圧を監視するための電圧信号が与えられ、
前記電圧信号が正常範囲外になったと判断すると、異常電圧検出信号を、自身の一部であるCPUを介すことなく、前記異常電圧の発生に対処するための異常処理回路に直接出力する異常電圧検出回路を備えていることを特徴とする。
【0009】
斯様に構成すれば、異常電圧検出回路がマイクロコンピュータに内蔵されるので、実質的に回路部品を増やすことなく異常電圧を検出でき、且つ判定処理が迅速に行われる。また、マイクロコンピュータは、直流電源電圧についてリップル制御等を行うため、前記電圧をA/D変換してモニタするように構成される場合が多い。したがって、A/D変換回路の入力端子と、異常電圧検出回路の入力端子とを共通化すれば、端子数の増加が抑制される。そして、異常電圧検出信号は、CPUを介すことなく異常処理回路に直接出力されるので、異常電圧の発生に対処するための異常処理も迅速に開始される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異常電圧の検出を低コストで確実に行うことができ、異常電圧が発生した場合の対処を迅速に実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1実施例)
以下、本発明をドラム式の洗濯乾燥機に適用した第1実施例について図1ないし図3を参照しながら説明する。まず、ドラム式の洗濯乾燥機(モータ応用家電機器)1の全体構成を示す図3において、洗濯乾燥機1の外殻をなす外箱1aの前面部には、中央部に扉2が設けられ、上部に、多数のスイッチや表示部(何れも図示せず)を備えた操作パネル3が設けられている。扉2は、外箱1aの前面部中央部に形成された洗濯物出し入れ口4を開閉するものである。
【0012】
外箱1aの内部には、円筒状の水槽5が配設されている。この水槽5は、その軸方向が前後方向(図3では左右方向)となる横軸状で且つ前上がりの傾斜状に配置され、弾性支持装置6により弾性的に支持されている。水槽5の内部には、円筒状のドラム7が水槽5と同軸状に配設されている。このドラム7は、洗濯の他、脱水及び乾燥に共用の槽として機能するもので、その胴部には、ほぼ全域に多数個の小孔8(一部のみ図示)が形成されていると共に、内周部に複数個(例えば3個)のバッフル9(一個のみ図示)が設けられている。尚、ドラム7は、洗い運転時(すすぎ運転も含む概念である)に比較的短い周期で正逆回転され、乾燥運転時に比較的長い周期で正逆回転される。
【0013】
水槽5及びドラム7は、各々の前面部に洗濯物出し入れ用の開口部10、11を有し、ドラム7の開口部11が水槽5の開口部10に内側から臨む形態となっている。水槽5の開口部10は、洗濯物出し入れ口4に円筒形ベローズ12により水密に連ねられ、ドラム7の開口部11の周囲部にはバランスリング13が設けられている。
【0014】
水槽5の背面部には、ドラム7を回転駆動する直流ブラシレスモータ(以下、単にモータと呼ぶ)14が配設されている。このモータ14はアウタロータ形であり、そのステータ15が、水槽5の背部中央部に支持された軸受ハウジング16の外周部に取り付けられている。アウタ形式のロータ17は、中心部に固定された回転軸18が軸受ハウジング16に軸受19を介して回転可能に支持されている。軸受ハウジング16から突出した回転軸18の前端部は、ドラム7の背部の中央部に連結されている。即ち、モータ14が駆動されると、ロータ17の回転軸18に連結されたドラム7が回転される構成となっている。
【0015】
水槽5の下部には水溜部20が設けられており、この水溜部20の内部に洗濯水加熱用のヒータ21が配設され、水溜部20の後部に、排水弁22を介して排水ホース23が接続されている。
水槽5の上部には乾燥運転用の温風生成装置24が設けられ、水槽5の背部には熱交換器25が設けられている。温風生成装置24は、ケーシング26内に配設された温風用ヒータ27、ケーシング28内に配設されたファン29、このファン29をベルト伝動機構30を介して回転駆動するファンモータ31で構成され、ケーシング26とケーシング28とは連通されている。ケーシング26の前部にはダクト32が接続され、ダクト32の先端部は、水槽5内に突出されてドラム7の開口部12に臨んだ配置とされている。
【0016】
ここで、温風生成装置24内の温風用ヒータ27とファン29とが同時駆動されることにより温風が生成され、その温風はダクト32を通してドラム7内に供給される。ドラム7内に供給された温風はドラム7内の洗濯物を加熱する共に水分を奪い、熱交換器25側へ排出される。
熱交換器25は、上部がケーシング28内と連通し、下部が水槽5内と連通しており、上部から水が注ぎ入れられて流下することで、内部を通る空気中の水蒸気を冷却し凝縮させて除湿する水冷式である。この熱交換器25を通った空気は再び温風生成装置24に戻され、温風化されて循環する。
【0017】
図2には、上記洗濯乾燥機1の電気的構成のうち本発明の要旨を説明するのに必要な部分をのみが示されており、以下これについて説明する。モータ14のU、V、Wの各相に対し可変周波数・可変電圧の駆動電流を与えるためのインバータ回路33は、6個のIGBT34〜39を三相ブリッジ接続すると共に、各IGBT34〜39にフライホイールダイオード34a〜39aを接続して構成されており、各IGBT34〜39は、後述するマイクロコンピュータ(マイコン)40からの各相PWM信号により個別にオンオフされる。この場合、上アーム側のIGBT34〜36の各コレクタが、平滑用コンデンサ41を備えた直流電源端子42に接続され、下アーム側のIGBT37〜39の各エミッタが、U、V、Wの各相電流検出用のシャント抵抗43u、43v、43wを介してグランド端子に接続されている。尚、各シャント抵抗43u、43v、43wの抵抗値は例えば0.22Ωに設定されている。また、上記直流電源端子42は、100Vの交流電源を倍電圧全波整流するように構成された整流回路の出力端子である。
【0018】
マイコン40は、定格動作電圧が5Vのマイクロコンピュータにより構成されたもので、このマイクロコンピュータは、RISC(Reduced Instruction Set Computer)形態の高速CPU及びこのCPUの処理を一部肩代わりするDSPを備えた構成となっており、その電源は、出力電圧が5Vの制御電源端子VDDから供給される。
【0019】
シャント抵抗43u、43v、43wの各電圧出力端子(対応するIGBT37〜39側の端子)と3.3V電源との間には、抵抗分圧回路44、45、46がそれぞれ接続されている。各抵抗分圧回路44、45、46は、それぞれ抵抗R1及びR2の直列回路より成るものであり、各抵抗R1及びR2の抵抗値は、例えば1kΩに設定されている。また、抵抗分圧回路44、45、46の各出力端子(抵抗R1及びR2の共通接続点)とグランド端子との間には、それぞれフィルタコンデンサ47が接続されている。
【0020】
図1は、マイコン40内部の構成を、本発明の要旨に係る部分のみ示すものである。マイコン40は、3.3V電源をリファレンス電源AVDDとした2つのA/D変換回路50,51を備えており、これらのA/D変換回路50,51は、入力チャネル切換器52を介して与えられたアナログ電圧信号を個別にデジタル変換して信号処理に供する構成となっている。尚、A/D変換回路50,51は、主にマイコン40内のDSPのソフトウエアで実現される機能である。
【0021】
入力チャネル切換器52における4つの入力端子の内3つは、抵抗分圧回路44、45、46による各分圧電圧(抵抗R1及びR2の共通接続点の電圧)が与えられるマイコン40の入力端子VIU,VIV,VIWに接続されている。マイコン40は、A/D変換回路50,51の出力によりモータ14の発生トルクを示す各相電流値を検出すると共に、その検出電流値に基づいて当該モータ14のベクトル制御を行う構成となっており、その制御に応じてIGBT34〜39をオンオフさせるための各相PWM信号を出力する。尚、IGBT34〜39の最大定格電流は例えば10Aであり、マイコン40は、検出電流値が10Aを超えたときに、故障発生を防止するために全てのIGBT34〜39を強制的にオフさせる保護機能も備えている。
【0022】
マイコン40は、シャント抵抗43u、43v、43wからの出力電圧の読み取りを、下アーム側のIGBT37〜39がオンしている期間の中心点のタイミングで行う。この場合、各相PWM信号の出力周期を、モータ14の回転数に比べて十分に早い例えば16kHzに設定しており、シャント抵抗43u、43v、43wからの出力電圧の元の波形を問題なく再現できる。
【0023】
また、マイコン40の入力端子VIU,VIV,VIWは、100kΩの抵抗素子53u,53v,53wを介してコンパレータ54u,54v,54w(過電流検出回路)の反転入力端子にそれぞれ接続されており、上記各反転入力端子とグランドとの間には、5pFのコンデンサ55u,55v,55wが接続されている。コンパレータ54u,54v,54wの非反転入力端子は、マイコン40の基準電圧入力端子VRIに接続されており、その入力端子VRIには、3.3VのA/D変換リファレンス電圧を、抵抗56,57で分圧した電位が与えられている。コンパレータ54u,54v,54wの出力端子は、PWM緊急停止回路58の入力端子に共通に接続されており、その入力端子は、抵抗90により5Vにプルアップされている。
【0024】
コンパレータ54u,54v,54wの反転入力端子に与えられる電圧が、入力端子VRIの基準電圧以下であれば、コンパレータ54u,54v,54wの出力端子はハイレベルを維持している。この状態から、インバータ回路33を介して流れる何れかの相電流が増大して、何れかの反転入力端子の電圧が入力端子VRIの基準電圧を超えると、PWM緊急停止回路(異常処理回路)58の入力端子はロウレベルに変化する。PWM緊急停止回路58は、その信号レベル変化の立下りエッジを検出すると、緊急停止信号パターンを、異常出力選択回路(優先信号選択手段)59を介して6相PWM出力回路60に出力する。
【0025】
6相PWM出力回路60は、PWM信号を生成し、IGBT34〜39のゲートにゲート駆動信号を出力する回路である。そして、PWM緊急停止回路58によって出力される緊急停止信号パターンは、IGBT34〜39を全てOFFさせて、インバータ回路33によるスイッチング動作を停止させるゲート信号パターンであり、6相PWM出力回路60は、上記信号パターンが入力されると、そのパターンをインバータ回路33にそのまま出力する。
【0026】
入力チャネル切換器52の残りの入力端子には、マイコン40の駆動電源電圧入力端子VINが抵抗値100kΩの抵抗61を介して接続されている。入力端子VINには、直流電源端子42より供給される280Vの電源電圧を抵抗62,63により分圧したものが与えられていると共に、マイコン40の外部では1000pFのコンデンサ64がグランドとの間に接続されている。そして、入力チャネル切換器52の入力端子とグランドとの間には、5pFのコンデンサ65が接続されている。したがって、A/D変換回路50又は51は、入力チャネル切換器52を介してインバータ回路33に供給される駆動電源電圧もA/D変換するようになっており、マイコン40は、前述したリップル制御などを行う。
【0027】
また、入力端子VINは、抵抗61を介してコンパレータ66,67(異常電圧検出回路)の反転入力端子,非反転入力端子にも接続されており、コンパレータ66,67の非反転入力端子,反転入力端子は、マイコン40の基準電圧入力端子VRH,VRLにそれぞれ接続されている。これらの基準電圧入力端子VRH,VRLは、3.3VのA/D変換リファレンス電圧を、それぞれ抵抗91及び92,抵抗93及び94で分圧した電位が与えられている。
【0028】
コンパレータ66の出力端子は、抵抗68を介して5Vにプルアップされていると共に、モータ緊急停止回路(異常処理回路)69の入力端子に接続されている。コンパレータ66の反転入力端子に与えられる電圧が、入力端子VRHの基準電圧以下であれば、コンパレータ66の出力端子はハイレベルを維持している。この状態から、駆動電源電圧が上昇して、コンパレータ66の反転入力端子の電圧が入力端子VRHの基準電圧を超えると、モータ緊急停止回路69の入力端子はロウレベルに変化する。モータ緊急停止回路69は、その信号レベル変化の立下りエッジを検出すると、緊急停止信号パターンを、異常出力選択回路59を介して6相PWM出力回路60に出力する。
【0029】
緊急停止信号パターンは、インバータ回路33の上相側のIGBT34〜36をOFF、下相側のIGBT37〜39をONさせて、モータ14に、インバータ回路33を介した短絡ループを形成して短絡制動を作用させるゲート信号パターンであり、6相PWM出力回路60は、上記信号パターンが入力されると、そのパターンをインバータ回路33にそのまま出力する。
【0030】
一方、コンパレータ67の出力端子は、PWM緊急停止回路58の入力端子に接続されている。駆動電源電圧が低下して、コンパレータ67の非反転入力端子の電圧が入力端子VRLの基準電圧を下回ると、PWM緊急停止回路58の入力端子はロウレベルに変化する。すると、PWM緊急停止回路58は、過電流検出の場合と同様に、緊急停止信号パターンを、異常出力選択回路59を介して6相PWM出力回路60に出力する。
【0031】
次に、本実施例の作用について説明する。電圧入力端子VINは、A/D変換回路50又は51によりA/D変換を行い、マイコン40の図示しないCPUが駆動電源電圧をモニタするために必要な端子である。そして、マイコン40は、異常電圧判定用のコンパレータ66,67を内蔵しており、これらにより異常高電圧,異常低電圧が検出されると、緊急停止回路58又は69,選択回路59並びにPWM出力回路60の回路動作により異常対応処理を行う。すなわち、これらはCPUのソフトウエア処理を介すことなく、マイコン40内部のハードウエアによりダイレクトに処理されるため、異常対応処理を迅速に行うことができる。
【0032】
また、マイコン40の内部に構成される回路素子は、実質的には部品の増加とならないため、分圧抵抗などの最小限の外付け回路素子により、異常電圧に対応するための構成を実現できる。
また、マイコン40の動作電源電圧を、周辺I/Oの信号レベルのダイナミックレンジを確保するため5Vとした場合でも、A/D変換回路50,51のリファレンス電圧を上記電源電圧よりも低い3.3Vに設定するので、A/D変換の分解能が低下することがなく、モータトルクの検出精度が向上する。
【0033】
以上のように本実施例によれば、マイコン40にA/D変換回路50,51を内蔵し、それらの入力端子に、入力チャネル切換器52を介してインバータ回路33に供給される直流電源電圧を監視するための電圧信号VINを与え、その電圧信号が正常範囲外になったと判断すると、異常電圧検出信号を、自身の一部であるCPUを介すことなく緊急停止回路58又は69に直接出力するようにした。したがって、異常電圧の検出を低コストで確実に行い、異常電圧が発生した場合の対処を迅速に実行できる。そして、異常高電圧の発生を防止できるから低耐圧の回路部品を使用でき、小型化、低コスト化を図ることができる。
【0034】
また、コンパレータ66,67により、電圧信号VINを閾値電圧VRH,VRLと比較して、簡単なアナログ信号処理により異常電圧を検出でき、簡単な回路を追加するだけなので、マイコン40のチップサイズの増加も抑制できる。そして、コンパレータ66,67の入力端子側に抵抗61やコンデンサ64を接続してフィルタ回路を構成することで、電圧信号VINが正常範囲外になった状態が所定時間以上継続した場合にコンパレータ66,67が異常電圧検出信号を出力するようにしたので、ノイズが印加された場合の一時的な電圧変化による誤検出を防止できる。
【0035】
また、モータ緊急停止回路58は、コンパレータ66が高電圧側の異常電圧検出信号を出力すると、インバータ回路33を構成する下アーム側のIGBT37〜39を全てONさせると共に、同上アーム側のIGBT36〜38を全てOFFさせるので、モータ14に短絡制動を作用させて異常高電圧のエネルギーを消費させ、電圧の低下を図ることができる。更に、PWM緊急停止回路69は、コンパレータ67が低電圧側の異常電圧検出信号を出力すると、インバータ回路33を構成する全てのIGBT36〜39をOFFさせてモータ14の駆動を停止させる。したがって、停電などにより電源電圧が急激に低下したような場合に、インバータ回路33の動作が不安定になり、異常な大電流が流れて回路部品が破損することを回避できる。
【0036】
加えて、マイコン40は、インバータ回路33を介して流れる電流の過電流状態を検出すると、過電流検出信号を出力するコンパレータ54u,54v,54wを備え、6相PWM出力回路60は、過電流検出信号が出力された場合にも対応する異常処理を行なうように構成されており、異常出力選択回路59は、コンパレータ67による異常電圧検出信号も同時に出力された場合に、何れの信号を優先的に出力するかを設定する。例えば、モータ14の高速回転時には短絡制動動作を優先させ、低速回転時にはインバータ回路33のOFF動作を優先させることで、回路部品の保護を確実に行うことができる。
【0037】
そして、例えばA/D変換回路50,51の入力段にオペアンプを利用した増幅器を設けると、オペアンプのスルーレートにより入力電圧Vin(増幅器による増幅出力電圧)の立ち上がり及び立ち下り波形が鈍る現象が発生し、モータ電流が小さい領域では、入力電圧Vinが本来検知すべきレベルより小さくなることがある。また、その検知電流には増幅器のオフセット電圧温度ドリフトなどによる誤差も含まれるため、実際のモータ電流と上記入力電圧Vinに基づいて検出したモータ電流との間にずれが発生し、その検出電流に基づき行われるマイコン40の制御動作に影響が及ぶ場合がある。本実施例では、A/D変換回路50,51の入力段に増幅器を使用しないので、増幅器の存在に起因した誤差の拡大を未然に防止できるようになってモータトルクの検出精度の向上に寄与できると共に、構成の簡単化も同時に図れるようになる。
【0038】
(第2実施例)
図4は本発明の第2実施例であり、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分について説明する。第2実施例のマイコン71は、A/D変換回路50A,51Aのリファレンス電圧を、マイコン71の動作電源電圧と同じ5Vに設定したものである。また、入力チャネル切換器59の入力側と入力端子VIU,VIV,VIWとの間に、例えば増幅率が3倍の増幅アンプ72が挿入されている。この場合、インバータ回路に配置されるシャント抵抗は、抵抗値が0.1Ωのシャント抵抗43u’,43v’,43w’に置き換えられている。その他の構成は、第1実施例と全く同様である。
以上のように構成される第2実施例によれば、増幅アンプ72を配置することで、A/D変換のリファレンス電圧を5Vにした場合の分解能の低下を補償できる。また、マイコン71が使用する電源電圧を5Vに統一できるので、電源回路の構成が簡単になる。
【0039】
(第3実施例)
図5は、本発明の第3実施例を示すものであり、第1実施例と異なる部分のみ説明する。第3実施例のマイコン73は、動作電源電圧を、A/D変換のリファレンス電圧と同じ3.3Vに設定したものであり、その他の構成は第1実施例と同様である。以上のように構成される第3実施例によれば、マイコン73が使用する電源電圧を3.3Vに統一できるので、電源回路の構成が簡単になる。
【0040】
(第4実施例)
図6及び図7は本発明の第4実施例を示すもので、図1の一部相当図である。第4実施例のマイコン74は、第1〜第3実施例のようにアナログ回路であるコンパレータを使用せず、マグニチュードコンパレータ(デジタルコンパレータ)75を使用して、電源電圧の監視動作を同様に行うように構成されている。
【0041】
すなわち、A/D変換回路50(A/D変換回路51は図示を省略)の出力側には、上記のコンパレータ75が配置されており、コンパレータ75の入力端子の一方には、A/D変換回路50によりA/D変換されたデータが与えられる。また、マイコン74の図示しないCPUがA/D変換回路50の変換データを読み出す場合は、リードバッファ76を介してデータバス上に出力されたデータを読み出すようになっている。コンパレータ75の他方の入力端子には、監視レジスタ77より電圧監視用の閾値データが与えられている。そして、コンパレータ75の出力端子は、判定部(信号出力回路)78の入力端子に接続されている。
【0042】
判定部78は、入力判定部79及び回数判定部(比較結果記憶回路)80を備えており、入力判定部79は、コンパレータ75の出力結果を、監視入力指定部81及び比較部(判定制御手段)82を介して与えられるイネーブルタイミングで回数判定部80に出力する。回数判定部80は、入力判定部79を介して与えられる比較結果が「成立」となる回数をカウントし、そのカウント値が回数指定部(判定制御手段)83において指定された回数に一致すると、モータ緊急停止回路69に判定信号を出力すると共に、マイコン74のCPUに対して監視割込みを発生させる。
【0043】
A/D変換制御部(入力信号選択手段,判定制御手段)84は、入力チャネル切換器(入力信号選択手段)52における信号入力端子の入力選択を行うと共に、A/D変換回路50に変換開始信号を与え、A/D変換回路50より変換処理中であることを示す信号が与えられている。また、A/D変換制御部84が出力する入力選択信号は、比較部82にも与えられている。尚、各種レジスタ等のデータ設定は、マイコン74のCPUによって行われる。以上が異常電圧検出回路85を構成している。
【0044】
次に、第4実施例の作用について図7も参照して説明する。図7は、図6に示す構成のタイミングチャートである。A/D変換制御部84は、入力チャネル切換器52における信号入力端子の選択を図7(a)に示すように切り換える。すると、その入力選択に応じて、A/D変換回路50の入力端子に与えられるアナログ電圧は、図7(b)に示すように切り換わる。また、A/D変換制御部84は、図7(c)に示すようにA/D変換回路50に変換開始信号を与えて、変換中信号を監視する(図7(d)参照)。
【0045】
尚、図7(c)に示すように、監視入力指定部81においては、入力チャネル切換器52における「アナログ入力4」が監視対象として指定されており、回数指定部83においては、判定信号を出力するまでの比較成立回数が「3」に設定されている。また、監視レジスタ77には、電圧監視用の閾値データD42が与えられている。上述したように、A/D変換制御部84が出力する入力選択信号は比較部82に与えられているが、その入力選択信号には、比較部82の内部において若干の遅延が付与されるようになっている。
【0046】
図7(e)には、(b)に示すアナログ入力電圧をA/D変換回路50がA/D変換したデータを示す。ここで、「アナログ入力4」に対応する変換結果データは、D40〜D44であるが、D40<D41<D42<D43<D44となるように変化しているとする。したがって、変換データD40,D41の場合、コンパレータ75の出力信号は変化しないが、変換データD42の場合は、閾値データD42に一致することでコンパレータ75の出力信号はロウレベルからハイレベルに変化する(図7(i)参照)。すると、回数判定部80では、入力判定部79を介して上記出力信号のレベル変化を捉え、比較成立回数のカウンタをインクリメントする(図7(j)参照)。
【0047】
そして、回数判定部80におけるカウンタの値が回数指定部83における設定値「3」に一致すると、判定部78はモータ緊急停止回路69に判定信号を出力すると共に、マイコン74のCPUに対して監視割込みを発生させる(図7(k),(l)参照)。
尚、回数判定部80のカウンタ値は、比較部82の出力レベルがアクティブ(ハイ)の場合にコンパレータ75の出力レベルがロウであれば、リセットする。したがって、電源電圧のA/D変換結果が閾値データD42未満となる状態が発生した時点でカウンタ値はリセットされるので、閾値データD42以上となった状態が1回だけの場合や、2回だけ連続した場合には、その後リセットされるため判定信号が出力されない。また、上記カウンタ値はCPUが図示しない制御レジスタを操作して異常電圧検出回路85の機能を無効化した場合もリセットされる。
【0048】
以上のように第4実施例によれば、異常電圧検出回路85は、コンパレータ75により、A/D変換回路50の出力データを監視レジスタ77の閾値電圧データと比較し、コンパレータ75による比較結果が、3回連続して正常範囲外になったことが回数判定部80により示されると、判定部78が異常電圧検出信号をモータ緊急停止回路69に出力するようにした。
【0049】
したがって、第1〜第3実施例の構成とは異なり、異常電圧検出回路85を全てデジタル回路で構成することができ、マイコン74を半導体集積回路としてワンチップで構成する場合に、同一のプロセスで容易に一体構成することが可能となる。そして、A/D変換制御部84は、A/D変換回路50が変換対象とする電圧信号を入力チャネル切換器52により選択すると共に、選択した電圧信号のA/D変換結果についてコンパレータ75が比較した結果を、異常電圧検出用の判定に使用する。したがって、A/D変換回路50を、異常電圧を検出する目的以外の用途にも使用することができる。
【0050】
(第5実施例)
図8及び図9は本発明の第5実施例を示すものであり、第4実施例と異なる部分のみ説明する。図8に示すように、第5実施例のマイコン86は、A/D変換回路50の出力側に、変換結果データを格納するためのレジスタ(変換結果レジスタ)87(1)〜87(4)が配置されている。また、A/D変換制御部84に置き換わるA/D変換制御部88は、結果レジスタ87(1)〜87(4)の更新制御も行うように構成されている。以上が、異常電圧検出回路89を構成している。
【0051】
次に、第5実施例の作用について図9も参照して説明する。図9に示すタイミングチャートでは、第4実施例の図7に対応するものと同じ信号に(a)〜(l)を付しており、(e),(f)の間に、A/D変換制御部89による結果レジスタ87(1)〜87(4)に対する更新制御と、結果レジスタ87(1)〜87(4)の更新状態とを挿入して示している。
【0052】
入力されるアナログ電圧が第4実施例と同様に変化する場合、A/D変換制御部88は、選択した入力端子:アナログ入力1〜4に対応して、A/D変換回路50による変換結果を格納させるレジスタ87(1)〜87(4)を切替えるように制御信号(ラッチ信号)を出力する。したがって、結果レジスタ87(4)については、アナログ入力4に対応する変換結果データが格納され、そのデータ値は、D40,D41,D42,D43,D44に順次変化する。そして、コンパレータ50による異常高電圧検出の比較制御自体は、第4実施例と同様に実行される。
【0053】
以上のように第5実施例によれば、A/D変換回路50の出力データを格納するため結果レジスタ87を4個備えたので、A/D変換が行われたタイミング毎にその変換結果を読み出す必要がなくなり、マイコン86を構成するCPUの処理を軽減することができる。また、電源電圧を監視するための変換結果の最新の値を、レジスタ87(4)において保持することができる。
【0054】
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、例えば以下に述べるような変形或いは拡大が可能である。
マイクロコンピュータが備えるA/D変換回路は、1つだけでも、3つ以上であっても良い。
PWM緊急停止回路58,異常出力選択回路59は、必要に応じて設ければ良い。
第4,第5実施例を、異常低電圧を検出するものについても同様に構成して良い。
また、第4,第5実施例において、CPUに対して割込みを発生させる構成は、必要に応じて設ければ良い。
判定信号を出力する比較成立回数は「2」又は「4」以上であっても良い。
モータ応用家電機器は、洗濯乾燥機に限ることなく、ドラム式或いは縦型の洗濯機や乾燥機、エアコンディショナなどでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1実施例であり、洗濯乾燥機を制御するマイクロコンピュータ内部の構成を、本発明の要旨に係る部分のみ示す図
【図2】洗濯乾燥機の電気的構成のうち、説明に必要な部分のみ示す図
【図3】ドラム式洗濯乾燥機の全体構成を示す図
【図4】本発明の第2実施例を示す図1相当図
【図5】本発明の第3実施例を示す図1相当図
【図6】本発明の第4実施例を示す図1の一部相当図
【図7】タイミングチャート
【図8】本発明の第5実施例を示す図6相当図
【図9】図7相当図
【符号の説明】
【0056】
図面中、1は洗濯乾燥機(モータ応用家電機器)、14は直流ブラシレスモータ、33はインバータ回路、40はマイクロコンピュータ、50,51はA/D変換回路、58はPWM緊急停止回路(異常処理回路)、59は異常出力選択回路(優先信号選択手段)、66,67はコンパレータ(異常電圧検出回路)、69はモータ緊急停止回路(異常処理回路)、71,73、74はマイクロコンピュータ、75はマグニチュードコンパレータ、78は判定部(信号出力回路)、80は回数判定部(比較結果記憶回路)、82は比較部(判定制御手段)、83は回数指定部(判定制御手段)、84はA/D変換制御部(入力信号選択手段,判定制御手段)、85は異常電圧検出回路、86はマイクロコンピュータ、87は変換結果レジスタ、88はA/D変換制御部(入力信号選択手段,判定制御手段)、89は異常電圧検出回路を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家電用のモータを駆動するインバータ回路と、このインバータ回路を制御するマイクロコンピュータとを備えて構成されるモータ応用家電機器のインバータにおいて、
前記マイクロコンピュータは、
A/D変換回路を内蔵しており、前記A/D変換回路の入力端子には、前記インバータ回路に供給される直流電源電圧を監視するための電圧信号が与えられ、
前記電圧信号が正常範囲外になったと判断すると、異常電圧検出信号を、自身の一部であるCPUを介すことなく、前記異常電圧の発生に対処するための異常処理回路に直接出力する異常電圧検出回路を備えていることを特徴とするモータ応用家電機器のインバータ。
【請求項2】
前記異常電圧検出回路は、前記電圧信号を閾値電圧と比較するコンパレータで構成されることを特徴とする請求項1記載のモータ応用家電機器のインバータ。
【請求項3】
前記異常電圧検出回路は、前記電圧信号が前記正常範囲外になった状態が所定時間以上継続した場合に、前記コンパレータが前記異常電圧検出信号を出力するように構成されていることを特徴とする請求項2記載のモータ応用家電機器のインバータ。
【請求項4】
前記異常電圧検出回路は、
前記A/D変換回路の出力データを閾値電圧データと比較するマグニチュードコンパレータ(デジタルコンパレータ)と、
このコンパレータによる以前の比較結果を、1回分以上記憶する比較結果記憶回路と、
前記コンパレータによる比較結果が、連続する複数回について前記正常範囲外になったことを示す場合に、前記異常電圧検出信号を出力する信号出力回路とを備えたことを特徴とする請求項1記載のモータ応用家電機器のインバータ。
【請求項5】
前記A/D変換回路が変換対象とする電圧信号を、複数のアナログ信号入力端子より選択するための入力信号選択手段と、
この入力信号選択手段によって選択された電圧信号のA/D変換結果について前記コンパレータが比較した結果を、異常電圧検出用の判定に使用する判定制御手段とを備えたことを特徴とする請求項4記載のモータ応用家電機器のインバータ。
【請求項6】
前記A/D変換回路の出力データを格納するための変換結果レジスタを、複数備えたことを特徴とする請求項4又は5記載のモータ応用家電機器のインバータ。
【請求項7】
前記マイクロコンピュータの異常処理回路は、前記異常電圧検出回路が、高電圧側の異常電圧検出信号を出力すると、前記インバータ回路を構成する下アーム側のスイッチング素子を全てONさせると共に、同上アーム側のスイッチング素子を全てOFFさせることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のモータ応用家電機器のインバータ。
【請求項8】
前記マイクロコンピュータの異常処理回路は、前記異常電圧検出回路が、低電圧側の異常電圧検出信号を出力すると、前記インバータ回路を構成する全てのスイッチング素子をOFFさせることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のモータ応用家電機器のインバータ。
【請求項9】
前記マイクロコンピュータは、
前記インバータ回路を介して流れる電流の過電流状態を検出すると、過電流検出信号を出力する過電流検出回路を備え、
前記異常処理回路は、前記過電流検出信号が出力された場合にも対応する異常処理を行なうように構成されており、
前記過電流検出信号と、前記異常電圧検出回路による異常電圧検出信号とが同時に出力された場合に、前記異常処理回路に対して何れの信号を優先的に出力するかを設定する優先信号選択手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載のモータ応用家電機器のインバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−17674(P2009−17674A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176346(P2007−176346)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】