説明

モータ駆動装置

【課題】複数の開閉部が同時的に開閉された場合に、一の開閉部のみをロック状態にすることができ、更に他の開閉部に開閉を継続させることができるモータ駆動装置の提供。
【解決手段】制御部2は、モータM1,M2,・・・夫々についてロック状態であるか否かを判定する。複数のMOSFETQ1,Q2,・・・がオン状態であり、モータM1,M2,・・・の内、1つのモータ、例えばモータM1についてロック状態を検出した場合、モータM2,M3,・・・に係るMOSFETQ2,Q3,・・・の内、オン状態にあるスイッチを間欠的にオン/オフする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられたパワーウインドウ、サンルーフ等の開閉部を開閉するモータを駆動させるモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両内に設けられたパワーウインドウ、サンルーフ等の開閉部を開閉する場合、車両のドア等に設けられた開閉用のスイッチをオン/オフすることによって、開閉部を開閉している。また、運転席のドアには、全ての開閉部の開閉を行うことができるスイッチが設けられている場合が多く、複数の開閉部が同時的に開閉される場合が多い。
【0003】
特許文献1では、複数のパワーウインドウスイッチの操作の重複時、モータロック時及び異物の挟み込み時における各窓の動作タイミングをずらし、パワーウインドウモータに流れる電流を低減できるパワーウインドウの制御方法が開示されている。
【0004】
このパワーウインドウ制御方法では、複数のパワーウインドウに供給される突入電流のオン/オフを夫々制御する複数のスイッチに優先順位が定められている。複数のスイッチが同時的にオンになった場合、優先順位の高いスイッチがオン状態を保持し、他のスイッチはオフ状態になる。オン状態にあるスイッチの操作によるパワーウインドウの開閉動作終了後に、優先順位に従って、順次オフ状態にあるスイッチがオン状態になり、パワーウインドウの開閉動作が行われる。
複数のパワーウインドウモータがロック状態になった場合、予め定められたパワーウインドウの優先順位に従って順次パワーウインドウモータのロックが解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−105270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両に設けられたパワーウインドウ、サンルーフ等の開閉部に係るスイッチをオンにした場合、開閉部を開閉するモータに電流が供給され、モータが駆動する。また、モータは、例えば開閉部が全開又は全閉になった場合にロック状態になり、負荷が増大するためモータに流れる電流は大きくなる。
従って、複数のモータが同時的にロック状態になった場合、バッテリである電源の電圧が低下し、同じバッテリから電源を供給されるランプ類のちらつき等を引き起こす虞がある。
【0007】
上述した特許文献1に記載のパワーウインドウの制御方法では、複数のパワーウインドウが動作した場合、一のパワーウインドウを除く他のパワーウインドウは停止する。これにより、複数のパワーウインドウモータがロック状態になった場合でも、各パワーウインドウの開閉動作のタイミングがずれるため、パワーウインドウモータに流れる電流が低減される。
しかしながら、全てのパワーウインドウを開閉する時間が長くなり、車両の乗員等は故障していると感じる問題が生じる。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の開閉部が同時的に開閉された場合に、一の開閉部のみをロック状態にすることができ、更に他の開閉部に開閉を継続させることができるモータ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るモータ駆動装置は、車両における複数の開閉部を夫々開閉する複数のモータに供給される電流の経路夫々にスイッチが設けられたモータ駆動装置において、前記複数のモータ夫々についてロック状態であるか否かを検出するロック検出手段と、複数の前記スイッチがオン状態であり、かつ前記ロック検出手段が一のモータについてロック状態を検出した場合、他のモータに係るスイッチの内、オン状態にあるスイッチを間欠的にオン/オフするスイッチ制御手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るモータ駆動装置にあっては、複数のモータが車両における複数の開閉部を夫々開閉し、スイッチが複数のモータに供給される電流の経路夫々に設けられている。ロック検出手段は複数のモータ夫々についてロック状態にあるか否かを検出する。スイッチ制御手段は、複数のスイッチがオン状態であり、かつロック検出手段が一のモータについてロック状態を検出した場合、他のモータに係るスイッチの内、オン状態にあるスイッチを間欠的にオン/オフする。
これにより、複数のスイッチが同時的に操作され、複数のスイッチ夫々に係る複数のモータが駆動し、一のモータがロックした場合、他のモータに電流が間欠的に供給されるため、複数のモータが同時的にロック状態になることはない。また、電流は供給されているため、ロック状態にない他のモータも駆動する。従って、車両の乗員が車両の故障であると誤認することがなくなる。
【0011】
本発明に係るモータ駆動装置は、前記ロック検出手段は、前記複数のモータ夫々に供給される電流を計測し、計測した電流が所定値を超えた場合に、該所定値を超えた電流が供給されるモータについてロック状態であると検出するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るモータ駆動装置にあっては、ロック検出手段は、複数のモータに供給される電流を計測しており、所定値を超えた電流が供給されるモータについてロック状態にあると検出する。
この場合、センサ等を車両に設ける必要はなく、電流を計測するだけで良いため、ロック状態にあるモータを検出することが容易になり、部品コストが上昇しない。
【0013】
本発明に係るモータ駆動装置は、前記複数の開閉部夫々について全開又は全閉の状態であるか否かを検出する開閉検出手段を更に備え、前記ロック検出手段は、前記開閉検出手段が全開又は全閉の状態であると検出した開閉部に係るモータの内、スイッチがオンであるモータについてロック状態であると検出するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るモータ駆動装置にあっては、開閉検出手段を更に備える。開閉検出手段は複数の開閉部夫々について全開又は全閉の状態であるか否かを検出する。ロック検出手段は、開閉検出手段が全開又は全閉の状態であると検出した開閉部に係るモータの内、スイッチがオンであるモータについてロック状態であると検出する。
この場合、開閉検出手段が更に備えられているため、ロック状態にあるモータが開閉している開閉部について、全開又は全閉の状態であるか否かの検出が確実になる。
【0015】
本発明に係るモータ駆動装置は、ロック状態を保持するモータの優先順位を予め記憶する記憶手段を更に備え、前記スイッチ制御手段は、前記ロック検出手段が複数のモータについてロック状態を同時的に検出した場合、検出されたモータの内、前記記憶手段が記憶する優先順位の最も高いモータをロック状態に保持し、検出された他のモータに係るスイッチを間欠的にオン/オフするように構成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るモータ駆動装置にあっては、記憶手段を更に備え、記憶手段はロック状態を保持するモータの優先順位を予め記憶している。スイッチ制御手段は、ロック検出手段が複数のモータについてロック状態を同時的に検出した場合、検出されたモータの内、記憶手段が記憶する優先順位の最も高いモータをロック状態に保持し、ロック検出手段によって検出された他のモータに係るスイッチを間欠的にオン/オフする。
この場合、複数のモータが開閉する夫々の開閉部が、同時的に全開又は全閉し、ロック状態になったとしても、優先順位に基づいて、一のモータのみがロック状態になるので、複数のモータが継続してロックされることはない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の開閉部が同時的に開閉された場合に、一の開閉部のみをロック状態にすることができ、更に他の開閉部に開閉を継続させることができるモータ駆動装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態におけるモータ駆動装置の要部構成を示す回路図である。
【図2】実施の形態におけるモータ駆動装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】モータに流れる電流の時系列変化を示すタイミングチャートである。
【図4】実施の形態におけるモータ駆動装置の要部構成を示す回路図である。
【図5】実施の形態におけるモータ駆動装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1におけるモータ駆動装置1の要部構成を示す回路図である。モータ駆動装置1は、図示しないパワーウインドウ、サンルーフ等の開閉部の開閉及び停止を指示するスイッチSW1,SW2,・・・と、開閉部を開閉するモータM1,M2,・・・と、モータ駆動装置1が備える制御部2及びモータM1,M2,・・・に給電するバッテリ3とに接続されている。
なお、バッテリ3は、モータM1,M2,・・・だけではなく、車両に搭載された他の機器にも給電する。また、制御部2は、特許請求の範囲におけるロック検出手段及びスイッチ制御手段に該当する。
【0020】
スイッチSW1は3つの端子によって構成され、1つの端子は接地されている。他の2つの端子夫々は、開放及び閉鎖を制御部2に指示するための端子であり、制御部2に接続されている。
【0021】
スイッチSW1が操作されていない場合、接地されている端子は、開放及び閉鎖を指示する2つの端子いずれにも接続されていない。ユーザが開閉部を開放(又は閉鎖)しようとし、スイッチSW1を操作した場合、接地されている端子は開放(又は閉鎖)を指示する端子に接続され、その端子に電流が流れる。この電流を検知することによって、制御部2は指示を受け付ける。
スイッチSW2,SW3,・・・の構成及び作用は、スイッチSW1と同様である。
【0022】
モータ駆動装置1は、車両の乗員によって操作されるスイッチSW1,SW2,・・・が行う開閉の指示に基づいて、バッテリ3の電源をスイッチSW1,SW2,・・・夫々に係るモータM1,M2,・・・に供給する。
【0023】
モータ駆動装置1は、制御部2の他に、特許請求の範囲におけるスイッチに該当するMOSFET(Metal-Oxide Semiconductor field-effect transistor)Q1,Q2,・・・、電流計A1,A2,・・・、スイッチSW1a,SW1b,SW2a,SW2b,・・・を更に備えている。
【0024】
MOSFETQ1,Q2,・・・のドレイン夫々はバッテリ3に接続されている。また、MOSFETQ1,Q2,・・・のソース夫々は、電流計A1,A2,・・・の一方の端子に接続されている。MOSFETQ1,Q2,・・・のゲート夫々は制御部2に接続されている。MOSFETQ1,Q2,・・・は、スイッチとして機能しており、制御部2が各ゲート電極に所定の電圧を印加するか否かによってオン/オフされる。
【0025】
電流計A1,A2,・・・におけるMOSFETQ1,Q2,・・・のソースが接続されていない他方の端子夫々は、スイッチSW1a及びSW1bの接続ノード,スイッチSW2a及びSW2bの接続ノード,・・・に接続されている。電流計A1,A2,・・・は、モータM1,M2,・・・夫々に供給される電流を計測している。電流計A1,A2,・・・夫々は、計測結果を制御部2に通知する。
【0026】
スイッチSW1a及びSW1b夫々は、電流計A1に接続される端子の他に、接地端子及びモータM1に接続されている端子によって構成されている。モータM1は、スイッチSW1a及びSW1bの間に接続されている。
【0027】
スイッチSW1a及びSW1b夫々は、モータM1に係る開閉部の開放(又は閉鎖)の指示を受け付けた制御部2によって、スイッチSW1a(又はスイッチSW1b)において電流計A1とモータM1とが接続され、スイッチSW1b(又はスイッチSW1a)において接地端子とモータM1とが接続される。これにより、モータM1にバッテリ3から電流が供給され、モータM1に係る開閉部が開放(又は閉鎖)される。
開閉部を開放する場合と閉鎖する場合とでは、モータM1に供給される電流方向とモータM1の回転方向とが異なる。
【0028】
制御部2がモータM1に係る開閉部の開閉を停止する指示を受け付けた場合、スイッチSW1a及びSW1bは、制御部2によって、両方の接地端子がモータM1に接続され、電流はモータM1に供給されない。
【0029】
スイッチSW2a及びSW2b、スイッチSW3a及びSW3b、・・・についてもスイッチSW1a及びSW1bと同様に接続され、同様に動作する。スイッチSW2a及びSW2b、スイッチSW3a及びSW3b、・・・は、電流計A2,A3,・・・、モータM2,M3,・・・に夫々対応する。
【0030】
以下、モータ駆動装置1の動作、即ち制御部2が実行する動作を説明する。ここでは、説明をより具体的にするため、モータ駆動装置1はモータM1,M2,M3,M4を駆動するものとする。これは、例えば、車両に搭載されている4枚のパワーウインドウを駆動する場合に対応する。
ただし、車両の開閉部は4つに限定されない。パワーウインドウの他にサンルーフ等も開閉部に該当する。また、モータで駆動する2以上の開閉部を備える車両であれば、本発明を適用することができる。
【0031】
図2は、実施の形態1におけるモータ駆動装置1の動作を示すフローチャートである。まず、制御部2は、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4の開閉操作があるか否かを判定する(S11)。
【0032】
制御部2は、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4のいずれについても開放又は閉鎖を指示する操作がなかった場合(S11:NO)、制御を終了する。
制御部2は、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4のいずれかについて開放又は閉鎖を指示する操作があった場合(S11:YES)、操作されたスイッチに係るMOSFETQ1,Q2,Q3,Q4に所定の電圧を印加することによってオン状態にする。更に、制御部2は、例えばスイッチSW1が操作された場合、操作されたSW1に係るスイッチSW1a及びSW1bの接続状態をスイッチSW1で行われた開放又は閉鎖の操作に合わせて変更する。
【0033】
また、制御部2は、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4のいずれかについて開放又は閉鎖を指示する操作があった場合(S11:YES)、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4の内、複数のスイッチについて開閉操作があったか否かを判定する(S12)。制御部2は、この判定をMOFETQ1,Q2,Q3,Q4の内、複数のMOFETがオン状態であるか否かを判定することによって行う。
【0034】
制御部2は、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4の内、複数のスイッチについて開閉操作がなかったと判定した場合(S12:NO)、例えば、スイッチSW4のみに対して開閉操作がなされた場合、スイッチSW4に係る電流計A4が閾値Thを超える電流値を検出したか否かを判定する(S13)。
【0035】
制御部2は、閾値Thを超える電流が供給されているモータをロック状態にあるモータであると判定し、検出する。開閉部を開放又は閉鎖しているモータに流れる電流は、開閉部が全開又は全閉の状態(ロック状態)になった場合に増加する。閾値Thは、開閉部を開放又は閉鎖するように駆動しているモータに流れる電流値よりも大きく、開閉部が全開又は全閉の状態(ロック状態)になった場合にモータに流れる電流値よりも小さい値に設定されている。
制御部2は、閾値Th以上の電流が供給されているモータをロック状態にあるモータとして判定するため、電流計A1,A2,A3,A4を用いて電流を計測するだけで、モータのロック状態を容易に検出することができる。また、モータのロック状態を検出するために、センサ等を新たに車両に設ける必要がないため、部品コストが上昇しない。
【0036】
制御部2は、電流計A4が閾値Thを超える電流値を検出しなかった場合(S13:NO)、電流計A4が閾値Thを超える電流値を検出するまでステップS13の判定を繰り返す。
制御部2は、電流計A4が閾値Thを超える電流値を検出した場合(S13:YES)、所定の時間、例えば1秒間待機した後にMOSFETQ4をオフにし、ロック状態にあるモータM4の電源をオフにする(S14)。制御部2が所定の時間待機する理由は、モータM4が開閉している開閉部を確実に全開又は全閉にするためである。
制御部2は、ロック状態にあるモータM4の電源をオフにした後、制御を終了する。
【0037】
制御部2は、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4の内、複数のスイッチについて開閉操作があったと判定した場合(S12:YES)、例えば、スイッチSW1,SW2,SW3について開閉操作があったと判定した場合、スイッチSW1,SW2,SW3に係る電流計A1,A2,A3が検出した電流値のいずれかが閾値Thを超えているか否かを判定する(S15)。
【0038】
制御部2は、開閉操作があったスイッチSW1,SW2,SW3に係る電流計A1,A2,A3が検出した電流値がいずれについても閾値Thを超えていない場合(S15:NO)、ステップS12に戻る。制御部2は、再び、乗員によってスイッチSW1,SW2,SW3,SW4の内、複数のスイッチについて開閉操作されていないかを判定する。
【0039】
制御部2は、開閉操作があったスイッチSW1,SW2,SW3に係る電流計A1,A2,A3が検出した電流値のいずれかが閾値Thを超えた場合(S15:YES)、例えば、電流計A1が検出した電流値が閾値Thを超えた場合、電流計A1に接続しているMOSFETQ1を除く、他のオン状態にあるMOSFETQ2,Q3を間欠的にオン/オフし、MOSFETQ2,Q3に対応するモータM2,M3に流れる電流の低減を開始する(S16)。
これにより、複数のモータM1,M2,M3が同時的にロック状態になることはない。また、モータM2,M3に電流が供給されているため、ロック状態にないモータM2,M3も駆動する。従って、車両の乗員等が車両の故障であると誤認することを防止することができる。
【0040】
ここで、制御部2は、MOSFETQ2,Q3を所定のデューティ比でオン/オフしても良い。ここで、述べている例では、車両に4枚のパターウインドウが設けられている。これに基づいて、デューティ比を1/4としても良い。
【0041】
また、制御部2は、ステップS15で、例えば複数の電流計A1,A3が閾値Thを超える電流値を同時的に検出し、モータM1,M3についてロック状態を同時的に検出した場合、制御部2が有する記憶部20が記憶している優先順位に基づいて、ロック状態にあるモータM1,M3の内、優先順位の最も高いモータをロック状態に保持する。例えば、優先順位がM2,M1,M4,M3の順に決められていた場合、制御部2は、モータM1のロック状態を保持し、モータM1以外の駆動中のモータM2,M3に供給される電流を、MOSFETQ2,Q3を間欠的にオン/オフすることによって低減する。
これにより、複数のモータM1,M3についてロック状態を同時的に検出しても、モータM1のみがロック状態を保持するため、複数のモータM1,M3が継続してロック状態になることはない。ここで、記憶部20は、特許請求の範囲における記憶手段に該当する。
【0042】
制御部2は、ステップS16で電流低減を開始し、所定の時間、例えば1秒間経過した後、ロック状態にあるモータM1に係るMOSFETQ1をオフにし、モータM1の電源をオフにする(S17)。制御部2がモータM1の電源オフを所定の時間(例えば1秒間)待つことによって、モータM1が開閉する開閉部を確実に全開又は全閉の状態にすることができる。
【0043】
制御部2は、ステップS17を実行した後、間欠的にオン/オフされていたMOSFETQ2,Q3をオン状態にし、電流低減を停止する(S18)。
制御部2は、ステップS18を実行した後、ステップS12に戻って、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4の内、複数のスイッチについて開閉操作が行われている場合は同様の動作を繰り返す。
【0044】
次に、モータM1,M2,M3,M4に供給される電流の時系列変化を説明する。図3は、モータM1,M2,M3に流れる電流の時系列変化を示すタイミングチャートである。ここでは、モータM1,M2,M3,M4の内、スイッチSW1,SW2,SW3について開閉操作が行われ、モータM1,M2,M3に電流が供給され、モータM1,M2,M3の順にモータがロックする場合を示している。
【0045】
制御部2は、スイッチSW1,SW2,SW3について開閉操作があることを検知し、MOSFETQ1,Q2,Q3をオンにし、スイッチSW1a及びSW1b,スイッチSW2a及びSW2b,スイッチSW3a及びSW3bを開閉操作に応じた接続状態にする。これにより、モータM1,M2,M3夫々は電流を供給される。
【0046】
電流を供給され始めたモータM1,M2,M3は、夫々に対応する開閉部を開閉し始める。モータM1に係る開閉部が全開又は全閉の状態(ロック状態)になると、モータM1に流れる電流が上昇し、閾値Thを超える。制御部2は、電流計A1によって閾値Thを超える電流値を検出すると、MOSFETQ2,Q3を間欠的にオン/オフし、モータM2,M3に供給される電流を低減する。
これにより、電流は低減されているが、モータM2,M3に電流は供給されているため、モータM2,M3は夫々に係る開閉部を開閉し続ける。従って、車両の乗員等が故障であると誤認することを防止することができる。
【0047】
制御部2は、モータM1について所定の時間(例えば1秒間)経過した後、MOSFETQ1をオフにし、モータM1への電流の供給を停止する。これにより、モータM1に係る開閉部が確実に全開又は全閉になる。
制御部2は、MOSFETQ1をオフにした後、MOSFETQ2,Q3を間欠的なオン/オフ状態からオン状態に戻し、モータM2,M3に供給されている電流の低減を停止する。
【0048】
モータM2,M3は、引き続いて夫々に係る開閉部を開閉する。モータM2に係る開閉部が全開又は全閉の状態(ロック状態)になると、モータM2に流れる電流が上昇し、閾値Thを超える。制御部2は、電流計A2によって閾値Thを超える電流値を検出すると、MOSFETQ3をオン/オフし、モータM3に供給される電流を低減する。
【0049】
制御部2は、モータM2について所定の時間(例えば1秒間)経過した後、MOSFETQ2をオフにし、モータM2への電流の供給を停止する。これにより、モータM2に係る開閉部が確実に全開又は全閉になる。
制御部2は、MOSFETQ2をオフにした後、MOSFETQ3を間欠的なオン/オフ状態からオン状態に戻し、モータM3に供給されている電流の低減を停止する。
【0050】
モータM3は、引き続いてモータM3に係る開閉部を開閉する。モータM3に係る開閉部が全開又は全閉の状態(ロック状態)になると、モータM3に流れる電流が上昇し、閾値Thを超える。制御部2は、電流計A3によって閾値Thを超える電流値を検出する。
【0051】
制御部2は、所定の時間(例えば1秒間)経過した後、MOSFETQ3をオフにし、モータM3への電流の供給を停止する。これにより、モータM3に係る開閉部が確実に全開又は全閉になる。
結果、モータM1,M2,M3夫々に係る開閉部が全開又は全閉になり、モータM1,M2,M3は全て開閉動作を終了する。
【0052】
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2におけるモータ駆動装置4の要部構成を示す回路図である。モータ駆動装置4は、実施の形態1におけるモータ駆動装置1と同様に、車両の図示しない開閉部の開閉及び停止を指示するスイッチSW1,SW2,・・・と、開閉部を開閉するモータM1,M2,・・・と、モータ駆動装置4が備える制御部2及びモータM1,M2,・・・に供給するバッテリ3とに接続されている。
なお、バッテリ3は、モータM1,M2,・・・だけではなく、車両に搭載された他の機器にも給電する。
【0053】
モータ駆動装置4の要部構成は、電流計A1,A2,・・・を備えていないこと及び位置検出器W1,W2,・・・を備えていることを除いて、実施の形態1に係るモータ駆動装置1の要部構成と同じである。ここで、位置検出器W1,W2,・・・は特許請求の範囲における開閉検出手段に該当する。
位置検出器W1,W2,・・・は、夫々制御部2に接続されており、モータM1,M2,・・・夫々の回転数を検出することによって、各モータが開閉する開閉部の境界位置を検出する。境界位置が最も上端にある場合に開閉部が全閉であることを示し、最も下端にある場合に開閉部が全開であることを示す。
【0054】
なお、実施の形態2におけるモータ駆動装置4の要部構成の内、実施の形態1におけるモータ駆動装置1の要部構成と同じものには、同様の符号を付し、説明を省略している。
【0055】
以下、モータ駆動装置4の動作、即ち制御部2が実行する動作を説明する。ここでも、実施の形態1の説明と同様に、説明をより具体的にするため、モータ駆動装置4はモータM1,M2,M3,M4を駆動するものとする。ただし、車両の開閉部は4つに限定されない。モータで駆動する2以上の開閉部を備える車両であれば、本発明を適用することができる。
【0056】
図5は、実施の形態2におけるモータ駆動装置4の動作を示すフローチャートである。まず、制御部2は、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4の開閉操作があるか否かを判定する(S21)。
【0057】
制御部2は、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4のいずれについても開放又は閉鎖を指示する操作がなかった場合(S21:NO)、制御を終了する。
制御部2は、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4のいずれかについて開放又は閉鎖を指示する操作があった場合(S21:YES)、操作されたスイッチに係るMOSFETQ1,Q2,Q3,Q4に所定の電圧を印加することによってオン状態にする。更に、制御部2は、例えばスイッチSW1が操作された場合、操作されたSW1に対応するスイッチSW1a及びSW1bの接続状態をスイッチSW1で行われた開放又は閉鎖の操作に合わせて変更する。
スイッチSW2,SW3,SW4が操作された場合も同様にして、スイッチSW2a及びSW2b、スイッチSW3a及びSW3b、スイッチSW4a及びSW4bの接続状態を変更する。
【0058】
また、制御部2は、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4のいずれかについて開放又は閉鎖を指示する操作があった場合(S21:YES)、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4の内、複数のスイッチについて開閉操作があったか否かを判定する(S22)。制御部2は、この判定をMOFETQ1,Q2,Q3,Q4の内、複数のMOFETがオン状態であるか否かを判定することによって行う。
【0059】
制御部2は、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4の内、複数のスイッチについて開閉操作がなかったと判定した場合(S22:NO)、例えば、スイッチSW4のみに対して開閉操作がなされた場合、スイッチSW4に係る位置検出器W4によって、モータM4に係る開閉部が全開又は全閉を検出したか否かを判定する(S23)。
【0060】
制御部2は、全開又は全閉を検出した開閉部に係るモータの内、電流が供給され、駆動しているモータをロック状態にあるモータであると判定し、検出する。
制御部2は、位置検出器W1,W2,W3,W4を用いるため、位置検出器W1,W2,W3,W4夫々に係る開閉部について、全開又は全閉の状態にあるか否かを確実に検出することができる。
【0061】
制御部2は、位置検出器W4がモータM4に係る開閉部について全開又は全閉を検出しなかった場合(S23:NO)、位置検出器W4がモータM4に係る開閉部について全開又は全閉を検出するまでステップS23を繰り返す。
制御部2は、位置検出器W4がモータM4に係る開閉部について全開又は全閉を検出した場合(S23:YES)、所定の時間、例えば1秒間待機した後にMOSFETQ4をオフにし、ロック状態にあるモータM4の電源をオフにする(S24)。制御部2が所定の時間待機する理由は、モータM4が開閉している開閉部を確実に全開又は全閉するためである。
制御部2は、ロック状態にあるモータM4の電源をオフにした後、制御を終了する。
【0062】
制御部2は、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4の内、複数のスイッチについて開閉操作があったと判定した場合(S22:YES)、例えば、スイッチSW1,SW2,SW3について開閉操作があったと判定した場合、スイッチSW1,SW2,SW3に係る位置検出器W1,W2,W3がモータM1,M2,M3夫々に係る開閉部について全開又は全閉を検出しているか否かを判定する(S25)。
【0063】
制御部2は、開閉操作があったスイッチSW1,SW2,SW3に係る位置検出器W1,W2,W3がいずれについても全開又は全閉を検出しなかった場合(S25:NO)、ステップS22に戻る。制御部2は、再び、乗員によってスイッチSW1,SW2,SW3,SW4の内、複数のスイッチについて開閉操作されていないか判定する。
【0064】
制御部2は、開閉操作があったスイッチSW1,SW2,SW3に係る位置検出器W1,W2,W3いずれかが全開又は全閉を検出した場合(S25:YES)、例えば、位置検出器W1が全開又は全閉を検出した場合、位置検出器W1に係るMOSFETQ1を除く、他のオン状態にあるMOSFETQ2,Q3を間欠的にオン/オフし、MOSFETQ2,Q3に係るモータM2,M3に流れる電流の低減を開始する(S26)。
これにより、複数のモータM1,M2,M3が同時的にロック状態になることはない。また、モータM2,M3に電流が供給されているため、ロック状態にないモータM2,M3は駆動する。従って、車両の乗員等が車両の故障であると誤認することを防止することができる。
【0065】
ここで、制御部2は、MOSFETQ2,Q3を所定のデューティ比でオン/オフしても良い。ここで、述べている例では、車両の開閉部は4つである。この場合、デューティ比を1/4としても良い。
【0066】
また、制御部2は、ステップS25で、例えば複数の位置検出器W1,W3が夫々に係る開閉部について全開又は全閉を同時的に検出し、モータM1,M3についてロック状態を同時的に検出した場合、制御部2が有する記憶部20が記憶している優先順位に基づいて、ロック状態にあるモータM1,M3の内、優先順位の最も高いモータをロック状態に保持する。例えば、優先順位がM2,M1,M4,M3の順に決められていた場合、制御部2は、モータM1のロック状態を保持し、モータM1以外の駆動中のモータM2,M3に供給される電流を、MOSFETQ2,Q3を間欠的にオン/オフすることによって低減する。
これにより、複数のモータM1,M3についてロック状態を同時的に検出しても、モータM1のみがロック状態を保持するため、複数のモータM1,M3が継続してロック状態になることはない。
【0067】
制御部2は、ステップS26で電流低減を開始し、所定の時間、例えば1秒間経過した後、ロック状態にあるモータM1に係るMOSFETQ1をオフにし、モータM1の電源をオフにする(S27)。制御部2が、モータM1の電源オフを所定の時間(例えば1秒間)待機することによって、モータM1が開閉する開閉部を確実に全開又は全閉の状態にすることができる。
【0068】
制御部2は、ステップS27を実行した後、間欠的にオン/オフされていたMOSFETQ2,Q3をオン状態にし、電流低減を停止する(S28)。
制御部2は、ステップS28を実行した後、ステップS22に戻って、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4の内、複数のスイッチについて開閉操作が行われている場合は同様の動作を繰り返す。
【0069】
モータM1,M2,M3,M4に供給される電流の時系列変化についての説明は、実施の形態1で述べた説明と同様であるため省略する。
【0070】
なお、制御部2がロック状態にあるモータM1の電源をオフにする手段は、MOSFETQ1をオフにする手段に限定されない。制御部2は、スイッチSW1a及びSW1bの接続状態をモータM1の両端が接地された接続状態にしても良い。モータM2,M3,・・・についても同様である。
【0071】
また、開示された実施の形態1及び実施の形態2は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
1,4 モータ駆動装置
2 制御部(ロック検出手段、スイッチ制御手段)
20 記憶部(記憶手段)
M1,M2,・・・ モータ
Q1,Q2,・・・ MOSFET(スイッチ)
W1,W2,・・・ 位置検出器(開閉検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における複数の開閉部を夫々開閉する複数のモータに供給される電流の経路夫々にスイッチが設けられたモータ駆動装置において、
前記複数のモータ夫々についてロック状態であるか否かを検出するロック検出手段と、
複数の前記スイッチがオン状態であり、かつ前記ロック検出手段が一のモータについてロック状態を検出した場合、他のモータに係るスイッチの内、オン状態にあるスイッチを間欠的にオン/オフするスイッチ制御手段と
を備えること
を特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
前記ロック検出手段は、
前記複数のモータ夫々に供給される電流を計測し、
計測した電流が所定値を超えた場合に、該所定値を超えた電流が供給されるモータについてロック状態であると検出するように構成されていること
を特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記複数の開閉部夫々について全開又は全閉の状態であるか否かを検出する開閉検出手段
を更に備え、
前記ロック検出手段は、前記開閉検出手段が全開又は全閉の状態であると検出した開閉部に係るモータの内、スイッチがオンであるモータについてロック状態であると検出するように構成されていること
を特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
ロック状態を保持するモータの優先順位を予め記憶する記憶手段
を更に備え、
前記スイッチ制御手段は、前記ロック検出手段が複数のモータについてロック状態を同時的に検出した場合、検出されたモータの内、前記記憶手段が記憶する優先順位の最も高いモータをロック状態に保持し、検出された他のモータに係るスイッチを間欠的にオン/オフするように構成されていること
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のモータ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−57373(P2012−57373A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202293(P2010−202293)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】