説明

ラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置

【課題】断層画像の向きを内視鏡の観察画像の向きと容易に対応させて、断層画像のオリエンテーション付けを誰でもが簡単かつ正確に行うことができるラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置を提供すること。
【解決手段】内視鏡10の処置具挿通チャンネル11の出口付近に、光プローブ1,3,4から低干渉性の光が照射されることによってモニタ9に画像表示される指標18を、内視鏡10の観察画像の向きと所定の対応を付けた向きに形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内視鏡の処置具挿通チャンネルを経由して光プローブを体内に挿入して、生体組織の断層画像を得るために用いられるラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オプティカルコヒーレンストモグラフィは、低干渉性の光を生体組織等に照射して、その生体組織の奥行き方向の屈折率が変化する複数の境界点からの複数の反射光と参照光とを重ね合わせて得られるヘテロダインビート信号の振幅の変化から、生体組織等の浅い領域の精密な断層像を得るようにしたものである(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
そして、内視鏡の処置具挿通チャンネルに通して使用することができるようにしたラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置は、可撓性シースの先端部分から側方に軸線周り方向に向きを変えながら低干渉性の光を射出すると同時にその反射光を受光してその受光信号を可撓性シースの基端側から出力する光プローブが、内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿通されて、光プローブから出力された受光信号に含まれる情報に基づいて光照射部位の断層画像をモニタに表示するようになっている(例えば、特許文献3、4)。
【特許文献1】特公平6−35946
【特許文献2】特表平6−511312
【特許文献3】特開平11−56786
【特許文献4】特開平2000−321034
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置の断層画像モニタ画面には光プローブを中心としてその軸線周り360°の断層画像が表示され、その断層画像の向きを内視鏡の観察画像の向きと対応させることにより、断層画像のオリエンテーション付け(方向の正しい認識)を行うことができる。
【0005】
そこで特許文献3、4等に記載された従来のラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置においては、光プローブの先端部分の側面に肉眼で明瞭に観察可能な指標を付し、その指標が内視鏡の観察画面中で所定の向きになるように光プローブを軸線周りに回転調整することで、断層画像のオリエンテーションが付くようにしている。
【0006】
しかし現実には、内視鏡の処置具挿通チャンネルは体内の管腔臓器の形状等に沿って曲がりくねっているので、光プローブを手元側で軸線周りに回転させる操作を行っても、先端部分がそれに追従してスムーズに回転せず、回転する際には突然グルッと大きく回ってしまうような動作をするため、光プローブを、その先端部分の指標が内視鏡の観察画面中で所定の向きに位置するように調整する操作は容易ではなかった。
【0007】
そこで本発明は、断層画像の向きを内視鏡の観察画像の向きと容易に対応させて、断層画像のオリエンテーション付けを誰でもが簡単かつ正確に行うことができるラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明のラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置は、可撓性シースの先端部分から側方に軸線周り方向に向きを変えながら低干渉性の光を射出すると同時にその反射光を受光してその受光信号を可撓性シースの基端側から出力する光プローブが内視鏡の処置具挿通チャンネルに軸線方向に進退自在に挿通されると共に、光プローブから出力された受光信号に含まれる情報に基づいて低干渉性の光が照射された部位の断層像を形成するための断層像形成処理部と、断層像形成処理部において形成された断層画像を表示するモニタとが設けられたラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置において、内視鏡の処置具挿通チャンネルの出口付近に、光プローブから低干渉性の光が照射されることによってモニタに画像表示される指標を、内視鏡の観察画像の向きと所定の対応を付けた向きに形成したものである。
【0009】
なお、指標が低干渉性の光を吸収又は反射する部材であってもよく、指標が処置具挿通チャンネルの軸線と平行方向に細長く形成されていてもよい。また、指標が処置具挿通チャンネルの出口付近の内周面に形成された溝内を埋める状態に設けられていてもよい。
【0010】
また、モニタに表示される断層画像の向きを回転調整するための画像回転調整部が断層像形成処理部に設けられていてもよく、その場合、指標がモニタの所定の方向に表示されるように、モニタに表示される断層画像の向きを画像回転調整部において手動で任意に回転調整可能であってもよく、或いは、モニタに表示される断層画像の向きが画像回転調整部において自動的に回転調整されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内視鏡の処置具挿通チャンネルの出口付近に、光プローブから低干渉性の光が照射されることによってモニタに画像表示される指標を、内視鏡の観察画像の向きと所定の対応を付けた向きに形成したことにより、断層画像の向きを内視鏡の観察画像の向きと容易に対応させて、断層画像のオリエンテーション付けを誰でもが簡単かつ正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
可撓性シースの先端部分から側方に軸線周り方向に向きを変えながら低干渉性の光を射出すると同時にその反射光を受光してその受光信号を可撓性シースの基端側から出力する光プローブが内視鏡の処置具挿通チャンネルに軸線方向に進退自在に挿通されると共に、光プローブから出力された受光信号に含まれる情報に基づいて低干渉性の光が照射された部位の断層像を形成するための断層像形成処理部と、断層像形成処理部において形成された断層画像を表示するモニタとが設けられたラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置において、内視鏡の処置具挿通チャンネルの出口付近に、光プローブから低干渉性の光が照射されることによってモニタに画像表示される指標を、内視鏡の観察画像の向きと所定の対応を付けた向きに形成すると共に、モニタに表示される断層画像の向きを回転調整するための画像回転調整部を断層像形成処理部に設ける。
【実施例】
【0013】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図3はラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置の全体構成を示しており、1は、内視鏡10の処置具挿通チャンネル11に挿脱自在な可撓性シースであり、その先端は密閉されて球面状に形成されている。
【0014】
可撓性シース1内には、シングルモード光ファイバ3が軸線周りに回転自在に全長にわたって挿通配置されていて、可撓性シース1の先端内に軸線周りに回転自在に配置された先端光学系4の後端面にシングルモード光ファイバ3の先端面が接続固着されている。
【0015】
シングルモード光ファイバ3の基端は、内視鏡10外に配置された光信号処理部5に接続されていて、例えば近赤外領域の波長の光を発光する超高輝度ダイオード等のような低干渉性の光を放射する低干渉性光源6から射出された低干渉性の光がシングルモード光ファイバ3に入射される。
【0016】
光信号処理部5はオプティカルコヒーレンストモグラフィの光干渉処理を行うための公知のものであり、生体組織で反射されてシングルモード光ファイバ3内を通って戻されてきた低干渉性の光の反射光を受けて、低干渉性光源6から射出された光に対して周波数をシフトさせた参照光と合成し、その合成された光強度を光電変換して、図示されていないアナログデジタル変換手段でデジタル信号化してからコンピュータ7(断層像形成処理部)に出力する。その信号に含まれる情報から、生体組織の奥行き方向の一次元の断層像が得られる。
【0017】
また、シングルモード光ファイバ3を基端部分で矢印Aに示されるように軸線周り方向に一定の速度で回転運動させるラジアル駆動装置8が設けられており、それによって、シングルモード光ファイバ3の先端に連結されている先端光学系4が、矢印Bで示されるように軸線周り方向に回転運動をしていわゆるラジアル走査が行われる。
【0018】
ラジアル駆動装置8の回転周期はコンピュータ7から出力される同期信号によって制御されており、コンピュータ7において、光信号処理部5から入力される一次元の断層像信号をラジアル駆動装置8の走査と同期制御することにより二次元の断層像が構築され、その画像が断層画像モニタ9に表示される。そして、コンピュータ7に接続されたキーボード7k(画像回転調整部)を操作することによって、公知の処理により断層画像モニタ9に表示される断層画像を360°任意の向きに回転させることができる。
【0019】
内視鏡10の挿入部の先端に配置された観察窓12の内側には、対物光学系13による被写体の投影位置に固体撮像素子14の撮像面が配置されていて、固体撮像素子14から出力される撮像信号が信号ケーブル15によってビデオプロセッサ20に送られ、ビデオプロセッサ20から出力される映像信号により内視鏡観察画像が内視鏡画像モニタ21に表示される。
【0020】
そのような内視鏡観察画像は、内視鏡10の操作部16の前側にあたる方向(図3において上方)が、内視鏡画像モニタ21に表示される時に上方向になるように向きの関係が一定に固定されており、内視鏡10を移動或いは回転させてもその向きの関係は変動しない。
【0021】
図4は、内視鏡10の挿入部の先端部分を示しており、17は、被写体に向けて照明光を放射するように観察窓12と並んで配置された照明窓である。処置具挿通チャンネル11の出口付近の内面には、低干渉性光源6から射出される低干渉性の光を吸収又は反射する特性の部材からなる指標18が、処置具挿通チャンネル11の軸線と平行方向に細長く形成されている。
【0022】
図5は、その部分の正面断面図であり、指標18は、内視鏡観察画像の上方向と向きを一致させて形成されている。指標18は、処置具挿通チャンネル11の出口付近の内周面に溝を形成して、その溝内を埋める状態に設けると凹凸ができなくて好ましい。
【0023】
そして、図1及び図2に示されるように、先端光学系4が処置具挿通チャンネル11の先端内に潜るように光プローブを少し引っ込めた状態にして、先端光学系4から低干渉性の光を射出させて断層像形成を行うと、図6に示されるように、断層画像モニタ9に指標18を含む処置具挿通チャンネル11の断層画像11′が表示される。この状態では、指標18がどの方向に表示されるか不確定である。
【0024】
そこで、キーボード7kを操作して、図7に示されるように、コンピュータ7での処理により断層画像モニタ9に表示される指標18の位置が断層画像モニタ9の上方向になるように調整することにより、断層画像モニタ9に表示される断層画像11′の向きが内視鏡画像モニタ21に表示される内視鏡観察画像の向きと正しく一致する。
【0025】
そこで光プローブの先端を図3及び図4に示されるように処置具挿通チャンネル11から真っ直ぐ前方に押し出して生体組織の断層像取得を行えば、内視鏡画像モニタ21に表示される内視鏡観察画像との対比により、断層画像モニタ9に表示される断層画像11′のオリエンテーション付けを誰でもが容易かつ正確に行うことができる。
【0026】
なお、前述のように、指標18が断層画像モニタ9の所定の方向に表示されるようにキーボード7kを操作することにより、断層画像モニタ9に表示される断層画像11′の向きを手動で任意に回転調整することができるが、その回転調整をコンピュータ7においてソフトウェアで自動的に行うようにしてもよい。
【0027】
その場合には、断層像中において指標18だけが処置具挿通チャンネル11の内周の他の部分と比べて低干渉性の光の反射が異なる(大きい又は小さい)ので、低干渉性の光の反射が異なる位置が断層画像モニタ9の上側に来るように公知のソフトウェア(説明省略)で画像回転をさせればよい。
【0028】
なお、断層画像モニタ9に表示される断層像と内視鏡画像モニタ21に表示される内視鏡観察画像との向き合わせは相対的なものなので、内視鏡画像モニタ21において内視鏡観察画像の向きを回転調整することができるようになっている場合には、必ずしも断層画像モニタ9側に表示画像を回転させる機能を設けなくてもよい。また、断層画像モニタ9に表示される断層像と内視鏡画像モニタ21に表示される内視鏡観察画像との向きのズレが大きくない場合には、必ずしも両像の向きを補正しなくても、術者が指標18の向きから視覚的に勘案補正して断層画像のオリエンテーションを付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例のラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例の光プローブの先端部分が内視鏡の処置具挿通チャンネルの先端内に引っ込んだ状態の斜視図である。
【図3】本発明の実施例のラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置の全体構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例の光プローブの先端部分が内視鏡の処置具挿通チャンネルの先端から突出した状態の斜視図である。
【図5】本発明の実施例のラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置の指標部分の正面断面図である。
【図6】本発明の実施例のラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置により得られるモニタ画像の回転方向調整前の状態の略示図である。
【図7】本発明の実施例のラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置により得られるモニタ画像の回転方向調整後の状態の略示図である。
【符号の説明】
【0030】
1 可撓性シース(光プローブ)
3 シングルモード光ファイバ(光プローブ)
4 先端光学系(光プローブ)
7 コンピュータ(断層像形成処理部)
7k キーボード(画像回転調整部)
9 断層画像モニタ(モニタ)
10 内視鏡
11 処置具挿通チャンネル
18 指標
20 ビデオプロセッサ
21 内視鏡画像モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性シースの先端部分から側方に軸線周り方向に向きを変えながら低干渉性の光を射出すると同時にその反射光を受光してその受光信号を上記可撓性シースの基端側から出力する光プローブが内視鏡の処置具挿通チャンネルに軸線方向に進退自在に挿通されると共に、上記光プローブから出力された上記受光信号に含まれる情報に基づいて上記低干渉性の光が照射された部位の断層像を形成するための断層像形成処理部と、上記断層像形成処理部において形成された断層画像を表示するモニタとが設けられたラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置において、
上記内視鏡の処置具挿通チャンネルの出口付近に、上記光プローブから上記低干渉性の光が照射されることによって上記モニタに画像表示される指標を、上記内視鏡の観察画像の向きと所定の対応を付けた向きに形成したことを特徴とするラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項2】
上記指標が上記低干渉性の光を吸収又は反射する部材である請求項1記載のラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項3】
上記指標が上記処置具挿通チャンネルの軸線と平行方向に細長く形成されている請求項1又は2記載のラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項4】
上記指標が、上記処置具挿通チャンネルの出口付近の内周面に形成された溝内を埋める状態に設けられている請求項1、2又は3記載のラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項5】
上記モニタに表示される上記断層画像の向きを回転調整するための画像回転調整部が上記断層像形成処理部に設けられている請求項1、2、3又は4記載のラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項6】
上記指標が上記モニタの所定の方向に表示されるように、上記モニタに表示される上記断層画像の向きを上記画像回転調整部において手動で任意に回転調整可能である請求項5記載のラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項7】
上記指標が上記モニタの所定の方向に表示されるように、上記モニタに表示される上記断層画像の向きが上記画像回転調整部において自動的に回転調整される請求項5記載のラジアル走査式経内視鏡オプティカルコヒーレンストモグラフィ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−48798(P2008−48798A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225999(P2006−225999)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】