ラッチ装置
【課題】製造コストの低減化および装置の小型化を図りながら、ロック機構の駆動源へ供給される駆動電流を有効活用して操作ハンドルの開操作に要する操作力を低減させることができるラッチ装置を提供すること。
【解決手段】サイドドア2を車両本体1に対して半閉状態および全閉状態に保持するラッチ機構20と、操作ハンドルの開操作により開扉動作することによりラッチ機構20により保持された上記半閉状態および全閉状態を解除させるオープンレバー30とを備えたラッチ装置10において、操作ハンドルの開操作を契機として駆動することにより上記半閉状態および全閉状態の解除を補助する解除補助ユニット50と、ロック機構の駆動源に供給される駆動電流の一部を蓄電する一方、解除補助ユニット50に蓄電した駆動電流を供給して該解除補助ユニット50を駆動させる蓄電装置60とを備えたものである。
【解決手段】サイドドア2を車両本体1に対して半閉状態および全閉状態に保持するラッチ機構20と、操作ハンドルの開操作により開扉動作することによりラッチ機構20により保持された上記半閉状態および全閉状態を解除させるオープンレバー30とを備えたラッチ装置10において、操作ハンドルの開操作を契機として駆動することにより上記半閉状態および全閉状態の解除を補助する解除補助ユニット50と、ロック機構の駆動源に供給される駆動電流の一部を蓄電する一方、解除補助ユニット50に蓄電した駆動電流を供給して該解除補助ユニット50を駆動させる蓄電装置60とを備えたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッチ装置に関し、より詳細には、ラッチ機構により保持された扉体の半閉状態および全閉状態を解除するためのラッチ装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば四輪自動車等の車両に設けられたラッチ装置としては、ラッチ機構と、オープンレバーとを備えたものが知られている。ラッチ機構は、ラッチとラチェットとを備えて構成されている。
【0003】
ラッチは、例えばサイドドア等のような扉体にラッチ軸を介して軸支され、開放動作および閉鎖動作する態様で該ラッチ軸の軸心回りに揺動可能に配設されている。このラッチは、付勢手段であるラッチバネにより常時開放動作する方向に付勢されており、扉体の閉動作によりラッチバネによる付勢力に抗して閉鎖動作して例えば車両本体に配設されたストライカと噛合状態になるものである。
【0004】
ラチェットは、ラッチと同様に、扉体にラチェット軸を介して軸支され、係合動作および解除動作する態様で該ラチェット軸の軸心回りに揺動可能に配設されている。このラチェットは、付勢手段であるラチェットバネにより常時係合動作する方向に付勢されており、該ラチェットバネの付勢力によって係合動作することによりラッチに係合して該ラッチとストライカとの噛合状態を保持する一方、該ラチェットバネの付勢力に抗して解除動作することにより上記噛合状態を解除するものである。
【0005】
オープンレバーは、扉体に設けられた操作ハンドル、すなわちサイドドアのアウトサイドに設けられたアウトサイドハンドルおよびサイドドアのインサイドに設けられたインサイドハンドルのそれぞれに連係し、かつ該操作ハンドルの開操作により開扉動作する態様で揺動可能に配設されている。このオープンレバーは、開扉動作することによりラチェットをラチェットバネの付勢力に抗して解除動作させるものである。
【0006】
このようなラッチ装置では、扉体を閉動作させてラッチとストライカとを噛合状態にし、ラチェットを係合動作させて該噛合状態を保持することにより、扉体を車両本体に対して半閉状態もしくは全閉状態にする一方、操作ハンドルを開操作してオープンレバーを開扉動作させることによって該噛合状態を解除することにより、扉体が開動作することを許容する。
【0007】
ところで、上記ラッチ装置では、係合動作させたラチェットを、ストライカと噛合状態にあるラッチと係合させて該噛合状態を保持することにより、扉体を車両本体に対して半閉状態もしくは全閉状態にしているが、機種によっては特に扉体が車両本体に対して全閉状態になる場合には、ラッチとラチェットとの係合部分には、ラッチバネの反力(付勢力)、並びに車両本体と扉体との間に設けられた例えばウェザーストリップ等のシール部材の反力が作用する結果、強大な摩擦力が生ずることがある。
【0008】
そのため、操作ハンドル(アウトサイドハンドルおよびインサイドドアハンドル)を開操作してオープンレバーを開扉動作させることによりラチェットを解除動作させる場合に、上記摩擦力が抵抗力として作用し、これにより操作ハンドルの操作荷重が必要以上に増大してしまう。このように操作ハンドルの操作荷重の増大は、例えば高齢者、子供、障害者、病人等のような利用者にとっては、操作ハンドルの開操作に困難を伴う虞れがあった。
【0009】
そこで、操作ハンドルの開操作を補助するために、利用者による操作ハンドルの開操作に起因して、モータの動力によりラチェットを解除動作させるパワーリリース機構を備えたラッチ装置が提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。
【0010】
【特許文献1】実開平7−21956号公報
【特許文献2】特開2003−278426号公報
【特許文献3】実開平4−68182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、上記特許文献に提案されているラッチ装置では、パワーリリース機構のようなモータ動力を備えたパワー機構は、高価で過大な取付スペースを必要とするため、製造コストが要するとともに、装置が大型化してしまうという問題がある。
【0012】
一方、操作ハンドルとラッチ機構との間には、操作ハンドルの開操作を有効化するアンロック状態と操作ハンドルの開操作を無効化するロック状態との間で切り替わるロック機構が設けられている。かかるロック機構の駆動源となるアクチュエータに、車両に搭載されたバッテリ等の電源から駆動電流が供給されることにより、ロック機構が駆動することになるが、供給される駆動電流のうちロック機構の駆動に利用されるものは一部であり、残余分は何ら利用されていなかった。
【0013】
本発明は、上記実情に鑑みて、製造コストの低減化および装置の小型化を図りながら、ロック機構の駆動源へ供給される駆動電流を有効活用して操作ハンドルの開操作に要する操作力を低減させることができるラッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るラッチ装置は、車両本体および扉体のいずれか一方に配設され、前記扉体を前記車両本体に対して半閉状態および全閉状態に保持するラッチ機構と、前記扉体に設けられた操作ハンドルに連係し、かつ該操作ハンドルの開操作により開扉動作する態様で揺動可能に配設され、開扉動作することにより、前記ラッチ機構により保持された前記扉体の半閉状態および全閉状態を解除させるオープンレバーとを備えたラッチ装置において、前記操作ハンドルの開操作を契機として駆動することにより、前記オープンレバーによる前記扉体の半閉状態および全閉状態の解除を補助する解除補助手段と、前記操作ハンドルと前記ラッチ機構との間で、前記操作ハンドルの開操作を有効化するアンロック状態と前記操作ハンドルの開操作を無効化するロック状態との間で切り替わるロック機構の駆動源に供給される駆動電流の一部を蓄電する一方、前記解除補助手段に蓄電した駆動電流を供給して該解除補助手段を駆動させる蓄電装置とを備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項2に係るラッチ装置は、上述した請求項1において、前記ラッチ機構は、車両本体および扉体のいずれか一方に開放動作および閉鎖動作する態様で回転可能に配設され、付勢手段により常時開放動作する方向に付勢される一方、前記扉体の閉動作により前記付勢手段による付勢力に抗して閉鎖動作して前記車両本体および扉体のいずれか他方に配設されたストライカと噛合状態になるラッチと、係合動作および解除動作する態様で揺動可能に配設され、係合動作することにより前記ラッチに係合して前記噛合状態を保持する一方、解除動作することにより前記噛合状態を解除するラチェットとを備え、前記解除補助手段は、前記操作ハンドルが開操作されてから前記ラチェットが解除動作するまでの間に、前記噛合状態にあるラッチに当接して該ラッチを閉鎖動作する方向に余剰揺動させて、該ラッチと前記ラチェットとの係合状態を解除するレバー部材を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項3に係るラッチ装置は、上述した請求項2において、前記解除補助手段は、前記オープンレバーの開扉動作を検出する検出手段と、前記検出手段による前記開扉動作の検出により前記レバー部材を駆動させて前記ラッチに当接させる駆動手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のラッチ装置によれば、解除補助手段が、操作ハンドルの開操作を契機として駆動することにより、オープンレバーによる扉体の半閉状態および全閉状態の解除を補助するので、操作ハンドルの開操作に要する操作力を低減させることができる。また、蓄電装置が、操作ハンドルとラッチ機構との間で、操作ハンドルの開操作を有効化するアンロック状態と操作ハンドルの開操作を無効化するロック状態との間で切り替わるロック機構の駆動源に供給される駆動電流の一部を蓄電する一方、上記解除補助手段に蓄電した駆動電流を供給して該解除補助手段を駆動させるので、ロック機構に供給される駆動電流を有効活用することができる。しかも、従来のようにパワーリリース機構のような高価なものを用いず、過大な取付スペースを必要としない。従って、製造コストの低減化および装置の小型化を図りながら、ロック機構の駆動源へ供給される駆動電流を有効活用して操作ハンドルの開操作に要する操作力を低減させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るラッチ装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態におけるラッチ装置が適用される車両の要部を示した説明図であり、図2は、本発明の実施の形態におけるラッチ装置の構成を車両の後方側から示した背面図である。ここに例示するラッチ装置10は、例えば四輪自動車等の車両において、車両本体1に対して開閉自在に配設されたヒンジタイプのサイドドア(扉体)2の後縁部に設けられたものであり、ラッチ機構20と、オープンレバー30とを備えて構成してある。
【0020】
ラッチ機構20は、車両本体1に設けたストライカSと噛合状態となった場合にサイドドア2を半閉状態もしくは全閉状態にするものであり、ラッチハウジング11の内部にラッチ21およびラチェット22を備えて構成してある。
【0021】
ラッチハウジング11は、ストライカSが通過することのできる切欠溝12を有したもので、この切欠溝12をサイドドア2の開閉によりストライカSが相対的な移動する領域に配置した状態で、該サイドドア2に取り付けてある。
【0022】
ラッチ21は、図3〜図5に示すように、ラッチハウジング11に設けた切欠溝12よりも上方となる位置に、車両の前後方向に沿って略水平に延在するラッチ軸21aを介して該ラッチ軸21aの軸心回りに回転可能に配設したもので、より詳細には、図2〜図5において時計回りの方向に開放動作する一方、反時計回りの方向に閉鎖動作する態様で回転可能に配設してある。このラッチ21は、噛合溝211、フック部212および係止部213を有している。
【0023】
噛合溝211は、ラッチ21の外周面からラッチ軸21aに向けて形成したもので、ストライカSを収容することのできる幅に形成してある。
【0024】
フック部212は、図4に示すように、噛合溝211を下方に向けて開口させた場合に該噛合溝211よりも車両内側に位置する部分である。このフック部212は、図5に示すように、ラッチ21を反時計回りに回転させた場合(閉鎖動作させた場合)にラッチハウジング11の切欠溝12を横切る位置で停止する一方、図3に示すように、ラッチ21を時計回りに回転させた場合(開放動作させた場合)に切欠溝12を開放する位置(開放位置)で停止するように構成してある。
【0025】
係止部213は、図4に示すように、噛合溝211を下方に向けて開口させた場合に該噛合溝211よりも車両外側に位置する部分である。この係止部213は、図3に示すように、ラッチ21を時計回りに回転させた場合に切欠溝12を横切り、かつこの切欠溝12の奥方(車両外側)に向けて漸次上方に傾斜する状態で停止するように構成してある。尚、ラッチ21とラッチハウジング11との間には、図3〜図5においてラッチ21を常時時計回りの方向(開放動作する方向)に向けて付勢するラッチバネ(付勢手段)が設けてある。
【0026】
ラチェット22は、ラッチハウジング11の切欠溝12よりも下方、かつラッチ軸21aよりも車両内側となる位置に、車両の前後方向に沿って略水平に延在するラチェット軸22aを介して該ラチェット軸22aの軸心回りに揺動可能に配設したもので、より詳細には、図2〜図5において反時計回りに係合動作する一方、時計回りに解除動作する態様で揺動可能に配設してある。このラチェット22は、係合部221および作用部222を有している。
【0027】
係合部221は、ラチェット軸22aから車両外側に向けて径外方向に延在した部分であり、ラチェット22が図3〜図5において反時計回りに回転した場合(係合動作した場合)にその突出端面を介して上述したラッチ21のフック部212もしくは係止部213に係合することが可能である。作用部222は、ラチェット軸22aから車両内側に向けて径外方向に延在した部分である。
【0028】
このようなラチェット22には、連結ピン23を介して図示しないラチェットレバーが設けてある。ラチェットレバーは、ラチェット22と同様に、ラチェット軸22aを介して該ラチェット軸22aの軸心回りに揺動可能に配設してあり、ラチェット22と一体的に揺動するものである。このようなラチェットレバーとラッチハウジング11との間には、図2〜図5においてラチェットレバーを常時反時計回りに向けて付勢するラチェットレバーバネが設けてある。これによりラチェット22は、常時反時計回りの方向(係合動作する方向)に向けて付勢されている。
【0029】
オープンレバー30は、ラッチハウジング11において、ラチェット22(ラチェットレバー)よりも下方にオープンレバー軸(図示せず)を介して該オープンレバー軸の軸心回りに揺動可能に配設してある。また、オープンレバー30とラッチハウジング11との間には、オープンレバー30を図2において常時反時計回りに付勢するオープンレバーバネ(図示せず)が設けてあり、かかるオープンレバーバネの付勢力により、常態においては、図2に示すように、第1連係部31が車両内側、第2連係部32が車両外側に位置する態様で配設してある。ここで、第1連係部31は、サイドドア2のインサイドに設けた操作ハンドルであるインサイドハンドル3に図示しないケーブル等の連結機構を介して連係しており、第2連係部32は、サイドドア2のアウトサイドに設けた操作ハンドルであるアウトサイドハンドル4に図示しないケーブル等の連結機構を介して連係している。
【0030】
そして、オープンレバー30は、インサイドハンドル3、あるいはアウトサイドハンドル4が開操作された場合に、図2において時計回りに揺動、すなわちオープンレバーバネの付勢力に抗して開扉動作するものである。
【0031】
このようにオープンレバー30が開扉動作(時計回りに揺動)することにより、該オープンレバー30の一端面がラチェットレバーに当接して、該ラチェットレバーを押圧することにより、該ラチェットレバーをラチェットレバーバネの付勢力に抗して図2〜図5において時計回りの方向に揺動させる。これによりラチェット22は、該ラチェットレバーと一体的に解除動作(図2〜図5において時計回りの方向に揺動)することになる。このように操作ハンドル(インサイドハンドル3、アウトサイドハンドル4)が開操作されてからラチェット22が解除動作するまでには、連結機構の駆動およびオープンレバー30の揺動によるタイムラグがあり、これにより操作ハンドルとラチェット22との間には、連結機構およびオープンレバー30等の機械的あそびが設けられている。つまり、操作ハンドルが開操作され、機械的あそびが吸収された後にラチェット22が解除動作する。
【0032】
一方、このようなラッチ機構20と、オープンレバー30との間には、ロック機構(図6参照)が設けてある。ロック機構は、従前より知られているものであり、操作ハンドルの開操作を有効化するアンロック状態と操作ハンドルの開操作を無効化するロック状態との間で切り替わるものである。
【0033】
このようなラッチ装置10は、上記構成の他、解除補助ユニット(解除補助手段)50および蓄電装置60を備えている。解除補助ユニット50は、レバー部材51と、アクチュエータ52と、検出スイッチ53とを備えて構成してある。レバー部材51は、図2に示すように、ラッチハウジング11の切欠溝12の下方、すなわちラッチ21より下方で、かつラチェット22より車両外側となる位置に揺動可能に配設してある。より詳細に説明すると、レバー部材51は、板状体であり、周面の一部分が略扁平であって該周面の他の部分が円弧状に形成されてなり、軸部511および当接部512を有している。軸部511は、レバー部材51の揺動中心となる部位であり、該レバー部材51の中央部分から周面が略扁平となる側に偏った位置に形成されている。当接部512は、レバー部材51の周面のうち、軸部511から最も離隔した位置に形成されている。このようなレバー部材51は、ラッチハウジング11との間に図示しないバネ部材が設けられており、該バネ部材に図2において反時計回りに付勢されて、常態においては、図2に示すように当接部512が下方となる態様で配設してある。一方、詳細は後述するが、レバー部材51は、バネ部材の付勢力に抗して図2において時計回りに揺動した場合には、当接部512がラッチ21の係止部213の回転軌跡上に進出して該係止部213に当接し、これによりラッチ21をラッチバネの付勢力に抗して反時計回りに揺動、すなわち閉鎖動作する方向に余剰揺動させるものである。尚、レバー部材51は、当接部512以外の部位は、レバー部材51が揺動してもラッチ21の係止部213の回転軌跡上には進出しないように構成してある。また、バネ部材の付勢力は、ラッチバネの付勢力よりも小さくしてある。
【0034】
アクチュエータ52は、後述する制御部70から駆動指令が与えられた場合に、レバー部材51に動力を付与して該レバー部材51を軸部511の軸心回りに揺動、具体的には、図2において時計回りの方向に揺動させる駆動手段である。このアクチュエータ52は、駆動モータやウォームギア等の減速機構を有しており、駆動モータの動力を減速機構を介してレバー部材51に付与するものである。
【0035】
検出スイッチ53は、オープンレバー30の近傍に設けてあり、該オープンレバー30の開扉動作を検出し、これを検出信号として後述する制御部70に出力する検出手段である。ここで、検出スイッチ53による検出のタイミングは、ラチェット22が解除動作する前に、より詳細には、レバー部材51がラッチ21に当接して該ラッチ21を余剰揺動させる時点がラチェット22を解除動作させる時点よりも早くなるように制御部70に検出信号を出力するようにしてある。
【0036】
蓄電装置60は、アクチュエータ52に対して駆動電流を供給するものである。この蓄電装置60は、電気二重層キャパシタ(EDLC:Electric Double Layer Capacitor)と称されるものである。図6は、本発明の実施の形態におけるラッチ装置が適用された車両の電気配線の一部を模式的に示した図である。この図6を適宜参照しながら蓄電装置60について説明する。図6において、蓄電装置60は、上記ドアロック機構を構成する駆動モータ6と直列となる態様で車両に搭載されたバッテリ(電源装置)100に接続してある。ここで駆動モータ6は、制御回路7を介してバッテリ100に接続されている。制御回路7は、ロック機構がロック状態およびアンロック状態に切り替わるのに応じて駆動モータ6を正転および逆転させるために該駆動モータ6への電気の流れを制御するものである。蓄電装置60をこのように接続することにより、バッテリ100から供給された駆動電流のうち、駆動モータ6で使用されない残余分は、蓄電装置60に流れることになる。これにより、蓄電装置60は、かかる残余分の駆動電流を蓄電することができる。ここで、図6中の符号8は、整流子であり、符号9は、蓄電装置60に印加される電圧を安定させるためのツェダーダイオードである。
【0037】
このような蓄電装置60には、アクチュエータ52が接続してある。アクチュエータ52は、後述する制御部70から駆動指令が与えられた場合に駆動スイッチ521がオンとなり、蓄電装置60から蓄電した駆動電流が供給されるものである。これによりアクチュエータ52が駆動する結果、上記レバー部材51が揺動することになる。またアクチュエータ52は、制御部70からの指令により駆動スイッチ521がオフとなった場合には、蓄電装置60から駆動電流が供給されなくなり、駆動を停止する。
【0038】
図7は、本発明のラッチ装置を構成する解除補助ユニットの制御系について模式的に示したブロック図である。この図7に示すように、解除補助ユニット50は、制御部70を備えて構成してある。制御部70は、メモリMに格納されたデータやプログラムにしたがって解除補助ユニット50の動作を統括的に制御するものであり、入力処理部71、タイマー部72および駆動処理部73を備えている。ここで、制御部70は、ラッチ装置10の動作を統括的に制御するコントローラ(図示せず)に組み込まれていても良いし、かかるコントローラから独立したものであっても構わない。本実施の形態では、制御部70はコントローラから独立したものとして説明する。
【0039】
入力処理部71は、検出スイッチ53から出力された検出信号を入力処理するものである。タイマー部72は、予め設定された時間を計測するものである。ここで、予め設定された時間は、レバー部材51がラッチ21を余剰揺動させ、かつラチェット22が解除動作を行うのに必要十分な長さとなっている。駆動処理部73は、アクチュエータ52に駆動指令を出力してアクチュエータ52の駆動処理を行うものである。
【0040】
以上説明したようなラッチ装置10の動作について説明する。まず、車両本体1に対してサイドドア2が開状態にある場合、ラッチ機構20は、図3に示すように、ラッチ21が開放位置に配置されることになる。この状態からサイドドア2を閉動作させると、車両本体1に設けたストライカSがラッチハウジング11の切欠溝12に相対的に進入し、やがてストライカSがラッチ21の係止部213に当接することになる。この結果、ラッチ21がラッチバネの付勢力に抗して図3において反時計回りに回転、すなわち閉鎖動作する。この間、ラチェット22は、ラチェットレバーバネの付勢力によって係合部221の突出端面がラッチ21の外周面に摺接することになり、該ラッチ21の外周面形状に応じて適宜ラチェット軸22aの軸心回りに揺動する。
【0041】
上述した状態からさらにサイドドア2を閉動作させると、切欠溝12に対するストライカSの相対的進入量が漸次増大するため、ラッチ21が反時計回りにさらに回転するようになり、図4に示すように、やがてラチェット22の係合部221がラッチ21の噛合溝211に至る。この状態においては、ラッチ21の係止部213がラチェット22の係合部221に当接することになるため、ラッチバネの弾性復元力に抗して当該ラッチ21の時計回りの回転が阻止されることになる。しかも、ラッチ21のフック部212が切欠溝12を横切るように配置されるため、該フック部212によってストライカSが切欠溝12から離脱する方向に移動する事態、つまりサイドドア2の車両本体1に対する開動作が阻止されるようになる。すなわち、サイドドア2は半閉状態になる(ハーフラッチ状態)。
【0042】
上述したハーフラッチ状態からサイドドア2をさらに閉動作させると、切欠溝12を相対的に進入するストライカSにより、係止部213を介してラッチ21が反時計回りにさらに回転(閉鎖動作)し、ストライカSが切欠溝12の奥方(車両外側)に至る。この間、ラチェット22は、係合部221の上面にラッチ21のフック部212が当接することによりラチェットレバーバネの付勢力に抗して図4において時計回りに揺動し、ラッチ21のフック部212が通過した時点でラチェットレバーバネの弾性復元力(付勢力)により直ちに反時計回りに揺動するようになる。この結果、図5に示すように、ラッチ21のフック部212がラチェット22の係合部221に当接することになるため、ラッチバネの弾性復元力(付勢力)に抗して該ラッチ21の時計回りの回転、すなわち開放動作が阻止されることになる。この状態のおいても、ラッチ21のフック部212が切欠溝12を横切るように配置されるため、該フック部212によってストライカSが切欠溝12の奥方(車両外側)から離脱する方向に移動する事態が阻止されるようになる。すなわち、サイドドア2は全閉状態になる(フルラッチ状態)。
【0043】
このフルラッチ状態において、操作ハンドル(インサイドハンドル3、アウトサイドハンドル4)が開操作される場合には、ラッチ装置10は次のように動作する。図8は、解除補助ユニットを構成する制御部の処理内容を示したフローチャートであり、図9〜図14は、それぞれラッチ装置の要部の動作を模式的に示した説明図である。これらの図を参照しながら説明することにする。
【0044】
図9に示すようにフルラッチ状態、すなわちサイドドア2が車両本体1に対して全閉状態において、利用者が操作ハンドル(インサイドハンドル3、アウトサイドハンドル4)を開操作すると、該操作ハンドルに連係するオープンレバー30は、開扉動作することになる。
【0045】
このような場合において、解除補助ユニット50の制御部70は、入力処理部71を通じて検出スイッチ53からの検出信号が入力処理されたか否かを確認する(ステップS101)。すなわち、検出スイッチ53がオープンレバー30の開扉動作を検出したか否かを確認する。
【0046】
かかる検出信号が入力処理された場合には、制御部70は、駆動処理部73を通じて駆動スイッチ521をオンにするとともに、タイマー部72を通じて時間を計測する(ステップS102、ステップS103)。これにより、アクチュエータ52が通電状態、すなわち蓄電装置60から駆動電流を供給されて駆動状態になり、アクチュエータ52からの動力がレバー部材51に伝達されて、レバー部材51は、バネ部材の付勢力に抗して図9において時計回りに揺動する。このようにレバー部材51が揺動することにより、該レバー部材51の当接部512がラッチ21の係止部213の回転軌跡上に進出し、その後フルラッチ状態にあるラッチ21の係止部213に当接して押圧することにより、図10に示すように、ラッチ21を反時計回りに余剰揺動、すなわち閉鎖動作する方向に余剰揺動させる。このようにラッチ21を余剰揺動させることにより、該ラッチ21のフック部212と、ラチェット22の係合部221との係合状態が解除される。そして、その後、オープンレバー30およびラチェットレバーを通じてラチェット22が図11に示すように時計回りに揺動、すなわち解除動作する。
【0047】
制御部70は、タイマー部72を通じて予め設定された時間が経過したか否かを確認し(ステップS104)、かかる時間が経過したことが確認された場合には、検出信号が入力されていても強制的に駆動スイッチ521をオフにして(ステップS105)、今回の処理を終了する。このように駆動スイッチ521をオフにすることにより、アクチュエータ52は通電状態が解除され、すなわち蓄電装置60から駆動電流が供給されなくなり、駆動を停止する。
【0048】
このようにアクチュエータ52が駆動を停止すると、図12に示すように、レバー部材51は、バネ部材の付勢力により反時計回りに揺動する。これにより、当接部512が係止部213の回転軌跡上から離れることになる。そうすると、ラッチ21は、ラッチバネの付勢力により図13および図14に示すように時計回りに揺動、すなわち開放動作し、開放位置に位置すると、ストライカSが噛合溝211から離脱することを許容する。これにより、ラッチ装置10は、サイドドア2が車両本体1に対して開動作することを許容することになる。
【0049】
以上説明したように、本発明の実施の形態におけるラッチ装置10においては、解除補助ユニット50が、操作ハンドルの開操作を契機として駆動することにより、オープンレバー30によるサイドドアの半閉状態および全閉状態の解除を補助するので、操作ハンドルの開操作に要する操作力を低減させることができる。また、蓄電装置60が、操作ハンドルとラッチ機構20との間で、操作ハンドルの開操作を有効化するアンロック状態と操作ハンドルの開操作を無効化するロック状態との間で切り替わるロック機構の駆動源に供給される駆動電流の一部を蓄電する一方、上記解除補助ユニット50に蓄電した駆動電流を供給して該解除補助ユニット50を駆動させるので、ロック機構に供給される駆動電流を有効活用することができる。しかも、従来のようにパワーリリース機構のような高価なものを用いず、過大な取付スペースを必要としない。従って、製造コストの低減化および装置の小型化を図りながら、ロック機構の駆動源へ供給される駆動電流を有効活用して操作ハンドルの開操作に要する操作力を低減させることができる。
【0050】
また、上記ラッチ装置10によれば、レバー部材51が、インサイドハンドル3もしくはアウトサイドハンドル4が開操作されてからラチェット22が解除動作するまでの間に、ストライカSと噛合状態にあるラッチ21に当接して該ラッチ21を閉鎖動作する方向に余剰揺動させて、該ラッチ21とラチェット22との係合状態を解除するので、利用者による開操作により、ラッチ21との係合状態が解除されたラチェット22を解除動作させるだけである。つまり、ラッチバネの反力(付勢力)、並びに車両本体1とサイドドア2との間に設けられた例えばウェザーストリップWS等のシール部材の反力から解放されたラチェット22を解除動作させるだけであり、これにより操作ハンドルの開操作に要する操作力を低減させることができる。
【0051】
さらに、上記ラッチ装置10によれば、バネ部材の付勢力をラッチバネの付勢力よりも小さくしてあるので、仮にレバー部材51が故障等により、当接部512がラッチ21の係止部213の回転軌跡上に進出した状態で揺動停止しても、ラッチバネの付勢力により開放動作をするラッチ21に当接されて揺動することになるので、ラッチ21の開放動作を妨げる虞れがない。これにより、仮にレバー部材51が故障等しても現行のラッチ装置10と同等の性能は確保できる。
【0052】
以上、本発明の好適な実施の形態に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。例えば、上記実施の形態では、レバー部材51は揺動し、バネ部材の付勢力により初期位置に戻るものであったが、本発明では、アクチュエータ52の駆動によりレバー部材は、時計回りに一周して初期位置に戻るようなものであっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明に係るラッチ装置は、例えば四輪自動車等の車両において、扉体の半閉状態もしくは全閉状態を解除するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態におけるラッチ装置が適用される車両の要部を示した説明図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるラッチ装置の構成を車両の後方側から示した背面図である。
【図3】図2に示すラッチ機構の開放状態を示した概念図である。
【図4】図2に示すラッチ機構のハーフラッチ状態を示した概念図である。
【図5】図2に示すラッチ機構のフルラッチ状態を示した概念図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるラッチ装置が適用された車両の電気配線の一部を模式的に示した図である。
【図7】本発明のラッチ装置を構成する解除補助ユニットの制御系について模式的に示したブロック図である。
【図8】解除補助ユニットを構成する制御部の処理内容を示したフローチャートである。
【図9】ラッチ装置の要部の動作を模式的に示した説明図である。
【図10】ラッチ装置の要部の動作を模式的に示した説明図である。
【図11】ラッチ装置の要部の動作を模式的に示した説明図である。
【図12】ラッチ装置の要部の動作を模式的に示した説明図である。
【図13】ラッチ装置の要部の動作を模式的に示した説明図である。
【図14】ラッチ装置の要部の動作を模式的に示した説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 車両本体
2 サイドドア
3 インサイドハンドル
4 アウトサイドハンドル
10 ラッチ装置
20 ラッチ機構
21 ラッチ
22 ラチェット
30 オープンレバー
50 解除補助ユニット
51 レバー部材
52 アクチュエータ
53 検出スイッチ
60 蓄電装置
70 制御部
S ストライカ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッチ装置に関し、より詳細には、ラッチ機構により保持された扉体の半閉状態および全閉状態を解除するためのラッチ装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば四輪自動車等の車両に設けられたラッチ装置としては、ラッチ機構と、オープンレバーとを備えたものが知られている。ラッチ機構は、ラッチとラチェットとを備えて構成されている。
【0003】
ラッチは、例えばサイドドア等のような扉体にラッチ軸を介して軸支され、開放動作および閉鎖動作する態様で該ラッチ軸の軸心回りに揺動可能に配設されている。このラッチは、付勢手段であるラッチバネにより常時開放動作する方向に付勢されており、扉体の閉動作によりラッチバネによる付勢力に抗して閉鎖動作して例えば車両本体に配設されたストライカと噛合状態になるものである。
【0004】
ラチェットは、ラッチと同様に、扉体にラチェット軸を介して軸支され、係合動作および解除動作する態様で該ラチェット軸の軸心回りに揺動可能に配設されている。このラチェットは、付勢手段であるラチェットバネにより常時係合動作する方向に付勢されており、該ラチェットバネの付勢力によって係合動作することによりラッチに係合して該ラッチとストライカとの噛合状態を保持する一方、該ラチェットバネの付勢力に抗して解除動作することにより上記噛合状態を解除するものである。
【0005】
オープンレバーは、扉体に設けられた操作ハンドル、すなわちサイドドアのアウトサイドに設けられたアウトサイドハンドルおよびサイドドアのインサイドに設けられたインサイドハンドルのそれぞれに連係し、かつ該操作ハンドルの開操作により開扉動作する態様で揺動可能に配設されている。このオープンレバーは、開扉動作することによりラチェットをラチェットバネの付勢力に抗して解除動作させるものである。
【0006】
このようなラッチ装置では、扉体を閉動作させてラッチとストライカとを噛合状態にし、ラチェットを係合動作させて該噛合状態を保持することにより、扉体を車両本体に対して半閉状態もしくは全閉状態にする一方、操作ハンドルを開操作してオープンレバーを開扉動作させることによって該噛合状態を解除することにより、扉体が開動作することを許容する。
【0007】
ところで、上記ラッチ装置では、係合動作させたラチェットを、ストライカと噛合状態にあるラッチと係合させて該噛合状態を保持することにより、扉体を車両本体に対して半閉状態もしくは全閉状態にしているが、機種によっては特に扉体が車両本体に対して全閉状態になる場合には、ラッチとラチェットとの係合部分には、ラッチバネの反力(付勢力)、並びに車両本体と扉体との間に設けられた例えばウェザーストリップ等のシール部材の反力が作用する結果、強大な摩擦力が生ずることがある。
【0008】
そのため、操作ハンドル(アウトサイドハンドルおよびインサイドドアハンドル)を開操作してオープンレバーを開扉動作させることによりラチェットを解除動作させる場合に、上記摩擦力が抵抗力として作用し、これにより操作ハンドルの操作荷重が必要以上に増大してしまう。このように操作ハンドルの操作荷重の増大は、例えば高齢者、子供、障害者、病人等のような利用者にとっては、操作ハンドルの開操作に困難を伴う虞れがあった。
【0009】
そこで、操作ハンドルの開操作を補助するために、利用者による操作ハンドルの開操作に起因して、モータの動力によりラチェットを解除動作させるパワーリリース機構を備えたラッチ装置が提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。
【0010】
【特許文献1】実開平7−21956号公報
【特許文献2】特開2003−278426号公報
【特許文献3】実開平4−68182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、上記特許文献に提案されているラッチ装置では、パワーリリース機構のようなモータ動力を備えたパワー機構は、高価で過大な取付スペースを必要とするため、製造コストが要するとともに、装置が大型化してしまうという問題がある。
【0012】
一方、操作ハンドルとラッチ機構との間には、操作ハンドルの開操作を有効化するアンロック状態と操作ハンドルの開操作を無効化するロック状態との間で切り替わるロック機構が設けられている。かかるロック機構の駆動源となるアクチュエータに、車両に搭載されたバッテリ等の電源から駆動電流が供給されることにより、ロック機構が駆動することになるが、供給される駆動電流のうちロック機構の駆動に利用されるものは一部であり、残余分は何ら利用されていなかった。
【0013】
本発明は、上記実情に鑑みて、製造コストの低減化および装置の小型化を図りながら、ロック機構の駆動源へ供給される駆動電流を有効活用して操作ハンドルの開操作に要する操作力を低減させることができるラッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るラッチ装置は、車両本体および扉体のいずれか一方に配設され、前記扉体を前記車両本体に対して半閉状態および全閉状態に保持するラッチ機構と、前記扉体に設けられた操作ハンドルに連係し、かつ該操作ハンドルの開操作により開扉動作する態様で揺動可能に配設され、開扉動作することにより、前記ラッチ機構により保持された前記扉体の半閉状態および全閉状態を解除させるオープンレバーとを備えたラッチ装置において、前記操作ハンドルの開操作を契機として駆動することにより、前記オープンレバーによる前記扉体の半閉状態および全閉状態の解除を補助する解除補助手段と、前記操作ハンドルと前記ラッチ機構との間で、前記操作ハンドルの開操作を有効化するアンロック状態と前記操作ハンドルの開操作を無効化するロック状態との間で切り替わるロック機構の駆動源に供給される駆動電流の一部を蓄電する一方、前記解除補助手段に蓄電した駆動電流を供給して該解除補助手段を駆動させる蓄電装置とを備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項2に係るラッチ装置は、上述した請求項1において、前記ラッチ機構は、車両本体および扉体のいずれか一方に開放動作および閉鎖動作する態様で回転可能に配設され、付勢手段により常時開放動作する方向に付勢される一方、前記扉体の閉動作により前記付勢手段による付勢力に抗して閉鎖動作して前記車両本体および扉体のいずれか他方に配設されたストライカと噛合状態になるラッチと、係合動作および解除動作する態様で揺動可能に配設され、係合動作することにより前記ラッチに係合して前記噛合状態を保持する一方、解除動作することにより前記噛合状態を解除するラチェットとを備え、前記解除補助手段は、前記操作ハンドルが開操作されてから前記ラチェットが解除動作するまでの間に、前記噛合状態にあるラッチに当接して該ラッチを閉鎖動作する方向に余剰揺動させて、該ラッチと前記ラチェットとの係合状態を解除するレバー部材を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項3に係るラッチ装置は、上述した請求項2において、前記解除補助手段は、前記オープンレバーの開扉動作を検出する検出手段と、前記検出手段による前記開扉動作の検出により前記レバー部材を駆動させて前記ラッチに当接させる駆動手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のラッチ装置によれば、解除補助手段が、操作ハンドルの開操作を契機として駆動することにより、オープンレバーによる扉体の半閉状態および全閉状態の解除を補助するので、操作ハンドルの開操作に要する操作力を低減させることができる。また、蓄電装置が、操作ハンドルとラッチ機構との間で、操作ハンドルの開操作を有効化するアンロック状態と操作ハンドルの開操作を無効化するロック状態との間で切り替わるロック機構の駆動源に供給される駆動電流の一部を蓄電する一方、上記解除補助手段に蓄電した駆動電流を供給して該解除補助手段を駆動させるので、ロック機構に供給される駆動電流を有効活用することができる。しかも、従来のようにパワーリリース機構のような高価なものを用いず、過大な取付スペースを必要としない。従って、製造コストの低減化および装置の小型化を図りながら、ロック機構の駆動源へ供給される駆動電流を有効活用して操作ハンドルの開操作に要する操作力を低減させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るラッチ装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態におけるラッチ装置が適用される車両の要部を示した説明図であり、図2は、本発明の実施の形態におけるラッチ装置の構成を車両の後方側から示した背面図である。ここに例示するラッチ装置10は、例えば四輪自動車等の車両において、車両本体1に対して開閉自在に配設されたヒンジタイプのサイドドア(扉体)2の後縁部に設けられたものであり、ラッチ機構20と、オープンレバー30とを備えて構成してある。
【0020】
ラッチ機構20は、車両本体1に設けたストライカSと噛合状態となった場合にサイドドア2を半閉状態もしくは全閉状態にするものであり、ラッチハウジング11の内部にラッチ21およびラチェット22を備えて構成してある。
【0021】
ラッチハウジング11は、ストライカSが通過することのできる切欠溝12を有したもので、この切欠溝12をサイドドア2の開閉によりストライカSが相対的な移動する領域に配置した状態で、該サイドドア2に取り付けてある。
【0022】
ラッチ21は、図3〜図5に示すように、ラッチハウジング11に設けた切欠溝12よりも上方となる位置に、車両の前後方向に沿って略水平に延在するラッチ軸21aを介して該ラッチ軸21aの軸心回りに回転可能に配設したもので、より詳細には、図2〜図5において時計回りの方向に開放動作する一方、反時計回りの方向に閉鎖動作する態様で回転可能に配設してある。このラッチ21は、噛合溝211、フック部212および係止部213を有している。
【0023】
噛合溝211は、ラッチ21の外周面からラッチ軸21aに向けて形成したもので、ストライカSを収容することのできる幅に形成してある。
【0024】
フック部212は、図4に示すように、噛合溝211を下方に向けて開口させた場合に該噛合溝211よりも車両内側に位置する部分である。このフック部212は、図5に示すように、ラッチ21を反時計回りに回転させた場合(閉鎖動作させた場合)にラッチハウジング11の切欠溝12を横切る位置で停止する一方、図3に示すように、ラッチ21を時計回りに回転させた場合(開放動作させた場合)に切欠溝12を開放する位置(開放位置)で停止するように構成してある。
【0025】
係止部213は、図4に示すように、噛合溝211を下方に向けて開口させた場合に該噛合溝211よりも車両外側に位置する部分である。この係止部213は、図3に示すように、ラッチ21を時計回りに回転させた場合に切欠溝12を横切り、かつこの切欠溝12の奥方(車両外側)に向けて漸次上方に傾斜する状態で停止するように構成してある。尚、ラッチ21とラッチハウジング11との間には、図3〜図5においてラッチ21を常時時計回りの方向(開放動作する方向)に向けて付勢するラッチバネ(付勢手段)が設けてある。
【0026】
ラチェット22は、ラッチハウジング11の切欠溝12よりも下方、かつラッチ軸21aよりも車両内側となる位置に、車両の前後方向に沿って略水平に延在するラチェット軸22aを介して該ラチェット軸22aの軸心回りに揺動可能に配設したもので、より詳細には、図2〜図5において反時計回りに係合動作する一方、時計回りに解除動作する態様で揺動可能に配設してある。このラチェット22は、係合部221および作用部222を有している。
【0027】
係合部221は、ラチェット軸22aから車両外側に向けて径外方向に延在した部分であり、ラチェット22が図3〜図5において反時計回りに回転した場合(係合動作した場合)にその突出端面を介して上述したラッチ21のフック部212もしくは係止部213に係合することが可能である。作用部222は、ラチェット軸22aから車両内側に向けて径外方向に延在した部分である。
【0028】
このようなラチェット22には、連結ピン23を介して図示しないラチェットレバーが設けてある。ラチェットレバーは、ラチェット22と同様に、ラチェット軸22aを介して該ラチェット軸22aの軸心回りに揺動可能に配設してあり、ラチェット22と一体的に揺動するものである。このようなラチェットレバーとラッチハウジング11との間には、図2〜図5においてラチェットレバーを常時反時計回りに向けて付勢するラチェットレバーバネが設けてある。これによりラチェット22は、常時反時計回りの方向(係合動作する方向)に向けて付勢されている。
【0029】
オープンレバー30は、ラッチハウジング11において、ラチェット22(ラチェットレバー)よりも下方にオープンレバー軸(図示せず)を介して該オープンレバー軸の軸心回りに揺動可能に配設してある。また、オープンレバー30とラッチハウジング11との間には、オープンレバー30を図2において常時反時計回りに付勢するオープンレバーバネ(図示せず)が設けてあり、かかるオープンレバーバネの付勢力により、常態においては、図2に示すように、第1連係部31が車両内側、第2連係部32が車両外側に位置する態様で配設してある。ここで、第1連係部31は、サイドドア2のインサイドに設けた操作ハンドルであるインサイドハンドル3に図示しないケーブル等の連結機構を介して連係しており、第2連係部32は、サイドドア2のアウトサイドに設けた操作ハンドルであるアウトサイドハンドル4に図示しないケーブル等の連結機構を介して連係している。
【0030】
そして、オープンレバー30は、インサイドハンドル3、あるいはアウトサイドハンドル4が開操作された場合に、図2において時計回りに揺動、すなわちオープンレバーバネの付勢力に抗して開扉動作するものである。
【0031】
このようにオープンレバー30が開扉動作(時計回りに揺動)することにより、該オープンレバー30の一端面がラチェットレバーに当接して、該ラチェットレバーを押圧することにより、該ラチェットレバーをラチェットレバーバネの付勢力に抗して図2〜図5において時計回りの方向に揺動させる。これによりラチェット22は、該ラチェットレバーと一体的に解除動作(図2〜図5において時計回りの方向に揺動)することになる。このように操作ハンドル(インサイドハンドル3、アウトサイドハンドル4)が開操作されてからラチェット22が解除動作するまでには、連結機構の駆動およびオープンレバー30の揺動によるタイムラグがあり、これにより操作ハンドルとラチェット22との間には、連結機構およびオープンレバー30等の機械的あそびが設けられている。つまり、操作ハンドルが開操作され、機械的あそびが吸収された後にラチェット22が解除動作する。
【0032】
一方、このようなラッチ機構20と、オープンレバー30との間には、ロック機構(図6参照)が設けてある。ロック機構は、従前より知られているものであり、操作ハンドルの開操作を有効化するアンロック状態と操作ハンドルの開操作を無効化するロック状態との間で切り替わるものである。
【0033】
このようなラッチ装置10は、上記構成の他、解除補助ユニット(解除補助手段)50および蓄電装置60を備えている。解除補助ユニット50は、レバー部材51と、アクチュエータ52と、検出スイッチ53とを備えて構成してある。レバー部材51は、図2に示すように、ラッチハウジング11の切欠溝12の下方、すなわちラッチ21より下方で、かつラチェット22より車両外側となる位置に揺動可能に配設してある。より詳細に説明すると、レバー部材51は、板状体であり、周面の一部分が略扁平であって該周面の他の部分が円弧状に形成されてなり、軸部511および当接部512を有している。軸部511は、レバー部材51の揺動中心となる部位であり、該レバー部材51の中央部分から周面が略扁平となる側に偏った位置に形成されている。当接部512は、レバー部材51の周面のうち、軸部511から最も離隔した位置に形成されている。このようなレバー部材51は、ラッチハウジング11との間に図示しないバネ部材が設けられており、該バネ部材に図2において反時計回りに付勢されて、常態においては、図2に示すように当接部512が下方となる態様で配設してある。一方、詳細は後述するが、レバー部材51は、バネ部材の付勢力に抗して図2において時計回りに揺動した場合には、当接部512がラッチ21の係止部213の回転軌跡上に進出して該係止部213に当接し、これによりラッチ21をラッチバネの付勢力に抗して反時計回りに揺動、すなわち閉鎖動作する方向に余剰揺動させるものである。尚、レバー部材51は、当接部512以外の部位は、レバー部材51が揺動してもラッチ21の係止部213の回転軌跡上には進出しないように構成してある。また、バネ部材の付勢力は、ラッチバネの付勢力よりも小さくしてある。
【0034】
アクチュエータ52は、後述する制御部70から駆動指令が与えられた場合に、レバー部材51に動力を付与して該レバー部材51を軸部511の軸心回りに揺動、具体的には、図2において時計回りの方向に揺動させる駆動手段である。このアクチュエータ52は、駆動モータやウォームギア等の減速機構を有しており、駆動モータの動力を減速機構を介してレバー部材51に付与するものである。
【0035】
検出スイッチ53は、オープンレバー30の近傍に設けてあり、該オープンレバー30の開扉動作を検出し、これを検出信号として後述する制御部70に出力する検出手段である。ここで、検出スイッチ53による検出のタイミングは、ラチェット22が解除動作する前に、より詳細には、レバー部材51がラッチ21に当接して該ラッチ21を余剰揺動させる時点がラチェット22を解除動作させる時点よりも早くなるように制御部70に検出信号を出力するようにしてある。
【0036】
蓄電装置60は、アクチュエータ52に対して駆動電流を供給するものである。この蓄電装置60は、電気二重層キャパシタ(EDLC:Electric Double Layer Capacitor)と称されるものである。図6は、本発明の実施の形態におけるラッチ装置が適用された車両の電気配線の一部を模式的に示した図である。この図6を適宜参照しながら蓄電装置60について説明する。図6において、蓄電装置60は、上記ドアロック機構を構成する駆動モータ6と直列となる態様で車両に搭載されたバッテリ(電源装置)100に接続してある。ここで駆動モータ6は、制御回路7を介してバッテリ100に接続されている。制御回路7は、ロック機構がロック状態およびアンロック状態に切り替わるのに応じて駆動モータ6を正転および逆転させるために該駆動モータ6への電気の流れを制御するものである。蓄電装置60をこのように接続することにより、バッテリ100から供給された駆動電流のうち、駆動モータ6で使用されない残余分は、蓄電装置60に流れることになる。これにより、蓄電装置60は、かかる残余分の駆動電流を蓄電することができる。ここで、図6中の符号8は、整流子であり、符号9は、蓄電装置60に印加される電圧を安定させるためのツェダーダイオードである。
【0037】
このような蓄電装置60には、アクチュエータ52が接続してある。アクチュエータ52は、後述する制御部70から駆動指令が与えられた場合に駆動スイッチ521がオンとなり、蓄電装置60から蓄電した駆動電流が供給されるものである。これによりアクチュエータ52が駆動する結果、上記レバー部材51が揺動することになる。またアクチュエータ52は、制御部70からの指令により駆動スイッチ521がオフとなった場合には、蓄電装置60から駆動電流が供給されなくなり、駆動を停止する。
【0038】
図7は、本発明のラッチ装置を構成する解除補助ユニットの制御系について模式的に示したブロック図である。この図7に示すように、解除補助ユニット50は、制御部70を備えて構成してある。制御部70は、メモリMに格納されたデータやプログラムにしたがって解除補助ユニット50の動作を統括的に制御するものであり、入力処理部71、タイマー部72および駆動処理部73を備えている。ここで、制御部70は、ラッチ装置10の動作を統括的に制御するコントローラ(図示せず)に組み込まれていても良いし、かかるコントローラから独立したものであっても構わない。本実施の形態では、制御部70はコントローラから独立したものとして説明する。
【0039】
入力処理部71は、検出スイッチ53から出力された検出信号を入力処理するものである。タイマー部72は、予め設定された時間を計測するものである。ここで、予め設定された時間は、レバー部材51がラッチ21を余剰揺動させ、かつラチェット22が解除動作を行うのに必要十分な長さとなっている。駆動処理部73は、アクチュエータ52に駆動指令を出力してアクチュエータ52の駆動処理を行うものである。
【0040】
以上説明したようなラッチ装置10の動作について説明する。まず、車両本体1に対してサイドドア2が開状態にある場合、ラッチ機構20は、図3に示すように、ラッチ21が開放位置に配置されることになる。この状態からサイドドア2を閉動作させると、車両本体1に設けたストライカSがラッチハウジング11の切欠溝12に相対的に進入し、やがてストライカSがラッチ21の係止部213に当接することになる。この結果、ラッチ21がラッチバネの付勢力に抗して図3において反時計回りに回転、すなわち閉鎖動作する。この間、ラチェット22は、ラチェットレバーバネの付勢力によって係合部221の突出端面がラッチ21の外周面に摺接することになり、該ラッチ21の外周面形状に応じて適宜ラチェット軸22aの軸心回りに揺動する。
【0041】
上述した状態からさらにサイドドア2を閉動作させると、切欠溝12に対するストライカSの相対的進入量が漸次増大するため、ラッチ21が反時計回りにさらに回転するようになり、図4に示すように、やがてラチェット22の係合部221がラッチ21の噛合溝211に至る。この状態においては、ラッチ21の係止部213がラチェット22の係合部221に当接することになるため、ラッチバネの弾性復元力に抗して当該ラッチ21の時計回りの回転が阻止されることになる。しかも、ラッチ21のフック部212が切欠溝12を横切るように配置されるため、該フック部212によってストライカSが切欠溝12から離脱する方向に移動する事態、つまりサイドドア2の車両本体1に対する開動作が阻止されるようになる。すなわち、サイドドア2は半閉状態になる(ハーフラッチ状態)。
【0042】
上述したハーフラッチ状態からサイドドア2をさらに閉動作させると、切欠溝12を相対的に進入するストライカSにより、係止部213を介してラッチ21が反時計回りにさらに回転(閉鎖動作)し、ストライカSが切欠溝12の奥方(車両外側)に至る。この間、ラチェット22は、係合部221の上面にラッチ21のフック部212が当接することによりラチェットレバーバネの付勢力に抗して図4において時計回りに揺動し、ラッチ21のフック部212が通過した時点でラチェットレバーバネの弾性復元力(付勢力)により直ちに反時計回りに揺動するようになる。この結果、図5に示すように、ラッチ21のフック部212がラチェット22の係合部221に当接することになるため、ラッチバネの弾性復元力(付勢力)に抗して該ラッチ21の時計回りの回転、すなわち開放動作が阻止されることになる。この状態のおいても、ラッチ21のフック部212が切欠溝12を横切るように配置されるため、該フック部212によってストライカSが切欠溝12の奥方(車両外側)から離脱する方向に移動する事態が阻止されるようになる。すなわち、サイドドア2は全閉状態になる(フルラッチ状態)。
【0043】
このフルラッチ状態において、操作ハンドル(インサイドハンドル3、アウトサイドハンドル4)が開操作される場合には、ラッチ装置10は次のように動作する。図8は、解除補助ユニットを構成する制御部の処理内容を示したフローチャートであり、図9〜図14は、それぞれラッチ装置の要部の動作を模式的に示した説明図である。これらの図を参照しながら説明することにする。
【0044】
図9に示すようにフルラッチ状態、すなわちサイドドア2が車両本体1に対して全閉状態において、利用者が操作ハンドル(インサイドハンドル3、アウトサイドハンドル4)を開操作すると、該操作ハンドルに連係するオープンレバー30は、開扉動作することになる。
【0045】
このような場合において、解除補助ユニット50の制御部70は、入力処理部71を通じて検出スイッチ53からの検出信号が入力処理されたか否かを確認する(ステップS101)。すなわち、検出スイッチ53がオープンレバー30の開扉動作を検出したか否かを確認する。
【0046】
かかる検出信号が入力処理された場合には、制御部70は、駆動処理部73を通じて駆動スイッチ521をオンにするとともに、タイマー部72を通じて時間を計測する(ステップS102、ステップS103)。これにより、アクチュエータ52が通電状態、すなわち蓄電装置60から駆動電流を供給されて駆動状態になり、アクチュエータ52からの動力がレバー部材51に伝達されて、レバー部材51は、バネ部材の付勢力に抗して図9において時計回りに揺動する。このようにレバー部材51が揺動することにより、該レバー部材51の当接部512がラッチ21の係止部213の回転軌跡上に進出し、その後フルラッチ状態にあるラッチ21の係止部213に当接して押圧することにより、図10に示すように、ラッチ21を反時計回りに余剰揺動、すなわち閉鎖動作する方向に余剰揺動させる。このようにラッチ21を余剰揺動させることにより、該ラッチ21のフック部212と、ラチェット22の係合部221との係合状態が解除される。そして、その後、オープンレバー30およびラチェットレバーを通じてラチェット22が図11に示すように時計回りに揺動、すなわち解除動作する。
【0047】
制御部70は、タイマー部72を通じて予め設定された時間が経過したか否かを確認し(ステップS104)、かかる時間が経過したことが確認された場合には、検出信号が入力されていても強制的に駆動スイッチ521をオフにして(ステップS105)、今回の処理を終了する。このように駆動スイッチ521をオフにすることにより、アクチュエータ52は通電状態が解除され、すなわち蓄電装置60から駆動電流が供給されなくなり、駆動を停止する。
【0048】
このようにアクチュエータ52が駆動を停止すると、図12に示すように、レバー部材51は、バネ部材の付勢力により反時計回りに揺動する。これにより、当接部512が係止部213の回転軌跡上から離れることになる。そうすると、ラッチ21は、ラッチバネの付勢力により図13および図14に示すように時計回りに揺動、すなわち開放動作し、開放位置に位置すると、ストライカSが噛合溝211から離脱することを許容する。これにより、ラッチ装置10は、サイドドア2が車両本体1に対して開動作することを許容することになる。
【0049】
以上説明したように、本発明の実施の形態におけるラッチ装置10においては、解除補助ユニット50が、操作ハンドルの開操作を契機として駆動することにより、オープンレバー30によるサイドドアの半閉状態および全閉状態の解除を補助するので、操作ハンドルの開操作に要する操作力を低減させることができる。また、蓄電装置60が、操作ハンドルとラッチ機構20との間で、操作ハンドルの開操作を有効化するアンロック状態と操作ハンドルの開操作を無効化するロック状態との間で切り替わるロック機構の駆動源に供給される駆動電流の一部を蓄電する一方、上記解除補助ユニット50に蓄電した駆動電流を供給して該解除補助ユニット50を駆動させるので、ロック機構に供給される駆動電流を有効活用することができる。しかも、従来のようにパワーリリース機構のような高価なものを用いず、過大な取付スペースを必要としない。従って、製造コストの低減化および装置の小型化を図りながら、ロック機構の駆動源へ供給される駆動電流を有効活用して操作ハンドルの開操作に要する操作力を低減させることができる。
【0050】
また、上記ラッチ装置10によれば、レバー部材51が、インサイドハンドル3もしくはアウトサイドハンドル4が開操作されてからラチェット22が解除動作するまでの間に、ストライカSと噛合状態にあるラッチ21に当接して該ラッチ21を閉鎖動作する方向に余剰揺動させて、該ラッチ21とラチェット22との係合状態を解除するので、利用者による開操作により、ラッチ21との係合状態が解除されたラチェット22を解除動作させるだけである。つまり、ラッチバネの反力(付勢力)、並びに車両本体1とサイドドア2との間に設けられた例えばウェザーストリップWS等のシール部材の反力から解放されたラチェット22を解除動作させるだけであり、これにより操作ハンドルの開操作に要する操作力を低減させることができる。
【0051】
さらに、上記ラッチ装置10によれば、バネ部材の付勢力をラッチバネの付勢力よりも小さくしてあるので、仮にレバー部材51が故障等により、当接部512がラッチ21の係止部213の回転軌跡上に進出した状態で揺動停止しても、ラッチバネの付勢力により開放動作をするラッチ21に当接されて揺動することになるので、ラッチ21の開放動作を妨げる虞れがない。これにより、仮にレバー部材51が故障等しても現行のラッチ装置10と同等の性能は確保できる。
【0052】
以上、本発明の好適な実施の形態に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。例えば、上記実施の形態では、レバー部材51は揺動し、バネ部材の付勢力により初期位置に戻るものであったが、本発明では、アクチュエータ52の駆動によりレバー部材は、時計回りに一周して初期位置に戻るようなものであっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明に係るラッチ装置は、例えば四輪自動車等の車両において、扉体の半閉状態もしくは全閉状態を解除するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態におけるラッチ装置が適用される車両の要部を示した説明図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるラッチ装置の構成を車両の後方側から示した背面図である。
【図3】図2に示すラッチ機構の開放状態を示した概念図である。
【図4】図2に示すラッチ機構のハーフラッチ状態を示した概念図である。
【図5】図2に示すラッチ機構のフルラッチ状態を示した概念図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるラッチ装置が適用された車両の電気配線の一部を模式的に示した図である。
【図7】本発明のラッチ装置を構成する解除補助ユニットの制御系について模式的に示したブロック図である。
【図8】解除補助ユニットを構成する制御部の処理内容を示したフローチャートである。
【図9】ラッチ装置の要部の動作を模式的に示した説明図である。
【図10】ラッチ装置の要部の動作を模式的に示した説明図である。
【図11】ラッチ装置の要部の動作を模式的に示した説明図である。
【図12】ラッチ装置の要部の動作を模式的に示した説明図である。
【図13】ラッチ装置の要部の動作を模式的に示した説明図である。
【図14】ラッチ装置の要部の動作を模式的に示した説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 車両本体
2 サイドドア
3 インサイドハンドル
4 アウトサイドハンドル
10 ラッチ装置
20 ラッチ機構
21 ラッチ
22 ラチェット
30 オープンレバー
50 解除補助ユニット
51 レバー部材
52 アクチュエータ
53 検出スイッチ
60 蓄電装置
70 制御部
S ストライカ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体および扉体のいずれか一方に配設され、前記扉体を前記車両本体に対して半閉状態および全閉状態に保持するラッチ機構と、
前記扉体に設けられた操作ハンドルに連係し、かつ該操作ハンドルの開操作により開扉動作する態様で揺動可能に配設され、開扉動作することにより、前記ラッチ機構により保持された前記扉体の半閉状態および全閉状態を解除させるオープンレバーと
を備えたラッチ装置において、
前記操作ハンドルの開操作を契機として駆動することにより、前記オープンレバーによる前記扉体の半閉状態および全閉状態の解除を補助する解除補助手段と、
前記操作ハンドルと前記ラッチ機構との間で、前記操作ハンドルの開操作を有効化するアンロック状態と前記操作ハンドルの開操作を無効化するロック状態との間で切り替わるロック機構の駆動源に供給される駆動電流の一部を蓄電する一方、前記解除補助手段に蓄電した駆動電流を供給して該解除補助手段を駆動させる蓄電装置と
を備えたことを特徴とするラッチ装置。
【請求項2】
前記ラッチ機構は、
車両本体および扉体のいずれか一方に開放動作および閉鎖動作する態様で回転可能に配設され、付勢手段により常時開放動作する方向に付勢される一方、前記扉体の閉動作により前記付勢手段による付勢力に抗して閉鎖動作して前記車両本体および扉体のいずれか他方に配設されたストライカと噛合状態になるラッチと、
係合動作および解除動作する態様で揺動可能に配設され、係合動作することにより前記ラッチに係合して前記噛合状態を保持する一方、解除動作することにより前記噛合状態を解除するラチェットと
を備え、
前記解除補助手段は、前記操作ハンドルが開操作されてから前記ラチェットが解除動作するまでの間に、前記噛合状態にあるラッチに当接して該ラッチを閉鎖動作する方向に余剰揺動させて、該ラッチと前記ラチェットとの係合状態を解除するレバー部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載のラッチ装置。
【請求項3】
前記解除補助手段は、
前記オープンレバーの開扉動作を検出する検出手段と、
前記検出手段による前記開扉動作の検出により前記レバー部材を駆動させて前記ラッチに当接させる駆動手段と
を備えたことを特徴とする請求項2に記載のラッチ装置。
【請求項1】
車両本体および扉体のいずれか一方に配設され、前記扉体を前記車両本体に対して半閉状態および全閉状態に保持するラッチ機構と、
前記扉体に設けられた操作ハンドルに連係し、かつ該操作ハンドルの開操作により開扉動作する態様で揺動可能に配設され、開扉動作することにより、前記ラッチ機構により保持された前記扉体の半閉状態および全閉状態を解除させるオープンレバーと
を備えたラッチ装置において、
前記操作ハンドルの開操作を契機として駆動することにより、前記オープンレバーによる前記扉体の半閉状態および全閉状態の解除を補助する解除補助手段と、
前記操作ハンドルと前記ラッチ機構との間で、前記操作ハンドルの開操作を有効化するアンロック状態と前記操作ハンドルの開操作を無効化するロック状態との間で切り替わるロック機構の駆動源に供給される駆動電流の一部を蓄電する一方、前記解除補助手段に蓄電した駆動電流を供給して該解除補助手段を駆動させる蓄電装置と
を備えたことを特徴とするラッチ装置。
【請求項2】
前記ラッチ機構は、
車両本体および扉体のいずれか一方に開放動作および閉鎖動作する態様で回転可能に配設され、付勢手段により常時開放動作する方向に付勢される一方、前記扉体の閉動作により前記付勢手段による付勢力に抗して閉鎖動作して前記車両本体および扉体のいずれか他方に配設されたストライカと噛合状態になるラッチと、
係合動作および解除動作する態様で揺動可能に配設され、係合動作することにより前記ラッチに係合して前記噛合状態を保持する一方、解除動作することにより前記噛合状態を解除するラチェットと
を備え、
前記解除補助手段は、前記操作ハンドルが開操作されてから前記ラチェットが解除動作するまでの間に、前記噛合状態にあるラッチに当接して該ラッチを閉鎖動作する方向に余剰揺動させて、該ラッチと前記ラチェットとの係合状態を解除するレバー部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載のラッチ装置。
【請求項3】
前記解除補助手段は、
前記オープンレバーの開扉動作を検出する検出手段と、
前記検出手段による前記開扉動作の検出により前記レバー部材を駆動させて前記ラッチに当接させる駆動手段と
を備えたことを特徴とする請求項2に記載のラッチ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−101337(P2008−101337A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282403(P2006−282403)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】
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