リニア超音波圧電モータ
本発明は、プレート状の長方形の共振板と摩擦接触状態にあって、摩擦面は上記共振板の長手方向の狭い側面の少なくとも一方によって具現される移動エレメントと、上記共振板の長手方向の広い側面に配置される、音響振動を生成するための電極とを備えるリニア超音波圧電モータに関する。本発明によれば、音響振動を生成するための発生器は上記共振板を対称的に横断する平面に対して非対称に配置され、かつ励振されると非対称空間定在波を発生させる対向する2つの電極を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1の前提部分に記載されている、プレート状の長方形の共振板と摩擦接触状態にあって摩擦面は上記共振板の長手方向の狭い側面の少なくとも一方によって具現される移動エレメントと、上記共振板の長手方向の広い側面に配置される、音響振動を生成するための2つの電極とを備えるリニア超音波圧電モータに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第4,978,882号から、圧電励振の原理に従って環状振動子内で閉鎖型の導波路として動作するリニア超音波モータが知られている。このようなモータの構造は極めて複雑であり、幾つかの圧電素子は、例えば接着によって環状振動子へ粘着式に固定されなければならない。従って、このようなモータは製造費用が極めて高く、小型化は限定的にしか行えない。
【0003】
米国特許第5,672,930号による最新技術は、棒状振動子、即ち開放型の導波路における移動超音波の励振を使用する超音波モータを包含している。このようなモータの欠点は、対称定在波は開放型の導波路において移動波の励起と同時的に励起され、移動波の励起はモータの摩擦接触作用に悪影響を与えることから、開放型の導波路において正確に移動する超音波を励起することが実際には不可能である、という事実にある。延てはこれは、摩擦面及びモータ全体の各々の著しい加熱、及び高い雑音レベルをもたらす。さらに、上記最新技術によるこれらのモータは極めて高い励振電圧を必要とし、製造費用が高く、小型化は困難である。
【0004】
最も明白なソリューションは、例えばDE 199 45 042 C2による圧電超音波モータによって特徴づけられる。このようなモータでは、定在的な縦波及び屈曲波は圧電板状の共振器内で同時に励起される。両波が干渉する結果、共振器に配置される衝撃エレメントには楕円動作が加わる。この衝撃エレメントは、同動作を、ボールベアリングにより支持されかつ衝撃エレメントへ押し当てられるさらなる移動エレメントへ伝達する。しかしながら、この場合は、特に財政面で比較的高価なボールベアリングの使用が欠点である。
【0005】
大幅に安価なスライドベアリングの使用は、アクチュエータによって引き起こされる回転力または摩擦接触を介して伝達される回転力の各々に比肩し得るベアリング内の摩擦損失を伴う。そのため、本来明白であるはずのボールベアリングの放棄には問題がある。別の問題はボールベアリングが磁性材料で具現されることにあり、よってこのようなモータを非磁性アプリケーションに使用することはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、上述の問題点を基礎として、プレート状の長方形の共振板と摩擦接触状態にある移動エレメントを備える、さらに開発されたリニア超音波圧電モータを提供することにあり、この場合のモータは極く小型の物理的サイズを有し、全体構造は単純でありかつ少数の構成要素による製造が可能である。
【0007】
また、生成されるべきモータの励振電圧は小さいものになり、効率の増大が達成される。提供されるべきモータの新規構造設計により、これらは、特に小型X−Yテーブル、マイクロロボットまたはこれらに類似するメカトロ装置等の微細位置決め装置における使用に適するものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的に対する本発明によるソリューションは、特許請求項1及び少なくとも有効な実施形態及び進歩を表示する従属請求項に記載されている特徴の組み合わせに従ったリニア超音波圧電モータによって達成される。
【0009】
本発明によれば、音響振動を生成するための発生器は、共振板を対称的に横断する平面に対して非対称に配置され、励起されると非対称空間定在波を発生させる対向する2つの電極を備える。
【0010】
必要な振動を生成するための発生器のこのような構造は、前述の非対称空間波の励振を許容するだけでなく、摩擦接触の長さを大幅に増大させることができ、振動子上の摩擦面及び移動エレメント上の摩擦面の単純な配置を実現することができる。
【0011】
対称的な横断面の両側における音響振動を生成するための発生器の上記配置は、発生器の切替えによる移動エレメントの反転動作の達成を可能にし、よって発振動作を単純に生成することができる。
【0012】
長手方向の狭い側面の少なくとも一方は、案内溝、案内チャネルまたは案内レールを備えてもよく、上記案内溝、案内チャネルまたは案内レールは耐摩耗性のコーティングを有するか、このような材料で製造される。
【0013】
移動エレメントは、長手方向の狭い両側へ機械的かつ機能的に接続されるばね挟みとして具現されてもよい。
【0014】
ばね挟みは、例えばU字形またはV字形であってもよく、自由な脚で摩擦エレメントを運び、摩擦エレメントは案内溝、案内チャネルまたは案内レールの各々との相補形状を有する。
【0015】
本発明の一実施形態では、ばね挟みの脚は、具体的にはレンズである移動オブジェクトのホルダとして形成される取付け部分または取付けセクションを含む。
【0016】
超音波圧電モータの共振板はモノリシックな圧電材料または圧電体で製造されてもよく、よって、この圧電体の構成要素は、対応する励振電極により音響振動を生成するための生成器の機能を実行する。
【0017】
或いは、共振板は非圧電材料で製造することも可能であり、この場合、音響振動を生成するための発生器は共振板へ機械的に固定されて接続される。
【0018】
先に説明したようなリニア超音波圧電モータを電気的に動作させるための方法では、励振源は、好適には、固定動作周波数を有する電流フィードバック自動調整型発生器として具現され、上記動作周波数は、非対称空間定在波の励振を引き起こす圧電振動子の共振周波数によって予め定義される。
【0019】
従って、超音波圧電モータの振動子は、好適には少なくとも1つの滑らかな摩擦面を有する長方形である共振板を有する。移動エレメントは、振動子の摩擦面へ機能的に接続されている少なくとも1つの摩擦エレメントを含む。これにより、振動子の音響振動を生成するための発生器、延ては電極も、共振板を横断する対称面に対して非対称に配置される。このような配置に基づいて、超音波モータが電気的に励起されると、振動子内に非対称の音響定在空間波が発生し、これが移動エレメントを駆動する。
【0020】
ある実施形態では、本発明によるモータは、超音波振動子が2つの音響振動発生器を有するように構成されてもよく、この場合、上記発生器の各々は共振板を横断する対称面に対して非対称に配置され、かつさらに、結果的に先に説明した移動エレメントの反転動作が可能になるように、一方またはもう一方の発生器の何れかを必要な電気励振源へ接続するための切換えスイッチが装備される。
【0021】
本発明によるモータの摩擦面は、振動板の長手方向の狭い側面に位置決めされる案内チャネルの一方または双方へ配置されてもよい。さらに、摩擦面は、同じく振動板の長手方向の狭い2側面の一方に位置決めされる案内レール上へ配置されてもよい。これらは共に、移動部分のその動作に対して垂直方向への固定を可能にする。
【0022】
耐用年数を延ばしかつ長期安定性を向上させるために、本発明的モータの各実施形態では、案内チャネルまたは案内レールの表面に耐摩耗性の層または中間層が装備されてもよく、実際の摩擦層は後にこの上に装着される。
【0023】
本発明的モータの一実施形態では、移動エレメントとして2部形式のソリューションが選択されていて、各部分は、特定のリニアガイドを使用する必要がないように、対向する部分に対して摩擦面の方向へばね式に取り付けられる。
【0024】
先に述べた自動調整型発生器(オートジェネレータ)の実施形態の場合は、超音波モータの共振周波数の継続的追跡が可能であり、よって、この態様下でもアッセンブリ全体の機能安定性の向上が達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、様々な例示的実施形態により、かつ諸図を参照して、本発明をさらに詳しく説明する。
【0026】
図1によれば、本発明によるモータは、振動防止用の裏当て2によってホルダ3内に位置決めされる超音波振動子1を備える。さらに、上記振動子と摩擦接触状態にある移動エレメント4が示されている。超音波振動子1は、長方形の共振板5及び音響振動を生成するための1つまたは2つの発生器6で形成される。
【0027】
基本的には、本発明によるモータの2つの構造的変形が実現可能である。
【0028】
第1の実施形態では、共振板5は完全に、例えばチタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム、結晶石英、ニオブ酸リチウムからなる圧電材料、またはこれらに類似する圧電材料で製造される。
【0029】
音響振動の発生器6は各々、励振電極7(図1)と、共通の背後電極8とを含む。これら双方の電極は、共振板5の長手方向の広い側面9及び10に位置決めされる。この実施形態では、各音響振動発生器6が圧電板5の一部を表す。振動子自体は、モノリシックな(単一の)圧電体として形成される。
【0030】
修正されたモータの第2の実施形態では、振動子1は組み立て式の振動子として形成され、複数の発生器6が圧電板5に連結される。
【0031】
これら双方の実施形態では、圧電板5の長手方向の狭い側面11に案内チャネル12(図1)または案内レール30(図11)の何れかが装備される。摩擦面13は、耐摩耗性の層14上へ直接装備される。
【0032】
モータの摩擦接点の異常な摩耗を防止するために、上記耐摩耗性の層14は、案内チャネル12または案内レール30の表面へ金属、セラミック、ガラスまたは別の個々に最適化された材料で製造される耐摩耗性の薄膜として装着される。
【0033】
モータが案内レールを伴って実現されれば、上記耐摩耗性の層は、圧電板5の長手方向の狭い側面11上へ接着により装着される薄板であってもよい。
【0034】
モータの移動エレメント4は2つの部分15で構成されてもよく、その各々には、案内チャネル12内に位置決めされる摩擦エレメント16が装備される。さらに、部分15の各々は、摩擦エレメント16が摩擦面13を弾性的に押すように、ばね17によってもう一方の部分15へばね荷重式に固定されてもよい。この場合、ばね17は、例えばアジャスタ、磁気ヘッドまたは類似デバイスである移動エレメントのホルダとして機能してもよい。
【0035】
図2は、電気励振源18を有する振動子の例示的な配線スキームを示す。本発明的モータの機能原理に従って、電気励振源18は、移動エレメント4の動作方向に応じて対応する発生器6へ接続される。次いで、所望される動作方向に応じて、切換えスイッチ19により、発生器の切換が行われる。
【0036】
図3及び4は、振動子1の異なる構造的変形を示す。振動子1の構造及びモータの動作モードを説明するために、図3及び4は、圧電板5を横断する対称面Sを示している。上記対称面は圧電板とその長さLの真ん中で交差し、大きい側面9に対して垂直に伸長しかつ長手方向の狭い側面11に対しても同じく垂直に示されている。
【0037】
振動子1の、音響振動を生成するため発生器6は、対称面Sに対して非対称であり、即ちこれは、対応する動作方向に関連して片側だけに配置される。
【0038】
図3は、非対称性の一次音響空間波を励振するための振動子1を示す。この場合、圧電板の長さLの高さHに対する割合は、ほぼ2乃至3である(L/H=2乃至3)。
【0039】
図1によれば、細長い振動子を提供することも可能であり、即ち、例えば6次である、より高次の非対称空間定在波を励振することも可能である。波の次数は、圧電板5の長さによって決定される。これは、L=n・K、但しn=4,6,8...、K=0.7乃至1・H、という割合から選択される。
【0040】
図5では、振動子1の圧電板5の歪位置20及び21、即ち非対称の一次空間定在波が励振されている場合が示されている。これらの図は、時間的に発振周期の半分T/2だけ隔たる歪の境界例に対応している。
【0041】
図6は、圧電板5の長手方向の狭い側面11上へ位置づけられる点23の動作経路22、即ち、図5に示す一次定在波が励振されている場合を示す。本図から、一次定在波は振幅曲線25上で最大値24を有することが分る。
【0042】
図7は、アクティブな機械力成分を基礎とするモータの動作モードを示す。
【0043】
振動子1の片側は、防振用の裏当て26を介して固定式の土台27上に支持される。移動エレメント4は、力Fdにより、振動子1の反対側の側面11へ押し付けられる。長手方向の狭い側面11には摩擦面13が備えられ、移動エレメント4には摩擦エレメント16が備えられている。振動子が励振されると、移動エレメント4へ作用する力に影響されて結果的に生じる力Fsが、移動エレメントの動作を発生させる。
【0044】
図8は、細長い振動子を有するモータの修正された実施形態を示す。上記振動子の動作モードは、図4に示すものに一致する。
【0045】
図9は、組立て式の振動子1を有するモータの修正された実施形態を示す。この代替例では、共振板5は、例えば鋼、セラミック、金属−セラミック、単結晶またはこれらに類似する各材料である非圧電材料で製造される。従って、音響振動発生器6は、共振板5へ固定式に接続される圧電素子として具現される。圧電板28または圧電円板29はこのような発生器として使用されてもよく、これらの表面には電極7及び8が対応して位置決めされる(図10参照)。
【0046】
図11は、チャネル12またはレール30の代替例を示す。チャネル12は、円形または三角形の断面輪郭(位置31及び32)を有してもよい。同じくレール30も、円形、三角形または四角形の輪郭(位置33,34,35)を有してもよい。
【0047】
図12を参照すると、本発明によるモータは、一例として、ホルダ37内に位置決めされる対物レンズ36を調節するために使用されるべきものである。
【0048】
図13は、自動調整型発生器の原理に従って構成される電気励振源18の代替例の可能な回路構成を開示している。駆動されるべきモータは、参照番号38で示されている。さらに、切換えスイッチ19、アダプタ39、電流切換えスイッチ40、電源41、駆動装置42、フィードバック部材43、フィルタ44、位相シフタ45及びオフ切換手段46が装備されている。
【0049】
以下、モータの動作モードについて説明する。
【0050】
モータを電気励振源18へ接続すると(図2参照)、発生器6の電極7または8に交流電圧が供給され、即ち、振動子1の動作周波数Faに対応する周波数が供給される。
【0051】
周波数Faにより、振動子1では、振動子の長さLに依存して一次、二次またはより高次に対応し得る非対称空間定在波が励振される。励振される定在波の次数は、振幅曲線の極大の数に一致する。
【0052】
従って、一次定在波は1つの極大を有し(図5、6参照)、二次定在波は2つの極大を有し、三次定在波は3つの極大を有する、等々、となる。
【0053】
動作周波数Faは、非対称定在波のための共振板5の共振周波数に一致し、かつ共振板の寸法及び共振板の材料特性に依存する。
【0054】
動作周波数Faの値は、関係式Fa=m・N/Lから決定することができる。但し、Lは共振板の長さであり、Nは使用される定在波のタイプの周波数定数であり、mは定在波の次数(m=1,2,3等々)である。
【0055】
例えば、一次定常波(m=1)、及びPIセラミック社の圧電材料PIC181で製造される共振板5の周波数定数はN=39600kHz・mmであり、よって、共振板の長さL=10mmではFa=396kHz、L=20mmではFa=198kHz、L=30mmではFa=132kHzになる。
【0056】
振動子1内で非対称空間定在波が励振されると(図5参照)、共振板5の長手方向の狭い側面11上に位置づけられる摩擦面13の点23は動作経路22に沿って振動する(図6参照)。これらの点の動作経路は、長手方向の狭い側面の表面に対し、位置に依存して異なる傾斜を有する直線で表される。非対称定在波を決定づける特徴は、共振板5の中心部におけるこれらの線22(これらの点の発振経路)の好適には同一である傾斜にある。図5及び6に示す一次定在波の場合、これらの線は発生器6とは反対向きの傾斜を有する。
【0057】
これらの点の動作経路のこの好適な傾斜は、同様に動作経路22の好適な傾斜方向へ配向される力Fdを生成させる。この力は、摩擦エレメント16に対して摩擦面13の全ての点の力が加えられる結果として生じる。力Fsは摩擦エレメント16上へ作用し、移動エレメント4をこの力の動作方向へシフトさせる。
【0058】
切換えスイッチ19(図2)による励振源18の1つの発生器6からもう一つの発生器への切換えは、動作経路22の傾斜方向の反対向きへの変更を可能にし、これにより、移動エレメントの動作が反転される。
【0059】
非対称の一次空間定在波の励振を使用する超音波モータでは(図1、3、12)、移動エレメント4の行程長さは0.3L乃至0.4Lに限定される。シフトレンジの長さは摩擦エレメント16の長さに依存し、極大の境界例では約0.5Lになる。より高次の定在波での励振を使用するモータでは(図4、8、9)、シフトレンジの値は0.7Lに達してもよい。これらのモータでは、摩擦エレメント16の長さは2つの振動極大24間の距離以上である。この場合は、上記摩擦エレメントによって2つ以上の極大が重畳され、これにより、共振板5の全長に沿って均一な駆動力が生成される。
【0060】
本発明によるモータの電気励振源18は、モータを励起させる固定周波数を有する交流電圧を生成する場合もあれば、自動発生器の周波数が振動子1によって予め定義される自動調整型の発生器(オートジェネレータ)18として実現される場合もある。図13は、このような励振源の修正されたブロック図を示したものである。
【0061】
本図に示す回路は電流フィードバック自動調整型発生器を表し、電流は、電極7、8上を流れる。振動子上の励振電圧と振動子を介して流れる電流との間の位相特性は、回路の励振周波数を振動子1の動作周波数Faに維持するために使用される。この特性は、振動子の共振周波数Faで、即ち、非対称定在波が励振される周波数でゼロ位相シフトを有する。
【0062】
振動子1の電極7、8に電気励振電圧が供給されると、電圧は、振動子を介して流れる電流に対して−90゜の角度だけシフトされるフィードバック・エレメント43を介して降下する。この電圧降下は、フィードバック信号として機能する。フィードバック信号はさらにフィルタ44へルーティングされ、ループの位相シフト全体が動作周波数Faの範囲内で値ゼロに達するように、位相シフタによって位相角の回転が実行される。駆動装置42による増幅の後、フィードバック電圧は電流スイッチ40のパワー・トランジスタへ制御用に供給される。電流スイッチ40は、電源39を介して流れる電流を接地とアダプタとの間で切換する。
【0063】
帯域通過フィルタ44は、フィードバック電圧をフィルタリングするというタスク以外に、1より大きい増幅定数の範囲内で別の位相のゼロ交差が現れないように、回路の周波数帯域幅を限定する機能も有する。その結果、システムの過渡振動は動作周波数Faでのみ実行される。これは、システム全体の振動ビルドアップ条件がこの周波数でしか満たされないためである。
【0064】
オフ切換は、供給電圧Eを遮断すること、またはオフ切換手段46を作動させること、の何れかによって実行することができる。後者の場合はフィードバック・ループが短絡され、よって、回路の自動励振は省略される。
【0065】
最新技術に比較すると、本発明によるモータの場合は、1.5乃至2倍の物理的サイズの縮小を達成可能である。本モータの構造は極めて単純であり、ボールベアリングを使用せずにこれを達成することができる。最新技術から知られるモータに比べると、本発明に従って縮小されるモータの場合は、同じ機能性で3倍乃至4倍も小さい励振電圧の振幅が達成され、より高い有効性、即ち向上した効率がもたらされることが証明されている。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明によるモータの第1の実施形態を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態によるモータの例示的な配線を示す。
【図3】音響振動を生成する発生器の構成を説明するための第1の例を示す。
【図4】音響振動を生成する発生器の構成の第2の例を示す。
【図5】音響振動を生成する振動子または発生器の歪を表示したものである。
【図6】長方形の板5の長手方向の狭い側面11に沿った点の移動経路を示す。
【図7】本モータの動作中に発生する力を示す略図である。
【図8】延長された振動子を有するモータの例示的な実施形態を示す。
【図9】例えば鋼材で製造される長方形の板に、例えば生成器6が接着されている修正された実施形態を示す。
【図10】組み立てられた振動子を伴なうモータの実施形態のための圧電素子の異なる修正された実施形態を示す。
【図11】各々、案内チャネル、案内溝、案内レールまたは摩擦面の実施形態から見た異なる修正を示す断面詳細図である。
【図12】特定的には可動レンズである光学素子のホルダを伴う、本発明によるモータを実現するための例示的形態を示す。
【図13】本発明によるモータを動作させるための自動調整型電流フィードバック発生器を示すブロック図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1の前提部分に記載されている、プレート状の長方形の共振板と摩擦接触状態にあって摩擦面は上記共振板の長手方向の狭い側面の少なくとも一方によって具現される移動エレメントと、上記共振板の長手方向の広い側面に配置される、音響振動を生成するための2つの電極とを備えるリニア超音波圧電モータに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第4,978,882号から、圧電励振の原理に従って環状振動子内で閉鎖型の導波路として動作するリニア超音波モータが知られている。このようなモータの構造は極めて複雑であり、幾つかの圧電素子は、例えば接着によって環状振動子へ粘着式に固定されなければならない。従って、このようなモータは製造費用が極めて高く、小型化は限定的にしか行えない。
【0003】
米国特許第5,672,930号による最新技術は、棒状振動子、即ち開放型の導波路における移動超音波の励振を使用する超音波モータを包含している。このようなモータの欠点は、対称定在波は開放型の導波路において移動波の励起と同時的に励起され、移動波の励起はモータの摩擦接触作用に悪影響を与えることから、開放型の導波路において正確に移動する超音波を励起することが実際には不可能である、という事実にある。延てはこれは、摩擦面及びモータ全体の各々の著しい加熱、及び高い雑音レベルをもたらす。さらに、上記最新技術によるこれらのモータは極めて高い励振電圧を必要とし、製造費用が高く、小型化は困難である。
【0004】
最も明白なソリューションは、例えばDE 199 45 042 C2による圧電超音波モータによって特徴づけられる。このようなモータでは、定在的な縦波及び屈曲波は圧電板状の共振器内で同時に励起される。両波が干渉する結果、共振器に配置される衝撃エレメントには楕円動作が加わる。この衝撃エレメントは、同動作を、ボールベアリングにより支持されかつ衝撃エレメントへ押し当てられるさらなる移動エレメントへ伝達する。しかしながら、この場合は、特に財政面で比較的高価なボールベアリングの使用が欠点である。
【0005】
大幅に安価なスライドベアリングの使用は、アクチュエータによって引き起こされる回転力または摩擦接触を介して伝達される回転力の各々に比肩し得るベアリング内の摩擦損失を伴う。そのため、本来明白であるはずのボールベアリングの放棄には問題がある。別の問題はボールベアリングが磁性材料で具現されることにあり、よってこのようなモータを非磁性アプリケーションに使用することはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、上述の問題点を基礎として、プレート状の長方形の共振板と摩擦接触状態にある移動エレメントを備える、さらに開発されたリニア超音波圧電モータを提供することにあり、この場合のモータは極く小型の物理的サイズを有し、全体構造は単純でありかつ少数の構成要素による製造が可能である。
【0007】
また、生成されるべきモータの励振電圧は小さいものになり、効率の増大が達成される。提供されるべきモータの新規構造設計により、これらは、特に小型X−Yテーブル、マイクロロボットまたはこれらに類似するメカトロ装置等の微細位置決め装置における使用に適するものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的に対する本発明によるソリューションは、特許請求項1及び少なくとも有効な実施形態及び進歩を表示する従属請求項に記載されている特徴の組み合わせに従ったリニア超音波圧電モータによって達成される。
【0009】
本発明によれば、音響振動を生成するための発生器は、共振板を対称的に横断する平面に対して非対称に配置され、励起されると非対称空間定在波を発生させる対向する2つの電極を備える。
【0010】
必要な振動を生成するための発生器のこのような構造は、前述の非対称空間波の励振を許容するだけでなく、摩擦接触の長さを大幅に増大させることができ、振動子上の摩擦面及び移動エレメント上の摩擦面の単純な配置を実現することができる。
【0011】
対称的な横断面の両側における音響振動を生成するための発生器の上記配置は、発生器の切替えによる移動エレメントの反転動作の達成を可能にし、よって発振動作を単純に生成することができる。
【0012】
長手方向の狭い側面の少なくとも一方は、案内溝、案内チャネルまたは案内レールを備えてもよく、上記案内溝、案内チャネルまたは案内レールは耐摩耗性のコーティングを有するか、このような材料で製造される。
【0013】
移動エレメントは、長手方向の狭い両側へ機械的かつ機能的に接続されるばね挟みとして具現されてもよい。
【0014】
ばね挟みは、例えばU字形またはV字形であってもよく、自由な脚で摩擦エレメントを運び、摩擦エレメントは案内溝、案内チャネルまたは案内レールの各々との相補形状を有する。
【0015】
本発明の一実施形態では、ばね挟みの脚は、具体的にはレンズである移動オブジェクトのホルダとして形成される取付け部分または取付けセクションを含む。
【0016】
超音波圧電モータの共振板はモノリシックな圧電材料または圧電体で製造されてもよく、よって、この圧電体の構成要素は、対応する励振電極により音響振動を生成するための生成器の機能を実行する。
【0017】
或いは、共振板は非圧電材料で製造することも可能であり、この場合、音響振動を生成するための発生器は共振板へ機械的に固定されて接続される。
【0018】
先に説明したようなリニア超音波圧電モータを電気的に動作させるための方法では、励振源は、好適には、固定動作周波数を有する電流フィードバック自動調整型発生器として具現され、上記動作周波数は、非対称空間定在波の励振を引き起こす圧電振動子の共振周波数によって予め定義される。
【0019】
従って、超音波圧電モータの振動子は、好適には少なくとも1つの滑らかな摩擦面を有する長方形である共振板を有する。移動エレメントは、振動子の摩擦面へ機能的に接続されている少なくとも1つの摩擦エレメントを含む。これにより、振動子の音響振動を生成するための発生器、延ては電極も、共振板を横断する対称面に対して非対称に配置される。このような配置に基づいて、超音波モータが電気的に励起されると、振動子内に非対称の音響定在空間波が発生し、これが移動エレメントを駆動する。
【0020】
ある実施形態では、本発明によるモータは、超音波振動子が2つの音響振動発生器を有するように構成されてもよく、この場合、上記発生器の各々は共振板を横断する対称面に対して非対称に配置され、かつさらに、結果的に先に説明した移動エレメントの反転動作が可能になるように、一方またはもう一方の発生器の何れかを必要な電気励振源へ接続するための切換えスイッチが装備される。
【0021】
本発明によるモータの摩擦面は、振動板の長手方向の狭い側面に位置決めされる案内チャネルの一方または双方へ配置されてもよい。さらに、摩擦面は、同じく振動板の長手方向の狭い2側面の一方に位置決めされる案内レール上へ配置されてもよい。これらは共に、移動部分のその動作に対して垂直方向への固定を可能にする。
【0022】
耐用年数を延ばしかつ長期安定性を向上させるために、本発明的モータの各実施形態では、案内チャネルまたは案内レールの表面に耐摩耗性の層または中間層が装備されてもよく、実際の摩擦層は後にこの上に装着される。
【0023】
本発明的モータの一実施形態では、移動エレメントとして2部形式のソリューションが選択されていて、各部分は、特定のリニアガイドを使用する必要がないように、対向する部分に対して摩擦面の方向へばね式に取り付けられる。
【0024】
先に述べた自動調整型発生器(オートジェネレータ)の実施形態の場合は、超音波モータの共振周波数の継続的追跡が可能であり、よって、この態様下でもアッセンブリ全体の機能安定性の向上が達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、様々な例示的実施形態により、かつ諸図を参照して、本発明をさらに詳しく説明する。
【0026】
図1によれば、本発明によるモータは、振動防止用の裏当て2によってホルダ3内に位置決めされる超音波振動子1を備える。さらに、上記振動子と摩擦接触状態にある移動エレメント4が示されている。超音波振動子1は、長方形の共振板5及び音響振動を生成するための1つまたは2つの発生器6で形成される。
【0027】
基本的には、本発明によるモータの2つの構造的変形が実現可能である。
【0028】
第1の実施形態では、共振板5は完全に、例えばチタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム、結晶石英、ニオブ酸リチウムからなる圧電材料、またはこれらに類似する圧電材料で製造される。
【0029】
音響振動の発生器6は各々、励振電極7(図1)と、共通の背後電極8とを含む。これら双方の電極は、共振板5の長手方向の広い側面9及び10に位置決めされる。この実施形態では、各音響振動発生器6が圧電板5の一部を表す。振動子自体は、モノリシックな(単一の)圧電体として形成される。
【0030】
修正されたモータの第2の実施形態では、振動子1は組み立て式の振動子として形成され、複数の発生器6が圧電板5に連結される。
【0031】
これら双方の実施形態では、圧電板5の長手方向の狭い側面11に案内チャネル12(図1)または案内レール30(図11)の何れかが装備される。摩擦面13は、耐摩耗性の層14上へ直接装備される。
【0032】
モータの摩擦接点の異常な摩耗を防止するために、上記耐摩耗性の層14は、案内チャネル12または案内レール30の表面へ金属、セラミック、ガラスまたは別の個々に最適化された材料で製造される耐摩耗性の薄膜として装着される。
【0033】
モータが案内レールを伴って実現されれば、上記耐摩耗性の層は、圧電板5の長手方向の狭い側面11上へ接着により装着される薄板であってもよい。
【0034】
モータの移動エレメント4は2つの部分15で構成されてもよく、その各々には、案内チャネル12内に位置決めされる摩擦エレメント16が装備される。さらに、部分15の各々は、摩擦エレメント16が摩擦面13を弾性的に押すように、ばね17によってもう一方の部分15へばね荷重式に固定されてもよい。この場合、ばね17は、例えばアジャスタ、磁気ヘッドまたは類似デバイスである移動エレメントのホルダとして機能してもよい。
【0035】
図2は、電気励振源18を有する振動子の例示的な配線スキームを示す。本発明的モータの機能原理に従って、電気励振源18は、移動エレメント4の動作方向に応じて対応する発生器6へ接続される。次いで、所望される動作方向に応じて、切換えスイッチ19により、発生器の切換が行われる。
【0036】
図3及び4は、振動子1の異なる構造的変形を示す。振動子1の構造及びモータの動作モードを説明するために、図3及び4は、圧電板5を横断する対称面Sを示している。上記対称面は圧電板とその長さLの真ん中で交差し、大きい側面9に対して垂直に伸長しかつ長手方向の狭い側面11に対しても同じく垂直に示されている。
【0037】
振動子1の、音響振動を生成するため発生器6は、対称面Sに対して非対称であり、即ちこれは、対応する動作方向に関連して片側だけに配置される。
【0038】
図3は、非対称性の一次音響空間波を励振するための振動子1を示す。この場合、圧電板の長さLの高さHに対する割合は、ほぼ2乃至3である(L/H=2乃至3)。
【0039】
図1によれば、細長い振動子を提供することも可能であり、即ち、例えば6次である、より高次の非対称空間定在波を励振することも可能である。波の次数は、圧電板5の長さによって決定される。これは、L=n・K、但しn=4,6,8...、K=0.7乃至1・H、という割合から選択される。
【0040】
図5では、振動子1の圧電板5の歪位置20及び21、即ち非対称の一次空間定在波が励振されている場合が示されている。これらの図は、時間的に発振周期の半分T/2だけ隔たる歪の境界例に対応している。
【0041】
図6は、圧電板5の長手方向の狭い側面11上へ位置づけられる点23の動作経路22、即ち、図5に示す一次定在波が励振されている場合を示す。本図から、一次定在波は振幅曲線25上で最大値24を有することが分る。
【0042】
図7は、アクティブな機械力成分を基礎とするモータの動作モードを示す。
【0043】
振動子1の片側は、防振用の裏当て26を介して固定式の土台27上に支持される。移動エレメント4は、力Fdにより、振動子1の反対側の側面11へ押し付けられる。長手方向の狭い側面11には摩擦面13が備えられ、移動エレメント4には摩擦エレメント16が備えられている。振動子が励振されると、移動エレメント4へ作用する力に影響されて結果的に生じる力Fsが、移動エレメントの動作を発生させる。
【0044】
図8は、細長い振動子を有するモータの修正された実施形態を示す。上記振動子の動作モードは、図4に示すものに一致する。
【0045】
図9は、組立て式の振動子1を有するモータの修正された実施形態を示す。この代替例では、共振板5は、例えば鋼、セラミック、金属−セラミック、単結晶またはこれらに類似する各材料である非圧電材料で製造される。従って、音響振動発生器6は、共振板5へ固定式に接続される圧電素子として具現される。圧電板28または圧電円板29はこのような発生器として使用されてもよく、これらの表面には電極7及び8が対応して位置決めされる(図10参照)。
【0046】
図11は、チャネル12またはレール30の代替例を示す。チャネル12は、円形または三角形の断面輪郭(位置31及び32)を有してもよい。同じくレール30も、円形、三角形または四角形の輪郭(位置33,34,35)を有してもよい。
【0047】
図12を参照すると、本発明によるモータは、一例として、ホルダ37内に位置決めされる対物レンズ36を調節するために使用されるべきものである。
【0048】
図13は、自動調整型発生器の原理に従って構成される電気励振源18の代替例の可能な回路構成を開示している。駆動されるべきモータは、参照番号38で示されている。さらに、切換えスイッチ19、アダプタ39、電流切換えスイッチ40、電源41、駆動装置42、フィードバック部材43、フィルタ44、位相シフタ45及びオフ切換手段46が装備されている。
【0049】
以下、モータの動作モードについて説明する。
【0050】
モータを電気励振源18へ接続すると(図2参照)、発生器6の電極7または8に交流電圧が供給され、即ち、振動子1の動作周波数Faに対応する周波数が供給される。
【0051】
周波数Faにより、振動子1では、振動子の長さLに依存して一次、二次またはより高次に対応し得る非対称空間定在波が励振される。励振される定在波の次数は、振幅曲線の極大の数に一致する。
【0052】
従って、一次定在波は1つの極大を有し(図5、6参照)、二次定在波は2つの極大を有し、三次定在波は3つの極大を有する、等々、となる。
【0053】
動作周波数Faは、非対称定在波のための共振板5の共振周波数に一致し、かつ共振板の寸法及び共振板の材料特性に依存する。
【0054】
動作周波数Faの値は、関係式Fa=m・N/Lから決定することができる。但し、Lは共振板の長さであり、Nは使用される定在波のタイプの周波数定数であり、mは定在波の次数(m=1,2,3等々)である。
【0055】
例えば、一次定常波(m=1)、及びPIセラミック社の圧電材料PIC181で製造される共振板5の周波数定数はN=39600kHz・mmであり、よって、共振板の長さL=10mmではFa=396kHz、L=20mmではFa=198kHz、L=30mmではFa=132kHzになる。
【0056】
振動子1内で非対称空間定在波が励振されると(図5参照)、共振板5の長手方向の狭い側面11上に位置づけられる摩擦面13の点23は動作経路22に沿って振動する(図6参照)。これらの点の動作経路は、長手方向の狭い側面の表面に対し、位置に依存して異なる傾斜を有する直線で表される。非対称定在波を決定づける特徴は、共振板5の中心部におけるこれらの線22(これらの点の発振経路)の好適には同一である傾斜にある。図5及び6に示す一次定在波の場合、これらの線は発生器6とは反対向きの傾斜を有する。
【0057】
これらの点の動作経路のこの好適な傾斜は、同様に動作経路22の好適な傾斜方向へ配向される力Fdを生成させる。この力は、摩擦エレメント16に対して摩擦面13の全ての点の力が加えられる結果として生じる。力Fsは摩擦エレメント16上へ作用し、移動エレメント4をこの力の動作方向へシフトさせる。
【0058】
切換えスイッチ19(図2)による励振源18の1つの発生器6からもう一つの発生器への切換えは、動作経路22の傾斜方向の反対向きへの変更を可能にし、これにより、移動エレメントの動作が反転される。
【0059】
非対称の一次空間定在波の励振を使用する超音波モータでは(図1、3、12)、移動エレメント4の行程長さは0.3L乃至0.4Lに限定される。シフトレンジの長さは摩擦エレメント16の長さに依存し、極大の境界例では約0.5Lになる。より高次の定在波での励振を使用するモータでは(図4、8、9)、シフトレンジの値は0.7Lに達してもよい。これらのモータでは、摩擦エレメント16の長さは2つの振動極大24間の距離以上である。この場合は、上記摩擦エレメントによって2つ以上の極大が重畳され、これにより、共振板5の全長に沿って均一な駆動力が生成される。
【0060】
本発明によるモータの電気励振源18は、モータを励起させる固定周波数を有する交流電圧を生成する場合もあれば、自動発生器の周波数が振動子1によって予め定義される自動調整型の発生器(オートジェネレータ)18として実現される場合もある。図13は、このような励振源の修正されたブロック図を示したものである。
【0061】
本図に示す回路は電流フィードバック自動調整型発生器を表し、電流は、電極7、8上を流れる。振動子上の励振電圧と振動子を介して流れる電流との間の位相特性は、回路の励振周波数を振動子1の動作周波数Faに維持するために使用される。この特性は、振動子の共振周波数Faで、即ち、非対称定在波が励振される周波数でゼロ位相シフトを有する。
【0062】
振動子1の電極7、8に電気励振電圧が供給されると、電圧は、振動子を介して流れる電流に対して−90゜の角度だけシフトされるフィードバック・エレメント43を介して降下する。この電圧降下は、フィードバック信号として機能する。フィードバック信号はさらにフィルタ44へルーティングされ、ループの位相シフト全体が動作周波数Faの範囲内で値ゼロに達するように、位相シフタによって位相角の回転が実行される。駆動装置42による増幅の後、フィードバック電圧は電流スイッチ40のパワー・トランジスタへ制御用に供給される。電流スイッチ40は、電源39を介して流れる電流を接地とアダプタとの間で切換する。
【0063】
帯域通過フィルタ44は、フィードバック電圧をフィルタリングするというタスク以外に、1より大きい増幅定数の範囲内で別の位相のゼロ交差が現れないように、回路の周波数帯域幅を限定する機能も有する。その結果、システムの過渡振動は動作周波数Faでのみ実行される。これは、システム全体の振動ビルドアップ条件がこの周波数でしか満たされないためである。
【0064】
オフ切換は、供給電圧Eを遮断すること、またはオフ切換手段46を作動させること、の何れかによって実行することができる。後者の場合はフィードバック・ループが短絡され、よって、回路の自動励振は省略される。
【0065】
最新技術に比較すると、本発明によるモータの場合は、1.5乃至2倍の物理的サイズの縮小を達成可能である。本モータの構造は極めて単純であり、ボールベアリングを使用せずにこれを達成することができる。最新技術から知られるモータに比べると、本発明に従って縮小されるモータの場合は、同じ機能性で3倍乃至4倍も小さい励振電圧の振幅が達成され、より高い有効性、即ち向上した効率がもたらされることが証明されている。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明によるモータの第1の実施形態を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態によるモータの例示的な配線を示す。
【図3】音響振動を生成する発生器の構成を説明するための第1の例を示す。
【図4】音響振動を生成する発生器の構成の第2の例を示す。
【図5】音響振動を生成する振動子または発生器の歪を表示したものである。
【図6】長方形の板5の長手方向の狭い側面11に沿った点の移動経路を示す。
【図7】本モータの動作中に発生する力を示す略図である。
【図8】延長された振動子を有するモータの例示的な実施形態を示す。
【図9】例えば鋼材で製造される長方形の板に、例えば生成器6が接着されている修正された実施形態を示す。
【図10】組み立てられた振動子を伴なうモータの実施形態のための圧電素子の異なる修正された実施形態を示す。
【図11】各々、案内チャネル、案内溝、案内レールまたは摩擦面の実施形態から見た異なる修正を示す断面詳細図である。
【図12】特定的には可動レンズである光学素子のホルダを伴う、本発明によるモータを実現するための例示的形態を示す。
【図13】本発明によるモータを動作させるための自動調整型電流フィードバック発生器を示すブロック図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレート状の長方形の共振板と摩擦接触状態にあって、上記摩擦の面は上記共振板の長手方向の狭い側面の少なくとも一方によって具現される移動エレメントと、上記共振板の長手方向の広い側面に配置される、音響振動を生成するための電極とを備えるリニア超音波圧電モータであって、
音響振動を生成するための発生器は、上記共振板を対称的に横断する平面に対して非対称に配置され、かつ励振されると非対称空間定在波を発生させる対向する2つの電極を備えることを特徴とするリニア超音波の圧電モータ。
【請求項2】
音響振動を生成するための発生器は上記対称的に横断する平面の両側面に供給され、上記発生器は上記移動エレメントの動作方向を反転させるために別々に制御されることを特徴とする、請求項1記載の圧電モータ。
【請求項3】
上記発生器は共通の背後電極を有することを特徴とする、請求項2記載の圧電モータ。
【請求項4】
上記長手方向の狭い側面の少なくとも一方は案内溝、案内チャネルまたは案内レールを備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の圧電モータ。
【請求項5】
上記案内溝、上記案内チャネルまたは上記案内レールは耐摩耗性のコーティングを有する、または耐摩耗性の材料で製造されることを特徴とする、請求項4記載の圧電モータ。
【請求項6】
上記移動エレメントは、上記長手方向の狭い側面へ機械的かつ機能的に接続されるばね挟みとして具現されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の圧電モータ。
【請求項7】
上記ばね挟みはU字形またはV字形であって自由な脚で摩擦エレメントを運び、上記摩擦エレメントは上記案内溝、案内チャネルまたは案内レールの各々との相補形状を有することを特徴とする、請求項4または6記載の圧電モータ。
【請求項8】
上記ばね挟みの脚は、具体的にはレンズである移動エレメントのホルダとして形成される取付け部分または取付けセクションを含むことを特徴とする、請求項7記載の圧電モータ。
【請求項9】
上記共振板は単一の圧電体で製造されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の圧電モータ。
【請求項10】
上記共振板は非圧電材料で構成され、上記音響振動を生成するための発生器は上記共振板へ機械的に固定されて接続されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の圧電モータ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載された特徴を備えるリニア超音波の圧電モータを電気的に作動させるための方法であって、
励振源は、固定動作周波数を有する電流フィードバック自動調整型発生器として具現され、上記動作周波数は、非対称空間定在波の励振を引き起こす圧電振動子の共振周波数によって予め定義されることを特徴とする方法。
【請求項1】
プレート状の長方形の共振板と摩擦接触状態にあって、上記摩擦の面は上記共振板の長手方向の狭い側面の少なくとも一方によって具現される移動エレメントと、上記共振板の長手方向の広い側面に配置される、音響振動を生成するための電極とを備えるリニア超音波圧電モータであって、
音響振動を生成するための発生器は、上記共振板を対称的に横断する平面に対して非対称に配置され、かつ励振されると非対称空間定在波を発生させる対向する2つの電極を備えることを特徴とするリニア超音波の圧電モータ。
【請求項2】
音響振動を生成するための発生器は上記対称的に横断する平面の両側面に供給され、上記発生器は上記移動エレメントの動作方向を反転させるために別々に制御されることを特徴とする、請求項1記載の圧電モータ。
【請求項3】
上記発生器は共通の背後電極を有することを特徴とする、請求項2記載の圧電モータ。
【請求項4】
上記長手方向の狭い側面の少なくとも一方は案内溝、案内チャネルまたは案内レールを備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の圧電モータ。
【請求項5】
上記案内溝、上記案内チャネルまたは上記案内レールは耐摩耗性のコーティングを有する、または耐摩耗性の材料で製造されることを特徴とする、請求項4記載の圧電モータ。
【請求項6】
上記移動エレメントは、上記長手方向の狭い側面へ機械的かつ機能的に接続されるばね挟みとして具現されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の圧電モータ。
【請求項7】
上記ばね挟みはU字形またはV字形であって自由な脚で摩擦エレメントを運び、上記摩擦エレメントは上記案内溝、案内チャネルまたは案内レールの各々との相補形状を有することを特徴とする、請求項4または6記載の圧電モータ。
【請求項8】
上記ばね挟みの脚は、具体的にはレンズである移動エレメントのホルダとして形成される取付け部分または取付けセクションを含むことを特徴とする、請求項7記載の圧電モータ。
【請求項9】
上記共振板は単一の圧電体で製造されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の圧電モータ。
【請求項10】
上記共振板は非圧電材料で構成され、上記音響振動を生成するための発生器は上記共振板へ機械的に固定されて接続されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の圧電モータ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載された特徴を備えるリニア超音波の圧電モータを電気的に作動させるための方法であって、
励振源は、固定動作周波数を有する電流フィードバック自動調整型発生器として具現され、上記動作周波数は、非対称空間定在波の励振を引き起こす圧電振動子の共振周波数によって予め定義されることを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2008−512073(P2008−512073A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528622(P2007−528622)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004236
【国際公開番号】WO2006/027031
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(505257752)フィジック インストゥルメント(ピーアイ)ゲーエムベーハー アンド ツェーオー.カーゲー (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004236
【国際公開番号】WO2006/027031
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(505257752)フィジック インストゥルメント(ピーアイ)ゲーエムベーハー アンド ツェーオー.カーゲー (11)
【Fターム(参考)】
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