説明

レーザシステムおよびレーザ生成方法

【課題】安定したレーザ光を得る。
【解決手段】レーザシステムは、パルスレーザ光を出力するマスタオシレータと、該マスタオシレータから出力された前記パルスレーザ光を増幅する増幅装置と、前記マスタオシレータと前記増幅装置とを制御するコントローラとを備えてもよい。前記マスタオシレータは、励起光を出力するポンピングレーザと、前記励起光によってレーザ発振するシードレーザと、前記シードレーザから出力されたパルスレーザ光を前記励起光によって増幅する増幅器と、前記シードレーザと前記増幅器との間の光路上に設置された少なくとも1つの光シャッタと、を備えてもよい。前記コントローラが、前記光シャッタを通過したパルスレーザ光が前記増幅装置を通過する際に該増幅装置が放電するように、前記光シャッタの開閉と前記増幅装置の放電とを制御してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザシステムおよびレーザ生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体リソグラフィプロセスに使用される典型的な紫外線光源エキシマレーザは、波長がおよそ248nmのKrFエキシマレーザと波長がおよそ193nmのArFエキシマレーザである。
【0003】
そうしたArFエキシマレーザの殆どは発振段レーザと増幅段を含む2ステージレーザシステムとして市場に供給されている。2ステージのArFエキシマレーザシステムの発振段レーザと増幅段の共通する主要な構成を説明する。発振段レーザは第1チャンバを有し、増幅段は第2チャンバを有する。それらの第1、第2チャンバ内にレーザガス(F、Ar、Ne、Xeの混合ガス)が封入されている。発振段レーザと増幅段はまた、前記レーザガスを励起するために電気エネルギーを供給する電源を有する。発振段レーザと増幅段とはそれぞれ電源を有することができるが、1台の電源を共有することもできる。前記第1チャンバ内には、それぞれが前記電源に接続された第1アノードと第1カソードとを含む第1放電電極が設置され、前記第2チャンバ内にも同様にそれぞれが前記電源に接続された第2アノードと第2カソードとを含む第2放電電極が設置されている。
【0004】
発振段レーザ特有の構成は、例えば狭帯域モジュールである。狭帯域モジュールは典型的にはひとつのグレーティングと少なくともひとつのプリズムビームエキスパンダとを含む。半透過ミラーと前記グレーティングとが光共振器を構成し、これらの半透過ミラーとグレーティングとの間に発振段レーザの前記第1チャンバが設置されている。
【0005】
前記第1放電電極の第1アノードと第1カソードとの間に放電が発生されると前記レーザガスが励起されて、その励起エネルギーを放出する際に光が発生する。その光が前記狭帯域モジュールによって波長選択されたレーザ光となって発振段レーザから出力される。
【0006】
増幅段が共振器構造を含むレーザである場合の2ステージレーザシステムをMOPOと言い、増幅段が共振器構造を含まずレーザではない場合の2ステージレーザシステムをMOPAと言う。前記発振段レーザからのレーザ光が前記増幅段の第2チャンバ内に存在するときに、前記第2放電電極の第2アノードと第2カソードとの間に放電を発生させる制御が行なわれる。これにより前記第2チャンバ内のレーザガスが励起されて、前記レーザ光が増幅されて増幅段から出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009−67468号明細書
【概要】
【0008】
本開示の一態様によるレーザシステムは、パルスレーザ光を出力するマスタオシレータと、該マスタオシレータから出力された前記パルスレーザ光を増幅する増幅装置と、前記マスタオシレータと前記増幅装置とを制御するコントローラとを備えるレーザシステムであって、前記マスタオシレータが、励起光を出力するポンピングレーザと、前記励起光によってレーザ発振するシードレーザと、前記シードレーザから出力されたパルスレーザ光を前記励起光によって増幅する増幅器と、前記シードレーザと前記増幅器との間の光路上に設置された少なくとも1つの光シャッタと、を備え、前記コントローラが、前記光シャッタを通過したパルスレーザ光が前記増幅装置を通過する際に該増幅装置が放電するように、前記光シャッタの開閉と前記増幅装置の放電とを制御してもよい。
【0009】
本開示の他の態様によるレーザ生成方法は、励起光を出力するポンピングレーザ、前記励起光によってレーザ発振するシードレーザ、前記シードレーザから出力されたパルスレーザ光を前記励起光によって増幅する増幅器、および前記シードレーザと前記増幅器との間の光路上に設置された少なくとも1つの光シャッタを備えるマスタオシレータと、該マスタオシレータから出力された前記パルスレーザ光を増幅する増幅装置とを備える装置のレーザ生成方法であって、前記光シャッタを通過したパルスレーザ光が前記増幅装置を通過する際に該増幅装置が放電するように、前記光シャッタの開閉と前記増幅装置の放電とを制御してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図1】図1は、本開示の実施の形態1による波長変換素子を有する固体レーザ装置およびそれを用いた2ステージレーザ装置の一例の概略構成を示す。
【図2】図2は、本開示の実施の形態2によるマスタオシレータの概略構成を示す。
【図3】図3は、本実施の形態2による光シャッタの一例を示す。
【図4】図4は、本実施の形態2におけるポッケルスセルに印加する高電圧パルスの一例を示す。
【図5】図5は、本実施の形態2におけるロングパルスマスタオシレータから出力されるパルスレーザ光の一例を示す。
【図6】図6は、本実施の形態2における光シャッタを通過したパルスレーザ光の一例を示す。
【図7】図7は、実施の形態2によるマスタオシレータの概略動作を示すフローチャートである。
【図8】図8は、本開示の実施の形態3によるレーザシステムの概略構成を示す。
【図9】図9は、実施の形態3によるレーザシステムの概略動作を示すタイミングチャートである。
【図10】図10は、実施の形態3によるレーザシステムの概略動作を示すフローチャートである。
【図11】図11は、図10のステップS201に示すパラメータ初期設定ルーチンの概略動作を示すフローチャートである。
【図12】図12は、図10のステップS203に対してコントローラが実行する動作を示すフローチャートである。
【図13】図13は、図10のステップS204に示す増幅装置制御ルーチンの概略動作を示すフローチャートである。
【図14】図14は、実施の形態1〜3にかかるTi:サファイアレーザの一例を示す。
【図15】図15は、実施の形態1〜3にかかる増幅器の一例を示す。
【図16】図16は、実施の形態1〜3にかかるファブリーペロー型の増幅器の概略構成を示す。
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示の一例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。なお、以下の説明では、下記目次の流れに沿って説明する。
【0012】
目次
1.概要
2.用語の説明
3.マスタオシレータと増幅装置とを備えたレーザシステム(実施の形態1)
3.1 構成
3.2 動作
4.光シャッタを光路中に配置したマスタオシレータ(実施の形態2)
4.1 構成
4.1.1 光シャッタ
4.2 動作
4.3 作用
5.光シャッタを含むマスタオシレータと増幅装置とを備えたレーザシステム(実施の形態3)
5.1 構成
5.2 動作
5.3 タイミングチャート
5.4 フローチャート
5.5 作用
6.補足説明
6.1 Ti:サファイアレーザ
6.2 増幅器(PA)
6.3 光共振器を含む増幅器(PO)
【0013】
1.概要
マスタオシレータ内に配置された光シャッタの動作タイミングと、レーザガスを含む放電励起式の増幅装置を動作(放電)させるタイミングと、を同期させてもよい。
【0014】
2.用語の説明
KBBF結晶とは、化学式KBeBOで表される非線形光学結晶であり、波長変換素子である。「バースト発振とは、所定の期間に、所定の繰返し周波数で、パルスレーザ光を出力することである。光路とは、レーザ光が伝搬する経路のことである。
【0015】
3.マスタオシレータと増幅装置とを備えたレーザシステム(実施の形態1)
3.1 構成
図1に本開示の実施の形態1による2ステージレーザ装置の一例の概略構成を示す。
2ステージレーザ装置(以下、レーザシステムという)1は、大別すると、マスタオシレータ2と、増幅装置3とを含む。マスタオシレータ2は、たとえば波長変換素子を有してもよい。増幅装置3は、たとえば放電励起式ArFエキシマ増幅器であってよい。前記マスタオシレータ2と前記増幅装置3との間には、低コヒーレンス化光学システム4が設置されてもよい。低コヒーレンス化光学システム4としては、光学パルスストレッチャーやランダム位相板等のシステムを使用してよい。
【0016】
次に、マスタオシレータ2について説明する。マスタオシレータ2は、ポンピングレーザ5と、Ti:サファイアレーザ6と、増幅器7と、ビームスプリッタ81と、高反射ミラー82と、LBO結晶9と、KBBF結晶10と、高反射ミラー11とを含んでもよい。
【0017】
ポンピングレーザ5は、たとえば半導体レーザ励起Nd:YAGレーザの第2高調波光を発振するレーザであってもよい。Ti:サファイアレーザ6は、Ti:サファイア結晶と光共振器を含んでもよい。増幅器7は、Ti:サファイア結晶を含む増幅器であってよい。
【0018】
次いで、増幅装置3について説明する。増幅装置3は、チャンバ20と、一対の放電電極(アノード21およびカソード22)と、出力結合ミラー14と、高反射ミラー15、16、および17とを含んでもよい。チャンバ20内には、レーザガスが封入されていてもよい。このレーザガスは、Ar、Ne、F、およびXeの混合ガスでもよい。アノード21およびカソード22は、チャンバ20内に設置されてもよい。アノード21およびカソード22は、図1の紙面に対して垂直方向に配列していてもよい。アノード21およびカソード22の間は、放電空間23であってよい。チャンバ20には、パルスレーザ光32を透過するウィンドウ18および19が取り付けてあってもよい。また、図示を省略した電源がチャンバ20の外に設置されていてもよい。
【0019】
前記出力結合ミラー14と高反射ミラー15、16、および17とは、リング光共振器を構成していてもよい。出力結合ミラー14は、一部の光を透過し、一部の光を反射する素子であってもよい。
【0020】
3.2 動作
マスタオシレータ2は、波長がおよそ193nmのパルスレーザ光31を出力してもよい。低コヒーレンス化光学システム4は、前記パルスレーザ光31のコヒーレンシーを低下させてもよい。増幅装置3は、コヒーレンシーの低下したパルスレーザ光32を増幅してパルスレーザ光33として出力してもよい。パルスレーザ光33は、例えば図示していない半導体露光機へ送られて、露光処理に使用されてもよい。
【0021】
ポンピングレーザ5からは、波長がおよそ532nmの励起光(ポンピング光ともいう)51が出力されてもよい。励起光51の一部は、ビームスプリッタ81を透過してもよい。励起光51の他の一部はビームスプリッタ81で反射してもよい。ビームスプリッタ81を透過した励起光51は、Ti:サファイアレーザ6を励起してもよい。励起されたレーザ6からは、波長がおよそ773.6nmのパルスレーザ光が出力されてもよい。ここで、Ti:サファイアレーザ6は、図示しない波長選択素子を備える光共振器を含んでもよい。このTi:サファイアレーザ6からは、波長選択素子によって狭帯域化されたスペクトル幅のパルスレーザ光が出力されてもよい。
【0022】
ポンピングレーザ5から出力された励起光51のうち、ビームスプリッタ81で反射した励起光51は、さらに高反射ミラー82で反射されてもよい。この反射した励起光51は、Ti:サファイアの増幅器7に入射し、これが備えるTi:サファイア結晶を励起してもよい。増幅器7はその励起エネルギーによってTi:サファイアレーザ6から出力されたパルスレーザ光を増幅してもよい。この結果、増幅器7からは、波長がおよそ773.6nmのパルスレーザ光が出力されてもよい。
【0023】
Ti:サファイアの増幅器7から出力されたパルスレーザ光は、波長変換素子であるLBO結晶9を透過することで、波長がおよそ386.8nm(前記773.6nmの1/2)のパルスレーザ光へ変換されてもよい。波長変換後のパルスレーザ光は、波長変換素子であるKBBF結晶10を透過することで、波長がおよそ193.4nm(前記386.8nmの1/2)のパルスレーザ光31へさらに変換されてもよい。
【0024】
KBBF結晶10を透過後のパルスレーザ光31は、反射ミラー11によって進行方向を変えられて、低コヒーレンス化光学システム4に入射してもよい。パルスレーザ光31のコヒーレンスは、低コヒーレンス化光学システム4を透過することによって低下してもよい。そのコヒーレンスが低下したパルスレーザ光32は増幅装置3に入射してもよい。
【0025】
チャンバ20内のアノード2とカソード22に電気的に接続された電源は、アノード21およびカソード22間に電位差を加えてもよい。これにより、増幅装置3の放電空間23にパルスレーザ光32が通過するタイミングで、アノード21およびカソード22間で放電が発生してもよい。
【0026】
低コヒーレンス化光学システム4を出射したパルスレーザ光32の一部は、出力結合ミラー14を透過して、高反射ミラー15を反射してもよい。このパルスレーザ光32は、ウィンドウ18を透過して、前記アノード21と前記カソード22との間の放電空間23へ進行してもよい。パルスレーザ光32が前記放電空間23内に存在するときに前記放電空間23に放電を生じさせる制御が行われることによって、そのパルスレーザ光32が増幅されてもよい。増幅されたパルスレーザ光32は、ウィンドウ19を介してチャンバ20から出射してもよい。出射したパルスレーザ光32は、高反射ミラー16および17を高反射して、再びウィンドウ19を介して、チャンバ20内の放電空間23へ進行してもよい。そして、このパルスレーザ光32は、今度はウィンドウ18を介してチャンバ20から出射してもよい。出射したパルスレーザ光32は、出力結合ミラー14に入射してもよい。このパルスレーザ光32の一部は、出力結合ミラー14を透過して、パルスレーザ光33として増幅装置3から出射してもよい。パルスレーザ光32の他の一部は、出力結合ミラー14で反射することで、フィードバック光として、再びリング光共振器中に戻されてもよい。
【0027】
本説明では、増幅装置3がリング光共振器を含む場合を例示したが、この例に限定されるものではない。たとえば、増幅装置3は、増幅器に光共振器が配置されたファブリーペロー型共振器を含んでもよい。
【0028】
4.光シャッタを光路中に配置したマスタオシレータ(実施の形態2)
つぎに、図1に示すマスタオシレータ2の他の形態を、本開示の実施の形態2として、図面を用いて詳細に説明する。
【0029】
4.1 構成
図2は、実施の形態2によるマスタオシレータ2Aの概略構成を示す。図2に示すように、マスタオシレータ2Aは、固体レーザ装置200と、コントローラ210とを含んでもよい。また、マスタオシレータ2Aは、コントローラ210から固体レーザ装置200へ入力する各種信号を、タイミング調整のために遅延させる1つ以上の遅延回路を含んでもよい。
【0030】
固体レーザ装置200は、上述したように、ポンピングレーザ5、Ti:サファイアレーザ6(シードレーザ)、増幅器7、LBO結晶9およびKBBF結晶10を含む波長変換装置8、ビームスプリッタ81、および高反射ミラー82を備えてもよい。ポンピングレーザ5とTi:サファイアレーザ6とビームスプリッタ81とは、ロングパルスマスタオシレータ60を構成してもよい。ロングパルスマスタオシレータ60は、たとえばパルス幅(時間長)が立ち上がりタイミングのジッタよりも十分に大きい(すなわち、ラウンドトリップ時間の長い)パルスレーザ光を生成してもよい。このようなロングパルスマスタオシレータ60は、共振器長を長くする、OCの反射率を高くする、レーザ媒質の利得を下げる等によって実現することができる。
【0031】
固体レーザ装置200は、さらに、少なくとも1つの光シャッタを備えてもよい。光シャッタ41は、Ti:サファイアレーザ6と増幅器7との間の光路上に配置してもよい。光シャッタ42は、増幅器7と波長変換装置8との間の光路上に配置してもよい。光シャッタ43は、LBO結晶9とKBBF結晶10との間の光路上に配置してもよい。光シャッタ44は、マスタオシレータ2Aの出力端に配置してもよい。光シャッタ41〜44は、それぞれ同様の構成および動作としてよい。光シャッタ41〜44の構成または動作は、それぞれ異なるものとしてもよい。
【0032】
コントローラ210は、ポンピングレーザ5が励起光51を出力するタイミングや、光シャッタ41〜44の開閉タイミングを制御する同期制御装置であってもよい。そのようなコントローラ210は、内部トリガ発振器211を含んでもよい。内部トリガ発振器211は、たとえば所定繰返し周波数で内部トリガを発振してもよい。コントローラ210は、この内部トリガをポンピングレーザ発振信号S11としてポンピングレーザ5へ送信してもよい。
【0033】
また、コントローラ210は、たとえば上位コントローラであるレーザコントローラなどの外部装置220から、略所定繰返し周波数でトリガ信号S1を受信してもよい。コントローラ210は、外部装置220から受信したトリガ信号S1に基づいて、ポンピングレーザ発振信号S11をポンピングレーザ5に送信してもよい。これにより、ポンピングレーザ5が、略所定繰返し周波数で励起光51を継続的に出力し得る。コントローラ210は、各光シャッタ41〜44への光シャッタ動作信号S41〜S44をそれぞれ送信してもよい。
【0034】
遅延回路には、発振遅延回路311と、第1〜第4シャッタ遅延回路341〜344とが含まれていてもよい。発振遅延回路311は、ポンピングレーザ5を発振させるポンピングレーザ発振信号S11を、所定遅延時間(発振遅延時間Ddp)分、遅延させてもよい。第1〜第4シャッタ遅延回路341〜344は、各光シャッタ41〜44への光シャッタ動作信号S41〜S44それぞれを、光シャッタ41〜44毎に計算された所定遅延時間(シャッタ遅延時間Dop)分、遅延させてもよい。発振遅延回路311および第1〜第4シャッタ遅延回路341〜344は、それぞれの遅延時間を外部から設定できるとよい。
【0035】
4.1.1 光シャッタ
ここで、図3に、実施の形態2による光シャッタの一例を示す。なお、図3に示す光シャッタ40は、光シャッタ41〜44のいずれに対しても適用可能である。図3では、光シャッタ41を例に挙げている。
【0036】
図3に示すように、光シャッタ40は、たとえば2つの偏光子141および143とポッケルスセル142と高圧電源144とを含んでもよい。偏光子141は、たとえば入射した光のうち、Y方向の偏光成分を透過させ、X方向の偏光成分を遮断してもよい。一方、偏光子143は、たとえば入射した光のうち、X方向の偏光成分を透過させ、Y方向の偏光成分を遮断してもよい。このように、偏光子141と偏光子143とでは、透過させる光の偏光成分が異なっていてもよい。たとえば、本例のように、偏光子141と偏光子143とでは、透過する光の偏光方向が略90°異なっていてもよい。
【0037】
光シャッタ動作信号S41は、光シャッタ40の高圧電源144に入力されてもよい。高圧電源144は、光シャッタ動作信号S41が入力されるとポッケルスセル142に、電圧S61を印加してもよい。電圧S61は、光シャッタ動作信号S41と実質的に同じパルス幅(時間長)を有してもよい。ポッケルスセル142は、たとえば電圧S61が印加されている期間、入射した光の偏光方向を変更し得る。本例では、入射光の偏光方向を略90°変更する電圧値の電圧S61が、高圧電源144からポッケルスセル142に印加されてもよい。
【0038】
ロングパルスマスタオシレータ60から光シャッタ40に入射したパルスレーザ光L0は、まず、偏光子141に入射してもよい。偏光子141は、入射したパルスレーザ光L0のうち、Y方向の直線偏光成分(以下、Y直線偏光パルスレーザ光という)を透過させる。偏光子141を透過したY直線偏光パルスレーザ光は、ポッケルスセル142に入射する。
【0039】
ポッケルスセル142に電圧S61が印加されていない場合、ポッケルスセル142に入射したY直線偏光パルスレーザ光は、Y方向の直線偏光のまま、ポッケルスセル142から出力され、偏光子143に入射する。このため、ポッケルスセル142を透過したY直線偏光パルスレーザ光は、偏光子143によって反射および吸収される。この結果、パルスレーザ光L0が、光シャッタ40によって遮断される。
【0040】
一方、ポッケルスセル142に電圧S61が印加されている場合、ポッケルスセル142に入射したY直線偏光パルスレーザ光の偏光方向は、略90°変更され得る。この結果、ポッケルスセル142からは、X方向の直線偏光のパルスレーザ光(以下、X直線偏光パルスレーザ光という)が出力され得る。このX直線偏光パルスレーザ光は、偏光子143を透過する。この結果、パルスレーザ光L1が、光シャッタ40から出力される。
【0041】
また、たとえばパルスレーザ光L1として必要なパルス幅(時間長)を20ns程度とすると、図4に示すように、たとえばポッケルスセル142には、パルス幅(時間長)が20ns程度の電圧S61が印加されるとよい。一方で、ロングパルスマスタオシレータ60からは、上述したように、たとえばパルス幅(時間長)が立ち上がりタイミングのジッタよりも十分に大きいパルスレーザ光が出力されてもよい。たとえば、立ち上がりタイミングのジッタが±10ns程度であって、パルスレーザ光L1として必要なパルス幅(時間長)が20ns程度であるとする。この場合、図5に示すように、ロングパルスマスタオシレータ60は、たとえば70ns程度のパルス幅(時間長)のパルスレーザ光L0を出力するとよい。これにより、図6に示すように、光シャッタ40からは、20ns程度のパルス幅を持つパルスレーザ光L1が、パルスレーザ光L0の立ち上がりタイミングのジッタに影響されないタイミングで出力されてもよい。なお、一般的なポッケルスセルは、数nsの応答性を有しているため、高速スイッチングが要求されるレーザシステムの光シャッタに適している。
【0042】
なお、本例は、偏光子141を透過したパルスレーザ光L0と偏光子143を透過したパルスレーザ光L1との偏光方向を略90°変えた構成である。このため、ポッケルスセル142に電圧S61を印加した期間、光シャッタ40が開状態となる。ただし、この例に限定されるものではない。たとえば偏光子141を透過したパルスレーザ光L0と偏光子143を透過したパルスレーザ光L1との偏光方向を同じ方向としてもよい。この場合、ポッケルスセル142に電圧を印加しない期間、光シャッタ40が開状態となる。なお、光シャッタを開状態にするとは、光シャッタがパルスレーザ光を通過可能な状態にすることを意味し、光シャッタを閉状態にするとは、光シャッタがパルスレーザ光を遮断する状態にすることを意味する。
【0043】
4.2 動作
つづいて、実施の形態2によるマスタオシレータ2Aの概略動作を、図7に示すフローチャートを用いて説明する。なお、本説明では、コントローラ210の動作に着目する。
【0044】
図7に示すように、コントローラ210は、たとえばレーザコントローラなどの外部装置220からトリガ信号S1を受信するまで待機してもよい(ステップS101;NO)。なお、コントローラ210は、外部装置220らトリガ信号S1が入力されない期間、内部トリガ発振器211が発振した内部トリガをポンピングレーザ発振信号S11としてポンピングレーザ5へ送信してもよい。
【0045】
トリガ信号S1を受信すると(ステップS101;YES)、コントローラ210は、ポンピングレーザ発振信号S11をポンピングレーザ5へ送信してもよい(ステップS102)。これとともに、コントローラ210は、光シャッタ動作信号S41〜S44の各光シャッタ41〜44への送信を開始してもよい(ステップS103)。ポンピングレーザ発振信号S11は、発振遅延回路311を経由してポンピングレーザ5に入力してもよい。各光シャッタ動作信号S41〜S44は、第1〜第4シャッタ遅延回路341〜344を経由して、各光シャッタ41〜44に入力してもよい。発振遅延回路311には、ポンピングレーザ発振信号S11を発振遅延時間Ddp分遅延させるように設定されていてもよい。第1〜第4シャッタ遅延回路341〜344には、それぞれをパルスレーザ光が通過するタイミングに合わせて各光シャッタ41〜44が開閉動作するように、それぞれの光シャッタ41〜44に応じたシャッタ遅延時間Dopが設定されていてもよい。これにより、ポンピングレーザ5から励起光51が出力されるタイミングと、各光シャッタ41〜44が開閉動作するタイミングとが調節されてもよい。なお、ポンピングレーザ5から励起光51が出力されるタイミングは、Ti:サファイアレーザ6からパルスレーザ光L0が出力されるタイミングと直接的に関係してもよい。
【0046】
その後、コントローラ210は、各光シャッタ動作信号S41〜S44を送信開始してからの経過時間を、たとえば不図示のタイマなどを用いて計測してもよい。コントローラ210は、この計測時間が予め設定しておいた光シャッタ開時間ΔTop以上となるまで待機してもよい(ステップS104;NO)。なお、光シャッタ開時間ΔTopとは、光シャッタ41〜44を開状態とする時間である。
【0047】
光シャッタ開時間ΔTopが経過すると(ステップS104;YES)、コントローラ210は、光シャッタ動作信号S41〜S44の送信を終了してもよい(ステップS105)。これにより、各光シャッタ41〜44が閉状態となってもよい。なお、上述のように、ロングパルスマスタオシレータ60を用いることで、光シャッタ41〜44の開閉動作を用いて、パルスレーザ光L1の波形を調節することが可能であってもよい。
【0048】
その後、コントローラ210は、レーザ発振を終了するか否かを判断してもよい(ステップS106)。レーザ発振を終了する場合(ステップS106;YES)、コントローラ210は、本動作を終了してもよい。なお、コントローラ210は、本動作を終了後、外部装置220から所定繰返し周波数でトリガ信号S1が入力されない場合、内部トリガ発振器211が発振した内部トリガを所定繰返し周波数でポンピングレーザ発振信号S11としてポンピングレーザ5へ送信してもよい。一方、本動作を終了しない場合(ステップS106;NO)、コントローラ210は、ステップS101へリターンして、以降の動作を実行してもよい。
【0049】
4.3 作用
以上のような構成および動作とすることで、光シャッタ41〜44から出力されるパルスレーザ光L1が、それぞれの光シャッタ41〜44に与えた光シャッタ動作信号S41〜S44によってパルスレーザ光L0またはL1から切り出されたパルス形状を持ってもよい。そのように、パルスレーザ光L1は、光シャッタ41〜44に与える光シャッタ動作信号S41〜S44で制御されてもよい。そのため、パルスレーザ光L1のジッタは、ポッケルスセル142に電圧S61を印加する高圧電源144の回路ジッタとなり得る。そのような回路ジッタは、ロングパルスマスタオシレータ60から出力されるパルスレーザ光L0のジッタに対して十分短いと考えられる。そのため、光シャッタ41〜44を通過したパルスレーザ光L1のジッタは無視できる程度に小さいと考えられる。
【0050】
また、マスタオシレータ2Aは、光シャッタ41〜44によってパルス幅を制御できる。そのため、パルス幅を変化させることも容易にできる。
【0051】
5.光シャッタを含むマスタオシレータと増幅装置とを備えたレーザシステム(実施の形態3)
つぎに、実施の形態2によるマスタオシレータ2Aと増幅装置3とを組み合わせたレーザシステム1Aを、実施の形態3として詳細に説明する。
【0052】
5.1 構成
図8に、実施の形態3によるレーザシステム1Aの概略構成を示す。図8に示すように、レーザシステム1Aは、実施の形態2によるマスタオシレータ2Aと、高反射ミラー11と、低コヒーレンス化光学システム4と、レーザシステム1Aの全体動作を制御するレーザコントローラ220Aと、増幅装置3とを備えてもよい。また、レーザシステム1Aの増幅装置3は、チャンバ20内のアノード21とカソード22とに電気的に接続されたレーザ電源24を含んでもよい。さらに、増幅装置3は、レーザコントローラ220Aから出力されたスイッチ信号S5を、所定遅延時間(スイッチ遅延時間Dpp)分遅延させる、スイッチ遅延回路350を含んでもよい。
【0053】
5.2 動作
つづいて、レーザシステム1Aの概略動作を説明する。レーザコントローラ220Aは、上述した外部装置220の一例である。レーザコントローラ220Aは、露光装置600における露光コントローラ601からパルスレーザ光33のバースト出力が要求されると、マスタオシレータ2Aのコントローラ210にトリガ信号S1およびバースト要求信号S2を入力する。コントローラ210は、これに応じて上述の動作を実行することで、パルスレーザ光31のバースト出力を生成する。
【0054】
また、レーザコントローラ220Aは、増幅装置3のレーザ電源24に、所定繰返し周波数の放電信号を出力する。レーザコントローラ220Aは、継続的に放電信号を出力してもよいし、露光コントローラ601からバースト出力が要求されている期間のみ放電信号を出力してもよい。放電信号によってレーザ電源24のスイッチ25がオンされると、レーザ電源24は、アノード21およびカソード22間に放電用の電位差を与える。これにより、アノード21およびカソード22の放電空間23で放電が生じる。
【0055】
さらに、レーザコントローラ220Aは、コントローラ210へトリガ信号S1を出力すると、スイッチ信号S5をレーザ電源24のスイッチ25へ出力する。このスイッチ信号S5は、スイッチ遅延回路350を介してスイッチ25に入力される。これにより、マスタオシレータ2Aから低コヒーレンス化光学システム4を経由して増幅装置3に入射したパルスレーザ光32がチャンバ20内を通過するタイミングに合わせて、放電空間23で放電が発生する。スイッチ遅延回路350によるスイッチ遅延時間Dppは、たとえば経験、実験またはシミュレーションなどで予め特定しておくとよい。
【0056】
5.3 タイミングチャート
つぎに、レーザシステム1Aの動作を、図9に示すタイミングチャートを用いて説明する。ただし、ここでは、説明の簡略化のため、光シャッタ42〜44については省略する。
【0057】
図9(a)に示すように、レーザコントローラ220Aは、たとえばタイミングt1で、コントローラ210にトリガ信号S1を出力してもよい。すると、コントローラ210は、ポンピングレーザ発振信号S11をポンピングレーザ5へ出力してもよい。このポンピングレーザ発振信号S11は、発振遅延回路311を介することで、図9(b)に示すように、トリガ信号S1に対して発振遅延時間Ddp分遅れて、ポンピングレーザ5に入力してもよい。この結果、ロングパルスマスタオシレータ60からは、パルスレーザ光(ここでは、説明の都合上、これをシードパルスレーザ光という)L0が出力されてもよい。このシードパルスレーザ光L0は、たとえば図9(c)に示すタイミングで、光シャッタ41に入射してもよい。
【0058】
また、コントローラ210は、トリガ信号S1を出力すると(図9(a)参照)、光シャッタ開時間ΔTopのパルス幅を持つ光シャッタ動作信号S41を、光シャッタ41へ出力してもよい。この光シャッタ動作信号S41は、図9(d)に示すように、第1シャッタ遅延回路341を介することで、シードパルスレーザ光L0が光シャッタ41を通過する期間に合わせるように、トリガ信号S1に対してシャッタ遅延時間Dop分遅れて、光シャッタ41に入力してもよい。この結果、図9(e)に示すように、光シャッタ41からは、光シャッタ開時間ΔTopに応じてシードパルスレーザ光L0から切り出されたパルスレーザ光(ここでは、説明の都合上、これを通過パルスレーザ光という)L1が出力してもよい。この通過パルスレーザ光L1は、図9(f)に示すように、増幅器7を介することで増幅されてもよい(ここでは、説明の都合上、これを増幅パルスレーザ光L1aという)。その後、増幅パルスレーザ光L1aは、波長変換装置8を介することで高調波のパルスレーザ光に変換された後、マスタオシレータ2Aから出力されてもよい(ここでは、説明の都合上、これをマスタパルスレーザ光31という)。
【0059】
一方、コントローラ210は、トリガ信号S1を出力すると(図9(a)参照)、スイッチオン時間ΔTppのパルス幅を持つスイッチ信号S5を、増幅装置3のレーザ電源24におけるスイッチ25へ出力してもよい。このスイッチ信号S5は、図9(h)に示すように、スイッチ遅延回路350を介することで、トリガ信号S1に対してスイッチ遅延時間Dpp分遅れて、スイッチ25に入力してもよい。すると、図9(i)に示すように、増幅装置3では、スイッチ信号S5の入射タイミングTppよりも遅延時間Ddd遅れて、チャンバ20内の放電空間23で放電が発生してもよい(放電波形W1)。この放電波形W1で示される放電期間が、低コヒーレンス化光学システム4を経由したマスタパルスレーザ光32が放電空間23を通過する期間と合うように、シャッタ遅延時間Dopおよびスイッチ遅延時間Dppの少なくとも一方が設定されるとよい。この結果、図9(j)に示すように、増幅装置3から増幅されたパルスレーザ光(ここでは、説明の都合上、これを出力パルスレーザ光という)33が出力されてもよい。
【0060】
5.4 フローチャート
つづいて、レーザシステム1Aの動作を、フローチャートを用いて説明する。図10は、レーザシステム1Aの概略動作を示すフローチャートである。図11は、図10のステップS201に示すパラメータ初期設定ルーチンの概略動作を示すフローチャートである。図12は、図10のステップS203によってコントローラが開始する動作を示すフローチャートである。図13は、図10のステップS204によってレーザコントローラが開始する動作を示すフローチャートである。なお、図10、図11および図13では、レーザコントローラ220Aの動作を示す。図12では、コントローラ210の動作を示す。
【0061】
図10に示すように、レーザコントローラ220Aは、起動後、各種パラメータを初期設定するパラメータ初期設定ルーチンを実行してもよい(ステップS201)。なお、設定する初期パラメータは、予め登録されていてもよいし、露光コントローラ601等の外部から入力または要求されてもよい。
【0062】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、露光コントローラ601等からパルスレーザ光33のバーストを要求するバースト要求信号を受信するまで待機してもよい(ステップS202;NO)。バースト要求信号を受信すると(ステップS202;YES)、レーザコントローラ220Aは、マスタオシレータ2Aにパルスレーザ光31のバーストを出力させる制御を実行してもよい(ステップS203)。これとともに、レーザコントローラ220Aは、増幅装置3に放電させる制御を実行してもよい(ステップS204)。
【0063】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、トリガ信号S1を、所定繰返し周波数となるように、コントローラ210へ出力してもよい(ステップS205)。その後、レーザコントローラ220Aは、パルスレーザ光33の出力を停止するか否かを判定してもよい(ステップS206)。出力を停止する場合(ステップS206;YES)、レーザコントローラ220Aは、ステップS203で開始したマスタオシレータ2Aの制御を終了してもよい(ステップS207)。また、レーザコントローラ220Aは、ステップS104で開始した増幅装置3の制御を終了し(ステップS208)、その後、本動作を終了してもよい。一方、出力を停止しない場合(ステップS206;NO)、レーザコントローラ220Aは、ステップS203へリターンし、以降の動作を実行してもよい。
【0064】
つぎに、図10のステップS201に示すパラメータ初期設定ルーチンの概略動作を説明する。図11に示すように、パラメータ初期設定ルーチンでは、レーザコントローラ220Aは、発振遅延回路311に設定する発振遅延時間Ddpを取得してもよい(ステップS211)。取得される発振遅延時間Ddpは、予め不図示のメモリ等に保存しておいた初期値であってもよいし、新たにレーザコントローラ220Aによって算出された値であってもよい。つづいて、レーザコントローラ220Aは、取得した発振遅延時間Ddpを、コントローラ210を介して発振遅延回路311に設定してもよい(ステップS212)。これにより、発振遅延回路311を通過するポンピングレーザ発振信号S11のタイミングが、発振遅延時間Ddp分遅延されてもよい。
【0065】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、各光シャッタ41〜44に設定するシャッタ遅延時間Dopを取得してもよい(ステップS213)。取得されるシャッタ遅延時間Dopは、予め不図示のメモリ等に保存しておいた初期値であってもよいし、新たにレーザコントローラ220Aによって算出された値であってもよい。つづいて、レーザコントローラ220Aは、取得した光シャッタ41〜44ごとのシャッタ遅延時間Dopを、コントローラ210を介して第1〜第4シャッタ遅延回路341〜344にそれぞれ設定してもよい(ステップS214)。これにより、第1〜第4シャッタ遅延回路41〜44を通過する光シャッタ動作信号S41〜S44それぞれのタイミングが、シャッタ遅延時間Dop分遅延されてもよい。
【0066】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、各光シャッタ41〜44に対する光シャッタ開時間ΔTopを取得してもよい(ステップS215)。取得される光シャッタ開時間ΔTopは、予め不図示のメモリ等に保存しておいた初期値であってもよいし、新たにレーザコントローラ220Aによって算出された値であってもよい。
【0067】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、スイッチ遅延回路350に設定するスイッチ遅延時間Dppを取得してもよい(ステップS216)。取得されるスイッチ遅延時間Dppは、予め不図示のメモリ等に保存しておいた初期値であってもよいし、新たにレーザコントローラ220Aによって算出された値であってもよい。つづいて、レーザコントローラ220Aは、取得したスイッチ遅延時間Dppをスイッチ遅延回路350に設定してもよい(ステップS217)。これにより、スイッチ遅延回路350を通過するスイッチ信号S5のタイミングが、スイッチ遅延時間Dpp分遅延されてもよい。
【0068】
以上のように、各種パラメータを初期設定すると、レーザコントローラ220Aは、図10に示す動作へリターンしてもよい。
【0069】
つづいて、図10のステップS203に対してコントローラ210が実行する動作を説明する。図12に示すように、レーザコントローラ220Aの制御の下、コントローラ210は、たとえばレーザコントローラ220Aからトリガ信号S1を受信するまで待機してもよい(ステップS221;NO)。なお、コントローラ210は、レーザコントローラ220Aからトリガ信号S1が入力されない期間、内部トリガ発振器211が発振した内部トリガを所定繰返し周波数でポンピングレーザ発振信号S11としてポンピングレーザ5へ送信してもよい。
【0070】
トリガ信号S1を受信すると(ステップS221;YES)、コントローラ210は、ポンピングレーザ発振信号S11をポンピングレーザ5へ送信してもよい(ステップS222)。これとともに、コントローラ210は、光シャッタ動作信号S41〜S44の各光シャッタ41〜44への送信を開始してもよい(ステップS223)。ポンピングレーザ発振信号S11は、発振遅延回路311を経由してポンピングレーザ5に入力してもよい。各光シャッタ動作信号S41〜S44は、第1〜第4シャッタ遅延回路341〜344を経由して、各光シャッタ41〜44に入力してもよい。発振遅延回路311は、ポンピングレーザ発振信号S11を発振遅延時間Ddp分遅延させるように設定されていてもよい。第1〜第4シャッタ遅延回路341〜344には、それぞれをパルスレーザ光が通過するタイミングに合わせて各光シャッタ41〜44が開閉動作するように、それぞれの光シャッタ41〜44に応じたシャッタ遅延時間Dopが設定されていてもよい。これにより、ポンピングレーザ5から励起光51が出力されるタイミングと、各光シャッタ41〜44が開閉動作するタイミングとが調節されてもよい。なお、ポンピングレーザ5から励起光51が出力されるタイミングは、Ti:サファイアレーザ6からパルスレーザ光L0が出力されるタイミングと直接的に関係してもよい。
【0071】
その後、コントローラ210は、各光シャッタ動作信号S41〜S44を送信開始してからの経過時間を、たとえば不図示のタイマなどを用いて計測してもよい。コントローラ210は、この計測時間が予め設定しておいた光シャッタ開時間ΔTop以上となるまで待機してもよい(ステップS224;NO)。
【0072】
光シャッタ開時間ΔTopが経過すると(ステップS224;YES)、コントローラ210は、光シャッタ動作信号S41〜S44の送信を終了してもよい(ステップS225)。これにより、各光シャッタ41〜44が閉状態となってもよい。なお、上述のように、ロングパルスマスタオシレータ60を用いることで、光シャッタ41〜44の開閉動作を用いて、パルスレーザ光L1の波形を調節することが可能であってもよい。
【0073】
その後、コントローラ210は、本動作を終了するか否かを判断してもよい(ステップS226)。本動作を終了する場合(ステップS226;YES)、コントローラ210は、本動作を終了してもよい。一方、本動作を終了しない場合(ステップS106;NO)、コントローラ210は、ステップS101へリターンして、以降の動作を実行してもよい。
【0074】
図10のステップS204によってレーザコントローラ220Aが開始する動作を説明する。図13に示すように、レーザコントローラ220Aは、所定繰返し周波数でトリガ信号S1をコントローラ210へ出力するまで待機してもよい(ステップS231;NO)。トリガ信号S1を出力すると(ステップS231;YES)、レーザコントローラ220Aは、スイッチ信号S5のスイッチ25への送信を開始してもよい(ステップS232)。スイッチ信号S5は、スイッチ遅延回路350を経由して、スイッチ25に入力してもよい。スイッチ遅延回路350には、低コヒーレンス化光学システム4を経由したパルスレーザ光32が放電空間23を通過するタイミングに合わせて放電空間23で放電が発生するように、スイッチ遅延時間Dppが設定されていてもよい。
【0075】
その後、レーザコントローラ220Aは、スイッチ信号S5を送信開始してからの経過時間を、たとえば不図示のタイマなどを用いて計測してもよい。レーザコントローラ220Aは、この計測時間が予め設定しておいたスイッチオン時間ΔTpp以上となるまで待機してもよい(ステップS233;NO)。
【0076】
スイッチオン時間ΔTppが経過すると(ステップS233;YES)、レーザコントローラ220Aは、スイッチ信号S5の送信を終了してもよい(ステップS234)。これにより、放電空間23で放電が発生する期間が調整されてもよい。その後、レーザコントローラ220Aは、図10に示す動作へリターンしてもよい。
【0077】
5.5 作用
実施の形態3では、マスタオシレータ2A内に配置された光シャッタ41〜44の動作タイミングと、レーザガスを含む増幅装置3を動作(放電)させるタイミングとをポンピングレーザ5やTi:サファイアレーザ6の時間ジッタに影響されることなく、同期させ得る。これにより、安定したパルスレーザ光33を生成できる。
【0078】
6.補足説明
つづいて、上述した各実施の形態における各部の補足説明を、以下に記す。
【0079】
6.1 Ti:サファイアレーザ
図14は、上述のTi:サファイアレーザ6の一例を示す。図14に示すように、Ti:サファイアレーザ6は、いわゆるリットマン型のレーザであってよい。このTi:サファイアレーザ6は、高反射ミラー61と、出力結合ミラー65と、Ti:サファイア結晶62と、グレーティング63と、高反射ミラー64と、を備える。高反射ミラー61および出力結合ミラー65は、光共振器を形成する。Ti:サファイア結晶62およびグレーティング63は、この光共振器内の光路上に配置される。高反射ミラー64は、グレーティング63で回折されたレーザ光を反射してグレーティング63に戻す。高反射ミラー61および64は、高反射ミラー61および出力結合ミラー65とは別の共振器を形成する。また、出力結合ミラー65は、パルスレーザ光L0を出力する光出力端としても機能する。
【0080】
高反射ミラー61は、ポンピングレーザ5からの励起光51を透過し、Ti:サファイア結晶62からのパルスレーザ光を反射する。高反射ミラー61を介して入力された励起51は、Ti:サファイア結晶62に入射する。Ti:サファイア結晶62の光入出力端面は、ブリュースタカットされている。これにより、この端面でのレーザ光の反射が抑えられる。励起光51が入射したTi:サファイア結晶62は、共振器内を往復する励起光51からエネルギーを得て発振することで、パルスレーザ光L0を出射する。Ti:サファイア結晶62から出射されたパルスレーザ光L0は、グレーティング63によって回折される。ここで、出力結合ミラー65は、グレーティング63に対してたとえば0次回折光の出射方向に配置される。また、高反射ミラー64は、グレーティング63に対して±m次回折光の出射方向に配置される。この構成では、グレーティング63に対する高反射ミラー64の角度を調節することで、Ti:サファイアレーザ6が出力するパルスレーザ光L0の波長を選択することができる。この結果、Ti:サファイアレーザ6が出力するパルスレーザ光L0のスペクトル線幅を、露光時の色収差が無視できる程度のスペクトル線幅に制御することが可能となる。
【0081】
6.2 増幅器(PA)
図15は、上述の増幅器7の一例を示す。なお、本例では、光共振器を含まないマルチパス増幅方式のパワー増幅器を例に挙げる。図15に示すように、増幅器7は、複数の高反射ミラー72〜78と、Ti:サファイア結晶71と、を備える。この複数の高反射ミラー72〜78は、Ti:サファイアレーザ6から光シャッタ41を介して入力したパルスレーザ光L1がTi:サファイア結晶71を複数回(本例では4回)通過するマルチパスを形成する。Ti:サファイア結晶71には、高反射ミラー72を介して、ポンピングレーザ5からの励起光51も入射する。Ti:サファイア結晶71の光入出力端面は、ブリュースタカットされている。Ti:サファイア結晶71は、マルチパスを進行するパルスレーザ光L1に基づいて、励起光51からエネルギーを得つつ発振する。これにより、複数回通過する際に、パルスレーザ光L1がマルチパス増幅される。この結果、増幅器7から増幅されたパルスレーザ光L1aが出射する。なお、高反射ミラー72は、励起光51を透過し、Ti:サファイア結晶71からのレーザ光を反射する。
【0082】
6.3 光共振器を含む増幅器(PO)
また、増幅器7は、内部に光共振器を備えたパワー発振器に置き換えることも可能である。図16は、ファブリーペロー型の増幅器7Aの概略構成を示す。図16に示すように、増幅器7Aは、高反射ミラー172と、出力結合ミラー173と、Ti:サファイア結晶174と、高反射ミラー171と、を備える。高反射ミラー172および出力結合ミラー173は、光共振器を形成する。Ti:サファイア結晶174は、この光共振器内の光路上に配置される。高反射ミラー171は、Ti:サファイアレーザ6から光シャッタ41を介して入射したパルスレーザ光L1およびポンピングレーザ5から入射した励起光51を光共振器内に導く。
【0083】
高反射ミラー171は、Ti:サファイアレーザ6からのパルスレーザ光L1を光共振器側へ反射するとともに、ポンピングレーザ5からの励起光51を光共振器側へ透過する。また、光共振器を形成する一方の高反射ミラー172は、パルスレーザ光L1および励起光51を透過し、Ti:サファイア結晶174からのレーザ光を反射する。Ti:サファイア結晶174の光入出力端面は、ブリュースタカットされている。これにより、この端面でのレーザ光の反射が抑えられる。Ti:サファイア結晶174は、光共振器内を往復するパルスレーザ光L1に基づいて、励起光51からエネルギーを得つつ発振することで、増幅されたパルスレーザ光L1aを出射する。増幅後のパルスレーザ光L1aは、出力結合ミラー173を介して出力される。
【0084】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0085】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、及び添付の特許請求の範囲に記載される不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【0086】
上述の実施形態においては、増幅器7が1つである例を示したが、増幅器7を複数使用してもよい。また、Ti:サファイアレーザ6と増幅器7は共通のポンピングレーザ5によってポンピングしているが、別々のポンピングレーザを使用してもよい。また、ポンピングレーザ5としてNd:YLFレーザあるいはNd:YVOレーザの第二高調波光を発振するレーザを使用してもよい。また、Ti:サファイアレーザ6の代わりにエルビウムドープト光ファイバレーザの第二高調波光を発生するレーザを使用してもよい。このレーザは、半導体レーザによってポンピングしてもよい。また、波長変換装置8は、本開示の構成に限定されるものではなく、波長変換装置8に入射される光を増幅装置3の増幅波長帯域の波長、例えば略193nmの波長の光に変換するものであればよい。例えば、波長変換装置8に含まれる波長変換素子としては、LBO結晶9の代わりにCLBO結晶を使用してもよい。
【符号の説明】
【0087】
1、1A 2ステージレーザ装置(レーザシステム)
2、2A マスタオシレータ
3 増幅装置
4 低コヒーレンス化光学システム
5 ポンピングレーザ
6 Ti:サファイアレーザ
60 ロングパルスマスタオシレータ
7 増幅器
8 波長変換装置
81 ビームスプリッタ
11、82 高反射ミラー
9 LBO結晶
10 KBBF結晶
14 出力結合ミラー
15〜17 高反射ミラー
18、19 ウィンドウ
20 チャンバ
21 アノード
22 カソード
23 放電空間
24 レーザ電源
25 スイッチ
31 パルスレーザ光(出力パルスレーザ光)
32〜33 パルスレーザ光
40、41〜44 光シャッタ
141、143 偏光子
142 ポッケルスセル
144 高圧電源
200 固体レーザ装置
210 コントローラ(同期制御装置)
211 内部トリガ発振器
220 外部装置
220A レーザコントローラ
311 発振遅延回路
341〜344 第1〜第4シャッタ遅延回路
350 スイッチ遅延回路
600 露光装置
601 露光コントローラ
L0 シードパルスレーザ光
L1 通過パルスレーザ光
L1a 増幅パルスレーザ光
S1 トリガ信号
S11 ポンピングレーザ発振信号
S41〜S44 光シャッタ動作信号
S5 スイッチ信号
S61 電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスレーザ光を出力するマスタオシレータと、該マスタオシレータから出力された前記パルスレーザ光を増幅する増幅装置と、前記マスタオシレータと前記増幅装置とを制御するコントローラとを備えるレーザシステムであって、
前記マスタオシレータは、
励起光を出力するポンピングレーザと、
前記励起光によってレーザ発振するシードレーザと、
前記シードレーザから出力されたパルスレーザ光を前記励起光によって増幅する増幅器と、
前記シードレーザと前記増幅器との間の光路上に設置された少なくとも1つの光シャッタと、
を備え、
前記コントローラは、前記光シャッタを通過したパルスレーザ光が前記増幅装置を通過する際に該増幅装置が放電するように、前記光シャッタの開閉と前記増幅装置の放電とを制御する、
レーザシステム。
【請求項2】
前記シードレーザは、前記コントローラが前記光シャッタを開状態とする期間よりも長いパルス幅の前記パルスレーザ光を出力する、請求項1記載のレーザシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記光シャッタを通過したパルスレーザ光が前記増幅装置を通過する期間よりも長い期間、該増幅装置が放電するように、前記光シャッタの開閉と前記増幅装置の放電とを制御する、請求項1記載のレーザシステム。
【請求項4】
前記光シャッタは、
電気光学素子と、
前記電気光学素子の光入力端側に配置される第1の光フィルタと、
前記電気光学素子の光出力端側に配置される第2の光フィルタと、
前記電気光学素子に接続され、前記電気光学素子に電圧を印加する電源と、
を備える、請求項1記載のレーザシステム。
【請求項5】
前記電気光学素子は、ポッケルスセルである、請求項4記載のレーザシステム。
【請求項6】
前記第1および第2の光フィルタは、それぞれ少なくとも1つの偏光子を含む、請求項4記載のレーザシステム。
【請求項7】
励起光を出力するポンピングレーザ、前記励起光によってレーザ発振するシードレーザ、前記シードレーザから出力されたパルスレーザ光を前記励起光によって増幅する増幅器、および前記シードレーザと前記増幅器との間の光路上に設置された少なくとも1つの光シャッタを備えるマスタオシレータと、該マスタオシレータから出力された前記パルスレーザ光を増幅する増幅装置とを備える装置のレーザ生成方法であって、
前記光シャッタを通過したパルスレーザ光が前記増幅装置を通過する際に該増幅装置が放電するように、前記光シャッタの開閉と前記増幅装置の放電とを制御する、
レーザ生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−204818(P2012−204818A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71166(P2011−71166)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「省エネルギー革新技術開発事業/先導研究/リソグラフィ用ハイブリッドArFレーザシステムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】