説明

レーザ光源装置

【課題】組み付けや位置調整の際にレーザチップや集光レンズが損傷することを防止することができるようにする。
【解決手段】半導体レーザ31のレーザチップ41から出力されたレーザ光を集光するFACレンズ32およびロッドレンズ33を保持する集光レンズホルダ54に、半導体レーザ31のマウント部材52に当接してレーザチップとの接触を防止する突出部77を形成する。特に突出部を、レーザチップを挟んでその両側に位置するマウント部材の部分にそれぞれ当接するように1対設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザを用いたレーザ光源装置に関し、特に半導体レーザから出力されたレーザ光を集光する集光レンズを備え、この集光レンズを保持する集光レンズホルダが半導体レーザに近接して配置されたレーザ光源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置の光源に半導体レーザを用いる技術が注目されている。この半導体レーザは、従来から画像表示装置に多用されてきた水銀ランプに比較して、色再現性がよい点、瞬時点灯が可能である点、長寿命である点、高効率で消費電力を低減することができる点、ならびに小型化が容易である点など、種々の利点を有している。
【0003】
このような画像表示装置に用いられるレーザ光源装置においては、緑色レーザ光を直接出力する半導体レーザに高出力のものがないため、半導体レーザから励起用レーザ光を出力させ、この励起用レーザ光でレーザ媒体を励起させて赤外レーザ光を出力させ、この赤外レーザ光の波長を波長変換素子で変換して緑色レーザ光を出力するようにした技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−16833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のような構成の緑色レーザ光源装置においては、半導体レーザから拡散するレーザ光を集光する集光レンズが、半導体レーザとレーザ媒体との間に配置されるが、この集光レンズは、集光効率を上げるために半導体レーザに近接して配置され、半導体レーザから出射したレーザ光が広範囲に拡散する前に集光レンズに入射させるようにすることが望ましい。
【0006】
ところが、集光レンズと半導体レーザとの間隔を狭くすると、組み付けや位置調整の際に、集光レンズや、これを保持する集光レンズホルダが、半導体レーザに接触してしまい、半導体レーザや集光レンズが損傷する可能性がある。特にレーザ光を出力するレーザチップは、極めて脆弱であるため、接触により容易に破損する。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、組み付けや位置調整の際にレーザチップや集光レンズが損傷することを防止することができるように構成されたレーザ光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のレーザ光源装置は、レーザ光を出力するレーザチップをマウント部材に実装した半導体レーザと、前記レーザチップから出力されたレーザ光を集光する集光レンズと、この集光レンズを保持する集光レンズホルダと、前記半導体レーザおよび前記集光レンズホルダを支持する基台と、を備え、前記集光レンズホルダに、前記マウント部材に当接して前記レーザチップとの接触を防止する突出部が形成された構成とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、組み付け時や位置調整時に、集光レンズホルダが半導体レーザに衝突しても、比較的強度のあるマウント部材に集光レンズホルダの突出部が当接して、集光レンズホルダの他の部分がレーザチップに接触することを避けることができるため、レーザチップの損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による画像表示装置1の概略構成図
【図2】緑色レーザ光源装置2におけるレーザ光の状況を示す模式図
【図3】緑色レーザ光源装置2の斜視図
【図4】集光レンズホルダ54および支持部材55の分解斜視図
【図5】集光レンズホルダ54の組み付け状態を示す上面図
【図6】集光レンズホルダ54の組み付け状態を示す側面図
【図7】本画像表示装置1をノート型の情報処理装置81に内蔵した例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、レーザ光を出力するレーザチップをマウント部材に実装した半導体レーザと、前記レーザチップから出力されたレーザ光を集光する集光レンズと、この集光レンズを保持する集光レンズホルダと、前記半導体レーザおよび前記集光レンズホルダを支持する基台と、を備え、前記集光レンズホルダに、前記マウント部材に当接して前記レーザチップとの接触を防止する突出部が形成された構成とする。
【0012】
これによると、組み付け時や位置調整時に、集光レンズホルダが半導体レーザに衝突しても、比較的強度のあるマウント部材に集光レンズホルダの突出部が当接して、集光レンズホルダの他の部分がレーザチップに接触することを避けることができるため、レーザチップの損傷を防止することができる。
【0013】
また、第2の発明は、前記第1の発明において、前記レーザチップは、板状をなすマウント部材の一面の略中心位置に固着され、前記突出部は、前記レーザチップを挟んでその両側に位置する前記マウント部材の部分にそれぞれ当接するように1対設けられた構成とする。
【0014】
これによると、組み付け時や位置調整時に、集光レンズホルダががたついても、突出部をマウント部材に確実に当接させて、集光レンズホルダとレーザチップとの接触を確実に防止することができる。
【0015】
また、第3の発明は、前記第1若しくは第2の発明において、前記突出部は、略円弧状に面取りされた断面形状に形成された構成とする。
【0016】
これによると、突出部が鋭角部のない円弧状断面をなすため、組み付け時や位置調整時に、集光レンズホルダががたついても、マウント部材が損傷することを避けることができる。
【0017】
また、第4の発明は、前記第1乃至第3の発明において、前記突出部は、前記基台側の部材に対する前記集光レンズホルダの組み付け方向に長く形成された構成とする。
【0018】
これによると、集光レンズホルダを組み付ける際に、集光レンズホルダの突出部をマウント部材に当接させて、集光レンズや集光レンズホルダの他の部分がレーザチップに接触することを確実に防止することができる。
【0019】
また、第5の発明は、前記第1乃至第4の発明において、前記突出部は、その長手方向において前記半導体レーザ側に位置する前記集光レンズの寸法より長く形成された構成とする。
【0020】
これによると、組み付け時や位置調整時に、集光レンズと半導体レーザとが直接接触することを確実に防止して、集光レンズの損傷を避けることができる。
【0021】
また、第6の発明は、前記第1乃至第5の発明において、前記レーザチップは、励起用レーザ光を出力するものであり、このレーザチップから出力された励起用レーザ光により励起されて赤外レーザ光を出力するレーザ媒体と、このレーザ媒体から出力された赤外レーザ光の波長を変換して緑色レーザ光を出力する波長変換素子と、を備え、前記レーザ媒体および前記波長変換素子が、前記半導体レーザおよび前記集光レンズともに前記基台に一体的に支持された構成とする。
【0022】
これによると、高出力の緑色レーザ光を出力することができる。この場合、基台に半導体レーザを固定した後、レーザチップから出力されるレーザ光の光軸に対して、集光レンズ、レーザ媒体および波長変換素子の位置調整が行われる。
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明による画像表示装置1の概略構成図である。この画像表示装置1は、所要の画像をスクリーンに投影表示するものであり、緑色レーザ光を出力する緑色レーザ光源装置2と、赤色レーザ光を出力する赤色レーザ光源装置3と、青色レーザ光を出力する青色レーザ光源装置4と、映像信号に応じて各レーザ光源装置2〜4からのレーザ光の変調を行う液晶反射型の空間光変調器5と、各レーザ光源装置2〜4からのレーザ光を反射させて空間光変調器5に照射させるとともに空間光変調器5から出射された変調レーザ光を透過させる偏光ビームスプリッタ6と、各レーザ光源装置2〜4から出射されるレーザ光を偏光ビームスプリッタ6に導くリレー光学系7と、偏光ビームスプリッタ6を透過した変調レーザ光をスクリーンに投射する投射光学系8と、を備えている。
【0025】
この画像表示装置1は、いわゆるフィールドシーケンシャル方式でカラー画像を表示するものであり、各レーザ光源装置2〜4から各色のレーザ光が時分割で順次出力され、各色のレーザ光による画像が残像によってカラー画像として認識される。
【0026】
リレー光学系7は、各レーザ光源装置2〜4から出射される各色のレーザ光を平行ビームに変換するコリメータレンズ11〜13と、コリメータレンズ11〜13を通過した各色のレーザ光を所要の方向に導く第1および第2のダイクロイックミラー14,15と、ダイクロイックミラー14,15により導かれたレーザ光を拡散させる拡散板16と、拡散板16を通過したレーザ光を収束レーザに変換するフィールドレンズ17と、を備えている。
【0027】
投射光学系8からスクリーンSに向けてレーザ光が出射される側を前側とすると、青色レーザ光源装置4から青色レーザ光が後方に向けて出射され、この青色レーザ光の光軸に対して緑色レーザ光の光軸および赤色レーザ光の光軸が互いに直交するように、緑色レーザ光源装置2および赤色レーザ光源装置3から緑色レーザ光および赤色レーザ光が出射され、この青色レーザ光、赤色レーザ光、および緑色レーザ光が、2つのダイクロイックミラー14,15で同一の光路に導かれる。すなわち、青色レーザ光と緑色レーザ光が第1のダイクロイックミラー14で同一の光路に導かれ、青色レーザ光および緑色レーザ光と赤色レーザ光が第2のダイクロイックミラー15で同一の光路に導かれる。
【0028】
第1および第2のダイクロイックミラー14,15は、表面に所定の波長のレーザ光を透過および反射させるための膜が形成されたものであり、第1のダイクロイックミラー14は、青色レーザ光を透過するとともに緑色レーザ光を反射させる。第2のダイクロイックミラー15は、赤色レーザ光を透過するとともに青色レーザ光および緑色レーザ光を反射させる。
【0029】
これらの各光学部材は、筐体21に支持されている。この筐体21は、各レーザ光源装置2〜4で発生した熱を放熱する放熱体として機能し、アルミニウムや銅などの熱伝導性の高い材料で形成されている。
【0030】
緑色レーザ光源装置2は、側方に向けて突出した状態で筐体21に形成された取付部22に取り付けられている。この取付部22は、リレー光学系7の収容スペースの前方と側方にそれぞれ位置する前壁部23と側壁部24とが交わる角部から側壁部24に直交する向きに突出した状態で設けられている。赤色レーザ光源装置3は、ホルダ25に保持された状態で側壁部24の外面側に取り付けられている。青色レーザ光源装置4は、ホルダ26に保持された状態で前壁部23の外面側に取り付けられている。
【0031】
赤色レーザ光源装置3および青色レーザ光源装置4は、いわゆるCANパッケージで構成され、レーザ光を出力するレーザチップが、ステムに支持された状態で缶状の外装部の中心軸上に光軸が位置するように配置されたものであり、外装部の開口に設けられたガラス窓からレーザ光が出射される。この赤色レーザ光源装置3および青色レーザ光源装置4は、ホルダ25,26に開設された取付孔27,28に圧入するなどしてホルダ25,26に対して固定される。青色レーザ光源装置4および赤色レーザ光源装置3のレーザチップの発熱は、ホルダ25,26を介して筐体21に伝達されて放熱され、各ホルダ25,26は、アルミニウムや銅などの熱伝導率の高い材料で形成されている。
【0032】
緑色レーザ光源装置2は、励起用レーザ光を出力する半導体レーザ31と、半導体レーザ31から出力された励起用レーザ光を集光する集光レンズであるFAC(Fast-Axis Collimator)レンズ32およびロッドレンズ33と、励起用レーザ光により励起されて基本レーザ光(赤外レーザ光)を出力するレーザ媒体34と、基本レーザ光の波長を変換して半波長レーザ光(緑色レーザ光)を出力する波長変換素子35と、レーザ媒体34とともに共振器を構成する凹面ミラー36と、励起用レーザ光および基本波長レーザ光の漏洩を阻止するガラスカバー37と、各部を支持する基台38と、各部を覆うカバー体39と、を備えている。
【0033】
この緑色レーザ光源装置2は、基台38を筐体21の取付部22に取り付けて固定され、緑色レーザ光源装置2と筐体21の側壁部24との間に所要の幅(例えば0.5mm以下)の間隙が形成される。これにより、緑色レーザ光源装置2の熱が赤色レーザ光源装置3に伝わりにくくなり、赤色レーザ光源装置3の昇温を抑制して、温度特性の悪い赤色レーザ光源装置3を安定的に動作させることができる。また、赤色レーザ光源装置3の所要の光軸調整代(例えば0.3mm程度)を確保するため、緑色レーザ光源装置2と赤色レーザ光源装置3との間に所要の幅(例えば0.3mm以上)の間隙が設けられている。
【0034】
図2は、緑色レーザ光源装置2におけるレーザ光の状況を示す模式図である。半導体レーザ31のレーザチップ41は、波長808nmの励起用レーザ光を出力する。FACレンズ32は、レーザ光のファースト軸(光軸方向に対して直交し且つ図の紙面に沿う方向)の拡がりを低減する。ロッドレンズ33は、レーザ光のスロー軸(図の紙面に対して直交する方向)の拡がりを低減する。
【0035】
レーザ媒体34は、いわゆる固体レーザ結晶であり、ロッドレンズ33を通過した波長808nmの励起用レーザ光により励起されて波長1064nmの基本波長レーザ光(赤外レーザ光)を出力する。このレーザ媒体34は、Y(イットリウム)VO(バナデート)からなる無機光学活性物質(結晶)にNd(ネオジウム)をドーピングしたものであり、より具体的には、母材であるYVOのYに蛍光を発する元素であるNd+3に置換してドーピングしたものである。
【0036】
レーザ媒体34におけるロッドレンズ33に対向する側には、波長808nmの励起用レーザ光に対する反射防止と、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する高反射の機能を有する膜42が形成されている。レーザ媒体34における波長変換素子35に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜43が形成されている。
【0037】
波長変換素子35は、いわゆるSHG(Second Harmonics Generation)素子であり、レーザ媒体34から出力される波長1064nmの基本波長レーザ光(赤外レーザ光)の波長を変換して波長532nmの半波長レーザ光(緑色レーザ光)を生成する。この波長変換素子35は、強誘電体結晶に、分極が反転した領域とそのままの領域を交互に形成した、周期的な分極反転構造を備えたものであり、分極反転周期方向(分極反転領域の配列方向)に基本波長レーザ光を入射させる。なお、強誘電体結晶には、例えばLN(ニオブ酸リチウム)にMgOを添加したものが用いられる。
【0038】
波長変換素子35におけるレーザ媒体34に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光に対する反射防止と、波長532nmの半波長レーザ光に対する高反射の機能を有する膜44が形成されている。波長変換素子35における凹面ミラー36に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜45が形成されている。
【0039】
凹面ミラー36は、波長変換素子35に対向する側に凹面を有し、この凹面には、波長1064nmの基本波長レーザ光に対する高反射と、波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜46が形成されている。これにより、レーザ媒体34の膜42と凹面ミラー36の膜46との間で、波長1064nmの基本波長レーザ光が共振して増幅される。
【0040】
波長変換素子35では、レーザ媒体34から入射した波長1064nmの基本波長レーザ光の一部が波長532nmの半波長レーザ光に変換され、変換されずに波長変換素子35を通過した波長1064nmの基本波長レーザ光は、凹面ミラー36で反射されて波長変換素子35に再度入射し、波長532nmの半波長レーザ光に変換される。この波長532nmの半波長レーザ光は、波長変換素子35の膜44で反射されて波長変換素子35から出射される。
【0041】
ここで、レーザ媒体34から波長変換素子35に入射して波長変換素子35で波長変化されて波長変換素子35から出射されるレーザ光のビームB1と、凹面ミラー36で一旦反射されて波長変換素子35に入射して膜44で反射されて波長変換素子35から出射されるレーザ光のビームB2とが干渉を起こすと、出力が低下する。そこで、波長変換素子35を光軸方向に対して傾斜させて、屈折作用によりレーザ光のビームB1、B2が互いに干渉しないようにしており、これにより出力低下を避けることができる。
【0042】
なお、図1に示したガラスカバー37には、波長808nmの励起用レーザ光および波長1064nmの基本波長レーザ光が外部に漏洩することを防止するため、これらのレーザ光を透過しない膜が形成されている。
【0043】
図3は、緑色レーザ光源装置2の斜視図である。半導体レーザ31、FACレンズ32、ロッドレンズ33、レーザ媒体34、波長変換素子35、および凹面ミラー36は、基台38に一体的に支持されている。基台38の底面51は光軸方向に対して平行となる。ここでは、基台38の底面51に対して直交する方向を高さ方向とし、この高さ方向および光軸方向に対して直交する方向を幅方向とする。なお、高さ方向は必ずしも上下方向とはならない。
【0044】
半導体レーザ31は、レーザ光を出力するレーザチップ41をマウント部材52に実装したものである。レーザチップ41は、光軸方向に長い帯板状をなし、光出射面をFACレンズ32側に向けた状態で、板状をなすマウント部材52の一面の幅方向の略中心位置に固着されている。この半導体レーザ31は、取付部材53を介して基台38に固定される。この取付部材53は、銅あるいはアルミ等の熱伝導性の高い金属で形成されており、これによりレーザチップ41の発熱が基台38に伝達されて放熱することができる。
【0045】
半導体レーザ31のレーザチップ41には、レーザ駆動部67から供給される駆動電圧がリード65,66を介して印加される。半導体レーザ31のマウント部材52は、導電性の接着剤(例えば銀ペースト)により取付部材53に固着され、マウント部材52の下面側に設けられた電極が接着層を介して取付部材53と電気的に接続される。
【0046】
FACレンズ32およびロッドレンズ33は、集光レンズホルダ54に保持される。この集光レンズホルダ54は、支持部材55を介して基台38に固定される。集光レンズホルダ54は、光軸方向に移動可能に支持部材55に連結されており、また支持部材55は、高さ方向に移動可能に基台38に連結されており、これにより集光レンズホルダ54、すなわちFACレンズ32およびロッドレンズ33の位置が、高さ方向および光軸方向について調整される。FACレンズ32およびロッドレンズ33は位置調整作業の前に集光レンズホルダ54に接着剤で固定され、位置調整作業の後に、集光レンズホルダ54と支持部材55と基台38とが接着剤で互いに固定される。
【0047】
レーザ媒体34は、レーザ媒体ホルダ56に保持される。このレーザ媒体ホルダ56は、支持部材57を介して基台38に固定される。
【0048】
波長変換素子35は、波長変換素子ホルダ58に保持される。この波長変換素子ホルダ58は、第1および第2の支持部材59,60を介して基台38に固定される。波長変換素子ホルダ58は、第1の支持部材59に傾動可能に連結されており、これにより波長変換素子ホルダ58すなわち波長変換素子35の傾斜角度が調整される。第1の支持部材59は、第2の支持部材60に幅方向に移動可能に連結されており、第2の支持部材60は、基台38に高さ方向に移動可能に連結されており、これにより波長変換素子ホルダ58すなわち波長変換素子35の位置が、高さ方向および幅方向について調整される。波長変換素子35は位置調整作業の前に波長変換素子ホルダ58に接着剤で固定され、位置調整作業の後に、波長変換素子ホルダ58と第1および第2の支持部材59,60と基台38とが接着剤で互いに固定される。
【0049】
凹面ミラー36は、基台38に一体的に形成された保持部61に保持される。ガラスカバー37は、図1に示したカバー体39に保持される。
【0050】
図4は、集光レンズホルダ54および支持部材55の分解斜視図である。図5は、集光レンズホルダ54の組み付け状態を示す上面図である。図6は、集光レンズホルダ54の組み付け状態を示す側面図である。
【0051】
図4に示すように、集光レンズホルダ54には、1対のレンズ保持部71が基部72から立設されており、この1対のレンズ保持部71が、FACレンズ32およびロッドレンズ33を挟み込むように保持し、1対のレンズ保持部71間には、半導体レーザ31から出射されたレーザ光の光路が形成される。
【0052】
集光レンズホルダ54は、基部72の取付面73を支持部材55の支持面74に当接させた状態で支持部材55に支持される。支持部材55の支持面74は、光軸方向に対して平行となるように形成されている。集光レンズホルダ54の取付面73には1対の脚部75が突設されている。一方、支持部材55の支持面74には光軸方向に長いガイド孔76が形成されている。このガイド孔76に脚部75が嵌入し、ガイド孔76に沿って脚部75がスライドすることで、支持部材55に対して集光レンズホルダ54を光軸方向に移動させることができ、これにより集光レンズホルダ54の光軸方向の位置が調整される。この光軸方向の位置調整では、ロッドレンズ33から出力されるレーザ光が、レーザ媒体ホルダ56の支持部材57に開設された光路孔を通過する所要のビーム径になるように、集光レンズホルダ54の位置が調整される。
【0053】
図3に示したように、FACレンズ32は、集光効率を上げるために半導体レーザ31のレーザチップ41に近接して配置され、レーザチップ41から出射したレーザ光が広範囲に拡散する前にFACレンズ32に入射させるようにしており、FACレンズ32とレーザチップ41との間隔は例えば約200μmと極めて小さくなる。
【0054】
また、緑色レーザ光源装置2の組み立てでは、半導体レーザ31が取り付けられた取付部材53を基台38に固定した後、集光レンズホルダ54を基台38に組み付けながらレーザチップ41に対する位置調整を行うことになり、この組み付け時や位置調整時に、集光レンズホルダ54が半導体レーザ31に衝突する場合があり、このとき集光レンズホルダ54がレーザチップ41に接触すると、レーザチップ41は極めて脆弱であるため容易に破損する。
【0055】
そこで、図4に示したように、集光レンズホルダ54には、半導体レーザ31のマウント部材52に当接してレーザチップ41との接触を防止する突出部77が形成されている。これにより、組み付け時や位置調整時に、集光レンズホルダ54が半導体レーザ31に衝突しても、比較的強度のあるマウント部材52に集光レンズホルダ54の突出部77が当接して、集光レンズホルダ54の他の部分がレーザチップ41に接触することを避けることができるため、レーザチップ41の損傷を防止することができる。突出部77の突出寸法は、集光レンズホルダ54と半導体レーザ31との間隔などに基づいて適宜(例えば100μm)に設定される。
【0056】
支持部材55のガイド孔76は、集光レンズホルダ54の脚部75がガイド孔76に沿って円滑に移動するように、脚部75の外径に対して僅かに幅広に形成され、脚部75とガイド孔76との間に僅かな隙間がある。このため、集光レンズホルダ54の光軸方向の位置調整時には、支持部材55の支持面74上で集光レンズホルダ54が僅かにがたつく。また、基台38に対して支持部材55を高さ方向に移動させる高さ方向の位置調整時にも、基台38と支持部材55との連結部の隙間により、支持部材55が集光レンズホルダ54とともに僅かにがたつく。
【0057】
そこで、図5に示すように、集光レンズホルダ54の突出部77は、レーザチップ41を挟んでその両側に位置するマウント部材52の部分にそれぞれ当接するように1対設けられている。特にここでは、各突出部77が、レンズ保持部71における半導体レーザ31に対向する面78の端部に設けられている。これにより、組み付け時や位置調整時に、集光レンズホルダ54のがたつきで集光レンズホルダ54の角度が変わっても、突出部77をマウント部材52に当接させて、集光レンズホルダ54とレーザチップ41との接触を確実に防止することができる。
【0058】
さらに、突出部77は、略円弧状に面取りされた断面形状に形成されている。特にここでは、半円柱状をなしている。これにより、突出部77が鋭角部のない略円弧状断面をなすため、組み付け時や位置調整時に、集光レンズホルダ54の角度が変化しても、マウント部材52が損傷することを避けることができる。
【0059】
また、突出部77は、長手方向に一定の断面形状をなし、図6に示すように、側面視で真直に形成されている。これにより、突出部77がマウント部材52に突き当たった際に、マウント部材52の平面状をなす端面に沿うように突出部77が当接することで、集光レンズホルダ54がぐらつくことを避けることができる。
【0060】
集光レンズホルダ54は、脚部75がガイド孔76に挿入されるように、支持部材55に上方から組み付けられ、突出部77は、支持部材55に対する集光レンズホルダ54の組み付け方向、すなわち脚部75の突出方向に長く形成されている。これにより、集光レンズホルダ54を上方から組み付ける際に、集光レンズホルダ54が半導体レーザ31に衝突しても、集光レンズホルダ54の突出部77がマウント部材52に当接することで、FACレンズ32や集光レンズホルダ54の他の部分がレーザチップ41に接触することを確実に防止することができる。
【0061】
また、意図的に突出部77をマウント部材52に当接させた状態で集光レンズホルダ54を組み付けるようにしてもよく、この場合、突出部77が、集光レンズホルダ54がレーザチップ41に対して非接触状態に保持されるように集光レンズホルダ54を案内するガイドとして機能し、集光レンズホルダ54がふらつくことなく集光レンズホルダ54を組み付けることができる。
【0062】
突出部77は、その長手方向においてFACレンズ32の寸法より長く形成されている。すなわち、突出部77の長さが、FACレンズ32の高さ方向の寸法より大きくなっており、側面視でFACレンズ32の半導体レーザ31側が突出部77で覆われる。言いかえれば、突出部77の上面はFACレンズ32の入射面の上辺よりも上に位置し、突出部77の下面はFACレンズ32の入射面の下辺よりも下に位置している。これにより、組み付け時や位置調整時に、FACレンズ32と半導体レーザ31とが直接接触することを確実に防止して、FACレンズ32の損傷を避けることができる。
【0063】
図7は、本画像表示装置1をノート型の情報処理装置81に内蔵した例を示す斜視図である。情報処理装置81の筐体82には、画像表示装置1が出没自在に格納される収容スペースが、キーボードの裏面側に形成されており、不使用時には画像表示装置1が筐体82内に収容され、使用時には画像表示装置1が筐体82から引き出されて、画像表示装置1を回動自在に支持するベース部83に対して画像表示装置1を所要の角度に回動させることで、画像表示装置1からのレーザ光をスクリーンに投射させることができる。
【0064】
なお、前記の例では、集光レンズホルダ54に設けられた突出部77が、半円柱状をなす、すなわち、長手方向に直交する平面で切断した断面が半円形状をなすものとしたが、本発明における突出部は、これに限定されない。例えば先端部が略円弧状をなし、全体としてU字形状断面をなすものも可能である。また、突出部77は、組み付け時に集光レンズホルダ54の他の部分が半導体レーザ31に接触することを確実に防止するため、図6に示した例より取付面73側に長く形成するようにしてもよい。
【0065】
また、前記の例では、緑色レーザ光源装置2のレーザチップ41、レーザ媒体34、および波長変換素子35がそれぞれ、波長808nmの励起用レーザ光、波長1064nmの基本波長レーザ光(赤外レーザ光)、および波長532nmの半波長レーザ光(緑色レーザ光)を出力するものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。最終的に緑色レーザ光源装置2から出力されるレーザ光が緑色と認識できるものであればよく、例えばピーク波長が500nm〜560nmの範囲となる波長領域のレーザ光を出力するようにするとよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明にかかるレーザ光源装置は、組み付けや位置調整の際にレーザチップや集光レンズが損傷することを防止することができる効果を有し、半導体レーザを用いたレーザ光源装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 画像表示装置
2 緑色レーザ光源装置
3 赤色レーザ光源装置
4 青色レーザ光源装置
31 半導体レーザ
32 FACレンズ(集光レンズ)
33 ロッドレンズ(集光レンズ)
34 レーザ媒体
35 波長変換素子
36 凹面ミラー
37 ガラスカバー
38 基台
39 カバー体
41 レーザチップ
52 マウント部材
53 取付部材
54 集光レンズホルダ
55 支持部材
71 レンズ保持部
72 基部
73 取付面
74 支持面
75 脚部
76 ガイド孔
77 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出力するレーザチップをマウント部材に実装した半導体レーザと、
前記レーザチップから出力されたレーザ光を集光する集光レンズと、
この集光レンズを保持する集光レンズホルダと、
前記半導体レーザおよび前記集光レンズホルダを支持する基台と、を備え、
前記集光レンズホルダに、前記マウント部材に当接して前記レーザチップとの接触を防止する突出部が形成されたことを特徴とするレーザ光源装置。
【請求項2】
前記レーザチップは、板状をなすマウント部材の一面の略中心位置に固着され、
前記突出部は、前記レーザチップを挟んでその両側に位置する前記マウント部材の部分にそれぞれ当接するように1対設けられたことを特徴とする請求項1に記載のレーザ光源装置。
【請求項3】
前記突出部は、略円弧状に面取りされた断面形状に形成されたことを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載のレーザ光源装置。
【請求項4】
前記突出部は、前記基台側の部材に対する前記集光レンズホルダの組み付け方向に長く形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のレーザ光源装置。
【請求項5】
前記突出部は、その長手方向において前記半導体レーザ側に位置する前記集光レンズの寸法より長く形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のレーザ光源装置。
【請求項6】
前記レーザチップは、励起用レーザ光を出力するものであり、
このレーザチップから出力された励起用レーザ光により励起されて赤外レーザ光を出力するレーザ媒体と、このレーザ媒体から出力された赤外レーザ光の波長を変換して緑色レーザ光を出力する波長変換素子と、を備え、
前記レーザ媒体および前記波長変換素子が、前記半導体レーザおよび前記集光レンズともに前記基台に一体的に支持されたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のレーザ光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−44099(P2012−44099A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186232(P2010−186232)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【特許番号】特許第4786761号(P4786761)
【特許公報発行日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】