説明

レーザ駆動装置、光走査装置並びに画像形成装置

【課題】レーザ光の光量を変化させても同じ光波形で出力することのできるレーザ駆動装置、光走査装置並びに画像形成装置を提供する。
【解決手段】レーザ光を出射する光源1と、光源1から出射するレーザ光の光量を一定として光源1のオンオフ駆動制御を行う光源駆動制御部5aと、光源1から出射されたレーザ光の光路上に配置され、入射するレーザ光の透過率を電気的に変更可能な光量調整素子3と、光量調整素子3の透過率を制御して、光量調整素子3における透過により出射されるレーザ光のピーク光量を調整するピーク光量制御部5bと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ駆動装置、光走査装置並びに画像形成装置に関し、より詳細には、レーザプリンタ、光デイスク装置、デジタル複写機、光通信装置等における光源の光出力を制御する半導体レーザ駆動回路を有するレーザ駆動装置、該レーザ駆動装置を備える光走査装置、並びに該光走査装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、光源となる半導体レーザと該半導体レーザを駆動するドライバからなるレーザ駆動装置を備えた光走査装置が広く用いられている。この光走査装置では、感光体ドラムの軸方向にポリゴンミラー等の偏向手段を用いてレーザ光を走査しつつ、感光体ドラムを回転させ静電潜像を形成する方法が一般的に採用されている。
【0003】
また、このような通常の半導体レーザのドライバは、半導体レーザ若しくは半導体レーザアレーや垂直共振器型面発光半導体レーザ(VCSEL)の光量を調節する機能と高速に変調する機能の両方を持ち、例えばカラー画像形成装置において、各色の感光体や光学系の効率に応じた最適な光量を選択し、その光量において光源を高速にON/OFF変調する構成が一般的である(特許文献1〜5参照。)。
【0004】
ここで、半導体レーザのドライバのみで各色の感光体ドラムや光学系の効率に応じた最適な光量を選択しようとする場合には、例えば光学系の効率が2倍の範囲があり、感光体の感度ばらつきが2倍の範囲があるとすると、4倍の範囲の光量調整が必要となる。例えば、半導体レーザの最大出力を10mWとすると、4倍の範囲であるので、2.5mW〜10mWまでのダイナミックレンジが必要となる。ドライバの出力電流自身のダイナミックレンジとしてはこれらぐらいの範囲は十分網羅できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなレーザ駆動装置において、半導体レーザの駆動電流が異なる場合つまり光出力が異なる場合に、レーザ特性、とりわけレーザ出力のドループ特性が異なるため、同じ光波形とはならず、結果的にこのレーザ光を用いて画像を形成する場合に、画像の濃度変動を引き起こす原因となり、画像の安定した均一濃度が得られない問題があった。
【0006】
本発明は、以上の従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、レーザ光の光量を変化させても同じ光波形で出力することのできるレーザ駆動装置、光走査装置並びに画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために提供する本発明は、以下の通りである。なお、カッコ内に本発明を実施するための形態において対応する部位及び符号等を示す。
〔1〕 レーザ光を出射するレーザ光源(光源1)と、前記レーザ光源から出射するレーザ光の光量を一定として該レーザ光源のオンオフ駆動制御を行う光源駆動制御部(光源駆動制御部5a)と、前記レーザ光源から出射されたレーザ光の光路上に配置され、入射するレーザ光の透過率または反射率を電気的に変更可能な光量調整素子(光量調整素子3,3’)と、前記光量調整素子の透過率または反射率を制御して、該光量調整素子における透過または反射により出射されるレーザ光のピーク光量を調整するピーク光量制御部(ピーク光量制御部5b)と、を備えることを特徴とするレーザ駆動装置(レーザ駆動装置10、図3,図11)。
〔2〕 前記レーザ光源は複数の発光部を有し、前記光源駆動制御部は、前記複数の発光部それぞれの発光光量が所望値に調整されたレーザ光源についてオンオフ駆動制御を行うことを特徴とする前記〔1〕に記載のレーザ駆動装置。
〔3〕 前記光量調整素子は、液晶偏光素子、可変式ND素子、音響光学素子、ファラデー素子のいずれかであることを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載のレーザ駆動装置(図4〜図6)。
〔4〕 前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のレーザ駆動装置(レーザ駆動装置10)を備える光走査装置(光走査装置100、図9)。
〔5〕 前記〔4〕に記載の光走査装置(光走査装置100)を備えることを特徴とする画像形成装置(画像形成装置200、図10)。
〔6〕 前記ピーク光量制御部は、形成した画像の濃度偏差に基づいて前記光量調整素子の透過率または反射率を制御して、該光量調整素子から出射されるレーザ光のピーク光量を調整することを特徴とする前記〔5〕に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明のレーザ駆動装置によれば、光源から良好なドループ特性及び高速光応答特性のレーザ光を一定出力で出射した上で、光量調整素子で減衰して出射するので、ドループ特性も高速光応答特性もその良好な特性を損なうことなく単純に減衰させたものとなり、任意の光量で同じ光波形を再現でき、非常に安定したレーザ駆動を実現することができる。
また本発明の光走査装置によれば、本発明のレーザ駆動装置を用いているので、非常に安定な光波形のレーザ光を利用することができ、半導体レーザの特性に依存する事のない安定した光書込みを実現することができる。
また本発明の画像形成装置によれば、本発明の光走査装置を用いるので、正確な光走査が可能となり、高画質の画像を形成することができる。特に、カラーレーザプリンタやカラーデジタル複写機に適用した場合に、色ずれの少ない高画質のカラー画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一般的な半導体レーザのドループ特性を表す図である。
【図2】一般的な半導体レーザの高速光応答波形の例を示す図である。
【図3】本発明に係るレーザ駆動装置の構成例を示す概略図である。
【図4】光量調整素子としての液晶偏光素子の構成を示す断面図である。
【図5】光量調整素子としての可変式ND素子の構成を示す概略図である。
【図6】光量調整素子としてのファラデー素子の構成を示す概略図である。
【図7】本発明のレーザ駆動装置におけるレーザ光のドループ特性を表す図である。
【図8】本発明のレーザ駆動装置におけるレーザ光の高速光応答波形の例を示す図である。
【図9】本発明に係る光走査装置の構成例を示す概略図である。
【図10】本発明に係る画像形成装置の構成例を示す概略図である。
【図11】本発明に係るレーザ駆動装置のその他の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の前提となるレーザの特性及び駆動制御の考え方は次のとおりである。
図1に、一般的な半導体レーザのドループ特性を表す。
図1では、駆動電流の大きさを3種類に分けた場合の駆動電流1,2,3と光出力の波形(光波形)との関係を示している。なお、この図では、駆動電流の大きさに関わらずΔPは同じとしているが、これは説明のための簡単化であり、実際には多少値が変化することが知られている。ただし、その量は駆動電流の変化、つまりピーク光量の変化に追随するような量ではなく、ほぼ同じぐらいの値と考えてよい。
【0011】
一般的なレーザでは、自己発熱による効率低下によるドループの絶対量に関しては光量依存があまりないことが知られており、結果的に図1に示すように、駆動電流の大きさに寄らずほぼ同じパワー(図中ΔP)だけ光出力が低下する。このため、半導体レーザのドループ特性は、光量(定常状態の光出力)が小さいほどピーク光量(最初の光出力)との比でより大きく影響を受けることになり、光量変動の比率が大きくなってしまう。
【0012】
従って、より均一の光量を得る、つまりより均一の画像濃度を得るためには、半導体レーザの光量をより上げて、ピーク光量に対してよりドループの影響(比率)が小さくなる動作状況で使用する事が望ましい。例えば画像形成装置で半導体レーザを使用する場合、図1において、勿論駆動電流1の場合つまり駆動電流及び発光量のどちらも大きい場合(図1(a1),(a2))には、相対的にドループ値が小さくなるため、より画像濃度の均一化に適している、つまりより安定な画像が形成できる。
【0013】
しかしながら、画像形成装置の光利用効率は、レンズのばらつきや感光体感度のばらつきや経時変化により変化するため、そのために半導体レーザの発光量を変えざるを得ない。この場合には、例えば駆動電流3の条件(光量が少なくて良いので、画像形成装置の光利用効率が良い条件(図1(c1),(c2)))とするが、半導体レーザのドループ特性の影響をより大きく受けて、レーザ発光量のピーク値変動がおき、結果的に画像濃度の変動を引き起こしてしまう。
【0014】
また、光量を変更することは、光出力において立上り時間(Tr)/立下り時間(Tf)やドループ特性等の光応答波形も変化してしまうので、その変動も結果的に画像の濃度変動となってしまう問題がある(図2)。
【0015】
図2に、半導体レーザの高速光応答波形の例を示す。図1では横軸の時間スケールがμsであり、立上り/立下りパターンは直線で記載しているが、図2ではもっと高速で短いパルス、例えばパルス幅10ns〜20nsくらいの場合の光応答波形例を示している。
【0016】
このような高速光応答の場合には、駆動電流のパルス幅が全く同じに駆動しても、半導体レーザから発光する光は、図2の様に、駆動電流とは異なるパルス幅となってしまう事が知られている。このパルス幅が細くなる1つの原因は、半導体レーザの発振遅延現象であり、予めバイアス電流を十分流していればその遅延量は低減するが、例えば駆動電流0や微小電流から発光させた場合には、より遅延量が大きくなり、結果的に光のパルス幅が細くなってしまう。パルス幅が細くなるもう1つの原因は、半導体レーザとドライバとの間の寄生容量と抵抗成分によるローパスフィルタ効果でTr/Tfが遅くなってしまうために、結果的にパルス幅も細ってしまう。
【0017】
したがって、図2に示すように、光量(光出力)が小さい場合(駆動電流3の場合(図2(c1),(c2))には、一般的にドループ特性も悪くなるが、高速応答特性であるTr/Tfも悪くなる。ただし、VCSELの様な面発光レーザの場合には、異なる特性が得られる場合もあるが、一定光量での使用が一番安定であることには変わりはない。例えば、光利用効率を吸収するために、複数のNDフィルタを用いて効率を変更する手法などもあり、この場合は確かに一部ダイナミックレンジを低減することができるが、光量の最適化には結果的に光源の光量を変更せざるを得ず、光波形のばらつきを生じてしまう。
【0018】
このように、駆動電流を増減する事で、確かに、半導体レーザのピーク光量はそれなりに増減する事が可能であるが、1つには半導体レーザのドループ特性、また1つには半導体レーザ及び系の高速応答特性により、レーザドライバ側が理想的な駆動電流波形であったとしても、光波形としては、ドループによるピーク光量変動、及び高速応答時のパルス細りを生じるため、今後より高精度の画像形成装置を考える場合には大きな課題となる。
【0019】
次に、現在レーザプリンタや複写機において、光源光量の使用範囲(ダイナミックレンジ)が大きくなってきている理由について説明する。レーザ光を走査して感光体に書き込む、所謂レーザプリンタやレーザ複写機では、一般的に次のような効率変動に対応するために光源の光量を変更する必要がある。
【0020】
(変動1)光学系の効率変動
レンズやポリゴンミラーの透過/反射のばらつきによって、一般的に約2倍程度の効率変動があるが、感光体が必要とするレーザパワーは感光体により決まるため、その光学的ばらつきを、レーザの光量を変える事で調整(ばらつきを吸収)する必要がある。
【0021】
(変動2)感光体等のプロセス効率変動
感光体の感度にもばらつきがあり、また感光体の場合には、使用していく事による経時変化(劣化)もあるため、それらを含めて、光源の光量を変える事で調整する必要がある。特に最近では、上記感光体や現像の効率の経時変化を、マシン自身が定期的に調べて画像の最適濃度を保つように自己調整を行うプロセスコントロールという動作を行わせるようになってきているが、結果的にその調整は、光源の光量を変える事で調整を実施している。
【0022】
(変動3)機種間の効率変動
色々な機種で共通の光源を使用することで工程の簡略化やコストダウン化が進んでおり、一般的に良く実施されるが、各機種における上記記載の光学系効率やプロセス効率に関しては全く同じではなく、また機種により生産性(例えばプリントアウト時間等)も異なるため、レーザの光出力が異なり、また変調する速度も異なるため、実際の光波形に関しては上記の理由でばらばらであり、使用する光量も異なる。
【0023】
これらのばらつきや系の効率を吸収する(補正/調整)ためには、現状で大体約10倍程度の光量ダイナミックレンジが必要となってきており、また今後ますます補正幅が大きくなる傾向があるため、光量に依存する光波形の変化は、今後ますます大きな課題になって来ている。
【0024】
更に、カラー機の場合、光源の光波形に依存して画像の安定性に対して課題を生じる。つまり、カラー機の場合、一般に色毎に独自の感光体を持っており(1個の感光体でカラーを出力する場合には生産性(速度)が落ちるため)、色毎のそれぞれの光学系、感光体の効率や経時状態が異なるため一般的に、各色における光源の出力はばらばらになっている。この場合、前述したように出力がばらばらの場合、光波形、言い換えれば感光体上における積分光量とその分布がばらばらのものにトナーを載せて、結果としてカラーの画像を形成するが、その色味や濃度は光波形のばらつきのため、変動してしまう。画像の領域が大きい場合にはその影響は積分されるため比較的安定となるが、ハイライト画像などにおいて、特に小さい画素の組合せでハイライト画像を形成する場合などにおいては、光波形のばらつきの影響が出てしまう。また、画像領域の大きい画像でも、レーザのドループ特性のように長周期の特性の影響で濃度変化をおこす場合もある。つまり、モノクロの場合に比べてより画像の安定化に課題がある。
【0025】
発明者らは、これらの課題を解決するために、鋭意検討を行い、半導体レーザをドループ特性がなく光応答波形も良好な高出力側で、かつ一定の光出力のまま使用し、光量そのものは別の手段で発光後に調整(減衰)させるようにするレーザ駆動装置及び該レーザ駆動装置を備える光走査装置を完成させ、またこの光走査装置を用いて画像濃度変動が小さく、安定した画像形成が可能な画像形成装置を実現した。
以下に、本発明に係るレーザ駆動装置、光走査装置並びに画像形成装置について説明する。
【0026】
図3は、本発明に係るレーザ駆動装置の構成例を示す概略図である。
レーザ駆動装置10は、図3に示すように、レーザ光を出射する半導体レーザである光源1と、光源1から出射するレーザ光の光量を一定として光源1のオンオフ駆動制御を行う光源駆動制御部5aと、光源1から出射されたレーザ光の光路上に配置され、内部を透過するレーザ光の透過率を電気的に変更可能な光量調整素子3と、当該レーザ駆動装置10から出力されるレーザ光が関係する光学部品(光学系)の光学特性等に応じて光量調整素子3の内部の透過率を制御して、該内部を透過し出射するレーザ光のピーク光量を調整するピーク光量制御部5bと、を備える。また、制御部5は、光源駆動制御部5aとピーク光量制御部5bとからなる制御装置あるいはドライバである。
【0027】
ここで、光源1は、光源駆動制御部5aから供給される駆動電流(LD信号)と光源1用のフォトディテクタ(PD)信号により、ドループ特性及び高速応答特性が良好となる所定出力(例えば10mW)で常に発光するものとなっている。これは例えば、図1,図2の駆動電流1の場合の状態である。
【0028】
また、光源1と光量調整素子3の間に、光源1から出射されたレーザ光の光量を所定量に規定するアパーチャ2を備える。図3では、10mWで出力されたレーザ光を3mW一定のレーザ光としている。なお、コリメータレンズ等の光学素子を必要に応じて配置するとよい。
【0029】
なお、光源1がLDA(レーザダイオードアレイ)やVCSELなどの複数の発光部を有する多数光源構成である場合、光源駆動制御部5aは、前記複数の発光部それぞれの発光光量が所望値に調整された光源1についてオンオフ駆動制御を行うことが好ましい。
【0030】
光量調整素子3は、ピーク光量制御部5bからの信号(電気的制御)により内部の透過率が変化し、アパーチャ2からのレーザ光を所望のピーク光量(画像形成装置の光学系として必要となる光量)として出射可能な光学素子である。例えば光量調整素子3は、図3では、入射する3mWのレーザ光が内部を透過することにより、0.3mW〜3mWの範囲で任意に調整されて出射されるように、透過率の調整が可能となっている。
【0031】
また光量調整素子3は、前述した3つの効率変動(変動1〜3)に対応するために、電気的に少なくとも1秒以内に内部の透過率を変更できるものが好ましく、例えば、液晶偏光素子、可変式ND素子(連続ND素子)、音響光学素子、ファラデー素子のいずれかであることが好適である。
【0032】
このうち、液晶偏光素子は、テレビやビデオ、カメラのファインダー等の用途で汎用に用いられているものでよく、例えば図4に示すように、石英ガラスなどの透明基板3a上にITOなどの透明な電極3b及び配向膜3cを積層形成した1対の基板3dを配向膜3cが対向するようにしてスペーサ3sを介して配置し、内部に液晶層LCを充填したものである。この液晶偏光素子では、電極3b間に印加する電圧を変化させて液晶層LCの液晶配向を変化させることにより、内部全体の透過率が変化するようになっている。このように、光量調整素子3が液晶偏光素子であることにより、より安価で安定なレーザ駆動装置を実現することができる。またこのような液晶偏光素子は、広面積のものが比較的容易に得られるため、LDA(レーザダイオードアレイ)やVCSELなどの多数光源構成に好適である。
【0033】
可変式ND素子としては、例えば回転体に連続してNDフィルタの透過光量が調整できる素子などを想定しており、その素子を例えばステッピングモータ等で回転量制御することで、透過するレーザ光のピーク光量を調整することが可能となる。アナログ的に濃度が連続して変化するND素子の場合には、所定の透過効率場所が狭いため、LDAやVCSELなどの多数光源には向いていないが、図5(a)に示すように、デジタル的ではあるが連続的に透過効率を変更できるようなND素子の場合には上記課題はなく、本発明を実現可能である。すなわち、図5(a)に示す可変式ND素子は、回転体である円盤の中心角について16分割し、分割領域(中心角22.5度)ごとに濃度の異なるNDフィルタを配置した構成例であり、円盤を回転させることにより透過率を変化させることができる。このとき、円盤上の分割数はもっと多い方がよりアナログ的に設定値(透過率)変更が容易であり、例えば256値(8ビット)程度以上のステップがあったほうが良い。
また、図5(b)に示す可変式ND素子は、異なる濃度のNDフィルタを複数毎重ねることにより所望の透過光量を得る構成例であり、例えば所定の1または複数のNDフィルタを選択して入射するレーザ光の光路上に配置することにより所望の濃度(透過率)を実現可能である。
【0034】
このような固定の透過効率を持つNDフィルタを複数枚利用し、駆動系により連続的に切り替えることで可変濃度を実現することが出来る。また、光量調整素子3が可変式ND素子であることにより、より容易に安価で安定なレーザ駆動装置を実現することができる。
【0035】
音響光学素子(AOM素子)は、音響光学媒体に圧電素子を接着したものであり、該圧電素子に電気信号を加えて超音波を発生させて、内部を通るレーザ光を回折させることにより、透過光の光変調素子(あるいは光偏向素子、音響光学フィルタ)となる。このとき、圧電素子について一定の周波数での振幅変調させることによりレーザ光の透過率を変化させることができる。あるいは光偏向素子、音響光学フィルタとして用いるときには周波数変調及び振幅変調により出射するレーザ光の強度を調整する。
【0036】
このように、光量調整素子3が音響光学素子であることにより、より高速かつ高性能なレーザ駆動装置を実現することができる。なお一般に音響光学媒体は単結晶からなるため、複数光源の場合にはより大きな結晶が必要となる。
【0037】
ファラデー素子とは、非線形光学素子に磁界をかけることにより磁気カー回転を行わせることで偏光する素子であり、フィルタとして用いるものである。例えば、図6に示すように、2枚の偏光子P1,P2の間にファラデー旋光子Fを挟み、磁界Hによりファラデー旋光子Fの回転を調整してレーザ光の透過率を変化させるものである。このように、光量調整素子3がファラデー素子であることにより、より高速かつ高性能なレーザ駆動装置を実現することができる。
【0038】
図7,図8に、レーザ駆動装置10から出射される光出力の波形を示す。図7はレーザ駆動装置10から出射される光出力の波形のドループ特性であり、図8はその高速光応答波形である。
レーザ駆動装置10において、前述した図1(c1),(c2)(駆動電流3の条件)の場合と同じ光出力のレーザ光を出射する場合を考えると、つぎの過程を経て出力される。
(S1) まず光源1には光源駆動制御部5aから常に図7(a),図8(a)に示す駆動電流1のLD信号が入力される。
(S2) 光源1からは図7(b)に示すように最初の光出力から△Pだけ低下して定常の光出力となる波形で、かつ図8(b)に示すようにレーザ発振が所定時間だけ遅延してパルス幅が細くなった、レーザ光が出射される。
(S3) ついで、光源1から出射されたレーザ光はアパーチャ2で光量が所定量に規定された後に光量調整素子3に入射する。
(S4) 光量調整素子3ではピーク光量制御部5bにより内部が所定の透過率に調整されており、入射したレーザ光が減衰され、出射される。このとき、図7(b),図8(b)の光波形が単純に減衰され、図7(c),図8(c)の光出力の波形で出射される。すなわち、図7(c)に示すように、ドループ特性による光出力のピーク変動値は、ΔP×駆動電流3/駆動電流1となり、光出力の大きさに比例してドループ特性の影響が小さくなる。また、図8(c)に示すように、光出力の高速光応答波形は、レーザ発振の遅延が変わることがなく、光出力のパルス幅が図8(b)と同じで光量が小さい波形となる。
【0039】
以上のように、本発明のレーザ駆動装置10によれば、光源1から良好なドループ特性及び高速光応答特性のレーザ光を一定出力で出射した上で、光量調整素子3で減衰して出射するので、ドループ特性も高速光応答特性もその良好な特性を損なうことなく単純に減衰させたものとなり、レーザ駆動装置10から出射されるレーザ光の光出力の波形は従来のもの(図1,図2)に比べて非常に安定したものとなる。
【0040】
なお、レーザ駆動装置10から出射されたレーザ光の光量を透過型のフォトディテクタ(PD)でモニターしておき、その情報をピーク光量制御部5bにフィードバックして、出力される光量が一定になるように制御してもよい。
【0041】
つぎに、本発明に係る光走査装置の構成について説明する。
図9は、本発明に係る光走査装置の構成を示す概略図である。
光走査装置100は、図9に示すように、光源1,アパーチャ2,光量調整素子3,光源駆動制御部5a,ピーク光量制御部5bからなる本発明のレーザ駆動装置10と、シリンドリカルレンズ12と、主走査方向に偏向する手段(走査手段)であるポリゴンミラー13と、結像光学系でありfθレンズである偏向器側走査レンズ14a及び像面側走査レンズ14bと、感光体ドラム16側にレーザ光を折り返す折り返しミラー15と、これらをその所定位置に組み付けた図示しない光学ハウジング等を有している。
【0042】
本実施形態においては、XYZ3次元直交座標系において、シリンドリカルレンズ12の光軸に沿った方向をX軸方向、ポリゴンミラー13の回転軸に平行な方向をZ軸方向として説明する。また、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査方向」と略述する。
【0043】
図9に示すように、光走査装置100において、レーザ駆動装置10から出射されたレーザ光はシリンドリカルレンズ12により副走査方向に集光され、走査手段として回転するポリゴンミラー13の偏向反射面(単に反射面ともいう)に入射する。ついで、偏向反射面により反射されたレーザ光は、ポリゴンミラー13の等速回転とともに等角速度的に偏向し、走査レンズ14a,14bを透過して、折り返しミラー15で折り返されて感光体ドラム(単に感光体ともいう)16の被走査面上に集光する。このように、レーザ駆動装置10から出射されたレーザ光は被走査面上に光スポットとして結像され、被走査面の光走査が行われる。
【0044】
このような構成の光走査装置100では、本発明のレーザ駆動装置10を用いているので、光源1の駆動電流を変更する従来の構成で得られない非常に安定な光波形のレーザ光を利用することができ、半導体レーザの特性に依存する事のない安定した光書込みを実現することができる。
【0045】
つぎに、本発明に係る画像形成装置の構成について説明する。
図10は、本発明に係る画像形成装置の構成を示すものであり、本発明の光走査装置を用いた画像形成装置の全体側面図である。
図10において、電子写真装置である画像形成装置200は、各色の画像形成ユニット110,120,130,140を中間転写ベルト151上に配置し、中間転写ベルト151上にトナーによるカラー像を形成し、そのカラー像を給紙装置170から搬送される記録媒体である用紙に転写し、定着装置160で熱と圧力でトナーを溶融定着してカラー画像を形成する。
【0046】
画像形成ユニット110,120,130,140は4式あり、それぞれ黒色トナーを有するK現像ユニット110、シアン色トナーを有するC現像ユニット120、マゼンタ色トナーを有するM現像ユニット130、イエロー色トナーを有するY現像ユニット140である。
【0047】
そして、例えば画像形成ユニット110として、感光体ドラム111(図9でいう感光体ドラム16である)と、感光体ドラム111の周囲に感光体ドラム111表面を高圧に帯電する帯電装置112、入力された画像データに基づいた本発明の光走査装置100の光書込みにより感光体ドラム111上に記録された静電潜像に現像ローラ114aから帯電したトナーを付着させて顕像化する現像装置114、感光体ドラム111に残ったトナーを掻き取って備蓄するクリーニング装置115が配置されている。画像形成ユニット120,130,140についても同様である。なお、前述したような光走査装置100によるリアルタイムな走査線の位置ずれ補正を、画像形成ユニット110,120,130,140のすべてに適用するとよい。
【0048】
中間転写ベルト151は、複数のローラに張架され回動される無端状のベルトであり、各画像形成ユニット110,120,130,140の感光体ドラム及び二次転写ローラ150と接触している。また、一次転写ローラ(不図示)は、感光体ドラム111などに対向して中間転写ベルト151内側に感光体ドラム111等に対向して配置される。
【0049】
用紙は、用紙を堆積した給紙装置170からピックアップローラ171で1枚ずつ引き出され、レジストローラ172を経て、二次転写ローラ150とその対向ローラにより押し付けられながら中間転写ベルト151と接触して画像が転写され、搬送ベルトを介して定着装置160へ至る。
【0050】
定着装置160では、所定温度に加熱された定着部材と加圧部材とが所定の圧力で当接してニップ部が形成されており、ニップ部を通過する用紙に熱と圧力が付与されるようになっている。
【0051】
画像形成装置200において画像を形成する場合、例えば画像形成ユニット110では感光体ドラム111上を帯電装置112で帯電させ、光走査装置100で画像に応じた光をあてて、感光体ドラム111上の電位を落とす。その部位が感光体ドラム111の回転により、現像装置114に達し、現像ローラ114a上のトナー層と接すると帯電しているトナーが画像位置に付着する。
【0052】
感光体ドラム111上のトナー画像は、一次転写ローラが中間転写ベルト151を感光体ドラム111に向かって押し付ける部位で、中間転写ベルト151上に転写される。各画像形成ユニット120、130、140でも同様にして感光体ドラム上のトナー画像が中間転写ベルト151上に転写され、カラーのトナー画像が形成される。そして、中間転写ベルト151の搬送により、二次転写ローラ150の部位で搬送されてきた用紙上にトナー画像は転写される。トナー画像が転写された用紙は、定着装置160に搬送され、熱と圧力により、トナーが溶融定着されカラー画像が形成され、排紙ローラ191により排紙トレイ190に排出される。
【0053】
なお、光走査装置100におけるレーザ駆動装置10の光量調整素子3の透過率の調整は、画像濃度情報に基づいて調整を行うとよい。画像濃度情報とは、例えばマシン自身が定期的に行うプロセスコントロール動作において、実際に形成した画像の画像濃度を濃度検知センサーを用いて測定した結果の情報である。本発明では、その画像濃度情報に基づいて、画像が所望の濃度になるようにピーク光量制御部5bが光量調整素子3を調整することにより、変動1(光学系の特性ばらつき(効率変動))や変動2(感光体等のプロセス効率変動(感度等のばらつきやプロセス経時変化))や変動3(機種間の効率変動)を同時に補正することが可能である。またその場合に、光源1自身の光量を変更していないため、光波形そのものは非常に良好で安定な方形波を得ることができる。そのためには、ある所望の一定時間である所望の透過率に変化できる、つまり動的な透過率連続可変機能が必要である。この動的な変化の速度によっては、シェーデイング特性補償にもちいることも可能である。
【0054】
以上のように、本発明の画像形成装置によれば、本発明の光走査装置100を用いるので、正確な光走査が可能となり、高画質の画像を形成することができる。特に、カラーレーザプリンタやカラーデジタル複写機に適用した場合に、色ずれの少ない高画質のカラー画像を形成することができる。
【0055】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0056】
例えば、図11に示すように、本発明のレーザ駆動装置10として、レーザ光を出射する光源1と、光源1から出射するレーザ光の光量を一定として光源1のオンオフ駆動制御を行う光源駆動制御部5aと、光源1から出射されたレーザ光の光路上に配置され、入射するレーザ光の反射率を電気的に変更可能な光量調整素子3’と、光量調整素子3’の反射率を制御して、光量調整素子3’における反射により出射されるレーザ光のピーク光量を調整するピーク光量制御部5bと、を備えることを特徴とするものとするとよい。この場合、光量調整素子3’は、前述した3つの効率変動(変動1〜3)に対応するために、電気的に少なくとも1秒以内に反射率を変更できるものが好ましく、例えば、反射型の液晶偏光素子が挙げられる。
【0057】
このようなレーザ駆動装置10によっても、光源1から良好なドループ特性及び高速光応答特性のレーザ光を一定出力で出射した上で、光量調整素子3’で減衰して出射するので、ドループ特性も高速光応答特性もその良好な特性を損なうことなく単純に減衰させたものとなり、レーザ駆動装置10から出射されるレーザ光の光出力の波形は従来のもの(図1,図2)に比べて非常に安定したものとなる。
【符号の説明】
【0058】
1 光源
2 アパーチャ
3,3’ 光量調整素子
3a 透明基板
3b 電極
3c 配向膜
3d 基板
3s スペーサ
5 制御部
5a 光源駆動制御部
5b ピーク光量制御部
10 レーザ駆動装置
12 シリンドリカルレンズ
13 ポリゴンミラー
14a,14b 走査レンズ
15 折り返しミラー
16,111 感光体ドラム
100 光走査装置
110,120,130,140 画像形成ユニット
112 帯電装置
114 現像装置
114a 現像ローラ
115 クリーニング装置
150 二次転写ローラ
151 中間転写ベルト
160 定着装置
170 給紙装置
171 ピックアップローラ
172 レジストローラ
190 排紙トレイ
191 排紙ローラ
200 画像形成装置
F ファラデー旋光子
H 磁界
LC 液晶層
P1,P2 偏光子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】特開昭63−197037号公報
【特許文献2】特開平5−063283号公報
【特許文献3】特開2004−128342号公報
【特許文献4】特開2008−233115号公報
【特許文献5】特開2008−292956号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射するレーザ光の光量を一定として該レーザ光源のオンオフ駆動制御を行う光源駆動制御部と、
前記レーザ光源から出射されたレーザ光の光路上に配置され、入射するレーザ光の透過率または反射率を電気的に変更可能な光量調整素子と、
前記光量調整素子の透過率または反射率を制御して、該光量調整素子における透過または反射により出射されるレーザ光のピーク光量を調整するピーク光量制御部と、
を備えることを特徴とするレーザ駆動装置。
【請求項2】
前記レーザ光源は複数の発光部を有し、
前記光源駆動制御部は、前記複数の発光部それぞれの発光光量が所望値に調整されたレーザ光源についてオンオフ駆動制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のレーザ駆動装置。
【請求項3】
前記光量調整素子は、液晶偏光素子、可変式ND素子、音響光学素子、ファラデー素子のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ駆動装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のレーザ駆動装置を備える光走査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光走査装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記ピーク光量制御部は、形成した画像の濃度偏差に基づいて前記光量調整素子の透過率または反射率を制御して、該光量調整素子から出射されるレーザ光のピーク光量を調整することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図3】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−258796(P2011−258796A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132727(P2010−132727)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】