説明

ロボットハンド

【課題】産業用ロボットの腕に着脱自在なロボットハンドに関する部品点数を削減する。
【解決手段】ロボットハンド3は、ロボットの腕に連結するための特定の構造を有する連結部31と、連結部31に接続するハンド本体部32と、ハンド本体部32の先端部に取付けられてワーク9を把持するチャック部33とを備えている。そして、連結部31とハンド本体部32とは、一体部位30として一体的に成形されている。これにより、ロボットハンド3に関する部品点数を削減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットの腕に着脱自在なロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
多点数の部品から構成される組立体をロボットにより自動的に組み立てる自動組立技術が知られている。
【0003】
例えば特許文献1に開示される自動組立技術においては、ロボットの腕に装着するロボットハンドを組立体の品種切替えに応じて交換できるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−354919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のロボットハンドでは、ロボットの腕にロボットハンドを連結させるための構造を有する特定の部品をハンド本体に取付けなければならないため、その分、ロボットハンドを構成する部品の数が増加してしまう。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、産業用ロボットの腕に着脱自在なロボットハンドに関する部品点数を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、産業用ロボットの腕に着脱自在なロボットハンドであって、(a)前記腕に連結する連結部と、(b)前記連結部に接続するハンド本体部と、(c)前記ハンド本体部に接続し、被把持物を把持する把持部とを備え、前記連結部と前記ハンド本体部とは、一体部位として一体的に成形されている。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係るロボットハンドにおいて、前記一体部位は、樹脂で形成されている。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係るロボットハンドにおいて、前記一体部位の内部には、前記把持部に駆動エアーを供給する流路が形成されている。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明に係るロボットハンドにおいて、前記一体部位の内部または表面には、電気配線のルートが形成されている。
【0011】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明に係るロボットハンドにおいて、前記一体部位の内部または表面には、電気配線が施されている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1ないし請求項5の発明によれば、産業用ロボットの腕に連結する連結部とハンド本体部とは、一体部位として一体的に成形されているため、ロボットハンドに関する部品点数を削減できる。
【0013】
特に、請求項2の発明においては、一体部位が樹脂で形成されているため、ロボットハンドの軽量化が図れるとともに、加工性や絶縁性が向上する。
【0014】
また、請求項3の発明においては、一体部位の内部には把持部に駆動エアーを供給する流路が形成されているため、ロボットハンドの外部に駆動エアーの配管等を設ける必要がなくなり、ロボットの動作範囲の拡大が図れる。
【0015】
また、請求項4の発明においては、一体部位の内部または表面に電気配線のルートが形成されているため、ロボットの動作等によって断線のおそれがあるロボットハンド外部の空中配線の区間を短縮できる。
【0016】
また、請求項5の発明においては、一体部位の内部または表面に電気配線が施されているため、ロボットの動作等によって断線のおそれがあるロボットハンド外部の空中配線の区間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<ロボットの要部構成>
図1は、本発明の実施形態に係るロボットハンド3を腕に装着したロボット1の要部構成を示す外観図である。なお、本図ではロボットハンド3で角柱状のワーク9を把持している様子を示している。
【0018】
産業用ロボットであるロボット1は、鉛直軸まわりの2つの旋回自由度の間に、水平軸まわりの3つの回動自由度をアーム結合した6自由度の垂直多関節ロボットとして構成されている。そして、ロボット1では、部品などのワーク9を把持して水平方向にそのワーク9を組み付ける作業を行うことも可能で、上下方向にワーク9を組み付ける作業も可能となっている。
【0019】
ロボット1のアーム(腕)2は、その先端にロボットハンド3を着脱可能な着脱部21が設けられている。この着脱部21と、着脱部21に連結するための特定の構造を有するロボットハンド3の連結部31との着脱動作について、図2を参照して説明する。ここで、図2(a)は、着脱部21に連結部31が結合されていない状態を示し、図2(b)は、結合されている状態を示している。
【0020】
アーム2の先端の着脱部21は、その中心軸に沿って突出した短尺の円筒形とされた突出部22を有しており、この突出部22の側面の複数箇所に形成された円形孔のそれぞれの内部に、この円形孔よりも若干大きな径を持つ可動球23が収容されている。円筒突出部22の内部にはアーム2内を通して圧縮空気が供給されるようになっており、その圧縮空気の供給のON/OFFによって、可動球23が円筒突出部22の側面から出没できるようになっている。
【0021】
一方、ロボットハンド3の連結部31に設けた着脱孔31Hは、その出口付近が狭まるような逆テーパの傾斜面31aを有する構造となっており、その開口径が、アーム2側の突出部22の外径と適合している。
【0022】
そして、図2(a)に示す非結合状態では、可動球23は突起部22の内部に収容されている。ところが、図2(b)に示す結合状態では、圧縮空気の供給によって可動球23を移動させて可動球23の一部を突起部22の外部に突出させることにより、着脱孔31Hの傾斜部31aに可動球23が係合する。これによって、アーム2とロボットハンド3とが連結されることとなる。以上の動作により、組立作業に必要なロボットハンド3の交換が容易となる。また、圧縮空気の供給を停止すると可動球23への付勢力は消失し、アーム2を引き抜くことによってロボットハンド3をその自重で取り外すことができる。
【0023】
<ロボットハンド3の要部構成>
図3は、ロボットハンド3の要部構成を示す斜視図である。なお、本図ではロボットハンド3でワーク9を把持している様子を示している。
【0024】
ロボットハンド3は、上述のように短尺の円筒形状を有する連結部31と、連結部31に接続するハンド本体部(以下では単に「本体部」とも称する)32と、本体部32に接続する8つのチャック部(把持部)33とを備えている。そして、連結部31と本体部32とは、一体部位30として樹脂で一体的に成形されている。この一体部位30の成形には、例えば所定の金型が用いられる。
【0025】
本体部32は、掌に相当するベース部321と、ベース部321から4方向に伸びる4つのブランチ部322とを備えている。各ブランチ部322は、先端が2つに分岐しており、各先端部には例えば金属製のチャック部33が取り付けられている。なお、チャック部33は、軽量化を図るために樹脂で形成するようにしても良い。
【0026】
一体部位30の内部には、エアー駆動するチャック部33に圧縮空気(駆動エアー)を供給するための管路と、チャック部33に電気的に接続する電線を通すための管路とが形成されている。ここで、一体部位30は加工性に優れる樹脂で形成されているため、一体部位30の内部に管路を設けるのは容易である。以下では、これらの管路について詳しく説明する。
【0027】
図4は、図3のIV−IV位置から見た一体部位30の断面を示す図である。
【0028】
一体部位30に設けられる管路30aは、着脱部21に接続する連結部31の端面31eからチャック部33まで通じる駆動エアーの流路(一部の図示を省略)として形成されている。
【0029】
このような構成の管路30aにより、アーム2内を通して送られる圧縮空気を管路30aの連結部31に位置する入口30iに供給すれば、管路30aを介してチャック部33に圧縮空気を送れることとなる。これにより、ロボットハンド3の外部に駆動エアーの配管を設けることなく、チャック部33の2つのフィンガー34a、34bを閉方向に駆動して被把持物であるワーク9を把持することが可能となる。
【0030】
以上のように一体部位30の内部に駆動エアーの管路30aを設けることにより、チャック部33に駆動エアーを供給する配管などが不要となってロボット1の動作範囲の拡大が図れる。
【0031】
図5は、図3のV−V位置から見た一体部位30の断面を示す図である。
【0032】
一体部位30に設けられる管路30bは、ベース部321内に装着される基板35からブランチ部322の途中まで通じる電気配線の通路(ルート)として形成されている。なお、基板35は、例えばモジュール化されており、端子台や小配線が実装されている。
【0033】
このような管路30bの内部にはケーブルCが敷設されており、ケーブルC(Ca,Cb)の両端は基板35とチャック部33とに接続している。なお、ケーブルCa、Cbそれぞれは、図3に示す各チャック部33a、33bに接続される。このようなケーブルCにより、例えばチャック部33のフィンガー34a、34bでワーク9が適切に把持されているか否かを検知する検知センサからの信号を基板35で受信することが可能となる。このように本体部32には、チャック部33の把持や検知が機能するようにチャック部33が設置されている。
【0034】
以上のように樹脂製の一体部位30の内部に電気配線用の管路30bを設けることにより、ロボット1の動作等により断線のおそれのある空中配線の区間を短縮できるとともに、配線に関する絶縁性が向上する。
【0035】
以上のようにロボットハンド3では、ロボットの腕に連結する連結部31と本体部32とが一体部位(一体部品)30として成形されているため、ロボットハンドに関する部品点数を削減できる。また、一体部位30は樹脂で形成されているため、ロボットハンドの軽量化が図れる。これにより、ロボットハンドが装着されたアームの動作スピードを向上でき、作業時間の短縮化が図れる。
【0036】
なお、本実施形態のロボットハンドについては、図1に示すような垂直多関節ロボットに装着可能なタイプに限らず、図6に示す他のロボット5に装着可能なタイプであっても良い。このロボット5のロボットハンドに関して以下で説明する。
【0037】
ロボット5は、鉛直軸まわりの3つの旋回自由度のアーム結合の先端に鉛直軸方向の1つの伸縮自由度を持たせた4自由度の水平多関節ロボットとして構成されている。そして、ロボット5では、部品などのワーク9を把持して上下方向に部品を組み付ける作業が可能となっている。
【0038】
ロボット5のアーム6は、その先端にロボットハンド7を着脱可能な着脱部61が設けられている。
【0039】
図7は、ロボットハンド7の要部構成を示す斜視図である。
【0040】
ロボットハンド7は、上記のロボットハンド3の連結部31と同様の構成を有する連結部71と、連結部71に接続するハンド本体部(以下では単に「本体部」ともいう)72と、本体部72に接続(設置)する2つのチャック部73とを備えている。そして、連結部71と本体部72とは、一体部位70として樹脂で一体的に成形されている。これにより、上記のロボットハンド3と同様にロボットハンド7の構成部品数を削減できるとともに軽量化が図れることとなる。
【0041】
チャック部73は、2本のブランチ部731と、各ブランチ部731の先端に取り付けられたチャック本体732とを備えている。このチャック本体732は、上記のロボットハンド3のチャック部33と同様の構成を有しており、駆動エアーを用いてワーク9の把持が可能となっている。
【0042】
このような構成のロボットハンド7においても、一体部位70の内部に図4の管路30aに相当する駆動エアーの管路を設けることにより、この管路を介しアーム6内を通じて送られる圧縮空気をチャック本体732に供給できることとなる。
【0043】
また、一体部位70の内部に図5の管路30bに相当する電気配線用の管路を設けることにより、ロボット5の動作等によって断線のおそれがある空中配線の区間を短縮できる。
【0044】
<変形例>
上記の実施形態における一体部位については、樹脂で形成するのは必須でなく、例えばアルミダイカストなどの材質で形成するようにしても良い。このように一体部位を樹脂やアルミダイカストで成型すれば、大量生産が可能となる。
【0045】
また、一体部位については、金属を切削加工して製造しても良い。
【0046】
上記の実施形態における電気配線については、一体部位の内部に配線用の管路を設けるのは必須でなく、一体部位の表面付近に電線を敷設するようにしても良い。具体的には、図8(a)に示すように一体部位30の表面に電気配線のルートとして形成された溝30cに沿ってケーブルCcを敷設しても良く、また図8(b)に示すように一体部位30の表面に直接ケーブルCdを敷設して電気配線を施すようにしても良い。
【0047】
また、一体部位の内部に電気配線用の管路を設けず、樹脂製の一体部位を成形する際に内部にケーブル(電線)を混入し一体とすることにより、一体部位の内部に電気配線を施すようにしても良い。
【0048】
上記の実施形態におけるロボットハンド3の一体部位については、図9に示す一体部位30Aを一体的に成形するようにしても良い。
【0049】
一体部位30Aは、図3に示すロボットハンド3の連結部31およびベース部321と同様の構成を有する連結部31Aおよびハンド本体部32Aとを備えている。なお、図3に示すロボットハンド3のブランチ部322に相当する部位(把持部)は、本体部32Aの4つの接続面32fに接続することとなる。
【0050】
以上のような構成の一体部位30Aにおいても、部品点数の削減や軽量化が図れることとなる。
【0051】
また、一体部位30Aの内部に、管路30a(図4)に相当する駆動エアーの管路30pや、管路30b(図5)に相当する電気配線用の管路30qを形成することにより、ロボットハンドの外部に設けるエアー配管や空中配線の区間を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係るロボットハンド3を腕に装着したロボット1の要部構成を示す外観図である。
【図2】アーム2の着脱部21とロボットハンド3の連結部31との着脱動作を説明するための図である。
【図3】ロボットハンド3の要部構成を示す斜視図である。
【図4】図3のIV−IV位置から見た一体部位30の断面を示す図である。
【図5】図3のV−V位置から見た一体部位30の断面を示す図である。
【図6】他のロボット5の要部構成を示す外観図である。
【図7】ロボットハンド7の要部構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の変形例に係る電気配線を説明するための図である。
【図9】本発明の変形例に係る一体部位30Aを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
1、5 ロボット
2、6 アーム
3、7 ロボットハンド
9 ワーク
21、61 着脱部
30、30A、70 一体部位
30a、30p 駆動エアーの管路
30b、30q 電気配線用の管路
30c 電気配線用の溝
31、31A、71 連結部
32、32A、72 ハンド本体部
33、33a、33b、73 チャック部
34a、34b フィンガー
35 基板
321 ベース部
322、731 ブランチ部
732 チャック本体
C、Ca〜Cd ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用ロボットの腕に着脱自在なロボットハンドであって、
(a)前記腕に連結する連結部と、
(b)前記連結部に接続するハンド本体部と、
(c)前記ハンド本体部に接続し、被把持物を把持する把持部と、
を備え、
前記連結部と前記ハンド本体部とは、一体部位として一体的に成形されていることを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
請求項1に記載のロボットハンドにおいて、
前記一体部位は、樹脂で形成されていることを特徴とするロボットハンド。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のロボットハンドにおいて、
前記一体部位の内部には、前記把持部に駆動エアーを供給する流路が形成されていることを特徴とするロボットハンド。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のロボットハンドにおいて、
前記一体部位の内部または表面には、電気配線のルートが形成されていることを特徴とするロボットハンド。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のロボットハンドにおいて、
前記一体部位の内部または表面には、電気配線が施されていることを特徴とするロボットハンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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