説明

不等沈下対策用の屋外排水設備

【課題】建物と屋外埋設排水系の間の不等沈下ならびに屋外埋設排水系の間の不等沈下を防止することができ、安価なコストで建造できる屋外排水設備を提供する。
【解決手段】建物11に固定されるブラケット13と、建物から出てくる排水を受ける合成樹脂製の排水枡14および枡同士を接続する合成樹脂製の排水管15とを備え、その排水枡14と排水管15とが前記ブラケット13によって支持されている不等沈下対策用の屋外排水設備10。排水管15を囲むように、排水管との間に隙間をあけて金網からなる籠16が配置され、その籠16の内部では外側の地盤より粗く埋め戻しされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不等沈下対策用の屋外排水設備に関する。さらに詳しくは、建物の外構に設けられ、建物の複数個所から出てくる排水を最終的には公共の集合枡に流すための屋外排水設備に関する。
【背景技術】
【0002】
図5および図6に示すように、建物100からの排水を流す排水枡101や排水管102は、公設の下水本管に接続するため、公設枡103に向かって所定の勾配をとれるように、建物の周囲を掘削した溝に設置する。そのような排水枡101は、汚水、雨水、雑排水に関わらず、コンクリート製のものが用いられることが多い。そして内部に溜まる水の重量を充分に支持するため、図6に示すように掘削溝の底部104を転圧などで固め、その上に割り栗105を敷設した後、排水枡101を設置する。また、排水枡101の間を接続する排水管102についても、掘削溝の底部に枕木106を敷設し、その上に設置する。
【0003】
ところで表層地盤が弱い場合は、建物は耐力設計した杭を強固な地下地盤まで打ち込み、その杭上に建物の基礎を設けたり、あるいは地中梁の下端に設けたフーチン107を地下地盤で支える。しかし排水枡101や排水管102などの屋外埋設排水系は表層地盤に設置するだけなので、沈下量に差が生じ、不等沈下を生じてしまう。そこで従来は、建物100から排水枡101へ延ばす配管108は、上下の変位を許すフレキシブル継ぎ手109を介して排水枡101に接続している。なお、符号110はフレキシブル継ぎ手109のメンテナンス用のピットである。
【0004】
他方、地震対策などのために、排水枡本体と、その排水枡本体から立ち上がる立ち上がり管とを、縦方向に移動自在に、かつ水密に接続し、立ち上がり管に沈下防止リブを設けることにより、立ち上がり管の上端の蓋が地表から突出したり沈下しないようにした排水枡が提案されている(特許文献1参照)。また、立ち上がり管を、軸方向の移動を許すテレスコピック構造とした埋設管も提案されている(特許文献2、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平7−3874号公報
【特許文献2】実開平1−83988号公報
【特許文献3】特開平6−229002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
建物から出てくる配管と外部の配管の間にフレキシブル継ぎ手を介在させる方法は、建物と屋外埋設排水系との沈下差を吸収するが、排水枡同士の不等沈下により、配管勾配が変化したり、排水枡間を連結する排水管の破損を引き起こすことがある。また、排水管の勾配の設定は、表層地盤上の割り栗や盛り土で行うので、勾配量を使ってしまい、公設枡への最終配管の勾配がゼロ近くになることが多い。さらに竣工後、不等沈下やそれによる排水管の破損などで勾配逆転が発生すると、再度掘削して補修工事をする必要がある。さらにフレキシブル継ぎ手は、それ自体が高価であり、しかも建物のすぐ近くにピット110などのメンテナンススペースをとる必要があるので一層コストアップになる。
【0007】
本発明は建物と屋外埋設排水系の間の不等沈下を防止すると共に、屋外埋設排水系の間の不等沈下をも防止することができ、しかも安価なコストで施工できる屋外排水設備を提供することを技術課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の不等沈下対策用の屋外排水設備(請求項1)は、建物に固定される支持部材と、排水を受ける排水枡および排水枡同士を接続する排水管とを備え、その排水枡および排水管が前記支持部材によって支持されていることを特徴としている。
【0009】
このような屋外排水設備は、前記排水管を囲むように、排水管との間に隙間をあけて配置されるシートを有し、そのシートと排水管の間の隙間が、シートの外側の地盤より粗く埋め戻しされているものが好ましい(請求項2)。前記シートは、網ないし籠で構成するのが好ましい(請求項3)。また、前記排水管および排水枡は、合成樹脂製とするのが好ましい(請求項4)。
【発明の効果】
【0010】
本発明の屋外排水設備(請求項1)は、排水枡および排水管が支持部材を介して建物によって支持されているので、建物を残して周囲の表層地盤が沈下しても、排水枡および排水管は建物と一体になって沈下しない。逆に建物が沈下することがあっても、建物の沈下量と屋外排水管系全体の沈下量とが同一となり、不等沈下を防止することができる。さらに建物および支持部材を介してそれぞれの排水枡の沈下量や排水管の沈下量も同一になる。そのため、それらの間での不等沈下が防止され、排水管が破損したり勾配が変化したりすることもない。
【0011】
前記排水管を囲むように、排水管との間に隙間をあけて配置されるシートを有し、そのシートと排水管の隙間が、シートの外側の地盤より粗く埋め戻しされている屋外排水設備(請求項2)は、建物の沈下によって排水管が下降する場合に、周囲の地盤から強い抵抗を受けない。そのため、一層不等沈下を防止することができる。
【0012】
前記シートを網ないし籠で構成する場合(請求項3)は、シートの透水性が高く、しかもシートが周囲の土圧によって変形しても、排水管には影響が及びにくい。前記排水管および排水枡を合成樹脂製とする場合は、軽量であるので、支持部材の負担が少ない(請求項4)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに図面を参照しながら本発明の不等沈下対策用の屋外排水設備の実施の形態を説明する。図1は本発明の屋外排水設備の一実施形態を示す斜視図、図2はその屋外排水設備の側面図、図3はその屋外排水設備の設置手順を示す工程図、図4は本発明に関わる排水管の吊り構造の実施形態を示す正面図である。
【0014】
図1に示す屋外排水設備10は、建物11の基礎部分あるいは地中梁12に固定されるブラケット13と、建物11から出てくる排水を受ける排水枡14と、排水枡同士を接続する排水管15と、排水管15の屈曲部に配置され、集合枡として機能する排水枡14aと、前記排水管15を囲むように配置されている籠16とを備えている。この実施形態では、排水管15がブラケット13によって吊り持ち支持され、排水管15と連結されている排水枡14、14aは排水管15およびブラケット13を介して建物11によって支持されている。
【0015】
前記ブラケット13は、構造用の鋼などで形成されるものであり、この実施形態では図3に示すように、底板17と、その底板の後端から立ち上がる立ち上がり板18と、両者の先端同士を連結する傾斜板19とから構成され、たとえば溶接などで一体にされている。各板には、補強用のリブを設けるのが好ましく、L型鋼(アングル)、I型鋼などの型鋼で構成してもよい。立ち上がり板18は、建物11の基礎となるコンクリート製の地中梁12に対して埋め込まれた、あるいは打ち込まれたアンカーボルト20とナット21とによって地中梁12に固定される。
【0016】
ブラケット13は、地中での耐久性が高いように、ステンレススチール、炭素鋼の表面にコールタールを塗布したもの、炭素鋼の表面にペトロラタム系ペーストを塗布した上にペトロラタム系防食テープを巻いたものなどで製造することもできる。ブラケット13の個数はとくに制限はないが、通常は1本の排水管15について1〜2か所程度をブラケット13で支持する。なお、ブラケット13を上下逆にして、ブラケットの上に排水管15を設置するようにしてよく、他の形状のブラケットを採用してもよい。
【0017】
図2に示すように、前記排水枡14、14aは、容器状の枡本体22と、その上方に延びる筒状の点検筒23と、その上端開口を開閉自在に塞ぐ蓋体24とを備えている。さらに蓋体24の上方の地表には、リング状の枠体25と、その枠部材の中央の開口を閉じる蓋部材26とが設けられている。点検筒23と枠体25を切り離しているのは、排水枡14が不等沈下しても、蓋部材26を地表に残すようにするためである。枡本体22、点検筒23および蓋体24はポリ塩化ビニルなどの合成樹脂製とするのが好ましい。それにより、屋外排水系全体が軽量となり、排水管15やブラケット13の負担が少なくなる。また、内面が平滑であるので、雑排水でもスムーズに流すことができる。
【0018】
排水枡14の枡本体22は、建物11から出てくる排水用の配管27と連結されている。その配管27は、地中梁12を貫通する水平管28と、直角エルボを介して連結され、下向きに延びる垂直管29とその垂直管29の下端と直角エルボを介して枡本体22とを連結する第2水平管30とからなる。これらの配管27もポリ塩化ビニルなどの軽量の合成樹脂が好ましい。また、公設枡31への配管32にはフレキシブル継ぎ手33を使用しているが、建物11の外部に排水する配管27にはフレキシブル継ぎ手を用いていない。
【0019】
前記排水管15は、排水枡14、14aの枡本体22同士を連結しており、略水平で、所定の勾配に設定されている。そして少なくともその1か所、好ましくは2か所を前記ブラケット13で支持している。図3に示すように、排水管15はブラケット13の底板17の先端近辺に対し、たとえば従来公知のU字ボルト34とナット35などにより締結されている。排水管15の勾配はブラケット13の取り付け高さで精密に設定することができるが、さらに微調節する場合は、排水管15と底板17の間にスペーサなどを介在させる。ただしネジなどにより、連続的に調節できるように構成することもできる。
【0020】
排水管15は図3のようにブラケット13に直接取り付けるほか、たとえば図4に示すように、吊りバンド36および吊りボルト36aでブラケット13に吊り下げてもよい。このように吊りバンド36などで吊り下げることより、精密な勾配で配管工事を行うことができる。また、建物のフーチン37の下面より深い地中に排水管15を設置する場合は、吊りバンド36および吊りボルト36aを用いることにより、容易に建物との一体化を図ることができる。
【0021】
排水管15の周囲を囲む籠16は、たとえば金網を円筒状に巻いたもので構成することができる。籠16に用いる金網は、たとえば平織金網であれば、径0.3〜1.2mmの耐食塗装鋼線やステンレススチール線を素線に用いたメッシュ3〜10のものが好ましい。亀甲金網であれば、線形0.5〜1.5mmの呼称編み目6〜20mmのものが好ましい。このような金網は隙間が大きいので透水性が高く、可撓性を有するので施工が容易であり、土圧に対してある程度の耐圧性を備えている。
【0022】
図1に示すように、前述の排水管15は建物11の壁に沿って配置され、建物11から出てくる排水管27と排水枡14で合流しながら建物11のコーナ部などに設けられる排水枡14aに向かって次第に下降するように勾配がつけられる。そして最終的に排水が集まる排水枡14aは、図2に示すように、太い配管32およびフレキシブル継ぎ手33などを介して公道に隣接する敷地内の地中に設置されている公設枡31に連結される。この場合、公設枡31に接続するまでが敷地内工事となる。なお、図2の符号38は公設枡31を支持する割り栗である。符号GLはグランドレベルを示している。
【0023】
つぎに上記の屋外排水設備10の設置工事の方法を説明する。まず、図1に示すように、建物11の地中梁12の周囲を掘削する。地中梁12をコンクリートで形成した後、途中まで埋め戻してもよい。ついで地中梁12にブラケット13を固定し、排水管15を前述のUボルト34などでブラケット13に取り付ける。さらに排水管15に排水枡14を連結する。ついで図3の第1工程S1で示すように、排水管15の下部を残して埋め戻す。埋め戻しには、図2に示すように、第1砂層39、第2砂層40、第3砂層41が用いられ、層ごとに転圧する。
【0024】
そして図3の第2工程S2で示すように、籠を形成するための金網42を略半円筒ないしU字状の形状に撓ませて排水管15の下方に設置する。砂層40、41と金網42の間は、各砂層と同様の砂で埋め戻す。さらに金網42の内側に、金網42の外側よりも粗い密度で砂43を充填する。砂43に発泡スチロール片などの軟らかいものを混入してもよい。そして第3工程S3で示すように、金網42の上部を半円状に閉じて、籠16を形成する。ブラケット13や排水枡14と干渉する部位では、金網42を切り取ったり曲げたりする処置を行う。そして図2のように、第3砂層41の上部を埋めて、その上に第1良質土層45、第2良質土層46を埋め戻し、地表近辺は現場土47で埋め戻して周囲と違和感がないようにする。
【0025】
上記のように構成される屋外排水設備10は、排水管15や排水枡14、14aがブラケット13で建物11と一体化されているので、埋め戻しした周囲の土壌が沈下しても、建物11との間で不等沈下しない。また、排水管15同士、排水枡14同士、あるいは排水管15と排水枡14との間の不等沈下も防止される。そのため、屋外排水系の機器の損傷が少なく、勾配の逆転が生じるトラブルが減少する。なお、図3の第3工程S3で示すように、排水管15の周囲は籠16で囲まれており、その内部の砂43の密度が低いため、周囲の土壌が沈下しても、排水管15はそれほど抵抗を受けずに元の高さ(想像線15a)を維持することができる。また排水枡14の点検筒23が合成樹脂製であるので、周囲の土壌に対して滑りやすく、それによっても沈下の影響を受けにくい。
【0026】
さらに高価で、ピットなどのメンテナンススペースを建屋側に要求するフレキシブル継ぎ手の使用本数が減るので、作業が削減され、コストが低下する。また、枡間の排水管の勾配は、ブラケットや吊りバンドおよび吊りボルトで規定が可能なため、精度がよい。そのため、たとえば1/100程度の勾配で設定することができる。したがって屋外排水系で使用する高低差を小さくすることができ、公設枡への配管勾配を充分に確保することができる。
【0027】
前記実施形態では排水管15や排水枡14を合成樹脂製にしているが、ステンレススチールや、外面にペトロラタム系ペースト塗布と防食テープとを施した内面ライニング鋼管などの耐食性が高い金属で構成することもできる。また、ブラケット13は金属製としているが、合成樹脂製やコンクリート製にすることも可能である。また、排水管15の周囲に金網で構成した籠を設けているが、樹脂亀甲網など、合成樹脂製の網や、竹製の籠で構成することもできる。籠は必ずしも可撓性を有する必要はなく、たとえば薄いステンレススチール製パンチングメタルなどの剛性が高いシートで構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の屋外排水設備の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の屋外排水設備の側面図である。
【図3】図1の屋外排水設備の設置手順を示す工程図である。
【図4】本発明に関わる排水管の吊り構造の実施形態を示す正面図である。
【図5】従来の屋外排水設備の一例を示す斜視図である。
【図6】図5の屋外排水設備の側面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 屋外排水設備
11 建物
12 地中梁
13 ブラケット
14、14a 排水枡
15、15a 排水管
16 籠
17 底板
18 立ち上がり板
19 傾斜板
20 アンカーボルト
21 ナット
22 枡本体
23 点検筒
24 蓋体
25 枠体
26 蓋部材
27 建物から出てくる配管
28 水平管
29 垂直管
30 第2水平管
31 公設枡
32 太い配管
33 フレキシブル継ぎ手
34 U字ボルト
35 ナット
36 吊りバンド
36a 吊りボルト
37 フーチン
38 割り栗
GL グランドレベル
S1 第1工程
S2 第2工程
S3 第3工程
39 第1砂層
40 第2砂層
41 第3砂層
42 金網
43 砂
45 第1良質土層
46 第2良質土層
47 現場土層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に固定される支持部材と、
排水を受ける排水枡および枡同士を接続する排水管とを備え、
その排水枡および排水管が前記支持部材によって支持されている、
不等沈下対策用の屋外排水設備。
【請求項2】
前記排水管を囲むように、排水管との間に隙間をあけて配置されるシートを有し、
そのシートと排水管の隙間が、シートの外側の地盤より粗く埋め戻しされている、請求項1記載の不等沈下対策用の屋外排水設備。
【請求項3】
前記シートが網ないし籠である請求項2記載の不等沈下対策用の屋外排水設備。
【請求項4】
前記排水管および排水枡が合成樹脂製である請求項1記載の不等沈下対策用の屋外排水設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate