説明

中耕除草機及び中耕培土作業方法

【課題】条間の幅に応じた中耕ディスクの位置変更作業を容易にし、また中耕作業と培土作業の切替作業が容易で、ディスクに設けたスクレーパの数を減らす。
【解決手段】作物の条間を進行しながら条間の土を中耕培土する中耕ユニット20と、これを支持するメインフレーム3を備えた中耕除草機であって、中耕ユニット20は、メインフレーム3に前端側が接続されて進行方向後側へ張り出す支持フレーム21と、支持フレーム21に設けられ、条間の幅方向に突没且つ突出長さ調整が可能な一対のアーム支持部40と、回転自在に支持されて進行方向に対するディスク62の角度を調節した状態で保持される後列ディスク60とを有する。後列ディスク60は、アーム支持部40に対して着脱可能であり、一方のアーム支持部40の支持位置に進行方向に対するディスク62の角度を同一にしたままで他方のアーム支持部40に取り付け可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のディスク対で中耕除草、培土の管理作業を行う中耕除草機及びこの除草機を用いた中耕培土作業方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一対のディスクを前後に2列配置し、トラクタ又は乗用管理機の牽引前進によってこれらのディスクで条間の土壌を横方向へ反転移動させて中耕除草作業または培土(土寄せ)作業を行うディスク式中耕除草機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このディスク式中耕除草機70は、図8(a)(平面図)に示すように、機体幅方向に延びるツールバー71に圃場の中耕を行う中耕ユニット72を備えて構成されている。中耕ユニット72は、ツールバー71に設けられたフレーム機構73を介して上下動可能に支持され、前端部がフレーム機構73に回動自在に取り付けられて進行方向後側へ延びて機体幅方向に並設された第1アーム74及び第2アーム75と、これらのアームに取り付けられて条間の土を中耕培土する前列ディスク30及び後列ディスク60を備えている。第1アーム74及び第2アーム75は、フレーム機構73に設けられたアーム角調整板76に対して角度調節が可能に設けられている。
【0004】
第1アーム74及び第2アーム75の各前側には、前列ディスク30が設けられ、第1アーム74及び第2アーム75の各後側には、後列ディスク60が設けられている。前列ディスク30及び後列ディスク60は、対応する第1アーム74及び第2アーム75に設けられた回動支点を中心にして回動可能で且つ角度調節可能に支持されている。
【0005】
このように、従来のディスク式中耕除草機70は、前列ディスク30を回動させ、第1アーム74及び第2アーム75を回動させ、後列ディスク60を回動させることで、条間の幅に応じた位置に前列ディスク30及び後列ディスク60を位置させて、中耕・培土作業が可能である。
【0006】
【特許文献1】特開2007−259812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この従来の中耕ユニット72を備えたディスク式中耕除草機70は、条間の幅が変わった場合、後列ディスク60の進行方向に対するディスクの角度をそのままにした状態で後列ディスク60を条間の幅方向に移動させようとすると、第1アーム74及び第2アーム75の回動調節の他に、後列ディスク60の回動調節が必要になる場合がある。このため、条間の幅に応じた後列ディスク60の位置変更作業は作業者にとって手間が掛かるため、それを解決したいという課題があった。
【0008】
また、従来のディスク式中耕除草機70による中耕作業と培土作業の切り替えは、第1アーム74及び第2アーム75に対して後列ディスク60を回動させて行うが、後列ディスク60の回動範囲は限られた範囲であるため、後列ディスク60を所望のディスク角度に設定できない場合がある。この場合には、第1アーム74及び第2アーム75の回動調節が必要となる。このため、中耕作業と培土作業の切替作業は、条間の幅を変える場合と同様に、後列ディスク60の位置変更作業は作業者にとって手間が掛かるため、それを解決したいという課題があった。
【0009】
さらに、図8(a)に示す培土作業に対応した一対の後列ディスク60のそれぞれを回動させると、図8(b)(平面図)に示す後列ディスク60を中耕作業が可能な逆ハの字状に配置することができるが、後列ディスク60の作用面側に設けられたスクレーパ65がディスクの外側から内側に移動して、ディスクの回転方向に対してカウンター状に作用していたスクレーパ65がディスクの回転方向に対してトレール状に作用して、ディスクに付着した土を取り除くことができなくなる。このため、従来の後列ディスク60には、培土作業用のスクレーパ65と中耕作業用のスクレーパ65'が設けられており、部品点数の増大を招くという問題があった。
【0010】
本発明は、このような課題や問題を解決するためになされたものであり、条間の幅に応じた中耕ディスクの位置変更作業を容易に行うことができ、さらに、中耕作業と培土作業の切り替えに伴う中耕ディスクの位置変更作業を容易に行うことができるとともに、ディスクに設けるスクレーパの数を減らすことができる中耕除草機及びこの除草機を用いた中耕培土作業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するため、本発明は、以下の特徴を有する。特徴の一つは、作物の条間を進行しながら条間の土を中耕培土する中耕ユニットと、該中耕ユニットを支持するメインフレームを備えた中耕除草機であって、中耕ユニットは、メインフレームに前端側が接続されて進行方向後側へ張り出す支持フレームと、支持フレームに設けられ、条間の幅方向に突没自在で突出長さの調節が可能な一対のアーム支持部と、一対のアーム支持部の各先端側に設けられ、上下方向に延びるディスク支持ロッドに対して回転自在に支持されて進行方向に対するディスクの角度を調節した状態で保持される中耕ディスク(例えば、実施形態における後列ディスク60)とを有することを特徴とする。
【0012】
この特徴によれば、条間の土を中耕培土する中耕ユニットは、メインフレームに前端側が接続されて進行方向後側へ張り出す支持フレームと、支持フレームに設けられ、条間の幅方向に突没自在で突出長さの調節が可能な一対のアーム支持部と、一対のアーム支持部の各先端側に設けられ、上下方向に延びるディスク支持ロッドに対して回転自在に支持されて進行方向に対するディスクの角度を調節した状態で保持される中耕ディスクとを有することで、条間の幅に応じて、中耕ディスクの進行方向に対するディスクの角度をそのままにした状態で中耕ディスクを条間の幅方向に移動させる場合には、中耕ディスクの位置が条間の幅に応じた所定位置に移動するように、アーム支持部の突出長さを調節するだけでよく、ディスクの角度調節は不要である。このため、中耕ディスクの位置調節作業を容易に行うことができる。
【0013】
なお、支持フレームの張り出し方向は、進行方向後側へ張り出していればよく、例えば、進行方向に沿った方向や進行方向に対して斜め後方へ張り出した方向でもよい。またアーム支持部は突没自在のものであればどのようなものでもよく、例えば、入れ子式に構成された伸縮部材、伸縮シリンダ、スライド部材でもよい。また、ディスクの角度調節は、ディスクの角度調節を自在にすることができれば何によってもよく、例えば、支持フレームに対してディスクを回動させるモータを設け、このモータの駆動軸の回動角度を制御してもよい。
【0014】
また特徴の一つは、中耕ディスクは、アーム支持部の突没によって条間の幅方向に移動自在であることである。
【0015】
この特徴によれば、中耕ディスクは、アーム支持部の突没によって条間の幅方向に移動自在であることで、アーム支持部を突没させると、中耕ディスクはディスク角度が一定のままで条間の幅方向に移動する。即ち、中耕ディスクは条間の幅方向にオフセット移動する。このため、ディスク角度を一定にしたままで中耕ディスク間の距離(ディスク幅)を容易に調節することができ、条間の幅に応じた中耕ディスクの位置調節作業をよりに容易にすることができる。またアーム支持部は突没可能であるので、条間が狭い場合でもアーム支持部の突出量が小さくなり、アーム支持部の先端部が作物の葉(例えば、大豆の葉)に当たり難くすることができる。
【0016】
また特徴の一つは、一対のアーム支持部は、中耕ディスクを着脱可能に取り付けるとともに、一方のアーム支持部に設けられた中耕ディスクの進行方向に対するディスクの角度を同一にしたままで一方のアーム支持部から取り外された中耕ディスクを他方のアーム支持部の支持位置に取り付け自在であることである。
【0017】
この特徴によれば、一対のアーム支持部は、中耕ディスクを着脱可能に取り付けるとともに、一方のアーム支持部に設けられた中耕ディスクの進行方向に対するディスクの角度を同一にしたままで一方のアーム支持部から取り外された中耕ディスクを他方のアーム支持部の支持位置に取り付け自在であることで、中耕作業から培土作業、又は培土作業から中耕作業に切り替える場合には、アーム支持部に支持されている一対の中耕ディスクをそれぞれの支持位置から取り外し、一方のアーム支持部に支持された中耕ディスクをそのディスクの角度を同一にしたままで他方のアーム支持部の支持位置に取り付け、他方のアーム支持部に支持された中耕ディスクをそのディスクの角度を同一にしたままで一方のアーム支持部の支持位置に取り付ける。このため、例えば、培土作業を行うために平面視においてハの字状に配置された一対の中耕ディスクを平面視において逆ハの字状に配置することができ、これらの中耕ディスクによって中耕作業を行うことが可能になる。また、平面視において逆ハの字状に配置された一対の中耕ディスクを平面視においてハの字状に配置することができ、これらの中耕ディスクによって培土作業を行うことが可能になる。このため、中耕作業から培土作業、又は培土作業から中耕作業に切り替える場合、中耕ディスクを一方のアーム支持部から取り外して他方のアーム支持部に取り付けるだけで切替作業が完了するので、切替作業を容易にすることができる。
【0018】
また、培土作業に対応した中耕ディスクを、支持された一方のアーム支持部から取り外してディスクの角度を同一にしたままで他方のアーム支持部に取り付けると、中耕ディスクの一方側の面に設けられて面に付着する土を取り除くスクレーパのディスクに対する相対位置は変わらない。また一対の中耕ディスクの回転方向は同じである。従って、ディスクの回転方向に対してカウンター状に作用していたスクレーパは、中耕ディスクの取り付け位置がアーム支持部の一方から他方に変わっても、ディスクの回転方向に対して常にカウンター状に作用する。このため、培土作業用と中耕作業用の2個のスクレーパが必要であった従来の中耕ディスクと比較して、スクレーパの数を減らすことができ、部品点数を減少させることができ、中耕除草機のコスト増を抑えることができる。また中耕ディスクに設けるスクレーパの数を最小限にすることができるので、ディスクとスクレーパとの間に草、藁、葉等の残渣が引っ掛かる残渣噛み込みや、スクレーパの裏側に土が溜まる土溜まりの発生を抑えて、スクレーパの機能の低下を抑制することができる。
【0019】
また特徴の一つは、支持フレームは、メインフレームに対して上下方向に移動自在に支持されていることである。
【0020】
この特徴によれば、支持フレームがメインフレームに対して上下方向に移動自在に支持されていることで、作物の条間の土の凹凸に応じて中耕ディスクを上下方向に移動させることができ、中耕の耕深を一定にすることができる。また圃場に大きな石等が存在する場合、中耕ディスクが石等に接触すると支持フレームが上方へ移動して、中耕ディスクを石等の上方へ後退させることができ、中耕ディスクの損傷を未然に防止することができる。なお、支持フレームは、メインフレームに対して上下方向に移動自在に支持されていれば、支持フレームの支持構造はいかなるものでもよく、例えば、支持フレームの前端側がメインフレームに回動自在に支持され、また支持フレームの前端側がメインフレームに対して上下方向にスライド自在に支持されたものでもよい。
【0021】
また、特徴の一つは、作物の条間を進行しながら条間の土を中耕培土する中耕ユニットを備え、中耕ユニットは、これを支持するメインフレームに前端側が接続されて進行方向後側へ張り出す支持フレームと、支持フレームに設けられ、条間の幅方向に突没自在で突出長さの調節が可能な一対のアーム支持部と、一対のアーム支持部の先端側に着脱可能に設けられるとともに進行方向に対するディスクの角度調節が自在な一対の中耕ディスクとを有してなる中耕除草機の中耕培土作業方法であって、中耕作業から培土作業、又は培土作業から中耕作業を行うときには、一方のアーム支持部に設けられた中耕ディスクの進行方向に対するディスクの角度を同一にしたままで一方のアーム支持部から取り外された中耕ディスクを他方のアーム支持部の支持位置に取り付けて、条間を前進することである。
【0022】
この特徴によれば、中耕作業から培土作業、又は培土作業から中耕作業を行う場合には、一方のアーム支持部に設けられた中耕ディスクの進行方向に対するディスクの角度を同一にしたままで一方のアーム支持部から取り外された中耕ディスクを他方のアーム支持部の支持位置に取り付けて、条間を前進することで、例えば、培土作業を行うために平面視においてハの字状に配置された一対の中耕ディスクを平面視において逆ハの字状に配置して前進することで、これらの中耕ディスクによって中耕作業を行うことができる。また、平面視において逆ハの字状に配置された一対の中耕ディスクを、平面視においてハの字状に配置して前進することで、これらの中耕ディスクによって培土作業を行うことができる。このため、中耕作業から培土作業、又は培土作業から中耕作業に切り替える場合、一対の中耕ディスクの取り付け位置を変えるだけで切替作業が完了するので、切替作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係わる中耕除草機及び中耕培土作業方法によれば、上記特徴を有することにより、条間の幅に応じた中耕ディスクの位置変更作業を容易に行うことができ、さらに、中耕作業と培土作業の切り替えに伴う中耕ディスクの位置変更作業を容易に行うことができるとともに、ディスクに設けるスクレーパの数を減らすことができる中耕除草機及び中耕培土作業方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図1〜図7に基づいて説明する。中耕除草機は、走行機体による牽引等によって、中耕ユニットを作物の条間の圃場面上に接地させた状態で、条間に沿って作業を進行するものである。
【0025】
中耕除草機1は、図1(平面図)及び図2(側面図)に示すように、その幅方向に延びるメインフレーム3の前部に、走行機体90の後部に設けられた3点リンク連結機構に連結されるマスト6とロアーヒッチピン7を備えた連結部5を設けて、走行機体90の後部に対して昇降可能に装着される。左右の中耕ユニット20、20'の前側には、前方側へ張り出すゲージ支持アーム9が設けられており、このゲージ支持アーム9の先端部にゲージ輪11のゲージ輪支持ロッド12が高さ調整可能に装着されている。この高さ調整は、ゲージ輪支持ロッド12に設けられた調整孔12aをゲージ支持アーム9に設けられた支持孔に合わせて固定ピン13で固定することによって行われるものであり、後述する前列ディスク30及び後列ディスク60の中耕深さを調整するために行われる。
【0026】
メインフレーム3の軸方向には、所定間隔を有して条間の土を中耕培土する中耕ユニット20、20'が設けられている。本実施の形態では、中耕ユニット20、20'を3つ配置した3条用の中耕除草機1が示されている。なお、3つの中耕ユニット20、20'は同一構造であるので、機体幅方向中央に配設された中耕ユニット20のみを説明し、他の中耕ユニット20'については、同一態様部分については同一符号を附してその説明を省略する。
【0027】
中耕ユニット20は、メインフレーム3に前端側が上下方向に移動可能に接続されて進行方向後側へ張り出す支持フレーム21と、支持フレーム21の前側に回転可能に設けられた一対の前列ディスク30と、支持フレーム21の後側に条間の幅方向一方側及び他方側に突没自在に設けられた一対のアーム支持部40と、一対のアーム支持部40の各先端側に回転可能に設けられた後列ディスク60とを有して構成されている。
【0028】
支持フレーム21は、その前端部の幅方向両側に上方及び下方に張り出す一対の連結フレーム22が設けられている。この連結フレーム22の上側とメインフレーム3との間には、前端部がメインフレーム3に回動自在に取り付けられ後端部が連結フレーム22に回動自在に取り付けられて上下方向に並設された一対のフレーム連結部材23が設けられている。この一対のフレーム連結部材23によって平行リンク機構が構成されて、中耕ユニット20、20'は略水平のままで上下方向に移動可能である。
【0029】
前列ディスク30は、図3(背面図)を更に追加して説明すると、一対の連結フレーム22の下端部間に前側が回動自在に取り付けられて後方側へ延びる揺動アーム24の後端側に取り付けられている。揺動アーム24は前側に上方へ突設された回動中心軸25を備え、この回動中心軸25が一対の連結フレーム22の下端部間に回動自在に支持されて、揺動アーム24は回動中心軸25を中心として機体幅方向に揺動可能である。
【0030】
揺動アーム24の後端部には下方へ張り出した支持板26が設けられ、この支持板26の下端部に前列ディスク30の中心軸30aが回転自在に支持されている。このため、揺動アーム24を揺動させると、前列ディスク30が回動中心軸25を中心として揺動してディスクの角度調節が可能である。なお、揺動アーム24は、前列ディスク30が所望のディスクの角度になった状態で揺動アーム24の回動が規制可能になっている。
【0031】
本実施の形態では、一対の前列ディスク30のうち一方の前列ディスク30は他方の前列ディスク30よりも前側(連結部側)に配設され、一対の前列ディスク30は、平面視においてハの字状に配設されている。
【0032】
支持フレーム21の後側に設けられたアーム支持部40は、基端部材41と先端部材43とを入れ子式に組み合わせて構成されている。基端部材41は支持フレーム21に取り付けられて機体幅方向に張り出し、先端部材43は、基端部材41の内部空間内に挿入されて、基端部材41の先端部から突没可能である。先端部材43は、この側壁に設けられたピン挿入孔43aを基端部材41の側壁に設けられた係止孔部41aに合わせて、固定ピン44を挿入することで、基端部材41に対する先端部材43の突出量を調節した状態で先端部材43を基端部材41に固定可能になっている。なお、本実施例では、基端部材41と先端部材43の形状を角筒状の場合を示したが、基端部材41と先端部材43が入れ子式に組み合わせ可能であればどのような形状でもよく、例えば、円筒状、三角状でもよい。
【0033】
先端部材43の一端側には、図4(a)(平面図)及び図5(図4(b)のA矢視拡大断面図)に示すように、複数のピン挿入孔を備えて後方側へ張り出すディスク角調整支持体45が設けられている。ディスク角調整支持体45は、上下方向に所定間隔を有して並設された一対の調整支持板46と、これらの支持板の先端側に挿通された状態で設けられピン挿入孔47aを形成する複数の管部材47とを有してなる。管部材47は、ディスク角調整支持体45の基端側の端部に形成された挿着孔48の中心から所定距離R1及びR2(R2>R1)を有した円弧上に所定間隔を有して複数配設されている。管部材47はディスク角調整支持体45に対して略直交する方向に向いた状態で取り付けられている。
【0034】
ディスク角調整支持体45に設けられた挿着孔48には、筒状部材50が回動自在に挿着されている。筒状部材50は、後列ディスク60のディスク支持ロッド61を挿入する筒状本体部51と、筒状本体部51の上側に設けられ外側へ張り出す角度調整板52とを有してなる。筒状本体部51の上側の外周面には、周方向に所定間隔を有してナット54が固着され、ナット54の孔部54aに対向する筒状本体部51の側壁には、孔部54aに連通する連通孔が形成されている。ディスク固定ボルト55を孔部54aに螺合することで、筒状部材50に挿着されたディスク支持ロッド61を筒状部材50に固定することができる。
【0035】
角度調整板52の先端側には、ピン挿入孔47aと連通するディスク角調整孔52aが複数設けられている。ディスク角調整孔52aは、挿着孔48の中心から所定距離R1及びR2(R2>R1)を有した円弧上に所定間隔を有して複数配設されている。このため、ディスク支持ロッド61を筒状部材50に挿着して固定した状態で、筒状部材50をディスク角調整支持体45に対して回動し、ディスク角調整孔52aをピン挿入孔47aと連通した状態にしてディスク固定ピン53を挿入することで、ディスク支持ロッド61の下部に設けられた後列ディスク60を進行方向に対して所望のディスク角θに設定した状態で固定することができる。
【0036】
また、ディスク固定ボルト55による締結を解除すると、ディスク支持ロッド61を筒状部材50の下方へ抜脱することができる。このため、支持フレーム21の両側に取り付けられた一対の後列ディスク60の一方側を他方側の筒状部材50に取り付け、他方側の後列ディスク60を一方側の筒状部材50に取り付けることができる。
【0037】
後列ディスク60は、図4(c)(部分断面背面図)に示すように、中央部が窪んで浅皿状に形成されたディスク62と、ディスク62を回転自在に支持する前述したディスク支持ロッド61とを有してなる。ディスク62は、窪んだ側が凹面62aとして形成され、窪んだ側と反対側が凸面62bとして形成されている。中耕作業や培土を行う際には、ディスク62の凹面62aが条間の土を移動する作用面として機能し、後列ディスク60は、中耕作業時や培土作業時において、ディスク62の凹面62aが機体外側を向くように配設される。
【0038】
後列ディスク60の凹面62a側には、図4(b)(部分断面側面図)に示すように、作業時にディスク表面に付着する土を掻き落とすためのスクレーパ65が設けられている。スクレーパ65は、略平行四辺形状の金属板を折り曲げ成形して形成され、一方の短辺側に掻き取り刃65aが形成され、他方の短辺側にフレーム取付部65bが形成されている。
【0039】
スクレーパ65は、ディスク62と嵌合する回転軸67に一端側が取り付けられた支持フレーム68を介して支持されている。支持フレーム68は、図4(a)に示すように、回転軸67から凸面62bの外縁部の外側位置まで延び、そこから凹面62a側に屈曲して凸面62bを超えた位置で凸面62b側に屈曲して凸面62bに沿って張り出すように形成されている。この凸面62bに沿って張り出した部分にスクレーパ65のフレーム取付部65bがボルト等の締結手段を介して着脱可能に取り付けられている。なお、図4(b)に示す矢印Bは、中耕除草機1が前進走行するに伴って後列ディスク60が回転する方向を示している。
【0040】
ディスク62を回転自在に支持するディスク支持ロッド61は、図4(c)をさらに追加して説明すると、その下端部に回転軸67が突設され、この回転軸67はディスク62の中央部に設けられたベアリング63に嵌合して、ディスク62を回転自在に支持している。ディスク支持ロッド61は、ディスク62の凸面62b側の中央部から上方へ延び、ディスク62の外縁部の周辺で凹面62a側に屈曲してディスク62の上端部外側まで斜め上方へ延び、ディスク62の上端部外側から屈曲して上方へ延びるように形成されている。ディスク支持ロッド61の上側には筒状部材50を外嵌したときにディスク支持ロッド61の軸方向位置に対する筒状部材50の位置決めをするためのフランジ部64が設けられている。
【0041】
次に、このように構成された中耕除草機1によって培土作業を行う場合の動作について説明する。図1及び図6は、培土作業を行うときの中耕除草機1の状態を示したものであり、図1及び図6に示すように、前列ディスク30及び後列ディスク60は、平面視においてハの字状に配置されている。このとき、前列ディスク30及び後列ディスク60の凹面62aは、ともに機体外側を向くように取り付けられている。作業に先立って、前述したゲージ輪11の高さ調整を行って、ディスクの接地深さを調整する。
【0042】
このように設定された中耕除草機1が前進すると、前列ディスク30によって、条間中央の土が条間の両側(条間の左右方向)に一次移動し、その後方に配置された後列ディスク60によって、一次移動された土が更に左右方向に移動する。そして、前列ディスク30及び後列ディスク60によって一次中耕及び二次中耕を繰り返す過程で、移動する土が反転され、その間に処理された雑草は移動する土に埋没して、除草効果を上げることができる。
【0043】
このような培土作業を行う場合、条間の距離が変わると、後列ディスク60の条間幅方向の位置を適切に設定する必要がある。本実施の形態の中耕除草機1は、支持フレーム21に突没自在な一対のアーム支持部40を設けたので、アーム支持部40の張り出し量を調整するだけで後列ディスク60の位置調節を容易に行うことができる。
【0044】
例えば、条間距離が短い場合には、アーム支持部40の突出量を小さくし、条間距離が長い場合には、アーム支持部40の突出量を大きくする。アーム支持部40の突出量の調整作業は、先端部材43と基端部材41間に挿入された固定ピン44を抜脱し、基端部材41に対して先端部材43を所望の突出量になるように移動させ、ピン挿入孔43aを係止孔部41aに合わせ、固定ピン44を挿入して基端部材41に対して先端部材43を固定する。このように、アーム支持部40の突出量を調整すると、後列ディスク60のディスク角を一定にしたままで後列ディスク60を移動させることができる。即ち、後列ディスク60をオフセット移動させることができる。
【0045】
また、中耕除草機1は、前列ディスク30及び後列ディスク60のディスク角θの調節が可能であるので、各ディスクによる土の移動量を調節することができる。例えば、培土を行う土の量を多くする場合には、ディスクのディスク角θを大きく設定し、培土を行う土の量を少なくする場合には、ディスクのディスク角θを小さく設定する。このように、本実施の形態に係る中耕除草機1は、ディスク角θ及びアーム支持部40の突出量を調整することで、様々な条件の培土作業を行うことができる。
【0046】
図7(b)(中耕除草機の部分平面図)は、中耕除草を行うときの中耕除草機1の状態の一例を示す。中耕除草を行うときは、平面視において一対の後列ディスク60は逆ハの字状に配置される。このときの後列ディスク60の凹面62bは、機体内側、即ち、支持フレーム21側に向くように配置される。
【0047】
前述したように、培土作業を行うときには、図7(a)(中耕除草機の部分平面図)に示すように、後列ディスク60は平面視においてハの字状に配置されるが、培土作業から中耕作業に切り替える場合に、後列ディスク60の向きを変えれば、ディスク62の凹面62aが内側に向いた状態で且つ後列ディスク60を逆ハの字状に配置することができる。
【0048】
しかしながら、このようにした場合、例えば、条間幅方向左側に配設された後列ディスク60の場合、後列ディスク60の作用面側に設けられたスクレーパ65がディスクの外側から内側に移動して、ディスクの回転方向に対してカウンター状に作用していたスクレーパ65がディスクの回転方向に対してトレール状に作用して、ディスクに付着した土を取り除くことができなくなる。このため、従来の後列ディスク60には、図8(a)に示す培土作業用と中耕作業用の2個のスクレーパが設けられていた。
【0049】
一方、本実施の形態に係る中耕除草機1では、培土作業から中耕作業に切り替る場合には、アーム支持部40に支持されている一対の後列ディスク60、60'をそれぞれの支持位置から取り外し、条間幅方向左側へ突出するアーム支持部40に支持された後列ディスク60をそのディスク62の角度を同一にしたままで、条間幅方向右側に突出するアーム支持部40の支持位置に取り付け、条間幅方向右側に突出するアーム支持部40に支持された後列ディスク60'をそのディスク62の角度を同一にしたままで、条間幅方向左側に突出するアーム支持部40の支持位置に取り付ける。なお、後列ディスク60、60'は、機体の前進に伴って回転するが、その回転方向は常に一定であり、図4(b)の矢印Bに示す方向である。
【0050】
本実施の形態に係る中耕除草機1は、培土作業から中耕作業に切り替る場合、一対の後列ディスク60、60'のそれぞれを、ディスク62の角度を同一にしたままで相手方のアーム支持部40の支持位置に取り付けるものである。このようにすると、後列ディスク60、60'の一方側の凹面62aに設けられたスクレーパ65のディスク62に対する相対位置は変わらない。また一対の後列ディスク60の回転方向は同じである。従って、ディスク62の回転方向に対してカウンター状に作用していたスクレーパ65は、後列ディスク60、60'の取り付け位置がアーム支持部40の一方から他方に変わっても、ディスク62の回転方向に対して常にカウンター状に作用する。このため、図8(a)に示す従来の後列ディスク60と比較して、スクレーパ65は1つのみでよく、部品点数を減少させることができ、中耕除草機1のコスト増を抑えることができる。
【0051】
また、後列ディスク60、60'の取付位置の変更作業は、一方の後列ディスク60のディスク支持ロッド61を固定するディスク固定ボルト55を緩めて筒状部材50からディスク支持ロッド61を抜脱し、また他方の後列ディスク60'のディスク支持ロッド61を固定するディスク固定ボルト55を緩めて筒状部材50からディスク支持ロッド61を抜脱する。そして、ディスクの角度を取り外し前と同じ状態のままで一方のディスク支持ロッド61を、他方のディスク支持ロッド61を固定していた筒状部材50に挿入し、ディスク固定ボルト55を締結してロッドを筒状部材50に固定する。またディスクの角度を取り外し前と同じ状態のままで他方のディスク支持ロッド61を一方のディスク支持ロッド61を固定していた筒状部材50に挿入し、ディスク固定ボルト55を締結してディスク支持ロッド61を筒状部材50に固定する。このように、後列ディスク60、60'の取付位置の変更作業は、ディスク固定ボルト55の回動操作と、ディスク支持ロッド61の筒状部材50に対する挿抜作業のみであるので、後列ディスク60、60'の取付位置の変更作業を容易に行うことができる。
【0052】
一方、中耕作業から培土作業に切り替える場合には、前述した培土作業から中耕作業に切り替える場合の作業を逆に行えばよい。この作業内容は、培土作業から中耕作業に切り替える作業に準じるので、その説明は省略する。
【0053】
なお、前述した実施の形態では、前列ディスク30が回動部材40を介してディスク角の調節が可能な場合を示したが、支持フレーム21の前側にアーム支持部40を設け、このアーム支持部40の先端部に前列ディスク30をディスク角の調節が可能に設けてもよい。このようにすると、様々な条件の培土作業や中耕作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる中耕除草機の平面図を示す。
【図2】本発明の一実施の形態に係わる中耕除草機の側面図を示す。
【図3】本発明の一実施の形態に係わる中耕除草機の背面図を示す。
【図4】中耕除草機に設けられた中耕ユニットを示し、同図(a)は中耕ユニットの平面図であり、同図(b)は中耕ユニットの側面図であり、同図(c)は中耕ユニットの背面図である。
【図5】図4(b)のA矢視でした部分の拡大断面図を示す。
【図6】中耕除草機によって培土作業を行う場合の中耕除草機の背面図を示す。
【図7】培土作業と中耕作業を切り替える切替作業を説明するための中耕ユニットの平面図を示し、同図(a)は培土作業を行うときの中耕ユニットの平面図であり、同図(b)は中耕作業を行うときの中耕ユニットの平面図である。
【図8】従来の中耕除草機を示し、同図(a)は培土作業を行う状態にある中耕除草機の平面図であり、同図(b)は中耕作業を行う状態にある中耕除草機の平面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 中耕除草機
3 メインフレーム
20 中耕ユニット
21 支持フレーム
40 アーム支持部
60 後列ディスク(中耕ディスク)
67 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物の条間を進行しながら前記条間の土を中耕培土する中耕ユニットと、該中耕ユニットを支持するメインフレームを備えた中耕除草機であって、
前記中耕ユニットは、
前記メインフレームに前端側が接続されて進行方向後側へ張り出す支持フレームと、
前記支持フレームに設けられ、前記条間の幅方向に突没自在で突出長さの調節が可能な一対のアーム支持部と、
前記一対のアーム支持部の各先端側に設けられ、上下方向に延びるディスク支持ロッドに対して回転自在に支持されて進行方向に対するディスクの角度を調節した状態で保持される中耕ディスクと
を有することを特徴とする中耕除草機。
【請求項2】
前記中耕ディスクは、前記アーム支持部の突没によって前記条間の幅方向に移動自在であることを特徴とする請求項1に記載の中耕除草機。
【請求項3】
前記一対のアーム支持部は、前記中耕ディスクを着脱可能に取り付けるとともに、一方のアーム支持部に設けられた中耕ディスクの進行方向に対するディスクの角度を同一にしたままで前記一方のアーム支持部から取り外された中耕ディスクを他方のアーム支持部の支持位置に取り付け自在であることを特徴とする請求項1又は2に記載の中耕除草機。
【請求項4】
前記支持フレームは、前記メインフレームに対して上下方向に移動自在に支持されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の中耕除草機。
【請求項5】
作物の条間を進行しながら前記条間の土を中耕培土する中耕ユニットを備え、前記中耕ユニットは、これを支持するメインフレームに前端側が接続されて進行方向後側へ張り出す支持フレームと、前記支持フレームに設けられ、前記条間の幅方向に突没自在で突出長さの調節が可能な一対のアーム支持部と、前記一対のアーム支持部の先端側に着脱可能に設けられるとともに進行方向に対するディスクの角度調節が自在な一対の中耕ディスクとを有してなる中耕除草機の中耕培土作業方法であって、
中耕作業から培土作業、又は培土作業から中耕作業を行うときには、一方のアーム支持部に設けられた中耕ディスクの進行方向に対するディスクの角度を同一にしたままで前記一方のアーム支持部から取り外された中耕ディスクを他方のアーム支持部の支持位置に取り付けて、前記条間を前進することを特徴とする中耕除草機の中耕培土作業方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−11825(P2010−11825A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176766(P2008−176766)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【出願人】(000183967)鋤柄農機株式会社 (20)
【Fターム(参考)】