乗用型田植機
【課題】植付部が自動的に昇降する際の安全性を向上させた乗用型田植機を提供する。
【解決手段】乗用型田植機は、車体と、報知部と、植付部と、植付部を上下に昇降するための昇降シリンダと、昇降シリンダの駆動を制御する制御部と、を備える。そして、前記制御部は、植付部を自動的に昇降させる制御を開始するトリガを検出した場合、前記報知部によって植付部の自動昇降を報知した後、昇降シリンダを駆動して植付部を昇降させる。
【解決手段】乗用型田植機は、車体と、報知部と、植付部と、植付部を上下に昇降するための昇降シリンダと、昇降シリンダの駆動を制御する制御部と、を備える。そして、前記制御部は、植付部を自動的に昇降させる制御を開始するトリガを検出した場合、前記報知部によって植付部の自動昇降を報知した後、昇降シリンダを駆動して植付部を昇降させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型田植機に関する。詳細には、乗用型田植機が備えた報知部によって作業状態を報知する構成に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、乗用型田植機は、状況に応じて上下に昇降することが可能な作業機(植付部)を備えている。
【0003】
例えば、このような乗用型田植機において植付作業を行う際には、作業機を地面近傍まで下降させておき、当該作業機を駆動することによって苗を地面に植え付ける。一方、車体を旋回させる場合や、車体を後進させる場合等においては、当該作業機が畦等に衝突し損傷してしまうことを防止するために、作業機を上昇させておく。
【0004】
上記のような作業機の昇降操作を、オペレータが毎回手動で行わなければならないとすると、オペレータにとって大きな負担となってしまう。そこで、従来から、作業機を状況に応じて自動的に昇降駆動する構成が提案されている。
【0005】
例えば特許文献1には、車体を旋回させる際に、作業機(苗移植作業装置)を自動的に昇降させる乗用型苗移植機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−74991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1のように作業機が自動的に昇降する構成とした場合、オペレータが十分な安全確認をしていないにもかかわらず作業機の昇降が行われてしまうという場合もあり得る。従って、作業機の自動的な昇降を行う際には、田植機の周囲にいる人や、当該田植機のオペレータ自身に注意を促すことが、安全上の観点からは好ましい。
【0008】
この点、特許文献1は、PTOクラッチの入りを自動的に行わせるまでのあいだに、報知ブザーによる報知を行う構成を開示している。特許文献1は、これにより、作業性及び安全性が向上するとしている。ところで、特許文献1において報知ブザーを鳴らす構成は、自動旋回モードであることを操縦者に報知することを目的としたものであり、周囲に注意を促すことを目的としたものではない。従って、作業機の自動昇降を行う際の安全性を向上させるという観点からは改良の余地があった。
【0009】
より具体的に説明すると、以下のとおりである。即ち、特許文献1では、自動旋回モードの間に報知ブザーが断続的に鳴り続けるように構成されている。これは、自動旋回モードが正常に動作し続けていることをオペレータに認識させ、誤動作等を防止する目的であると考えられる。しかしながら、このように自動旋回モードのあいだに報知ブザーが鳴り続ける構成では、田植機の周囲にいる人やオペレータ自身にとって、作業機の自動的な昇降がどのタイミングで行われるのかが必ずしも明らかではない。従って、特許文献1の構成は、作業機の自動的な昇降が行われる際に周囲に注意を促すという課題を解決することができない。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、植付部が自動的に昇降する際の安全性を向上させた田植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0012】
本発明の観点によると、以下の構成の乗用型田植機が提供される。即ち、この田植機は、車体と、報知部と、作業機と、前記作業機を上下に昇降するための昇降シリンダと、前記昇降シリンダの駆動を制御する制御部と、を備える。そして、前記制御部は、前記作業機を自動的に昇降させる制御を開始するトリガを検出した場合、前記報知部によって作業機の自動昇降を報知した後、前記昇降シリンダを駆動して前記作業機を昇降させる。
【0013】
これにより、作業機の自動昇降が行われる前に、乗用型田植機のオペレータ及び当該乗用型田植機の周囲にいる人に対して報知が行われるので、当該自動昇降の安全性を高めることができる。
【0014】
前記の乗用型田植機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この乗用型田植機は、前記作業機に対する駆動力の伝達の有無を切換可能な作業クラッチを備える。前記制御部は、前記作業機の作動中において所定の操作を前記トリガとして検出すると、前記報知部によって前記作業機の上昇を報知した後、前記昇降シリンダを駆動して前記作業機を上昇させる。また、前記制御部は、車体の旋回終了を前記トリガとして検出すると、前記報知部によって前記作業機の下降を報知した後、前記昇降シリンダを駆動して前記作業機を下降させる。そして、前記制御部は、前記所定の操作を検出した位置と対応する位置に前記車体が到達したことを検出すると、前記作業クラッチを接続するとともに前記報知部による報知を行う。
【0015】
これにより、旋回時の自動昇降時が行われる前に、乗用型田植機のオペレータ及び当該乗用型田植機の周囲にいる人に対して報知が行われるので、旋回時における自動昇降の安全性を高めることができる。また、作業クラッチが接続された時にも報知を行うことにより、オペレータは、作業機の昇降が正しく行われて作業が再開されたことを確認することができる。
【0016】
前記の乗用型田植機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記車体は、前記作業機を取外し可能に構成される。前記制御部は、前記作業機が前記車体に取り付けられている場合において、前記車体の後進操作を前記トリガとして検出した場合には、前記報知部によって前記作業機の上昇を報知した後、前記昇降シリンダを駆動して前記作業機を上昇させる。また、前記制御部は、前記作業機が取り外されている場合は、前記車体の後進操作を検出しても前記昇降シリンダを駆動しない。
【0017】
これにより、後進時の自動上昇が行われる前に、乗用型田植機のオペレータ及び当該乗用型田植機の周囲にいる人に対して報知が行われるので、当該後進時における自動上昇の安全性を高めることができる。また、作業機が取り付けられていない場合には、車体を後進させても昇降シリンダを駆動しないので、作業機の取付け/取外し作業を行う際の作業性を高めることができる。
【0018】
前記の乗用型田植機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この乗用型田植機は、前記作業機の下端部近傍に配置されたフロートと、前記フロートの接地状態を検出する接地検出部と、を備える。前記制御部は、前記接地検出部の検出結果に基づいて、前記作業機が地面に対して適切な高さとなるよう自動接地制御を行うように構成される。また、当該制御部は、前記自動接地制御の実行中に作業機の高さを変更する操作を検出すると、前記自動接地制御を中断して待機モードに移行する。そして、前記制御部は、前記待機モード中に前記作業クラッチを接続する操作を前記トリガとして検出すると、前記報知部によって前記自動接地制御の再開を報知するとともに、前記自動接地制御を再開させる。
【0019】
これにより、作業機の自動接地制御を再開する際に、乗用型田植機のオペレータ及び当該乗用型田植機の周囲にいる人に対して報知が行われるので、当該自動接地制御の再開に伴って作業機が自動的に昇降動作する際の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る田植機の全体的な構成を示す側面図。
【図2】田植機の駆動伝達経路を示すスケルトン図。
【図3】サイドクラッチ操作機構の構成を示す模式図。
【図4】田植機の油圧回路図。
【図5】制御部における旋回時自動昇降制御の開始処理を示すフローチャート。
【図6】旋回時自動昇降制御の1つ目のパターンを示すフローチャート。
【図7】旋回時自動昇降制御の2つ目のパターンを示すフローチャート。
【図8】旋回時自動昇降制御の3つ目のパターンを示すフローチャート。
【図9】旋回時自動昇降制御の1つ目のパターンを説明する図。
【図10】旋回時自動昇降制御の2つ目のパターンを説明する図。
【図11】旋回時自動昇降制御の3つ目のパターンを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る乗用田植機1の側面図である。
【0022】
乗用田植機1は、車体2と、当該車体2の後方に配置された植付部3と、から構成されている。
【0023】
車体2は、左右一対の前輪4と、左右一対の後輪5を備えている。また、車体2は、その前後方向で前輪4と後輪5の間に運転座席6を備えている。運転座席6の近傍には、車体2の操向操作を行うためのステアリングハンドル7、車体2の走行速度を調節するための変速ペダル8、車体2の前後進を切り換えるための前後進切換レバー9等、各種の操作具が配置されている。また、車体2において運転座席6の後方には、施肥装置23が配置されている。
【0024】
また、車体2において、運転座席6の下方にはエンジン10が、当該エンジン10の前方にはミッションケース11が、それぞれ配置されている。一方、車体2の後方には、植付部3を取り付けるための昇降リンク機構12、エンジン10の駆動力を植付部3に出力するためのPTO軸13、植付部3を昇降駆動するための昇降シリンダ14等が配置される。
【0025】
また、車体2は、図略の制御部を備えている。制御部は例えばマイクロコントローラからなり、田植機1の各部に備えられたセンサ等の信号に基づいて、田植機1の各構成を制御するように構成されている。
【0026】
前記植付部3は、植付ケース15と、複数のフロート16と、苗載台17と、を備えている。
【0027】
植付ケース15には、前記昇降リンク機構12が連結されている。この昇降リンク機構12は、トップリンク18、ロワーリンク19等からなる平行リンク構造から構成されており、ロワーリンク19に連結された昇降シリンダ14を駆動することにより、植付ケース15を上下に昇降駆動可能に構成されている(これにより、植付部3全体を上下に昇降することができる)。
【0028】
植付ケース15には、1つ以上の植付ユニット20が取り付けられている。植付ユニット20は、回転ケース21に2つの植付爪22を備えるロータリ式植付装置として構成されている。また、植付ケース15には、前記PTO軸13を介してエンジン10の駆動力が入力されており、この駆動力によって回転ケース21が回転駆動される。ロータリ式植付装置の構成は公知であるので詳細な説明は省略するが、回転ケース21を回転駆動することにより、植付爪22の先端部が所定の軌跡を描きながら上下に駆動されるように構成したものである。植付爪22の先端部は、上から下に向かって動くときに、後述の苗載台17に載せられた苗マットの下端から1株分の苗を掻き取り、当該苗の根元を保持したまま下方に動いて地面に植え込むように構成されている。
【0029】
前記フロート(浮き)16は、植付部3の下部に左右対称に設けられる。このフロート16を地面に接触させることにより、植付部3を地面に対して水平に保ち、植付姿勢を安定させて正確な植付けを行うことができるように構成されている。
【0030】
また、複数のフロート16のうち、少なくとも1つは、支点を中心に揺動可能に取り付けられるとともに、当該揺動角度を図略のフロートセンサ(接地検出部)によって検出するように構成されている。このフロート16は、地面に接触することにより揺動するので、前記フロートセンサによって前記揺動角を検出することにより、当該フロート16が地面に適切に接触しているか否かを検出することができる。即ち、フロートセンサの検出結果に基づいて、植付部3が、地面に対して適切な高さとなっているか否かを判断することができる。なお、フロートセンサの検出結果は、前記制御部に出力される。
【0031】
苗載台17は、前記植付ケース15の上方に配置されている。この苗載台17は、図略のガイドレール上を車体左右方向に往復摺動可能に支持されている。そして、植付部3は、苗マットの左右幅の範囲内で苗載台17を左右に往復駆動する図略の横送り機構を備えている。これにより、苗載台17に載せた苗マットを、植付ユニット20に対して左右に相対運動させることができる。また、苗載台17は、苗マットを、下方に向かって(即ち、植付ユニット20側に向かって)間欠的に送る苗送りベルト(縦送り機構)を備えている。以上の構成で、横送り機構と縦送り機構とを適切に連動させることにより、各植付ユニット20に対して苗を順次供給し、連続的に植付けを行うことができる。
【0032】
また、本実施形態の田植機1において、上記の植付部3は、車体2から取り外すことができるように構成されている。具体的には、昇降リンク機構12及びPTO軸13と、植付部3と、の間の接続を取り外すことにより、車体2と植付部3とを離間させることができるように構成されている。また、植付部3を取り外した車体2には、他の種類の作業機(例えば除草機、溝切機など)を取り付けることができるようになっている。このように、本実施形態の田植機1は、いわゆる多目的田植機として構成されている。
【0033】
また、本実施形態の田植機1は、図略の報知部を備えている。この報知部は、具体的にはブザーとして構成されており、その作動は制御部によって制御されている。
【0034】
続いて、本実施形態の田植機1における駆動伝達経路について、図2を参照して説明する。
【0035】
エンジン10は車体2の前後方向で前輪4と後輪5の間に配置されており、いわゆるミッドシップレイアウトとなっている。また、エンジン10は、車体2の左右方向では略中央部に配置されており、その駆動出力軸(クランクシャフト)10aの長手方向が、車体の左右方向に沿うようにして配置されている(いわゆる横置き配置)。この駆動出力軸10aは、エンジン10の筐体から車体の左側方に向けて突出している。また、当該駆動出力軸10aの左側の端部には、駆動伝達ベルト34が配置されている。
【0036】
エンジン10の駆動力は、前記駆動伝達ベルト34を介して、エンジン10の前方に配置されたミッションケース11内に配置されているHMT(油圧機械式無段変速機)25に入力される。HMT25は、HST(静油圧式無段変速機)26と、遊星歯車機構27と、から構成されている。
【0037】
HST26は、可変容量油圧ポンプ28と、固定容量油圧モータ29と、を油圧回路で接続した構成となっている。可変容量油圧ポンプ28は入力軸28aを備えており、これがHST26の駆動入力軸となっている。また、固定容量油圧モータ29は出力軸29aを備えており、これがHST26の駆動出力軸となっている。
【0038】
図2に示すように、可変容量油圧ポンプ28の入力軸28aは、車体2の左右方向に沿って配置されているとともに、HST26の筐体から左右に突出している。この入力軸28aの左側の端部には、前記駆動伝達ベルト34が配置されており、エンジン10の出力が入力されている。また、前記入力軸28aの右側の端部には、油圧ポンプ24が接続されている。即ち、入力軸28aには、可変容量油圧ポンプ28及び油圧ポンプ24が接続されているので、エンジン10の駆動力によって入力軸28aを回転駆動することにより、可変容量油圧ポンプ28及び油圧ポンプ24の両方を同時に駆動することができるように構成されている。
【0039】
可変容量油圧ポンプ28が駆動されることにより吐出されるオイルは、固定容量油圧モータ29に供給され、当該固定容量油圧モータ29の出力軸29aを回転駆動させるように構成されている。また、可変容量油圧ポンプ28のオイルの吐出量は、変速ペダル8の操作量に連動して変更できるように構成されている。これにより、固定容量油圧モータ29の出力軸29aの回転速度を、オペレータが変速ペダル8を操作することによって無段階で変更することができる。なお、前記油圧ポンプ24については、後述する。
【0040】
また、遊星歯車機構27は、サンギア30と、プラネタリギア31を回転可能に支持したプラネタリキャリア32と、アウターギア33と、から構成されている。プラネタリキャリア32には、エンジン10の駆動力が入力される可変容量油圧ポンプ28の入力軸28aからの駆動力が入力されている。また、サンギア30は、固定容量油圧モータ29の出力軸29aに固定されている。そして、アウターギア33は、HMT25の出力軸25aに固定されている。
【0041】
以上の構成で、エンジン10の出力(入力軸28aの回転)と、HST26の出力(出力軸29aの回転)と、が遊星歯車機構27において合成されて、HMT25の出力軸25aから出力される。ここで、HST26の出力は変速ペダル8の操作に応じて無段階で変速可能であるから、当該HST26の出力とエンジン10の出力との合成であるHMT25の出力も、無段階で変速可能である。即ち、HMT25によって、エンジン10の出力を、変速ペダル8の操作に応じて無段階に変速することが可能となっている。
【0042】
HMT25の出力軸25aから出力される回転駆動力の一部は、ミッションケース11内に配置されたメインクラッチ35を介してギア式の主変速部36に入力され、適宜変速される。また、主変速部36は図略のリバースギアを備えており、車体の前後進の切換を行うことができるように構成されている。そして、主変速部36で変速された回転駆動力は、フロントアクスルケース37に出力される。フロントアクスルケース37は、ミッションケース11の前方に配置されるとともに、当該ミッションケース11と一体的に形成されている。主変速部36からの回転駆動力は、フロントアクスルケース37内に配置された左右の前車軸38,38に伝達され、左右の前輪4,4を駆動する。
【0043】
また、主変速部36が出力する回転駆動力の一部は、ミッションケース11から取り出され、プロペラシャフト39を介して、エンジン10の後方に位置するリアアクスルケース40に伝達される。リアアクスルケース40内に入力された回転駆動力は、左の後車軸42L及び右の後車軸42Rに伝達される。左の後車軸42Lは左の後輪5を駆動し、右の後車軸42Rは右の後輪5を駆動する。
【0044】
以上の構成により、変速ペダル8の操作に応じて、前輪4及び後輪5の回転速度を無段階で変更することができるようになっている。即ち、オペレータが変速ペダル8を操作することにより、所望の車速で車体2を走行させることができるように構成されている。
【0045】
また、プロペラシャフト39から左の後車軸42Lまでの駆動伝達経路の間には、左のサイドクラッチ41Lが配置されている。同様に、プロペラシャフト39から右の後車軸42Rまでの駆動伝達経路の間には、右のサイドクラッチ41Rが配置されている。左右のサイドクラッチ41L,41Rは、それぞれ独立して断接を切り換えることができる。即ち、本実施形態の田植機1は、左右の後輪5,5に対する駆動力の伝達の有無を、個別に切り換えることができるように構成されている。これにより、車体2の急旋回を行う時に、内側の後輪に対する駆動力の伝達を切断することができるので、スムーズな急旋回を実現することができる。
【0046】
なお、プロペラシャフト39には、当該プロペラシャフト39の回転を検出する回転センサ44が取り付けられている。この回転センサ44の検出結果は、前記制御部に入力される。制御部においては、前記回転センサ44の検出結果に基づいてプロペラシャフト39の回転回数を検出することにより、車体2が走行したおよその距離を取得することができる。
【0047】
また、HMT25の出力の一部は、ミッションケース11の後部右寄りの位置に設けられた植付駆動取出部51から外部に取り出される。植付駆動取出部51には、ユニバーサルジョイントを介して植付駆動伝達軸52が接続されている。この植付駆動伝達軸52は、ミッションケース11の後方に配置された植付変速部43に接続されている。
【0048】
植付変速部43内には複数のギアからなる変速装置が設けられており、入力された駆動力を適宜変速してPTO軸13から出力するように構成されている。このPTO軸13が伝達する駆動力によって、植付部3が駆動される。以上の構成により、回転ケース21を回転駆動する速度を変速することができるので、苗を植え付ける間隔を変更することができる。
【0049】
また、植付変速部43内において、PTO軸13には、植付クラッチ(作業クラッチ)50を介して駆動力が伝達されるように構成されている。この植付クラッチ50を切断することにより、植付部3の駆動を停止することができる。この植付クラッチ50は、制御部によって接続/切断を切り換えることができるように構成されている。また、この植付クラッチ50は、図略の植付クラッチ操作レバーをオペレータが操作することにより、接続/切断を切り換えることができるようにも構成されている。
【0050】
また、植付変速部43内には、施肥クラッチ53が設けられている。植付変速部43に入力された駆動力の一部は、この施肥クラッチ53を介して、施肥駆動軸54から出力されるように構成されている。施肥駆動軸54は、施肥装置23に接続されている。以上の構成により、施肥装置23に駆動力を伝達し、当該施肥装置23を駆動することで、圃場に肥料を散布することができるようになっている。
【0051】
次に、サイドクラッチ41L,41Rの接続/切断を切り換えるための構成について、図3を参照して説明する。図3には、サイドクラッチ操作機構45の模式的な構成が示されている。
【0052】
サイドクラッチ操作機構45は、左右のクラッチ操作レバー46L,46Rと、ステアリング連動レバー47と、ステアリング操作伝達リンク48と、から構成されている。
【0053】
クラッチ操作レバー46L,46Rはリアアクスルケース40の外側に配置されている。また、クラッチ操作レバー46L,46Rは、支軸を中心にして「クラッチ接続位置」と「クラッチ切断位置」との間で回動することにより、対応する側のサイドクラッチを操作できるように構成されている。具体的には、左のクラッチ操作レバー46Lを「クラッチ接続位置」まで回動させると左のサイドクラッチ41Lが接続状態となり、当該左のクラッチ操作レバー46Lを「クラッチ切断位置」まで回動させると左のサイドクラッチ41Lが切断状態となるように構成されている。同様に、右のクラッチ操作レバー46Rを「クラッチ接続位置」まで回動させると右のサイドクラッチ41Rが接続状態となり、当該右のクラッチ操作レバー46Rを「クラッチ切断位置」まで回動させると右のサイドクラッチ41Rが切断状態となるように構成されている。なお、クラッチ操作レバー46L,46Rは、図略の付勢部材によって、「クラッチ接続位置」となるように付勢力が加えられている。従って、左右のクラッチ操作レバー46L,46Rに対して操作力を加えない状態では、左右のサイドクラッチ41L,41Rは共に接続状態となる。
【0054】
ステアリング連動レバー47は、リアアクスルケース40の外側に配置されている。また、ステアリング連動レバー47は、その長手方向中心部に支軸47aが取り付けられており、この支軸47aを中心にして回動可能に構成されている。ステアリング連動レバー47は、支軸47aを中心にして回動することにより、左右のクラッチ操作レバー46L,46Rを操作できるように構成されている。
【0055】
具体的には、ステアリング連動レバー47は、支軸47aを中心として一方向に向けて回転することにより、当該ステアリング連動レバー47の一側の端部47bによって左のクラッチ操作レバー46Lを押すことができるように構成されている。このようにステアリング連動レバー47の端部47bによって左のクラッチ操作レバー46Lを押すことにより、前記付勢力に逆らって左のクラッチ操作レバー46Lを回動させ、当該左のクラッチ操作レバー46Lを「クラッチ切断位置」とすることができる。また、ステアリング連動レバー47は、支軸47aを中心として他方向に向けて回転することにより、当該ステアリング連動レバー47の他側の端部47cによって右のクラッチ操作レバー46Rを押すことができるように構成されている。このようにステアリング連動レバー47の端部47cによって右のクラッチ操作レバー46Rを押すことにより、前記付勢力に逆らって右のクラッチ操作レバー46Rを回動させ、当該右のクラッチ操作レバー46Rを「クラッチ切断位置」とすることができる。なお、ステアリング連動レバー47は、左右のクラッチ操作レバー46L,46Rの何れも操作しない中立位置(図3の状態)を取ることができるように構成されている。
【0056】
ステアリング操作伝達リンク48は、オペレータによるステアリングハンドル7の操作を、ステアリング連動レバー47の支軸47aに伝達するように構成されている。これにより、ステアリングハンドル7の操作量に応じてステアリング連動レバー47を回動させることができるので、ステアリングハンドル7の操作に応じてサイドクラッチ41L,41Rの接続/切断を切り換えることができる。
【0057】
より具体的には、ステアリングハンドル7を左に一定量以上操作すると、ステアリング連動レバー47の端部47bが左のクラッチ操作レバー46Lを押して、左のサイドクラッチ41Lを切断するように構成されている。また、ステアリングハンドル7を右に一定量以上操作すると、ステアリング連動レバー47の端部47cが右のクラッチ操作レバー46Rを押して、右のサイドクラッチ41Rを切断するように構成されている。
【0058】
以上の構成で、ステアリングハンドル7が左右に一定量以上操作された場合(急旋回を行う場合)、内側の後輪5に対する駆動力の伝達が切断されるので、内側の後輪5によって圃場が荒れることを防止しつつスムーズな旋回を実現することができる。
【0059】
また、左右のクラッチ操作レバー46L,46Rの近傍には、それぞれクラッチセンサ49L,49Rが取り付けられている。このクラッチセンサ49L,49Rは、具体的にはスイッチとして構成されている。即ち、クラッチ操作レバー46L,46Rが「クラッチ切断位置」まで回動したときに、対応する側のクラッチセンサ49L,49Rを押し、スイッチがONとなることによりサイドクラッチの切断を検出するように構成されている。これにより、簡単な構成で、サイドクラッチ41L,41Rが接続しているか否かを検出することができる。なお、クラッチセンサ49L,49Rの検出結果は、制御部に入力されるようになっている。
【0060】
次に、図4を参照して、田植機1に配設された油圧管路について説明する。図4に示すように、この油圧管路は、油圧ポンプ24から、パワーステアリング用バルブ55及び昇降制御バルブユニット56を介して、昇降シリンダ14まで圧油を供給するように構成されている。
【0061】
パワーステアリング用バルブ55は、車体2が備えたパワーステアリング機構60を作動させるオイルの流れを切り換えるためのバルブであり、ステアリングハンドル7の操作に応じて駆動されるスプール55aを備えている。
【0062】
昇降制御バルブユニット56は、昇降制御バルブ57と、ストップバルブ58と、をまとめて1つのユニットとして構成したものである。パワーステアリング用バルブ55を介して油圧ポンプ24から送られてきた圧油は、昇降制御バルブ57、ストップバルブ58の順で経過した後、昇降シリンダ14に供給される。
【0063】
昇降制御バルブ57は、昇降シリンダ14の駆動方向を切り換えるためのソレノイドバルブであり、前記制御部からの制御信号に基づいて駆動されるスプール57aを備えている。このスプール57aの位置を変更することにより、昇降シリンダ14に対してオイルを供給、又は昇降シリンダ14からオイルを排出するように、送油通路を切り換えることが可能に構成されている。制御部は、この昇降制御バルブ57を適宜制御することで、昇降シリンダ14を駆動し、植付部3を上昇又は下降させることができる。
【0064】
ストップバルブ58は、昇降シリンダ14と昇降制御バルブ57との間のオイルの流れを遮断することが可能なバルブであり、オペレータが直接操作することができるように構成されている。このストップバルブ58は、通常の運転時には開いた状態とておき、昇降シリンダ14に対して昇降制御バルブ57からのオイルが供給されるようにしておく。一方、エンジン10を停止する際などには、必要に応じてストップバルブ58を閉じた状態とする。このストップバルブ58を閉じることにより、昇降シリンダ14からオイルが流出することを防止できるので、エンジン10を停止させた状態でも植付部3の位置を維持することができる。
【0065】
次に、制御部によるフロート制御(自動接地制御)について説明する。フロート制御とは、植付作業中において、地面の凹凸等に追従させて植付部3を昇降することにより、当該植付部3を地面に対して適切な高さに維持する制御である。
【0066】
具体的には、以下のような制御である。前述のように、制御部には、フロートセンサの検出結果が入力されている。制御部は、このフロートセンサの検出結果に基づいて、植付部3が地面に対して適切な高さにあるか否かを判断することができる。制御部は、フロートセンサの検出結果に基づいて植付部3が地面に対して高過ぎると判断した場合は、昇降制御バルブ57のスプール57aを操作することにより、植付部3を下降させる。また、制御部は、フロートセンサの検出結果に基づいて植付部3が地面に対して低過ぎると判断した場合は、昇降制御バルブ57のスプール57aを操作することにより、植付部3を上昇させる。なお、フロートセンサの検出結果に基づいて植付部3が地面に対して適切な高さにある場合には、制御部は、当該植付部3の高さを維持する。
【0067】
以上のフロート制御により、植付部3を地面に対して常に適切な高さに維持することができるので、苗を適切に植え付けることができる。
【0068】
ところで、上記のようにフロート制御を行いながら植付作業を行っている最中に車体が圃場の端部(畦ぎわ)まで到達した場合には、車体をUターン旋回させて植付作業を継続する必要がある。ここで、フロート制御を行っている最中は、植付部3が地面に対して接近した位置となっているので、この状態で車体をUターン旋回させると植付部3が畦等に衝突して破損などの原因となる可能性がある。そこで、本実施形態の田植機1は、植付作業中に車体2をUターン旋回させる際には、植付部3が地面から十分に離れた高さとなるまで自動的に上昇させる旋回時自動昇降制御を行うように構成されている。
【0069】
次に、上記の旋回時自動昇降制御について具体的に説明する。
【0070】
旋回時自動昇降制御は、オペレータの所定の操作をトリガとして検出することにより開始される。本実施形態の制御部は、図5のフローチャートに示すように、「サイドクラッチの切断操作」、「植付クラッチの切断操作」及び「後進操作」の3つのトリガのうち、何れか1つを制御部が検出すると、当該制御部が旋回時自動昇降制御を開始するように構成されている。また、制御部は、上記3つのトリガのうち何れを検出したかによって、3つの制御パターンのうち1つを自動的に選択して実行するように構成されている。
【0071】
まず、1つ目の制御パターンについて、図5及び図6のフローチャートを参照して説明する。この制御パターンは、植付作業中において、オペレータがステアリングハンドル7を大きく操作して車体2を急旋回(Uターン)させるという状況を想定している。
【0072】
制御部は、植付作業中において、クラッチセンサ49L,49Rの検出結果に基づいてサイドクラッチ41L,41Rの切断をトリガとして検出した場合(S101の条件分岐)、S104に進んで1つ目の制御パターン(パターン1の制御)で旋回時自動昇降制御を行う。
【0073】
前述のように、本実施形態の田植機1は、ステアリングハンドル7が一定量以上操作された場合にのみサイドクラッチ41L,41Rの何れか一方が切断されるように構成されている。このように構成されているので、クラッチセンサ49L,49Rという簡単なセンサ(具体的にはスイッチ)により、オペレータがステアリングハンドル7を大きく操作して車体2のUターン旋回を開始したことを検出することができる。従って、Uターン開始の開始を判断するために、例えばステアリングシャフトの回転量を検出するための高価な回転量センサ等が必要無く、簡単かつ安価に田植機1を構成することができる。
【0074】
また前述のように、ステアリングハンドル7の操作量が所定量未満の場合には、サイドクラッチ41L,41Rは切断されない。従って、車体2を直進させているときの微妙な操作では、旋回時自動昇降制御が開始することは無いようになっている。これにより、オペレータの意に沿わないタイミングで自動昇降制御が開始してしまうことを防止することができる。
【0075】
制御部は、サイドクラッチ41L,41Rの切断(Uターン旋回の開始)を検出すると、図6のS201に進んで報知部によって報知音を鳴らした後、植付クラッチ50を切断(S202)して、植付部3を上昇(S203)させるように構成されている。このように、Uターン旋回の開始が検出されると、植付部3を自動的に上昇させるので、車体2を旋回させる際に植付部3が畦等に衝突してしまうことを防止できる。また、植付部3を上昇させる際には植付クラッチ50を自動的に切断するので、植付部3の無駄な動作を防止することができる。なお、植付部3を上昇させる際には、前記フロート制御を中断する。
【0076】
そして上記のように、本実施形態の田植機1は、植付部3を自動的に上昇させる際には、前もって報知部による報知を行うように構成されている。これにより、田植機1の周囲にいる人及びオペレータ自身に対して、植付部3の上昇が行われることを報知できるので、植付部3を自動昇降する際の安全性を向上させることができる。
【0077】
制御部は、植付部3を上昇させると、S101で切断が検出された方のサイドクラッチが再び接続されたか否かを判断する(S204)。サイドクラッチの接続が検出された場合は、ステアリングハンドル7が中立位置に戻されたということであるから、Uターン旋回が終了したと判断できる。この場合、制御部は、報知部によって報知音を鳴らし(S205)、その後、植付部3を下降させる。このように、サイドクラッチの接続をトリガとして植付部3を自動的に下降させる際にも、前もって報知部による報知を行うので、植付部3を自動昇降する際の安全性を向上させることができる。
【0078】
なお、図9に示すように、Uターン旋回を開始した時点(サイドクラッチの切断を検出した時点)と、Uターン旋回を終了した直後の時点(サイドクラッチの接続を検出した時点)とでは、車体2の前後方向で見たときに、田植機1の約1台分に相当するオフセット距離が存在している。そこで、本実施形態の田植機1において、制御部は、サイドクラッチの接続(Uターン旋回の終了)を検出した後、前記約1台分に相当する距離を進んだ後に、植付を再開するように構成されている。
【0079】
より具体的には以下のとおりである。即ち、制御部は、サイドクラッチの接続を検出(S204)すると、前記回転センサ44の検出結果に基づいて、プロペラシャフト39の回転回数のカウントを開始する。そして、前記回転回数が、田植機1の約1台分に対応した回転回数以上となったか否か(前記約1台分の距離を走行したか否か)を判定する(S207)。そして、制御部は、車体2が田植機1の約1台分の距離を走行し終わったと判定した場合、植付クラッチ50を接続(S208)して植付を再開するように構成されている。
【0080】
これにより、植付を中断した時点(サイドクラッチの切断を検出した時点)に対応した位置から、植付を再開することができる。これにより、自動旋回昇降制御の前後で苗の植付位置を揃えることができる。
【0081】
なお、上記では、オフセット距離を田植機1の約1台分の距離としたが、前記オフセット距離は、車体2の旋回性能等によって異なる。従って、田植機1は、オペレータが前記オフセット距離を増減するための調節ダイヤルのようなものを備えていても良い。
【0082】
そして、制御部は、植付クラッチ50を接続して植付を再開すると、フロート制御を再開するとともに、報知部によって報知音を鳴らす(S209)ように構成されている。これにより、植付が正常に再開されたことをオペレータに対して報知することができるので、例えば何らかの理由により植付が再開しなかった場合などに誤動作を防止することができる。
【0083】
次に、2つ目の制御パターンについて、図5及び図7を参照して説明する。この制御パターンは、植付作業中にオペレータが植付クラッチを切断して植付を中断した後、若干距離を直進走行した後、車体2を急旋回(Uターン)させるという状況を想定している。このような操作は、畦ぎわにおいて、田植機1が圃場から脱出する際のスペースを確保するために、一定区間の植付を行わない場合等に行われる。
【0084】
制御部は、オペレータが図略の植付クラッチ操作レバーを操作することにより植付クラッチ50が切断したことをトリガとして検出した場合(S102の条件分岐)、S105に進んで2つ目の制御パターン(パターン2の制御)で自動昇降制御を行う。
【0085】
この場合、制御部は、報知音を鳴らし(S301)、その後、フロート制御を中断して植付部3を上昇(S203)させるように構成されている。続いて制御部は、回転センサ44の検出結果に基づいてプロペラシャフト39の回転回数をカウントする処理を開始(S303)し、サイドクラッチ41L,41Rの切断(Uターン旋回の開始)を検出(S304の判断)すると、上記カウントを終了する(S305)。これにより、図10に示すように、植付を中断してからUターン旋回を開始するまでの間に車体2が前進した距離(前進距離)を取得することができる。
【0086】
続いて、制御部は、S304で切断が検出された方のサイドクラッチが再び接続されたこと(Uターン旋回の終了)を検出すると(S306の判定)、報知部によって報知音を鳴らし(S307)、その後、植付部3を下降させる(S308)。ここで、図10に示すように、植付クラッチ50を切断して植付を中断した時点と、Uターン旋回を終了した直後の時点とでは、車体2の前後方向で見たときに、(前進距離)+(田植機1の約1台分)に相当するオフセット距離が存在している。そこで制御部は、サイドクラッチの接続(Uターン旋回の終了)を検出した後、前記回転センサ44の検出結果に基づいてプロペラシャフト39の回転回数をカウントし、車体2が前記オフセット距離だけ走行したか否かを判定する(S309)。そして、車体2が上記オフセット距離を走行し終わったと判定した後、植付クラッチ50を接続(S310)するように構成されている。また、制御部は、植付クラッチ50を接続すると、フロート制御を再開して植付を再開するとともに、報知部によって報知音を鳴らす(S311)ように構成されている。
【0087】
次に、3つ目の制御パターンについて、図5及び図8を参照して説明する。この制御パターンは、植付作業中にオペレータが車体2を後進させた後、車体2を急旋回(Uターン)させるという状況を想定している。このような操作は、畦ぎわぎりぎりの位置まで植付を行いたい場合等に行われる。
【0088】
制御部は、オペレータが前後進切換レバーを操作することにより車体2の後進を開始したことをトリガとして検出した場合(S103の条件分岐)、S106に進んで3つ目の制御パターン(パターン3の制御)で自動昇降制御を行う。
【0089】
この場合、制御部は、報知音を鳴らし(S401)、植付クラッチ50を切断(S402)した後、フロート制御を中断して植付部3を上昇(S403)させように構成されている。続いて制御部は、回転センサ44の検出結果に基づいてプロペラシャフト39の回転回数をカウントする処理を開始(S404)し、サイドクラッチ41L,41Rの切断(Uターン旋回の開始)を検出(S405の判断)すると、上記カウントを終了する(S406)。これにより、図11に示すように、後進を開始してからUターン旋回を開始するまでの間に車体2が後進した距離(後進距離)を取得することができる。
【0090】
続いて、制御部は、S405で切断が検出された方のサイドクラッチが再び接続されたこと(Uターン旋回の終了)を検出すると(S407の判定)、報知部によって報知音を鳴らし(S408)、その後、植付部3を下降させる(S409)。このとき、図11に示すように、後進を開始した時点(植付を中断した時点)と、Uターン旋回を終了した直後の時点とでは、車体2の前後方向で見たときに、(田植機1の約1台分の距離)−(後進距離)に相当するオフセット距離が存在している。そこで制御部は、サイドクラッチの接続(Uターン旋回の終了)を検出した後、前記回転センサ44の検出結果に基づいてプロペラシャフト39の回転回数をカウントし、車体2が前記オフセット距離だけ走行したか否かを判定する(S410)。そして、車体2が上記オフセット距離を走行し終わったと判定した後、植付クラッチ50を接続(S411)するように構成されている。また、制御部は、植付クラッチ50を接続すると、フロート制御を再開して植付を再開するとともに、報知部によって報知音を鳴らす(S412)ように構成されている。
【0091】
以上のように、本実施形態の田植機1は、旋回時自動昇降制御の3つの制御パターンの何れにおいても、植付部3を自動的に上昇又は下降させる前には、必ず報知部による報知を行うように構成されている。これにより、植付部3を自動的に昇降する際の安全性を向上させることができる。
【0092】
なお、上記の説明では、サイドクラッチが接続されたことのみをもってUターン旋回の終了と判断しているが、これに加え、或いはこれに代えて、前記回転センサ44の検出結果を考慮してUターン旋回の終了を判断するように構成しても良い。例えば、サイドクラッチが切断された後、車体2が十分な距離を走行しないままサイドクラッチが接続された場合、Uターン旋回を完了させずに旋回操作を終えたと判断できる。このようにUターン旋回が完了していない場合は、オペレータが植付作業を継続する意図をもって旋回を行った訳ではないと考えられるので、例えサイドクラッチが接続されたとしても、植付部3の自動下降は行わない方が良い。従って、制御部は、サイドクラッチの切断を検出(S102、S304又はS405)した後、回転センサ44によってプロペラシャフト39の回転回数をカウントし、当該回転回数が所定回数以上となるまではUターン旋回が完了していないと判断して、植付部3の自動下降を行わないように構成することができる。
【0093】
次に、後進時における植付部3の自動上昇制御について説明する。
【0094】
例えば、畦ぎわにおいて車体2の位置合わせを行うために、車体2を後進させる場合がある。このような場合、植付部3が畦に衝突してしまうことを防止するため、植付を行っているか否かにかかわらず、植付部3を自動的に上昇させることが好ましい。
【0095】
そこで、本実施形態の田植機1において、オペレータが前後進切換レバーを操作することにより車体2の後進を開始したことをトリガとして制御部が検出すると、当該制御部は、報知部によって報知音を鳴らした後、植付部3を上昇させるように構成されている。このように、後進時における植付部の自動上昇制御の際にも、植付部3を自動上昇させる前に報知を行うので、安全性を向上させることができる。
【0096】
なお、本実施形態の田植機1は、前述のように、植付部3を取り外すことができるように構成されている。ところで、植付部3を取り外した状態の車体2に対して、植付部3又は他の作業機を取り付ける作業は、例えば以下のように行う。即ち、車体2に取り付ける予定の作業機を、車体2の後方で地面又は適宜の台の上に設置する。そして、昇降リンク機構12を適切な高さに維持した状態で車体2を後進させ、昇降リンク機構12を前記作業機の接続箇所に接近させて当該昇降リンク機構と作業機との接続を行う。
【0097】
以上のように、作業機を取り付ける作業の際には、昇降リンク機構12の高さを維持した状態で車体2を後進させる必要があるので、この場合には後進時の自動上昇制御を行わないことが好ましい。そこで、本実施形態の田植機1は、車体2に作業機が取り付けられているか否かを検出する適宜のセンサを備えており、作業機が取り付けられていない場合には、後進時の自動昇降制御を行わないように構成されている。
【0098】
次に、植付作業中における植付部3のマニュアル昇降操作について説明する。
【0099】
即ち、植付作業を行っている最中に、何らかの理由により植付部3の高さを一時的に変更したい場合がある。このような場合に備えて、本実施形態の田植機1は、オペレータが操作することにより植付部3の高さをマニュアルで調節できるように構成した、マニュアル昇降スイッチ(図略)を備えている。
【0100】
植付作業の途中において、一時的に植付を中断して植付部3の高さを変更したい場合には、オペレータは、植付クラッチ50を切断する操作を行うとともに、前記マニュアル昇降スイッチを操作して植付部3が所望の高さとなるように調節する。制御部は、マニュアル昇降スイッチの操作を検出すると、昇降シリンダ14を駆動して植付部3を昇降駆動するとともに、待機モードに移行して、フロート制御を中断するように構成されている。
【0101】
上記のように植付作業の途中で一時的に植付部3の高さを変更した場合には、所定の操作を行うことで速やかに植付作業を再開できることが好ましい。そこで、本実施形態の田植機1において、待機モード中にオペレータが植付クラッチ50を接続する操作を行った場合、制御部は、前記待機モードを抜け出して、報知部によって報知音を鳴らした後、フロート制御を再開するように構成されている。フロート制御が再開すると、植付部3は、オペレータが高さを変更する前の位置まで自動的に昇降されるので、適切に植付作業を再開することができる。このように、植付クラッチ50を接続する操作だけで、植付作業を速やかに再開することができる。
【0102】
また、本実施形態の田植機1では、上記のように、フロート制御を自動的に再開する前には、報知部による報知を行うように構成されている。即ち、植付部3の高さを変更した状態からフロート制御を再開すると、植付部3が元の高さまで自動的に昇降されるので、当該自動的な昇降を周囲に報知することが好ましい。この点、上記のようにフロート制御を再開する前に報知を行うことにより、植付部3が自動的に昇降されることを周囲に報知することができ、安全性を向上させることができる。
【0103】
以上で説明したように、本実施形態の田植機1は、車体2と、報知部と、植付部3と、植付部3を上下に昇降するための昇降シリンダ14と、昇降シリンダ14の駆動を制御する制御部と、を備える。そして、前記制御部は、植付部3を自動的に昇降させる制御を開始するトリガを検出した場合、前記報知部によって植付部3の自動昇降を報知した後、昇降シリンダ14を駆動して植付部を昇降させる。
【0104】
これにより、植付部3の自動昇降が行われる前に、田植機1のオペレータ及び当該田植機1の周囲にいる人に対して報知が行われるので、当該自動昇降の安全性を高めることができる。
【0105】
また、本実施形態の田植機1は、植付部3に対する駆動力の伝達の有無を切換可能な植付クラッチ50を備える。前記制御部は、植付部3の作動中において所定の操作を前記トリガとして検出すると、前記報知部によって植付部3の上昇を報知した後、昇降シリンダ14を駆動して植付部3を上昇させる。また、前記制御部は、車体2の旋回終了(サイドクラッチの接続)を前記トリガとして検出すると、前記報知部によって植付部3の下降を報知した後、昇降シリンダ14を駆動して植付部3を下降させる。そして、前記制御部は、前記所定の操作を検出した位置と対応する位置に車体2が到達したことを検出すると、前記植付クラッチ50を接続するとともに前記報知部による報知を行う。
【0106】
これにより、旋回時の自動昇降時が行われる前に、田植機1のオペレータ及び当該田植機1の周囲にいる人に対して報知が行われるので、旋回時における自動昇降の安全性を高めることができる。また、植付クラッチ50が接続された時にも報知を行うことにより、オペレータは、植付部3の昇降が正しく行われて作業が再開されたことを確認することができる。
【0107】
また、本実施形態の田植機1において、車体2は、植付部3を取外し可能に構成される。前記制御部は、植付部3が車体2に取り付けられている場合において、車体2の後進操作を前記トリガとして検出した場合には、前記報知部によって植付部3の上昇を報知した後、昇降シリンダ14を駆動して植付部3を上昇させる。また、前記制御部は、植付部3が取り外されている場合は、車体2の後進操作を検出しても前記昇降シリンダを駆動しない。
【0108】
これにより、後進時の自動上昇が行われる前に、田植機1のオペレータ及び当該田植機1の周囲にいる人に対して報知が行われるので、当該後進時における自動上昇の安全性を高めることができる。また、植付部3が取り付けられていない場合には、車体2を後進させても昇降シリンダ14を駆動しないので、植付部3の取付け/取外し作業を行う際の作業性を高めることができる。
【0109】
また、本実施形態の田植機1は、植付部3の下端部近傍に配置されたフロート16と、前記フロート16の接地状態を検出するフロートセンサと、を備える。前記制御部は、フロートセンサの検出結果に基づいて、植付部3が地面に対して適切な高さとなるようフロート制御を行うように構成される。また、当該制御部は、フロート制御の実行中に植付部3の高さを変更する操作を検出すると、前記フロート制御を中断して待機モードに移行する。そして、前記制御部は、前記待機モード中に植付クラッチ50を接続する操作を前記トリガとして検出すると、前記報知部によってフロート制御の再開を報知するとともに、前記自動接地制御を再開させる。
【0110】
これにより、植付部3のフロート制御を再開する際に、田植機1のオペレータ及び当該田植機1の周囲にいる人に対して報知が行われるので、フロート制御の再開に伴って植付部3が自動的に昇降動作する際の安全性を高めることができる。
【0111】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0112】
上記実施形態では、ミッションケース11内に、HST26及び遊星歯車機構27からなるHMT25が無段変速装置として配置される構成とした。この構成に代えて、無段変速装置としてHST26のみを備える構成としても良い。ただし、HSTのみの構成に比べて、HSTと遊星歯車機構とを組み合わせたHMTの方が伝達効率の観点からは有利である。
【0113】
上記実施形態では、田植機1の植付部3は取外し可能としたが、取外しが不可能であっても良い。
【0114】
上記実施形態では、植付部3はロータリ式の植付部としたが、クランク式であっても良い。
【0115】
報知部は、ブザーに限らず、例えば機械音声等により「植付部が上昇します」等のアナウンスを行うように構成されていも良い。また、報知部による報知は、音に限定される訳ではなく、例えば警報ランプを点灯させる等の構成でも良い。
【0116】
上記実施形態では、スイッチ式のクラッチセンサによってUターン旋回の開始及び終了を検出しているが、例えばステアリングハンドルにポテンショメータを取り付け、ステアリングの操作量を検出して、所定の角度以上操作されたらUターン旋回開始と検出するように構成しても良い。ただし、上記のように、スイッチ式のクラッチセンサを用いることにより、安価かつ簡単な構成で、Uターン旋回の開始及び終了を検出することができる。
【0117】
上記実施形態の旋回時自動昇降制御において、パターン1及びパターン3の制御では、報知を行った後で植付クラッチを切断する制御を行っているが、植付クラッチを切断した後で報知を行う構成でも良い。要は、植付部3を昇降する前に報知を行うことができれば良い。
【符号の説明】
【0118】
1 田植機(乗用型田植機)
2 車体
3 植付部(作業機)
14 昇降シリンダ
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型田植機に関する。詳細には、乗用型田植機が備えた報知部によって作業状態を報知する構成に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、乗用型田植機は、状況に応じて上下に昇降することが可能な作業機(植付部)を備えている。
【0003】
例えば、このような乗用型田植機において植付作業を行う際には、作業機を地面近傍まで下降させておき、当該作業機を駆動することによって苗を地面に植え付ける。一方、車体を旋回させる場合や、車体を後進させる場合等においては、当該作業機が畦等に衝突し損傷してしまうことを防止するために、作業機を上昇させておく。
【0004】
上記のような作業機の昇降操作を、オペレータが毎回手動で行わなければならないとすると、オペレータにとって大きな負担となってしまう。そこで、従来から、作業機を状況に応じて自動的に昇降駆動する構成が提案されている。
【0005】
例えば特許文献1には、車体を旋回させる際に、作業機(苗移植作業装置)を自動的に昇降させる乗用型苗移植機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−74991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1のように作業機が自動的に昇降する構成とした場合、オペレータが十分な安全確認をしていないにもかかわらず作業機の昇降が行われてしまうという場合もあり得る。従って、作業機の自動的な昇降を行う際には、田植機の周囲にいる人や、当該田植機のオペレータ自身に注意を促すことが、安全上の観点からは好ましい。
【0008】
この点、特許文献1は、PTOクラッチの入りを自動的に行わせるまでのあいだに、報知ブザーによる報知を行う構成を開示している。特許文献1は、これにより、作業性及び安全性が向上するとしている。ところで、特許文献1において報知ブザーを鳴らす構成は、自動旋回モードであることを操縦者に報知することを目的としたものであり、周囲に注意を促すことを目的としたものではない。従って、作業機の自動昇降を行う際の安全性を向上させるという観点からは改良の余地があった。
【0009】
より具体的に説明すると、以下のとおりである。即ち、特許文献1では、自動旋回モードの間に報知ブザーが断続的に鳴り続けるように構成されている。これは、自動旋回モードが正常に動作し続けていることをオペレータに認識させ、誤動作等を防止する目的であると考えられる。しかしながら、このように自動旋回モードのあいだに報知ブザーが鳴り続ける構成では、田植機の周囲にいる人やオペレータ自身にとって、作業機の自動的な昇降がどのタイミングで行われるのかが必ずしも明らかではない。従って、特許文献1の構成は、作業機の自動的な昇降が行われる際に周囲に注意を促すという課題を解決することができない。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、植付部が自動的に昇降する際の安全性を向上させた田植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0012】
本発明の観点によると、以下の構成の乗用型田植機が提供される。即ち、この田植機は、車体と、報知部と、作業機と、前記作業機を上下に昇降するための昇降シリンダと、前記昇降シリンダの駆動を制御する制御部と、を備える。そして、前記制御部は、前記作業機を自動的に昇降させる制御を開始するトリガを検出した場合、前記報知部によって作業機の自動昇降を報知した後、前記昇降シリンダを駆動して前記作業機を昇降させる。
【0013】
これにより、作業機の自動昇降が行われる前に、乗用型田植機のオペレータ及び当該乗用型田植機の周囲にいる人に対して報知が行われるので、当該自動昇降の安全性を高めることができる。
【0014】
前記の乗用型田植機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この乗用型田植機は、前記作業機に対する駆動力の伝達の有無を切換可能な作業クラッチを備える。前記制御部は、前記作業機の作動中において所定の操作を前記トリガとして検出すると、前記報知部によって前記作業機の上昇を報知した後、前記昇降シリンダを駆動して前記作業機を上昇させる。また、前記制御部は、車体の旋回終了を前記トリガとして検出すると、前記報知部によって前記作業機の下降を報知した後、前記昇降シリンダを駆動して前記作業機を下降させる。そして、前記制御部は、前記所定の操作を検出した位置と対応する位置に前記車体が到達したことを検出すると、前記作業クラッチを接続するとともに前記報知部による報知を行う。
【0015】
これにより、旋回時の自動昇降時が行われる前に、乗用型田植機のオペレータ及び当該乗用型田植機の周囲にいる人に対して報知が行われるので、旋回時における自動昇降の安全性を高めることができる。また、作業クラッチが接続された時にも報知を行うことにより、オペレータは、作業機の昇降が正しく行われて作業が再開されたことを確認することができる。
【0016】
前記の乗用型田植機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記車体は、前記作業機を取外し可能に構成される。前記制御部は、前記作業機が前記車体に取り付けられている場合において、前記車体の後進操作を前記トリガとして検出した場合には、前記報知部によって前記作業機の上昇を報知した後、前記昇降シリンダを駆動して前記作業機を上昇させる。また、前記制御部は、前記作業機が取り外されている場合は、前記車体の後進操作を検出しても前記昇降シリンダを駆動しない。
【0017】
これにより、後進時の自動上昇が行われる前に、乗用型田植機のオペレータ及び当該乗用型田植機の周囲にいる人に対して報知が行われるので、当該後進時における自動上昇の安全性を高めることができる。また、作業機が取り付けられていない場合には、車体を後進させても昇降シリンダを駆動しないので、作業機の取付け/取外し作業を行う際の作業性を高めることができる。
【0018】
前記の乗用型田植機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この乗用型田植機は、前記作業機の下端部近傍に配置されたフロートと、前記フロートの接地状態を検出する接地検出部と、を備える。前記制御部は、前記接地検出部の検出結果に基づいて、前記作業機が地面に対して適切な高さとなるよう自動接地制御を行うように構成される。また、当該制御部は、前記自動接地制御の実行中に作業機の高さを変更する操作を検出すると、前記自動接地制御を中断して待機モードに移行する。そして、前記制御部は、前記待機モード中に前記作業クラッチを接続する操作を前記トリガとして検出すると、前記報知部によって前記自動接地制御の再開を報知するとともに、前記自動接地制御を再開させる。
【0019】
これにより、作業機の自動接地制御を再開する際に、乗用型田植機のオペレータ及び当該乗用型田植機の周囲にいる人に対して報知が行われるので、当該自動接地制御の再開に伴って作業機が自動的に昇降動作する際の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る田植機の全体的な構成を示す側面図。
【図2】田植機の駆動伝達経路を示すスケルトン図。
【図3】サイドクラッチ操作機構の構成を示す模式図。
【図4】田植機の油圧回路図。
【図5】制御部における旋回時自動昇降制御の開始処理を示すフローチャート。
【図6】旋回時自動昇降制御の1つ目のパターンを示すフローチャート。
【図7】旋回時自動昇降制御の2つ目のパターンを示すフローチャート。
【図8】旋回時自動昇降制御の3つ目のパターンを示すフローチャート。
【図9】旋回時自動昇降制御の1つ目のパターンを説明する図。
【図10】旋回時自動昇降制御の2つ目のパターンを説明する図。
【図11】旋回時自動昇降制御の3つ目のパターンを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る乗用田植機1の側面図である。
【0022】
乗用田植機1は、車体2と、当該車体2の後方に配置された植付部3と、から構成されている。
【0023】
車体2は、左右一対の前輪4と、左右一対の後輪5を備えている。また、車体2は、その前後方向で前輪4と後輪5の間に運転座席6を備えている。運転座席6の近傍には、車体2の操向操作を行うためのステアリングハンドル7、車体2の走行速度を調節するための変速ペダル8、車体2の前後進を切り換えるための前後進切換レバー9等、各種の操作具が配置されている。また、車体2において運転座席6の後方には、施肥装置23が配置されている。
【0024】
また、車体2において、運転座席6の下方にはエンジン10が、当該エンジン10の前方にはミッションケース11が、それぞれ配置されている。一方、車体2の後方には、植付部3を取り付けるための昇降リンク機構12、エンジン10の駆動力を植付部3に出力するためのPTO軸13、植付部3を昇降駆動するための昇降シリンダ14等が配置される。
【0025】
また、車体2は、図略の制御部を備えている。制御部は例えばマイクロコントローラからなり、田植機1の各部に備えられたセンサ等の信号に基づいて、田植機1の各構成を制御するように構成されている。
【0026】
前記植付部3は、植付ケース15と、複数のフロート16と、苗載台17と、を備えている。
【0027】
植付ケース15には、前記昇降リンク機構12が連結されている。この昇降リンク機構12は、トップリンク18、ロワーリンク19等からなる平行リンク構造から構成されており、ロワーリンク19に連結された昇降シリンダ14を駆動することにより、植付ケース15を上下に昇降駆動可能に構成されている(これにより、植付部3全体を上下に昇降することができる)。
【0028】
植付ケース15には、1つ以上の植付ユニット20が取り付けられている。植付ユニット20は、回転ケース21に2つの植付爪22を備えるロータリ式植付装置として構成されている。また、植付ケース15には、前記PTO軸13を介してエンジン10の駆動力が入力されており、この駆動力によって回転ケース21が回転駆動される。ロータリ式植付装置の構成は公知であるので詳細な説明は省略するが、回転ケース21を回転駆動することにより、植付爪22の先端部が所定の軌跡を描きながら上下に駆動されるように構成したものである。植付爪22の先端部は、上から下に向かって動くときに、後述の苗載台17に載せられた苗マットの下端から1株分の苗を掻き取り、当該苗の根元を保持したまま下方に動いて地面に植え込むように構成されている。
【0029】
前記フロート(浮き)16は、植付部3の下部に左右対称に設けられる。このフロート16を地面に接触させることにより、植付部3を地面に対して水平に保ち、植付姿勢を安定させて正確な植付けを行うことができるように構成されている。
【0030】
また、複数のフロート16のうち、少なくとも1つは、支点を中心に揺動可能に取り付けられるとともに、当該揺動角度を図略のフロートセンサ(接地検出部)によって検出するように構成されている。このフロート16は、地面に接触することにより揺動するので、前記フロートセンサによって前記揺動角を検出することにより、当該フロート16が地面に適切に接触しているか否かを検出することができる。即ち、フロートセンサの検出結果に基づいて、植付部3が、地面に対して適切な高さとなっているか否かを判断することができる。なお、フロートセンサの検出結果は、前記制御部に出力される。
【0031】
苗載台17は、前記植付ケース15の上方に配置されている。この苗載台17は、図略のガイドレール上を車体左右方向に往復摺動可能に支持されている。そして、植付部3は、苗マットの左右幅の範囲内で苗載台17を左右に往復駆動する図略の横送り機構を備えている。これにより、苗載台17に載せた苗マットを、植付ユニット20に対して左右に相対運動させることができる。また、苗載台17は、苗マットを、下方に向かって(即ち、植付ユニット20側に向かって)間欠的に送る苗送りベルト(縦送り機構)を備えている。以上の構成で、横送り機構と縦送り機構とを適切に連動させることにより、各植付ユニット20に対して苗を順次供給し、連続的に植付けを行うことができる。
【0032】
また、本実施形態の田植機1において、上記の植付部3は、車体2から取り外すことができるように構成されている。具体的には、昇降リンク機構12及びPTO軸13と、植付部3と、の間の接続を取り外すことにより、車体2と植付部3とを離間させることができるように構成されている。また、植付部3を取り外した車体2には、他の種類の作業機(例えば除草機、溝切機など)を取り付けることができるようになっている。このように、本実施形態の田植機1は、いわゆる多目的田植機として構成されている。
【0033】
また、本実施形態の田植機1は、図略の報知部を備えている。この報知部は、具体的にはブザーとして構成されており、その作動は制御部によって制御されている。
【0034】
続いて、本実施形態の田植機1における駆動伝達経路について、図2を参照して説明する。
【0035】
エンジン10は車体2の前後方向で前輪4と後輪5の間に配置されており、いわゆるミッドシップレイアウトとなっている。また、エンジン10は、車体2の左右方向では略中央部に配置されており、その駆動出力軸(クランクシャフト)10aの長手方向が、車体の左右方向に沿うようにして配置されている(いわゆる横置き配置)。この駆動出力軸10aは、エンジン10の筐体から車体の左側方に向けて突出している。また、当該駆動出力軸10aの左側の端部には、駆動伝達ベルト34が配置されている。
【0036】
エンジン10の駆動力は、前記駆動伝達ベルト34を介して、エンジン10の前方に配置されたミッションケース11内に配置されているHMT(油圧機械式無段変速機)25に入力される。HMT25は、HST(静油圧式無段変速機)26と、遊星歯車機構27と、から構成されている。
【0037】
HST26は、可変容量油圧ポンプ28と、固定容量油圧モータ29と、を油圧回路で接続した構成となっている。可変容量油圧ポンプ28は入力軸28aを備えており、これがHST26の駆動入力軸となっている。また、固定容量油圧モータ29は出力軸29aを備えており、これがHST26の駆動出力軸となっている。
【0038】
図2に示すように、可変容量油圧ポンプ28の入力軸28aは、車体2の左右方向に沿って配置されているとともに、HST26の筐体から左右に突出している。この入力軸28aの左側の端部には、前記駆動伝達ベルト34が配置されており、エンジン10の出力が入力されている。また、前記入力軸28aの右側の端部には、油圧ポンプ24が接続されている。即ち、入力軸28aには、可変容量油圧ポンプ28及び油圧ポンプ24が接続されているので、エンジン10の駆動力によって入力軸28aを回転駆動することにより、可変容量油圧ポンプ28及び油圧ポンプ24の両方を同時に駆動することができるように構成されている。
【0039】
可変容量油圧ポンプ28が駆動されることにより吐出されるオイルは、固定容量油圧モータ29に供給され、当該固定容量油圧モータ29の出力軸29aを回転駆動させるように構成されている。また、可変容量油圧ポンプ28のオイルの吐出量は、変速ペダル8の操作量に連動して変更できるように構成されている。これにより、固定容量油圧モータ29の出力軸29aの回転速度を、オペレータが変速ペダル8を操作することによって無段階で変更することができる。なお、前記油圧ポンプ24については、後述する。
【0040】
また、遊星歯車機構27は、サンギア30と、プラネタリギア31を回転可能に支持したプラネタリキャリア32と、アウターギア33と、から構成されている。プラネタリキャリア32には、エンジン10の駆動力が入力される可変容量油圧ポンプ28の入力軸28aからの駆動力が入力されている。また、サンギア30は、固定容量油圧モータ29の出力軸29aに固定されている。そして、アウターギア33は、HMT25の出力軸25aに固定されている。
【0041】
以上の構成で、エンジン10の出力(入力軸28aの回転)と、HST26の出力(出力軸29aの回転)と、が遊星歯車機構27において合成されて、HMT25の出力軸25aから出力される。ここで、HST26の出力は変速ペダル8の操作に応じて無段階で変速可能であるから、当該HST26の出力とエンジン10の出力との合成であるHMT25の出力も、無段階で変速可能である。即ち、HMT25によって、エンジン10の出力を、変速ペダル8の操作に応じて無段階に変速することが可能となっている。
【0042】
HMT25の出力軸25aから出力される回転駆動力の一部は、ミッションケース11内に配置されたメインクラッチ35を介してギア式の主変速部36に入力され、適宜変速される。また、主変速部36は図略のリバースギアを備えており、車体の前後進の切換を行うことができるように構成されている。そして、主変速部36で変速された回転駆動力は、フロントアクスルケース37に出力される。フロントアクスルケース37は、ミッションケース11の前方に配置されるとともに、当該ミッションケース11と一体的に形成されている。主変速部36からの回転駆動力は、フロントアクスルケース37内に配置された左右の前車軸38,38に伝達され、左右の前輪4,4を駆動する。
【0043】
また、主変速部36が出力する回転駆動力の一部は、ミッションケース11から取り出され、プロペラシャフト39を介して、エンジン10の後方に位置するリアアクスルケース40に伝達される。リアアクスルケース40内に入力された回転駆動力は、左の後車軸42L及び右の後車軸42Rに伝達される。左の後車軸42Lは左の後輪5を駆動し、右の後車軸42Rは右の後輪5を駆動する。
【0044】
以上の構成により、変速ペダル8の操作に応じて、前輪4及び後輪5の回転速度を無段階で変更することができるようになっている。即ち、オペレータが変速ペダル8を操作することにより、所望の車速で車体2を走行させることができるように構成されている。
【0045】
また、プロペラシャフト39から左の後車軸42Lまでの駆動伝達経路の間には、左のサイドクラッチ41Lが配置されている。同様に、プロペラシャフト39から右の後車軸42Rまでの駆動伝達経路の間には、右のサイドクラッチ41Rが配置されている。左右のサイドクラッチ41L,41Rは、それぞれ独立して断接を切り換えることができる。即ち、本実施形態の田植機1は、左右の後輪5,5に対する駆動力の伝達の有無を、個別に切り換えることができるように構成されている。これにより、車体2の急旋回を行う時に、内側の後輪に対する駆動力の伝達を切断することができるので、スムーズな急旋回を実現することができる。
【0046】
なお、プロペラシャフト39には、当該プロペラシャフト39の回転を検出する回転センサ44が取り付けられている。この回転センサ44の検出結果は、前記制御部に入力される。制御部においては、前記回転センサ44の検出結果に基づいてプロペラシャフト39の回転回数を検出することにより、車体2が走行したおよその距離を取得することができる。
【0047】
また、HMT25の出力の一部は、ミッションケース11の後部右寄りの位置に設けられた植付駆動取出部51から外部に取り出される。植付駆動取出部51には、ユニバーサルジョイントを介して植付駆動伝達軸52が接続されている。この植付駆動伝達軸52は、ミッションケース11の後方に配置された植付変速部43に接続されている。
【0048】
植付変速部43内には複数のギアからなる変速装置が設けられており、入力された駆動力を適宜変速してPTO軸13から出力するように構成されている。このPTO軸13が伝達する駆動力によって、植付部3が駆動される。以上の構成により、回転ケース21を回転駆動する速度を変速することができるので、苗を植え付ける間隔を変更することができる。
【0049】
また、植付変速部43内において、PTO軸13には、植付クラッチ(作業クラッチ)50を介して駆動力が伝達されるように構成されている。この植付クラッチ50を切断することにより、植付部3の駆動を停止することができる。この植付クラッチ50は、制御部によって接続/切断を切り換えることができるように構成されている。また、この植付クラッチ50は、図略の植付クラッチ操作レバーをオペレータが操作することにより、接続/切断を切り換えることができるようにも構成されている。
【0050】
また、植付変速部43内には、施肥クラッチ53が設けられている。植付変速部43に入力された駆動力の一部は、この施肥クラッチ53を介して、施肥駆動軸54から出力されるように構成されている。施肥駆動軸54は、施肥装置23に接続されている。以上の構成により、施肥装置23に駆動力を伝達し、当該施肥装置23を駆動することで、圃場に肥料を散布することができるようになっている。
【0051】
次に、サイドクラッチ41L,41Rの接続/切断を切り換えるための構成について、図3を参照して説明する。図3には、サイドクラッチ操作機構45の模式的な構成が示されている。
【0052】
サイドクラッチ操作機構45は、左右のクラッチ操作レバー46L,46Rと、ステアリング連動レバー47と、ステアリング操作伝達リンク48と、から構成されている。
【0053】
クラッチ操作レバー46L,46Rはリアアクスルケース40の外側に配置されている。また、クラッチ操作レバー46L,46Rは、支軸を中心にして「クラッチ接続位置」と「クラッチ切断位置」との間で回動することにより、対応する側のサイドクラッチを操作できるように構成されている。具体的には、左のクラッチ操作レバー46Lを「クラッチ接続位置」まで回動させると左のサイドクラッチ41Lが接続状態となり、当該左のクラッチ操作レバー46Lを「クラッチ切断位置」まで回動させると左のサイドクラッチ41Lが切断状態となるように構成されている。同様に、右のクラッチ操作レバー46Rを「クラッチ接続位置」まで回動させると右のサイドクラッチ41Rが接続状態となり、当該右のクラッチ操作レバー46Rを「クラッチ切断位置」まで回動させると右のサイドクラッチ41Rが切断状態となるように構成されている。なお、クラッチ操作レバー46L,46Rは、図略の付勢部材によって、「クラッチ接続位置」となるように付勢力が加えられている。従って、左右のクラッチ操作レバー46L,46Rに対して操作力を加えない状態では、左右のサイドクラッチ41L,41Rは共に接続状態となる。
【0054】
ステアリング連動レバー47は、リアアクスルケース40の外側に配置されている。また、ステアリング連動レバー47は、その長手方向中心部に支軸47aが取り付けられており、この支軸47aを中心にして回動可能に構成されている。ステアリング連動レバー47は、支軸47aを中心にして回動することにより、左右のクラッチ操作レバー46L,46Rを操作できるように構成されている。
【0055】
具体的には、ステアリング連動レバー47は、支軸47aを中心として一方向に向けて回転することにより、当該ステアリング連動レバー47の一側の端部47bによって左のクラッチ操作レバー46Lを押すことができるように構成されている。このようにステアリング連動レバー47の端部47bによって左のクラッチ操作レバー46Lを押すことにより、前記付勢力に逆らって左のクラッチ操作レバー46Lを回動させ、当該左のクラッチ操作レバー46Lを「クラッチ切断位置」とすることができる。また、ステアリング連動レバー47は、支軸47aを中心として他方向に向けて回転することにより、当該ステアリング連動レバー47の他側の端部47cによって右のクラッチ操作レバー46Rを押すことができるように構成されている。このようにステアリング連動レバー47の端部47cによって右のクラッチ操作レバー46Rを押すことにより、前記付勢力に逆らって右のクラッチ操作レバー46Rを回動させ、当該右のクラッチ操作レバー46Rを「クラッチ切断位置」とすることができる。なお、ステアリング連動レバー47は、左右のクラッチ操作レバー46L,46Rの何れも操作しない中立位置(図3の状態)を取ることができるように構成されている。
【0056】
ステアリング操作伝達リンク48は、オペレータによるステアリングハンドル7の操作を、ステアリング連動レバー47の支軸47aに伝達するように構成されている。これにより、ステアリングハンドル7の操作量に応じてステアリング連動レバー47を回動させることができるので、ステアリングハンドル7の操作に応じてサイドクラッチ41L,41Rの接続/切断を切り換えることができる。
【0057】
より具体的には、ステアリングハンドル7を左に一定量以上操作すると、ステアリング連動レバー47の端部47bが左のクラッチ操作レバー46Lを押して、左のサイドクラッチ41Lを切断するように構成されている。また、ステアリングハンドル7を右に一定量以上操作すると、ステアリング連動レバー47の端部47cが右のクラッチ操作レバー46Rを押して、右のサイドクラッチ41Rを切断するように構成されている。
【0058】
以上の構成で、ステアリングハンドル7が左右に一定量以上操作された場合(急旋回を行う場合)、内側の後輪5に対する駆動力の伝達が切断されるので、内側の後輪5によって圃場が荒れることを防止しつつスムーズな旋回を実現することができる。
【0059】
また、左右のクラッチ操作レバー46L,46Rの近傍には、それぞれクラッチセンサ49L,49Rが取り付けられている。このクラッチセンサ49L,49Rは、具体的にはスイッチとして構成されている。即ち、クラッチ操作レバー46L,46Rが「クラッチ切断位置」まで回動したときに、対応する側のクラッチセンサ49L,49Rを押し、スイッチがONとなることによりサイドクラッチの切断を検出するように構成されている。これにより、簡単な構成で、サイドクラッチ41L,41Rが接続しているか否かを検出することができる。なお、クラッチセンサ49L,49Rの検出結果は、制御部に入力されるようになっている。
【0060】
次に、図4を参照して、田植機1に配設された油圧管路について説明する。図4に示すように、この油圧管路は、油圧ポンプ24から、パワーステアリング用バルブ55及び昇降制御バルブユニット56を介して、昇降シリンダ14まで圧油を供給するように構成されている。
【0061】
パワーステアリング用バルブ55は、車体2が備えたパワーステアリング機構60を作動させるオイルの流れを切り換えるためのバルブであり、ステアリングハンドル7の操作に応じて駆動されるスプール55aを備えている。
【0062】
昇降制御バルブユニット56は、昇降制御バルブ57と、ストップバルブ58と、をまとめて1つのユニットとして構成したものである。パワーステアリング用バルブ55を介して油圧ポンプ24から送られてきた圧油は、昇降制御バルブ57、ストップバルブ58の順で経過した後、昇降シリンダ14に供給される。
【0063】
昇降制御バルブ57は、昇降シリンダ14の駆動方向を切り換えるためのソレノイドバルブであり、前記制御部からの制御信号に基づいて駆動されるスプール57aを備えている。このスプール57aの位置を変更することにより、昇降シリンダ14に対してオイルを供給、又は昇降シリンダ14からオイルを排出するように、送油通路を切り換えることが可能に構成されている。制御部は、この昇降制御バルブ57を適宜制御することで、昇降シリンダ14を駆動し、植付部3を上昇又は下降させることができる。
【0064】
ストップバルブ58は、昇降シリンダ14と昇降制御バルブ57との間のオイルの流れを遮断することが可能なバルブであり、オペレータが直接操作することができるように構成されている。このストップバルブ58は、通常の運転時には開いた状態とておき、昇降シリンダ14に対して昇降制御バルブ57からのオイルが供給されるようにしておく。一方、エンジン10を停止する際などには、必要に応じてストップバルブ58を閉じた状態とする。このストップバルブ58を閉じることにより、昇降シリンダ14からオイルが流出することを防止できるので、エンジン10を停止させた状態でも植付部3の位置を維持することができる。
【0065】
次に、制御部によるフロート制御(自動接地制御)について説明する。フロート制御とは、植付作業中において、地面の凹凸等に追従させて植付部3を昇降することにより、当該植付部3を地面に対して適切な高さに維持する制御である。
【0066】
具体的には、以下のような制御である。前述のように、制御部には、フロートセンサの検出結果が入力されている。制御部は、このフロートセンサの検出結果に基づいて、植付部3が地面に対して適切な高さにあるか否かを判断することができる。制御部は、フロートセンサの検出結果に基づいて植付部3が地面に対して高過ぎると判断した場合は、昇降制御バルブ57のスプール57aを操作することにより、植付部3を下降させる。また、制御部は、フロートセンサの検出結果に基づいて植付部3が地面に対して低過ぎると判断した場合は、昇降制御バルブ57のスプール57aを操作することにより、植付部3を上昇させる。なお、フロートセンサの検出結果に基づいて植付部3が地面に対して適切な高さにある場合には、制御部は、当該植付部3の高さを維持する。
【0067】
以上のフロート制御により、植付部3を地面に対して常に適切な高さに維持することができるので、苗を適切に植え付けることができる。
【0068】
ところで、上記のようにフロート制御を行いながら植付作業を行っている最中に車体が圃場の端部(畦ぎわ)まで到達した場合には、車体をUターン旋回させて植付作業を継続する必要がある。ここで、フロート制御を行っている最中は、植付部3が地面に対して接近した位置となっているので、この状態で車体をUターン旋回させると植付部3が畦等に衝突して破損などの原因となる可能性がある。そこで、本実施形態の田植機1は、植付作業中に車体2をUターン旋回させる際には、植付部3が地面から十分に離れた高さとなるまで自動的に上昇させる旋回時自動昇降制御を行うように構成されている。
【0069】
次に、上記の旋回時自動昇降制御について具体的に説明する。
【0070】
旋回時自動昇降制御は、オペレータの所定の操作をトリガとして検出することにより開始される。本実施形態の制御部は、図5のフローチャートに示すように、「サイドクラッチの切断操作」、「植付クラッチの切断操作」及び「後進操作」の3つのトリガのうち、何れか1つを制御部が検出すると、当該制御部が旋回時自動昇降制御を開始するように構成されている。また、制御部は、上記3つのトリガのうち何れを検出したかによって、3つの制御パターンのうち1つを自動的に選択して実行するように構成されている。
【0071】
まず、1つ目の制御パターンについて、図5及び図6のフローチャートを参照して説明する。この制御パターンは、植付作業中において、オペレータがステアリングハンドル7を大きく操作して車体2を急旋回(Uターン)させるという状況を想定している。
【0072】
制御部は、植付作業中において、クラッチセンサ49L,49Rの検出結果に基づいてサイドクラッチ41L,41Rの切断をトリガとして検出した場合(S101の条件分岐)、S104に進んで1つ目の制御パターン(パターン1の制御)で旋回時自動昇降制御を行う。
【0073】
前述のように、本実施形態の田植機1は、ステアリングハンドル7が一定量以上操作された場合にのみサイドクラッチ41L,41Rの何れか一方が切断されるように構成されている。このように構成されているので、クラッチセンサ49L,49Rという簡単なセンサ(具体的にはスイッチ)により、オペレータがステアリングハンドル7を大きく操作して車体2のUターン旋回を開始したことを検出することができる。従って、Uターン開始の開始を判断するために、例えばステアリングシャフトの回転量を検出するための高価な回転量センサ等が必要無く、簡単かつ安価に田植機1を構成することができる。
【0074】
また前述のように、ステアリングハンドル7の操作量が所定量未満の場合には、サイドクラッチ41L,41Rは切断されない。従って、車体2を直進させているときの微妙な操作では、旋回時自動昇降制御が開始することは無いようになっている。これにより、オペレータの意に沿わないタイミングで自動昇降制御が開始してしまうことを防止することができる。
【0075】
制御部は、サイドクラッチ41L,41Rの切断(Uターン旋回の開始)を検出すると、図6のS201に進んで報知部によって報知音を鳴らした後、植付クラッチ50を切断(S202)して、植付部3を上昇(S203)させるように構成されている。このように、Uターン旋回の開始が検出されると、植付部3を自動的に上昇させるので、車体2を旋回させる際に植付部3が畦等に衝突してしまうことを防止できる。また、植付部3を上昇させる際には植付クラッチ50を自動的に切断するので、植付部3の無駄な動作を防止することができる。なお、植付部3を上昇させる際には、前記フロート制御を中断する。
【0076】
そして上記のように、本実施形態の田植機1は、植付部3を自動的に上昇させる際には、前もって報知部による報知を行うように構成されている。これにより、田植機1の周囲にいる人及びオペレータ自身に対して、植付部3の上昇が行われることを報知できるので、植付部3を自動昇降する際の安全性を向上させることができる。
【0077】
制御部は、植付部3を上昇させると、S101で切断が検出された方のサイドクラッチが再び接続されたか否かを判断する(S204)。サイドクラッチの接続が検出された場合は、ステアリングハンドル7が中立位置に戻されたということであるから、Uターン旋回が終了したと判断できる。この場合、制御部は、報知部によって報知音を鳴らし(S205)、その後、植付部3を下降させる。このように、サイドクラッチの接続をトリガとして植付部3を自動的に下降させる際にも、前もって報知部による報知を行うので、植付部3を自動昇降する際の安全性を向上させることができる。
【0078】
なお、図9に示すように、Uターン旋回を開始した時点(サイドクラッチの切断を検出した時点)と、Uターン旋回を終了した直後の時点(サイドクラッチの接続を検出した時点)とでは、車体2の前後方向で見たときに、田植機1の約1台分に相当するオフセット距離が存在している。そこで、本実施形態の田植機1において、制御部は、サイドクラッチの接続(Uターン旋回の終了)を検出した後、前記約1台分に相当する距離を進んだ後に、植付を再開するように構成されている。
【0079】
より具体的には以下のとおりである。即ち、制御部は、サイドクラッチの接続を検出(S204)すると、前記回転センサ44の検出結果に基づいて、プロペラシャフト39の回転回数のカウントを開始する。そして、前記回転回数が、田植機1の約1台分に対応した回転回数以上となったか否か(前記約1台分の距離を走行したか否か)を判定する(S207)。そして、制御部は、車体2が田植機1の約1台分の距離を走行し終わったと判定した場合、植付クラッチ50を接続(S208)して植付を再開するように構成されている。
【0080】
これにより、植付を中断した時点(サイドクラッチの切断を検出した時点)に対応した位置から、植付を再開することができる。これにより、自動旋回昇降制御の前後で苗の植付位置を揃えることができる。
【0081】
なお、上記では、オフセット距離を田植機1の約1台分の距離としたが、前記オフセット距離は、車体2の旋回性能等によって異なる。従って、田植機1は、オペレータが前記オフセット距離を増減するための調節ダイヤルのようなものを備えていても良い。
【0082】
そして、制御部は、植付クラッチ50を接続して植付を再開すると、フロート制御を再開するとともに、報知部によって報知音を鳴らす(S209)ように構成されている。これにより、植付が正常に再開されたことをオペレータに対して報知することができるので、例えば何らかの理由により植付が再開しなかった場合などに誤動作を防止することができる。
【0083】
次に、2つ目の制御パターンについて、図5及び図7を参照して説明する。この制御パターンは、植付作業中にオペレータが植付クラッチを切断して植付を中断した後、若干距離を直進走行した後、車体2を急旋回(Uターン)させるという状況を想定している。このような操作は、畦ぎわにおいて、田植機1が圃場から脱出する際のスペースを確保するために、一定区間の植付を行わない場合等に行われる。
【0084】
制御部は、オペレータが図略の植付クラッチ操作レバーを操作することにより植付クラッチ50が切断したことをトリガとして検出した場合(S102の条件分岐)、S105に進んで2つ目の制御パターン(パターン2の制御)で自動昇降制御を行う。
【0085】
この場合、制御部は、報知音を鳴らし(S301)、その後、フロート制御を中断して植付部3を上昇(S203)させるように構成されている。続いて制御部は、回転センサ44の検出結果に基づいてプロペラシャフト39の回転回数をカウントする処理を開始(S303)し、サイドクラッチ41L,41Rの切断(Uターン旋回の開始)を検出(S304の判断)すると、上記カウントを終了する(S305)。これにより、図10に示すように、植付を中断してからUターン旋回を開始するまでの間に車体2が前進した距離(前進距離)を取得することができる。
【0086】
続いて、制御部は、S304で切断が検出された方のサイドクラッチが再び接続されたこと(Uターン旋回の終了)を検出すると(S306の判定)、報知部によって報知音を鳴らし(S307)、その後、植付部3を下降させる(S308)。ここで、図10に示すように、植付クラッチ50を切断して植付を中断した時点と、Uターン旋回を終了した直後の時点とでは、車体2の前後方向で見たときに、(前進距離)+(田植機1の約1台分)に相当するオフセット距離が存在している。そこで制御部は、サイドクラッチの接続(Uターン旋回の終了)を検出した後、前記回転センサ44の検出結果に基づいてプロペラシャフト39の回転回数をカウントし、車体2が前記オフセット距離だけ走行したか否かを判定する(S309)。そして、車体2が上記オフセット距離を走行し終わったと判定した後、植付クラッチ50を接続(S310)するように構成されている。また、制御部は、植付クラッチ50を接続すると、フロート制御を再開して植付を再開するとともに、報知部によって報知音を鳴らす(S311)ように構成されている。
【0087】
次に、3つ目の制御パターンについて、図5及び図8を参照して説明する。この制御パターンは、植付作業中にオペレータが車体2を後進させた後、車体2を急旋回(Uターン)させるという状況を想定している。このような操作は、畦ぎわぎりぎりの位置まで植付を行いたい場合等に行われる。
【0088】
制御部は、オペレータが前後進切換レバーを操作することにより車体2の後進を開始したことをトリガとして検出した場合(S103の条件分岐)、S106に進んで3つ目の制御パターン(パターン3の制御)で自動昇降制御を行う。
【0089】
この場合、制御部は、報知音を鳴らし(S401)、植付クラッチ50を切断(S402)した後、フロート制御を中断して植付部3を上昇(S403)させように構成されている。続いて制御部は、回転センサ44の検出結果に基づいてプロペラシャフト39の回転回数をカウントする処理を開始(S404)し、サイドクラッチ41L,41Rの切断(Uターン旋回の開始)を検出(S405の判断)すると、上記カウントを終了する(S406)。これにより、図11に示すように、後進を開始してからUターン旋回を開始するまでの間に車体2が後進した距離(後進距離)を取得することができる。
【0090】
続いて、制御部は、S405で切断が検出された方のサイドクラッチが再び接続されたこと(Uターン旋回の終了)を検出すると(S407の判定)、報知部によって報知音を鳴らし(S408)、その後、植付部3を下降させる(S409)。このとき、図11に示すように、後進を開始した時点(植付を中断した時点)と、Uターン旋回を終了した直後の時点とでは、車体2の前後方向で見たときに、(田植機1の約1台分の距離)−(後進距離)に相当するオフセット距離が存在している。そこで制御部は、サイドクラッチの接続(Uターン旋回の終了)を検出した後、前記回転センサ44の検出結果に基づいてプロペラシャフト39の回転回数をカウントし、車体2が前記オフセット距離だけ走行したか否かを判定する(S410)。そして、車体2が上記オフセット距離を走行し終わったと判定した後、植付クラッチ50を接続(S411)するように構成されている。また、制御部は、植付クラッチ50を接続すると、フロート制御を再開して植付を再開するとともに、報知部によって報知音を鳴らす(S412)ように構成されている。
【0091】
以上のように、本実施形態の田植機1は、旋回時自動昇降制御の3つの制御パターンの何れにおいても、植付部3を自動的に上昇又は下降させる前には、必ず報知部による報知を行うように構成されている。これにより、植付部3を自動的に昇降する際の安全性を向上させることができる。
【0092】
なお、上記の説明では、サイドクラッチが接続されたことのみをもってUターン旋回の終了と判断しているが、これに加え、或いはこれに代えて、前記回転センサ44の検出結果を考慮してUターン旋回の終了を判断するように構成しても良い。例えば、サイドクラッチが切断された後、車体2が十分な距離を走行しないままサイドクラッチが接続された場合、Uターン旋回を完了させずに旋回操作を終えたと判断できる。このようにUターン旋回が完了していない場合は、オペレータが植付作業を継続する意図をもって旋回を行った訳ではないと考えられるので、例えサイドクラッチが接続されたとしても、植付部3の自動下降は行わない方が良い。従って、制御部は、サイドクラッチの切断を検出(S102、S304又はS405)した後、回転センサ44によってプロペラシャフト39の回転回数をカウントし、当該回転回数が所定回数以上となるまではUターン旋回が完了していないと判断して、植付部3の自動下降を行わないように構成することができる。
【0093】
次に、後進時における植付部3の自動上昇制御について説明する。
【0094】
例えば、畦ぎわにおいて車体2の位置合わせを行うために、車体2を後進させる場合がある。このような場合、植付部3が畦に衝突してしまうことを防止するため、植付を行っているか否かにかかわらず、植付部3を自動的に上昇させることが好ましい。
【0095】
そこで、本実施形態の田植機1において、オペレータが前後進切換レバーを操作することにより車体2の後進を開始したことをトリガとして制御部が検出すると、当該制御部は、報知部によって報知音を鳴らした後、植付部3を上昇させるように構成されている。このように、後進時における植付部の自動上昇制御の際にも、植付部3を自動上昇させる前に報知を行うので、安全性を向上させることができる。
【0096】
なお、本実施形態の田植機1は、前述のように、植付部3を取り外すことができるように構成されている。ところで、植付部3を取り外した状態の車体2に対して、植付部3又は他の作業機を取り付ける作業は、例えば以下のように行う。即ち、車体2に取り付ける予定の作業機を、車体2の後方で地面又は適宜の台の上に設置する。そして、昇降リンク機構12を適切な高さに維持した状態で車体2を後進させ、昇降リンク機構12を前記作業機の接続箇所に接近させて当該昇降リンク機構と作業機との接続を行う。
【0097】
以上のように、作業機を取り付ける作業の際には、昇降リンク機構12の高さを維持した状態で車体2を後進させる必要があるので、この場合には後進時の自動上昇制御を行わないことが好ましい。そこで、本実施形態の田植機1は、車体2に作業機が取り付けられているか否かを検出する適宜のセンサを備えており、作業機が取り付けられていない場合には、後進時の自動昇降制御を行わないように構成されている。
【0098】
次に、植付作業中における植付部3のマニュアル昇降操作について説明する。
【0099】
即ち、植付作業を行っている最中に、何らかの理由により植付部3の高さを一時的に変更したい場合がある。このような場合に備えて、本実施形態の田植機1は、オペレータが操作することにより植付部3の高さをマニュアルで調節できるように構成した、マニュアル昇降スイッチ(図略)を備えている。
【0100】
植付作業の途中において、一時的に植付を中断して植付部3の高さを変更したい場合には、オペレータは、植付クラッチ50を切断する操作を行うとともに、前記マニュアル昇降スイッチを操作して植付部3が所望の高さとなるように調節する。制御部は、マニュアル昇降スイッチの操作を検出すると、昇降シリンダ14を駆動して植付部3を昇降駆動するとともに、待機モードに移行して、フロート制御を中断するように構成されている。
【0101】
上記のように植付作業の途中で一時的に植付部3の高さを変更した場合には、所定の操作を行うことで速やかに植付作業を再開できることが好ましい。そこで、本実施形態の田植機1において、待機モード中にオペレータが植付クラッチ50を接続する操作を行った場合、制御部は、前記待機モードを抜け出して、報知部によって報知音を鳴らした後、フロート制御を再開するように構成されている。フロート制御が再開すると、植付部3は、オペレータが高さを変更する前の位置まで自動的に昇降されるので、適切に植付作業を再開することができる。このように、植付クラッチ50を接続する操作だけで、植付作業を速やかに再開することができる。
【0102】
また、本実施形態の田植機1では、上記のように、フロート制御を自動的に再開する前には、報知部による報知を行うように構成されている。即ち、植付部3の高さを変更した状態からフロート制御を再開すると、植付部3が元の高さまで自動的に昇降されるので、当該自動的な昇降を周囲に報知することが好ましい。この点、上記のようにフロート制御を再開する前に報知を行うことにより、植付部3が自動的に昇降されることを周囲に報知することができ、安全性を向上させることができる。
【0103】
以上で説明したように、本実施形態の田植機1は、車体2と、報知部と、植付部3と、植付部3を上下に昇降するための昇降シリンダ14と、昇降シリンダ14の駆動を制御する制御部と、を備える。そして、前記制御部は、植付部3を自動的に昇降させる制御を開始するトリガを検出した場合、前記報知部によって植付部3の自動昇降を報知した後、昇降シリンダ14を駆動して植付部を昇降させる。
【0104】
これにより、植付部3の自動昇降が行われる前に、田植機1のオペレータ及び当該田植機1の周囲にいる人に対して報知が行われるので、当該自動昇降の安全性を高めることができる。
【0105】
また、本実施形態の田植機1は、植付部3に対する駆動力の伝達の有無を切換可能な植付クラッチ50を備える。前記制御部は、植付部3の作動中において所定の操作を前記トリガとして検出すると、前記報知部によって植付部3の上昇を報知した後、昇降シリンダ14を駆動して植付部3を上昇させる。また、前記制御部は、車体2の旋回終了(サイドクラッチの接続)を前記トリガとして検出すると、前記報知部によって植付部3の下降を報知した後、昇降シリンダ14を駆動して植付部3を下降させる。そして、前記制御部は、前記所定の操作を検出した位置と対応する位置に車体2が到達したことを検出すると、前記植付クラッチ50を接続するとともに前記報知部による報知を行う。
【0106】
これにより、旋回時の自動昇降時が行われる前に、田植機1のオペレータ及び当該田植機1の周囲にいる人に対して報知が行われるので、旋回時における自動昇降の安全性を高めることができる。また、植付クラッチ50が接続された時にも報知を行うことにより、オペレータは、植付部3の昇降が正しく行われて作業が再開されたことを確認することができる。
【0107】
また、本実施形態の田植機1において、車体2は、植付部3を取外し可能に構成される。前記制御部は、植付部3が車体2に取り付けられている場合において、車体2の後進操作を前記トリガとして検出した場合には、前記報知部によって植付部3の上昇を報知した後、昇降シリンダ14を駆動して植付部3を上昇させる。また、前記制御部は、植付部3が取り外されている場合は、車体2の後進操作を検出しても前記昇降シリンダを駆動しない。
【0108】
これにより、後進時の自動上昇が行われる前に、田植機1のオペレータ及び当該田植機1の周囲にいる人に対して報知が行われるので、当該後進時における自動上昇の安全性を高めることができる。また、植付部3が取り付けられていない場合には、車体2を後進させても昇降シリンダ14を駆動しないので、植付部3の取付け/取外し作業を行う際の作業性を高めることができる。
【0109】
また、本実施形態の田植機1は、植付部3の下端部近傍に配置されたフロート16と、前記フロート16の接地状態を検出するフロートセンサと、を備える。前記制御部は、フロートセンサの検出結果に基づいて、植付部3が地面に対して適切な高さとなるようフロート制御を行うように構成される。また、当該制御部は、フロート制御の実行中に植付部3の高さを変更する操作を検出すると、前記フロート制御を中断して待機モードに移行する。そして、前記制御部は、前記待機モード中に植付クラッチ50を接続する操作を前記トリガとして検出すると、前記報知部によってフロート制御の再開を報知するとともに、前記自動接地制御を再開させる。
【0110】
これにより、植付部3のフロート制御を再開する際に、田植機1のオペレータ及び当該田植機1の周囲にいる人に対して報知が行われるので、フロート制御の再開に伴って植付部3が自動的に昇降動作する際の安全性を高めることができる。
【0111】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0112】
上記実施形態では、ミッションケース11内に、HST26及び遊星歯車機構27からなるHMT25が無段変速装置として配置される構成とした。この構成に代えて、無段変速装置としてHST26のみを備える構成としても良い。ただし、HSTのみの構成に比べて、HSTと遊星歯車機構とを組み合わせたHMTの方が伝達効率の観点からは有利である。
【0113】
上記実施形態では、田植機1の植付部3は取外し可能としたが、取外しが不可能であっても良い。
【0114】
上記実施形態では、植付部3はロータリ式の植付部としたが、クランク式であっても良い。
【0115】
報知部は、ブザーに限らず、例えば機械音声等により「植付部が上昇します」等のアナウンスを行うように構成されていも良い。また、報知部による報知は、音に限定される訳ではなく、例えば警報ランプを点灯させる等の構成でも良い。
【0116】
上記実施形態では、スイッチ式のクラッチセンサによってUターン旋回の開始及び終了を検出しているが、例えばステアリングハンドルにポテンショメータを取り付け、ステアリングの操作量を検出して、所定の角度以上操作されたらUターン旋回開始と検出するように構成しても良い。ただし、上記のように、スイッチ式のクラッチセンサを用いることにより、安価かつ簡単な構成で、Uターン旋回の開始及び終了を検出することができる。
【0117】
上記実施形態の旋回時自動昇降制御において、パターン1及びパターン3の制御では、報知を行った後で植付クラッチを切断する制御を行っているが、植付クラッチを切断した後で報知を行う構成でも良い。要は、植付部3を昇降する前に報知を行うことができれば良い。
【符号の説明】
【0118】
1 田植機(乗用型田植機)
2 車体
3 植付部(作業機)
14 昇降シリンダ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
報知部と、
作業機と、
前記作業機を上下に昇降するための昇降シリンダと、
前記昇降シリンダの駆動を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記作業機を自動的に昇降させる制御を開始するトリガを検出した場合、前記報知部によって作業機の自動昇降を報知した後、前記昇降シリンダを駆動して前記作業機を昇降させることを特徴とする乗用型田植機。
【請求項2】
請求項1に記載の乗用型田植機であって、
前記作業機に対する駆動力の伝達の有無を切換可能な作業クラッチを備え、
前記制御部は、
前記作業機の作動中において所定の操作を前記トリガとして検出すると、前記報知部によって前記作業機の上昇を報知した後、前記昇降シリンダを駆動して前記作業機を上昇させ、
車体の旋回終了を前記トリガとして検出すると、前記報知部によって前記作業機の下降を報知した後、前記昇降シリンダを駆動して前記作業機を下降させ、
前記所定の操作を検出した位置と対応する位置に前記車体が到達したことを検出すると、前記作業クラッチを接続するとともに前記報知部によって報知を行うことを特徴とする乗用型田植機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の乗用型田植機であって、
前記車体は前記作業機を取外し可能に構成され、
前記制御部は、
前記作業機が前記車体に取り付けられている場合において、前記車体の後進操作を前記トリガとして検出した場合には、前記報知部によって前記作業機の上昇を報知した後、前記昇降シリンダを駆動して前記作業機を上昇させ、
前記作業機が取り外されている場合は、前記車体の後進操作を検出しても前記昇降シリンダを駆動しないことを特徴とする乗用型田植機。
【請求項4】
請求項2に記載の乗用型田植機であって、
前記作業機の下端部近傍に配置されたフロートと、
前記フロートの接地状態を検出する接地検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記接地検出部の検出結果に基づいて、前記作業機が地面に対して適切な高さとなるよう自動接地制御を行うように構成され、
当該制御部は、
前記自動接地制御の実行中に作業機の高さを変更する操作を検出すると、前記自動接地制御を中断して待機モードに移行し、
前記待機モード中に前記作業クラッチを接続する操作を前記トリガとして検出すると、前記報知部によって前記自動接地制御の再開を報知するとともに、前記自動接地制御を再開させることを特徴とする乗用型田植機。
【請求項1】
車体と、
報知部と、
作業機と、
前記作業機を上下に昇降するための昇降シリンダと、
前記昇降シリンダの駆動を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記作業機を自動的に昇降させる制御を開始するトリガを検出した場合、前記報知部によって作業機の自動昇降を報知した後、前記昇降シリンダを駆動して前記作業機を昇降させることを特徴とする乗用型田植機。
【請求項2】
請求項1に記載の乗用型田植機であって、
前記作業機に対する駆動力の伝達の有無を切換可能な作業クラッチを備え、
前記制御部は、
前記作業機の作動中において所定の操作を前記トリガとして検出すると、前記報知部によって前記作業機の上昇を報知した後、前記昇降シリンダを駆動して前記作業機を上昇させ、
車体の旋回終了を前記トリガとして検出すると、前記報知部によって前記作業機の下降を報知した後、前記昇降シリンダを駆動して前記作業機を下降させ、
前記所定の操作を検出した位置と対応する位置に前記車体が到達したことを検出すると、前記作業クラッチを接続するとともに前記報知部によって報知を行うことを特徴とする乗用型田植機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の乗用型田植機であって、
前記車体は前記作業機を取外し可能に構成され、
前記制御部は、
前記作業機が前記車体に取り付けられている場合において、前記車体の後進操作を前記トリガとして検出した場合には、前記報知部によって前記作業機の上昇を報知した後、前記昇降シリンダを駆動して前記作業機を上昇させ、
前記作業機が取り外されている場合は、前記車体の後進操作を検出しても前記昇降シリンダを駆動しないことを特徴とする乗用型田植機。
【請求項4】
請求項2に記載の乗用型田植機であって、
前記作業機の下端部近傍に配置されたフロートと、
前記フロートの接地状態を検出する接地検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記接地検出部の検出結果に基づいて、前記作業機が地面に対して適切な高さとなるよう自動接地制御を行うように構成され、
当該制御部は、
前記自動接地制御の実行中に作業機の高さを変更する操作を検出すると、前記自動接地制御を中断して待機モードに移行し、
前記待機モード中に前記作業クラッチを接続する操作を前記トリガとして検出すると、前記報知部によって前記自動接地制御の再開を報知するとともに、前記自動接地制御を再開させることを特徴とする乗用型田植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−188824(P2011−188824A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58152(P2010−58152)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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