説明

乗用型田植機

【課題】薬剤散布装置近傍に、予備の薬剤袋を載せたまま移植作業又は、乗用型田植機の移動を行えるようにする。
【解決手段】走行機体の後部に、苗載台を有する植付作業機を昇降自在に連結すると共に、走行機体の前方から後部まで予備苗を搬送する苗移送台を配置し、苗移送台には、予備苗に薬剤を散布する薬剤散布装置を備える乗用型田植機において、
薬剤散布装置の中央上部に薬剤を投入するホッパを備え、ホッパの上部に蓋体を設け、ホッパ側方に延設するカバー体の上面側に立ち上がり壁を設け、カバー体上に予備の薬剤袋を載置することを可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予備苗を機体前方から機体後方の植付作業機近傍まで搬送する苗移送台によって搬送される予備苗に薬剤を散布する薬剤散布装置を設けた乗用型田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機体前方から機体後部まで予備苗を搬送する苗移送台を移植機に備え、苗移送台の搬送経路で、予備苗に薬剤を散布する薬剤散布装置が設けられている乗用型田植機は知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−17850
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に示される乗用型田植機においては、植付け作業中に畦際又は水田内で薬剤散布装置に薬剤を補充する際に、予備の薬剤袋を載置することは考えられておらず、予備の薬剤袋を乗用型田植機に載せたまま移植作業又は乗用型田植機の移動を行うと予備の薬剤袋が機体上から落下する恐れがあった。
【0005】
また、予備の薬剤袋を載置する載置部を新たに設ける場合、部品数の増加が懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、走行機体の後部に、苗載台を有する植付作業機を昇降自在に連結すると共に、前記走行機体の前方から後部まで予備苗を搬送する苗移送台を配置し、該苗移送台には、前記予備苗に薬剤を散布する薬剤散布装置を備える乗用型田植機において、前記薬剤散布装置の中央上部に前記薬剤を投入するホッパを備え、該ホッパの上部に蓋体を設け、該ホッパ側方に延設するカバー体の上面側に立ち上がり壁を設け、前記カバー体上に予備の薬剤袋を載置することを可能に構成したことを第一の特徴とする。
【0007】
また、前記蓋体は、ホッパ上部に設けられた薬剤供給口、及びその周壁を覆う状態と、前後方向に回動して薬剤供給口を解放するように構成され、前記左右カバー体上面側の前部、右側部、左側部、及び後部に連続する前記立ち上がり壁を設け、前記ホッパと前記立ち上がり壁との間に間隙を設けたことを第二の特徴とする。
【0008】
そして、前記カバー体は、前記薬剤散布装置の左右両側に設けられ、該カバー体の内一方には、該薬剤散布装置に動力を伝達する伝動装置を収納し、他方には電装部品を収納したことを第三の特徴とする。
【0009】
また、前記蓋体上面側の前部、右側部、左側部、及び後部に連続する前記立ち上がり壁を設けたことを第四の特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によると、薬剤散布装置のホッパ側方に延設するカバー体の上側に立ち上がり壁を設けることによって、薬剤散布装置のホッパ近傍に予備の薬剤袋を落下防止しながら載置でき、薬剤をホッパに容易に供給することができる。
また、薬剤散布装置のカバー体自体に予備の薬剤袋を載置する載置部を設けているため、別途支持部材を新たに設ける必要が無い。
【0011】
請求項2に係る発明によると、左右カバー体上面の前部、右側部、左側部、及び後部に連続する立ち上がり壁を設け、蓋体と立ち上がり壁との間に間隙を設けたことによって、薬剤供給口の上部及び、側面を覆うように重合する蓋体を前後方向に回動させることで薬剤供給口を解放するものであっても、ホッパの左右側面と左右カバー体上部に設けた立ち上がり壁との間に設けた間隙によって蓋体の開閉移動が妨げられない。
そして、カバー体上面にこぼれた薬剤を、ホッパと立ち上がり壁との間の間隙から排出することができ、排出する薬剤を袋又は容器に回収することも可能になる。
【0012】
請求項3に係る発明によると、薬剤散布装置の左右両側に設けられたカバー体に伝動装置と電装部品を振り分けて収納することによって、伝動装置、又は電装部品の何れかに不具合が生じた場合にも、左右のカバー体を同時に取り外す場合は少なく、メンテナンス性が向上する。
【0013】
請求項4に係る発明によると、ホッパの上部に設けた開閉自在な蓋体の上面、前部、右側部、左側部、及び後部に連続する立ち上がり壁を設けたことによって、ホッパの左右側方に設けたカバー体の上面以外に蓋体の上面にも予備の薬剤袋を載置することができる。
また、カバー体内の伝動装置、又は電装部品のメンテナンス時には、カバー体の上面に載置した予備の薬剤袋を蓋体上に移動させて所望のカバー体を取り外すことができる。
そして、蓋体の上部に設けた立ち上がり壁内側にこぼれた薬剤を蓋体の開閉動作によって、蓋体の回動支点側に集め、さらに開閉動作を行う事によって薬剤を排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】乗用型田植機の側面図である。
【図2】乗用型田植機の平面図である。
【図3】薬剤散布装置を設けた苗移送台の平面図である。
【図4】第1実施例を示す薬剤散布装置の(a)右側面図・(b)正面図・(c)左側面図・(d)背面図である。
【図5】第2実施例を示す薬剤散布装置の(a)左側面図・(b)背面図である。
【図6】第3実施例を示す要部の(a)左側面図・(b)背面図である。
【図7】第4実施例を示す要部の(a)左側面図・(b)背面図である。
【図8】第5実施例を示す(a)カバー体上面側に設ける薬剤袋固定具の平面図・(b)蓋体上面側に設ける薬剤袋固定具の平面図である。
【図9】同上、薬剤袋固定具の使用状態を示す(a)左側面図・(b)右側面図である。
【図10】同上、薬剤袋固定具によって(a)予備の薬剤袋を固定した状態を示す斜視図・(b)空になった薬剤袋を支持させた状態を示す斜視図である。
【図11】第6実施例を示す挟持具の斜視図である。
【図12】第7実施例を示す(a)挟持具の一例を示す斜視図・(b)挟持具の他例を示す斜視図・(c)挟持具の形状を異ならせた他例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明をする。図1、及び図2は、移植機の一例である乗用型田植機1を示す側面図及び平面図であって、この乗用型田植機1は、左右一対の前輪2及び後輪3に支持された走行機体4を有し、その左右側には、走行機体4の前方から後部に亘って延設される苗移送台5が配設されている。
【0016】
そして、走行機体4の前部には、ボンネット6で覆われるエンジンが搭載されると共に、ボンネット6の後方には、ステアリングハンドル7、運転操作パネル8、及び主変速レバー9等を備えた操縦部10と、この操縦部10の床面を形成するステップ11、及び座席12を支持する機体カバー13が設けられている。尚、機体カバー13には、座席12後方の左右両側に、前記ステップ11より一段高い平坦な苗供給用ステップ14が形成されている。
【0017】
また、走行機体4の後部には、昇降リンク機構15を介して植付作業機16が昇降自在に連結されている。植付作業機16は、前高後低状に傾斜して設けた苗載せ台17と、該苗載せ台17から苗を掻取って植え付ける複数の植付杆を備えた移植装置18と、この移植装置18の下方には、植付け田面を整地するフロート20等を設けているが、これらの基本的な構成は何れも従来通りであり詳細な説明を省略する。
【0018】
そして、ボンネット6の左右両側に形成されているフロントステップ21の中央部下方には、走行機体4から外側方に延出させた前後一対の支柱22,22及び両支柱22,22の上部に支持ステー24及び支持パイプ25からなる連結部材23を連結し、図1に示すように、該連結部材23を介して固定移送台5mを支持している。また、図2及び、図3(b)に示すように該固定移送台5mにはその前後端部に可動移動台5f,5rを連結することにより、走行機体4の前方から後方に亘る苗移送台5が形成されている。
【0019】
詳述すると、図2に示すように、固定移送台5m、及び前後可動移送台5f,5rは左右一対の外枠27,27間に所定の前後間隔で転動ローラ28を取り付けたローラコンベアの形態を採用しており、固定移送台5mの外枠27,27の上面の前後端部には連結ブラケット29,29,29,29が立設し、前側可動移送台5fの外枠27,27の後端部上面に設けたブラケット30,30、及び後側の可動移送台5rの前端部上面に設けたブラケット31,31と夫々連結することによって、全体として前高後低状に傾斜した移送姿勢となり、マット苗Mを載置すると転動ローラ28が苗の重量で回転し、下流である機体4後方に苗を移送するように構成されている。
【0020】
そして、苗移送台5には、その搬送経路でマット苗Mに薬剤を施薬する薬剤散布装置32が設けられている。本実施形態の薬剤散布装置32は、顆粒状の紛粒体を散布する紛粒体散布装置からなり、苗移送装置5で搬送されるマット苗Mに対して殺菌剤等の薬剤を散布するように構成される。なお、薬剤とは、殺虫剤や抗菌剤等の狭義の薬剤に限らず、苗の生長を促進する意味で肥料なども含み、その形状も粉状、粒状もしくは液状など、どのようなものでもよい。このようにすると、植付作業機16に薬剤散布装置32を設ける場合のように、植付作業機16の構造の複雑化や重量の増加を回避できる。
具体的に説明すると、本実施形態の薬剤散布装置32は左右パネルフレーム53,52、ホッパ37、薬剤繰出部35、薬剤散布部36、及び制御部50を備えて構成されている。
【0021】
詳述すると、図4(d)に示すように、薬剤散布装置32の左側パネルフレーム53側面には、電動部品34、制御部50、散布モータ51などが取り付けられており、それらを覆う電装部品カバー56が設けられ、電装部品カバー56後面に電源ボタン57及び、散布量調節ダイヤル58が取り付けられている。そして、右側パネルフレーム52側面には、伝動装置33、変速装置59、動力伝達用のスプロケット48a,48b,48cなどが取り付けられており、それらを覆う伝動装置カバー55が設けられている。
【0022】
図1及び、図4(a),(b)に示すように、右側パネルフレーム52及び左側パネルフレーム53側面は固定移送台5mの左右外枠27,27に取り付けられており、該右側パネルフレーム52と左側パネルフレーム53上部の間にはホッパ37、薬剤操出部35、及び薬剤散布部36が支持されており、ホッパ37に貯留した薬剤が薬剤操出部35に供給されマット苗Mに散布される。
そして、薬剤を貯留するホッパ37には蓋体38がホッパ37前面上端部に設けた回動支点Oを中心に回動可能に設けてあり、ホッパ37の上端に開口する薬剤供給口49及びその周壁を覆う状態からホッパ37の前面上端部に設けた回動支点Oを中心に前方に回動すると薬剤供給口49を解放するように構成されている。
【0023】
また、図4に示すように、前記伝動装置カバー55及び前記電装部品カバー56からなる左右カバー体54,54は、前記右側パネルフレーム52及び左側パネルフレーム53の外方に延設されている。
そして、当該両カバー体54,54の上面側には、底面部60eと、該底面部60eの前部60a、右側部60c、左側部60d、及び後部60bに連続して立ち上がる立ち上がり壁60を有する予備薬剤載置部YA,YBを、接着材、又は両面テープ等で接着することによって取り付けており、左右カバー体54,54上面側の立ち上がり壁60,60の内側に薬剤袋61を容易に載置することを可能としている。
【0024】
また、前記ホッパ37及び蓋体38の側面と立ち上がり壁60,60との間には、前記蓋体38の開閉を妨げない様に、間隙62,62,62,62を設けており、前記立ち上がり壁60,60の内側にこぼれた薬剤を当該間隙62,62,62,62から排出することができ、排出する薬剤を袋又は容器に容易に回収することも可能としている。
【0025】
次に、図5に示す本願の第二実施例について説明すると、前記カバー体54,54の上面側に設けた予備薬剤載置部YA,YBとは別に、前記ホッパ37を覆う蓋体38の上面側に底面部eと該底面部eの前部60a、右側部60c、左側部60d、及び後部60bから連続して立ち上がる立ち上がり壁60を有する予備薬剤載置部YCを接着材、又は両面テープ等で接着することによって取り付けており、前記カバー体54,54の上面以外に、薬剤袋61を蓋体38上に載置することが可能に構成されている。この、構成により、予備の薬剤袋61の載置量が増加し、また、前記カバー体54,54内の伝動装置、または電装部品のメンテナンス時には、薬剤袋61を蓋体38上に移動させて所望のカバー体54を取り外すことができる。
【0026】
また、図6は本願の第3実施例、図7は第4実施例であり、予備薬剤載置部YA,YB,YCの取り付け方法の他例を示すものであるが、第3実施例のものは、前記薬剤散布機32の前記左右カバー体54,54及び前記蓋体38の上面側に前記立ち上がり壁60を設ける際、各予備薬剤載置部YA,YB,YCの金属板をプレス加工によって一体成型し、各予備薬剤載置部YA,YB,YCの底面と、左右カバー体54,54又は蓋体38の上面とを重合させ、夫々溶接によって固定している。
尚、図6に示す溶接箇所71,71・・・で溶接されている。
【0027】
そして、本願の第4実施例のものは、前記立ち上がり壁60の側面四隅にはピン63を突設する一方、前記左右カバー体54,54及び蓋体38側面四隅にはパイプ64を溶接して設け、前記ピン63を前記パイプ64に差し込む事で前記各予備薬剤載置部YA,YB,YCの底面と左右カバー体54,54及び蓋体38上面とを重合させ、着脱自在に固定している。
【0028】
図8から図10本願の第5実施例を示し、予備薬剤載置部YA,YB,YCに薬剤袋固定具66,67を設けたものである。
詳述すると、前記カバー体54,54の上面側に設けた前記予備薬剤載置部YA,YBの薬剤袋固定具66は立ち上がり壁60の前部60aと後部60bとの間に張設されているゴムバンドからなり、図8(a)に示すように、その一端には前記立ち上がり壁60の前部60aの前面に固定する固定孔Aを穿設する一方、他端には係止孔Bを複数穿設し、前記薬剤袋固定具66の固定孔Aを立ち上がり壁60の前部60aの前面に左右回動可能にリペット69で固定し、前記複数の係止孔Bを立ち上がり壁60の後部60bの後面に突設したピン68に対して選択的に係止可能に構成しており、薬剤袋61に対し固定力を変更自在としている。
【0029】
また、同様に、ホッパ37の蓋体38の上面側に設けた予備薬剤載置部YCの薬剤袋固定具67は、図8(b)に示すように、その一端には前記右側部60cに固定する固定孔Aを穿設する一方、他端には係止孔Bを複数穿設し、前記固定孔Aと薬剤袋固定具67の固定孔を立ち上がり壁60の右側部60cに前後回動可能にリペット69で固定し、前記複数の係止孔Bを立ち上がり壁60の前記左側部60dに突設したピン68に対して選択的に係止可能に構成しており、薬剤袋61に対し固定力を変更自在としている。
【0030】
そして、図8(b)に示すように、ホッパ37の蓋体38の上面側に設けた予備薬剤載置部YCの薬剤袋固定具67の形状は、その中央で二本に分れるようにスリットCを設ける事で、薬剤袋固定具67によって、図9に示すように、薬剤袋61に働く固定力の向きを適宜変更可能に構成されている。
また、図10(b)に示すように、前記複数の係止孔Bの内、固定孔A側に穿設されたものを選択して、ピン68に係止することで、空になった薬剤袋61を立ち上がり壁60の内側に折り畳んだ状態で、薬剤袋固定具67で空になった薬剤袋61が落下しないように押さえることができるようにした。
尚、カバー体54,54の上面側に設けた予備薬剤載置部YA,YBの薬剤袋固定具66も同様に、その長手方向中央部に穿設した係止孔Bを選択することにより、上記と同様に薬剤袋固定具66により、空になった薬剤袋61が落下しないように押さえることができる。
【0031】
図11は本願の第6実施例であり、前記空になった薬剤袋61を固定するために、ホッパ37の蓋体38上面側に設けた予備薬剤載置部YCの底面部e及びカバー体54,54の側面に空になった薬剤袋61を固定できるようにクリップからなる挟持具70を取り付けたものであり、この構成により、カバー体54,54の上面に設けた予備薬剤載置部YA,YBには予備の薬剤を載置した状態で、ホッパ37の近傍において空になった薬剤袋61を挟持できる。
尚、ホッパ37の近傍において、カバー体54,54上は、予備の薬剤袋61を載置するスペースとして利用する一方で、前後に回動開閉する蓋体38上は、挟持具70によって空になった薬剤袋61を挟持するスペースとして利用するので、薬剤散布装置32周りのスペースの一層の有効利用を図ることができる。
本例の挟持具70は、底面部60eの前端部側に偏位して設けてあるので、挟持具70の後方側に予備の薬剤袋61を載置するスペースを広く設けることができる。
また、底面部60eの前端部左右方向に長い挟持具70を設けたことで、挟持具70の挟持する力が空になった薬剤袋61の広い範囲に加わり、空になった薬剤袋61が外れないように挟持することができる。
【0032】
また、図12は本願の第7実施例であり、前記挟持具70の他例を示したものである。詳述すると、本実施例の挟持具70は、図12(a)、(b)、(c)に示すように、立ち上がり壁60の底面部60eを利用して、底面部60eに切削加工及びプレス加工によって、長方形状、四角形状又は、三角形状の切りこみを入れ、挟持作用を持たせるべく折り曲げ加工して挟持具70としている。この構成によれば、挟持具70を構成するにあたり、別途部材を用いることなく構成できる。
そして、図12(b)に示す挟持具70,70は、底面部60eの前端部左右端部に一ヵ所ずつ四角形状の挟持具70,70を設けた他例であって、予備薬剤載置部YCに予備の薬剤袋61を載置する際、挟持具70,70が前端部左右端部に一ヵ所ずつ設けてある事で、2つの挟持具70間も予備の薬剤袋60を載置するスペースとして利用できる。
また、図12(c)に示す挟持具70は、底面部60eの前端部、中央に一ヵ所、三角形状の挟持具70を設けた他例の一つで、挟持具70の形状を前部は広く、後部に行くにつれて狭まる形状で、開口部先端70Aを半円形状にすることで、予備の薬剤袋61を載置する際、三角形状の挟持具70が予備の薬剤袋61に穴を開けないようし、空になった薬剤袋61を開口部先端70A側から前部方向に簡単に挟持することができるようにした。
尚、第6実施例及び第7実施例のものは、カバー体54,54の側面にも挟持具70を備えており、例えば蓋体38の上面に予備の薬剤袋61を載置した場合にも空になった薬剤袋61を挟持することができる。
【0033】
図1又は、図4(a),(d)に示すように、繰出ローラ39及び回転ブラシ40からなる薬剤操出部35は、ホッパ37の下部開口に対向して配置され、前記左側パネルフレーム53の外側面に散布モータ51を設け、該散布モータ51の動力を前記右側パネルフレーム52の外側面に設けた伝動装置33に回転動力を伝達し、操出ローラ39及び回転ブラシ40を回転させるように構成されている。
【0034】
前記薬剤散布部36は、前記薬剤操出部35から供給される前記薬剤を案内し散布する散布ガイド41と、左右パネルフレーム52,53間に架設され、マット苗Mを分草する分草体42とを備えて構成されており、分草体42がマット苗Mの葉部を前後に分草し、分草した根元に散布ガイド41により薬剤が案内される。また、散布位置は左右パネルフレーム52,53の前後中央部に設定されており、左右パネルフレーム52,53が薬剤の外部への飛散を防止している。
【0035】
前記薬剤操出部35及び前記薬剤散布部36は、前記操出ローラ39の外周面に前記薬剤が入り込む溝を多数有しており、前記散布モータ51の回転動力によって、前記ホッパ37内の薬剤を操出ローラ39の外周面に設けた溝に入り込ませ、余分な薬剤を前記回転ブラシ40で掻き落とし、前記散布ガイド41まで回転操出すように構成されている。
【0036】
本実施形態において、前記固定移送台5mに対する前記薬剤散布装置32の取り付け位置は、図1及び図2に示すように、マット苗Mの取り出しの容易性を考慮して決められている。具体的に説明すると、固定移送台5mに薬剤散布装置32を設けるにあたり、薬剤散布装置32の後方に、マット苗M一枚分以上のマット苗M搭載長さが確保されるように取り付け位置を設定している。このようにすると、前記苗移送台5の搬送経路上に薬剤散布装置32を配置しても、マット苗Mの取り出しに際して薬剤散布装置32が邪魔になる可能性を低減できる。
【0037】
また、図3に示すように前記固定移送台5mには、薬剤散布位置にあるマット苗Mを強制的に等速搬送する等速搬送装置43が設けられている。この等速搬送装置43は、ベルトコンベアからなり、複数の搬送プーリ44,44,44,44を一体的に有する前後一対の搬送プーリ軸45,45と前後の搬送プーリ44,44,44,44間に搬送ベルト46,46と後側の搬送プーリ軸45を回転させるコンベア駆動モータ47とを備えて構成される。このようにすると薬剤散布位置におけるマット苗Mの搬送速度が一定に保たれるので、マット苗Mの搬送速度の変化に起因する薬剤散布量のバラツキを抑制し、薬剤散布量の均等化を容易に図ることができる。
【0038】
さらに前記苗移送台5には、マット苗Mの位置を検出する複数の苗検知スイッチSW1,SW2,SW3が設けられている。この苗検知スイッチSW1,SW2,SW3は接触式の検知スイッチであり、第一苗検知スイッチSW1は、等速搬送装置43の搬送始端位置におけるマット苗Mの存在を検出し、第二検知スイッチSW2は、薬剤散布位置におけるマット苗Mの存在を検出し、第三検知スイッチSW3は、前記後側可動移送台5rの後端部におけるマット苗Mの存在を検出するようにその位置を設定してある。
【0039】
そして、図3又は、図4(d)で示すように、前記薬剤散布装置32には前記散布モータ51、電源ボタン57、散布量調節ダイヤル58、前記コンベア駆動モータ47、及び前記苗検知スイッチSW1,SW2,SW3が接続されており、制御部50は、電源ボタン57、苗検知スイッチSW1,SW2,SW3、及び散布量調節ダイヤル58の入力に基づきコンベア駆動モータ47、及び散布モータ51の駆動制御を行う。
【0040】
図1又は、図3に示すように、マット苗Mの位置検出に基づく前記薬剤散布装置32及び前記等速搬送装置43の駆動制御パターンは、以下のように設定されている。前記第一検知スイッチSW1がONとなるとコンベア駆動モータ47を駆動させ、前記第二検知スイッチSW2がONの状態では、前記コンベア駆動モータ47と前記散布モータ51の両方を駆動させるように設定されている。前記第三検知スイッチSW3はコンベア駆動モータ47、及び散布モータ51の停止スイッチとして作用し、前記第一検知スイッチSW1、又は第二検知スイッチSW2がONの状態でも第三スイッチSW3がONの状態ではコンベア駆動モータ47、及び散布モータ51を停止させるように設定されている。そして、後側可動移送台5rにマット苗Mが存在していない場合は全ての苗検知スイッチSW1,SW2,SW3がOFFとなり、コンベア駆動モータ47、及び散布モータ51は共に駆動しない。
【0041】
上記構成により、前記前側可動移送台5f側からマット苗Mが搬送され、前記第一検知スイッチSW1がONとなるとコンベア駆動モータ47が駆動し、マット苗Mの等速搬送が開始される。次にマット苗Mが薬剤散布位置に到達し前記第二スイッチSW2がONとなると散布モータ51が駆動し薬剤の散布が開始される。そして、マット苗Mが薬剤散布位置から離れ、第二スイッチSW2がOFFとなるとコンベア駆動モータ47、及び散布モータ51が停止する。この時、固定移送台5mから連続してマット苗Mが搬送されている場合には、第一検知スイッチSW1の苗検知によりコンベア駆動モータ47の駆動が継続され、マット苗Mの等速搬送が継続される。このようにしてマット苗Mの搬送、及び薬剤散布は連続的に継続されるが、マット苗Mが後側可動移送台5rの後端部に位置していることを第三スイッチSW3が検出すると、第一検知スイッチSW1、又は第二検知スイッチSW2がON状態であっても、これ以上マット苗Mを後方に搬送できない状態として、コンベア駆動モータ47、及び散布モータ51を停止させて、マット苗Mの等速搬送、及び薬剤散布を停止する。このようにすると、苗移送台5で搬送されるマット苗Mに対して確実な薬剤散布が可能になると共に、散布量のバラツキを抑制し、散布量の均等化を図ることができる。
【0042】
また、図3及び図5(b)に示すように、前記散布量調節ダイヤル58の入力を散布停止位置Sに設定した場合は、前記第一検知スイッチSW1がONとなるとコンベア駆動モータ47を駆動させ、第二検知スイッチSW2がONの状態では、前記コンベア駆動モータ47を駆動させたまま、前記散布モータ51を駆動させないように設定している。
第三検知スイッチSW3はコンベア駆動モータ47の停止スイッチとして作用し、前記第一検知スイッチSW1、又は前記第二検知スイッチSW2がONの状態でも前記第三スイッチSW3がONの状態では、コンベア駆動モータ47を停止させるように設定されている。
そして、前側可動移送台5f、前記固定移送台5m、前記後側可動移送台5rにマット苗Mが存在していない場合は全ての苗検知スイッチSW1,SW2,SW3がOFFとなり、コンベア駆動モータ47及び散布モータ51は駆動しない。
【0043】
上記構成により、前記散布量調節ダイヤル58の入力を散布停止位置Sに設定した場合は、前記前側可動移送台5f側からマット苗Mが搬送され、前記第一検知スイッチSW1がONとなると前記コンベア駆動モータ47が駆動し、マット苗Mの等速搬送が開始される。次にマット苗Mが前記薬剤散布装置32に到達し前記第二スイッチSW2がONとなるとコンベア駆動モータ47を駆動させたまま、前記散布モータ51の駆動を停止した状態でマット苗Mを後側可動移送台5r側へ搬送する。そして、マット苗Mが薬剤散布位置から離れ、第二スイッチSW2がOFFとなるとコンベア駆動モータ47が停止する。この時、前記前側可動移送台5fから連続してマット苗Mが搬送されている場合には、第一検知スイッチSW1の苗検知によりコンベア駆動モータ47の駆動が継続され、マット苗Mの等速搬送が継続される。このようにしてマット苗Mの搬送は連続的に継続されるが、マット苗Mが後側可動移送台5rの後端部に位置していることを前記第三スイッチSW3が検出すると、前記第一検知スイッチSW1、又は第二検知スイッチSW2がON状態であっても、これ以上マット苗Mを後方に搬送できない状態として、コンベア駆動モータ47を停止させて、マット苗Mの等速搬送を停止する。このようにすると、苗移送台5で搬送されるマット苗Mに対して、薬剤を散布しない状態で前側可動移送台5fから後側可動移送台5r側へ搬送することができる。
【0044】
また、マット苗Mの搬送速度をベルトコンベアからなる前記等速搬送装置43の駆動速度で設定できるので前記薬剤散布装置32の駆動を等速搬送装置43の駆動速度に連動させた等速駆動をさせるだけで良く、薬剤散布装置32に係る構成を一つの前記固定移送台5m内で構成することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 乗用型田植機
5 苗移送台
5m 固定移送台
5f 前側可動移送台
5r 後側可動移送台
32 薬剤散布装置
37 ホッパ
38 蓋体
49 薬剤供給口
54 カバー体
55 伝動装置カバー
56 電装部品カバー
60 立ち上がり壁
60a 前部
60b 後部
60c 右側部
60d 左側部
60e 底面部
61 薬剤袋
62 間隙
M マット苗
YA,YB,YC 予備薬剤載置部
SW1 第一検知スイッチ
SW2 第二検知スイッチ
SW3 第三検知スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(4)の後部に、苗載台(17)を有する植付作業機(16)を昇降自在に連結すると共に、前記走行機体(4)の前方から後部まで予備苗(M)を搬送する苗移送台(5)を配置し、該苗移送台(5)には、前記予備苗(M)に薬剤を散布する薬剤散布装置(32)を備える乗用型田植機において、前記薬剤散布装置(32)の中央上部に前記薬剤を投入するホッパ(37)を備え、該ホッパ(37)の上部に蓋体(38)を設け、該ホッパ(37)側方に延設するカバー体(54,54)の上面側に立ち上がり壁(60,60)を設け、前記カバー体(54,54)上に予備の薬剤袋(61)を載置することを可能に構成したことを特徴とする乗用型田植機。
【請求項2】
前記蓋体(38)は、ホッパ(37)上部に設けられた薬剤供給口(49)、及びその周壁を覆う状態と、前後方向に回動して薬剤供給口(49)を解放するように構成され、前記左右カバー体(54,54)上面の前部(60a,60a)、右側部(60c)、左側部(60d)、及び後部(60b,60b)に連続する前記立ち上がり壁(60,60)を設け、前記ホッパ(37)と前記立ち上がり壁(60,60)との間に間隙(62,62,62,62)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の乗用型田植機。
【請求項3】
前記カバー体(54,54)は、前記薬剤散布装置(32)の左右両側に設けられ、該カバー体(54,54)の内一方には、該薬剤散布装置(32)に動力を伝達する伝動装置(33)を収納し、他方には電装部品(34)を収納したことを特徴とする請求項1又は、2に記載の乗用型田植機。
【請求項4】
前記蓋体(38)上面側の前部(60a)、右側部(60c)、左側部(60d)、及び後部(60b)に連続する前記立ち上がり壁(60)を設けたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の乗用型田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−72235(P2011−72235A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226005(P2009−226005)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】