位置ずれ防止装置、これを備えた基板保持具、基板搬送装置および基板搬送方法
【課題】 真空状態でも基板保持具に保持された基板の位置ずれを抑制できる位置ずれ防止装置を提供する。
【解決手段】 フォーク101に着脱自在に装着可能な位置ずれ防止装置201は、本体203と、この本体203の上面203aに突出して設けられた複数の可動ピン205と、これらの可動ピン205をそれぞれ独立して上方向(突出する方向)に付勢するコイルばね207とを備えている。
【解決手段】 フォーク101に着脱自在に装着可能な位置ずれ防止装置201は、本体203と、この本体203の上面203aに突出して設けられた複数の可動ピン205と、これらの可動ピン205をそれぞれ独立して上方向(突出する方向)に付勢するコイルばね207とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置ずれ防止装置、これを備えた基板保持具、基板搬送装置および基板搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)に代表されるFPDの製造過程においては、真空下でガラス基板等の基板に、エッチング、成膜等の各種処理が施される。FPDの製造には、基板処理室を複数備えた、いわゆるマルチチャンバタイプの基板処理システムが使用されている。このような基板処理システムは、基板を搬送する基板搬送装置が配備された搬送室と、この搬送室の周囲に設けられた複数のプロセスチャンバとを有している。そして、搬送室内の基板搬送装置によって、基板が各プロセスチャンバ内に搬入され、あるいは、処理済みの基板が各プロセスチャンバから搬出される。基板の搬送には、通例、フォークと呼ばれる基板保持具が使用される。フォークは、進出・退避、旋回等の動作が可能な搬送アームに取り付けられた共通の基部に複数の支持ピックが櫛歯状に形成された構造を有している。
【0003】
大気圧状態では、通常、フォークに設けられたバキュームチャックによって基板を固定して基板の搬送が行われる。一方、真空状態ではバキュームチャックが使用できない。このため、フォークに基板との間の摩擦係数の大きなゴムなどの材質からなる小片の弾性部材を装着してこれを基板に当接させることにより、基板の横滑りなどによる位置ずれを防止する工夫がなされてきた。しかし、真空状態での搬送には、以下のような問題があった。
【0004】
真空状態での基板の保持は、上記のように、弾性部材と基板との摩擦力に頼るため、基板の搬送動作速度を大きくすることができない、という問題があった。基板搬送装置の搬送アームに取り付けられたフォークは、基板を保持した状態で、進出・退避・旋回などの加減速を伴う搬送動作を行うことから、摩擦力による保持では限界がある。従って、安全な搬送を実現するためには、搬送動作速度を抑える以外になく、基板処理システムにおける基板処理のスループットを低下させる大きな要因になっていた。
【0005】
また、基板上の電子部品を形成する領域(デバイス形成領域)の裏側に弾性部材を当接させると、静電破壊によって電子部品の歩留まりを低下させる懸念があることから、デバイス形成領域から外れた領域の裏面に弾性部材を当接させる必要がある。そのため、基板面積に比して非常に小さな弾性部材しか用いることができず、しかも、弾性部材の配設数、配設位置なども制約されて、基板との接触面積が限られてしまい、十分な摩擦力を得ることができない。その結果、十分な保持力が得られず搬送動作速度を下げてもフォーク上で基板が移動して脱落したり、保持位置が大きくずれて基板の処理や受け渡しに支障が生じたりすることがあった。
【0006】
近年、生産効率を上げるため、FPD等の基板の大型化が進んでおり、フォークに装着された弾性部材と基板との摩擦力に頼る保持方法では、十分な保持力とスループットを得ることが益々困難になってきている。そのため、本発明者は、フォークに基板の水平方向の動きを制限する突起を設け、これを基板の端部に当接させることにより、横滑りや位置ずれを防ぐことを検討した。しかし、基板の受け渡しの際には、保持位置が変わることがしばしば起こるため、受け渡し時に基板が前記突起に乗り上げてしまう可能性がある。その結果、基板の保持がむしろ不安定になって脱落などを発生させる懸念がある。また、そのような事態を避けるためには、十分なマージンをとって突起を配設しなければならないため、当該マージン分の位置ずれが発生することは避けられなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、真空状態でも基板保持具に保持された基板の位置ずれを抑制できる位置ずれ防止装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の位置ずれ防止装置は、基板を保持する基板保持具に固定される本体と、
前記本体の上面から第1の高さで突出した部分を有し、該突出した部分に基板の荷重が加えられた状態で前記第1の高さよりも低くなるように、互いに独立して設けられた複数の可動部材と、
前記複数の可動部材をそれぞれ突出方向に付勢する付勢手段と、
を備え、
前記第1の高さで突出した1つ以上の可動部材の側部が前記基板保持具に保持された基板の端部に当接することによって基板の動きを制限し位置ずれを防止するものである。
【0009】
また、本発明に係る基板保持具は、基板を支持する基板支持部材と、前記基板支持部材に固定された、上記位置ずれ防止装置と、を備えている。
【0010】
また、本発明に係る基板搬送装置は、上記基板保持具を備えている。
【0011】
また、本発明に係る基板搬送方法は、上記基板搬送装置を用い、前記基板保持具に基板を保持して搬送する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、真空搬送であるか大気圧搬送であるかにかかわらず、基板の横滑りなどによる保持位置のずれを防止し、基板保持具に確実に基板を保持できる。そのため、基板搬送の信頼性を高めることができる。また、基板処理システムにおける基板処理のスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】真空処理システムを概略的に示す斜視図である。
【図2】図1の真空処理システムの平面図である。
【図3】搬送装置の概略構成を説明する斜視図である。
【図4】フォークの概略構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態の位置ずれ防止装置の外観構成を示す斜視図である。
【図6】位置ずれ防止装置の要部断面図である。
【図7】位置ずれ防止装置の別の状態の要部断面図である。
【図8】位置ずれ防止装置を装着したフォークに基板を載置した状態を説明する図面である。
【図9】位置ずれ防止装置を装着したフォークに基板を載置した別の状態を説明する図面である。
【図10】位置ずれ防止装置を装着したフォークに基板を載置したさらに別の状態を説明する図面である。
【図11】位置ずれ防止装置の配置例を説明する図面である。
【図12】位置ずれ防止装置の別の配置例を説明する図面である。
【図13】可動ピンの構成例を説明する斜視図である。
【図14】位置ずれ防止装置により基板の姿勢を補正した状態を説明する図面である。
【図15】変形例の位置ずれ防止装置の外観構成を示す斜視図である。
【図16】位置ずれ防止装置を円形の基板に適用した状態を説明する図面である。
【図17】本発明の第2の実施の形態の位置ずれ防止装置の外観構成を拡大して示す斜視図である。
【図18】図17の位置ずれ防止装置301の要部断面図である。
【図19】支持ピックの先端に位置ずれ防止装置を装着した状態を示す図面である。
【図20】位置ずれ防止装置を装着した支持ピック上に基板を支持した状態を説明する図面である。
【図21】可動ピンによるストッパー作用を説明する図面である。
【図22】支持ピックの先端に位置ずれ防止装置を装着した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。ここでは、本発明の一実施の形態の基板搬送装置および該基板搬送装置を備えた基板処理システムを例に挙げて説明を行なう。図1は、基板処理システムとしての真空処理システム100を概略的に示す斜視図であり、図2は、各チャンバの内部を概略的に示す平面図である。この真空処理システム100は、複数のプロセスチャンバ1a,1b,1cを有するマルチチャンバ構造をなしている。真空処理システム100は、例えばFPD用のガラス基板(以下、単に「基板」と記す)Sに対してプラズマ処理を行なうための処理システムとして構成されている。なお、FPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence;EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)等が例示される。
【0015】
真空処理システム100では、複数の大型チャンバが平面視十字形に連結されている。中央部には搬送室3が配置され、その三方の側面に隣接して基板Sに対してプラズマ処理を行なう3つのプロセスチャンバ1a,1b,1cが配設されている。また、搬送室3の残りの一方の側面に隣接してロードロック室5が配設されている。これら3つのプロセスチャンバ1a,1b,1c、搬送室3およびロードロック室5は、いずれも真空チャンバとして構成されている。搬送室3と各プロセスチャンバ1a,1b,1cとの間には図示しない開口部が設けられており、該開口部には、開閉機能を有するゲートバルブ7aがそれぞれ配設されている。また、搬送室3とロードロック室5との間には、ゲートバルブ7bが配設されている。ゲートバルブ7a,7bは、閉状態で各チャンバの間を気密にシールするとともに、開状態でチャンバ間を連通させて基板Sの移送を可能にしている。また、ロードロック室5と外部の大気雰囲気との間にもゲートバルブ7cが配備されており、閉状態でロードロック室5の気密性を維持するとともに開状態でロードロック室5内と外部との間で基板Sの移送を可能にしている。
【0016】
ロードロック室5の外側には、2つのカセットインデクサ9a,9bが設けられている。各カセットインデクサ9a,9bの上には、それぞれ基板Sを収容するカセット11a,11bが載置されている。各カセット11a,11b内には、基板Sが、上下に間隔を空けて多段に配置されている。また、各カセット11a,11bは、昇降機構部13a,13bによりそれぞれ昇降自在に構成されている。本実施の形態では、例えばカセット11aには未処理基板を収容し、他方のカセット11bには処理済み基板を収容できるように構成されている。
【0017】
これら2つのカセット11a,11bの間には、基板Sを搬送するための搬送装置15が設けられている。この搬送装置15は、上下2段に設けられた基板保持具としてのフォーク17aおよびフォーク17bと、これらフォーク17a,フォーク17bを進出、退避および旋回可能に支持する駆動部19と、この駆動部19を支持する支持台21とを備えている。
【0018】
プロセスチャンバ1a,1b,1cは、その内部空間を所定の減圧雰囲気(真空状態)に維持できるように構成されている。各プロセスチャンバ1a,1b,1c内には、図2に示したように、基板Sを載置する載置台としてのサセプタ2が配備されている。そして、各プロセスチャンバ1a,1b,1cでは、基板Sをサセプタ2に載置した状態で、基板Sに対して、例えば真空条件でのエッチング処理、アッシング処理、成膜処理などのプラズマ処理が行なわれる。
【0019】
本実施形態では、3つのプロセスチャンバ1a,1b,1cで同種の処理を行ってもよいし、プロセスチャンバ毎に異なる種類の処理を行ってもよい。なお、プロセスチャンバの数は3つに限らず、4つ以上であってもよい。
【0020】
搬送室3は、真空処理室であるプロセスチャンバ1a,1b,1cと同様に所定の減圧雰囲気に保持できるように構成されている。搬送室3の中には、図2に示したように、搬送装置23が配設されている。そして、搬送装置23により、3つのプロセスチャンバ1a,1b,1cおよびロードロック室5の間で基板Sの搬送が行われる。
【0021】
搬送装置23は、上下2段に設けられた搬送装置を備え、それぞれ独立して基板Sの出し入れを行うことが出来るように構成されている。図3に、基板保持具としてのフォーク101を有する上段の搬送装置23aの概略構成を示した。搬送装置23aは、主要な構成として、台座部113と、台座部113に対してスライド可能に設けられたスライドアーム115と、このスライドアーム115の上にスライド可能に設けられ、基板Sを保持するフォーク101とを備えている。フォーク101は、基部としてのピックベース117と、該ピックベース117に連結された複数(例えば4本)の支持ピック119を備えている。最も外側に配置された2本の支持ピック119には、フォーク101上に保持された基板Sの位置ずれを防止する位置ずれ防止装置201が、それぞれ4つずつ装着されている。この位置ずれ防止装置201の詳細な構成については後述する。
【0022】
スライドアーム115の側部には、台座部113に対してスライドアーム115をスライドさせるためのガイド121が設けられている。そして、ベース部113にはガイド121をスライド可能に支持するスライド支持部123が設けられている。
【0023】
また、スライドアーム115の側部には、スライドアーム115に対してフォーク101をスライドさせるためのガイド125が、前記ガイド121と平行に設けられている。そして、ガイド125に沿ってスライドするスライダ127が設けられ、このスライダ127にフォーク101が装着されている。
【0024】
図3では上段の搬送装置23aについて説明したが、下段の搬送装置(図示省略)も上段の搬送装置23aと同様の構成を有している。そして、上下の搬送装置は、図示しない連結機構によって連結され、一体となって水平方向に回転できるように構成されている。また、上下二段に構成された搬送装置は、スライドアーム115およびフォーク101のスライド動作や、台座部113の回転動作および昇降動作を行なう図示しない駆動ユニットに連結されている。
【0025】
ロードロック室5は、プロセスチャンバ1a,1b,1cおよび搬送室3と同様に所定の減圧雰囲気に保持できるように構成されている。ロードロック室5は、大気雰囲気にあるカセット11a,11bと減圧雰囲気の搬送室3との間で基板Sの授受を行うためのものである。ロードロック室5は、大気雰囲気と減圧雰囲気とを繰り返す関係上、極力その内容積が小さく構成されている。ロードロック室5には基板収容部27が上下2段に設けられており(図2では上段のみ図示)、各基板収容部27には、基板Sを支持する複数のバッファ28が設けられている。また、ロードロック室5内には、矩形状の基板Sの互いに対向する角部付近に当接して位置合わせを行なうポジショナー29が設けられている。
【0026】
図2に示したように、真空処理システム100の各構成部は、コンピューターとしての機能を有する制御部30に接続されて制御される構成となっている(図1では図示を省略)。制御部30は、CPUを備えたコントローラ31と、ユーザーインターフェース32と記憶部33とを備えている。コントローラ31は、真空処理システム100において、例えばプロセスチャンバ1a,1b,1c、搬送装置15、搬送装置23などの各構成部を統括して制御する。ユーザーインターフェース32は、工程管理者が真空処理システム100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、真空処理システム100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等から構成される。記憶部33には、真空処理システム100で実行される各種処理をコントローラ31の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や処理条件データ等が記録されたレシピが保存されている。ユーザーインターフェース32および記憶部33は、コントローラ31に接続されている。
【0027】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース32からの指示等にて任意のレシピを記憶部33から呼び出してコントローラ31に実行させることで、コントローラ31の制御下で、真空処理システム100での所望の処理が行われる。
【0028】
前記制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピューター読み取り可能な記憶媒体、例えばCD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリなどに格納された状態のものを利用できる。あるいは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0029】
次に、以上のように構成された真空処理システム100の動作について説明する。
まず、搬送装置15の2枚のフォーク17a,17bを駆動させて、未処理基板を収容したカセット11aから基板Sを受け取り、ロードロック室5の上下2段の基板収容部27のバッファ28にそれぞれ載置する。
【0030】
フォーク17a,17bを退避させた後、ロードロック室5の大気側のゲートバルブ7cを閉じる。その後、ロードロック室5内を排気して、内部を所定の真空度まで減圧する。次に、搬送室3とロードロック室5との間のゲートバルブ7bを開いて、搬送装置23のフォーク101により、ロードロック室5の基板収容部27に収容された基板Sを受け取る。
【0031】
次に、搬送装置23のフォーク101により基板Sを保持した状態で、スライドアーム115およびフォーク101のスライド動作や、台座部113の回転動作および昇降動作により基板Sの搬送を行う。これらの搬送動作は、位置ずれ防止装置201によってフォーク101上での基板Sの動きが制限されるため、基板Sが確実に保持された状態で行われる。そして、プロセスチャンバ1a,1b,1cのいずれかに基板Sを搬入し、サセプタ2に受け渡す。プロセスチャンバ1a,1b,1c内では、基板Sに対してエッチング等の所定の処理が施される。次に、処理済みの基板Sは、サセプタ2から搬送装置23のフォーク101に受け渡され、プロセスチャンバ1a,1b,1cから搬出される。
【0032】
そして、基板Sは、前記とは逆の経路でロードロック室5を経て、搬送装置15によりカセット11bに収容される。なお、処理済みの基板Sを元のカセット11aに戻してもよい。
【0033】
次に、図4〜図12を参照しながら、本発明の第1の実施の形態に係る位置ずれ防止装置201およびこれを備えたフォーク101についてさらに詳細に説明する。まず、位置ずれ防止装置201が装着されるフォーク101の構成について説明する。図4は、フォーク101の外観を示す斜視図である。前記のとおり、フォーク101は、スライダ127に固定されたピックベース117と、該ピックベース117に連結された基板支持部材としての複数(例えば4本)の支持ピック119を備えている。
【0034】
ピックベース117は、櫛歯状に設けられた複数の支持ピック119(本実施の形態では4本)を確実に固定し、スライドアーム115(スライダ127)に連結できるものであればその構成は問わない。また、ピックベース117と支持ピック119との連結構造も任意である。例えば、ピックベース117として支持ピック119の基端部を挟持可能な2枚の板材を用いた固定構造でもよいし、複数の支持ピック119を支持可能な1枚の板材を用いた固定構造でもよい。さらに、ピックベース117と支持ピック119は一体に形成されていてもよい。本実施の形態では、ピックベース117は、例えば断面視コの字型に折曲げられた板材により構成されている。そして、折曲げられた板材の隙間に複数の支持ピック119のそれぞれの基端部が挿入され、図示しない固定手段例えば螺子等により固定されている。
【0035】
フォーク101の支持ピック119は、例えば長尺な板状あるいは中空の角筒状をなしている。支持ピック119の材質としては、軽量で、かつ大型の基板Sを載置した状態で荷重による撓みがなるべく生じないように、高い剛性を有する材質として、例えばCFRP(炭素繊維強化プラスチック)などが用いられている。
【0036】
フォーク101の各支持ピック119の上面には、基板Sをその裏面側から支持する支持突起200が複数箇所(図4では、一つの支持ピック119において2箇所)に着脱可能に設けられている。支持突起200は、例えばゴムやPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂などの弾性材料により構成されている。支持突起200の形状は問わず、例えば半球状やOリングのような環状でもよい。なお、支持突起200は、基板S裏面に当接して摩擦力によってフォーク101上での基板Sの保持力を高めるためのものであるが、位置ずれ防止装置201を装着することにより、基板Sをフォーク101上に確実に保持できるので、支持突起200は必ずしも設けなくてもよい。
【0037】
フォーク101には、任意の箇所に任意の個数で位置ずれ防止装置201が装着される。図4では、4本のうち両端の2本の支持ピック119の基部付近にそれぞれ左右一対の位置ずれ防止装置201を装着した状態を示している。また、図4では、装着される前の他の一対の位置ずれ防止装置201も図示している。このように、位置ずれ防止装置201は、フォーク101を構成する支持ピック119に着脱自在に装着可能なものである。
【0038】
次に、位置ずれ防止装置201の詳細な構成について説明する。図5は、位置ずれ防止装置201の外観構成を拡大して示す斜視図である。図6および図7は位置ずれ防止装置201の機構を説明するための要部断面図である。位置ずれ防止装置201は、主要な構成として、本体203と、この本体203の上面203aに突出して設けられた、可動部材としての複数の可動ピン205と、これらの可動ピン205をそれぞれ独立して上方向(突出する方向)に付勢する付勢手段としてのコイルばね207とを備えている。
【0039】
本実施の形態の位置ずれ防止装置201において、本体203は、図5に示したように例えばアルミニウムや合成樹脂などの材質で構成された筐体である。支持ピック119に位置ずれ防止装置201を装着した状態で、本体203の上面203aは支持ピック119の上面と同じ高さであることが好ましい。なお、図5では、本体203に7本の可動ピン205を備えた構成としたが、可動ピン205の数は限定されるものではない。
【0040】
図6および図7に示すように、本体203の内部は、隔壁211によって個別の部屋213に仕切られている。各部屋213は、底壁213aと、天井部213bとを有している。各部屋213には、一組の可動ピン205およびコイルばね207がそれぞれ収容されている。可動ピン205は、本体203の上面203aから「突出した部分」である柱状部分205aと、この柱状部分205aの途中で柱状部分205aよりも大径に形成されたフランジ205bとを備えている。このフランジ205bは、ばね受け部として機能する。可動ピン205の上部は、各部屋213の天井部213bにそれぞれ設けられた開口部213cに挿通されている。
【0041】
可動ピン205の柱状部分205aとフランジ205bとは、同じ材質で一体に形成されていてもよいし、別々の部材で形成されていてもよい。可動ピン205の材質は特に限定されるものではないが、少なくとも可動ピン205の柱状部分205aの上部は、基板Sの裏面や端部に接触するため、例えば合成樹脂やゴムなどの材料により形成することが好ましい。もちろん、可動ピン205の全体を同一の材料(合成樹脂やゴムなど)により形成してもよい。また、可動ピン205の柱状部分205aの上部は、基板Sの端部を受け止め得るだけの剛性と靭性を有していることが好ましい。以上のことから、可動ピン205の材料としては、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂などの合成樹脂を用いることが望ましい。
【0042】
なお、本発明において、可動部材の形状は、図6および図7に例示した可動ピン205の形状によって何ら制約されるものではない。例えば、可動部材の「突出した部分」である柱状部分205aは、図示のような円柱状に限るものではなく、横断面が三角形、四角形、五角形、六角形、八角形などの多角形状をなす角柱状であってもよい。また、可動部材の全体または突出した部分は、中空の円筒状や、横断面が三角形、四角形、五角形、六角形、八角形などの多角形状をなす中空の角筒状であってもよい。さらに、可動部材の全体または突出した部分は、板状(例えば角板状、円板状など)に形成されていてもよい。また、基板Sの裏面との接触面積を小さくする観点から、図示は省略するが可動部材(可動ピン205)の先端に丸め加工を施しておくこともできる。
【0043】
コイルばね207は、可動ピン205を上方向に付勢して本体203の上面203aから柱状部分205aの上部を突出した状態にしておく付勢手段である。可動ピン205の柱状部分205aの下部は、このコイルばね207の中に挿入されている。コイルばね207の下端は、部屋213の底壁213aに任意の方法例えば止め金具等を用いて固定されている。コイルばね207の上端は、可動ピン205のフランジ205bに当接しており、必要に応じて任意の方法で固定されていてもよい。
【0044】
位置ずれ防止装置201において複数の可動ピン205は、基板Sの荷重によってそれぞれ独立して上下に変位できるように構成されている。つまり、可動ピン205は、独立して基板Sの面方向に対し直交する方向に突出し、又は退避する。基板Sの荷重がかからない状態では、可動ピン205は、フランジ205bと係合したコイルばね207によって上方向に付勢されている。このため、天井部213bに設けられた開口部213cに挿通された可動ピン205の柱状部分205aの上部は、本体203の上面203aから上方へ向けて突出している。このとき、本体203の上面203aを基準として、上面203aに対する可動ピン205の先端の突出量を第1の高さH1とする。また、荷重がかからない状態では、コイルばね207によって付勢された可動ピン205のフランジ205bが部屋213の天井部213bに押し付けられている。フランジ205bは、第1の高さH1を規定するストッパーとして利用することができる。可動ピン205の柱状部分205aにおけるフランジ205bの位置を可変に調整可能な構造にしておくことによって、第1の高さH1を任意に設定することが容易になる。フランジ205bの位置を可変に調整可能な構造としては、図示は省略するが、例えば柱状部分205aを雄螺子構造とし、フランジ205bを雌螺子構造にすることなどを挙げることができる。
【0045】
フォーク101が基板Sを受け取ることによって、任意の可動ピン205に基板Sの荷重が加えられた状態では、荷重によってコイルばね207が縮み、その可動ピン205は全体的に押し下げられる。この変位した状態のとき、本体203の上面203aを基準として、上面203aに対する可動ピン205の先端の突出量を第2の高さH2とする。
【0046】
図6および図7に示したように、基板Sが上に載った可動ピン205のみが沈み込んで第2の高さH2となり、基板Sが載らない可動ピン205は、そのまま第1の高さH1を保つことができる。そして、第1の高さH1で突出した状態の可動ピン205の側部によって基板Sの横方向の移動を制限することができる。例えば、図6では、紙面に向かって左側と中央の2本の可動ピン205が基板Sの重みで沈み込んで第2の高さH2となっており、向かって右側の1本の可動ピン205が第1の高さH1で突出している。この第1の高さH1で突出している右側の可動ピン205がストッパーとなって基板Sの動きが制限される。また、図7では、紙面に向かって左側の1本の可動ピン205が基板Sの重みで沈み込んで第2の高さH2となっており、向かって右側と中央の2本の可動ピン205が第1の高さH1で突出している。この場合は、中央の突出している可動ピン205がストッパーとなって基板Sの動きが制限される。なお、図6および図7では、ストッパーとしての役割を担う第1の高さH1で突出した可動ピン205と基板Sとは未だ接触していない状態を示している。フォーク101上で搬送時の加速度によって基板Sが横すべりを起こしそうになると、当該ストッパーとしての可動ピン205に基板Sの端部が当接して規制されるため、フォーク101上での基板Sの移動量は極めてわずかなものになる。
【0047】
このように、第1の高さH1で突出した可動ピン205の側部に、基板Sの端部(エッジ)が当接することによって、フォーク101上での基板Sの横方向の移動を最小限に制限し、搬送時にフォーク101上で基板Sが水平方向に位置ずれを起こしたり、さらには、フォーク101から落下したりすることを防止できる。
【0048】
第2の高さH2は、第1の高さH1よりも低く設定される。第2の高さH2は、ゼロ(つまり、可動ピン205の先端が本体203の上面203aと同じ高さ)以上第1の高さH1未満である。特に、第2の高さH2をゼロよりも大きく設定し、第2の高さH2のときの可動ピン205の先端が、第1の高さH1と、本体203の上面203aの高さとの中間に位置するようにしておくことが好ましい。このようにすれば、基板Sの荷重で沈み込み第2の高さH2まで変位して突出した状態の可動ピン205の先端で基板Sを支持できるので、基板Sの表面に形成される電子部品に与える悪影響を極力回避できる。また、第1の高さH1と第2の高さH2との差分(H1−H2)は、基板Sの厚み以上に設定することが好ましい。このようにすれば、基板Sの動きを制限するストッパーとしての可動ピン205の高さが十分に得られ、第2の高さH2で突出した状態の可動ピン205の先端で基板Sを支持しながら、第1の高さH1で突出した状態の可動ピン205によって基板Sの水平方向の動きを確実に制限できる。
【0049】
第2の高さH2は、可動ピン205の柱状部分205aの長さや基板Sの荷重に抗するコイルばね207の弾発力の大きさによって調節できる。
【0050】
なお、可動ピン205を付勢する付勢手段としては、コイルばね207に限定されるものではなく、例えば、板ばねなども使用できる。
【0051】
フォーク101上での基板Sの保持位置は、受け渡し時に生じる位置ずれなどによって基板毎に少しずつ違いがでてくることがある。例えば、図8に示したように、基板Sのエッジの位置が、フォーク101(支持ピック119)の先端付近になるように保持される場合がある。また、図9に示したように、基板Sのエッジの位置が図8の位置に比べてフォーク101の基部側(矢印で示す)になるように保持される場合もある。さらに、図10に示したように、フォーク101(支持ピック119)の長手方向に対して基板Sが角度をもって斜め(矢印で示すように水平方向にわずかに回転した状態)に保持される場合もある。位置ずれ防止装置201は、基板Sの荷重によって独立して進退する可動ピン205を複数個備えているので、図8〜図10に例示したいずれの保持位置にもフレキシブルに対応可能であり、基板Sの動きを確実に制限できる。つまり、位置ずれ防止装置201は、基板S毎に保持位置が少しずつ違っていても、当該違いに対応して、ストッパーとしての役割を担う第1の高さH1で突出する可動ピン205が交代する。そのため、どのような保持位置でも基板Sの動きを制限し、位置ずれを最小限に抑えることができる。位置ずれ防止装置201の配置箇所を多くしたり、一つの位置ずれ防止装置201における可動ピン205の数を多くし、可動ピン205の配置を密にしたりすれば、より精密に基板Sの動きを制限し、保持位置のずれを防止できることが容易に理解される。
【0052】
前記のように位置ずれ防止装置201は、フォーク101の支持ピック119に着脱自在に装着される。位置ずれ防止装置201の固定方法は、特に限定されるものではない。例えばボルトとナットによる締結、嵌め込みなどの着脱可能な固定手段で支持ピック119に位置ずれ防止装置201の本体203を固定することができる。この際、必要に応じて止め金具などの補助固定具を用いてもよい。なお、位置ずれ防止装置201を支持ピック119に着脱自在な構成とせずに、例えば接着等の方法で支持ピック119に固定することもできる。
【0053】
一つのフォーク101に装着する位置ずれ防止装置201の個数は、基板Sやフォーク101の大きさ、搬送動作において大きな加速度が加えられる方向などを考慮して適宜設定できる。位置ずれ防止装置201は、例えばフォーク101の2〜12箇所、好ましく4〜8箇所に装着することができる。
【0054】
位置ずれ防止装置201は、例えばフォーク101の支持ピック119の先端側のみ、あるいは基部側のみに配設することも可能である。しかし、基板Sの動きを確実に制限する観点から、フォーク101に保持された基板Sを間に挟みこむように、基板Sの少なくとも対向する2辺にストッパーとなる可動ピン205が当接できるような配置とすることが好ましい。また、位置ずれ防止装置201は、基板Sの中心に対して互いに対称をなすように配置することが好ましく、基板Sの4隅近傍に配置することがより好ましい。
【0055】
図11および図12は、位置ずれ防止装置201の好ましい配置例を示している。図11において、位置ずれ防止装置201は、基板Sの二つの短辺SSに下方から重なるように装着されている。これにより、主に支持ピック119の長手方向における基板Sの動きを制限している。
【0056】
フォーク101で、位置ずれ防止装置201を装着する位置は、そこに保持される基板S上の電子部品を形成する部分(デバイス形成領域)の直下を避け、デバイス形成領域よりも外側にすることが好ましい。図11では、基板S上のデバイス形成領域Rが破線で描かれている。位置ずれ防止装置201は、デバイス形成領域Rの外側に位置するように、フォーク101の8箇所に装着されている。このように、位置ずれ防止装置201をデバイス形成領域Rの外側に配置することによって、基板Sの裏面側に可動ピン205が接触/離間する際の静電破壊により、表面側に形成される電子部品に悪影響を与えることを防止できる。
【0057】
また、図12に示したように、位置ずれ防止装置201が基板Sの4隅と重なるような配置がより好ましい。このように配置すれば、4方向から基板Sを規制できるので、支持ピック119の長手方向への基板Sの動きだけでなく、支持ピック119を横断する方向への基板Sの動きや、基板Sが水平方向に回転しようとする動きなども制限し、位置ずれをより確実に防ぐことができる。なお、図12の例では、基板Sの4隅と重なる位置に配置された4つの位置ずれ防止装置201について、他の位置に配置された4つの位置ずれ防止装置201よりも、可動ピン205の数を多くしている。具体的には、基板Sの4隅と重なる位置に配置された4つの位置ずれ防止装置201は各11本の可動ピン205を有している。一方、基板Sの4隅に配置された位置ずれ防止装置201と対をなすように支持ピック119の反対側(内側)にそれぞれ配置された位置ずれ防止装置201では、各7本の可動ピン205を有している。このように、可動ピン205の数は、位置ずれ防止装置201を配置する場所や配置数などに応じて変えることができる。
【0058】
なお、図11と図12との比較から理解されるように、基板Sのサイズが変化しても、基板Sのサイズに応じて支持ピック119における位置ずれ防止装置201の装着位置を変えることができる。従って、基板Sの大小にかかわらず、フォーク101上での位置ずれを確実に防止できる。
【0059】
位置ずれ防止装置201は、一つのフォーク101に装着する場合であっても、装着する部位に応じて、可動ピン205の数や配置間隔、第1の高さH1、第2の高さH2などを変えることができる。
【0060】
また、可動ピン205の柱状部分205aは、図13に示したように、その長手方向(鉛直方向)を回転軸として水平に回動できるように構成してもよい。基板Sのエッジに当接する柱状部分205aが回動することによって、基板Sとの当接部位が毎回変わる。その結果、基板Sのエッジとの接触による磨耗や損傷で可動ピン205が劣化する度合いを軽減し、可動ピン205の交換までの寿命を長期化できるとともに、柱状部分205aの磨耗や損傷による保持位置の精度の低下も抑制できる。可動ピン205の柱状部分205aは、既知の機構例えば柱状部分205aの上部を二重構造にすること等により容易に回動自在に構成することができる。
【0061】
以上のように、位置ずれ防止装置201を配設することによって、フォーク101の進出、退避、旋回等の諸動作の際に生じる加速度で基板Sが横滑りして保持位置がずれたり、基板Sが落下したりすることを確実に防止できる。従って、真空処理システム100において搬送装置23による基板搬送の信頼性を高めることができる。また、位置ずれ防止装置201を配設することによって、搬送動作速度を大きくしてもフォーク101上に確実に基板Sを保持できるため、基板搬送のスループットを向上させることができる。
【0062】
次に、本実施の形態の位置ずれ防止装置201を利用した基板Sの保持姿勢の補正機能について説明する。フォーク101を構成する支持ピック119は、自重や基板Sの重みによってその長手方向に撓み、先端部の高さ位置が基部側に比べて下がりやすい。この撓みに伴いフォーク101に保持された基板Sの姿勢も斜めになりやすい。位置ずれ防止装置201は、可動ピン205を基板Sの裏面に接触させることによって基板Sを下方から支持する機能も有しているため、位置ずれ防止装置201を利用して基板Sの保持状態を水平に近づけることができる。
【0063】
図14は、フォーク101の支持ピック119(ここでは図示を省略)の先端側に装着した位置ずれ防止装置201Aと、基部側に装着した位置ずれ防止装置201Bとによって基板Sを支持した状態を模式的に示している。ここでは、先端側の位置ずれ防止装置201Aの可動ピンを符号205A、基部側の位置ずれ防止装置201Bの可動ピンを符号205Bで示している。そして、基部側の位置ずれ防止装置201Bの可動ピン205Bが沈み込んでいるときの第2の高さH2Bよりも、先端側の位置ずれ防止装置201Aの可動ピン205Aが沈み込んでいるときの第2の高さH2Aを大きく設定している。例えば、位置ずれ防止装置201Bの可動ピン205Bを付勢するコイルばね207の付勢力よりも、位置ずれ防止装置201Aの可動ピン205Aを付勢するコイルばね207の付勢力を強くしたり、可動ピン205Aを可動ピン205Bよりも長く形成したりすることによって、容易に、第2の高さH2Bよりも第2の高さH2Aを大きくすることができる。
【0064】
このようにすれば、可動ピン205Aの第2の高さH2Aと可動ピン205Bの第2の高さH2Bとの差を利用して支持ピック119の撓み幅を相殺し、基板Sの撓みを緩和できる。従って、基板Sの重さや支持ピック119の自重により支持ピック119に撓みが生じて先端側の位置ずれ防止装置201Aの位置が基部側の位置ずれ防止装置201Bの位置に比べて相対的に低くなった場合でも、フォーク101上の基板Sを極力水平に近い姿勢で安定的に保持しつつ搬送動作を行うことができる。
【0065】
さらに、図14においては、先端側の位置ずれ防止装置201Aの可動ピン205Aの第1の高さH1Aを基部側の位置ずれ防止装置201Bの第1の高さH1Bよりも大きく設定している。これによって、先端側の位置ずれ防止装置201Aにおいて、第1の高さH1Aと第2の高さH2Aとの差分(H1A−H2A)を十分に確保できる。このようにすれば、支持ピック119の撓みによって基板Sの荷重がフォーク101の先端側に集中しても、第1の高さH1Aで突出した可動ピン205Aを確実にストッパーとして機能させることができる。なお、このような位置ずれ防止装置201を利用した基板Sの保持姿勢の補正効果を得るために、支持ピック119の基部側と先端側に限らず、支持ピック119の長手方向の中間付近に位置ずれ防止装置201を配置することもできる。
【0066】
また、図4では、1本の支持ピック119の左右両側に、それぞれ位置ずれ防止装置201を装着する例を挙げたが、1本の支持ピック119の片側のみに、位置ずれ防止装置201を装着してもよい。
【0067】
また、位置ずれ防止装置201の変形例として、それぞれ複数の可動ピン205が配設された一対の本体203を連結した構成にすることもできる。例えば図15に示した位置ずれ防止装置201Cは、二つの本体203を有し、これらが連結部分209で連結され、1本の支持ピック119の左右両側に可動ピン205を配置できる構成となっている。この場合、左右の本体203の間には、支持ピック119を挿入可能な凹部203bが形成されている。凹部203bは、支持ピック119の厚みと幅に対応した深さと幅で形成されている。このような連結部分209と凹部203bを設けることは必須ではないが、これらを設けることによって、位置ずれ防止装置201Cを支持ピック119に装着する際に固定や位置決めが容易になる。つまり、位置ずれ防止装置201Cを支持ピック119に装着する際に、連結部分209は固定部として機能し、凹部203bは位置決め部として機能する。なお、連結部分209は、例えば本体と同様の材質の板材によって形成できるが、二つの本体203を連結できるものであればその形態は問われない。
【0068】
また、本体203は、必ずしも筐体とする必要はなく、例えば二枚の板材によって形成することもできる。
【0069】
また、位置ずれ防止装置201は、矩形の基板に限らず、例えば図16に示したように、半導体ウエハなどの円形の基板Sを保持するフォーク101Aにも装着できる。なお、図16において、上記説明内容と同じ構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0070】
[第2の実施の形態]
次に、図17〜図22を参照しながら、本発明の第2の実施の形態に係る位置ずれ防止装置301について説明する。まず、図17は、位置ずれ防止装置301の外観構成を拡大して示す斜視図である。図18は位置ずれ防止装置301の機構を説明するための要部断面図である。位置ずれ防止装置301は、主要な構成として、本体303と、この本体303の上面303aに突出して設けられた、可動部材としての複数のブロック形状の可動ピン305と、これらの可動ピン305をそれぞれ独立して上方向(突出する方向)に付勢する付勢手段としてのコイルばね307とを備えている。また、本実施の形態の位置ずれ防止装置301は、可動ピン305のストッパー機能を補うブロック309が可動ピン305に隣接して設けられている。なお、図17では、本体303の3箇所に各4個ずつの可動ピン305を備えた構成としたが、可動ピン305の配置箇所や配設数は限定されるものではない。
【0071】
本実施の形態の位置ずれ防止装置301において、本体303は、図18に示したように、例えば合成樹脂などの材質で構成された板材である。本体303は、可動ピン305を装着する貫通開口311を有している。各貫通開口311の上部は、本体303の一部が貫通開口311の内側に張り出して係合部303bを形成している。この係合部303bによって貫通開口311の開口面積が狭められている。なお、符号303cは、本体303を支持ピック119に装着するための螺子孔である。
【0072】
各貫通開口311内には、それぞれ4組の可動ピン305およびコイルばね307が配置されている。可動ピン305は、コの字形(浅い皿を伏せたような断面形状)をなし、基板Sの下面又は端部に当接する部分である基板支持部305aと、この基板支持部305aの両端が外側に折曲して形成された折曲部305bとを備えている。可動ピン305の基板支持部305aは、各貫通開口311の対向する係合部303bの間に挿通されている。可動ピン305の基板支持部305aの下面のほぼ中央には、ばね受け用の凹部305cが設けられている。また、各貫通開口311の下端には、台座部313が掛け渡されている。台座部313は図示しない嵌合機構によって本体303に着脱可能に固定されている。この台座部313には、ばね受け用の凹部313aが設けられている。
【0073】
可動ピン305の基板支持部305aと折曲部305bとは、別々の部材で形成されていてもよいが、同じ材質で一体に形成されていることが好ましい。可動ピン305の材質は特に限定されるものではないが、少なくとも可動ピン305の基板支持部305aは、基板Sの裏面や端部に接触するため、例えば合成樹脂やゴムなどの材料により形成することが好ましい。また、可動ピン305の基板支持部305aは、基板Sの端部を受け止め得るだけの剛性と靭性を有していることが好ましい。以上のことから、可動ピン305の材料としては、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂などの合成樹脂を用いることが望ましい。
【0074】
なお、可動ピン305の形状は、図17、図18等に例示した形状によって何ら制約されるものではない。
【0075】
コイルばね307は、可動ピン305を上方向に付勢して本体303の上面303aから可動ピン305の基板支持部305aの上部を突出した状態にしておく付勢手段である。コイルばね307の上端は、可動ピン305の基板支持部305a下面のばね受け用の凹部305cに当接し、コイルばね307の下端は、台座部313のばね受け用の凹部313aに当接している。コイルばね307は、必要に応じて任意の方法で固定されていてもよい。なお、可動ピン305を付勢する付勢手段としては、コイルばね307に限定されるものではなく、例えば、板ばねなども使用できる。
【0076】
位置ずれ防止装置301において複数の可動ピン305は、基板Sの荷重によってそれぞれ独立して上下に変位できるように構成されている。つまり、可動ピン305は、独立して基板Sの面方向に対し直交する方向に突出し、又は退避する。図18の紙面に向かって左側の可動ピン305は荷重を受けて沈み込んだ状態を示し、右側の可動ピン305は上方へ向けて付勢された非荷重の状態を示している(基板Sは図示を省略)。つまり、基板Sの荷重がかからない状態では、可動ピン305は、コイルばね307によって上方向に付勢され、貫通開口311に挿通された可動ピン305の基板支持部305aの上部は、本体303の上面303aから上方へ向けて突出している。このとき、本体303の上面303aを基準として、可動ピン305の先端の突出量を第1の高さH1とする。また、荷重がかからない状態では、コイルばね307によって付勢された可動ピン305の折曲部305bが貫通開口311の係合部303bに押し付けられている。折曲部305bは、第1の高さH1を規定するストッパーとして機能している。
【0077】
フォーク101が基板Sを受け取ることによって、任意の可動ピン305に基板Sの荷重が加えられた状態では、荷重によってコイルばね307が縮み、その可動ピン305は全体的に押し下げられる。この変位した状態のとき、本体303の上面303aを基準として、可動ピン305の先端の突出量を第2の高さH2とする。第1の高さH1及び第2の高さH2は、第1の実施の形態と同様に設定できる。
【0078】
本実施の形態の位置ずれ防止装置301では、可動ピン305の基板支持部305aをコの字形に形成し、その内側にコイルばね307を収容する構成にしたことで、第1の実施の形態の位置ずれ防止装置201に比べ、位置ずれ防止装置301全体の高さ(本体303の厚みと第1の高さH1との合計)を小さく抑えることが可能になっている。そのため、位置ずれ防止装置301は、例えば支持ピック119の上面に装着することが可能である。また、上記構成により、各可動ピン305はその幅方向(可動ピン305が並んでいる方向)にわずかに傾倒可能に設けられている。
【0079】
ブロック309は、可動ピン305のストッパー機能を補助する補助支持部である。ブロック309は、基板Sのエッジが可動ピン305に当接して横方向の力が加えられた場合に、可動ピン305を補助的に支持する。つまり、ブロック309は、前記可動ピン305と協働して間接的に基板の動きを制限する補助ストッパーとして作用するものである。そのため、ブロック309は、基板S側からみて最も遠い位置の可動ピン305に隣接して設けられている。ブロック309は、位置ずれ防止装置301の本体303と一体に成形されていてもよいし、本体303とは別の部材で構成されていてもよい。本実施の形態においてブロック309は可動式ではなく固定式である。なお、ブロック309は任意の構成であり、必ずしも設けなくてもよい。
【0080】
次に、図19〜図21を参照しながら、本実施の形態に係る位置ずれ防止装置301の作用について説明する。図19〜21は、支持ピック119の先端に位置ずれ防止装置301を装着した状態を示している。位置ずれ防止装置301は、例えば螺子等の固定手段で支持ピック119に固定されている。本実施の形態の位置ずれ防止装置301では、4つの可動ピン305が互いに近接して設けられている。ここでは、説明の便宜上、支持ピック119の基部側から先端側へ順に、可動ピン305A,305B,305C,305Dとする。図19に示したように、基板Sを支持していない状態で可動ピン305A〜305Dは、いずれも第1の高さH1となっている。
【0081】
図20は、フォーク101の支持ピック119上に基板Sを支持した状態を示している。基板Sは可動ピン305A及び305Bの上にかかり、これら可動ピン305A及び305Bは基板Sの荷重によって第2の高さH2まで沈み込んでいる。基板Sが載らない可動ピン305C,305Dは、そのまま第1の高さH1を保っている。この状態で、フォーク101によって基板Sを搬送中に、慣性力や遠心力によって基板Sがフォーク101の先端側へ位置ずれしそうになると、図21に拡大して示したように、基板Sの先端側のエッジが可動ピン305Cの側部に当接して位置ずれが防止される。このとき、可動ピン305Cと可動ピン305Dとの間隔が狭いことにより、幅方向に傾倒可能に設けられている可動ピン305Cが隣接する可動ピン305Dによって補助的に支持される。つまり、基板Sにより加えられる力が大きい場合は、可動ピン305C単独ではなく、可動ピン305C及び305Dが協働してストッパーとしての役割を果たす。
【0082】
また、本実施の形態の位置ずれ防止装置301は、可動ピン305Dに近接してブロック309を備えているため、基板Sによって加えられる力が大きい場合は、可動ピン305C及び305Dとともにブロック309も協働してストッパーとして作用し、基板Sの位置ずれをより確実に防ぐことができる。
【0083】
以上のように、可動ピン305A,305B,305C及び305Dを協働してストッパーとして機能させるためには、隣接する可動ピン305の間隔が接触しているか、横方向の力によって容易に接触できる状態まで近接していることが好ましい。そのため、位置ずれ防止装置301では、貫通開口311内で4個の可動ピン305A,305B,305C,305Dが間隔を互いに空けずに隣り合うように配置することが好ましい。このように複数の可動ピン305を集合させて配備することにより、基板Sに直接当接する可動ピン305だけでなく、他の可動ピン305も間接的にストッパーとして機能させることができる。
【0084】
また、同様の観点から、支持ピック119の最も先端側に配置される可動ピン305Dとブロック309との間隔についても、接触しているか、横方向の力によって容易に接触できる状態まで近接させて配置することが好ましい。
【0085】
次に、本実施の形態の位置ずれ防止装置301における可動ピン305の配置について説明する。図22は、支持ピック119の先端に位置ずれ防止装置301を装着した状態を示す平面図である。本体303の3箇所に貫通開口311が設けられ、それぞれの貫通開口311内に各4個ずつの可動ピン305が配備されている。ここでは、説明の便宜上、図22の紙面に向かって左側の複数の可動ピン305を、支持ピック119の基部側から可動ピン305A1,305B1…、中央の複数の可動ピン305を同様に可動ピン305A2,305B2…、右側の複数の可動ピン305を同様に可動ピン305A3,305B3…のように表記する。
【0086】
各貫通開口311の位置は、支持ピック119の長手方向に少しずつ位置をずらして設けられている。3つのブロック309も同じ大きさではなく、可動ピン305との境界の位置が支持ピック119の長手方向に少しずつずれるように大きさを変えて設けられている。具体的には、例えば可動ピン305C1と可動ピン305D1との境界が、可動ピン305D2の基板支持部305aにおいて、その幅方向(支持ピック119の長手方向と同じ方向)の中間に位置するように配置されている。また、例えば可動ピン305D2と可動ピン305C2との境界が、可動ピン305D3の基板支持部305aの幅方向の中間に位置するように配置されている。
【0087】
このように、支持ピック119の長手方向に順次少しずつ(例えば1/2ピッチずつ)位置をずらして可動ピン305を配置することによって、基板Sの初期の支持位置からの位置ずれ量を抑制できる。すなわち、仮に、可動ピン305A3上に基板Sのエッジが載っており、可動ピン305A3のみが第2の高さH2になっている場合、搬送中に基板Sに位置ずれが生じても、基板Sのエッジは第1の高さH1で突出している可動ピン305A2の側面に当接してそれ以上の動きが制限される。可動ピン305A3と可動ピン305A2が設けられている位置の差は、基板支持部305aの幅の1/2であるため、基板Sの位置ずれ量を、最大でも基板支持部305aの幅の1/2以内に留めることができる。同様に、可動ピン305A2上に基板Sのエッジが載っており、可動ピン305A1によって基板Sの動きが制限される場合も、基板Sの位置ずれ量は、最大でも基板支持部305aの幅の1/2以内に留めることができる。このように、可動ピン305の配置を横一列に揃えるよりも、支持ピック119の長手方向に順次少しずつピッチをずらして配置することが好ましい。
【0088】
以上のように、本実施の形態の位置ずれ防止装置301では、1つないし複数の可動ピン305、さらに必要に応じてブロック309を加えて基板Sの動きを制限する構成としたので、フォーク101上での基板Sの位置ずれを確実に防止できるとともに、基板Sの位置ずれ量をわずかなものにすることができる。また、支持ピック119の長手方向に順次少しずつ位置をずらして可動ピン305を配置することによって、基板Sの位置ずれ量を極めてわずかなものにすることができる。
【0089】
本実施の形態における他の構成及び効果は、第1の実施の形態と同様である。なお、位置ずれ防止装置301は、支持ピック119の先端に限らず、側部(例えば、支持ピック119の先端側の側部又は基部側の側部)にも装着することができる。
【0090】
以上、本発明の実施形態を述べたが、本発明は上記実施形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、真空状態で基板Sの搬送を行う搬送装置23を例に挙げて説明したが、位置ずれ防止装置201,301は、大気圧状態で基板の搬送を行う搬送装置15にも適用可能である。搬送装置15のように大気圧状態での搬送に適用する場合、位置ずれ防止装置201,301の可動ピン205,305を付勢する付勢手段として、例えば圧力調節された空気、高粘性の油などの流体を用いる機構も採用できる。
【0091】
また、本発明の基板保持具を使用可能な基板搬送装置の構成は、上下2段に配備されたスライドアーム式に限らず、1段構成でも3段構成でもよいし、スライド式に限らず例えば多関節アーム式の基板搬送装置であっても構わない。
【0092】
また、位置ずれ防止装置201,301は、FPD製造用の基板を搬送対象とする基板保持具に限らず、例えば太陽電池用の基板など各種用途の基板を搬送対象とする基板保持具にも適用できる。
【符号の説明】
【0093】
1a,1b,1c…プロセスチャンバ、3…搬送室、5…ロードロック室、100…真空処理システム、101…フォーク、117…ピックベース、119…支持ピック、201…位置ずれ防止装置、203…本体、205…可動ピン、205a…柱状部分、205b…フランジ、207…コイルばね、211…隔壁、213…部屋、213a…底壁、213b…天井部、213c…開口部、S…基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置ずれ防止装置、これを備えた基板保持具、基板搬送装置および基板搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)に代表されるFPDの製造過程においては、真空下でガラス基板等の基板に、エッチング、成膜等の各種処理が施される。FPDの製造には、基板処理室を複数備えた、いわゆるマルチチャンバタイプの基板処理システムが使用されている。このような基板処理システムは、基板を搬送する基板搬送装置が配備された搬送室と、この搬送室の周囲に設けられた複数のプロセスチャンバとを有している。そして、搬送室内の基板搬送装置によって、基板が各プロセスチャンバ内に搬入され、あるいは、処理済みの基板が各プロセスチャンバから搬出される。基板の搬送には、通例、フォークと呼ばれる基板保持具が使用される。フォークは、進出・退避、旋回等の動作が可能な搬送アームに取り付けられた共通の基部に複数の支持ピックが櫛歯状に形成された構造を有している。
【0003】
大気圧状態では、通常、フォークに設けられたバキュームチャックによって基板を固定して基板の搬送が行われる。一方、真空状態ではバキュームチャックが使用できない。このため、フォークに基板との間の摩擦係数の大きなゴムなどの材質からなる小片の弾性部材を装着してこれを基板に当接させることにより、基板の横滑りなどによる位置ずれを防止する工夫がなされてきた。しかし、真空状態での搬送には、以下のような問題があった。
【0004】
真空状態での基板の保持は、上記のように、弾性部材と基板との摩擦力に頼るため、基板の搬送動作速度を大きくすることができない、という問題があった。基板搬送装置の搬送アームに取り付けられたフォークは、基板を保持した状態で、進出・退避・旋回などの加減速を伴う搬送動作を行うことから、摩擦力による保持では限界がある。従って、安全な搬送を実現するためには、搬送動作速度を抑える以外になく、基板処理システムにおける基板処理のスループットを低下させる大きな要因になっていた。
【0005】
また、基板上の電子部品を形成する領域(デバイス形成領域)の裏側に弾性部材を当接させると、静電破壊によって電子部品の歩留まりを低下させる懸念があることから、デバイス形成領域から外れた領域の裏面に弾性部材を当接させる必要がある。そのため、基板面積に比して非常に小さな弾性部材しか用いることができず、しかも、弾性部材の配設数、配設位置なども制約されて、基板との接触面積が限られてしまい、十分な摩擦力を得ることができない。その結果、十分な保持力が得られず搬送動作速度を下げてもフォーク上で基板が移動して脱落したり、保持位置が大きくずれて基板の処理や受け渡しに支障が生じたりすることがあった。
【0006】
近年、生産効率を上げるため、FPD等の基板の大型化が進んでおり、フォークに装着された弾性部材と基板との摩擦力に頼る保持方法では、十分な保持力とスループットを得ることが益々困難になってきている。そのため、本発明者は、フォークに基板の水平方向の動きを制限する突起を設け、これを基板の端部に当接させることにより、横滑りや位置ずれを防ぐことを検討した。しかし、基板の受け渡しの際には、保持位置が変わることがしばしば起こるため、受け渡し時に基板が前記突起に乗り上げてしまう可能性がある。その結果、基板の保持がむしろ不安定になって脱落などを発生させる懸念がある。また、そのような事態を避けるためには、十分なマージンをとって突起を配設しなければならないため、当該マージン分の位置ずれが発生することは避けられなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、真空状態でも基板保持具に保持された基板の位置ずれを抑制できる位置ずれ防止装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の位置ずれ防止装置は、基板を保持する基板保持具に固定される本体と、
前記本体の上面から第1の高さで突出した部分を有し、該突出した部分に基板の荷重が加えられた状態で前記第1の高さよりも低くなるように、互いに独立して設けられた複数の可動部材と、
前記複数の可動部材をそれぞれ突出方向に付勢する付勢手段と、
を備え、
前記第1の高さで突出した1つ以上の可動部材の側部が前記基板保持具に保持された基板の端部に当接することによって基板の動きを制限し位置ずれを防止するものである。
【0009】
また、本発明に係る基板保持具は、基板を支持する基板支持部材と、前記基板支持部材に固定された、上記位置ずれ防止装置と、を備えている。
【0010】
また、本発明に係る基板搬送装置は、上記基板保持具を備えている。
【0011】
また、本発明に係る基板搬送方法は、上記基板搬送装置を用い、前記基板保持具に基板を保持して搬送する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、真空搬送であるか大気圧搬送であるかにかかわらず、基板の横滑りなどによる保持位置のずれを防止し、基板保持具に確実に基板を保持できる。そのため、基板搬送の信頼性を高めることができる。また、基板処理システムにおける基板処理のスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】真空処理システムを概略的に示す斜視図である。
【図2】図1の真空処理システムの平面図である。
【図3】搬送装置の概略構成を説明する斜視図である。
【図4】フォークの概略構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態の位置ずれ防止装置の外観構成を示す斜視図である。
【図6】位置ずれ防止装置の要部断面図である。
【図7】位置ずれ防止装置の別の状態の要部断面図である。
【図8】位置ずれ防止装置を装着したフォークに基板を載置した状態を説明する図面である。
【図9】位置ずれ防止装置を装着したフォークに基板を載置した別の状態を説明する図面である。
【図10】位置ずれ防止装置を装着したフォークに基板を載置したさらに別の状態を説明する図面である。
【図11】位置ずれ防止装置の配置例を説明する図面である。
【図12】位置ずれ防止装置の別の配置例を説明する図面である。
【図13】可動ピンの構成例を説明する斜視図である。
【図14】位置ずれ防止装置により基板の姿勢を補正した状態を説明する図面である。
【図15】変形例の位置ずれ防止装置の外観構成を示す斜視図である。
【図16】位置ずれ防止装置を円形の基板に適用した状態を説明する図面である。
【図17】本発明の第2の実施の形態の位置ずれ防止装置の外観構成を拡大して示す斜視図である。
【図18】図17の位置ずれ防止装置301の要部断面図である。
【図19】支持ピックの先端に位置ずれ防止装置を装着した状態を示す図面である。
【図20】位置ずれ防止装置を装着した支持ピック上に基板を支持した状態を説明する図面である。
【図21】可動ピンによるストッパー作用を説明する図面である。
【図22】支持ピックの先端に位置ずれ防止装置を装着した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。ここでは、本発明の一実施の形態の基板搬送装置および該基板搬送装置を備えた基板処理システムを例に挙げて説明を行なう。図1は、基板処理システムとしての真空処理システム100を概略的に示す斜視図であり、図2は、各チャンバの内部を概略的に示す平面図である。この真空処理システム100は、複数のプロセスチャンバ1a,1b,1cを有するマルチチャンバ構造をなしている。真空処理システム100は、例えばFPD用のガラス基板(以下、単に「基板」と記す)Sに対してプラズマ処理を行なうための処理システムとして構成されている。なお、FPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence;EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)等が例示される。
【0015】
真空処理システム100では、複数の大型チャンバが平面視十字形に連結されている。中央部には搬送室3が配置され、その三方の側面に隣接して基板Sに対してプラズマ処理を行なう3つのプロセスチャンバ1a,1b,1cが配設されている。また、搬送室3の残りの一方の側面に隣接してロードロック室5が配設されている。これら3つのプロセスチャンバ1a,1b,1c、搬送室3およびロードロック室5は、いずれも真空チャンバとして構成されている。搬送室3と各プロセスチャンバ1a,1b,1cとの間には図示しない開口部が設けられており、該開口部には、開閉機能を有するゲートバルブ7aがそれぞれ配設されている。また、搬送室3とロードロック室5との間には、ゲートバルブ7bが配設されている。ゲートバルブ7a,7bは、閉状態で各チャンバの間を気密にシールするとともに、開状態でチャンバ間を連通させて基板Sの移送を可能にしている。また、ロードロック室5と外部の大気雰囲気との間にもゲートバルブ7cが配備されており、閉状態でロードロック室5の気密性を維持するとともに開状態でロードロック室5内と外部との間で基板Sの移送を可能にしている。
【0016】
ロードロック室5の外側には、2つのカセットインデクサ9a,9bが設けられている。各カセットインデクサ9a,9bの上には、それぞれ基板Sを収容するカセット11a,11bが載置されている。各カセット11a,11b内には、基板Sが、上下に間隔を空けて多段に配置されている。また、各カセット11a,11bは、昇降機構部13a,13bによりそれぞれ昇降自在に構成されている。本実施の形態では、例えばカセット11aには未処理基板を収容し、他方のカセット11bには処理済み基板を収容できるように構成されている。
【0017】
これら2つのカセット11a,11bの間には、基板Sを搬送するための搬送装置15が設けられている。この搬送装置15は、上下2段に設けられた基板保持具としてのフォーク17aおよびフォーク17bと、これらフォーク17a,フォーク17bを進出、退避および旋回可能に支持する駆動部19と、この駆動部19を支持する支持台21とを備えている。
【0018】
プロセスチャンバ1a,1b,1cは、その内部空間を所定の減圧雰囲気(真空状態)に維持できるように構成されている。各プロセスチャンバ1a,1b,1c内には、図2に示したように、基板Sを載置する載置台としてのサセプタ2が配備されている。そして、各プロセスチャンバ1a,1b,1cでは、基板Sをサセプタ2に載置した状態で、基板Sに対して、例えば真空条件でのエッチング処理、アッシング処理、成膜処理などのプラズマ処理が行なわれる。
【0019】
本実施形態では、3つのプロセスチャンバ1a,1b,1cで同種の処理を行ってもよいし、プロセスチャンバ毎に異なる種類の処理を行ってもよい。なお、プロセスチャンバの数は3つに限らず、4つ以上であってもよい。
【0020】
搬送室3は、真空処理室であるプロセスチャンバ1a,1b,1cと同様に所定の減圧雰囲気に保持できるように構成されている。搬送室3の中には、図2に示したように、搬送装置23が配設されている。そして、搬送装置23により、3つのプロセスチャンバ1a,1b,1cおよびロードロック室5の間で基板Sの搬送が行われる。
【0021】
搬送装置23は、上下2段に設けられた搬送装置を備え、それぞれ独立して基板Sの出し入れを行うことが出来るように構成されている。図3に、基板保持具としてのフォーク101を有する上段の搬送装置23aの概略構成を示した。搬送装置23aは、主要な構成として、台座部113と、台座部113に対してスライド可能に設けられたスライドアーム115と、このスライドアーム115の上にスライド可能に設けられ、基板Sを保持するフォーク101とを備えている。フォーク101は、基部としてのピックベース117と、該ピックベース117に連結された複数(例えば4本)の支持ピック119を備えている。最も外側に配置された2本の支持ピック119には、フォーク101上に保持された基板Sの位置ずれを防止する位置ずれ防止装置201が、それぞれ4つずつ装着されている。この位置ずれ防止装置201の詳細な構成については後述する。
【0022】
スライドアーム115の側部には、台座部113に対してスライドアーム115をスライドさせるためのガイド121が設けられている。そして、ベース部113にはガイド121をスライド可能に支持するスライド支持部123が設けられている。
【0023】
また、スライドアーム115の側部には、スライドアーム115に対してフォーク101をスライドさせるためのガイド125が、前記ガイド121と平行に設けられている。そして、ガイド125に沿ってスライドするスライダ127が設けられ、このスライダ127にフォーク101が装着されている。
【0024】
図3では上段の搬送装置23aについて説明したが、下段の搬送装置(図示省略)も上段の搬送装置23aと同様の構成を有している。そして、上下の搬送装置は、図示しない連結機構によって連結され、一体となって水平方向に回転できるように構成されている。また、上下二段に構成された搬送装置は、スライドアーム115およびフォーク101のスライド動作や、台座部113の回転動作および昇降動作を行なう図示しない駆動ユニットに連結されている。
【0025】
ロードロック室5は、プロセスチャンバ1a,1b,1cおよび搬送室3と同様に所定の減圧雰囲気に保持できるように構成されている。ロードロック室5は、大気雰囲気にあるカセット11a,11bと減圧雰囲気の搬送室3との間で基板Sの授受を行うためのものである。ロードロック室5は、大気雰囲気と減圧雰囲気とを繰り返す関係上、極力その内容積が小さく構成されている。ロードロック室5には基板収容部27が上下2段に設けられており(図2では上段のみ図示)、各基板収容部27には、基板Sを支持する複数のバッファ28が設けられている。また、ロードロック室5内には、矩形状の基板Sの互いに対向する角部付近に当接して位置合わせを行なうポジショナー29が設けられている。
【0026】
図2に示したように、真空処理システム100の各構成部は、コンピューターとしての機能を有する制御部30に接続されて制御される構成となっている(図1では図示を省略)。制御部30は、CPUを備えたコントローラ31と、ユーザーインターフェース32と記憶部33とを備えている。コントローラ31は、真空処理システム100において、例えばプロセスチャンバ1a,1b,1c、搬送装置15、搬送装置23などの各構成部を統括して制御する。ユーザーインターフェース32は、工程管理者が真空処理システム100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、真空処理システム100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等から構成される。記憶部33には、真空処理システム100で実行される各種処理をコントローラ31の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や処理条件データ等が記録されたレシピが保存されている。ユーザーインターフェース32および記憶部33は、コントローラ31に接続されている。
【0027】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース32からの指示等にて任意のレシピを記憶部33から呼び出してコントローラ31に実行させることで、コントローラ31の制御下で、真空処理システム100での所望の処理が行われる。
【0028】
前記制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピューター読み取り可能な記憶媒体、例えばCD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリなどに格納された状態のものを利用できる。あるいは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0029】
次に、以上のように構成された真空処理システム100の動作について説明する。
まず、搬送装置15の2枚のフォーク17a,17bを駆動させて、未処理基板を収容したカセット11aから基板Sを受け取り、ロードロック室5の上下2段の基板収容部27のバッファ28にそれぞれ載置する。
【0030】
フォーク17a,17bを退避させた後、ロードロック室5の大気側のゲートバルブ7cを閉じる。その後、ロードロック室5内を排気して、内部を所定の真空度まで減圧する。次に、搬送室3とロードロック室5との間のゲートバルブ7bを開いて、搬送装置23のフォーク101により、ロードロック室5の基板収容部27に収容された基板Sを受け取る。
【0031】
次に、搬送装置23のフォーク101により基板Sを保持した状態で、スライドアーム115およびフォーク101のスライド動作や、台座部113の回転動作および昇降動作により基板Sの搬送を行う。これらの搬送動作は、位置ずれ防止装置201によってフォーク101上での基板Sの動きが制限されるため、基板Sが確実に保持された状態で行われる。そして、プロセスチャンバ1a,1b,1cのいずれかに基板Sを搬入し、サセプタ2に受け渡す。プロセスチャンバ1a,1b,1c内では、基板Sに対してエッチング等の所定の処理が施される。次に、処理済みの基板Sは、サセプタ2から搬送装置23のフォーク101に受け渡され、プロセスチャンバ1a,1b,1cから搬出される。
【0032】
そして、基板Sは、前記とは逆の経路でロードロック室5を経て、搬送装置15によりカセット11bに収容される。なお、処理済みの基板Sを元のカセット11aに戻してもよい。
【0033】
次に、図4〜図12を参照しながら、本発明の第1の実施の形態に係る位置ずれ防止装置201およびこれを備えたフォーク101についてさらに詳細に説明する。まず、位置ずれ防止装置201が装着されるフォーク101の構成について説明する。図4は、フォーク101の外観を示す斜視図である。前記のとおり、フォーク101は、スライダ127に固定されたピックベース117と、該ピックベース117に連結された基板支持部材としての複数(例えば4本)の支持ピック119を備えている。
【0034】
ピックベース117は、櫛歯状に設けられた複数の支持ピック119(本実施の形態では4本)を確実に固定し、スライドアーム115(スライダ127)に連結できるものであればその構成は問わない。また、ピックベース117と支持ピック119との連結構造も任意である。例えば、ピックベース117として支持ピック119の基端部を挟持可能な2枚の板材を用いた固定構造でもよいし、複数の支持ピック119を支持可能な1枚の板材を用いた固定構造でもよい。さらに、ピックベース117と支持ピック119は一体に形成されていてもよい。本実施の形態では、ピックベース117は、例えば断面視コの字型に折曲げられた板材により構成されている。そして、折曲げられた板材の隙間に複数の支持ピック119のそれぞれの基端部が挿入され、図示しない固定手段例えば螺子等により固定されている。
【0035】
フォーク101の支持ピック119は、例えば長尺な板状あるいは中空の角筒状をなしている。支持ピック119の材質としては、軽量で、かつ大型の基板Sを載置した状態で荷重による撓みがなるべく生じないように、高い剛性を有する材質として、例えばCFRP(炭素繊維強化プラスチック)などが用いられている。
【0036】
フォーク101の各支持ピック119の上面には、基板Sをその裏面側から支持する支持突起200が複数箇所(図4では、一つの支持ピック119において2箇所)に着脱可能に設けられている。支持突起200は、例えばゴムやPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂などの弾性材料により構成されている。支持突起200の形状は問わず、例えば半球状やOリングのような環状でもよい。なお、支持突起200は、基板S裏面に当接して摩擦力によってフォーク101上での基板Sの保持力を高めるためのものであるが、位置ずれ防止装置201を装着することにより、基板Sをフォーク101上に確実に保持できるので、支持突起200は必ずしも設けなくてもよい。
【0037】
フォーク101には、任意の箇所に任意の個数で位置ずれ防止装置201が装着される。図4では、4本のうち両端の2本の支持ピック119の基部付近にそれぞれ左右一対の位置ずれ防止装置201を装着した状態を示している。また、図4では、装着される前の他の一対の位置ずれ防止装置201も図示している。このように、位置ずれ防止装置201は、フォーク101を構成する支持ピック119に着脱自在に装着可能なものである。
【0038】
次に、位置ずれ防止装置201の詳細な構成について説明する。図5は、位置ずれ防止装置201の外観構成を拡大して示す斜視図である。図6および図7は位置ずれ防止装置201の機構を説明するための要部断面図である。位置ずれ防止装置201は、主要な構成として、本体203と、この本体203の上面203aに突出して設けられた、可動部材としての複数の可動ピン205と、これらの可動ピン205をそれぞれ独立して上方向(突出する方向)に付勢する付勢手段としてのコイルばね207とを備えている。
【0039】
本実施の形態の位置ずれ防止装置201において、本体203は、図5に示したように例えばアルミニウムや合成樹脂などの材質で構成された筐体である。支持ピック119に位置ずれ防止装置201を装着した状態で、本体203の上面203aは支持ピック119の上面と同じ高さであることが好ましい。なお、図5では、本体203に7本の可動ピン205を備えた構成としたが、可動ピン205の数は限定されるものではない。
【0040】
図6および図7に示すように、本体203の内部は、隔壁211によって個別の部屋213に仕切られている。各部屋213は、底壁213aと、天井部213bとを有している。各部屋213には、一組の可動ピン205およびコイルばね207がそれぞれ収容されている。可動ピン205は、本体203の上面203aから「突出した部分」である柱状部分205aと、この柱状部分205aの途中で柱状部分205aよりも大径に形成されたフランジ205bとを備えている。このフランジ205bは、ばね受け部として機能する。可動ピン205の上部は、各部屋213の天井部213bにそれぞれ設けられた開口部213cに挿通されている。
【0041】
可動ピン205の柱状部分205aとフランジ205bとは、同じ材質で一体に形成されていてもよいし、別々の部材で形成されていてもよい。可動ピン205の材質は特に限定されるものではないが、少なくとも可動ピン205の柱状部分205aの上部は、基板Sの裏面や端部に接触するため、例えば合成樹脂やゴムなどの材料により形成することが好ましい。もちろん、可動ピン205の全体を同一の材料(合成樹脂やゴムなど)により形成してもよい。また、可動ピン205の柱状部分205aの上部は、基板Sの端部を受け止め得るだけの剛性と靭性を有していることが好ましい。以上のことから、可動ピン205の材料としては、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂などの合成樹脂を用いることが望ましい。
【0042】
なお、本発明において、可動部材の形状は、図6および図7に例示した可動ピン205の形状によって何ら制約されるものではない。例えば、可動部材の「突出した部分」である柱状部分205aは、図示のような円柱状に限るものではなく、横断面が三角形、四角形、五角形、六角形、八角形などの多角形状をなす角柱状であってもよい。また、可動部材の全体または突出した部分は、中空の円筒状や、横断面が三角形、四角形、五角形、六角形、八角形などの多角形状をなす中空の角筒状であってもよい。さらに、可動部材の全体または突出した部分は、板状(例えば角板状、円板状など)に形成されていてもよい。また、基板Sの裏面との接触面積を小さくする観点から、図示は省略するが可動部材(可動ピン205)の先端に丸め加工を施しておくこともできる。
【0043】
コイルばね207は、可動ピン205を上方向に付勢して本体203の上面203aから柱状部分205aの上部を突出した状態にしておく付勢手段である。可動ピン205の柱状部分205aの下部は、このコイルばね207の中に挿入されている。コイルばね207の下端は、部屋213の底壁213aに任意の方法例えば止め金具等を用いて固定されている。コイルばね207の上端は、可動ピン205のフランジ205bに当接しており、必要に応じて任意の方法で固定されていてもよい。
【0044】
位置ずれ防止装置201において複数の可動ピン205は、基板Sの荷重によってそれぞれ独立して上下に変位できるように構成されている。つまり、可動ピン205は、独立して基板Sの面方向に対し直交する方向に突出し、又は退避する。基板Sの荷重がかからない状態では、可動ピン205は、フランジ205bと係合したコイルばね207によって上方向に付勢されている。このため、天井部213bに設けられた開口部213cに挿通された可動ピン205の柱状部分205aの上部は、本体203の上面203aから上方へ向けて突出している。このとき、本体203の上面203aを基準として、上面203aに対する可動ピン205の先端の突出量を第1の高さH1とする。また、荷重がかからない状態では、コイルばね207によって付勢された可動ピン205のフランジ205bが部屋213の天井部213bに押し付けられている。フランジ205bは、第1の高さH1を規定するストッパーとして利用することができる。可動ピン205の柱状部分205aにおけるフランジ205bの位置を可変に調整可能な構造にしておくことによって、第1の高さH1を任意に設定することが容易になる。フランジ205bの位置を可変に調整可能な構造としては、図示は省略するが、例えば柱状部分205aを雄螺子構造とし、フランジ205bを雌螺子構造にすることなどを挙げることができる。
【0045】
フォーク101が基板Sを受け取ることによって、任意の可動ピン205に基板Sの荷重が加えられた状態では、荷重によってコイルばね207が縮み、その可動ピン205は全体的に押し下げられる。この変位した状態のとき、本体203の上面203aを基準として、上面203aに対する可動ピン205の先端の突出量を第2の高さH2とする。
【0046】
図6および図7に示したように、基板Sが上に載った可動ピン205のみが沈み込んで第2の高さH2となり、基板Sが載らない可動ピン205は、そのまま第1の高さH1を保つことができる。そして、第1の高さH1で突出した状態の可動ピン205の側部によって基板Sの横方向の移動を制限することができる。例えば、図6では、紙面に向かって左側と中央の2本の可動ピン205が基板Sの重みで沈み込んで第2の高さH2となっており、向かって右側の1本の可動ピン205が第1の高さH1で突出している。この第1の高さH1で突出している右側の可動ピン205がストッパーとなって基板Sの動きが制限される。また、図7では、紙面に向かって左側の1本の可動ピン205が基板Sの重みで沈み込んで第2の高さH2となっており、向かって右側と中央の2本の可動ピン205が第1の高さH1で突出している。この場合は、中央の突出している可動ピン205がストッパーとなって基板Sの動きが制限される。なお、図6および図7では、ストッパーとしての役割を担う第1の高さH1で突出した可動ピン205と基板Sとは未だ接触していない状態を示している。フォーク101上で搬送時の加速度によって基板Sが横すべりを起こしそうになると、当該ストッパーとしての可動ピン205に基板Sの端部が当接して規制されるため、フォーク101上での基板Sの移動量は極めてわずかなものになる。
【0047】
このように、第1の高さH1で突出した可動ピン205の側部に、基板Sの端部(エッジ)が当接することによって、フォーク101上での基板Sの横方向の移動を最小限に制限し、搬送時にフォーク101上で基板Sが水平方向に位置ずれを起こしたり、さらには、フォーク101から落下したりすることを防止できる。
【0048】
第2の高さH2は、第1の高さH1よりも低く設定される。第2の高さH2は、ゼロ(つまり、可動ピン205の先端が本体203の上面203aと同じ高さ)以上第1の高さH1未満である。特に、第2の高さH2をゼロよりも大きく設定し、第2の高さH2のときの可動ピン205の先端が、第1の高さH1と、本体203の上面203aの高さとの中間に位置するようにしておくことが好ましい。このようにすれば、基板Sの荷重で沈み込み第2の高さH2まで変位して突出した状態の可動ピン205の先端で基板Sを支持できるので、基板Sの表面に形成される電子部品に与える悪影響を極力回避できる。また、第1の高さH1と第2の高さH2との差分(H1−H2)は、基板Sの厚み以上に設定することが好ましい。このようにすれば、基板Sの動きを制限するストッパーとしての可動ピン205の高さが十分に得られ、第2の高さH2で突出した状態の可動ピン205の先端で基板Sを支持しながら、第1の高さH1で突出した状態の可動ピン205によって基板Sの水平方向の動きを確実に制限できる。
【0049】
第2の高さH2は、可動ピン205の柱状部分205aの長さや基板Sの荷重に抗するコイルばね207の弾発力の大きさによって調節できる。
【0050】
なお、可動ピン205を付勢する付勢手段としては、コイルばね207に限定されるものではなく、例えば、板ばねなども使用できる。
【0051】
フォーク101上での基板Sの保持位置は、受け渡し時に生じる位置ずれなどによって基板毎に少しずつ違いがでてくることがある。例えば、図8に示したように、基板Sのエッジの位置が、フォーク101(支持ピック119)の先端付近になるように保持される場合がある。また、図9に示したように、基板Sのエッジの位置が図8の位置に比べてフォーク101の基部側(矢印で示す)になるように保持される場合もある。さらに、図10に示したように、フォーク101(支持ピック119)の長手方向に対して基板Sが角度をもって斜め(矢印で示すように水平方向にわずかに回転した状態)に保持される場合もある。位置ずれ防止装置201は、基板Sの荷重によって独立して進退する可動ピン205を複数個備えているので、図8〜図10に例示したいずれの保持位置にもフレキシブルに対応可能であり、基板Sの動きを確実に制限できる。つまり、位置ずれ防止装置201は、基板S毎に保持位置が少しずつ違っていても、当該違いに対応して、ストッパーとしての役割を担う第1の高さH1で突出する可動ピン205が交代する。そのため、どのような保持位置でも基板Sの動きを制限し、位置ずれを最小限に抑えることができる。位置ずれ防止装置201の配置箇所を多くしたり、一つの位置ずれ防止装置201における可動ピン205の数を多くし、可動ピン205の配置を密にしたりすれば、より精密に基板Sの動きを制限し、保持位置のずれを防止できることが容易に理解される。
【0052】
前記のように位置ずれ防止装置201は、フォーク101の支持ピック119に着脱自在に装着される。位置ずれ防止装置201の固定方法は、特に限定されるものではない。例えばボルトとナットによる締結、嵌め込みなどの着脱可能な固定手段で支持ピック119に位置ずれ防止装置201の本体203を固定することができる。この際、必要に応じて止め金具などの補助固定具を用いてもよい。なお、位置ずれ防止装置201を支持ピック119に着脱自在な構成とせずに、例えば接着等の方法で支持ピック119に固定することもできる。
【0053】
一つのフォーク101に装着する位置ずれ防止装置201の個数は、基板Sやフォーク101の大きさ、搬送動作において大きな加速度が加えられる方向などを考慮して適宜設定できる。位置ずれ防止装置201は、例えばフォーク101の2〜12箇所、好ましく4〜8箇所に装着することができる。
【0054】
位置ずれ防止装置201は、例えばフォーク101の支持ピック119の先端側のみ、あるいは基部側のみに配設することも可能である。しかし、基板Sの動きを確実に制限する観点から、フォーク101に保持された基板Sを間に挟みこむように、基板Sの少なくとも対向する2辺にストッパーとなる可動ピン205が当接できるような配置とすることが好ましい。また、位置ずれ防止装置201は、基板Sの中心に対して互いに対称をなすように配置することが好ましく、基板Sの4隅近傍に配置することがより好ましい。
【0055】
図11および図12は、位置ずれ防止装置201の好ましい配置例を示している。図11において、位置ずれ防止装置201は、基板Sの二つの短辺SSに下方から重なるように装着されている。これにより、主に支持ピック119の長手方向における基板Sの動きを制限している。
【0056】
フォーク101で、位置ずれ防止装置201を装着する位置は、そこに保持される基板S上の電子部品を形成する部分(デバイス形成領域)の直下を避け、デバイス形成領域よりも外側にすることが好ましい。図11では、基板S上のデバイス形成領域Rが破線で描かれている。位置ずれ防止装置201は、デバイス形成領域Rの外側に位置するように、フォーク101の8箇所に装着されている。このように、位置ずれ防止装置201をデバイス形成領域Rの外側に配置することによって、基板Sの裏面側に可動ピン205が接触/離間する際の静電破壊により、表面側に形成される電子部品に悪影響を与えることを防止できる。
【0057】
また、図12に示したように、位置ずれ防止装置201が基板Sの4隅と重なるような配置がより好ましい。このように配置すれば、4方向から基板Sを規制できるので、支持ピック119の長手方向への基板Sの動きだけでなく、支持ピック119を横断する方向への基板Sの動きや、基板Sが水平方向に回転しようとする動きなども制限し、位置ずれをより確実に防ぐことができる。なお、図12の例では、基板Sの4隅と重なる位置に配置された4つの位置ずれ防止装置201について、他の位置に配置された4つの位置ずれ防止装置201よりも、可動ピン205の数を多くしている。具体的には、基板Sの4隅と重なる位置に配置された4つの位置ずれ防止装置201は各11本の可動ピン205を有している。一方、基板Sの4隅に配置された位置ずれ防止装置201と対をなすように支持ピック119の反対側(内側)にそれぞれ配置された位置ずれ防止装置201では、各7本の可動ピン205を有している。このように、可動ピン205の数は、位置ずれ防止装置201を配置する場所や配置数などに応じて変えることができる。
【0058】
なお、図11と図12との比較から理解されるように、基板Sのサイズが変化しても、基板Sのサイズに応じて支持ピック119における位置ずれ防止装置201の装着位置を変えることができる。従って、基板Sの大小にかかわらず、フォーク101上での位置ずれを確実に防止できる。
【0059】
位置ずれ防止装置201は、一つのフォーク101に装着する場合であっても、装着する部位に応じて、可動ピン205の数や配置間隔、第1の高さH1、第2の高さH2などを変えることができる。
【0060】
また、可動ピン205の柱状部分205aは、図13に示したように、その長手方向(鉛直方向)を回転軸として水平に回動できるように構成してもよい。基板Sのエッジに当接する柱状部分205aが回動することによって、基板Sとの当接部位が毎回変わる。その結果、基板Sのエッジとの接触による磨耗や損傷で可動ピン205が劣化する度合いを軽減し、可動ピン205の交換までの寿命を長期化できるとともに、柱状部分205aの磨耗や損傷による保持位置の精度の低下も抑制できる。可動ピン205の柱状部分205aは、既知の機構例えば柱状部分205aの上部を二重構造にすること等により容易に回動自在に構成することができる。
【0061】
以上のように、位置ずれ防止装置201を配設することによって、フォーク101の進出、退避、旋回等の諸動作の際に生じる加速度で基板Sが横滑りして保持位置がずれたり、基板Sが落下したりすることを確実に防止できる。従って、真空処理システム100において搬送装置23による基板搬送の信頼性を高めることができる。また、位置ずれ防止装置201を配設することによって、搬送動作速度を大きくしてもフォーク101上に確実に基板Sを保持できるため、基板搬送のスループットを向上させることができる。
【0062】
次に、本実施の形態の位置ずれ防止装置201を利用した基板Sの保持姿勢の補正機能について説明する。フォーク101を構成する支持ピック119は、自重や基板Sの重みによってその長手方向に撓み、先端部の高さ位置が基部側に比べて下がりやすい。この撓みに伴いフォーク101に保持された基板Sの姿勢も斜めになりやすい。位置ずれ防止装置201は、可動ピン205を基板Sの裏面に接触させることによって基板Sを下方から支持する機能も有しているため、位置ずれ防止装置201を利用して基板Sの保持状態を水平に近づけることができる。
【0063】
図14は、フォーク101の支持ピック119(ここでは図示を省略)の先端側に装着した位置ずれ防止装置201Aと、基部側に装着した位置ずれ防止装置201Bとによって基板Sを支持した状態を模式的に示している。ここでは、先端側の位置ずれ防止装置201Aの可動ピンを符号205A、基部側の位置ずれ防止装置201Bの可動ピンを符号205Bで示している。そして、基部側の位置ずれ防止装置201Bの可動ピン205Bが沈み込んでいるときの第2の高さH2Bよりも、先端側の位置ずれ防止装置201Aの可動ピン205Aが沈み込んでいるときの第2の高さH2Aを大きく設定している。例えば、位置ずれ防止装置201Bの可動ピン205Bを付勢するコイルばね207の付勢力よりも、位置ずれ防止装置201Aの可動ピン205Aを付勢するコイルばね207の付勢力を強くしたり、可動ピン205Aを可動ピン205Bよりも長く形成したりすることによって、容易に、第2の高さH2Bよりも第2の高さH2Aを大きくすることができる。
【0064】
このようにすれば、可動ピン205Aの第2の高さH2Aと可動ピン205Bの第2の高さH2Bとの差を利用して支持ピック119の撓み幅を相殺し、基板Sの撓みを緩和できる。従って、基板Sの重さや支持ピック119の自重により支持ピック119に撓みが生じて先端側の位置ずれ防止装置201Aの位置が基部側の位置ずれ防止装置201Bの位置に比べて相対的に低くなった場合でも、フォーク101上の基板Sを極力水平に近い姿勢で安定的に保持しつつ搬送動作を行うことができる。
【0065】
さらに、図14においては、先端側の位置ずれ防止装置201Aの可動ピン205Aの第1の高さH1Aを基部側の位置ずれ防止装置201Bの第1の高さH1Bよりも大きく設定している。これによって、先端側の位置ずれ防止装置201Aにおいて、第1の高さH1Aと第2の高さH2Aとの差分(H1A−H2A)を十分に確保できる。このようにすれば、支持ピック119の撓みによって基板Sの荷重がフォーク101の先端側に集中しても、第1の高さH1Aで突出した可動ピン205Aを確実にストッパーとして機能させることができる。なお、このような位置ずれ防止装置201を利用した基板Sの保持姿勢の補正効果を得るために、支持ピック119の基部側と先端側に限らず、支持ピック119の長手方向の中間付近に位置ずれ防止装置201を配置することもできる。
【0066】
また、図4では、1本の支持ピック119の左右両側に、それぞれ位置ずれ防止装置201を装着する例を挙げたが、1本の支持ピック119の片側のみに、位置ずれ防止装置201を装着してもよい。
【0067】
また、位置ずれ防止装置201の変形例として、それぞれ複数の可動ピン205が配設された一対の本体203を連結した構成にすることもできる。例えば図15に示した位置ずれ防止装置201Cは、二つの本体203を有し、これらが連結部分209で連結され、1本の支持ピック119の左右両側に可動ピン205を配置できる構成となっている。この場合、左右の本体203の間には、支持ピック119を挿入可能な凹部203bが形成されている。凹部203bは、支持ピック119の厚みと幅に対応した深さと幅で形成されている。このような連結部分209と凹部203bを設けることは必須ではないが、これらを設けることによって、位置ずれ防止装置201Cを支持ピック119に装着する際に固定や位置決めが容易になる。つまり、位置ずれ防止装置201Cを支持ピック119に装着する際に、連結部分209は固定部として機能し、凹部203bは位置決め部として機能する。なお、連結部分209は、例えば本体と同様の材質の板材によって形成できるが、二つの本体203を連結できるものであればその形態は問われない。
【0068】
また、本体203は、必ずしも筐体とする必要はなく、例えば二枚の板材によって形成することもできる。
【0069】
また、位置ずれ防止装置201は、矩形の基板に限らず、例えば図16に示したように、半導体ウエハなどの円形の基板Sを保持するフォーク101Aにも装着できる。なお、図16において、上記説明内容と同じ構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0070】
[第2の実施の形態]
次に、図17〜図22を参照しながら、本発明の第2の実施の形態に係る位置ずれ防止装置301について説明する。まず、図17は、位置ずれ防止装置301の外観構成を拡大して示す斜視図である。図18は位置ずれ防止装置301の機構を説明するための要部断面図である。位置ずれ防止装置301は、主要な構成として、本体303と、この本体303の上面303aに突出して設けられた、可動部材としての複数のブロック形状の可動ピン305と、これらの可動ピン305をそれぞれ独立して上方向(突出する方向)に付勢する付勢手段としてのコイルばね307とを備えている。また、本実施の形態の位置ずれ防止装置301は、可動ピン305のストッパー機能を補うブロック309が可動ピン305に隣接して設けられている。なお、図17では、本体303の3箇所に各4個ずつの可動ピン305を備えた構成としたが、可動ピン305の配置箇所や配設数は限定されるものではない。
【0071】
本実施の形態の位置ずれ防止装置301において、本体303は、図18に示したように、例えば合成樹脂などの材質で構成された板材である。本体303は、可動ピン305を装着する貫通開口311を有している。各貫通開口311の上部は、本体303の一部が貫通開口311の内側に張り出して係合部303bを形成している。この係合部303bによって貫通開口311の開口面積が狭められている。なお、符号303cは、本体303を支持ピック119に装着するための螺子孔である。
【0072】
各貫通開口311内には、それぞれ4組の可動ピン305およびコイルばね307が配置されている。可動ピン305は、コの字形(浅い皿を伏せたような断面形状)をなし、基板Sの下面又は端部に当接する部分である基板支持部305aと、この基板支持部305aの両端が外側に折曲して形成された折曲部305bとを備えている。可動ピン305の基板支持部305aは、各貫通開口311の対向する係合部303bの間に挿通されている。可動ピン305の基板支持部305aの下面のほぼ中央には、ばね受け用の凹部305cが設けられている。また、各貫通開口311の下端には、台座部313が掛け渡されている。台座部313は図示しない嵌合機構によって本体303に着脱可能に固定されている。この台座部313には、ばね受け用の凹部313aが設けられている。
【0073】
可動ピン305の基板支持部305aと折曲部305bとは、別々の部材で形成されていてもよいが、同じ材質で一体に形成されていることが好ましい。可動ピン305の材質は特に限定されるものではないが、少なくとも可動ピン305の基板支持部305aは、基板Sの裏面や端部に接触するため、例えば合成樹脂やゴムなどの材料により形成することが好ましい。また、可動ピン305の基板支持部305aは、基板Sの端部を受け止め得るだけの剛性と靭性を有していることが好ましい。以上のことから、可動ピン305の材料としては、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂などの合成樹脂を用いることが望ましい。
【0074】
なお、可動ピン305の形状は、図17、図18等に例示した形状によって何ら制約されるものではない。
【0075】
コイルばね307は、可動ピン305を上方向に付勢して本体303の上面303aから可動ピン305の基板支持部305aの上部を突出した状態にしておく付勢手段である。コイルばね307の上端は、可動ピン305の基板支持部305a下面のばね受け用の凹部305cに当接し、コイルばね307の下端は、台座部313のばね受け用の凹部313aに当接している。コイルばね307は、必要に応じて任意の方法で固定されていてもよい。なお、可動ピン305を付勢する付勢手段としては、コイルばね307に限定されるものではなく、例えば、板ばねなども使用できる。
【0076】
位置ずれ防止装置301において複数の可動ピン305は、基板Sの荷重によってそれぞれ独立して上下に変位できるように構成されている。つまり、可動ピン305は、独立して基板Sの面方向に対し直交する方向に突出し、又は退避する。図18の紙面に向かって左側の可動ピン305は荷重を受けて沈み込んだ状態を示し、右側の可動ピン305は上方へ向けて付勢された非荷重の状態を示している(基板Sは図示を省略)。つまり、基板Sの荷重がかからない状態では、可動ピン305は、コイルばね307によって上方向に付勢され、貫通開口311に挿通された可動ピン305の基板支持部305aの上部は、本体303の上面303aから上方へ向けて突出している。このとき、本体303の上面303aを基準として、可動ピン305の先端の突出量を第1の高さH1とする。また、荷重がかからない状態では、コイルばね307によって付勢された可動ピン305の折曲部305bが貫通開口311の係合部303bに押し付けられている。折曲部305bは、第1の高さH1を規定するストッパーとして機能している。
【0077】
フォーク101が基板Sを受け取ることによって、任意の可動ピン305に基板Sの荷重が加えられた状態では、荷重によってコイルばね307が縮み、その可動ピン305は全体的に押し下げられる。この変位した状態のとき、本体303の上面303aを基準として、可動ピン305の先端の突出量を第2の高さH2とする。第1の高さH1及び第2の高さH2は、第1の実施の形態と同様に設定できる。
【0078】
本実施の形態の位置ずれ防止装置301では、可動ピン305の基板支持部305aをコの字形に形成し、その内側にコイルばね307を収容する構成にしたことで、第1の実施の形態の位置ずれ防止装置201に比べ、位置ずれ防止装置301全体の高さ(本体303の厚みと第1の高さH1との合計)を小さく抑えることが可能になっている。そのため、位置ずれ防止装置301は、例えば支持ピック119の上面に装着することが可能である。また、上記構成により、各可動ピン305はその幅方向(可動ピン305が並んでいる方向)にわずかに傾倒可能に設けられている。
【0079】
ブロック309は、可動ピン305のストッパー機能を補助する補助支持部である。ブロック309は、基板Sのエッジが可動ピン305に当接して横方向の力が加えられた場合に、可動ピン305を補助的に支持する。つまり、ブロック309は、前記可動ピン305と協働して間接的に基板の動きを制限する補助ストッパーとして作用するものである。そのため、ブロック309は、基板S側からみて最も遠い位置の可動ピン305に隣接して設けられている。ブロック309は、位置ずれ防止装置301の本体303と一体に成形されていてもよいし、本体303とは別の部材で構成されていてもよい。本実施の形態においてブロック309は可動式ではなく固定式である。なお、ブロック309は任意の構成であり、必ずしも設けなくてもよい。
【0080】
次に、図19〜図21を参照しながら、本実施の形態に係る位置ずれ防止装置301の作用について説明する。図19〜21は、支持ピック119の先端に位置ずれ防止装置301を装着した状態を示している。位置ずれ防止装置301は、例えば螺子等の固定手段で支持ピック119に固定されている。本実施の形態の位置ずれ防止装置301では、4つの可動ピン305が互いに近接して設けられている。ここでは、説明の便宜上、支持ピック119の基部側から先端側へ順に、可動ピン305A,305B,305C,305Dとする。図19に示したように、基板Sを支持していない状態で可動ピン305A〜305Dは、いずれも第1の高さH1となっている。
【0081】
図20は、フォーク101の支持ピック119上に基板Sを支持した状態を示している。基板Sは可動ピン305A及び305Bの上にかかり、これら可動ピン305A及び305Bは基板Sの荷重によって第2の高さH2まで沈み込んでいる。基板Sが載らない可動ピン305C,305Dは、そのまま第1の高さH1を保っている。この状態で、フォーク101によって基板Sを搬送中に、慣性力や遠心力によって基板Sがフォーク101の先端側へ位置ずれしそうになると、図21に拡大して示したように、基板Sの先端側のエッジが可動ピン305Cの側部に当接して位置ずれが防止される。このとき、可動ピン305Cと可動ピン305Dとの間隔が狭いことにより、幅方向に傾倒可能に設けられている可動ピン305Cが隣接する可動ピン305Dによって補助的に支持される。つまり、基板Sにより加えられる力が大きい場合は、可動ピン305C単独ではなく、可動ピン305C及び305Dが協働してストッパーとしての役割を果たす。
【0082】
また、本実施の形態の位置ずれ防止装置301は、可動ピン305Dに近接してブロック309を備えているため、基板Sによって加えられる力が大きい場合は、可動ピン305C及び305Dとともにブロック309も協働してストッパーとして作用し、基板Sの位置ずれをより確実に防ぐことができる。
【0083】
以上のように、可動ピン305A,305B,305C及び305Dを協働してストッパーとして機能させるためには、隣接する可動ピン305の間隔が接触しているか、横方向の力によって容易に接触できる状態まで近接していることが好ましい。そのため、位置ずれ防止装置301では、貫通開口311内で4個の可動ピン305A,305B,305C,305Dが間隔を互いに空けずに隣り合うように配置することが好ましい。このように複数の可動ピン305を集合させて配備することにより、基板Sに直接当接する可動ピン305だけでなく、他の可動ピン305も間接的にストッパーとして機能させることができる。
【0084】
また、同様の観点から、支持ピック119の最も先端側に配置される可動ピン305Dとブロック309との間隔についても、接触しているか、横方向の力によって容易に接触できる状態まで近接させて配置することが好ましい。
【0085】
次に、本実施の形態の位置ずれ防止装置301における可動ピン305の配置について説明する。図22は、支持ピック119の先端に位置ずれ防止装置301を装着した状態を示す平面図である。本体303の3箇所に貫通開口311が設けられ、それぞれの貫通開口311内に各4個ずつの可動ピン305が配備されている。ここでは、説明の便宜上、図22の紙面に向かって左側の複数の可動ピン305を、支持ピック119の基部側から可動ピン305A1,305B1…、中央の複数の可動ピン305を同様に可動ピン305A2,305B2…、右側の複数の可動ピン305を同様に可動ピン305A3,305B3…のように表記する。
【0086】
各貫通開口311の位置は、支持ピック119の長手方向に少しずつ位置をずらして設けられている。3つのブロック309も同じ大きさではなく、可動ピン305との境界の位置が支持ピック119の長手方向に少しずつずれるように大きさを変えて設けられている。具体的には、例えば可動ピン305C1と可動ピン305D1との境界が、可動ピン305D2の基板支持部305aにおいて、その幅方向(支持ピック119の長手方向と同じ方向)の中間に位置するように配置されている。また、例えば可動ピン305D2と可動ピン305C2との境界が、可動ピン305D3の基板支持部305aの幅方向の中間に位置するように配置されている。
【0087】
このように、支持ピック119の長手方向に順次少しずつ(例えば1/2ピッチずつ)位置をずらして可動ピン305を配置することによって、基板Sの初期の支持位置からの位置ずれ量を抑制できる。すなわち、仮に、可動ピン305A3上に基板Sのエッジが載っており、可動ピン305A3のみが第2の高さH2になっている場合、搬送中に基板Sに位置ずれが生じても、基板Sのエッジは第1の高さH1で突出している可動ピン305A2の側面に当接してそれ以上の動きが制限される。可動ピン305A3と可動ピン305A2が設けられている位置の差は、基板支持部305aの幅の1/2であるため、基板Sの位置ずれ量を、最大でも基板支持部305aの幅の1/2以内に留めることができる。同様に、可動ピン305A2上に基板Sのエッジが載っており、可動ピン305A1によって基板Sの動きが制限される場合も、基板Sの位置ずれ量は、最大でも基板支持部305aの幅の1/2以内に留めることができる。このように、可動ピン305の配置を横一列に揃えるよりも、支持ピック119の長手方向に順次少しずつピッチをずらして配置することが好ましい。
【0088】
以上のように、本実施の形態の位置ずれ防止装置301では、1つないし複数の可動ピン305、さらに必要に応じてブロック309を加えて基板Sの動きを制限する構成としたので、フォーク101上での基板Sの位置ずれを確実に防止できるとともに、基板Sの位置ずれ量をわずかなものにすることができる。また、支持ピック119の長手方向に順次少しずつ位置をずらして可動ピン305を配置することによって、基板Sの位置ずれ量を極めてわずかなものにすることができる。
【0089】
本実施の形態における他の構成及び効果は、第1の実施の形態と同様である。なお、位置ずれ防止装置301は、支持ピック119の先端に限らず、側部(例えば、支持ピック119の先端側の側部又は基部側の側部)にも装着することができる。
【0090】
以上、本発明の実施形態を述べたが、本発明は上記実施形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、真空状態で基板Sの搬送を行う搬送装置23を例に挙げて説明したが、位置ずれ防止装置201,301は、大気圧状態で基板の搬送を行う搬送装置15にも適用可能である。搬送装置15のように大気圧状態での搬送に適用する場合、位置ずれ防止装置201,301の可動ピン205,305を付勢する付勢手段として、例えば圧力調節された空気、高粘性の油などの流体を用いる機構も採用できる。
【0091】
また、本発明の基板保持具を使用可能な基板搬送装置の構成は、上下2段に配備されたスライドアーム式に限らず、1段構成でも3段構成でもよいし、スライド式に限らず例えば多関節アーム式の基板搬送装置であっても構わない。
【0092】
また、位置ずれ防止装置201,301は、FPD製造用の基板を搬送対象とする基板保持具に限らず、例えば太陽電池用の基板など各種用途の基板を搬送対象とする基板保持具にも適用できる。
【符号の説明】
【0093】
1a,1b,1c…プロセスチャンバ、3…搬送室、5…ロードロック室、100…真空処理システム、101…フォーク、117…ピックベース、119…支持ピック、201…位置ずれ防止装置、203…本体、205…可動ピン、205a…柱状部分、205b…フランジ、207…コイルばね、211…隔壁、213…部屋、213a…底壁、213b…天井部、213c…開口部、S…基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持具に固定される本体と、
前記本体の上面から第1の高さで突出した部分を有し、該突出した部分に基板の荷重が加えられた状態で前記第1の高さよりも低くなるように、互いに独立して設けられた複数の可動部材と、
前記複数の可動部材をそれぞれ突出方向に付勢する付勢手段と、
を備え、
前記第1の高さで突出した1つ以上の可動部材の側部が前記基板保持具に保持された基板の端部に当接することによって基板の動きを制限し位置ずれを防止する位置ずれ防止装置。
【請求項2】
前記可動部材は、前記基板の面に対し直交する方向に突出又は退避するものである請求項1に記載の位置ずれ防止装置。
【請求項3】
前記可動部材は、少なくとも前記基板と接触する部分が合成樹脂またはゴムにより形成されている請求項1または請求項2に記載の位置ずれ防止装置。
【請求項4】
前記可動部材は、前記突出した部分に基板の荷重が加えられた状態で、前記本体の上面を基準として前記第1の高さよりも低い第2の高さに変位する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の位置ずれ防止装置。
【請求項5】
前記複数の可動部材が互いに近接して設けられ、基板の動きを協働して制限する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の位置ずれ防止装置。
【請求項6】
前記可動部材とともに間接的に基板の動きを制限する補助支持部を備えた請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の位置ずれ防止装置。
【請求項7】
基板を支持する基板支持部材と、
前記基板支持部材に固定された、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の位置ずれ防止装置と、
を備えた基板保持具。
【請求項8】
前記基板の荷重が加えられた状態で前記第1の高さよりも低くなった可動部材が、前記基板において電子部品を形成するデバイス形成領域より外側の裏面に当接するように、前記位置ずれ防止装置を配置した請求項7に記載の基板保持具。
【請求項9】
前記第1の高さで突出した可動部材が、前記基板保持具に保持された基板の少なくとも対向する2辺に当接するように、前記位置ずれ防止装置を2つ以上配置した請求項7または請求項8に記載の基板保持具。
【請求項10】
前記基板支持部材の基部側と先端側に、それぞれ前記位置ずれ防止装置を配置した請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の基板保持具。
【請求項11】
前記先端側に配置された位置ずれ防止装置の可動部材の前記本体の上面からの突出量を、前記基部側に配置された位置ずれ防止装置の可動部材の前記本体の上面からの突出量よりも大きく設定した請求項10に記載の基板保持具。
【請求項12】
請求項7から請求項11のいずれか1項に記載の基板保持具を備えた基板搬送装置。
【請求項13】
請求項12に記載の基板搬送装置を用い、前記基板保持具に基板を保持して搬送する基板搬送方法。
【請求項1】
基板を保持する基板保持具に固定される本体と、
前記本体の上面から第1の高さで突出した部分を有し、該突出した部分に基板の荷重が加えられた状態で前記第1の高さよりも低くなるように、互いに独立して設けられた複数の可動部材と、
前記複数の可動部材をそれぞれ突出方向に付勢する付勢手段と、
を備え、
前記第1の高さで突出した1つ以上の可動部材の側部が前記基板保持具に保持された基板の端部に当接することによって基板の動きを制限し位置ずれを防止する位置ずれ防止装置。
【請求項2】
前記可動部材は、前記基板の面に対し直交する方向に突出又は退避するものである請求項1に記載の位置ずれ防止装置。
【請求項3】
前記可動部材は、少なくとも前記基板と接触する部分が合成樹脂またはゴムにより形成されている請求項1または請求項2に記載の位置ずれ防止装置。
【請求項4】
前記可動部材は、前記突出した部分に基板の荷重が加えられた状態で、前記本体の上面を基準として前記第1の高さよりも低い第2の高さに変位する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の位置ずれ防止装置。
【請求項5】
前記複数の可動部材が互いに近接して設けられ、基板の動きを協働して制限する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の位置ずれ防止装置。
【請求項6】
前記可動部材とともに間接的に基板の動きを制限する補助支持部を備えた請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の位置ずれ防止装置。
【請求項7】
基板を支持する基板支持部材と、
前記基板支持部材に固定された、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の位置ずれ防止装置と、
を備えた基板保持具。
【請求項8】
前記基板の荷重が加えられた状態で前記第1の高さよりも低くなった可動部材が、前記基板において電子部品を形成するデバイス形成領域より外側の裏面に当接するように、前記位置ずれ防止装置を配置した請求項7に記載の基板保持具。
【請求項9】
前記第1の高さで突出した可動部材が、前記基板保持具に保持された基板の少なくとも対向する2辺に当接するように、前記位置ずれ防止装置を2つ以上配置した請求項7または請求項8に記載の基板保持具。
【請求項10】
前記基板支持部材の基部側と先端側に、それぞれ前記位置ずれ防止装置を配置した請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の基板保持具。
【請求項11】
前記先端側に配置された位置ずれ防止装置の可動部材の前記本体の上面からの突出量を、前記基部側に配置された位置ずれ防止装置の可動部材の前記本体の上面からの突出量よりも大きく設定した請求項10に記載の基板保持具。
【請求項12】
請求項7から請求項11のいずれか1項に記載の基板保持具を備えた基板搬送装置。
【請求項13】
請求項12に記載の基板搬送装置を用い、前記基板保持具に基板を保持して搬送する基板搬送方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−26111(P2011−26111A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241200(P2009−241200)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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