説明

作業車両のフィルター取付構造

【課題】 本発明の課題は、農業用トラクタ等、作動油を充填したミッションケースに、複数のフィルターを備えるにあたり、これらフィルターをコンパクト、且つ障害物との接触を極力防止するべく配置することにある。
【解決手段】 トラクタのミッションケース(3)からフィルター支持ブラケット(30)を側方へ向けて突設支持する。このフィルター支持ブラケット(30)の先端を前後に分岐させて、この前後面に二つのフイルター(25,26)を前後方向に沿わせて状態で取り付ける。また前記二つのフイルター(25,26)は、側面視で後輪(7)の前後幅内に設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、農業用、建築、運搬作業用の作業車両のフィルター取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行用変速装置としてHSTを備えた農業用トラクタ等では、ミッションケースを前後に分割し、HST用の油路を加工した仕切部材を前記両ケース間に介装し、この仕切部材にHSTポンプとHSTモータを取り付ける構成が知られている。そして、この仕切部材の側部にHSTの油路と連通するフィルターを取り付けたものが知られている。
【特許文献1】特開2002-283858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の課題とするところは、前記のようにミッションケースにフィルターを備えるにあたり、特に大型の車両や大量の作動油を必要とする場合、複数のフィルターをメンテナンス性の良い配置としつつ、しかも、極力障害物との接触を防止して破損変形の防止を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
即ち、請求項1記載の発明は、車体から支持部材(30)を側方に突設し、この支持部材(30)に対して前後に二つのフィルター(25,26)を配置して設け、二つのフィルター(25,26)は走行車輪(7)の前後幅内に配備してあることを特徴とする作業車両のフィルター取付構造とした。
(請求項1の作用)
前後に配置した二つのフィルター(25,26)は車体から側方に突設した支持部材(30)に取り付けるので、生産時やメンテナンス時の組付け作業時には、作業者寄りに位置することとなる。しかも、二つのフィルター(25,26)は走行車輪の前後幅内に配備してあるので、走行時、側方から接触する枝木や飛石等は走行車輪(7)によってガードされることとなる。
【発明の効果】
【0005】
これにより、前後に配置した二つのフィルター(25,26)は車体から側方に突設した支持部材(30)により取り付けるので、車体側面との間には所要空間を確保し、極力作業者側に位置することができて、従来のように、HSTポンプとHSTモータと油路を形成した仕切部材に一体構成されたものに比し、生産、メンテナンス時の取り扱いが極めて容易となる。
【0006】
しかも、二つのフィルター(25,26)は走行車輪(7)の前後幅内に配備してあるので、側方からの外部障害物を走行車輪(7)によって防護されることとなり、破損変形を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明を農業用トラクタに搭載した形態について図面に基づき説明する。
最初にトラクタの構成について説明する。
【0008】
トラクタは、図5に示すように、車体1前部のボンネット2内部にエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケース3内のHST式変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪支持軸4及び後輪支持軸5を介して前輪6と後輪7とに伝達して駆動する構成となっている。
【0009】
またエンジンEの後方に左右前輪6,6を操舵するステアリングハンドル11を設け、更に、その後方に操縦席12を設けている。またミッションケース3の後部には、操縦席12の後上方を覆う安全フレーム66を立設すると共に、ケース3背面にはPTO軸13を突出させて各種作業機へ動力を送る構成となっている。
【0010】
また前記PTO軸13は、図6に示すように、同軸13基部の軸受ベアリング40の外側に第1オイルシール41を設けると共に、ミッションケース3の外側に第2オイルシール42を内装したメタル43を該第1オイルシール41の外側に設ける構成となっている。また、第1オイルシール41とPTO軸13との間、及び、第2オイルシール42とPTO軸13との間には、夫れ夫れスリーブ44,44を嵌め込んだ構成としている。これにより、泥土や砂等の異物の侵入を阻止し、シール性を向上することができる。
【0011】
次に図7に基づいてトラクタの一部油圧回路について説明する。
前記トラクタでは、ミッションケース3内をオイルタンクとすべく潤滑兼作動油を充填し、前記エンジンEの回転によってメインポンプ20とサブポンプ21を駆動して各種油圧アクチュエータへ圧油を送る構成となっている。
【0012】
メインポンプ20は、主として前記作業機を昇降制御するための作業機昇降用油圧回路22に接続して圧油を送る構成であり、サブポンプ21は、主としてパワステ用シリンダ23を作動させるためのパワステ用油圧回路24に接続して圧油を送る構成になっている。
【0013】
また前記ポンプ20,21とミッションケース3内との間には二つのフィルター25,26を前後に配置して設けると共に、入口側配管27及び出口側配管28を介して前記ミッションケース3とポンプ20,21側とに接続する構成としている。
【0014】
次に、前記フィルター25,26の取付構造について説明する。
図1乃至図4に示すように、ミッションケース3側部に、車体外側方に向けて、詳しくはケース側部に備えた制御バルブB,B…よりも外側で且つ後輪7の内側の位置までフィルター支持ブラケット(支持部材)30を突設する。また前記フィルター支持ブラケット30は、この外側端を前後に分岐した形状としており、この前面及び後面に取付金具31や取付ボルト32を介してフィルター25,26を前後方向に沿って着脱自在に取り付ける構成としている。また前記前後のフィルター25,26は、内部ペーパーフィルタのメッシュの密度が大小異なる構成としている。
【0015】
また前記二つのフィルター25,26は、ミッションケース3下部から延設された入力側配管27内の油を分流して通過させる構成となっており、夫れ夫れを通過した油は、ブラケット30上部に配した共通の配管28を通じて、ポンプ20,21へ送り出す構成としている。
【0016】
近年、トラクタでは、油圧制御バルブを複数個搭載することが多く、その個数も増加する傾向にある。その為、バルブの作動不良を防ぐ方法としてフィルターの濾過粒度を小さくして対応することが考えられるているが、濾過粒度を小さくすると、配管負圧、フィルターの寿命等の問題が発生するので、濾過面積の大きいフィルターを使うよりも、比較的小さい標準タイプのフィルターを複数個使用することによって解決でき、しかも、この方がコストも安価に構成することができる。また前記フィルターは、並列的にミッションケース3からポンプに至る油路を並列分岐し、夫れ夫れの油路に備える構成としているので、ポンプの駆動による大きな負圧力に対しても滞りなく油を送り出すことができる。
【0017】
また、前記フィルター支持ブラケット30に対し前部のフィルター25と後部のフィルター26は、後輪7の前後幅内、詳しくはタイヤ径内に設置された構成になっている。
【0018】
これにより、後輪7が双方のフィルター25,26を防護することになるので、外部障害物との接触によるフィルターの破損変形を防止することができる。
【0019】
更に、前記後部のフィルター26は、図1に示すように、後輪7のリヤアクスル8のケース側面8aとハウジング前面8bとによって形成される平面視L型のコーナスペース8c内に配置することにより、大幅な構成変更なくして対応可能となり、メンテナンスの容易化を図ることができる。
【0020】
また図8に基づいて、トラクタのサイドカバー48の支持構成について説明する。
前記トラクタでは、エンジンEやラジエータの上方を覆うボンネットカバー47と側方を覆うサイドカバー48を別体で車体に対し夫れ夫れ着脱自在に構成し、このサイドカバー48のロック部材として、図8の(B)に示すように、左右両側部にガイド部49,49を屈曲形成した板バネ状のロックレバー50を利用する構成としている。
【0021】
詳しくは、前記ロックレバー50は、車体前部に備えた上下方向の支軸52fと、後部に備えた傾斜方向の支軸52r周りに夫れ夫れ回動自在に枢支する構成となっており、先端側のグリップ部51を掴んで前記支軸52f,52r周りに回動させ、車体側のフレームに対し、前記サイドカバー48内側に突設形成した係止片53,53を挟んで固定する構成となっている。
【0022】
従って、従来のように、サイドカバーをボルトなどで締付固定していたものに比較してワンタッチで簡単に係止固定することができ、またこのロックレバー50は、左右サイドカバー48,48及び各前後の支軸52f、52rに対し共通部品のレバー50を備える構成としているので、部品点数及び生産コストを抑えることができる。
【0023】
また、図10と図11に基づいて、HSTレバー57の支持構成について説明する。
前記HSTレバー57は、フェンダー65に備えたガイド板55のガイド溝56に沿って前後方向に回動操作するレバーであって、同レバー57の前後位置に応じてHSTの出力回転を変速しながら機体の前後進速度を設定する構成となっている。
【0024】
そして、このHSTレバー47の回動基部には、複数の凹凸部を有したディテントプレート58を付設してあり、また、HSTレバー57側には前記ディテントプレート58の凹凸部58a,58bに係合する係止爪59を設けている。また前記係止片59は、前後方向の枢軸60周りに揺動自在であり、スプリング61によって常時ディテントプレート58側に付勢した構成としている。また同HSTレバー57は、図11の(A)に示すように、左右方向の支点Qを中心として前後方向に揺動自在に支持されている。
【0025】
以上のように構成したHSTレバー57では、ガイド溝56の中立位置よりレバー57の前方回動操作で機体は前進し、中立よりレバー57の後方操作で機体は後進する。またこのようなHSTレバー57の前後回動操作時には、係止爪59がディテントプレート58の凹凸部58a,58bを順次乗り越えながら移行し、該レバー57は、任意の操作位置で係止爪59とディテントプレート58との噛み合いによリロックされることになる。従って、かかる構成によれば、HSTの反動や機体の振動によりレバー57の移動を確実に防止することができる。
【0026】
また、前記ディテントプレート58に形成した凹凸溝は、図11の(B)に示すように、凹溝58aの深さH1〜H5が中立に近づくほど順次深くなるように形成してあり、レバー操作のフィーリングが中立に近づくほどディテント感が大きく感じられるので、走行速度がフィーリングで把握でき、低速操作が容易となる。
【0027】
次に図12に基づいて、このトラクタの安全フレーム66の支持構成について説明する。
フェンダー65後端部から上方に突設した安全フレーム66は、フェンダ支持フレーム67から突設するステー68に横軸69及び連結ピン70を介して連結する構成となっている。また、この安全フレーム66は、前記横軸69を支点として前後に揺動変位可能で、連結ピン70の複数連結孔71,71への差し替えによって安全フレームの起立角度を変更する構成となっている。
【0028】
そして、安全フレーム66の基部に固定した保持プレート72には、L型プレート73の一端側を締付ボルト74にて締付固定してあり、フェンダ支持プレート75に螺着したストッパボルト76の頭部には前記L型プレート73の他端側をクッションゴム77を介して連結し、ストッパボルト76に螺合した調整ナット78にて該ストッパボルトの上下高さを調整することにより、安全フレーム66の取付に対するガタを吸収できるように構成している。つまり、ストッパボルトの高さ調整によりガタ止め代が任意変更できる構成としている。
これにより、安全フレームのガタのない安定した取付状態を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】フィルター取付部の平面図。
【図2】フィルター取付部の側面図。
【図3】フィルター取付部の正面図。
【図4】フィルターの一部断面図。
【図5】トラクタの全体側面図。
【図6】(A)PTOの支持構成を示すケースを一部断面した側面図。(B)PTOの支持構成を示すケースの背面図。
【図7】トラクタの一部油圧回路図。
【図8】(A)サイドカバーの取付状態を示す側面図。(B)ロックアームの斜視図。
【図9】サイドカバーの取付状態を示す平面図。
【図10】(A)HSTレバーの支持構成を示す背面図。(B)HSTレバーのガイドを示す平面図。
【図11】(A)HSTレバー基部のディテントプレートを示す側面図。(B)ディテントプレートの一部拡大側面図。
【図12】(A)安全フレーム基部を示す側面図。(B)安全フレーム基部を示す平面図。
【符号の説明】
【0030】
E エンジン
R ラジエータ
1 車体
3 ミッションケース
6 前輪
7 後輪
20 メインポンプ
21 サブポンプ
25 フィルター(前部)
26 フィルター(後部)
27 入口側配管
28 出口側配管
29 配管経路
30 フィルター支持ブラケット
31 取付金具
32 取付ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体から支持部材を側方に突設し、この支持部材に対して前後に二つのフイル
タ−を配置して設け、二つのフイルタ−は走行車輪の前後幅内に配備してあるこ
とを特徴とする作業車両のフイルタ−取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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