説明

光変調器の駆動回路及び駆動方法

入力光をクロック信号及びデータ信号のそれぞれで変調する光変調器において、前記入力光の変調に用いるデータ信号のパルス幅をパルス幅可変回路(8)によって変化させ、その状態で光変調器の光出力パワーに基づき、クロック信号とデータ信号の位相差が最小となるように遅延制御部(5)によって制御する。これにより、クロック信号とデータ信号の位相を常に最適位相に制御でき、良好な光出力波形を安定して得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、光変調器の駆動回路及び駆動方法に関し、特に、RZ(Return to Zero)信号を送信する光送信器に使用されるマッハツェンダ型光変調器に用いて好適な駆動回路及び駆動方法に関する。
【背景技術】
図18は従来のRZ信号生成用のマッハツェンダ型光変調器とその駆動回路の要部を示すブロック図で、この図18に示すマッハツェンダ型光変調器は、RZ信号を送信する光送信器に用いられるものであって、クロック信号用のマッハツェンダ型光変調器(以下、クロック変調器という)100と、データ信号用のマッハツェンダ型光変調器(以下、データ変調器という)200と、可変遅延回路300と、増幅器400,500とをそなえて構成されている。
ここで、クロック変調器100は、レーザダイオード等の光源(図示省略)からの入力光を受けて、その入力光を可変遅延回路300及び増幅器400を通じて供給されるクロック(CLK)信号(RZ信号)によって変調するもので、具体的には、入力側Y分岐光導波路101で分岐された各入力光の一方の位相を、各電極101の一方にクロック信号電圧を印加して、その部分の光屈折率を変化させることにより、出力側Y分岐光導波路103において各入力光の干渉(強め合い/弱め合い)を引き起こさせて、光クロック信号(光の点滅)を生成するようになっている。
また、データ変調器200は、このクロック変調器100によって得られた光クロック信号をさらにデータ(DATA)信号〔NRZ(Non−Return to Zero)信号〕によって変調するもので、上記クロック変調器100と同様に、入力側Y分岐光導波路201で分岐された各入力光の一方の位相を、各電極201の一方にデータ信号電圧を印加して、その部分の光屈折率を変化させることにより、出力側Y分岐光導波路203において各入力光の干渉(強め合い/弱め合い)を引き起こさせるようになっている。
つまり、この図18に示す光変調器は、クロック変調器100で入力光をクロック信号を用いて変調することにより光クロック信号を生成し、その光クロック信号をさらにデータ変調器200でデータ信号を用いて変調することにより光クロック信号にデータ信号を重畳するようになっているのである。
このため、上記のクロック信号とデータ信号の位相は最適位相、即ち、データ信号のクロスポイントがクロック信号の消光時と一致している必要がある。そこで、従来は、例えば、可変遅延回路300をクロック信号ライン(又はデータ信号ライン)に介装して、上記のクロック信号とデータ信号の位相差を最適な位相状態に調整(設定)するようになっている。なお、可変遅延回路300を設けずに、クロック信号−データ信号間の位相が最適位相となるように、クロック信号ライン及びデータ信号ラインの各線路長を予め調整しておく場合もある。
これにより、CLK−DATA間の位相が最適位相に設定され、良好な光出力波形が得られる。なお、図18において、符号400,500は、それぞれ、クロック信号,データ信号を所定レベルに増幅する増幅器を示す。
しかしながら、このような従来の光変調器では、近年の伝送信号の高速化に伴い1タイムスロットが短くなるため、CLK−DATA間の位相調整を高精度に行なう必要があり(例えば、40Gb/sの伝送信号の1タイムスロットは真空中では7.5mmに相当)、コストアップの要因となっている。また、クロック信号又はデータ信号の遅延量が経年変化等によって動作中に変動した場合には、光出力波形が劣化するため、伝送特性を劣化させてしまう。
なお、データ信号と光パルス列の相対位相を最適化する公知技術として、例えば、特開平9−181683号公報に記載された技術がある。この公知技術は、その図1等に示されるように、入射光パルス列をクロック信号に同期したデータ信号によって変調するデータ変調器からの出力光パルス列の一部を光カプラで分岐して電界吸収形変調器に入射し、この電界吸収形変調器で出力光パルス列の位相を変調光電流として検出し、この変調光電流に基づいて制御器により可変位相器の位相シフト量を制御することで、データ信号の位相と入射光パルス列の相対位相を最適化するものである。
しかしながら、かかる公知技術では、データ変調器の出力光パルスの位相を、高価な電界吸収形変調器で検出しているため、大幅はコストアップにつながる。
本発明は、以上のような課題に鑑み創案されたもので、入力光をクロック信号及びデータ信号のそれぞれで変調する光変調器において、クロック信号とデータ信号の位相を簡素な構成で精度良く最適化できるようにすることを目的とする。
【発明の開示】
上記の目的を達成するために、本発明の光変調器の駆動回路は、クロック信号とデータ信号の位相差を調整する可変遅延回路と、入力光の変調に用いる該データ信号のパルス幅を変化させるパルス幅可変回路と、該パルス幅可変回路によってパルス幅を変化させた状態で、該光変調器の光出力パワーに基づき、該位相差が最小となるように該可変遅延回路を制御する遅延制御部とをそなえたことを特徴としている。
また、本発明の光変調器の駆動方法は、入力光の変調に用いるデータ信号のパルス幅を変化させ、その状態で、該光変調器の光出力パワーに基づき、該クロック信号と該データ信号の位相差が最小となるように調整することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の第1実施形態に係る光変調器及びその駆動回路の要部の構成を示すブロック図である。
図2Aは本実施形態に係るクロック信号(40GHz,RZ信号)の一例を示す図である。
図2Bは本実施形態に係るデータ信号(40GHz,NRZ信号)の一例を示す図である。
図2Cは本実施形態に係る光出力(40GHz,光RZ信号)の一例を示す図である。
図3Aは本実施形態に係る光変調器におけるクロック信号とデータ信号の位相が最適位相になっていないときの光出力波形を示す図である。
図3Bは本実施形態に係る光変調器におけるクロック信号とデータ信号の位相が最適位相になっているときの光出力波形を示す図である。
図4Aは本実施形態に係る光変調器においてデータ信号のパルス幅が基準パルス幅であるときの光出力波形を示す図である。
図4Bは本実施形態に係る光変調器においてクロック信号とデータ信号の位相差がデータ信号周期の1/2であり、且つ、データ信号のパルス幅が基準パルス幅よりも広いときの光出力波形を示す図である。
図4Cは本実施形態に係る光変調器においてクロック信号とデータ信号の位相差がデータ信号周期の1/2であり、且つ、データ信号のパルス幅が基準パルス幅よりも狭いときの光出力波形を示す図である。
図5は本実施形態に係る光変調器においてクロック信号とデータ信号の位相差をパラメータとしたときのデータパルス幅に対する光出力平均パワーの計算値を示す図である。
図6は図1に示す変化量検出回路の構成を示すブロック図である。
図7は図1に示すパルス幅可変回路の構成を示すブロック図である。
図8Aは図1に示す遅延制御部の発振器の出力を示す図である。
図8Bは図1及び図7に示すパルス幅可変回路でのデータパルス幅変化を示す図である。
図9は図1に示す制御回路の構成を示すブロック図である。
図10は図9に示す制御回路(最小値制御回路)の動作を説明するためのタイムチャートである。
図11は図9に示す制御回路(最大値制御回路)の動作を説明するためのタイムチャートである。
図12Aは本実施形態に係るインターポレーター型の位相可変回路の構成を示す図である。
図12Bは図12Aに示す位相可変回路に入力するクロック信号を示す図である。
図13は本発明の第2実施形態に係る光変調器及びその駆動回路の要部の構成を示すブロック図である。
図14は図1に示す遅延制御部の変形例を示すブロック図である。
図15Aは図14に示す発振器の出力を示す図である。
図15Bは図14に示すπ/2遅延回路の出力を示す図である。
図15Cは図1に示すパルス幅可変回路でのデータパルス幅変化を示す図である。
図16は図1に示す遅延制御部の変形例を示すブロック図である。
図17は図1及び図13に示す光変調器の変形例を示すブロック図である。
図18は従来のRZ信号生成用のマッハツェンダ型光変調器とその駆動回路の要部を示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
〔A〕第1実施形態の説明
図1は本発明の第1実施形態に係る光変調器及びその駆動回路の要部の構成を示すブロック図で、この図1に示す光変調器は、クロック信号(CLK)用のマッハツェンダ型光変調器(以下、クロック変調器という)1と、データ信号(DATA)用のマッハツェンダ型光変調器(以下、データ変調器という)2と、光分波器3とそなえて構成されるとともに、駆動回路として、フォトダイオード4,遅延制御部5,増幅器6,可変遅延回路7及びパルス幅可変回路8等をそなえて構成されている。
ここで、クロック変調器1及びデータ変調器2は、それぞれ、図18により前述したものと同様のもので、クロック変調器1は、入力側Y分岐光導波路101,電極102及び出力側Y分岐光導波路103をそなえ、可変遅延回路7及び増幅器6を通じて一方の電極102に供給されるクロック信号により入力光を変調して光クロック信号を出力し、データ変調器2は、入力側Y分岐光導波路201,電極202及び出力側Y分岐光導波路203をそなえ、クロック変調器1からの光クロック信号を、パルス幅可変回路8を通じて一方の電極202に供給されるデータ信号によりさらに変調するものである。
例えば、クロック信号として図2Aに示すような波形をもつ40GHzのRZ信号を用い、データ信号として図2Bに示すような波形をもつ40GHzのNRZ信号を用いるとすると、データ変調器2の出力としては図2Cに示すような波形をもつ光出力(40GHz,光RZ信号)が得られることになる。
また、可変遅延回路7は、クロック信号の遅延量を変化させることによりデータ信号との相対位相(位相差)を調整するものであり、パルス幅可変回路8は、遅延制御部5の後述する発振器53の出力に従ってデータ変調器2へ供給すべきデータ信号のパルス幅を周期的に変化させるものである。なお、発振器53の出力は後述する制御回路52の動作クロックとしても供給されている。つまり、発振器53は、パルス幅可変回路8と制御回路52とで共用化されている。ただし、勿論、独立して用意してもよい。各増幅器6は、それぞれ、クロック信号,データ信号をそれぞれ所定レベルに増幅するものである。
ここで、上述のごとくパルス幅可変回路8によってデータ信号のパルス幅を変化させることの意義について説明する。
図3Bに示すように、CLK−DATA間の位相差が最適な場合は、データ信号のクロスポイントがクロック信号の消光時と一致するため、光出力波形に波形劣化は生じないが、図3Aに示すように、CLK−DATA間の位相差が最適でない場合は、データ信号のクロスポイントがクロック信号の消光時からずれるため、光出力波形に波形劣化が生じることが分かる。なお、これらの図3A及び図3Bにおいて、「Vπ」はクロック信号及びデータ信号としてクロック変調器1及びデータ変調器2に与える電圧値を表す。
そして、CLK−DATA間の位相差Δτ≒T0/2(T0はDATAの1周期を表す)とし、データ信号のパルス幅(以下、データパルス幅という)を基準パルス幅以外の幅(≠100%)とすると、そのパルス幅に応じてデータ変調器2の光出力波形も変化する。
例えば、データパルス幅を基準パルス幅よりも広く(>100%)すると、図4Bに模式的に示すように、データ信号のクロスポイントが図3A及び図3Bの場合に比して上側にずれるので、データ変調器2の光出力パワーは増大し、逆に、データパルス幅を基準パルス幅よりも狭く(<100%)すると、図4Cに模式的に示すように、データ信号のクロスポイントが図3A及び図3Bの場合に比して下側にずれるので、データ変調器2の光出力パワーは減少することになる。
これに対し、Δτ=0あるいはΔτ≒0では、データ信号のクロスポイントが光クロック信号の消光時と一致するため、図4Aに模式的に示すように、データパルス幅のずれは殆ど観測されない。以上の関係を図5に示す。即ち、図5は位相差Δτをパラメータとした時のデータパルス幅に対する光出力平均パワーの計算値を示しており、この図5に示すように、Δτ=0あるいはΔτ≒0付近ではデータパルス幅のずれは光出力波形に現れないため、光平均パワーも変化しないが、Δτ≠0の場合は、データパルス幅のずれが光出力波形上で観測できるようになり、通常のNRZ信号での光平均パワーと同様に、パルス幅のずれに応じて光出力パワーが変化する。
従って、この図5に示す関係から、データパルス幅を100%からずらした際に、光出力パワーの変化量が最も少なくなる値(即ち、図5に示す直線の傾きが最小となるよう)に可変遅延回路7の遅延量を設定すれば、Δτ=0あるいはΔτ≒0となるため、CLK−DATA間の相対位相を最適位相に制御することができ、また、データパルス幅を周期的に変化させて、光出力パワーの変化量を0に近づけることによっても、CLK−DATA間の相対位相を最適位相に制御することができることが分かる。
そこで、本実施形態では、パルス幅可変回路8によってデータパルス幅をずらしながら、光分波器3によりデータ変調器2の出力の一部を分岐し、その分岐光をフォトダイオード(受光素子)4で受光し、その受光量に応じた電流値を光出力パワーのモニタ信号として遅延制御部5へ出力し、遅延制御部5において、このモニタ信号(光出力パワー)の変化量を検出し、検出した変化量が最小となるように可変遅延回路7の遅延量を制御する構成としているのである。
このため、遅延制御部5は、例えば、モニタ信号の変化量を検出する変化量検出回路51と、この変化量検出回路51で検出されたモニタ信号の変化量が最小となるように可変遅延回路7の遅延量を制御する制御回路52と、パルス幅可変回路8においてデータ信号のパルス幅を周期的に変化(拡大/縮小)させるための発振器53とをそなえて構成されている。
ここで、上記の変化量検出回路51は、例えば図6に示すように、コンデンサ511を用い、上記モニタ信号を微分することにより図5に示す直線の傾きを検出する微分検出回路として構成することができる。また、パルス幅可変回路8は、公知のものでよいが、例えば図7に示すように、トランジスタTr1,Tr2の共通エミッタに電流源81が接続されるとともに、各トランジスタTr1,Tr2のコレクタにそれぞれ抵抗R1,R2が接続されて成る差動論理回路と、トランジスタTr2のコレクタに並列接続されたコンデンサCと、トランジスタTr2のコレクタにベースが接続されるとともにエミッタに電流源82が接続されたトランジスタTr3とを用いて構成される。
そして、遅延制御部5(発振器53)からの信号によりトランジスタTr2のベース電位が調整されることによって、各トランジスタTr1,Tr2のコレクタに現われる相対電位が変化し、これに応じてトランジスタTr3のベース電位が変化するので、入力データパルスのクロスポイントを基準データパルス(例えば、上記相対電位の差が無い状態)のものからずらして、データパルス幅を拡大/縮小することができる。
例えば、発振器53の出力波形が図8Aに示すような波形であったとすると、パルス幅可変回路8の出力は、図8Bに示すようになる。即ち、図8Aに示す波形のHレベルの区間においてはデータパルス幅が拡大し、Lレベルの区間においてはデータパルス幅が縮小することになる。なお、上記のコンデンサCは、トランジスタTr2のコレクタに現われるデータパルスのノイズ成分(直流成分)をカットする役割を果たす。
次に、制御回路(最小値/最大値制御回路)52は、例えば図9に示すように、リセット付きのサンプルホールド回路520,Tフリップフロップ(Toggle flip−flop)回路521,スイッチ回路522A,524B,529,インバータ付きスイッチ回路522B,524A,レジスタ523A,523B,AND回路526,1入力反転型のAND(論理積)回路527,コンパレータ528,フリップフロップ回路530,R/Sフリップフロップ回路531,アップダウン(U/D)カウンタ532及びディジタル/アナログ(D/A)コンバータ533,インバータ534,535,遅延回路536等をそなえて構成される。
そして、この制御回路52は、スイッチ529の切り替えによって最小値又は最大値制御回路として機能させることができる。例えば、スイッチ529を図9に示す接続状態にすると、最小値制御回路として機能し図10に示す動作を行ない、スイッチ529を逆の接続状態にすると、最大値制御回路として機能し図11に示す動作を行なう。
なお、これらの図10,図11に示す信号40〜47は、それぞれ順に、発振器53の出力信号40、Tフリップフロップ回路521の出力信号41、サンプルホールド回路520の出力信号42、レジスタ523Aの出力信号43、レジスタ523Bの出力信号44、R/Sフリップフロップ回路531の入力信号45、アップダウンカウンタ532の入力信号(R/Sフリップフロップ回路531の出力信号)46及びD/Aコンバータ533の出力信号(遅延制御信号)47を示している。
これらの図9及び図10から分かるように、サンプルホールド回路520にてクロック周期でホールドされる変化量検出回路(微分検出回路)51の検出結果と、スイッチ回路522A,524B,インバータ付きスイッチ回路524A,522Bにより、レジスタ523A,523Bに異なる周期で交互に書き込まれ異なる周期で交互に読み出される過去の微分検出回路51の検出結果とが、コンパレータ528にて比較される。
そして、その比較結果に応じてアップダウンカウンタ532のカウント値がアップ/ダウンされて、D/Aコンバータ533の出力信号(レベル)が増減され、最終的に、微分検出回路51の検出結果が最小又は最大となる値で安定することになる。なお、上述した制御回路52は、公知のディザリング回路を適用して上記と同等の機能を実現してもよい。
上述の構成により、本実施形態の光変調器では、入力光の変調に用いるデータ信号及びクロック信号のうちデータ信号のパルス幅を発振器53及びパルス幅可変回路8により周期的に変化させ、その状態で、変化量検出回路51で検出される光出力パワーの変化量が最小(図5に示す直線の傾きが最小となるよう)に可変遅延回路7の遅延量を制御回路52が制御する。
これにより、データ信号のクロスポイントとクロック信号の消光時とを一致させて、CLK−DATA間の相対位相を最適位相に制御することができるので、良好な光出力波形を安定して得ることができる。
なお、上述した可変遅延回路7の代わりに、例えば図12A及び図12Bに示すように、差動対のトランジスタTr4,Tr5,差動対のトランジスタTr6,Tr7,トランジスタTr4,Tr5のコレクタに接続された抵抗R3,R4,トランジスタTr4,TR5の共通エミッタに接続された可変電流源71及びトランジスタTr6,Tr7の共通エミッタに接続された可変電流源72をそなえて構成され、互いにπ/2だけ位相をずらしたクロック信号をそれぞれトランジスタTr3,Tr4及びTr5,Tr6のベース入力とする、インターポレーター型の位相可変回路を適用してもよい。かかる位相可変回路は位相可変量が広く、一般の可変遅延回路7を用いる場合に比して、より広範囲なCLK−DATA間の位相調整を実現することができる。
〔B〕第2実施形態の説明
図13は本発明の第2実施形態に係る光変調器及びその駆動回路の要部の構成を示すブロック図で、この図13に示す光変調器は、図1に示すものに比して、制御回路5に代えて制御回路5Aが設けられるとともに、電流/電圧(I/V)変換回路9が設けられ、且つ、制御回路5Aにおいて、変化量検出回路51が不要であるとともに、パルス幅設定回路54が設けられている点が異なる。なお、他の既述の符号を付したものは、それぞれ既述のものと同一もしくは同様のものである。
ここで、パルス幅設定回路54は、データ変調器2に供給されるデータ信号のパルス幅をパルス幅可変回路8において固定的に基準パルス幅以外の幅に設定するためのもので、I/V変換回路9は、フォトダイオード4で受けた光量に応じて発生する電流値を電圧値に変換するものである。
つまり、本第2実施形態の構成は、パルス幅設定回路54及びパルス幅可変回路8によってデータパルス幅を固定的に基準パルス幅以外の幅(データパルス幅≠100%)に拡大又は縮小させ、その状態でモニタされる光出力レベルが最小又は最大となるように制御回路52が可変遅延回路7でのクロック信号の遅延量を制御するようになっているのである。
具体的には、図5に示す特性から、制御回路52は、パルス幅設定回路54によってデータパルス幅>100%(拡大)に設定したときは第1実施形態と同様に最小値検出回路(図10参照)として、逆に、データパルス幅<100%(縮小)に設定したときは図9に示すスイッチ回路529を切り替えて最大値検出回路(図11参照)として使用する。
このような構成によっても、第1実施形態と同様に、CLK−DATA間の位相を常に最適位相に調整することができる。特に、本実施形態では、変化量検出回路51が不要になるので、第1実施形態の場合よりも遅延制御部5Aの簡素化を図ることが可能である。
なお、本例においても、可変遅延回路7は、図12により上述したインターポレーター型の位相可変回路としてもよい。
(C)変形例の説明
図14は第1実施形態により前述した遅延制御部5の変形例を示すブロック図で、この図14に示す遅延制御部5は、発振器53の出力が、パルス幅可変回路8に加えて、π/2遅延回路55を介して制御回路52に入力されるようになっている点が異なる。
即ち、この場合、遅延制御部5の制御回路52は、例えば図15A,図15B及び図15Cに示すように、最小値又は最大値の検出を発振器53の出力とπ/2ずれた信号(パルス幅の変化周期)に同期させて、或る特定のパルス幅(>100%又は<100%)での光出力パワーが最小又は最大になるように可変遅延回路7の遅延量を制御することによって、CLK−DATA間の位相を常に最適位相に調整するようになっているのである。このようにしても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
他に、例えば図16に示すように、発振器53の出力に同期してモニタ信号の利得の極性を反転する位相比較器(パワー検出器)56を制御回路52の前段に設ける構成とし、特定のパルス幅(>100%又は<100%)での光出力パワーが最小又は最大になるように可変遅延回路7の遅延量を制御することによっても、CLK−DATA間の位相を常に最適位相に調整することができる。なお、この図16において、57はモニタ信号のノイズ成分(直流成分)をカットする役割を果たすコンデンサを示す。
また、クロック変調器1の変形例として、例えば図17に示すように、クロック信号とその反転信号とを1出力反転型の増幅器6′を介してクロック変調器1(各電極102)に入力(差動入力)し、RZフォーマットの光出力信号を得るCS(Carrier Suppressed)−RZ変調方式〔例えば、特開2001−119344号公報参照〕を採用した場合であっても、上述した例と同様に、CLK−DATA間の位相を常に最適位相に調整することができる。
なお、このようにクロック変調器1の各電極102にクロック信号を差動入力する場合は、クロック信号に必要なビットレートを図1や図13に示す構成に比して半分にすることができる(例えば、40GbpsのRZ信号を得たい場合なら、クロック信号は20Gbpsのビットレートで済む)。つまり、この場合、クロック変調器1は、データ信号のビットレートの1/2の差動信号を受けてそれらの差動信号により入力光の変調を行なうのである。
また、本発明は、データ変調器2の各電極202にデータ信号を差動入力するタイプの光変調器(例えば、特開平5−224163号公報参照)にも適用することができる。さらに、本発明は、クロック変調器1とデータ変調器2とが一体に集積化されているものにも当然に適用することができる。
また、上述した遅延制御部5(又は5A)による可変遅延回路7に対する制御(位相調整)は、必ずしも常時行なう必要はなく、図示しない外部タイマからのタイマ信号によって間欠的に行なうようにしてもよい。この場合は、例えば、遅延制御部5(又は5A)と可変遅延回路7及びパルス幅可変回路8との間にスイッチを介装して、上記タイマ信号により可変遅延回路7及びパルス幅可変回路8への信号供給を停止しうる構成を採ればよい。また、制御回路52から可変遅延回路7への信号供給停止は、例えば、制御回路52のD/Aコンバータ533を上記タイマ信号により制御することでも実現できる。
さらに、上述した例では、可変遅延回路7をクロック信号ラインに設けて、クロック信号の遅延量を制御することでCLK−DATA間の位相調整を行なっているが、勿論、可変遅延回路7をデータ信号ラインに設けてデータ信号の遅延量を制御することでも同様の位相調整が可能である。また、可変遅延回路7は、信号源と光変調器との間のどの位置に挿入しても良い。
【産業上の利用可能性】
以上のように、本発明によれば、入力光の変調に用いるデータ信号のパルス幅を意図的に変化させ、その状態での光変調器の光出力パワーに基づき、クロック信号とデータ信号との位相差が最小となるように制御するので、安価な方法で、クロック信号とデータ信号との間の位相を最適位相に制御することができる。したがって、良好な光出力波形を安定して得ることができ、信頼性の高い光通信を安価に実現でき、その有用性は極めて高いものと考えられる。
【図1】




【図5】

【図6】

【図7】


【図9】

【図10】

【図11】


【図13】

【図14】


【図16】

【図17】

【図18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力光をクロック信号及びデータ信号のそれぞれで変調する光変調器の駆動回路であって、
該クロック信号と該データ信号の位相差を調整する可変遅延回路(7)と、
該入力光の変調に用いる該データ信号のパルス幅を変化させるパルス幅可変回路(8)と、
該パルス幅可変回路(8)によってパルス幅を変化させた状態で、該光変調器の光出力パワーに基づき、該位相差が最小となるように該可変遅延回路(7)を制御する遅延制御部(5)とをそなえたことを特徴とする、光変調器の駆動回路。
【請求項2】
該遅延制御部(5)が、
該パルス幅可変回路(8)において該パルス幅を周期的に変化させるための発振器(53)と、
該発振器(53)によって該パルス幅を周期的に変化させた状態で該光変調器の光出力パワーの変化量を検出する変化量検出回路(51)と、
該変化量検出回路(51)で検出された該変化量が最小となるように該可変遅延回路(7)を制御する最小値制御回路(52)とをそなえて構成されたことを特徴とする、請求の範囲第1項に記載の光変調器の駆動回路。
【請求項3】
該変化量検出回路(51)が、該光変調器の光出力パワーを微分することにより該変化量を検出する微分検出回路により構成されたことを特徴とする、請求の範囲第2項に記載の光変調器の駆動回路。
【請求項4】
該遅延制御部(5A)が、
該パルス幅可変回路(8)において該パルス幅を基準パルス幅以外の幅に設定するパルス幅設定回路(54)と、
該パルス幅設定回路(54)により該パルス幅が該基準パルス幅以外の幅に設定された状態で該光変調器の該光出力パワーが最小又は最大となるように該可変遅延回路(7)を制御する最小値/最大値制御回路(52)とをそなえて構成されたことを特徴とする、請求の範囲第1項に記載の光変調器の駆動回路。
【請求項5】
該パルス幅設定回路(54)が、該パルス幅可変回路(8)において該パルス幅を基準パルス幅よりも広く設定するように構成されるとともに、
該最小値/最大値制御回路(52)が、該パルス幅設定回路(54)により該パルス幅が該基準パルス幅よりも広く設定された状態で該光変調器の該光出力パワーが最小となるように該可変遅延回路(7)を制御するように構成されたことを特徴とする、請求の範囲第4項に記載の光変調器の駆動回路。
【請求項6】
該パルス幅調整回路(54)が、該パルス幅可変回路(8)において該パルス幅を該基準パルス幅よりも狭く設定するように構成されるとともに、
該最小値/最大値制御回路(52)が、該パルス幅設定回路(54)により該パルス幅が該基準パルス幅よりも狭く設定された状態で該光変調器の該光出力パワーが最大となるように該可変遅延回路(7)を制御するように構成されたことを特徴とする、請求の範囲第4項に記載の光変調器の駆動回路。
【請求項7】
該遅延制御部(5)が、
該パルス幅可変回路(8)において該パルス幅を周期的に変化させるための発振器(53)と、
該発振器(53)の出力に基づいて該パルス幅の変化周期に同期して基準パルス幅以外の特定のパルス幅での該光変調器の該光出力パワーが最小又は最大となるように該可変遅延回路(7)を制御する最小値/最大値制御回路(52)とをそなえて構成されたことを特徴とする、請求の範囲第1項に記載の光変調器の駆動回路。
【請求項8】
該最小値/最大値制御回路(52)が、該パルス幅が基準パルス幅よりも広いときの該光出力パワーが最小となるように該可変遅延回路(7)を制御するように構成されたことを特徴とする、請求の範囲第7項に記載の駆動回路。
【請求項9】
該最小値/最大値制御回路(52)が、該パルス幅が基準パルス幅よりも小さいときの該光出力パワーが最大となるように該可変遅延回路(7)を制御するように構成されたことを特徴とする、請求の範囲第7項に記載の光変調器の駆動回路。
【請求項10】
該可変遅延回路(7)が、インターポレーター型の位相可変回路を用いて構成されたことを特徴とする、請求の範囲第1〜9項のいずれか1項に記載の光変調器の駆動回路。
【請求項11】
該遅延制御部(5又は5A)が、外部タイマからのタイマ信号によって該可変遅延回路(7)に対する制御を間欠的に行なうように構成されたことを特徴とする、請求の範囲第1〜10項のいずれか1項に記載の光変調器の駆動回路。
【請求項12】
該光変調器が、
該クロック信号により該入力光を変調するクロック信号用マッハツェンダ型光変調器(1)と、該データ信号により該クロック信号用マッハツェンダ型光変調器(1)の出力を変調するデータ信号用マッハツェンダ型光変調器(2)とをそなえて構成されるとともに、
該クロック信号用マッハツェンダ型光変調器(1)が、
該データ信号のビットレートの1/2の差動信号を受けて当該差動信号により該入力光の変調を行なうように構成されたことを特徴とする、請求の範囲1〜11のいずれか1項に記載の光変調器の駆動回路。
【請求項13】
該クロック信号用マッハツェンダ型光変調器(1)と、該データ信号用マッハツェンダ型光変調器(2)とが一体に集積化されていることを特徴とする、請求の範囲第12項に記載の光変調器の駆動回路。
【請求項14】
入力光をクロック信号及びデータ信号のそれぞれで変調する光変調器の駆動方法であって、
該入力光の変調に用いる該データ信号のパルス幅を変化させ、
パルス幅を変化させた状態で、該光変調器の光出力パワーに基づき、該クロック信号と該データ信号の位相差が最小となるように調整することを特徴とする、光変調器の駆動方法。
【請求項15】
該パルス幅を発振器(53)によって周期的に変化させ、
該パルス幅を該発振器(53)によって周期的に変化させた状態で該光変調器の光出力パワーの変化量を検出し、
検出した変化量が最小となるように該位相差を制御することを特徴とする、請求の範囲第14項に記載の光変調器の駆動方法。
【請求項16】
該パルス幅を基準パルス幅以外の幅に設定し、
該パルス幅を該基準パルス幅以外の幅に設定した状態で該光変調器の該光出力パワーが最小又は最大となるように該位相差を制御することを特徴とする、請求の範囲第14項に記載の光変調器の駆動方法。
【請求項17】
該パルス幅を基準パルス幅よりも広く設定し、
該パルス幅を該基準パルス幅よりも広く設定した状態で該光変調器の該光出力パワーが最小となるように該位相差を調整することを特徴とする、請求の範囲第16項に記載の光変調器の駆動方法。
【請求項18】
該パルス幅を基準パルス幅よりも狭く設定し、
該パルス幅を該基準パルス幅よりも狭く設定した状態で該光変調器の該光出力パワーが最大となるように該位相差を調整することを特徴とする、請求の範囲第16項に記載の光変調器の駆動方法。
【請求項19】
該パルス幅を発振器によって周期的に変化させ、
該発振器の出力に基づいて該パルス幅の可変周期に同期して特定のパルス幅での該光変調器の該光出力パワーが最小又は最大となるように該位相差を調整することを特徴とする、請求の範囲第14項に記載の光変調器の駆動方法。
【請求項20】
該パルス幅が基準パルス幅よりも広いときの該光出力パワーが最小となるように該位相差を調整することを特徴とする、請求の範囲第19項に記載の駆動方法。
【請求項21】
該パルス幅が基準パルス幅よりも狭いときの該光出力パワーが最大となるように該位相差を調整することを特徴とする、請求の範囲第19項に記載の光変調器の駆動方法。

【国際公開番号】WO2004/056016
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【発行日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560564(P2004−560564)
【国際出願番号】PCT/JP2002/013123
【国際出願日】平成14年12月16日(2002.12.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】