説明

光学ユニット

【課題】光源の光で走査する新たな光学ユニットに関する技術を提供する。
【解決手段】光学ユニットは、光源29から出射した光が後方から入射し照射ビームとして前方へ出射する回転レンズ26を備える。回転レンズ26は、その周期的な動きにより、前方を照射ビームで走査することで所定の照射領域を形成するように構成されている。回転レンズ26は、駆動部と接続される回転軸Rを中心に回転するとともに、光源から出射した光が通過する際に屈折する方向が周期的に変化するように構成されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ユニットに関し、特に車両用灯具に用いられる光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の発光素子で構成された光源から出射した光により車両前方を照射する車両用前照灯が知られている。例えば、複数の発光素子をマトリックス状に配置した光源の前方に集光レンズを配置し、光源と集光レンズとの間に配置された絞りにより光源から出射した光の一部を遮蔽することで所望の配光パターンを形成する車両用前照灯が考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−266620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す車両用前照灯のように、車両前方の広い範囲を照射するためには非常に多くの発光素子を必要とする。そのため、装置のコストが高くなるとともに、装置が大型化することによるレイアウトの制約も多くなる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光源の光で走査する新たな光学ユニットに関する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の光学ユニットは、光源から出射した光が後方から入射し照射ビームとして前方へ出射するレンズを備える。レンズは、その周期的な動きにより、前方を照射ビームで走査することで所定の照射領域を形成するように構成されている。
【0007】
この態様によると、レンズの周期的な動きにより前方を照射ビームで走査することで所定の照射領域を形成できる。そのため、光源から出射したそのままの光で所定の照射領域を形成する場合と比較して光源を小型化できる。
【0008】
レンズは、駆動部と接続される回転軸を中心に回転するとともに、光源から出射した光が通過する際に屈折する方向が周期的に変化するように構成されていてもよい。これにより、光源の光を用いた走査を簡便な構成で実現できる。
【0009】
光源を更に備えてもよい。光源は、レンズの動きの周期における一部の位相範囲において光度が変化するように構成されていてもよい。これにより、所定の照射領域の一部の明るさを変えることができる。
【0010】
複数の発光素子を有する光源を更に備えてもよい。複数の発光素子は、発光色の異なる複数種の発光素子を含んでもよい。これにより、同一色の発光素子のみでは実現できない色の光で前方を走査できる。
【0011】
複数の発光素子は、赤色発光素子、緑色発光素子および青色発光素子を含んでもよい。これにより、白色の光で前方を走査できる。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光源の光で走査する新たな光学ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態に係る車両用前照灯の水平断面図である。
【図2】図1に示す車両用前照灯の要部を示す正面図である。
【図3】本実施の形態に係る光学ユニットを含むランプユニットの構成を模式的に示した斜視図である。
【図4】図4(a)および図4(b)は、本実施の形態に係るランプユニットにおいて回転レンズの回転角に応じたブレードの様子を示す断面図である。
【図5】図4(a)および図4(b)の状態における投影イメージを模式的に示した図である。
【図6】図6(a)〜図6(f)は、回転レンズの回転角度が異なる各位置での投影イメージ、および、各投影イメージを合成して形成されたハイビーム用配光パターンを示した図である。
【図7】複数種の発光素子を有する光源により前方を走査する様子を説明するための模式図である。
【図8】第2の実施の形態に係る車両用前照灯の水平断面図である。
【図9】図8に示す車両用前照灯の要部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
本発明の光学ユニットは、種々の車両用灯具に用いることができる。以下では、車両用灯具のうち車両用前照灯に本発明の光学ユニットを適用した場合について説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る車両用前照灯の水平断面図である。図2は、図1に示す車両用前照灯の要部を示す正面図である。車両用前照灯10は、自動車の前端部の右側に搭載される右側前照灯であり、左側に搭載される前照灯と左右対称である以外は同じ構造である。そのため、以下では、右側の車両用前照灯10について詳述し、左側の車両用前照灯については説明を省略する。
【0018】
図1に示すように、車両用前照灯10は、前方に向かって開口した凹部を有するランプボディ12を備えている。ランプボディ12は、その前面開口が透明な前面カバー14によって覆われて灯室16が形成されている。灯室16は、2つのランプユニット18,20が車幅方向に並んで配置された状態で収容される空間として機能する。
【0019】
これらランプユニットのうち内側、すなわち、右側の車両用前照灯10にあっては図1に示す下側に配置されたランプユニット20は、レンズを備えたランプユニットであり、配光可変ハイビームを照射するように構成されている。一方、これらランプユニットのうち外側、すなわち、右側の車両用前照灯10にあっては図1に示す上側に配置されたランプユニット18は、ロービームを照射するように構成されている。
【0020】
ロービーム用のランプユニット18は、リフレクタ22とリフレクタ22に支持された光源バルブ(白熱バルブ)24と、不図示のシェードとを有する。リフレクタ22は、既知の手段、例えば、エイミングスクリュー23とナットを使用した手段によりランプボディ12に対して傾動自在に支持されている。
【0021】
ランプユニット20は、図1に示すように、回転レンズ26と、複数のLED28を有する光源29と、回転レンズ26の前方に配置された投影レンズとしての凸レンズ30と、を備える。なお、LED28の代わりにEL素子やLD素子などの半導体発光素子を光源として用いることも可能である。特に後述する配光パターンの一部を遮光するための制御には、点消灯が短時間に精度よく行える光源が好ましい。凸レンズ30の形状は、要求される配光パターンや照度分布などの配光特性に応じて適宜選択すればよいが、非球面レンズや自由曲面レンズが用いられる。本実施の形態では、凸レンズ30として非球面レンズを用いている。
【0022】
光源29は、支持プレート13によって支持されている。支持プレート13は、コーナー部のうち3か所がエイミングスクリュー15によってランプボディ12に固定されている。支持プレート13の光源29が設けられている面と反対側の面には、放熱フィン17を介して放熱ファン19が取り付けられている。これにより、光源29は、支持プレート13および放熱フィン17を介して放熱ファン19によって冷却され、温度の上昇が抑制されている。
【0023】
回転レンズ26は、不図示のモータなどの駆動源により回転軸Rを中心に一方向に回転する。また、回転レンズ26は、LED28から出射した光を回転しながら屈折し、所望の配光パターンを形成するように構成された入射面および出射面を備えている。本実施の形態では、回転レンズ26が光学ユニットを構成している。
【0024】
図3は、本実施の形態に係る光学ユニットを含むランプユニット20の構成を模式的に示した斜視図である。
【0025】
回転レンズ26は、光源の光が透過し、屈折面として機能する透明な円板状の部材である。図3に示す回転レンズ26は、形状の同じ2枚の扇形のブレード26aが筒状の回転部26bの周囲に設けられている。回転レンズ26の回転軸Rは、光軸Axに対して平行になっており、光軸AxとLED28とを含む平面内に設けられている。換言すると、回転軸Rは、回転によって左右方向に走査するLED28の光(照射ビーム)の走査平面に略平行に設けられている。これにより、光学ユニットの薄型化が図られる。ここで、走査平面とは、例えば、走査光であるLED28の光の軌跡を連続的につなげることで形成される扇形の平面ととらえることができる。
【0026】
また、回転レンズ26のブレード26aは、その厚みが、回転軸Rを中心とする周方向に向かうにつれて徐々に減少または増加するように構成されている。換言すると、ブレード26aは、回転軸Rを含む平面による断面形状が、回転軸Rを中心とする周方向に向かうにつれて徐々に変化するように構成されている。これにより、LED28の光を用いた走査が可能となる。この点について更に詳述する。
【0027】
図4(a)および図4(b)は、本実施の形態に係るランプユニットにおいて回転レンズ26の回転角に応じたブレードの様子を示す断面図である。図4(a)は、図3に示すブレード26aの位置P1が光源の正面にある場合の屈折の様子を示しており、図4(b)は、図3に示すブレード26aの位置P2が光源の正面にある場合の屈折の様子を示している。なお、図中の矢印Yは車両の幅方向を示している。
【0028】
ブレード26aの入射面26a1は、ほぼ平坦な面で構成されている。一方、ブレード26aの出射面26a2は、外周部から回転部に向かって斜めまたは曲面で構成されている。より詳述すると、ブレード26aは、回転軸Rを中心とする周方向の位置が変化するにつれて、出射面26a2の径方向Dと光軸Axとが成す角θが変化するように捩られた形状を有している。これにより、光源29の光を用いた走査が可能となる。この点について更に詳述する。
【0029】
図5は、図4(a)および図4(b)の状態における投影イメージを模式的に示した図である。光軸Ax上にあるLED28から出射した光は、ブレード26aの入射面26a1および出射面26a2で屈折され、照射ビームとして前方へ出射される。ブレード26aの位相が図4(a)に示す位置の場合、LED28の虚像の位置は、光軸Axから図4(a)の下方にずれた位置である。一方、ブレード26aの位相が図4(b)に示す位置の場合、LED28の虚像の位置は、光軸Axから図4(b)の上方にずれた位置である。
【0030】
したがって、LED28の虚像の位置は、ブレード26aの回転によって移動することになる。つまり、見かけ上、LED28が車幅方向Yに移動することになる。そのため、照射ビームによって形成される投影イメージIも車幅方向Yに移動する。このように、前方が照射ビームで走査されることで、ハイビーム用配光パターンPHが形成される。
【0031】
なお、本実施の形態に係る回転レンズ26の2つのブレード26aは、互いに同じ形状であるが、その境界では出射面が不連続になっている。つまり、回転レンズの26の回転により、LED28の正面を一方のブレード26aの位置P1の部分が通過した直後に、他方のブレード26aの位置P2の部分がLED28の正面を通過する。そのため、回転レンズ26が一方向に回転している場合には、前述の照射ビームでの走査も一方向に行われることになる。
【0032】
本実施の形態に係る回転レンズ26は、180度回転することで、LED28の光によって前方を一方向(水平方向)に1回走査できるように構成されている。換言すると、1枚のブレード26aがLED28の前を通過することで、車両前方の所望の領域がLED28の光によって1回走査されることになる。なお、ブレード26aの数や形状、回転レンズ26の回転速度は、必要とされる配光パターンの特性や走査される像のちらつきを考慮して実験やシミュレーションの結果に基づいて適宜設定される。また、種々の配光制御に応じて回転速度を変えられる駆動部としてモータが好ましい。これにより、走査するタイミングを簡便に変えることができる。このようなモータとしては、モータ自身から回転タイミング情報を得られるものが好ましい。具体的には、DCブラシレスモータが挙げられる。DCブラシレスモータを用いた場合、モータ自身から回転タイミング情報を得られるため、エンコーダなどの機器を省略することができる。
【0033】
このように、本実施の形態に係る回転レンズ26は、ブレード26aの形状や回転速度を工夫することで、LED28の光を用いて車両前方を左右方向に走査することができる。
【0034】
図6(a)〜図6(f)は、回転レンズの回転角度が異なる各位置での投影イメージ、および、各投影イメージを合成して形成されたハイビーム用配光パターンを示した図である。図6(a)は回転レンズの回転角度が0度の場合、図6(b)は回転レンズの回転角度が45度の場合、図6(c)は回転レンズの回転角度が90度の場合、図6(d)は回転レンズの回転角度が135度の場合、図6(e)は回転レンズの回転角度が180度の場合の投影イメージを示している。図6(f)は、照射ビームで走査することで形成されたハイビーム用配光パターンを示している。図の縦軸および横軸の単位は度(°)であり、照射範囲および照射位置を示している。図6(a)〜図6(e)に示すように、回転レンズ26の回転によって投影イメージは水平方向に移動する。
【0035】
図5(f)に示すように、本実施の形態に係る車両用前照灯10は、LED28の光を回転レンズ26で屈折させ、屈折した光で前方を走査することで実質的に矩形のハイビーム用配光パターンを形成することができる。このように、回転レンズ26の一方向の回転により所望の配光パターンを形成することができるため、共振ミラーのような特殊な機構による駆動が必要なく、また、共振ミラーのように反射面の大きさに対する制約が少ない。なお、本実施の形態に係る回転レンズ26は、凸レンズ30の直径とほぼ同じ直径であり、ブレード26aの面積もそれに応じて大きくすることが可能である。
【0036】
また、本実施の形態に係る光学ユニットを備えた車両用前照灯10は、LED28の点消灯のタイミングや発光度の変化を回転レンズ26の回転と同期させることで、任意の領域が遮光されたハイビーム用配光パターンを形成することができる。また、回転レンズ26の回転に同期させてLED28の発光光度を変化(点消灯)させてハイビーム用配光パターンを形成する場合、光度変化の位相をずらすことで配光パターン自体をスイブルするような制御も可能である。
【0037】
上述のように、本実施の形態に係る車両用前照灯は、LEDの光を走査することで配光パターンを形成するとともに、発光光度の変化を制御することで配光パターンの一部に任意に遮光部を形成することができる。そのため、複数のLEDの一部を消灯して遮光部を形成する場合と比較して、少ない数のLEDで所望の領域を精度よく遮光することができる。また、車両用前照灯10は、複数の遮光部を形成することができるため、前方に複数の車両が存在する場合であっても、個々の車両に対応する領域を遮光することが可能となる。
【0038】
また、車両用前照灯10は、基本となる配光パターンを動かさずに遮光制御することが可能なため、遮光制御時にドライバに与える違和感を低減できる。また、ランプユニット20を動かさずに配光パターンをスイブルすることができるため、ランプユニット20の機構を簡略化することができる。そのため、車両用前照灯10は、配光可変制御のための駆動部としては回転レンズ26の回転に必要なモータを有していればよく、構成の簡略化と低コスト化、小型化が図られている。
【0039】
(光源の構成)
前述の光源29は、複数のLED28で構成されているが、所望の照射性能を満たすことができれば一つのLED28で構成されていてもよい。また、光源は、発光素子と蛍光体とを組み合わせた白色LEDでもよい。また、光源は、発光色の異なる複数種の発光素子を有してもよい。これにより、同一色の発光素子のみでは実現できない色の光で前方を走査できる。また、光源は、複数の発光素子として、赤色発光素子(R素子)、緑色発光素子(G素子)および青色発光素子(B素子)を含んでもよい。これにより、白色の光で前方を走査できる。また、蛍光体を用いずに白色光を実現できるため、光源の光を照明に効率よく利用することができる。なお、白色光を実現するためには、青色発光素子と黄色発光素子の組合せ、または、シアン発光素子とマゼンタ発光素子との組合せであってもよい。
【0040】
図7は、複数種の発光素子を有する光源により前方を走査する様子を説明するための模式図である。図7の上段に示すように、光源29が、R素子、G素子およびB素子をライン状に複数組備えている場合、回転レンズ26の回転角度が0度における投影イメージIは、照射領域Dの左部に位置している。そして、この投影イメージは、赤、緑、青の順で異なる色で構成されている。しかしながら、このような投影イメージが図7の右方向へ移動されることで、少なくとも照射領域Dの中央部D1が白色光で照射される。
【0041】
ライン状(アレイ状)に配置されたR素子、G素子およびB素子を備える光源の場合、図7に示すように、回転レンズの回転によって2素子分だけ投影イメージIが移動するように回転レンズ26の形状が設定されていれば白色光を実現できる。このようなわずかな移動であれば、回転レンズの入射面や出射面における光の屈折角度の変化は小さくてもよい。そのため、回転レンズの厚みを薄くでき、製造や加工も容易となる。また、複数種の発光素子を有する光源の場合、照射領域Dの両端部D2は、中央部D1と異なる色で照射される。このように、光源29が、複数種の発光素子をライン状に備えている場合、照射領域を照射する光の色を部分的に変化させることができる。
【0042】
以上、本実施の形態の車両用前照灯10が備える光学ユニットの機能をまとめると以下のようになる。
【0043】
本実施の形態に係る光学ユニットは、光源29から出射した光が後方から入射し照射ビームとして前方へ出射する回転レンズ26を備える。回転レンズ26は、その回転動作により、前方を照射ビームで走査することで所定の照射領域を形成するように構成されている。これにより、回転レンズ26の周期的な動きにより前方を照射ビームで走査することで所定の照射領域を形成できる。そのため、光源から出射したそのままの光で所定の照射領域を形成する場合と比較して光源を小型化できる。
【0044】
また、回転レンズ26は、モータなどの駆動部と接続される回転軸Rを中心に回転するとともに、光源29から出射した光が通過する際に屈折する方向が周期的に変化するように構成されている。これにより、光源29の光を用いた走査を簡便な構成で実現できる。
【0045】
また、光源29は、回転レンズ26の動きの周期における一部の位相範囲において光度が変化するように構成されていてもよい。これにより、所定の照射領域の一部の明るさを変えることができる。特に、光源を一部の位相範囲において消灯することで、照射領域の一部の領域が遮光された配光パターンの形成が可能となる。
【0046】
また、光学ユニットは、回転レンズ26と、複数の発光素子がライン状(アレイ状)に配列された面積(幅)の広い光源29とを組み合わせることで、照射ビームでのわずかな走査によって所望の照射領域を照射できる。
【0047】
また、回転レンズ26の回転軸Rは光軸Axと平行なため、左右のランプユニット20における回転レンズ26の配置を同じにできる。
【0048】
また、複数のLEDチップが配列された光源29から出射された光を、そのまま照射ビームとして前方へ出射した場合、チップとチップの隙間が暗い部分として投影イメージに形成されてしまう。その結果、照射領域に部分的な明るさのムラが生じる。しかしながら、本実施の形態に係る光学ユニットは、回転レンズ26によって前方を照射ビームで走査できるため、このような明るさのムラが低減される。
【0049】
(第2の実施の形態)
図8は、第2の実施の形態に係る車両用前照灯の水平断面図である。図9は、図8に示す車両用前照灯の要部を示す正面図である。
【0050】
図8に示すように、車両用前照灯110は、前方に向かって開口した凹部を有するランプボディ112を備えている。ランプボディ112は、その前面開口が透明な前面カバー114によって覆われて灯室116が形成されている。灯室116は、2つの光源129a,129bを備えたランプユニット120が収容される空間として機能する。
【0051】
ランプユニット120は、図8に示すように、回転レンズ126と、複数のLED128aを有する光源129aおよび複数のLED128bを有する光源129bと、回転レンズ126の前方に配置された、投影レンズとしての凸レンズ122,124と、を備え、配光可変ハイビームを照射するように構成されている。凸レンズ122,124の形状は、要求される配光パターンや照度分布などの配光特性に応じて適宜選択すればよいが、非球面レンズや自由曲面レンズが用いられる。
【0052】
光源129a,129bは、支持プレート113によって支持されている。支持プレート113は、コーナー部のうち3か所がエイミングスクリュー115によってランプボディ112に固定されている。支持プレート113の光源129a,129bが設けられている面と反対側の面には、放熱フィン117を介して放熱ファン119が取り付けられている。これにより、光源129a,129bは、支持プレート113および放熱フィン117を介して放熱ファン119によって冷却され、温度の上昇が抑制されている。
【0053】
回転レンズ126は、不図示のモータなどの駆動源により回転軸Rを中心に一方向に回転する。また、回転レンズ126は、LED128a,128bから出射した光を回転しながら屈折し、所望の配光パターンを形成するように構成された入射面および出射面を備えている。なお、回転レンズ126による光の屈折は、第1の実施の形態に係る回転レンズ26と同様の作用であるため、説明は省略する。
【0054】
本実施の形態に係る光学ユニット118は、回転レンズ26と、発光素子としてのLEDを有する複数の光源129a,129bと、を備えている。複数の光源のうち一方の光源129aが有する複数のLED128aは、集光用のLEDであり、ハイビーム用配光パターンに適した進行方向正面への強い集光を実現するように配置されている。複数の光源のうち他方の光源129bが有する複数のLED128bは、拡散用のLEDであり、ハイビーム用配光パターンに適した広い範囲を照射する拡散光を実現するように配置されている。なお、各光源が有するLEDは必ずしも複数である必要はなく、十分な明るさを実現できればLEDは1つでもよい。また、常に全てのLEDを点灯させる必要はなく、車両の走行状況や前方の状態に応じて一部のLEDのみを点灯させてもよい。
【0055】
光源129aおよび光源129bは、それぞれ出射した光が、回転レンズ126の各ブレード126aによって異なる位置で屈折されるように配置されている。このように、複数の光源129a,129bを、それぞれの出射した光が回転レンズ126のブレード126aの異なる位置で屈折するように配置することにより、複数の配光パターンを形成できるとともに、それらの配光パターンを合成して新たな配光パターンを形成することも可能なため、より理想的な配光パターンの設計が容易となる。
【0056】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0057】
例えば、車両用前照灯は、回転レンズを回転させずに任意の角度で停止させることで、最大光度が非常に高いスポット光を所望の位置に形成することができる。これにより、特定の障害物(人を含む)を明るいスポット光で照射することで注意喚起を促すことが可能となる。
【0058】
また、上述の実施の形態で用いられる非球面レンズは、必ずしも歪んだ像を補正するものである必要はなく、歪んだ像を補正しないものであってもよい。
【0059】
また、上述の各実施の形態では、光学ユニットを車両用灯具に適用した場合について説明したが、必ずしもこの分野への適用に限らない。例えば、種々の配光パターンを切り替えて照明を行う舞台や娯楽施設における照明器具に適用してもよい。従来、このような分野の照明器具は、照明方向を変えるための大掛かりな駆動機構が必要あったが、本実施の形態に係る光学ユニットであれば、回転レンズの回転と光源の点消灯で様々な配光パターンを形成できるため、大掛かりな駆動機構が不要であり、小型化が可能である。
【0060】
また、上述の各実施の形態に係る光学ユニットでは、回転レンズに対して、前方を照射ビームで走査する方向が車両の幅方向となる位置に光源が配置されている。しかしながら、回転レンズに対して、前方を照射ビームで走査する方向が車両の上下方向となる位置に光源を配置してもよい。これにより、光源の光による上下方向への走査も可能となる。
【符号の説明】
【0061】
10 車両用前照灯、 20 ランプユニット、 26 回転レンズ、 26a ブレード、 26a1 入射面、 26a2 出射面、 26b 回転部、 28 LED、 29 光源、 30 凸レンズ、 118 光学ユニット、 119 放熱ファン、 120 ランプユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射した光が後方から入射し照射ビームとして前方へ出射するレンズを備え、
前記レンズは、その周期的な動きにより、前方を前記照射ビームで走査することで所定の照射領域を形成するように構成されていることを特徴とする光学ユニット。
【請求項2】
前記レンズは、駆動部と接続される回転軸を中心に回転するとともに、光源から出射した光が通過する際に屈折する方向が周期的に変化するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学ユニット。
【請求項3】
光源を更に備え、
前記光源は、レンズの動きの周期における一部の位相範囲において光度が変化するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光学ユニット。
【請求項4】
複数の発光素子を有する光源を更に備え、
前記複数の発光素子は、発光色の異なる複数種の発光素子を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の光学ユニット。
【請求項5】
前記複数の発光素子は、赤色発光素子、緑色発光素子および青色発光素子を含むことを特徴とする請求項4に記載の光学ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−256494(P2012−256494A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128419(P2011−128419)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】