六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法及び六方晶系窒化ホウ素焼結体
【課題】酸素存在下で焼結が可能であって、焼結体の相対密度が高く、機械的強度の優れた六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法を提供する。
【解決手段】六方晶系窒化ホウ素とアルミノケイ酸塩とをあらかじめ混合粉砕して焼結用混合粉とし(混合粉砕工程)、該焼結用混合粉を圧力成形してプレ成形体とし(プレ成形工程)、プレ成形体を酸素が存在する雰囲気下において焼結する(焼結工程)。六方晶系窒化ホウ素からなる粉体粒子は、表面のみならず内部にも酸素が含まれている。
【解決手段】六方晶系窒化ホウ素とアルミノケイ酸塩とをあらかじめ混合粉砕して焼結用混合粉とし(混合粉砕工程)、該焼結用混合粉を圧力成形してプレ成形体とし(プレ成形工程)、プレ成形体を酸素が存在する雰囲気下において焼結する(焼結工程)。六方晶系窒化ホウ素からなる粉体粒子は、表面のみならず内部にも酸素が含まれている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素の存在下で無加圧で焼結することが可能な、六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法及び六方晶系窒化ホウ素焼結体に関する。
【背景技術】
【0002】
六方晶系窒化ホウ素(h−BN)は、周期表におけるIIIb属の元素であるホウ素(B)と、Vb属の元素である窒素(N)から構成されている。これらの構成元素は、IVb属の炭素(C)の直前及び直後に位置しており、黒鉛に類似の結晶構造を有する。例えば、六方晶系窒化ホウ素のc面内は強固なπ結合で結びついている一方、c軸方向は結合力の弱いファンデル・ワールス結合で結びついているため、板状結晶で劈開面を有している。また、黒鉛と同様、高融点であると同時に、潤滑性、離形性、機械加工性及び耐食性に優れた特性を有している。その一方、六方晶系窒化ホウ素は黒鉛と異なり、電気絶縁性が高く、約1000℃まで耐酸化性を有する。こうした特長を生かして、金属溶融るつぼ、潤滑材、高周波電気絶縁材、製鋼用ノズル、保護管、セッター等に利用されている。
【0003】
しかし、六方晶系窒化ホウ素は、高融点で且つ非酸化物であるため、焼成によって焼き固めることが非常に難しい(難焼成性)という問題点があった。また、バインダーの役割を担う焼結用助剤を用いて焼結させようとしても、濡れ性が悪いため溶融した焼結剤が六方晶系窒化ホウ素表面を濡らさず、焼結用助剤としての役割を充分に発揮することができないという問題もあった。さらには、高温下において酸素の存在下では、六方晶系窒化ホウ素が酸化ホウ素(B2O3)に変化するという問題もあった。
【0004】
こうした問題点を解決するため、次のような方法で六方晶系窒化ホウ素の焼結が行われている。すなわち、真空中やアルゴン雰囲気中や窒素雰囲気中(一般には窒素雰囲気中)で、ホットプレス装置等を用いて1500〜2300℃という高温下、10MPaを超える圧力で焼結させる方法である。
【0005】
しかし、この方法は、次のような問題があり、製造が困難で且つ製造コストが高いものとなっていた。
(1)真空中やアルゴン雰囲気中や窒素雰囲気中という雰囲気下で焼成を行なう必要があるため、炉内の空気を毎回排気して真空状態としたり、真空にした後さらにアルゴンや窒素を充填し、フローさせたりしなければならない。
(2)加圧状態で焼成するため、炉内にホットプレス機構を備える必要があり、気密性を保ちつつ油圧等の駆動によりプレスラムや型・パンチ等で試料を加圧する構造とする必要がある。
(3)しかもこれらの装置が高温まで耐える構造とする必要があるために、高温耐久性のある材料を用いるのみならず、加熱に多大なエネルギー(一般には電力)が必要であると同時に、さらに炉の保護のために充分な冷却機構と膨大な量の冷却水も必要である。
(4)ホットプレスで焼成するという制約から、大型品や複雑な形状の物品の作製が極めて困難である。また、このように大変過酷な製造条件であるため環境負荷が非常に大きい。
【0006】
従って、六方晶系窒化ホウ素の焼結体の製造のためには、製造装置もランニングコストも非常に大きなものとなり、製品自身も非常に高価なものとならざるを得なかった。このため、上記のようにユニークな特性を有するにもかかわらず、必然的にその用途も極めて限られたものとなっていた。さらに、高温で焼成しなければならないことから、環境負荷が非常に大きいため、環境負荷低減に向けての対策も講じる必要があった。
【0007】
こうしたホットプレスによる加圧焼成法の問題点を解決し、製造コストを低下させるとともに、大型品や複雑形状品の作製の製造を容易にするために、様々な常圧焼成法が提案されている(特許文献1〜6参照)。
【0008】
例えば、特許文献1では、SiO2を窒化ホウ素の焼結用助剤として添加した場合に、還元雰囲気中でSiO2が還元されてSiOとして揮散するという欠点を改良するために、これらの系にさらにB2O3を添加することにより問題解決を図っている。
【0009】
また、特許文献2では、窒化ホウ素に結合剤として無水硼酸(B2O3)や窒化アルミニウム(AlN)を用いる際、アルミニウムと珪素の混合粉末、またはこれらの合金粉末等を窒化ホウ素と混合して、窒素気流中又は窒素を主として含む微酸化性雰囲気中で焼成する方法が記載されている。この方法によれば、高温電気特性の低下や溶融物に対する耐食性の劣化が防止され、さらには、AlNを用いた場合の成形体の機械的強度の低下や溶融物に対する耐食性の不足といった問題点が解決できると述べられている。
【0010】
さらに特許文献3では、焼成前の成形段階で、可能な限り高密度な成形体を作り、低膨張率のモールド内にて不活性雰囲気中で焼成するという、六方晶系窒化ホウ素の焼結方法が記載されている。この方法によれば、無加圧で焼成する場合にサンプルが焼成中に膨張するために緻密化しないという欠点を解決することができると記載されている
【0011】
また、特許文献4では、相手材(焼結用助剤や結合剤)を多量に添加することにより、六方晶系窒化ホウ素の焼成性を向上させ、機械的強度の向上を図っている。さらには、原料粒度、焼結用助剤の種類と量、焼成温度を制御することによって、窒化ホウ素の高温安定性を改善し、実用に耐える特性を有するものとすることが図られている。
【0012】
さらに、特許文献5では、アルカリ土類金属硼酸塩を適量含有させ、非酸化性雰囲気において常圧で焼成することにより、大型形状品や複雑形状品を安価に製造することが図られている。
【0013】
また、特許文献6では、窒化ホウ素を主体とする焼成体中に炭素及び炭化ホウ素を分散含有させるということにより、常圧焼成法による焼成体が高温度で強度低下特に耐熱衝撃性が低下するという問題の解決を図っている。
【0014】
しかし、上記特許文献1〜6の六方晶系窒化ホウ素の焼成方法では、いずれも、酸素のない雰囲気下又は酸素の少ない雰囲気で、六方晶系窒化ホウ素を焼成しなければならなため、その雰囲気を調整するための真空装置やガス置換のための装置が必要となり、製造設備が大がかりで複雑で且つ高価なものとなっていた。さらには、焼成を行なうたびに非酸化性雰囲気に炉内をガス置換しなければならず、常圧焼成であってもランニングコストが高価となり、生産効率も良くなく、製品の価格が高価となり、且つ環境負荷の低減も実現できなかった。
【0015】
こうした問題を解決するために、本発明者らの一部は、既に、酸素のある雰囲気下でも焼成可能な六方晶系窒化ホウ素の焼成方法を開発している(特許文献7)。この方法は、アルミノケイ酸塩を焼結用助剤とし、六方晶系窒化ホウ素の酸素存在下における焼成過程で、六方晶系窒化ホウ素の表面のみを酸化して酸化ホウ素層を形成させ、その酸化ホウ素層を介して焼成を行うものである。この方法によれば、六方晶系窒化ホウ素を大気中で焼成可能となる。
【0016】
【特許文献1】特公昭47−38047号公報
【特許文献2】特公昭48−43648号公報
【特許文献3】特開昭61−132563号公報
【特許文献4】特開昭63 −303862号公報
【特許文献5】特許第2614874号公報
【特許文献6】特開2001−14477号公報
【特許文献7】特開2007−70197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、上記特許文献7の方法によって得られる六方晶系窒化ホウ素の焼結方法では、空気存在下において焼結体を得ることはできるものの、さらなる高密度化や機械的強度の高強度化が望まれていた。
【0018】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、酸素存在下で焼結が可能であって、焼結体の相対密度が高く、機械的強度の優れた六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上記課題を解決するために、特許文献7に記載されている、酸素のある雰囲気下でも焼成可能な六方晶系窒化ホウ素の焼成方法について、さらに詳しい検討を行なった。
【0020】
大気中で六方晶系窒化ホウ素の粉体を焼成した場合、六方晶系窒化ホウ素の粒子表面に酸化ホウ素(B2O3)の薄い被膜が形成される。この酸化ホウ素被膜は、焼結助剤として用いられるアルミノケイ酸塩の溶融物に濡れ易いため、酸化ホウ素被膜上に溶解したアルミノケイ酸塩が濡れて広がり、層が形成される。こうして形成されたアルミノケイ酸塩からなる層によって、六方晶系窒化ホウ素の粒子内部までの酸素の拡散を防止するというのが、上記特許文献7に記載された方法の原理である。
【0021】
しかしながら、本発明者らは、さらに鋭意研究を行なった結果、単に六方晶系窒化ホウ素の粒子表面に酸化ホウ素(B2O3)の薄い被膜が形成されるだけでは、濡れ性を改善するには不十分であることを見出した。この方法では、焼成前に六方晶系窒化ホウ素とアルミノケイ酸塩とを混合して成形しておく必要があり、焼成時にはその表面が酸化されて酸化ホウ素(B2O3)の薄い被膜が形成され、溶融したアルミノケイ酸塩が濡れて表面にコーティングされる。しかしながら、成形された六方晶系窒化ホウ素の内部は、酸素の供給が不十分となるため、アルミノケイ酸塩との濡れ性は改善されず、内部にまでアルミノケイ酸塩が侵入することが困難となるのである。
【0022】
こうした問題は、六方晶系窒化ホウ素に酸化ホウ素(B2O3)を数%含有させたり、CaOを添加したり、CIP圧力を400MPaまで高めるなどして、ある程度は改善させることができるが(特許文献7参照)、限界があった。
【0023】
そして、さらに鋭意研究を進めた結果、六方晶系窒化ホウ素に酸化ホウ素(B2O3)を混合するのではなく、各粒子の内部にまで酸素が含まれている六方晶系窒化ホウ素粉体粒子を用いることにより、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0024】
すなわち、本発明の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法は、六方晶系窒化ホウ素からなる粉体を、酸素が存在する雰囲気下においてアルミノケイ酸塩を焼結用助剤として焼結する窒化ホウ素焼結体の製造方法において、前記六方晶系窒化ホウ素からなる粉体の各粒子は、表面のみならず内部にも酸素が含まれていることを特徴とする。
【0025】
本発明の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法によって、相対密度が高く、機械的強度の優れた六方晶系窒化ホウ素焼結体が製造可能となるのは、次のような理由によるものと考えられる。すなわち、まず焼成に先立って六方晶系窒化ホウ素とアルミノケイ酸塩とを混合して成形するとき、六方晶系窒化ホウ素はさらに細かい粒子となる。しかしながら、六方晶系窒化ホウ素からなる粉体粒子は、表面のみならず内部にも酸素が含まれているため、細かくされた六方晶系窒化ホウ素粒子の新たに現れた断面部分にも、酸化ホウ素(B2O3)が存在することとなる。このため、焼成時において、溶解したアルミノケイ酸塩は成形体表面のみならず、内部においても濡れやすくて、浸透し易くなる。このため、焼結体の相対密度が高くなり、機械的強度も優れたものとなるのである。
【0026】
なお、上記特許文献7の段落番号0017では、「六方晶系窒化ホウ素(h−BN)の酸素含有量は、1質量%以下のものでも使用することができるが、ある程度酸化されたもの、例えば酸素含有量が数%のものがより好ましい。」と記載されているが、このことと、本発明の構成要件である「表面のみならず内部にも酸素が含まれていること」ということは、意味が異なり、相対密度や機械的強度に対する効果にも相違がある。すなわち、特許文献7の段落番号0017では、1つの六方晶系窒化ホウ素粒子において、その内部にまで酸素が存在しているか否かについては、何も述べられていない。さらに、それらの違いによる効果の違いを確認すべく、発明者らは、六方晶系窒化ホウ素に酸化ホウ素(B2O3)を10質量%程度混合した原料を用い、アルミノケイ酸塩を混合して焼結させた場合と比較を行なった。その結果、表面のみならず内部にも酸素が含まれているh−BNを用いた場合は、六方晶系窒化ホウ素に酸化ホウ素(B2O3)を10質量%程度混合した原料を用いた場合よりも、相対密度が高く、機械的強度も優れたものとなることを確認している。
【0027】
六方晶系窒化ホウ素焼成体の製造に際しては、遊星ボールミル等を用いて窒化ホウ素の粉末とアルミノケイ酸塩とをよく混合し、これを一定の形状に成形して焼成に付することが好ましい。アルミノケイ酸塩の配合割合は窒化ホウ素粉末に対して10〜70容積%が好ましく、さらに好ましいのは30〜60容積%であり、最も好ましいのは35〜65容積%である。アルミノケイ酸塩が10容積%より少ないと六方晶系窒化ホウ素の表面全体にいきわたらず、六方晶系窒化ホウ素表面を完全に被覆できない。このため、六方晶系窒化ホウ素の酸化が始まり、その結果酸化して生成した酸化ホウ素が分解・消失するときに気泡が発生し、高密度化を阻害するという問題が生じる。窒化ホウ素が微細であればアルミノケイ酸塩の配合割合は相対的に増す必要がある。一方、アルミノケイ酸塩が70容積%より多いと窒化ホウ素の特徴が発揮できなくなる。
【0028】
六方晶系窒化ホウ素の内部に酸素が含まれているか否かを調べる方法としては、オージェ電子分光分析におけるイオンミリング法を用いた深さ方向の測定によって、確認することができる。発明者らは、この方法により、SiO2換算で300nmの深さにおいて酸素の存在が確認された六方晶系窒化ホウ素を用いて焼結体を製造することにより、焼結体の相対密度が高くなり、機械的強度も優れたものとなることを確認している。さらに好ましいのは600nmの深さにおいて酸素の存在が確認される六方晶系窒化ホウ素であり、最も好ましいのは900nmの深さにおいて酸素の存在が確認される六方晶系窒化ホウ素である。
【0029】
また、六方晶系窒化ホウ素の酸素含有量は10質量%以上であることが好ましい。こうであれば、アルミノケイ酸塩の六方晶系窒化ホウ素に対する濡れ性が良好となる。
【0030】
さらに、焼結用助剤として用いるアルミノケイ酸塩は、加熱溶融によりガラス化されていることが好ましい。こうであれば、ガラス化されていないアルミノケイ酸塩と比較して、より低い温度でアルミノケイ酸塩が溶融するため、焼結温度を低くすることができる。また、アルミノケイ酸塩に含まれている揮発成分をあらかじめ揮発させておくことができるため、焼成時における発泡を防止でき、ひいては相対密度を高めることができる。
【0031】
また、アルミノケイ酸塩とは、ケイ酸塩中にあるケイ素原子の一部をアルミニウム原子に置き換えた構造を持つ物質を言う。
【0032】
本発明の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法では、まず混合粉砕工程として、表面のみならず内部にも酸素が含まれている六方晶系窒化ホウ素とアルミノケイ酸塩とをあらかじめ混合粉砕して焼結用混合粉とし、ついでプレ形成工程として該焼結用混合粉を圧力成形してプレ成形体とし、さらに焼結工程として、プレ成形体を酸素が存在する雰囲気下において焼結する。
【0033】
混合粉砕工程後における六方晶系窒化ホウ素の平均粒径は10μm以下とされていることが好ましい。平均粒径を10μm以下まで細かくすれば、焼結体が緻密となり、機械的強度の高い焼結体をより低い温度で得ることができるからである。
【0034】
また、混合粉砕工程は、湿式で行うこともできるが、その場合には有機溶媒中で行なうことが好ましい。水中で行なうと、酸化ホウ素が溶出するおそれがあるからである。
【0035】
本発明において、焼結工程では、特に圧力をかけなくても、焼結を行うことができる。このため、ホットプレス装置等の複雑な装置を用意しなくてもよく、製造装置の設備費が低廉化し、ひいては製造コストを低廉化することができる。
【0036】
また、焼結工程における焼結温度は、原料として用いる六方晶系窒化ホウ素の粒径、酸化ホウ素の含有量、アルミノケイ酸塩の組成や添加量等によって適宜最適な量を決定すればよいが、一般的には800℃以上1400℃以下であることが好ましい。800℃未満では、焼結が不十分となるおそれがある。また、焼結温度が1400℃を超えると、製造のためのエネルギー消費量がおおくなるのみうならず、六方晶系窒化ホウ素焼結体の酸化反応が促進され、酸化ホウ素となって発泡し、相対密度が低くなるおそれがある。
【0037】
発明者らは、本発明の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法により、相対密度が80%以上の焼結体が得られることを確認している。また、得られた焼結体の走査型電子顕微鏡による観察から、焼結体中の六方晶系窒化ホウ素の結晶は、非板状の形態をなすことを確認している。
【発明の効果】
【0038】
以上のように、本発明によれば、相対密度が高く、機械的強度の優れた六方晶系窒化ホウ素焼結体を製造することができる。また、製造装置を非酸化性雰囲気にガス置換及び不活性ガスフローする必要がなく、且つホットプレスのような加圧焼成を必要としないので、低コストでしかも大型形状品や複雑形状品を容易、且つ生産効率良く製造することができる。また、焼成温度が比較的低いので、製造コスト及び環境負荷を低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明は、表面のみならず内部にも酸素が含まれている六方晶系窒化ホウ素からなる粉体粒子を用い、アルミノケイ酸塩を焼結用助剤として酸素が存在する雰囲気下において焼結する。このため、窒化ホウ素粒子の解砕・粉砕や焼結用助剤との混合時に、窒化ホウ素粒子が粉砕・解砕或いは剥離して新生面が現れてもその面に酸素が存在しているため、大気中で酸化したときと同様に上記焼結用助剤と濡れて窒化ホウ素粒子が当該焼結用助剤により覆われる。そのため、それ以上の酸化が阻止される。従って窒化ホウ素が大気中でも安定に残存することにより窒化ホウ素の酸化温度以上に加熱できる。同時に窒化ホウ素表面を覆うアルミノケイ酸塩が液相化しており、これによる液相焼結が進行する。従って緻密に焼成できる。その結果、窒化ホウ素とアルミノケイ酸塩などの焼結用助剤から生成したガラス質物質からなる相対密度80%以上に緻密な窒化ホウ素基焼成体が得られる。
【0040】
本発明に使用する六方晶系窒化ホウ素は、六方晶系窒化ホウ素粒子が含有する酸素が当該六方晶系窒化ホウ素粒子の表面のみならず内部にも分布してなる六方晶系窒化ホウ素であれば、特に制限はない。具体的には、例えば市販品としては、有限会社オクトム製の窒化ホウ素(SFM、純度40%強、酸素含有量25重量%以上)が挙げられる。六方晶系窒化ホウ素粉末粒子表面の酸素の存在の有無についてはオージェ電子分光測定によって確認できる。またその内部の酸素の存在については、その窒化ホウ素粒子の観察面をイオンエッチング装置によりエッチングを行うことにより粉体粒子内部の測定を行うことができる。
【0041】
また、本発明に使用する六方晶系窒化ホウ素は、表面のみならず各粒子の内部まで酸素が存在するため、解砕・粉砕して生じる新生面にも酸素が分布している。このため、酸化処理を特に施さなくても、アルミノケイ酸塩との濡れ性が良好であることが特徴である。解砕・粉砕処理を行なう場合の方法について得に制限は無いが、湿式が好ましい。ただし、湿式における媒体として水を用いると、窒化ホウ素に含まれている酸化ホウ素(B2O3)が水に溶出するため、水を含む媒体は避けるべきである。好ましくは、エタノールやイソプロピルアルコール等の有機溶媒中で行う。また解砕・粉砕処理に用いるボールミルは、5mm以下のアルミナ製ボールを用いた遊星ボールミルによる処理が好適であるがこれに制限するものではない。
【0042】
ケイ素と酸素が網目状に連なった構造を持つケイ酸塩の中で、Si4+をAl3+で置き換えることにより生じる陰電荷を中和するためにアルカリ金属イオン(M+)などのカチオンを含んでいる。自然界では、長石と呼ばれる鉱物で産出しており、その種類は多岐にわたっている。代表的には、Na系、K系、Ca 系、またはNa系を中心にNa−K 混合系、Na−Ca混合系がある。Na系としては、例えば曹長石、NaAlSi3O8などが、K系としては、例えばカリ長石、KAlSi3O8などが、Ca系としては、灰長石、CaAl2Si2O8などが、混合系としては、例えばNaAlSi3O8−KAlSi3O8、又はNaAlSi3O8−CaAl2Si3O8などが挙げられる。
【0043】
また、これらのアルミノケイ酸塩は、産地によって組成が異なり、産地名を冠して呼称されることが多い。例えば、平津長石、福島長石、釜戸長石、三河長石等である。海外の製品としては、中国長石やインド長石、トルコ長石等がある。これらのアルミノケイ酸塩は何れのものも用いることもできる。
【0044】
これらのアルミノケイ酸塩の粒度については、特に制限はないが、粉砕・分級等を行い、1μm以下或いは六方晶系窒化ホウ素と同等以下程度の大きさにして用いることが好ましい。
【0045】
これらアルミノケイ酸塩は通常結晶構造を持っており、そのためそれぞれ融点を有する。また、長石は天然鉱物であるため、数%程度の揮発成分を含んでいる。長石を融点以上に加熱溶融させるとガラス化し、融点は消失する。またその過程で揮発成分が離脱する。このため、焼成時にガスが発生せず、相対密度の高い窒化ホウ素基焼成体を得ることができる。
【実施例】
【0046】
以下に、焼結助材としてのアルミノケイ酸塩に曹長石を用いた場合の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
窒化ホウ素粒子が含有する酸素が当該窒化ホウ素粒子表面のみならず内部にも分布してなる窒化ホウ素粉末粒子として、六方晶系窒化ホウ素(商品名:SFM、純度40%以上 有限会社オクトム製)を用いた。蛍光X線による定量分析では、酸素含有量は25重量%であった。また、オージェ電子分光測定により、この六方晶系窒化ホウ素の深さ方向の元素分析を行った。その結果を図1に示す。図1において200eV、410eV及び540eV付近にあるピークがそれぞれホウ素(B)、窒素(N)及び酸素(O)のピークに相当する。また、イオンエッチングする前の測定結果(すなわちB、N及びOの各プロファイルにおいて、最も手前側のプロファイル)が粒子表面での分析結果である。さらに、イオンエッチング装置によりSiO2換算で30nm/1分となるような条件(イオンガンの加速電圧は3kV、イオン生成用のエミッション電流は20mA)で10分間ずつ粉末粒子を表面からエッチングを行って削り取り、粉末内部の分析も行った。その結果、少なくともSiO2換算で900nmまでは、相当量の酸素原子が存在していることが分かった。
【0048】
<混合工程>
また、混合工程は次のようにして行なった。すなわち、曹長石とイソプロピルアルコール(IPA)と窒化ホウ素粉末とを所定の割合で遊星ボールミルの容器に入れ、1時間混合した後、乾燥し、これを焼成用粉末とした。なお、曹長石の含有量は50体積%とした。
【0049】
<プレ成形工程>
次に、直径約16mm、厚さ約7mmの円筒形の金型に上記焼成用粉末を充填し、CIP(Cold Isostatic Press)を用いて200MPaで成形した。
【0050】
<焼成工程>
この成形体を通常の大気炉(電気炉)に入れ、昇温速度5℃/分で昇温し,1300℃で1時間保持して焼成した。その後、炉冷して六方晶系窒化ホウ素焼結体を得た。
【0051】
−評 価−
(外観観察及び走査電子顕微鏡による観察)
こうして得られた六方晶系窒化ホウ素焼成体の外観写真を図2に示す。また、それらの破断面の走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。図2及び図3から、実施例1の六方晶系窒化ホウ素焼結体は、均質な窒化ホウ素基焼成体が得られていることが分かる。また、図3の破面には窒化ホウ素に固有の板状結晶が観察されなかった。この原因については、明確には分かっていないが、酸化ホウ素が粒子内部にまで存在することに起因するものと考えられる。
【0052】
(相対密度)
この窒化ホウ素焼成体の密度を焼結体の寸法及び重量から算出したところ、1.88g/cm3であった。また、この焼成体を粉砕してヘリウムガスを媒体とするアルキメデス法により求めたところ、2.30g/cm3となった。この結果から、実施例1の焼成体の相対密度は81.7%と算定された。
【0053】
(XRD測定)
また、実施例1の六方晶系窒化ホウ素焼結体のXRDを測定した。その結果図4に示すように、大気中で焼成したにもかかわらず、六方晶系窒化ホウ素の回折ピークが明瞭に認められた。一方、曹長石のピークは消失し、2θ=20〜30度の範囲にガラスに固有なブロードなピークが認められたことから、溶融してガラス化したことが分かった。
【0054】
(3点曲げ試験)
実施例1の六方晶系窒化ホウ素焼成体の3点曲げ試験をおこなったところ、47MPaであった。この値は、市販の高純度窒化ホウ素焼成体の曲げ強度(約35MPa)よりも30%以上も高強度である。
【0055】
(実施例2)
実施例2では、焼結用助剤として曹長石を溶融してガラス化したものを用いた。すなわち、まず曹長石を大気中において1400℃で加熱溶融し、揮発性成分を除去すると共に冷却してガラス化させる。こうして得たガラスをクラッシャー及び遊星ボールミルを用いて粉砕し、10μm程度以下のガラス微粉末とし、焼結助剤とした。原料の曹長石及びガラス化した焼結助剤のXRD測定結果を図5に示す。
【0056】
こうして得た焼結助剤を用い、その他の条件は実施例1と同様にして、実施例2の六方晶系窒化ホウ素焼成体を調製した。
【0057】
−評 価−
(相対密度)
実施例2の六方晶系窒化ホウ素焼成体の嵩密度は1.97g/cm3となり、相対密度は85.6%と算出された。この結果は、実施例1の相対密度よりも約4%高い値である。
【0058】
(3点曲げ試験)
実施例2の六方晶系窒化ホウ素焼成体の3点曲げ試験をおこなったところ、54MPaとなった。実施例1の場合よりも約4%強度が増加した
【0059】
実施例1よりも相対密度、3点曲げ試験のいずれも優れているのは、実施例2においては、焼結助剤をガラス化したため、揮発成分が除去され、発泡が防止されたことによるものと推測される。
【0060】
(実施例3〜6)
実施例3では焼成温度を1200℃、実施例4では1100℃、実施例5では1050℃、実施例6では1000℃とした。その他の条件については、実施例2と同様であり、説明を省略する。
【0061】
−評 価−
こうして得られた六方晶系窒化ホウ素焼成体の外観写真を図6に、それらの破断面の走査型電子顕微鏡写真を図7に示す。これらの写真から、実施例1の六方晶系窒化ホウ素焼結体は、均質な窒化ホウ素基焼成体が得られていることが分かる。
【0062】
(相対密度)
実施例1において用いた方法と同様の方法により、相対密度を測定した。その結果、表1に示すように、実施例3〜6のいずれも、相対密度は80%以上となった。
【表1】
【0063】
(3点曲げ試験)
1200℃で焼成を行なった実施例3の六方晶系窒化ホウ素焼成体の3点曲げ試験をおこなったところ、59MPaという高い強度を示した。この値は、市販の高純度窒化ホウ素焼成体の曲げ強度(約35MPa)よりも30%以上も高強度である。
【0064】
(実施例7〜11)
実施例7〜11では、窒化ホウ素粉末粒子として、六方晶系窒化ホウ素(商品名:SFM、純度40%以上 有限会社オクトム製)を焼結助剤と混合する前に、遊星ボールミルによりイソプロピルアルコール中で、300rpm、1時間湿式粉砕を行った。ボールは実施例7〜9ではアルミナ製のものを用いた(実施例7では3mmφ、実施例8では5mmφ、実施例9では10mmφ)。また、実施例10では5mφのジルコニア製ボールを用いた。さらに実施例11では、ナイロン製(1/2インチφ及び10mmφの2種)を用いた。
【0065】
こうして得られた窒化ホウ素粉砕粒子の平均粒径をレーザー回折法によって測定した。その結果、表2に示すように、平均粒径は、粉砕前の半分以下となることが分かった。また、平均粒子径が最小となったのは、3mmφのアルミナボールを使用して粉砕した実施例7においてであった。
【表2】
【0066】
また、粒度分布をレーザー回折法によって測定した。その結果を図8に示す。
さらに、こうして得られた六方晶系窒化ホウ素粉砕粒子の走査型電子顕微鏡写真を図9に示す。また、オージェ電子分光測定による粉砕粉末の含有元素分析結果を図10に示す。図10から、ボールミルによる六方晶系窒化ホウ素粉砕粒子の粉砕過程において新生面が発生しても、生成した新生面上には、酸素が存在することが明らかとなった。
【0067】
実施例8の窒化ホウ素粉砕粒子を用い、その他の条件については実施例2と同様にして、六方晶系窒化ホウ素焼結体を作成した。そして、その相対密度を、同様の方法で測定したところ、嵩密度は1.98g/cm3であり、相対密度は86.2%となり、実施例2に比べて、さらなる高密度化がなされた。
【0068】
(比較例1)
比較例1では、六方晶系窒化ホウ素粉末として、市販の昭和電工製窒化ホウ素粉末(UHP、純度99%)を用いた。この粉末を実施例1の場合と同様にオージェ電子分光測定により元素分析を行ったところ、図11に示すように、ホウ素、窒素の吸収ピークは明瞭に観察されたが、酸素のピークは内部のみならず表面からも認められなかった。
この六方晶系窒化ホウ素粉末に対して、酸化ホウ素を5重量%となるように加えたものを原料とした。その他の条件については、実施例2と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0069】
(比較例2)
比較例2では、六方晶系窒化ホウ素粉末に対して酸化ホウ素を10重量%となるように添加した。その他の条件については、比較例2と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0070】
(比較例3)
比較例3では、六方晶系窒化ホウ素粉末に対して酸化ホウ素を30重量%となるように添加した。その他の条件については、比較例2と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0071】
−評価−
(相対密度)
比較例1〜3の窒化ホウ素焼成体の密度及び相対密度を、焼成体の寸法及び重量から算出した。その結果、表3に示すように、嵩密度は1.51〜1.65g/cm3、相対密度は61.9〜67.6となり、実施例2における嵩密度1.97g/cm3及び相対密度は85.6%と比較して、低い値となった。
【表3】
【0072】
(走査電子顕微鏡による観察)
また、比較例1の六方晶系窒化ホウ素焼成体の破断面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した。その結果、図12に示すように、破断面には窒化ホウ素に固有の板状結晶が観察された。
【0073】
(3点曲げ試験)
比較例1の六方晶系窒化ホウ素焼成体の3点曲げ試験をおこなったところ、8MPaであり、実施例1の47MPaや、実施例2の54MPaと比較して、極めて低い値となった。
【0074】
この発明は、上記発明の実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の方法によれば、低コストを維持したまま六方晶系窒化ホウ素基焼成体を従来の方法に比べて高密度に製造することができるようになり、その3点曲げ強度も著しく高くなった。従って、これを材料とした潤滑材、電気絶縁材、隙間充填材のような多くの部材を低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施例1で使用した窒化ホウ素粉末粒子のオージェ電子分光測定による深さ方向の元素分析結果である。
【図2】実施例1の六方晶系窒化ホウ素焼成体の外観写真である。
【図3】実施例1の六方晶系窒化ホウ素焼成体の破断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例1の六方晶系窒化ホウ素焼成体のXRD測定のチャートである。
【図5】焼結助剤として用いた曹長石の加熱・溶融前及び後のXRD測定のチャートである。
【図6】実施例3〜6で得られた六方晶系窒化ホウ素焼成体の外観写真である。
【図7】実施例3〜6で得られた六方晶系窒化ホウ素焼成体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例7で用いた六方晶系窒化ホウ素粉末の粒度分布測定結果である。
【図9】実施例7で用いた六方晶系窒化ホウ素粉末の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】実施例7で用いた六方晶系窒化ホウ素粉末のオージェ電子分光測定の深さ方向における有元素分析結果である。
【図11】比較例1で用いた六方晶系窒化ホウ素粉末のオージェ電子分光測定の深さ方向における有元素分析結果である。
【図12】比較例1の焼成後の六方晶系窒化ホウ素焼成体の破断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素の存在下で無加圧で焼結することが可能な、六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法及び六方晶系窒化ホウ素焼結体に関する。
【背景技術】
【0002】
六方晶系窒化ホウ素(h−BN)は、周期表におけるIIIb属の元素であるホウ素(B)と、Vb属の元素である窒素(N)から構成されている。これらの構成元素は、IVb属の炭素(C)の直前及び直後に位置しており、黒鉛に類似の結晶構造を有する。例えば、六方晶系窒化ホウ素のc面内は強固なπ結合で結びついている一方、c軸方向は結合力の弱いファンデル・ワールス結合で結びついているため、板状結晶で劈開面を有している。また、黒鉛と同様、高融点であると同時に、潤滑性、離形性、機械加工性及び耐食性に優れた特性を有している。その一方、六方晶系窒化ホウ素は黒鉛と異なり、電気絶縁性が高く、約1000℃まで耐酸化性を有する。こうした特長を生かして、金属溶融るつぼ、潤滑材、高周波電気絶縁材、製鋼用ノズル、保護管、セッター等に利用されている。
【0003】
しかし、六方晶系窒化ホウ素は、高融点で且つ非酸化物であるため、焼成によって焼き固めることが非常に難しい(難焼成性)という問題点があった。また、バインダーの役割を担う焼結用助剤を用いて焼結させようとしても、濡れ性が悪いため溶融した焼結剤が六方晶系窒化ホウ素表面を濡らさず、焼結用助剤としての役割を充分に発揮することができないという問題もあった。さらには、高温下において酸素の存在下では、六方晶系窒化ホウ素が酸化ホウ素(B2O3)に変化するという問題もあった。
【0004】
こうした問題点を解決するため、次のような方法で六方晶系窒化ホウ素の焼結が行われている。すなわち、真空中やアルゴン雰囲気中や窒素雰囲気中(一般には窒素雰囲気中)で、ホットプレス装置等を用いて1500〜2300℃という高温下、10MPaを超える圧力で焼結させる方法である。
【0005】
しかし、この方法は、次のような問題があり、製造が困難で且つ製造コストが高いものとなっていた。
(1)真空中やアルゴン雰囲気中や窒素雰囲気中という雰囲気下で焼成を行なう必要があるため、炉内の空気を毎回排気して真空状態としたり、真空にした後さらにアルゴンや窒素を充填し、フローさせたりしなければならない。
(2)加圧状態で焼成するため、炉内にホットプレス機構を備える必要があり、気密性を保ちつつ油圧等の駆動によりプレスラムや型・パンチ等で試料を加圧する構造とする必要がある。
(3)しかもこれらの装置が高温まで耐える構造とする必要があるために、高温耐久性のある材料を用いるのみならず、加熱に多大なエネルギー(一般には電力)が必要であると同時に、さらに炉の保護のために充分な冷却機構と膨大な量の冷却水も必要である。
(4)ホットプレスで焼成するという制約から、大型品や複雑な形状の物品の作製が極めて困難である。また、このように大変過酷な製造条件であるため環境負荷が非常に大きい。
【0006】
従って、六方晶系窒化ホウ素の焼結体の製造のためには、製造装置もランニングコストも非常に大きなものとなり、製品自身も非常に高価なものとならざるを得なかった。このため、上記のようにユニークな特性を有するにもかかわらず、必然的にその用途も極めて限られたものとなっていた。さらに、高温で焼成しなければならないことから、環境負荷が非常に大きいため、環境負荷低減に向けての対策も講じる必要があった。
【0007】
こうしたホットプレスによる加圧焼成法の問題点を解決し、製造コストを低下させるとともに、大型品や複雑形状品の作製の製造を容易にするために、様々な常圧焼成法が提案されている(特許文献1〜6参照)。
【0008】
例えば、特許文献1では、SiO2を窒化ホウ素の焼結用助剤として添加した場合に、還元雰囲気中でSiO2が還元されてSiOとして揮散するという欠点を改良するために、これらの系にさらにB2O3を添加することにより問題解決を図っている。
【0009】
また、特許文献2では、窒化ホウ素に結合剤として無水硼酸(B2O3)や窒化アルミニウム(AlN)を用いる際、アルミニウムと珪素の混合粉末、またはこれらの合金粉末等を窒化ホウ素と混合して、窒素気流中又は窒素を主として含む微酸化性雰囲気中で焼成する方法が記載されている。この方法によれば、高温電気特性の低下や溶融物に対する耐食性の劣化が防止され、さらには、AlNを用いた場合の成形体の機械的強度の低下や溶融物に対する耐食性の不足といった問題点が解決できると述べられている。
【0010】
さらに特許文献3では、焼成前の成形段階で、可能な限り高密度な成形体を作り、低膨張率のモールド内にて不活性雰囲気中で焼成するという、六方晶系窒化ホウ素の焼結方法が記載されている。この方法によれば、無加圧で焼成する場合にサンプルが焼成中に膨張するために緻密化しないという欠点を解決することができると記載されている
【0011】
また、特許文献4では、相手材(焼結用助剤や結合剤)を多量に添加することにより、六方晶系窒化ホウ素の焼成性を向上させ、機械的強度の向上を図っている。さらには、原料粒度、焼結用助剤の種類と量、焼成温度を制御することによって、窒化ホウ素の高温安定性を改善し、実用に耐える特性を有するものとすることが図られている。
【0012】
さらに、特許文献5では、アルカリ土類金属硼酸塩を適量含有させ、非酸化性雰囲気において常圧で焼成することにより、大型形状品や複雑形状品を安価に製造することが図られている。
【0013】
また、特許文献6では、窒化ホウ素を主体とする焼成体中に炭素及び炭化ホウ素を分散含有させるということにより、常圧焼成法による焼成体が高温度で強度低下特に耐熱衝撃性が低下するという問題の解決を図っている。
【0014】
しかし、上記特許文献1〜6の六方晶系窒化ホウ素の焼成方法では、いずれも、酸素のない雰囲気下又は酸素の少ない雰囲気で、六方晶系窒化ホウ素を焼成しなければならなため、その雰囲気を調整するための真空装置やガス置換のための装置が必要となり、製造設備が大がかりで複雑で且つ高価なものとなっていた。さらには、焼成を行なうたびに非酸化性雰囲気に炉内をガス置換しなければならず、常圧焼成であってもランニングコストが高価となり、生産効率も良くなく、製品の価格が高価となり、且つ環境負荷の低減も実現できなかった。
【0015】
こうした問題を解決するために、本発明者らの一部は、既に、酸素のある雰囲気下でも焼成可能な六方晶系窒化ホウ素の焼成方法を開発している(特許文献7)。この方法は、アルミノケイ酸塩を焼結用助剤とし、六方晶系窒化ホウ素の酸素存在下における焼成過程で、六方晶系窒化ホウ素の表面のみを酸化して酸化ホウ素層を形成させ、その酸化ホウ素層を介して焼成を行うものである。この方法によれば、六方晶系窒化ホウ素を大気中で焼成可能となる。
【0016】
【特許文献1】特公昭47−38047号公報
【特許文献2】特公昭48−43648号公報
【特許文献3】特開昭61−132563号公報
【特許文献4】特開昭63 −303862号公報
【特許文献5】特許第2614874号公報
【特許文献6】特開2001−14477号公報
【特許文献7】特開2007−70197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、上記特許文献7の方法によって得られる六方晶系窒化ホウ素の焼結方法では、空気存在下において焼結体を得ることはできるものの、さらなる高密度化や機械的強度の高強度化が望まれていた。
【0018】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、酸素存在下で焼結が可能であって、焼結体の相対密度が高く、機械的強度の優れた六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上記課題を解決するために、特許文献7に記載されている、酸素のある雰囲気下でも焼成可能な六方晶系窒化ホウ素の焼成方法について、さらに詳しい検討を行なった。
【0020】
大気中で六方晶系窒化ホウ素の粉体を焼成した場合、六方晶系窒化ホウ素の粒子表面に酸化ホウ素(B2O3)の薄い被膜が形成される。この酸化ホウ素被膜は、焼結助剤として用いられるアルミノケイ酸塩の溶融物に濡れ易いため、酸化ホウ素被膜上に溶解したアルミノケイ酸塩が濡れて広がり、層が形成される。こうして形成されたアルミノケイ酸塩からなる層によって、六方晶系窒化ホウ素の粒子内部までの酸素の拡散を防止するというのが、上記特許文献7に記載された方法の原理である。
【0021】
しかしながら、本発明者らは、さらに鋭意研究を行なった結果、単に六方晶系窒化ホウ素の粒子表面に酸化ホウ素(B2O3)の薄い被膜が形成されるだけでは、濡れ性を改善するには不十分であることを見出した。この方法では、焼成前に六方晶系窒化ホウ素とアルミノケイ酸塩とを混合して成形しておく必要があり、焼成時にはその表面が酸化されて酸化ホウ素(B2O3)の薄い被膜が形成され、溶融したアルミノケイ酸塩が濡れて表面にコーティングされる。しかしながら、成形された六方晶系窒化ホウ素の内部は、酸素の供給が不十分となるため、アルミノケイ酸塩との濡れ性は改善されず、内部にまでアルミノケイ酸塩が侵入することが困難となるのである。
【0022】
こうした問題は、六方晶系窒化ホウ素に酸化ホウ素(B2O3)を数%含有させたり、CaOを添加したり、CIP圧力を400MPaまで高めるなどして、ある程度は改善させることができるが(特許文献7参照)、限界があった。
【0023】
そして、さらに鋭意研究を進めた結果、六方晶系窒化ホウ素に酸化ホウ素(B2O3)を混合するのではなく、各粒子の内部にまで酸素が含まれている六方晶系窒化ホウ素粉体粒子を用いることにより、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0024】
すなわち、本発明の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法は、六方晶系窒化ホウ素からなる粉体を、酸素が存在する雰囲気下においてアルミノケイ酸塩を焼結用助剤として焼結する窒化ホウ素焼結体の製造方法において、前記六方晶系窒化ホウ素からなる粉体の各粒子は、表面のみならず内部にも酸素が含まれていることを特徴とする。
【0025】
本発明の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法によって、相対密度が高く、機械的強度の優れた六方晶系窒化ホウ素焼結体が製造可能となるのは、次のような理由によるものと考えられる。すなわち、まず焼成に先立って六方晶系窒化ホウ素とアルミノケイ酸塩とを混合して成形するとき、六方晶系窒化ホウ素はさらに細かい粒子となる。しかしながら、六方晶系窒化ホウ素からなる粉体粒子は、表面のみならず内部にも酸素が含まれているため、細かくされた六方晶系窒化ホウ素粒子の新たに現れた断面部分にも、酸化ホウ素(B2O3)が存在することとなる。このため、焼成時において、溶解したアルミノケイ酸塩は成形体表面のみならず、内部においても濡れやすくて、浸透し易くなる。このため、焼結体の相対密度が高くなり、機械的強度も優れたものとなるのである。
【0026】
なお、上記特許文献7の段落番号0017では、「六方晶系窒化ホウ素(h−BN)の酸素含有量は、1質量%以下のものでも使用することができるが、ある程度酸化されたもの、例えば酸素含有量が数%のものがより好ましい。」と記載されているが、このことと、本発明の構成要件である「表面のみならず内部にも酸素が含まれていること」ということは、意味が異なり、相対密度や機械的強度に対する効果にも相違がある。すなわち、特許文献7の段落番号0017では、1つの六方晶系窒化ホウ素粒子において、その内部にまで酸素が存在しているか否かについては、何も述べられていない。さらに、それらの違いによる効果の違いを確認すべく、発明者らは、六方晶系窒化ホウ素に酸化ホウ素(B2O3)を10質量%程度混合した原料を用い、アルミノケイ酸塩を混合して焼結させた場合と比較を行なった。その結果、表面のみならず内部にも酸素が含まれているh−BNを用いた場合は、六方晶系窒化ホウ素に酸化ホウ素(B2O3)を10質量%程度混合した原料を用いた場合よりも、相対密度が高く、機械的強度も優れたものとなることを確認している。
【0027】
六方晶系窒化ホウ素焼成体の製造に際しては、遊星ボールミル等を用いて窒化ホウ素の粉末とアルミノケイ酸塩とをよく混合し、これを一定の形状に成形して焼成に付することが好ましい。アルミノケイ酸塩の配合割合は窒化ホウ素粉末に対して10〜70容積%が好ましく、さらに好ましいのは30〜60容積%であり、最も好ましいのは35〜65容積%である。アルミノケイ酸塩が10容積%より少ないと六方晶系窒化ホウ素の表面全体にいきわたらず、六方晶系窒化ホウ素表面を完全に被覆できない。このため、六方晶系窒化ホウ素の酸化が始まり、その結果酸化して生成した酸化ホウ素が分解・消失するときに気泡が発生し、高密度化を阻害するという問題が生じる。窒化ホウ素が微細であればアルミノケイ酸塩の配合割合は相対的に増す必要がある。一方、アルミノケイ酸塩が70容積%より多いと窒化ホウ素の特徴が発揮できなくなる。
【0028】
六方晶系窒化ホウ素の内部に酸素が含まれているか否かを調べる方法としては、オージェ電子分光分析におけるイオンミリング法を用いた深さ方向の測定によって、確認することができる。発明者らは、この方法により、SiO2換算で300nmの深さにおいて酸素の存在が確認された六方晶系窒化ホウ素を用いて焼結体を製造することにより、焼結体の相対密度が高くなり、機械的強度も優れたものとなることを確認している。さらに好ましいのは600nmの深さにおいて酸素の存在が確認される六方晶系窒化ホウ素であり、最も好ましいのは900nmの深さにおいて酸素の存在が確認される六方晶系窒化ホウ素である。
【0029】
また、六方晶系窒化ホウ素の酸素含有量は10質量%以上であることが好ましい。こうであれば、アルミノケイ酸塩の六方晶系窒化ホウ素に対する濡れ性が良好となる。
【0030】
さらに、焼結用助剤として用いるアルミノケイ酸塩は、加熱溶融によりガラス化されていることが好ましい。こうであれば、ガラス化されていないアルミノケイ酸塩と比較して、より低い温度でアルミノケイ酸塩が溶融するため、焼結温度を低くすることができる。また、アルミノケイ酸塩に含まれている揮発成分をあらかじめ揮発させておくことができるため、焼成時における発泡を防止でき、ひいては相対密度を高めることができる。
【0031】
また、アルミノケイ酸塩とは、ケイ酸塩中にあるケイ素原子の一部をアルミニウム原子に置き換えた構造を持つ物質を言う。
【0032】
本発明の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法では、まず混合粉砕工程として、表面のみならず内部にも酸素が含まれている六方晶系窒化ホウ素とアルミノケイ酸塩とをあらかじめ混合粉砕して焼結用混合粉とし、ついでプレ形成工程として該焼結用混合粉を圧力成形してプレ成形体とし、さらに焼結工程として、プレ成形体を酸素が存在する雰囲気下において焼結する。
【0033】
混合粉砕工程後における六方晶系窒化ホウ素の平均粒径は10μm以下とされていることが好ましい。平均粒径を10μm以下まで細かくすれば、焼結体が緻密となり、機械的強度の高い焼結体をより低い温度で得ることができるからである。
【0034】
また、混合粉砕工程は、湿式で行うこともできるが、その場合には有機溶媒中で行なうことが好ましい。水中で行なうと、酸化ホウ素が溶出するおそれがあるからである。
【0035】
本発明において、焼結工程では、特に圧力をかけなくても、焼結を行うことができる。このため、ホットプレス装置等の複雑な装置を用意しなくてもよく、製造装置の設備費が低廉化し、ひいては製造コストを低廉化することができる。
【0036】
また、焼結工程における焼結温度は、原料として用いる六方晶系窒化ホウ素の粒径、酸化ホウ素の含有量、アルミノケイ酸塩の組成や添加量等によって適宜最適な量を決定すればよいが、一般的には800℃以上1400℃以下であることが好ましい。800℃未満では、焼結が不十分となるおそれがある。また、焼結温度が1400℃を超えると、製造のためのエネルギー消費量がおおくなるのみうならず、六方晶系窒化ホウ素焼結体の酸化反応が促進され、酸化ホウ素となって発泡し、相対密度が低くなるおそれがある。
【0037】
発明者らは、本発明の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法により、相対密度が80%以上の焼結体が得られることを確認している。また、得られた焼結体の走査型電子顕微鏡による観察から、焼結体中の六方晶系窒化ホウ素の結晶は、非板状の形態をなすことを確認している。
【発明の効果】
【0038】
以上のように、本発明によれば、相対密度が高く、機械的強度の優れた六方晶系窒化ホウ素焼結体を製造することができる。また、製造装置を非酸化性雰囲気にガス置換及び不活性ガスフローする必要がなく、且つホットプレスのような加圧焼成を必要としないので、低コストでしかも大型形状品や複雑形状品を容易、且つ生産効率良く製造することができる。また、焼成温度が比較的低いので、製造コスト及び環境負荷を低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明は、表面のみならず内部にも酸素が含まれている六方晶系窒化ホウ素からなる粉体粒子を用い、アルミノケイ酸塩を焼結用助剤として酸素が存在する雰囲気下において焼結する。このため、窒化ホウ素粒子の解砕・粉砕や焼結用助剤との混合時に、窒化ホウ素粒子が粉砕・解砕或いは剥離して新生面が現れてもその面に酸素が存在しているため、大気中で酸化したときと同様に上記焼結用助剤と濡れて窒化ホウ素粒子が当該焼結用助剤により覆われる。そのため、それ以上の酸化が阻止される。従って窒化ホウ素が大気中でも安定に残存することにより窒化ホウ素の酸化温度以上に加熱できる。同時に窒化ホウ素表面を覆うアルミノケイ酸塩が液相化しており、これによる液相焼結が進行する。従って緻密に焼成できる。その結果、窒化ホウ素とアルミノケイ酸塩などの焼結用助剤から生成したガラス質物質からなる相対密度80%以上に緻密な窒化ホウ素基焼成体が得られる。
【0040】
本発明に使用する六方晶系窒化ホウ素は、六方晶系窒化ホウ素粒子が含有する酸素が当該六方晶系窒化ホウ素粒子の表面のみならず内部にも分布してなる六方晶系窒化ホウ素であれば、特に制限はない。具体的には、例えば市販品としては、有限会社オクトム製の窒化ホウ素(SFM、純度40%強、酸素含有量25重量%以上)が挙げられる。六方晶系窒化ホウ素粉末粒子表面の酸素の存在の有無についてはオージェ電子分光測定によって確認できる。またその内部の酸素の存在については、その窒化ホウ素粒子の観察面をイオンエッチング装置によりエッチングを行うことにより粉体粒子内部の測定を行うことができる。
【0041】
また、本発明に使用する六方晶系窒化ホウ素は、表面のみならず各粒子の内部まで酸素が存在するため、解砕・粉砕して生じる新生面にも酸素が分布している。このため、酸化処理を特に施さなくても、アルミノケイ酸塩との濡れ性が良好であることが特徴である。解砕・粉砕処理を行なう場合の方法について得に制限は無いが、湿式が好ましい。ただし、湿式における媒体として水を用いると、窒化ホウ素に含まれている酸化ホウ素(B2O3)が水に溶出するため、水を含む媒体は避けるべきである。好ましくは、エタノールやイソプロピルアルコール等の有機溶媒中で行う。また解砕・粉砕処理に用いるボールミルは、5mm以下のアルミナ製ボールを用いた遊星ボールミルによる処理が好適であるがこれに制限するものではない。
【0042】
ケイ素と酸素が網目状に連なった構造を持つケイ酸塩の中で、Si4+をAl3+で置き換えることにより生じる陰電荷を中和するためにアルカリ金属イオン(M+)などのカチオンを含んでいる。自然界では、長石と呼ばれる鉱物で産出しており、その種類は多岐にわたっている。代表的には、Na系、K系、Ca 系、またはNa系を中心にNa−K 混合系、Na−Ca混合系がある。Na系としては、例えば曹長石、NaAlSi3O8などが、K系としては、例えばカリ長石、KAlSi3O8などが、Ca系としては、灰長石、CaAl2Si2O8などが、混合系としては、例えばNaAlSi3O8−KAlSi3O8、又はNaAlSi3O8−CaAl2Si3O8などが挙げられる。
【0043】
また、これらのアルミノケイ酸塩は、産地によって組成が異なり、産地名を冠して呼称されることが多い。例えば、平津長石、福島長石、釜戸長石、三河長石等である。海外の製品としては、中国長石やインド長石、トルコ長石等がある。これらのアルミノケイ酸塩は何れのものも用いることもできる。
【0044】
これらのアルミノケイ酸塩の粒度については、特に制限はないが、粉砕・分級等を行い、1μm以下或いは六方晶系窒化ホウ素と同等以下程度の大きさにして用いることが好ましい。
【0045】
これらアルミノケイ酸塩は通常結晶構造を持っており、そのためそれぞれ融点を有する。また、長石は天然鉱物であるため、数%程度の揮発成分を含んでいる。長石を融点以上に加熱溶融させるとガラス化し、融点は消失する。またその過程で揮発成分が離脱する。このため、焼成時にガスが発生せず、相対密度の高い窒化ホウ素基焼成体を得ることができる。
【実施例】
【0046】
以下に、焼結助材としてのアルミノケイ酸塩に曹長石を用いた場合の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
窒化ホウ素粒子が含有する酸素が当該窒化ホウ素粒子表面のみならず内部にも分布してなる窒化ホウ素粉末粒子として、六方晶系窒化ホウ素(商品名:SFM、純度40%以上 有限会社オクトム製)を用いた。蛍光X線による定量分析では、酸素含有量は25重量%であった。また、オージェ電子分光測定により、この六方晶系窒化ホウ素の深さ方向の元素分析を行った。その結果を図1に示す。図1において200eV、410eV及び540eV付近にあるピークがそれぞれホウ素(B)、窒素(N)及び酸素(O)のピークに相当する。また、イオンエッチングする前の測定結果(すなわちB、N及びOの各プロファイルにおいて、最も手前側のプロファイル)が粒子表面での分析結果である。さらに、イオンエッチング装置によりSiO2換算で30nm/1分となるような条件(イオンガンの加速電圧は3kV、イオン生成用のエミッション電流は20mA)で10分間ずつ粉末粒子を表面からエッチングを行って削り取り、粉末内部の分析も行った。その結果、少なくともSiO2換算で900nmまでは、相当量の酸素原子が存在していることが分かった。
【0048】
<混合工程>
また、混合工程は次のようにして行なった。すなわち、曹長石とイソプロピルアルコール(IPA)と窒化ホウ素粉末とを所定の割合で遊星ボールミルの容器に入れ、1時間混合した後、乾燥し、これを焼成用粉末とした。なお、曹長石の含有量は50体積%とした。
【0049】
<プレ成形工程>
次に、直径約16mm、厚さ約7mmの円筒形の金型に上記焼成用粉末を充填し、CIP(Cold Isostatic Press)を用いて200MPaで成形した。
【0050】
<焼成工程>
この成形体を通常の大気炉(電気炉)に入れ、昇温速度5℃/分で昇温し,1300℃で1時間保持して焼成した。その後、炉冷して六方晶系窒化ホウ素焼結体を得た。
【0051】
−評 価−
(外観観察及び走査電子顕微鏡による観察)
こうして得られた六方晶系窒化ホウ素焼成体の外観写真を図2に示す。また、それらの破断面の走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。図2及び図3から、実施例1の六方晶系窒化ホウ素焼結体は、均質な窒化ホウ素基焼成体が得られていることが分かる。また、図3の破面には窒化ホウ素に固有の板状結晶が観察されなかった。この原因については、明確には分かっていないが、酸化ホウ素が粒子内部にまで存在することに起因するものと考えられる。
【0052】
(相対密度)
この窒化ホウ素焼成体の密度を焼結体の寸法及び重量から算出したところ、1.88g/cm3であった。また、この焼成体を粉砕してヘリウムガスを媒体とするアルキメデス法により求めたところ、2.30g/cm3となった。この結果から、実施例1の焼成体の相対密度は81.7%と算定された。
【0053】
(XRD測定)
また、実施例1の六方晶系窒化ホウ素焼結体のXRDを測定した。その結果図4に示すように、大気中で焼成したにもかかわらず、六方晶系窒化ホウ素の回折ピークが明瞭に認められた。一方、曹長石のピークは消失し、2θ=20〜30度の範囲にガラスに固有なブロードなピークが認められたことから、溶融してガラス化したことが分かった。
【0054】
(3点曲げ試験)
実施例1の六方晶系窒化ホウ素焼成体の3点曲げ試験をおこなったところ、47MPaであった。この値は、市販の高純度窒化ホウ素焼成体の曲げ強度(約35MPa)よりも30%以上も高強度である。
【0055】
(実施例2)
実施例2では、焼結用助剤として曹長石を溶融してガラス化したものを用いた。すなわち、まず曹長石を大気中において1400℃で加熱溶融し、揮発性成分を除去すると共に冷却してガラス化させる。こうして得たガラスをクラッシャー及び遊星ボールミルを用いて粉砕し、10μm程度以下のガラス微粉末とし、焼結助剤とした。原料の曹長石及びガラス化した焼結助剤のXRD測定結果を図5に示す。
【0056】
こうして得た焼結助剤を用い、その他の条件は実施例1と同様にして、実施例2の六方晶系窒化ホウ素焼成体を調製した。
【0057】
−評 価−
(相対密度)
実施例2の六方晶系窒化ホウ素焼成体の嵩密度は1.97g/cm3となり、相対密度は85.6%と算出された。この結果は、実施例1の相対密度よりも約4%高い値である。
【0058】
(3点曲げ試験)
実施例2の六方晶系窒化ホウ素焼成体の3点曲げ試験をおこなったところ、54MPaとなった。実施例1の場合よりも約4%強度が増加した
【0059】
実施例1よりも相対密度、3点曲げ試験のいずれも優れているのは、実施例2においては、焼結助剤をガラス化したため、揮発成分が除去され、発泡が防止されたことによるものと推測される。
【0060】
(実施例3〜6)
実施例3では焼成温度を1200℃、実施例4では1100℃、実施例5では1050℃、実施例6では1000℃とした。その他の条件については、実施例2と同様であり、説明を省略する。
【0061】
−評 価−
こうして得られた六方晶系窒化ホウ素焼成体の外観写真を図6に、それらの破断面の走査型電子顕微鏡写真を図7に示す。これらの写真から、実施例1の六方晶系窒化ホウ素焼結体は、均質な窒化ホウ素基焼成体が得られていることが分かる。
【0062】
(相対密度)
実施例1において用いた方法と同様の方法により、相対密度を測定した。その結果、表1に示すように、実施例3〜6のいずれも、相対密度は80%以上となった。
【表1】
【0063】
(3点曲げ試験)
1200℃で焼成を行なった実施例3の六方晶系窒化ホウ素焼成体の3点曲げ試験をおこなったところ、59MPaという高い強度を示した。この値は、市販の高純度窒化ホウ素焼成体の曲げ強度(約35MPa)よりも30%以上も高強度である。
【0064】
(実施例7〜11)
実施例7〜11では、窒化ホウ素粉末粒子として、六方晶系窒化ホウ素(商品名:SFM、純度40%以上 有限会社オクトム製)を焼結助剤と混合する前に、遊星ボールミルによりイソプロピルアルコール中で、300rpm、1時間湿式粉砕を行った。ボールは実施例7〜9ではアルミナ製のものを用いた(実施例7では3mmφ、実施例8では5mmφ、実施例9では10mmφ)。また、実施例10では5mφのジルコニア製ボールを用いた。さらに実施例11では、ナイロン製(1/2インチφ及び10mmφの2種)を用いた。
【0065】
こうして得られた窒化ホウ素粉砕粒子の平均粒径をレーザー回折法によって測定した。その結果、表2に示すように、平均粒径は、粉砕前の半分以下となることが分かった。また、平均粒子径が最小となったのは、3mmφのアルミナボールを使用して粉砕した実施例7においてであった。
【表2】
【0066】
また、粒度分布をレーザー回折法によって測定した。その結果を図8に示す。
さらに、こうして得られた六方晶系窒化ホウ素粉砕粒子の走査型電子顕微鏡写真を図9に示す。また、オージェ電子分光測定による粉砕粉末の含有元素分析結果を図10に示す。図10から、ボールミルによる六方晶系窒化ホウ素粉砕粒子の粉砕過程において新生面が発生しても、生成した新生面上には、酸素が存在することが明らかとなった。
【0067】
実施例8の窒化ホウ素粉砕粒子を用い、その他の条件については実施例2と同様にして、六方晶系窒化ホウ素焼結体を作成した。そして、その相対密度を、同様の方法で測定したところ、嵩密度は1.98g/cm3であり、相対密度は86.2%となり、実施例2に比べて、さらなる高密度化がなされた。
【0068】
(比較例1)
比較例1では、六方晶系窒化ホウ素粉末として、市販の昭和電工製窒化ホウ素粉末(UHP、純度99%)を用いた。この粉末を実施例1の場合と同様にオージェ電子分光測定により元素分析を行ったところ、図11に示すように、ホウ素、窒素の吸収ピークは明瞭に観察されたが、酸素のピークは内部のみならず表面からも認められなかった。
この六方晶系窒化ホウ素粉末に対して、酸化ホウ素を5重量%となるように加えたものを原料とした。その他の条件については、実施例2と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0069】
(比較例2)
比較例2では、六方晶系窒化ホウ素粉末に対して酸化ホウ素を10重量%となるように添加した。その他の条件については、比較例2と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0070】
(比較例3)
比較例3では、六方晶系窒化ホウ素粉末に対して酸化ホウ素を30重量%となるように添加した。その他の条件については、比較例2と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0071】
−評価−
(相対密度)
比較例1〜3の窒化ホウ素焼成体の密度及び相対密度を、焼成体の寸法及び重量から算出した。その結果、表3に示すように、嵩密度は1.51〜1.65g/cm3、相対密度は61.9〜67.6となり、実施例2における嵩密度1.97g/cm3及び相対密度は85.6%と比較して、低い値となった。
【表3】
【0072】
(走査電子顕微鏡による観察)
また、比較例1の六方晶系窒化ホウ素焼成体の破断面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した。その結果、図12に示すように、破断面には窒化ホウ素に固有の板状結晶が観察された。
【0073】
(3点曲げ試験)
比較例1の六方晶系窒化ホウ素焼成体の3点曲げ試験をおこなったところ、8MPaであり、実施例1の47MPaや、実施例2の54MPaと比較して、極めて低い値となった。
【0074】
この発明は、上記発明の実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の方法によれば、低コストを維持したまま六方晶系窒化ホウ素基焼成体を従来の方法に比べて高密度に製造することができるようになり、その3点曲げ強度も著しく高くなった。従って、これを材料とした潤滑材、電気絶縁材、隙間充填材のような多くの部材を低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施例1で使用した窒化ホウ素粉末粒子のオージェ電子分光測定による深さ方向の元素分析結果である。
【図2】実施例1の六方晶系窒化ホウ素焼成体の外観写真である。
【図3】実施例1の六方晶系窒化ホウ素焼成体の破断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例1の六方晶系窒化ホウ素焼成体のXRD測定のチャートである。
【図5】焼結助剤として用いた曹長石の加熱・溶融前及び後のXRD測定のチャートである。
【図6】実施例3〜6で得られた六方晶系窒化ホウ素焼成体の外観写真である。
【図7】実施例3〜6で得られた六方晶系窒化ホウ素焼成体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例7で用いた六方晶系窒化ホウ素粉末の粒度分布測定結果である。
【図9】実施例7で用いた六方晶系窒化ホウ素粉末の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】実施例7で用いた六方晶系窒化ホウ素粉末のオージェ電子分光測定の深さ方向における有元素分析結果である。
【図11】比較例1で用いた六方晶系窒化ホウ素粉末のオージェ電子分光測定の深さ方向における有元素分析結果である。
【図12】比較例1の焼成後の六方晶系窒化ホウ素焼成体の破断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
六方晶系窒化ホウ素からなる粉体を、酸素が存在する雰囲気下においてアルミノケイ酸塩を焼結用助剤として焼結する窒化ホウ素焼結体の製造方法において、
前記六方晶系窒化ホウ素からなる粉体の各粒子は、表面のみならず内部にも酸素が含まれていることを特徴とする六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項2】
前記六方晶系窒化ホウ素からなる粉体の粒子は、オージェ電子分光分析におけるイオンミリング法を用いた深さ方向の測定において、SiO2換算で少なくとも300nmの深さまでは酸素の存在が確認されることを特徴とする請求項1記載の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項3】
アルミノケイ酸塩の配合割合は六方晶系窒化ホウ素の10〜70容積%であることを特徴とする請求項1又は2記載の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項4】
前記六方晶系窒化ホウ素の酸素含有量は10質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項5】
前記アルミノケイ酸塩は加熱溶融によりガラス化されたアルミノケイ酸塩であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項6】
前記アルミノケイ酸塩は長石類及び/又は加熱溶融によりガラス化された長石類であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項7】
前記アルミノケイ酸塩は曹長石及び/又は加熱溶融によりガラス化された曹長石であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項8】
粒子の表面のみならず内部にも酸素が含まれている六方晶系窒化ホウ素粉末とアルミノケイ酸塩とをあらかじめ混合粉砕して焼結用混合粉とする混合粉砕工程と、
該焼結用混合粉を圧力成形してプレ成形体とするプレ成形工程と、
プレ成形体を酸素が存在する雰囲気下において焼結する焼結工程と、
を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項9】
前記混合粉砕工程後における前記六方晶系窒化ホウ素のメジアン粒径は10μm以下とされていることを特徴とする請求項7記載の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項10】
前記混合粉砕工程は、有機溶媒中で行なうことを特徴とする請求項8又は9記載の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項11】
前記焼結工程は、圧力をかけることなく焼結を行なうことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項記載の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項12】
前記焼結工程における焼結温度は800℃以上1400℃以下であることを特徴とする請求項8乃至11に記載の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項記載の製造方法で製造されており、相対密度が80%以上であることを特徴とする六方晶系窒化ホウ素焼結体。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか1項記載の製造方法で製造されており、焼結体中の六方晶系窒化ホウ素の結晶が非板状の形態をなすことを特徴とする六方晶系窒化ホウ素焼結体。
【請求項1】
六方晶系窒化ホウ素からなる粉体を、酸素が存在する雰囲気下においてアルミノケイ酸塩を焼結用助剤として焼結する窒化ホウ素焼結体の製造方法において、
前記六方晶系窒化ホウ素からなる粉体の各粒子は、表面のみならず内部にも酸素が含まれていることを特徴とする六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項2】
前記六方晶系窒化ホウ素からなる粉体の粒子は、オージェ電子分光分析におけるイオンミリング法を用いた深さ方向の測定において、SiO2換算で少なくとも300nmの深さまでは酸素の存在が確認されることを特徴とする請求項1記載の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項3】
アルミノケイ酸塩の配合割合は六方晶系窒化ホウ素の10〜70容積%であることを特徴とする請求項1又は2記載の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項4】
前記六方晶系窒化ホウ素の酸素含有量は10質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項5】
前記アルミノケイ酸塩は加熱溶融によりガラス化されたアルミノケイ酸塩であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項6】
前記アルミノケイ酸塩は長石類及び/又は加熱溶融によりガラス化された長石類であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項7】
前記アルミノケイ酸塩は曹長石及び/又は加熱溶融によりガラス化された曹長石であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項8】
粒子の表面のみならず内部にも酸素が含まれている六方晶系窒化ホウ素粉末とアルミノケイ酸塩とをあらかじめ混合粉砕して焼結用混合粉とする混合粉砕工程と、
該焼結用混合粉を圧力成形してプレ成形体とするプレ成形工程と、
プレ成形体を酸素が存在する雰囲気下において焼結する焼結工程と、
を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項9】
前記混合粉砕工程後における前記六方晶系窒化ホウ素のメジアン粒径は10μm以下とされていることを特徴とする請求項7記載の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項10】
前記混合粉砕工程は、有機溶媒中で行なうことを特徴とする請求項8又は9記載の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項11】
前記焼結工程は、圧力をかけることなく焼結を行なうことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項記載の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項12】
前記焼結工程における焼結温度は800℃以上1400℃以下であることを特徴とする請求項8乃至11に記載の六方晶系窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項記載の製造方法で製造されており、相対密度が80%以上であることを特徴とする六方晶系窒化ホウ素焼結体。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか1項記載の製造方法で製造されており、焼結体中の六方晶系窒化ホウ素の結晶が非板状の形態をなすことを特徴とする六方晶系窒化ホウ素焼結体。
【図1】
【図4】
【図5】
【図8】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図9】
【図12】
【図4】
【図5】
【図8】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図9】
【図12】
【公開番号】特開2010−42951(P2010−42951A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207532(P2008−207532)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(591270556)名古屋市 (77)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(591270556)名古屋市 (77)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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