説明

内視鏡、及び内視鏡システム、並びにその異常処理方法

【課題】内視鏡内の電気的故障を検出し確実に故障している場合に駆動を停止する。
【解決手段】電子内視鏡10には、先端部に撮像素子30が、またユニバーサルコネクタ13には撮像素子30の駆動回路35、及び撮像素子30や駆動回路35に供給する電源に分圧するための分圧回路36がそれぞれ内蔵されている。分圧回路36から送られる複数の電源電流及び供給電流は、監視部37に送られる。監視部37は各電源電流及び供給電流毎に電流センサ回路62、電流遮断回路63、及び制御回路61を配した構成になっている。電流センサ回路62は、各消費電流を測定し予め決めた範囲と比較して異常を検出し、異常を検出した場合にはエラー信号を制御回路61に送る。制御回路61は、いずれかの電流センサ回路62からエラー信号を受けることで電流遮断回路63の全てを遮断させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内に挿入される挿入部の先端部に、CCDやCMOS等の撮像素子や超音波センサ素子等のセンサ素子を内蔵する内視鏡、及びその内視鏡とセンサ素子から得られる信号に基づいて画像を生成する画像生成部(プロセッサ装置)とからなる内視鏡システム、及び内視鏡システムの異常処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の手元操作部には、体内に挿入される挿入部が接続されている。挿入部は、先端から順に、先端部、湾曲部、及び、可撓管部を繋げた構成になっている。先端部には、先端面に、対物レンズ、照明用レンズ、鉗子出口、送気・送水口等が設けられている。対物レンズの奧には、CCDやCMOS等の撮像素子が内蔵されている。先端部は、硬質な金属材料等で形成されている。また、可撓管部は、手元操作部と湾曲部との間を細径で長尺状に繋ぐ部分であり、可撓性を有している。湾曲部は、手元操作部に設けた操作ノブを回転操作することでアングルワイヤの牽引により上下左右のいずれの方向に湾曲する。これにより、患者への挿入性をスムーズにし、また、先端部を体腔内の所望の方向に向けることができる。
【0003】
内視鏡は、手元操作部から延長されているコードの先端に設けたユ二バールコネクタを介してプロセッサ装置に接続される。前記ユニバーサルコネクタ内には、分圧回路、撮像素子用ドライバ(駆動回路)、撮像信号をデジタル信号に変換するAFE(Analog Front End Processor)等が設けられている。また、プロセッサ装置は、電源回路や画像処理部等を備えている。分圧回路は、プロセッサ装置の電源回路から供給される電源を分圧する。撮像素子には、分圧回路で分圧した電源が供給される。また、駆動回路から水平駆動パルスや垂直駆動パルス、リセットパルスなどの信号が撮像素子に入力される。そして、撮像素子から出力される撮像信号をユニバーサルコネクタに設けたAFEでデジタル処理してプロセッサ装置に送り、ここで画像処理して外部接続したモニタに表示する。
【0004】
プロセッサ装置に内視鏡を接続するときに、ユニバーサルコネクタの差し込み方により、例えば電源ライン及び信号ラインの接続が、接地ラインよりも先に行われると、該信号ラインに不用意な電流が流れ、その結果、撮像素子が破壊されてり、誤動作が発生するおそれがある(特許文献1)。また、ユニバーサルコネクタの差し込み方により、コネクタの電源よりも先に信号が印加された場合も撮像素子を破損するおそれもある(特許文献2)。内視鏡は、プロセッサ装置に対して複数種類用意されている。このため、術や検査の内容により種類の異なる内視鏡に付け替える作業を行うときに、破損するおそがある。
【0005】
また、照明光の光源として、従来から用いられているライトガイド及び光源ランプの代わりに、近年では白色光を出力する複数の発光ダイオード(LED)を挿入部の先端部に配置することが提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2000−92479号公報
【特許文献2】特開平7−326427号公報
【特許文献3】特開2007−252685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1及び特許文献2に記載の発明では、ユニバーサルコネクタの接点ピンの形状に工夫をこらして接続ピンの接続が正しい順番通りに行われるようにしているため、ユニバーサルコネクタ自体にコストがかかる。
【0007】
また、挿入部には、撮像素子又はそれを含む電子基板との間を接続するためのフレキシブルな多芯ケーブルが内蔵されている。挿入部が繰り返し屈曲されると、それに伴ってその多芯ケーブルも屈曲する。このような動作が長期的に繰り返されると、撮像素子又は電子基板と多芯ケーブルとの半田による接続部分に繰り返し応力が作用することになる。このような繰り返し応力が過度に掛かる場合、当該接続部分での多芯ケーブルの断線が懸念される。また可撓管部に対して外部から衝撃が加わることにより、多芯ケーブルが他の部品に衝突したり擦れたりすることがある。多芯ケーブルがこのような衝突や擦れを受ける度にその被覆部が徐々に摩耗し、内包されている電線が露出して、撮像素子への電源線あるいは信号線等が短絡するおそれがある。このような短絡が生じると、例えば撮像素子に過電流が流れて異常加熱して撮像素子が熱により破損する。
【0008】
さらに、落雷や雷雲の中の放電によって付近の電磁界が急変し、周辺にある通信経路や電力線などに雷サージ(過渡的な過電圧、過電流)が誘導・発生して、プロセッサ装置の電源回路等から侵入して内視鏡の撮像素子に被害を及ぼすおそれもある。
【0009】
また、挿入部の先端部に内蔵するLEDも、駆動電流を流すための接続ケーブルの断線に伴う短絡により故障したり、雷等による過電流により故障するおそれがある。
【0010】
このように、短絡や雷等による過電流により撮像素子やLED等の電子部品が故障すると、観察画像が見えなくなるブラックアウトの現象が生じる。このような不都合が観察時に生じると、故障が発生してもどのような処理を行えばよいか、術者(操作者)が分からないという問題があった。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、短絡や雷等による過電流によって挿入部先端に内蔵した電子部品の破損を防止すること、また、異常時の対処が瞬時に把握することができること、さらに、突発的な異常で再び復帰することができる異常を検出することができるようにした内視鏡、及び内視鏡システム、並びに内視鏡システムの異常表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の内視鏡では、体内に挿入される挿入部と、前記挿入部の先端内部に設けられているセンサ素子と、前記センサ素子に供給するための電源と前記センサ素子に対して入出力する信号とのうちのいずれか一方又は両方の伝送状態を監視し異常を検出した場合に少なくとも前記電源を遮断する監視部と、を備えたものである。
【0013】
伝送状態の監視・異常検知としては、消費電流を測定し測定結果を正常範囲と比較して異常を検出する電流センサ回路、電圧を測定し測定結果を正常範囲と比較して異常を検出する電圧検出回路、消費電力を測定し測定結果を正常範囲と比較して異常を検出する電力検出回路、及び、信号の波形を正常範囲と比較して異常を検出する波形検出回路等のいずれを用いてもよい。
【0014】
監視部は、伝送状態の異常を検出した回数をカウントするカウンタを備え、前記カウンタの値が予め決めた値に達するまでは前記遮断を、異常と判断してから一定時間経過後に復帰して再び監視を行うようにしてもよい。監視部としては、内視鏡をプロセッサ装置又は光源装置のいずれか一方又は両方に接続するためのユニバーサルコネクタに設けても良いし、手元操作部に設けても良いし、挿入部に設けても良い。
【0015】
また、内視鏡は、内蔵するセンサ素子の違いによりセンサ素子に供給する電源電圧が異なる。そこで、プロセッサ装置の電源電圧を一定にし、内視鏡側に分圧回路を設けて撮像素子に応じた電源電圧に分圧して供給している。例えば、撮像素子に供給するための電源電圧を監視して過電流を検出することを考慮すると、プロセッサ装置よりも内視鏡の分圧後の電源を監視する方が異常を高精度で検出することができるので好適である。また、内視鏡に前記異常の履歴を記憶するメモリを設けると、次回使用するときに過去の異常履歴を読み出して把握することができるので好適である。
【0016】
内視鏡は、センサ素子から得られる信号に基づいて画像を生成する画像生成部を内蔵するプロセッサ装置に接続して使用される。このプロセッサ装置に、エラー信号を計数するカウンタを設けてもよい。この場合には、内視鏡に監視部を設ける。そして、前記カウンタの値が予め決めた値未満の場合前記監視部での遮断を復帰させて監視部での監視を再び行わせる復帰信号を監視部に送出し、また、前記カウンタの値が予め決めた値に達した場合には前記監視部での遮断を継続させる手段をプロセッサ装置に備えればよい。
【0017】
また、前記エラー信号に応答してモニタに表示するためのエラーメッセージ画像を生成するエラー画像生成部をプロセッサ装置に設けてもよい。また、エラーメッセージとしては、エラー回数が予め決めた回数未満の場合と、エラー回数が予め決めた回数に達して場合とで異なる表示するのが好適である。例えば、前記カウンタの値が予め決めた値未満の場合には「復帰中」又は「ワーニング」等の故障予測用のエラーメッセージ画像を表示し、また、前記カウンタの値が予め決めた値に達した場合には完全に遮断するため「スコープを抜去してください」等の故障警告用のエラーメッセージ画像を表示するのが望ましい。
【0018】
最初の異常が検出されてから予め決めた回数まではリセットし続ける。この間は観察画像がブラックアウトする。そこで直前の画像を記憶するビデオメモリを画像生成部に設け、エラー画像生成部が少なくとも故障予測用のエラーメッセージ画像を生成するときに前記直前の画像に合成して生成するように構成すれば、エラーメッセージ画像の背後に直前の観察画像が表示されるので、予め決めた回数未満の場合に、術者が完全に観察視野を失うことを回避することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、センサ素子に供給するための電源と前記センサ素子に対して入出力する信号とのうちの少なくともいずれか一方の伝送状態を監視し異常を検出した場合に少なくとも前記電源を遮断する監視部を備えたため、センサ素子及びセンサ素子を駆動する駆動回路に搭載された電子部品の故障を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
電子内視鏡10は、図1に示すように、挿入部11、手元操作部12、及び、ユニバーサルコネクタ13などを備えた細長い形状になっている。挿入部11は、管状に形成されており、先端から順に、先端部14、湾曲部15、及び、可撓管部16とで構成されている。ユニバーサルコネクタ13は、手元操作部12から延設されたコード18の先端に設けられており、プロセッサ装置17、及び、光源装置19に接続される。なお、ユニバーサルコネクタ13は、光源装置19に接続される第1コネクタ13a、第1コネクタ13aの一部に設けた延長コードの先端に設けた第2コネクタ13b、及び電気的接続を行う接続部13c(図3参照)とで構成されている。第2コネクタ13bは、プロセッサ装置17に接続される。プロセッサ装置17には、先端部14に内蔵する撮像素子(センサ素子)に電源を供給する電源回路、撮像素子から得られる撮像信号を画像処理してコンポジット信号やRGBコンポーネント信号にエンコードするための画像処理回路等が設けられている。
【0021】
先端部14は、硬質な金属材料等で形成されている。また、可撓管部16は、手元操作部12と湾曲部15との間を細径で長尺状に繋ぐ部分であり、可撓性を有している。湾曲部15は、手元操作部12に設けられた湾曲操作部12aの操作に連動して、挿入部11内に挿設されたアングルワイヤが牽引されて上下左右に湾曲動作する。これにより、先端部14が体腔内の所望の方向に向けられ、撮像素子で撮像した観察部位を、画像処理回路を介してモニタ20に表示する。なお、符号21は、処置具が挿通される鉗子口であり、鉗子口21は、点線で示すように、挿入部11内に配される鉗子チューブ22に接続される。
【0022】
先端部14の先端面14aには、図2に示すように、観察窓23、照明窓24,25、ジェット噴射用噴射口26、鉗子出口27、送気・送水ノズル28などが露呈して設けられている。観察窓23には、体腔内の被観察部位の像光を取り込むための対物光学系の一部が配され、対物レンズ系の奧に撮像素子が内蔵されている。照明窓24,25は、照明用レンズの一部が組み込まれており、光源装置19から発する照明光をライトガイドで導いて体腔内の被観察部位に照射する。鉗子出口27は、鉗子チューブ22を介して手元操作部12に設けた鉗子口21と連通されている。送気・送水ノズル28は、観察窓23の汚れを落とすための洗浄水やエアーを噴射する。ジェット噴射用噴射口26は、手元操作部12に設けた送気・送水ボタンを操作することによって送気装置から供給される流体、例えば空気や二酸化炭素ガスなどを被観察部位に向けて噴射する。
【0023】
電子内視鏡10は、図3に示す撮像素子30を先端部14に備え、また、CPU31、基準クロック発振器32、タイミングジェネレータ(TG)33、アナログ信号処理回路(AFE:Analog Front End processor)34、クロックDRV(クロックドライバ)35、分圧回路36、及び監視部37等をユニバーサルコネクタ13に備えている。この場合、第1又は第2コネクタ13a、13bのいずれか一方又は両方に分けて備える。なお、少なくともクロックDRV(クロックドライバ)35、分圧回路36、及び監視部37を手元操作部12、又は先端部14に備えてもよい。
【0024】
先端部14と手元操作部12を介してユニバーサルコネクタ13との間はフレキシブルな多芯ケーブル等で接続されている。撮像素子30は、CCDやCMOS等であり、対物光学系38を通過した被写体光が受光面に入射するように配置されている。この受光面には、複数の色セグメントからなるカラーフィルタ(例えば、ベイヤー配列の原色カラーフィルタ)が配置されている。
【0025】
CPU31は、電子内視鏡10の各部の動作制御を行う。TG33は、基準クロック発振器32により生成される基準クロック信号に基づき、撮像素子30の駆動パルス(垂直/水平駆動パルスΦV1〜ΦV4,ΦH1,ΦH2、リセットパルスΦRS等)を生成するとともに、AFE34用の同期パルスを生成し、前記駆動パルス及び同期パルスをそれぞれ撮像素子30、及びAFE34に入力する。撮像素子30は、TG33から入力された駆動パルスに応じて撮像動作を行い、撮像信号VoutをAFE34に出力する。
【0026】
AFE34は、相関二重サンプリング回路(CDS)39、自動ゲイン制御回路(AGC)40、及びアナログ/デジタル変換器(A/D)41により構成されている。CDS39は、撮像素子30から出力される撮像信号に対して相関二重サンプリング処理を施し、撮像素子30で生じるリセット雑音及びアンプ雑音の除去を行う。AGC40は、CDS39によりノイズ除去が行われた撮像信号をゲイン調整する。A/D41は、AGC40により増幅された撮像信号を、所定のビット数のデジタル信号に変換し、ユニバーサルコネクタ13の接続部13cを介してプロセッサ装置17に送る。
【0027】
また、TG33は、AFE34から出力される撮像信号に対応した、水平同期信号、垂直同期信号、及びクロック信号を、それぞれ接続部13cを介してプロセッサ装置17に送る。
【0028】
プロセッサ装置17は、CPU50、アイソレーション回路(絶縁回路)51、デジタル信号処理回路(DSP)53、同期信号発生回路(SSG)54、デジタル/アナログ変換器(D/A)55、電源回路56、加算器57、グラフィックメモリ58、カウンタ59、及びビデオメモリ43等を備えている。
【0029】
CPU50は、プロセッサ装置17及び光源装置19の動作制御を行うとともに、電子内視鏡10の電源及び信号の伝送状態が異常であった場合にエラー処理を行うエラー処理部をもっている。エラー処理部は、電子内視鏡10から得られるエラー信号を受けた回数をカウンタ59でカウントし、カウンタ59の値が予め決めた値未満の場合には復帰信号を電子内視鏡10に送って電子内視鏡10の監視部での電源及び信号の遮断を復帰させ、かつ故障予測用のエラーメッセージをモニタ20に表示するように制御し、さらに、予め決めた回数に達した場合には前記監視部での遮断を継続し、故障警告用のエラーメッセージをモニタ20に表示するように制御する。
【0030】
アイソレーション回路51は、電子内視鏡10をプロセッサ装置17から絶縁分離するためのものである。デジタル信号処理回路(DSP)53は、撮像信号Voutに信号処理を施して映像信号を生成する。また、デジタル信号処理回路(DSP)53には、ビデオメモリ43が接続されている。ビデオメモリ43には、直前の映像信号の1フレーム分が随時更新して記憶されている。この直前の画像は、故障予測用のエラーメッセージを合成して表示するときに読み出される。
【0031】
同期信号発生回路(SSG)54は、補正された水平同期信号、垂直同期信号、及びクロック信号を発生する。デジタル/アナログ変換器(D/A)55は、DSP53から出力された映像信号をNTSC方式のアナログ映像信号に変換する。グラフィックメモリ58には、前記故障予測用、及び故障警告用のエラーメッセージを表す文字の画像が予め記憶されている。加算器57は、CPU50からの指令によりグラフィックメモリ58から読み出される文字の画像を映像信号に合成する。メモリ42は、CPU50に接続されており、プロセッサ装置17、電子内視鏡10、及び光源装置19等の駆動を制御するためのプログラム、過電流を検出したときのエラー処理用のプログラム、及びそのエラー処理用のプログラムで使用する閾値等が記憶されている。カウンタ59は、CPU50に接続されており、エラー信号を受けた回数を計数する。
【0032】
SSG54には、電子内視鏡10のTG33から出力された水平駆動パルスHD、垂直駆動パルスVD、及びクロックパルスCLKがアイソレーション回路51を介して入力される。SSG54は、入力された水平駆動パルス、垂直駆動パルス、及びクロックパルスの間の位相ずれを補正して、位相ずれが補正された水平駆動パルス、垂直駆動パルス、及びクロックパルスを発生し、これらの信号をDSP53に入力する。
【0033】
DSP53には、電子内視鏡10のAFE44から出力された撮像信号Voutがアイソレーション回路51を介して入力される。DSP53は、入力された撮像信号Voutに対し、色分離、色補間、ゲイン補正、ホワイトバランス調整、ガンマ補正、画像強調処理等を行い、輝度(Y)信号と色差(C)信号とからなるY/C形式の映像信号を生成する。DSP53は、生成した映像信号をD/A55に入力する。D/A55は、入力された映像信号をNTSC方式のアナログ映像信号に変換し、外部接続したモニタ20に出力する。
【0034】
撮像素子30の電源電圧は、電子内視鏡10の機種によって異なる。一方、プロセッサ装置17に内蔵した電源回路56から出力される電源電圧は一定に決められている。そこで、電子内視鏡10には、分圧回路36が内蔵されている。分圧回路36は、接続部13cを介してプロセッサ装置17から供給される電源電圧を、撮像素子30や各回路等、電子内視鏡10に内蔵した電子部品に供給するために必要な電源電圧に分圧する。監視部37は、そのうちの撮像素子30に供給する電源電流、及び、クロックDRV35に供給する電源電流を監視する。クロックDRV35は、垂直クロックDRV、水平クロックDRV、及びリセットクロックDRVからなり、TG33から供給されるクロックを、同期をとって撮像素子30に分配する。
【0035】
監視部37は、前記各電源電流及び供給電流の過電流を各々監視しており、予め決めた閾値を越える電流が流れたときにエラー信号を出力するとともに、これら電源電流及び供給電流の全てを遮断する。
【0036】
エラー信号は、接続部13cを介してプロセッサ装置17に送られる。プロセッサ装置17に供給されるエラー信号は、アイソレーション回路51を介してプロセッサ装置17を統括的に制御するCPU50に送られる。CPU50は、エラー信号を受けてから一定時間経過後に復帰信号を監視部37に送る。監視部37は、復帰信号に応答して前記遮断した電源電流及び供給電流の全てを復帰する。
【0037】
光源装置19は、光源70、光源ドライバ71、絞り機構73、集光レンズ74、及びCPU75を備えている。光源70は、キセノンランプやハロゲンランプ等から放たれる白色の光源である。光源ドライバ71は、光源70を駆動する。絞り機構73は、光源70とライトガイド72との間に配され、ライトガイド72への入射光量を増減させる。集光レンズ74は、絞り機構73を通過した光を集光してライトガイド72の入射端に導く。CPU75は、プロセッサ装置17のCPU50と通信し、光源ドライバ71及び絞り機構73の制御を行う。光源70から発せられた光は、絞り機構73及び集光レンズ74を介してライトガイド72に入射し、ライトガイド72内を伝搬して、照明レンズ75を介して照明窓24,25から体腔内へ照射される。
【0038】
なお、図3では、撮像素子30やクロックDRV35への電源電流及び供給電流はそれぞれ1本の線でしか記載されていないが、実際には異なる電圧の数だけある。例えば、撮像素子30への供給電源は3つ、垂直クロックDRVへの供給電源は3つ、水平クロックDRVへの供給電源は3つ、リセットクロックDRVへの供給電源は4つある。監視部37は、各電源電流及び供給電源の過電流を個別に監視する。
【0039】
監視部37は、図4に示すように、複数の監視回路60、及びこれらを統括的に制御する制御回路61で構成されている。各監視回路60は、電流センサ回路62、及び電流遮断回路63で構成されている。電流センサ回路62は電源電流又は供給電流の電流測定値が予め決めた閾値を越えた場合に過電流と判断して制御回路61にエラー信号を出力する。なお、閾値は、各電源電流及び供給電流ごとに決められている。電流遮断回路63は、電源電流及び供給電流を開閉するものであり、リセット可能なタイプとなっている。制御回路61は、電流センサ回路62のいずれかから送出されるエラー信号に応答して全ての電流遮断回路63を一斉に遮断する。また、エラー信号をプロセッサ装置17のCPU50、及び電子内視鏡10のCPU41にそれぞれ出力する。さらに、プロセッサ装置17のCPU50から送出される復帰信号に応答して全ての電流遮断回路63にその復帰信号を送って電流遮断回路63の全部をリセットさせる。
【0040】
なお、電子内視鏡10のCPU41は、エラー信号を受け取るごとに不揮発性メモリ64にエラー履歴を記憶する。このエラー履歴を電子内視鏡10側で記憶することで、次回プロセッサ装置17に接続されたときに、過去の異常を読み出すことができ、これによりメンテナンスの時期や修理の時期を予測することができる。
【0041】
上記構成の作用を、図5を参照しながら説明する。まず、電子内視鏡10のユニバーサルコネクタ13をプロセッサ装置17、及び光源装置19にそれぞれ接続する。次いで、プロセッサ装置17及び光源装置19の電源をオンにする。プロセッサ装置17の電源がオンすると、電源回路56から該プロセッサ装置17の各部に電源供給が行われるとともに、電源回路56から電子内視鏡10にも電源が供給される。電源が電子内視鏡10に供給されると、分圧回路36で所定の電圧に分圧されて電子内視鏡10に内蔵する各部に供給される。このうちの撮像素子30に供給する電源電圧、及びクロックDRV35に供給するための供給電圧は、監視部37を通って供給される。監視部37は、各電源電流及び供給電流の過電流を常に監視し、過電流ではない場合に供給を継続する。
【0042】
電子内視鏡10の挿入部11を体腔内に挿入し、光源装置19からの照明光で体腔内を照明しながら、撮像素子30により撮像される体腔内の画像をプロセッサ装置17に接続されたモニタ20で観察する。
【0043】
例えば、撮像素子30、それを含む電子基板上の回路、及び電線等での短絡(低抵抗をもった短絡及びほとんど抵抗の無い短絡を含む)や瞬時サージにより異常が生じると、電源電流が予め決めた閾値を越える。このとき、電流センサ回路62が過電流を検出し、制御回路61にエラー信号を送出する。制御回路61は、エラー信号に応答して各電流遮断回路63を制御して電源電流及び供給電流の全てを遮断する。また、エラー信号をプロセッサ装置17のCPU50に送出する。
【0044】
プロセッサ装置17のCPU50は、エラー信号に応答してカウンタ59でエラー信号を受け取った回数を計数する。
【0045】
また、プロセッサ装置17のCPU50は、エラー信号に応答してDSP53のビデオメモリ43に記憶された直前の画像を読み出す制御を行うとともに、グラフィックメモリ58に記憶されている故障予測用のエラーメッセージ、例えば「復帰中」又は「ワーニング」等の文字の画像を読み出してそれぞれ加算器57に送出する制御を行う。加算器57は直前に撮像した画像に故障予測用のエラーメッセージ画像を合成してD/A55に送る。これにより、モニタ20には、直前の画像に故障予測用のエラーメッセージが合成されて表示される。
【0046】
さらに、CPU50は、カウンタ59の値が予め決めた値未満の場合には、復帰信号を電子内視鏡10の制御回路61に送る。電子内視鏡10の制御回路61は、復帰信号に応答して全ての電流遮断回路63をリセットして電源電流及び供給電流を復帰させる。なお、電源電流及び供給電流を遮断してから復帰させるまでの時間を計数するタイマ回路を設けてこの間の時間を管理してもよい。この場合には、例えば0.1sec位に設定するのが望ましい。
【0047】
各電流遮断回路がリセットされると、再び監視部37での過電流の監視が開始される。瞬時サージやノイズ等の瞬時の過電流に対しては、次回に過電流が検出されないで復帰することもある。逆に、低抵抗をもった短絡や抵抗のない短絡の場合には、再び過電流が検出されることが多い。過電流が検出されない場合には、エラーメッセージの表示を解除してそのまま電源電流及び供給電流が供給される。一方、再び過電流が検出された場合には、制御回路61が各電流遮断回路63を制御して再び電源電流及び供給電流を遮断して故障予測用のエラーメッセージの表示を行う。この場合も前記直前の画像に合成して表示する。このように、予め決めたエラーの回数までは、過電流を検出してもすぐに故障とは判断せずに、電流遮断回路63をリセットする作業を何回か繰り返す。この間、直前の画像に故障予測用のエラーメッセージが重ねて表示されている。
【0048】
プロセッサ装置17のCPU50は、予め決めた回数の分だけエラー信号を受け取ると、電子内視鏡10の電流遮断回路63での電源電流及び供給電流を遮断した後に、故障警告用のエラーメッセージ、例えば「スコープを抜去してください。」又は「アングル角を戻してスコープを抜去してください。」等の文字の画像をモニタ20に表示するように制御する。このときの表示は、故障警告であるため、直前の画像に合成して表示させない方が好適である。これにより、術者は、挿入部11を直ちに体内から抜く作業を行い、その後、プロセッサ装置17の電源をオフしてから、ユニバーサルコネクタ13をプロセッサ装置17から外して新たな電子内視鏡に交換する作業を行う。このように、故障予測の次に、故障警告のメッセージを表示するようにしたから、安全な対処を迅速に行うことができる。
【0049】
なお、内視鏡を安全に交換することができるように、電源ボタンとは別に検査終了ボタンを設けているプロセッサ装置がある。このタイプを用いる場合には、電源ボタンをオフする代わりに、検査終了ボタンを操作すればよい。これにより、電子内視鏡10との間で伝送される供給電源及び送受信号の全てが遮断されるので、安全に内視鏡を交換することができる。
【0050】
上記実施形態では、プロセッサ装置17のCPU50が、エラー信号の回数をカウントし、そのカウント値が予め決めた値に達するまでは電流遮断回路63を復帰させるリトライを複数回行うように制御しているが、この制御を電子内視鏡10のCPUで行うようにしてもよい。この場合には、図6に示すように、電子内視鏡10のCPU80にカウンタ81を接続し、そのカウンタ81でエラー信号を受けた回数を計数する。このCPU80は、図4で説明した制御回路61の代わりの役目を行う。すなわち、CPU80は、電流センサ回路62のいずれかからエラー信号を受けることで全ての電流遮断回路63を一斉に遮断する。また、カウンタ81の値が予め決めた値未満の場合には、全ての電流遮断回路63に復帰信号を送って電流遮断回路63をリセットさせるとともに、プロセッサ装置17のCPU50に第1のエラー信号を送出してプロセッサ装置17で故障予測用のエラーメッセージ画像を表示させるように制御する。そして、カウンタ81の値が予め決めた値に達した時点で、プロセッサ装置17のCPU50に第2のエラー信号を送出してプロセッサ装置17で故障警告用のエラーメッセージ画像を表示させるように制御する。
【0051】
上記各実施形態では、電流センサ回路62で過電流の検出を行うことで伝送状態の異常(故障)と判断しているが、電流値が規定値よりも少ない場合も断線等の異常が考えられる。そこで、電線の周りに発生する磁気の量で電流を検出する電流センサを用いて電流値が規定値よりも少ない場合も伝送状態の異常と判断するようにしてもよい。
【0052】
また、上記各実施形態では、撮像素子30に供給する電源電流、及びクロックDRV35への供給電流との両方を監視するようにしているが、いずれか一方だけ監視してもよい。この場合、異常と判断したときには、少なくとも撮像素子30に供給する電源電流を遮断すればよい。また、監視する伝送ラインとしては、撮像素子30に供給する電源、及びクロックDRV35への供給電源に限らず、例えばクロックDRV35から撮像素子30に出力される水平駆動パルス、垂直駆動パルス、リセットパルス等の駆動信号を各々監視してもよい。この場合には、各信号の波形を正常範囲と比較して異常を検出すように構成すればよい。また、撮像素子30から出力される撮像信号を監視してもよい。
【0053】
また、上記各実施形態では、電流センサ回路62のいずれかが異常と判断した場合には制御回路61が電流遮断回路63の全てを同時に遮断させるように制御している。しかし、ラッチ回路が入っていないCCD等を用いる場合には、先に水平駆動パルス、垂直駆動パルス、及びリセットパルス等の駆動信号を遮断した後に、CCDの供給電圧を遮断しないとCCDが壊れるおそれがある。また、CCDの種類によっては、供給電圧のうちの正電源と負電源等の投入順番が異なる場合があり、この場合も順番を間違えるとCCDに負担がかかり最終的にはCCDを破壊するおそれがある。このようなCCDを使用する場合には、制御回路61がタイマ回路(遅延回路)等を利用して、遮断する順番、及び復帰させる順番が予め決められた正しい順番になるように電流遮断回路の全てを制御するように構成するのが望ましい。
【0054】
上記各実施形態では、エラーメッセージとして文字をモニタに表示しているが、スピーカ付きのモニタを用いて音で表示するように構成してもよい。この場合、故障予測用と故障警告用とで音色又はリズムを変えるように構成すればよい。
【0055】
上記各実施形態では、電流センサ回路を設けて過電流を検知しているが、電圧センサ回路を設けて電圧を監視してもよい。この場合も閾値を設けてそれを越える電圧を検出したときに異常と判断するように構成してもよい。また、下側の閾値も設けてそれ未満の電圧になったときにも異常と判断するように構成してもよい。
【0056】
なお、内視鏡には、挿入部の先端に、前方を照明するための半導体発光素子であるLED(light emitting diode)が複数内蔵されているものがある。このタイプの電子内視鏡を使用する場合には、プロセッサ装置17から供給される電源を電子内視鏡に内蔵した分圧回路で分圧してLEDに送る。この場合には、LED用の電源電流を前述した監視部で監視するのが、検査や診断中に照明が消える不都合、あるいは一部のLEDのみが故障して照明が暗くなる不都合等を予測することができるので、望ましい。
【0057】
さらに、内視鏡としては超音波内視鏡がある。この場合には、挿入部の先端部に超音波センサ素子が内蔵されている。この超音波センサ素子に対する供給電源及び送受信号を監視してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】内視鏡システムの構成を示す斜視図である。
【図2】先端部の端面を示す説明図である。
【図3】電子内視鏡システムの電気的概略を示すブロック図である。
【図4】監視部の電気的概略を示すブロック図である。
【図5】エラー処理の手順を示すフローチャート図である。
【図6】エラー信号のカウントを内視鏡側で行うようにした他の実施形態を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0059】
10 電子内視鏡
17 プロセッサ装置
37 監視部
57 加算器
59 カウンタ
62 電流センサ回路
63 電流遮断回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に挿入される挿入部と、前記挿入部の先端内部に設けられているセンサ素子と、前記センサ素子に供給するための電源と前記センサ素子に対して入出力する信号とのうちの少なくともいずれか一方の伝送状態を監視し異常を検出した場合に少なくとも前記電源を遮断する監視部と、を備えたことを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
前記監視部は、前記異常の回数をカウントするカウンタを備え、前記カウンタの値が予め決めた値に達するまでは前記遮断を一定時間経過後に復帰して再び前記監視を行うことを特徴とする請求項1記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記センサ素子に給電する電源電圧を生成するための分圧回路を備え、前記監視部は、前記分圧回路から出力される各供給電源を監視することを特徴とする請求項1又は2記載の内視鏡。
【請求項4】
前記異常の履歴を記憶するメモリを備えていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の内視鏡。
【請求項5】
体内に挿入される挿入部と、前記挿入部の先端内部に設けられているセンサ素子と、前記センサ素子に供給するための電源と前記センサ素子に対して入出力する信号とのうちの少なくともいずれか一方の伝送状態を監視し異常を検出した場合に少なくとも前記電源を遮断しかつエラー信号を送出する監視部と、を有する内視鏡と、
前記エラー信号を受ける回数を計数するカウンタを備え、前記カウンタの値が予め決めた値未満の場合には、前記監視部での遮断を一定時間経過後に復帰させて前記監視部での監視を再び行わせる復帰信号を前記監視部に送出するプロセッサ装置と、
を備えたことを特徴とする内視鏡システム。
【請求項6】
前記プロセッサ装置は、
前記センサ素子から送られる撮像信号に基づいて、外部接続されるモニタに表示するための画像を生成する画像生成部と、
前記エラー信号を受け取ることで前記モニタに表示するためのエラーメッセージ画像を生成するエラー画像生成部と、
を備えていることを特徴とする請求項5記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記エラー画像生成部は、前記カウンタの値が予め決めた値未満の場合には前記モニタに表示するための故障予測用のエラーメッセージ画像を生成し、また、前記カウンタの値が予め決めた値に達した場合には前記モニタに表示するための故障警告用のエラーメッセージ画像を生成することを特徴とする請求項5又は6記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記画像生成部は、直前の画像を記憶するビデオメモリを備え、前記エラー画像生成部は、少なくとも故障予測用のメッセージ画像を前記直前の画像に合成して生成することを特徴とする請求項7記載の内視鏡システム。
【請求項9】
体内に挿入される挿入部の先端内部に設けられているセンサ素子に供給するための電源と前記センサ素子に対して入出力する信号とのうちの少なくともいずれか一方の伝送状態を監視し異常の場合に少なくとも前記電源を遮断する監視ステップと、
前記エラー信号を受ける回数をカウンタでカウントし、前記カウンタの値が予め決めた値未満の場合には前記監視ステップでの遮断を一定時間経過後に復帰させる復帰ステップと、
前記カウンタの値が予め決めた値未満の場合にはモニタに表示するための故障予測用のエラーメッセージ画像を生成し、また、前記カウンタの値が予め決めた値に達した場合には前記モニタに表示するための故障警告用のエラーメッセージ画像を生成するエラー表示生成ステップと、
を含むことを特徴とする内視鏡システムの異常処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−5180(P2010−5180A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168600(P2008−168600)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】