説明

内視鏡システム及びその制御方法

【課題】撮像装置の動作が不安定になることなく、プロセッサ装置による制御の信頼性を向上させる。
【解決手段】プロセッサ装置14のCPU82で生成された制御データはシリアル線98を介して送信され、CMOS撮像装置54のレジスタ80に格納され、CMOS撮像装置54の各部はレジスタ値に従って各種処理を行う。また、CMOS撮像装置54から出力される撮像信号にはレジスタ値が重畳されて、LVDS線96を介してプロセッサ装置14に送信される。プロセッサ装置14のCPU82で撮像信号から抽出されたレジスタ値と制御データが一致するか否かを判断する判断処理(ステータスチェック処理)が行われ、これらのデータが不一致の場合には制御データがCMOS撮像装置54に再送信される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡システム及びその制御方法に係り、特に、挿入部先端にCMOS型固体撮像素子を有する撮像装置が内蔵された電子内視鏡と、撮像装置の動作を制御するとともに、撮像装置から出力された撮像信号に信号処理を施すプロセッサ装置と、を備えた内視鏡システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、内視鏡システムを利用した医療診断が盛んに行われている。内視鏡システムは、被検体内に挿入され、固体撮像素子により被検体内を撮像する撮像装置を備えた電子内視鏡(スコープ)と、撮像装置の動作を制御するとともに、撮像装置から出力される撮像信号に各種信号処理を施してモニタに内視鏡画像を表示させるプロセッサ装置とから構成される。
【0003】
電子内視鏡に搭載される固体撮像素子としては、従来ではCCD(Charge Coupled Device)型固体撮像素子が一般的であったが、近年ではCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型固体撮像素子が用いられるようになってきている。CMOS型固体撮像素子は、CCD型固体撮像素子に比べて、低電圧駆動が可能であり、多画素化と高速読出し化の要求に対応することが容易である。また、製造工程においてCMOSプロセスを使用でき、同一チップ内に駆動回路や処理回路などの周辺回路を混載することが可能であり、小型化にも有利である。
【0004】
例えば、特許文献1には、CMOS型固体撮像素子を有する撮像装置から出力される撮像信号を、外乱ノイズに強く、高速伝送が可能な低電圧差動伝送(LVDS)方式によりプロセッサ装置に伝送する内視鏡システムが開示されている。
【0005】
また、この内視鏡システムでは、プロセッサ装置で撮像装置の各部を制御するための制御データが生成され、シリアル信号形式により撮像装置に伝送される。このようにして伝送された制御データは撮像装置のレジスタに格納され、撮像装置の各部はレジスタに格納された設定データ(制御データ)に従って各種処理を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−201540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、内視鏡システムのように送受信間に距離があり、長い信号線を有するシステムでは、制御データの伝送が行われるシリアル線は、撮像信号が伝送されるLVDS線に比べて外乱ノイズの影響を受けやすく、制御信号の通信路の品質、CMOS型固体撮像素子の誤動作などが問題となり、制御データの伝送が不安定化し、その結果、受信側では、制御データの誤検出が生じるといった問題がある。
【0008】
特に、内視鏡挿入部の先端ではAPC(Argon Plasma Coagulation)処方が観察と併用される場合や、電気的な処置具が使用される場合などに電気ノイズの影響を受けやすく、CMOS型固体撮像素子が制御不能の状態に陥り、内視鏡画像を取得できない状態になる恐れがある。
【0009】
かかる問題に対して、プロセッサ装置からCMOSセンサに送信される制御データの伝送路にもLVDS方式に基づく伝送技術を適用することも考えられるが、撮像装置とプロセッサ装置との間を接続するケーブルの太径化を招くことになるので好ましくない。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、撮像装置の動作が不安定になることなく、プロセッサ装置による制御の信頼性を向上させた内視鏡システム及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、被検体に挿入される挿入部先端にCMOS型固体撮像素子を有する撮像装置が内蔵された電子内視鏡と、前記撮像装置の動作を制御するとともに、前記撮像装置から出力される撮像信号に信号処理を施してモニタに内視鏡画像を表示させるプロセッサ装置と、を備え、前記撮像装置から出力される撮像信号をLVDS伝送方式からなる第1の通信手段を介して前記プロセッサ装置に送信するとともに、前記プロセッサ装置で生成された前記制御データを前記第1の通信手段とは異なる第2の通信手段を介して前記撮像装置に送信する内視鏡システムであって、前記撮像装置は、前記プロセッサ装置から前記第2の通信手段を介して送信された前記制御データを設定データとして記憶するレジスタと、前記レジスタに記憶されている前記設定データを前記撮像信号に重畳する設定データ重畳手段と、を備え、前記プロセッサ装置は、前記撮像装置から前記第1の通信手段を介して送信された前記撮像信号に重畳されている前記設定データを抽出する設定データ抽出手段と、前記制御データ抽出手段により抽出された前記設定データが前記プロセッサ装置で生成された前記制御データと一致するか否かを判断する判断処理を行い、前記設定データと前記制御データが不一致の場合には、前記制御データを前記第2の通信手段を介して前記撮像装置に再送信する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、プロセッサ装置で生成された制御データは第2の通信手段を介して撮像装置に送信され、撮像装置のレジスタに設定データとして記憶され、撮像装置の各部はレジスタに記憶された設定データに従って各種処理を行う。また、撮像装置から出力される撮像信号にはレジスタに記憶されている設定データが重畳されて、LVDSからなる第1の通信手段を介してプロセッサ装置に送信される。プロセッサ装置では、撮像信号から設定データが抽出され、当該設定データと撮像装置で生成された制御データが一致するか否かを判断する判断処理が行われ、これらのデータが不一致の場合には制御データが撮像装置に再送信される。
【0013】
このため、外乱ノイズの影響により制御データが送信される伝送路(第2の通信手段)が不安定となって、受信側(撮像装置側)で制御データの誤検出が生じても、プロセッサ装置から制御データが再送信されるので、撮像装置の動作が不安定になることなく、プロセッサ装置による制御の信頼性を向上させることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記電子内視鏡の挿入部には被検体への処置を施す高周波処置具が挿入される鉗子チャンネルが設けられ、前記第1及び第2の通信手段は前記鉗子チャンネルと略平行に並設されていることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明は、本発明における好ましい一態様であり、鉗子チャンネルに挿入される高周波処置具から大量のノイズが発生しても、撮像装置の動作が不安定になることなく、安定した制御が可能となる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記プロセッサ装置は、前記判断処理を所定周期で繰り返し行うことを特徴とする。
【0017】
このように撮像信号から抽出された設定データがプロセッサ装置で生成された制御データと一致するか否かを判断する判断処理を周期的に行う態様が好ましく、撮像装置の動作が不安定になるのを未然に防止することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記プロセッサ装置は、前記高周波処置具に高周波電流が通電されたことを検知する検知手段を備え、前記制御手段は、前記検知手段により前記高周波処置具に高周波電流が通電されたことが検知された場合には前記所定周期よりも短い周期で前記判断処理を繰り返し行うことを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の発明において、前記制御手段は、前記プロセッサ装置又は前記撮像装置の電源が投入されたときは所定期間にわたって前記所定周期よりも短い周期で前記判断処理を繰り返し行うことを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の発明において、前記制御手段は、前記撮像装置の動作モードが変更された場合には所定期間にわたって前記所定周期よりも短い周期で前記判断処理を繰り返し行うことを特徴とする。
【0021】
請求項4乃至6に記載の各発明は、本発明における好ましい一態様であり、撮像装置の動作が不安定となりやすい場合には判断処理の周期を通常よりも短くする態様が好ましい。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の発明において、前記第2の通信手段は前記第1の通信手段より外径が小さいことを特徴とする。これは、本発明の好ましい一態様である。
【0023】
また、前記目的を達成するために、請求項8に記載の発明は、被検体に挿入される挿入部先端にCMOS型固体撮像素子を有する撮像装置が内蔵された電子内視鏡と、前記撮像装置の動作を制御するとともに、前記撮像装置から出力される撮像信号に信号処理を施してモニタに内視鏡画像を表示させるプロセッサ装置と、を備え、前記撮像装置から出力される撮像信号をLVDS伝送方式からなる第1の通信手段を介して前記プロセッサ装置に送信するとともに、前記プロセッサ装置で生成された制御データを前記第1の通信手段とは異なる第2の通信手段を介して前記撮像装置に送信する内視鏡システムの制御方法であって、前記プロセッサ装置で生成された前記制御データを前記第2の通信手段を介して前記撮像装置に送信する工程と、前記撮像装置に送信された前記制御データを設定データとしてレジスタに記憶する工程と、前記レジスタに記憶されている前記設定データを前記撮像信号に重畳する工程と、前記設定データが重畳された前記撮像信号を前記第1の通信手段を介して前記プロセッサ装置に送信する工程と、前記撮像信号に重畳されている前記設定データを抽出する工程と、前記撮像信号から抽出された前記設定データが前記プロセッサ装置で生成された前記制御データと一致するか否かを判断する判断処理を行い、前記設定データと前記制御データが不一致の場合には、前記制御データを前記第2の通信手段を介して前記撮像装置に再送信する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、外乱ノイズの影響により制御データが送信される伝送路(第2の通信手段)が不安定となって、受信側(撮像装置側)で制御データの誤検出が生じても、プロセッサ装置から制御データが再送信されるので、撮像装置の動作が不安定になることなく、プロセッサ装置による制御の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】内視鏡システムの概略構成を示した全体構成図
【図2】電子内視鏡の先端部を示した正面図
【図3】電子内視鏡の先端部を示した側面断面図
【図4】内視鏡システムにおける電子内視鏡及びプロセッサ装置の構成を示したブロック図
【図5】撮像信号のフォーマットの一例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0027】
図1は本実施形態に係る内視鏡システムの概略構成を示した全体構成図である。図1に示すように、本実施形態の内視鏡システム10は、電子内視鏡12、プロセッサ装置14、光源装置16などから構成される。電子内視鏡12は、患者(被検体)の体腔内に挿入される可撓性の挿入部20と、挿入部20の基端部分に連設された操作部22と、プロセッサ装置14及び光源装置16に接続されるユニバーサルコード24とを備えている。
【0028】
挿入部20の先端には、体腔内撮影用のCMOS撮像装置(撮像チップ)54(図3参照)などが内蔵された先端部26が連設されている。先端部26の後方には、複数の湾曲駒を連結した湾曲部28が設けられている。湾曲部28は、操作部22に設けられたアングルノブ30が操作されて、挿入部20内に挿設されたワイヤが押し引きされることにより、上下左右方向に湾曲動作する。これにより、先端部26が体腔内の所望の方向に向けられる。
【0029】
ユニバーサルコード24の基端は、コネクタ36に連結されている。コネクタ36は、複合タイプのものであり、コネクタ36にはプロセッサ装置14が接続される他、光源装置16が接続される。
【0030】
プロセッサ装置14は、ユニバーサルコード24内に挿通されたケーブル68(図3参照)を介して電子内視鏡12に給電を行い、CMOS撮像装置54の駆動を制御するとともに、CMOS撮像装置54からケーブル68を介して伝送された撮像信号を受信し、受信した撮像信号に各種信号処理を施して画像データに変換する。プロセッサ装置14で変換された画像データは、プロセッサ装置14にケーブル接続されたモニタ38に内視鏡画像として表示される。また、プロセッサ装置14は、コネクタ36を介して光源装置16と電気的に接続され、内視鏡システム10の動作を統括的に制御する。
【0031】
図2は電子内視鏡12の先端部26を示した正面図である。図2に示すように、先端部26の先端面26aには、観察窓40、照明窓42、鉗子出口44、及び送気・送水用ノズル46が設けられている。観察窓40は、先端部26の片側中央に配置されている。照明窓42は、観察窓40に関して対称な位置に2個配され、体腔内の被観察部位に光源装置16からの照明光を照射する。鉗子出口44は、挿入部20内に配設された鉗子チャンネル70(図3参照)に接続され、操作部22に設けられた鉗子口34(図1参照)に連通している。鉗子口34には、注射針や高周波メスなどが先端に配された各種処置具が挿通され、各種処置具の先端が鉗子出口44から露呈される。送気・送水用ノズル46は、操作部22に設けられた送気・送水ボタン32(図1参照)の操作に応じて、光源装置16に内蔵された送気・送水装置から供給される洗浄水や空気を、観察窓40や体腔内に向けて噴射する。
【0032】
図3は電子内視鏡12の先端部26を示した側面断面図である。図3に示すように、観察窓40の奥には、体腔内の被観察部位の像光を取り込むための対物光学系50を保持する鏡筒52が配設されている。鏡筒52は、挿入部20の中心軸に対物光学系50の光軸が平行となるように取り付けられている。鏡筒52の後端には、対物光学系50を経由した被観察部位の像光を、略直角に曲げてCMOS撮像装置54に向けて導光するプリズム56が接続されている。
【0033】
CMOS撮像装置(撮像チップ)54は、CMOS型の固体撮像素子(以下、「CMOSセンサ」という。)58と、CMOSセンサ58の駆動及び信号の入出力を行う周辺回路60とが一体形成されたモノリシック半導体(いわゆるCMOSセンサチップ)であり、支持基板62上に実装されている。CMOSセンサ58の撮像面58aは、プリズム56の出射面と対向するように配置されている。撮像面58a上には、矩形枠状のスペーサ63を介して矩形板状のカバーガラス64が取り付けられている。CMOS撮像装置54、スペーサ63、及びカバーガラス64は、接着剤を介して組み付けられている。これにより、塵埃などの侵入から撮像面58aが保護されている。
【0034】
挿入部20の後端に向けて延設された支持基板62の後端部には、複数の入出力端子62aが支持基板62の幅方向に並べて設けられている。入出力端子62aには、ユニバーサルコード24を介してプロセッサ装置14との各種信号の遣り取りを媒介するための信号線66が接合されており、入出力端子62aは、支持基板62に形成された配線やボンディングパッド等(図示せず)を介してCMOS撮像装置54内の周辺回路60と電気的に接続されている。信号線66は、可撓性の管状のケーブル68内にまとめて挿通されている。ケーブル68は、挿入部20、操作部22、及びユニバーサルコード24の各内部を挿通し、コネクタ36に接続されている。
【0035】
また、図示は省略したが、照明窓42の奥には、照明部が設けられている。照明部には、光源装置16からの照明光を導くライトガイドの出射端が配されている。ライトガイドは、ケーブル68と同様に、挿入部20、操作部22、及びユニバーサルコード24の各内部を挿通し、コネクタ36に入射端が接続されている。
【0036】
図4は内視鏡システム10における電子内視鏡12及びプロセッサ装置14の構成を示したブロック図である。図4に示すように、電子内視鏡12(挿入部20)の先端部26には、CMOSセンサ58と周辺回路60(図3参照)とが同一チップに形成されたCMOS撮像装置(撮像チップ)54が内蔵されており、周辺回路60として、アナログ信号処理回路(AFE)72、ヘッダ処理部74、パラレル/シリアル(P/S)変換部76、LVDS送信部78、レジスタ80、タイミングジェネレータ(TG)81等を備えている。
【0037】
CMOSセンサ58には、マトリクス状に配置される各画素ごとに形成されるフォトダイオードとフォトダイオードにより蓄積された信号電荷を電圧信号に変換する電圧変換回路と、電圧変換回路から電圧信号を読み出す画素のアドレス(位置)を指定する走査回路(垂直走査回路及び水平走査回路)と、走査回路によって読み出された画素の電圧信号を順に出力する出力回路とを備えている。
【0038】
AFE72は、相関二重サンプリング(CDS)回路、自動ゲイン回路(AGC)、及びアナログ/デジタル(A/D)変換器により構成されている。CDS回路は、CMOSセンサ58の各画素から順次読み出された画素信号からなる撮像信号に対して相関二重サンプリング処理を施し、CMOSセンサ58で生じるリセット雑音及びアンプ雑音の除去を行う。AGCは、CDS回路によりノイズ除去が行われた撮像信号を、プロセッサ装置14から指定されたゲイン(増幅率)で増幅する。A/D変換器は、AGCにより増幅された撮像信号を、所定のビット数のデジタル信号に変換して出力する。A/D変換器でデジタル化されて出力された撮像信号(デジタル撮像信号)はヘッダ処理部74を介してP/S変換部76に入力される。なお、ヘッダ処理部74については後述する。
【0039】
P/S変換部76は、AFE72のA/D変換器からヘッダ処理部74を介して入力される撮像信号をパラレル信号からシリアル信号に変換する。P/S変換部76により生成されたシリアル信号はLVDS送信部78に入力される。
【0040】
LVDS送信部78は、高速伝送が可能なLVDS(Low Voltage Differential Signal)伝送方式によりP/S変換部76から入力されるシリアル信号を差動信号として出力する。LVDS送信部78から出力された差動信号は2本の信号線からなるLVDS線96を通じてプロセッサ装置14のLVDS受信部84に入力される。
【0041】
レジスタ80は、CMOS撮像装置54における各部の処理内容を決定する各種制御データを記憶するメモリである。レジスタ80に記憶(格納)される制御データとしては、画素の走査方式(全画素走査/インターレース走査)、走査する画素領域(走査開始・終了する画素の位置)、シャッタ速度(露光時間)等のCMOS撮像装置54の各種動作モード(静止画優先モード、動画優先モード等)を決定するための各種制御情報が含まれる。これらの制御データは、プロセッサ装置14からシリアル線98を通じてレジスタ80に入力されるようになっている。レジスタ80にはプロセッサ装置14から入力される制御データが記憶され、CMOS撮像装置54の各部はレジスタ80に記憶されているレジスタ値(つまり、プロセッサ装置14から入力された制御データ)に従って各種処理を実行する。
【0042】
TG81は、プロセッサ装置14から与えられる基準クロックに基づき、固体撮像素子58から画素信号を読み出すための駆動パルスやAFE72等の各部の同期パルスを生成し、CMOS撮像装置54の各部に供給する。そして、CMOS撮像装置54の各部は、TG81から供給されるパルスに従って各種処理を実行する。
【0043】
プロセッサ装置14は、CPU82、LVDS受信部84、抽出部86、シリアル/パラレル(S/P)変換部88、画像処理回路(DSP)90、表示制御回路92等を備えている。
【0044】
CPU82は、プロセッサ装置14内の各部を制御するとともに、CMOS撮像装置54の各部を制御するための各種制御データを生成し、当該制御データをシリアル線98を通じてCMOS撮像装置54に送信する。なお、CPU82から送信された制御データは、上述したように、CMOS撮像装置54のレジスタ80に格納される。
【0045】
LVDS受信部84は、LVDS伝送方式に基づく通信を行うものであり、LVDS送信部78から差動信号として伝送された撮像信号(シリアル信号)を受信する。LVDS受信部84で受信した撮像信号は抽出部86を介してS/P変換部88に入力される。なお、抽出部86については後述する。
【0046】
S/P変換部88は、LVDS受信部84から抽出部86を介して入力される撮像信号をシリアル信号からパラレル信号に変換して、CMOS撮像装置54のP/S変換部76における変換前の元の撮像信号に復元する。S/P変換部88でパラレル信号に変換された撮像信号はDSP90に入力される。
【0047】
DSP90は、S/P変換部88から入力された撮像信号に対し、色補間、色分離、色バランス調整、ガンマ補正、画像強調処理等を施し、画像データを生成する。DSP90で各種画像処理が施されて生成された画像データは表示制御回路92に入力される。
【0048】
表示制御回路92は、DSP90から入力された画像データを、モニタ38に対応した信号形式に応じた映像信号に変換してモニタ38に出力する。
【0049】
本実施形態では、制御データの伝送路(シリアル線98を含むケーブル)は撮像信号の伝送路(LVDS線96を含むケーブル)よりも外径が小さいことが好ましい。一般に撮像信号の伝送路は各種ノイズ対策(差動信号化やシールドなど)が図られているため、ケーブルの外径が太くなっている。一方、制御データの伝送路も同様の対策を図ることが望ましいが太径化につながり、内視鏡挿入部の充填率増加、太径化につながるため好ましくない。したがって、上記のように制御データの伝送路は撮像信号の伝送路より外径が小さいことが好ましい。
【0050】
上記のように構成された内視鏡システム10で体腔内を観察する際には、電子内視鏡12、プロセッサ装置14、光源装置16、及びモニタ38の電源をオンにして、電子内視鏡12の挿入部20を体腔内に挿入し、光源装置16からの照明光で体腔内を照明しながら、CMOS撮像装置54により撮像される体腔内の画像をモニタ38で観察する。
【0051】
その際、プロセッサ装置14のCPU82ではCMOS撮像装置54の各部を制御するための制御データが生成され、当該制御データはシリアル線98を通じて送信され、CMOS撮像装置54のレジスタ80に格納される。そして、CMOS撮像装置54の各部は、レジスタ80に格納されたレジスト値(制御データ)に従って各種処理を行う。
【0052】
CMOSセンサ58で生成された撮像信号は、AFE72で各種処理が施された後、P/S変換部76でパラレル信号からシリアル信号に変換され、LVDS送信部78からLVDS伝送方式により差動信号としてプロセッサ装置14に送信される。
【0053】
プロセッサ装置14では、LVDS受信部84で受信した撮像信号がS/P変換部88で元のパラレル信号に変換される。DSP90では、入力された撮像信号に対して各種信号処理が施され、画像データが生成される。DSP90で生成された画像データは、表示制御回路92に入力される。表示制御回路92では、入力された画像データをモニタ38の表示形式に対応した変換処理が施され、映像信号が生成される。表示制御回路92で生成された映像信号はモニタ38へ出力される。これにより、画像データがモニタ38に内視鏡画像として表示される。
【0054】
ところで、本実施形態の内視鏡システム10のように送受信間の伝送距離が長くなるシステムでは、制御データの伝送が行われるシリアル線98は、撮像信号が伝送されるLVDS線96に比べて外乱ノイズの影響を受けやすく、制御信号の通信路の品質、CMOSセンサ58の誤動作などが問題となり、制御データの伝送が不安定化し、その結果、受信側(即ち、CMOS撮像装置54側)では、制御データの誤検出が生じるといった問題がある。
【0055】
そこで本実施形態では、かかる問題を解決するため、CMOS撮像装置54のレジスタ80に格納されている制御データ(レジスタ値;本発明の「設定データ」に相当)を撮像信号に重畳させて、外乱ノイズの影響を受けにくいLVDS線96を通じてプロセッサ装置14に出力できるようにするとともに、プロセッサ装置14のCPU82では、CMOS撮像装置54のレジスタ80に制御データが適切に反映されているか否かを判断する判断処理(ステータスチェック処理)を周期的に行い、レジスタ80に制御データが適切に反映されていない場合には、シリアル線98を通じてCMOS撮像装置54に制御データを再送信する、いわゆるフィードバック方式の制御が行われる。
【0056】
このような制御を実現するために、CMOS撮像装置54には、AFE72とP/S変換部76との間にヘッダ処理部74が設けられる。ヘッダ処理部74は、AFE72から入力された撮像信号(デジタル撮像信号)のヘッダ部に対して、レジスタ80に格納されているレジスタ値(制御データ)の書き込み処理を行う。なお、レジスタ値の書き込み処理は、撮像信号の1フィールド(又は1フレーム)毎に行われる。ヘッダ処理部74でレジスタ値の書き込み処理が行われた撮像信号はP/S変換部76及びLVDS送信部78を介してプロセッサ装置14に送信される。
【0057】
また、プロセッサ装置14には、LVDS受信部84とS/P変換部88との間に抽出部86が設けられる。抽出部86は、CMOS撮像装置54から送信された撮像信号に重畳されているレジスタ値を抽出する。抽出部86で抽出されたレジスタ値はCPU82に入力される。
【0058】
ここで、撮像信号のフォーマットの一例を図5に示す。図5に示すように、CMOS撮像装置54から出力される撮像信号の1フィールド(又は1フレーム)分のフォーマットを表しており、各画素の画素データが書き込まれる有効画素領域の他に、各種情報を設定可能なヘッダ部(ステータス情報領域)が含まれている。本実施形態では、このような撮像信号のヘッダ部に対して、CMOS撮像装置54のヘッダ処理部74がレジスタ値の書き込み処理を行う一方で、プロセッサ装置14の抽出部86は撮像信号のヘッダ部からレジスタ値を抽出してCPU82に入力する。
【0059】
プロセッサ装置14のCPU82は、抽出部86で抽出されたレジスタ値が入力されると、当該CPU82で生成した制御データと入力されたレジスタ値とを比較する。制御データとレジスタ値が不一致の場合には、受信側で制御データの誤検出が行われたものと判断して、CMOS撮像装置54に制御データを再送信する。一方、制御データとレジスタ値が一致する場合には、CMOS撮像装置54のレジスタ80に制御データが適切に反映されているので、制御データの再送信は行わない。以降、CPU82は、抽出部86からレジスタ値が入力される度に同様の判断処理を行う。
【0060】
本実施形態では、プロセッサ装置14のCPU82による判断処理(ステータスチェック処理)は所定周期で繰り返し行われることが好ましい。CPU82で判断処理が行われる周期は特に限定されるものではないが、撮像信号のフィールド(又はフレーム)周期の逓倍周期で行われることが好ましい。例えば、1/60秒のフレーム周期の10倍周期(1/6秒)で判断処理が行われる。このようにCPU82で判断処理を周期的に繰り返すことによって、プロセッサ装置14によるCMOS撮像装置54の安定制御を実現することが可能となる。
【0061】
本実施形態では、図4に示すように、プロセッサ装置14には高周波処置具(スネアやナイフ等の、いわゆる電気メス)に高周波電流が通電されたことを検知する検知手段94が設けられ、検知手段94により高周波処置具に高周波電流が通電されたことが検知されると、CPU82は通常時よりも短い周期で判断処理を行う態様が好ましい。高周波処置具から大量発生するノイズの影響により、CMOS撮像装置54の動作が不安定となりやすいが、このように判断処理の周期を通常時よりも短くすることによってプロセッサ装置14による制御の安定化を図ることができる。
【0062】
また、上記態様と同様に、プロセッサ装置14やCMOS撮像装置54の電源が投入された場合やCMOS撮像装置54の動作モード(静止画撮像モード/動画撮像モード)が変更された場合のように、CMOS撮像装置54の動作が不安定となりやすい場合には、プロセッサ装置14のCPU82は通常時よりも短い周期で所定期間にわたって判断処理を行う態様が好ましい。
【0063】
本実施形態では、抽出部86は撮像信号からレジスタ値を抽出する処理をフィールド(又はフレーム)周期毎に行うことは必ずしも必要ではない。例えば、CPU82の判断処理が行われる周期に合わせて撮像信号からレジスタ値を複数のフィールド(又はフレーム)周期毎に抽出する処理を行うようにすれば、プロセッサ装置14の負荷を軽減することができる。また、抽出部86では撮像信号からレジスタ値を抽出する処理をフィールド(又はフレーム)周期毎に行い、CPU82では抽出部86から入力されるレジスタ値のうち不要なレジスタ値を破棄するようにしてもよい。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の内視鏡システム10によれば、プロセッサ装置14のCPU82で生成された制御データはシリアル線98を介して送信され、CMOS撮像装置54のレジスタ80に格納される。そして、CMOS撮像装置54の各部はレジスタ値に従って各種処理を行う。また、CMOS撮像装置54から出力される撮像信号にはレジスタ値が重畳されて、LVDS線96を介してプロセッサ装置14に送信される。プロセッサ装置14のCPU82では、撮像信号から抽出されたレジスタ値と制御データが一致するか否かを判断する判断処理(ステータスチェック処理)が周期的に行われ、これらのデータが不一致の場合には制御データがCMOS撮像装置54に再送信される。
【0065】
このため、外乱ノイズの影響によってCMOS撮像装置54のレジスタ80に制御データが正常に反映されない場合でも、プロセッサ装置14でステータスチェック処理が定期的に行われ、必要に応じて制御データが再送信されるので、CMOS撮像装置54の動作が不安定になることなく、プロセッサ装置14による制御の信頼性を向上させることが可能となる。
【0066】
また、本実施形態の内視鏡システム10によれば、電子内視鏡12の挿入部20内に配設される鉗子チャンネル70に沿って略平行にLVDS線96やシリアル線98が並設され、鉗子チャンネル70に挿入される高周波処置具とLVDS線96やシリアル線98が近接配置される場合でも、高周波処置具から大量発生するノイズの影響を受けてCMOS撮像装置54が制御不能な状態に陥ることなく、安定した制御を実現することが可能となる。
【0067】
以上、本発明の内視鏡システム及びその制御方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0068】
10…内視鏡システム、12…電子内視鏡、14…プロセッサ装置、16…光源装置、20…挿入部、22…操作部、26…先端部、54…CMOS撮像装置(撮像チップ)、58…CMOSセンサ、74…ヘッダ処理部、76…LVDS送信部、78…レジスタ、82…CPU、84…LVDS受信部、88…抽出部、90…操作部、94…検知手段、96…LVDS線、98…シリアル線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に挿入される挿入部先端にCMOS型固体撮像素子を有する撮像装置が内蔵された電子内視鏡と、前記撮像装置の動作を制御するとともに、前記撮像装置から出力される撮像信号に信号処理を施してモニタに内視鏡画像を表示させるプロセッサ装置と、を備え、前記撮像装置から出力される撮像信号をLVDS伝送方式からなる第1の通信手段を介して前記プロセッサ装置に送信するとともに、前記プロセッサ装置で生成された制御データを前記第1の通信手段とは異なる第2の通信手段を介して前記撮像装置に送信する内視鏡システムであって、
前記撮像装置は、前記プロセッサ装置から前記第2の通信手段を介して送信された前記制御データを設定データとして記憶するレジスタと、前記レジスタに記憶されている前記設定データを前記撮像信号に重畳する設定データ重畳手段と、を備え、
前記プロセッサ装置は、前記撮像装置から前記第1の通信手段を介して送信された前記撮像信号に重畳されている前記設定データを抽出する設定データ抽出手段と、前記制御データ抽出手段により抽出された前記設定データが前記プロセッサ装置で生成された前記制御データと一致するか否かを判断する判断処理を行い、前記設定データと前記制御データが不一致の場合には、前記制御データを前記第2の通信手段を介して前記撮像装置に再送信する制御手段と、を備えたことを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
前記電子内視鏡の挿入部には被検体への処置を施す高周波処置具が挿入される鉗子チャンネルが設けられ、前記第1及び第2の通信手段は前記鉗子チャンネルと略平行に並設されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記プロセッサ装置は、前記判断処理を所定周期で繰り返し行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記プロセッサ装置は、前記高周波処置具に高周波電流が通電されたことを検知する検知手段を備え、
前記制御手段は、前記検知手段により前記高周波処置具に高周波電流が通電されたことが検知された場合には前記所定周期よりも短い周期で前記判断処理を繰り返し行うことを特徴とする請求項3に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記プロセッサ装置又は前記撮像装置の電源が投入されたときは所定期間にわたって前記所定周期よりも短い周期で前記判断処理を繰り返し行うことを特徴とする請求項3又は4のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記撮像装置の動作モードが変更された場合には所定期間にわたって前記所定周期よりも短い周期で前記判断処理を繰り返し行うことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記第2の通信手段は前記第1の通信手段より外径が小さいことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
被検体に挿入される挿入部先端にCMOS型固体撮像素子を有する撮像装置が内蔵された電子内視鏡と、前記撮像装置の動作を制御するとともに、前記撮像装置から出力される撮像信号に信号処理を施してモニタに内視鏡画像を表示させるプロセッサ装置と、を備え、前記撮像装置から出力される撮像信号をLVDS伝送方式からなる第1の通信手段を介して前記プロセッサ装置に送信するとともに、前記プロセッサ装置で生成された制御データを前記第1の通信手段とは異なる第2の通信手段を介して前記撮像装置に送信する内視鏡システムの制御方法であって、
前記プロセッサ装置で生成された前記制御データを前記第2の通信手段を介して前記撮像装置に送信する工程と、
前記撮像装置に送信された前記制御データを設定データとしてレジスタに記憶する工程と、
前記レジスタに記憶されている前記設定データを前記撮像信号に重畳する工程と、
前記設定データが重畳された前記撮像信号を前記第1の通信手段を介して前記プロセッサ装置に送信する工程と、
前記撮像信号に重畳されている前記設定データを抽出する工程と、
前記撮像信号から抽出された前記設定データが前記プロセッサ装置で生成された前記制御データと一致するか否かを判断する判断処理を行い、前記設定データと前記制御データが不一致の場合には、前記制御データを前記第2の通信手段を介して前記撮像装置に再送信する工程と、を含むことを特徴とする内視鏡システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−206337(P2011−206337A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78150(P2010−78150)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】