説明

内視鏡装置

【課題】検出された画素データの情報を有効に利用し、高画質の観察画像を維持する。
【解決手段】光ファイバ先端部を共振させて照明光を螺旋状走査させる内視鏡装置において、サンプリングモードが設定されると、各スパイラル走査ラインで定められたサンプリング画素間隔で対象となるサンプル画素、およびその前後に隣接する3画素に基づいて観察画像を構成するイメージ画素を生成する。例えば、3画素の平均値をもつイメージ画素を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を走査させて観察画像を取得する内視鏡装置に関し、特に、観察画像形成に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡装置として、CCDなどのイメージセンサの代わりに走査型光ファイバを備えた内視鏡装置が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。そこでは、シングルモード光ファイバなどの走査型光ファイバが設けられ、先端部分は、圧電アクチュエータによって保持される。
【0003】
圧電アクチュエータは、振動振幅を変調および増幅させながら、ファイバ先端部を中心から外側へ螺旋状に振動させる(共振させる)。これにより、光ファイバを通った照明光は、観察部位に向けて螺旋状に放射される。光走査は所定のフレームレートおよび所定のサンプリングレートに合わせて実行され、螺旋状走査が周期的に行われる。
【0004】
観察部位で反射した光は、プロセッサもしくはスコープ先端部に設けられたフォトセンサによって検出され、画素信号が生成される。スパイラル状走査に合わせて検出された1フレーム分の画素信号は走査位置と対応づけられ、画素位置が特定される。すなわち、スパイラル状に検出される一連の画素がラスタ配列される。その後、画素信号に対する信号処理によって映像信号が生成される。
【特許文献1】米国特許6,294,775号明細書
【特許文献2】米国特許7,159,782号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サンプリングレート一定の場合、すべての検出画素をラスタ配列することはできず、間引き処理(ダウンサンプリング)などによって一部の画素を観察画像形成に使用する。特に、中心位置から外側に向けて走査を行う螺旋状走査では、中心に近いエリアほどスパイラル状走査ラインの外周長さが短いため、使用されずに破棄される画素が多い。
【0006】
そのため、走査中に得られる画素信号を十分に有効活用していない。また、間引き処理の場合、一定間隔で画素を抽出するため、ノイズの少ない隣接画素があったとしてもノイズの大きいサンプル対象画素を取得することになる。その結果、観察画像の画質が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の内視鏡装置は、光源からの照明光をスコープ先端部へ伝達する光ファイバと、光ファイバ先端部を駆動することによって、観察対象に対し照明光を所定のフレームレートで螺旋状に走査させる走査手段と、観察対象からの反射光に基づき、所定のサンプリングレートに従って画素信号を順次検出する画素検出手段とを備える。
【0008】
さらに本発明の内視鏡装置は、所定のサンプリングレートによって検出される一連の画素(以下、サンプル画素という)に基づいて、観察画像を構成する画素(以下、イメージ画素という)を生成する画素生成手段を備え、画素生成手段は、イメージ画素を、サンプル画素一群に基づいて生成することを特徴とする。ここで、サンプル画素群は、間引き処理を行うときにイメージ画素の位置に対応する画素(以下、対象サンプル画素という)を中心とし、その周辺サンプル画素を含めた領域によって規定される一連の画素を表す。
【0009】
周辺のサンプル画素を利用して、イメージ画素を生成することにより、ノイズのあるサンプル画素そのものを抽出することによって画質低下が生じることを防止する。イメージ画素生成手法として様々な方法があるが、例えば、画素生成手段は、平均値算出処理、ローパスフィルタ処理、中心サンプル画素抽出処理、最大輝度画素抽出処理のいずれかを実行するのがよい。
【0010】
周辺のサンプル画素としては、リアルタイムのサンプル画素情報でイメージ画素を生成するため、同一のスパイラル状走査ラインに沿った前後のサンプル画素を利用するのがよい。例えば、画素生成手段は、対象サンプル画素と、対象サンプル画素に対しスパイラル状走査ラインに沿って前後にある周辺サンプル画素とをサンプル画素群と定め、イメージ画素を生成する。
【0011】
一方で、対象となるサンプル画素の周辺にあるサンプル画素をできる限り利用するのが望ましい。そのため、前回のフレーム期間において検出されたサンプル画素を利用するのがよい。例えば、画素生成手段が、前回フレームサンプル画素一群に基づいてイメージ画素を生成する。ここで、前回フレームサンプル画素一群は、対象サンプル画素に基づくサンプル画素群に相当する前フレーム期間におけるサンプル画素群を示す。
【0012】
さらに、前回フレーム期間のサンプル画素とリアルタイムに検出されるサンプル画素の両方を利用して、空間、時間の両方において関連するサンプル画素をできるだけ利用するのが望ましい。そのため、画素生成手段が、前回フレームサンプル画素一群と、今回のフレーム期間におけるサンプル画素一群とに基づいて、イメージ画素を生成するのが望ましい。
【0013】
各螺旋状走査ラインは径が異なるため、サンプル画素間隔も異なる。走査エリアの中央付近では、使用されないサンプル画素が多い。その一方で、走査エリアの周辺部分におけるスパイラル状走査ラインでは、多くのサンプル画素がイメージ画素として使用される。この場合、近隣のサンプル画素情報をあまり多く取り入れると、イメージ画素がその周辺で均一化されてしまう。そのため、画素生成手段は、走査エリアの中で、イメージ画素に対するサンプル画素の数が周辺部に比べて大きい中央エリアを走査している間、イメージ画素を生成するのがよい。中央エリアは、走査中心を含んだサンプル画素の過密なエリアを表し、周辺領域、すなわち対象サンプル画素が実質的にほとんどそのまま画像を構成する画素として使用される領域より内部側領域を示す。
【0014】
例えば、画素生成手段は、走査エリアのうち、イメージ画素に対するサンプル画素一群のサンプル数が所定値を超える走査範囲で、イメージ画素を生成する。イメージ画素を生成しない走査範囲では、近隣のサンプル画素情報を混合させるのではなく、サンプル画素を取捨選択するのがよい。そのため、画素生成手段が、スパイラル状走査ラインごとに定められた画素間隔でサンプル画素を抽出するのがよい。
【0015】
観察画像の輝度レベルが低いときなどは、ローパスフィルタ処理などを行い、あるいはサンプル画素群を構成するサンプル画素の数を多くするのが望ましい。観察画像の明るさ変化に応じて適切なサンプル画素群の構成、あるいは明るさに応じて適切なイメージ画素生成手法を設定することが要求される。そのため、画素生成手段は、1フレーム分のサンプル画素の輝度レベルに応じて、サンプル画素一群のサンプル数、もしくはイメージ画素の生成処理方法の少なくともいずれかを変更するのがよい。
【0016】
本発明の内視鏡画素生成装置は、観察対象に対し照明光を所定のフレームレートで螺旋状に走査させるとき、所定のサンプリングレートに従って画素信号を順次検出する画素検出手段と、所定のサンプリングレートによって検出される一連のサンプル画素に基づいて、観察画像を構成するイメージ画素を生成する画素生成手段とを備え、画素生成手段が、イメージ画素を、該イメージ画素に応じた対象サンプル画素を中心とし、その周辺サンプル画素を含めたサンプル画素群に基づいて、生成することを特徴とする。
【0017】
本発明の内視鏡画素生成方法は、観察対象に対し照明光を所定のフレームレートで螺旋状に走査させるとき、所定のサンプリングレートに従って画素信号を順次検出し、所定のサンプリングレートによって検出される一連のサンプル画素に基づいて、観察画像を構成するイメージ画素を生成する画素生成方法であって、イメージ画素を、該イメージ画素に応じた対象サンプル画素を中心とし、その周辺サンプル画素を含めたサンプル画素群に基づいて、生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、検出された画素データの情報を有効に利用し、高画質の観察画像を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本実施形態である内視鏡装置のブロック図である。図2は、走査型光ファイバを模式的に示した図である。
【0021】
内視鏡装置は、スコープ10とプロセッサ30とを備え、スコープ10には、照明用の光ファイバ(以下、走査型光ファイバという)17と観察対象からの反射光を伝送する光ファイバ(以下、イメージファイバという)14が設けられている。イメージファイバ14の先端部は分岐しており、光学レンズ19の周囲に配置されている。スコープ10はプロセッサ30に着脱自在に接続され、また、プロセッサ30にはモニタ60が接続される。
【0022】
プロセッサ30には、R,G,Bの光をそれぞれ発光するレーザー光源20R,20G,20Bが設けられ、レーザードライバ22R、22G、22Bによって駆動される。R,G,Bの光を同時発光させることにより、白色光を観察対象に向けて照射する。
【0023】
レーザー光源20R,20G,20Bによって放射された白色光は、ハーフミラー群24、集光レンズ25によって集光され、走査型光ファイバ17に入射する。入射した白色光は、走査型光ファイバ17を通ってスコープ先端部10Tへ送られる。
【0024】
図2に示すように、スコープ先端部10Tから射出する照明光を走査させるスキャナデバイス(以下、SFEスキャナという)16が、スコープ先端部10Tに設けられている。SFEスキャナ16はアクチュエータ18備え、スコープ10内に設けられたシングルモード型の走査型光ファイバ17は、円筒状アクチュエータ18の軸に挿通されて保持される。
【0025】
スコープ先端部10Tに固定されたアクチュエータ18は、ピエゾ素子によるチューブ型アクチュエータであり、走査型光ファイバ17の先端部17Aを二次元的に共振させる。アクチュエータ18には、水平方向(X軸方向)、垂直方向(Y軸方向)にそれぞれ相対する2対の圧電素子(図示せず)が設けられ、水平方向の共振、垂直方向の共振をそれぞれ行う。
【0026】
アクチュエータ18は、直交する2方向に沿って所定の共振モードでファイバ先端部17Aを共振させる。カンチレバー状に支持されるファイバ先端部17Aは、水平方向の共振、垂直方向の共振を受けることにより先端面17Sの向きを変え、軸中心から外側へ向けて螺旋状に動く。
【0027】
その結果、先端面17Sから射出し、光学レンズ19を通って観察部位Sに到達する光の軌跡PTは、中心から外側へ向かう螺旋状の走査線になる。螺旋状走査線PTの径方向間隔をできる限り密にすることによって、観察対象Q全体が順に照射されていく。
【0028】
観察対象Qで反射した光は、イメージファイバ14に入射し、プロセッサ30へ導かれる。イメージファイバ14からの反射光は、光学レンズ26、ハーフミラー群27によってR,G,Bの光に分離され、それぞれフォトセンサ28R、28G、28Bに入射する。フォトセンサ28R、28G、28Bは、それぞれR,G,Bの光をR,G,Bに応じた画素信号に変換する。
【0029】
R,G,Bに応じた画素信号は、A/D変換器29R、29G、29Bにおいてデジタル画素信号に変換され、信号処理回路32へ送られる。信号処理回路32では、順次送られるR,G,Bのデジタル画素信号と照明光の走査位置とのマッピングにより、画素位置が特定され、1フレーム分のデジタル画素信号がラスタ配列される。1フレーム分のデジタル画素信号は、所定のフレームレートおよびサンプリングレートに従って検出され、一時的に第1画像メモリ31Aもしくは第2画像メモリ31Bに格納される。
【0030】
信号処理回路32では、デジタル画素信号に対してホワイトバランス調整、色変換処理など様々な画像信号処理が施され、画像信号が生成される。1フレーム分の画像信号は、第1画像メモリ31A、第2画像メモリ31Bへ交互に格納される。画像信号はエンコーダ37を介してモニタ60に送信され、フルカラーの観察画像がモニタ60に表示される。
【0031】
CPU、ROM、RAMを含むコントローラ40は、プロセッサ30の動作を制御し、ROMには動作制御に関するプログラムが格納されている。コントローラ40は、信号処理回路32、タイミングコントローラ34、レーザードライバ22R、22G、22Bなどへ制御信号を出力する。
【0032】
タイミングコントローラ34は、レーザードライバ22R、22G、22B、およびSFEスキャナ16に駆動信号を出力するファイバドライバ36A、36Bに対して同期信号を出力し、ファイバ先端部17Aの振動と発光タイミングを同期させる。また、タイミングコントローラ34は、画素信号を検出するためのクロックパルス信号(駆動信号)をフォトセンサ28R,28G,28Bへ出力する。
【0033】
サンプリングモードボタン62は、サンプリングを変更して観察画像の画質を変えるためのモードであり、サンプリングモードボタン62が操作されると、後述するサンプリング処理に基づいた画像処理が行われる。
【0034】
図3は、信号処理回路32の電気ブロック図である。
【0035】
信号処理回路32は、遅延回路72、平均算出回路74、中心データ検出回路76、ローパスフィルタ(LPF)回路78、最大輝度検出回路80を備え、各回路はセレクタ82と接続する。また、遅延回路72、セレクタ82は、セレクタ84に接続されている。デジタル化された画素信号が信号処理回路32に入力されると、所定のサンプリングレート(クロック周波数)によって検出された画素信号が遅延回路72、最大輝度検出回路80に入力される。
【0036】
遅延回路72は、通常観察において検出された一連のサンプル画素の中から、観察画像を形成する画素を所定画素間隔で抽出する。すなわち、間引き処理を行う。一方、平均算出回路74では、走査ラインに沿って前後に隣接する画素を含めた複数の画素(サンプル画素一群)の平均画素が生成される。
【0037】
中心データ検出回路76は、複数の画素の中心に当たる画素を抽出し、LPF回路78は、周波数成分の低い画素を抽出する。一方、最大輝度検出回路は、複数のサンプル画素の中で最大輝度をもつサンプル画素を抽出する。
【0038】
また、信号処理回路32は、YC変換部86、ヒストグラム生成回路88、演算部90を備え、1フレーム分のサンプル画素信号がYC変換部に順次入力される。YC変換部86で生成された輝度信号に基づき、1フレーム分の画素信号に応じたヒストグラムデータがヒストグラム生成回路88において生成される。演算部90では、ヒストグラムデータから観察対象の明るさレベルが算出される。ここでは、平均輝度レベルが算出される。
【0039】
セレクタ82は、平均算出回路74、中心データ検出回路76、LPF回路78、最大輝度検出回路80のいずれかの画素信号をセレクタ84へ出力する。また、演算部90から送られてくる明るさレベルの検出信号に基づき、回路を切り替え制御する。
【0040】
さらに信号処理回路32は、スパイラルカウンタ92、比較器96、AND回路98を備える。スパイラルカウンタ92は、螺旋状走査を行っている間にスパイラル数をカウントし、比較器96では、今現在のスパイラル数と設定された閾値とが比較される。
【0041】
AND回路98は、サンプリングモードボタン62および比較器96からの信号に基づいてセレクタ84へ制御信号を出力する。セレクタ84は、遅延回路72からの抽出画素信号、もしくはセレクタ82からの抽出画素信号いずれかを第1画像メモリ31Aに出力する。
【0042】
図4は、観察画像を構成する画素の生成手法を示した図である。図5は、走査エリアに対するスパイラル状走査ラインを示した図である。図4、図5を用いて、画素生成の手法を説明する。
【0043】
通常観察の場合、遅延回路72においてサンプル画素の間引き処理が行われ、一定画素間隔で対象となる画素信号が取り出される(図4参照)。サンプリングレートは1スパイラル走査期間で一定であり、ここでは2000サンプル画素が各スパイラルにおいて検出される。
【0044】
図5に示すように、走査エリアMの範囲を走査することによって構成される観察画像は、ここでは500×500のピクセルによって構成される。すなわち、250スパイラルによる螺旋状走査が各フレーム期間において行われる。ただし、図5では走査スパイラルの径方向に間隔が生じているが、実際には密になっている。
【0045】
走査エリアMの中心Oを含み、サンプル画素が過密な中央エリアMCでは、走査ラインの外周長さが周辺部に比べて短い。その一方で、サンプリングレートは、中央エリアおよび周辺部においても一定(=2000/スパイラル)である。
【0046】
そのため、中央エリアMCのスパイラル状走査ラインでは、多くのサンプル画素が観察画像の画素として用いられず、破棄される。一方、周辺部のスパイラル状走査ラインでは、ほとんどのサンプル画素が使用される。したがって遅延回路72では、スパイラル数に応じて間引き画素間隔が調整される。図5では、20画素間隔でサンプル画素を抽出している。
【0047】
サンプリングモードボタン62が操作されてサンプリングモードが設定されると、通常観察とは異なる手法によって観察画像の画素が生成される。具体的には、定められた画素間隔に従って対象となるサンプル画素を選定するとともに、その対象サンプル画素の走査ライン上に沿った前後の周辺画素を利用する。
【0048】
図4には、平均値算出回路74における画素生成が図示されている。平均値算出回路74では、シフトレジスタによってサンプル画素信号を蓄積し、時系列的に検出されるサンプル画素を空間的に配列させる。そして、対象画素に応じたサンプル画素とともに、走査ライン上の前後にある2つの隣接するサンプル画素を利用して、3つのサンプル画素から平均画素を生成する。
【0049】
一方、LPF回路78では、3つの画素P0、P1、P2のうち画素値が最も低いサンプル画素が選択される。また、最大輝度検出回路80では、最大の輝度レベルをもつサンプル画素が選択される。このように、周辺画素を含めた一群の画素に基づいて観察画像を形成する画素が生成される。
【0050】
例えば平均値算出回路74によって平均画素を算出する場合、対象サンプル画素をP20とすると、P20および前後の隣接画素P19、P21の平均値をもつ画素PVが生成される(図4参照)。なお、図4、図5ではR,G,Bいずれかの画素信号に対する画素生成を示したが、R,G,Bいずれの画素信号に対しても同様の処理が行われる。
【0051】
図6は、画素生成処理を示したフローチャートである。
【0052】
ステップS101では、サンプリングモードが設定されたか否かが判断される。サンプリングモードが設定されていない場合、ステップS104に進み、間引き処理による画素生成処理(ここでは、固定サンプリングスキャンという)が実行される。
【0053】
サンプリングモードが設定されると、ステップS102に進み、現在の走査ライン数、すなわちスパイラル数が閾値以下であるか否かが判断される。ここでは、サンプル画素の相当部分を破棄する中央エリアMCにおいて図4に示す画素生成を実行し、それ以外の周辺部では、通常観察と同様の間引き処理によるサンプル画素抽出を行う。
【0054】
走査ライン数が中央エリアMCの最外周に応じたスパイラル数以下である場合、ステップS103に進み、隣接画素を利用した画素生成処理が実行される。ここでは、平均値算出回路74において平均画素が生成される。
【0055】
さらにステップS103では、ヒストグラムデータに基づく明るさレベルが所定値以下の場合、画素にノイズが多いと判断し、LPF回路78に切り替えて画素を生成する。LPF回路78はノイズ除去回路として機能し、ノイズ画素の影響を受けずに画素生成を行うことができる。そして、明るさレベルが所定値以下の場合、画素生成に用いるサンプル画素の数を3画素から5画素に変更する。これにより、ノイズ画素の影響が弱まる。
【0056】
一方、中央エリアMCの範囲外まで走査が進むと、間引き処理によるサンプル画素抽出が行われる(S104)。このような螺旋状走査が検査終了まで行われる(S105)。
【0057】
このように本実施形態によれば、光ファイバ先端部を共振させて照明光を螺旋状走査させる内視鏡装置において、サンプリングモードが設定されると、各スパイラル走査ラインで定められたサンプリング画素間隔で対象となるサンプル画素、およびその前後に隣接する3画素に基づいて観察画像を構成する画素を生成する。例えば、3画素の平均画素を生成する。
【0058】
単に間引き処理によってサンプル画素をそのままイメージ画素として抽出しないことにより、ノイズ画素の影響を抑え、有益な画素からイメージ画素を生成することができ、高画質の観察画像を維持することができる。
【0059】
次に、図7〜図12を用いて、第2の実施形態である内視鏡装置について説明する。第2の実施形態では、前回のフレーム期間で検出されたサンプル画素を参照しながら観察画像の画素を生成する。それ以外の構成は、実質的に第1の実施形態と同じである。
【0060】
図7は、第2の実施形態における信号処理回路32の電気ブロック図である。
【0061】
信号処理回路32は、周辺画素情報部100を備える。周辺画素情報部100には、1フレーム分のサンプル画素が入力され、平均算出回路74、中心データ検出回路76、LPF回路78、最大輝度検出回路80へ周辺画素信号を出力する。平均算出回路74、中心データ検出回路76、LPF回路78、最大輝度検出回路80は、セレクタ84と接続され、セレクタ84はいずれかの画素信号を第1画像メモリ31A又は第2画像メモリ31Bに出力する。
【0062】
周辺画素情報部100には、1フレーム分のサンプル画素信号が順次入力される。そして次のフレーム期間では、前フレーム期間の画素情報としての画素信号が、平均算出回路74、中心データ検出回路76、LPF回路78、最大輝度検出回路80へ出力される。
【0063】
図8は、周辺画素情報部100のブロック図である。図9は、前フレーム期間における対象サンプル画素を中心とした画素ブロックを示した図である。
【0064】
周辺画素情報部100は、スパイラル数(=250)に応じた数だけFIFO型のバッファメモリ102〜102250を備え、各スパイラル状走査ラインにおいて検出されたサンプル画素信号が、対応するバッファメモリに格納される。なお、102〜102250と同様の250個のバッファメモリ(図示せず)がさらに設けられている。
【0065】
周辺画素情報部100には、3つの加算回路104、106、110と、6つの遅延素子108A〜108Fが設けられている。これにより、複数のスパイラル状走査ラインに跨って空間的に隣接する9つのサンプル画素(サンプル画素一群)が加算される。そして、乗算回路112により、9つのサンプル画素の平均値が周辺画素情報として算出される。
【0066】
図9には、対象サンプル画素を中心とした9つのサンプル画素(サンプル画素一群)が示されている。n番目のスパイラル状走査ラインにある対象サンプル画素P20に対し、上下左右、斜め方向に隣接する8つのサンプル画素P19n−1、P20n−1、P21n−1、P19、P21、P19n+1、P19n+1、P20n+1、P21n+1が、画素ブロックとして定められる。この9つの画素からなるブロックを単位として、前回のフレーム期間の画素情報が取得される。
【0067】
このように、周辺画素情報部100では、前回のフレーム期間における空間的に密接するサンプル画素群から画素情報を算出する。すなわち、同一走査ライン上にあるサンプル画素だけでなく、隣接するスパイラル状走査ラインのサンプル画素を用いることによって、空間的近傍にある多くのサンプル画素を参照することができる。
【0068】
図10は、第2の実施形態における画素の生成方法を示した図である。
【0069】
可変サンプリングモードが設定されると、対象サンプル画素P20の前後のサンプル画素P19、P21とともに、周辺画素情報部100で算出された、前回フレーム期間において検出された対象サンプル画素P20に対する周辺画素P20Bが加えられる。そして、4つの画素P19、P20、P21、P20Bの平均値をもつ平均画素PVが生成される。
【0070】
図11は、画素信号記録処理のタイミングチャートを示した図である。
【0071】
n−1フレーム期間の間、周辺画素情報部100のバッファメモリ102〜102250とには、1フレーム分すべてのサンプル画素信号が格納される。サンプル画素信号の検出は、螺旋状走査の期間、すなわち走査開始位置から最外周走査ラインの終了位置まで走査にかかる期間FAに行われる。
【0072】
そして、nフレーム期間では、格納されたサンプル画素信号が読み出される。そして、nフレーム期間に検出されたサンプル画素と周辺画素情報部100から出力される前回フレーム期間での周辺画素情報に基づいて、観察画像を構成する対象画素が生成され、第2画像メモリ31Bへ格納される。一方、第1画像メモリ31Aに格納されたn−1フレーム期間の対象画素データが読み出される。
【0073】
一方、nフレーム期間において検出される1フレーム分の全サンプル画素信号は、もうひとつのバッファメモリ群に格納される。そして、n+1フレーム期間で1フレーム分の全サンプル画素信号が読み出され、新たに生成される対象画素データが第1画像メモリ31Aに格納される。
【0074】
次に、図12を用いて、第3の実施形態である内視鏡装置について説明する。第3の実施形態では、光ファイバ先端部が走査開始位置に戻る間、1フレーム分のサンプル画素信号を検出する。
【0075】
図12は、第3の実施形態における画素信号記録処理のタイミングチャートである。
【0076】
図12に示すように、n−1フレーム期間では、光ファイバ先端部17Aが最外周走査ラインまで到達し、走査開始位置へ復帰するまでの期間FBの間に、1フレーム分の全サンプル画素がバッファメモリに格納される。すなわち、画素生成のため検出されるサンプル画素とは異なる期間に検出される。
【0077】
検出された1フレーム分の全サンプル画素信号は、次のフレーム期間の開始直後に読み出される。したがって、バッファメモリに書き込まれるタイミングとバッファメモリから読み出されるタイミングとの間に時間差がなく、次のフレーム期間でリアルタイムの周辺画素情報を利用することができ、前回のフレーム期間ではなく限りなく同じフレーム期間に近い走査ラインを跨る周辺画素情報が取得される。
【0078】
サンプル画素一群を規定する画素数は3画素、9画素以外でもよい。また、第2の実施携帯では、前回フレームのサンプル画素一群のみでイメージ画素を生成することもできる。さらに、平均値算出、ローパスフィルタ処理など上記画素生成方法以外の方法も適用可能である。
【0079】
上記画素生成を行う中央エリアの範囲は、走査速度、サンプリングレート、フレームレートなどの諸条件で設定すればよい。また、光ファイバ先端部を共振させずに螺旋状走査を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本実施形態である内視鏡装置のブロック図である。
【図2】走査型光ファイバを模式的に示した図である。
【図3】信号処理回路の電気ブロック図である。
【図4】観察画像を構成する画素の生成手法を示した図である。
【図5】走査エリアに対するスパイラル状走査ラインを示した図である。
【図6】画素生成処理を示したフローチャートである。
【図7】第2の実施形態における信号処理回路32の電気ブロック図である。
【図8】周辺画素情報部のブロック図である。
【図9】前フレーム期間における対象サンプル画素を中心とした画素ブロックを示した図である。
【図10】第2の実施形態における画素の生成方法を示した図である。
【図11】画素信号記録処理のタイミングチャートを示した図である。
【図12】第3の実施形態における画素信号記録処理のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0081】
10 ビデオスコープ
16 SFEスキャナ
17 走査型光ファイバ
20R、20G、20B レーザー光源
30 プロセッサ
31A 第1画像メモリ
31B 第2画像メモリ
40 コントローラ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの照明光をスコープ先端部へ伝達する光ファイバと、
光ファイバ先端部を駆動することによって、観察対象に対し照明光を所定のフレームレートで螺旋状に走査させる走査手段と、
観察対象からの反射光に基づき、所定のサンプリングレートに従って画素信号を順次検出する画素検出手段と、
前記所定のサンプリングレートによって検出される一連のサンプル画素に基づいて、観察画像を構成するイメージ画素を生成する画素生成手段とを備え、
前記画素生成手段が、前記イメージ画素を、該イメージ画素に応じた対象サンプル画素を中心とし、その周辺サンプル画素を含めたサンプル画素群に基づいて、生成することを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記画素生成手段が、前記対象サンプル画素と、前記対象サンプル画素に対しスパイラル状走査ラインに沿って前後にある周辺サンプル画素とをサンプル画素群と定め、前記イメージ画素を生成することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記画素生成手段が、前記対象サンプル画素に基づくサンプル画素群に相当する前フレーム期間におけるサンプル画素群であって、複数のスパイラル状走査ラインに跨るように周辺サンプル画素を定めた前回フレームサンプル画素一群に基づいて、前記イメージ画素を生成することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記画素生成手段が、前記前回フレームサンプル画素一群と、今回のフレーム期間における前記対象サンプル画素と前記対象サンプル画素に対しスパイラル状走査ラインに沿って前後にある周辺サンプル画素から構成されるサンプル画素群とに基づいて、前記イメージ画素を生成することを特徴とする請求項3に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記画素検出手段が、前回のフレーム期間における1フレーム分の全サンプル画素を、最外周走査終了から次の走査開始までの期間に検出することを特徴とする請求項3に記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記画素生成手段が、走査エリアの中で中央エリアを走査している間、前記イメージ画素を生成することを特徴とする請求項1乃至5に記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記画素生成手段が、走査エリアのうち、イメージ画素に対するサンプル画素一群のサンプル数が所定値を超える走査範囲で、イメージ画素を生成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項8】
前記画素生成手段が、前記イメージ画素を生成しない走査範囲では、スパイラル状走査ラインごとに定められた画素間隔でサンプル画素を抽出することを特徴とする請求項6乃至7のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項9】
前記画素生成手段が、1フレーム分のサンプル画素の輝度レベルに応じて、前記サンプル画素一群のサンプル数、もしくは前記イメージ画素の生成処理方法の少なくともいずれかを変更することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項10】
前記画素生成手段が、平均値算出処理、ローパスフィルタ処理、中心サンプル画素抽出処理、最大輝度画素抽出処理のいずれかを実行することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項11】
観察対象に対し照明光を所定のフレームレートで螺旋状に走査させるとき、所定のサンプリングレートに従って画素信号を順次検出する画素検出手段と、
前記所定のサンプリングレートによって検出される一連のサンプル画素に基づいて、観察画像を構成するイメージ画素を生成する画素生成手段とを備え、
前記画素生成手段が、前記イメージ画素を、該イメージ画素に応じた対象サンプル画素を中心とし、その周辺サンプル画素を含めたサンプル画素群に基づいて、生成することを特徴とする内視鏡画素生成装置。
【請求項12】
観察対象に対し照明光を所定のフレームレートで螺旋状に走査させるとき、所定のサンプリングレートに従って画素信号を順次検出し、
前記所定のサンプリングレートによって検出される一連のサンプル画素に基づいて、観察画像を構成するイメージ画素を生成する画素生成方法であって、
前記イメージ画素を、該イメージ画素に応じた対象サンプル画素を中心とし、その周辺サンプル画素を含めたサンプル画素群に基づいて、生成することを特徴とする内視鏡画素生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−142605(P2010−142605A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326421(P2008−326421)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】