判断装置及び判断方法
【課題】電子制御機能付きガス器具の使用、ガバナ付きガス器具の使用、ガス器具の使用、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断するにあたり、消費電力の増大を抑制することが可能な判断装置及び判断方法を提供する。
【解決手段】ガスメータ40は、減算部43aと判断部43bとを備えている。減算部43aは、同時間帯において異なる計測間隔で計測した電気信号からなる複数の波形データのうち、計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算する。判断部43bは、減算して得られた差分波形データに基づいて、電子制御機能付きガス器具10の使用、ガバナ付きガス器具10の使用、ガス器具10の使用、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断する。
【解決手段】ガスメータ40は、減算部43aと判断部43bとを備えている。減算部43aは、同時間帯において異なる計測間隔で計測した電気信号からなる複数の波形データのうち、計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算する。判断部43bは、減算して得られた差分波形データに基づいて、電子制御機能付きガス器具10の使用、ガバナ付きガス器具10の使用、ガス器具10の使用、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判断装置及び判断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用中のガス器具にガバナが設けられているかを判断するガス器具判別装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−265513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、本件出願人は、特願2008−86022の技術を発明している。この発明では、ガス圧力に基づいてガバナ付きガス器具が使用されたか、ガバナ無しガス器具が使用されたか、及び、ガス漏れが発生しているか否かを判断するようになっている。
【0005】
しかし、特願2008−86022の技術の場合、ガバナ付きガス器具が使用されたか等を判断するにあたり、圧力波形の周波数分析等を行う必要があり、この周波数分析により処理量が多くなって消費電力の増大を招いてしまう可能性がある。なお、本明細書では特願2008−86022の一部技術を説明しているが、この説明は特願2008−86022の技術の公知性を認めるものではない。
【0006】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、電子制御機能付きガス器具の使用、ガバナ付きガス器具の使用、ガス器具の使用、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断するにあたり、消費電力の増大を抑制することが可能な判断装置及び判断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の判断装置は、流路内のガス圧力に応じた電気信号を出力する圧力センサ、及び、流路内のガス流量に応じた電気信号を出力する流量センサの少なくとも一方からの電気信号を入力して演算する演算手段を備え、前記演算手段は、同時間帯において異なる計測間隔で計測した電気信号からなる複数の波形データのうち、計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算する減算手段と、前記減算手段により減算されて得られた差分波形データに基づいて、電子制御機能付きガス器具の使用、ガバナ付きガス器具の使用、ガス器具の使用、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断する判断手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この判断装置によれば、計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算する。ここで、電気信号の計測間隔は計測可能な周波数範囲と対応しており、計測間隔が短い方が計測可能な最高周波数が高くなる傾向になる。よって、同時間帯において計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算すると、計測間隔が長い方の最高周波数から計測間隔が短い方の最高周波数までの特定の周波数域を表す差分波形データを得ることができる。
【0009】
そして、減算されて得られた差分波形データに基づいて、電子制御機能付きガス器具の使用、ガバナ付きガス器具の使用、ガス器具の使用、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断する。ここで、電子制御機能付きガス器具の使用時、ガバナ付きガス器具の使用時、ガス器具の使用時、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれかの時、及びガス漏れ時には、上記の順にガス圧力やガス流量の波形に高い周波数成分が含まれ易い傾向にある。このため、特定の周波数域を表す波形データに基づくことにより、上記のいずれかに該当するか否かを判断することができる。
【0010】
このように、上記のいずれかを判断するにあたっては減算処理を行うだけでよく、複雑な演算を行う必要がないことから、処理量を低減して消費電力を抑制することができる。なお、上記でいう電子制御機能とは、PIDなどの自動制御によりガス量を細かく調整することでガス燃焼量を制御する機能をいう。
【0011】
また、本発明の判断装置において、流路内のガス流量が特定値以内の範囲で安定している状態から特定値を超える流量変化を検出する流量変化検出手段を備え、前記演算手段は、前記流量変化検出手段が検出した流量変化の検出時点以降の特定時間の間のみの電気信号を入力することが好ましい。
【0012】
この判断装置によれば、流量変化の検出時点以降の特定時間の間のみの電気信号を入力する。ここで、ガバナ付きガス器具の使用等に関しては、圧力や流量の波形の周波数及び振幅に特徴があらわれ、しかも、この特徴は、流量変化の検出時点以降から数秒以内であらわれるものである。よって、流量変化の検出時点以降の特定時間の間のみの電気信号の波形を解析するのみで、ガバナ付きガス器具の使用等を判断できるため、不要な時間帯におけるデータを解析することなく、演算量を減らして消費電力を低減することができる。
【0013】
また、本発明の判断装置において、前記減算手段は、第1計測間隔の第1波形データから前記第1計測間隔よりも計測間隔が長い第2計測間隔の第2波形データを減算して第1差分波形データを得て、前記判断手段は、前記第1差分波形データにおいて第1所定値以上の振幅が確認された場合に、電子制御機能付きガス器具の使用であると判断することが好ましい。
【0014】
この判断装置によれば、第1計測間隔の第1波形データから第1計測間隔よりも計測間隔が長い第2計測間隔の第2波形データを減算し、減算されて得られた第1差分波形データにおいて第1所定値以上の振幅が確認された場合に、電子制御機能付きガス器具の使用であると判断する。ここで、電子制御機能付きガス器具の使用時には、100Hz程度以上の周波数に特徴があらわれることから、減算することによって第1差分波形データが表す周波数域を100程度Hz以上とすれば、消費電力を抑えつつ電子制御機能付きガス器具の使用を適切に判断することができる。
【0015】
また、本発明の判断装置において、前記減算手段は、第2計測間隔の第2波形データから前記第2計測間隔よりも計測間隔が長い第3計測間隔の第3波形データを減算して、第2差分波形データを得て、前記判断手段は、前記第2差分波形データにおいて第2所定値以上の振幅が確認された場合に、ガバナ付きガス器具の使用であると判断することが好ましい。
【0016】
この判断装置によれば、第2計測間隔の第2波形データから第2計測間隔よりも計測間隔が長い第3計測間隔の第3波形データを減算し、減算されて得られた第2差分波形データにおいて第2所定値以上の振幅が確認された場合に、ガバナ付きガス器具の使用であると判断する。ここで、ガバナ付きガス器具の使用時には、25Hz程度以上の周波数に特徴があらわれることから、減算することによって第2差分波形データが表す周波数域を25Hz程度以上とすれば、消費電力を抑えつつガバナ付きガス器具の使用を適切に判断することができる。
【0017】
また、本発明の判断装置において、判断手段は、前記第2差分波形データにおいて前記第2所定値以上の振幅が確認されず、流路内のガス流量が所定量以上であると判断した場合、ガス漏れと判断することが好ましい。
【0018】
この判断装置によれば、第2差分波形データにおいて第2所定値以上の振幅が確認されず、流路内のガス流量が所定量以上であると判断した場合、ガス漏れと判断する。ここで第2差分波形データにおいて第2所定値以上の振幅が確認されない場合とは、ガバナ無しガス器具の使用又はガス漏れであるといえる。そして、この状況下において、流路内のガス流量が所定量以上となった場合、すなわち流量がある程度大きい場合には、もはやガス漏れでしかあり得なくなる。従って、上記の如く判断することにより、精度良くガス漏れを判断することができる。特に、大きな流量のガス漏れは、必然的にガス流量が所定量以上となっていることから、流量値を測定するだけで、いち早くガス漏れを判断することができる。加えて、流量が大きいガス漏れは危険度が高く、いち早くガス漏れを判断することで、素早く保安処理を実行することが可能となり、安全性の向上に寄与することができる。
【0019】
また、本発明の判断装置において、複数の波形データのうち少なくとも2つの波形データにおいて、計測間隔が長い方の電気信号からなる波形データの少なくとも一部は、計測間隔が短い方の電気信号の一部を用いて構成されていることが好ましい。
【0020】
この判断装置によれば、計測間隔が長い方の電気信号からなる波形データの少なくとも一部は、計測間隔が短い方の電気信号の一部を用いて構成されている。ここで、計測間隔の短い方の波形データの中には計測間隔の長い方の波形データが含まれているので、短い計測間隔で計測した電気信号の中に含まれている長い計測間隔により得られるべき波形データを取り出して、計測間隔が長い方の電気信号からなる波形データの一部として用いることができる。これにより、長い計測間隔で計測する際に、短い計測間隔のデータを利用して計測回数を減じることができ、消費電力を抑えることができる。
【0021】
また、本発明の判断装置において、前記減算手段は、計測間隔が長い方の電気信号からなる波形データについて、計測ポイント間のデータを直線補間により算出し、算出されたデータを含めた補間波形データを求め、計測間隔が短い方の波形データから補間波形データを減算することが好ましい。
【0022】
この判断装置によれば、計測間隔が長い方の電気信号からなる波形データについて、計測ポイント間のデータを直線補間により算出し、算出されたデータを含めた補間波形データを求める。ここで、同じ時間帯において計測間隔が長い方の波形データは、計測間隔が短い方の波形データよりもデータ数が少なく、減算するにあたり不足分が生じてしまう。このため、直線補間によりデータ不足分を補うことができ、適切に減算処理を実行することができる。
【0023】
また、本発明の判断方法は、流路内のガス圧力に応じた電気信号を出力する圧力センサ、及び、流路内のガス流量に応じた電気信号を出力する流量センサの少なくとも一方からの電気信号を入力して演算する演算工程を有し、前記演算工程では、同時間帯において異なる計測間隔で計測した電気信号からなる複数の波形データのうち、計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算する減算工程と、前記減算工程において減算されて得られた差分波形データに基づいて、電子制御機能付きガス器具の使用、ガバナ付きガス器具の使用、ガス器具の使用、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断する判断工程と、を有することを特徴とする。
【0024】
この判断方法によれば、計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算する。ここで、電気信号の計測間隔は計測可能な周波数範囲と対応しており、計測間隔が短い方が計測可能な最高周波数が高くなる傾向になる。よって、計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算すると、計測間隔が長い方の最高周波数から計測間隔が短い方の最高周波数までの特定の周波数域を表す差分波形データを得ることができる。
【0025】
そして、減算されて得られた差分波形データに基づいて、電子制御機能付きガス器具の使用、ガバナ付きガス器具の使用、ガス器具の使用、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断する。ここで、電子制御機能付きガス器具の使用時、ガバナ付きガス器具の使用時、ガス器具の使用時、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれかの時、及びガス漏れ時には、上記の順にガス圧力やガス流量の波形に高い周波数成分が含まれ易い傾向にある。このため、特定の周波数域を表す波形データに基づくことにより、上記のいずれかに該当するか否かを判断することができる。
【0026】
このように、上記のいずれかを判断するにあたっては減算処理を行うだけでよく、複雑な演算を行う必要がないことから、処理量を低減して消費電力を抑制することができる。なお、上記でいう電子制御機能とは、PIDなどの自動制御によりガス量を細かく調整することでガス燃焼量を制御する機能をいう。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、電子制御機能付きガス器具の使用、ガバナ付きガス器具の使用、ガバナ無しガス器具の使用、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断するにあたり、消費電力の増大を抑制することが可能な判断装置及び判断方法を提供することが可能な判断装置及び判断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る判断装置を含むガス供給システムの構成図である。
【図2】図1に示したガバナの一例を示す側方断面図である。
【図3】ガス漏れが発生したときの圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフである。
【図4】ガバナ無しガス器具が使用されたときの圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフである。
【図5】ガバナ付きガス器具が使用されたときの圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフであって、電子制御機能を有さないガス器具使用時のグラフである。
【図6】ガバナ付きガス器具が使用されたときの圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフであって、電子制御機能を有するガス器具使用時の第1のグラフである。
【図7】ガバナ付きガス器具が使用されたときの圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフであって、電子制御機能を有するガス器具使用時の第2のグラフである。
【図8】ガバナ無しガス器具での燃料ガスの供給の様子を示す概略図である。
【図9】本実施形態に係るガスメータの判断方法を示す第1のフローチャートである。
【図10】本実施形態に係るガスメータの判断方法を示す第2のフローチャートである。
【図11】本実施形態に係るガスメータの判断方法を示す第3のフローチャートである。
【図12】正弦波の圧力又は流量の振動波形を2つの異なる計測間隔で計測した場合を示すグラフである。
【図13】図12に示す波形データを減算して得られた差分波形データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る判断装置を含むガス供給システムの構成図である。ガス供給システム1は、ガスストーブ、ファンヒータ、給湯器及びテーブルコンロなどの各ガス器具10に燃料ガスを供給するものであって、複数のガス器具10と、ガス供給元の調整器20と、配管31,32と、ガスメータ(判断装置)40とを備えている。なお、図1に示す例では、ガスメータ40を判断装置の一例として挙げるが、判断装置はガスメータ40に限るものではない。
【0030】
調整器20は上流からの燃料ガスを所定圧力に調整して第1配管31に流すものである。この調整器20は、例えば燃料ガスを2.9kPa程度の圧力に調整して第1配管31に流す構成となっている。第1配管31は、調整器20とガスメータ40とを接続するものである。第2配管32はガスメータ40とガス器具10とを接続する配管である。ガスメータ40は、燃料ガスの流量を測定して積算流量を表示するものである。このようなガス供給システム1では、ガスメータ40内に第1配管31及び第2配管32とつながる流路が形成されており、調整器20を通じて流れてきた燃料ガスは第1配管31からガスメータ40、及び第2配管32を通じてガス器具10に到達し、ガス器具10において燃焼されることとなる。
【0031】
また、ガス器具10は、概略的に、遮断弁12、ガバナ13、及びバーナー14を備えている。遮断弁12は、ガス器具10に設けられた弁である。ガバナ13は、ガバナ内弁13aを有し、ガス器具10のバーナー14に供給するガスの圧力をガバナ内弁13aの開度によって調整するものである。圧力調整された燃料ガスはガバナ13の先端のノズル13bを通じてバーナー14に至り、燃焼することとなる。なお、ガス器具10は、すべてがガバナ13を有しているわけでなく、ガスコンロなどのようにガバナ13を有さないものもある。
【0032】
図2は、図1に示したガバナ13の一例を示す側方断面図である。なお、図2では、ガバナ13の一例を示すに過ぎず、ガバナ13の構成は図2に示すものに限られない。また、図2に示すガバナ13については図1に示したノズル13bを省略して図示する。
【0033】
図2に示すようにガバナ13は、外壁13cとガバナキャップ13dとによって形成される内部空間の一部をガス流路として用いるものである。このようなガバナ13は、ガバナ内弁13aに加えて、内部空間に、ダイヤフラム13e、調整スプリング13f、及び調整ネジ13gを備えている。
【0034】
ダイヤフラム13eは、ガバナ13の内部空間を仕切る膜状の部材である。このダイヤフラム13eには、一方側(流路側)にガバナ内弁13aが取り付けられている。また、ダイヤフラム13eの他方側(流路として機能しない側)に調整スプリング13fが取り付けられている。調整スプリング13fは、一端にダイヤフラム13eが取り付けられ、他端に調整ネジ13gが取り付けられている。調整ネジ13gは、ねじ切り溝が形成されたガバナ13の内壁に固定される構造となっており、ねじ切り溝との固定位置を変化させることで調整スプリング13fの圧縮率を変更可能となっている。また、調整ネジ13gは外部にむき出しとなっておらず、ガバナキャップ13dによって覆われた構造となっている。
【0035】
また、ガバナ13の外壁13cには、ダイヤフラム13eの他方側に通じる空気孔13hが形成されている。このため、ダイヤフラム13eの他方側は空気圧となっている。さらに、図2に示す例においてガバナ内弁13aは半球形状となっており、上下動によって通過口13iの開口割合を制御可能となっている。
【0036】
このようなガバナ13では、ガス入側のガス圧が高くなると、ダイヤフラム13eが上へ押し上げられ、同時にダイヤフラム13eに取り付けられているガバナ内弁13aも上に引き上げられる。これにより、通過口13iの開口割合が小さくなって、ガス流量が減少する。一方、ガス入側のガス圧が低くなると、ダイヤフラム13eが下がり、同時にダイヤフラム13eに取り付けられているガバナ内弁13aも下がる。これにより、通過口13iの開口割合が大きくなって、ガス流量が増大する。このように、ガバナ13は上流側の圧力の変動に対して下流側の流量を一定に保つことで、下流側の圧力を調整することとなる。
【0037】
再度図1を参照する。図1に示すガスメータ40は、流路内のガス流量が増加した場合、又は流路内のガス圧力が減少した場合に、その流量や圧力の変化の状態を表す振動波形に基づいて、電子制御機能付きガス器具10の使用、ガバナ付きガス器具10の使用、ガス器具10の使用、ガバナ無しガス器具10の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断するものである。ここで、電子制御機能とは、PIDなどの自動制御によりガス量を細かく調整することでガス燃焼量を制御する機能をいう。このようなガスメータ40は、流量センサ41と、圧力センサ42と、マイコン(演算手段)43とから構成されている。
【0038】
流量センサ41は、ガスメータ40内の流路に設置され、流路内のガス流量を検出するためのものである。本実施形態に係るガスメータ40が超音波式のガスメータである場合、流量センサ41は、流路内に一定距離だけ離れて配置された例えば圧電式振動子からなる2つの音響トランスジューサによって構成される。また、本実施形態に係るガスメータ40がフローセンサなどの熱式センサを搭載したガスメータである場合、温度分布をつくり出すヒータと、その温度分布に応じた信号を発生させる温度センサによって構成される。
【0039】
圧力センサ42は、ガスメータ40内の流路内に存在するガスのガス圧を検出するためのものである。なお、圧力センサ42は、ガスメータ40内の流路に限らず、可能であればガスメータ40の外部に存在する第1配管31内や第2配管32内に設置されていてもよい。同様に、流量センサ41についても設置箇所については変更可能である。
【0040】
また、本実施形態では、図1において流量センサ41及び圧力センサ42からの信号が直接マイコン43に入力されているが、場合によっては増幅器等の他の要素が両者間に追加されていてもよい。
【0041】
マイコン43は、ガスメータ40の全体を制御するものであり、流量の積算制御、表示制御、遮断弁の遮断制御等を行うものである。また、本実施形態においてマイコン43は、異なる計測間隔で圧力センサ42からの電気信号を入力するようになっている。具体的にマイコン43は、0.25ミリ秒(第1計測間隔)、1ミリ秒(第2計測間隔)、及び4ミリ秒(第3計測間隔)の3段階の計測間隔で圧力センサ42からの電気信号を入力するようになっている。なお、計測間隔は3段階に限らず2段階や4段階以上であってもよい。さらに、計測間隔は0.25ミリ秒、1ミリ秒、及び4ミリ秒に限らず、0.1ミリ秒や10ミリ秒など適宜変更可能である。
【0042】
また、マイコン43は、減算部(減算手段)43aと、判断部(判断手段)43bと、流量変化検出部(流量変化検出手段)43cとを有している。減算部43aは、同時間帯において異なる計測間隔で計測した電気信号からなる複数の波形データのうち、計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算するものである。本実施形態において減算部43aは、0.25ミリ秒間隔で計測した第1波形データから、1ミリ秒間隔で計測した第2波形データを減算して第1差分波形データを得る。ここで、第1及び第2波形データのうち同じ時間帯で計測した部分の波形データを取り出して減算処理に用いる。またここで、1ミリ秒間隔で計測した波形データは、0.25ミリ秒間隔で計測した波形データより数が少なく、そのままでは減算することができない。そこで、1ミリ秒間隔で計測した波形データの不足分は、その前後の2つのデータで直線補間して補い、補間により補間波形データで減算処理を行う。さらに、本実施形態において減算部43aは、第2波形データから、4ミリ秒間隔で計測した第3波形データを減算して第2差分波形データを得る。減算処理の実施方法は、第1差分波形データを得る方法と同様となる。
【0043】
なお、減算部43aは上記のような減算する場合に限らず、0.25ミリ秒間隔で計測した第1波形データから、4ミリ秒間隔で計測した第3波形データを減算してもよい。さらに、減算部43aは、計測間隔が4段階以上である場合には、それに応じて適宜減算するように構成されていてもよい。
【0044】
判断部43bは、減算部43aにより減算されて得られた差分波形データに基づいて、電子制御機能付きガス器具10の使用、ガバナ付きガス器具10の使用、ガス器具10の使用、ガバナ無しガス器具10の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断するものである。具体的に判断部43bは、第1差分波形データに基づいて電子制御機能付きガス器具10が使用されたか否かを判断する。また、判断部43bは、第2差分波形データに基づいてガバナ付きガス器具10が使用されたか否かを判断する。
【0045】
なお、本実施形態において判断部43bは、電子制御機能付きガス器具10の使用、及びガバナ付きガス器具10の使用を判断するが、これに限らず、計測間隔を変更するなどの方法により、ガス器具10(すなわち電子制御機能付き、ガバナ付き及びガバナ無しのすべてを含むガス器具)の使用を判断することもできるし、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれかであることを判断することもできるし、ガス漏れの発生についても判断することができる。
【0046】
流量変化検出部43cは、流路内のガス流量が特定値以内の範囲で安定している状態から特定値を超える流量変化を検出するものである。上記の減算部43a及び判断部43bは、流量変化検出部43cにより特定値を超える流量変化が検出された場合に動作を開始することとなる。
【0047】
なお、本実施形態において流量変化検出部43cは、マイコン43内に構成しているが、マイコン43内から切り離して別に構成しても良い。その場合、流量変化検出部43cが流量変化を検出してないうちはマイコン43の電源を切っておき、流量変化を検出した時にすばやくマイコン43の電源を入れるように構成することも可能である。さらに、圧力センサ42や流量センサ41から出力される電気信号から流量変化を検出するように構成されているが、別の構成で流量変化を検出するように構成しても良い。具体的には、急激な圧力変化でスイッチングする圧力スイッチを用いて構成する方法も考えられる。
【0048】
次に、図3〜図8を参照して、電子制御機能付きガス器具10の使用、ガバナ付きガス器具10、ガス器具10の使用、及びガス漏れを判断できる理論を説明する。
【0049】
図3は、ガス漏れが発生したときの圧力波形をフーリエ変換した結果を示すグラフであり、図4は、ガバナ無しガス器具10が使用されたときの圧力波形をフーリエ変換した結果を示すグラフであり、図5〜図7は、ガバナ付きガス器具10が使用されたときの圧力波形をフーリエ変換した結果を示すグラフである。なお、図3〜図7において縦軸は振幅を示し、横軸は周波数を示している。また、フーリエ変換した圧力波形は、圧力の変動が発生してから約0.3秒〜1秒経過するまでの時間帯において、1ミリ秒の間隔で計測した圧力データからなっている。
【0050】
図3に示すように、ガス漏れが発生した場合、得られる圧力波形には、20Hz以上の周波数成分が殆ど含まれていない。また、図4に示すように、ガバナ無しガス器具10が使用された場合、得られる圧力波形には、25Hz程度以上の周波数成分が殆ど含まれていないが、約10Hz付近の周波数成分が多く含まれる傾向がある。また、図5〜図7に示すように、ガバナ付きガス器具10が使用された場合、得られる圧力波形には、25Hz程度以上の周波数成分が多く含まれる傾向がある。なお、図3〜図7において60Hz付近に存在するピークは、商用電源によるノイズである。
【0051】
上記のような特徴が発生する理由は以下の通りである。まず、ガバナ付きガス器具10が使用された場合に、圧力波形に高い周波数成分(25Hz程度以上の周波数成分)が含まれる理由は、ガバナ13内に調整スプリング13fが設けられているからである。すなわち、ガバナ付きガス器具10の使用が開始されると、調整スプリング13fが振動すると共に、ガバナ内弁13aについても振動し、通過口13iの開口割合についても小刻みに大きくなったり小さくなったりと変化するからである。このように、調整スプリング13fが小刻みに振動することから、圧力波形は比較的高い周波数成分を多く含むこととなる。
【0052】
なお、圧力Pは、
【数1】
なる演算式で表すことができる。ここで、Cは振幅を示し、kは摩擦力(減衰定数)を示し、ωは復元力を示し、αは初期位相を示している。この式は多くの周波数fi=ωi/2πの振動の重ね合わせであることを示している。
【0053】
また、ガバナ無しガス器具10が使用された場合に、圧力波形に10Hz程度の周波数成分が含まれる理由は、以下の通りである。図8は、ガバナ無しガス器具10での燃料ガスの供給の様子を示す概略図である。図8に示すように、ガバナ無しガス器具10が使用された場合、燃料ガスは第2配管32からノズルホルダ100を通じてバーナー14等に至る。ここで、ノズルホルダ100にある流速を持った気体が流入したときはその慣性力で急には流速が小さくならずに一旦ガスが圧縮され圧力が上昇する。その後上昇した圧力により流入流速が小さく(場合によっては逆流)なって圧力が下がる。これを繰り返すことで圧縮膨張の振動が発生する。
【0054】
ところが、ガバナ無しガス器具10の場合、ガバナ付きガス器具10のように、細かく振動する調整スプリング13fを有していない。このため、ガバナ無しガス器具10の使用による圧力波形は、ガバナ付きガス器具10の使用時よりも高い周波数成分が含まれることなく、10Hz程度の周波数成分を示すこととなる。
【0055】
また、ガス漏れが発生した場合、調整スプリング13fの振動、及び、ノズルホルダ100の圧縮性による振動の双方が発生しない。このため、圧力波形には明確な振動が見られず、10Hz程度の周波数成分すら含まれない傾向にある。
【0056】
以上のように、ガバナ付きガス器具10の使用開始時と、ガバナ無しガス器具10の使用開始時と、ガス漏れ発生時とでは、圧力波形の周波数成分に違いが生じることとなる。
【0057】
また、図6及び図7に示すように、電子制御機能を有するガス器具10では、商用電源の周波数を超える周波数成分(例えば100Hz以上)が得られている。一方、図5に示すように、電子制御機能を有さないガス器具10では、商用電源の周波数を超える周波数成分があまり得られない。これは、電子制御において少なくとも50Hzの速度でガス量を調整するため、この周波数がそのまま、ノイズ的に重畳してしまうからである。
【0058】
以上のように、ガバナ付きガス器具10の使用時、ガバナ無しガス器具10の使用時、及びガス漏れ時の順に圧力波形には高い周波数成分が含まれる。また、ガバナ付きガス器具10であっても、電子制御機能を有するガス器具10の方が一層高い周波数成分を含むこととなる。
【0059】
本実施形態に係るガスメータ40は、上記のような周波数の相異に基づいて、電子制御機能付きガス器具10の使用、ガバナ付きガス器具10の使用、ガス器具10の使用、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断する。そして、本実施形態に係るガスメータ40は、判断するにあたって減算部43aにより減算処理を行うこととしている。
【0060】
まず、異なる計測間隔によって計測可能な周波数域について説明する。本実施形態では、まず圧力センサ42からの電気信号を0.25ミリ秒間隔で1024回計測する。この場合、0.25ミリ秒×1024回=256ミリ秒の計測を行うこととなる。
【0061】
0.25ミリ秒間隔で計測(4キロサンプリング毎秒(4kS/s))していることから、それより早い周期の周波数については計測できない。エイリアシング現象により2kHz以上の周波数は、2kHz以下の周波数として観測されてしまう。さらに、安定した解析のためには、1周期に10ポイント程度で計測されていることが必要となり、十分な解析ができる有効な最高周波数は4kS/s÷10=400Hzとなる。なお、400Hz〜2kHzの周波数域では、実際の振幅よりも計測される振幅の方が、低い周波数から高い周波数の順序で徐々に小さくなっていく。特に、2kHzの周波数波形を計測する時、最悪ではまったく計測できず、最善でも1/1.7程度の振幅になってしまうような計測波形データになる。
【0062】
以上より、0.25ミリ秒間隔で256ミリ秒間の計測では、400Hz以下の周波数について有効に計測できることとなる。
【0063】
また、本実施形態では、圧力センサ42からの電気信号を1ミリ秒間隔で1024回計測する。この場合、1ミリ秒×1024回=1.024秒≒1秒の計測を行うこととなる。そして、上記と同様にして有効に計測できる周波数域を求めると、周波数域は100Hz以下となる。なお、100Hz〜500Hzの周波数域では、上記と同様に、実際の振幅よりも計測される振幅が、低い周波数から高い周波数の順番で徐々に小さくなってしまう。さらに、本実施形態では、圧力センサ42からの電気信号を4ミリ秒間隔で1024回計測する。この場合、4ミリ秒×1024回=4.096秒≒4秒の計測を行うこととなる。このため、有効に計測できる周波数域は25Hz以下となる。なお、25Hz〜125Hzの周波数域では、上記と同様に、実際の振幅よりも計測される振幅が、低い周波数から高い周波数の順番で徐々に小さくなってしまう。
【0064】
以上のように有効に計測できる周波数域が異なっていることから、減算部43aによって減算処理を行うと、周波数域をより限定できる。すなわち、100Hz〜400Hzまでの周波数帯に振幅がある場合、0.25ミリ秒間隔で計測した第1波形データでは振幅の大きさを精度よく計測するが、1ミリ秒間隔で計測した第2波形データでは振幅の大きさを小さめに計測する。そのため、その両方の波形を減算処理することで、100Hz〜400Hzまでの周波数帯に振幅がある場合には、振幅が観測される第1差分波形データを得ることができる。さらに、400Hz以上の周波数帯に振幅がある場合でも、第1波形データと第2波形データにおける計測される振幅の大きさに差が生じるため、第1差分波形データに振幅が観測される。同様に、1ミリ秒間隔で計測した第2波形データから4ミリ秒間隔で計測した第3波形データを減算すると、25Hz以上の周波数帯に振幅がある場合には振幅が観測される第2差分波形データを得ることができる。
【0065】
さらに詳細に説明する。図12は、正弦波の圧力又は流量の振動波形を2つの異なる計測間隔で計測した場合を示すグラフである。計測間隔が短い方は、1周期分を10個の計測点で計測しており、有効な最高周波数の計測波形となり、十分な振幅の計測が行われている。計測間隔が長い方は、1周期分を2.5個の計測点で計測しており、有効ではない周波数の計測波形となり、振幅がかなり小さくなっている。計測間隔が長い方の計測では、計測間隔が短い方の計測による各データの4個毎に1個のデータを共通化している。
【0066】
図12で計測間隔が短い方を0.25ミリ秒間隔の計測である第1波形データとすると、計測間隔が長い方は1ミリ秒間隔の計測である第2波形データであり、計測前の振動波形は400Hzの周波数であるとみなすことができる。
【0067】
そして、減算部43aは、図12に示すような波形データを減算して差分波形データを得る。なお、計測間隔の短い方の波形データから計測間隔の長い方の波形データを減算する際、計測間隔の長い方の波形データは計測ポイントが少ない分、減算時のデータが不足してしまう。このため、減算部43aは、その前後のデータを直線補間することにより不足分のデータを得る(補間して得たデータは図12の×印参照)。そして、減算して得られた波形を図13に示す。図13に示すように、減算して得られた差分波形データの振幅は、部分的にゼロとなる箇所があるものの、全体としてゼロにはならず、ある程度の振幅値を残した波形が得られる。なお、図12で1周期分を10個より多い計測点で計測したデータと、10個の計測点で計測したデータとを減算処理しても図13に示すような明確な(ノイズ成分より大きい)振幅を観測することはできないことは明白である。
【0068】
そして、100Hz〜400Hzまでの周波数帯では、電子制御機能付きガス器具10の使用時に大きな振幅を示すことから(図6及び図7参照)、判断部43bは、第1差分波形データにおける振幅の有無に基づいて電子制御機能付きガス器具10の使用を判断できる。例えば、第1所定値(例えば20Pa)以上の圧力振幅(+20Pa以上か−20Pa以下のどちらかの圧力)が所定回数(例えば5回)確認された場合に、圧力値の振幅が大きいと判断して、電子制御機能付きガス器具10が使用されたと判断する。
【0069】
同様に、判断部43bはガバナ付きガス器具10の使用を判断する。すなわち、25Hz〜100Hzまでの周波数帯では、ガバナ付きガス器具10の使用時に大きな振幅を示す。このため、判断部43bは、第2差分波形データにおける振幅の大きさに基づいてガバナ付きガス器具10の使用を判断する。この際、判断部43bは、第2差分波形データにおいて第2所定値以上の振幅が所定回数確認された場合に、ガバナ付きガス器具10が使用されたと判断する。なお、100Hz以上の周波数帯に大きな振幅がある場合でも第2波形データは第2所定値以上の振幅を有するが、電子制御機能付きガス器具10はガバナ付きであるので問題はない。
【0070】
なお、本実施形態において、計測間隔の長い方の波形データは計測間隔の短い方の波形データの一部を共有して得ていたが、計測間隔の長い方の波形データを別途計測するようにしても良い。その場合、エイリアシング領域の周波数帯に振幅がある波形でも、差分波形データで振幅があることを確認できるようになる。
【0071】
以上から明らかなように、本実施形態に係るガスメータ40は、異なる計測間隔で圧力センサ42からの電気信号を計測し、減算部43aによって減算処理し、且つ減算により得られた波形の振幅値を観測するだけで、電子制御機能付きガス器具10及びガバナ付きガス器具10の使用を判断することができる。従って、フーリエ変換など計算量の多い計算を行う必要がなく、処理量を抑えることができ、消費電力の増大を抑制することができる。
【0072】
なお、本実施形態において判断部43bは、ガバナ無しガス器具10の使用及びガス漏れについて、フーリエ変換による解析やガス流量の監視により判断するようになっている。しかし、本実施形態では減算処理することにより電子制御機能付きガス器具10及びガバナ付きガス器具10の使用を判断することができるため、そのどちらでもない場合だけ、ガバナ無しガス器具10の使用であるかガス漏れであるかを判断するだけでよく、フーリエ変換等を行っても処理量は減じられることとなり、消費電力の増大を抑制することができる。
【0073】
また、上記では、圧力を例に説明したが、圧力と流量とには一定の相関があるため、本実施形態において減算部43aは流量センサ41からの電気信号を異なる計測間隔で計測して減算処理を行い、判断部43bはその減算処理によって得られた差分波形データから電子制御機能付きガス器具10の使用等を判断してもよい。
【0074】
図9は、本実施形態に係るガスメータ40の判断方法を示す第1のフローチャートである。まず、流量変化検出部43cは、特定値(例えば1.5L/hrであってガスメータで計測可能な最低流量、又は、流量の脈動により発生し得ない程度の流量)を超える流量変化があったか否かを判断している。そして、特定値を超える流量変化があった場合、図9に示すフローチャートが開始される。なお、図9に示すフローチャートは、圧力センサ42からの電気信号に基づいて、流路内のガス圧力が特定量以上減少した場合に開始されてもよい。もちろん、流量変化を捉えることができる手段であれば、その他どのような手段でも良い。
【0075】
まず、マイコン43は、圧力センサ42からの電気信号に基づいて、0.25ミリ秒間隔で圧力を計測する(S1)。その後、マイコン43は、1024個の圧力データが取得されたか否かを判断する(S2)。
【0076】
1024個の圧力データが取得されていないと判断した場合(S2:NO)、処理はステップS1に移行する。一方、1024個の圧力データが取得されたと判断した場合(S2:YES)、マイコン43は、1ミリ秒間隔で圧力を計測する(S3)。その後、マイコン43は、768個の圧力データが取得されたか否かを判断する(S4)。ここで、ステップS24の処理では、圧力データが768個取得されたか判断している。これは、ステップS21で取得した圧力データの一部を用いることができるためである。すなわち。0.25ミリ秒の計測間隔で圧力データを取得した場合、4回に1回は、1ミリ秒の計測間隔で圧力データを取得した場合と、計測間隔が重なることとなる。このため、1ミリ秒の計測間隔では768個の圧力データを取得しておけば、実質的に768+256(1024/4)=1024個の圧力データを取得していることと同等となる。これにより、計測回数を減らすこととなって消費電力を抑えることができる。
【0077】
768個の圧力データが取得されていないと判断した場合(S4:NO)、処理はステップS23に移行する。一方、768個の圧力データが取得されたと判断した場合(S4:YES)、タスク起動命令が出力される(S5)。これにより、図9のフローチャートのタスク実行とは別に並列して図10に示すフローチャートが実行される。
【0078】
タスク起動命令が出力されても(S5)、図10のフローチャートのタスク実行をしながら、図9のフローチャートのタスクは継続実行される。そして、マイコン43は、4ミリ秒間隔で圧力を計測する(S6)。その後、マイコン43は、768個の圧力データが取得されたか否かを判断する(S7)。ここで、768個の圧力データが取得されたか否かを判断する理由はステップS4と同様である。
【0079】
768個の圧力データが取得されていないと判断した場合(S7:NO)、マイコン43は、図10のフローチャートのタスクから割り込みがあったか否かを判断する(S8)。すなわち、図10に示したステップS12またはステップS18において「YES」と判断されて、ステップS13またはステップS19において割り込み出力されたか否かを判断する。ここで、割り込み出力された場合、後述する図10のステップS14またはステップS20に示すように、電子制御機能付きガス器具10の使用またはガバナ付きガス器具10の使用であると判断されている。一方、4ミリ秒間隔の圧力データは、上記したように有効に計測できる周波数域が25Hz以下であり、電子制御機能付きガス器具10の使用またはガバナ付きガス器具10の使用であると判断された場合には、もはや必要のないデータとなる。このため、割り込みがあったと判断した場合(S8:YES)、4ミリ秒間隔の圧力データの取得を中止し、図9に示す処理は終了することとなる。このように圧力データ計測中でも計測が必要でなくなったと判断された場合、いち早く計測を中止することで消費電力を抑えることができる。
【0080】
また、割り込みがなかったと判断した場合(S8:NO)、処理はステップS6に移行し、4ミリ秒間隔の圧力データの取得が継続される。そして、768個の圧力データが取得されたと判断した場合(S7:YES)、マイコン43は、4ミリ秒間隔の圧力データを出力し(S9)、図9に示す処理は終了する。
【0081】
なお、図9に示すフローチャートは、大凡0.25×1024(256ミリ秒)+1×768(768ミリ秒)+4×768(3072ミリ秒)=4096ミリ秒(特定時間)で終了することとなる。
【0082】
また、図9のフローチャートの例において、取得される圧力データ数はすべて1024個として説明したが、これに限るものではない。目的となる周波数域を計測できるようにすればよく、200個程度でも十分な場合もあるし、10000個程度にしても良い。また、各計測間隔において別々のデータ数としてももちろん良い。例えば、4ミリ秒間隔の計測を行わずに1ミリ秒間隔の計測で取得できる256個の圧力波形データを4ミリ秒間隔の計測による第3波形データとしても良い。その場合、第3波形データの解析時の有効周波数帯は10Hz〜25Hzとはなるが、計測時間を約4秒から約1秒と短くできると共に、割り込み処理などの煩雑な処理を実行しなくて済み、ひいては消費電力をより少なくすることができる。なお、取得されるデータ数すなわち計測時間は、計測可能な最低周波数を決めることとなる。例えば、計測時間が256ミリ秒の場合、256ミリ秒よりも長い周期の周波数については解析できない。256ミリ秒よりも長い周期であると、波形の全体像が不明となってしまうからである。従って、256ミリ秒間の計測を行った場合、計測可能な最低周波数は約4Hzとなる。また、この4Hzは周波数分解能になる。このように、データ数が多い(すなわち計測時間が長い)場合は消費電力が多くなるが周波数分解能を高くすることができる。
【0083】
図10は、本実施形態に係るガスメータ40の判断方法を示す第2のフローチャートである。図9のステップS5においてタスク起動命令が出力されると、図9のフローチャートのタスク実行とは別に並列して図10のフローチャートのタスクが実行される。まず減算部43aは、図9のステップS2において得られた0.25ミリ秒間隔により計測された第1波形データから、4回に1回の圧力データを取り出して1ミリ秒間隔により計測された第2波形データとする。ここで、第2波形データで不足しているデータは、図12のようにその前後のデータから直線補間して得る。そして、第1波形データから補間を行った第2波形データを減算する(S11)。これにより、100Hz以上の周波数域を示す第1差分波形データを取得することができる。
【0084】
その後、判断部43bは、第1差分波形データについて振幅が確認されるか否かを判断する(S12)。第1差分波形データに振幅があると確認されて、100Hz以上の高周波成分について振幅が確認されたと判断した場合(S12:YES)、図9のフローチャートのタスクに対して割り込み出力される(S13)。そして、判断部43bは、電子制御機能の制御による特徴が発生していることから、電子制御機能付きガス器具10の使用であると判断する(S14)。
【0085】
次いで、マイコン43は、ガス器具10の種類を判別する(S15)。ガス器具10の種類の判別は、例えば以下のようにして行われる。まず、マイコン43は、ステップS11の第1減算処理において得られた第1差分波形データをフーリエ変換する。これにより、100Hz以上の周波数域において図3〜図7に示したようなスペクトルデータを得る。また、マイコン43は、ガス器具10の種類毎にスペクトルデータを記憶しており、フーリエ変換により得られたスペクトルデータと記憶されたガス器具10毎のスペクトルデータとのそれぞれとを比較して類似度を算出する。そして、マイコン43は、最も類似度が高いガス器具10が使用されたと判別することとなる。この判断にあたり、マイコン43は、全周波数域のスペクトルデータを用いて使用されたガス器具10を判断してもよいが、第1差分波形データをフーリエ変換して得られたスペクトルデータのみを用いて使用されたガス器具10を判断することが好ましい。この場合には、一部のスペクトルデータのみで判断するため、演算量を減らすこととなり消費電力を抑えることができるからである。なお、電子制御機能を有したガス器具10(必ずガバナ付きである)としては、例えば給湯器やファンヒータなどがある。そして、図9に示す処理は終了する。
【0086】
ところで、高周波成分について振幅が確認されなかったと判断した場合(S12:NO)、電子制御機能を有しないガバナ付きガス器具10、ガバナ無しガス器具10又はガス漏れと判断する(S16)。次に、減算部43aは、ステップS11の途中で得られた第2波形データに図9のステップS4において得られた波形データを加えて新たに第2波形データを得て、その第2波形データから、4回に1回の圧力データを取り出して4ミリ秒間隔により計測された第3波形データを得る。ここで、第3波形データで不足しているデータは、図12のようにその前後のデータから直線補間して得る。そして、第2波形データから第3波形データを減算する(S17)。これにより、25Hz以上の周波数域を示す第2差分波形データを取得することができる。
【0087】
その後、判断部43bは、第2差分波形データについて振幅が確認されるか否かを判断する(S18)。第2差分波形データに振幅がある場合は、25Hz以上の周波数域で振幅があることになるが、すでにステップS12でNOと判断されて100Hz以上の周波数域では振幅が無いことが確認されているため、25Hz〜100Hzの中周波成分について振幅が確認されたと判断して良いことになる。そして、その中周波成分について振幅が確認されたと判断した場合(S18:YES)、図9のフローチャートのタスクに対して割り込み出力される(S19)。そして、判断部43bは、ガバナ13の振動による特徴が発生していることから、電子制御機能を有さないガバナ付きガス器具10の使用であると判断する(S20)。次いで、マイコン43は、ガス器具10の種類を判別する(S21)。ステップS21における種類の判別方法はステップS15と同様である。なお、電子制御機能を有さないガバナ付きガス器具10としては、例えばガスストーブやグリルなどがある。そして、図10に示す処理は終了する。
【0088】
25Hz〜100Hzの中周波成分について振幅が確認されなかったと判断した場合(S18:NO)、マイコン43は、低周波成分処理を実行する(S22)。その後、図10に示す処理は終了する。
【0089】
図11は、本実施形態に係るガスメータ40の判断方法を示す第3のフローチャートであって、図10のステップS21の処理の詳細を示している。図11に示すように、まず判断部43bは、流量センサ41からの電気信号に基づいて、流量が所定量以上であるか否かを判断する(S31)。
【0090】
流量が所定量以上であると判断した場合(S31:YES)、判断部43bは、ガス漏れと判断する(S32)。ここで、図11に示す処理が実行されたということは、ステップS11において得られた第1差分波形データに、第1所定値以上の振幅が確認されず、且つ、ステップS17において得られた第2差分波形データに、第2所定値以上の振幅が確認されなかった場合といえる。すなわち、図11に示す処理が実行されたということは、ガバナ付きガス器具10(電子制御機能付きガス器具10を含む)の使用であることがあり得ない場合である。そして、ガバナ付きガス器具10の使用であることがあり得ない状況下において、流路内のガス流量が所定量以上となった場合には、もはやガス漏れでしかあり得なくなる。詳細に説明すると、テーブルコンロなどのガバナ無しガス器具10では大きなガス流量が発生しないため、それ以上の流量が発生するということは、もはやガス漏れでしかなくなる。従って、マイコン43は、流量が所定量以上の場合にガス漏れと判断することとしている。特にこの処理においてマイコン43は、流量値を測定するだけでよくいち早くガス漏れを判断することができる。
【0091】
その後、マイコン43は、ガス漏れ対策として保安処理を実行する(S33)。このとき、マイコン43は、遮断弁を遮断させたり、警報器に警報動作を行わせたりする。そして、図11に示す処理は終了する。
【0092】
また、流量が所定量以上でないと判断した場合(S31:NO)、マイコン43は、ステップS17の途中で得られた第3波形データに図9のステップS6において得られた4ミリ秒間隔の波形データを加えて新たに第3波形データを得て、その第3波形データをフーリエ変換する(S34)。ここで、第3波形データのフーリエ変換による解析データは、分解能が0.25Hzで有効周波数が2.5Hz〜25Hzである。このため、マイコン43は、低周波数成分を示すスペクトルデータを取得することとなる。
【0093】
その後、判断部43bは、何らかの方法でガバナ無しガス器具10の使用かガス漏れかを判断する(S35)。例えば、その判断処理の方法として、スペクトルデータのうち25Hz未満のデータと、ガバナ無しガス器具10の標準波形(25Hz未満)と比較演算し、その類似度が規定値以上であるとき、ガバナ無しガス器具10の使用であると判断する。
【0094】
その他の判断処理(S35)の方法としては、例えば25Hz未満の周波数の信号のうち、特定値(例えば10Hz)以上の周波数の信号が所定振幅値以上である場合にガバナ無しガス器具10の使用と判断し、所定振幅値未満である場合にガス漏れと判断する。すなわち、図3及び図4に示したように、ガバナ無しガス器具10の使用とガス漏れとの周波数成分の差異から、マイコン43は、ガバナ無しガス器具10の使用に該当するか、又はガス漏れに該当するかを判断する。
【0095】
ガス漏れであると判断された場合(S35:YES)、処理はステップS32に移行し、保安処理が実行される(S33)。そして、図11に示す処理は終了する。
【0096】
他方、ガス漏れでないと判断されていた場合(S35:NO)、判断部43bは、ガバナ無しガス器具10の使用であると判断し(S36)、ガス器具10の種類を判別する(S37)。この処理についても図10に示したステップS15及びステップS20と同様にして行われる。なお、ガバナ無しガス器具10としては、例えばテーブルコンロなどがある。そして、図11に示す処理は終了する。
【0097】
このようにして、本実施形態に係るガスメータ40及び判断方法によれば、計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算する。ここで、電気信号の計測間隔は計測可能な周波数範囲と対応しており、計測間隔が短い方が計測可能な最高周波数が高くなる傾向になる。よって、計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算すると、計測間隔が長い方の最高周波数から計測間隔が短い方の最高周波数までの特定の周波数域を表す波形データを得ることができる。
【0098】
そして、減算されて得られた差分波形データに基づいて、電子制御機能付きガス器具10の使用、ガバナ付きガス器具10の使用、ガス器具10の使用、及びガス漏れの少なくとも1つを判断する。ここで、電子制御機能付きガス器具10の使用時、ガバナ付きガス器具10の使用時、ガス器具10の使用時、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れ時には、上記の順にガス圧力やガス流量の波形に高い周波数成分が含まれ易い傾向にあることから、特定の周波数域を表す波形データに基づくことにより、上記のいずれかに該当するか否かを判断することができる。
【0099】
このように、上記のいずれかを判断するにあたっては減算処理を行うだけでよく、複雑な演算を行う必要がないことから、処理量を低減して消費電力を抑制することができる。
【0100】
また、マイコン43は、流量変化の検出時点以降の特定時間の間のみの電気信号を入力する。ここで、ガバナ付きガス器具10の使用等に関しては、圧力や流量の波形の周波数及び振幅に特徴があらわれ、しかも、この特徴は、流量変化の検出時点以降から数秒以内であらわれるものである。よって、流量変化の検出時点以降の特定時間の間のみの電気信号の波形を解析するのみで、ガバナ付きガス器具10の使用等を判断できるため、不要な時間帯におけるデータを解析することなく、演算量を減らして消費電力を低減することができる。
【0101】
また、第1計測間隔の第1波形データから第1計測間隔よりも計測間隔が長い第2計測間隔の第2波形データを減算し、減算されて得られた第1差分波形データにおいて第1所定値以上の振幅が確認された場合に、電子制御機能付きガス器具10の使用であると判断する。ここで、電子制御機能付きガス器具10の使用時には、例えば100Hz以上の周波数に特徴があらわれることから、減算することによって第1差分波形データが表す周波数域を100Hz以上とすれば、消費電力を抑えつつ電子制御機能付きガス器具10の使用を適切に判断することができる。
【0102】
また、電子制御機能付きガス器具10の使用でないと判断した場合、第2計測間隔の第2波形データから第2計測間隔よりも計測間隔が長い第3計測間隔の第3波形データを減算し、減算されて得られた第2差分波形データにおいて第2所定値以上の振幅が確認された場合に、ガバナ付きガス器具10の使用であると判断する。ここで、ガバナ付きガス器具10の使用時には、例えば25Hz以上の周波数に特徴があらわれることから、減算することによって第2差分波形データが表す周波数域を25Hz以上とすれば、消費電力を抑えつつガバナ付きガス器具の使用を適切に判断することができる。
【0103】
また、第2差分波形データにおいて第2所定値以上の振幅が確認されず、流路内のガス流量が所定量以上であると判断した場合、ガス漏れと判断する。ここで、第2差分波形データにおいて第2所定値以上の振幅が確認されない場合とは、ガバナ無しガス器具10の使用又はガス漏れであるといえる。そして、この状況下において、流路内のガス流量が所定量以上となった場合、すなわち流量がある程度大きい場合には、もはやガス漏れでしかあり得なくなる。従って、上記の如く判断することにより、精度良くガス漏れを判断することができる。特に、大きな流量のガス漏れは、必然的にガス流量が所定量以上となっていることから、流量値を測定するだけで、いち早くガス漏れを判断することができる。加えて、流量が大きいガス漏れは危険度が高く、いち早くガス漏れを判断することで、素早く保安処理を実行することが可能となり、安全性の向上に寄与することができる。
【0104】
また、計測間隔が長い方の電気信号からなる波形データの少なくとも一部は、計測間隔が短い方の電気信号の一部を用いて構成されている。ここで、長い方の計測間隔は短い方の計測間隔と重なる場合があり、短い計測間隔で計測した電気信号の一部を長い方の計測間隔により得られる波形データとして用いることができる。これにより、長い計測間隔で計測する際に、短い計測間隔のデータを利用して計測回数を減じすることができ、消費電力を抑えることができる。
【0105】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0106】
また、本実施形態において判断装置はガスメータ40の内部構成として存在しているが、これに限らず、判断装置をガスメータ40から取り出して構成してもよい。また、ガスメータ40内の一部構成を取りだして構成し、取り出した一部構成とガスメータ40内の構成とによって判断装置を形成してもよい。
【0107】
また、本実施形態では、圧力センサ42からの信号に基づく圧力波形を解析して、ガバナ付きガス器具10の使用等を判断している。しかし、これに限らず、圧力と流量とには一定の相関があるため、流量センサ41からの信号に基づく流量波形を解析して、ガバナ付きガス器具10の使用等を判断するようにしてもよい。さらには、圧力波形及び流量波形の双方を解析して判断するようにしてもよい。
【0108】
また、本実施形態において、流量センサ41や圧力センサ42の構成については、特に限られるものではなく、種々のものを用いることが可能である。
【0109】
また、本実施形態において、商用電源によるノイズを除去していないが、計測時にリジェクトフィルタなどにより圧力センサ42や流量センサ41のデータから予め50Hz及び60Hzのデータを除去しておいても良い。これにより、ガバナ付きガス器具10の使用時やガス漏れ発生時において、ガバナ付きガス器具10の使用であると判断してしまう可能性を減じることができるからである。なお、商用電源付近の周波数を除去しない方が精度が上がる場合もあり、そのような場合には商用電源周波数を除去しないようにしてもよい。
【0110】
また、本実施形態において、ノイズ成分となりやすい400Hz以上の周波数成分を除去していないが、計測時にローパスフィルタなどにより圧力センサ42や流量センサ41のデータから予め400Hz以上のデータを除去しておいても良い。これにより、電子制御機能を有するガス器具10やガバナ付きガス器具10の未使用時において、電子制御機能を有するガス器具10やガバナ付きガス器具10の使用であると判断してしまう可能性を減じることができるからである。
【0111】
また、本実施形態において、電子制御機能付きガス器具10の使用、ガバナ付きガス器具10の使用、ガバナ無しガス器具10の使用、ガバナ無しガス器具10の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れのすべてについて判断する例について説明しているが、これに限らず、それらのうちいずれかひとつ以上を判断するように構成しても良い。ガス漏れだけを判断するようにすれば、ガス器具の種別を判断する必要が無く、より迅速にガス漏れが判断できると共に、消費電力を抑えることもできる。
【0112】
たとえば、図9においてS1とS2を省略し、S3以降のみを実施する。さらに図10においてS11〜S16を省略し、S17以降のみを実施する。そのようにすることで、電子制御機能付きガス器具10の使用の判別を行わないようにしても良い。それでも、S18において、電子制御機能の有無に関係ないもののガバナ付きガス器具10を判断でき、同様の処理を行うことができるとともに、消費電力を抑えることができる。
【0113】
また、本実施形態において、2つのタスクによるマルチタスク動作で説明しているが、これに限らず、例えば、圧力計測における計測間隔の時間計測を時間カウンタによる割り込み信号出力により実施して、図10及び図11に示すタスク動作中の割り込み信号受信時だけ図9に動作を移行させるなどで、1タスクによる動作で実施させることも可能である。あるいは、3つ以上のマルチタスクで動作させても良い。
【0114】
また、本実施形態において、図9のフローチャートにおけるステップS5で図10のフローチャートのタスク実行命令が出力されているが、これに限らず、図9のフローチャートのタスクが終了してから図10のタスクを実行しても良いし、図9のステップS2でYESと判断されてから図10のタスク実行命令を出力しても良い。図10のフローチャートのS11〜S14とS16は、図9のフローチャートのS3〜S4による波形データが無くても実行できるため、図9のステップS2でYESと判断された時点でも図10のタスク実行命令を出力しても問題は無い。ステップS15やS17を実行する前にステップS4でYESと判断されたことを確認すればよい。
【0115】
また、圧力波形データでは、初期圧力の変動に影響を受ける。具体的に初期圧力は第1配管31や第2配管32内のガス圧力であり、昼夜の気温差によって変動する場合がある。このような場合には、初期圧力の変動の影響を除去するために、圧力センサ42からマイコン43の間に3Hz以上のハイパスフィルタを設けてもよい。また、微分回路を設けるようにしてもよい。
【0116】
また、本実施形態では、3段階の異なる計測間隔で計測しているが、3段階に限らず、2段階又は4段階以上の計測間隔で計測してもよい。また、計測間隔を適宜調整してそれぞれの計測間隔による有効周波数を変更するようにしてもよい。さらには、有効周波数を適宜調整し、減算処理を実行することにより目的とするガス器具10に応じた周波数域の波形データを取得できるようにしてもよい。従って、15Hz〜70Hzの波形データを得るようにしてもよいし、メーカー毎のガス器具10の特徴的な周波数域に応じた波形データを得るようにしてもよい。
【0117】
また、本実施形態において第1波形データの計測時間は256ミリ秒であり、第2波形データの計測時間は約1秒であり、第3波形データの計測時間は約4秒である。そして、これら3つの波形データの計測ポイントの総数は、「2560」となっている。このため、第1〜第3波形データのそれぞれは、全体の計測からすると一部を構成していることとなる。しかし、波形データのいずれかは、一部に限らず、全体であってもよい。例えば、0.25ミリ秒間隔で256ミリ秒の計測を行い第1波形データとし、この計測によってデータの4個に1つを取得して第2波形データを構成するようにしてもよい。これにより、第2波形データは全体の計測からすると一部を構成していることとなるが、第1波形データは全体を構成することとなる。
【符号の説明】
【0118】
1…ガス供給システム
10…ガス器具
12…遮断弁
13…ガバナ
13a…ガバナ内弁
13b…ノズル
13c…外壁
13d…ガバナキャップ
13e…ダイヤフラム
13f…調整スプリング
13g…調整ネジ
13h…空気孔
14…バーナー
20…調整器
31…第1配管
32…第2配管
40…ガスメータ(判断装置)
41…流量センサ
42…圧力センサ
43…マイコン
43a…減算部(減算手段)
43b…判断部(判断手段)
43c…流量変化検出部(流量変化検出手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、判断装置及び判断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用中のガス器具にガバナが設けられているかを判断するガス器具判別装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−265513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、本件出願人は、特願2008−86022の技術を発明している。この発明では、ガス圧力に基づいてガバナ付きガス器具が使用されたか、ガバナ無しガス器具が使用されたか、及び、ガス漏れが発生しているか否かを判断するようになっている。
【0005】
しかし、特願2008−86022の技術の場合、ガバナ付きガス器具が使用されたか等を判断するにあたり、圧力波形の周波数分析等を行う必要があり、この周波数分析により処理量が多くなって消費電力の増大を招いてしまう可能性がある。なお、本明細書では特願2008−86022の一部技術を説明しているが、この説明は特願2008−86022の技術の公知性を認めるものではない。
【0006】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、電子制御機能付きガス器具の使用、ガバナ付きガス器具の使用、ガス器具の使用、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断するにあたり、消費電力の増大を抑制することが可能な判断装置及び判断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の判断装置は、流路内のガス圧力に応じた電気信号を出力する圧力センサ、及び、流路内のガス流量に応じた電気信号を出力する流量センサの少なくとも一方からの電気信号を入力して演算する演算手段を備え、前記演算手段は、同時間帯において異なる計測間隔で計測した電気信号からなる複数の波形データのうち、計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算する減算手段と、前記減算手段により減算されて得られた差分波形データに基づいて、電子制御機能付きガス器具の使用、ガバナ付きガス器具の使用、ガス器具の使用、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断する判断手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この判断装置によれば、計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算する。ここで、電気信号の計測間隔は計測可能な周波数範囲と対応しており、計測間隔が短い方が計測可能な最高周波数が高くなる傾向になる。よって、同時間帯において計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算すると、計測間隔が長い方の最高周波数から計測間隔が短い方の最高周波数までの特定の周波数域を表す差分波形データを得ることができる。
【0009】
そして、減算されて得られた差分波形データに基づいて、電子制御機能付きガス器具の使用、ガバナ付きガス器具の使用、ガス器具の使用、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断する。ここで、電子制御機能付きガス器具の使用時、ガバナ付きガス器具の使用時、ガス器具の使用時、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれかの時、及びガス漏れ時には、上記の順にガス圧力やガス流量の波形に高い周波数成分が含まれ易い傾向にある。このため、特定の周波数域を表す波形データに基づくことにより、上記のいずれかに該当するか否かを判断することができる。
【0010】
このように、上記のいずれかを判断するにあたっては減算処理を行うだけでよく、複雑な演算を行う必要がないことから、処理量を低減して消費電力を抑制することができる。なお、上記でいう電子制御機能とは、PIDなどの自動制御によりガス量を細かく調整することでガス燃焼量を制御する機能をいう。
【0011】
また、本発明の判断装置において、流路内のガス流量が特定値以内の範囲で安定している状態から特定値を超える流量変化を検出する流量変化検出手段を備え、前記演算手段は、前記流量変化検出手段が検出した流量変化の検出時点以降の特定時間の間のみの電気信号を入力することが好ましい。
【0012】
この判断装置によれば、流量変化の検出時点以降の特定時間の間のみの電気信号を入力する。ここで、ガバナ付きガス器具の使用等に関しては、圧力や流量の波形の周波数及び振幅に特徴があらわれ、しかも、この特徴は、流量変化の検出時点以降から数秒以内であらわれるものである。よって、流量変化の検出時点以降の特定時間の間のみの電気信号の波形を解析するのみで、ガバナ付きガス器具の使用等を判断できるため、不要な時間帯におけるデータを解析することなく、演算量を減らして消費電力を低減することができる。
【0013】
また、本発明の判断装置において、前記減算手段は、第1計測間隔の第1波形データから前記第1計測間隔よりも計測間隔が長い第2計測間隔の第2波形データを減算して第1差分波形データを得て、前記判断手段は、前記第1差分波形データにおいて第1所定値以上の振幅が確認された場合に、電子制御機能付きガス器具の使用であると判断することが好ましい。
【0014】
この判断装置によれば、第1計測間隔の第1波形データから第1計測間隔よりも計測間隔が長い第2計測間隔の第2波形データを減算し、減算されて得られた第1差分波形データにおいて第1所定値以上の振幅が確認された場合に、電子制御機能付きガス器具の使用であると判断する。ここで、電子制御機能付きガス器具の使用時には、100Hz程度以上の周波数に特徴があらわれることから、減算することによって第1差分波形データが表す周波数域を100程度Hz以上とすれば、消費電力を抑えつつ電子制御機能付きガス器具の使用を適切に判断することができる。
【0015】
また、本発明の判断装置において、前記減算手段は、第2計測間隔の第2波形データから前記第2計測間隔よりも計測間隔が長い第3計測間隔の第3波形データを減算して、第2差分波形データを得て、前記判断手段は、前記第2差分波形データにおいて第2所定値以上の振幅が確認された場合に、ガバナ付きガス器具の使用であると判断することが好ましい。
【0016】
この判断装置によれば、第2計測間隔の第2波形データから第2計測間隔よりも計測間隔が長い第3計測間隔の第3波形データを減算し、減算されて得られた第2差分波形データにおいて第2所定値以上の振幅が確認された場合に、ガバナ付きガス器具の使用であると判断する。ここで、ガバナ付きガス器具の使用時には、25Hz程度以上の周波数に特徴があらわれることから、減算することによって第2差分波形データが表す周波数域を25Hz程度以上とすれば、消費電力を抑えつつガバナ付きガス器具の使用を適切に判断することができる。
【0017】
また、本発明の判断装置において、判断手段は、前記第2差分波形データにおいて前記第2所定値以上の振幅が確認されず、流路内のガス流量が所定量以上であると判断した場合、ガス漏れと判断することが好ましい。
【0018】
この判断装置によれば、第2差分波形データにおいて第2所定値以上の振幅が確認されず、流路内のガス流量が所定量以上であると判断した場合、ガス漏れと判断する。ここで第2差分波形データにおいて第2所定値以上の振幅が確認されない場合とは、ガバナ無しガス器具の使用又はガス漏れであるといえる。そして、この状況下において、流路内のガス流量が所定量以上となった場合、すなわち流量がある程度大きい場合には、もはやガス漏れでしかあり得なくなる。従って、上記の如く判断することにより、精度良くガス漏れを判断することができる。特に、大きな流量のガス漏れは、必然的にガス流量が所定量以上となっていることから、流量値を測定するだけで、いち早くガス漏れを判断することができる。加えて、流量が大きいガス漏れは危険度が高く、いち早くガス漏れを判断することで、素早く保安処理を実行することが可能となり、安全性の向上に寄与することができる。
【0019】
また、本発明の判断装置において、複数の波形データのうち少なくとも2つの波形データにおいて、計測間隔が長い方の電気信号からなる波形データの少なくとも一部は、計測間隔が短い方の電気信号の一部を用いて構成されていることが好ましい。
【0020】
この判断装置によれば、計測間隔が長い方の電気信号からなる波形データの少なくとも一部は、計測間隔が短い方の電気信号の一部を用いて構成されている。ここで、計測間隔の短い方の波形データの中には計測間隔の長い方の波形データが含まれているので、短い計測間隔で計測した電気信号の中に含まれている長い計測間隔により得られるべき波形データを取り出して、計測間隔が長い方の電気信号からなる波形データの一部として用いることができる。これにより、長い計測間隔で計測する際に、短い計測間隔のデータを利用して計測回数を減じることができ、消費電力を抑えることができる。
【0021】
また、本発明の判断装置において、前記減算手段は、計測間隔が長い方の電気信号からなる波形データについて、計測ポイント間のデータを直線補間により算出し、算出されたデータを含めた補間波形データを求め、計測間隔が短い方の波形データから補間波形データを減算することが好ましい。
【0022】
この判断装置によれば、計測間隔が長い方の電気信号からなる波形データについて、計測ポイント間のデータを直線補間により算出し、算出されたデータを含めた補間波形データを求める。ここで、同じ時間帯において計測間隔が長い方の波形データは、計測間隔が短い方の波形データよりもデータ数が少なく、減算するにあたり不足分が生じてしまう。このため、直線補間によりデータ不足分を補うことができ、適切に減算処理を実行することができる。
【0023】
また、本発明の判断方法は、流路内のガス圧力に応じた電気信号を出力する圧力センサ、及び、流路内のガス流量に応じた電気信号を出力する流量センサの少なくとも一方からの電気信号を入力して演算する演算工程を有し、前記演算工程では、同時間帯において異なる計測間隔で計測した電気信号からなる複数の波形データのうち、計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算する減算工程と、前記減算工程において減算されて得られた差分波形データに基づいて、電子制御機能付きガス器具の使用、ガバナ付きガス器具の使用、ガス器具の使用、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断する判断工程と、を有することを特徴とする。
【0024】
この判断方法によれば、計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算する。ここで、電気信号の計測間隔は計測可能な周波数範囲と対応しており、計測間隔が短い方が計測可能な最高周波数が高くなる傾向になる。よって、計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算すると、計測間隔が長い方の最高周波数から計測間隔が短い方の最高周波数までの特定の周波数域を表す差分波形データを得ることができる。
【0025】
そして、減算されて得られた差分波形データに基づいて、電子制御機能付きガス器具の使用、ガバナ付きガス器具の使用、ガス器具の使用、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断する。ここで、電子制御機能付きガス器具の使用時、ガバナ付きガス器具の使用時、ガス器具の使用時、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれかの時、及びガス漏れ時には、上記の順にガス圧力やガス流量の波形に高い周波数成分が含まれ易い傾向にある。このため、特定の周波数域を表す波形データに基づくことにより、上記のいずれかに該当するか否かを判断することができる。
【0026】
このように、上記のいずれかを判断するにあたっては減算処理を行うだけでよく、複雑な演算を行う必要がないことから、処理量を低減して消費電力を抑制することができる。なお、上記でいう電子制御機能とは、PIDなどの自動制御によりガス量を細かく調整することでガス燃焼量を制御する機能をいう。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、電子制御機能付きガス器具の使用、ガバナ付きガス器具の使用、ガバナ無しガス器具の使用、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断するにあたり、消費電力の増大を抑制することが可能な判断装置及び判断方法を提供することが可能な判断装置及び判断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る判断装置を含むガス供給システムの構成図である。
【図2】図1に示したガバナの一例を示す側方断面図である。
【図3】ガス漏れが発生したときの圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフである。
【図4】ガバナ無しガス器具が使用されたときの圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフである。
【図5】ガバナ付きガス器具が使用されたときの圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフであって、電子制御機能を有さないガス器具使用時のグラフである。
【図6】ガバナ付きガス器具が使用されたときの圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフであって、電子制御機能を有するガス器具使用時の第1のグラフである。
【図7】ガバナ付きガス器具が使用されたときの圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフであって、電子制御機能を有するガス器具使用時の第2のグラフである。
【図8】ガバナ無しガス器具での燃料ガスの供給の様子を示す概略図である。
【図9】本実施形態に係るガスメータの判断方法を示す第1のフローチャートである。
【図10】本実施形態に係るガスメータの判断方法を示す第2のフローチャートである。
【図11】本実施形態に係るガスメータの判断方法を示す第3のフローチャートである。
【図12】正弦波の圧力又は流量の振動波形を2つの異なる計測間隔で計測した場合を示すグラフである。
【図13】図12に示す波形データを減算して得られた差分波形データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る判断装置を含むガス供給システムの構成図である。ガス供給システム1は、ガスストーブ、ファンヒータ、給湯器及びテーブルコンロなどの各ガス器具10に燃料ガスを供給するものであって、複数のガス器具10と、ガス供給元の調整器20と、配管31,32と、ガスメータ(判断装置)40とを備えている。なお、図1に示す例では、ガスメータ40を判断装置の一例として挙げるが、判断装置はガスメータ40に限るものではない。
【0030】
調整器20は上流からの燃料ガスを所定圧力に調整して第1配管31に流すものである。この調整器20は、例えば燃料ガスを2.9kPa程度の圧力に調整して第1配管31に流す構成となっている。第1配管31は、調整器20とガスメータ40とを接続するものである。第2配管32はガスメータ40とガス器具10とを接続する配管である。ガスメータ40は、燃料ガスの流量を測定して積算流量を表示するものである。このようなガス供給システム1では、ガスメータ40内に第1配管31及び第2配管32とつながる流路が形成されており、調整器20を通じて流れてきた燃料ガスは第1配管31からガスメータ40、及び第2配管32を通じてガス器具10に到達し、ガス器具10において燃焼されることとなる。
【0031】
また、ガス器具10は、概略的に、遮断弁12、ガバナ13、及びバーナー14を備えている。遮断弁12は、ガス器具10に設けられた弁である。ガバナ13は、ガバナ内弁13aを有し、ガス器具10のバーナー14に供給するガスの圧力をガバナ内弁13aの開度によって調整するものである。圧力調整された燃料ガスはガバナ13の先端のノズル13bを通じてバーナー14に至り、燃焼することとなる。なお、ガス器具10は、すべてがガバナ13を有しているわけでなく、ガスコンロなどのようにガバナ13を有さないものもある。
【0032】
図2は、図1に示したガバナ13の一例を示す側方断面図である。なお、図2では、ガバナ13の一例を示すに過ぎず、ガバナ13の構成は図2に示すものに限られない。また、図2に示すガバナ13については図1に示したノズル13bを省略して図示する。
【0033】
図2に示すようにガバナ13は、外壁13cとガバナキャップ13dとによって形成される内部空間の一部をガス流路として用いるものである。このようなガバナ13は、ガバナ内弁13aに加えて、内部空間に、ダイヤフラム13e、調整スプリング13f、及び調整ネジ13gを備えている。
【0034】
ダイヤフラム13eは、ガバナ13の内部空間を仕切る膜状の部材である。このダイヤフラム13eには、一方側(流路側)にガバナ内弁13aが取り付けられている。また、ダイヤフラム13eの他方側(流路として機能しない側)に調整スプリング13fが取り付けられている。調整スプリング13fは、一端にダイヤフラム13eが取り付けられ、他端に調整ネジ13gが取り付けられている。調整ネジ13gは、ねじ切り溝が形成されたガバナ13の内壁に固定される構造となっており、ねじ切り溝との固定位置を変化させることで調整スプリング13fの圧縮率を変更可能となっている。また、調整ネジ13gは外部にむき出しとなっておらず、ガバナキャップ13dによって覆われた構造となっている。
【0035】
また、ガバナ13の外壁13cには、ダイヤフラム13eの他方側に通じる空気孔13hが形成されている。このため、ダイヤフラム13eの他方側は空気圧となっている。さらに、図2に示す例においてガバナ内弁13aは半球形状となっており、上下動によって通過口13iの開口割合を制御可能となっている。
【0036】
このようなガバナ13では、ガス入側のガス圧が高くなると、ダイヤフラム13eが上へ押し上げられ、同時にダイヤフラム13eに取り付けられているガバナ内弁13aも上に引き上げられる。これにより、通過口13iの開口割合が小さくなって、ガス流量が減少する。一方、ガス入側のガス圧が低くなると、ダイヤフラム13eが下がり、同時にダイヤフラム13eに取り付けられているガバナ内弁13aも下がる。これにより、通過口13iの開口割合が大きくなって、ガス流量が増大する。このように、ガバナ13は上流側の圧力の変動に対して下流側の流量を一定に保つことで、下流側の圧力を調整することとなる。
【0037】
再度図1を参照する。図1に示すガスメータ40は、流路内のガス流量が増加した場合、又は流路内のガス圧力が減少した場合に、その流量や圧力の変化の状態を表す振動波形に基づいて、電子制御機能付きガス器具10の使用、ガバナ付きガス器具10の使用、ガス器具10の使用、ガバナ無しガス器具10の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断するものである。ここで、電子制御機能とは、PIDなどの自動制御によりガス量を細かく調整することでガス燃焼量を制御する機能をいう。このようなガスメータ40は、流量センサ41と、圧力センサ42と、マイコン(演算手段)43とから構成されている。
【0038】
流量センサ41は、ガスメータ40内の流路に設置され、流路内のガス流量を検出するためのものである。本実施形態に係るガスメータ40が超音波式のガスメータである場合、流量センサ41は、流路内に一定距離だけ離れて配置された例えば圧電式振動子からなる2つの音響トランスジューサによって構成される。また、本実施形態に係るガスメータ40がフローセンサなどの熱式センサを搭載したガスメータである場合、温度分布をつくり出すヒータと、その温度分布に応じた信号を発生させる温度センサによって構成される。
【0039】
圧力センサ42は、ガスメータ40内の流路内に存在するガスのガス圧を検出するためのものである。なお、圧力センサ42は、ガスメータ40内の流路に限らず、可能であればガスメータ40の外部に存在する第1配管31内や第2配管32内に設置されていてもよい。同様に、流量センサ41についても設置箇所については変更可能である。
【0040】
また、本実施形態では、図1において流量センサ41及び圧力センサ42からの信号が直接マイコン43に入力されているが、場合によっては増幅器等の他の要素が両者間に追加されていてもよい。
【0041】
マイコン43は、ガスメータ40の全体を制御するものであり、流量の積算制御、表示制御、遮断弁の遮断制御等を行うものである。また、本実施形態においてマイコン43は、異なる計測間隔で圧力センサ42からの電気信号を入力するようになっている。具体的にマイコン43は、0.25ミリ秒(第1計測間隔)、1ミリ秒(第2計測間隔)、及び4ミリ秒(第3計測間隔)の3段階の計測間隔で圧力センサ42からの電気信号を入力するようになっている。なお、計測間隔は3段階に限らず2段階や4段階以上であってもよい。さらに、計測間隔は0.25ミリ秒、1ミリ秒、及び4ミリ秒に限らず、0.1ミリ秒や10ミリ秒など適宜変更可能である。
【0042】
また、マイコン43は、減算部(減算手段)43aと、判断部(判断手段)43bと、流量変化検出部(流量変化検出手段)43cとを有している。減算部43aは、同時間帯において異なる計測間隔で計測した電気信号からなる複数の波形データのうち、計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算するものである。本実施形態において減算部43aは、0.25ミリ秒間隔で計測した第1波形データから、1ミリ秒間隔で計測した第2波形データを減算して第1差分波形データを得る。ここで、第1及び第2波形データのうち同じ時間帯で計測した部分の波形データを取り出して減算処理に用いる。またここで、1ミリ秒間隔で計測した波形データは、0.25ミリ秒間隔で計測した波形データより数が少なく、そのままでは減算することができない。そこで、1ミリ秒間隔で計測した波形データの不足分は、その前後の2つのデータで直線補間して補い、補間により補間波形データで減算処理を行う。さらに、本実施形態において減算部43aは、第2波形データから、4ミリ秒間隔で計測した第3波形データを減算して第2差分波形データを得る。減算処理の実施方法は、第1差分波形データを得る方法と同様となる。
【0043】
なお、減算部43aは上記のような減算する場合に限らず、0.25ミリ秒間隔で計測した第1波形データから、4ミリ秒間隔で計測した第3波形データを減算してもよい。さらに、減算部43aは、計測間隔が4段階以上である場合には、それに応じて適宜減算するように構成されていてもよい。
【0044】
判断部43bは、減算部43aにより減算されて得られた差分波形データに基づいて、電子制御機能付きガス器具10の使用、ガバナ付きガス器具10の使用、ガス器具10の使用、ガバナ無しガス器具10の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断するものである。具体的に判断部43bは、第1差分波形データに基づいて電子制御機能付きガス器具10が使用されたか否かを判断する。また、判断部43bは、第2差分波形データに基づいてガバナ付きガス器具10が使用されたか否かを判断する。
【0045】
なお、本実施形態において判断部43bは、電子制御機能付きガス器具10の使用、及びガバナ付きガス器具10の使用を判断するが、これに限らず、計測間隔を変更するなどの方法により、ガス器具10(すなわち電子制御機能付き、ガバナ付き及びガバナ無しのすべてを含むガス器具)の使用を判断することもできるし、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれかであることを判断することもできるし、ガス漏れの発生についても判断することができる。
【0046】
流量変化検出部43cは、流路内のガス流量が特定値以内の範囲で安定している状態から特定値を超える流量変化を検出するものである。上記の減算部43a及び判断部43bは、流量変化検出部43cにより特定値を超える流量変化が検出された場合に動作を開始することとなる。
【0047】
なお、本実施形態において流量変化検出部43cは、マイコン43内に構成しているが、マイコン43内から切り離して別に構成しても良い。その場合、流量変化検出部43cが流量変化を検出してないうちはマイコン43の電源を切っておき、流量変化を検出した時にすばやくマイコン43の電源を入れるように構成することも可能である。さらに、圧力センサ42や流量センサ41から出力される電気信号から流量変化を検出するように構成されているが、別の構成で流量変化を検出するように構成しても良い。具体的には、急激な圧力変化でスイッチングする圧力スイッチを用いて構成する方法も考えられる。
【0048】
次に、図3〜図8を参照して、電子制御機能付きガス器具10の使用、ガバナ付きガス器具10、ガス器具10の使用、及びガス漏れを判断できる理論を説明する。
【0049】
図3は、ガス漏れが発生したときの圧力波形をフーリエ変換した結果を示すグラフであり、図4は、ガバナ無しガス器具10が使用されたときの圧力波形をフーリエ変換した結果を示すグラフであり、図5〜図7は、ガバナ付きガス器具10が使用されたときの圧力波形をフーリエ変換した結果を示すグラフである。なお、図3〜図7において縦軸は振幅を示し、横軸は周波数を示している。また、フーリエ変換した圧力波形は、圧力の変動が発生してから約0.3秒〜1秒経過するまでの時間帯において、1ミリ秒の間隔で計測した圧力データからなっている。
【0050】
図3に示すように、ガス漏れが発生した場合、得られる圧力波形には、20Hz以上の周波数成分が殆ど含まれていない。また、図4に示すように、ガバナ無しガス器具10が使用された場合、得られる圧力波形には、25Hz程度以上の周波数成分が殆ど含まれていないが、約10Hz付近の周波数成分が多く含まれる傾向がある。また、図5〜図7に示すように、ガバナ付きガス器具10が使用された場合、得られる圧力波形には、25Hz程度以上の周波数成分が多く含まれる傾向がある。なお、図3〜図7において60Hz付近に存在するピークは、商用電源によるノイズである。
【0051】
上記のような特徴が発生する理由は以下の通りである。まず、ガバナ付きガス器具10が使用された場合に、圧力波形に高い周波数成分(25Hz程度以上の周波数成分)が含まれる理由は、ガバナ13内に調整スプリング13fが設けられているからである。すなわち、ガバナ付きガス器具10の使用が開始されると、調整スプリング13fが振動すると共に、ガバナ内弁13aについても振動し、通過口13iの開口割合についても小刻みに大きくなったり小さくなったりと変化するからである。このように、調整スプリング13fが小刻みに振動することから、圧力波形は比較的高い周波数成分を多く含むこととなる。
【0052】
なお、圧力Pは、
【数1】
なる演算式で表すことができる。ここで、Cは振幅を示し、kは摩擦力(減衰定数)を示し、ωは復元力を示し、αは初期位相を示している。この式は多くの周波数fi=ωi/2πの振動の重ね合わせであることを示している。
【0053】
また、ガバナ無しガス器具10が使用された場合に、圧力波形に10Hz程度の周波数成分が含まれる理由は、以下の通りである。図8は、ガバナ無しガス器具10での燃料ガスの供給の様子を示す概略図である。図8に示すように、ガバナ無しガス器具10が使用された場合、燃料ガスは第2配管32からノズルホルダ100を通じてバーナー14等に至る。ここで、ノズルホルダ100にある流速を持った気体が流入したときはその慣性力で急には流速が小さくならずに一旦ガスが圧縮され圧力が上昇する。その後上昇した圧力により流入流速が小さく(場合によっては逆流)なって圧力が下がる。これを繰り返すことで圧縮膨張の振動が発生する。
【0054】
ところが、ガバナ無しガス器具10の場合、ガバナ付きガス器具10のように、細かく振動する調整スプリング13fを有していない。このため、ガバナ無しガス器具10の使用による圧力波形は、ガバナ付きガス器具10の使用時よりも高い周波数成分が含まれることなく、10Hz程度の周波数成分を示すこととなる。
【0055】
また、ガス漏れが発生した場合、調整スプリング13fの振動、及び、ノズルホルダ100の圧縮性による振動の双方が発生しない。このため、圧力波形には明確な振動が見られず、10Hz程度の周波数成分すら含まれない傾向にある。
【0056】
以上のように、ガバナ付きガス器具10の使用開始時と、ガバナ無しガス器具10の使用開始時と、ガス漏れ発生時とでは、圧力波形の周波数成分に違いが生じることとなる。
【0057】
また、図6及び図7に示すように、電子制御機能を有するガス器具10では、商用電源の周波数を超える周波数成分(例えば100Hz以上)が得られている。一方、図5に示すように、電子制御機能を有さないガス器具10では、商用電源の周波数を超える周波数成分があまり得られない。これは、電子制御において少なくとも50Hzの速度でガス量を調整するため、この周波数がそのまま、ノイズ的に重畳してしまうからである。
【0058】
以上のように、ガバナ付きガス器具10の使用時、ガバナ無しガス器具10の使用時、及びガス漏れ時の順に圧力波形には高い周波数成分が含まれる。また、ガバナ付きガス器具10であっても、電子制御機能を有するガス器具10の方が一層高い周波数成分を含むこととなる。
【0059】
本実施形態に係るガスメータ40は、上記のような周波数の相異に基づいて、電子制御機能付きガス器具10の使用、ガバナ付きガス器具10の使用、ガス器具10の使用、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断する。そして、本実施形態に係るガスメータ40は、判断するにあたって減算部43aにより減算処理を行うこととしている。
【0060】
まず、異なる計測間隔によって計測可能な周波数域について説明する。本実施形態では、まず圧力センサ42からの電気信号を0.25ミリ秒間隔で1024回計測する。この場合、0.25ミリ秒×1024回=256ミリ秒の計測を行うこととなる。
【0061】
0.25ミリ秒間隔で計測(4キロサンプリング毎秒(4kS/s))していることから、それより早い周期の周波数については計測できない。エイリアシング現象により2kHz以上の周波数は、2kHz以下の周波数として観測されてしまう。さらに、安定した解析のためには、1周期に10ポイント程度で計測されていることが必要となり、十分な解析ができる有効な最高周波数は4kS/s÷10=400Hzとなる。なお、400Hz〜2kHzの周波数域では、実際の振幅よりも計測される振幅の方が、低い周波数から高い周波数の順序で徐々に小さくなっていく。特に、2kHzの周波数波形を計測する時、最悪ではまったく計測できず、最善でも1/1.7程度の振幅になってしまうような計測波形データになる。
【0062】
以上より、0.25ミリ秒間隔で256ミリ秒間の計測では、400Hz以下の周波数について有効に計測できることとなる。
【0063】
また、本実施形態では、圧力センサ42からの電気信号を1ミリ秒間隔で1024回計測する。この場合、1ミリ秒×1024回=1.024秒≒1秒の計測を行うこととなる。そして、上記と同様にして有効に計測できる周波数域を求めると、周波数域は100Hz以下となる。なお、100Hz〜500Hzの周波数域では、上記と同様に、実際の振幅よりも計測される振幅が、低い周波数から高い周波数の順番で徐々に小さくなってしまう。さらに、本実施形態では、圧力センサ42からの電気信号を4ミリ秒間隔で1024回計測する。この場合、4ミリ秒×1024回=4.096秒≒4秒の計測を行うこととなる。このため、有効に計測できる周波数域は25Hz以下となる。なお、25Hz〜125Hzの周波数域では、上記と同様に、実際の振幅よりも計測される振幅が、低い周波数から高い周波数の順番で徐々に小さくなってしまう。
【0064】
以上のように有効に計測できる周波数域が異なっていることから、減算部43aによって減算処理を行うと、周波数域をより限定できる。すなわち、100Hz〜400Hzまでの周波数帯に振幅がある場合、0.25ミリ秒間隔で計測した第1波形データでは振幅の大きさを精度よく計測するが、1ミリ秒間隔で計測した第2波形データでは振幅の大きさを小さめに計測する。そのため、その両方の波形を減算処理することで、100Hz〜400Hzまでの周波数帯に振幅がある場合には、振幅が観測される第1差分波形データを得ることができる。さらに、400Hz以上の周波数帯に振幅がある場合でも、第1波形データと第2波形データにおける計測される振幅の大きさに差が生じるため、第1差分波形データに振幅が観測される。同様に、1ミリ秒間隔で計測した第2波形データから4ミリ秒間隔で計測した第3波形データを減算すると、25Hz以上の周波数帯に振幅がある場合には振幅が観測される第2差分波形データを得ることができる。
【0065】
さらに詳細に説明する。図12は、正弦波の圧力又は流量の振動波形を2つの異なる計測間隔で計測した場合を示すグラフである。計測間隔が短い方は、1周期分を10個の計測点で計測しており、有効な最高周波数の計測波形となり、十分な振幅の計測が行われている。計測間隔が長い方は、1周期分を2.5個の計測点で計測しており、有効ではない周波数の計測波形となり、振幅がかなり小さくなっている。計測間隔が長い方の計測では、計測間隔が短い方の計測による各データの4個毎に1個のデータを共通化している。
【0066】
図12で計測間隔が短い方を0.25ミリ秒間隔の計測である第1波形データとすると、計測間隔が長い方は1ミリ秒間隔の計測である第2波形データであり、計測前の振動波形は400Hzの周波数であるとみなすことができる。
【0067】
そして、減算部43aは、図12に示すような波形データを減算して差分波形データを得る。なお、計測間隔の短い方の波形データから計測間隔の長い方の波形データを減算する際、計測間隔の長い方の波形データは計測ポイントが少ない分、減算時のデータが不足してしまう。このため、減算部43aは、その前後のデータを直線補間することにより不足分のデータを得る(補間して得たデータは図12の×印参照)。そして、減算して得られた波形を図13に示す。図13に示すように、減算して得られた差分波形データの振幅は、部分的にゼロとなる箇所があるものの、全体としてゼロにはならず、ある程度の振幅値を残した波形が得られる。なお、図12で1周期分を10個より多い計測点で計測したデータと、10個の計測点で計測したデータとを減算処理しても図13に示すような明確な(ノイズ成分より大きい)振幅を観測することはできないことは明白である。
【0068】
そして、100Hz〜400Hzまでの周波数帯では、電子制御機能付きガス器具10の使用時に大きな振幅を示すことから(図6及び図7参照)、判断部43bは、第1差分波形データにおける振幅の有無に基づいて電子制御機能付きガス器具10の使用を判断できる。例えば、第1所定値(例えば20Pa)以上の圧力振幅(+20Pa以上か−20Pa以下のどちらかの圧力)が所定回数(例えば5回)確認された場合に、圧力値の振幅が大きいと判断して、電子制御機能付きガス器具10が使用されたと判断する。
【0069】
同様に、判断部43bはガバナ付きガス器具10の使用を判断する。すなわち、25Hz〜100Hzまでの周波数帯では、ガバナ付きガス器具10の使用時に大きな振幅を示す。このため、判断部43bは、第2差分波形データにおける振幅の大きさに基づいてガバナ付きガス器具10の使用を判断する。この際、判断部43bは、第2差分波形データにおいて第2所定値以上の振幅が所定回数確認された場合に、ガバナ付きガス器具10が使用されたと判断する。なお、100Hz以上の周波数帯に大きな振幅がある場合でも第2波形データは第2所定値以上の振幅を有するが、電子制御機能付きガス器具10はガバナ付きであるので問題はない。
【0070】
なお、本実施形態において、計測間隔の長い方の波形データは計測間隔の短い方の波形データの一部を共有して得ていたが、計測間隔の長い方の波形データを別途計測するようにしても良い。その場合、エイリアシング領域の周波数帯に振幅がある波形でも、差分波形データで振幅があることを確認できるようになる。
【0071】
以上から明らかなように、本実施形態に係るガスメータ40は、異なる計測間隔で圧力センサ42からの電気信号を計測し、減算部43aによって減算処理し、且つ減算により得られた波形の振幅値を観測するだけで、電子制御機能付きガス器具10及びガバナ付きガス器具10の使用を判断することができる。従って、フーリエ変換など計算量の多い計算を行う必要がなく、処理量を抑えることができ、消費電力の増大を抑制することができる。
【0072】
なお、本実施形態において判断部43bは、ガバナ無しガス器具10の使用及びガス漏れについて、フーリエ変換による解析やガス流量の監視により判断するようになっている。しかし、本実施形態では減算処理することにより電子制御機能付きガス器具10及びガバナ付きガス器具10の使用を判断することができるため、そのどちらでもない場合だけ、ガバナ無しガス器具10の使用であるかガス漏れであるかを判断するだけでよく、フーリエ変換等を行っても処理量は減じられることとなり、消費電力の増大を抑制することができる。
【0073】
また、上記では、圧力を例に説明したが、圧力と流量とには一定の相関があるため、本実施形態において減算部43aは流量センサ41からの電気信号を異なる計測間隔で計測して減算処理を行い、判断部43bはその減算処理によって得られた差分波形データから電子制御機能付きガス器具10の使用等を判断してもよい。
【0074】
図9は、本実施形態に係るガスメータ40の判断方法を示す第1のフローチャートである。まず、流量変化検出部43cは、特定値(例えば1.5L/hrであってガスメータで計測可能な最低流量、又は、流量の脈動により発生し得ない程度の流量)を超える流量変化があったか否かを判断している。そして、特定値を超える流量変化があった場合、図9に示すフローチャートが開始される。なお、図9に示すフローチャートは、圧力センサ42からの電気信号に基づいて、流路内のガス圧力が特定量以上減少した場合に開始されてもよい。もちろん、流量変化を捉えることができる手段であれば、その他どのような手段でも良い。
【0075】
まず、マイコン43は、圧力センサ42からの電気信号に基づいて、0.25ミリ秒間隔で圧力を計測する(S1)。その後、マイコン43は、1024個の圧力データが取得されたか否かを判断する(S2)。
【0076】
1024個の圧力データが取得されていないと判断した場合(S2:NO)、処理はステップS1に移行する。一方、1024個の圧力データが取得されたと判断した場合(S2:YES)、マイコン43は、1ミリ秒間隔で圧力を計測する(S3)。その後、マイコン43は、768個の圧力データが取得されたか否かを判断する(S4)。ここで、ステップS24の処理では、圧力データが768個取得されたか判断している。これは、ステップS21で取得した圧力データの一部を用いることができるためである。すなわち。0.25ミリ秒の計測間隔で圧力データを取得した場合、4回に1回は、1ミリ秒の計測間隔で圧力データを取得した場合と、計測間隔が重なることとなる。このため、1ミリ秒の計測間隔では768個の圧力データを取得しておけば、実質的に768+256(1024/4)=1024個の圧力データを取得していることと同等となる。これにより、計測回数を減らすこととなって消費電力を抑えることができる。
【0077】
768個の圧力データが取得されていないと判断した場合(S4:NO)、処理はステップS23に移行する。一方、768個の圧力データが取得されたと判断した場合(S4:YES)、タスク起動命令が出力される(S5)。これにより、図9のフローチャートのタスク実行とは別に並列して図10に示すフローチャートが実行される。
【0078】
タスク起動命令が出力されても(S5)、図10のフローチャートのタスク実行をしながら、図9のフローチャートのタスクは継続実行される。そして、マイコン43は、4ミリ秒間隔で圧力を計測する(S6)。その後、マイコン43は、768個の圧力データが取得されたか否かを判断する(S7)。ここで、768個の圧力データが取得されたか否かを判断する理由はステップS4と同様である。
【0079】
768個の圧力データが取得されていないと判断した場合(S7:NO)、マイコン43は、図10のフローチャートのタスクから割り込みがあったか否かを判断する(S8)。すなわち、図10に示したステップS12またはステップS18において「YES」と判断されて、ステップS13またはステップS19において割り込み出力されたか否かを判断する。ここで、割り込み出力された場合、後述する図10のステップS14またはステップS20に示すように、電子制御機能付きガス器具10の使用またはガバナ付きガス器具10の使用であると判断されている。一方、4ミリ秒間隔の圧力データは、上記したように有効に計測できる周波数域が25Hz以下であり、電子制御機能付きガス器具10の使用またはガバナ付きガス器具10の使用であると判断された場合には、もはや必要のないデータとなる。このため、割り込みがあったと判断した場合(S8:YES)、4ミリ秒間隔の圧力データの取得を中止し、図9に示す処理は終了することとなる。このように圧力データ計測中でも計測が必要でなくなったと判断された場合、いち早く計測を中止することで消費電力を抑えることができる。
【0080】
また、割り込みがなかったと判断した場合(S8:NO)、処理はステップS6に移行し、4ミリ秒間隔の圧力データの取得が継続される。そして、768個の圧力データが取得されたと判断した場合(S7:YES)、マイコン43は、4ミリ秒間隔の圧力データを出力し(S9)、図9に示す処理は終了する。
【0081】
なお、図9に示すフローチャートは、大凡0.25×1024(256ミリ秒)+1×768(768ミリ秒)+4×768(3072ミリ秒)=4096ミリ秒(特定時間)で終了することとなる。
【0082】
また、図9のフローチャートの例において、取得される圧力データ数はすべて1024個として説明したが、これに限るものではない。目的となる周波数域を計測できるようにすればよく、200個程度でも十分な場合もあるし、10000個程度にしても良い。また、各計測間隔において別々のデータ数としてももちろん良い。例えば、4ミリ秒間隔の計測を行わずに1ミリ秒間隔の計測で取得できる256個の圧力波形データを4ミリ秒間隔の計測による第3波形データとしても良い。その場合、第3波形データの解析時の有効周波数帯は10Hz〜25Hzとはなるが、計測時間を約4秒から約1秒と短くできると共に、割り込み処理などの煩雑な処理を実行しなくて済み、ひいては消費電力をより少なくすることができる。なお、取得されるデータ数すなわち計測時間は、計測可能な最低周波数を決めることとなる。例えば、計測時間が256ミリ秒の場合、256ミリ秒よりも長い周期の周波数については解析できない。256ミリ秒よりも長い周期であると、波形の全体像が不明となってしまうからである。従って、256ミリ秒間の計測を行った場合、計測可能な最低周波数は約4Hzとなる。また、この4Hzは周波数分解能になる。このように、データ数が多い(すなわち計測時間が長い)場合は消費電力が多くなるが周波数分解能を高くすることができる。
【0083】
図10は、本実施形態に係るガスメータ40の判断方法を示す第2のフローチャートである。図9のステップS5においてタスク起動命令が出力されると、図9のフローチャートのタスク実行とは別に並列して図10のフローチャートのタスクが実行される。まず減算部43aは、図9のステップS2において得られた0.25ミリ秒間隔により計測された第1波形データから、4回に1回の圧力データを取り出して1ミリ秒間隔により計測された第2波形データとする。ここで、第2波形データで不足しているデータは、図12のようにその前後のデータから直線補間して得る。そして、第1波形データから補間を行った第2波形データを減算する(S11)。これにより、100Hz以上の周波数域を示す第1差分波形データを取得することができる。
【0084】
その後、判断部43bは、第1差分波形データについて振幅が確認されるか否かを判断する(S12)。第1差分波形データに振幅があると確認されて、100Hz以上の高周波成分について振幅が確認されたと判断した場合(S12:YES)、図9のフローチャートのタスクに対して割り込み出力される(S13)。そして、判断部43bは、電子制御機能の制御による特徴が発生していることから、電子制御機能付きガス器具10の使用であると判断する(S14)。
【0085】
次いで、マイコン43は、ガス器具10の種類を判別する(S15)。ガス器具10の種類の判別は、例えば以下のようにして行われる。まず、マイコン43は、ステップS11の第1減算処理において得られた第1差分波形データをフーリエ変換する。これにより、100Hz以上の周波数域において図3〜図7に示したようなスペクトルデータを得る。また、マイコン43は、ガス器具10の種類毎にスペクトルデータを記憶しており、フーリエ変換により得られたスペクトルデータと記憶されたガス器具10毎のスペクトルデータとのそれぞれとを比較して類似度を算出する。そして、マイコン43は、最も類似度が高いガス器具10が使用されたと判別することとなる。この判断にあたり、マイコン43は、全周波数域のスペクトルデータを用いて使用されたガス器具10を判断してもよいが、第1差分波形データをフーリエ変換して得られたスペクトルデータのみを用いて使用されたガス器具10を判断することが好ましい。この場合には、一部のスペクトルデータのみで判断するため、演算量を減らすこととなり消費電力を抑えることができるからである。なお、電子制御機能を有したガス器具10(必ずガバナ付きである)としては、例えば給湯器やファンヒータなどがある。そして、図9に示す処理は終了する。
【0086】
ところで、高周波成分について振幅が確認されなかったと判断した場合(S12:NO)、電子制御機能を有しないガバナ付きガス器具10、ガバナ無しガス器具10又はガス漏れと判断する(S16)。次に、減算部43aは、ステップS11の途中で得られた第2波形データに図9のステップS4において得られた波形データを加えて新たに第2波形データを得て、その第2波形データから、4回に1回の圧力データを取り出して4ミリ秒間隔により計測された第3波形データを得る。ここで、第3波形データで不足しているデータは、図12のようにその前後のデータから直線補間して得る。そして、第2波形データから第3波形データを減算する(S17)。これにより、25Hz以上の周波数域を示す第2差分波形データを取得することができる。
【0087】
その後、判断部43bは、第2差分波形データについて振幅が確認されるか否かを判断する(S18)。第2差分波形データに振幅がある場合は、25Hz以上の周波数域で振幅があることになるが、すでにステップS12でNOと判断されて100Hz以上の周波数域では振幅が無いことが確認されているため、25Hz〜100Hzの中周波成分について振幅が確認されたと判断して良いことになる。そして、その中周波成分について振幅が確認されたと判断した場合(S18:YES)、図9のフローチャートのタスクに対して割り込み出力される(S19)。そして、判断部43bは、ガバナ13の振動による特徴が発生していることから、電子制御機能を有さないガバナ付きガス器具10の使用であると判断する(S20)。次いで、マイコン43は、ガス器具10の種類を判別する(S21)。ステップS21における種類の判別方法はステップS15と同様である。なお、電子制御機能を有さないガバナ付きガス器具10としては、例えばガスストーブやグリルなどがある。そして、図10に示す処理は終了する。
【0088】
25Hz〜100Hzの中周波成分について振幅が確認されなかったと判断した場合(S18:NO)、マイコン43は、低周波成分処理を実行する(S22)。その後、図10に示す処理は終了する。
【0089】
図11は、本実施形態に係るガスメータ40の判断方法を示す第3のフローチャートであって、図10のステップS21の処理の詳細を示している。図11に示すように、まず判断部43bは、流量センサ41からの電気信号に基づいて、流量が所定量以上であるか否かを判断する(S31)。
【0090】
流量が所定量以上であると判断した場合(S31:YES)、判断部43bは、ガス漏れと判断する(S32)。ここで、図11に示す処理が実行されたということは、ステップS11において得られた第1差分波形データに、第1所定値以上の振幅が確認されず、且つ、ステップS17において得られた第2差分波形データに、第2所定値以上の振幅が確認されなかった場合といえる。すなわち、図11に示す処理が実行されたということは、ガバナ付きガス器具10(電子制御機能付きガス器具10を含む)の使用であることがあり得ない場合である。そして、ガバナ付きガス器具10の使用であることがあり得ない状況下において、流路内のガス流量が所定量以上となった場合には、もはやガス漏れでしかあり得なくなる。詳細に説明すると、テーブルコンロなどのガバナ無しガス器具10では大きなガス流量が発生しないため、それ以上の流量が発生するということは、もはやガス漏れでしかなくなる。従って、マイコン43は、流量が所定量以上の場合にガス漏れと判断することとしている。特にこの処理においてマイコン43は、流量値を測定するだけでよくいち早くガス漏れを判断することができる。
【0091】
その後、マイコン43は、ガス漏れ対策として保安処理を実行する(S33)。このとき、マイコン43は、遮断弁を遮断させたり、警報器に警報動作を行わせたりする。そして、図11に示す処理は終了する。
【0092】
また、流量が所定量以上でないと判断した場合(S31:NO)、マイコン43は、ステップS17の途中で得られた第3波形データに図9のステップS6において得られた4ミリ秒間隔の波形データを加えて新たに第3波形データを得て、その第3波形データをフーリエ変換する(S34)。ここで、第3波形データのフーリエ変換による解析データは、分解能が0.25Hzで有効周波数が2.5Hz〜25Hzである。このため、マイコン43は、低周波数成分を示すスペクトルデータを取得することとなる。
【0093】
その後、判断部43bは、何らかの方法でガバナ無しガス器具10の使用かガス漏れかを判断する(S35)。例えば、その判断処理の方法として、スペクトルデータのうち25Hz未満のデータと、ガバナ無しガス器具10の標準波形(25Hz未満)と比較演算し、その類似度が規定値以上であるとき、ガバナ無しガス器具10の使用であると判断する。
【0094】
その他の判断処理(S35)の方法としては、例えば25Hz未満の周波数の信号のうち、特定値(例えば10Hz)以上の周波数の信号が所定振幅値以上である場合にガバナ無しガス器具10の使用と判断し、所定振幅値未満である場合にガス漏れと判断する。すなわち、図3及び図4に示したように、ガバナ無しガス器具10の使用とガス漏れとの周波数成分の差異から、マイコン43は、ガバナ無しガス器具10の使用に該当するか、又はガス漏れに該当するかを判断する。
【0095】
ガス漏れであると判断された場合(S35:YES)、処理はステップS32に移行し、保安処理が実行される(S33)。そして、図11に示す処理は終了する。
【0096】
他方、ガス漏れでないと判断されていた場合(S35:NO)、判断部43bは、ガバナ無しガス器具10の使用であると判断し(S36)、ガス器具10の種類を判別する(S37)。この処理についても図10に示したステップS15及びステップS20と同様にして行われる。なお、ガバナ無しガス器具10としては、例えばテーブルコンロなどがある。そして、図11に示す処理は終了する。
【0097】
このようにして、本実施形態に係るガスメータ40及び判断方法によれば、計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算する。ここで、電気信号の計測間隔は計測可能な周波数範囲と対応しており、計測間隔が短い方が計測可能な最高周波数が高くなる傾向になる。よって、計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算すると、計測間隔が長い方の最高周波数から計測間隔が短い方の最高周波数までの特定の周波数域を表す波形データを得ることができる。
【0098】
そして、減算されて得られた差分波形データに基づいて、電子制御機能付きガス器具10の使用、ガバナ付きガス器具10の使用、ガス器具10の使用、及びガス漏れの少なくとも1つを判断する。ここで、電子制御機能付きガス器具10の使用時、ガバナ付きガス器具10の使用時、ガス器具10の使用時、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れ時には、上記の順にガス圧力やガス流量の波形に高い周波数成分が含まれ易い傾向にあることから、特定の周波数域を表す波形データに基づくことにより、上記のいずれかに該当するか否かを判断することができる。
【0099】
このように、上記のいずれかを判断するにあたっては減算処理を行うだけでよく、複雑な演算を行う必要がないことから、処理量を低減して消費電力を抑制することができる。
【0100】
また、マイコン43は、流量変化の検出時点以降の特定時間の間のみの電気信号を入力する。ここで、ガバナ付きガス器具10の使用等に関しては、圧力や流量の波形の周波数及び振幅に特徴があらわれ、しかも、この特徴は、流量変化の検出時点以降から数秒以内であらわれるものである。よって、流量変化の検出時点以降の特定時間の間のみの電気信号の波形を解析するのみで、ガバナ付きガス器具10の使用等を判断できるため、不要な時間帯におけるデータを解析することなく、演算量を減らして消費電力を低減することができる。
【0101】
また、第1計測間隔の第1波形データから第1計測間隔よりも計測間隔が長い第2計測間隔の第2波形データを減算し、減算されて得られた第1差分波形データにおいて第1所定値以上の振幅が確認された場合に、電子制御機能付きガス器具10の使用であると判断する。ここで、電子制御機能付きガス器具10の使用時には、例えば100Hz以上の周波数に特徴があらわれることから、減算することによって第1差分波形データが表す周波数域を100Hz以上とすれば、消費電力を抑えつつ電子制御機能付きガス器具10の使用を適切に判断することができる。
【0102】
また、電子制御機能付きガス器具10の使用でないと判断した場合、第2計測間隔の第2波形データから第2計測間隔よりも計測間隔が長い第3計測間隔の第3波形データを減算し、減算されて得られた第2差分波形データにおいて第2所定値以上の振幅が確認された場合に、ガバナ付きガス器具10の使用であると判断する。ここで、ガバナ付きガス器具10の使用時には、例えば25Hz以上の周波数に特徴があらわれることから、減算することによって第2差分波形データが表す周波数域を25Hz以上とすれば、消費電力を抑えつつガバナ付きガス器具の使用を適切に判断することができる。
【0103】
また、第2差分波形データにおいて第2所定値以上の振幅が確認されず、流路内のガス流量が所定量以上であると判断した場合、ガス漏れと判断する。ここで、第2差分波形データにおいて第2所定値以上の振幅が確認されない場合とは、ガバナ無しガス器具10の使用又はガス漏れであるといえる。そして、この状況下において、流路内のガス流量が所定量以上となった場合、すなわち流量がある程度大きい場合には、もはやガス漏れでしかあり得なくなる。従って、上記の如く判断することにより、精度良くガス漏れを判断することができる。特に、大きな流量のガス漏れは、必然的にガス流量が所定量以上となっていることから、流量値を測定するだけで、いち早くガス漏れを判断することができる。加えて、流量が大きいガス漏れは危険度が高く、いち早くガス漏れを判断することで、素早く保安処理を実行することが可能となり、安全性の向上に寄与することができる。
【0104】
また、計測間隔が長い方の電気信号からなる波形データの少なくとも一部は、計測間隔が短い方の電気信号の一部を用いて構成されている。ここで、長い方の計測間隔は短い方の計測間隔と重なる場合があり、短い計測間隔で計測した電気信号の一部を長い方の計測間隔により得られる波形データとして用いることができる。これにより、長い計測間隔で計測する際に、短い計測間隔のデータを利用して計測回数を減じすることができ、消費電力を抑えることができる。
【0105】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0106】
また、本実施形態において判断装置はガスメータ40の内部構成として存在しているが、これに限らず、判断装置をガスメータ40から取り出して構成してもよい。また、ガスメータ40内の一部構成を取りだして構成し、取り出した一部構成とガスメータ40内の構成とによって判断装置を形成してもよい。
【0107】
また、本実施形態では、圧力センサ42からの信号に基づく圧力波形を解析して、ガバナ付きガス器具10の使用等を判断している。しかし、これに限らず、圧力と流量とには一定の相関があるため、流量センサ41からの信号に基づく流量波形を解析して、ガバナ付きガス器具10の使用等を判断するようにしてもよい。さらには、圧力波形及び流量波形の双方を解析して判断するようにしてもよい。
【0108】
また、本実施形態において、流量センサ41や圧力センサ42の構成については、特に限られるものではなく、種々のものを用いることが可能である。
【0109】
また、本実施形態において、商用電源によるノイズを除去していないが、計測時にリジェクトフィルタなどにより圧力センサ42や流量センサ41のデータから予め50Hz及び60Hzのデータを除去しておいても良い。これにより、ガバナ付きガス器具10の使用時やガス漏れ発生時において、ガバナ付きガス器具10の使用であると判断してしまう可能性を減じることができるからである。なお、商用電源付近の周波数を除去しない方が精度が上がる場合もあり、そのような場合には商用電源周波数を除去しないようにしてもよい。
【0110】
また、本実施形態において、ノイズ成分となりやすい400Hz以上の周波数成分を除去していないが、計測時にローパスフィルタなどにより圧力センサ42や流量センサ41のデータから予め400Hz以上のデータを除去しておいても良い。これにより、電子制御機能を有するガス器具10やガバナ付きガス器具10の未使用時において、電子制御機能を有するガス器具10やガバナ付きガス器具10の使用であると判断してしまう可能性を減じることができるからである。
【0111】
また、本実施形態において、電子制御機能付きガス器具10の使用、ガバナ付きガス器具10の使用、ガバナ無しガス器具10の使用、ガバナ無しガス器具10の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れのすべてについて判断する例について説明しているが、これに限らず、それらのうちいずれかひとつ以上を判断するように構成しても良い。ガス漏れだけを判断するようにすれば、ガス器具の種別を判断する必要が無く、より迅速にガス漏れが判断できると共に、消費電力を抑えることもできる。
【0112】
たとえば、図9においてS1とS2を省略し、S3以降のみを実施する。さらに図10においてS11〜S16を省略し、S17以降のみを実施する。そのようにすることで、電子制御機能付きガス器具10の使用の判別を行わないようにしても良い。それでも、S18において、電子制御機能の有無に関係ないもののガバナ付きガス器具10を判断でき、同様の処理を行うことができるとともに、消費電力を抑えることができる。
【0113】
また、本実施形態において、2つのタスクによるマルチタスク動作で説明しているが、これに限らず、例えば、圧力計測における計測間隔の時間計測を時間カウンタによる割り込み信号出力により実施して、図10及び図11に示すタスク動作中の割り込み信号受信時だけ図9に動作を移行させるなどで、1タスクによる動作で実施させることも可能である。あるいは、3つ以上のマルチタスクで動作させても良い。
【0114】
また、本実施形態において、図9のフローチャートにおけるステップS5で図10のフローチャートのタスク実行命令が出力されているが、これに限らず、図9のフローチャートのタスクが終了してから図10のタスクを実行しても良いし、図9のステップS2でYESと判断されてから図10のタスク実行命令を出力しても良い。図10のフローチャートのS11〜S14とS16は、図9のフローチャートのS3〜S4による波形データが無くても実行できるため、図9のステップS2でYESと判断された時点でも図10のタスク実行命令を出力しても問題は無い。ステップS15やS17を実行する前にステップS4でYESと判断されたことを確認すればよい。
【0115】
また、圧力波形データでは、初期圧力の変動に影響を受ける。具体的に初期圧力は第1配管31や第2配管32内のガス圧力であり、昼夜の気温差によって変動する場合がある。このような場合には、初期圧力の変動の影響を除去するために、圧力センサ42からマイコン43の間に3Hz以上のハイパスフィルタを設けてもよい。また、微分回路を設けるようにしてもよい。
【0116】
また、本実施形態では、3段階の異なる計測間隔で計測しているが、3段階に限らず、2段階又は4段階以上の計測間隔で計測してもよい。また、計測間隔を適宜調整してそれぞれの計測間隔による有効周波数を変更するようにしてもよい。さらには、有効周波数を適宜調整し、減算処理を実行することにより目的とするガス器具10に応じた周波数域の波形データを取得できるようにしてもよい。従って、15Hz〜70Hzの波形データを得るようにしてもよいし、メーカー毎のガス器具10の特徴的な周波数域に応じた波形データを得るようにしてもよい。
【0117】
また、本実施形態において第1波形データの計測時間は256ミリ秒であり、第2波形データの計測時間は約1秒であり、第3波形データの計測時間は約4秒である。そして、これら3つの波形データの計測ポイントの総数は、「2560」となっている。このため、第1〜第3波形データのそれぞれは、全体の計測からすると一部を構成していることとなる。しかし、波形データのいずれかは、一部に限らず、全体であってもよい。例えば、0.25ミリ秒間隔で256ミリ秒の計測を行い第1波形データとし、この計測によってデータの4個に1つを取得して第2波形データを構成するようにしてもよい。これにより、第2波形データは全体の計測からすると一部を構成していることとなるが、第1波形データは全体を構成することとなる。
【符号の説明】
【0118】
1…ガス供給システム
10…ガス器具
12…遮断弁
13…ガバナ
13a…ガバナ内弁
13b…ノズル
13c…外壁
13d…ガバナキャップ
13e…ダイヤフラム
13f…調整スプリング
13g…調整ネジ
13h…空気孔
14…バーナー
20…調整器
31…第1配管
32…第2配管
40…ガスメータ(判断装置)
41…流量センサ
42…圧力センサ
43…マイコン
43a…減算部(減算手段)
43b…判断部(判断手段)
43c…流量変化検出部(流量変化検出手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路内のガス圧力に応じた電気信号を出力する圧力センサ、及び、流路内のガス流量に応じた電気信号を出力する流量センサの少なくとも一方からの電気信号を入力して演算する演算手段を備え、
前記演算手段は、同時間帯において異なる計測間隔で計測した電気信号からなる複数の波形データのうち、計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算する減算手段と、前記減算手段により減算されて得られた差分波形データに基づいて、電子制御機能付きガス器具の使用、ガバナ付きガス器具の使用、ガス器具の使用、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断する判断手段と、
を備えることを特徴とする判断装置。
【請求項2】
流路内のガス流量が特定値以内の範囲で安定している状態から特定値を超える流量変化を検出する流量変化検出手段を備え、
前記演算手段は、前記流量変化検出手段が検出した流量変化の検出時点以降の特定時間の間のみの電気信号を入力する
ことを特徴とする請求項1に記載の判断装置。
【請求項3】
前記減算手段は、第1計測間隔の第1波形データから前記第1計測間隔よりも計測間隔が長い第2計測間隔の第2波形データを減算して第1差分波形データを得て、
前記判断手段は、前記第1差分波形データにおいて第1所定値以上の振幅が確認された場合に、電子制御機能付きガス器具の使用であると判断する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の判断装置。
【請求項4】
前記減算手段は、第2計測間隔の第2波形データから前記第2計測間隔よりも計測間隔が長い第3計測間隔の第3波形データを減算して、第2差分波形データを得て、
前記判断手段は、前記第2差分波形データにおいて第2所定値以上の振幅が確認された場合に、ガバナ付きガス器具の使用であると判断する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の判断装置。
【請求項5】
前記判断手段は、前記第2差分波形データにおいて前記第2所定値以上の振幅が確認されず、流路内のガス流量が所定量以上であると判断した場合、ガス漏れと判断する
ことを特徴とする請求項4に記載の判断装置。
【請求項6】
前記複数の波形データのうち少なくとも2つの波形データにおいて、計測間隔が長い方の電気信号からなる波形データの少なくとも一部は、計測間隔が短い方の電気信号の一部を用いて構成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の判断装置。
【請求項7】
前記減算手段は、計測間隔が長い方の電気信号からなる波形データについて、計測ポイント間のデータを直線補間により算出し、算出されたデータを含めた補間波形データを求め、計測間隔が短い方の波形データから補間波形データを減算する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の判断装置。
【請求項8】
流路内のガス圧力に応じた電気信号を出力する圧力センサ、及び、流路内のガス流量に応じた電気信号を出力する流量センサの少なくとも一方からの電気信号を入力して演算する演算工程を有し、
前記演算工程では、同時間帯において異なる計測間隔で計測した電気信号からなる複数の波形データのうち、計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算する減算工程と、前記減算工程において減算されて得られた差分波形データに基づいて、電子制御機能付きガス器具の使用、ガバナ付きガス器具の使用、ガス器具の使用、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断する判断工程と、
を有することを特徴とする判断方法。
【請求項1】
流路内のガス圧力に応じた電気信号を出力する圧力センサ、及び、流路内のガス流量に応じた電気信号を出力する流量センサの少なくとも一方からの電気信号を入力して演算する演算手段を備え、
前記演算手段は、同時間帯において異なる計測間隔で計測した電気信号からなる複数の波形データのうち、計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算する減算手段と、前記減算手段により減算されて得られた差分波形データに基づいて、電子制御機能付きガス器具の使用、ガバナ付きガス器具の使用、ガス器具の使用、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断する判断手段と、
を備えることを特徴とする判断装置。
【請求項2】
流路内のガス流量が特定値以内の範囲で安定している状態から特定値を超える流量変化を検出する流量変化検出手段を備え、
前記演算手段は、前記流量変化検出手段が検出した流量変化の検出時点以降の特定時間の間のみの電気信号を入力する
ことを特徴とする請求項1に記載の判断装置。
【請求項3】
前記減算手段は、第1計測間隔の第1波形データから前記第1計測間隔よりも計測間隔が長い第2計測間隔の第2波形データを減算して第1差分波形データを得て、
前記判断手段は、前記第1差分波形データにおいて第1所定値以上の振幅が確認された場合に、電子制御機能付きガス器具の使用であると判断する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の判断装置。
【請求項4】
前記減算手段は、第2計測間隔の第2波形データから前記第2計測間隔よりも計測間隔が長い第3計測間隔の第3波形データを減算して、第2差分波形データを得て、
前記判断手段は、前記第2差分波形データにおいて第2所定値以上の振幅が確認された場合に、ガバナ付きガス器具の使用であると判断する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の判断装置。
【請求項5】
前記判断手段は、前記第2差分波形データにおいて前記第2所定値以上の振幅が確認されず、流路内のガス流量が所定量以上であると判断した場合、ガス漏れと判断する
ことを特徴とする請求項4に記載の判断装置。
【請求項6】
前記複数の波形データのうち少なくとも2つの波形データにおいて、計測間隔が長い方の電気信号からなる波形データの少なくとも一部は、計測間隔が短い方の電気信号の一部を用いて構成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の判断装置。
【請求項7】
前記減算手段は、計測間隔が長い方の電気信号からなる波形データについて、計測ポイント間のデータを直線補間により算出し、算出されたデータを含めた補間波形データを求め、計測間隔が短い方の波形データから補間波形データを減算する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の判断装置。
【請求項8】
流路内のガス圧力に応じた電気信号を出力する圧力センサ、及び、流路内のガス流量に応じた電気信号を出力する流量センサの少なくとも一方からの電気信号を入力して演算する演算工程を有し、
前記演算工程では、同時間帯において異なる計測間隔で計測した電気信号からなる複数の波形データのうち、計測間隔が短い方の波形データから計測間隔が長い方の波形データを減算する減算工程と、前記減算工程において減算されて得られた差分波形データに基づいて、電子制御機能付きガス器具の使用、ガバナ付きガス器具の使用、ガス器具の使用、ガバナ無しガス器具の使用かガス漏れのいずれか、及びガス漏れの少なくとも1つを判断する判断工程と、
を有することを特徴とする判断方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−249367(P2010−249367A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97744(P2009−97744)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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