説明

半導体発光装置を搭載するための回路基板、発光モジュール、及び照明装置

【課題】調色可能な半導体発光装置において発生した熱の放熱性能の向上に関する技術を提供する。
【解決手段】少なくともパッケージ、半導体発光素子、及び蛍光体を備える半導体発光装置を搭載するための回路基板であって、半導体発光装置が搭載される熱伝導材料を用いて形成された基材部と、半導体発光装置のパッケージの有する複数の分割領域部のうち少なくとも一の分割領域部と他の分割領域部を別系統として半導体発光素子の各々に電力を供給する電力供給部と、を有する。電力供給部は、熱伝導材料を用いて且つ基材部を覆うように面状に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子からの発光により外部に対して発光する半導体発光装置を搭載するための回路基板、発光モジュール、及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今においては、省エネルギー性やその他の様々な目的のために、従来の照明装置に代えて半導体発光素子である発光ダイオード(Light-emitting Diode、LED)を用いた照明装置が広く提案されてきている。また、従来の光源では実現困難であった色調可変照明の光源としてもLEDは期待されている。その一例として、赤色LED、緑色LED、青色LEDを一つのパッケージにすることで白色光を出力する照明装置が開示されている(例えば、特許文献1等を参照。)。この技術においては、上記三種類のLEDに供給される駆動電流を各LEDの順方向電圧に応じて調整することで、各LEDの発光効率を一定にし、白色光の輝度の安定化を図るために、また様々な色調の光を出射するように工夫されている。
【0003】
また、LEDを利用した照明技術として、青色LEDと赤色および緑色発色のための蛍光体を用いて赤色、青色、緑色の光を発光する半導体発光装置を組み合わせて、LEDの出力を制御することで、黒体輻射軌跡をトレースし、自然光に近い白色光を出射する技術が開示されている(例えば、特許文献1〜3等を参照。)。
【0004】
また、半導体発光素子が実装されているパッケージからの発光により外部に対して発光する半導体発光装置において、パッケージからの光の出力面を複数に分割し、それぞれに半導体発光素子と蛍光部とを対応させて配置させることによって、該出力面から出力される光のスペクトルが互いに異なるようにした、調色可能な(色調可変とする)半導体発光装置や、発光モジュール等が提案されている(例えば特許文献4等を参照。)。この種の半導体発光装置等においては、例えば複数に分割されたパッケージの出力面ごとに、対応する半導体発光素子へと供給する電力を制御することで半導体発光装置から出力される光の色温度を調整することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−100799号公報
【特許文献2】特開2007−265818号公報
【特許文献3】特開2007−299590号公報
【特許文献4】特開2009−231525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体発光装置は、その温度上昇に伴い発光量が減少し(暗くなり)、寿命が短くなるという特性がある。そのため、特に照明用途に採用される半導体発光装置においては、半導体発光装置において発生した熱を外部に放出する(逃がす)放熱性能をできるだけ高める必要がある。また、調色可能な半導体発光装置では、パッケージ内において分割された出力面ごとに、対応する半導体発光素子への電力供給を独立して制御することになるため、半導体発光装置の局所的な熱集中が起こりやすくなる。それ故、調色可能な半導体発光装置や発光モジュールにおいては、半導体発光装置の局所的な熱集中に伴う発光効率の低下や半導体発光素子の熱劣化等の不具合が顕在化し易いという実情があった。
【0007】
本発明は上記実情に鑑み、調色可能な半導体発光装置において発生した熱の放熱性能の向上に関する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上述した課題を解決するため、以下の手段を採用した。
すなわち、本発明に係る半導体発光装置を搭載するための回路基板は、
少なくともパッケージ、半導体発光素子、及び蛍光体を備える半導体発光装置を搭載するための回路基板であって、
前記半導体発光装置におけるパッケージは、該半導体発光装置の出射方向に開口する開口部と、該パッケージ内部を2以上に分割して画定され且つ該開口部の一部である分割開口部において開口する、少なくとも2以上の分割領域部を有し、
前記分割領域部の各々は、
一又は複数の前記半導体発光素子と、
前記蛍光体と各分割領域部を封止する透光性材料とを含む蛍光部と、を有し、
前記複数の分割領域部のうち少なくとも一の分割領域部と他の分割領域部において、該蛍光部から出力される光のスペクトルが互いに異なり、
前記半導体発光装置が搭載される、熱伝導材料を用いて形成された基材部と、
前記複数の分割領域部のうち少なくとも一の分割領域部と他の分割領域部を別系統として前記半導体発光素子の各々に電力を供給する電力供給部と、
を有し、
前記電力供給部は、熱伝導材料を用いて且つ前記基材部を覆うように面状に形成される。
【0009】
また、本発明に係る発光モジュールは、
少なくともパッケージ、半導体発光素子、及び蛍光体を備える半導体発光装置と、該半導体発光装置を搭載するための回路基板と、を含む発光モジュールであって、
前記半導体発光装置におけるパッケージは、該半導体発光装置の出射方向に開口する開口部と、該パッケージ内部を2以上に分割して画定され且つ該開口部の一部である分割開口部において開口する、少なくとも2以上の分割領域部を有し、
前記分割領域部の各々は、
一又は複数の前記半導体発光素子と、
前記蛍光体と各分割領域部を封止する透光性材料とを含む蛍光部と、を有し、
前記複数の分割領域部のうち少なくとも一の分割領域部と他の分割領域部において、該蛍光部から出力される光のスペクトルが互いに異なり、
前記回路基板は、
前記半導体発光装置が搭載される、熱伝導材料を用いて形成された基材部と、
前記複数の分割領域部のうち少なくとも一の分割領域部と他の分割領域部を別系統として前記半導体発光素子の各々に電力を供給する電力供給部と、
を有し、
前記電力供給部は、熱伝導材料を用いて且つ前記基材部を覆うように面状に形成される。
【0010】
本発明に係る回路基板に搭載される半導体発光装置は、同装置からの出力光を出射するための開口部を2以上に分割するように、パッケージ内部に少なくとも一の分割領域部と他の分且つ領域部が画定される。これらの分割領域部における開口部分は上記分割開口部として定義され、この分割開口部は上記発光装置本体の開口部の一部を占めることになる。各分割領域部には、半導体発光素子、蛍光部が備えられる。そして、例えば、各半導体発光素子からの出力光は蛍光体を励起し蛍光させた後、蛍光体による発光とともに透光性材料を経て、対応する分割領域部の分割開口部から外部へ至る。
【0011】
本発明によれば、回路基板が有する電力供給部によって、半導体発光装置における複数の分割領域部のうち少なくとも一の分割領域部と他の分割領域部を別系統として半導体発光素子の各々に電力が供給されることになる。その結果、半導体発光装置外の照射面においては、少なくとも二種類のスペクトルを有する光の合成光を到達させることができ、この合成光の色温度を可変とすることができる。
【0012】
電力供給部及び該電力供給部が形成される基材部は、共に熱伝導材料を用いて構成されている。従って、半導体発光装置における各分割領域部において、これらに含まれる半導体発光素子への電力供給に伴って発生した熱は、電力供給部を経由して基材部へと伝わることになる。本構成に係る電力供給部は、基材部を覆うように面状に形成されているため、半導体発光装置において局所的に集中した熱を、基材部における面内方向に好適に分散させることができる。従って、このように基材部にわたり面状に形成された電力供給部によれば、半導体発光装置からより効率的に熱を奪うことができ、以って半導体発光装置における放熱性能を好適に高めることが可能となる。従って、調色可能とする半導体発光装置において顕在化し易い局所的な温度上昇に伴う発光効率の低下や、熱劣化などの発生を好適に抑止することができる。
【0013】
ここで、回路基板は、別系統の半導体発光素子に電力を供給する電力供給部同士を互いに絶縁するための絶縁部材が基材部に設けられており、電力供給部はその系統ごとに、絶縁部材によって基材部の面内方向に区画されていると良い。
【0014】
また、回路基板において、基材部には、半導体発光装置が搭載されていない方の非搭載面と熱的に接するように放熱用ハウジング部材が取り付けられ、電力供給部を介して基材部に伝えられる半導体発光装置からの熱が放熱用ハウジング部材から大気中に放熱されるようにしても良い。これにより、回路基板が備える電力供給部及び基材部によって半導体発光装置から順次、伝導されてくる熱が、放熱用ハウジング部材から大気中に放出されるので、半導体発光装置から電力供給部への伝熱が一層促進されることになる。そのため、半導体発光装置における放熱性能をより好適に高めることができる。
【0015】
また、本発明を発光モジュールとして捉える場合、回路基板において、基材部には複数の半導体発光装置が搭載され、絶縁部材によって系統ごとに区画された電力供給部は、半導体発光装置の各々において互いに対応する分割領域部に含まれる半導体発光素子同士を直列に接続するようにしても良い。各半導体発光装置において互いに対応する分割領域部とは、半導体発光素子への制御系統が同系統の分割領域部同士を指すことができる。これにより、複数の半導体発光装置において、対応する分割領域部ごとに独立した電力供給制御を好適に実現できる。
【0016】
また、発光モジュールにおいて、前記回路基板における前記基材部に搭載された前記複数の半導体発光装置の各々は、環状に且つ各半導体発光装置の間隔が等角に配置され、一の半導体発光装置を基準としたときに、前記パッケージ内の前記一の分割領域部と前記他の分割領域部との相対位置関係が、隣接する該半導体発光装置に対して、前記開口部の開口面内での回転方向において、360°を前記基材部に搭載される該半導体発光装置の数で除して定義される所定角度ずつ、ずれた状態で配置されていても良い。
【0017】
上記構成においては、発光モジュールに配置された半導体発光装置の上記相対位置関係が、均等に回転され且つずれた状態とされることになる。これにより、発光モジュール単位で考えると、一の分割領域部からの出力光と、他の分割領域部からの出力光との合成を、むらが無く、より均一に行うことができ、最終的に発光モジュールから出射される合成光においては、光の分離が効果的に抑制される。
【0018】
この場合、前記電力供給部はその系統ごとに、前記基材部面内における所定の基準点を中心に同心円状に区画されても良い。これによれば、回路基板の基材部上に形成される電力供給部が、その系統ごとに一塊となって整然と分布させることができる。これにより、回路基板の基材部表面という限られたスペース内において、基材部全表面積に対する電力供給部が形成される面積、すなわち電力供給部の占有面積比をできるだけ高く確保することができる。基材部の表面積が等しい条件下においては電力供給部の上記占有面積比が高くなるほど、半導体発光装置からより多くの熱を効果的に奪うことができるため、この構成によれば半導体発光装置の放熱性能を可及的に高めることができる。また、この構成によれば、例えば別系統の電力供給部同士を絶縁するために必要な絶縁部材の使用量を低減することができ、回路基板の製造コスト削減の観点からも有効である。
【0019】
また、本発明は、上述した何れかの発光モジュールと、該発光モジュールの前記回路基板に対して、前記基材部における該半導体発光装置が搭載されていない方の非搭載面と熱的に接するように取り付けられる放熱用ハウジング部材と、を備える照明装置、として捉えることも可能である。
【0020】
なお、本発明における課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせて使用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、調色可能な半導体発光装置において発生した熱の放熱性能の向上に関する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】実施例1に係る発光モジュールを構成する半導体発光装置内の、パッケージの概略構成の斜視図である。
【図1B】図1Aに示す半導体発光素子に電力を供給する配線の実装状態を示す図である。
【図1C】図1A及び図1Bに示す半導体発光装置を、電気的記号を用いて模式化した図である。
【図2】図1に示す半導体発光装置の断面図である。
【図3】図1に示す半導体発光装置での半導体発光素子と基部との接続関係を示す図である。
【図4】図1に示す半導体発光装置において、各分割領域部からの出力光に設定される白色光の色度点と黒体輻射軌跡との関係を示す図である。
【図5】図4に示す白色光の色度点と黒体輻射軌跡との関係についての要部拡大図である。
【図6】図1に示す半導体発光装置において採用が可能な、各種半導体発光素子と蛍光体との組み合わせについて、出力光の色温度と発光効率との相関関係を示す図である。
【図7A】実施例1に係る発光モジュールの構成を示す斜視図である。
【図7B】発光モジュールにおける半導体発光装置の配置について簡略に示す図である。
【図8】発光モジュールの各発光装置間における電気的な接続状態を模式化して示す図である。
【図9】図7及び図8に示す発光モジュールへの供給電流の一態様を示す図である。
【図10】実施例1に係る発光モジュールの回路基板の上面を模式化して示した図である。
【図11】図10のA−A切断線を含む断面を模式的に示した図である。
【図12】実施例1に係る回路基板に各発光装置が搭載された状態を示す図である。
【図13】発光モジュールと放熱用ハウジング部材とレンズとを含んだ照明装置Lを示した図である。
【図14】実施例1の第1の変形例に係る回路基板に各発光装置が搭載された状態を示す図である。
【図15】実施例1の第2の変形例に係る回路基板に発光装置が搭載された状態を示す図である。
【図16】実施例1の第3の変形例に係る回路基板に発光装置が搭載された状態を示す図である。
【図17】実施例1の第3の変形例に係る回路基板の基板部を説明するための説明図である。
【図18】実施例2に係る発光モジュールの回路基板の上面を模式化して示した図である。
【図19】実施例2に係る回路基板に発光装置が搭載された状態を示す図である。
【図20】実施例2の第1の変形例に係る回路基板に発光装置が搭載された状態を示す図である。
【図21】実施例2の第2の変形例に係る回路基板に発光装置が搭載された状態を示す図である。
【図22】実施例2の第3の変形例に係る回路基板に発光装置が搭載された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。尚、本実施の形態に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0024】
<実施例1>
ここで、図1Aは、本実施例に係る発光モジュール30を構成する半導体発光装置(以下、単に「発光装置」と言う。)8内の、パッケージ1の概略構成の斜視図であり、図1Bは、パッケージ1に設けられた半導体発光素子3A、3Bに電力を供給する配線20A、20Bの実装状態を示す図である。また、図1Cは、図1A及び図1Bに示す発光装置8を電気的記号を用いて模式化した図である。更に、図2は、図1Aに示す発光装置8において、上記配線20A、20Bを含む面で切断した場合の断面図である。なお、本実施例における発光モジュール30は、発光装置8及びこれを搭載するための回路基板を含んで構成されている。
【0025】
図1Aに示すように、発光装置8はパッケージ1を含んで構成され、該パッケージ1は、ベース2上に配置された環状且つ円錐台形状のリフレクタ10を有する。このリフレクタ10は後述する各分割領域部12からの出力光の一部を、発光装置8の出射方向に導く機能を有するとともに、パッケージ1の本体としての機能も果たす。尚、リフレクタ10の円錐台形状の上面側は、発光装置8による光の出射方向となり、開口部13を形成している。一方で、リフレクタ10の円錐台形状の下面側はベース2が配置され、詳細は後述するが各半導体発光素子への電力供給のための配線が敷設等されている(当該配線は図1Aには図示せず)。
【0026】
そして、この環状のリフレクタ10の内部の空間を図1A、図2に示すように均等に二つの領域に分割する間仕切り11が、ベース2に対して垂直に設けられている。この間仕切り11によって、リフレクタ10内に2つの分割領域部12A、12Bが画定されるとともに、分割領域部12Aの開口部は、リフレクタ10の開口部13の右半分を占め、分割領域部12Bの開口部は、リフレクタ10の開口部13の左半分を占めることになる。
本明細書においては、分割領域部12Aの開口部を、分割開口部13Aと称し、分割領域部12Bの開口部を、分割開口部13Bと称する。即ち、開口部13は、間仕切り11によって分割開口部13Aと13Bに分割されたことになる。
【0027】
この分割領域部12A、12Bには、それぞれ半導体発光素子であり近紫外光を出力光とする近紫外半導体発光素子3A、3Bがそれぞれ4個ずつ設けられている。この近紫外半導体発光素子3A、3B(これらの近紫外半導体発光素子を包括的に参照する場合は近紫外半導体発光素子3と称する。)は、対となる配線20A、20B(包括的に配線20と称する場合もある。)にそれぞれ接続され、電力供給を受けることで発光を行う。尚、各分割領域部での配線20への近紫外半導体発光素子3の接続は、図1Bに示すように、配線20Aの上に4個の近紫外半導体発光素子3Aが実装され、配線20Bの上に4個の近紫外半導体発光素子3Bが実装される。そして、各分割領域における4個の半導体発光素子3は、対応する配線に対して順方向に並列接続されている。なお、図1Bにおける符号21A,21Bは、電極を表す。この電極21A,21Bは、ベース2の下面(リフレクタ10が配置されていない側の面)に形成されており、配線20A,20Bにそれぞれ接続されている。また、ここでの例では、分割領域部12A、12Bには、近紫外半導体発光素子3A、3Bがそれぞれ4個ずつ設けられているが、双方に設けられる半導体発光素子の数を相違させても良く、また、分割領域部12A、12Bの各々には少なくとも1つの半導体発光素子が設けられていれば良い。
【0028】
近紫外半導体発光素子3A、3Bの実装状態を模式化して示すと図1Cのようになる。即ち、分割領域部12Aに配置される4つの近紫外半導体発光素子3Aに対しては、電極21Aを介して配線20Aより電力供給が行われ、分割領域部12Bに配置される4つの近紫外半導体発光素子3Bに対しては、電極21Bを介して配線20Bより電力供給が行われる。このとき、各近紫外半導体発光素子3に印加される電圧は3.3V〜3.9Vの範囲で、供給電流は40mA〜200mAの範囲となる。この電力供給については、発光モジュール30全体の発光強度を考慮して行われてもよく、その点については後述する。
【0029】
ここで、近紫外半導体発光素子3のベース2への実装について、図3に基づいて説明する。ベース2は、近紫外半導体発光素子3を含む発光装置8を保持するための基部であり、メタルベース部材2A、メタルベース部材2A上に形成された絶縁層2D、および絶縁層2D上に形成された対配線20C、20Dを有している。近紫外半導体発光素子3は、相対する底面および上面に一対の電極であるp電極及びn電極を有しており、対配線20Cの上面に、AuSnの共晶半田5を介して近紫外半導体発光素子3の底面側の電極が接合されている。近紫外半導体発光素子3の上面側の電極は、金属製のワイヤ6によって、もう一方の対配線20Dに接続されている。これらの対配線20C、20Dの対で、図1Bに示される一つ対の配線20Aあるいは20Bをなし、各分割領域部の4個の近紫外半導体発光素子3への電力供給が行われる。
【0030】
尚、近紫外半導体発光素子3とベース2の一対の対配線20C、20Dとの電気的接続は、図3に示す形態に限られず、近紫外半導体発光素子3における電極の組の配置に応じて適宜方法で行なうことができる。例えば、近紫外半導体発光素子3の片面のみに電極の組が設けられている場合は、電極が設けられている面を上に向けて近紫外半導体発光素子3を設置し、各組の電極と各対配線20C、20Dとを例えば金製のワイヤ6でそれぞれ接続することによって、対配線20C、20Dと近紫外半導体発光素子3とを電気的に接続することができる。また、近紫外半導体発光素子3がフリップチップ(フェースダウン)の場合は、近紫外半導体発光素子3の電極と対配線20C、20Dとを金バンプや半田で接合することによって電気的に接続することができる。
【0031】
ここで、近紫外半導体発光素子3は、電力が供給されることにより近紫外領域(発光波
長360nm〜430nmの領域)の光を発光し、後述する蛍光部14A、14B(包括的に蛍光部14と称する場合もある。)を励起するものである。中でも、GaN系化合物半導体を使用したGaN系半導体発光素子が好ましい。なぜなら、GaN系半導体発光素子は、この領域の光を発するのに、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、後述の蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。GaN系半導体発光素子においては、AlxGayN発光層、GaN発光層、またはInxGayN発光層を有しているものが好ましい。GaN系半導体発光素子においては、それらの中でInxGayN発光層を有するものが、発光強度が非常に強いので、特に好ましく、InxGayN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが、発光強度が非常に強いので、特に好ましい。
【0032】
なお、上記組成式においてx+yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系半導体発光素子において、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
【0033】
GaN系半導体発光素子はこれら発光層、p層、n層、電極、及び基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlxGayN層、GaN層、またはInxGayN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高く、好ましく、さらにヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率がさらに高く、より好ましい。
【0034】
また、GaN系半導体発光素子を形成するためのGaN系結晶層の成長方法としては、HVPE法、MOVPE法、MBE法などが挙げられる。厚膜を形成する場合はHVPE法が好ましいが、薄膜を形成する場合はMOVPE法やMBE法が好ましい。
【0035】
そして、図3に示すように、ベース2上には、この近紫外半導体発光素子3から発せられる光の一部を吸収して異なる波長の光を発する複数あるいは単独の蛍光体及び前記蛍光体を封止する透光性材料を含有する蛍光部14が、近紫外半導体発光素子3を覆って設けられている。尚、図3ではリフレクタ10の記載は省略されているが、このような形態もパッケージから構成される半導体発光装置の一形態となり得る。近紫外半導体発光素子3から発せられた光の一部は、蛍光部14内の発光物質(蛍光体)に励起光として一部又は全部が吸収される。より具体的に発光装置8における蛍光部について図2に基づいて説明すると、分割領域部12Aにおいては、蛍光部14Aが近紫外半導体発光素子3Aを覆い、且つその蛍光部14Aは分割開口部13Aにて露出される。また、分割領域部12Bにおいては、蛍光部14Bが近紫外半導体発光素子3Bを覆い、且つその蛍光部14Bは分割開口部13Bにて露出される。従って、各蛍光部からの出力光は、各分割開口部から外部に出射される。
【0036】
次に、蛍光部14について詳細に説明する。本実施例に係る発光装置8は、白色光を出力することを目的とし、特に、発光装置8の発光色が、UCS(u、v)表色系(CIE1960)のuv色度図において、黒体輻射軌跡からの偏差duvが、−0.02≦duv≦0.02を満たすように、赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体の3数種の蛍光体を採用する。具体的には以下に挙げられるものを使用することができる。尚、本発明における黒体輻射軌跡からの偏差duvは、JIS Z8725(光源の分布温度及び色温度・
相関色温度の測定方法)の5.4項の備考の定義に従う。
【0037】
本実施形態において好適な赤色蛍光体が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、主発光ピーク波長が通常570nm以上、好ましくは580nm以上、特に好ましくは610nm以上であり、また、通常700nm以下、好ましくは680nm以下、特に好ましくは660nm以下である。また、主発光ピークの半値幅は、通常1nm以上、好ま
しくは10nm以上、特に好ましくは30nm以上であり、また通常120nm以下、好ましくは110nm以下、特に好ましくは100nm以下である。
【0038】
赤色蛍光体としては、例えば、赤色破断面を有する破断粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)2Si58:Euで表されるユウロピウム付活ア
ルカリ土類シリコンナイトライド系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Y,La,Gd,Lu)22S:Euで表されるユウロピウム付活希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体等が挙げられる。
【0039】
さらに、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、及びMoよりなる群から選ばれる少なくも1種の元素を含有する酸窒化物および/または酸硫化物を含有する蛍光体であって、Al元素の一部または全てがGa元素で置換されたアルファサイアロン構造をもつ酸窒化物を含有する蛍光体も用いることができる。なお、これらは酸窒化物および/または酸硫化物を含有する蛍光体である。
【0040】
また、そのほか、赤色蛍光体としては、(La,Y)22S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体、Y(V,P)O4:Eu、Y23:Eu等のEu付活酸化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu,Mn、(Ba,Mg)2SiO4:Eu,Mn等のEu,Mn
付活珪酸塩蛍光体、(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、YAlO3:Eu
等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、LiY9(SiO4)62:Eu、Ca28(SiO4)62:Eu、(Sr,Ba,Ca)3SiO5:Eu、Sr2BaSiO5:Eu等のEu付活珪
酸塩蛍光体、(Y,Gd)3Al512:Ce、(Tb,Gd)3Al512:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、(Ca,Sr,Ba)2Si58:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)
SiN2:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Eu等のEu付活窒化物蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Ce等のCe付活窒化物蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、Ba3MgSi28:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)3(Zn,Mg)Si28:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn等のMn付活ゲルマン酸塩蛍光体、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)23:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸化物蛍光体、(Gd,Y
,Lu,La)22S:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸硫化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)VO4:Eu,Bi等のEu,Bi付活バナジン酸塩蛍光体、SrY24:Eu,Ce等のEu,Ce付活硫化物蛍光体、CaLa24:Ce等のCe付活硫化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgP27:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)227
:Eu,Mn等のEu,Mn付活リン酸塩蛍光体、(Y,Lu)2WO6:Eu,Mo等のEu,Mo付活タングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)xSiyz:Eu,Ce(但
し、x、y、zは、1以上の整数)等のEu,Ce付活窒化物蛍光体、(Ca,Sr,B
a,Mg)10(PO4)6(F,Cl,Br,OH)2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、((Y,Lu,Gd,Tb)1-xScxCey)2(Ca,Mg)1-r(Mg,Zn)2+rSiz-qGeqO12+δ等のCe付活珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0041】
また、赤色蛍光体としては、β−ジケトネート、β−ジケトン、芳香族カルボン酸、または、ブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体からなる赤色有機蛍光体、ペリレン系顔料(例えば、ジベンゾ{[f,f´]−4,4´,7,7´−
テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1´,2´,3´−lm]ペリレン)
、アントラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料を用いることも可能である。
【0042】
本実施形態において好適な緑色蛍光体が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、主発光ピーク波長が通常500nm以上、好ましくは510nm以上、特に好ましくは520nm以上であり、また、通常580nm以下、好ましくは570nm以下、特に好ましくは560nm以下である。また、主発光ピークの半値幅が通常1nm以上、好ましくは10nm以上、特に好ましくは30nm以上であり、また、通常120nm以下、好ましくは90nm以下、特に好ましくは60nm以下である。
【0043】
このような緑色蛍光体として、例えば、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si222:Euで表されるユウロピウム
付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Ba,Ca,Sr,Mg)2SiO4:Euで表されるユウロピウム付活アルカリ土類シリケート系蛍光体等が挙げられる。
【0044】
また、そのほか、緑色蛍光体としては、Sr4Al1425:Eu、(Ba,Sr,Ca)
Al24:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ba)Al2Si28:Eu、(Ba,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca)2(Mg,Zn)Si27:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Y2SiO5:Ce,Tb等のCe,Tb付活珪酸塩蛍光体、Sr227−Sr225:Eu等のEu付活硼酸リン酸塩蛍光体、Sr2Si38−2SrCl2:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、Zn2SiO4:Mn等のMn付活珪酸塩蛍光体、CeMgAl1119:Tb、Y3Al512
Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体、Ca28(SiO4)62:Tb、La3Ga5Si
14:Tb等のTb付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Ga24:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体、Y3(Al,Ga)512:Ce、(Y,G
a,Tb,La,Sm,Pr,Lu)3(Al,Ga)512:Ce等のCe付活アルミン酸
塩蛍光体、Ca3Sc2Si312:Ce、Ca3(Sc,Mg,Na,Li)2Si312:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaSc24:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、SrSi222:Eu、(Sr,Ba,Ca)Si222:Eu、Eu付活βサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、BaMgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、SrAl24:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)22S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体、LaPO4:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸
塩蛍光体、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体、(Y,G
a,Lu,Sc,La)BO3:Ce,Tb、Na2Gd227:Ce,Tb、(Ba,S
r)2(Ca,Mg,Zn)B26:K,Ce,Tb等のCe,Tb付活硼酸塩蛍光体、Ca8Mg(SiO4)4Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、(Sr,Ca
,Ba)(Al,Ga,In)24:Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体やチオガレ
ート蛍光体、(Ca,Sr)8(Mg,Zn)(SiO4)4Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0045】
また、緑色蛍光体としては、ピリジン−フタルイミド縮合誘導体、ベンゾオキサジノン系、キナゾリノン系、クマリン系、キノフタロン系、ナルタル酸イミド系等の蛍光色素、テルビウム錯体等の有機蛍光体を用いることも可能である。
【0046】
本実施形態において好適な青色蛍光体が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、主発光ピーク波長が通常430nm以上、好ましくは440nm以上であり、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下、特に好ましくは460nm以下である。また、主発光ピークの半値幅が通常1nm以上、好ましくは10nm以上、特に好ましくは30nm以上で有り、また通常100nm以下、好ましくは80nm以下、特に好ましくは70nm以下である。
【0047】
このような青色蛍光体としては、規則的な結晶成長形状としてほぼ六角形状を有する成
長粒子から構成され、青色領域の発光を行なうBaMgAl1017:Euで表されるユウロピウム付活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)5(PO4)3Cl:Euで表されるユウロピウム付活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、規則
的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)259Cl:Euで表されるユウロピウム付活アルカリ土
類クロロボレート系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、青緑色領域の発光を行なう(Sr,Ca,Ba)Al24:Euまたは(Sr,Ca,Ba)4Al1425:Eu
で表されるユウロピウム付活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
【0048】
また、そのほか、青色蛍光体としては、Sr227:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光
体、Sr4Al1425:Eu、BaMgAl1017:Eu、BaAl813:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa24:Ce、CaGa24:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活アルミン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu、(Ba,Sr,Ca)5(PO4)3(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu,Tb,Sm付活ハロリン酸塩蛍光体、BaAl2Si28:Eu、(Sr,Ba)3MgSi28:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Sr227:Eu等のE
u付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体、Y2Si
5:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaWO4等のタングステン酸塩蛍光体、(Ba,
Sr,Ca)BPO5:Eu,Mn、(Sr,Ca)10(PO4)6・nB23:Eu、2SrO・0.84P25・0.16B23:Eu等のEu,Mn付活硼酸リン酸塩蛍光体、Sr2Si38・2SrCl2:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0049】
また、青色蛍光体としては、例えば、ナフタル酸イミド系、ベンゾオキサゾール系、スチリル系、クマリン系、ピラゾリン系、トリアゾール系化合物の蛍光色素、ツリウム錯体等の有機蛍光体等を用いることも可能である。
【0050】
なお、上述の赤色、緑色、青色蛍光体は、所望の発光スペクトル、色温度、色度座標、演色性、発光効率などに応じて適宜組み合わせて用いてもよい。
【0051】
発光装置8において、近紫外半導体発光素子3および蛍光部14は、通常、近紫外半導体発光素子3の発光によって蛍光体が励起されて発光を生じ、この発光が、外部に取り出されるように配置される。このような構造を有する場合、上述の近紫外半導体発光素子3および蛍光体14は、通常は透光性材料(封止材料)で封止保護される。具体的には、この封止材料は、上記蛍光部14に含まれることで蛍光体を分散させて発光部分を構成したり、近紫外半導体発光素子3、蛍光体およびベース2間を接着する目的で採用される。
【0052】
そして、使用される透光性材料としては、通常、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられるが、近紫外半導体発光素子3はその出力光の波長が360nm〜430nmの近紫外領域にあるため、その出力光に対して充分な透明性と耐久性のある樹脂が封止材料として好ましい。そこで、封止材料として、具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。また、無機系材料、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分
解重合して成る溶液又はこれらの組み合わせを固化した無機系材料、例えばシロキサン結合を有する無機系材料やガラスを用いることもできる。
【0053】
これらのうち、耐熱性、耐紫外線(UV)性等の点から、珪素含有化合物であるシリコーン樹脂や金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液またはこれらの組み合わせを固化した無機系材料、例えばシロキサン結合を有する無機系材料が好ましい。特に、以下の特徴(1)〜(3)のうち1つ以上を、好ましくは全てを有するシリコーン系材料やシリコーン樹脂(以下「本件のシリコーン系材料」と称す場合がある。)が好ましい。
【0054】
(1)固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(i)および/または(ii)のピークを少なくとも1つ有する。
(i)ピークトップの位置がケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク。
(ii)ピークトップの位置がケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク。
(2)珪素含有率が20重量%以上である。
(3)シラノール含有率が0.01重量%以上、10重量%以下である。
【0055】
ここで、上記封止剤としてのシリコーン系材料については、上記の通り、珪素含有率が20重量%以上であるものが好ましい。従来のシリコーン系材料の基本骨格は炭素−炭素及び炭素−酸素結合を基本骨格としたエポキシ樹脂等の有機樹脂であるが、これに対し本件のシリコーン系材料の基本骨格はガラス(ケイ酸塩ガラス)などと同じ無機質のシロキサン結合である。このシロキサン結合を有するシリコーン系材料は、(I)結合エネルギーが大きく、熱分解・光分解しにくいため、耐光性が良好である、(II)電気的に若干分極している、(III)鎖状構造の自由度は大きく、フレキシブル性に富む構造が可能であり、シロキサン鎖中心に自由回転可能である、(IV)酸化度が大きく、これ以上酸化されない、(V)電気絶縁性に富む等の優れた特徴を有する。
【0056】
これらの特徴から、シロキサン結合が3次元的に、しかも高架橋度で結合した骨格で形成されるシリコーン系材料は、ガラス或いは岩石などの無機質に近く、耐熱性・耐光性に富む保護皮膜となることが理解できる。特にメチル基を置換基とするシリコーン系材料は、紫外領域に吸収を持たないため光分解が起こりにくく、耐光性に優れる。
【0057】
本件のシリコーン系材料の珪素含有率は、上述の様に20重量%以上であるが、中でも25重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。一方、上限としては、SiO2のみからなるガラスの珪素含有率が47重量%であるという理由から、通常47重量
%以下の範囲である。
【0058】
このように構成される発光装置8は、間仕切り11で分割された二つの分割領域部12A、12Bにそれぞれ、4個の近紫外半導体発光素子3を光源とする近紫外光によって励起される蛍光部14が設けられ、且つリフレクタ10の内部において二つの分割領域部12A、12Bが、その出力光の出射口、即ち分割開口部13A、13Bを並べて一体的に設けられている。そして、各蛍光部14A、14Bからの出力光である白色光は、それぞれ分割開口部13A、13Bから外部に出射される。ここで、この分割開口部から放出される各白色光は、蛍光体を含む蛍光部14を介して得られるため、近紫外半導体発光素子3A、3Bからの出力光が充分に散乱され、配光がランバーシアン的となり出射される。これにより、上記3種類の蛍光体からの一次光を合成して白色にすることができると共に、均一な白色が得られるため、発光装置8が発する合成光においては均一な白色光と照度が得られることになる。
【0059】
ここで、分割領域部12Aから出力される白色光(以下、「白色光A」と言う。)と分割領域部12Bから出力される白色光(以下、「白色光B」と言う。)のスペクトルは、互いに異なるように、蛍光部14Aに含まれる蛍光体と蛍光部14Bに含まれる蛍光体とが適宜選択される。また、白色光A、Bに対応するxy色度図(CIE1931)上の色度点をWL、WHで表すものとすると、図4、5に示すように、色度点WLの相関色温度は
2600K、色度点WHの相関色温度は9000Kとする。また、色度点WLは、黒体輻射軌跡BBLからの偏差duvが+0.005であり、色度点WHは、黒体輻射軌跡BBL
からの偏差duvが+0.01であるとする。尚、図5は、図4の要部拡大図であり、図中に示されている黒体輻射からの偏差の範囲−0.02≦duv≦0.02は、UCS表色系(CIE1960)からxy色度図(CIE1931)上へ変換したものである。
【0060】
上記の場合において、分割領域部12Aからの白色光Aと分割領域部12Bからの白色光Bの相関色温度が異なるように設定し、且つ白色光A、Bに対応する色度点それぞれの黒体輻射軌跡BBLからの偏差duvを−0.02≦duv≦0.02に収めることで、発光装置8の出力光が実質的に黒体輻射軌跡BBLに沿っているといってよく、且つ各分割領域部に設けられた近紫外半導体発光素子3A、3Bの光出射時間、駆動電流値または電力量といった駆動条件を制御することで、白色光A、Bごとにそのエネルギー比を自由に変化させ、発光装置8の最終的な出力光である合成光の色度点を、上記色度点WLと色
度点WHとを結ぶ直線上の任意の色度点に対応する相関色温度に調整することができる。
即ち、発光装置8においては、配線20A、20Bを介して、対応するそれぞれの分割領域部12A、12Bに設けられた近紫外半導体発光素子3への供給電力をそれぞれ制御することで、発光装置8の出力光である合成光の相関色温度を2600Kから9000Kの間の任意の値に調整でき、且つその合成光の色度点は実質的に黒体輻射軌跡BBLに沿っているため、人間の視覚に対して極めて自然に近い白色光を提供し、且つ2600Kから9000Kにわたって色温度を自在に可変すること、すなわち発光装置8における出力光の調色を行うことが可能となる。
【0061】
また、発光装置8において合成光としての白色光を出力するために、上述までの実施例では、近紫外半導体発光素子3と赤色、緑色、青色蛍光体を組合せ、それを各分割領域部12に図1等に示すように配置した。勿論、白色光を出力するために、その他の半導体発光素子と蛍光体の組合せを採用し、各分割領域部12に配置するようにしてもよい。そこで、上述までの近紫外半導体発光素子3と赤色、緑色、青色蛍光体との組合せを組合せAとすると、それ以外の白色光が得られる組合せとして、青色半導体発光素子と赤色、緑色蛍光体との組合せ(組合せB)、青色半導体発光素子と黄色蛍光体との組合せ(組合せC)も、図1等に示す分割領域部12に配置可能である。組合せBおよびCによって白色光を出力する技術そのものは公知のものであるので、それらの詳細な説明は省略する。
【0062】
ここで、上記組合せA、B、Cにおいて、蛍光体の濃度を調整することで得られる白色光の色温度と、その発光効率との相関を図6に示す。図6の横軸は色温度(K)を表し、縦軸は発光効率(lm/W)を表す。そして、図中の線LAは組合せAに対応し、線LBは組合せBに対応し、線LCは組合せCに対応している。図6から分かるように、上記3つの組合せの中で、組合せAに対応する線LAの傾きが最も小さく、ほぼ水平な直線状態になっており、組合せCに対応する線LCの傾きが最も大きくなっている。この各直線の傾きが大きくなるほど、色温度を変化させようとするとき、その発光効率が大きく変動することを意味する。
【0063】
従って、該直線の傾きの増大は、色温度を変化させたとき、半導体発光素子に供給する電力が一定のままであれば、当該半導体発光素子の輝度が大きく変動することを意味する。換言すると、該直線の傾きが比較的大きいときは、輝度を安定化させるために半導体発
光素子への供給電力も確実に制御する必要性が高くなり、その結果発光装置8の駆動制御全体が煩雑になる可能性が高い。従って、安定した輝度の発光装置8を構成するためには、可及的に図6に示す直線の傾きが小さい組合せ、即ち近紫外半導体発光素子3と対応する三色の蛍光体の組合せAを採用することが好ましい。但し、このことは、本発明に係る発光装置8に、組合せB、Cやその他の半導体発光素子と蛍光体の組合せを適用することを排除するものではない。
【0064】
尚、組み合わせB、Cにおいての白色化は蛍光体励起源である青色半導体発光素子の光そのものを青色光として混色に利用しているがために、低色温度領域を出すために赤や緑あるいは黄色の蛍光体量を増加させ青色光の占める割合を減ずる必要がある。また、青色光は蛍光体変換光より効率がよいため、青色光の占める割合が減るほど効率が落ちることになる。一方、組み合わせAのごとく近紫外半導体発光素子を用いた場合、近紫外光は殆ど白色化には寄与せず大半が蛍光体の励起に使用され白色化はもっぱら青、緑、赤の蛍光体変換光となる。従って、色温度を変化させるために蛍光体の組成比を変えても発光効率には大きく影響が現れない。
【0065】
このように本実施例に係る発光装置8によれば、色温度が2600Kと9000Kの間の色温度となる白色光を容易に出力することが可能であり、また、図2等に示す構造を採用することにより、各分割領域部12からの出力光の合成光が、照射面で分離する虞を十分に抑制することが可能である。
【0066】
ここで、上述に示すように構成され、2つの色温度間の色温度となる白色光を容易に出力できる発光装置8と、該発光装置8を搭載するための回路基板31とを備える発光モジュール30の構成について、図7A及び図7Bに基づいて説明する。図7Aは、発光モジュール30の具体的構成を示す斜視図であり、図7Bは、図7Aに示す発光モジュール上における5台の発光装置8の配置状態を模式的に示す図である。なお、図7Aにおいて、各発光装置8への電力供給系統については図示していない。また、図7Bにおいて、分割領域部12A,12Bのそれぞれを区別するために、便宜上、12Aに破線で模様を付している。発光モジュール30は、具体的には、環状の回路基板31上に、同様に環状に配置される。このとき、図7Bに示すように、5台の発光装置8は、回路基板31の中心Oを中心点として同一円周上に等角配置される。従って、隣接する発光装置8間の角度θ(以下、「所定配置角θ」と言う。)は、全て中心Oの一周360°を発光装置8の台数である5で除した角度、即ち72°となる。
【0067】
ここで、図7Bに示すように、各発光装置8における間仕切り11と、発光装置8が配置される環状の半径とは直交し、且つ分割領域部12Aが該環状の内側に位置し、分割領域部12Bが該環状の外側に位置するように、発光モジュール30においては5台の発光装置8の配置が行われている。その結果、発光モジュール30においては、隣接する発光装置8との間仕切り11の向きのずれは、発光装置8の開口部13の開口面内における一の回転方向に、上記所定配置角度θずつ回転された状態となり、以って、分割領域部12Aと分割領域部12Bとの相対位置関係を代表する間仕切り11の向きが、発光装置8ごとに異なった状態となる。
【0068】
このように間仕切り11の向きを、所定配置角θずつ、ずらした状態で5台の発光装置8を配置することで、各発光装置8の分割領域部12Aと分割領域部12Bとからの発光がムラを抑えて合成されやすくなるため、発光モジュール30からの発光として照射される光の、照射面における分離を回避することが可能となる。特に、発光装置8の開口部13発上に凸レンズ等のレンズ素子を設けた場合においても、発光の分離を回避することが可能となる。
【0069】
図8は、発光モジュール30の各発光装置8間における電気的な接続状態を模式化して示す図である。発光モジュール30においては、各発光装置8が有する5つの分割領域部12Aの配線20Aは互いに直列に接続される。同様に、5つの分割領域部12Bの配線20Bは互いに直列に接続される。このように各発光装置8のそれぞれの分割領域部12A、12Bを直列に接続することで、発光モジュール30の発光制御を容易に行うことができる。
【0070】
本実施例では、各分割領域部12Aに対応する電極21Aの各々が電力供給用導体層32A,32B(包括的に電力供給用導体層32と称する場合もある。)に接触するように配置されている。電力供給用導体層32A,32Bの詳細については後述するが、これらは回路基板31の主要な構成要素である。電力供給用導体層32A,32Bは、各分割領域部12A,12Bを別系統として各近紫外半導体発光素子3に対して電力を供給するものであり、本発明における電力供給部に対応している。ここでの系統とは、分割領域部12に含まれる各近紫外半導体発光素子3へと供給する電力の制御系統のことを意味し、この実施例では2系統になっている。すなわち、分割領域部12Aに対する電力が電力供給用導体層32Aによって供給され、分割領域部12Bに対する制御用電力が電力供給用導体層32Bによって供給されており、それぞれに対応する各近紫外半導体発光素子3への電力供給が互いに独立して制御されるようになっている。
【0071】
ここで、別系統の電力供給用導体層32A,32B同士は、互いに絶縁部材33(図中、ハッチングにて図示)によって絶縁される。図中の符号34A,34Bは+端子部であり、符号35A,35Bは−端子部である。図8において、電力供給用導体層32は矩形として表されているが、本図においては便宜的に矩形で表しているに過ぎない。また、各発光装置8のグラウンド線の図示は省略している。
【0072】
図9には、発光モジュール30の発光制御のために各発光装置8に供給される電流の一例が示されており、特に図9(a)は電力供給用導体層32Aを介して各発光装置8の分割領域部12A内に配置される近紫外半導体発光素子3Aに供給される電流の推移を示しており、図9(b)は電力供給用導体層32Bを介して各発光装置8の分割領域部12B内に配置される近紫外半導体発光素子3Bに供給される電流の推移を示している。本実施例では、各近紫外半導体発光素子3には、矩形状の電流が供給され、且つ近紫外半導体発光素子3A側に供給される電流量と、近紫外半導体発光素子3B側に供給される電流量の総和は一定になるように制御される。尚、図9に示す状態は、近紫外半導体発光素子3A側に供給される電流量は該総和の25%であり、近紫外半導体発光素子3B側に供給される電流量は該総和の75%であり、その結果、各発光装置8の分割領域部12Aからの発光強度と各発光装置8の分割領域部12Bからの発光強度との比は、1:3となる。
【0073】
このように近紫外半導体発光素子3A側に供給される電流量と、近紫外半導体発光素子3B側に供給される電流量の総和を一定にしながら、各半導体発光素子3側に供給される電流量の比を調整することで、発光モジュール30としての発光強度は一定としながら、分割領域部12Aと分割領域部12Bからの発光強度の比率を変化させることができる。その結果、図4及び図5に示したように、発光モジュール30の出力光を、発光強度を一定のままで、その相関色温度を2600Kから9000Kの間の任意の値に調整できる。また、上述したように、その合成光の色度点は実質的に黒体輻射軌跡BBLに沿っているため、人間の視覚に対して極めて自然に近い白色光を提供し、且つ2600Kから9000Kにわたって色温度を自在に可変することが可能となる。
【0074】
尚、分割領域部12Aと分割領域部12Bからの発光強度の比率の変化については、段階的に変化させてもよく、また連続的に変化させてもよい。前者の場合は、発光モジュールの出力光は、相関色温度が異なる複数の出力光を有し、ユーザがいずれかの相関色温度
の出力を選択する等して、該発光モジュール30を利用する。また後者の場合は、ユーザが好みの相関色温度となるように任意の比率を選択する等して、該発光モジュール30を利用する。もっとも、近紫外半導体発光素子3A、3Bの駆動制御については、上述以外の駆動制御も採用可能である。例えば、近紫外半導体発光素子3A、3Bへの供給電流量の総和を一定にせず、近紫外半導体素子ごとに独立に電力供給することにより、各々の入力電流を制御するようにしてもよい。
【0075】
図9で説明した一態様のように、発光モジュール30では、その出力光を、発光強度を一定のまま、分割領域部12Aと分割領域部12Bからの発光強度の比率を変化させることができる。これによって、発光モジュール30として出力する出力光の色温度を自在に且つ容易に可変とすることができる反面、分割領域部12Aと分割領域部12Bとにおける発光強度の比率を相違させることに伴って各発光装置8における局所的な熱集中が起こりやすい。そうすると、近紫外半導体発光素子3の温度上昇に伴う発光効率の低下や、近紫外半導体発光素子3の熱劣化などの問題が、いわゆる調色を不可とする半導体発光装置に比べて、顕在化し易い。そこで、本実施例における発光モジュール30では、各発光装置8において発生する熱をより効率的に外部に逃がし、放熱性能を向上させるべく、特に発光装置8を搭載するための回路基板31の構成について工夫した。
【0076】
図10は、発光モジュール30の回路基板31の上面を模式化して示した図である。図11は、図10のA−A切断線を含む断面を模式的に示した図である。図12は、回路基板31に各発光装置8が搭載された状態を示す図である。また、図13は、発光モジュール30と放熱用ハウジング部材50とレンズ60とを含んだ照明装置DLを示した図である。
【0077】
発光モジュール30における回路基板31は、発光装置8を搭載(実装)するための基板であり、本実施例では5個の発光装置を搭載する。回路基板31は、各発光装置8を取り付けるための土台となる環状(ドーナツ状)に形成された基材部36を有する。この基材部36は、熱伝導性の優れた熱伝導材料を用いて形成されており、中心O側は中空となっている。本実施例では、アルミニウムを用いて基材部36を構成しているが、勿論これに限定されるものではない。基材部36表面には絶縁層36Aが形成されている。この絶縁層36Aは、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)に代表されるようなレジンを用いることができる。
【0078】
絶縁層36Aの上には、電力供給用導体層32が基材部36のほぼ全面を覆うように形成されている。本実施例における電力供給用導体層32は、たとえば電気伝導性の優れた銅箔を用いているが、その他の電気伝導性材料を用いることもできる。図8で説明したように、本実施例において、各分割領域部12に含まれる近紫外半導体発光素子3に供給するための電力制御系統の数は2系統である。以下、分割領域部12Aにおける近紫外半導体発光素子3Aへの電力制御系統に対応した32Aを「第1系統電力供給用導体層」とし、分割領域部12Bにおける近紫外半導体発光素子3Bへの電力制御系統に対応した32Bを「第2系統電力供給用導体層」とする。
【0079】
図10に示すように、第1系統電力供給用導体層32A及び第2系統電力供給用導体層32Bは、概略、環状に形成された絶縁部材(以下、「環状絶縁部材」と称する。)33Aによって、互いに絶縁されている。言い換えると、環状絶縁部材33Aによって、第1系統電力供給用導体層32A及び第2系統電力供給用導体層32Bが、基材部36の面内方向において平面的に区画されている。この図では、環状絶縁部材33Aを境に内側に第1系統電力供給用導体層32A(格子ハッチング)が配置され、外側に第2系統電力供給用導体層32B(横ハッチング)が配置されている。
【0080】
回路基板31(基材部36)の径方向には、放射状に、6本の絶縁部材(以下、「放射状絶縁部材」と称する。)33B〜33Gが設けられている。この放射状絶縁部材33B〜33Gにより、第1系統電力供給用導体層32Aが6つの導体領域A1〜A6に分割(区画)され、且つ、第2系統電力供給用導体層32Bが6つの導体領域B1〜B6に分割(区画)されている。
【0081】
図11に示すように、基材部36上に形成されている電力供給用導体層32上には、更に電気絶縁保護塗膜層37(一例として、ソルダーレジスト)が積層されている。電力供給用導体層32は、特定部位を除いてこの電気絶縁保護塗膜層37によって覆われている。第1系統電力供給用導体層32Aにおいては、+端子部34A及び−端子部35Aが形成される部分、各発光装置8におけるベース2下面に形成された電極21Aと接触させる部分が露出している(露出部は白抜きで図示する)。そのため、図10に格子ハッチングで表した領域は、第1系統電力供給用導体層32Aに電気絶縁保護塗膜層37が積層されていることになる。
【0082】
一方、第2系統電力供給用導体層32Aにおいては、+端子部34B及び−端子部35Bが形成される部分、各発光装置8におけるベース2下面に形成された電極21Bと接触させる部分が露出している(露出部は白抜きで図示する)。そのため、図10に横ハッチングで表した領域は、第2系統電力供給用導体層32Bに電気絶縁保護塗膜層37が積層されていることになる。その他、電気の逆流防止用に設けられるツェナーダイオード等の電力制御用電子部品(図示省略)を配置する部分についても、電力供給用導体層32を剥き出しにしておくことができる。もっとも、このような電力制御用電子部品は、必ずしも回路基板31上に設置する必要はなく、回路基板31の外部に設置しても良い。また、電力制御用電子部品を発光装置8の内部に配置するようにしても良い。
【0083】
既述のように回路基板31に搭載された各発光装置8は、環状に、且つ中心Oを中心点として同一円周上に等角配置されている(図7Bを参照)。そして、隣接する発光装置8間の所定配置角θは72°である。図12において、5台の発光装置8を、+端子部34A,34Bに近いものからそれぞれ順に、第1発光装置8A〜第5発光装置8Eと定義する。
【0084】
以上、図10〜12を参照して説明したように、絶縁部材33によって区画された電力供給用導体層32は、各発光装置8において互いに対応する分割領域部12同士を直列に接続するように機能する。具体的には、各発光装置8の分割領域部12A側に対応する電力制御系統では、+端子部34Aから入力された電力は、A1→8Aの分割領域部12A→A2→8Bの分割領域部12A→A3→8Cの分割領域部12A→A4→8Dの分割領域部12A→A5→8Eの分割領域部12A→A6と経由し、−端子部35Aに至る。また、各発光装置8の分割領域部12B側に対応する電力制御系統では、+端子部34Bから入力された電力は、B1→8Aの分割領域部12B→B2→8Bの分割領域部12B→B3→8Cの分割領域部12B→B4→8Dの分割領域部12B→B5→8Eの分割領域部12B→B6と経由し、−端子部35Bに至る。これにより、各発光装置8では、その電力制御系統ごとに独立した発光制御が好適に実現される。
【0085】
そして、上記発光制御に起因する各発光装置8での発熱は、各発光装置8の電極21A,21Bを介して電力供給用導体層32に伝えられる。ここで、電力供給用導体層32は、熱伝導性材料によって基材部36のほぼ全面にわたって面状に形成されている。従って、電力供給用導体層32が各発光装置8から奪った熱を、回路基板31(基材部36)の面内方向への広がりをもたせて逃がすことができる。すなわち、発光装置8において局所的に集中した熱を、基材部36における面内方向に好適に分散させつつ、効率的に発光装置8から熱を奪うことができる。
【0086】
ここで、基材部36の全表面積に対する電力供給用導体層32が形成される部分の面積比率(以下、「導体層占有面積比率」という)が高いほど発光装置8の放熱性能を高めることができる。基材部36の面積が等しければ、導体層占有面積比率が高いほど、発光装置8からより多くの熱を効果的に奪うことができるからである。そのため、本実施例では、発光装置8の発光効率が規定のレベルを満足するように導体層占有面積比率が設定されており、その値は好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上とすると良い。
【0087】
また、本実施例における発光モジュール30では、各発光装置8を回路基板31上に環状に、且つ中心Oを中心点として同一円周上に等角配置し、且つ、隣接する発光装置8との間仕切り11の向きのずれが開口部13の開口面内における一の回転方向に所定配置角度θずつ回転された状態となっている。本実施例では、このような発光装置8の配置パターンに対して、図12に示す如く、電力供給用導体層32がその電力制御系統ごとに、中心O(所定の基準点)を中心に同心円状に配置されるように、絶縁部材33を用いて区画するようにした。
【0088】
これにより、第1系統電力供給用導体層32A及び第2系統電力供給用導体層32Bが、回路基板31(基材部36)面内において散在することなく、まとまって整然と分布するようになる。これによれば、電力制御系統別に電力供給用導体層32を区画するために必要な絶縁部材33の量をより少なくすることができる。従って、上述した導体層占有面積比率を可及的に高くすることが可能となり、以って発光装置8の放熱性能の向上に寄与することができる。また、上述の如く絶縁部材33の使用量をより少なくすることができるため、製造コスト削減の観点からも有益である。尚、第1系統電力供給用導体層32A及び第2系統電力供給用導体層32Bを、中心点O以外の基準点を中心として同心円状に配置しても良い。
【0089】
また、図示のように、回路基板31上における端子部34A、34B、35A、35B(これらの各端子部を包括的に参照する場合は端子部34と称する。)は、それぞれ隣接して配置されている。これによれば、外部電源と接続される各配線をまとめることができる。よって、この実施形態は照明装置DLの全体設計に関する自由度を向上させる観点からも好ましい形態の一つである。
【0090】
また、図11及び図13に示すように、本実施例に係る回路基板31には、発光装置8から奪った熱を大気中に放熱させるための放熱用ハウジング部材50が取り付けられるようになっている。この放熱用ハウジング部材50は、発光モジュール30を保持するための筐体であると共に、基材部36と同様に熱伝導性の優れた材料を用いており、基材部36側から伝導されてくる熱を大気中に放散させるための放熱促進部材としても機能する。放熱用ハウジング部材50は、主に放熱促進部材としての役割を担う放熱フィン部51と、筐体としての役割を担うハウジング部52とを含んで構成されている。ハウジング部52は、円形状を有する中底部52Aから円筒側壁部52Bが放熱フィン部51と逆側に向かって立ち上がるように形成されている。円筒側壁部52Bの内径は回路基板31(基材部36)の外径と略等しく、回路基板31が放熱用ハウジング部材50に装着される際に、円筒側壁部52Bと回路基板31外周との間に僅かにクリアランスが形成されるようになっている。
【0091】
本実施例では、基材部36において、発光装置8が搭載されない側の面(以下、「非搭載面」という)36Bに放熱用ハウジング部材50が熱的に接触するように取り付けられる。具体的には、基材部36における非搭載面36B及び放熱用ハウジング部材50における中底部52Aの界面には、サーマル・インターフェース・マテリアル(TIM)38を介在させるようにした。通常、放熱用ハウジング部材50と基材部36における熱膨張
率が異なる。そこで、TIM38のように変形能(追従能)を有する材料を基材部36及び放熱用ハウジング部材50の界面に介在させることで、熱膨張率の差に起因する双方の部材の損傷を防ぐようにしている。また、このようにTIM38を介在させることにより、放熱用ハウジング部材50及び基材部36の何れかの面精度が仮に低いとしても、基材部36から放熱用ハウジング部材50へと円滑な熱伝達を行うことができる。なお、円筒側壁部52Bと回路基板31(基材部36)外周との間に形成される僅かなクリアランスを埋めるようにTIM38を配置しても良い。これにより、発光モジュール30と放熱用ハウジング部材50との間の伝熱効率を一層高めることができる。
【0092】
このようにして、発光装置8による発熱が、発光モジュール30の回路基板31における電力供給用導体層32、基材部36を介して放熱用ハウジング部材50へと伝えられ、その熱が放熱フィン部51から大気中への放出されることで発光モジュール(発光装置8)の放熱が促進される。本実施例における回路基板31、発光モジュール30、及び照明装置DLによれば、調色可能な発光装置8において発生した熱の放熱性能を好適に向上させることができる。よって、発光装置8における局所的な温度上昇に伴う発光効率の低下や、熱劣化を抑制することが可能となる。
【0093】
なお、本実施例における照明装置DLは、特定の種類に限定されるものではないが、ダウンライト(たとえば、LEDシェルフダウンライト等)として好適に適用することができる。例えば、放熱用ハウジング部材50の放熱フィン部51を、棚や天井の内側に埋め込み、隠すことで、美観を損なわずに発光装置8の放熱性能を高めることができる(ハウジング部52も埋め込むようにしても勿論構わない)。なお、発光モジュール30、放熱用ハウジング部材50、レンズ60の各々は、公知の種々の方法を用いて固定することができる。例えば、図13に示すように、放熱用ハウジング部材50における中底部52Aの中央に形成されている接続用孔と、回路基板31の中央に形成されている接続用孔とを、図示しない固定用治具(例えば、ねじ等)を介して固定しても良い。また、レンズ60と放熱用ハウジング部材50とに関しては、レンズ60枠の外周面及び円筒側壁部52Bの内周面にねじ溝を形成し、これらを互いに螺合することでレンズ60を放熱用ハウジング部材50に取り付けても良い。また、レンズ60の機能、仕様などは特に限定されるものではなく、例えば集光レンズ、拡散レンズ等を採用することができる。
【0094】
<変形例>
次に、本実施例における発光モジュール30の第1の変形例について、図14を参照して説明する。図14では、リフレクタ10の内部が3つの分割領域部12A〜12Cに分割されている発光装置8を回路基板31に搭載する例を説明する。分割領域部12A〜12Cからの各出力光は、たとえば赤色、緑色、青色となるように、半導体発光素子及び蛍光体の組み合わせが適宜調節されており、発光装置8からは白色の合成光が出力されるようになっている。
【0095】
図14に示す例では、3台の発光装置8が回路基板31に設置されるようになっている。各発光装置8の回路基板31への搭載方法については、既述した内容と同様である。すなわち、3台の発光装置8は、回路基板31の中心Oを中心点として同一円周上に等角配置されている。そして、隣接する発光装置8間の所定配置角θは、360°を発光装置8の台数である3で除した角度、即ち120°となっている。ここで、各発光装置8において、図中の「R」、「G」、「B」の表記が、分割領域部12A〜12Cの各々に対応する。各発光装置8において、回路基板31の中心O側から径方向外側に向かって、分割領域部12A〜12Cが順に配置されている。
【0096】
本変形例においても、各分割領域部12A〜12Cに対応する電力制御系統ごとに電力供給用導体層32が平面的に区画されている。すなわち、ここでの系統数は3であるため
、電力供給用導体層32が2つの環状絶縁部材33H,33Iによって区画するようにした。これにより、第1系統電力供給用導体層32A〜第3系統電力供給用導体層32Cが回路基板31(基材部36)面内において中心点Oを基準として同心円状に配置されている。
【0097】
また、回路基板31(基材部36)の径方向には、放射状に、4本の放射状絶縁部材33J〜33Mが配置されている。そして、この放射状絶縁部材33J〜33Mによって、第1系統電力供給用導体層32Aが4つの導体領域A1〜A4に区画され、第2系統電力供給用導体層32Bが4つの導体領域B1〜B4に区画され、第3系統電力供給用導体層32Cが4つの導体領域C1〜C4に区画されている。尚、図中の導体領域C1に含まれる符号34Cは、各発光装置8の分割領域部12Cに含まれる半導体発光素子に供給する電力を外部から入力するための+端子部である。また、導体領域C4に含まれる符号35Cは、各発光装置8の分割領域部12Cに対応する−端子部を表す。
【0098】
以上のように、図14では、発光装置8におけるリフレクタ10内部の分割数、すなわち半導体発光素子に供給するための電力制御系統の数が異なる変形パターンに関する実施形態を説明した。このような変形パターンにおいても、回路基板31の面内方向にわたって基材部36を覆うように面状に形成された電力供給用導体層32を介して、各発光装置8における発熱、特に分割領域部12ごとに局所的に集中して発生した熱を、効率的に基材部36へと逃がすことができる。これにより、発光装置8の放熱性能が向上し、以って該発光装置8における局所的な熱集中に伴う発光効率の低下や、熱劣化を好適に抑止することができる。
【0099】
次に、本実施例における発光モジュール30の第2の変形例について、図15を参照して説明する。図15に示した発光モジュール30は、複数ではなく単一の発光装置8が回路基板31に搭載されている。この図において回路基板31に搭載される発光装置8自体は、図1〜3等において説明したものと同等であるが、発光モジュール30から発光される発光量を充分に確保するために、各分割領域部12A,12Bにおいて近紫外半導体発光素子3A、3Bを設置する数を、増やしても良い。
【0100】
この図において、回路基板31(基材部36)は円形状を有する。回路基板31の厚さ方向の基本構成は、図11において説明したものと同様である。すなわち、基材部36上には、そのほぼ全面わたって電力供給用導体層32が基材部36を覆うように面状に形成される。図中の符号33X、33Y、33Zは既述した絶縁部材を表す。絶縁部材33Zは、基材部36の外縁に沿って配置されている。絶縁部材33X,33Yは、基材部36の面内領域を4等分するように直交する十字型に配置されている。
【0101】
基材部36の面内方向に関しては、上記絶縁部材33が配置される部分を除く領域に電力供給用導体層32が形成されることになる。そして、この電力供給用導体層32は、絶縁部材33Xによって第1系統電力供給用導体層32A及び第2系統電力供給用導体層32Bに区画されている。これらの用語の意味については既述のため、その説明については省略するが、第1系統電力供給用導体層32Aが分割領域部12A側の電力制御系統に対応し、第2系統電力供給用導体層32Bが分割領域部12B側の電力制御系統に対応するものである。
【0102】
また、絶縁部材33Yにより、第1系統電力供給用導体層32Aが導体領域A1、A2に2分(区画)され、且つ、第2系統電力供給用導体層32Bが導体領域B1、B2に2分(区画)されている。尚、実施例1と同様、電力供給用導体層32には、発光装置8の電極21A,21Bが配置される箇所、端子部34A,34B,35A,35Bが形成される箇所を除いて電気絶縁保護塗膜層37が更に積層されている。
【0103】
この構成では、+端子部34Aから入力された電力は、導体領域A1→電極21A→分割領域部12A→電極21A→導体領域A2と経由し、−端子部35Aに至る。また、+端子部34Bから入力された電力は、導体領域B1→電極21B→分割領域部12B→電極21B→導体領域B2と経由し、−端子部35Bに至る。これにより、発光装置8ではその電力制御系統ごとに、すなわち分割領域部12A,12Bごとに独立した発光制御が実現される。そして、発光装置8に係る放熱性能に関しては、既述の実施形態と同様、発光装置8からの熱が電力供給用導体層32(32A,32B)へと伝えられるところ、この変形例においても電力供給用導体層32は基材部36のほぼ全面にわたって形成されているため、発光装置8の熱を効率良く基材部36に輸送することができる。従って、発光装置8における放熱性能が向上し、発光装置8における局所的な熱集中に伴う発光効率の低下、熱劣化等を好適に抑制することが可能となる。
【0104】
これまでに説明した実施の形態では、回路基板(基材部)の形状が円形状である場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、種々の形状を採用しても勿論構わない。ここでは図16及び図17を参照して、発光モジュール30の第3の変形例について説明する。なお、図16に示す発光モジュール30では、3台の発光装置8が回路基板310に搭載されている。図14で説明した配置例と同様、3台の発光装置8は回路基板310(基材部316)の中心Oを中心点として同一円周上に等角配置されており、隣接する発光装置8間の所定配置角θは120°である。なお、各発光装置8は、図12で説明したものと同等であり、詳しい説明は省略する。また、本変形例においても、基材部316の平面内において電力供給用導体層32が、絶縁部材33によって第1系統電力供給用導体層32A(格子ハッチング)及び第2系統電力供給用導体層32B(横ハッチング)に区画されている。
【0105】
図16に示すように、回路基板310(基材部316)は、円形から弓形(segment)
の切り欠き部(以下、「弓形切り欠き部」という)を切り欠いた形状(以下、「一部切り欠き円形状」という)に形成されている。弓形切り欠き部は、円弧及びこれに対応する弦によって囲まれた領域である。この図の例では、中心Oを挟んで対称位置(中心O周りに180°ずれた位置)に一対の弓形切り欠き部311A,311B(これらの弓形切り欠き部を包括的に参照する場合は弓形切り欠き部311と称する。)が設けられている。
【0106】
このように、回路基板310(基材部316)を一部切り欠き円形状として構成することにより、以下の点で有効である。すなわち、図示のように、回路基板31上における各端子部34を弓形切り欠き部311近傍にそれぞれ隣接して配置させることにより、外部電源と端子部34とを接続する配線を挿通させるための空間として弓形切り欠き部311を利用することができる。この配線は、弓形切り欠き部311を通って放熱用ハウジング部材50における中底部52A側に導かれる。中底部52A側には、各端子部34に接続された配線を通すための貫通孔(図示省略)が設けられており、この貫通孔を介して配線が外部電源(例えば、定電流回路等)に接続されている。また、このように回路基板31上において各端子部34を互いに隣接させて纏めて配置することにより、発光装置8、他の電子部品(ツェナーダイオード等)との干渉を回避し、限られた搭載スペースを有効に活用することができる。
【0107】
また、照明装置DLの外観(デザイン)に関して、一般にユーザー(利用者)は、鋭角な角部を有する形状に比べて、円形状もしくはそれに近い多角形状を感覚的、心理的に好む傾向がある。たとえば、角張った形の照明装置に比べて丸い形の照明装置の方が眺めたときのストレスが少なく、丸い形の照明装置を好む傾向がある。その点、回路基板310を一部切り欠き円形状に形成した場合においても、円筒形状の円筒側壁部52を備えた放熱用ハウジング部材50に好適に装着することができるため、ユーザーによる感覚面、心
理面からの好みに合致した外観を有する照明装置DLを提供することができる。また、丸い外観を有する照明装置DLがユーザーに好まれるという上記理由から、円筒形状を有する筐体が既製品(汎用品)として多く流通している。そして、照明装置DL全体の製造コストのうち、放熱用ハウジング部材50のコストが占める割合は比較的高いという実情がある。一部切り欠き円形状に形成された回路基板310によれば、市場に多く流通している汎用品としての筐体に容易に装着することができる。よって、照明装置DLにおける製造コストを好適に抑制することができる。
【0108】
また、回路基板310(基材部316)を一部切り欠き円形状として形成することにより、基材部316の原材料(例えば、アルミニウム板)Sから該基材部316を切り出す際、無駄となる部分の面積を、例えば基材部316を円形状とする場合に比べて好適に減らすことができる(図17を参照)。これにより、同量の原材料(例えば、同じ大きさのアルミニウム板)Sから、より多数の基材部316を製造することができる。よって、回路基板310一個あたりに要する製造コストを好適に抑制することができる。但し、回路基板310(基材部316)を一部切り欠き円形状とすることは好適な態様の一つであるが、本発明の適用がこれらに限定される趣旨のものではなく、既に説明した円形状や、多角形状、その他の形状としても良いのは勿論である。また、基材部316を一部切り欠き円形状とする場合、弓形切り欠き部を設ける個数は特に限定されない。すなわち、図16に示した2個に限定されず、3つ以上の弓形切り欠き部を設けても良いし、単一の弓形切り欠き部を設けても良い。
【0109】
<実施例2>
次に、本実施の形態における実施例2について説明する。実施例2における発光モジュール30の回路基板31Aは、実施例1において説明した回路基板31と基本構成を等しくしており、既に説明した部材については、同じ符号を付与することでその説明を省略する。本実施例における回路基板31Aは、各発光装置8を搭載する態様が実施例1と相違する。
【0110】
図18は、実施例2に係る回路基板31Aの上面を模式化して示した図である。図19は、実施例2に係る回路基板31Aに各発光装置8が搭載された状態を示す図である。回路基板31Aにおいても、実施例1の回路基板31と同様に、基材部36、この基材部36表面に形成された絶縁層36A、及び電力供給用導体層32を備え、電力供給用導体層32は基材部36の面内方向において絶縁部材330により区画されている。また、回路基板31Aは、各発光装置8を環状に且つ中心Oを中心点として同一円周上に等角配置する点で、実施例1における回路基板31と共通する。
【0111】
図19では、回路基板31Aに対して3個(3台)の発光装置8を搭載している。そして、隣接する発光装置8間の所定配置角θは、中心Oの一周360°を発光装置8の台数である3で除した120°となるように、各発光装置8が中心Oを中心点として同一円周上に等角配置されている。
【0112】
また、回路基板31Aにおいても、電力供給用導体層32が基材部36のほぼ全面を覆うように形成されており、この電力供給用導体層32は更に、分割領域部12Aに対応する第1系統電力供給用導体層32A(図中、格子ハッチング)と分割領域部12Bに対応する第2系統電力供給用導体層32B(図中、斜めハッチング)とに絶縁部材330(図中、太実線)によって平面的に区画されている。絶縁部材330は、実施例1で説明した絶縁部材33と同様の機能を有する。
【0113】
本実施例における回路基板31Aでは、各発光装置8における分割領域部12Aと分割領域部12Bとを区画する間仕切り11が、回路基板31A(基材部36)の径方向に沿
うように配置されている点で、実施例1と相違する。このように、本実施例では、各発光装置8の分割領域部12A、12B同士を区画する間仕切り11が円周方向ではなく、径方向に沿って配置される関係上、第1系統電力供給用導体層32Aおよび第2系統電力供給用導体層32Bを同心円状の配置とはしていない。回路基板31Aにおける各発光装置8の配置状態は、実施例1に係る回路基板31での配置状態を基準にしてちょうど90°回転させた状態に等価であるため、各発光装置8の近傍における絶縁部材330の形状は図示のように概ね卍形をなしている。
【0114】
また、本実施例では、第1系統電力供給用導体層32Aおよび第2系統電力供給用導体層32Bをより整然と区画するために、間仕切り11に対する分割領域部12Aと分割領域部12Bとの相対位置関係を、各発光装置8で統一するようにした。図19に示す例では、各発光装置8を中心O側から眺めた場合に、間仕切り11を境にして時計回り進行方向側に分割領域部12Bを配置し、逆側に分割領域部12Aを配置している。但し、これら分割領域部12A、12Bの配置に関する位置関係を逆にしても良い。
【0115】
以上のように、実施例2における発光モジュール30の回路基板31Aにおいては、各発光装置8の分割領域部12Aと分割領域部12Bの境界部(すなわち、間仕切り11)が、回路基板31Aの径方向に沿って形成される。このような配置パターンによっても、各発光装置8の分割領域部12Aと分割領域部12Bとからの発光がムラを抑えて合成されやすくなるため、双方の領域から発する光の混色状態が良好となる。また、本実施例においても、電力供給用導体層32が面状に形成されているため、電力供給用導体層32が各発光装置8から奪った熱を、回路基板31Aの面内において分散させつつ効率的に発光装置8から熱を奪うという効果は、実施例1と同様に奏することができる。
【0116】
以下、本実施例における回路基板31Aのバリエーションについて説明する。図20乃至図22は、実施例2の第1乃至第3の変形例に係る回路基板31Aに各発光装置8が搭載された状態を示す図である。図20及び図21は、概略、回路基板31Aに対して搭載される発光装置8の数のみが図19と相違する。図20では5個(5台)の発光装置8が回路基板31Aに搭載されている。この場合、隣接する発光装置8間の所定配置角θは中心Oの一周360°を発光装置8の台数である5で除した72°となるように、各発光装置8が中心Oを中心点として同一円周上に等角配置されている。その他に関しては、図19に示す構成例と概ね同様であり、図19を参照して説明したものと同等の効果を奏することができる。
【0117】
また、図21に示す構成例では6個(6台)の発光装置8が回路基板31Aに搭載されている。この場合、隣接する発光装置8間の所定配置角θは中心Oの一周360°を発光装置8の台数である6で除した60°となるように、各発光装置8が中心Oを中心点として同一円周上に等角配置されている。その他に関しては、図19や図20に示す構成例と概ね同様であり、これらと同等の効果を奏することができる。
【0118】
図22は、本実施例の回路基板31Aにおいて、図14に対応する構成図であり、各発光装置8のリフレクタの内部は3つの分割領域部12A〜12Cに分割されている。そのため、電力供給用導体層32に関しても、分割領域部12A〜12Cに各々対応する第1系統電力供給用導体層32A(図中、格子ハッチング)、第2系統電力供給用導体層32B(図中、斜めハッチング)、第3系統電力供給用導体層32C(図中、ドットハッチング)に、絶縁部材330によって区画されている。
【0119】
各分割領域部12A〜12Cを区画する間仕切り11は、図19乃至図21と同様、回路基板31Aの径方向に沿って配置されることで、各分割領域部12A〜12Cが径方向に沿って形成されている。従って、図19乃至図21に示した他の構成例と同様に、発光
装置8の各分割領域部からの光が合成されやすくなり、これらを良好に混色することができる。また、各発光装置8を効率的に冷却できるという効果に関しても、上述までの構成例と同様に奏することができる。
【0120】
以上述べた実施の形態は本発明を説明するための一例であって、本発明の本旨を逸脱しない範囲内において上記の実施形態には種々の変更を加え得る。また、本実施形態に発光モジュール30の発光装置8は白色光を出力するものを例示的に採用しているが、他の色を出力する発光装置に本発明を適用しても勿論構わない。また、本発明に係る半導体発光装置を搭載するための回路基板、発光モジュール、及び照明装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。
【符号の説明】
【0121】
1・・・・パッケージ
2・・・・ベース
3、3A、3B・・・・半導体発光素子
8・・・・半導体発光装置
10・・・・リフレクタ
11・・・・間仕切り
12、12A、12B・・・・分割領域部
13・・・・開口部
13A、13B・・・・分割開口部
20、20A、20B・・・・配線
20C、20D・・・・対配線
21A、21B・・・・電極
30・・・・発光モジュール
31・・・・回路基板
32、32A、32B・・・・電力供給用導体層
33・・・・絶縁部材
36・・・・基材部
37・・・・電気絶縁保護塗膜層
50・・・・放熱用ハウジング部材
51・・・・放熱フィン部
52・・・・ハウジング部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともパッケージ、半導体発光素子、及び蛍光体を備える半導体発光装置を搭載するための回路基板であって、
前記半導体発光装置におけるパッケージは、該半導体発光装置の出射方向に開口する開口部と、該パッケージ内部を2以上に分割して画定され且つ該開口部の一部である分割開口部において開口する、少なくとも2以上の分割領域部を有し、
前記分割領域部の各々は、
一又は複数の前記半導体発光素子と、
前記蛍光体と各分割領域部を封止する透光性材料とを含む蛍光部と、を有し、
前記複数の分割領域部のうち少なくとも一の分割領域部と他の分割領域部において、該蛍光部から出力される光のスペクトルが互いに異なり、
前記半導体発光装置が搭載される、熱伝導材料を用いて形成された基材部と、
前記複数の分割領域部のうち少なくとも一の分割領域部と他の分割領域部を別系統として前記半導体発光素子の各々に電力を供給する電力供給部と、
を有し、
前記電力供給部は、熱伝導材料を用いて且つ前記基材部を覆うように面状に形成される、
半導体発光装置を搭載するための回路基板。
【請求項2】
別系統の前記半導体発光素子に電力を供給する電力供給部同士を互いに絶縁するための絶縁部材が前記基材部に設けられており、
前記電力供給部はその系統ごとに、前記絶縁部材によって前記基材部の面内方向に区画されている、
請求項1に記載の半導体発光装置を搭載するための回路基板。
【請求項3】
前記基材部には、前記半導体発光装置が搭載されていない方の非搭載面と熱的に接するように放熱用ハウジング部材が取り付けられ、前記電力供給部を介して前記基材部に伝えられる前記半導体発光装置からの熱が該放熱用ハウジング部材から大気中に放熱される、請求項1又は2に記載の半導体発光装置を搭載するための回路基板。
【請求項4】
少なくともパッケージ、半導体発光素子、及び蛍光体を備える半導体発光装置と、該半導体発光装置を搭載するための回路基板と、を含む発光モジュールであって、
前記半導体発光装置におけるパッケージは、該半導体発光装置の出射方向に開口する開口部と、該パッケージ内部を2以上に分割して画定され且つ該開口部の一部である分割開口部において開口する、少なくとも2以上の分割領域部を有し、
前記分割領域部の各々は、
一又は複数の前記半導体発光素子と、
前記蛍光体と各分割領域部を封止する透光性材料とを含む蛍光部と、を有し、
前記複数の分割領域部のうち少なくとも一の分割領域部と他の分割領域部において、該蛍光部から出力される光のスペクトルが互いに異なり、
前記回路基板は、
前記半導体発光装置が搭載される、熱伝導材料を用いて形成された基材部と、
前記複数の分割領域部のうち少なくとも一の分割領域部と他の分割領域部を別系統として前記半導体発光素子の各々に電力を供給する電力供給部と、
を有し、
前記電力供給部は、熱伝導材料を用いて且つ前記基材部を覆うように面状に形成される、
発光モジュール。
【請求項5】
前記回路基板において、別系統の前記半導体発光素子に電力を供給する電力供給部同士を互いに絶縁するための絶縁部材が前記基材部に設けられており、
前記電力供給部はその系統ごとに、前記絶縁部材によって前記基材部の面内方向に区画されている、
請求項4に記載の発光モジュール。
【請求項6】
前記回路基板において、
前記基材部には複数の前記半導体発光装置が搭載され、
前記絶縁部材によって系統ごとに区画された前記電力供給部は、前記半導体発光装置の各々において互いに対応する前記分割領域部に含まれる前記半導体発光素子同士を直列に接続する、
請求項4又は5に記載の発光モジュール。
【請求項7】
前記回路基板における前記基材部に搭載された前記複数の半導体発光装置の各々は、環状に且つ各半導体発光装置の間隔が等角に配置され、
一の半導体発光装置を基準としたときに、前記パッケージ内の前記一の分割領域部と前記他の分割領域部との相対位置関係が、隣接する該半導体発光装置に対して、前記開口部の開口面内での回転方向において、360°を前記基材部に搭載される該半導体発光装置の数で除して定義される所定角度ずつ、ずれた状態で配置されており、
前記電力供給部はその系統ごとに、前記基材部面内における所定の基準点を中心に同心円状に区画されている、
請求項6に記載の発光モジュール。
【請求項8】
請求項4から7の何れか1項に記載の発光モジュールと、
該発光モジュールの前記回路基板に対して、前記基材部における該半導体発光装置が搭載されていない方の非搭載面と熱的に接するように取り付けられる放熱用ハウジング部材と、
を備える照明装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−175950(P2011−175950A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111742(P2010−111742)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】