説明

収穫機

【課題】作物搬送手段の作業速度(車速)や圃場の作物の性状等に適応した速度で刈刃装置を作動でき、刈刃装置の切断性能を向上できるようにした収穫機を提供するものである。
【解決手段】エンジン14によって作動する走行部を備えた走行機体と、圃場に植立した作物の株元を切断する刈刃装置と、刈刃装置によって株元が切断された前記作物を搬送する作物搬送手段とを備えてなる収穫機において、刈刃装置を作動する刈刃駆動用電動モータ91と、作物搬送手段への入力回転数を検出する回転センサとを備え、回転センサの検出結果に基づき刈刃駆動用電動モータ91の回転数を制御中、切断性能を維持可能な所定の速度で刈刃装置を作動させるように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に植立した穀稈を刈取って穀粒を収集するコンバイン、又は飼料用穀稈や牧草等を刈取って飼料として収集する飼料収穫機等の収穫機に係り、より詳しくは、穀稈又は飼料用穀稈や牧草等の作物の株元を切断するための刈刃装置を電動モータにて作動するようにした収穫機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、収穫機としてのコンバインは、圃場に植立した未刈り穀稈の株元を刈刃装置によって切断し、穀稈搬送装置によって脱穀装置にその穀稈を搬送し、脱穀装置によってその穀稈を脱穀して、穀粒を収集するように構成している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この場合、従来の一般的なコンバインにおいては、特許文献1に示されるように、エンジンからの駆動力によって刈取装置が作動するように構成されている。また、電動モータによって刈刃装置を駆動する構成(例えば、特許文献2参照)や、電動モータによって穀稈搬送装置(スクレーパ)を駆動する構成(例えば、特許文献3参照)も公知である。
【特許文献1】特開2004−97038号公報
【特許文献2】特開昭63−258510号公報
【特許文献3】特開平7−177813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術は、特許文献1に示されるように、エンジンによって刈刃装置を作動させた場合、車速に同期させて刈刃装置及び穀稈搬送装置を作動できるが、穀稈搬送装置に穀稈が詰らないように、穀稈の搬送に適した回転速度で穀稈搬送装置を作動することによって、不適正な回転速度で刈刃装置が作動する等の問題がある。例えば、車速が極めて低速のときに、刈刃装置の回転が遅くなりすぎて、刈刃装置の切断性能が低下する等の問題がある。また、車速が極めて高速のときに、刈刃装置の回転が早くなりすぎて、刈刃装置が過負荷で作動する等の問題がある。
【0005】
また、特許文献2に示されるように、オペレータが操作する操作具によって刈刃装置の回転速度を調節する場合、オペレータが穀稈の切断状況を目視しながら操作具を操作して、刈刃装置の回転速度を変更できるが、車速に同期した車速同調速度で刈刃装置が作動しないから、前記刈刃装置によって切断した穀稈の搬送姿勢が乱れたり、穀稈を刈り残す等の問題がある。
【0006】
本発明の目的は、作物搬送手段(穀稈搬送装置)の作業速度(車速)や圃場の作物の性状等に適応した速度で刈刃装置を作動でき、刈刃装置の切断性能を向上できるようにした収穫機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明の収穫機は、エンジンによって作動する走行部を備えた走行機体と、圃場に植立した作物の株元を切断する刈刃装置と、前記刈刃装置によって株元が切断された前記作物を搬送する作物搬送手段とを備えてなる収穫機において、前記刈刃装置を作動する刈刃駆動用電動モータと、前記作物搬送手段への入力回転数を検出する回転センサとを備え、前記回転センサの検出結果に基づき前記刈刃駆動用電動モータの回転数を制御中、切断性能を維持可能な所定の速度で前記刈刃装置を作動させるように構成したものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の収穫機において、前記刈刃駆動用電動モータの最低回転数を設定する最低回転数設定器を備え、前記最低回転数設定器によって設定された回転数以上の速度で前記刈刃装置を作動するように構成したものである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の収穫機において、前記刈刃駆動用電動モータの最高回転数を設定する最高回転数設定器を備え、前記最高回転数設定器によって設定された回転数以下の速度で前記刈刃装置を作動するように構成したものである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の収穫機において、オペレータの手動操作によって前記刈刃駆動用電動モータの回転数を変更可能な刈刃速度設定器を備え、前記回転センサの検出結果と前記刈刃速度設定器の設定値とに基づき、前記刈刃駆動用電動モータを制御するように構成したものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、エンジンによって作動する走行部を備えた走行機体と、圃場に植立した作物の株元を切断する刈刃装置と、前記刈刃装置によって株元が切断された前記作物を搬送する作物搬送手段とを備えてなる収穫機において、前記刈刃装置を作動する刈刃駆動用電動モータと、前記作物搬送手段への入力回転数を検出する回転センサとを備え、前記回転センサの検出結果に基づき前記刈刃駆動用電動モータの回転数を制御中、切断性能を維持可能な所定の速度で前記刈刃装置を作動させるように構成したものであるから、前記作物搬送手段の作業速度(車速)等に適応した速度で前記刈刃装置を作動でき、圃場に植立した作物の株元の切断に適した速度に前記刈刃装置の速度を保つことができ、前記刈刃装置の切断性能を向上できるものである。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、前記刈刃駆動用電動モータの最低回転数を設定する最低回転数設定器を備え、前記最低回転数設定器によって設定された回転数以上の速度で前記刈刃装置を作動するように構成したものであるから、前記作物搬送手段の作業速度(車速)等が極めて微速のときにも、前記刈刃装置の作動速度が遅くなりすぎることがなく、前記刈刃装置の切断性能の低下を防止でき、作物の刈残し等を低減できるものである。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、前記刈刃駆動用電動モータの最高回転数を設定する最高回転数設定器を備え、前記最高回転数設定器によって設定された回転数以下の速度で前記刈刃装置を作動するように構成したものであるから、前記作物搬送手段の作業速度(車速)が極めて高速のときにも、前記刈刃装置の作動速度が速くなりすぎることがなく、前記刈刃装置(前記刈刃駆動用電動モータ)が過負荷の状態で作動するのを防止でき、作物の刈取り姿勢の乱れ又は前記刈刃装置の損傷等を低減できるものである。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、オペレータの手動操作によって前記刈刃駆動用電動モータの回転数を変更可能な刈刃速度設定器を備え、前記回転センサの検出結果と前記刈刃速度設定器の設定値とに基づき、前記刈刃駆動用電動モータを制御するように構成したものであるから、例えば圃場に倒伏している作物の刈取り作業等の特別な条件下の刈取り作業であっても、それに適応した速度で前記刈刃装置を作動でき、前記刈刃装置の切断性能を簡単に維持できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1はコンバインの左側面図、図2はコンバインの平面図、図3は刈刃装置及び穀稈搬送装置の側面説明図、図4は刈刃装置及び穀稈搬送装置の平面説明図、図5はコンバインの駆動系統図、図6はミッションケース及びカウンタケース等の駆動系統図、図7は刈刃装置の制御手段の機能ブロック図である。図1及び図2を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の進行方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく進行方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0016】
本実施形態のコンバインは、走行部としての左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈り取りながら取り込む6条刈り用の刈取装置3が、単動式の昇降用油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、該脱穀装置5から取出された穀粒を貯留する穀粒タンク7とが横並び状に搭載されている。本実施形態では、脱穀装置5が走行機体1の進行方向左側に、穀粒タンク7が走行機体1の進行方向右側に配置されている。走行機体1の後部に旋回可能な排出オーガ8が設けられ、穀粒タンク7の内部の穀粒が、排出オーガ8の籾投げ口9からトラックの荷台またはコンテナ等に排出されるように構成されている。刈取装置3の右側方で、穀粒タンク7の前側方には、運転キャビン10が設けられている。
【0017】
運転キャビン10内には、操縦ハンドル11と、運転座席12と、主変速レバー42と、副変速レバー43と、脱穀クラッチ及び刈取クラッチを入り切りする作業クラッチレバー44とを配置している。なお、図示しないが、運転キャビン10には、オペレータが搭乗するステップと、操縦ハンドル11を設けたハンドルコラムと、前記各レバー42,43,44等を設けたレバーコラムとが配置されている。運転座席12の下方の走行機体1には、動力源としてのエンジン14が配置されている。
【0018】
図1乃至図4に示されるように、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、走行クローラ2にエンジン14の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24と、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持し、中間ローラ25によって走行クローラ2の非接地側を支持することになる。
【0019】
刈取装置3の刈取回動支点軸4aに連結した刈取フレーム221の下方には、圃場に植立した未刈り穀稈(作物)の株元を切断するバリカン式の刈刃装置222が設けられている。刈取フレーム221の前方には、圃場に植立した未刈り穀稈を引起す6条分の穀稈引起装置223が配置されている。穀稈引起装置223とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間には、刈刃装置222によって刈取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置224が配置されている。なお、穀稈引起装置223の下部前方には、圃場に植立した未刈り穀稈を分草する6条分の分草体225が突設されている。エンジン14にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3によって圃場に植立した未刈り穀稈を連続的に刈取ることになる。
【0020】
次に、図3及び図4を参照して刈取装置3の構造を説明する。図3及び図4に示すように、刈取フレーム221は、走行機体1の前端側の軸受台15に回動可能に支持した刈取入力ケース16と、刈取入力ケース16から前方に向けて延長する縦伝動ケース18と、縦伝動ケース18の前端側で左右方向に向けて延長する横伝動ケース19と、横伝動ケース19に連結する6条分の分草フレーム20とによって形成されている。分草フレーム20の前端側に支持する6条分の分草体225とが配置されている。機体左右方向に水平に横架した刈取入力ケース16内には、エンジン14からの動力が伝達される刈取り穀稈用の刈取り入力軸17を組込んでいる。
【0021】
穀稈引起装置223は、分草体225によって分草された未刈穀稈を起立させる複数の引起タイン28を有する6条分の引起ケース29を有する。穀稈搬送装置224は、右側2条分の引起ケース29から導入される右側2条分の穀稈の株元側を掻込む左右の右スターホイル30R及び左右の右掻込ベルト31Rと、左側2つの引起ケース29から導入される左側2条分の穀稈の株元側を掻込む左右の左スターホイル30L及び左右の左掻込ベルト31Lと、中央2つの引起ケース29から導入される中央2条分の穀稈の株元側を掻込む左右の中央スターホイル30C及び左右の中央掻込ベルト31Cとを有する。
【0022】
刈刃装置222は、右スターホイル30R及び左右の右掻込ベルト31R、左スターホイル30L及び左右の左掻込ベルト31L、中央スターホイル30C及び左右の中央掻込ベルト31Cによって掻込まれた6条分の穀稈の株元を切断するバリカン形の左右の刈刃32を有する。
【0023】
また、穀稈搬送装置224は、右側2条分のスターホイル30R及び掻込ベルト31Rによって掻込まれた右側2条分の刈取穀稈の株元側を後方に搬送する右株元搬送チェン33Rと、左側2条分のスターホイル30L及び掻込ベルト31Lによって掻込まれた左側2条分の刈取穀稈の株元側を右株元搬送チェン33Rの搬送終端部に合流させる左株元搬送チェン33Lと、中央2条分のスターホイル30C及び掻込ベルト31Cによって掻込まれた中央2条分の刈取穀稈の株元側を後方に搬送して右株元搬送チェン33Rの搬送途中に合流させる中央株元搬送チェン33Cとを有する。左右及び中央の株元搬送チェン33R,33L,33Cによって、右株元搬送チェン33Rの搬送終端部に、6条分の刈取穀稈の株元側を合流させることになる。
【0024】
穀稈搬送装置224は、右株元搬送チェン33Rから6条分の刈取穀稈の株元側を受継ぐ縦搬送チェン34と、縦搬送チェン34の搬送終端部からフィードチェン6の搬送始端部に6条分の刈取穀稈の株元側を搬送する補助株元搬送チェン35,36とを有する。縦搬送チェン34から、補助株元搬送チェン35,36を介して、フィードチェン6の搬送始端部に、6条分の刈取穀稈の株元側を搬送することになる。
【0025】
穀稈搬送装置224は、右株元搬送チェン33Rにて搬送される右側2条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する右穂先搬送タイン37Rと、左株元搬送チェン33Lにて搬送される左側2条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する左穂先搬送タイン37Lと、中央株元搬送チェン33Cにて搬送される中央2条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する中央穂先搬送タイン37Cと、縦搬送チェン34にて搬送される6条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する後穂先搬送タイン38とを有する。脱穀装置5の扱胴226室内に、刈取装置3で刈取った6条分の刈取穀稈の穂先側を搬送することになる。
【0026】
次に、図5を参照して引起し駆動構造を説明する。図5に示すように、刈取り入力軸17に、後述する縦伝動軸40及び横伝動軸41を介して引起横伝動軸48を連結する。引起横伝動軸48は、6条分の各引起ケース29の引起タイン駆動軸45にそれぞれ連結している。分草体225の後方で分草フレーム20の上方に引起ケース29が立設され、引起ケース29の上端側の背面から引起タイン駆動軸45を突出している。引起タイン駆動軸45及び引起横伝動軸48を介して、複数の引起タイン28を設けた引起タインチェン28aが駆動されることになる。
【0027】
図5に示すように、左右の刈刃32を駆動する刈刃駆動用電動モータ91を備え、刈刃駆動用電動モータ91に左右のクランク軸52a,52bを介して左右の刈刃32を連結する。刈刃駆動用電動モータ91によって左右の刈刃32を同期させて駆動するように構成している。なお、刈刃装置222は、6条分の刈幅の中央部で分割して左右の刈刃32を形成し、左右の刈刃32を相反する方向に往復移動させ、往復移動によって発生する左右の刈刃32の振動(慣性力)を相殺可能に構成している。なお、1つの刈刃駆動用電動モータ91によって左右の刈刃32を駆動しているが、左右の刈刃32をそれぞれ駆動する左右の刈刃駆動用電動モータ91を設け、左右の刈刃駆動用電動モータ91を同期して作動させて、左右の刈刃駆動用電動モータ91によって左右の刈刃32をそれぞれ駆動してもよい。
【0028】
図5に示すように、刈取り入力軸17に縦伝動ケース18内の縦伝動軸40の一端側を連結する。縦伝動軸40の他端側に横伝動ケース19内の横伝動軸41の一端側を連結する。縦伝動軸40及び横伝動軸41から穀稈搬送装置224の各駆動部に刈取り入力軸17の回転力を伝えることになる。
【0029】
即ち、縦伝動軸40には、後搬送駆動軸54と、右搬送駆動軸62とを連結している。縦伝動軸40及び後搬送駆動軸54を介して、補助搬送チェン35,36及び後穂先搬送タイン38を駆動するように構成している。右搬送駆動軸62を介して、右株元搬送チェン33R及び右穂先搬送タイン37Rと、右スターホイル30R及び右掻込ベルト31Rとを駆動するように構成している。また、右搬送駆動軸62に縦搬送伝動軸63を連結し、右搬送駆動軸62及び縦搬送伝動軸63を介して、縦搬送チェン34を駆動するように構成している。
【0030】
図5に示すように、横伝動軸41の左端側に左搬送駆動軸69を連結している。左搬送駆動軸69を介して、左株元搬送チェン33L及び左穂先搬送タイン37Lと、左スターホイル30L及び左掻込ベルト31Lとを駆動するように構成している。また、横伝動軸41に中央搬送駆動軸75を連結し、中央搬送駆動軸75を介して、中央株元搬送チェン33C及び中央穂先搬送タイン37Cと、中央スターホイル30C及び中央掻込ベルト31Cとを駆動するように構成している。
【0031】
次に、図1及び図2を参照して、脱穀装置5の構造を説明する。図1及び図2に示されるように、脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴226と、扱胴226の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別盤227及び唐箕ファン228と、扱胴226の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴229と、揺動選別盤227の後部の排塵を排出する排塵ファン230とが備えられている。なお、扱胴226の回転軸芯線は、フィードチェン6による穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の進行方向)に沿って延びている。刈取装置3から穀稈搬送装置224によって搬送された穀稈の株元側は、フィードチェン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、この穀稈の穂先側が脱穀装置5の扱室内に搬入されて扱胴226にて脱穀されることになる。
【0032】
揺動選別盤227の下方側には、揺動選別盤227にて選別された穀粒(一番物)を取出す一番コンベヤ231と、枝梗付き穀粒等の二番物を取出す二番コンベヤ232とが設けられている。本実施形態の両コンベヤ231,232は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ231、二番コンベヤ232の順で、側面視において走行クローラ2の後部上方の走行機体1の上面側に横設されている。
【0033】
揺動選別盤227は、扱胴226の下方に張設された受網237から漏下した脱穀物が、フィードパン238及びチャフシーブ239によって搖動選別(比重選別)されるように構成している。揺動選別盤227から落下した穀粒は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン228からの選別風によって除去され、一番コンベヤ231に落下することになる。一番コンベヤ231のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる揚穀コンベヤ233が連通接続されている。一番コンベヤ231から取出された穀粒は、揚穀コンベヤ233を介して穀粒タンク7に搬入され、穀粒タンク7に収集されることになる。なお、穀粒タンク7の後面の傾斜に沿わせて、揚穀コンベヤ233の上端側が後方に傾斜する後傾姿勢で、穀粒タンク7の後方に揚穀コンベヤ233が立設されている。
【0034】
また、揺動選別盤227は、搖動選別(比重選別)によってチャフシーブ239から枝梗付き穀粒等の二番物を二番コンベヤ232に落下させるように構成している。チャフシーブ239の下方に落下する二番物を風選する選別ファン241を備える。チャフシーブ239から落下した二番物は、その穀粒中の粉塵及び藁屑が選別ファン241からの選別風によって除去され、二番コンベヤ232に落下することになる。二番コンベヤ232のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁から外向きに突出した終端部は、揚穀コンベヤ233と交差して前後方向に延びる還元コンベヤ236を介して、フィードパン238の上面側に連通接続され、二番物をフィードパン238の上面側に戻して再選別するように構成している。
【0035】
一方、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン234が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン234に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方側に設けた排藁カッタ235にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出されることになる。
【0036】
次に、図5及び図6を参照しながら、刈取装置3、脱穀装置5、フィードチェン6、排藁チェン234、排藁カッタ235等の駆動構造について説明する。図5及び図6に示されるように、エンジン14の前側及び後側にその出力軸70を突出する。エンジン14の前側の出力軸70に自在継手83を介してミッションケース71の走行入力軸84を連結し、エンジン14の回転駆動力が、前側の出力軸70からミッションケース71に伝達されて変速された後、左右の車軸72を介して左右の走行クローラ2に伝達され、左右の走行クローラ2がエンジン14の回転力によって駆動されるように構成している。
【0037】
図5に示されるように、エンジン14を冷却するためのラジエータ用の冷却ファン73と、上述した電動モータ91等を作動させるための電源を供給する発電機89とを備える。エンジン14の後側の出力軸70に、冷却ファン73を軸支したファン駆動軸88が連結されている。ファン駆動軸88には、発電機89の入力軸が連結されている。エンジン14の回転駆動力によって、冷却ファン73及び発電機89が駆動されるように構成している。また、エンジン14の後側の出力軸70に排出オーガ駆動軸76を連結し、エンジン21からの回転駆動力によって排出オーガ駆動軸76を介して排出オーガ8が駆動され、穀粒タンク7内の穀粒がコンテナ等に排出されるように構成している。
【0038】
また、扱胴226及び処理胴230にエンジン14からの回転駆動力を伝える脱穀駆動軸77を備える。エンジン14の後側の出力軸70には、テンションローラ形脱穀クラッチ78及び脱穀駆動ベルト79を介して、脱穀駆動軸77が連結されている。脱穀駆動軸77には、扱胴226を軸支した扱胴軸80と、処理胴230を軸支した処理胴軸81とが連結されている。エンジン14の略一定回転数の回転力によって、扱胴226及び処理胴230が略一定回転数で回転するように構成している。また、脱穀駆動軸77に選別入力軸82が連結されている。エンジン14の略一定回転数の回転力によって、選別入力軸82を介して、揺動選別盤227、唐箕ファン228、一番コンベヤ231、二番コンベヤ232、選別ファン241、排塵ファン230が略一定回転数で回転するように構成している。
【0039】
図6に示す如く、ミッションケース71内に、1対の走行油圧ポンプ及び走行油圧モータを有する走行主変速用の油圧式無段変速機構96と、1対の旋回油圧ポンプ及び旋回油圧モータを有する旋回用の油圧式無段変速機構97とを設けている。走行主変速用の油圧式無段変速機構96の走行油圧ポンプと、旋回用の油圧式無段変速機構97の旋回油圧ポンプとは、ミッションケース71の走行入力軸84に連結させてそれぞれ駆動するように構成している。ミッションケース71にPTO軸98を配置する。PTO軸98は、走行主変速用の油圧式無段変速機構96の走行油圧モータによって駆動される。ミッションケース71からこの左外側にPTO軸98の一端側を突設させている。
【0040】
図6に示す如く、エンジン14の左側方で、脱穀装置5の前側方の走行機体1上に、カウンタギヤケース99を設けている。カウンタギヤケース99には、上述した脱穀駆動軸77と、脱穀駆動軸77に連結する選別駆動軸82と、PTO軸98に連結する車速同調軸100と、選別駆動軸82又は車速同調軸100に連結する刈取伝動軸101と、刈取り入力軸17に連結する刈取駆動軸102と、フィードチェン6を駆動するフィードチェン駆動軸103とを配置している。
【0041】
図6に示す如く、カウンタギヤケース99内の車速同調軸100上に、車速同調軸100の車速同調回転力を伝える一方向クラッチ105を設ける。車速同調軸100に、刈取変速機構108と一方向クラッチ105とを介して、刈取伝動軸101を連結する。刈取変速機構108は、低速側変速ギヤ106と高速側変速ギヤ107とを有する。低速及び中立(零回転)及び高速の各刈取変速を行う刈取変速操作手段(図示省略)によって低速側変速ギヤ106又は高速側変速ギヤ107を刈取伝動軸101に択一的に係合させ、車速同調軸100から刈取変速機構108を介して刈取伝動軸101に刈取変速出力を伝えるように構成している。
【0042】
図6に示す如く、選別駆動軸82に一定回転機構111を介して刈取伝動軸101を連結する。一定回転機構111は、低速側一定回転ギヤ109と高速側一定回転ギヤ110とを有する。刈取伝動軸101にトルクリミッタ104を介して刈取駆動軸102を連結する。刈取作業の維持に必要な一定回転数の回転出力が低速側一定回転ギヤ109を介して選別駆動軸82から刈取伝動軸101に伝達されることになる。したがって、走行機体1の移動速度に関係なく、低速側一定回転ギヤ109からの一定回転数で刈取り入力軸17を作動させて刈取作業を維持でき、圃場の枕地での方向転換作業性等を向上できる。
【0043】
また、車速同調軸100及び高速側変速ギヤ107からの車速同調出力の最高速よりも早い一定回転数の回転出力が高速側一定回転ギヤ110を介して選別駆動軸82から刈取伝動軸101に伝達されることになる。したがって、車速同調出力の最高速よりも早い高速側一定回転ギヤ110からの一定回転数で刈取り入力軸17を作動でき、倒伏穀稈の刈取り作業性等を向上できる。なお、トルクリミッタ104によって設定したトルク以下の回転力で刈取り入力軸17が作動して、刈刃32等が損傷するのを防止している。
【0044】
カウンタギヤケース99には、選別駆動軸82にフィードチェン駆動軸103を連結する遊星ギヤ形変速構造のフィードチェン同調機構112が設けられている。選別駆動軸82の回転出力が、フィードチェン同調機構112によって刈取伝動軸101の回転数に比例して変速されて、フィードチェン駆動軸103に伝達されることになる。即ち、フィードチェン同調機構112を介してフィードチェン6を作動することによって、穀稈の搬送に必要な最低回転数(低速側一定回転ギヤ109からの一定回転数)を確保し乍ら、フィードチェン6の穀稈搬送速度を車速と同調させて変更可能に構成している。
【0045】
次に、本実施形態の刈刃速度制御について説明する。図7は、コンバインの収穫制御手段の機能ブロック図であり、エンジン14の回転数等を制御するエンジンコントローラ290と、チャフシーブ239の穀粒の漏下量(漏下間隔)等を制御する脱穀コントローラ291と、刈取変速機構108又は一定回転機構111等を制御する走行コントローラ292と、排出オーガ8の移動(穀粒の排出)等を制御するオーガコントローラ293と、刈刃駆動用電動モータ91を制御するモータコントローラ294とを備える。各コントローラ290,291,292,293,294は、制御プログラムを記憶したROMと各種データを記憶したRAMとを有するマイクロコンピュータ等によって構成され、CAN通信接続されている。
【0046】
図7に示す如く、モータコントローラ294の入力側には、脱穀装置5の駆動等を検出する作業スイッチ273と、穀稈引起装置223の穀稈(又は穀稈搬送装置224の穀稈)を検出する作物センサ287と、刈刃駆動用電動モータ91の出力回転数(刈刃32の作動速度)を無段階に調節する刈刃速度設定器262と、刈刃駆動用電動モータ91の最低出力回転数(刈刃32の最低作動速度)を設定する低速回転設定器266と、刈刃駆動用電動モータ91の最高出力回転数(刈刃32の最高作動速度)を設定する高速回転設定器267とを接続している。
【0047】
図7に示す如く、モータコントローラ294の出力側には、刈刃駆動用電動モータ91を作動する左右の刈刃ドライバ302と、刈刃駆動用電動モータ91の出力回転数を検出する刈刃回転センサ312とを接続している。また、走行コントローラ292には、刈取り入力軸17の回転数を検出する1軸センサ288が接続されている。エンジン14によって駆動する発電機89に、刈刃駆動用電動モータ91及び刈刃ドライバ302を接続させ、発電機89を電源として、刈刃駆動用電動モータ91を作動可能に構成している。
【0048】
したがって、一定回転数で常に駆動して脱穀・選別性能を維持する必要がある脱穀装置5を備えた構造、換言すると、エンジン14からの一定回転数の出力が脱穀装置5に伝達される伝動構造において、最高出力状態で略一定回転数を維持するようにエンジン14が運転されるから、そのエンジン14からの出力によって発電機89を最適な回転数で駆動できる。即ち、刈刃駆動用電動モータ91の作動に必要な発電機89の適正出力が確実に維持されることによって、圃場に植立した穀稈の株元の切断に適した一定回転数で刈刃駆動用電動モータ91を作動できる。
【0049】
次に、図8は刈刃速度制御のフローチャートである。図8を参照して、刈刃駆動用電動モータ91を作動する刈取作業を説明する。作物センサ287がオンで(S1yes)、作業スイッチ273がオンのときに(S2yes)、1軸センサ288の検出値が読み込まれる(S3)。刈刃速度設定器262の設定値が読み込まれ(S4)、1軸センサ288の検出値と、刈刃速度設定器262の設定値とから刈刃32の作動速度が演算される(S5)。したがって、オペレータが刈刃速度設定器262を手動操作して、刈刃駆動用電動モータ91の回転数を変更できる。例えば圃場に倒伏している穀稈の刈取り作業等の特別な条件下の刈取り作業であっても、それに適応した速度で刈刃32を作動できる。
【0050】
また、刈刃回転センサ312の検出値を読み込み(S6)、ステップ5で演算された刈刃32の作動速度と、刈刃回転センサ312の検出値(実際の刈刃32の作動速度)とを比較して、刈刃32の作動速度を増速作動すべきか(S7)、刈刃32の作動速度を減速作動すべきか(S12)を判断する。走行機体1の移動速度が加速されることによって、1軸センサ288によって検出される刈取り入力軸17の回転数が増大する。その場合、刈刃回転センサ312によって検出される刈刃駆動用電動モータ91の出力回転数が刈取り入力軸17の回転数よりも低くなる。刈刃32の作動速度を増速作動すべきと判断されたときに(S7yes)、刈刃32の作動速度を増速作動する増速制御が実行される(S8)。その結果、走行機体1の移動速度に比例して刈刃32の作動速度が加速され、車速と同調した速度で刈刃32を作動でき、走行機体1の移動速度に比べて刈刃32の作動速度が遅くなりすぎることがなく、刈刃32の切断性能の低下を防止でき、圃場に植立した穀稈の刈残し等を低減できる。
【0051】
上述の増速制御(S8)によって刈刃32の作動速度が増速された場合、高速回転設定器267の刈刃32の最高作動速度設定値を読み込む(S9)。刈刃32の作動速度が高速回転設定器267の最高作動速度設定値と一致して、刈刃32が高速作動していると判断されたときに(S10yes)、刈刃32の一定回転制御が実行される(S11)。走行機体1の移動速度(車速)がさらに増速されても、刈刃32の一定回転制御(S11)によって、高速回転設定器267の設定値に刈刃32の作動速度が維持される。即ち、最高回転数設定器267によって設定された回転数以下の速度で刈刃装置222を作動するように構成したものであるから、穀稈搬送装置224の作業速度(車速)が極めて高速のときにも、刈刃装置222の作動速度が速くなりすぎることがなく、刈刃32(刈刃駆動用電動モータ91)が過負荷の状態で作動するのを防止でき、穀稈の刈取り姿勢の乱れ又は刈刃装置222の損傷等を低減できる。
【0052】
図9(刈刃駆動用電動モータ91によって駆動される刈刃の回転数Rと車速Vとの関係)に示されるように、高速側一定回転ギヤ110からの一定回転数で刈取り入力軸17を作動させる車速V2かそれ以上に車速Vが増速されて、高速側一定回転ギヤ110からの一定回転数(高速側一定回転速度)で穀稈搬送装置224が作動し、穀稈搬送装置224の作業速度が極めて高速になったときに、刈刃32の回転数R(作動速度)が高速回転設定器267の最高作動速度設定値R2に維持される。なお、刈刃32が株元を切断する穀稈の種類又は性状等に対応して、オペレータが高速回転設定器267の最高作動速度設定値R2を手動調節することによって、高速側一定回転ギヤ110からの一定回転数(高速側一定回転速度)で作動する穀稈搬送装置224の作動速度(車速V2)との相対速度差を任意に変更し、刈刃32の切断性能を向上できる。
【0053】
一方、走行機体1の移動速度が減速されることによって、1軸センサ288によって検出される刈取り入力軸17の回転数が減少する。その場合、刈刃回転センサ312によって検出される刈刃駆動用電動モータ91の出力回転数が刈取り入力軸17の回転数よりも高くなる。刈取り入力軸17の回転数と刈刃駆動用電動モータ91の出力回転数とを比較して、刈刃駆動用電動モータ91を減速作動させる必要があると判断されたときに(S12yes)、刈刃ドライバ302を減速制御して刈刃32の作動速度を減速作動する減速制御が実行される(S13)。その結果、その減速制御(S13)によって走行機体1の移動速度(車速)に比例して刈刃32の作動速度が減速されるから、走行機体1の移動速度に比べて刈刃32の作動速度が速くなりすぎることがなく、車速と同調した速度で刈刃32を作動できる。即ち、刈刃32(刈刃駆動用電動モータ91)が過負荷の状態で作動するのを防止でき、穀稈の刈取り姿勢の乱れ又は刈刃32の損傷等を低減できる。
【0054】
上述の減速制御(S12)によって刈刃32の作動速度が減速された場合、低速回転設定器266の刈刃32の最低作動速度設定値を読み込む(S14)。刈刃32が低速作動して、刈刃32の作動速度が低速回転設定器266の最低作動速度設定値と一致して、刈刃32が低速作動していると判断されたときに(S15yes)、刈刃32の一定回転制御(S11)が実行される。したがって、走行機体1の移動速度(車速)がさらに減速されても、刈刃32の一定回転制御(S11)によって、低速回転設定器266の設定値に刈刃32の作動速度が維持される。即ち、最低回転数設定器266によって設定された回転数以上の速度で刈刃装置222を作動できるから、穀稈搬送装置224の作業速度(車速)等が極めて微速のときにも、刈刃装置222の作動速度が遅くなりすぎることがなく、刈刃32の切断性能の低下を防止でき、穀稈の刈残し等を低減できる。
【0055】
図9に示されるように、低速側一定回転ギヤ109からの一定回転数で刈取り入力軸17を作動させる車速V1かそれ以下に車速Vが減速されて、低速側一定回転ギヤ109からの一定回転数(低速側一定回転速度)で穀稈搬送装置224が作動し、穀稈搬送装置224の作業速度が極めて微速になったときに、刈刃32の回転数R(作動速度)が低速回転設定器266の最低作動速度設定値R1に維持される。なお、刈刃32が株元を切断する穀稈の種類又は性状等に対応して、オペレータが低速回転設定器266の最低作動速度設定値R1を手動調節することによって、低速側一定回転ギヤ109からの一定回転数(低速側一定回転速度)で作動する穀稈搬送装置224の作動速度(車速V1)との相対速度差を任意に変更し、刈刃32の切断性能を向上できる。
【0056】
なお、低速側一定回転ギヤ109からの一定回転数で刈取り入力軸17を作動させる車速V1と、高速側一定回転ギヤ110からの一定回転数で刈取り入力軸17を作動させる車速V2との間で、車速V(穀稈搬送装置224の作動速度)が変更された場合、低速回転設定器266の最低作動速度設定値R1と、高速回転設定器267の最高作動速度設定値R2との間で、刈刃32を作動する刈刃駆動用電動モータ91の出力回転数R(刈刃32の作動速度)が、車速Vに同調して変化する。したがって、オペレータが走行機体1の移動速度を変更しても、そのオペレータの変速操作に関係なく、刈刃32の切断性能を維持できる。
【0057】
上記の記載及び図1、図5、図7、図8から明らかなように、エンジン14によって作動する走行部としての走行クローラ2を備えた走行機体1と、圃場に植立した作物(穀稈)の株元を切断する刈刃装置222と、刈刃装置222によって株元が切断された前記作物を搬送する作物搬送手段としての穀稈搬送装置224とを備えてなる収穫機において、刈刃装置222を作動する刈刃駆動用電動モータ91と、穀稈搬送装置224への入力回転数を検出する回転センサとしての1軸センサ288とを備え、1軸センサ288の検出結果に基づき刈刃駆動用電動モータ91の回転数を制御中、切断性能を維持可能な所定の速度で刈刃装置222を作動させるように構成したものであるから、穀稈搬送装置224の作業速度(車速)等に適応した速度で刈刃装置222を作動でき、圃場に植立した作物の株元の切断に適した速度に刈刃装置222の速度を保つことができ、刈刃装置222の切断性能を向上できる。
【0058】
上記の記載及び図7、図8、図9から明らかなように、刈刃駆動用電動モータ91の最低回転数を設定する最低回転数設定器としての低速回転設定器266を備え、低速回転設定器266によって設定された回転数以上の速度で刈刃装置222を作動するように構成したものであるから、穀稈搬送装置224の作業速度(車速)等が極めて微速のときにも、刈刃装置222の作動速度が遅くなりすぎることがなく、刈刃装置222の切断性能の低下を防止でき、作物の刈残し等を低減できる。
【0059】
上記の記載及び図7、図8、図9から明らかなように、刈刃駆動用電動モータ91の最高回転数を設定する最高回転数設定器としての高速回転設定器267を備え、高速回転設定器267によって設定された回転数以下の速度で前記刈刃装置222を作動するように構成したものであるから、穀稈搬送装置224の作業速度(車速)等が極めて高速のときにも、刈刃装置222の作動速度が速くなりすぎることがなく、刈刃装置222(刈刃駆動用電動モータ91)が過負荷の状態で作動するのを防止でき、作物の刈取り姿勢の乱れ又は刈刃装置222の損傷等を低減できる。
【0060】
上記の記載及び図7、図8から明らかなように、オペレータの手動操作によって刈刃駆動用電動モータ91の回転数を変更可能な刈刃速度設定器262を備え、1軸センサ288の検出結果と刈刃速度設定器262の設定値とに基づき、刈刃駆動用電動モータ91を制御するように構成したものであるから、例えば圃場に倒伏している作物の刈取り作業等の特別な条件下の刈取り作業であっても、それに適応した速度で刈刃装置222を作動でき、刈刃装置222の切断性能を簡単に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態の6条刈り用コンバインの側面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】刈刃装置及び穀稈搬送装置の側面説明図である。
【図4】刈刃装置及び穀稈搬送装置の平面説明図である。
【図5】コンバインの駆動系統図である。
【図6】ミッションケース及びカウンタケース等の駆動系統図である。
【図7】刈刃装置の制御手段の機能ブロック図である。
【図8】刈刃速度制御のフローチャートである。
【図9】刈刃の回転数Rと車速V(穀稈搬送速度)との関係を示す線図である。
【符号の説明】
【0062】
1 走行機体
2 走行クローラ(走行部)
14 エンジン
91 刈刃駆動用電動モータ
222 刈刃装置
224 穀稈搬送装置(作物搬送手段)
262 刈刃速度設定器
266 低速回転設定器(最低回転数設定器)
267 高速回転設定器(最高回転数設定器)
288 1軸センサ(刈取り回転センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンによって作動する走行部を備えた走行機体と、圃場に植立した作物の株元を切断する刈刃装置と、前記刈刃装置によって株元が切断された前記作物を搬送する作物搬送手段とを備えてなる収穫機において、
前記刈刃装置を作動する刈刃駆動用電動モータと、前記作物搬送手段への入力回転数を検出する回転センサとを備え、前記回転センサの検出結果に基づき前記刈刃駆動用電動モータの回転数を制御中、切断性能を維持可能な所定の速度で前記刈刃装置を作動させるように構成したことを特徴とする収穫機。
【請求項2】
前記刈刃駆動用電動モータの最低回転数を設定する最低回転数設定器を備え、前記最低回転数設定器によって設定された回転数以上の速度で前記刈刃装置を作動するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の収穫機。
【請求項3】
前記刈刃駆動用電動モータの最高回転数を設定する最高回転数設定器を備え、前記最高回転数設定器によって設定された回転数以下の速度で前記刈刃装置を作動するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の収穫機。
【請求項4】
オペレータの手動操作によって前記刈刃駆動用電動モータの回転数を変更可能な刈刃速度設定器を備え、前記回転センサの検出結果と前記刈刃速度設定器の設定値とに基づき、前記刈刃駆動用電動モータを制御するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−106254(P2009−106254A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284962(P2007−284962)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】