説明

受動Qスイッチレーザ装置

【課題】1パルスあたりの出力エネルギーおよびパルス幅を変えることなく、連続的なパルス周波数の調整やパルス出力タイミングの制御を実現し、耐振動性や耐衝撃性などの信頼性に優れるとともに、励起源の寿命による出力劣化や温度変動などに対しても、自動的に周波数調整が可能な受動Qスイッチレーザ装置を得る。
【解決手段】励起源102および共振器を有し、励起源102により励起された発振光LOを共振器から出力する受動Qスイッチレーザ101と、励起源102に一定のオフセット電流を供給する駆動電源112と、オフセット電流に電流パルスIpを付加するパルス発生電源111とを備える。電流パルスIpにより発振光LOのパルス出力タイミングを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザビームのパルス発振時において、発振光のパルス周波数およびパルス出力タイミングを制御することを目的とした受動Qスイッチレーザ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の受動Qスイッチレーザ装置は、一例として、レーザダイオードと、励起光学系と、レーザ媒質と、可飽和吸収体と、出力反射鏡と、集光レンズとにより構成された共振器を備え、集光レンズを光軸方向に位置調整して、可飽和吸収体に入射されるビーム径を変更することにより、パルス周波数を制御している(たとえば、非特許文献1参照)。
【0003】
また、従来から、導波路型Qスイッチ素子の一例として、2枚のミラーと、レーザ媒質と、可飽和吸収体材料からなるウェッジ(Wedge)と、発振波長に対して透明な材料からなるウェッジとにより構成されたQスイッチ素子が知られている。
この場合の受動Qスイッチレーザ装置としては、Qスイッチ素子を軸垂直方向に位置調整をするアクチュエータと、フォトディテクタと、サーボ装置と、インタフェース装置とを備え、インタフェース装置で設定された周波数とフォトディテクタとから計測されたパルス周波数が整合するように、サーボ装置でアクチュエータを制御して、可能和吸収体の厚さを変えることにより、パルス周波数を調整する技術も提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、従来のQスイッチレーザ装置の他の例として、レーザダイオードと、レーザダイオード制御装置と、励起光学系と、出力鏡レーザ媒質と、可飽和吸収体と、部分反射鏡とを備え、励起源に供給する電流波形を変形させることにより、熱負荷を変化することなく、パルス周波数を調整する技術も提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0187975号明細書(Sheet4、Fig.5)
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0176913号明細書(Sheet2、Fig.3)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Alphan Sennaroglu「Repetition rate control in continuous−wave−pumped、passively Q−switched solid−state lasers」Optical Engineering 46(2)P.024201−1〜4/February 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の受動Qスイッチレーザ装置は、非特許文献1に記載の技術では、パルス周波数を制御するために集光レンズの位置調整を行うことから、共振器内のビーム伝搬が変わり、可飽和吸収体に入射するビームサイズが変化するので、周波数変化にともない、1パルスあたりの出力エネルギー、パルス幅およびビーム広がり角も変化するという課題があった。また、集光レンズの位置調整機構を備えているので、耐振動や耐衝撃性などの信頼性が低いうえ、集光レンズを使用しないマイクロチップレーザや導波路型レーザに適用することができないという課題もあった。
【0008】
また、特許文献1に記載の技術では、周波数を調整するために、可飽和吸収体の厚さを変えるように位置調整を行うので、非特許文献1の場合と同様に、周波数変化にともない、1パルスあたりの出力エネルギー、パルス幅およびビーム広がり角も変化するという課題があった。また、可飽和吸収体の位置調整機構を備えているので、耐振動や耐衝撃性などの信頼性が低いうえ、可飽和吸収体の濃度が不均一な場合には、連続的な周波数変化が得られないという課題もあった。
【0009】
さらに、特許文献2に記載の技術では、パルス周波数やパルス出力タイミングのモニタ手段を備えていないので、励起源の寿命に起因した出力劣化や温度変動などに対して手動調整する必要があるうえ、所定タイミングでパルス発振させることが困難であることから、外部同期を取ることが困難になるという課題があった。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、1パルスあたりの出力エネルギーおよびパルス幅を変えることなく、連続的なパルス周波数の調整やパルス出力タイミングの制御を実現し、耐振動性や耐衝撃性などの信頼性に優れるとともに、励起源の寿命による出力劣化や温度変動などに対しても、自動的に周波数調整が可能な受動Qスイッチレーザ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る受動Qスイッチレーザ装置は、励起源および共振器を有し、励起源により励起された発振光を共振器から出力する受動Qスイッチレーザと、励起源に一定のオフセット電流を供給する駆動電源と、オフセット電流に電流パルスを付加するパルス発生電源と、を備え、電流パルスにより発振光のパルス出力タイミングを制御するものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、1パルスあたりの出力エネルギー、パルス幅を変えることなく、連続的にパルス出力タイミングやパルス周波数を調整することができ、耐振動性や耐衝撃性などの信頼性に優れ、励起源の寿命による出力劣化や温度変動などに対しても自動で周波数調整が可能な受動Qスイッチレーザ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1に係る受動Qスイッチレーザ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1による正極性電流パルスでの動作を示すタイミングチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1による負極性電流パルスでの動作を示すタイミングチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1における励起光および発振光の計算結果を示す特性図である。
【図5】この発明の実施の形態1における励起源電流のパルス幅に対する発振光のパルス周期の計算結果を示す特性図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る受動Qスイッチレーザ装置の構成を示すブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態2による動作を示すタイミングチャートである。
【図8】この発明の実施の形態3に係る受動Qスイッチレーザ装置の構成を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態3による動作を示すタイミングチャートである。
【図10】この発明の実施の形態4に係るマルチモジュール形式の受動Qスイッチレーザ装置の構成を示すブロック構成図である。
【図11】この発明の実施の形態4による動作を示すタイミングチャートである。
【図12】この発明の実施の形態5に係るマルチモジュール形式の受動Qスイッチレーザ装置の構成を示すブロック構成図である。
【図13】この発明の実施の形態5による動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る受動Qスイッチレーザ装置100を示す構成図である。
図1において、受動Qスイッチレーザ装置100は、受動Qスイッチレーザ101と、受動Qスイッチレーザ101の発振光LOを分離する分離ミラー107と、発振光LOのパルス出力タイミングを計測するパルスタイミングモニタ108と、周期信号からなる基準クロックCSを発生する基準クロック発生源109と、比較器110と、パルス発生電源111と、駆動電源112とから構成されている。
【0015】
なお、ここでは、基準クロックCSを生成する基準クロック発生源109が受動Qスイッチレーザ装置100に含まれた構成を示しているが、基準クロックCSは、外部の他のシステム(図示せず)から与えられてもよい。
【0016】
受動Qスイッチレーザ101は、励起源102と、レーザ媒質103と、反射防止膜104と、可飽和吸収体105と、出力反射鏡106とを備えている
受動Qスイッチレーザ101において、励起源102は、レーザ媒質103にエネルギーを供給する機能を有する。
【0017】
レーザ媒質103は、利得媒質からなり、発振のきっかけとなる自然放出光の発生機能と、共振器を周回した光の増幅機能とを有する。
反射防止膜104は、レーザ媒質103の第1の端面103aに設けられており、レーザ発振波長に対しては全反射機能を有し、励起波長に対しては反射防止機能を有する。
【0018】
出力反射鏡106は、第1の端面106aにおいて、レーザ波長に対して所定の反射率を有する部分反射機能を有し、第2の端面106bにおいて、発振光を出力する機能を有する。
レーザ媒質103の第1の端面103aと、出力反射鏡106の第1の端面106aとにより共振器が構成されている。
【0019】
すなわち、受動Qスイッチレーザ装置100は、励起源102、レーザ媒質103、可飽和吸収体105、および2枚の共振器用ミラー(反射防止膜104、出力反射鏡106)からなる受動Qスイッチレーザ101と、発振光LOの分離光からパルス出力タイミングを計測するパルスタイミングモニタ108と、所定のパルス周波数と整合するように励起源電流Iを制御する駆動電源112と、周期的な基準クロックCSを出力する基準クロック発生源109と、パルス出力タイミングと基準クロックCSとを比較する比較器110と、比較結果(タイミング差分)から基準クロックCSのタイミングとパルス出力タイミングとを一致させるように励起源102に対する電流パルスIpを発生させるパルス発生電源111と、を備えている。
【0020】
可飽和吸収体105は、レーザ媒質103と出力反射鏡106との間に挿入されており、微弱な光に対しては、所定の透過率を有し、高強度の入射光に対しては、透明になるという機能を有する。
したがって、レーザ媒質103および出力反射鏡106からなるレーザ共振器内に挿入された可飽和吸収体105は、励起直後においては、損失機能が作用してレーザ発振を妨げ、その後、徐々にレーザ媒質103にエネルギーが蓄積されて、損失機能よりも利得機能が高くなると、レーザ発振が開始されてレーザ光を吸収して透明になる。
この結果、出力反射鏡106からは、尖頭値の高いパルス光が出力される。
【0021】
なお、可飽和吸収体105の第1の面105aにおいて、レーザ波長に対して所定の反射率を有する部分反射機能を設け、出力反射鏡106としての機能も持たせることも可能である。
また、レーザ媒質103と可飽和吸収体105との間に集光レンズ(図示せず)を設け、安定共振器を形成することも可能であり、可飽和吸収体105に入射するビームのエネルギー密度を調整して、高効率のパルス動作を行うことも可能である。
【0022】
さらに、励起源102とレーザ媒質103との間に集光レンズ(図示せず)を設け、レーザ媒質103内のビーム伝搬形状と整合するように、励起光LPを整形してビームオーバーラップ効率を高めることも可能である。
【0023】
たとえば、1.0μm帯の受動Qスイッチレーザ装置の場合には、レーザ媒質103として、Nd:YAG、Nd:YVO4、Nd:YLF、Nd:glass、またはYb:YAGのいずれかを使用し、可飽和吸収体105としては、Cr4+:YAG、V3+YAG、Cr4+:GSGG、またはSESAMのいずれかを使用すればよい。
【0024】
また、波長1.5〜1.7μmのアイセーフ波長帯の受動Qスイッチレーザ装置の場合には、レーザ媒質103として、Er:YAG、Er:glass、Er:YAG、またはEr:YLFのいずれかを使用し、可飽和吸収体105として、Co:Spinel、Co2+:ZnSe、Cr2+:ZnSe、Co2+:ZnS、Cr2+:ZnS、Fe2+:ZnSe、またはFe2+:ZnSのいずれかを使用すればよい。
【0025】
以下、図1に示した受動Qスイッチレーザ装置100の動作について説明する。
まず、受動Qスイッチレーザ101から出力された発振光LOの一部は、分離ミラー107で分離されて、パルスタイミングモニタ108に入射される。
パルスタイミングモニタ108は、発振光LOのパルス出力タイミングを計測し、基準クロック発生源109は、基準クロックCSを発生する。
【0026】
比較器110は、パルスタイミングモニタ108から入力される発振光LOのパルス出力タイミングと、基準クロック発生源109から入力される基準クロックCSとを比較し、基準クロックCSに対して発振光LOのパルス出力タイミングが遅延しているか進んでいるかを判定し、比較結果としてパルス発生電源111に入力する。
【0027】
パルス発生電源111は、比較器110の比較結果に応じて、発振光LOのパルス出力タイミングと基準クロックCSとを同期させるための電流パルスIpを生成し、駆動電源112に入力する。
【0028】
駆動電源112は、受動Qスイッチレーザ101からの発振光LO(光パルス)が発生していない時間に、発振光LOのパルス出力タイミングと基準クロックCSとが互いに同期するように、励起源102に対して、オフセット電流Iaveおよび電流パルスIpからなる励起源電流Iを供給する。
【0029】
次に、図2〜図5を参照しながら、受動Qスイッチレーザ装置100の動作について、さらに具体的に説明する。
まず、図2および図3を参照しながら、比較器110、パルス発生電源111および駆動電源112による動作(発振光LOのパルス出力タイミングを基準クロックCSと同期させるための補正動作)について説明する。
【0030】
図2、図3はこの発明の実施の形態1による動作を示すタイミングチャートであり、基準クロックCSと、駆動電源112からの励起源電流Iと、励起光LP(光パワー)と、発振光LO(光パワー)とを関連させて、時間t(横軸)の経過に応じた各波形を示している。
図2は発振光LOのパルス出力タイミングが遅延した場合の同期補正動作を示しており、図3は発振光LOのパルス出力タイミングが進んだ場合の同期補正動作を示している。
【0031】
図2、図3において、基準クロック発生源109から発生する基準クロックCSは、所定のパルス周期を有する複数の信号パルスC1〜C6(パルス列)からなる。
受動Qスイッチレーザ101から出力される発振光LOは、基準クロックCSに対してランダム位相を有する初期の光パルスO1〜O3と、同期調整後の光パルスO4〜O6とを含む複数の光パルスO1〜O6(パルス列)からなる。
【0032】
発振光LOのパルス出力タイミングは、オフセット電流Iaveと、可飽和吸収体105の吸収長および濃度で決定される初期透過率と、共振器内の損失とによって決定される。
なお、初期の光パルスO1〜O3のパルス出力タイミングは、ランダム位相であるが、励起源電流Iのオフセット電流Iaveがあらかじめ適切に調整設定されており、基準クロックCSの周期t1(目標値周期)と一致しているものとする。
【0033】
図2において、発振光LOの初期の光パルスO1〜O3は、基準クロックCSの信号パルスC1〜C3の立ち上がりタイミングよりも遅延しているが、励起源電流I(オフセット電流Iave)に正極性の電流パルスIp1を付加した後の光パルスO4〜O6は、信号パルスC4〜C6の立ち上がりタイミングに同期している。
【0034】
図3において、発振光LOの初期の光パルスO1〜O3は、基準クロックCSの信号パルスC1〜C3の立ち上がりタイミングよりも進んでいるが、励起源電流I(オフセット電流Iave)に負極性の電流パルスIp1を付加した後の光パルスO4〜O6は、信号パルスC4〜C6の立ち上がりタイミングに同期している。
【0035】
図2において、パルス発生電源111は、比較器110からの位相遅延情報に応答して、光パルスO4の位相を進めるための正極性の電流パルスIp1を生成する。すなわち、駆動電源112から励起源102に供給される励起源電流I(一定のオフセット電流Iave)には、正極性の最大値IHおよびパルス幅τを有する電流パルスIp1が付加される。
【0036】
これにより、受動Qスイッチレーザ101において、励起源102から出力される励起光LP(一定のオフセットパワーPave)には、電流パルスIp1に追従した正極性の最大値PHおよびパルス幅τを有する励起光パルスPp1が付加される。
【0037】
このように、光パルスO3の出力後から光パルスO4が出力前までの中間位置(発振光LOの非発生期間)で正極性の電流パルスIp1が付加されると、光パルスO4は、基準クロックCSの信号パルスC4の立ち上がりタイミングと同期して、周期t1よりも短い周期t2で出力される。
【0038】
以下、同期補正後の光パルスO4〜O6のパルス出力タイミングは、初期の光パルスO1〜O3と同一の周期t1を有するとともに、基準クロックCSの信号パルスC4〜C6の立ち上がりタイミングと同期するようになる。
【0039】
一方、図3において、パルス発生電源111は、比較器110からの位相進み情報に応答して、光パルスO4の位相を遅延させるための負極性の電流パルスIp2を生成する。すなわち、駆動電源112から励起源102に供給される励起源電流I(一定のオフセット電流Iave)には、負極性の最大値ILおよびパルス幅τを有する電流パルスIp2が付加される。
【0040】
これにより、受動Qスイッチレーザ101において、励起源102から出力される励起光LP(一定のオフセットパワーPave)には、電流パルスIp2に追従した負極性の最大値PLおよびパルス幅τを有する励起光パルスPp2が付加される。
【0041】
このように、光パルスO3の出力後から光パルスO4が出力前までの中間位置(発振光LOの非発生期間)で負極性の電流パルスIp2が付加されると、光パルスO4は、基準クロックCSの信号パルスC4の立ち上がりタイミングと同期して、周期t1よりも長い周期t3で出力される。
【0042】
以下、同期補正後の光パルスO4〜O6のパルス出力タイミングは、初期の光パルスO1〜O3と同一の周期t1を有するとともに、基準クロックCSの信号パルスC4〜C6の立ち上がりタイミングと同期するようになる。
【0043】
なお、電流パルスIpの入力時の発振光LOのパルス出力タイミングは、レート方程式を用いて、励起パワーを時間的に変化させることにより計算することができる。
次に、図4および図5を参照しながら、パルス発生電源111の具体的な計算機能について説明する。
【0044】
図4は励起光LPおよび発振光LOの各時間波形の計算結果を示す特性図であり、横軸は時間[ms]、縦軸は強度[a.u.]を示しており、図4(a)は図2の動作に対応し、図4(b)は図3の動作に対応している。
【0045】
図4(a)は、正極性の電流パルスIp1を付加したときの励起源102からの励起光LPのパワー(破線)と発振光LO(光パルスOi)との関係を示しており、図4(b)は、負極性の電流パルスIp2を付加したときの励起源102からの励起光LPのパワー(破線)と発振光LO(光パルスOj)との関係を示している。
【0046】
具体的には、図4(a)では、励起源102の平均励起パワーを10[W]として、レーザ媒質103としてEr:YAGを用い、可飽和吸収体105として初期透過率が85%のCo:Spinelを用い、出力反射鏡106の出力鏡反射率を60%とした場合を想定して、電流パルスIpとしてパルス幅τ=150[μs]で最大値IH(振幅)=8[W]の正極性の電流パルスIp1を入力した場合の、シミュレーション結果を示している。
【0047】
図4(a)の場合、電流パルスIp1(励起光パルスPp1)の入力前後における発振光LOのパルス周期t1、t2、t1は、536[μs]から294[μs]まで短くなり、その後、536[μs]に復帰して、パルス列が得られている。
【0048】
また、図4(b)では、図4(a)と同様の条件下で、電流パルスIpとしてパルス幅τ=150[μs]で最大値IL(振幅)=8[W]の負極性の電流パルスIp2を入力した場合の、シミュレーション結果を示している。
図4(b)の場合、電流パルスIp2(励起光パルスPp2)の入力前後における発振光LOのパルス周期t1、t3、t2は、536[μs]から747[μs]まで長くなり、その後、536[μs]に復帰して、パルス列が得られている。
【0049】
図5は電流パルスIpのパルス幅τとパルス周期t2、t3との関係(計算結果)を示す特性図であり、横軸はパルス幅τ[μs]、縦軸は電流パルスIpの入力前後でのパルス周期[ms]を示している。
図5において、横軸のマイナス側は負極性の電流パルスIp2に対応しており、負極性の電流パルスIp2を付加した場合には、パルス周期が長くなることを示している。
【0050】
また、図5において、実線は、励起源102の平均出力パワーに対して10%の振幅を有する電流パルスIpを付加した場合の計算結果を示しており、破線は、励起源102の平均出力パワーに対して40%の振幅を有する電流パルスIpを付加した場合の計算結果を示している。
【0051】
図5から明らかなように、正極性の電流パルスIp1のパルス幅τが広がるにつれて、電流パルスIpの入力前後でのパルス周期は短くなり、逆に、負極性の電流パルスIp2のパルス幅が広がるにつれて、電流パルスIp2の入力前後でのパルス周期は長くなる結果が得られる。
図5の計算結果から、電流パルスIpを付加することにより、発振光LO(光パルス)のパルス出力タイミングを制御することが可能なことが分かる。
【0052】
なお、上記説明では、励起源102に対する励起源電流Iのオフセット電流Iaveを一定値の定常供給電流(図2、図3参照)としたが、レーザ媒質103の蛍光寿命が短い場合には、オフセット電流Iaveをパルス波形に変えて励起源102を動作させてもよい。
【0053】
以上のように、この発明の実施の形態1(図1〜図5)に係る受動Qスイッチレーザ装置100は、励起源102および共振器(レーザ媒質103、可飽和吸収体105、出力反射鏡106)を有し、励起源102により励起された発振光LOを共振器から出力する受動Qスイッチレーザ101を備えている。
【0054】
また、受動Qスイッチレーザ装置100は、励起源102に一定のオフセット電流Iaveを供給する駆動電源112と、オフセット電流Iaveに電流パルスIpを付加するパルス発生電源111とを備えており、電流パルスIpにより発振光LOのパルス出力タイミングを制御する。
さらに、パルス発生電源111は、発振光LOの光パルスが発生していない時間に電流パルスIpを付加するように構成されている。
【0055】
このように、発振光LO(光パルス)のパルス出力タイミングをモニタし、基準クロックCSとパルス出力タイミングとを同期させるように電流パルスIpを励起源102に入力することにより、1パルスあたりの出力エネルギーやパルス幅を変えることなく、連続的なパルス周波数(パルス周波数Fp)の調整に加えて、発振光LOのパルス出力タイミングを制御することができる。
【0056】
また、位置調整機構なども不要となるので、小型で振動や衝撃に対しても耐性を向上させるとともに、励起源102の寿命による出力劣化や温度変動などに対しても、自動的に周波数調整が可能な受動Qスイッチレーザ装置100を実現することができる。
【0057】
実施の形態2.
なお、上記実施の形態1(図1)では、発振光LOのパルス周期が基準クロックCSの周期t5(目標値周期)と一致するように、励起源電流Iのオフセット電流Iaveがあらかじめ調整されたものとして説明したが、励起源電流Iのオフセット電流を適性化するために、図6のように、パルス周波数Fpをモニタする周波数測定装置208と、パルス周波数Fpを目標周波数に一致させるための電流制御手段211とを設けてもよい。
【0058】
図6はこの発明の実施の形態2に係る受動Qスイッチレーザ装置100Aの構成を示すブロック図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して、または符号の後に「A」を付して詳述を省略する。
【0059】
図6において、受動Qスイッチレーザ装置100Aは、励起源102、レーザ媒質103、反射防止膜104、可飽和吸収体105および出力反射鏡106からなる受動Qスイッチレーザ101と、分離ミラー107と、周波数測定装置208と、電流制御手段211と、駆動電源112Aと、を備えている。
【0060】
周波数測定装置208は、発振光LOの分離光からパルス周波数Fpを計測し、電流制御手段211は、パルス周波数Fpの測定値と目標周波数との周波数差分に応じて、追加重畳用の補正オフセット電流Icを出力する。
電流制御手段211は、初期のオフセット電流Iave0に補正オフセット電流Icを重畳した励起源電流Iを励起源102に供給する。
【0061】
図7はこの発明の実施の形態2による動作を示すタイミングチャートであり、パルス周波数Fpの初期測定値が目標周波数よりも低い(パルス周期が長い)場合の補正動作を示している。
図7においては、駆動電源112Aから励起源102に供給される励起源電流Iと、励起源102から出力される励起光LPと、受動Qスイッチレーザ101から出力される発振光LOとの関係を、それぞれの時間波形により示している。
【0062】
次に、図7を参照しながら、図6に示したこの発明の実施の形態2による動作について説明する。
まず、受動Qスイッチレーザ101から出力された発振光LOの一部は、分離ミラー107で分離されて、周波数測定装置208に入射される。
【0063】
周波数測定装置208は、発振光LOの分離光からパルス周波数Fpを計測し、電流制御手段211に入力する。
電流制御手段211は、発振光LOのパルス周波数Fpを目標周波数と一致させるための補正オフセット電流Icを生成し、所定のタイミングで駆動電源112Aに入力する。
駆動電源112Aは、オフセット電流Iave0に補正オフセット電流Icを重畳させた励起源電流Iを励起源102に供給する。
【0064】
このとき、図7に示すように、励起源電流Iは、初期のオフセット電流Iave0(所定振幅の一定電流)から、発振光LOのパルス周波数Fpが目標周波数と一致する振幅のオフセット電流Iave(一定電流)へと、所定のタイミングで徐々に変化する。
これにより、励起光LPは、励起源電流Iに追従して、初期のオフセットパワーPave0から、目標値に一致した補正後のオフセットパワーPaveに徐々に変化する。
【0065】
ここで、発振光LOのパルス周期は、前述のように、駆動電源112Aから励起源102に供給される励起源電流I(オフセット電流)と、可飽和吸収体105の吸収長および濃度で決定される初期透過率と、共振器内の損失とによって決まる。
【0066】
したがって、発振光LOは、初期のパルス周期t5のパルス列から、オフセット電流がPave0からPaveに変化した際の変化前後のパルス周期t4となり、最終変化後のパルス周期t1(目標周期)のパルス列が得られる。
【0067】
図7においては、励起光LPの初期のオフセットパワーPave0が目標値のオフセットパワーPaveよりも大きい場合を示しており、励起源電流Iの補正時の発振光LOのパルス周期の変化において、t5>t4>t1となる。
逆に、励起光LPの初期のオフセットパワーPave0が目標値のオフセットパワーPaveよりも小さい場合には、励起源電流Iの補正時の発振光LOのパルス周期の変化において、t5<t4<t1となる。
【0068】
このように、周波数測定装置208で発振光LOのパルス周波数Fpをモニタしながら、パルス周波数Fpが目標周波数と一致するように励起源電流Iを制御することにより、励起源電流Iの出力劣化や温度変動が発生しても、常にパルス周波数Fpを自動的に目標周波数と一致させることができる。
【0069】
なお、自動周波数制御方法の具体例としては、周波数測定装置208において、フォトダイオードなどを用いて発振光LOの光パルスを電気信号に変換するとともに、A/D変換器を用いて電気信号をデジタル変換し、光パルスのサンプリングを行い、ある時間内におけるサンプリング信号の各パルスのピークを求めるか、または、所定閾値を超えた回数を発振光LOのパルス数としてカウントし、所定の目標周波数に相当するパルス数と一致するようにフィードバック制御を行う方法が考えられる。
【0070】
また、自動周波数制御方法の他の具体例として、上記と同様に光パルスのサンプリングを行い、ある時間内におけるサンプリング信号の各パルスのピークを求めるか、または所定閾値を超えた時間と前述の基準クロックCSのタイミングとの時間差の平均値が一定値(または、時間差の分散がゼロ)になるように制御を行う方法も考えられる。
【0071】
以上のように、この発明の実施の形態2(図6、図7)に係る受動Qスイッチレーザ装置100Aは、励起源102および共振器(レーザ媒質103、可飽和吸収体105、出力反射鏡106)を有し、励起源102により励起された発振光LOを共振器から出力する受動Qスイッチレーザ101と、励起源102に対して励起源電流Iを供給する駆動電源112Aと、発振光LOのパルス周波数Fpを測定する周波数測定装置208と、を備えている。
【0072】
駆動電源112Aは、励起源電流Iにより、パルス周波数Fpが所望の目標周波数と一致するように制御する
具体的には、周波数測定装置208と駆動電源112Aとの間に挿入された電流制御手段211を備えており、電流制御手段211は、パルス周波数Fpを目標周波数に一致させるための補正オフセット電流Icを出力する。これにより、駆動電源112Aは、補正オフセット電流Icが付加された励起源電流Iを励起源102に供給する。
【0073】
これにより、発振光LOのパルス周波数Fpが目標周波数となるように、励起源電流Iおよび励起光LPが設定されるので、出力エネルギーやパルス幅を変えることなく、パルス周波数Fpの調整および安定化を実現することができる。
また、位置調整機構なども不要となるので、小型で振動や衝撃に対して耐性の優れた受動Qスイッチレーザ装置100Aを実現することができる。
【0074】
実施の形態3.
なお、上記実施の形態2(図6)では、発振光LOのパルス周波数Fpのみを制御したが、前述の実施の形態1(図1)のパルス出力タイミングの制御を組み合わせて、図8のように構成してもよい。
【0075】
図8はこの発明の実施の形態3に係る受動Qスイッチレーザ装置100Bの構成を示すブロック図であり、前述(図1、図6参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して、または符号の後に「B」を付して詳述を省略する。
【0076】
図8において、受動Qスイッチレーザ装置100Bは、励起源102、レーザ媒質103、反射防止膜104、可飽和吸収体105および出力反射鏡106からなる受動Qスイッチレーザ101と、分離ミラー107、207と、反射ミラー307と、パルスタイミングモニタ108と、周波数測定装置208と、電流制御手段211と、基準クロック発生源109と、比較器110と、パルス発生電源111と、駆動電源112Bと、を備えている。
【0077】
分離ミラー207は、分離ミラー107と周波数測定装置208との間に挿入されており、分離ミラー107からの分離光をさらに分離して、一方の分離光(透過光)を周波数測定装置208に入力する。
【0078】
反射ミラー307は、分離ミラー207とパルスタイミングモニタ108との間に挿入されており、分離ミラー207からの他方の分離光(反射光)をパルスタイミングモニタ108に入力する。なお、分離ミラー207の反射光路にパルスタイミングモニタ108を配置すれば、反射ミラー307は不要となる。
【0079】
次に、受動Qスイッチレーザ装置100Bの動作について説明する。
まず、受動Qスイッチレーザ101から出力された発振光LOの一部は、分離ミラー107、207で分離されて、パルスタイミングモニタ108および周波数測定装置208に入射される。
【0080】
周波数測定装置208は、発振光LOのパルス周波数Fpを計測し、電流制御手段211は、パルス周波数Fpが目標周波数と一致するように、補正オフセット電流Icを生成して、駆動電源112Bから励起源102への励起源電流Iを制御する。
【0081】
また、電流制御手段211による周波数制御に続いて、パルスタイミングモニタ108は、発振光LOのパルス出力タイミングを計測し、比較器110およびパルス発生電源111は、パルス出力タイミングと基準クロックCSとが同期するように、駆動電源112Bからの励起源電源Iに電流パルスIpを付加する。
【0082】
図9はこの発明の実施の形態3による動作を示すタイミングチャートであり、パルス周波数Fpの補正前の初期測定値が目標周波数よりも低く(周期t5が長く)、且つ周波数補正後の発振光LOの出力位相が基準クロックCSよりも遅れている場合の補正動作を示している。
【0083】
図9においては、基準クロック発生源109からの基準クロックCSと、パルス発生電源111からの電流パルスIpと、電流制御手段211からの補正オフセット電流Icにより制御されるオフセット電流Iaveと、駆動電源112Bから励起源102に供給される励起源電流Iと、励起源102から出力される励起光LPと、受動Qスイッチレーザ101から出力される発振光LOとの関係を、それぞれの時間波形により示している。
【0084】
図9において、基準クロックCSは、所定の周期t1を有する信号パルス(パルス列)からなり、電流パルスIpの発生前の信号パルスCi、C1、C2と、電流パルスIpの発生直前の信号パルスC3と、電流パルスIpの発生直後の信号パルスC4と、信号パルスC4に続く信号パルスC5、C6を含む。
【0085】
また、発振光LOは、周期t5(>t1)を有する初期の光パルスOi(パルス列)と、電流制御手段211(補正オフセット電流Ic)による周波数補正後の光パルスO1〜O3と、パルス発生電源111(電流パルスIp)によるタイミング補正後の光パルスO4〜O6とを含む。
【0086】
励起源電流Iのパルス出力タイミングは、所定タイミングで付加される電流パルスIpによって制御される。
この場合、電流パルスIpは、前述(図2)と同様に、正極性の最大値(振幅)IHおよびパルス幅τを有する。
【0087】
オフセット電流Iaveは、光パルスO1の出力前の所定タイミングにおいて、周波数測定装置208および電流制御手段211により制御され、初期のパルス周期t5に対応したオフセット電流Iave0から、目標値周期(基準クロックCSの周期t1)に対応したオフセット電流Iaveに変化する。
【0088】
これにより、光パルスO1以降のパルス周波数Fpは、目標周波数と一致するようにフィードバック制御される。
ただし、この時点では、発振光LOのパルス出力タイミングが基準クロックCSと同期しておらず、たとえば、発振光LOの光パルスO3のタイミングは、基準クロックCSの信号パルスC3の立ち上がりタイミングよりも遅延している。
【0089】
そこで、パルス発生電源111は、光パルスO4のタイミングを基準クロックCSの信号パルスC4の立ち上がりタイミングと同期させるために、光パルスO3と光パルスO4との間の期間に、正極性の電流パルスIp1を出力し、オフセット電流Iaveに付加する。
【0090】
これにより、駆動電源112Bからの励起源電流Iは、電流制御手段211により周波数補正後のオフセット電流Iaveと電流パルスIpとを足し合わせた波形となり、励起光LPは、励起源電流Iに追従した波形となる。
【0091】
すなわち、発振光LOは、初期のパルス周期t5の光パルスOi(オフセットパワーPave0の励起光LPで発振中のパルス列)において、電流制御手段211によりオフセットパワーがPave(>Pave0)に増大補正されると、周期t4(<t5)の光パルスO1となり、その後、周期t1(<t4)の光パルスO2、O3となる。
【0092】
また、発振光LOは、周期t2(<t1)の光パルスO4により、基準クロックCSの立ち上がりタイミングに同期し、さらに、その後、周期t1に復帰して、目標周波数で且つ基準クロックCSに同期した光パルスO5、O6(パルス列)となる。
光パルスO5、O6のタイミングは、基準クロックCSの信号パルスC5、C6の立ち上がりタイミングと同期して発振する。
【0093】
以上のように、この発明の実施の形態3(図8、図9)に係る受動Qスイッチレーザ装置100Bは、前述の実施の形態1(図1)の構成に加えて、発振光LOのパルス周波数Fpを測定する周波数測定装置208を備えている。
【0094】
駆動電源112Bは、オフセット電流Iaveにより、発振光LOのパルス周波数Fpが所望の基準クロックCSの周波数(目標周波数)とほぼ一致するように制御するとともに、オフセット電流Iaveに付加された電流パルスIpにより、発振光LOのパルス出力タイミングが基準クロックCSとほぼ一致するように制御する。
【0095】
これにより、発振光LOのパルス出力タイミングとパルス周波数Fpとを同時にモニタし、パルス周波数Fpが目標周波数と一致するように、励起源電流Iのオフセット電流Iaveを設定するとともに、パルス出力タイミングが基準クロックCSの周期t1と同期するように電流パルスIpを付加することができる。
【0096】
したがって、出力エネルギーやパルス幅を変えることなく、パルス周波数Fpとパルス出力タイミングを制御することができる。
また、位置調整機構なども不要となるので、小型で振動や衝撃に対して耐性の優れた受動Qスイッチレーザ装置100Bが実現することができる。
【0097】
実施の形態4.
なお、上記実施の形態3(図8)では、単体の受動Qスイッチレーザ装置100Bを示したが、受動Qスイッチレーザ装置100Bを1つのレーザ装置ユニットとして、レーザ装置ユニットをn個(nは2以上の整数)並列配置して、図10のように、マルチモジュール形式の受動Qスイッチレーザ装置100Cを構成してもよい。
【0098】
図10はこの発明の実施の形態4の構成を示すブロック図であり、前述(図8参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して、または符号の後に「C」を付して詳述を省略する。
【0099】
図10において、マルチモジュール形式の受動Qスイッチレーザ装置100Cは、基準クロックCSを出力する基準クロック発生源109と、基準クロックCSを位相の異なる3個のクロック信号DS1〜DS3に分配する分配器400と、3個のレーザ装置ユニット401〜403と、レーザ装置ユニット401〜403からの各発振光LO1〜LO3を合成して最終的な発振光LOを出力する結合手段410と、を備えている。
【0100】
ここでは、n=3の場合を示しているが、nは2以上の任意数に設定され得る。
各レーザ装置ユニット401〜403は、前述と同様の受動Qスイッチレーザ101と、分離ミラー107、207と、パルスタイミングモニタ108と、比較器110と、パルス発生電源111と、駆動電源112Bと、周波数測定装置208と、電流制御手段211と、を備えている。
【0101】
以下、同一構成からなるレーザ装置ユニット401〜403のうち、代表的に、1つのレーザ装置ユニット401に注目して説明する。
レーザ装置ユニット401内の比較器110は、分配器400からのクロック信号DS1と、パルスタイミングモニタ108で計測された発振光LO1のパルス出力タイミングとを比較して、タイミング差分をパルス発生電源111に入力する。
【0102】
周波数測定装置208は、発振光LO1のパルス周波数Fpを電流制御手段211に入力する。
駆動電源112Bは、電流制御手段211からの補正オフセット電流Icにより、パルス周波数Fpが目標周波数と一致するように、励起源電流I1のオフセット電流Iave1を適性化するとともに、パルス発生電源111からの電流パルスIp11により、発振光LO1のパルス出力タイミングをクロック信号DS1の立ち上がりタイミングと同期させる。
【0103】
なお、図10においては、図示を省略しているが、レーザ装置ユニット402、403内の駆動電源112Bは、各々の励起源電流I2、I3のオフセット電流Iave2、13を適性化するとともに、パルス発生電源111からの電流パルスIp21、Ip32により、各発振光LO2、LO3のパルス出力タイミングをクロック信号DS2、DS3の立ち上がりタイミングと同期させる。
【0104】
次に、代表的に1つのレーザ装置ユニット401に注目しながら、図10に示したこの発明の実施の形態4に係る受動Qスイッチレーザ装置100Cの動作について説明する。
レーザ装置ユニット401において、受動Qスイッチレーザ101の発振光LO1の一部は、分離ミラー107が分離され、パルスタイミングモニタ108および周波数測定装置208に入射される。
【0105】
周波数測定装置208は、発振光LO1のパルス周波数Fpを計測し、電流制御手段211は、パルス周波数Fpがクロック信号DS1の周波数と一致するように、駆動電源112Bから受動Qスイッチレーザ101への励起源電流I1(オフセット電流Iave1)を制御する。
【0106】
Qスイッチレーザ101への励起源電流I1が適性化制御された後、パルスタイミングモニタ108は、受動Qスイッチレーザ101の発振光LO1のパルス出力タイミングを計測する。また、比較器110は、パルス出力タイミングの計測値と、分配器400により3等分に分配されたクロック信号DS1(周期信号)とを比較する。
【0107】
パルス発生電源111は、比較器110からのタイミング差分に応じて、受動Qスイッチレーザ101の発振光LO1のパルス出力タイミングとクロック信号DS1のタイミングとが一致するように、電流パルスIp11を生成して駆動電源112Bを制御する。
【0108】
同様に、各レーザ装置ユニット402、403においても、励起源電流I2、I2(オフセット電流Iave2、Iave3)を制御するとともに、電流パルスIp21、Ip32を生成して、発振光LO2、LO2のパルス出力タイミングとクロック信号DS2、DS3のタイミングとが一致するように、駆動電源112Bを制御する。
【0109】
図11は図10の受動Qスイッチレーザ装置100Cによる動作を示すタイミングチャートであり、レーザ装置ユニット401〜403内の各受動Qスイッチレーザ101が周波数制御(オフセット電流Iave1〜Iave3が適性化)された後の動作を示している。
【0110】
また、図11においては、基準クロック発生源109からの基準クロックCSと、分配器400により3等分に分配されたクロック信号DS1〜DS3と、各ユニット内の駆動電源112Bからの励起源電流I1〜I3と、各ユニットからの発振光LO1〜LO3と、各発振光LO1〜LO3を結合した発振光LOとの各時間波形を示している。
【0111】
図11において、基準クロック発生源109から発生する基準クロックCSは、所要のパルス周波数Fpと同周期t1の信号パルスC11〜C23(パルス列)からなる。
レーザ装置ユニット401に入力されるクロック信号DS1は、信号パルスC11、C14、C17、C20、C23と同期したパルス列であり、レーザ装置ユニット402に入力されるクロック信号DS2は、信号パルスC12、C15、C18、C21と同期したパルス列であり、レーザ装置ユニット403に入力されるクロック信号DS3は、信号パルスC13、C16、C19、C22と同期したパルス列である。
【0112】
レーザ装置ユニット401内の励起源電流I1は、オフセット電流Iave1に調整されるとともに、最大値IH1およびパルス幅τ1を有する正極性の電流パルスIp11が付加されている。
レーザ装置ユニット402内の励起源電流I2は、オフセット電流Iave2に調整されるとともに、最大値IH2およびパルス幅τ2を有する正極性の電流パルスIp21が付加されている。
【0113】
レーザ装置ユニット403内の励起源電流I3は、オフセット電流Iave3(>Iave1>Iave2)に調整されるとともに、最大値IL3およびパルス幅τ3(τ1>τ3>τ2)を有する負極性の電流パルスIp32が付加されている。
【0114】
レーザ装置ユニット401から出力される発振光LO1のタイミングは、レーザ装置ユニット401内のオフセット電流Iave1と、受動Qスイッチレーザ101内の可飽和吸収体の吸収長および濃度で決定される初期透過率と、共振器内の損失とにより決定される。
【0115】
同様に、他のレーザ装置ユニット402、403からは、それぞれ個々のオフセット電流Iave2、Iave3と、受動Qスイッチレーザ101内の可飽和吸収体の吸収長および濃度で決定される初期透過率と、共振器内の損失とにより決定されるランダムなタイミングで、発振光LO2、LO3が出力される。
【0116】
発振光LO1のパルス列は、初期(ランダムタイミング)の光パルスO11、O12と、クロック信号DS1(基準クロックC17、C20、C23)の立ち上がりタイミングに同期補正された光パルスO13〜O15とを含む。
これにより、タイミング同期補正後の発振光LOのパルス周波数Fpは、各クロック信号DS1〜DS3の周波数の3倍に設定されることになる。
【0117】
同様に、発振光LO2のパルス列は、初期の光パルスO21、O22と、クロック信号DS2(基準クロックC18、C21)の立ち上がりタイミングに同期補正された光パルスO23、O24とを含み、発振光LO3のパルス列は、初期の光パルスO31、O32と、クロック信号DS3(基準クロックC19、C22)の立ち上がりタイミングに同期補正された光パルスO33、O34とを含む。
【0118】
発振光LOのパルス列は、初期の光パルスO11、O21、O31を合成した光パルスO41と、初期の光パルスO12、O22、O32を合成した光パルスO42と、基準クロックC17〜C23の立ち上がりタイミングに同期補正された光パルスO13〜O15、O23、O24、O33、O34とを含む。
【0119】
光学系からなる結合手段410は、発振光LO1〜LO3(互いに異なる偏光のレーザ光)を合成して最終的な発振光LOを生成するために、たとえば偏光ビームスプリッタなどを用いて偏波合成して、各発振光LO1〜LO3を同一光軸に出射してもよい。
また、結合手段410は、各レーザ光の波長を変えてフィルタで合成する波長合波などを用いることにより、各発振光LO1〜LO3を同一光軸に結合して出射することもできる。
【0120】
以上のように、この発明の実施の形態4(図10、図11)に係るマルチモジュール形式の受動Qスイッチレーザ装置100Cは、図8の受動Qスイッチレーザ装置100Bをレーザ装置ユニットとして、レーザ装置ユニットをn個(nは2以上の整数)並列配置して構成されており、たとえば、3個のレーザ装置ユニット401〜403に対して、周波数が同一で互いに位相が異なる3個のクロック信号DS1〜DS3を個別に入力する。
【0121】
これにより、3個のレーザ装置ユニット401〜403から出射される各発振光LO1〜LO3を合成した発振光LOのパルス周波数Fpは、基準クロックCSの周波数(各クロック信号DS1〜DS3の周波数の3倍)に設定される。
すなわち、n個(n≧2)のレーザ装置ユニット(受動Qスイッチレーザ装置)を組み合わせることにより、周波数のばらつきを小さく抑制しつつ、パルス周波数Fpがレーザ装置ユニットの単体に対してn倍となる受動Qスイッチレーザ装置を得ることができる。
【0122】
したがって、超小型な平面導波路型の受動Qスイッチパルスレーザや、マイクロチップの受動Qスイッチパルスレーザにおいて、パワースケーリングの向上やパルス送信周波数(PRF:Pulse Repetition Frequency)の高周波化が可能となり、システムとして小型で、高効率、高信頼性なレーザシステムが実現可能となる。
【0123】
実施の形態5.
なお、上記実施の形態4(図10、図11)では、分配器400を介して各レーザ装置ユニットの制御タイミングの位相を互いに異なるように設定し、最終的なパルス周波数がレーザ装置ユニットの単体に対してn倍となる受動Qスイッチレーザ装置100Dを構成したが、図12、図13のように、分配器400を削除して各レーザ装置ユニットの制御タイミングを同期させ、最終的なピークパワーがレーザ装置ユニットの単体に対してn倍となる受動Qスイッチレーザ装置100Dを構成してもよい。
【0124】
図12はこの発明の実施の形態5の構成を示すブロック図であり、前述(図10参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して、または符号の後に「D」を付して詳述を省略する。
また、ここでは、前述と同様に、レーザ装置ユニット数nが「3」の場合を示しているが、nは2以上の任意数に設定され得る。
【0125】
図12において、マルチモジュール形式の受動Qスイッチレーザ装置100Dは、基準クロックCSを出力する基準クロック発生源109と、3個のレーザ装置ユニット401〜403と、レーザ装置ユニット401〜403からの各発振光LO1〜LO3を合成して最終的な発振光LOを出力する結合手段410と、を備えている。
【0126】
各レーザ装置ユニット401〜403は、前述と同様の受動Qスイッチレーザ101と、分離ミラー107、207と、パルスタイミングモニタ108と、比較器110と、パルス発生電源111と、駆動電源112Bと、周波数測定装置208と、電流制御手段211と、を備えている。
【0127】
レーザ装置ユニット401〜403において、各比較器110には、基準クロック発生源109からの基準クロックCSと、パルスタイミングモニタ108からのパルス出力タイミングとが入力され、各受動Qスイッチレーザ101からは、発振光LO1〜LO3が出射される。
【0128】
以下、同一構成からなるレーザ装置ユニット401〜403のうち、代表的に、1つのレーザ装置ユニット401に注目して説明する。
レーザ装置ユニット401内の比較器110は、基準クロックCSと、パルスタイミングモニタ108で計測された発振光LO1のパルス出力タイミングとを比較して、タイミング差分をパルス発生電源111に入力する。
【0129】
周波数測定装置208は、発振光LO1のパルス周波数Fpを電流制御手段211に入力する。
駆動電源112Bは、電流制御手段211からの補正オフセット電流Icにより、パルス周波数Fpが目標周波数と一致するように、励起源電流I1のオフセット電流Iave1を適性化するとともに、パルス発生電源111からの電流パルスIp11により、発振光LO1のパルス出力タイミングを基準クロックCSの立ち上がりタイミングと同期させる。
【0130】
なお、図12においては、図示を省略しているが、レーザ装置ユニット402、403内の駆動電源112Bは、各々の励起源電流I2、I3のオフセット電流Iave2、13を適性化するとともに、パルス発生電源111からの電流パルスIp21、Ip32により、各発振光LO2、LO3のパルス出力タイミングを基準クロックCSの立ち上がりタイミングと同期させる。
【0131】
次に、代表的に1つのレーザ装置ユニット401に注目しながら、図12に示したこの発明の実施の形態5に係る受動Qスイッチレーザ装置100Dの動作について説明する。
レーザ装置ユニット401において、受動Qスイッチレーザ101の発振光LO1の一部は、分離ミラー107が分離され、パルスタイミングモニタ108および周波数測定装置208に入射される。
【0132】
周波数測定装置208は、発振光LO1のパルス周波数Fpを計測し、電流制御手段211は、パルス周波数Fpが基準クロックCSの周波数と一致するように、駆動電源112Bから受動Qスイッチレーザ101への励起源電流I1(オフセット電流Iave1)を制御する。
【0133】
Qスイッチレーザ101への励起源電流I1が適性化制御された後、パルスタイミングモニタ108は、受動Qスイッチレーザ101の発振光LO1のパルス出力タイミングを計測する。また、比較器110は、パルス出力タイミングの計測値と、基準クロックCS(周期信号)とを比較する。
【0134】
パルス発生電源111は、比較器110からのタイミング差分に応じて、受動Qスイッチレーザ101の発振光LO1のパルス出力タイミングと基準クロックCSのタイミングとが一致するように、電流パルスIp11を生成して駆動電源112Bを制御する。
【0135】
同様に、各レーザ装置ユニット402、403においても、励起源電流I2、I2(オフセット電流Iave2、Iave3)を制御するとともに、電流パルスIp21、Ip32を生成して、発振光LO2、LO2のパルス出力タイミングと基準クロックCSのタイミングとが一致するように、駆動電源112Bを制御する。
【0136】
図13は図12の受動Qスイッチレーザ装置100Dによる動作を示すタイミングチャートであり、前述(図11参照)と同様の波形には、前述と同一符号が付されている。
図13においては、レーザ装置ユニット401〜403内の各受動Qスイッチレーザ101が周波数制御(オフセット電流Iave1〜Iave3が適性化)された後の動作を示しており、基準クロック発生源109からの基準クロックCSと、各ユニット内の駆動電源112Bからの励起源電流I1〜I3と、各ユニットからの発振光LO1〜LO3と、各発振光LO1〜LO3を結合した発振光LOとの各時間波形を示している。
【0137】
図13において、基準クロック発生源109から発生する基準クロックCSは、所要のパルス周波数Fpと同周期t1の信号パルスC11〜C15(パルス列)からなる。
レーザ装置ユニット401内の励起源電流I1は、オフセット電流Iave1に調整されるとともに、最大値IH1およびパルス幅τ1を有する正極性の電流パルスIp11が付加されている。
【0138】
レーザ装置ユニット402内の励起源電流I2は、オフセット電流Iave2に調整されるとともに、最大値IH2およびパルス幅τ2を有する正極性の電流パルスIp21が付加されている。
【0139】
レーザ装置ユニット403内の励起源電流I3は、オフセット電流Iave3(>Iave1>Iave2)に調整されるとともに、最大値IL3およびパルス幅τ3(τ1>τ3>τ2)を有する負極性の電流パルスIp32が付加されている。
【0140】
レーザ装置ユニット401から出力される発振光LO1のタイミングは、レーザ装置ユニット401内のオフセット電流Iave1と、受動Qスイッチレーザ101内の可飽和吸収体の吸収長および濃度で決定される初期透過率と、共振器内の損失とにより決定される。
【0141】
同様に、他のレーザ装置ユニット402、403からは、それぞれ個々のオフセット電流Iave2、Iave3と、受動Qスイッチレーザ101内の可飽和吸収体の吸収長および濃度で決定される初期透過率と、共振器内の損失とにより決定されるランダムなタイミングで、発振光LO2、LO3が出力される。
【0142】
発振光LO1のパルス列は、初期(ランダムタイミング)の光パルスO11、O12と、基準クロックCS13、14、15の立ち上がりタイミングに同期補正された光パルスO13〜O15とを含む。
【0143】
同様に、発振光LO2のパルス列は、初期の光パルスO21、O22と、基準クロックCS13、14、15の立ち上がりタイミングに同期補正された光パルスO23、O24、O25とを含み、発振光LO3のパルス列は、初期の光パルスO31、O32と、基準クロックCS13、14、15の立ち上がりタイミングに同期補正された光パルスO33、O34、O35とを含む。
【0144】
最終的な発振光LOのパルス列は、初期の光パルスO11、O21、O31を合成した光パルスO41と、初期の光パルスO12、O22、O32を合成した光パルスO42と、基準クロックCS13、14、15の立ち上がりタイミングに同期補正された後の光パルスO13〜O15、O23〜O25、O33〜O35を各出射タイミングで合成した光パルスO43〜O45とを含む。
【0145】
光学系からなる結合手段410は、発振光LO1〜LO3(互いに異なる偏光のレーザ光)を合成して最終的な発振光LOを生成するために、たとえば偏光ビームスプリッタなどを用いて偏波合成して、各発振光LO1〜LO3を同一光軸に出射してもよい。
また、結合手段410は、各レーザ光の波長を変えてフィルタで合成する波長合波などを用いることにより、各発振光LO1〜LO3を同一光軸に結合して出射することもできる。
【0146】
以上のように、この発明の実施の形態5(図12、図13)に係るマルチモジュール形式の受動Qスイッチレーザ装置100Dは、図8の受動Qスイッチレーザ装置100Bをレーザ装置ユニットとして、レーザ装置ユニットをn個(nは2以上の整数)並列配置して構成されており、たとえば、3個のレーザ装置ユニット401〜403に対して、周波数が同一で互いに同相の基準クロックCSを個別に入力する。
【0147】
これにより、3個のレーザ装置ユニット401〜403から出射される各発振光LO1〜LO3を合成した発振光LOのピークパワーは3倍に増加する。すなわち、n個(n≧2)のレーザ装置ユニット(受動Qスイッチレーザ装置)を組み合わせることにより、ピークパワーがレーザ装置ユニットの単体に対してn倍となる受動Qスイッチレーザ装置を得ることができる。
【0148】
したがって、超小型な平面導波路型の受動Qスイッチパルスレーザや、マイクロチップの受動Qスイッチパルスレーザにおいて、パワースケーリングの向上やパルス送信周波数(PRF:Pulse Repetition Frequency)の高周波化が可能となり、システムとして小型で、高効率、高信頼性なレーザシステムが実現可能となる。
【符号の説明】
【0149】
100、100A、100B、100C、100D 受動Qスイッチレーザ装置、101 受動Qスイッチレーザ、102 励起源、103 レーザ媒質、104 反射防止膜、105 可飽和吸収体、106 出力反射鏡、107、207 分離ミラー、108 パルスタイミングモニタ、109 基準クロック発生源、110 比較器、111 パルス発生電源、112、112、112A、112B 駆動電源、208 周波数測定装置、211 電流制御手段、400 分配器、401〜403 レーザ装置ユニット、410 結合手段、C1〜C5、C11〜C23、Ci 信号パルス、CS 基準クロック、DS1〜DS3 クロック信号、Fp パルス周波数、I 励起源電源、I、I1〜I3 励起源電流、Iave、Iave0、Iave1〜Iave3 オフセット電流、Ic 補正オフセット電流、IH、IH1、IH2、IL、IL3 最大値、Ip、Ip1、Ip2、Ip11、Ip21、Ip32 電流パルス、LO1〜LO3 発振光、LP 励起光、O1〜O5、O11〜O15、O21〜O25、O31〜O35、O41〜O45、Oi、Oj 光パルス、Pave、Pave0 オフセットパワー、PH、PL 最大値、Pp1 励起光パルス、Pp2 励起光パルス、t1〜t5 パルス周期、τ、τ1〜τ3 パルス幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起源および共振器を有し、前記励起源により励起された発振光を前記共振器から出力する受動Qスイッチレーザと、
前記励起源に一定のオフセット電流を供給する駆動電源と、
前記オフセット電流に電流パルスを付加するパルス発生電源と、を備え、
前記電流パルスにより、前記発振光のパルス出力タイミングを制御することを特徴とする受動Qスイッチレーザ装置。
【請求項2】
前記パルス発生電源は、前記発振光の光パルスが発生していない時間に前記電流パルスを付加することを特徴とする請求項1に記載の受動Qスイッチレーザ装置。
【請求項3】
励起源および共振器を有し、前記励起源により励起された発振光を前記共振器から出力する受動Qスイッチレーザと、
前記励起源に対して励起源電流を供給する駆動電源と、
前記発振光のパルス周波数を測定する周波数測定装置と、を備え、
前記駆動電源は、前記励起源電流により、前記パルス周波数が所望の目標周波数と一致するように制御することを特徴とする受動Qスイッチレーザ装置。
【請求項4】
前記発振光のパルス周波数を測定する周波数測定装置を備え、
前記駆動電源は、
前記オフセット電流により、前記発振光のパルス周波数が所望の基準クロックの周波数とほぼ一致するように制御するとともに、
前記オフセット電流に付加された前記電流パルスにより、前記発振光のパルス出力タイミングが前記基準クロックとほぼ一致するように制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の受動Qスイッチレーザ装置。
【請求項5】
前記周波数測定装置と前記駆動電源との間に挿入された電流制御手段を備え、
前記電流制御手段は、前記パルス周波数を前記目標周波数に一致させるための補正オフセット電流を出力し、
前記駆動電源は、前記補正オフセット電流が付加された励起源電流を前記励起源に供給することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の受動Qスイッチレーザ装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の受動Qスイッチレーザ装置をレーザ装置ユニットとして、前記レーザ装置ユニットをn個(nは2以上の整数)並列配置し、
前記n個のレーザ装置ユニットに対して、周波数が同一で互いに位相が異なるn個のクロック信号を個別に入力することにより、
前記n個のレーザ装置ユニットから出射される各発振光を合成した発振光のパルス周波数を、前記n個のクロック信号の各々の周波数のn倍に設定したことを特徴とする受動Qスイッチレーザ装置。
【請求項7】
請求項4または請求項5に記載の受動Qスイッチレーザ装置をレーザ装置ユニットとして、前記レーザ装置ユニットをn個(nは2以上の整数)並列配置し、
前記n個のレーザ装置ユニットに対して、周波数が同一で互いに同位相のクロック信号を個別に入力することにより、
前記n個のレーザ装置ユニットから出射される各発振光を合成した発振光のピークパワーを、n倍に設定したことを特徴とする受動Qスイッチレーザ装置。
【請求項8】
前記n個のレーザ装置ユニットから出射される各発振光を同一光軸に結合するための光学系を備えたことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の受動Qスイッチレーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−142523(P2012−142523A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1231(P2011−1231)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】