説明

可変分散補償器

【課題】従来技術の導波路型の可変分散補償器は、高分散値が付与可能であってしかも位相制御の柔軟性に優れたLCOSなどの空間位相変調器を使用することができない欠点を持っていた。導波路型の位相変調器は与えられる位相差量が限定され、分散補償器に大きな波長分散を設定できない。2つのアレイ導波路の中心波長を正確に一致させないと結合損失を生じる。一般的なアレイ導波路の製造誤差より小さい精度値が要求され、特殊な製造プロセスが必要となる。
【解決手段】PLCおよび空間光学系を組み合わせ、構成要素を線対称に配置することにより、動作帯域の周辺帯域における光結合損失を大幅に低減する。反射型の空間位相変調器を利用できる。LCOSなどの反射型の空間位相変調器を利用することができるため、大きな分散補償値を設定することが可能となり、より柔軟な分散補償パターンを実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ通信等において利用される分散補償器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の急速な発展を見せる大容量の光通信ネットワークシステムは、従来主流であったポイントツーポイント型のシステムからリング・メッシュ型の構成のシステムへ移りつつある。リング・メッシュ型構成のシステムは、光信号を光の状態のままで処理するトランスペアレントな波長選択スイッチ等を用いることにより、ノード間の通信需要の変化に柔軟に対応ができるためである。具体的には、波長パスの動的切り替えによって、新規のパスの開通ならびに廃止に伴う現地作業量を大幅に減らすことができる利点を持つ。しかしながら、リング・メッシュ型のネットワークにおいては、波長パスの切り替えに伴って、パスの長さも変化してしまうため、そのパスの波長分散値も動的に変化してしまう。
【0003】
従来の分散補償器は、分散補償ファイバや分散補償量が固定されたタイプのものであり、上述のようなリング・メッシュ型構成のネットワークで波長パスの距離が異なる場合に、WDM波長ごとに異なる分散値を設定することはできなかった。このため、光通信における波長パスの分散補償にも適応性が求められている。
【0004】
一方、信号処理装置の小型化・集積化の点から、導波路型光回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)の開発研究が進められている。PLCでは、例えばシリコン基板上に石英系ガラスを材料としたコアを形成して1つのチップに多様な機能を集積し、低損失で信頼性の高い光機能デバイスが実現されている。さらには、複数のPLCチップと他の光機能部品を組み合わせた複合的な光信号処理部品(装置)も登場している。
【0005】
例えば、特許文献1には、アレイ導波路格子(以下、AWGという)などを含む導波路型光回路(PLC)と液晶素子などの空間変調素子を組み合わせた、光信号処理装置が開示されている。より具体的には、液晶素子を中心として対称に配置されたPLC、コリメートレンズからなる波長ブロッカをはじめ、波長イコライザ、分散補償器などの検討が進められている。これらの光信号処理装置では、異なる波長を持つ複数の光信号に対して、波長毎に独立して光信号処理を行う。
【0006】
図11は、PLCを利用した可変分散補償器の一例を示す構成図である。分散補償を適用する入力光信号100は、可変分散補償器200により所定の分散値を与えられ、出力光信号106が得られる。入力光信号100が入力される入力導波路101は、まず第1のAWGへ接続され入力光信号が分波される。第1のAWGは、第1のスラブ導波路102a、第1のアレイ導波路103aおよび第2のスラブ導波路102bにより構成される。分波された光信号は、位相変調器107へ入力される。位相変調器107において、波長毎に所定の位相差が与えられた後に、第2のAWGへ入力されて合波される。第2のAWGは、第3のスラブ導波路102c、第2のアレイ導波路103bおよび第4のスラブ導波路102dにより構成される。第4のスラブ導波路102dは、出力導波路104に接続されている。
【0007】
導波路型の位相変調器107において、波長に対して2次関数によって表される位相差φを光信号に与える。すなわち、2次関数の係数に対応する分散補償値が光信号に与えられる。図11には位相変調器107は示されていないが、例えば温度可変ヒータを含み、温度制御を行なうことにより、位相変調器107内の導波路屈折率を変化させることができる。この温度制御によって、波長パスに応じて付与する位相差を変化させて、可変分散補償を実現することができる。
【0008】
【特許文献1】特開2002−250828号公報(第16頁、19頁、第20図、第27図、第29D図など)
【特許文献2】米国特許第7,203,400号 明細書
【特許文献3】米国特許第7,106,923号 明細書
【非特許文献1】C. R. Doerr, et al. “Four-Stage Mach-Zehnder-Type Tunable Optical Dispersion Compensator With Single-Knob Control,” IEEE Photonics Technol. Lett., Vol. 17, No. 12, 2005, pp. 2637-2639
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図11に示したPLCを利用した可変分散補償器においては、透過帯域幅が制限されて、広帯域の光信号処理に制限を与える問題があり、十分な性能を持つものではなかった。図11において、可変分散補償器200内を伝播する光信号の光路に着目する。対象とする波長帯域の中心周波数λ0を持つ光信号は、光路50により示されるように、第1のAWGにおいて第1のアレイ導波路103aからほぼ出射角度0°で出射し、位相変調器107の中央付近を通過して所定の位相差を付与される。その後、第2のAWGにおいても、第1のAWGと同様な光路を辿って、第4のスラブ導波路102dの端面Aにおいて、垂直に出力導波路104へ入射する。
【0010】
しかしながら、対象とする波長帯域の中心波長λ0から離れた帯域端部の周辺波長を持つ光信号は、破線で示した光路51のように、出力導波104に対して斜めに入射するために原理的に光結合損失を生じる。周辺波長を持つ光信号は、第1のアレイ導波路103aからある出射角度を持って分波され、位相変調器107の中央部を外れた位置を通過して所定の位相差を付与される。その後、第2のアレイ導波路103bに入射した光信号は、第4のスラブ導波路102dの端面Aにおいては、出力導波路104に対して垂直ではなく、ある角度θを持って入射する。中心波長λ0から離れるほどこのθは大きくなるため、端面Aにおいて発生する光結合損失も増加する。したがって、可変分散補償器の透過特性に着目すると、中心波長λ0から離れるほど光透過率は低下する。
【0011】
図12は、可変分散補償器における光結合損失による透過特性の帯域制限を説明する図である。上述した周辺波長帯域における光結合損失によって、可変分散補償器の透過率は、図12の実線で示したように透過帯域の両端で低下する。可変分散補償器を一定の性能で動作させるためには、一定値以上の透過率を持つ波長範囲にその動作範囲は限られる。したがって、透過率の低下は、可変分散補償器の使用可能な帯域幅を制限することになる。高速の光信号処理を要する広帯域の光信号に対して分散補償を行なうためには、分散補償器の広帯域化が必須であり、上述の出力導波路の接続面における光結合損失に起因する過剰損失を解消する必要がある。尚、上記の光結合損失は、説明の便宜のために出力導波路104に対する光信号の入射角度θの問題として説明した。しかし、出射導波路104側を基点として、出射導波路104から光路を辿る場合には、入射導波路101と第1のスラブ導波路の境界面においても同様の問題が生じる。上述の可変分散補償器の透過帯域の制限の問題を解決する方法として、2つのPLC型の可変分散補償回路を点対称に配置して接続した可変分散補償器が提案されている(非特許文献2)。
【0012】
図13は、従来技術における点対称な構造を持つPLC型の可変分散補償器の構成を示す図である。本可変分散補償器201は、図11に示した構成の可変分散補償器を2つ従属に接続した構成を持つ。すなわち、第1の可変分散補償器111aと第2の可変分散補償器111bが、接続面112の中央点に対して全体で点対称の構成となるように配置されている。各可変分散補償器の構成は、図11で説明した分散補償器と同一であるので、詳細な説明は省略するが、各可変分散補償器がそれぞれ位相変調器107a、107bを持つことに注意されたい。すなわち、可変分散補償器201においては、光信号は位相変調器を2回通過するので、図11に示した構成と比較すれば2倍の分散補償値が与えられる。
【0013】
図13に示した構成においては、第2の可変分散補償器111bのスラブ導波路102hと出力導波路104とが接続される端面Aにおいて、常に光信号が出力導波路104へ垂直に入射する点に特徴があった。すなわち、可変分散補償器の対象とする中心波長λ0であるか否かに関わらず、光路50で示されるように、どの波長の光信号も出力導波路104に対して垂直に光信号が入射するため、出力導波路104において光軸ずれが生じない。したがって、波長に関係なく光結合損失は生じない。これは、本可変分散補償器201の各要素が、スラブ導波路102dとスラブ導波路102eとの境界線112の中間点を中心として、点対称に配置構成されているためである。本構成によって、図12の実線で示した周辺波長帯域の透過率低下が大幅に抑制され、透過帯域は平坦化されて広帯域化を実現できる。
【0014】
しかしながら、図13に示した構成の可変分散補償器は、2つの可変分散補償器を縦続接続した構成であるため、全体で4つのアレイ導波路103a〜103dと8つのスラブ導波路102a〜102hを含み、多数の要素から構成される。したがって、PLCを構成する基板上に大規模な回路を形成する必要がある。1つの分散補償器201を構成するためのチップ面積は大きくなり、コストが高い。さらに、回路構成の複雑さのため製造歩留まりの低下の可能性がある。また、全体回路の大きさに起因する光学損失も大きくなる。上記のチップ面積の大きさおよび回路構成の複雑さなどの問題を解消するものとして、次に説明する線対称構造を持つ可変分散補償器がある。
【0015】
図14は、他の従来技術に係る可変分散補償器を示す構成図である。本可変分散補償器は、入力導波路101および出力導波路104の間に、6つのスラブ導波路102a〜102fと、3つのアレイ導波路103a〜103cが接続された構成を持つ。アレイ導波路103bの各導波路中間点を含む横断線(X1−X2)を対称軸として、線対称な構造を持ち、この対称軸をはさんで2つの可変分散補償器131a、131bが構成されているところに特徴がある。本構成も、光信号は入力導波路101から出力導波路104へ一方向に伝播し、いわゆる透過型の構成を持つ。(特許文献3、非特許文献1を参照)
【0016】
光信号が伝播する光路を入力導波路101側からたどって、その構成を詳述すれば、入力導波路101は、最初に第1のスラブ導波路102aに接続される。光信号は、さらに、第1のアレイ導波路103aにより分波されて、第2のスラブ導波路102bおよび第3のスラブ導波路102cを伝播する。第2のスラブ導波路102bおよび第3のスラブ導波路102cの中間には、導波路型の第1の位相変調器107aがある。第3のスラブ導波路102cは、さらにアレイ導波路103bに接続される。ここで、第2のアレイ導波路103bの各導波路は、第1のアレイ導波路103aと比べて、それぞれ2倍の隣接導波路間光路差を持ち、各導波路の中間点を含む線(X1−X2)に対して、線対称の構造を持っている。したがって、第2のアレイ導波路103bは、2つの第1のアレイ導波路103aを鏡面対称に連結して配置したものと同一構成であることに留意されたい。
【0017】
先にも述べたように、第1のスラブ導波路から第2のスラブ導波路の線対称軸(X1−X2)までの第1の部分によって、第1の可変分散補償器131aが構成される。さらに、第2のスラブ導波路の対称軸(X1―X2)より他方の第2の部分から、第4のスラブ導波路102d、第5のスラブ導波路102e、第3のアレイ導波路103cおよび第6のスラブ導波路102fまでによって、第2の可変分散補償器131bが構成される。第4のスラブ導波路102dおよび第5のスラブ導波路102eの中間には、導波路型の第2の位相変調器107bを備える。
【0018】
第1のスラブ導波路102aおよび第6のスラブ導波路102f、第2のスラブ導波路102bおよび第5のスラブ導波路102eならびに第3のスラブ導波路102cおよび第4のスラブ導波路103dは、それぞれ同一形状を持ち、(X1−X2)軸に対して線対称に配置されている。したがって、本可変分散補償器は、全体として、対称軸(X1−X2)に対し、線対称の構造を持つ。
【0019】
図13に示した最初の従来技術の可変分散補償器の構成も参照すれば、図14に示した可変分散補償器においても、光信号の光路に光軸ずれは生じないことが容易に理解できるだろう。ここでは、簡単のため、線対称軸(X1−X2)における光路に着目する。可変分散補償器の対象とする波長帯域の中心波長λ0を持つ光信号は、光路50をたどりながら、位相変調器107a、107bのそれぞれ中央を透過して所定の位相差を与えられる。一方、対象とする波長帯域の中心波長λ0から離れた帯域端部の周辺波長を持つ光信号について見ると、破線で示した光路51をたどる。光路51を伝播する光信号は、位相変調器107a、107bの中央から外れた位置を透過して所定の位相差を与えられるとともに、第2のアレイ導波路103bの周辺部を伝播する。ここで、第2のアレイ導波路103bの構造の対称性および可変分散補償器全体の構成の対称性から、入力側および出力側のいずれから光路51を追跡しても、光路51は対称軸上において滑らかに連続し、光軸ずれは生じないことが理解されるだろう。
【0020】
図13に示した従来技術の構成と比較すれば、図14に示した従来技術の可変分散補償器の構成は、入力と出力とを回路全体の同じ側に揃え、概ね図13に示した構成全体を折り返した構造となっている。したがって、回路の全長は短く、図13の構成と比較してチップ面積を減らすことができる。また、回路構成要素の数がより少ないので、光損失を低減することができる。
【0021】
図13に示した構成要素の配置は、本質的に点対称の構成であるので、ミラーを使用した反射型の線対称の構成に適用することもできない。これは、図13に示した構成が透過型の可変分散補償器だけにしか適用できず、一般に小型化および低コスト化の点で優れた反射型の可変分散補償器へは適用できないことを意味している。また、図13に示した構成における位相変調器は、透過型で導波路型の構成のものに限定されていた。したがって、背景技術において述べたような液晶などを利用した空間位相変調素子を利用することができなかった。
【0022】
図14に示した従来技術の可変分散補償器は、線対称の構成によって回路の小型化を実現している。しかし、図13に示した可変分散補償器と同様に、例えば、分散補償器全体で高分散値が付与可能であってしかも位相制御の柔軟性に優れた、LCOS(Liquid crystal on silicon)などの空間位相変調器を使用することができない欠点を持っていた。導波路型の位相変調器は、与えられる位相差量が限定されており、分散補償器に大きな波長分散を与えられない。例えば、FSRが100GHzのアレイ導波路および熱光学位相変調器を用いた導波路型位相変調器を利用した場合は、高々±100ps/nm程度の分散補償値しか得られない。
【0023】
また、従来技術の可変分散補償器では、2つのアレイ導波路の中心波長を正確に一致させないと結合損失を生じる。特に、大きな波長分散を得るためにFSRの小さいアレイ導波路を用いると、必要とされる波長精度が非常に高くなる。例えば、100GHzのFSRの場合、0.01nm程度の精度が要求される。これは、一般的なアレイ導波路の製造誤差より小さい精度値となり、特殊な製造プロセスが必要となる。
【0024】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、透過帯域を平坦とした広帯域な特性を持ち、さらにより大きな位相差によって高い分散補償値を与えられる可変分散補償器を実現することにある。柔軟な位相設定が可能な空間位相変調器を利用可能として、より柔軟性の高い可変分散補償性能を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、入力光信号を波長に応じた角度で出射する第1の分光手段と、前記第1の分光手段から出射された光信号を集光させる第1の集光手段と、前記第1の分光手段および前記第1の集光手段により形成される線分散軸に対して、前記第1の集光手段によって集光された光信号に所定の位相量を付与する第1の空間位相変調器と、前記第1の空間位相変調器から出射される光信号を平行化する第2の集光手段と、前記第1の空間位相変調器の位置を中心として前記第1の分光手段に対向して配置され、前記第2の集光手段により平行化された光信号を波長に依存しない等位相面を持って出射する第2の分光手段と、前記等位相面を介して前記第2の分光手段に連接され、前記等位相面を持つ光信号を波長に応じた角度で出射する第3分光手段と、前記第3の分光手段から出射された光信号を集光させる第3の集光手段と、前記第3の分光手段および前記第3の集光手段により形成される線分散軸に対して、前記第3の集光手段によって集光された光信号に所定の位相量を付与する第2の空間位相変調器と、前記第2の空間位相変調器から出射される光信号を平行化する第4の集光手段と、前記第2の空間位相変調器の位置を中心として前記第3の分光手段に対向して配置された第4の分光手段とを備え、前記第1の分光手段および前記第1の集光手段により決定される線分散値と、前記第2の分光手段および前記第2の集光手段により決定される線分散値とが等しい第1の線分散値を持ちかつ前記第1の位相変調器上における分散方向が等しく、前記第3の分光手段および前記第3の集光手段により決定される線分散値と、前記第4の分光手段および前記第4の集光手段により決定される線分散値とが、等しい第2の線分散値を持ちかつ前記第2の位相変調器上における分散方向が等しく、ならびに、前記第2の集光手段、前記第2の分光手段、前記第3の分光手段および前記第3の集光手段により決定される線分散値が、前記第1の線分散値および前記第2の線分散値の和となることを特徴とする分散補償器である。
【0026】
請求項2の発明は、請求項1に記載の可変分散補償器であって、前記第1の分光手段および前記第4の分光手段は、基板上に形成された、少なくとも1つの入力導波路と、前記入力導波路に接続するスラブ導波路と、前記スラブ導波路に接続し隣接する導波路が一定の光路長差を持つ複数の導波路からなるアレイ導波路とを有し、前記アレイ導波路の導波光を前記基板の端面から空間に結合するよう構成されることと、前記第2の分光手段および前記第3の分光手段は、基板上に形成され、前記等位相面を介して各々が連接され、隣接する導波路が一定の光路長差を持つ複数の導波路からなるアレイ導波路をそれぞれ有し、前記各アレイ導波路の導波光は前記等位相面の反対の各端面から空間に結合するようそれぞれ構成されることとを特徴とする。
【0027】
請求項3の発明は、入力光信号を波長に応じた角度で出射する第1の分光手段と、前記第1の分光手段から出射される光信号を集光させる第1の集光手段と、前記第1の分光手段および前記第1の集光手段により形成される線分散軸に対して、前記第1の集光手段で集光された光信号に所定の位相量を付与する空間位相変調器と、前記空間位相変調器から出射される光信号を平行化する第2の集光手段と、前記空間位相変調器の位置を中心として前記第1の分光手段に対向して配置され、前記第2の集光手段により平行化された光信号を波長に依存しない等位相面を持って出射する第2の分光手段と、前記等位相面において光信号の光路を折り返すミラーとを備え、前記第1の分光手段および前記第1の集光手段により決定される線分散値と、前記第2の分光手段および前記第2の集光手段により決定される線分散値とが等しい線分散値を持ちかつ前記空間位相変調器上における分散方向が等しいことを特徴とする分散補償器である。
【0028】
請求項4の発明は、入力光信号を波長に応じた角度で出射する第1の分光手段と、前記第1の分光手段から出射された光信号を集光させる第1の集光手段と、前記第1の集光手段から出射された光信号を平行化する第2の集光手段と、前記第2の集光手段から出射される光信号を波長に依存しない等位相面を持って出射する第2の分光手段と、前記等位相面において光信号の光路を折り返すミラーとを備え、前記第1の分光手段および前記第1の集光手段により決定される線分散値と、前記第2の分光手段および前記第2の集光手段により決定される線分散値とが等しい線分散値を持ち、かつ、前記第1の分光手段および前記第2の分光手段の間の光路中間点にある主光軸垂直面における分散方向が等しいことと、前記第1の分光手段および前記第2の分光手段の間の光路中間点にある主光軸垂直面において、前記第1の分光手段および前記第1の集光手段により形成される線分散軸および前記第2の分光手段および前記第2の集光手段により形成される線分散軸に対して、それぞれ等しい量の位相量を光信号に付与できるように、前記第1の分光手段と前記第1の集光手段との間の光学距離、および、前記第2の集光手段と前記第2の分光手段の間の光学距離とを対応させながら可変させる移動機構をさらに備えたことを特徴とする分散補償器である。
【0029】
請求項5の発明は、請求項3に記載の可変分散補償器であって、前記空間位相変調器は反射型であり、前記第1の集光手段および前記第2の集光手段を1つの集光手段により兼ねていることを特徴とする。
【0030】
請求項6の発明は、請求項4に記載の可変分散補償器であって、前記第1の集光手段および前記第2の集光手段との間の光路中間点に光路変換ミラーをさらに備え、前記第1の集光手段および前記第2の集光手段を1つの集光手段により兼ねていることを特徴とする。
【0031】
請求項7の発明は、請求項5または6に記載の可変分散補償器であって、前記第1の分光手段および前記第2の分光手段は、分光面を共通として同一基板上に形成されたアレイ導波路型分光手段、または、各分光面に垂直方向に並列にそれぞれスタック配置されたアレイ導波路型分光手段であることを特徴とする。
【0032】
請求項8の発明は、請求項3乃至7いずれかに記載の可変分散補償器であって、前記第1の分光手段は、基板上に形成した、少なくとも1つの入出力導波路と、前記入出力導波路に接続するスラブ導波路と、前記スラブ導波路に接続し隣接する導波路が一定の光路長差を持つ複数の導波路からなるアレイ導波路とを有し、前記アレイ導波路の導波光を前記基板の端面から空間に結合するよう構成されることと、前記第2の分光手段は、隣接する導波路が一定の光路長差を持つ複数の導波路からなるアレイ導波路を有し、前記アレイ導波路の導波光は前記等位相面とは反対側の基板端面から空間に結合するよう構成されることを特徴とする。
【0033】
請求項9の発明は、請求項8に記載の可変分散補償器であって、前記第2の分光手段の前記アレイ導波路と前記ミラーとの間に、波面傾斜要素をさらに備え、前記第1の分光手段の前記スラブ導波路の異なる接合点において、2つの入出力導波路と光結合されることを特徴とする。
【0034】
請求項10の発明は、請求項1乃至9いずれかに記載の可変分散補償器であって、前記第1の分光手段および前記第2の分光手段の少なくとも1つは、集光性の信号光を出射し、前記少なくとも1つの集光手段の集光機能を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本発明によれば、透過帯域を平坦化した広帯域な透過率特性を持ち、さらに、大きな位相差を設定することでより高い分散補償値を与えられる可変分散補償器を実現できる。柔軟な位相設定が可能な空間位相変調器を利用可能として、柔軟性の高い可変分散補償性能を実現し、AWGの製造誤差の条件も緩和することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の可変分散補償器は、PLCおよび空間光学系を組み合わせ、構成要素を線対称に配置することにより、動作帯域の周辺帯域における光結合損失を大幅に低減する。反射型の空間位相変調器を利用できる構成にも特徴がある。LCOSなどの反射型の空間位相変調器を利用することができるため、大きな分散補償値を設定することが可能となり、より柔軟な分散補償パターンを実現することができる。
【0037】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る空間光学系を含む可変分散補償器を示す構成図である。本発明の可変分散補償器は、PLC構成のアレイ導波路型回路および空間位相変調器を含む空間光学系を組み合わせた構成を持つ。空間光学系を介して、2つのアレイ導波路回路が対向して配置され、それぞれの中心波長光軸を容易に一致させる事ができる。
【0038】
より詳細には、PLCによる導波路型の回路として、第1のAWG10aは、入力導波路1、スラブ導波路2およびアレイ導波路3aを有する。後述する空間光学系を介して、第1のAWG10aに対向する第2のAWG10bがさらに配置される。第2のAWG10bは、アレイ導波路3bおよびミラー8を有する。ミラー8は、アレイ導波路3bの分光作用により形成される、波長に依存しない等位相面上に形成される。ミラー8は、ミラー形成面を対称軸として、本可変分散補償器内に光学的に線対称に配置された2つの可変分散補償器を構成するよう動作する。すなわち、第1のAWG10aからミラー8へ至る往路の光路で構成される第1の可変分散補償器と、ミラー8から第1のAWG10bへ至る復路の光路で構成される第2の可変分散補償器とが、光学的に線対称に配置された系を形成している点に留意されたい。また、ミラー8において光路を折り返さずに、線対称な復路の光路を延長線上に展開して、第1の分散補償器と第2の分散補償器を別々に用意して接続した構成としても、図1と等価な機能の可変分散補償器を構成できることも明らかである。
【0039】
光信号が伝播するz軸方向に沿って、空間光学系が構成される。すなわち、第1のAWG10bの端面から出射する光信号は、まずシリンドリカルレンズ11aによって、AWG基板の厚さ方向にコリメートされる。シリンドリカルレンズ11aを透過した光信号は、第1の集光レンズ12aにより集光される。集光された光信号は、透過型の空間位相変調器17を透過して、所定の位相差が付与される。位相差を付与された光信号は、さらに第2の集光レンズ12bおよびシリンドリカルレンズ11bを経て、第2のAWG10bへ入射する。
【0040】
AWG10aとAWG10bとの光結合を取るために、空間位相変調器17上における各波長の光信号の集光位置を、それぞれのAWGを含む左右の光学系で一致させる必要がある。すなわち、AWG10aおよび集光レンズ12aによって決まる線分散の値および分散軸における波長依存の方向は、AWG10bおよび集光レンズ12bによって決まる線分散の値および分散軸における波長依存の方向と、それぞれ等しい必要がある。
【0041】
前述したように、ミラー8を用いずにミラー8の位置の延長線上に第2の可変分散補償器を形成した場合は、第2の分散補償器内に含まれるAWGと集光レンズとで決まる2組の線分散値と方向は一致する必要がある。ここで、第1の分散補償器および第2の分散補償器の間で、線分散値が一致している必要はない。しかしながらこの場合でも、後述するように透過帯域を平坦化する必要性から、第1の分散補償器と第2の分散補償器とは、同じ線分散方向となる必要がある。すなわち、第1の分散補償器の空間位相変調器を基点として、第2の分散補償器の空間位相変調器までを1つの分光器と見なした場合の線分散値が、第1の分散補償器の線分散値と第2の分散補償器の線分散値との和となる様に、2つの分散補償器を前述の等位相面で接続する必要がある。この条件は、少なくとも第1の分散補償器および第2の分散補償器が、接続した等位相面に対して対称構造であれば満たす事が出来る。しかし、線分散の方向に注意を払えば、完全に対称な構造でなくとも透過帯域の平坦性も満足することができる。
【0042】
可変分散補償器としての機能は、空間位相変調器17によって、光信号に波長に応じた位相差を与えることで実現される。具体的には、光信号が空間位相変調器17を透過することによって、x軸に対して2次関数のプロファイルを持つ位相差を光信号に付与する。
【0043】
可変分散補償器の対象とする透過帯域の中心波長λ0を持つ光信号は、実線の光路50に示されるように、第1のAWG10aの端面から垂直に出射し、空間位相変調器17の中央部を透過して位相差を付与され、第2のAWG10bへ垂直に入射する。一方、対象とする波長帯域の中心波長λ0から離れた帯域端部の周辺波長を持つ光信号について見ると、破線で示した光路51をたどる。
【0044】
2次関数プロファイルを持つ位相差を発生させることは、空間位相変調器17がレンズとして作用することを意味する。したがって、周辺波長を持つ光信号は、光路51のように曲がる。第2の集光レンズ12bにより再び集光されて、第2のAWG10bへの入射位置はわずかに光路50とずれている。しかし、入射角度は維持されるので、往路の光路と復路の光路とは一致する。
【0045】
第2のAWG10bにおいて、アレイ導波路12bの等位相面上にミラー8が形成されている。ミラー8において、光信号は反射して、上述した往路と同じ光路50または光路51を復路としz軸逆方向に伝播し、第1のAWG10aへ戻る。可変分散補償器全体では、ミラー8を挟んだ往路と復路とにおいて、空間位相変調器17により位相差を2回付与される。光信号は、第1のAWG10aの出射端面上の同一位置へ同じ出射角度を維持したまま戻り、入出力導波路1へ垂直に光信号が入出力する。光信号の波長に関係なく、往路および復路いずれにおいても、光軸ずれは生じない。周辺波長帯域の透過率低下が大幅に抑制され、透過帯域は平坦化されて広帯域化を実現できるのは、従来技術と同様である。
【0046】
本実施形態によれば、液晶、非線型結晶、可変焦点レンズなど、大きな位相差を与えることが可能で位相変調特性に優れる空間位相変調器を利用することができる。
【0047】
本実施形態の可変分散補償器では、2つのアレイ導波路の中心波長に誤差があっても、2つのアレイ導波路チップの相対位置、もしくは、集光レンズと位相変調素子との距離を微調整する事で結合を回復することができる。
【0048】
本実施例では、アレイ導波路型分光手段を用いたが、バルクグレーティング素子などの他の角度分散素子を分光手段として用いても、本実施例と同様の効果が得られる。
【0049】
さらに、本実施例では、アレイ導波路型分光手段を用いたため、バルクグレーティング素子を用いた時に必要な、入力光を適度なビーム系に整形する光学系が不要となり、小型化と低コスト化が可能となる。
【0050】
本実施形態の可変分散補償器では、空間位相変調器17は、光信号を透過させて位相差を付与する透過型であるが、光信号を反射する反射型を利用することにより、さらに回路構成を簡略化できる。
【0051】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る空間光学系を含む可変分散補償器を示す構成図である。本実施形態においては、反射型の空間位相変調器17を利用することによって、2つのアレイ導波路3a、3bを、AWG10の同一の基板上に形成している点で、図1に示した構成と相違する。以下、図1に示した構成との相違点に注目して説明する。
【0052】
反射型の空間位相変調器17を利用することにより、図1における2つの集光レンズ12a、12bおよび2つのシリンドリカルレンズ11a、11bの機能を、それぞれ1つの集光レンズ12および1つのシリンドリカルレンズ11によって兼ねることができる。入出力導波路1、スラブ導波路2、第1のアレイ導波路3a、第2のアレイ導波路3bおよびミラー8は、1つのAWG基板10上に一体として形成される。2つのアレイ導波路3a、3bを、同一平面上にあるが、それぞれ別個の基板に形成することができるのは言うまでもない。
【0053】
可変分散補償器の対象とする透過帯域の中心波長λ0を持つ光信号は、光路50a、50bに示されるように、AWG10の第1のアレイ導波路3aの端面から垂直にz軸方向へ出射し、空間位相変調器17の中央部で位相差を付与された後に反射される。ここで、z軸方向を進む往路50aにおいて、光信号は集光レンズ12の中央から外れた部分を透過して、わずかな傾斜角度を持って空間位相変調器17へ入射する。空間位相変調器17で反射された後、z軸の逆方向を進む往路50bにおいて、光信号は集光レンズ12の異なる位置を透過して、アレイ導波路3bに向かって伝播する。光信号は、アレイ導波路3bを経て等位相面上に形成されたミラー8で反射されて、引き続き、復路として上述した光路50b、50aと同一の光路を逆方向にアレイ導波路3aへ向かって伝播する。
【0054】
周辺波長を持つ光信号は、空間位相変調器17の異なる位置において2次関数プロファイルを持つ位相差を与えられ、第3の実施形態同様に、空間位相変調器17がレンズとして作用していることを意味する。周辺波長を持つ光信号は、光路51a、51bをたどり、第2のAWG10bへのはわずかに光路50bとずれた位置で入射する。しかし、入射角度は維持されるので、往路の光路51bと復路の光路51bとは一致する。
【0055】
LCOSや光アドレス方式の液晶セルなどの反射型の空間位相変調器は、ピクセル数が多く高い空間分解能で位相設定が可能である特徴を持つ。本実施形態では、空間位相変調器17が反射型であるため、高い波長分解能で位相設定が出来る。多数のピクセルで1つの波長チャネルを制御するので、フレネルレンズ状の位相差パターンを与えることで、制約なく大きな分散を与えられる。また、2次関数形状の位相のみならずさらに高次の位相形状を発生させて、高次の分散補償を行うことが出来る。
【0056】
さらに、空間光学系は第1の実施形態の半分の光路長さで構成できる。さらに、スラブ導波路2、アレイ導波路3a、3bおよびミラー8を、同一の基板上に形成し、単一のPLCで構成することができる。別個の2つのPLCを必要とする第1の実施形態と比べて、全体の回路構成をさらに簡略化し、低コスト化することができる。
【0057】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る空間光学系を含む他の可変分散補償器を示す構成図である。図2に示した第2の実施形態の変形である。第2の実施形態においては、2つのアレイ導波路3a、3bを同一平面上に構成していたが、本実施形態では、異なるAWG基板上にそれぞれ形成し、2つの基板を重ねて構成するスタック配置構成である点で、相違している。図3においては、x−z面を見た2つのAWG10a、10bをそれぞれ含む2つの上段上面図(a)および下段上面図(b)と、y−z面を見た側面図(c)とを示している。スタック上段の第1のAWG10aには、入出力導波路1、スラブ導波路2aおよびアレイ導波路3aが形成されている。スタック下段の第2のAWG10bには、アレイ導波路3bとミラー8が形成されている。第1のAWG10aの出射端面近傍に配置されたシリンドリカルレンズ11aおよび第2のAWG10bの出射端面近傍に配置されたシリンドリカルレンズ11b、ならびに集光レンズ12によって、y軸方向に光学系を分離している。したがって、空間位相変調器17の前後で、y軸方向に、光路を、光路50a、51aと光路50b、51bとに分離している。
【0058】
可変分散補償器の対象とする透過帯域の中心波長λ0を持つ光信号の光路50a、50bと、周辺波長を持つ光信号の光路51a、51bとは、y軸方向に分離されている点を除いて、第2の実施形態と同様に動作する。第2の実施形態同様に、空間光学系の長さを短くして、可変分散補償器全体の小型化を実現することができる。第2および第3の実施形態いずれも、空間位相変調器として位相分解能に優れるLCOS空間位相変調器、MEMS型位相変調器を利用できる。LCOSなどのピクセル数が多く分解能が高い位相変調器を利用することによって、単チャンネルの波長分散補償動作をFSR毎に繰り返して波長分散を設定するだけでなく、多チャンネルに対して独立して波長分散を設定することが可能となる。このように、分散補償特性を多様に柔軟に設定が可能なことは、導波路型の位相変調器しか利用できなかった従来技術の可変分散補償器では得られない、優れた特徴である。
【0059】
また、第2および第3の実施形態の可変分散補償器では、2つのアレイ導波路の中心波長に誤差があっても、集光レンズと空間位相変調器との距離を微調整することによって、結合を回復することができる。
【0060】
上述した各実施形態のいずれの構成も、第1の実施形態に示したように、実効的に線対称に2つの可変分散補償器を形成するように構成要素を配置する構成によって、動作波長に関係なく光軸ずれが生じない光路を形成している点で共通する。いずれの各実施形態でも、線対称な構成を形成するように、全光路の中間点にある対称軸上にミラーを配置し、回路の小型および簡略化を実現した。上述の実施形態では、高機能な空間位相変調器を利用しているが、さらに簡易な構成で可変分散補償器を実現することもできる。
【0061】
図4は、本発明の第4の実施形態に係る空間光学系を含む可変分散補償器を示す構成図である。本実施形態は、第2の実施形態における空間位相変調器をミラー8aに置き換え、さらにAWG10をz軸上で平行移動させることにより、AWG10と集光レンズ12との距離を変化させる点で相違する。
【0062】
AWG10の出射端面から集光レンズ12までの距離が、集光レンズ12の焦点距離と異なる場合、ミラー8aの位置において波長軸方向x軸に2次の位相差を付与できることが知られている。したがって、AWG10およびシリンドリカルレンズ11を一体として、z軸上を移動させることにより、空間位相変調器を利用することなくミラー8a面上において2次の位相差を付与することができる。
【0063】
上述の平行移動機構を持つ可変分散補償器においても、AWG10上に形成した第2のアレイ導波路3bの等位相面上に形成されたミラー8bによって、等価的に線対称に配置された2つの可変分散補償器を構成できる。第2の実施形態と比較すれば、空間位相変調器をミラー8aに置き換えた構成であり、周辺波長帯域の透過率低下を大幅に抑えて、透過帯域は平坦化されて広帯域化を実現できるのは、他の実施形態と同様である。
【0064】
図5は、本発明の第5の実施形態に係る空間光学系を含む可変分散補償器を示す構成図である。本実施形態は、第5の実施形態における空間位相変調器をミラー8aに置き換え、さらにAWG10a、10bをz軸上で平行移動させることにより、AWG10a、10bと集光レンズ12との距離を変化させる点で相違する。
【0065】
第4の実施形態と同様に、AWG10a、10bおよびシリンドリカルレンズ11a、11bを一体として、z軸上を移動させることにより、空間位相変調器を利用することなくミラー8a面上において2次の位相差を付与することができる。第4の実施形態と同様に、周辺波長帯域の透過率低下を大幅に抑え、透過帯域を平坦化して広帯域化を実現できる。
【0066】
第4の実施形態および第5の実施形態のいずれも、ピクセルを持つ位相変調器に伴うピクセルギャップに起因する特性悪化の問題を回避することができる。例えば、透過率特性、群遅延特性に生じるリップルの問題などが生じない点でメリットを持つ。高度な位相設定能力を持つものの複雑な駆動回路を必要とし、相対的に高価な空間位相変調器を使用しない点で特徴がある。
【0067】
これまで述べた各実施形態は、いずれも入力導波路と出力導波路を1つの導波路で兼ねている構成であるため、可変分散補償器へ光信号を入出力するために外部にサーキュレータを必要とする。そこで、対向する2つのアレイ導波路の光路長差ΔLをわずかに異なるものとすることによって、集光点を分離することで、スラブ導波路の境界面における光信号の入力位置と出力位置を分けることができる。
【0068】
図6は、本発明の第6の実施形態に係る空間光学系を含む可変分散補償器を示す構成図である。本実施形態は、図2に示した第2の実施形態において一方のアレイ導波路3aの構成と、他方のアレイ導波路3bの構成とを異なるものとし、入力導波路1および出力導波路4を別個に設けた点で相違している。第1のアレイ導波路3aは、隣り合う導波路間で光路長差ΔL=Aを持つ。一方、第2のアレイ導波路3bは、光路長差ΔL=A+αを持つ。第2のアレイ導波路3bは、第1のアレイ導波路3aと同じ角度分散をもつΔL=Aの部分と、光路をミラー8において折り返す際に波面を傾斜させるΔL=αの部分を結合したものと見なせる。この波面傾斜要素を往復することによって、2α/(アレイ導波路ピッチ)だけ波面が傾く。この波面の傾きに対応して、第2のアレイ導波路3bから第1のアレイ導波路3aへ戻る光信号は、スラブ導波路2の境界において入力導波路1とは異なる位置に集光する。すなわち、中心波長λ0を持つ光信号について考えると、入力導波路1から光路50を経てミラー8に達する光信号は、破線で示した光路52を経て出力導波路4から出力される。
【0069】
ここで、往路の光路50と復路の光路52では、空間位相変調器7の異なる位置で位相差を付与される。しかしながら、波長分散値としては空間位相変調器で与えられる位相プロファイルの2次の係数が作用するので、位置の差異はほとんど影響を与えない。上述の本実施形態の構成により、AWG10の異なる導波路から入力光信号と出力光信号を入出力できる。さらに、位相変調器7がピクセル構造を持つ場合は、往路の集光位置と復路の集光位置とを、ピクセルの繰り返し周期の(N+0.5)倍(Nは0を含む整数)の距離ずらすことによって、ピクセル間のギャップにより生じる位相付与量の誤差が往路と復路で加算されるのを防ぐことができる。可変分散補償器の外部にサーキュレータ等を必要としない。本実施形態は、入力導波路と出力導波路とを兼ねたこれまで述べたすべての他の実施形態にも適用可能である。
【0070】
上述の実施形態は、いずれも、バルクの集光レンズを利用して空間位相変調器において焦点を結ぶように動作するが、AWGからの出射光の波面を制御することによって、集光レンズを省略することもできる。
【0071】
図7の(a)は、本発明の第7の実施形態に係る空間光学系を含む可変分散補償器を示す構成図である。本実施形態は、図1に示した構成において2つの集光レンズ12a、12bが存在せず、さらにアレイ導波路3a、3bの構成が異なる点で第1の実施形態と相違する。第1の実施形態では、アレイ導波路3a、3bは、各AWG10a、10bの出射端面において平面波を出射するように各導波路長などが設計されている。一方、本実施形態におけるアレイ導波路33a、33bは、空間位相変調器7の位置において焦点を結ぶように、AWG10a、10bの出射端から円弧波面を出射するように各導波路長などが設計されている。
【0072】
光信号は、中心波長λ0を持つ光信号の光路50および破線で示した周辺波長を持つ光信号の光路51に示すように、直進して、円弧波面を持った状態で第2のAWG10bに入射する。アレイ導波路33bは、円弧波面を生成するように設計されており、ミラー8の反射面において、実効的に線対称な関係を維持して光信号を反射する。
【0073】
本実施形態を適用することにより、集光レンズを省略することができる。AWGにより集光作用を持たせることによって、より収差が少なく低損失な光学系を形成することができる。本実施形態は、上述のアレイ導波路型の構成部と空間光学系とを備えるすべての構成に適用できる。
【0074】
上述の各実施形態において、第2のアレイ導波路の等位相面上に形成したミラー8は、AWG基板の面内に形成することもできるが、図7の(b)に示したように、AWG基板の端面を利用して形成することもできる。すなわち、空間光学系からのAWG10へ光信号の出射端面とは異なるチップ側面に研磨面を形成して金属膜コートをすることで、ミラー18をより簡単に形成できる。アレイ導波路3は、各導波路間で所定の光路長差ΔLをを維持すれば良いので、アレイ導波路の配置を調整することで容易にチップ端面に垂直に光信号を終端することが可能である。以下に、より具体的な可変分散補償器の実施例を示す。
【0075】
図8は、本発明の第8の実施形態に係る空間光学系を含む可変分散補償器を示す構成図である。本実施形態は、スタック配置の第3の実施形態の構成を基にして、さらに偏波依存性を解消するために偏波ダイバーシティ構成を加えたものである。本実施形態と従来技術による可変分散所要器との補償特性の比較結果についても説明する。
【0076】
図8には、x−z面を見た2つのAWG10a、10bをそれぞれ含む2つの上段上面図(a)および下段上面図(b)と、y−z面を見た側面図(c)とを示している。(a)に示したように、第1のAWG10aには、サーキュレータ38を介して、入力および出力を光ネットワークアナライザ35に接続して、可変分散補償器の透過特性等を測定する。
【0077】
第3の実施形態との差異について直目して相違点のみを説明する。2つのAWG10a、10bの出射端面近傍には、偏光分離結晶36が配置され、光信号をTEモード成分とTMモード成分とに分離または結合する。分離した光信号のうち光路61a、61bを進むTEモード成分の光信号は、λ/2板などの偏波回転素子37a、37bによって偏波モードを変換される。上段の偏波回転素子37aから下段の偏波回転素子37bまでの光路では、光路60a、60bを進む分離されたTEモード光信号と、光路61a、61bを進むTMモードからTEモードへ変換された光信号のみとなるため、TEモードのみが存在することとなる。光信号は、偏波分離結晶36により2つの偏光成分を結合した後、λ/4板38透過し、さらに下段のAWG10b内のミラー8で反射される。λ/4板38を2回通るので、偏波回転を受ける。したがって、可変分散補償器の全体光路の中間点でも、TE−TM変換することで偏波ダイバーシティが実現される。
【0078】
比較のために、従来技術の構成による可変分散補償器を、図8の上段のAWG系のみを用いて、空間位相変調器7からの反射光を上段のAWG10aへ折り返す構成によって実現した。すなわち、光信号が空間位相変調器7から直接AWG10aへ戻るようにy軸方向に対して光軸を調整した。上述の従来技術の構成は、図11に示した導波路型の構成を、空間光学系を含む反射型の構成によって実現したものである。全光路において1回だけ空間位相変調器7を透過する構成であるため、透過帯域の周辺波長を持つ光信号に対しては、光路中において従来技術で説明したのと同様の光軸ずれが生じる。
【0079】
図9は、第8の実施形態の可変分散補償器の各要素の具体的な構成パラメータ示す図である。空間位相変調器7としてLCOSを使用し、分光軸のx軸方向に対して2次関数に相当するプロファイルを持つ位相差を与えた。LCOSの両端位置付近のピクセルにおいて、中心波長をλ0として、約6λ0相当の位相差を与えた。
【0080】
図10は、第8の実施形態の可変分散補償器の透過率スペクトラムおよび群遅延特性を従来技術と比較してグラフを示した図である。(a)に示した透過率スペクトラムに注目すれば、本発明の構成による透過率は、従来技術と比較して著しく帯域特性が平坦化されていることがわかる。透過率が中心波長より1dB低下する帯域幅を示す1dB帯域幅は、従来型が18GHzであるのに対し、本発明で90GHである。(b)に示した対応する群遅延特性に基づいて波長分散値を求めると、従来技術によれば−630ps/nmであり、本発明によれば−1260ps/nmであった。
【0081】
本発明の構成において、さらにLCOSに最大15λ0相当の位相差を与えるように駆動することによって、±3000ps/nmの任意の波長分散値を設定できた。従来技術のように、FSRが100GHzのアレイ導波路および熱光学位相変調器を用いた導波路型位相変調器を利用した場合は、高々±100ps/nm程度の分散補償値しか得られないのと比較して、大きな分散補償値の設定が可能である。
【0082】
以上、詳細に述べたように、本発明の可変分散補償器によれば、本透過帯域を平坦化した広帯域な透過率特性を持ち、さらに、大きな位相差を設定することでより高い分散補償値を与えられる可変分散補償器を実現できる。柔軟な位相設定が可能な空間位相変調器を利用可能として、柔軟性の高い可変分散補償性能を実現し、AWGの製造誤差の条件も緩和することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、光通信に適用できる。特に、波長選択スイッチを用いるようなリング・メッシュ型構成のネットワークでの利用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る可変分散補償器を示す構成図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る可変分散補償器を示す構成図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る可変分散補償器を示す構成図である。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る可変分散補償器を示す構成図である。
【図5】本発明の第5の実施形態に係る可変分散補償器を示す構成図である。
【図6】本発明の第6の実施形態に係る可変分散補償器を示す構成図である。
【図7】本発明の第7の実施形態に係る可変分散補償器を示す構成図である。
【図8】本発明の第8の実施形態の空間位相変調器を使用した可変分散補償器の構成図である。
【図9】第8の実施形態の可変分散補償器の構成パラメータを示す図である。
【図10】第8の実施形態の可変分散補償器の分散補償特性のグラフ示す図である。
【図11】PLCを利用した可変分散補償器の一例を示す構成図である。
【図12】可変分散補償器における透過特性の制限を説明する図である。
【図13】点対象構造を持つPLC型の分散補償器の構成を示す図である。
【図14】線対称構造を持つPLC型の分散補償器の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0085】
1、101 入力導波路
2、2a、2b、102a−102f スラブ導波路
3、3a、3b、33a、33b、103a、103b、103c アレイ導波路
4、104 出力導波路
7、17 空間位相変調器
8、8a、8b、18 ミラー
10、10a、10b AWG
11a、11b シリンドリカルレンズ
12、12a、12b 集光レンズ
36 偏波分離結晶
37a、37b λ/2板
38 λ/4板
39 サーキュレータ
50、50a、50b、52 中心波長を持つ光信号の光路
51、51a、51b 周辺波長を持つ光信号の光路
111a、111b、131a、131b 可変分散補償器
107、107a、107b 導波路型位相変調器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力光信号を波長に応じた角度で出射する第1の分光手段と、
前記第1の分光手段から出射された光信号を集光させる第1の集光手段と、
前記第1の分光手段および前記第1の集光手段により形成される線分散軸に対して、前記第1の集光手段によって集光された光信号に所定の位相量を付与する第1の空間位相変調器と、
前記第1の空間位相変調器から出射される光信号を平行化する第2の集光手段と、
前記第1の空間位相変調器の位置を中心として前記第1の分光手段に対向して配置され、前記第2の集光手段により平行化された光信号を波長に依存しない等位相面を持って出射する第2の分光手段と、
前記等位相面を介して前記第2の分光手段に連接され、前記等位相面を持つ光信号を波長に応じた角度で出射する第3分光手段と、
前記第3の分光手段から出射された光信号を集光させる第3の集光手段と、
前記第3の分光手段および前記第3の集光手段により形成される線分散軸に対して、前記第3の集光手段によって集光された光信号に所定の位相量を付与する第2の空間位相変調器と、
前記第2の空間位相変調器から出射される光信号を平行化する第4の集光手段と、
前記第2の空間位相変調器の位置を中心として前記第3の分光手段に対向して配置された第4の分光手段とを備え、
前記第1の分光手段および前記第1の集光手段により決定される線分散値と、前記第2の分光手段および前記第2の集光手段により決定される線分散値とが等しい第1の線分散値を持ちかつ前記第1の位相変調器上における分散方向が等しく、前記第3の分光手段および前記第3の集光手段により決定される線分散値と、前記第4の分光手段および前記第4の集光手段により決定される線分散値とが、等しい第2の線分散値を持ちかつ前記第2の位相変調器上における分散方向が等しく、ならびに、前記第2の集光手段、前記第2の分光手段、前記第3の分光手段および前記第3の集光手段により決定される線分散値が、前記第1の線分散値および前記第2の線分散値の和となることを特徴とする分散補償器。
【請求項2】
前記第1の分光手段および前記第4の分光手段は、基板上に形成された、少なくとも1つの入力導波路と、前記入力導波路に接続するスラブ導波路と、前記スラブ導波路に接続し隣接する導波路が一定の光路長差を持つ複数の導波路からなるアレイ導波路とを有し、前記アレイ導波路の導波光を前記基板の端面から空間に結合するよう構成されることと、
前記第2の分光手段および前記第3の分光手段は、基板上に形成され、前記等位相面を介して各々が連接され、隣接する導波路が一定の光路長差を持つ複数の導波路からなるアレイ導波路をそれぞれ有し、前記各アレイ導波路の導波光は前記等位相面の反対の各端面から空間に結合するようそれぞれ構成されることと
を特徴とする請求項1に記載の分散補償器。
【請求項3】
入力光信号を波長に応じた角度で出射する第1の分光手段と、
前記第1の分光手段から出射される光信号を集光させる第1の集光手段と、
前記第1の分光手段および前記第1の集光手段により形成される線分散軸に対して、前記第1の集光手段で集光された光信号に所定の位相量を付与する空間位相変調器と、
前記空間位相変調器から出射される光信号を平行化する第2の集光手段と、
前記空間位相変調器の位置を中心として前記第1の分光手段に対向して配置され、前記第2の集光手段により平行化された光信号を波長に依存しない等位相面を持って出射する第2の分光手段と、
前記等位相面において光信号の光路を折り返すミラーとを備え、
前記第1の分光手段および前記第1の集光手段により決定される線分散値と、前記第2の分光手段および前記第2の集光手段により決定される線分散値とが等しい線分散値を持ちかつ前記空間位相変調器上における分散方向が等しいことを特徴とする分散補償器。
【請求項4】
入力光信号を波長に応じた角度で出射する第1の分光手段と、
前記第1の分光手段から出射された光信号を集光させる第1の集光手段と、
前記第1の集光手段から出射された光信号を平行化する第2の集光手段と、
前記第2の集光手段から出射される光信号を波長に依存しない等位相面を持って出射する第2の分光手段と、
前記等位相面において光信号の光路を折り返すミラーとを備え、
前記第1の分光手段および前記第1の集光手段により決定される線分散値と、前記第2の分光手段および前記第2の集光手段により決定される線分散値とが等しい線分散値を持ち、かつ、前記第1の分光手段および前記第2の分光手段の間の光路中間点にある主光軸垂直面における分散方向が等しいことと、
前記第1の分光手段および前記第2の分光手段の間の光路中間点にある主光軸垂直面において、前記第1の分光手段および前記第1の集光手段により形成される線分散軸および前記第2の分光手段および前記第2の集光手段により形成される線分散軸に対して、それぞれ等しい量の位相量を光信号に付与できるように、前記第1の分光手段と前記第1の集光手段との間の光学距離、および、前記第2の集光手段と前記第2の分光手段の間の光学距離とを対応させながら可変させる移動機構をさらに備えたことを特徴とする分散補償器。
【請求項5】
前記空間位相変調器は反射型であり、前記第1の集光手段および前記第2の集光手段を1つの集光手段により兼ねていることを特徴とする請求項3に記載の位相変調器。
【請求項6】
前記第1の集光手段および前記第2の集光手段との間の光路中間点に光路変換ミラーをさらに備え、前記第1の集光手段および前記第2の集光手段を1つの集光手段により兼ねていることを特徴とする請求項4に記載の位相変調器。
【請求項7】
前記第1の分光手段および前記第2の分光手段は、分光面を共通として同一基板上に形成されたアレイ導波路型分光手段、または、各分光面に垂直方向に並列にそれぞれスタック配置されたアレイ導波路型分光手段であることを特徴とする請求項5または6に記載の分散補償器。
【請求項8】
前記第1の分光手段は、基板上に形成した、少なくとも1つの入出力導波路と、前記入出力導波路に接続するスラブ導波路と、前記スラブ導波路に接続し隣接する導波路が一定の光路長差を持つ複数の導波路からなるアレイ導波路とを有し、前記アレイ導波路の導波光を前記基板の端面から空間に結合するよう構成されることと、
前記第2の分光手段は、隣接する導波路が一定の光路長差を持つ複数の導波路からなるアレイ導波路を有し、前記アレイ導波路の導波光は前記等位相面とは反対側の基板端面から空間に結合するよう構成されること
を特徴とする請求項3乃至7いずれかに記載の分散補償器。
【請求項9】
前記第2の分光手段の前記アレイ導波路と前記ミラーとの間に、波面傾斜要素をさらに備え、前記第1の分光手段の前記スラブ導波路の異なる接合点において、2つの入出力導波路と光結合されることを特徴とする請求項8に記載の分散補償器。
【請求項10】
前記第1の分光手段および前記第2の分光手段の少なくとも1つは、集光性の信号光を出射し、前記少なくとも1つの集光手段の集光機能を含むことを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の分散補償器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−198593(P2009−198593A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37799(P2008−37799)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】