説明

回路基板及び電動送風機

【課題】 複数のパワーデバイスを放熱体に接触させて冷却させる回路基板において、放熱体の温度上昇を均一化させ回路基板の信頼性を高める。
【解決手段】 各相毎に上アーム側のパワーデバイス7と下アーム側のパワーデバイス7とを有しこれらのパワーデバイス7が120度通電方式によって駆動される三相インバータ回路3が搭載された回路基板1において、同じ相の中のパワーデバイス7が隣り合うようにパワーデバイス7を放熱体8に一列に接触して並べ、三相のうちの中央に位置する相での上アーム側のパワーデバイス7cと下アーム側のパワーデバイス7dとの並び順を、他の二相での上アーム側のパワーデバイス7a,7eと下アーム側のパワーデバイス7b,7fとの並び順に対して逆とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相インバータ回路を有する回路基板、及びこの回路基板を用いた電動送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
電気掃除機や電動工具などパワーデバイスを用いた三相インバータ回路を有する回路基板、及びこの回路基板を用いたブラシレスDCモータを搭載した電気機器において特に留意すべき点の一つは、インバータ回路を構成する複数のパワーデバイスの発熱対策である。
【0003】
発熱対策の一つとして、複数のパワーデバイスを放熱体に熱的に接触させて冷却する構成をとった技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。このように、複数のパワーデバイスを放熱体に熱的に接触させて冷却することにより、発熱対策をしながら機器の小型化が図れるとともに、放熱体の製造上の有利さが得られる。
【0004】
ここで、例えば充電式電気掃除機に使われる三相ブラシレスDCモータでは、回路基板に実装されたパワーデバイスに10A以上の電流が流れる。充電式電気掃除機は特に小型化が望まれるうえ、このように大きな電流が流れることから、小型化と回路の信頼性の両立が重要である。そのため、特許文献1のような技術によって、放熱体をできるだけ小さくしつつ、放熱効果を確保する必要がある。
【0005】
【特許文献1】特開平11−318695公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複数のパワーデバイスが放熱体に熱的に接触されていると、発熱したパワーデバイス同士による熱の相互干渉が起きてしまう。このとき、最も熱を受けるパワーデバイスが他のパワーデバイスよりも先に故障する可能性が高まる。あるパワーデバイスが故障した際、他のパワーデバイスは未だ使用可能であるにも関わらず、回路基板を交換しなければならない、という問題が発生する。
【0007】
特許文献1に開示された技術は、複数のパワーデバイスを放熱体に熱的に接触させた時、この放熱体における、複数のパワーデバイスからの熱伝導による相互干渉箇所に孔などを設け、熱の干渉を弱めるように構成している。しかしながら、この場合には、孔などを設けることにより放熱面積が小さくなることがあるため、そもそもパワーデバイスの発熱に対する冷却効果が小さくなってしまい、問題である。
【0008】
本発明の目的は、複数のパワーデバイスを放熱体に熱的に接触させて冷却する回路基板において、放熱体の温度上昇を均一化させ回路基板の信頼性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、放熱体上に取り付けられ上アームを構成する複数個のパワーデバイスと下アームを構成する複数個のパワーデバイスとを有し、これらのパワーデバイスが120度通電方式で駆動される三相インバータ回路を搭載した回路基板において、前記パワーデバイスのうち、同一の相を構成する上アームパワーデバイスと、下アームパワーデバイスを対にして対になるパワーデバイス同士を隣り合うように配置し、三相のうちの中央に位置する相での上アーム側の前記パワーデバイスと下アーム側の前記パワーデバイスとの並び順が、他の二相での上アーム側の前記パワーデバイスと下アーム側の前記パワーデバイスとの並び順に対して逆であるようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数のパワーデバイスが熱的に接触する放熱体の温度上昇を均一化させ、回路基板の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の第1の実施の形態を図1ないし図5に基づいて説明する。
【0012】
図1は本実施の形態の回路基板1を示す外観斜視図である。回路基板1は、概ね駆動回路2と三相インバータ回路3とに二分される。駆動回路2は、制御IC4などから構成される制御部5と、ゲート抵抗6などの電子部品からなる回路部分により構成されている。三相インバータ回路3は、パワーデバイスである6個のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor )7(7a,7b,7c,7d,7e,7f)を有している。これらのMOSFET7は、オン抵抗損失が略等しい6個の同一種類のNチャネルMOSFET7で、放熱体8に接触して並べられている。三相インバータ回路3を構成する6個のMOSFET7は、回路基板1の長手方向の一方の側縁部に分布して配置され放熱体8に接触している。また、電力供給部10が回路基板1の短手方向の二方の側縁部に略対向して配置されている。一方の電力供給部10には、電源である直流電源100のプラス側100a(図4参照)が接続され、他方の電力供給部10には、直流電源100のマイナス側100bが接続される。電力供給部10には、例えばタブ端子10a(図2参照)が取り付けられており、直流電源100と回路基板1とを接続できる。
【0013】
放熱体8は、押出し成形やダイキャスト成形されたアルミニウムなどの金属によって形成されている。この放熱体8は、回路基板1に対して略直角を成して配置されている。
【0014】
図2は別例の回路基板1を示す外観斜視図である。この別例は、MOSFET7の配置方向を図1に対して変更した例を示す。この例では、MOSFET7と放熱体8とが回路基板1に対して略水平に設けられている。この場合も図1と同様に、MOSFET7は、回路基板1の長手方向の一方の側縁部に分布して配置され放熱体8に接触している。
【0015】
図3(a)はリード挿入型MOSFET20の端子配置を示す正面図、図3(b)は面実装型MOSFET21の端子配置を示す正面図である。いずれのMOSFET20,21においても、図3の正面図において左側より、制御端子であるゲート端子30、一方の被制御端子であるドレイン端子31、他方の被制御端子であるソース端子32が設けられている。
【0016】
図4は駆動回路2と三相インバータ回路3との概略回路構成を示す回路図である。駆動回路2は、ロータ磁石信号処理回路(図示しない)からの信号(例えばホールICの出力信号)が制御部5にある制御IC4に入力されると、三相インバータ回路3に対して制御信号を出力する構成である。この制御信号は、MOSFET7の各ゲート端子30に向かって出力しゲート信号となる。ここでは、MOSFET7をスイッチングするために10V程度の電圧をゲート端子30に加える。このとき、MOSFET7のスイッチング特性から決められた最適な大きさのゲート抵抗6を介してゲート端子30にゲート信号を加える。
【0017】
三相インバータ回路3の各相は、(MOSFET7a,7b)、(MOSFET7c,7d)、(MOSFET7e,7f)により構成されている。ここで、MOSFET7a,7c,7eが三相インバータ回路3の上アーム40側を構成し、MOSFET7b,7d,7fが下アーム41側を構成する。このような、各相における上アーム40側のMOSFET7と下アーム41側のMOSFET7との対(ペア)を一単位とする。すなわち7aと7b、7cと7d、7eと7fをそれぞれ一単位とする。上アーム40側のMOSFET7のドレイン端子31は、直流電源100のプラス側100aに接続されている。また、上アーム40側のMOSFET7のソース端子32は、下アーム41側のMOSFET7のドレイン端子31に接続されている。また、これらの上アーム40側のMOSFET7のソース端子32と下アーム41側のMOSFET7のドレイン端子31とは、三相負荷101に接続される。下アーム41側のMOSFET7のソース端子32は、電流検出抵抗42を介して直流電源100のマイナス側100bに接続される。これらのMOSFET7は、駆動回路2から出力されるゲート信号に基づいて駆動され、交流電流を三相負荷101に供給する。
【0018】
図4に示した三相三単位全てのMOSFET7が図1や図2に示すように放熱体8に接触して並べられる。このとき、各単位を構成するMOSFET7同士が隣り合うように配置される。さらに、三相三単位のうち中央に配置される一単位のMOSFET7の配置が他の二単位のMOSFET7の配置とは逆配置にされている。すなわち、図1及び図2に示すように、6個のMOSFET7を(上アーム40側のMOSFET7a、下アーム41側のMOSFET7b)、(下アーム41側のMOSFET7d、上アーム40側のMOSFET7c)、(上アーム40側のMOSFET7e、下アーム41側のMOSFET7f)、という順に並べる。
【0019】
図5は120度通電方式でのMOSFET7のゲート端子30に出力する制御信号(ゲート信号)のタイムチャートである。ここで、三相をU、V、W相とする。ある相の上アーム40側のMOSFET7と、下アーム41側のMOSFET7との駆動において、その間には必ず非通電区間ができる。例として、U相上アーム40側のMOSFET7aとU相下アーム41側のMOSFET7bとに着目する。区間(1)と区間(2)とではMOSFET7aのみ、区間(4)と区間(5)とではMOSFET7bのみが通電区間である。そして、これらにはさまれた区間(3)と(6)は、非通電区間となる。また、同一の区間内では、全MOSFET7のうちのいずれか二個のMOSFET7に通電している。
【0020】
このような120度通電方式のタイムチャートを用いて三相インバータ回路3の動作を説明する。ここで、上述した三相三単位のうち、他の二単位とは逆配置にされる中央の一単位はV相である。
【0021】
図5の区間(1)で、駆動回路2は、MOSFET7aとMOSFET7dのゲート端子30に対してゲート信号を出力する。これにより、直流電源100のプラス側100aからMOSFET7a、三相インバータ回路3の外部にある三相負荷101を経由してMOSFET7d、電流検出抵抗42、直流電源100のマイナス側100bという電流経路ができる。このとき、図1に示すように、通電しているMOSFET7aとMOSFET7dの間には、通電していないMOSFET7bが挟まれている。
【0022】
同様に、区間(2)では、駆動回路2がMOSFET7aとMOSFET7fに対してゲート信号を出力する。このとき図1においてMOSFET7の配列の両サイドにあるMOSFET7a,7fが動作する。そしてこの2つのMOSFET7の間には非通電状態にあるMOSFET7b、7d、7c、7eが挟まれている。更に区間(3)ではMOSFET7cとMOSFET7f、区間(4)ではMOSFET7cとMOSFET7b、区間(5)ではMOSFET7eとMOSFET7b、区間(6)ではMOSFET7eとMOSFET7d、にそれぞれ通電している。区間(6)が終了すると再びMOSFET7aとMOSFET7dに通電する。いずれの区間においても、通電している二つのMOSFET7の間には、通電していないMOSFET7が一つ以上存在している。
【0023】
ここで、例えばY接続やΔ接続された巻線を用いた三相ブラシレスDCモータが三相負荷101として用いられた場合、上述した動作により巻線(三相負荷101)に回転磁界が生じ、モータを回転させる。以上は図1を用いて説明したが、図2は回路基板1の別例であり、図1と同様である。
【0024】
このように、中央に配置する一単位を他の二単位とは逆配置とし、120度通電方式により三相インバータ回路3を駆動するとき、隣接して配置されるMOSFET7が同時に通電することは無い。そして、同時に通電している二つのMOSFET7の間には必ず一つ以上の通電しないMOSFET7が存在している。このため、放熱体8の局所的な発熱を避けられるため、放熱体8の温度上昇を均一にする。これにより回路基板1の信頼性を高めることができる。
【0025】
上アーム40を構成するMOSFET7と、下アーム41を構成するMOSFET7とを同一種類(本実施の形態ではオン抵抗損失の等しいNチャネルMOSFET7)としている。これによりインバータ回路3動作時の発熱を均一にする効果がある。
【0026】
また、複数のパワーデバイスを放熱体に熱的に接触させて冷却しているため、あるMOSFET7の動作時、隣接しているMOSFET7は動作しない。このため、ある瞬間での隣接するMOSFET7からの発熱の影響を小さくできる。そして、例えばY接続やΔ接続された巻線を用いた三相ブラシレスDCモータが三相負荷101として用いられた場合、図5の区間(1)から(6)を周期的に繰り返すことからMOSFET7通電による放熱体8の発熱バランスを取ることができる。
【0027】
なお、ここでは、放熱体8として放熱フィン8aが形成された単一の放熱板を用いているが、別な構成をとることも可能である。例えば、回路基板1は通常、電子機器の内部に入っているので、電子機器のフレームを放熱体8として利用できる。また、ここでは押出し成形やダイキャスト成形された放熱体8を用いているが、別な構成でも可能である。すなわち、放熱体8が多数あり、これを熱的に接続した場合には、押出し成形やダイキャスト成形された放熱体8と同様である。
【0028】
また、図1及び図2で示したMOSFET7は、リード挿入型MOSFET20であるが、これに限るものではなく、MOSFET7としては、図3(b)に示す面実装型MOSFET21の採用も可能である。なお、面実装型MOSFET21を採用した場合には、面実装型MOSFET21の放熱部**が回路基板1に接触して実装されるので、回路基板1自体が放熱体8として機能する。よって、この場合は、回路基板1に対して独立した放熱体8は不要である。また、回路基板1を放熱体8として用いた場合、回路基板1の特定の領域が集中して発熱することを妨げることになるため、回路基板1の変形を抑制でき、信頼性が高まる。更に、面実装型MOSFET21においては、発熱を均一化することで、従来はガラス素材を含んだ回路基板1が必要だったのに対し、ガラス素材を含まない回路基板1を用いることができる。
【0029】
また、ここではパワーデバイスとしてMOSFETを用いているが、これに限るものではない。正面からみて左側に制御端子がある三端子のパワーデバイス、例えばバイポーラトランジスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子も同様に使用することができる。
【0030】
ここで、逆配置にしない相のMOSFET7の取り付け構造について詳しく説明する。 図6は、リード挿入型MOSFET20の各端子の折り曲げ(リードフォーミング)形状を示す。(a)は縦置き配置用のリード挿入型MOSFET20を示し、(b)は横置き配置用のリード挿入型MOSFET20を示している。図7は、回路基板401における一単位のMOSFET7に対するはんだ面配線パターンを示す斜視図である。(a)は縦置き配置用のリード挿入型MOSFET20を用いた場合、(b)は横置き配置用のリード挿入型MOSFET20を用いた場合をそれぞれ示す。
【0031】
図6(a)、および(b)に示すように、リード挿入型MOSFET20は、被制御端子である。そして、図7に示すように、回路基板401の上面401a(この場合はんだ面)側から見て左手に上アーム40側のMOSFET7を、右側に下アーム41側のMOSFET7を、それぞれ配置する。このように配置することで、下アーム41側を構成するMOSFET7のゲート端子30が最も左側になる。このとき上アーム40側MOSFET7のドレイン端子31と、直流電源100のプラス側100aが、電源ライン59を介して接続する。また、下アーム41側MOSFET7のドレイン端子は、接続ライン60を介して上アーム40側MOSFET7のソース端子32、および、三相負荷101、に接続する。このとき、上面401aでは、電源ライン59、すなわち直流電源100のプラス側100aと、電流検出抵抗42を介したマイナス側100bと、に接続するラインと、接続ライン60とが互いに交差することなく配置する。また、ゲート抵抗6(図7では図示せず)は、回路基板401の裏面(部品面)に実装される。
【0032】
図8は面実装型MOSFET21を用いたときの一単位の配置を示す平面図である。この場合も、リード挿入型MOSFET20を使ったときと同様、電源接続部である電源ライン59と、接続ライン60とが互いに交差することなく配置されている。
【0033】
以上説明したように、各単位において、電源ライン59と、接続ライン60とが交差せずに当該回路基板401,411上に配置されるため、回路パターンを簡単にできる。
【0034】
また、電源ライン59と接続ライン60とが交差していないので、一単位中の2つのMOSFET7を隣り合わせで配置することが容易に実現できる。また、一単位毎にMOSFET7を対(ペア)で分布して配置しやすいので、放熱体8の熱分布が均一となる。
【0035】
また、電源ライン59と接続ライン60とを交差させていないので、大きな電流が流れる可能性のある三相インバータ回路3を回路基板401,411の一方の面で全て実装することができる。これにより、回路基板401,411として、両面実装基板を用いる時には、駆動回路2と三相インバータ回路3とを回路基板401,411の両面に分けて実装でき、回路の信頼性と部品の実装効率が高まる。また、回路基板401,411として、片面実装基板を用いた場合には、コスト削減を図ることができる。
【0036】
次に、本発明の第2の実施の形態を図9に基づいて説明する。前述した実施の形態と同じ部分は同一符号で示し説明も省略するとともに、前述した実施の形態で用いた図面も適宜参照する(以降の実施の形態でも同様)。
【0037】
図9は本実施の形態の回路基板201を示す平面図である。回路基板201は、円盤状に形成されている。放熱体202は、円リング状に形成されており、回路基板201の外側に回路基板201に対して水平に配置されている。
【0038】
MOSFET7は、リード挿入型MOSFET20であり、回路基板201の側縁部に環状に配置され、回路基板201に水平に取り付けられている。MOSFET7は、放熱体202に対してネジ9で固定されているとともに、回路基板201の実装面において各端子が接続されている。このとき、各単位を構成するMOSFET7同士が隣り合うように配置されている。また、各単位ごとに120度毎の等間隔で配置される。そして、三相三単位のうちのいずれかの一単位において、MOSFET7の配置が他の二単位のMOSFET7の配置とは逆配置にされている。本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、(U相上アーム40側のMOSFET7a、U相下アーム41側のMOSFET7b)、(V相下アーム41側のMOSFET7d、V相上アーム40側のMOSFET7c)、(W相上アーム40側のMOSFET7e、W相下アーム41側のMOSFET7f)、の順に配置している。すなわち、V相MOSFET7を逆配置にしている。
【0039】
このときの三相インバータ回路3の動作について図5に基づいて説明する。第1の実施の形態と同様に、図5の区間(1)では、MOSFET7aとMOSFET7dに通電する。区間(2)では、MOSFET7aとMOSFET7fに通電する。区間(3)では、MOSFET7cとMOSFET7f、区間(4)ではMOSFET7cとMOSFET7b、区間(5)ではMOSFET7eとMOSFET7b、区間(6)ではMOSFET7eとMOSFET7d、にそれぞれ通電する。区間(6)が終了すると再びMOSFET7aとMOSFET7dに通電する。いずれの区間においても通電している二つのMOSFET7の間には、通電していないMOSFET7が1つ以上存在している。よって、第1の実施の形態と同様に、放熱体202の温度上昇が均一になり、これにより、回路基板201の信頼性が高まる。
【0040】
また、本実施の形態では、円形の回路基板201と円リング状の放熱体202を用い、この構造を利用して、回路基板201及び放熱体202の円の中心から等間隔の位置に相単位ごとにMOSFET7が配置されている。これにより、放熱体202の端部による影響を無くすことができる。このため放熱体202から見た場合、全てのMOSFET7の発熱を同条件で考えることが可能である。このことは放熱設計を容易にし、MOSFET7の温度の影響によるばらつきを低減させるものであり、機器の高信頼性につながるものである。
【0041】
例えばY接続やΔ接続された巻線を用いた三相ブラシレスDCモータが三相負荷101として用いられた場合、上述した動作により巻線(三相負荷101)に回転磁界が生じ、モータを回転させる。
【0042】
本実施の形態は、MOSFET7として面実装型MOSFET21を用いても同様に実施することができる(図示しない)。この場合、第1の実施の形態と同様、放熱体202は回路基板201が兼ねる。
【0043】
また、リード挿入型MOSFET20を回路基板201に対して立てて配置することもできる(図示しない)。この場合、放熱体202は回路基板201を取り囲む円筒状の部材とすればよい。
【0044】
次に、本発明の第3の実施の形態を図10に基づいて説明する。本実施の形態は、MOSFET7の配置が第2の実施の形態に対して異なる。第2の実施の形態では三単位のMOSFET7を一単位づつ等間隔に配置したが、本実施の形態では、円盤状の回路基板301を仮想的に四等分割したうちの三箇所にMOSFET7を一単位づつ配置している。また、MOSFET7は、リード挿入型MOSFET20であり、回路基板301の側縁部に一単位ごとに環状に配置している。ここで、三相三単位のうちのいずれかの一単位においてMOSFET7の配置が他の二単位のMOSFET7の配置とは逆配置にされている。ここでは、V相MOSFET7を逆配置にしている。即ち、(U相上アーム40側のMOSFET7a、U相下アーム41側のMOSFET7b)、(V相下アーム41側のMOSFET7d、V相上アーム40側のMOSFET7c)、(W相上アーム40側のMOSFET7e、W相下アーム41側のMOSFET7f)の順に配置している。
【0045】
このような構成により、第2の実施の形態と同様、回路基板301及び放熱体202の円の中心から略等間隔に相単位でMOSFET7が配置される。そして、MOSFET7を120度通電で駆動したとき、放熱体202の端部による影響を第1の実施の形態に比べて少なくすることができ、機器の高信頼性につながる。
【0046】
例えばY接続やΔ接続された巻線を用いた三相ブラシレスDCモータが三相負荷101として用いられた場合、上述した動作により巻線(三相負荷101)に回転磁界が生じ、モータを回転させる。
【0047】
次に、本発明の第4の実施の形態を図11ないし図17に基づいて説明する。 図11は本実施の形態の電動送風機501の構成を一部切欠いて示す側面図である。電動送風機501は、概略的には、三相ブラシレスDCモータ82と、この三相ブラシレスDCモータ82の回転軸であるロータ軸83に取り付けられた遠心ファン84と、これらを収納している構造体であるケース85とから構成されている。ケース85は、三相ブラシレスDCモータ82を収納する小径のモータケース86と遠心ファン84を収納する大径のファンカバー87と、モータケース86とファンカバー87とを連結する円リング形状の連結部88とから構成されている。連結部88の下面は平面状に形成されている。
【0048】
三相ブラシレスDCモータ82は、モータケース86に固定されたステータ89と、このステータ89の内側に配置されたロータ90とにより構成されている。ロータ90には、永久磁石が用いられている。そして、ロータ90の中心のロータ軸83が、ケース85の上下に設けられたベアリング部91により回転自在に軸支されている。モータケース86の後部の側部には、排気口としての吹出口92が形成されている。また、モータケース86の軸方向の後面側は後板部93により有底状に閉塞されるとともに、この後板部93の中央部が後方に向けて円筒状に突出し、ここに、一方のベアリング部91が設けられている。
【0049】
三相ブラシレスDCモータ82ではロータ90の磁石位置検出手段を必要とする。このような位置検出手段としては、電気角120°間隔で設置した3つの磁気センサを用いる。磁気センサとしては、ホールセンサやホールIC等がある。また、その他の永久磁石の位置検出方法として、特に図示しないが光学式パルスエンコーダを使用する方法や、モータ巻線に誘起される電圧を電圧位相検出手段によって検出する方法などが使用可能である。
【0050】
遠心ファン84の下側には、整流板94が固定されている。そして、これらを覆ってファンカバー87が取付けられる。このファンカバー87は、前面の中央部に吸引開口部95を有するとともに、後面は後部開口部(図示せず)となっており、全体では略円筒状に形成されている。
【0051】
このような構成において、ロータ軸83が回転すると、その回転と一体に遠心ファン84が回転する。この回転によって吸引空気が、ファンカバー87の前面側に形成された吸引開口部95から遠心ファン84を通り、整流板94により一様に整流されて、三相ブラシレスDCモータ82へと導かれる。このように、吸引開口部95から三相ブラシレスDCモータ82へ到る風路96が形成される。
【0052】
そして、本実施の形態では、図12に示すように、三相ブラシレスDCモータ82を駆動制御する回路基板601が、ケース85の内側であって三相ブラシレスDCモータ82と遠心ファン84との間に配置されている。回路基板601は、基本的には、第3の実施の形態で説明した回路基板301と同様であるが、回路基板601の形状が異なる。回路基板601は、連結部88の内周に沿う円盤状に形成され、円盤状の外周部に一対の延出部602が形成されている。一方の延出部602には、回路基板601へ電力供給するための直流電源100のプラス側100aがタブ端子10aを介して接続され、他方の延出部602には、直流電源100のマイナス側100bがタブ端子10aを介して接続されている。そして、回路基板601の中心部には、ロータ軸83が貫通する貫通孔603が形成されている。そして回路基板601における貫通孔603の周囲には、整流板94からの空気を通過させるための複数の基板風路口604が形成されている。ここで、基板風路口604の大きさや位置は電動送風機501の設計のなかで決定されるものである。
【0053】
回路基板601に搭載されるMOSFET7は、第3の実施の形態と同様にリード挿入型MOSFET20であり、それらの配置は、回路基板301と同じである。つまり、U相、W相の間に配置されるV相のMOSFET7の配置が、U相及びW相のMOSFET7の配置に対して逆となっている。本実施の形態では、六個のMOSFET7は、連結部88の外側の面(下面)に配置され、ネジ9により連結部88に固定されている。ここで、連結部88が放熱体8として機能する。
【0054】
本実施の形態では、三相インバータ回路3を回路基板601の基板側縁部601aに設け、駆動回路2はそれよりも内側に設けられている。三相インバータ回路3に対する電力供給は、直流電源100のプラス側100aに接続されたリード線605と、電流検出抵抗42を介して直流電源100のマイナス側100bに接続されたリード線605とを経由して行われる。
【0055】
図13はU相及びW相のMOSFET7の配置を示す平面図、図14はV相のMOSFET7の配置を示す平面図、図15は電源ライン59に用いているハトメラグを示す斜視図である。
【0056】
回路基板601において大きな電流が流れる端子には、回路基板601の配線パターンよりも厚く、各単位ごとに電気的に絶縁された複数の接続端子70が用いられている。ここで、回路基板601の配線パターンの厚さは35μm〜70μm程度であり、接続端子70の厚さは例えば0.5mmである。大きな電流が流れる端子は、上アーム40側のドレイン端子31、下アーム41側のソース端子32、上アーム40側のソース端子32及び下アーム41側のドレイン端子31である。
【0057】
電源ライン59に接続するドレイン端子31又はソース端子32において、接続端子70として、例えば図15に示すハトメラグを用いることができる。ハトメラグは、配線パターンよりも厚く、かつ、かしめにより回路基板601に固定する。また、上アーム40側と下アーム41側のMOSFET7を接続するとともに三相ブラシレスDCモータ82に接続する接続端子70も、同様に配線パターンよりも厚く、かつ、かしめにより回路基板601に固定する。そして、この接続端子70は、巻線と回路基板601の位置関係、及び接続のし易さから回路基板601より突出した巻線接続部1000が設けられる。
【0058】
他の二相と逆配置になるV相においては、上アーム40を構成するMOSFET7の端子のリードフォーミングが他のMOSFET7のものとは異なる。すなわち他の二相では、下アームのゲート端子30が正面左側に位置するようになっているが、V相では逆になるため、異なるリードフォーミングを用いる。また、V相においては、巻線に接続する接続端子70の形状もU相及びW相のものに対して異なる。
【0059】
図16はU相及びW相でのリード線605の接続を示す平面図、図17はV相でのリード線605の接続を示す平面図である。図16及び図17に示すように、リード線605は、回路基板601にかしめにより固定されるハトメラグに直接差込み接続(ろう付け)する。
【0060】
直流電源100のプラス側100aとマイナス側100bに接続される直流電源100は、ニッケルカドミウム(NiCd)電池、ニッケル水素電池、又はリチウムイオン電池などの2次電池を複数本組み合わせた組電池、又は、商用交流電源を整流平滑したものである。この直流電圧が回路基板601に供給される。
【0061】
次に、MOSFET7に120度通電したときのインバータ回路3の動作について説明する。図5の区間(1)で、U相上アーム40側のMOSFET7a及びV相下アーム41側のMOSFET7dが動作する。これにより、直流電源100のプラス側100aからMOSFET7a、三相インバータ回路3の外部にあるモータ巻線(図示しない)を経由してMOSFET7d、電流検出抵抗42、直流電源100のマイナス側100bという電流経路ができる。このとき、図12に示したMOSFET7のうち、U相上アーム40側のMOSFET7aとV相下アーム41側のMOSFET7dとが動作する。同様に、区間(2)では、MOSFET7aとMOSFET7fが動作する。更に区間(3)ではMOSFET7cとMOSFET7f、区間(4)では、MOSFET7cとMOSFET7b、区間(5)では、MOSFET7eとMOSFET7b、(6)の区間では、MOSFET7eとMOSFET7d、がそれぞれ動作する。区間(6)が終了すると再びMOSFET7aとMOSFET7dが動作する。インバータ回路3の動作により、三相ブラシレスDCモータ82の巻線(三相負荷101)に回転磁界が生じ、ロータ軸83が回転する。そしてロータ軸83の回転により遠心ファン84が回転し、吸引開口部95から空気が吸引される。吸引された空気は一様に整流され、三相ブラシレスDCモータ82に導かれる。
【0062】
このように、上述した実施の形態と同じく、回路基板601上の基板側縁部601aにおいて隣接して配置されるMOSFET7に同時に通電する期間は無く、同時に通電するMOSFET7の間に必ず一つ以上の通電されないMOSFET7が存在している。このような回路基板601を搭載した三相ブラシレスDCモータ82においては、放熱体8である連結部88が局所的に発熱することを避けることができる。これにより、連結部88の温度上昇を均一にできる。
【0063】
また、MOSFET7が風路96中に配置されておらずケース85の一部である連結部88に配置されているので、ケース85の内部の空気流を乱すことはない。よって、MOSFET7によって電動送風機501の風路損失を増大させることなく、MOSFET7の発熱をケース85へ逃がすことができる。
【0064】
回路基板601には、基板風路口604が形成されているので、三相ブラシレスDCモータ82動作時、整流板94からの空気は、基板風路口604を通過して三相ブラシレスDCモータ82に到る。このため、回路基板601をケース85の内部に配置することによる風路損失を軽減できる。
【0065】
また、回路基板601の外周の少なくとも一部はケース85の内周の形状に沿って形成され、少なくとも一部をケース85の内部に収納している。このため、回路基板601をケース85に収納しやすい構造にできるとともに、連結部88に発熱体であるMOSFET7を全て配置しているので、発熱のバランスと回路基板601の収納のしやすさを達成できる。更に、放熱体8は、三相ブラシレスDCモータ82を構成する構造体であるケース85(詳しくは連結部88)であることにより、部品の有効利用を図ることができる。このことから、発熱対策とともに三相ブラシレスDCモータ82の小型化に寄与できる。
【0066】
そして、回路基板601に形成された配線パターンの厚さよりも厚く形成されて回路基板601に設けられる接続端子70を備えることにより、電流密度の低減を図ることが可能になる。これにより、回路基板601の安全性を高めることができる。
【0067】
また、電源ライン59の一部をリード線605で構成し、リード線605がハトメラグに直接差込まれていることによって、電源パターンを回路基板601上に配置する必要が無くなる。このことは、電流を増大させることによる電動送風機501の高出力化につながる。
【0068】
なお、本実施の形態では、回路基板として回路基板601を例に説明したが、これに限るものではなく、回路基板1,201,301,401,411を用いても良い。
【0069】
また、以上の実施の形態では、パワーデバイスとしてMOSFET7を用いて説明したが、これに限定されるものではなく、一本の制御端子と二本の被制御端子を持つパワーデバイスであれば同様に実施することができる。例えばバイポーラトランジスタやIGBT(Insurated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子も適用対象となる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施の形態の回路基板を示す外観斜視図である。
【図2】別例の回路基板を示す外観斜視図である。
【図3】リード挿入型MOSFET及び面実装型MOSFETにおける端子配置を示す正面図である。
【図4】駆動回路と三相インバータ回路との概略回路構成を示す回路図である。
【図5】120度通電方式でのMOSFETのゲート端子に出力する信号のタイムチャートである。
【図6】リード挿入型MOSFETのリードフォーミングを示す斜視図である。
【図7】回路基板におけるMOSFETに対する面配線パターンを示す斜視図である。
【図8】面実装型MOSFETを採用したときの一相分のMOSFETの配置を示す平面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態の回路基板を示す平面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態の回路基板を示す平面図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態の電動送風機の構成を一部切欠いて示す側面図である。
【図12】回路基板を示す平面図である。
【図13】U相及びW相のMOSFETの配置を示す平面図である。
【図14】V相のMOSFETの配置を示す平面図である。
【図15】ハトメラグを示す斜視図である。
【図16】U相及びW相でのリード線の接続を示す平面図である。
【図17】V相でのリード線の接続を示す平面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 回路基板
3 三相インバータ回路
7 MOSFET(パワーデバイス)
8 放熱体
40 上アーム
41 下アーム
59 電源ライン(電源接続部)
60 接続ライン(接続部)
70 接続端子
82 三相ブラシレスDCモータ
85 ケース(構造体)
100 直流電源(電源)
201 回路基板
202 放熱体
301 回路基板
401 回路基板
411 回路基板
501 電動送風機
601 回路基板
605 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱体上に取り付けられ上アームを構成する複数個のパワーデバイスと下アームを構成する複数個のパワーデバイスとを有し、これらのパワーデバイスが120度通電方式で駆動される三相インバータ回路を搭載した回路基板において、
前記パワーデバイスのうち、同一の相を構成する上アームパワーデバイスと、下アームパワーデバイスを対にして対になるパワーデバイス同士を隣り合うように配置し、
三相のうちの中央に位置する相での上アーム側の前記パワーデバイスと下アーム側の前記パワーデバイスとの並び順が、他の二相での上アーム側の前記パワーデバイスと下アーム側の前記パワーデバイスとの並び順に対して逆である、ことを特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記パワーデバイスのうち、同一の相を構成する上アームパワーデバイスと、下アームパワーデバイスを対にして対になるパワーデバイス同士を隣り合うように環状に前記放熱体上に配置されることを特徴とする請求項1記載の回路基板。
【請求項3】
前記対になるパワーデバイスのうち、並び順序が逆になっていない相を構成するパワーデバイスは、対になるパワーデバイスの下アーム側の制御端子が外側に位置するように前記回路基板上に配置されることを特徴とする請求項1又は2記載の回路基板。
【請求項4】
三相ブラシレスDCモータと、
この三相ブラシレスDCモータを駆動制御する請求項1ないし3の何れか一記載の回路基板と、
を備えることを特徴とする電動送風機。
【請求項5】
前記ブラシレスDCモータを構成するケースを備え、
前記回路基板の少なくとも一部は、前記ケースの内部に収納され、
前記ケースに収納されている前記回路基板の外周の少なくとも一部は、前記ケースの内周の形状に沿って形成されている、ことを特徴とする請求項4記載の電動送風機。
【請求項6】
前記パワーデバイスは、リード挿入型であり、
対になる前記パワーデバイスごとに隣り合う間隔は、略等間隔であり、
前記放熱体は、前記ブラシレスDCモータを構成する構造体である、ことを特徴とする請求項4又は5記載の電動送風機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−60889(P2006−60889A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−238025(P2004−238025)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】