説明

基板搬送ロボット

【課題】真空処理装置内で使用される基板搬送ロボットであって、ロボットアームの関節部は、一方のアーム部材に形成した上下方向に貫通する軸支孔と、軸支孔に装着したベアリングと、他方のアーム部材に固定した、ベアリングに挿入される支軸とを備えるものにおいて、ベアリングでの発塵で生ずるパーティクルによる真空処理装置内の汚損を防止できるようにする。
【解決手段】一方のアーム部材31の下面に、軸支孔51を下方から覆うカバー7が着脱自在に取り付けられる。また、支軸53が他方のアーム部材32上方に突出する上部軸部53aを有し、一方のアーム部材31に、上部軸部53aが挿入される上部ベアリング55を装着した筒部54を設ける場合には、上部ベアリング55の内輪と他方のアーム部材32との間に介設するカラー57の下端に、外周に立上り部57bを有するフランジ部57aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空処理装置内で基板を搬送するために使用される基板搬送ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の基板搬送ロボットとして、中間に関節部を有する水平面上で屈伸自在なアームの先端に、基板を支持するハンドを連結したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。関節部は、一般的に、関節部で連結される2つのアーム部材のうちの一方のアーム部材に形成した上下方向の軸線を持つ軸支孔と、軸支孔に装着したベアリングと、他方のアーム部材に固定した上下方向の軸線を持つ支軸とを備え、ベアリングに上方から支軸を挿入して、一方のアーム部材と他方のアーム部材とを支軸とベアリングとを介して回動自在に連結するように構成される。
【0003】
ところで、ベアリングの摩耗による関節部のガタ発生を未然に防止するため、ベアリングを定期的に交換する必要がある。ここで、軸支孔が下端を閉塞した袋孔状であると、ベアリングの着脱が困難になる。これに対し、一方のアーム部材を上下方向に貫通するように軸支孔を形成すれば、ベアリングの着脱が容易になり、メンテナンス性が向上する。
【0004】
然し、これでは、以下の不具合を生ずることが判明した。即ち、ベアリングでの発塵で生ずるパーティクルが、重力によって軸支孔の下端から落下し、真空処理装置内を汚損してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−18393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、関節部に設けたベアリングでの発塵で生ずるパーティクルによる真空処理装置内の汚損を防止できるようにした基板搬送ロボットを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、中間に関節部を有する水平面上で屈伸自在なアームの先端に、基板を支持するハンドを連結した、真空処理装置内で基板を搬送するために使用される基板搬送ロボットであって、関節部は、関節部で連結される2つのアーム部材のうちの一方のアーム部材に形成した上下方向の軸線を持つ軸支孔と、軸支孔に装着したベアリングと、他方のアーム部材に固定した上下方向の軸線を持つ支軸とを備え、ベアリングに上方から支軸を挿入して、一方のアーム部材と他方のアーム部材とを支軸とベアリングとを介して回動自在に連結するように構成されるものにおいて、軸支孔は、一方のアーム部材を上下方向に貫通するように形成され、一方のアーム部材の下面に、軸支孔を下方から覆うカバーが着脱自在に取り付けられることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、軸支孔を上下方向の貫通孔としても、ベアリングでの発塵で生ずるパーティクルが軸支孔の下端から落下することをカバーにより防止して、パーティクルによる真空処理装置内の汚損を防止できる。また、カバーは一方のアーム部材に着脱自在であるため、カバーを取り外すことで、軸支孔にベアリングを容易に着脱でき、メンテナンス性を損なうことはない。
【0009】
ところで、前記一方のアーム部材に、前記軸支孔の上方に前記他方のアーム部材を受け入れる隙間を存して対向する筒部が設けられ、この筒部内周に上部ベアリングが装着され、前記支軸は、他方のアーム部材の上方に突出して上部ベアリングに挿入される上部軸部を有するものとし、軸支孔に装着したベアリングと上部ベアリングとで支軸を両端支持するように関節部を構成することがある。この場合、上部ベアリングでの発塵で生ずるパーティクルが筒部から落下すると、真空処理装置内を汚損してしまう。
【0010】
ここで、上部軸部には、上部ベアリングの内輪と他方のアーム部材との間に介設される上部カラーが外挿される。そして、本発明においては、上部カラーの下端に、径方向外方に広がるフランジ部を形成し、このフランジ部の外周に、上方に屈曲して筒部に下方から挿入される立上り部を形成することが望ましい。これによれば、上部ベアリングでの発塵で生ずるパーティクルをフランジ部で捕捉することができる。従って、上部カラーを利用して、筒部からパーティクルが落下することを防止でき、落下防止のための専用の部材が不要になり、合理的である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の基板搬送ロボットを備える真空処理装置の平面図。
【図2】実施形態の基板搬送ロボットの平面図。
【図3】実施形態の基板搬送ロボットの側面図。
【図4】図2のIV−IV線で切断した拡大断面図。
【図5】図2のV−V線で切断した拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、基板Sに各種処理を施す真空処理装置を示している。この真空処理装置は、中央の搬送室Aと、搬送室Aの周囲に配置した、搬入室Bと、搬出室Cと、複数の処理室Dとを備えている。搬送室Aには、本発明の実施形態の基板搬送ロボット1が設置されており、このロボット1により、基板Sが搬入室Bから複数の処理室Dを経由して搬出室Cに搬送される。
【0013】
基板搬送ロボット1は、図2、図3に示す如く、上下方向に長手の回転軸2と、第1と第2の一対のアーム3,3と、基板Sを支持するハンド4とを備えている。回転軸2は、内軸21と内軸21に外挿される筒状の外軸22とで構成されている。内軸21と外軸22は、図示省略した各別のモータにより回転駆動される。
【0014】
第1と第2の各アーム3,3は、駆動アーム部材31,31と従動アーム部材32,32とを関節部33,33で上下方向の軸線回りに揺動自在に連結して成るものであり、水平面上で屈伸する。第1アーム3の駆動アーム部材(以下、第1駆動アーム部材という)31は、その基端部において内軸21に連結され、内軸21の回転で内軸21と同一軸線回りに揺動される。また、第2アーム3の駆動アーム部材(以下、第2駆動アーム部材という)31は、その基端部において外軸22に連結され、外軸22の回転で内軸21と同一軸線回りに揺動される。
【0015】
第1アーム3の従動アーム部材(以下、第1従動アーム部材という)32の先端部と、第2アーム3の従動アーム部材(以下、第2従動アーム部材という)32の先端部は、第1駆動アーム部材31と第2駆動アーム部材31との間のアーム間角度θ(正確には、内軸21と第1アーム3の関節部(以下、第1関節部という)33とを結ぶ線と、内軸21と第2アーム3の関節部(以下、第2関節部という)33とを結ぶ線との間の角度)の等角二等分線(以下、アーム中心線という)Mに関して対称にハンド4に連結されている。
【0016】
ここで、内軸21と外軸22とを互いに逆方向に回転させると、アーム間角度θが可変し、ハンド4がアーム中心線Mに沿って直線的に移動する。また、内軸21と外軸22とを同方向に同期回転させると、ハンド4が回転軸2の周方向に旋回する。従って、ハンド4を各室B,C,Dに対向する周方向位置に旋回させた状態で各室B,C,Dに向けて直線的に進退させることにより、各室B,C,Dに基板Sを搬入、搬出することができる。
【0017】
図4を参照して、第1関節部33は、第1駆動アーム部材31の先端部に形成した上下方向の軸線を持つ軸支孔51と、軸支孔51に装着したベアリング52と、第1従動アーム部材32に固定した上下方向の軸線を持つ支軸53とを備え、ベアリング52に上方から支軸53を挿入して、第1駆動アーム部材31と第1従動アーム部材32とを支軸53とベアリング52とを介して回動自在に連結するように構成されている。
【0018】
第1関節部33は、更に、第1駆動アーム部材31の先端部に設けた、軸支孔51の上方に第1従動アーム部材32を受け入れる隙間を存して対向する筒部54と、筒部54に装着した上部ベアリング55とを備えている。支軸53は、第1従動アーム部材32の上方に突出して上部ベアリング55に挿入される上部軸部53aを有している。そのため、支軸53はベアリング52と上部ベアリング55とで両端支持される。
【0019】
ここで、支軸53は、第1従動アーム部材32の基端部に形成した透孔に挿通した状態で、止めねじ53bにより第1従動アーム部材32に固定される。また、軸支孔51には、ベアリング52の外輪上端面に皿ばね52bを介して当接するスナップリング52aが取り付けられ、筒部54内周面には、上部ベアリング55の外輪下端面に当接するスナップリング55aが取り付けられている。更に、支軸53には、ベアリング52の内輪と第1従動アーム部材32との間に介設される下部カラー56が外挿され、上部軸部53aには、上部ベアリング55の内輪と第1従動アーム部材32との間に介設される上部カラー57が外挿される。また、上部軸部53aの上端には、上部ベアリング55の内輪上端面に当接する段部53cが形成されている。そして、支軸53の下端に、ベアリング52の内輪下端面に当接する固定ナット58を螺合することにより、下部カラー56と上部カラー57との間に第1従動アーム部材32を挟み込み、第1従動アーム部材32が第1駆動アーム部材31に対し上下方向に不動に軸支されるようにしている。
【0020】
図5を参照して、第2関節部33は、第2駆動アーム部材31の先端部に形成した上下方向の軸線を持つ軸支孔61と、軸支孔61に装着したベアリング62と、第2従動アーム部材32の基端部下面にねじ63aで固定した上下方向の軸線を持つ支軸63とを備え、ベアリング62に上方から支軸63を挿入して、第2駆動アーム部材31と第2従動アーム部材32とを支軸63とベアリング62とを介して回動自在に連結するように構成されている。
【0021】
尚、第2駆動アーム部材31は、第1駆動アーム部材31よりも下方に位置しており、第2従動アーム部材32の高さを第1従動アーム部材32と一致させるために、第2駆動アーム部材31の先端部を上方に盛り上がる厚肉部に形成し、この厚肉部に軸支孔61を形成している。そして、この軸支孔61に上下方向に離隔して一対のベアリング62,62を装着し、支軸63の支持剛性を確保できるようにしている。
【0022】
ここで、軸支孔61には、下側のベアリング62の外輪上端面に皿ばね62bを介して当接するスナップリング62aと、上側のベアリング62の外輪下端面に当接するスナップリング62cとが取り付けられている。また、支軸63には、上側のベアリング62の内輪と下側のベアリング62の内輪との間に介設されるカラー64が外挿される。更に、支軸63の上端部には、上側のベアリング62の内輪上端面に当接する段部63bが形成されている。そして、支軸63の下端に、下側のベアリング62の内輪下端面に当接する固定ナット65を螺合することにより、第2従動アーム部材32が第2駆動アーム部材31に対し上下方向に不動に軸支されるようにしている。
【0023】
ここで、第1と第2の各関節部33,33の軸支孔51,61は、ベアリング52,62を容易に着脱できるように、第1と第2の各駆動アーム部材31,31を上下方向に貫通するように形成されている。然し、このままでは、ベアリング52,62での発塵で生ずるパーティクルが重力によって軸支孔51,61の下端から落下し、真空処理装置内を汚損してしまう。
【0024】
そこで、本実施形態では、第1と第2の各駆動アーム部材31,31の先端部下面に、軸支孔51,61を下方から覆うカバー7をビス7aによって着脱自在に取り付けている。
【0025】
これによれば、パーティクルが軸支孔51,61の下端から落下することをカバー7により防止できる。尚、基板搬送ロボット1は真空雰囲気に置かれるため、ロボット1の周囲に気流は生じず、軸支孔51,61の上端からパーティクルが気流に乗って飛散するようなことはない。従って、パーティクルの落下をカバー7により防止することで、真空処理装置内の汚損を防止できる。また、カバー7は駆動アーム部材31,31に着脱自在であるため、カバー7を取り外すことで、軸支孔51,61にベアリング52,62を容易に着脱でき、メンテナンス性を損なうことはない。
【0026】
ところで、第1関節部33は、軸支孔51の上方に設けた筒部54に装着される上部ベアリング55を備えるため、上部ベアリング55での発塵で生ずるパーティクルが筒部54から落下する可能性がある。
【0027】
そこで、本実施形態では、図4に示す如く、上部カラー57の下端に、径方向外方に広がるフランジ部57aを形成し、フランジ部57aの外周に、上方に屈曲して筒部54に下方から挿入される立上り部57bを形成している。
【0028】
これによれば、上部ベアリング55での発塵で生ずるパーティクルを外周に立上り部57bを有する皿状のフランジ部57aで捕捉することができる。従って、上部カラー57を利用して、筒部54からパーティクルが落下することを防止でき、落下防止のための専用の部材が不要になり、合理的である。尚、立上り部57bの外径は筒部54の内径よりも僅かに小さく、立上り部57bの外周面と筒部54の内周面との間に挿入クリアランス分の隙間を生ずるが、この隙間からパーティクルが落下することは殆どない。
【0029】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、第1と第2の各関節部33,33の軸支孔51,61を第1と第2の各駆動アーム部材31,31に形成し、支軸52,63を第1と第2の各従動アーム部材32,32に固定したが、各従動アーム部材32,32に軸支孔を形成し、各駆動アーム部材31,31に支軸を固定することも可能である。また、上記実施形態の基板搬送ロボット1は、一対のアーム3,3を有するダブルアーム型ロボットであるが、水平面上で屈伸自在な単一のアームを備えるシングルアーム型のロボットにも同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0030】
S…基板、1…基板搬送ロボット、3,3…アーム、31,31…駆動アーム部材(一方のアーム部材)、32,32…従動アーム部材(他方のアーム部材)、33,33…関節部、4…ハンド、51,61…軸支孔、52,62…ベアリング、53,63…支軸、53a…上部軸部、54…筒部、55…上部ベアリング、57…上部カラー、57a…フランジ部、57b…立上り部、7…カバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間に関節部を有する水平面上で屈伸自在なアームの先端に、基板を支持するハンドを連結した、真空処理装置内で基板を搬送するために使用される基板搬送ロボットであって、
関節部は、関節部で連結される2つのアーム部材のうちの一方のアーム部材に形成した上下方向の軸線を持つ軸支孔と、軸支孔に装着したベアリングと、他方のアーム部材に固定した上下方向の軸線を持つ支軸とを備え、ベアリングに上方から支軸を挿入して、一方のアーム部材と他方のアーム部材とを支軸とベアリングとを介して回動自在に連結するように構成されるものにおいて、
軸支孔は、一方のアーム部材を上下方向に貫通するように形成され、一方のアーム部材の下面に、軸支孔を下方から覆うカバーが着脱自在に取り付けられることを特徴とする基板搬送ロボット。
【請求項2】
請求項1記載の基板搬送ロボットであって、前記一方のアーム部材に、前記軸支孔の上方に前記他方のアーム部材を受け入れる隙間を存して対向する筒部が設けられ、この筒部内周に上部ベアリングが装着され、前記支軸は、他方のアーム部材の上方に突出して上部ベアリングに挿入される上部軸部を有し、この上部軸部に、上部ベアリングの内輪と他方のアーム部材との間に介設される上部カラーを外挿するものにおいて、
上部カラーの下端に、径方向外方に広がるフランジ部が形成され、このフランジ部の外周に、上方に屈曲して筒部に下方から挿入される立上り部が形成されることを特徴とする請求項1記載の基板搬送ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−192506(P2012−192506A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59716(P2011−59716)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】