説明

基板搬送装置

【課題】装置の設置床面から低い位置で基板を搬送するとともに、装置全体を簡単な構造にすることができる基板搬送装置を提供することを課題とする。
【解決手段】基板搬送装置1であって、ハンド部材30と、上下スライド機構40と、横スライド機構50と、を備え、上下スライド機構40は、旋回ベース部材20に取り付けられた上下スライド用固定レール41と、上下スライド用固定レール41に取り付けられた横スライド用可動レール42と、を備え、横スライド機構50は、旋回ベース部材20に取り付けられた横スライド用固定レール51と、横スライド用固定レール51に取り付けられた上下スライド用可動レール52と、を備え、上下スライド機構40はハンド部材30に対して一方の側部に配設され、横スライド機構50はハンド部材30に対して他方の側部に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を搬送するための基板搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程で使用されるシリコンウェハや、液晶パネル製造工程で使用されるガラス基板などの平板状の円形基板を、所定の位置に搬送するための基板搬送装置としては、ベース部材と、ベース部材に支持された支軸部材と、支持部材を上下移動及び横回転させる駆動装置と、支持部材の上端部に取り付けられたロボットアームと、を備え、ロボットアームの先端部にハンド部材が設けられているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような基板搬送装置では、ベース部材に対して支軸部材を上下移動や横回転させることで、ロボットアームの高さや向きを調整し、さらに、ロボットアームの各アームを伸縮させて、ハンド部材を横方向に移動させることで、ハンド部材に吸着保持された円形基板を所定の位置に搬送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−207507号公報(段落0023〜0024、図1、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した従来の基板搬送装置では、ロボットアームが支軸部材の上端部に取り付けられているため、基板搬送装置の設置床面から低い位置で円形基板を搬送することが困難である。したがって、円形基板の仕分け装置の収納容器や検査装置の検査部を床面から高い位置に設ける必要があるため、円形基板の搬送システムが複雑で大型になり、製造コストが高くなるという問題がある。
【0006】
また、従来の基板搬送装置では、ロボットアーム全体を支持する支軸部材を上下移動及び横回転させており、駆動装置への負荷が大きいため、大きな駆動力を発生させる減速機が必要であるとともに、駆動装置の部品強度を高める必要があり、製造コストが高くなるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、装置の設置床面から低い位置で基板を搬送するとともに、装置全体を簡単な構造にすることができる基板搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、基板搬送装置であって、固定ベース部材と、前記固定ベース部材に対して、横回転自在に取り付けられた旋回ベース部材と、前記旋回ベース部材の上方に配設され、基板を保持するハンド部材と、前記ハンド部材を上下方向に移動させるための上下スライド機構と、前記ハンド部材を横方向に移動させるための横スライド機構と、を備え、前記上下スライド機構は、前記旋回ベース部材に取り付けられ、上下方向に延びている上下スライド用固定レールと、前記上下スライド用固定レールに対して、上下方向にスライド自在に取り付けられ、横方向に延びている横スライド用可動レールと、前記旋回ベース部材に取り付けられ、前記横スライド用可動レールを、前記上下スライド用固定レールに沿って、上下方向に移動させる上下スライド用駆動装置と、を備え、前記横スライド機構は、前記旋回ベース部材に取り付けられ、横方向に延びている横スライド用固定レールと、前記横スライド用固定レールに対して、横方向にスライド自在に取り付けられ、上下方向に延びている上下スライド用可動レールと、前記旋回ベース部材に取り付けられ、前記上下スライド用可動レールを、前記横スライド用固定レールに沿って、横方向に移動させる横スライド用駆動装置と、を備え、前記上下スライド機構は、前記ハンド部材に対して、一方の側部に配設され、前記横スライド機構は、前記ハンド部材に対して、他方の側部に配設されており、前記ハンド部材は、前記上下スライド機構の前記横スライド用可動レールに対して、横方向にスライド自在に取り付けられるとともに、前記横スライド機構の前記上下スライド用可動レールに対して、上下方向にスライド自在に取り付けられていることを特徴としている。
【0009】
この構成では、ハンド部材を上下方向及び横方向に移動させるための上下スライド機構及び横スライド機構は、ハンド部材の両側にそれぞれ配設され、ハンド部材の下方の空間は空いているため、ハンド部材を旋回ベース部材の上面近傍まで下降させることができる。したがって、基板搬送装置の設置床面から低い位置で、ハンド部材を移動させて基板を搬送することができる。
これにより、基板搬送装置を卓上に設置し、その卓上に仕分け装置の収納容器や検査装置の検査部を配設することで、基板の搬送システムを簡単に構築することができ、基板の搬送システムの製造コストを低減することができる。
【0010】
また、ハンド部材及び各レールによって小型で軽量なアームが構成されており、上下スライド機構及び横スライド機構への負荷が小さくなっている。したがって、上下スライド機構及び横スライド機構には、低出力で安価な駆動モータを用いることができるとともに、板金加工部品などの低強度の部品を多く用いることができるため、基板搬送装置の製造コストを低減することができる。
【0011】
前記した基板搬送装置において、前記旋回ベース部材は、上板に排気用孔が形成された箱体であり、前記旋回ベース部材内の空気を、排気装置によって前記旋回ベース部材の下方に排気することで、前記旋回ベース部材の上方空間から前記排気用孔を通じて、前記旋回ベース部材内に空気を吸気することもできる。
【0012】
この構成では、旋回ベース部材の上方空間から排気用孔を通じて、旋回ベース部材内に空気を吸気することで、ハンド部材に保持された基板の下面側に、下方に向けた気流を生じさせることができる。これにより、上下スライド機構及び横スライド機構の摺動部位で発生した塵を、排気用孔を通じて旋回ベース部材内に取り込み、旋回ベース部材内から排気装置を通じて、集塵装置などに排出することができるため、クリーンな環境で基板を搬送することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の基板搬送装置によれば、装置の設置床面から低い位置で、ハンド部材を移動させて基板を搬送することができるため、基板の搬送システムを簡単に構築することができ、基板の搬送システムの製造コストを低減することができる。
また、上下スライド機構及び横スライド機構では、低出力で安価な駆動モータを用いることができるとともに、板金加工部品などの低強度の部品を多く用いることができるため、基板搬送装置の製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態の基板搬送装置の全体構成を示した平面図である。
【図2】本実施形態の基板搬送装置の全体構成を示した正面断面図である。
【図3】本実施形態の基板搬送装置の全体構成を示した側断面図である。
【図4】本実施形態の基板搬送装置における旋回機構を示した平面図である。
【図5】本実施形態の基板搬送装置を示した図で、ハンド部材を前方に移動させた状態の平面図である。
【図6】本実施形態の基板搬送装置を示した図で、ハンド部材を上方に移動させた状態の正面断面図である。
【図7】本実施形態の基板搬送装置を示した図で、ハンド部材を前方及び上方に移動させた状態の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、半導体製造工程で使用されるシリコンウェハである円形基板を所定の位置に搬送するための基板搬送装置を例として説明する。なお、以下の説明において、前後左右方向とは、各図に示した前後左右方向に対応している。
【0016】
基板搬送装置1は、図2に示すように、卓上に設置される固定ベース部材10と、固定ベース部材10に対して横回転自在に取り付けられた旋回ベース部材20と、旋回ベース部材20の上方に配設され、円形基板Wを吸着保持するハンド部材30と、ハンド部材30を上下方向に移動させるための上下スライド機構40と、ハンド部材30を横方向に移動させるための横スライド機構50と、を備えている。
【0017】
固定ベース部材10は、円板状の部材であり、中央部に円形の吸気用孔11が形成されている。固定ベース部材10の上面の中央部には、旋回用固定プーリー12が取り付けられており、旋回用固定プーリー12の中心孔が吸気用孔11に連通している。
【0018】
また、固定ベース部材10の下面には、吸気用孔11を塞ぐように排気装置13が取り付けられている。この排気装置13内のファン(図示せず)を回転させることで、固定ベース部材10の上面側の空間から吸気用孔11を通じて、排気装置13に空気が吸気され、排気装置13を通じて固定ベース部材10の下方に排気される。
【0019】
旋回ベース部材20は、上板21、下板22及び周壁部23を有する円筒状の中空な部材であり(図1参照)、周壁部23の下端縁部は、下板22よりも下方に突出している。
【0020】
旋回ベース部材20の下板22の中央部には、円形の連通孔22aが形成されている。下板22の下面において、連通孔22aの周縁部は下方に向けて立ち上げられており、円筒状の旋回軸22bが形成されている。旋回軸22bは、固定ベース部材10の上面に取り付けられた旋回用固定プーリー12の中央孔に内挿されている。
旋回ベース部材20の旋回軸22bの外周面と、固定ベース部材10の旋回用固定プーリー12の内周面との間には、環状のベアリング24が装着されている。これにより、旋回ベース部材20は、固定ベース部材10に対して横回転自在に取り付けられている。
【0021】
図1に示すように、旋回ベース部材20の下板22の上面の右端部には、旋回用駆動モータ25が取り付けられている。この旋回用駆動モータ25は、公知の電動モータであり、図2に示すように、下方に向けて駆動軸25aが突出している。駆動軸25aは下板22に形成されたモータ用貫通孔22cに挿通されて、下板22の下面側に突出しており、下端部には上下方向の軸回りに周面が形成された旋回用駆動プーリー25bが取り付けられている。
【0022】
図4に示すように、旋回用駆動プーリー25bと旋回用固定プーリー12とには、環状の旋回用ベルト26が掛け回されている。そして、旋回用駆動モータ25を駆動させて、旋回用駆動プーリー25bを回転させたときには、旋回用駆動プーリー25bは旋回用ベルト26の内周面を転動しながら、旋回用固定プーリー12の軸回りを公転する。これにより、旋回用駆動モータ25が取り付けられた旋回ベース部材20(図1参照)が旋回用固定プーリー12の軸回りに横回転し、旋回ベース部材20が固定ベース部材10に対して横回転する。
【0023】
図1に示すように、旋回ベース部材20の上板21には、複数の排気用孔27・・・が形成されている。各排気用孔27・・・は、上板21において上下スライド機構40や横スライド機構50が配設されない位置に形成されている。
ここで、図2に示すように、旋回ベース部材20の下板22の連通孔22aは、固定ベース部材10の吸気用孔11に連通している。したがって、排気装置13は、下板22の連通孔22aを通じて、旋回ベース部材20内の空気を吸気することになり、旋回ベース部材20内の空気が排気される。そして、旋回ベース部材20内の空気が排気されて、旋回ベース部材20内が負圧状態になると、上板21の各排気用孔27・・・(図1参照)を通じて、旋回ベース部材20の上方の空間から旋回ベース部材20内に空気が吸気される。
なお、図1に示す排気用孔27の個数、大きさ及び配置は限定されるものではなく、旋回ベース部材20の上方の空間から効率良く空気を吸気するように、個数、大きさ及び配置は適宜に設定される。
【0024】
上下スライド機構40は、図1及び図2に示すように、旋回ベース部材20の左側の領域に設けられており、旋回ベース部材20の下板22の上面に取り付けられた上下スライド用固定レール41と、上下スライド用固定レール41に対して上下方向にスライド自在に取り付けられた横スライド用可動レール42と、旋回ベース部材20の下板22の上面に取り付けられた上下スライド用駆動装置43と、を備えている。
【0025】
上下スライド用固定レール41は、図2に示すように、上下方向に延びている矩形断面のガイドレールであり、固定フレーム41aを介して下板22の上面に取り付けられている。
固定フレーム41aは、下板22の上面において左側の領域に立設された箱状の直方体であり、長手方向が上下方向に配置されており、旋回ベース部材20の上板21に形成された開口部を通じて、上板21の上方に突出している。
上下スライド用固定レール41は、固定フレーム41aの右側壁部の内側面に取り付けられている。また、固定フレーム41aの右側壁部には、図1に示すように、上下スライド用固定レール41の前後両側となる位置に、上下方向に延ばされたスリット状のスライド用開口溝41b,41bがそれぞれ形成されている。
【0026】
上下スライド用固定レール41の左側部には、第一上下スライダ41cが組み付けられている。上下スライド用固定レール41及び第一上下スライダ41cは、第一上下スライダ41cが上下スライド用固定レール41に沿って上下方向にスライド移動する公知のリニアガイドである。
【0027】
横スライド用可動レール42は、前後方向に延びている矩形断面のガイドレールであり、上下スライドフレーム42a及び第一上下スライダ41cを介して上下スライド用固定レール41に取り付けられている。
上下スライドフレーム42aは、箱状の直方体であり、長手方向が前後方向に配置されている。上下スライドフレーム42aの左側面には、連結枠部42dが突設されている。連結枠部42dは平面視で矩形に形成された枠体であり、連結枠部42dの前後側壁部は、固定フレーム41aの右側壁部に形成された各スライド用開口溝41b,41bにそれぞれ挿通され、連結枠部42dの左側壁部は固定フレーム41a内に配置されている。
連結枠部42dの左側壁部の内側面には、第一上下スライダ41cの左外側面が取り付けられており、第一上下スライダ41cを上下スライド用固定レール41に沿って上下方向に移動させたときには、第一上下スライダ41cに連動して上下スライドフレーム42aも上下方向に移動する。
【0028】
横スライド用可動レール42は、上下スライドフレーム42aの左側壁部の内側面に取り付けられている。
また、上下スライドフレーム42aの右側壁部の上端部には、前後方向に延ばされたスリット状の横スライド用開口溝42bが形成されている(図2参照)。
【0029】
横スライド用可動レール42の右側部には、第一横スライダ42cが組み付けられている。横スライド用可動レール42及び第一横スライダ42cは、第一横スライダ42cが横スライド用可動レール42に沿って前後方向にスライド移動する公知のリニアガイドである。
【0030】
上下スライド用駆動装置43は、図2に示すように、固定フレーム41a内で旋回ベース部材20の下板22の上面に取り付けられた上下スライド用駆動モータ43aと、固定フレーム41a内の上端部に設けられた上下スライド用従動プーリー43bと、を備えている。
上下スライド用駆動モータ43aは、公知の電動モータであり、後方に向けて突出した駆動軸の先端部には、前後方向の軸回りに周面が形成された上下スライド用駆動プーリー43cが取り付けられている。また、上下スライド用従動プーリー43bは、前後方向の軸回りに周面が形成されている。
【0031】
上下スライド用駆動プーリー43cと上下スライド用従動プーリー43bとには、環状の上下スライド用ベルト43dが掛け回されている。この上下スライド用ベルト43dの右側面には、上下スライドフレーム42aの連結枠部42dの左側面が取り付けられている。
そして、上下スライド用駆動モータ43aを駆動させて、上下スライド用ベルト43dを左回転させたときには、上下スライド用ベルト43dの回転に連動して上下スライドフレーム42aは上下スライド用固定レール41に沿って上方に移動する(図6参照)。
また、上下スライド用駆動モータ43aを駆動させて、上下スライド用ベルト43dを右回転させたときには、上下スライド用ベルト43dの回転に連動して、上下スライドフレーム42aは上下スライド用固定レール41に沿って下方に移動する。
このように、上下スライド用駆動装置43では、上下スライド用駆動モータ43aの駆動力によって、上下スライドフレーム42a内の横スライド用可動レール42を、上下スライド用固定レール41に沿って上下方向に移動させている。
【0032】
横スライド機構50は、図1及び図2に示すように、旋回ベース部材20の右側の領域に設けられており、旋回ベース部材20の下板22の上面に取り付けられた横スライド用固定レール51と、横スライド用固定レール51に対して横方向にスライド自在に取り付けられた上下スライド用可動レール52と、旋回ベース部材20の下板22の上面に取り付けられた横スライド用駆動装置53と、を備えている。
【0033】
横スライド用固定レール51は、図1に示すように、前後方向に延びている矩形断面のガイドレールであり、下板22の上面において、右側の領域に取り付けられている。
【0034】
図3に示すように、横スライド用固定レール51の上部には、第二横スライダ51aが組み付けられている。横スライド用固定レール51及び第二横スライダ51aは、第二横スライダ51aが横スライド用固定レール51に沿って前後方向にスライド移動する公知のリニアガイドである。
【0035】
上下スライド用可動レール52は、図2に示すように、上下方向に延びている矩形断面のガイドレールであり、横スライドフレーム52a及び第二横スライダ51aを介して、横スライド用固定レール51に取り付けられている。
横スライドフレーム52aは、箱状の直方体であり、長手方向が上下方向に配置されている。横スライドフレーム52aは、図3に示すように、旋回ベース部材20の上板21に形成された横スライド用開口溝21aに挿通されて、上板21の上方に突出している。横スライド用開口溝21aは、前後方向に延ばされたスリット状の開口部であり、横スライドフレーム52aは横スライド用開口溝21a内を前後方向に移動可能となっている。
また、横スライドフレーム52aの下面には、第二横スライダ51aの上面が取り付けられており、第二横スライダ51aを横スライド用固定レール51に沿って前後方向にスライド移動させたときには、第二横スライダ51aに連動して、横スライドフレーム52aも前後方向に移動する(図7参照)。
【0036】
図2に示すように、上下スライド用可動レール52は、横スライドフレーム52aの左側壁部の内側面に取り付けられている。
また、図1に示すように、横スライドフレーム52aの前側壁部には、上下方向に延ばされたスリット状の上下スライド用開口溝52bが形成されている。
【0037】
図2に示すように、上下スライド用可動レール52の右側部には、第二上下スライダ52cが組み付けられている。上下スライド用可動レール52及び第二上下スライダ52cは、第二上下スライダ52cが上下スライド用可動レール52に沿って上下方向にスライド移動する公知のリニアガイドである。
【0038】
横スライド用駆動装置53は、図1に示すように、旋回ベース部材20の下板22の上面において、右側の領域の前部に取り付けられた横スライド用駆動モータ53aと、旋回ベース部材20の下板22の上面において、右側の領域の後部に取り付けられた横スライド用従動プーリー53bと、を備えている。
横スライド用駆動モータ53aは、公知の電動モータであり、左方に向けて突出した駆動軸の先端部には、左右方向の軸回りに周面が形成された横スライド用駆動プーリー53cが取り付けられている。また、横スライド用従動プーリー53bは、左右方向の軸回りに周面が形成されている。
【0039】
横スライド用駆動プーリー53cと横スライド用従動プーリー53bとには、環状の横スライド用ベルト53dが掛け回されている。この横スライド用ベルト53dの下面には、図2に示すように、横スライドフレーム52aの下端部から突出した突出部53eの上面が取り付けられている。
そして、横スライド用駆動モータ53aを駆動させて、横スライド用ベルト53dを図3において反時計回りに回転させたときには、横スライド用ベルト53dの回転に連動して横スライドフレーム52aは横スライド用固定レール51に沿って前方に移動する(図7参照)。
また、横スライド用駆動モータ53aを駆動させて、横スライド用ベルト53dを図7において時計回りに回転させたときには、横スライド用ベルト53dの回転に連動して、横スライドフレーム52aは上下スライド用固定レール41に沿って後方に移動する。
このように、横スライド用駆動装置53では、横スライド用駆動モータ53aの駆動力によって、横スライドフレーム52a内の上下スライド用可動レール52を、横スライド用固定レール51に沿って前後方向に移動させている。
【0040】
ハンド部材30は、図1に示すように、上下スライド機構40及び横スライド機構50に支持されている支持部31と、円形基板を吸着保持する保持部32と、を備えている。
支持部31は、箱状の直方体であり、長手方向が前後方向に配置されている。また、支持部31は、旋回ベース部材20の中央部の上方に配置されている。
支持部31の左側部には上下スライド機構40が配設され、右側部には横スライド機構50が配設されている。
【0041】
図2に示すように、支持部31の左側面の下端部には、左方に突出した板状の連結部31aが形成されている。連結部31aの先端部は、上下スライドフレーム42aのスライド用開口溝42bに挿通され、上下スライドフレーム42a内で下方に折り曲げられている。そして、連結部31aの先端部は上下スライド機構40の第一横スライダ42cの右側面に取り付けられている。
図1に示すように、支持部31の後面の右端部には、板状の連結金具31bの基端部が取り付けられている。この連結金具31bの先端部は後方に折り曲げられており、横スライド機構50の横スライドフレーム52aの上下スライド用開口溝52bに挿通され、第二上下スライダ52cの右側面に取り付けられている。
このように、ハンド部材30の支持部31は、左側部が上下スライド機構40の第一横スライダ42cを介して横スライド用可動レール42に支持され、右側部が横スライド機構50の第二上下スライダ52cを介して上下スライド用可動レール52に支持されている。
【0042】
保持部32は、支持部31の上端部から前方に突出した水平な平板状の部位であり、平面視で長方形に形状されている。
保持部32の内部には、真空引き用の配管(図示せず)が設けられており、保持部32の上面の先端領域に形成された多数の微細吸引孔から真空引きすることで、保持部32の先端部に円形基板Wを吸着保持することができる。
【0043】
以上のように構成された基板搬送装置1では、次のように動作して本発明の作用効果を奏する。
ここでは、図1から図3に示すように、ハンド部材30が旋回ベース部材20の中央部で低い位置に配置された状態から、図5から図7に示すように、ハンド部材30を前方及び上方に移動させる場合について説明する。
【0044】
まず、図3に示すハンド部材30を旋回ベース部材20の中央部から前方に移動させる場合には、横スライド機構50の横スライド用駆動モータ53aを駆動させ、図7に示すように、横スライドフレーム52aを横スライド用固定レール51に沿って前方に移動させる。これにより、横スライドフレーム52a内の上下スライド用可動レール52に支持されたハンド部材30は、横スライド用固定レール51に沿って前方に移動する。また、図5に示すように、ハンド部材30の左側部を支持する第一横スライダ42cは、横スライド用可動レール42に沿って前方に移動する。
【0045】
また、ハンド部材30を上方に移動させる場合には、上下スライド機構40の上下スライド用駆動モータ43aを駆動させ、図6に示すように、上下スライドフレーム42aを上下スライド用固定レール41に沿って上方に移動させる。これにより、上下スライドフレーム42a内の横スライド用可動レール42に支持されたハンド部材30は、上下スライド用固定レール41に沿って上方に移動する。また、図7に示すように、ハンド部材30の右側部を支持する第二上下スライダ52cは、上下スライド用可動レール52に沿って上方に移動する。
【0046】
なお、図2に示す旋回用駆動モータ25を駆動させ、旋回ベース部材20を固定ベース部材10に対して横回転させることで、旋回ベース部材20の上方に設けられたハンド部材30を横方向に旋回させることができる。
【0047】
本実施形態の基板搬送装置1では、図2に示すように、ハンド部材30を上下方向及び横方向に移動させるための上下スライド機構40及び横スライド機構50は、ハンド部材30の左右両側にそれぞれ配設され、ハンド部材30の下方の空間は空いているため、ハンド部材30を旋回ベース部材20の上面近傍まで下降させることができる。したがって、基板搬送装置1の設置床面から低い位置で、ハンド部材30を移動させて円形基板Wを搬送することができる。
これにより、基板搬送装置1を卓上に設置し、その卓上に仕分け装置の収納容器や検査装置の検査部を配設することで、円形基板Wの搬送システムを簡単に構築することができ、円形基板の搬送システムの製造コストを低減することができる。
【0048】
また、ハンド部材30及び各レール41,42,51,52によって小型で軽量なアームが構成されており、上下スライド機構40及び横スライド機構50への負荷が小さくなっている。したがって、上下スライド機構40及び横スライド機構50には、低出力で安価な駆動モータを用いることができるとともに、板金加工部品などの低強度の部品を多く用いることができるため、基板搬送装置1の製造コストを低減することができる。
【0049】
また、旋回ベース部材20の上方空間から旋回ベース部材20の上板21に形成された複数の排気用孔27・・・(図1参照)を通じて、旋回ベース部材20内に空気を吸気することで、ハンド部材30に保持された円形基板Wの下面側に、下方に向けた気流を生じさせることができる。これにより、上下スライド機構40及び横スライド機構50の摺動部位で発生した塵を、各排気用孔27・・・を通じて旋回ベース部材20内に取り込み、旋回ベース部材20内から排気装置13を通じて、集塵装置などに排出することができるため、クリーンな環境で円形基板Wを搬送することができる。
【0050】
また、本実施形態の上下スライド機構40及び横スライド機構50では、各駆動モータ43a,53aの駆動力をハンド部材30に伝達する手段として、ベルト機構を用いており、上下スライド機構40及び横スライド機構50の摺動部位が少ないため、上下スライド機構40及び横スライド機構50からの塵の発生を低減することができ、クリーンな環境を保つことができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、本実施形態では、図1及び図2に示すように、上下スライド機構40及び横スライド機構50によって一体のハンド部材30を移動させているが、旋回ベース部材20に横スライド機構50を追加して設置し、二体の横スライド機構50,50によって、二体のハンド部材30,30を横方向に移動させることで、簡単にダブルハンドの基板搬送装置を構成することができる。
【0052】
また、本実施形態の上下スライド機構40及び横スライド機構50では、各駆動モータ43a,53aの駆動力をハンド部材30に伝達する手段として、ベルト機構を用いているが、ボールねじや平歯車を用いた歯車機構を用いてもよく、その伝達手段は限定されるものではない。
【符号の説明】
【0053】
1 基板搬送装置
10 固定ベース部材
12 旋回用固定プーリー
13 排気装置
20 旋回ベース部材
25 旋回用駆動モータ
25b 旋回用駆動プーリー
26 旋回用ベルト
27 排気用孔
30 ハンド部材
31 支持部
32 保持部
40 上下スライド機構
41 上下スライド用固定レール
41a 固定フレーム
41c 第一上下スライダ
42 横スライド用可動レール
42a 上下スライドフレーム
42c 第一横スライダ
43 上下スライド用駆動装置
43a 上下スライド用駆動モータ
43b 上下スライド用従動プーリー
43c 上下スライド用駆動プーリー
43d 上下スライド用ベルト
50 横スライド機構
51 横スライド用固定レール
51a 第二横スライダ
52 上下スライド用可動レール
52a 横スライドフレーム
52c 第二上下スライダ
53 横スライド用駆動装置
53a 横スライド用駆動モータ
53b 横スライド用従動プーリー
53c 横スライド用駆動プーリー
53d 横スライド用ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ベース部材と、
前記固定ベース部材に対して、横回転自在に取り付けられた旋回ベース部材と、
前記旋回ベース部材の上方に配設され、基板を保持するハンド部材と、
前記ハンド部材を上下方向に移動させるための上下スライド機構と、
前記ハンド部材を横方向に移動させるための横スライド機構と、を備え、
前記上下スライド機構は、
前記旋回ベース部材に取り付けられ、上下方向に延びている上下スライド用固定レールと、
前記上下スライド用固定レールに対して、上下方向にスライド自在に取り付けられ、横方向に延びている横スライド用可動レールと、
前記旋回ベース部材に取り付けられ、前記横スライド用可動レールを、前記上下スライド用固定レールに沿って、上下方向に移動させる上下スライド用駆動装置と、を備え、
前記横スライド機構は、
前記旋回ベース部材に取り付けられ、横方向に延びている横スライド用固定レールと、
前記横スライド用固定レールに対して、横方向にスライド自在に取り付けられ、上下方向に延びている上下スライド用可動レールと、
前記旋回ベース部材に取り付けられ、前記上下スライド用可動レールを、前記横スライド用固定レールに沿って、横方向に移動させる横スライド用駆動装置と、を備え、
前記上下スライド機構は、前記ハンド部材に対して、一方の側部に配設され、前記横スライド機構は、前記ハンド部材に対して、他方の側部に配設されており、
前記ハンド部材は、
前記上下スライド機構の前記横スライド用可動レールに対して、横方向にスライド自在に取り付けられるとともに、
前記横スライド機構の前記上下スライド用可動レールに対して、上下方向にスライド自在に取り付けられていることを特徴とする基板搬送装置。
【請求項2】
前記旋回ベース部材は、上板に排気用孔が形成された箱体であり、
前記旋回ベース部材内の空気を、排気装置によって前記旋回ベース部材の下方に排気することで、前記旋回ベース部材の上方空間から前記排気用孔を通じて、前記旋回ベース部材内に空気を吸気することを特徴とする請求項1に記載の基板搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−192505(P2010−192505A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32436(P2009−32436)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(507384722)アテル株式会社 (3)
【Fターム(参考)】