説明

変調器集積レーザ

【課題】正または負の単一電源の、変調器集積レーザを提供する。
【解決手段】n型半導体基板100上にMQW102、p型クラッド層104と多層された半導体レーザ部と、半導体基板100上にp型クラッド層104、MQW202、n型クラッド層105と多層されたEA変調器部とが、集積された構造とすることで、半導体レーザ部に正の電流を注入し、EA変調器に正の電圧を印加して動作するEA変調器集積レーザが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変調器集積レーザおよび光モジュールに係り、特に単一電源で動作する光変調器集積レーザおよびそれを用いた光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光通信システムに使用されている、半導体電界吸収型光変調器(以下、EA(Electro-Absorption)変調器と略称する)は、半導体レーザ素子と組み合わせたレーザモジュールとして使用される。レーザモジュールは、電子クーラを用いて半導体レーザ素子とEA変調器の温度を一定とし、半導体レーザ素子に正の駆動電流を注入することで出力される連続光を、EA変調器に負の電気信号を印加することで光変調を行い、信号光を出力する。非特許文献1には、一般的なレーザモジュールについて記載がある。また、一般的にEA変調器について記載した文献として、非特許文献2がある。
【0003】
このように、これまでのEA変調器と半導体レーザ素子を組み合わせたレーザモジュールの駆動時には正と負の二つの電源系が必要とされる。
また、非特許文献3には、多重量子井戸にAl系材料を用いた低チャープで且つ消光比の大きい変調器が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】伊藤良一、外1名、「半導体レーザ」、培風館、1989年、p.277
【非特許文献2】M. Aoki, et al.、”High-speed(10Gbit/s) and low-drive-voltage(1V peak to peak) InGaAs/InGaAsP MQW electroabsorption modulator integrated DFB laser with semi-insulating buried heterostructure”、IEE、1992年、Electronics Letters vol.28 pp. 1157-1158
【非特許文献3】J.Shimizu, et al.、"Advantages of InGaAlAs/InGaAlAs-MQW Optical Modulators"、Tech. Dig. 7th Optoelectronics and Communications Conference、OECC、2002年、pp. 506-507
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の光通信システム用途の光送信モジュール、光送受信モジュールは、高速・大容量化といった伝送特性の向上だけでなく小型化・省電力化、そして低コストが要求される。そのため小型で安価、かつ高品質なEA変調器を搭載した光送信モジュールは広く利用されている。その中でもEA変調器と半導体レーザ素子が同一のチップ上にモノリシックに集積された半導体電界吸収型光変調器集積レーザ素子(以下、EA変調器集積レーザ)は、さらなる小型化・低コストが得られるため、アクセス系からメトロ系、そして幹線系に至るまで非常に幅広く利用されている。一般的にEA変調器集積レーザは、半導体レーザ部には正の電流を注入し、その発振光をEA変調器部に負の電圧の電気信号を印加することで変調を行い、光変調信号を生成している。その構造は、例えばn型のInP基板などの半導体基板を用いて、その基板上に多重量子井戸(以下MQW:Multi Quantum Well)と略称する)を作製し、さらにその上にp型のクラッド層を形成している。この構造にする事で、半導体レーザ部には正の電流を印加、EA変調器部には負の電気信号を印加したときに、EA変調器集積レーザの裏面を共通のグランドとする事ができ、駆動回路の簡略化を図ることが出来る。
【0006】
しかし、この構造の場合は、半導体レーザ部の駆動のために正電源を、そしてEA変調器部の駆動のために負電源を必要とし、2電源系にて駆動することになる。近年、伝送装置の小型化・低コスト化に伴い、2電源を必要としない単一電源系で動作する光送信モジュール・光送受信モジュールの要求が高まっている。つまりEA変調器部に負の電気信号ではなく、正の電気信号を印加して駆動するEA変調器が求められている。
【0007】
本発明の主な目的は、単一電源で駆動でき安定した光変調信号の発振を実現するEA変調器集積レーザ、およびそれを用いた光モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、n型の半導体基板上に、回折格子を形成した活性層と、p型のクラッド層とを積層形成した第1の光導波路と、p型のクラッド層と、活性層と、n型のクラッド層とを積層形成した第2の光導波路とを形成し、第1の光導波路と、第2の光導波路とを、光学的に結合したEA変調器集積レーザによって、達成可能である。
【0009】
上記課題は、p型の半導体基板上に、回折格子を形成した活性層と、n型のクラッド層とを積層形成した第1の光導波路と、n型のクラッド層と、活性層と、p型のクラッド層とを積層形成した第2の光導波路とを形成し、第1の光導波路と、第2の光導波路とを、光学的に結合したEA変調器集積レーザによっても、達成可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、単一の電源で駆動する変調器集積レーザおよびそれを用いる光モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1のEA変調器集積レーザの平面図である。
【図2A】実施例1のEA変調器集積レーザの断面図である。
【図2B】実施例1のEA変調器集積レーザの断面図である。
【図2C】実施例1のEA変調器集積レーザの断面図である。
【図3】実施例2のEA変調器集積レーザの平面図である。
【図4A】実施例2のEA変調器集積レーザの断面図である。
【図4B】実施例2のEA変調器集積レーザの断面図である。
【図4C】実施例2のEA変調器集積レーザの断面図である。
【図5】実施例3のEA変調器集積レーザの平面図である。
【図6A】実施例3のEA変調器集積レーザの断面図である。
【図6B】実施例3のEA変調器集積レーザの断面図である。
【図6C】実施例3のEA変調器集積レーザの断面図である。
【図7】実施例4のEA変調器集積レーザが搭載されたチップキャリア組み立ての平面図である。
【図8】実施例4の光送信モジュールの側面図である。
【図9】実施例5の光送受信モジュールのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用いて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施例では、同一の機能を有する部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【実施例1】
【0013】
図1および図2を用いて、本発明の実施の形態である変調器集積レーザについて、実施例1を説明する。ここで、図1は、EA変調器集積レーザの平面図である。また、図2は、EA変調器集積レーザの断面図であり、図2Aは図1のa−a’(光導波路の光軸方向)の断面図、図2Bはb−b’(半導体レーザ部)の断面図、図2Cはc−c’(EA変調器部)の断面図である。なお、図2に示す断面図は、厚さ方向はNTS(Not To Scale)であり、図面間で一致していない箇所がある。これは、以下の実施例でも同様である。
【0014】
本実施例のEA変調器集積レーザは、伝送速度10Gbit/s、40km伝送用で、波長1.5μm帯用である。
EA変調器集積レーザ120は、図2Aを参照して、次のプロセスにて製造される。まず、n型InP半導体基板100上に、有機金属気相法を用いてInGaAsP下側光ガイド層101を結晶成長する。次に、InGaAsP井戸層と障壁層とを8回交互に積層(以下、8周期と表現する)した層である歪多重量子井戸層(以下、MQW)102、InGaAsP上側光ガイド層103を形成する。この後、InGaAsP上側光ガイド層103に回折格子を形成する。この部分は、半導体レーザ部となり、InGaAsP下側光ガイド層101、MQW102、InGaAsP上側光ガイド層103の3領域を、合わせて活性層130と呼ぶ。n型InP半導体基板100と活性層130と後述するp型InPクラッド層104とで、レーザとして動作する光導波路を形成する。
【0015】
次に、半導体レーザ部をマスクにて保護した状態で、下側光ガイド層101までエッチング除去する。マスクを除去し、有機金属気相法を用いてZnをドーピングしたp型InPクラッド層104を形成する。再び半導体レーザ部をマスクで保護し、InGaAsP下側光ガイド層201、InGaAsP井戸層と障壁層8周期からなるMQW202、InGaAsP上側光ガイド層203を形成する。ここで結晶成長を行なった領域は、EA変調器部となり、InGaAsP下側光ガイド層201、MQW202、InGaAsP上側光ガイド層203の3領域を合わせて活性層230と呼ぶ。p型InPクラッド層104と活性層230と後述するn型InPクラッド層105とで、電界吸収層として動作する光導波路を形成する。
【0016】
EA変調器部にマスクを形成し、半導体レーザ部とEA変調器部間をドライエッチングにてn型InP半導体基板100まで除去する。この部分をパッシブ導波路とするために結晶成長を行い、絶縁層であるFe―InP層305、InGaAsP下側光ガイド層301、InGaAsP導波路層302、InGaAsP上側光ガイド層303を形成する。Fe-InP層305の領域により、半導体レーザ部とEA変調器部間の電気的なアイソレーションが強化され、安定した動作が得られる。なお、パッシブ導波路は、光導波路を光学的に結合するものである。
【0017】
EA変調器部のマスクを除去し、Seをドーピングしたn型InPクラッド層105を結晶成長する。半導体レーザ部のマスクを除去し、全体に駆動電圧を下げるためにInGaAsコンタクト層106を形成する。次に半導体レーザ部とEA変調器部との電気的なアイソレーションのために、パッシブ導波路上のInGaAsコンタクト層106を除去する。
【0018】
図2Bおよび図2Cに移って、通常のホトリフォグラフィ技術とドライエッチングにて、レーザとして動作する光導波路と、変調器として動作する光導波路、両者を結合するパッシブ導波路を形成する。これら導波路の両側面に、低容量化および信頼性確保のためにFe-InP層111による埋め込み成長を行なう。パッシベーション膜107を半導体全面に形成した後、半導体レーザ部とEA変調器部に電界が印加されるように、パッシベーション膜107にスルーホールを形成する。
【0019】
図1で、そして各々のスルーホールの上に各々が電気的に分離されたp電極108、109の2個の電極を形成する。最後に、図2に示すn側電極110を形成し、EA変調器集積レーザ素子120が作製される。なお、EA変調器側端面(レーザ出力面)には、図示しない無反射コーティングを施す。
【0020】
EA変調器集積レーザの光軸方向の長さは600μmであり、EA変調器部は200μm、半導体レーザ部は350μmとした。またEA変調器部の導波路と半導体レーザ部の導波路で挟まれた領域は、ほとんど光吸収が起こらないパッシブ導波路となる。
【0021】
実施例1のEA変調器集積レーザ素子120を駆動するため、半導体レーザ部のp側電極108には正電流を+80mAを注入し、EA変調器部のp側電極109には電気信号Highレベル(以下、VOH:Voltage Of High)と略称する)が+3.6V、電気信号Lowレベル(以下、VOL:Voltage Of Low)と略称する)が+1.6Vの正の10Gbit/sの電気信号を印加した。なお、ここでは、光が消光される側の電圧をVOLと定義した。
【0022】
この結果、変調時光出力(以下、Pfmodと略称する)が+1.0dBm、変調時消光比(以下、ACER:Alternating Current Extinction Ratioと略称する)が9.7dB、光波形のマスクマージン(以下、MM:Mask Marginと略称する)がITU−T_G691規格に定めるアイマスクパターンにおいて、10%という良好な特性が得られた。
【0023】
実施例1によれば、n型電極110が半導体レーザ部のグランドであり、かつEA変調器部のグランドとしても機能しており、正の電圧だけで駆動するEA変調器集積レーザが得られた。
【0024】
なお、実施例1では、p型クラッド層のドーパントにZnを用いたが、他にもBe、Cを用いても、またn型クラッド層のドーパントにS、Siを用いても同様の構造は得られる。また、パッシブ導波路上にプロトンを打ち込みアイソレーションを強化することができる。
【0025】
また、実施例1では、光導波路の両側をFe-InPで埋め込むBH(Buried Heterostructure)型としたが、両側を覆わないリッジ型でも本実施例の効果は得られる。半導体レーザ部の上部クラッド層104と、EA変調器部の下部クラッド層104とは、別工程で形成しても良い。
【0026】
EA変調器部、半導体レーザ部のMQWについて、P系材料であるInGaAsPの4元混晶を用いている。これに対し、非特許文献3に記載のMQWにAl系材料を用いた場合は、そのバンドオフセットの特徴から、低チャープで且つ消光比の大きい変調器設計が、可能となる。また、高温においても安定した光出力が得られる半導体レーザ部設計が可能となる。
【0027】
また、実施例1では正の単一電源での駆動について実例を説明したが、半導体レーザ部に負の電気信号を印加して、EA変調器として駆動させ、逆に本実施例で説明したEA変調器部に負の電流を印加して半導体レーザとして駆動させた場合は、負の単一電源で動作するEA変調器集積レーザとすることもできる。なお、EA変調器部を半導体レーザとして動作させる場合は、InGaAsP上側光ガイド層203に回折格子を設ける必要があり、レーザ光の出射面が変わる。
【0028】
さらに本実施例ではn型半導体基板を用いたが、p型半導体基板を用いても本構造を採用する事で、正・負どちらでも単一電源で動作するEA変調器集積レーザが得られる。
なお、上述した変形例は、以下の実施例2および実施例3にも適用できる。
【実施例2】
【0029】
図3および図4を用いて、実施例2を説明する。ここで、図3は、EA変調器集積レーザの平面図である。また、図4は、EA変調器集積レーザの断面図であり、図4Aは図3のa−a’(光導波路の光軸方向)の断面図、図4Bはb−b’(半導体レーザ部)の断面図、図4Cはc−c’(EA変調器部)の断面図である。
【0030】
実施例2では、EA変調器のn電極をEA変調器集積レーザの裏面ではなく、表面側とした。実施例2は、リッジ型で作製したEA変調器集積レーザであり、実施例1と基本構造は同様である。従って、実施例1と実質的に同じ部分には同じ番号、符号を付して詳細な説明は省く。
【0031】
実施例2では、図4Bおよび図4Cに示すようにドライエッチングにて光導波路形成後、Fe-InP層で埋め込まず、全体にパッシベーション膜107を形成するリッジ型の構造とした。またスルーホールについて、MQWを含む光導波路と、EA変調器部の表面の一部分にも形成した。次に、図3に示すように、各々のスルーホールの上に各々が電気的に分離されたp電極108、109と、n電極210の3個の電極を形成する。最後に、n側電極110を形成して、EA変調器集積レーザ素子220が作製される。
【0032】
本実施例のEA変調器集積レーザ素子220を駆動するため、半導体レーザ部のp側電極108には正電流を+80mAを注入し、EA変調器部のp側電極109には電気信号VOH=+2.2V、VOL=+0.2Vの正の10Gbit/sの電気信号を印加した。また、EA変調器部では、n電極210とグランドとをAuワイヤで接続した。
【0033】
実施例1では、EA変調器部側ではp型クラッド層104とn-InP基板100間にpn接合が存在するため、EA変調器部に印加されるVOHが大きくなる。しかし、実施例2では、このpn接合部分を通らず接地することができるため、VOHは実施例1より小さくする事が出来た。その結果、VOH、VOLが小さくても実施例1と同等のPfmod=+1.0dBm、ACER=9.7dB、MM=10%という良好な特性が得られた。
【0034】
本実施例によれば、正の電圧だけで駆動する特性の良好なEA変調器集積レーザが得られた。
【0035】
なお、実施例2では、光導波路の両側を覆わないリッジ型としたが、両側をFe-InPで埋め込むBH型でも本実施例の効果は得られる。これは、実施例3でも同じである。
【実施例3】
【0036】
図5および図6を用いて、実施例3を説明する。ここで、図5は、EA変調器集積レーザの平面図である。また、図6は、EA変調器集積レーザの断面図であり、図6Aは図5のa−a’(光導波路の光軸方向)の断面図、図6Bはb−b’(半導体レーザ部)の断面図、図6Cはc−c’(EA変調器部)の断面図である。
【0037】
実施例3は、高周波特性を向上のために、EA変調器部の基板をエッチングした構造である。実施例3のEA変調器集積レーザの基本構造は、概ね実施例1および実施例2の組み合わせであり、実施例1および実施例2と実質的に同じ部分には同じ番号、符号を付して詳細な説明は省く。
【0038】
実施例3では、実施例2においてn側電極110を蒸着形成する前に、EA変調器部の裏面を、p型クラッド層104までエッチング除去する。具体的には、n-InP基板100を、HCl:H:HOエッチャントを用いて、80μm程度エッチングした。その後、n側電極110を蒸着形成することで、図5および図6に示すEA変調器集積レーザ素子320が作製できる。n側電極110に、半導体レーザ部とEA変調器部とは約80μmの段差ができるが、実使用時は裏面側をはんだ材でサブマウントに搭載するため、はんだ材を介してグランドは共通とする事が出来る。
【0039】
なお、実施例3では、図6Bおよび図6Cに示すように、活性層130、230をメサ部でパターンニングしない構造とした。この構造は、実施例1および実施例2についても、適用可能である。
【0040】
本実施例では、裏面側のn電極とEA変調器部のp型クラッド層が直接接続しているため、pn接合は存在しない。また、実施例2ではn側電極210よりAuワイヤでグランドに接続したため、このAuワイヤが持つインダクタンスにより若干ではあるがMMの劣化を招く虞がある。しかし、実施例3では、このインダクタンスがAuワイヤ使用時と比べて格段に小さく、MMが向上する。さらに、p型下側クラッド層104の直下にn電極110があるため、ホールの抜けが早く、パイルアップ耐性に強いEA変調器集積レーザが得られる。
【0041】
本実施例のEA変調器集積レーザ素子320を駆動するため、半導体レーザ部のp側電極108には正電流を+80mAを注入し、EA変調器部のp側電極109には電気信号VOH=+2.2V、VOL=+0.2Vの正の10Gbit/sの電気信号を印加した。ここでも実施例2と同様でpn接合部分を通らずに電気のパスを作る事ができるため、VOHは実施例1より小さくする事が出来た。その結果、Pfmod=+1.0dBm、ACER=9.7dB、MM=18%という極めて良好な特性が得られた。
本実施例によれば、正の電圧だけで駆動する特性の極めて良好なEA変調器集積レーザが得られた。
【実施例4】
【0042】
図7および図8を用いて、本発明の他の実施の形態である光モジュールの実施例4を説明する。ここで、図7は、EA変調器集積レーザが搭載されたチップキャリア組み立ての平面図である。また、図8は、光送信モジュールの側面図である。
【0043】
図7において、実施例1〜実施例3のいずれかのEA変調器集積レーザ420は、終端抵抗401が付いて高周波設計がなされたチップキャリア410に搭載される。ここで、EA変調器集積レーザが、実施例1または実施例3で説明したチップ裏面をEA変調器のグランドとする場合の実装形態を図7(a)に示す。また、EA変調器集積レーザが、実施例2で説明したチップ表面にEA変調器のグランド端子を有する場合の実装形態を図7(b)に示す。
【0044】
図7(a)において、チップキャリア410上には、インピーダンス50Ω(オーム)の伝送線路405が形成され、50オームの終端抵抗401が取り付けられている。終端抵抗401は、その裏面でチップキャリア401表面のグランド電極430と接続されている。EA変調器集積レーザ420は、チップキャリア401表面のグランド電極430とはんだ接続することで、EA変調器集積レーザ420のレーザ部および変調器部のグランド電極が接地される。次に、伝送線路405と、EA変調器集積レーザ420の変調器部の表面電極と、終端抵抗の電極とを、1本の金ワイヤ461で接続する。この状態で、チップキャリア組み立て440が完成し、図示しない駆動電流源と、EA変調器集積レーザ420のレーザ部表面の電極とを金ワイヤ462で接続し、図示しない変調信号源と、伝送線路405とを、図示しない金リボンで接続することによって、チップキャリア組み立て440の試験が可能となる。
【0045】
一方、図7(b)において、EA変調器集積レーザ420を、チップキャリア401表面のグランド電極430とはんだ接続しても、接地されるのはEA変調器集積レーザ420のレーザ部のみであり、変調器部はその表面のグランド電極を金ワイヤ463でグランド電極430と接続する必要がある。
【0046】
図8において、チップキャリア410は、フォトダイオード411が搭載されたチップキャリア412と一緒にAlNで作製されたステム413上にはんだ接続される。ステム413は、ペルチエ素子414上に搭載する。これらをレンズ402、光ファイバ403、アイソレータ404とともに、小型パッケージ415に実装する。これにより光送信モジュール450が完成する。
【0047】
本実施例では、ペルチエ素子414にてEA変調器集積レーザ420の温度を40℃となるように制御し、EA変調器集積レーザ420の後方の光出力をフォトダイオード411で受け、フォトダイオード411で変換される光電流が一定となるように半導体レーザ部への駆動電流を変化させるAPC(Automatic Power Control)制御にて一定の光出力となるように動作させた。こうした光送信モジュールにおいても、実施例1〜実施例3で述べた特性が得られた。
【0048】
また本実施例では、ペルチエ素子を用いてEA変調器集積レーザの温度を一定として動作させたが、ペルチエ素子を用いないで動作させるアンクールド、予め定めた温度以上、例えば45℃以上のときのみペルチエ素子を動作させるセミクールド光送信モジュールにおいても本発明は適用可能である。また、より小型・低消費電力が要求される光送受信モジュールに搭載されるCAN型PKG、TOSA(Transmitter Optical Subassembly)などにも適用できる。
【0049】
さらに本実施例ではチップキャリアへの素子搭載時に、半導体基板側で接合するJunction―Up方式で行なったが、放熱性の向上のために活性層側で接合するJunction―Down方式を採用しても本発明の効果は得られる。
【実施例5】
【0050】
図9を用いて、光モジュールの実施例5を説明する。ここで、図9は、実施例5の光送受信モジュールのブロック図である。
図9において、光送受信モジュール550は、実施例4で説明した光送信モジュール450を有し、正電源で動作する光受信モジュール502、半導体レーザ駆動電流を制御する制御回路503、EA変調器駆動部504、変調入力信号の電気波形を補正する波形補正回路505、受信出力信号の電気波形を補正する波形補正回路506で構成する。
【0051】
本実施例においては、光送信モジュール450を搭載することで、全駆動部・制御回路を正の単一電源のみで駆動することができ、実施例1ないし実施例3で説明したPfmod、ACER、MMの各特性を実現した光送受信モジュールを得ることができた。
なお、光モジュールには、光送信モジュール、光送受信モジュールを含む。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、正負の二つの電源系を用いることなく正、もしくは負だけの単一電源で駆動でき、かつ長距離伝送可能な小型で安価、そして低消費電力な光モジュールに適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
100…n-InP基板、101…InGaAsP下側光ガイド層、102…量子井戸層、103…InGaAsP上側光ガイド層、104…p型InPクラッド層、105…n型InPクラッド層、106…InGaAsコンタクト層、107…パッシベーション膜、108…p側電極、109…p側電極、110…n側電極、120…本発明のEA変調器集積レーザ、130…半導体レーザ部の活性層、201…InGaAsP下側光ガイド層、202…量子井戸層、203…InGaAsP上側光ガイド層、210…n側電極、220…EA変調器集積レーザ、230…活性層、301…InGaAsP下側光ガイド層、302…InGaAsP導波路層、303…InGaAsP上側光ガイド層、305…Fe―InP層、320…EA変調器集積レーザ、401…終端抵抗、402…レンズ、403…光ファイバ、404…アイソレータ、405…伝送線路、410…チップキャリア、411…フォトダイオード、412…チップキャリア、413…ステム、414…ペルチエ素子、415…パッケージ、420…EA変調器集積レーザ、430…グランド電極、440…チップキャリア組み立て、450…光送信モジュール、460…金ワイヤ、461…金ワイヤ、462…金ワイヤ、502…光受信モジュール、503…制御回路、504…EA変調器駆動部、505…波形補正回路、506…波形補正回路、550…光送受信モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型の半導体基板上に、回折格子を形成した第1の活性層と、p型のクラッド層とがこの順序で積層形成された半導体レーザ部と、
前記半導体基板上に、p型の第2クラッド層と、第2の活性層と、n型の第3クラッド層とがこの順序で積層形成され、かつ、素子の表面上にp電極とn電極とが形成された変調器部と、
前記半導体基板上、かつ、前記半導体レーザ部と前記変調器部との間に形成され両者を光学的に結合する光導波路部と、
からなり、
前記第1の活性層は、第1の光ガイド層と、第1の多重量子井戸層と、前記回折格子を含む第2の光ガイド層とがこの順序で前記半導体基板側から積層形成されており、
前記第2の活性層は、第3の光ガイド層と、第2の多重量子井戸層と、第4の光ガイド層とがこの順序で前記半導体基板側から積層形成されており、
前記光導波路部は、絶縁層と、第5の光ガイド層と、光導波路層と、第6の光導波路層とがこの順序で前記半導体基板側から積層形成されていることを特徴とする変調器集積レーザ。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−44753(P2011−44753A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270040(P2010−270040)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【分割の表示】特願2004−366072(P2004−366072)の分割
【原出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(301005371)日本オプネクスト株式会社 (311)
【Fターム(参考)】