説明

多孔質構造体および多孔質構造体の製造方法

【課題】 電極に用いやすく、強度が高い多孔質構造体とその製造方法を提供する。
【解決手段】 3次元的な網目構造を形成する骨格部4と、骨格部4の表面に設けられ、網目構造の空隙の全部または一部を塞ぐ封止材5と、を備え、骨格部4または封止材5は、実質的にセラミックス、炭素またはこれらのうち少なくとも一方と金属とからなる複合材料により構成される。これにより、封止材5により空隙を塞がれた部分に導電体を接合する際の接触面積を大きくして、接合を容易にし、容易に多孔質構造体1を電極に用いることができる。また、封止材5により空隙を塞がれた部分は骨格が太くなるか、完全に空隙が閉ざされるため、多孔質構造体1の強度を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止材により一定領域内の網目構造の空隙を塞がれた多孔質構造体および多孔質構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セラミックスを含む多孔質構造体の研究が行われている。このような多孔質構造体の中には、有形骨格からなり等方的かつ均一な3次元的な網目構造を有しているものがある(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。それらの平均的な空隙径は、多孔質構造体のどの断面においてもほぼ同一である。
【特許文献1】特開2000−109375号公報
【特許文献2】特開2003−119085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1または特許文献2に記載されている多孔質構造体は、泡沫含有スラリーを硬化させて作製されているため、空隙が多く、平面部を作製しても、接触面積を十分に確保できず、平面部に金属を接合させて電極に用いる用途としては用いづらい。
【0004】
また、このように空隙を多く含む多孔質構造体は強度的にも弱いため、外面の一部が封止されて補強された多孔質構造体が望まれていた。本発明は、電極に用いやすく、強度が高い多孔質構造体とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記の目的を達成するため、本発明に係る多孔質構造体は、3次元的な網目構造を形成する骨格部と、前記骨格部の表面に設けられ、前記網目構造の空隙の全部または一部を塞ぐ封止材と、を備え、前記骨格部または封止材は、実質的にセラミックス、炭素またはこれらのうち少なくとも一方と金属とからなる複合材料により構成されることを特徴としている。
【0006】
これにより、封止材により空隙を塞がれた部分に導電体を接合する際の接触面積を大きくして、接合を容易にし、容易に多孔質構造体を電極に用いることができる。また、封止材により空隙を塞がれた部分は骨格が太くなるか、完全に空隙が閉ざされるため、多孔質構造体の強度を高めることができる。また、材料特性に起因して耐熱性が大きく、機械的特性に優れ、かつ熱伝導率も大きい多孔質構造体を得ることができる。
【0007】
(2)また、多孔質構造体は、前記骨格部または前記封止材が、実質的に、炭化珪素からなるセラミックス、または前記セラミックスと珪素とからなる複合材料により構成されることが好適である。これにより、多孔質構造体を用いて導電性の高い電極を作製することができる。また、材料の耐熱性、熱伝導性が極めて高いため、強度の高い熱拡散体や電磁波フィルタ等として電気機器の部品にも応用できる。
【0008】
(3)また、多孔質構造体は、前記封止材が、前記網目構造の空隙を、連通する空隙を完全に閉ざさない程度まで塞ぐことが好適である。空隙を残しておくことで、気体や液体などの流体のフィルタに用いることができる。また、骨格部により構成される網目構造に対して平均的な空隙径の異なる領域を設けて、異方性のあるフィルタ等にも応用することができる。
【0009】
(4)また、多孔質構造体は、前記封止材により前記網目構造の空隙を塞がれた封止領域の外面を覆う導電性を有する被覆部をさらに備えることが好適である。これにより、容易に被覆部に導電体を接続することができ、電極に用いることができる。
【0010】
(5)また、多孔質構造体は、前記封止材により前記網目構造の空隙を塞がれた封止領域の外面に導電部材をさらに備えることが好適である。これにより、導電部材に導電体を接続することができ、多孔質構造体を電極に用いることができる。
【0011】
(6)また、本発明に係る多孔質構造体の製造方法は、樹脂類、または、樹脂類と炭素、金属粉末もしくはセラミックス粉末との組み合わせを含むスラリーを作製する工程と、有機物質からなる骨格部により3次元的な網目構造を形成するプリフォームの空隙に前記スラリーを含浸させ、スラリーの不要分を除去する工程と、前記含浸後のプリフォームの外面に前記スラリーを塗布または噴霧し空隙を塞ぐ工程と、前記スラリーの塗布または噴霧後のプリフォームを真空または不活性雰囲気下において加熱し、前記プリフォームに含有される有機物質を炭素化する工程と、前記真空または不活性雰囲気下において加熱されたプリフォームを真空または不活性雰囲気下において焼成する工程と、を含むことを特徴としている。
【0012】
これにより、封止材により空隙を塞がれた部分に導電体を接続し易い多孔質構造体を作製することができる。また、容易に電極に用いることができる多孔質構造体を作製することができる。また、封止材により空隙を塞がれた部分は骨格が太くなるか、完全に空隙が閉ざされるため、高強度の多孔質構造体を作製することができる。また、材料特性に起因して耐熱性が大きく、機械的特性に優れ、かつ熱伝導率も大きい多孔質構造体を得ることができる。また、スラリーを塗布または噴霧する工程で空隙を残しておくことで、得られた多孔質構造体を気体や液体などの流体のフィルタに用いることができる。骨格部により構成される網目構造に対して平均的な空隙径の異なる領域を設けて、異方性のあるフィルタ等にも応用することもできる。その場合には、空隙径を調整することができる。導電部材に導電体を接続することができ、多孔質構造体を電極に用いることができる。
【0013】
(7)また、本発明に係る多孔質構造体の製造方法は、樹脂類、または、樹脂類と炭素、金属粉末もしくはセラミックス粉末との組み合わせを含むスラリーを作製する工程と、実質的にセラミックス、炭素またはこれらのうち少なくとも一方と金属とからなる複合材料により構成される骨格部を備え、3次元的な網目構造を形成する多孔質構造体に、前記スラリーを塗布、または噴霧する工程と、前記スラリーを塗布、または噴霧された多孔質構造体を真空または不活性雰囲気下において加熱し、前記スラリーに含有される有機物質を炭素化する工程と、前記真空または不活性雰囲気下において加熱された多孔質構造体を真空または不活性雰囲気下において焼成する工程と、を含むことを特徴としている。このように、すでに焼成体である多孔質構造体にスラリーを塗布または噴霧するため、塗布量または噴霧量の制御が容易で、細かい孔を調製することができる。
【0014】
(8)また、本発明に係る多孔質構造体の製造方法は、実質的にセラミックス、炭素またはこれらのうち少なくとも一方と金属とからなる複合材料により構成される骨格部を備え、3次元的な網目構造を形成する多孔質構造体に、金属粉末、セラミックス粉末、またはこれらを混合した粉体を溶射する工程を含むことを特徴としている。このように、すでに焼成体である多孔質構造体に粉体を溶射するため、溶射量の制御が容易で、封止状況を観察しながら適宜封止状態を調製することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る多孔質構造体によれば、封止材により空隙を塞がれた部分に導電体を接合する際の接触面積を大きくして、接合を容易にし、容易に多孔質構造体を電極に用いることができる。また、封止材により空隙を塞がれた部分は骨格が太くなるか、完全に空隙が閉ざされるため、多孔質構造体の強度を高めることができる。また、材料特性に起因して耐熱性が大きく、機械的特性に優れ、かつ熱伝導率も大きい多孔質構造体を得ることができる。
【0016】
また、多孔質構造体を用いて導電性の高い電極を作製することができる。また、材料の耐熱性、熱伝導性が極めて高いため、強度の高い熱拡散体や電磁波フィルタ等として電気機器の部品にも応用できる。また、容易に被覆部に導電体を接続することができ、電極に用いることができる。
【0017】
また、本発明に係る多孔質構造体の製造方法によれば、封止材により空隙を塞がれた部分に導電体を接続し易い多孔質構造体を作製することができる。また、容易に電極に用いることができる多孔質構造体を作製することができる。また、封止材により空隙を塞がれた部分は骨格が太くなるか、完全に空隙が閉ざされるため、高強度の多孔質構造体を作製することができる。また、材料特性に起因して耐熱性が大きく、機械的特性に優れ、かつ熱伝導率も大きい多孔質構造体を得ることができる。また、スラリーを塗布または噴霧する工程で空隙を残しておくことで、得られた多孔質構造体を気体や液体などの流体のフィルタに用いることができる。骨格部により構成される網目構造に対して平均的な空隙径の異なる領域を設けて、異方性のあるフィルタ等にも応用することもできる。その場合には、空隙径を調整することができる。導電部材に導電体を接続することができ、多孔質構造体を電極に用いることができる。
【0018】
また、本発明に係る多孔質構造体の製造方法によれば、すでに焼成体である多孔質構造体にスラリーを塗布または噴霧したり、金属粉末などを溶射するため、塗布量または噴霧量、溶射量の制御が容易で、細かい孔を調製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
【0020】
図1に示すように、多孔質構造体1は、骨格部のみの領域2と封止領域3から構成されている。また、図2に示すように、骨格部4は、節点から複数の分岐を有し、分岐した先が他の節点からの分岐と結合し、3次元的な網目構造を形成している。骨格部のみの領域2では、網目を構成する骨格部4以外の部分は空隙である。図3に示すように、封止領域3は、骨格部4により形成される網目構造の空隙が封止材5により塞がれている。これにより、封止材5により空隙を塞がれた部分に導電体を接合する際の接触面積を大きくして、接合を容易にし、容易に多孔質構造体1を電極に用いることができる。また、封止材5により空隙を塞がれた部分は骨格が太くなるか、完全に空隙が閉ざされるため、多孔質構造体1の強度を高めることができる。
【0021】
骨格部4および封止材5は、金属珪素のマトリックスと炭化珪素セラミックスの粒子の複合材料によって構成されている。これにより、多孔質構造体1を用いて導電性の高い電極を作製することができる。また、材料の耐熱性、熱伝導性が極めて高いため、強度の高い熱拡散体や電磁波フィルタ等として電気機器の部品にも応用できる。なお、骨格部4または封止材5の材料は、それぞれ珪素のみまたは炭化珪素セラミックスのみであってもよい。また、骨格部または封止材は、上記の材料に限定されず実質的にセラミックス、炭素またはこれらのうち少なくとも一方と金属とからなる複合材料により構成されていてもよい。「実質的に」とは、不純物を考慮しないという意味である。
【0022】
多孔質構造体1の網目は、図1に示すように細かくてもよいが、図4に示すように荒いものであってもよい。図4に示すように、骨格部のみの領域11および13の網目は図1に示す骨格部4の網目より粗くなっている。また、封止領域12および14では、封止材5が網目の空隙を完全に閉ざしている。
【0023】
なお、封止領域3は、図5に示すように、網目を連通する空隙を完全に閉ざした封止領域21であってもよいし、網目を連通する空隙を完全に閉ざさずに孔を残した封止領域22であってもよい。空隙を完全に閉ざさない場合には、図示するように0.2mm以下の細かい孔を残した封止領域23としてもよいし、比較的大きい孔を残した封止領域24としてもよい。空隙を残しておくことで、多孔質構造体1を気体や液体などの流体のフィルタに用いることができる。また、骨格部により構成される網目構造に対して平均的な空隙径の異なる領域を設けて、異方性のあるフィルタ等にも応用することができる。
【0024】
次に、以上のように構成された多孔質構造体1の製造方法を説明する。図6は、多孔質構造体1の製造方法を示すフローチャートである。
【0025】
予め有機質スポンジ状の多孔質プリフォームを準備しておく。多孔質プリフォームの骨格部を構成する材料としては、スラリーを保持できる材料が望ましく、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂などの各種樹脂類あるいはゴム製等のスポンジ、あるいは、スポンジ形状のプラスチック類や紙類等が適している。これらは2種類以上の混合体でもかまわない。樹脂成分は、主にウレタン樹脂であることが好ましい。「主に」とは、樹脂成分のうち、質量割合で占める割合が半分以上であることをいう。スポンジの網目は、用途により細かいものを用いてもよいし、粗いものを用いてもよい。
【0026】
まず、上記の多孔質プリフォームに含浸させるスラリーを作製する(ステップS1)。炭素源として樹脂類を溶媒に溶解させ、珪素粉末を混合する。樹脂類には、フェノール樹脂、フラン樹脂、あるいはポリカルボシラン等の有機金属ポリマー、または蔗糖が好ましいものとして挙げられる。これらの樹脂類はその1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。スラリー中の気泡の発生を抑制する観点から、消泡剤を添加することは有効である。また、塗布または噴霧するスラリーの特性を変えて空隙の有無や空隙径の大小を調整するため、ポリエステルもしくはパラフィンの粉末、または澱粉等をスラリーに添加してもよい。
【0027】
なお、珪素粉末としては、微粉末が適しており、特に平均粒径が30μm以下の微粉末が好適である。粒径が大きなものは、ボールミル等により粉砕して微粉化してもよい。珪素粉末の代わりに、マグネシウム、アルミニウム、チタニウム、クロミウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、あるいはタングステンから選ばれた少なくとも1種と珪素との合金の粉末、またはそれらと珪素粉末の混合物をスラリーに混合してもよい。
【0028】
さらに、添加剤として、炭素粉末、黒鉛粉末、カーボンブラックを添加してもよく、骨材または酸化防止剤として、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、ジルコン、アルミナ、シリカ、ムライト、二珪化モリブデン、炭化ホウ素、ホウ素粉末等をスラリーに添加してもよい。なお、多孔質プリフォームまたはスラリーの成分比は、炭素化後の多孔質プリフォームの珪素と炭素との原子比がSi/C=0.05〜4になるように選ぶのが望ましい。
【0029】
上記のように、多孔質プリフォームおよびスラリーを準備した後、多孔質プリフォームをスラリーに浸して、スラリーを含浸させ(ステップS2)、スラリーが網目を連通する空隙を塞がない程度にまで絞って、スラリーの不要分を除去する(ステップS3)。スラリーの不要分とは、含浸させたスラリー全体から概ね空隙を塞がない程度に残すスラリーを引いた分をいう。
【0030】
含浸は、多孔質プリフォームをスラリーに浸す代わりに、多孔質プリフォームの骨格部に十分に塗布してもよい。スラリー除去方法としては、構造体に圧力をかけて十分にスラリーを排出する方法、遠心力によりスラリーを排出する方法など種々の方法が可能である。さらには、目詰まりを低減するため、最終的に圧縮空気を吹きかける、または先端が尖った棒でつつくなどの方法により、表面の造膜部位を除去する工程を加えるのも有効である。スラリーの不要分を削除した後、多孔質プリフォームを約70℃で乾燥させる(ステップS4)。乾燥時間は12時間程度行なうのが好ましい。
【0031】
次に、乾燥させた多孔質プリフォームの表面にスラリーを塗布または噴霧し、空隙を塞ぐ(ステップS5)。たとえば、多孔質プリフォームが直方体である場合にその一面に塗布または噴霧する。塗布する方法として、刷毛やローラーによる方法や、容器にスラリーを張り、多孔質プリフォームの一面を浸す方法等が利用できる。また、噴霧する方法としては、スプレーを使用することができる。このようにスラリーを塗布または噴霧された部分がこれ以降の工程を経て最終的には封止材となる。なお、この工程において、たとえば、塗布または噴霧するスラリーの量を減らしたり、予め粘度を下げたスラリーを調整しておいたりすることにより、空隙を完全に塞がないようにスラリーを塗布または噴霧してもよい。さらに、塗布または噴霧するスラリー量により空隙の有無や空隙径の大小を調整してもよい。空隙の有無や空隙径の大小は、スラリーの成分、塗布または噴霧量、および多孔質プリフォームとしてのスポンジの網目の粗さにより、調節することが可能である。
【0032】
次に、乾燥して得られた多孔質プリフォームを、真空またはアルゴンなどの不活性雰囲気下で、900〜1350℃程度の温度において炭素化する(ステップS6)。これによって多孔質プリフォームは炭素と珪素からなる炭素化複合体となる。多孔質プリフォームの骨格のウレタン樹脂成分は熱分解により大半が消失するが、コーティングしたフェノール樹脂の炭素化による炭素成分と珪素粉末により、スポンジの骨格は元の形状を維持している。骨格部は一部含浸したフェノール樹脂の炭素化による炭素部分と、予め含まれている珪素粉末が残っており、適当な空隙を有した構造となる。塗布または噴霧されたスラリーにより空隙を塞がれた部分についても、骨格部と同様に熱分解が生じ、炭素化される。炭素化した多孔質プリフォームは加工可能な強度を有している。
【0033】
次に、炭素化した多孔質プリフォームは、真空またはアルゴンなどの不活性雰囲気下で1250℃以上の温度において焼成処理し(ステップS7)、炭素と珪素とを反応させて溶融珪素と濡れ性のよいポーラスな炭化珪素部分を骨格および塗布または噴霧されたスラリーにより塞がれた部分の内部に形成させる。その際には、この反応が体積減少反応であるため、その体積減少反応に起因する開気孔が生成される。その結果、骨格部または封止材となる部分が炭化珪素および残留炭素の部分と、あるいは未反応の珪素とにより形成され、微小な気孔を有する多孔質プリフォームを得る。
【0034】
次に、この焼結体としての多孔質プリフォームを、真空または不活性化雰囲気下において1300〜1800℃程度の温度に加熱し、骨格上にあるポーラスな炭化珪素および炭素の部分に珪素を溶融含浸する(ステップS8)。その結果、本発明に係る多孔質構造体1が得られる。溶融含浸用の珪素は、純珪素金属でもよいし、マグネシウム、アルミニウム、チタニウム、クロミウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、タングステン等と珪素との合金、またはそれらと珪素の混合物でもよい。
【0035】
なお、上記の製造方法においてはステップを分けて記載したが、珪素と炭素の反応焼結および珪素の溶融含浸は同時に行なってもよく、さらに炭素化を含めた全ての熱処理の工程を同じ炉を用いて一つの温度制御プログラムにより行なっても良い。
【0036】
また、上記の製造方法以外でも、たとえば多孔質構造体1の外面に、樹脂類、または、樹脂類と炭素、金属粉末もしくはセラミックス粉末との組み合わせを含むスラリーを塗布または噴霧し、これを真空または不活性雰囲気下において加熱し、スラリーに含まれる有機物質を炭素化した後、さらにこれを真空または不活性雰囲気下において加熱することで、多孔質構造体から珪素を溶出させ炭素と反応させる方法も好適である。噴霧は、たとえばスプレーによって行なう。この方法では、すでに焼成体である多孔質構造体にスラリーを塗布または噴霧するため、塗布量または噴霧量の制御が容易で、細かい孔を調製することができる。なお、上記のように多孔質構造体へスラリーを塗布または噴霧しても、通常、網目構造を連通する空隙は完全には閉ざされない。完全に空隙を閉ざしたい場合には、樹脂類、または、樹脂類と炭素、金属粉末もしくはセラミックス粉末との組み合わせを含む膜を貼り付けて、炭素化し、焼成することで閉ざすことができる。
【0037】
また、すでに焼成体である多孔質構造体1を利用する製造方法として、多孔質構造体1に、金属粉末、セラミックス粉末、またはこれらを混合した粉体を溶射する方法も好適である。この方法では、封止のための溶射量の制御が容易で、封止状況を観察しながら適宜封止状態を調製することができる。なお、上述したような、スラリーを塗布または噴霧する方法により網目構造を連通する空隙をある程度閉ざした多孔質構造体に、さらに溶射を施し、封止状態を調製することも差し支えない。
【0038】
このようにして得られた多孔質構造体1は電極に用いることができる。その場合には、たとえば図7に示すように、多孔質構造体1の封止領域3の外面に導電部材として銅板30を接合して、電極を作製する。銅板30は、活性銀ロウ等の接合用ロウ材により多孔質構造体1に接合する。なお、導電部材としては、銅または銀以外の金属を材料とした部材であってもよい。また、接合用ロウ材により金属を接合する方法によらず、被覆部として封止領域3の外面に金属でめっき処理する方法により電極を作製してもよい。
【0039】
多孔質構造体1を用いた電極は、たとえば酸素を供給して放電によりオゾンを発生させるオゾン発生装置の電極として用いることができる。これにより、高効率のオゾン発生装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る多孔質構造体の斜視図である。
【図2】本発明に係る多孔質構造体の斜視図である。
【図3】本発明に係る多孔質構造体の骨格部のみの領域を示す拡大図である。
【図4】本発明に係る多孔質構造体の封止領域を示す拡大図である。
【図5】それぞれ空隙径の異なる封止領域を有する多孔質構造体を示す図である。
【図6】本発明に係る多孔質構造体の製造方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る多孔質構造体に銅板を接合したものを示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 多孔質構造体
2 骨格部のみの領域
3 封止領域
4 骨格部
5 封止材
11 骨格部のみの領域
12 封止領域
13 骨格部のみの領域
14 封止領域
21 封止領域
22 封止領域
23 封止領域
24 封止領域
30 銅板(導電部材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元的な網目構造を形成する骨格部と、
前記骨格部の表面に設けられ、前記網目構造の空隙の全部または一部を塞ぐ封止材と、を備え、
前記骨格部または封止材は、実質的にセラミックス、炭素またはこれらのうち少なくとも一方と金属とからなる複合材料により構成されることを特徴とする多孔質構造体。
【請求項2】
前記骨格部または前記封止材は、実質的に、炭化珪素からなるセラミックス、または前記セラミックスと珪素とからなる複合材料により構成されることを特徴とする請求項1記載の多孔質構造体。
【請求項3】
前記封止材は、前記網目構造の空隙を、連通する空隙を完全に閉ざさない程度まで塞ぐことを特徴とする請求項1または請求項2記載の多孔質構造体。
【請求項4】
前記封止材により前記網目構造の空隙を塞がれた封止領域の外面を覆う導電性を有する被覆部をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の多孔質構造体。
【請求項5】
前記封止材により前記網目構造の空隙を塞がれた封止領域の外面に導電部材をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の多孔質構造体。
【請求項6】
樹脂類、または、樹脂類と炭素、金属粉末もしくはセラミックス粉末との組み合わせを含むスラリーを作製する工程と、
有機物質からなる骨格部により3次元的な網目構造を形成するプリフォームの空隙に前記スラリーを含浸させ、スラリーの不要分を除去する工程と、
前記含浸後のプリフォームの外面に前記スラリーを塗布または噴霧し空隙を塞ぐ工程と、
前記スラリーの塗布または噴霧後のプリフォームを真空または不活性雰囲気下において加熱し、前記プリフォームに含有される有機物質を炭素化する工程と、
前記真空または不活性雰囲気下において加熱されたプリフォームを真空または不活性雰囲気下において焼成する工程と、を含むことを特徴とする多孔質構造体の製造方法。
【請求項7】
樹脂類、または、樹脂類と炭素、金属粉末もしくはセラミックス粉末との組み合わせを含むスラリーを作製する工程と、
実質的にセラミックス、炭素またはこれらのうち少なくとも一方と金属とからなる複合材料により構成される骨格部を備え、3次元的な網目構造を形成する多孔質構造体に、前記スラリーを塗布、または噴霧する工程と、
前記スラリーを塗布、または噴霧された多孔質構造体を真空または不活性雰囲気下において加熱し、前記スラリーに含有される有機物質を炭素化する工程と、
前記真空または不活性雰囲気下において加熱された多孔質構造体を真空または不活性雰囲気下において焼成する工程と、を含むことを特徴とする多孔質構造体の製造方法。
【請求項8】
実質的にセラミックス、炭素またはこれらのうち少なくとも一方と金属とからなる複合材料により構成される骨格部を備え、3次元的な網目構造を形成する多孔質構造体に、金属粉末、セラミックス粉末、またはこれらを混合した粉体を溶射する工程を含むことを特徴とする多孔質構造体の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−21974(P2006−21974A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203458(P2004−203458)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】