説明

多層プリント配線板

【課題】 インピーダンス及びインダクタンスが安定な,電気特性に優れた多層プリント配線板を提供しようとするものである。
【解決手段】 少なくとも最上絶縁層21,最上絶縁層21の下方に隣接する隣接絶縁層22からなるとともに,最上絶縁層の外表面に設けた外部導体パターン11と,各絶縁層の間に設けた内部導体パターン12,13とを有している。外部導体パターン11における線状部111の線幅Dは,最上絶縁層の厚みTとの間に,1≦D/T≦1.5の関係をもつ。パッド並設部1と搭載部5との間であって,かつ隣接するボンディングパッド112の間の間隙をパッド配列方向と直交する方向に搭載部側に延長した領域には,ビアホール3を配置していることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は,多層プリント配線板に関し,特に電気特性を改良する構造に関する。
【0002】
【従来技術】多層プリント配線板は,電気回路を設けた基板であり,電子部品を適切に作動させるための電気特性が要求される。特に,導電性回路ではインピーダンスが一定であることが要求される。また,ボンディングパッドは,ボンディングワイヤーにより電子部品と電気的に接続される。ボンディングパッドは,電流の変化によってインダクタンスが変化し,電子部品間における正確な電気伝達を妨げる。
【0003】
【解決しようとする課題】本発明はかかる従来の問題点に鑑み,インピーダンス及びインダクタンスが安定な,電気特性に優れた多層プリント配線板を提供しようとするものである。
【0004】
【課題の解決手段】第1の発明は,最上絶縁層と,該最上絶縁層の下方に隣接する隣接絶縁層とからなるとともに,最上絶縁層の外表面に設けた外部導体パターンと,上記最上絶縁層と上記隣接絶縁層との間に設けた内部導体パターンとを有する多層プリント配線板において,上記外部導体パターンにおける線状部の線幅Dは,最上絶縁層の厚みTとの間に,1≦D/T≦1.5の関係をもつことを特徴とする多層プリント配線板である。
【0005】本発明において,外部導体パターンにおける線状部の線幅Dは,最上絶縁層の厚みTとの間に,1≦D/T≦1.5の関係を有する。これにより,外部導体パターンのインピーダンスを安定にすることができる。一方,D/Tが1未満の場合には,外部導体パターンの形成が技術上困難となる場合がある。D/Tが1.5を超える場合には,外部導体パターンのインピーダンスの変動が大きく,要求値から外れることがある。
【0006】1≦D/T≦1.5の関係は,外部導体パターンのすべての線状部に適用される必要はなく,一部の線状部に限って適用されることもある。いずれの場合にも,上記関係を有する線状部においてインピーダンスの変化を抑制できる。
【0007】また,D/Tの上限は1.3であることが好ましく,更には1.2であることが望ましい。最も好ましくは,D/Tが1の場合である。これにより,外部導体パターンのインピーダンスの経時的変化を効果的に抑制できる。
【0008】上記外部導体パターンにおける線状部の線幅Dは,40〜80μmであることが好ましい。40μm未満の場合には,外部導体パターンの形成が技術上困難となるおそれがある。また,80μmを超える場合には,外部導体パターンの高密度配線の妨げとなるおそれがある。
【0009】最上絶縁層の厚みは,40〜90μmであることが好ましい。40μm未満の場合には,最上絶縁層の絶縁性に支障が生じるおそれがある。また,90μmを超える場合には,多層プリント配線板の薄層化が妨げられるおそれがある。
【0010】隣接絶縁層の厚みTは,40〜90μmであることが好ましい。40μm未満の場合には,隣接絶縁層の絶縁性に支障が生じるおそれがある。また,90μmを超える場合には,多層プリント配線板の薄層化が妨げられるおそれがある。
【0011】上記多層プリント配線板は,上記最上絶縁層及び隣接絶縁層のほかに最下絶縁層を積層してなり,かつ該最下絶縁層の厚みTは,上記最上絶縁層の厚みTとの間に,2≦T/T≦2.5の関係があることが好ましい。これにより,多層プリント配線板全体としてのインピーダンスの安定化を実現できる。一方,上記範囲を逸脱する場合には,インピーダンスの変化が許容範囲の±60%を超えるおそれがある。
【0012】最下絶縁層の厚みTは150〜200μmであることが好ましい。150μm未満の場合には,電子部品との接続上,問題が生じるおそれがあり,200μmを超える場合には多層プリント配線板の薄層化を妨げることになるからである。
【0013】本発明の多層プリント配線板は,少なくとも上から順に最上絶縁層及び隣接絶縁層を積層したものであり,また両絶縁層の他に,最下層に最下絶縁層を積層することもある。これらの絶縁層は,ポリイミド,エポキシ,ビスマレイミドトリアジンなどの樹脂材料からなり,ガラスクロス,ガラスファイバーなどの強化繊維を含むこともある。これらの絶縁層は,熱衝撃性を向上させるため,同じ材料であることが好ましいが,異種材料であってもよい。
【0014】外部導体パターンとは,最上絶縁層の表面に設けた導体パターンをいう。外部導体パターンには,線状部のほか,パッド部,ビアホールのランドなどを含む。内部導体パターンは,最上絶縁層と隣接絶縁層との間に設けられれている。最下絶縁層が設けられている場合には,隣接絶縁層と最下絶縁層との間にも内部導体パターンが設けられている。内部導体パターンは,各絶縁層のほぼ全面に設けたベタパターンであったり,または幅広部,線状部,パッド部,若しくはビアホールのランドなどを含むパターンである。外部導体パターンの線幅Dとは,外部導体パターンにおける線状部の線幅をいう。
【0015】外部導体パターンのうち,上記1≦D/T≦1.5の関係を有する線状部は,信号回路であることが好ましい。信号回路は,高速に多量の電気信号を伝送する必要があることから,インピーダンスの安定性が特に要求されている。そのため,上記関係を有する線状部を信号回路とすることにより,信号回路のインピーダンスの変動が抑制され,多層プリント配線板の電気特性を効果的に高めることができる。なお,外部導体パターンにおける上記関係を有する線状部は,信号回路のほか,電源回路や接地回路であってもよい。
【0016】次に,第2の発明は,電子部品を搭載するための搭載部と,該搭載部の周縁に沿って複数のボンディングパッドを並設したパッド並設部と,上記ボンディングパッドと電気的に接続する導体パターンとを有する多層プリント配線板において,上記パッド並設部と搭載部との間であって,かつ隣接するボンディングパッドの間の間隙をボンディングパッドの配列方向と直交する方向に搭載部側に延長した領域には,ビアホールを配置したホール配置部を設けていることを特徴とする多層プリント配線板である。
【0017】この多層プリント配線板は,インダクタンスが安定な基板である。即ち,ボンディングパッドは,電流の変化時に逆起電力が生じ易い部分でありインダクタンスが変動しやすい傾向にある。そこで,上記のごとく搭載部とパッド並設部との間であって,隣接するボンディングパッドの間の間隙をボンディングパッドの配列方向と直交する方向に搭載部側に延長した領域に,ビアホールを設けることにより,ボンディングパッドに生じる電界や磁界の偏りが,ビアホールを通過する電流によって分散される。従って,ボンディングパッドにおける電流変化時のインダクタンスの変動を抑制することができると考えられる。
【0018】また,ビアホールは,パッド並設部と搭載部との間に設けられれているため,ボンディングパッドや,ボンディングパッドと接続する導体パターンの高密度実装を妨げることはない。
【0019】ビアホールとボンディングパッドとは,互いに異種の電位を持つ回路を構成することが好ましい。これにより,ビアホールに電流が流れ,ビアホール近傍のボンディングパッドの電流が分散しやすくなり,インダクタンス安定化を効果的に発揮できる。
【0020】ビアホールにより電気的に接続されている導体パターンは,最表面の絶縁層の外表面に設けた外部導体パターンでもよく,また絶縁層間に設けた内部導体パターンでもよい。
【0021】上記ビアホールと電気的に接続されている導体パターンは,電源回路又は接地回路であることが好ましい。電源回路及び接地回路は,信号回路ほど厳密な電圧管理が要求されないため,変化ボンディングパッドの影響を受けて逆起電力が発生しても,多層プリント配線板の電気特性に与える支障が少なくてすむからである。また,上記電源回路及び接地回路は,幅100μm以上の幅広パターンであることが好ましい。短時間で大量の電流を伝送する必要があるからである。
【0022】ホール配置部とは,多層プリント配線板における導電性のビアホールを設けた部位をいう。ホール配置部は,搭載部とパッド並設部との間であって,隣接するボンディングパッドの間の間隙をボンディングパッドの配列方向と直交する方向に搭載部側に延長した領域に存在する。ホール配置部の実施態様について例示説明する。
【0023】上記ボンディングパッドは搭載部の周縁に沿って1列に並設されており,かつ最大9本の隣接するボンディングパッド毎に,上記ホール配置部を設けていることが好ましい。これにより,1列に並設するボンディングパッドについて,効果的にインダクタンス安定化を実現できる。
【0024】「上記最大9本の隣接するボンディングパッド毎」とは,ホール配置部を9本以下のボンディングパッド毎に設けていることをいう。また,1本のボンディングパッド毎にホール配置部を設けてもよい。ホール配置部を10本以上のボンディングパッド毎に設けた場合には,インダクタンス安定化効果が低下するおそれがある。
【0025】上記ボンディングパッドは,搭載部の周縁に沿って千鳥状に並設されており,かつ最大15本の隣接するボンディングパッド毎に,上記ホール配置部を設けていることが好ましい。これにより,千鳥状に並設されたボンディングパッドについて,効果的にインダクタンス安定化を実現できる。
【0026】「上記最大15本の隣接するボンディングパッド毎」とは,千鳥状に配列したボンディングパッドの15本以下毎に,ホール配置部を設けていることをいう。また,1本のボンディングパッド毎にホール配置部を設けてもよい。ホール配置部を16本以上のボンディングパッド毎に設けた場合には,インダクタンスが変動するおそれがある。
【0027】また,上記パッド並設部は搭載部の周縁に沿って並設されたボンディングパッド列を複数列有しており,かつ搭載部に最接近するボンディングパッド列において,最大9本の隣接するボンディングパッド毎に,上記ホール配置部を設けていることが好ましい。これにより,2以上の複数の列を形成して並設されたボンディングパッドについて,効果的にインダクタンス安定化を実現できる。
【0028】「上記最大9本の隣接するボンディングパッド毎」とは,搭載部に最接近するボンディングパッド列において9本以下のボンディングパッド毎に,ホール配置部を設けていることをいう。また,1本のボンディングパッド毎にホール配置部を設けてもよい。ホール配置部を10本以上のボンディングパッド毎に設けた場合には,インダクタンスが変動するおそれがある。
【0029】ボンディングパッドとは,電子部品と接続されたボンディングワイヤーを接合するためのパッドをいう。ボンディングパッドの幅及びボンディングパッドの間の間隙はいずれも50μm以上であり,ボンディングして隣接したボンディングワイヤーが接触しない程度の幅であればよい。隣接するボンディングパッドの間の間隙は,すべて等間隔であってもよいし,また異なった間隔であってもよい。
【0030】ボンディングパッドは,導体パターンと電気的に接続されており,ここでいう導体パターンは外部導体パターンでもよくまた内部導体パターンでもよい。搭載部は,電子部品を搭載するための部位であり,平面部であっても凹状部であってもよい。また,第2の発明において,多層プリント配線板は,1または2以上の絶縁層と,導体パターンとからなる。第2の発明における絶縁層及び導体パターンの種類は,第1発明と同様とすることができる。
【0031】第3の発明は,最上絶縁層と,該最上絶縁層の下方に隣接する隣接絶縁層とからなるとともに,最上絶縁層の外表面に設けた外部導体パターンと,上記最上絶縁層と上記隣接絶縁層との間に設けた内部導体パターンと,電子部品を搭載するための搭載部と,該搭載部の周縁に沿って複数のボンディングパッドを並設したパッド並設部とを設けてなる多層プリント配線板において,上記外部導体パターンにおける線状部の線幅Dは,最上絶縁層の厚みTとの間に,1≦D/T≦1.5の関係をもち,かつ,上記パッド並設部と搭載部との間であって,かつ隣接するボンディングパッドの間の間隙をボンディングパッドの配列方向と直交する方向に搭載部側に延長した領域には,ビアホールを配置したホール配置部を設けていることを特徴とする多層プリント配線板である。
【0032】第3の発明は,外部導体パターンにおける線状部の線幅Dは,最上絶縁層の厚みTとの間に,1≦D/T≦1.5の関係を有する。また,上記ホール配置部を,上記の領域に設けている。そのため,第1,第2発明よりも,一層効果的に,外部導体パターンのインピーダンスの変動を抑制することができ,かつボンディングパッドにおける電流変化時のインダクタンス安定化を実現できる。
【0033】上記多層プリント配線板は,上記最上絶縁層及び隣接絶縁層のほかに最下絶縁層を積層してなり,かつ該最下絶縁層の厚みTは,上記最上絶縁層の厚みTとの間に,2≦T/T≦2.5の関係があることが好ましい。これにより,多層プリント配線板全体としてのインピーダンスの安定化を実現できる。そのほかの詳細は,第1発明,第2発明と同様である。
【0034】
【発明の実施の形態】実施形態例1本発明の実施形態に係る多層プリント配線板について図1〜図4を用いて説明する。本例の多層プリント配線板8は,図1に示すごとく,上から順に最上絶縁層21,隣接絶縁層22及び最下絶縁層23を積層する多層基板である。最上層の最上絶縁層21の外表面には外部導体パターン11が設けられている。最上絶縁層21と隣接絶縁層との間,隣接絶縁層22と最下絶縁層23との間には,内部導体パターン12,13が設けられている。
【0035】多層プリント配線板8は,図2に示すごとく,電子部品51を搭載するための搭載部5と,搭載部5の周縁に沿って複数のボンディングパッド112を並設したパッド並設部1とを設けている。
【0036】図1に示すごとく,外部導体パターン11における線状部111の線幅Dは80μmであり,最上絶縁層21の厚みTは80μmであって,D/Tは1である。最下絶縁層23の厚みTは200μmであり,最上絶縁層の厚みT80μmとの間に,T/T=2.5の関係がある。また,隣接絶縁層22の厚みT2は80μmである。外部導体パターン11,内部導体パターン12,13の厚みはすべて20μmである。
【0037】図1,図3(b)に示すごとく,パッド並設部1と搭載部5との間であって,かつ隣接するボンディングパッド112の間の間隙40をボンディングパッド112の配列方向と直交する方向に搭載部5側に延長した領域4には,ビアホール3を配置したホール配置部30が設けられている。
【0038】本例では,図2,図3(b)に示すごとく,ボンディングパッド112は,搭載部5の周縁に沿って千鳥状に並設されている。13本の隣接するボンディングパッド112毎に,ホール配置部30が設けられている。また,ボンディングパッド112は搭載部5の周縁に沿って1列に並設し,7本の隣接するボンディングパッド112毎に,ホール配置部30を設けることもできる。
【0039】図4に示すごとく,ビアホール3は,外部導体パターン11と内部導体パターン12との間を電気的に接続している。また,外部導体パターン11と内部導体パターン12との間は,搭載部5の内壁に設けた壁面パターン41によっても電気的に接続されている。ビアホール3により電気的に接続されている内部導体パターン12は,接地回路であり,最上絶縁層21の下面全体に形成されたベタパターンである。
【0040】外部導体パターン11は,図1,図2に示すごとく,長尺状のボンディングパッド112とこれに接続する線状部111と外部接続用のパッド部114とを有し,これらは信号回路を構成している。図4に示すごとく,パッド部114には,マザーボードに対して接合するための半田ボール6が接合されている。また,図2に示すごとく,外部導体パターン11は,ボンディングパッド112と搭載部5との間に設けた環状パッド113と,搭載部5のコーナ部から基板周縁方向に延設された幅広パターン115とを有し,これらは接地回路(GND)を構成している。幅広パターン115には半田ボール60が接合されている。外部導体パターン11の上記接地回路は,ビアホール3及び壁面パターン41を通じて内部導体パターン12と電気的に接続している。
【0041】隣接絶縁層22と最下絶縁層23との間に設けた内部導体パターン13は,線状部131と,搭載部5に露出したボンディングパッド132とを有し,これらは信号回路を構成している。内部導体パターン13は,搭載部5の周縁に設けた環状パッド133を有し,これは電源回路を構成している。環状パッド133は,搭載部5の壁面に設けた壁面パターン43を通じて,最下絶縁層23の下面に設けた外部導体パターン14と電気的に接続されている。外部導体パターン14は,最下絶縁層23のほぼ全面に形成されたベタパターンである。図4に示すごとく,多層プリント配線板8の外周縁部には内部導体パターン13の信号回路の電気を外部導体パターン11のパッド部114に伝送するための信号穴39を設けている。
【0042】最上絶縁層21及び最下絶縁層23はガラスクロス入りエポキシ基板であり,隣接絶縁層22は最上絶縁層21及び最下絶縁層23を接着するためのガラスクロス入りエポキシシートである。外部導体パターン11,14及び内部導体パターン12,13は銅箔をエッチングし,その表面に金属メッキ膜を施して形成されている。また,ビアホール3及び信号穴39は銅メッキ膜により被覆された導電穴である。
【0043】多層プリント配線板8は,図4に示すごとく,厚み30μmのソルダーレジスト層29により被覆されている。多層プリント配線板8の上面における搭載部5の周縁には,搭載部5封止用樹脂を堰きとめるための枠状体27を設けている。多層プリント配線板8の下面には,搭載部5を被覆するようにヒートスラグ7が接着剤28にて接着されている。搭載部5には電子部品51が搭載されている。電子部品51のパッド511は,ボンディングパッド112,132との間をボンディングワイヤーで電気的に接続される。
【0044】本例の多層プリント配線板8は,外部導体パターン11の線状部111の線幅Dとその直下に配置されている最上絶縁層21の厚みT1との比(D/T)が1である。そのため,インピーダンスを低く維持することができる。また,図3(a),(b)に示す領域4にビアホール3を設けているため,ボンディングパッド112のインダクタンスの偏りを防止し安定にすることができる。
【0045】(実験例1)実施形態例1の多層プリント配線板における,外部導体パターン11の線状部111の線幅D,最下絶縁層の厚みTを変えた。また,ビアホール3のピッチを変えた。最上絶縁層21の厚みTは75μmと一定にした。得られた多層プリント配線板を試料1〜16とする。試料1〜4は第1発明,試料5〜8は第2発明,試料9〜12は第3発明,試料13〜16は比較例をである。これらの多層プリント配線板について,インピーダンス及びインダクタンスを測定した。
【0046】上記測定結果を表1に示した。測定結果について考察する。
■試料1〜4は,D/Tが1.0,1.4であり,T/Tが2.0,2.5であり,ビアホールの間に設けられているボンディングパッドは1列のものが11本,千鳥のものが20本である。試料1〜4のインピーダンスは要求値(50±25%)の範囲内であった。一方,インダクタンスは変動が大きかった。このことから,D/Tが1.0〜1.5,T/Tが2.0〜2.5の範囲内にある場合には,インピーダンスが安定化することがわかる。
【0047】■試料5〜8は,D/Tが0.5,2.0であり,T/Tが1.5,3.0であり,ビアホールの間に設けられているボンディングパッドは1列のものが9本,千鳥のものが15本である。試料5〜8のインピーダンスは要求値の範囲外であった。一方,インダクタンスは変動が小さかった。このことから,ビアホールの間に設けられているボンディングパッドが1列の場合には最大9本,千鳥の場合には最大15本の場合には,インダクタンスが安定化することがわかる。
【0048】■試料9〜12は,D/Tが1.0,1.4であり,T/Tが2.0,2.5であり,ビアホールの間に設けられているボンディングパッドは1列のものが9本,千鳥のものが15本である。試料9〜12のインピーダンスは要求値の範囲内であり,また,インダクタンスは変動が小さかった。このことから,D/Tが1.0〜1.5,T/Tが2.0〜2.5の範囲内にあり,かつビアホールの間に設けられているボンディングパッドが1列の場合には最大9本,千鳥の場合には最大15本の場合には,インピーダンス及びインダクタンスの双方が安定化することがわかる。
【0049】■試料13〜16は,D/Tが0.5,2.0であり,T/Tが1.5,3.0であり,ビアホールの間に設けられているボンディングパッドは1列のものが11本,千鳥のものが20本である。試料13〜16のインピーダンスは要求値の範囲外であった。また,インダクタンスの変動も大きかった。
【0050】
【表1】


【0051】
【発明の効果】本発明によれば,インピーダンス及びインダクタンスが安定な,電気特性に優れた多層プリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1の多層プリント配線板の部分斜視図。
【図2】実施形態例1の多層プリント配線板の平面図。
【図3】実施形態例1における,パッド並設部の説明図(a),(b)。
【図4】実施形態例1の多層プリント配線板の断面図。
【符号の説明】
1...パッド並設部,
11,14...外部導体パターン,
12,13...内部導体パターン,
111,131...線状部,
112,132...ボンディングパッド,
113,133...環状パッド,
21...最上絶縁層,
22...隣接絶縁層,
23...最下絶縁層,
28...接着剤,
29...ソルダーレジスト層,
3...ビアホール,
30...ホール配置部,
39...信号穴,
4...領域
41,43...壁面パターン,
5...搭載部,
51...電子部品,
6,60...半田ボール,
7...ヒートスラグ,
8...多層プリント配線板,

【特許請求の範囲】
【請求項1】 最上絶縁層と,該最上絶縁層の下方に隣接する隣接絶縁層とからなるとともに,最上絶縁層の外表面に設けた外部導体パターンと,上記最上絶縁層と上記隣接絶縁層との間に設けた内部導体パターンとを有する多層プリント配線板において,上記外部導体パターンにおける線状部の線幅Dは,最上絶縁層の厚みTとの間に,1≦D/T≦1.5の関係をもつことを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項2】 請求項1において,上記多層プリント配線板は,上記最上絶縁層及び隣接絶縁層のほかに最下絶縁層を積層してなり,かつ該最下絶縁層の厚みTは,上記最上絶縁層の厚みTとの間に,2≦T/T≦2.5の関係があることを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項3】 電子部品を搭載するための搭載部と,該搭載部の周縁に沿って複数のボンディングパッドを並設したパッド並設部と,上記ボンディングパッドと電気的に接続する導体パターンとを有する多層プリント配線板において,上記パッド並設部と搭載部との間であって,かつ隣接するボンディングパッドの間の間隙をボンディングパッドの配列方向と直交する方向に搭載部側に延長した領域には,ビアホールを配置したホール配置部を設けていることを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項4】 請求項3において,上記ビアホールにより電気的に接続されている導体パターンは,電源回路又は接地回路であることを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項5】 請求項3において,上記ボンディングパッドは搭載部の周縁に沿って1列に並設されており,かつ最大9本の隣接するボンディングパッド毎に,上記ホール配置部を設けていることを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項6】 請求項3において,上記ボンディングパッドは,搭載部の周縁に沿って千鳥状に並設されており,かつ最大15本の隣接するボンディングパッド毎に,上記ホール配置部を設けていることを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項7】 請求項3において,上記パッド並設部は搭載部の周縁に沿って並設されたボンディングパッド列を複数列有しており,かつ搭載部に最接近するボンディングパッド列において,最大9本の隣接するボンディングパッド毎に,上記ホール配置部を設けていることを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項8】 最上絶縁層と,該最上絶縁層の下方に隣接する隣接絶縁層とからなるとともに,最上絶縁層の外表面に設けた外部導体パターンと,上記最上絶縁層と上記隣接絶縁層との間に設けた内部導体パターンと,電子部品を搭載するための搭載部と,該搭載部の周縁に沿って複数のボンディングパッドを並設したパッド並設部とを設けてなる多層プリント配線板において,上記外部導体パターンにおける線状部の線幅Dは,最上絶縁層の厚みTとの間に,1≦D/T≦1.5の関係をもち,かつ,上記パッド並設部と搭載部との間であって,かつ隣接するボンディングパッドの間の間隙をボンディングパッドの配列方向と直交する方向に搭載部側に延長した領域には,ビアホールを配置したホール配置部を設けていることを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項9】 請求項8において,上記多層プリント配線板は,上記最上絶縁層及び隣接絶縁層のほかに最下絶縁層を積層してなり,かつ該最下絶縁層の厚みTは,上記最上絶縁層の厚みTとの間に,2≦T/T≦2.5の関係があることを特徴とする多層プリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2000−151122(P2000−151122A)
【公開日】平成12年5月30日(2000.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−322426
【出願日】平成10年11月12日(1998.11.12)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】