説明

多数個取り配線基板およびその製造方法、ならびに配線基板およびその製造方法

【課題】 金属めっき膜で被覆された環状導体およびV字状の分割溝が精度良く形成された多数個取り配線基板およびその製造方法、ならびに配線基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、複数の配線基板領域11を有するセラミック基体1と、セラミック基体1の上面の複数の配線基板領域11の境界線に形成されたV字状の分割溝3と、分割溝3に接するそれぞれの配線基板領域11の周縁部111に形成された、金属めっき膜21で被覆された環状導体22とを備え、分割溝3の内面がセラミック基体1から金属めっき膜21にかけてガラス層31で覆われていることを特徴とする多数個取り配線基板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体素子収納用パッケージに適用される配線基板を製造するための多数個取り配線基板およびその製造方法、ならびに配線基板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体通信分野などで使用される電子機器には、配線基板、金属枠体および蓋体を備え、内部に半導体素子を収容するための半導体素子収納用パッケージが用いられている。
【0003】
半導体素子収納用パッケージを製造するに際し、まず、複数の配線基板領域を有し、最終的にそれぞれの配線基板領域に分割される多数個取り配線基板が作製される。
【0004】
この多数個取り配線基板は、セラミック基体の内部にそれぞれの配線基板領域ごとに形成された配線層および貫通導体を備えてなるものであって、セラミック粉末に有機バインダ、可塑剤および溶剤等を加えてスラリーとし、ドクターブレード等によりセラミックグリーンシートを成形した後、金属粉末を含有する導体ペーストを印刷するなどしてセラミックグリーンシート上にそれぞれの配線基板領域ごとに配線パターンを形成し、次に複数枚の配線パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層して加圧することによりセラミックグリーンシート積層体を得た後、このセラミックグリーンシート積層体を焼成することにより得られる。
【0005】
一般に、得られた多数個取り配線基板の一方主面には、容易にそれぞれの配線基板領域に分割できるように、複数の配線基板領域を区画するV字状の分割溝が形成されている。この分割溝の形成方法としては、セラミック基体の表面にレーザ光を照射する方法が知られていて、例えば、分割溝の形成される仮想分割線同士が交叉する部分の近傍ではレーザ光の照射間隔を密にし、前記交叉部分から離れた位置ではレーザ光の照射間隔を粗にするという方法も提案されている(特許文献1を参照)。
【0006】
一方、多数個取り配線基板の一方主面には、後に半導体素子収納用パッケージを作製する際に配線基板と金属枠体とをロウ付けで強固に接合するために、それぞれの配線基板領域の周縁部となる位置に金属めっき膜で被覆された環状導体が形成されることも知られている。
【0007】
そこで、それぞれの配線基板領域の周縁部となる位置に金属めっき膜で被覆された環状導体が形成された多数個取り配線基板に分割溝を形成するために、複数の配線基板領域を区画する分割溝が形成される境界線に金属めっき膜で被覆された環状導体を形成せずに絶縁基体を露出させた状態とし、セラミックグリーンシート積層体の焼成後にこの境界線に沿ってレーザ光を照射することで分割溝を形成する方法が考えられる。
【0008】
しかし、移動体通信分野などで使用される電子機器の小型化・低背化に伴い、この電子機器に用いられる半導体素子収納用パッケージにおいても小型化・低背化が望まれていて、このような要望に対し、複数の配線基板領域を区画する分割溝が形成される部位に、精度良く金属めっき膜で被覆された環状導体を形成せずに絶縁基体を露出させた状態とすることは困難な状況となってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−87085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、分割溝が形成される境界線となる部位において、絶縁基体を露出させずに隣接する配線基板領域の周縁部となる位置に形成された金属めっき膜で被覆された環状導体同士を電気的に接続させた状態とし(隣接する環状導体と環状導体との間に隙間がない状態とし)、この境界線となる部位にレーザ光を照射する方法が考えられる。
【0011】
しかしながら、分割溝の形成に一般に用いられる固体レーザ(例えばYAGレーザ)により励起された基本波のレーザ光を金属めっき膜で被覆された環状導体の上から照射しても、レーザ光の金属めっき膜に対する反射性が非常に高い(90%以上)ことから、この部位にV字状の分割溝を形成することは困難である。
【0012】
一方、炭酸ガスレーザによるレーザ光を金属めっき膜で被覆された環状導体の上から照射した場合、金属めっき膜に対する反射性は高いものの、同時に加工点出力も非常に高いことから、深さ方向にセラミック基体を除去することが可能である。しかしながら、炭酸ガスレーザによるレーザ光の照射によれば、セラミック基体に及ぼす熱影響も非常に大きく、分割溝が形成されてもV字状には形成できず、それどころか溶融したセラミック基体(ガラス層)で分割溝が埋まってしまい、分割溝としての機能を果たすことができなくなってしまう。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、金属めっき膜で被覆された環状導体およびV字状の分割溝が精度良く形成された多数個取り配線基板およびその製造方法、ならびに配線基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、複数の配線基板領域を有するセラミック基体と、該セラミック基体の上面の前記複数の配線基板領域の境界線に形成されたV字状の分割溝と、該分割溝に接するそれぞれの前記配線基板領域の周縁部に形成された、金属めっき膜で被覆された環状導体とを備え、前記分割溝の内面が前記セラミック基体から前記金属めっき膜にかけてガラス層で覆われていることを特徴とする多数個取り配線基板である。
【0015】
ここで、前記環状導体および前記金属めっき膜の厚みの合計が20〜80μmであるのが好ましい。また、前記ガラス層が前記金属めっき膜の上面の一部まで延出してなる突条部が形成されているのが好ましい。
【0016】
そして、前記セラミック基体の上面に形成された前記分割溝の深さが5〜16μmであるのが好ましい。さらに、前記セラミック基体の上面に形成された前記分割溝と対向するように前記セラミック基体の下面にもV字状の分割溝が形成されていて、前記セラミック基体の上面に形成された前記分割溝の深さと前記セラミック基体の下面に形成された前記分割溝の深さとの合計が前記セラミック基体の厚みの30〜62%であるのが好ましい。
【0017】
また本発明は、上記の多数個取り配線基板が前記分割溝に沿って前記複数の配線基板領域毎に分割されてなることを特徴とする配線基板である。
【0018】
また本発明は、複数の配線基板領域を有するセラミック基体を作製するとともに、該セラミック基体の上面の前記複数の配線基板領域の境界線および該境界線に接するそれぞれの前記配線基板領域の周縁部を覆うように環状導体を形成し、次に、該環状導体を被覆す
る金属めっき膜を形成し、次に、前記複数の配線基板領域の前記境界線に沿って紫外線領域の波長のレーザ光を照射してV字状の分割溝を形成するとともに、該分割溝の内面に前記セラミック基体から前記金属めっき膜にかけてガラス層を形成することを特徴とする多数個取り配線基板の製造方法である。
【0019】
ここで、前記環状導体および前記金属めっき膜を、それぞれの厚みの合計が20〜80μmとなるように形成するのが好ましい。また、前記ガラス層が前記金属めっき膜の上面の一部まで延出してなる突条部を形成するのが好ましい。
【0020】
そして、前記分割溝を5〜16μmの深さに形成するのが好ましい。さらに、前記セラミック基体の上面に形成された前記分割溝と対向するように前記セラミック基体の下面にもV字状の分割溝を形成し、前記セラミック基体の上面に形成された前記分割溝の深さと前記セラミック基体の下面に形成された前記分割溝の深さとの合計を前記セラミック基体の厚みの30〜62%とするのが好ましい。
【0021】
また本発明は、上記の多数個取り配線基板の製造方法によって作製された多数個取り配線基板を、前記分割溝に沿って複数個の配線基板に分割することを特徴とする配線基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の多数個取り配線基板によれば、金属めっき膜で被覆された環状導体および分割溝が精度良く形成された多数個取り配線基板を実現することができる。
【0023】
また、本発明の多数個取り配線基板において分割溝の内面がセラミック基体から金属めっき膜にかけてガラス層で覆われていることから、分割溝に沿って複数の配線基板領域毎に分割されてなる配線基板は、分割溝に面する環状導体の側面の酸化腐食を抑制することができる。
【0024】
また、本発明の多数個取り配線基板の製造方法によれば、紫外線領域の波長の固体レーザを照射することで、金属めっき膜で被覆された環状導体の上からV字状の分割溝を形成することができ、金属めっき膜で被覆された環状導体および分割溝が精度良く形成された多数個取り配線基板を得ることができる。また、本発明の多数個取り配線基板の製造方法によれば、分割溝の内面にセラミック基体から金属めっき膜にかけてガラス層を形成することで、レーザ光の照射によって露出した環状導体の側面の酸化腐食を抑制することができる。
【0025】
また、本発明の配線基板の製造方法によれば、分割溝に面する環状導体の側面の酸化腐食の抑制された配線基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の多数個取り配線基板の製造方法の一例の説明図であり、レーザ光を照射する前の状態を示している。
【図2】図1に示す多数個取り配線基板にレーザ光を照射している状態を示す説明図である。
【図3】図1に示す多数個取り配線基板にレーザ光を照射した後の状態を示す説明図であり、(a)は多数個取り配線基板の一部を示す概略平面図であり、(b)は要部拡大断面図である。
【図4】本発明の多数個取り配線基板の一例を分割してなる配線基板を用いた半導体素子収納用パッケージの斜視図である。
【図5】図1に示す多数個取り配線基板の下面にも分割溝を形成した状態を示す要部拡大断面図である。
【図6】本発明の多数個取り配線基板の一例の金属めっき膜の上にロウ材が塗布されている状態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明の多数個取り配線基板の製造方法の説明図であり、レーザ光を照射する前の状態を示している。また、図2は、図1に示す多数個取り配線基板にレーザ光を照射している状態を示す説明図である。また、図3は、図1に示す多数個取り配線基板にレーザ光を照射した後の状態を示す説明図であり、図3(a)は多数個取り配線基板の一部を示す概略平面図であり、図3(b)は要部拡大断面図である。
【0029】
図1〜図3に示すように、本発明の多数個取り配線基板は、複数の配線基板領域11を有するセラミック基体1と、セラミック基体1の上面の複数の配線基板領域11の境界線12に形成されたV字状の分割溝3と、分割溝3に接するそれぞれの配線基板領域11の周縁部111に形成された、金属めっき膜21で被覆された環状導体22とを備え、分割溝3の内面がセラミック基体1から金属めっき膜21にかけてガラス層31で覆われている。
【0030】
セラミック基体1は、例えばアルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、炭化珪素、ムライト、フェライト、ガラスセラミックスなどを主成分とする焼結体で形成された例えば50〜200μmの厚みのセラミック絶縁層が複数積層され、例えば50〜500μmの厚みに形成されたものである。また、セラミック基体1には、レーザ光の吸収率を高くするための成分として、Mg、Mn、Co、Cr、Cu、Ni及びFeの群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が含まれていてもよい。例えば、セラミック基体1がアルミナを主成分とする焼結体で形成されている場合、主成分としてのAl92質量%に、焼結助剤成分としてSiO3質量%、Mn3.5質量%、MgO1質量%およびMoO0.5質量%を含むものや、主成分としてのAl90.5質量%に、焼結助剤成分としてSiO1.5質量%、Mn2.5質量%、MgO1質量%、TiO1質量%およびCrO3.5質量%を含むもの、主成分としてのAl93質量%に、焼結助剤成分としてSiO2質量%、Mn3量%、MgO1質量%およびMoO1質量%を含むものなどが用いられる。
【0031】
それぞれの配線基板領域11は、一辺の長さが例えば0.5〜20mm程度に形成されていて、それぞれの配線基板領域11の周縁部111は、図1に示すように境界線12に接している。
【0032】
図2および図3に示すように、セラミック基体1の上面の複数の配線基板領域11の境界線12には、V字状の分割溝3が形成されている。また、分割溝3に接するそれぞれの配線基板領域11の周縁部111には、金属めっき膜21で被覆された環状導体22が形成されている。
【0033】
V字状の分割溝3は、後述するように金属めっき膜21で被覆された環状導体22の上から紫外線領域の波長のレーザ光を照射することによって、金属めっき膜21および環状導体22を貫通して形成されたものであり、具体的には、セラミック基体1の上面の複数の配線基板領域11の境界線12および境界線12に接するそれぞれの配線基板領域11の周縁部111に金属めっき膜21で被覆された環状導体22が形成された状態で、境界線12上の金属めっき膜21の上から紫外線領域の波長のレーザ光を照射することによって、金属めっき膜21および環状導体22を貫通して形成されたものである。
【0034】
環状導体22は、W、Mo、Cu、Ag、Ptなどを主成分とする導体ペーストが焼成されてなるもので、セラミック基体1と同時に焼成可能な導体が適宜選択される。なお、環状導体22には、セラミック基体1と同様に、レーザの吸収率を高くするための成分として、Mg、Mn、Co、Cr、Cu、Ni及びFeの群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が含まれていてもよい。
【0035】
また、環状導体22を被覆する金属めっき膜21は、環状導体22の酸化腐食を防止するとともに、ロウ付けなどの際の濡れ性向上や接合力強化のために形成されたもので、例えば下側にNiめっき層が形成され上側にAuめっき層が形成されてなる二層構造となっているのが好ましい。ここで、コストの点から金属めっき膜21は薄く形成されるのが好ましく、Niめっき層は2〜10μm程度、Auめっき層は0.2〜1.5μm程度に形成される。この金属めっき膜21は、例えばめっき液中で被めっき部(環状導体22の表面)にめっき被着用の電流を供給し、電解めっきを施すことにより形成することができる。
【0036】
なお、後述するガラス層31を形成するために、環状導体22および金属めっき膜21の厚みの合計は20〜80μmである。
【0037】
それぞれの配線基板領域11の周縁部111に形成された金属めっき膜21で被覆された環状導体22は、蓋体や枠体(図示せず)をロウ付けなどで接合するために形成されたものである。
【0038】
すなわち、それぞれの配線基板領域11は、例えば半導体素子収納用パッケージの一部品となるものである。具体的には、図4に示すように、セラミック基体1のそれぞれの配線基板領域11において、周縁部111の内側に半導体素子5を収納するための凹部を形成し、周縁部111に形成された金属めっき膜21で被覆された環状導体22の上に金属製の蓋体4が取り付けられて半導体素子収納用パッケージが作製される。また、図示しないが、セラミック基体1のそれぞれの配線基板領域11において、周縁部111の内側に半導体素子5を収納するための凹部を形成せずに、周縁部111に形成された金属めっき膜21で被覆された環状導体22の上に金属製の枠体(図示せず)が取り付けられ、枠体の上面に蓋体4が取り付けられて半導体素子収納用パッケージが作製されてもよい。それぞれの配線基板領域11の周縁部111に形成された金属めっき膜21で被覆された環状導体22は、このような蓋体4や枠体(図示せず)をロウ付けなどで接合するために形成されたものである。
【0039】
そして、分割溝3の内面を被覆するようにガラス層31が形成されている。このガラス層31は、後述するように紫外線領域の波長のレーザ光の照射によってセラミック基体1,環状導体22および金属めっき膜21が溶融してできたもので、分割溝3の内面(セラミック基体1)から金属めっき膜21にかけて厚み0.5〜15μm程度に形成されたものである。例えばセラミック基体1が主成分としてのAl92質量%に、焼結助剤成分などとしてSiO3質量%、Mn3.5質量%、MgO1質量%、MoO0.5質量%を含むものである場合において形成されるガラス層31は、Al、Si、Mn、Mg、Moなどを含むアモルファス状の層である。すなわち、セラミック基体1が上記のアルミナを主成分とする焼結体で形成されている場合、このガラス層31には、焼結助剤成分などに由来する成分(Si、Mn、Mg、Mo)が多く含まれるが、アルミナに由来する成分(Al)も含まれ、さらに環状導体22に由来する成分も含まれている。なお、分割溝3の内面がガラス層31で覆われていてもその表面はV字状となっており、多数個取り配線基板を分割するための溝として十分に機能するものとなっている。
【0040】
ここで、ガラス層31の厚みは、環状導体22および金属めっき膜21の合計厚みによっても異なり、この合計厚みが厚いほどガラス層31が厚く形成される。これは、セラミック基体1と比較すると、環状導体22および金属めっき膜21のレーザ光に対する反射性が高いので、所定の深さに分割溝を加工する際に余分な熱負荷が発生し、セラミック基体1からガラス層31が析出され易くなるためである。環状導体22および金属めっき膜21の厚みの合計が20〜80μmであることで、0.5〜15μmの厚みのガラス層31を形成することができる。なお、任意の断面におけるガラス層31の厚みが0.5μm未満であると、その他の断面などでガラス層31が形成されずに環状導体22の側面が露出する部分が生じて、環状導体22の腐食を防止できなくなってしまうおそれがある。一方、任意の断面におけるガラス層の厚みが15μmを超えると、ガラス層31が厚くなってV字状の分割溝が形成されない部分が生じて、分割溝として機能しなくなってしまうおそれがある。なお、ガラス層31の厚みは、分割溝3の分割容易性の点から、好ましくは10μm以下である。また、分割溝3のV字の角度は0.5〜15度程度に形成され、分割溝3の幅(断面で見たときの開口部の幅)は5〜50μm程度に形成される。
【0041】
そして、図6に示すように、ガラス層31が金属めっき膜21の上面の一部まで延出してなる突条部311が形成されているのが好ましく、その高さが0.1〜32μm、より好ましくは4.5〜32μmとなっているのがよい。図4に示すように、金属めっき膜21で被覆された環状導体22の上に金属製の蓋体4を取り付けたり枠体(図示せず)を取り付けたりする際にロウ材が用いられるが、図6に示すように突条部311があることによって、ロウ材6が分割溝3に流れ込むのを抑制することができる。突条部311の高さとしては、例えば0.1μm以上であればロウ材6の流れを抑制する効果が得られるが、特に4.5μm以上であることで、加圧してリフローをかけた場合であってもロウ材6の分割溝3への流れ込みを抑制する十分な効果を発揮させることができる。一方、突条部311の高さが32μmを超える場合には、そのような高さに形成するための熱量が加えられることによる例えば金属めっき膜が焼けるなどの外観不良を生じさせたり、突条部311の存在により接合力を低下させたりしてしまうおそれがある。
【0042】
上述した環状導体22および金属めっき膜21の厚みを調整するとともに、後述する紫外線領域の波長の固体レーザによるレーザ光のパルス周波数等を調整することによって、ガラス層31を形成するのと同時に突条部311を形成することができる。この突条部311の高さは、原子間力顕微鏡、表面粗さ計、レーザー顕微鏡等を用いて測定することができる。
【0043】
なお、突条部311には、焼結助剤成分などに由来する成分(Si、Mn、Mg、Mo)が多く含まれるが、アルミナに由来する成分(Al)も含まれ、さらに環状導体22に由来する成分も含まれている。
【0044】
そして、上記のようなガラス層31が金属めっき膜21の上面の一部まで延出してなる突条部311が形成されている多数個取り配線基板を用いて、当該多数個取り配線基板のそれぞれの配線基板領域における環状導体の内側のセラミック基体に凹部が形成されており、それぞれの配線基板領域の凹部には半導体素子が収容されているとともに、環状導体を被覆する金属めっき膜の上面にはロウ材を介して蓋体が取り付けられている多数個取り電子部品を作製することができる。これにより、ロウ材が分割溝に流れ込むのを抑制された多数個取り電子部品を得ることができる。
【0045】
一方、セラミック基体1の上面に形成された分割溝3の深さが5〜16μmであってもよい。分割溝3の深さが5〜16μmであることで、金属めっき膜21の表面への加工屑の付着が抑制された多数個取り配線基板を得ることができる。
【0046】
なお、ここでいう分割溝3の深さとは、セラミック基体1の上面(セラミック基体1と環状導体22との界面)から最下点(セラミック基体1とガラス層31との界面)までの距離であり、図3(b)に示す距離Xのことを意味する。
【0047】
分割溝3の深さが5μm以上であるのは、分割溝3の内面が一様にガラス層31で覆われるようにするためであり、深さが5μm未満であるとガラス層31で十分に覆われない部分ができるからである。一方、分割溝3の深さが16μm以下であるのは、分割溝3を深くするように形成すればするほど、これに伴って分割溝3の幅(断面で見たときの開口部の幅)も広くなるため、深さが16μmを超えると、レーザ光を照射した際の熱によって生じた加工屑(溶融物)が揮発し、分割溝3の内部で捕捉されずに分割溝3の外側に飛散して金属めっき膜21の表面に付着してしまうからである。
【0048】
このようにセラミック基体1の上面に形成される分割溝3の深さを浅く形成した場合には、容易に分割できるようにするために、図5に示すように、セラミック基体1の上面に形成された分割溝3と対向するようにセラミック基体1の下面にもV字状の分割溝30が形成されているのが好ましい。
【0049】
セラミック基体1の上面の分割溝3に対向するようにセラミック基体1の下面にも分割溝30が形成されていることにより、それぞれの配線基板領域11毎に分割した際に、配線基板の側面に発生し易いバリ・欠け・エグレなどの不良をより抑制することができる。
【0050】
ここで、セラミック基体1の厚みや強度にもよるが、セラミック基体1の上面に形成された分割溝3の深さとセラミック基体1の下面に形成された分割溝30の深さとの合計(図5に示す距離Xと距離Yとの和)がセラミック基体1の厚みの30〜62%であるのが好ましい。セラミック基体1の上面に形成された分割溝3の深さとセラミック基体1の下面に形成された分割溝30の深さとの合計がセラミック基体1の厚みの30%未満であると、バリ・欠け・エグレなどの不良が発生しやすくなるおそれがあり、62%を超えると、レーザ加工より後の工程において、微小な衝撃や応力が加わった際に自然に分割され所望の分割面を形成できなくなるおそれがある。
【0051】
以上述べたように、セラミック基体1の上面に形成された分割溝3は金属めっき膜21および環状導体22を貫通して形成されたものであり、分割溝3は予め複数の配線基板領域11の境界線12に沿ってセラミック基体1を露出させるように形成されたものではないから、金属めっき膜21で被覆された環状導体22および分割溝3が精度良く形成された多数個取り配線基板を実現することができる。
【0052】
また、本発明の多数個取り配線基板によれば、分割溝3の内面がセラミック基体1から金属めっき膜21にかけてガラス層31で覆われるようになる。これにより、分割溝3に面した環状導体22の側面の酸化腐食を抑制することができる。
【0053】
そして、上記の多数個取り配線基板を分割溝3に沿って複数の配線基板領域11毎に分割することで、分割溝3に沿って複数の配線基板領域11毎に分割されてなる配線基板を得ることができ、本発明の多数個取り配線基板において分割溝3の内面がセラミック基体1から金属めっき膜21にかけてガラス層31で覆われていることから、分割溝3に沿って複数の配線基板領域11毎に分割されてなる配線基板は、分割溝3に面する環状導体22の側面の酸化腐食を抑制することができる。
【0054】
次に、上記の多数個取り配線基板および配線基板の製造方法について説明する。
【0055】
まず、複数の配線基板領域11を有するセラミック基体1を作製するとともに、セラミ
ック基体1の上面の複数の配線基板領域11の境界線12および境界線12に隣接するそれぞれの配線基板領域11の周縁部111を覆うように環状導体22を形成する。
【0056】
アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、炭化珪素、ムライト、フェライト、ガラスセラミックスなどの原料粉末を有機溶剤及びバインダとともに混練する。これをシート状に成形して複数のセラミックグリーンシートを作製する。セラミックグリーンシートの厚みは、焼成後のセラミック絶縁層の厚みが例えば50〜200μmとなるような厚みに形成される。
【0057】
次に、セラミックグリーンシートに貫通孔を形成するとともにこの貫通孔に貫通導体となる貫通導体用導体ペーストを充填し、セラミックグリーンシートの一方主面に配線層となる配線層用導体ペーストを被着形成する。また、積層された際に最上層に配置されるセラミックグリーンシートの一方主面に環状導体22となる環状導体用導体ペーストを被着形成する。ここで、環状導体用導体ペーストの厚みは、焼成後の環状導体22および金属めっき膜21の合計厚みが20〜80μmとなるように形成される。例えば、合計厚みが30μmであって金属めっき膜21の厚みが5μmの場合、環状導体22が25μmとなるように環状導体用導体ペーストの厚みは調整される。
【0058】
さらに、必要により、セラミック基体1の上面に半導体素子5を収納するための凹部を形成するために、複数のセラミックグリーンシートのうちのいくつかのセラミックグリーンシートに貫通穴を形成する。このように形成されたセラミックグリーンシートを積層してセラミックグリーンシート積層体を作製する。得られたセラミックグリーンシート積層体を所望の焼成雰囲気および焼成温度で焼成する。例えば、貫通導体用導体ペーストおよび配線層用導体ペーストがW、Mo材料を主成分とするものでセラミックグリーンシートがアルミナ材料からなる場合は、還元雰囲気で1300〜1600℃の焼成温度で焼成がなされる。また、貫通導体用導体ペーストおよび配線層用導体ペーストがCu材料を主成分とするものでセラミックグリーンシートがガラスセラミック材料からなる場合は、窒素還元雰囲気で800〜1000℃の焼成温度で焼成がなされ、貫通導体用導体ペーストおよび配線層用導体ペーストがAg材料を主成分とするものでセラミックグリーンシートがガラスセラミック材料からなる場合は、大気雰囲気で800〜1000℃の焼成温度で焼成がなされる。
【0059】
なお、便宜上、配線層用導体ペーストが焼結してなる配線層および貫通導体用導体ペーストが焼結してなる貫通導体を含めてセラミック基体1としたが、セラミック基体1はこれらを含んでいても含んでなくてもよい。
【0060】
また、セラミック基体1の上面の複数の配線基板領域11の境界線12および境界線12に隣接するそれぞれの配線基板領域11の周縁部111を覆うように環状導体22を形成する工程は、上述のように配線層用導体ペーストと同様に環状導体22を形成する環状導体用導体ペーストがセラミックグリーンシートの一方主面に被着形成され、環状導体用導体ペーストがセラミックグリーンシートと同時に焼成されるのが好ましい。
【0061】
次に、環状導体22を被覆するように環状導体22の上に金属めっき膜21を形成する。金属めっき膜21は、例えばめっき液中で被めっき部(環状導体22の表面)にめっき被着用の電流を供給し、電解めっきを施すことにより形成し、下側にNiめっき層が形成され上側にAuめっき層が形成されてなる二層構造となっているのが好ましい。
【0062】
次に、複数の配線基板領域11の境界線12に沿って紫外線領域の波長の固体レーザ(例えばYAGレーザ)によるレーザ光を照射して分割溝3を形成するとともに、分割溝3の内面にセラミック基体1から金属めっき膜21にかけてガラス層31を形成する。
【0063】
ここで、照射するレーザ光は、紫外線領域の波長のレーザ光であることが重要である。紫外線領域の波長のレーザ光は、固体レーザによるパルス周波数10〜200kHz、パルス幅5ns以上、加工点出力1〜100W、好ましくは1〜40W程度のものである。紫外線領域の波長の固体レーザとしては、YAG、YVO、YLFなどの結晶より励起されるレーザがあり、それぞれのパルス特性および、被加工物の加工性に応じて最適なものを選定することができる。特に、パルス周波数10〜100kHz、パルス幅50〜200ns、加工点出力1〜30W程度のYAGレーザであって3倍波(波長355nm)のものが、分割溝3の加工時間の点から好ましく用いられる。
【0064】
固体レーザによる基本波または2倍波のレーザ光では、金属めっき膜21に対して反射性が高く、分割溝3として機能するV字状の溝を形成することは困難である。一方、炭酸ガスレーザによる波長10.6μmのレーザ光では、セラミック基体1に及ぼす熱影響が非常に大きく、溶融したセラミック基体1(ガラス層31)で溝が埋まってしまい、実質的に分割溝3は形成されないこととなる。
【0065】
これに対し、紫外線領域の波長のレーザ光は、金属めっき膜21に対して吸収性が高く反射性が低い。また、セラミック基体1に対しても吸収性が高く与える熱影響が少ない。したがって、環状導体22を被覆する金属めっき膜21の上から照射しても、V字状の分割溝3を形成することができる。すなわち、金属めっき膜21で被覆された環状導体22および分割溝3が精度良く形成された多数個取り配線基板を得ることができる。
【0066】
さらに、分割溝3の内面にセラミック基体1から金属めっき膜21にかけてガラス層31を形成することが重要である。換言すれば、分割溝3が形成される際に、分割溝3の内面にセラミック基体1から金属めっき膜21にかけてガラス層31が形成されることが重要である。
【0067】
紫外線領域の波長のレーザ光は、セラミック基体1に与える熱影響が少ないため、揮発したセラミック基体1の成分および環状導体22の成分が分割溝3の内面に付着することで、分割溝3の内面にセラミック基体1から金属めっき膜21にかけてガラス層31が形成されることとなる。なお、レーザ光のパルス周波数を変えることによってパルスエネルギーが変化し、これにより熱の加わりが変化する。したがって、パルス周波数を調整することでも、ガラス層31の厚みは調整される。
【0068】
分割溝3の内面にセラミック基体1から金属めっき膜21にかけてガラス層31を形成することで、固体レーザの照射によって露出した環状導体22の側面は覆われることとなる。したがって、固体レーザの照射によって露出した環状導体22の側面の酸化による腐食を抑制することができる。
【0069】
ここで、ガラス層31の形成とともに、ガラス層31が金属めっき膜21の上面の一部まで延出してなる突条部311を形成するのが好ましい。前述の環状導体22および金属めっき膜21の厚み、紫外線領域の波長の固体レーザによるレーザ光のパルス周波数等を調整することによって、ガラス層31を形成するのと同時に突条部311を形成することができる。
【0070】
なお、固体レーザを用いて分割溝3を形成する際に発生する加工屑が金属めっき膜21の表面に付着して溶着すると、これを除去することが困難である。また、加工屑が金属めっき膜21の表面に付着していると、ロウ材等を使用して蓋体4を取り付けて封止する際に、封止性が阻害されてしまうおそれがある。そこで、加工屑の溶着を防止する為に、金属めっき膜21の表面に容易に洗い流すことのできる有機性の保護膜(例えばポリビニル
アルコール)を形成したうえで、保護膜の上から紫外線領域の波長の固体レーザを照射し、保護膜の上に付着した加工屑を、保護膜ごと洗い流すようにしてもよい。
【0071】
また、分割溝を5〜16μmの深さとなるように固体レーザを制御してレーザ光を照射することで、保護膜を使用しなくても加工屑が金属めっき膜21の表面に付着しないようにすることもできる。このとき、セラミック基体1の上面に形成された分割溝3と対向するようにセラミック基体1の下面にもV字状の分割溝30を形成し、セラミック基体1の上面に形成された分割溝3の深さとセラミック基体1の下面に形成された分割溝30の深さとの合計をセラミック基体1の厚みの30〜62%とするのが好ましい。これにより、分割溝を分割する際に配線基板の側面に発生し易いバリ・欠け・エグレなどの不良を抑制することができる。
【0072】
なお、セラミック基体1の下面に関しては、上面と同様に金属めっき膜21で覆われた環状導体、電極パッドまたは引出し配線などが形成されていて、これらの上からレーザ光を照射する場合には、後述の固体レーザにより励起された紫外線領域の波長のレーザ光が採用されるが、セラミック基体が露出している部分にレーザ光を照射する場合には、例えば固体レーザにより励起されたレーザ光や、炭酸ガスレーザによるレーザ光などが採用される。また、下面の分割溝30と上面の分割溝3との位置合わせは、多数個取り配線基板内に点在する、キャスタレーション孔などを利用して調整するのが好ましい。キャスタレーション孔以外に、多数個取り配線基板の外枠や、セラミック基板の収縮変形に合わせた要所に、導体印刷や、金型打ち抜き等で形成されたアライメントマークを利用してもよい。
【0073】
以上の製造方法によれば、金属めっき膜21で被覆された環状導体22および分割溝3が精度良く形成された多数個取り配線基板を得ることができる。
【0074】
そして、配線基板の製造方法は、上記の多数個取り配線基板の製造方法によって作製された多数個取り配線基板を、分割溝3に沿って複数個の配線基板に分割する工程を有する。なお、分割方法としては、例えば3点曲げ式の割断装置を用いると精度良く分割することが可能である。
【0075】
これにより、分割溝3に面する環状導体22の側面の酸化腐食の抑制された配線基板を得ることができる。
【0076】
なお、本発明は上記の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を行なうことは何ら差し支えない。
【実施例】
【0077】
(実施例1)
Al粉末92質量%に、SiO粉末3質量%、Mn粉末3.5質量%、MgO粉末1質量%およびMoO粉末0.5質量%を混合した原料粉末を、有機溶剤およびバインダとともに混練し、シート状に成形して厚み150μmのセラミックグリーンシートを3枚作製し、積層して、セラミックグリーンシート積層体を作製した。
【0078】
次に、セラミックグリーンシート積層体の上面に、Moを主成分とする導体ペーストを被着形成した。ここで、焼成後の導体の厚みと後述のNiめっき層の厚み(4μm)およびAuめっき層の厚み(0.4μm)との合計が28μm、34μm、41μm、53μm、59μm、64μmとなるような厚みに導体ペーストを塗布したものをそれぞれ用意した。
【0079】
次に、フォーミングガス雰囲気中1350℃で18時間かけて焼成した。
【0080】
次に、金属めっき膜として、Niめっき層を4μmの厚みに形成し、Auめっき層を0.4μmの厚みに形成して、上面に金属めっき膜で被覆された導体を備えたセラミック基板を作製した。
【0081】
そして、得られたセラミック基板に、金属めっき膜を含む導体の上からレーザ光を照射して溝加工を実施した。
【0082】
なお、レーザ光の照射には、波長が355nmのYAGレーザを搭載し、被加工物を載置して1軸方向に移動する載置台を有するレーザースクライブ装置を用い、パルス周波数が10kHzの時に加工点出力が7.4W、30kHzの時に加工点出力が6.1W、50kHzの時に加工点出力が4.9Wになる様に条件を調整した。
【0083】
この3つの条件を用いて、金属めっき膜を含む導体の厚みが異なるセラミック基板にそれぞれ溝加工を実施し、全てのセラミック基板においてV字状の溝の深さが約70μmとなるように、加工速度及びパス回数を調整した。
【0084】
続いて、セラミック基板の側面から溝の長手方向に垂直に研磨し、また表面をクロスセクション・ポリッシャーを用いて削り込むなどした後、V字状の溝の断面を電子顕微鏡にて観察し、V字状の溝の幅およびV字状の溝の内面に形成されたガラス層の厚みを求めた。なお、ガラス層の厚みは、V字状の溝の導体に接する部分から垂直なガラス層の表面までの距離を求め、これをガラス層の厚みとした。
【0085】
さらに、マイクロスコープで突条部の高さを簡易的に測定し、その高さが0.1μm以上3μm未満のものについてはさらに原子間力顕微鏡を用いて正確な高さを測定し、その高さが3μm以上のものについてはレーザー顕微鏡を用いて正確な高さを測定した。
【0086】
これらの結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
表1によれば、本発明により分割溝の内面がセラミック基体から金属めっき膜にかけて0.5〜15μm程度の厚みのガラス層で覆われた多数個取り配線基板を得られることがわかる。
【0089】
なお、導体と金属めっき膜との合計厚みが20μm未満のものでは、出力およびパルス周波数によっては、測定した任意の断面においてガラス層の厚みが0.5μm未満となることがわかった。そして、このガラス層の厚みが0.5μm未満のものでは、分割溝の内面に環状導体が露出する部分が生じてしまい、ガラス層による環状導体の腐食防止効果が十分ではないことがわかった。
【0090】
また、導体と金属めっき膜との合計厚みが80μmを超えるものでは、出力およびパルス周波数によっては、測定した任意の断面においてガラス層の厚みが15.0μmを超えることがわかった。そして、このガラス層の厚みが15.0μmを超えるものでは、分割溝がガラス層で埋まってV字状に形成されなくなってしまい、分割溝としての機能が十分ではなくなることがわかった。
【0091】
そして、ガラス層の形成とともにガラス層が金属めっき膜の上面の一部まで延出してなる突条部の形成が確認された。さらに、試料No.3,7〜15,22〜27について、金属めっき膜で被覆された導体の上にロウ材を塗布し、さらにロウ材の上に蓋体を搭載してリフローをかけた後、光学顕微鏡にて20倍のレンズを用いて分割溝の内部を確認したところ、すべての試料で分割溝へのロウ材の流れ込みを抑制することが確認できた。
【0092】
(実施例2)
Al粉末92質量%に、SiO粉末3質量%、Mn粉末3.5質量%、MgO粉末1質量%およびMoO粉末0.5質量%を混合した原料粉末を、有機溶剤およびバインダとともに混練し、シート状に成形して厚み150μmのセラミックグリーンシートを3枚作製し、積層して、セラミックグリーンシート積層体を作製した。
【0093】
次に、セラミックグリーンシート積層体の上面に、Moを主成分とする導体ペーストを被着形成した。ここで、焼成後の導体の厚みと後述のNiめっき層の厚み(4μm)およびAuめっき層の厚み(0.4μm)との合計が64μmとなるような厚みに導体ペーストを塗布したものをそれぞれ用意した。
【0094】
次に、フォーミングガス雰囲気中1350℃で18時間かけて焼成した。
【0095】
次に、金属めっき膜として、Niめっき層を4μmの厚みに形成し、Auめっき層を0.4μmの厚みに形成して、上面に金属めっき膜で被覆された導体を備えたセラミック基板を作製した。
【0096】
そして、得られたセラミック基板に、金属めっき膜を含む導体の上からレーザ光を照射して溝加工を実施した。レーザ光の照射には、波長が355nmのYAGレーザを搭載し、被加工物を載置して1軸方向に移動する載置台を有するレーザースクライブ装置を用い、パルス周波数が50kHzの時に加工点出力が4.9Wの条件で加工速度を調整し、V字状の溝の深さ1μm、5μm、10μm、16μm、20μmとなるように溝加工を実施した。
【0097】
続いて、金属めっき膜表面のSEM像を取得し、加工屑の付着の有無の観察行った。さらに、セラミック基板の側面から溝の長手方向に垂直に研磨し、また研磨した表面をクロスセクション・ポリッシャーを用いて削り込むなどした後、V字状の溝の断面を電子顕微鏡にて観察し、V字状の溝の幅およびV字状の溝の内面に形成されたガラス層の厚みを求めた。なお、ガラス層の厚みは、V字状の溝の導体に接する部分から垂直なガラス層の表面までの距離を求め、これをガラス層の厚みとした。その結果を表2に示す。
【0098】
【表2】

【0099】
表2によれば、本発明の実施例である試料No.31〜35では、金属めっき膜の表面への加工屑の付着は見られなかった。
【0100】
これに対し、分割溝の深さが5μm未満の試料No.31では、金属めっき膜の表面への加工屑の付着はないが測定した任意の断面においてガラス層の厚みが0.5μm未満となることがわかった。この場合、環状導体の側面が露出する部分が生じてしまい、ガラス層による環状導体の腐食防止効果が十分ではないことがわかる。
【0101】
また、分割溝の深さが16μmを超える試料No.35では、金属めっき膜の表面に加工屑が付着しているのが確認された。
【符号の説明】
【0102】
1・・・セラミック基体
11・・配線基板領域
111・周縁部
12・・境界線
21・・金属めっき膜
22・・環状導体
3、30・・・分割溝
31・・ガラス層
4・・・蓋体
5・・・半導体素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配線基板領域を有するセラミック基体と、該セラミック基体の上面の前記複数の配線基板領域の境界線に形成されたV字状の分割溝と、該分割溝に接するそれぞれの前記配線基板領域の周縁部に形成された、金属めっき膜で被覆された環状導体とを備え、前記該分割溝の内面が前記セラミック基体から前記金属めっき膜にかけてガラス層で覆われていることを特徴とする多数個取り配線基板。
【請求項2】
前記環状導体および前記金属めっき膜の厚みの合計が20〜80μmであることを特徴とする請求項1に記載の多数個取り配線基板。
【請求項3】
前記ガラス層が前記金属めっき膜の上面の一部まで延出してなる突条部が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多数個取り配線基板。
【請求項4】
前記セラミック基体の上面に形成された前記分割溝の深さが5〜16μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多数個取り配線基板。
【請求項5】
前記セラミック基体の上面に形成された前記分割溝と対向するように前記セラミック基体の下面にもV字状の分割溝が形成されていて、前記セラミック基体の上面に形成された前記分割溝の深さと前記セラミック基体の下面に形成された前記分割溝の深さとの合計が前記セラミック基体の厚みの30〜62%であることを特徴とする請求項4に記載の多数個取り配線基板。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の多数個取り配線基板が前記分割溝に沿って前記複数の配線基板領域毎に分割されてなることを特徴とする配線基板。
【請求項7】
複数の配線基板領域を有するセラミック基体を作製するとともに、該セラミック基体の上面の前記複数の配線基板領域の境界線および該境界線に接するそれぞれの前記配線基板領域の周縁部を覆うように環状導体を形成し、次に、該環状導体を被覆する金属めっき膜を形成し、次に、前記複数の配線基板領域の前記境界線に沿って紫外線領域の波長のレーザ光を照射してV字状の分割溝を形成するとともに、該分割溝の内面に前記セラミック基体から前記金属めっき膜にかけてガラス層を形成することを特徴とする多数個取り配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記環状導体および前記金属めっき膜を、それぞれの厚みの合計が20〜80μmとなるように形成することを特徴とする請求項7に記載の多数個取り配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記ガラス層が前記金属めっき膜の上面の一部まで延出してなる突条部を形成することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の多数個取り配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記分割溝を5〜16μmの深さに形成することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の多数個取り配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記セラミック基体の上面に形成された前記分割溝と対向するように前記セラミック基体の下面にもV字状の分割溝を形成し、前記セラミック基体の上面に形成された前記分割溝の深さと前記セラミック基体の下面に形成された前記分割溝の深さとの合計を前記セラミック基体の厚みの30〜62%とすることを特徴とする請求項10に記載の多数個取り配線基板の製造方法。
【請求項12】
請求項7乃至請求項11のいずれかに記載の多数個取り配線基板の製造方法によって作
製された多数個取り配線基板を、前記分割溝に沿って複数個の配線基板に分割することを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−9767(P2012−9767A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146462(P2010−146462)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】