説明

射出成形機及び射出成形方法

【課題】 熱可塑性樹脂部及び熱硬化性樹脂部が一体成形された樹脂成形品を射出成形する。
【解決手段】 キャビティの一部を構成する下型UM1〜UM5と、下型UM1〜UM5と共に熱可塑性樹脂が充填される第1キャビティを構成する第1上型PM1、PM2と、下型UM1〜UM5と共に熱硬化性樹脂が充填される第2キャビティを構成する第2上型PM3、PM4と、第1キャビティ内に熱可塑性樹脂を射出する第1噴射ヘッド5A、5Bと、第2キャビティ内に熱硬化性樹脂を射出する第2噴射ヘッド5Cとを備える射出成形機1において、シリコーン成形工程(ST3)の終了後、第2上型PM3、PM4と共に下型UM1〜UM5を硬化工程(ST4)に移動させるので、硬化工程にて熱硬化性樹脂の硬化させることができる。したがって、生産効率の低下を抑制しつつ、成形サイクルの相違を吸収して同一のシステム内で成形できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂からなる第1樹脂部及び熱硬化性樹脂からなる第2樹脂部が一体成形された樹脂成形品を射出成形する射出成形機及び射出成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とでは、樹脂の硬化温度等が大きく相違し、成形サイクルが大きく異なるため、同一のシステム内で第1樹脂部及び第2樹脂部からなる樹脂成形品を成形すると、生産効率が低下するため、通常、別々に成形される場合が多かった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−248346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記点に鑑み、生産効率の低下を抑制しつつ、第1樹脂部及び第2樹脂部からなる樹脂成形品を同一のシステム内で成形することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、キャビティ内に溶融状態の樹脂を射出充填することにより、熱可塑性樹脂からなる第1樹脂部及び熱硬化性樹脂からなる第2樹脂部が一体成形された樹脂成形品を射出成形する射出成形機であって、キャビティの一部を構成する第1金型(UM1〜UM5)と、第1金型(UM1〜UM5)に対して移動可能に設けられ、第1金型(UM1〜UM5)と共に熱可塑性樹脂が充填される第1キャビティを構成する第2金型(PM1、PM2)と、第1金型(UM1〜UM5)に対して移動可能に設けられ、第1金型(UM1〜UM5)と共に熱硬化性樹脂が充填される第2キャビティを構成する第3金型(PM3、PM4)と、第1キャビティ内に熱可塑性樹脂を射出する第1噴射ヘッド(5A、5B)と、第2キャビティ内に熱硬化性樹脂を射出する第2噴射ヘッド(5C)と、第1キャビティ内に熱可塑性樹脂を射出する第1樹脂部成形ステーション、第2キャビティ内に熱硬化性樹脂を射出する第2樹脂部成形ステーション、第2樹脂部を硬化させる硬化ステーション、及び成形品を取り出す取出しステーションの間で、第1金型(UM1〜UM5)を第1噴射ヘッド(5A、5B)及び第2噴射ヘッド(5C)に対して相対移動させる移動手段(7)とを備え、移動手段(7)は、第2樹脂部成形ステーションの終了後、第3金型(PM3、PM4)と共に第1金型(UM1〜UM5)を硬化ステーションに移動させることを特徴とする。
【0006】
これにより、請求項1に記載の発明では、第2樹脂部成形ステーションの終了後、第3金型(PM3、PM4)と共に第1金型(UM1〜UM5)を硬化ステーションに移動させるので、硬化ステーションにて熱硬化性樹脂の硬化させることができる。
【0007】
したがって、生産効率の低下を抑制しつつ、成形サイクルの相違を吸収して同一のシステム内で第1樹脂部及び第2樹脂部からなる樹脂成形品を成形することができる。
そして、請求項2に記載の発明では、第2金型(PM1、PM2)が固定され、かつ、第1樹脂部成形ステーションの位置において、第1金型(UM1〜UM5)に対して型閉め方向又は型開き方向に変位するとともに、型閉め方向に変位したときに型閉め力を第2金型(PM1、PM2)に作用させるプラテン(9)と、第2樹脂部成形ステーションの位置において、第3金型(PM3、PM4)に型閉め力を作用させる型閉め手段(9A)と、取出しステーションの位置において、第3金型(PM3、PM4)を型閉め方向又は型開き方向に変位させるクランプ(11)とを備え、移動手段(7)は、取出しステーションの終了後、第3金型(PM3、PM4)と共に第1金型(UM1〜UM5)を第2樹脂部成形ステーションに移動させることを特徴とする。
【0008】
なお、本願明細書及び特許請求の範囲でいう「型閉め」とは、いわゆる「低圧型締め」及び「高圧型締め」のいずれも含む意味であり、型締め力(型閉め力)の大小を意図するものではなく、(キャビティを開放するために)金型を開く方向と、(キャビティを形成するために)金型を閉じる方向のうち、金型を閉じる方向を意図するものである。
【0009】
また、請求項3に記載の発明では、移動手段(7)は、第1金型(UM1〜UM5)が固定された回転可能なテーブル(7)を有して構成されていることを特徴とする。
これにより、請求項3に記載の発明では、移動手段(7)を回転運動のみで構成することができるので、他の運動形態(例えば、直線運動)と組み合わせて移動手段(7)を構成した場合に比べて、射出成形機の信頼性を高めることができる。
【0010】
請求項4に記載の発明では、型閉め手段(9A)は、プラテン(9)に設定されていることを特徴とする。
これにより、請求項4に記載の発明では、型閉め手段(9A)の型閉め力をプラテン(9)で発生させることができるので、型閉め手段(9A)とプラテン(9)とを別々に設けた場合に比べて、射出成形機の構造を簡略化することができる。
【0011】
なお、請求項5に記載の発明では、第1キャビティ及び第2キャビティの型割面は水平であることを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明では、第1噴射ヘッド(5A、5B)は、第1キャビティの型割面と平行な方向から熱可塑性樹脂を射出し、第2噴射ヘッド(5C)は、第2キャビティの型割面と平行な方向から熱硬化性樹脂を射出することを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に記載の発明では、移動手段(7)は、第1樹脂部成形ステーションの終了後、第1金型(UM1〜UM5)を第2樹脂部成形ステーションに移動させることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明では、キャビティの一部を構成する第1金型(UM1〜UM5)、第1金型(UM1〜UM5)に対して移動可能に設けられ、第1金型(UM1〜UM5)と共に熱可塑性樹脂が充填される第1キャビティを構成する第2金型(PM1、PM2)、及び第1金型(UM1〜UM5)に対して移動可能に設けられ、第1金型(UM1〜UM5)と共に熱硬化性樹脂が充填される第2キャビティを構成する第3金型(PM3、PM4)を用いて、熱可塑性樹脂からなる第1樹脂部及び熱硬化性樹脂からなる第2樹脂部が一体成形された樹脂成形品を射出成形する射出成形方法であって、第1キャビティ内に熱可塑性樹脂を射出する第1樹脂部成形ステーション、第2キャビティ内に熱硬化性樹脂を射出する第2樹脂部成形ステーション、第2樹脂部を硬化させる硬化ステーション、及び成形品を取り出す取出しステーションの間で、第1金型(UM1〜UM5)を第1噴射ヘッド(5A、5B)及び第2噴射ヘッド(5C)に対して相対移動させるとともに、第2樹脂部成形ステーションの終了後、第3金型(PM3、PM4)と共に第1金型(UM1〜UM5)を硬化ステーションに移動させることを特徴とする。
【0014】
これにより、請求項8に記載の発明では、請求項1に記載の発明と同様に、第2樹脂部成形ステーションの終了後、第3金型(PM3、PM4)と共に第1金型(UM1〜UM5)を硬化ステーションに移動させるので、硬化ステーションにて熱硬化性樹脂の硬化させることができ、生産効率の低下を抑制しつつ、成形サイクルの相違を吸収して同一のシステム内で第1樹脂部及び第2樹脂部からなる樹脂成形品を成形することができる。
【0015】
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る射出成形機1の概念図である。
【図2】本発明の実施形態に係る射出成形機1における金型の移動を説明するための説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る射出成形機1における金型の移動を説明するための説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る射出成形機1における金型の移動を説明するための説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る射出成形機1における金型の移動を説明するための説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係る射出成形機1の電気系ブロックである。
【図7】本発明の実施形態に係る射出成形機1における金型の移動を説明するための説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係る射出成形機1における金型の移動を説明するための説明図である。
【図9】本発明の実施形態に係る射出成形機1における金型の移動を説明するための説明図である。
【図10】本発明の実施形態に係る射出成形機1における金型の移動を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態は、本発明に係るプラスチック等の熱可塑性樹脂からなる第1樹脂部及びシリコーン等の熱硬化性樹脂からなる第2樹脂部が一体成形された樹脂成形品を射出成形する射出成形方法を適用した射出成形機であり、以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
【0018】
1.射出成形機の概略構造
本実施形態に係る射出成形機1は型割面が水平となる縦型の射出成形機であり、この射出成形機1を上方側から見ると、図1に示すように、下型ステーション3が五角形状に形成されており、各辺に成形工程(ステーション)が設定されている。
【0019】
すなわち、本実施形態に係る射出成形機1では、第1樹脂部の成形工程(第1樹脂部成形ステーション)として第1プラスチック成形工程(ST1)及び第2プラスチック成形工程(ST2)が設定されており、第1プラスチック成形工程→第2プラスチック成形工程の順で第1樹脂部が成形される。
【0020】
また、第2樹脂部の成形工程(第2樹脂部成形ステーション)としてシリコーン成形工程(ST3)、第2樹脂部を硬化させる硬化ステーションとして硬化工程(ST4)、及び成形品を取り出す取出しステーションとして取出し工程(ST5)が設定されている。
【0021】
そして、これらの成形工程(成形ステーション)は、原則として、第1プラスチック成形工程→第2プラスチック成形工程→シリコーン成形工程→硬化工程(硬化ステーション)→取出し工程(取出しステーション)の順で実行される。
【0022】
また、下型ステーション3の外側のうち第1プラスチック成形工程及び第2プラスチック成形工程に対応する部位には、プラスチックを射出する第1噴射ヘッド5A、5Bが設けられており、第1噴射ヘッド5Aは第1プラスチック成形工程の位置にある金型空間(キャビティ)内に溶融状態のプラスチックを射出充填し、第1噴射ヘッド5Bは第2プラスチック成形工程の位置にあるキャビティ内に溶融状態のプラスチックを射出充填する。
【0023】
そして、第1噴射ヘッド5A、5Bでは、プラスチックがその融点又はガラス転移温度より高い温度(50〜150℃)まで加熱されて粘度が低下させられた状態で、型割面と平行な方向(本実施形態では、水平方向)からキャビティ内に射出される。
【0024】
また、下型ステーション3の外側のうちシリコーン成形工程に対応する部位には、シリコーンを射出する第2噴射ヘッド5Cが設けられており、第2噴射ヘッド5Cはシリコーン成形工程の位置にあるキャビティ内に溶融状態のシリコーンを射出充填する。
【0025】
具体的には、第2噴射ヘッド5Cでは、シリコーンが約20℃から約30℃の常温として流動性が保持されたまま、高温(例えば、150℃)に加熱された金型(キャビティ)内に、型割面と平行な方向(本実施形態では、水平方向)から射出される。そして、キャビティ内に充填されたシリコーンは、その後、硬化し始める。
【0026】
ところで、金型空間(キャビティ)は、図2に示すように、下型UM1〜UM5、これら下型UM1〜UM5と共にプラスチックが充填される第1キャビティを構成する第1上型PM1、PM2、及び下型UM1〜UM5と共にシリコーンが充填される第2キャビティを構成する第2上型PM3、PM4から構成されている。
【0027】
そして、下型UM1〜UM5は、下型ステーション3に設けられた回転可能なテーブル7に固定されており、各下型UM1〜UM5は、テーブル7の回転と共に各工程(ステーション)ST1〜ST5に対応する位置に順次移動することができる。
【0028】
なお、図2では、理解を容易にするため、テーブル7の回転方向に射出成形機1を展開した状態を示している。このため、図2の紙面左右方向がテーブル7の回転方向と一致する。
【0029】
また、第1上型PM1、PM2は、テーブル7(下型ステーション3)の上方側に位置するプラテン(可動盤)9に固定されており、このプラテン9は、テーブル7(下型UM1〜UM5)に対して上下方向に変位可能であって、型閉め方向(下向き)に変位したときに型閉め力を第1上型PM1、PM2に作用させる。因みに、本実施形態では、プラテン9による型閉め力は約120トンである。
【0030】
また、プラテン9のうちシリコーン成形工程に対応する位置には、第2上型PM3、PM4に型閉め力を作用させる型閉め部9Aが設定されており、この型閉め部9Aは、第2上型PM3、PM4に型閉め力(押圧力)を作用させるのみで、シリコーン成形工程では、図3に示すように、プラテン9と共に第2上型PM3、PM4は、上下方向(本実施形態では、型閉め方向及び型開き方向)に変位しない。
【0031】
また、下型ステーション3の外側のうち取出し工程に対応する部位には、図3〜図5に示すように、第2上型PM3、PM4を型閉め方向(本実施形態では、下向き)又は型開き方向(本実施形態では、上向き)に変位させるクランプ11が設けられている。なお、本実施形態に係るクランプ11は、電磁力により第2上型PM3、PM4を吸着した状態で上下方向に変位することにより、第2上型PM3、PM4を下型UM1〜UM5に対して着脱させる。
【0032】
2.射出成形機の電気系の概略構成(図6参照)
電動サーボモータ13はプラテン9を上下動させるための駆動手段であり、油圧ポンプモータ15はプラテン9(型閉め部9Aを含む。)に型閉め力(押圧力)を発生させるための型閉め力発生手段であり、本実施形態では、電動サーボモータ13及び油圧ポンプモータ15によりプラテン駆動部が構成されている。
【0033】
テーブル駆動モータ17はテーブル7を回転駆動させるための駆動手段であり、このテーブル駆動モータ17、電動サーボモータ13及び油圧ポンプモータ15、並びにクランプ11、第1噴射ヘッド5A、5B及び第2噴射ヘッド5Cの作動は、制御部19により制御される。
【0034】
なお、制御部19は、演算部及び記憶部等からなる周知のマイクロコンピュータにて構成されたものであり、制御部19は、内蔵されたROM等の不揮発性記憶手段に予め記憶されているプログラムに従ってテーブル駆動モータ17や電動サーボモータ13等の作動を制御する。
【0035】
また、金型(キャビティ)の温度は、各工程における適切な温度となるように管理されており、本実施形態では、下型UM1〜UM5、第1上型PM1、PM2及び第2上型PM3、PM4に温度調節用の流体を循環させることにより、金型の温度を適切な温度となるように制御している。
【0036】
3.射出成形機の作動(特に、第2上型PM3、PM4の移動制御)について
図7〜図10は、第1プラスチック成形工程〜取出し工程毎の下型UM1〜UM5、第1上型PM1、PM2及び第2上型PM3、PM4の移動を説明するための図であって射出成形機1を上方側から見た概念図である。
【0037】
なお、射出成形機1を上方側から見ると、第1上型PM1、PM2及び第2上型PM3、PM4が下型UM1〜UM5に重なってしまい、下型UM1〜UM5の位置が不明となってしまうので、図7〜図10では、下型UM1〜UM5を第1上型PM1、PM2及び第2上型PM3、PM4と重ならない位置にずらした位置に配置して記載している。
【0038】
このため、図7〜図10において、下型UM1〜UM5と第1上型PM1、PM2又は第2上型PM3、PM4とが径方向に重なる位置にあるときは、第1上型PM1、PM2及び第2上型PM3、PM4が下型UM1〜UM5側に移動し、第1キャビティ又は第2キャビティに構成される。
【0039】
<図7について>
図7に示す状態では、図2に示すように、下型UM1に第1上型PM1が重ねられ、下型UM2に第1上型PM2が重ねられ、下型UM3に第2上型PM3が重ねられ、下型UM4に第2上型PM4が重ねられた状態で、プラテン9により第1上型PM1、PM2及び第2上型PM3に型閉め力が作用している。
【0040】
これにより、下型UM1及び第1上型PM1により第1プラスチック成形工程用の第1キャビティが構成され、下型UM2及び第1上型PM2により第2プラスチック成形工程用の第1キャビティが構成され、下型UM3及び第2上型PM3によりシリコーン成形工程用の第2キャビティが構成される。そして、プラテン9により押圧されて型閉めされた状態で、第1噴射ヘッド5A、5B及び第2噴射ヘッド5Cから各キャビティに樹脂が射出充填される。
【0041】
以下、図7に示す状態(以下、第1ステージという。)を基準として説明する。なお、このステージでは、下型UM1は第1プラスチック成形工程の位置にあり、下型UM2は第2プラスチック成形工程の位置にあり、下型UM3はシリコーン成形工程の位置にあり、下型UM4は硬化工程の位置にあり、下型UM5は取出し工程の位置にある。
【0042】
<図8について>
図8に示す状態は、第1ステージから次のステージ(以下、第2ステージという。)に移行した状態を示すものであり、この第2ステージでは、図3に示すように、プラテン9が型開き方向(上向き)に移動した後、テーブル7が反時計回りに1工程分(72度)だけ回転するとともに、クランプ11が型閉め方向(下向き)に移動して第2上型PM4を吸着する。
【0043】
つまり、第2ステージでは、下型UM1は第2プラスチック成形工程の位置にあり、下型UM2はシリコーン成形工程の位置にあり、下型UM3は硬化工程の位置にあり、下型UM4は取出し工程の位置にあり、下型UM5は第1プラスチック成形工程の位置にある。
【0044】
このため、第1ステージにて第2噴射ヘッド5Cから熱硬化性樹脂が充填されて第2樹脂部が成形された下型UM3及び第2上型PM3からなる第2キャビティは、硬化工程に移行し、熱硬化性樹脂の硬化が開始される。なお、硬化工程においては、型閉め力が第2上型PM3又は第2上型PM4に作用せず、第2上型PM3、PM4の自重により第2キャビティが保持される。
【0045】
<図9について>
図9に示す状態は、第2ステージから次のステージ(以下、第3ステージという。)に移行した状態を示すものであり、この第3ステージでは、プラテン9が型開き方向(上向き)に変位したまま、第2上型PM4がクランプ11に吸着された状態でクランプ11が型開き方向(上向き)移動した後、図4に示すように、テーブル7が時計回りに3工程分(216度)だけ回転する。
【0046】
このため、第3ステージでは、第2ステージにおいてシリコーン成形工程にあった第2キャビティ(下型UM3及び第2上型PM3)が第1プラスチック成形工程の位置となり、下型UM2は第2プラスチック成形工程の位置となり、下型UM5はシリコーン成形工程の位置となり、下型UM1は硬化工程の位置となり、下型UM2は取出し工程の位置となる。
【0047】
<図10について>
図10に示す状態は、第3ステージから次のステージ(以下、第4ステージという。)に移行した状態を示すものであり、この第4ステージでは、プラテン9が型開き方向(上向き)に変位したまま、クランプ11が型閉め方向(下向き)に移動し、吸着されていた第2上型PM4を下型UM2に重ねて第2キャビティが構成された後、図5に示すように、テーブル7が反時計回りに3工程分(216度)だけ回転する。
【0048】
このため、第4ステージでは、第3ステージにおいて第1プラスチック成形工程にあった第2キャビティ(下型UM3及び第2上型PM3)が硬化工程の位置となり、第2上型PM4及び下型UM2により構成された第2キャビティがシリコーン成形工程の位置となり、下型UM5は第1プラスチック成形工程の位置にあり、下型UM5はシリコーン成形工程の位置にあり、下型UM1は第2プラスチック成形工程の位置となり、下型UM4は取出し工程の位置となる。
【0049】
そして、第4ステージが終了すると、再び、第1ステージがとなり、以降、第2ステージ→第3ステージ→第4ステージ→第1ステージの順に繰り返される。つまり、第1ステージ〜第4ステージまでを1サイクル(周期)として第1ステージ〜第4ステージが順次実行される。
【0050】
すなわち、図5に示す第4ステージが終了すると、下型UM5及び第1上型PM1により第1プラスチック成形工程用の第1キャビティが構成され、下型UM1及び第1上型PM2により第2プラスチック成形工程用の第1キャビティが構成され、下型UM2及び第2上型PM4によりシリコーン成形工程用の第2キャビティが構成された第1ステージとなる。
【0051】
そして、プラテン9により押圧されて型閉めされた状態で、下型UM5及び第1上型PM1により構成された第1プラスチック成形工程用の第1キャビティ、下型UM1及び第1上型PM2により構成された第2プラスチック成形工程用の第1キャビティ、及び下型UM2及び第2上型PM4により構成されたシリコーン成形工程用の第2キャビティに樹脂が充填される。
【0052】
このとき、現在のサイクルにおいて硬化工程に位置する金型(キャビティ)は、前回のサイクルの第2ステージにおいて硬化工程に位置していた金型(キャビティ)となるので、本実施形態に係る射出成形機1では、1サイクル分の時間(4つのステージ分相当の時間)が第2樹部部(熱硬化性樹脂)の硬化時間となる。
【0053】
そして、第1ステージにおいて硬化工程の位置にあった金型(キャビティ)は、次の第2ステージでは取出し工程となるので、この取出し工程にて、第1樹脂部及び第2樹脂部が一体成形された樹脂成形品を射出成形が完了し、樹脂成形品が射出成形機1から取り出される。
【0054】
つまり、本実施形態に係る射出成形機1では、2サイクルにて1つの樹脂成形品が完成する。したがって、射出成形機1の初回サイクルから2回目のサイクル以降においては、第3ステージ毎に樹脂成形品が射出成形機1から取り出される。
【0055】
4.本実施形態に係る射出成形機1の特徴
本実施形態では、シリコーン成形工程の終了後、第2上型PM3、PM4と共に下型UM1〜UM5を硬化工程に移動させるので、硬化工程にて熱硬化性樹脂の硬化させることができる。
【0056】
したがって、生産効率の低下を抑制しつつ、成形サイクルの相違を吸収して同一のシステム内で第1樹脂部及び第2樹脂部からなる樹脂成形品を成形することができる。
また、本実施形態では、下型UM1〜UM5が固定されたテーブル7を回転させるのみで金型を移動させているので、他の運動形態(例えば、直線運動)と組み合わせて金型を移動させる構成した場合に比べて、射出成形機1の信頼性を高めることができる。
【0057】
本実施形態では、第2上型PM3、PM4に型閉め力を作用させる型閉め部9Aは、プラテン9に設定されているので、型閉め部9Aの型閉め力をプラテン9で発生させることができ、型閉め部9Aとプラテン9とを別々に設けた場合に比べて、射出成形機の構造を簡略化することができる。
【0058】
5.発明特定事項と実施形態との対応関係
本実施形態では、下型UM1〜UM5が特許請求の範囲に記載された第1金型に相当し、第1上型PM1、PM2が特許請求の範囲に記載された第2金型に相当し、第2上型PM3、PM4が特許請求の範囲に記載された第3金型に相当し、テーブル7及びテーブル7駆動用モータ17が特許請求の範囲に記載された移動手段に相当する。
【0059】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、金型が上下方向に開く縦開きであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば金型が水平方向に開く横開きであってもよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、下型UM1〜UM5が固定されたテーブル7を回転させるのみで金型を移動させたが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の運動形態(例えば、直線運動)と組み合わせて金型を移動させる構成としてもよい。
【0061】
また、上述の実施形態では、第1キャビティ内に熱可塑性樹脂を射出する第1樹脂部成形ステーションが第1プラスチック成形工程及び第2プラスチック成形工程から構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1樹脂部成形ステーションを例えば第1プラスチック成形工程又は第2プラスチック成形工程のみで構成してもよい。
【0062】
また、上述の実施形態では、第1樹脂部成形ステーションの後に、第2キャビティ内に熱硬化性樹脂を射出する第2樹脂部成形ステーション(シリコーン成形工程)を実施したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明は、第2樹脂部成形ステーションの終了後、第2上型PM3、PM4と共に下型UM1〜UM5を硬化工程に移動させれば十分であるので、例えば、シリコーン成形工程→硬化工程→第1プラスチック成形工程→硬化工程の順に各工程を実施してもよい。
【0063】
また、上述の実施形態に係るクランプ11は、電磁力により第2上型PM3、PM4を吸着するものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば係止爪等にて第2上型PM3、PM4を機械的に係止する構造であってもよい。
【0064】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0065】
1…射出成形機、3…下型ステーション、5A、5B…第1噴射ヘッド、
5C…第2噴射ヘッド、7…テーブル、9…プラテン、9A…型閉め部、
11…クランプ、13…電動サーボモータ、15…油圧ポンプモータ、
17…テーブル駆動モータ、19…制御部、UM1〜UM5…下型、
PM1、PM2…第1上型、PM3、PM4…第2上型。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティ内に溶融状態の樹脂を射出充填することにより、熱可塑性樹脂からなる第1樹脂部及び熱硬化性樹脂からなる第2樹脂部が一体成形された樹脂成形品を射出成形する射出成形機であって、
キャビティの一部を構成する第1金型と、
前記第1金型に対して移動可能に設けられ、前記第1金型と共に熱可塑性樹脂が充填される第1キャビティを構成する第2金型と、
前記第1金型に対して移動可能に設けられ、前記第1金型と共に熱硬化性樹脂が充填される第2キャビティを構成する第3金型と、
前記第1キャビティ内に熱可塑性樹脂を射出する第1噴射ヘッドと、
前記第2キャビティ内に熱硬化性樹脂を射出する第2噴射ヘッドと、
前記第1キャビティ内に熱可塑性樹脂を射出する第1樹脂部成形ステーション、前記第2キャビティ内に熱硬化性樹脂を射出する第2樹脂部成形ステーション、前記第2樹脂部を硬化させる硬化ステーション、及び成形品を取り出す取出しステーションの間で、前記第1金型を前記第1噴射ヘッド及び第2噴射ヘッドに対して相対移動させる移動手段とを備え、
前記移動手段は、前記第2樹脂部成形ステーションの終了後、前記第3金型と共に前記第1金型を前記硬化ステーションに移動させることを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記第2金型が固定され、かつ、前記第1樹脂部成形ステーションの位置において、前記第1金型に対して型閉め方向又は型開き方向に変位するとともに、前記型閉め方向に変位したときに型閉め力を前記第2金型に作用させるプラテンと、
前記第2樹脂部成形ステーションの位置において、前記第3金型に型閉め力を作用させる型閉め手段と、
前記取出しステーションの位置において、前記第3金型を前記型閉め方向又は前記型開き方向に変位させるクランプとを備え、
前記移動手段は、前記取出しステーションの終了後、前記第3金型と共に前記第1金型を前記第2樹脂部成形ステーションに移動させることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記移動手段は、前記第1金型が固定された回転可能なテーブルを有して構成されていることを特徴とする請求項2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記型閉め手段は、前記プラテンに設定されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記第1キャビティ及び前記第2キャビティの型割面は水平であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記第1噴射ヘッドは、前記第1キャビティの型割面と平行な方向から熱可塑性樹脂を射出し、
前記第2噴射ヘッドは、前記第2キャビティの型割面と平行な方向から熱硬化性樹脂を射出することを特徴とする請求1ないし5のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記移動手段は、前記第1樹脂部成形ステーションの終了後、前記第1金型を前記第2樹脂部成形ステーションに移動させることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項8】
キャビティの一部を構成する第1金型、
前記第1金型に対して移動可能に設けられ、前記第1金型と共に熱可塑性樹脂が充填される第1キャビティを構成する第2金型、及び
前記第1金型に対して移動可能に設けられ、前記第1金型と共に熱硬化性樹脂が充填される第2キャビティを構成する第3金型を用いて、
熱可塑性樹脂からなる第1樹脂部及び熱硬化性樹脂からなる第2樹脂部が一体成形された樹脂成形品を射出成形する射出成形方法であって、
前記第1キャビティ内に熱可塑性樹脂を射出する第1樹脂部成形ステーション、前記第2キャビティ内に熱硬化性樹脂を射出する第2樹脂部成形ステーション、前記第2樹脂部を硬化させる硬化ステーション、及び成形品を取り出す取出しステーションの間で、前記第1金型を前記第1噴射ヘッド及び第2噴射ヘッドに対して相対移動させるとともに、
前記第2樹脂部成形ステーションの終了後、前記第3金型と共に前記第1金型を前記硬化ステーションに移動させることを特徴とする射出成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−25044(P2012−25044A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166179(P2010−166179)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度経済産業省「戦略的基盤技術高度化支援事業」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(597103816)株式会社 セントラルファインツール (5)
【出願人】(301056270)株式会社ソディックプラステック (35)
【Fターム(参考)】