説明

履物を製造する方法

本発明は、金型(1および2)と靴型(3)の形態の反転金型とを用いて、履物を製造する方法に関する。この金型と反転金型との間には、上部を形成する部品(4および5)が配置される。これらの部品は、部品間に経路(9)の境界を定める。また、該部品は、金型および反転金型との間に規定される窪み(10および11)と共に、経路および窪みのネットワークを決定する。このネットワークの中には、溶融状態の熱可塑性物質が注入される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、注入形成された下部と、天然皮革または合成皮革、弾性材、装飾具などからなる複数の部品によって形成される上部とで形成される、履物を製造する方法に関する。
【0002】
より具体的には、本発明の方法は、上部が複数の部品によって形成され、縫い目がない、上述のタイプの履物の製造に関する。
【0003】
〔背景技術〕
従来の方法による履物の製造には、以下の各工程が含まれる。
・履物の表面部分を形成することとなる上部の複数の部品を裁断する。
・これらの部品同士を、接着剤や縫合(補強具および装飾具を含む)によって手作業で接合する。
・さらに、上部と、この上部を靴型の内側面上に形成することとを必要とする、プロセス(ミッドソール部の製造)を実施する。
・次に、例えば、踵部および爪先部を形成することとなる後部および前部における補強具の設置などの、組み立てのための準備プロセスを実施する。
・インソール部を、留め金またはテープを用いて靴型の内側面上に固定する。
・上部を靴型上に配置し、ミッドソール部をその下にして、これらの各部品(代替部品でもかまわない)を(通常は機械によって)組み立てる。
・組み立てが済んだセット部材を成型乾燥器(forming oven)内に導入して、素材を安定させ、形状を保持する。
・ソール部の形状が前もって上にマークされている、上部の銀面を磨く。
・磨いた部分と共にソール部にも、前もって化学的に調製しておいた接着剤を塗り、接着剤を固着させる。
・通常、素材を注入して形成されるソール部を、概して子会社を使って別に製造する。
・ソール部を正しく位置決めし、機械に圧力をかけて、ソール部を接着する。
・完成した履物を靴型から取り外し、続いてクリーニングおよび何らかの最終的な仕上げを施す。
【0004】
上述のプロセスには多くの工程が伴い、相当多くの手作業が必要とされるので、履物の製造コストが非常に高くなる。
【0005】
〔発明の詳細な説明〕
本発明の目的は、従来のプロセスに比べて少ない工程数で履物を製造し、これにより、製造コストの削減を可能にする方法にある
本発明のもう1つの目的は、従来の方法によって得られる履物とは異なる、より魅力的な外観を有する履物を得ることである。
【0006】
本発明の方法による履物の製造は、以下に列挙する各ステップによって実施される。
・a)上記履物の上部を形成することとなる部品を裁断するステップ。
・b)金型および反転金型を準備するステップ。なお、この金型は、2つ以上のパーツで形成されており、上記2つ以上のパーツは、履物の外形全体(つまり上部および)を内側に複製し、履物の上部を形成することとなる上記部品の輪郭に対応する輪郭を有する領域を有する。また、金属製靴型の形状を有する上記反転金型は、履物の上部および履物の下部の容積に対応することとなる窪みを金型の内側面で規定する。
・c)履物の上部を形成することとなる上記部品を、金型の内側に規定される領域内に設置するステップ。なお、上記部品が該領域から突出して窪みおよび経路を規定する。
・d)すべての窪みと、上部を形成することとなる上記部品によって規定され、上記部品に接触する経路とを満たすまで、溶融した状態の熱可塑性物質を金型に注入するステップ。
・e)上記金型を開き、反転金型を構成する靴型を取り出し、こうすることによって、完成した履物を提供するステップ。
【0007】
上記のステップを有する本発明の方法は、従来の方法のほぼすべての工程を不要にし、これにより、手作業のコストを大幅に削減することが可能になる。
【0008】
本発明の方法では、金型を形成するパーツの内側面が、上記履物の上部および履物の下部を含めた、履物の全形を複製する。上記上部を複製する領域は、わずかな高さのリブによって離間している領域を備えた立体形状を有する。また、この領域では、厚さがリブより大きい上部の各部品が設置されている。これらの部品は、履物の下部に対応する容積を含む、経路および窪みのネットワークを規定する。溶融した状態の熱可塑性物質を注入すると、該ネットワークは、上部の部品に接触する骨格を構成し、該部品間の接合手段として作用し、同時に、この骨格が接続される履物の靴底部(つまりソール部)を形成する。
【0009】
上部を形成することとなる部品を受けることを目的とし、上記リブによって規定される領域は、熱可塑性物質注入時に該部品を確実に配置するために、該部品を固定するための固定手段を有してもよい。これらの固定手段は、例えば、固定能力が比較的低く、上記領域の表面の少なくとも一部を覆う粘着性塗膜からなっていればよい。上記固定手段は、上記領域の表面から突出する、小さな針のような小さな尖った突出部からなっていて、履物の上部を形成することとなる上記部品の厚さ未満の高さを有していてもよい。
【0010】
上部を形成することとなる部品は、金型を開く際に反転位置に設置される。上部のすべての部品が設置されると、金型を形成する複数のパーツが、反転金型のごとく作用する金属製靴型上で結合されて、この金型セットは、溶融した状態の熱可塑性物質を注入するために閉じられる。そして、注入された物質が硬化すると、金型は開けられ、靴型は履物から取り外され、形成された上部およびソール部を有する完成した履物が得られる。この履物は、概して従来の履物のような外観を有するが、縫い目がなく、したがって、履物の最上部の可視面の外観が異なるので、独自の特殊な特性を有する。
【0011】
縫ったり、鋲留めしたりすることなどによって、本発明の方法によって得られる履物に対して、その他の任意の部品を適用してかまわないことは自明である。
【0012】
本発明の方法では、例えば、靴型に向く銀面および流動体に向く内側に接触する皮革または織物の裏地に基づいて、注入に先立って、適切な物質を靴型の表面に塗布してもかまわない。、これにより、上部および裏地を有する履物が得られ、熱可塑性物質のリブも裏地と上部との間に隠れたままである。換言すれば、履物の内側を見ると、裏地だけが見え、上部の皮革の内側、および、上部の各部品を相互に接合する熱可塑性物質のリブは見えない。この裏地において縫に目を使用して、裏地を形成してもよい。
【0013】
〔図面の簡単な説明〕
本発明の製造方法を、非限定的な例としての添付図面に示す。
【0014】
図1は、本発明に係る履物を製造するために使用する金型の平面図である。
【0015】
図2は、金型と、反転金型のごとく作用する靴型との、図1の断面線II−IIに沿った縦方向の断面図である。
【0016】
図3は、図2のAの詳細を拡大して示す図である。
【0017】
図4は、履物の上部の一部を形成する各部品の位置を示す側面図である。
【0018】
図5は、図2の組み合わせ可能な靴型と踵部とからなる靴型セットに熱可塑性物質を注入すると得られる、リブと履物の下部とのネットワークを示す図である。
【0019】
図6は、本発明の方法によって得られる履物を示す側面図である。
【0020】
〔一実施形態の詳細な説明〕
本発明の方法による履物の製造は、図1〜図3に示す金型および反転金型を用いて実施される。
【0021】
金型は、製造する履物の外側面を複製するものであり、上記履物には履物の下部が含まれる。上記金型は少なくとも2つのパーツ1および2で形成される。このパーツ1および2は、閉じると、履物の外形に対応する窪みを規定する。金型を、互いに結合可能な、より多数のパーツで形成することも可能である。
【0022】
金属製靴型3は、反転金型のごとく作用する。靴型の外側面と、金型を形成するパーツ1および2の内側面との間に、履物の上部および履物の下部を含めた履物の空間に対応することとなる空間が規定されるように、金属製靴型3は、パーツ1および2によって形成される金型の内側に収納される。
【0023】
図面に示す例では、型のパーツ1が、靴型3とともに、履物のソール部の窪みを規定し、パーツ2と靴型3との間に規定される空間が、上部の容積に対応することとなる。
【0024】
本発明によれば、パーツ2は、その内側面4上に、図3のリブによって離間し、規定される領域を有する。なお、内側面4は、履物の上部を形成することとなる各部品に対応する輪郭を有する。
【0025】
上記上部の各部品に対応する、該して図2および図3に部材番号4および5で示す金型のパーツ2の内側面のすべての領域には、部材番号7および8で示す、前もって裁断した、上部に対応する複数の部品が配置されている。なお、金型を閉じると靴型3によって閉じられる経路9が連続する部品7と8との間に規定されるように、これらの部品の厚さは、リブ6の高さより大きい。同時に、履物またはの周辺領域に対応することとなる窪み10が、靴型3とパーツ2との間に規定される。最後に、履物の下部の容積に対応する窪み11が、靴型3とパーツ1との間に規定される。
【0026】
例を挙げれば、図4は、経路9によって互いに離間した、履物の上部を形成することとなる互いに異なる複数の部品7、8、12、および13が取る相対的な位置を示している。
【0027】
上部を形成する上記各部品は天然皮革または合成皮革であってもよく、弾性材や装飾具を含んでいてもよく、いずれの場合にも、金型のパーツ2の内側面に形成される領域または窪みの中に設置される。
【0028】
上部のすべての部品を設置し、靴型を内側に入れた状態で金型を閉じると、溶融した状態の熱可塑性物質が注入される。これにより、図4に示す部品7、9、12、および13が配置されるリブとリブとの間に、金型と靴型との間に規定される経路9および窪み10および11のネットワークを介して、図5に示すような骨格が形成される。部品7、9、12、および13を除いた図5の骨格は、同じ注入工程において得られる履物の下部と共に、サンダルまたは類似の履物を構成することもできる。
【0029】
経路9および窪み10および11の形状が原因となって、さらに、リブ6が靴型3の表面に到達しないので、閉じた金型に注入された溶融した熱可塑性物質は、上部を形成する部品4および5に接触し、同部品4および5を接合するための手段として作用する。
【0030】
金型を開いて靴型5を取り出すと、例えば図6に示すような履物が得られる。この履物において、上部を形成することとなる部品7、8、12、13などは、介在するリブ14によって、また、図示する例の場合であれば、注入した熱可塑性物質によって形成された踵部およびソール部16の領域15によって、相互に取り付けられている。
【0031】
図6の履物は、金型を開いた際に得られる状態で、インソール部を履物に結合し、出来上がったものをクリーニングする準備ができているであろう(従来の方法では必要であったソール部縫合工程、組み立て工程、形成工程、接着工程は、いずれも不必要である)。
【0032】
上述のように、上部を形成する各部品の内側面に固定され、履物の裏地のごとく作用する塗膜を、靴型3の表面上に塗布してもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明に係る履物を製造するために使用する金型の平面図である。
【図2】図2は、金型と、反転金型のごとく作用する靴型との、図1の断面線II−IIに沿った縦方向の断面図である。
【図3】図3は、図2のAの詳細を拡大して示す図である。
【図4】図4は、履物の上部の一部を形成する各部品の位置を示す側面図である。
【図5】図5は、図2の組み合わせ可能な靴型と踵部とからなる靴型セットに熱可塑性物質を注入すると得られる、リブと履物の下部とのネットワークを示す図である。
【図6】図6は、本発明の方法によって得られる履物を示す側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに独立した複数の部品で形成される上部を備えた履物を製造する方法であって、
a)上記履物の上部を形成することとなる部品を裁断するステップと、
b)金型および反転金型を準備するステップであって、上記履物の上部および履物の下部の容積に対応する空間が上記金型と反転金型との間に規定され、
上記金型は2つ以上のパーツで形成されており、上記2つ以上のパーツは、履物の外形を内側に複製するものであり、履物の上部を形成することとなる上記部品の輪郭に対応する輪郭を有する領域を有しており、
金属製靴型の形状を有する上記反転金型が、金型を形成する上記部品の内側面によって、履物の上部および履物の下部に対応する容積を規定するステップと、
c)履物の上部を形成することとなる上記部品を、金型の内側に規定される上記領域内に設置するステップであって、上記部品が該領域から突出して窪みおよび経路を規定するステップと、
d)上記金型と反転金型との間に形成されたすべての窪みと、上部を形成することとなる上記部品によって規定され、上記部品に接触する経路とを満たすまで、溶融した状態の熱可塑性物質を金型に注入するステップと、
e)上記金型を開き、反転金型を構成する靴型を取り出すステップとを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
上記領域が、上部を形成することとなる上記部品の厚さ未満の高さを有する複数のリブによって規定され、
上記金型を閉じると、該リブが靴型の表面から離間することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記領域の表面が、履物の上部を形成することとなる上記部品を固定するための固定手段を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記固定手段が、固定能力が比較的低く、上記領域の表面の少なくとも一部を覆う粘着性塗膜からなることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記固定手段が、上記領域の表面から突出する小さな尖った突出部からなっており、履物の上部を形成することとなる上記部品の厚さ未満の高さを有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−521314(P2012−521314A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501326(P2012−501326)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/ES2010/000108
【国際公開番号】WO2010/109032
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(511232651)
【氏名又は名称原語表記】SIMPLICITY WORKS EUROPE,S.L.
【住所又は居所原語表記】C/ Juan Manuel de la Morena,2−entlo.E−03205 Elche,Alicante,Spain
【Fターム(参考)】