工作機械
【課題】
回転テーブルの振動を検出するための振動センサを新たに設ける必要が無く、回転テーブルに回転アンバランスが生じた場合に生じる回転テーブルの振動を正確に検出することができる工作機械を提供する。
【解決手段】
回転テーブル30は回転アンバランスが生ずると、回転速度とアンバランス量に応じて振動する。このときの振動はボールネジ16を介して、X軸方向の位置ドループの変動として現れる。回転テーブル30の遠心力と、回転テーブル30の振動時の振幅の間には、相関があり、前記遠心力とX軸方向の位置ドループにも相関がある。すなわち、前記振幅とX軸方向の位置ドループには相関があり、X軸方向の位置ドループの変動量を主制御部110が監視し、回転テーブル30の振動を検出する。
回転テーブルの振動を検出するための振動センサを新たに設ける必要が無く、回転テーブルに回転アンバランスが生じた場合に生じる回転テーブルの振動を正確に検出することができる工作機械を提供する。
【解決手段】
回転テーブル30は回転アンバランスが生ずると、回転速度とアンバランス量に応じて振動する。このときの振動はボールネジ16を介して、X軸方向の位置ドループの変動として現れる。回転テーブル30の遠心力と、回転テーブル30の振動時の振幅の間には、相関があり、前記遠心力とX軸方向の位置ドループにも相関がある。すなわち、前記振幅とX軸方向の位置ドループには相関があり、X軸方向の位置ドループの変動量を主制御部110が監視し、回転テーブル30の振動を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
回転テーブルを備えた工作機械では、例えば、回転テーブルは、直線方向に向かって進退移動自在に駆動されるとともに、モータにより、回転駆動されるようにされている。そして、前記工作機械では、刃物台に設けた工具により、回転テーブルに取付けられたワークの切削加工等が可能にされている(従来例)。
【0003】
特許文献1には、回転工具を備えた工具台を工作物に対して進退移動させるようにした工作機械が開示されているが、振動検出を具体的には開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−28858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来例では、回転テーブルに対するワークや、治具の取付けによっては、回転アンバランスが発生することにより、回転テーブルに振動が発生し、この状態で旋削加工を行うと、ワークが加工不良になる問題がある。又、振動によっては回転テーブルの破損(機械破損)が生じたり、強いてはワークの飛び出しが発生する可能性もある。
【0006】
ここで、従来例における問題を解消するために、回転テーブルの振動を検出する手段として、振動センサを回転テーブルに設けて、回転テーブルの回転アンバランスが生じて振動が発生した際に、その旨を報知することが考えられる。
【0007】
しかしながら、従来例では、振動センサを新たに設ける必要がある。
本発明の目的は、回転テーブルの振動を検出するための振動センサを新たに設ける必要が無く、又、回転テーブルに回転アンバランスが生じた場合に生じる回転テーブルの振動を正確に検出することができる工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、回転テーブルを回転駆動する回転駆動手段と、前記回転テーブルを移動方向に進退可能に駆動する移動駆動手段と、前記移動駆動手段を制御するために、位置フィードバックループを有するサーボ系を有する工作機械において、前記回転駆動手段にて回転中の前記回転テーブルの振動量を、前記サーボ系の位置フィードバックループに入力されて使用される入力値に基づいて検出する振動検出手段を備えたことを特徴とする工作機械を要旨としている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記振動検出手段は、前記入力値に基づいて前記サーボ系で算出される位置ドループの変動に基づいて回転テーブルの振動検出を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2において、前記入力値は、前記サーボ系に付与されて、前記回転テーブルを一定の位置に保持する位置指令と、前記回転テーブルの位置検出を行う位置検出手段からの出力信号であり、前記振動検出手段は、前記位置指令と、前記出力信号に基づき、前記サーボ系で算出された位置ドループの変動に基づいて振動検出を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、回転テーブルの振動を検出するための振動センサを新たに設ける必要が無く、又、回転テーブルに回転アンバランスが生じた場合に生じる回転テーブルの振動を正確に検出することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、回転テーブルの回転時の振動を、位置ドループの変動により、新たな振動検出のためのセンサを設けることなく、容易に検出することができる。
請求項3の発明によれば、回転テーブルを一定位置に保持した状態のとき、振動検出手段は、サーボ系が算出した位置ドループの変動量に基づいて振動検出を行うため、振動検出を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の複合加工機10の概略斜視図。
【図2】同じく加工制御装置100の電気ブロック図。
【図3】同じくX軸制御部200の制御ブロック図。
【図4】X軸駆動モータMx,ワーク主軸駆動モータMWS、及びそれらを制御する電気的構成の概略図。
【図5】回転テーブル30の振動検出プログラムを実行するときのフローチャート。
【図6】ワークが回転テーブルに対して偏位したときの遠心力Fxの説明図。
【図7】(a)はロータリエンコーダのパルスカウンタの説明図、(b)は、X軸駆動モータMxの位置ドループの説明図。
【図8】危険検知閾値γ1及び、不良検知閾値γ2の説明図。
【図9】(a)は、振幅と回転速度との相関を示す特性図、(b)は、X軸の位置ドループと、回転速度との相関を示す特性図。
【図10】(a)は、振幅と遠心力との相関を示す特性図、(b)は、X軸の位置ドループと、遠心力との相関を示す特性図。
【図11】振幅とX軸の位置ドループとの相関を示す特性図。
【図12】遠心力とX軸の位置ドループとの相関を示す特性図。
【図13】回転テーブル30の平面図。
【図14】(a),(b)はバランサ40の取付状態を示す断面図。
【図15】(a)は通常のオリエント位置を示す説明図、(b)は、取付位置が作業者(オペレータ)前に位置した状態を示す説明図。
【図16】バランサの取付位置の説明図。
【図17】(a)は、ワークWと、バランサとが釣り合うときの説明図、(b)は理想的な取付角度(θ+π)と、取付角度(θ+π)に最も近い取付位置Pmにおける配置角度αmとの差βの説明図。
【図18】表示画面172の説明図。
【図19】第2実施形態のワークWと、バランサとが釣り合うときの説明図。
【図20】第2実施形態の表示画面172の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、まず、第1実施形態を図1〜図18を参照して説明する。
複合加工機10は、図1に示すように、ベッド12を有しており、ベッド12の上面には、リニアガイドレール14が複数個、X軸方向に平行に設けられている。これらリニアガイドレール14上には、ワーク支持装置20が設けられている。ワーク支持装置20は、ベース22等を有している。ベース22は、リニアガイドレール14にガイドされて、X軸方向に移動駆動自在な形で設けられている。X軸方向は、本発明の移動方向に相当する。
【0015】
又、ベース22下面には、ナット23(図4参照)が設けられており、該ナットがベッド12に設けられたボールネジ16に螺合されている。そして、ベース22は、ベッド12に設けられたX軸駆動モータMxにてボールネジ16が正逆回転されることにより、X軸方向において、進退可能に、すなわち往復移動可能とされている。X軸駆動モータMxは、移動駆動手段に相当する。
【0016】
ベース22上には、円盤状に形成された回転テーブル30がZ軸に平行なC軸を回転中心として旋回駆動自在に設けられている。図4に示すようにベース22には、回転駆動手段としてのワーク主軸駆動モータMWSが設けられており、回転テーブル30を旋回駆動する。回転テーブル30の上部には、ワークWを搭載するワーク搭載面32が形成されている。図4及び図13に示すように、ワーク搭載面32上には、複数の治具34が搭載されている。治具34は、回転テーブル30の回転中心(C軸)を中心にして、略放射状に延びたガイド溝35に対して、往復移動自在に、かつ、ワーク搭載面32に対して、図示しない固定手段にて固定保持可能にされている。該治具34により、ワークWが、着脱自在に保持可能とされている。ワークW及び、治具34は、回転テーブル搭載物に相当する。
【0017】
又、図13、図14(a),図14(b)に示すように、ワーク搭載面32上には、回転テーブル30の回転中心(C軸)を中心にして、放射状に延びたバランサー用の取付溝36が形成されている。このように回転テーブル30の回転中心(C軸)を中心にして、放射状に取付溝36が設けられていることにより、各取付溝36は、回転テーブル30の後述するオリエント位置からの、配置角度α(図13参照)が互いに異なるようにされている。取付溝36は、バランサ取付部に相当する。各取付溝36は、図14(a)及び図14(b)に示すように、下部に幅広部を有し、上部に幅狭部を有して、断面が逆T字状に形成されており、回転テーブル30の周面とワーク搭載面32において、開口されている。取付溝36には、取付部材としてのボルト37の頭部37aが、回転テーブル30の周面の開口から挿入可能とされており、該ボルト37が、取付溝36の長さ方向に摺動自在とされている。
【0018】
又、該ボルト37の頭部37aは、取付溝36下部の幅広部に形成された段部36aに係合されて、ワーク搭載面32側の開口からは抜け出し不能とされている。ボルト37は、取付溝36に挿入された際、先端がワーク搭載面32から突出され、バランサ40に設けられた貫通孔42に挿入されるようにされている。なお、バランサ40には、複数の貫通孔42が形成されており、各貫通孔42にボルト37が挿入可能である。又、取付溝36に挿入されたボルト37は、バランサ40が挿入された状態で、その先端がバランサ40から突出可能とされており、該先端にナット44が取り外し可能に螺着可能である。
【0019】
図1に示すようにベッド12上には、リニアガイドレール14を跨ぐように門形状のコラム50が設けられている。コラム50の前面には、ガイド手段としての複数個のリニアガイドレール54が上下方向であるZ軸方向に平行に設けられている。リニアガイドレール54上には、サドル52がZ軸方向に移動駆動自在に設けられている。又、サドル52のコラム50側の側面には、図示しないナットが設けられており、該ナットがコラム50に設けられた複数のボールネジ(図示しない)に対してそれぞれ螺合されている。そして、サドル52は、コラム50上面に設けられた複数のZ軸駆動モータMzにてボールネジ(図示しない)が正逆回転されることにより、Z軸方向において往復移動可能とされている。
【0020】
サドル52の反コラム側側面には、リニアガイドレール58が複数個、Y軸方向に平行に設けられている。リニアガイドレール58上には、ヘッド支持装置60が設けられている。ヘッド支持装置60は、リニアガイドレール58にガイドされて、Y軸方向に移動駆動自在に設けられている。ヘッド支持装置60のサドル52側の側面には、図示しないナットが設けられており、該ナットがサドル52に設けられたボールネジ59に対して螺合されている。そして、ヘッド支持装置60は、サドル52に設けられたY軸駆動モータMyにてボールネジ59が正逆回転されることにより、Y軸方向において往復移動可能とされている。ヘッド支持装置60の下部には、工具主軸ヘッド70が、Y軸に平行なB軸を回転中心として旋回駆動自在に設けられている。すなわち、ヘッド支持装置60には、B軸駆動モータMb(図2参照)が設けられており、該B軸駆動モータMbにより、工具主軸ヘッド70が、回動される。工具主軸ヘッド70には、ビルトイン型の工具主軸モータMTS(図2参照)を備えており、該工具主軸モータMTSにて図示しないスピンドルが回転駆動可能とされている。又、工具主軸ヘッド70には、旋削加工を行うための加工工具が資癒着可能になっており、該加工工具を取り付けた状態で、図示しないロック機構により、特定角度でロック可能である。
【0021】
複合加工機10には、図2に示すCNC制御装置としての加工制御装置100が装着されている。同図に示すように加工制御装置100は、CPUからなる主制御部110を有している。主制御部110にはバス線105を介して加工プログラムメモリ120、システムプログラムメモリ130、バッファメモリ140、加工制御部150、キーボード等を有する操作盤160、液晶表示装置等からなる表示部170等が接続されている。主制御部110は、回転テーブル30の移動方向(本実施形態ではX軸方向)の位置制御手段に相当する。又、主制御部110は、振動検出手段、算出手段、バランサ取付角度算出手段、取付位置選択手段、選択結果出力手段、及びバランサ重量算出手段に相当する。表示部170は表示手段に相当する。
【0022】
又、主制御部110には、バス線105を介して、X軸制御部200、Y軸制御部210、Z軸制御部220、B軸制御部230、及びワーク主軸制御部240が接続されている。なお、Z軸制御部220、及び駆動回路222は、Z軸駆動モータMzの数と同じ個数分設けられているが、図2では、説明の便宜上、Z軸制御部220は、1つのみ図示し、他のものは省略している。各軸制御部は、主制御部110の各軸(5軸)の移動指令を受けて、各軸の移動指令を駆動回路202,212,222,232,242に出力する、各駆動回路は、この移動指令を受けて、各軸のモータ(X〜Z、B,及びワーク主軸駆動モータ)を駆動する。
【0023】
各軸のモータ(X〜Z、B,及びワーク主軸駆動モータ)には、位置検出器としてのロータリエンコーダ204,214,224,234,244が付設されている。各ロータリエンコーダは、各軸のモータの回転量に応じた出力パルスを各軸制御部(200,210,220,230,240)に出力する。これらの出力パルスは、それぞれの軸の位置フィードバック信号や、速度フィードバック信号の生成に利用される。ロータリエンコーダ204は、回転テーブル30の移動方向(本実施形態では、X軸方向)の位置検出手段に相当し、その出力パルスは出力信号に相当する。
【0024】
主制御部110は、回転テーブル30を停止させる際、ワーク主軸制御部240に対して、オリエント位置に停止させるための制御信号を、システムプログラムメモリ130に格納されたシステムプログラムにより、出力可能とされている。ワーク主軸制御部240は、この制御信号に基づいて、回転テーブル30を一定の回転停止位置(すなわち、オリエント位置)に位置させることが可能である。
【0025】
次に、本発明の特徴的な構成である、X軸制御部200を説明する。図3は、X軸制御部200の制御ブロック図を示している。
X軸制御部200は、速度検出部203、位置制御部205、速度制御部206、電流制御部207、及びラッチ部208を備えている。速度検出部203はロータリエンコーダ204の出力パルス(位置フィードバック)から速度フィードバックを作成する。位置制御部205は主制御部110からの位置指令とロータリエンコーダ204からの出力パルス(位置フィードバック)より速度指令を作成する。ここで,位置指令と位置フィードバックとの差を位置ドループといい、減算器205aにて算出される。前記位置指令及び、位置フィードバックは、本発明の位置フィードバックループに入力される入力値に相当する。このようにして、X軸制御部200は、位置フィードバックループを備えるサーボ系が構成されている。
【0026】
速度制御部206は前記速度指令と前記速度フィードバックとの差が零となるように電流指令を作成する。このようにして、X軸制御部200は、速度フィードバックループを備える。電流制御部207は前記電流指令と、後述する電流検出部(図3参照)が検出した電流値との誤差が零となるように電圧指令を作成する。なお、前記電流検出部は、図2では図示を省略しているが、駆動回路202からX軸駆動モータMxに対して流れる電流の大きさ(電流値)を検出するものである。このようにしてX軸制御部200は、電流フィードバックループを備えている。ラッチ部208は、位置制御部205で、その時々に算出された位置ドループをラッチし、主制御部110に出力する。
【0027】
なお、他のモータ(Y,Z、B,及びワーク主軸駆動モータ)の各制御部は、ラッチ部が省略されているだけであるため、詳細な説明は省略する。
駆動回路202は、前記電圧指令から実際のX軸駆動モータMxに印加する電圧を生成するインバータ回路からなり、パワー増幅を行う。他のモータ(Y,Z、B,及びワーク主軸駆動モータ)の各駆動回路は、駆動回路202と同じ構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0028】
又、主制御部110には、バス線105を介して、工具主軸制御部250が接続されている。工具主軸制御部250は、主制御部110からスピンドル回転指令を受けて、駆動回路252にスピンドル速度信号を出力する、駆動回路252は、このスピンドル速度信号に基づいて、工具主軸モータMTSをスピンドル回転指令に対応した回転速度で回転し、スピンドルと一体に回転する切削工具を回転させる。
【0029】
(実施形態の作用)
さて、上記のように構成された複合加工機10の回転テーブル30が回転したときの、振動検出の仕方を説明する。
【0030】
図5は、回転テーブル30の振動検出プログラムを実行するときのフローチャートである。図4は、X軸駆動モータMx,ワーク主軸駆動モータMWS、及びそれらを制御する電気的構成の概略図である。この振動検出プログラムは、システムプログラムメモリ130に格納されており、例えば、加工プログラムメモリ120に格納された種々の加工プログラムが実行される前に主制御部110の制御により実行される。なお、説明の便宜上、最初、回転テーブル30には、治具34にて、ワークWが保持されているものとし、バランサ40は、回転テーブル30には取着されていないものとする。又、ベース22は、初期位置(加工開始前の原点位置)に位置しているものとする。
【0031】
(S10)
S10では、主制御部110からのX軸方向の位置指令をX軸制御部200が受けると、X軸制御部200は、受けた位置指令に基づいてX軸駆動モータMxを駆動制御し、ベース22を初期位置からX軸方向に沿って移動させる。そして、X軸制御部200は、ロータリエンコーダ204の出力パルスを入力し、該出力パルスに基づいて位置フィードバック制御を行い、前記位置指令に相当する位置に、ベース22が移動したかを判定する。S10において、ベース22が、位置指令に対応した位置に位置(移動が完了)すると、主制御部110が出力する位置指令は、その停止した位置である一定の位置に保持する位置指令となる。
【0032】
なお、S10において、回転テーブル30が、X軸方向において、前記位置指令に対応する位置に位置している状態(すなわち、一定の位置に位置している状態)においても、X軸制御部200は、入力するロータリエンコーダ204からの出力パルスに基づく位置フィードバックと、前記位置指令との位置ドループを算出している。因みに、この回転テーブル30が、X軸方向において、前記位置指令に相当する位置に位置している状態で、回転テーブル30が、振動していない場合は、位置ドループは、0となる。
【0033】
(S20)
続いて、S20では、主制御部110から速度指令をワーク主軸制御部240に出力する。この速度指令は、所定の回転速度(すなわち、目標回転速度)になるように回転させるための指令である。ワーク主軸制御部240は、この速度指令と、ロータリエンコーダ244の出力バルスに基づいて、ワーク主軸駆動モータMWSを速度フィードバック制御する。
【0034】
(S30)
主制御部110は、前記速度指令を出力した後、目標回転速度に達するまでは、S30の危険検知ドループ監視処理を行う。ここで、主制御部110が行う振動検出について説明する。
【0035】
(振動検出)
回転テーブル30は、X軸上の定位置に位置(停止)している状態で、回転アンバランスが生ずると、回転テーブル30の回転速度とアンバランス量に応じて回転テーブル30が振動する。すなわち、回転テーブル30に働く遠心力の大きさに応じて振動の大きさも変化し、このときの振動はボールネジ16を介して、X軸方向の位置ドループの変動として現れる。回転テーブル30の遠心力と、回転テーブル30の振動時の振幅の間には、相関があり、又、前記遠心力と、X軸方向の位置ドループにも相関がある。言い換えると、前記振幅とX軸方向の位置ドループには相関があり、X軸方向の位置ドループの変動量を監視することにより、回転テーブル30の振動を検出することが可能である。
【0036】
図9(a)は、回転テーブル30の遠心力とX軸方向の振幅との相関関係を示す測定例を表している。図9(a)では、ワークWが回転テーブル30に対して偏心しない場合から、偏心量1〜4mmまで1mm毎に偏心した例(A〜E)であり、縦軸は測定して得た振幅を、横軸は、回転テーブル30の回転速度(m-1)である。
【0037】
図9(b)は、同じくA〜Eで示す例において回転テーブル30のX軸方向の位置ドループと、回転速度との相関関係を示している。同図において、縦軸は測定して得たX軸方向の位置ドループを、横軸は回転テーブル30の回転速度(m-1)である。このようにして各例において、測定して得られた数値に基づいて、遠心力を、下記計算式で算出し、前記振幅と遠心力の相関関係を示す図10(a)に、及びX軸方向の位置ドループと遠心力の相関関係を示す図10(b)に示す。
【0038】
遠心力[kN]=(π2・m・r・n2)/(9×108)
なお、上記式中、mはワークWの質量[kg]、rはワークWの回転テーブル30の回転中心(C軸)からの偏心量[mm]、nは回転テーブル30の回転速度[min-1]である。
【0039】
図10(a)、図10(b)の結果に基づいて、図11には、振幅と位置ドループとの相関関係を示す特性図を示している。同図では、縦軸に振幅、横軸にX軸方向の位置ドループをとっている。
【0040】
上記のように、振幅と位置ドループとは、密接な関係にあり、位置ドループを監視することにより振幅の大きさを正確に推定できるため、本実施形態での危険検知ドループ監視処理は、位置ドループの変動を監視するようにしている。ここで、位置ドループをDxで表すと、回転テーブル30の振動によって、位置ドループDxは正負の符号を有する。このため、主制御部110は、ラッチ部208からその時々に入力された位置ドループの絶対値(|Dx|)が、閾値及び第1閾値としての危険検知閾値γ1以下か否かを判定するようにしている。なお、危険検知閾値γ1は、後述する閾値及び第2閾値としての不良検知閾値γ2より、大きな値とされている(図8参照)。これは、回転テーブル30が、目標回転速度まで達するまでは回転テーブル30には加速度が加わり、ワークWの偏心量の程度により、目標回転速度で一定速回転となる場合よりは、振動が大きくなるため、許容できる振幅の範囲を大きくするためである。
【0041】
S30において、位置ドループの絶対値(|Dx|)が危険検知閾値γ1以下であれば、S40に移行し、位置ドループの絶対値(|Dx|)が危険検知閾値γ1を超えていればS70に移行する。
【0042】
なお、図8において、加速回転時危険検知領域が、位置ドループの変動を危険検知閾値で判定される時間帯を示している。
(S40)
S40では、主制御部110は、回転テーブル30の回転速度が、目標回転速度に達しているか否かを判定する。なお、回転テーブル30の回転速度は、ロータリエンコーダ244の出力パルスに基づいて算出される。S40で、回転テーブル30の回転速度が前記目標回転速度に達していない場合には、主制御部110は、S30に戻り、回転テーブル30の回転速度が前記目標回転速度に達した場合には、その回転速度を保持するように、すなわち、等速回転するように目標回転速度の速度指令をワーク主軸制御部240に出力し、S50に移行する。
【0043】
(S50)
S50では、主制御部110は、不良検知ドループ監視処理を行う。不良検知ドループ監視処理は、回転テーブル30が目標回転速度(すなわち、等速)で回転している場合に、X軸制御部200のラッチ部208にてその時々にラッチされて出力される位置ドループの変動を監視する処理である。主制御部110は、位置ドループの絶対値(|Dx|)が不良検知閾値γ2以下であれば、S60に移行し、位置ドループの絶対値(|Dx|)が不良検知閾値γ2を超えていればS70に移行する。
【0044】
(S60)
S60では、主制御部110は、回転テーブル30の回転が、予め設定された回転数分回転をしたか、否かを判定する。この設定回転数は、例えば、数回転であれば十分である。図8において、「速度到達」してから開始される等速回転時不良検知領域が、予め設定された回転数分の回転した時間に相当する。
【0045】
主制御部110は、ロータリエンコーダ244の出力パルスをカウントする図示しないパルスカウンタを備えている。図7(a)に示すように該パルスカウンタは、60/Nの間に入力されるロータリエンコーダ244の出力パルスをカウントし、そのカウントした値が、所定数(=h)に達すると、リセット(=0)して、カウントを再開する。Nは、回転テーブル30の回転速度[min-1]である。該パルスカウンタが、前記出力パルスを所定数カウントする毎に、主制御部110の図示しない回転数カウンタは、回転テーブル30の回転数のカウント値を1つインクリメントするようにしている。そして、回転数カウンタのカウント値が、予め設定回転数に達しない場合には、S60の判定を「NO」として、S30に戻る。又、回転数カウンタのカウント値が予め設定回転数に達したとき、主制御部110は、S60の判定を「YES」として、この振動検出プログラムを終了する。
【0046】
なお、本実施形態では、S60において「NO」と判定した場合に、S30に戻るようにしているが、S50に戻るようにしてもよい。
(S70、S80)
S70及びS80は、S30において、位置ドループの絶対値(|Dx|)が、危険検知閾値γ1を超えたか、又はS50において、位置ドループの絶対値(|Dx|)が、不良検知閾値γ2を超えた場合の処理である。そのため、S70で、主制御部110は回転テーブル30の回転をオリエント位置で停止すべく、ワーク主軸制御部240に停止制御信号を出力し、S80では、異常である旨の報知信号としてアラーム信号を表示部170に出力する。この結果、停止制御信号に基づく、ワーク主軸制御部240の制御により、ワーク主軸駆動モータMWSが停止制御されて回転テーブル30が、回転停止を行う。この結果、回転テーブル30は、オリエント位置に停止し、表示部170は、回転を停止した旨、及び振動がある旨等の警告表示を行う。ここで、前記停止制御信号及びアラーム信号は、回転テーブル30が異常である旨の信号に相当する。
【0047】
(S90)
続く、S90において、主制御部110は、バランサ取付角度等の算出処理を行う。バランサ取付角度等の算出処理は、ワーク重量Mと芯ずれ量Rの積であるアンバランス量MRの算出」、「芯ずれ角度θの算出」、及び「バランサ取付角度(θ+π)の算出」を含んでいる。アンバランス量MR及び芯ずれ角度θは、芯ずれ物理量に相当する。
【0048】
(アンバランス量MRの算出)
アンバランス量MRの算出の方法について説明する。なお、以下に説明中の式の中の記号は、下記の意味である(図6参照)。
【0049】
R:ワーク芯ずれ量[m]、N:回転テーブル30の回転速度[min-1]、ω:回転テーブル30の角速度[rad/s]、M:ワークWの重量[kg]、Fx:X軸方向にかかる遠心力、Dx:X軸駆動モータMxの位置ドループ、θ:オリエント位置からのワークWの芯ずれ角度[rad]、t:時間
なお、ワーク重量Mは、予め操作盤160を介して入力され、バッファメモリ140に格納され、システムプログラムが実行される際に、読み出される。
【0050】
まず、X軸方向にかかる遠心力は、(1)式、(2)式で求められる。
【0051】
【数1】
【0052】
【数2】
又、X軸方向の遠心力の最大値は、X軸方向の位置ドループ最大値の多項式Fxmaxで推定できる。図12は、本実施形態の複合加工機10に関して、X軸方向の位置ドループと遠心力の相関関係を示す図であり、前記図10(b)と実質は同じものであるが、縦軸を遠心力に、横軸を位置ドループとしたものである。図12で示される曲線は、(3)式の多項式Fxmaxで示される曲線である。この多項式Fxmaxは予め試験により得られた試験データに基づいて、求められ、システムプログラムメモリ130に格納されている。
【0053】
【数3】
上記(1)〜(3)式により、(4)式が、導出されるため、主制御部110は、(4)式を使用してアンバランス量MRを算出する。
【0054】
【数4】
(芯ずれ角度θの算出)
次に、主制御部110は、オリエント位置からの芯ずれ角度θを(5)式を使用して算出する。
【0055】
【数5】
Δtについて説明する。なお、本実施形態では、回転テーブル30のオリエント位置は、パルスカウンタが0にリセットされた位置とされている。図7(b)は、X軸駆動モータMx(X軸方向)の位置ドループの変動を示している。Δtは、同図に示すように、位置ドループDxの波高値に達した時点から、図7(a)のパルスカウンタが0にリセットした時点までの時間とされている。
【0056】
そして、主制御部110は、回転テーブル30において、バランサを取付けする角度(バランサ取付角度)を後述のように算出する。図15(a)は、回転テーブル30がオリエント位置に停止している状態を示している。図1の複合加工機10の概略斜視図では図示していないが、図15(a)に示すように、回転テーブル30のX軸方向の移動軌跡に沿うように、仕切壁500及びマシンドア510が配置されている。作業者は、マシンドア510を開けることにより、回転テーブル30に対してワークWやバランサ40の取付けや取り外し作業を行うことが可能とされている。又、マシンドア510を開けたとき、マシンドア510が開けられた空間とその周辺域は、作業者が位置することができる作業エリアArとされている。
【0057】
本実施形態では、回転テーブル30に回転アンバランスが生じた際に、バランサ40の回転テーブル30に対する好適な取付部位(取付溝36)を、このマシンドア510に、相対又は近接するように、ワーク主軸駆動モータMWSを制御する。具体的には、主制御部110は、算出した芯ずれ角度θに基づいて、バランサ取付角度(θ+π)を算出するとともに、そのバランサ取付角度(θ+π)を有する取付部位が、このマシンドア510に、相対又は近接する角度、すなわち、オリエント位置からの回転テーブルの回転角度(π/2−θ)を算出する。そして、回転角度(π/2−θ)に基づいて、主制御部110は、ワーク主軸駆動モータMWSを制御する。この結果、マシンドア510に、バランサ取付角度(θ+π)を有する取付部位(取付溝36)が、このマシンドア510に、相対又は近接する(図15(b)参照)。
【0058】
本実施形態では、バランサを1個使用して回転テーブル30の回転アンバランスを抑制するように補正しているため、この場合の補正方法、すなわち、バランサの取付部位の選択について説明する。図16は、バランサの取付部位の位置、すなわち取付位置の説明図である。又、図17(a)は、ワークWと、バランサとが釣り合うときの説明図である。図17(b)は、理想的なバランサ取付角度(θ+π)と、その取付角度(θ+π)に最も近いバランサの取付位置Pmの配置角度αmとの差βの説明図である。なお、回転テーブル30のバランサを取付可能な取付位置をPn、オリエント位置からその取付位置までの角度をαnとする。図16の例では、回転テーブル30が、オリエント位置に停止した状態で、取付可能な位置の数を12個とし、n=0,1,…,11である。mは、実際に取付する位置を示している。又、下記の式で使用される記号は、下記の通りである。
【0059】
rn:回転中心から取付位置までの距離[m]、mn:バランサ重量[kg]、αn:オリエント位置からバランサの取付位置までの角度[rad]、R:ワーク芯ずれ量[m]、M:ワークWの重量[kg]、θ:オリエント位置からのワークWの芯ずれ角度[rad]
まず、主制御部110は(6)式にて、取付けするバランサ40の重量を算出する。
【0060】
【数6】
rmは、バランサを取付けする場合の、回転テーブル30の回転中心(C軸)からバランサまでの距離であり、予めシステムプログラムメモリ130に格納されている。又、オリエント位置からの回転テーブル30上におけるバランサの取付可能な取付位置Pnの角度αnは、固定値としてシステムプログラムメモリ130に予め格納されている。
【0061】
主制御部110は、各Pnの角度αnと、バランサの理想的な取付角度(θ+π)の差βをそれぞれ算出し、その絶対値が最も小さい値となる位置を、(θ+π)に最も近い取付位置Pmとする。このように、バランサの理想的な取付角度(θ+π)に最も近い取付位置Pmを探索するために差βの算出が下記の(8)式にて行われる。
【0062】
この場合、バランサの理想的な取付角度(θ+π)に最も近い取付位置Pmで、バランサを取付けした後の回転アンバランスにより生じる遠心力FAは、(7)式で求まる。
【0063】
【数7】
【0064】
【数8】
主制御部110は、バランサの理想的な取付角度(θ+π)を算出すると、差βが下記バランス条件を満足しているか否かを判定する。
【0065】
−π/3<β<π/3
差βが上記バランス条件を満たしていれば、遠心力FAは、バランサ取付前の遠心力MRω2より小さくなって、振動を抑制できる。又、差βが上記バランス条件を満たしていない場合、逆にアンバランスが大きくなる。
【0066】
なお、上記バランス条件は下記のことから導出される。
バランサ取付前の遠心力は、MRω2であるから、(7)式がMRω2より小さくなれば、振動が抑制できる。(7)式をMRω2より小さくするためには、|2sinβ/2|<1である必要があり、この式から、|sinβ/2|<1/2が導出される。そして、この関係を満足するためには、−π/6<β/2<π/6が算出され、この式から、−π/3<β<π/3となる。
【0067】
ここで、話を元に戻して、本実施形態では、主制御部110は、前述したように、回転角度(π/2−θ)に基づいて、最も近い取付位置Pm(すなわち、差βが最も小さい取付溝36)を、マシンドア510に相対又は近接するように、ワーク主軸制御部240に選択信号としての制御信号を出力する。この結果、ワーク主軸駆動モータMWSが駆動制御されて、回転テーブル30がオリエント位置から回転されて停止する。
【0068】
図15(b)は、(θ+π)に最も近い取付位置Pmをマシンドア510に相対させた場合を示している。なお、図15(b)では、説明の便宜上、β=0の場合を図示している。
【0069】
(S100)
S100では、主制御部110は、S90で算出した結果に基づいて、補正方法を表示する表示信号を、表示部170に出力する。具体的には、差βが前記バランス条件を満足する場合、補正に使用するバランサ40のバランサ重量m1(=mm)、回転テーブル30の回転中心からのバランサ40を取付する距離r1(=rm)、及び選択結果である、取付溝36(取付部位)の角度θ1(=αm)を示す信号を主制御部110は、表示信号として出力する。表示部170は、この表示信号に基づいて表示部170に補正方法を表示する。又、前記各種データに基づいて、主制御部110は、表示部170に対して制御信号を出力し、表示画面172に、回転テーブル30に対するバランサの配置を示す表示を行わせる。主制御部110は、この補正方法を表示部170に表示した後、このフローチャートを終了する。図18に、表示部170の表示画面172には、例として、取付すべきバランサ40のバランサ重量m1(=mm)、距離r1(=rm)、取付部位の角度θ1(=αm)が示されている。
【0070】
この表示部170の表示画面172に表示された、バランサ重量mmにより、作業者は、この重量を備えたバランサ40を用意する。又、バランサ40が取付されるべき取付溝36は、マシンドア510に近接又は相対して配置されているため、作業者は、その取付溝36に対して、ボルト37を挿入するとともに、取付溝36から突出したボルト37の部位に対して、用意したバランサ40を貫通して取着する。そして、回転テーブル30の回転中心からの距離rmにバランサ40を移動した後、ナット44をボルト37に締め付けすることにより、バランサ40を回転テーブル30に対して固定する。
【0071】
又、差βが前記バランス条件を満足していない場合、主制御部110は、表示部170に、バランサの取付けでは、振動が抑制できないという注意喚起の旨の表示信号を出力する。表示部170は、この表示信号に基づいて、バランサでは補正できない旨と、ワークWの取付けを再度行う旨を表示する。
【0072】
以上のように構成された複合加工機によれば、回転テーブル30に対するワークWのアンバランス量MR、及び回転テーブル30のオリエント位置からの芯ずれ角度θを算出し、算出したワークWの芯ずれ角度θに基づいて、回転テーブル30におけるバランサ40のバランサ取付角度(θ+π)を算出する。このため、ワークWの回転テーブル30における振動抑制のためのバランサ40のバランサ取付角度(θ+π)を容易に得ることができる。さらに、本実施形態では、複数の取付溝36のうち、バランサ取付角度(θ+π)に最も近い配置角度αを有する取付溝36を選択するようにしているため、作業者はこの選択された取付溝36にバランサ40を取着すると、回転テーブル30の振動を容易に抑制できる。
【0073】
又、本実施形態では、アンバランス量MRに基づいて、バランサ重量mmを算出し、さらに、バランサ重量を表示部170で表示するため、取り付けるべきバランサ40の重量を作業者に容易に知らせることができる。又、本実施形態では、バランサ40を取り付けすべき対象の取付溝36を、表示部170に表示するようにしているため、バランサ40を取り付けすべき取付溝36を作業者に容易に知らせることができる。このため、作業者は表示された取付溝36に対して簡単にバランサ40を取付けすることができる。
【0074】
加えて、本実施形態の複合加工機10は、回転テーブル30の周囲の一部には、作業者が位置することが可能な作業エリアAr設けた。そして、回転テーブル30が停止した場合には、バランサ取付角度(θ+π)に最も近い取付溝36が作業エリアArに対応するように配置される。この結果、作業者は、作業エリアArに対応した取付溝36に対して容易にバランサ40を取付けできる。
【0075】
(第2実施形態)
次に第2実施形態を、図19及び図20を参照して説明する。なお、第2実施形態は、前記第1実施形態と、ハード構成は同じのため、同一構成については、同一符号を付してその説明を省略し、異なるところを中心に説明する。
【0076】
第2実施形態では、図5におけるS90及びS100における処理、すなわち、バランサ40の回転テーブル30に対する回転アンバランスの補正方法が異なっている。
第1実施形態では、バランサを1個のみ、回転テーブル30に対して取付することにより、行っている。この補正では、回転テーブル30の振動が許容値以内に抑制することは可能とはなっているが、理論上は振動をゼロにすることはできない。又、バランス条件があり、バランサ40の取付可能な位置との差βが(−π/3<β<π/3)に無ければ、振動を抑制できないことになる。
【0077】
第2実施形態では、バランサ40を2個、(9)式の条件を満たす取付位置Pm,Pm+1に取付けするようにしている。
【0078】
【数9】
取付位置Pnの回転中心(C軸)からの距離をrnとし、バランサ40の重量をmnとすると、図19に示すようにモーメントの釣り合いから、X軸方向においては、(10)式が成立し、Y軸方向では(11)式が成立する。
【0079】
【数10】
【0080】
【数11】
この連立方程式を、解くと、(12)式と(13)式が導出される。
【0081】
【数12】
【0082】
【数13】
第2実施形態では、主制御部110は、まず、バランサ取付角度(θ+π)を挟んで最も近いαm,αm+1を有する取付位置Pm,Pm+1を探索する。探索方法は、第1実施形態と同様に、各取付位置と、バランサ取付角度(θ+π)との差βをそれぞれ算出して、その差βの絶対値の大小関係に基づいて、バランサ取付角度(θ+π)よりも小なる配置角度αmと、大なる配置角度αm+1を有する取付位置Pm,Pm+1を選択する。
【0083】
そして、主制御部110は、(12)式、(13)式を演算して、取付位置Pm,Pm+1にそれぞれ取付するバランサ40のバランサ重量mm,mm+1を算出する。
なお、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、主制御部110は、「アンバランス量MRの算出」、「芯ずれ角度θの算出」、及び「バランサ取付角度(θ+π)の算出」は行っているものとする。
【0084】
又、第2実施形態は、S100では、主制御部110は、S90で算出した結果に基づいて、補正方法を表示する表示信号を、表示部170に出力する。
具体的には、補正に使用するバランサ40のバランサ重量m1(=mm)、m2(=mm+1)、回転テーブル30の回転中心からの距離r1(=rm),r2(=rm+1)、及び取付溝36(取付部位)の角度θ1(=αm),θ2(=αm+1)を示す信号を表示信号として出力する。なお、rm,rm+1の値は、予め予めシステムプログラムメモリ130に格納されている。表示部170は、この表示信号に基づいて表示部170に補正方法を表示する。又、前記各種データに基づいて、主制御部110は、表示部170に対して制御信号を出力し、表示画面172に、回転テーブル30に対するバランサの配置を示す表示を行わせる。主制御部110は、この補正方法を表示部170に表示した後、このフローチャートを終了する。図20には例として、表示部170の表示画面172に取付すべき2個のバランサ40のバランサ重量m1,m2、距離r1,r2、取付部位の角度θ1,θ2が示されている。
【0085】
この表示部170の表示画面172に表示された、バランサ重量mm,mm+1により、作業者は、この重量を備えた2個のバランサ40を用意する。又、各バランサ40が取付されるべき2つの取付溝36は、マシンドア510に近接又は相対して配置されているため、作業者は、各取付溝36に対して、ボルト37を挿入するとともに、取付溝36から突出したボルト37の部位に対して、用意したバランサ40をそれぞれ貫通して取着する。そして、回転テーブル30の回転中心からの距離rm,rm+1にバランサ40を移動した後、ナット44をボルト37に締め付けすることにより、各バランサ40を回転テーブル30に対して固定する。
【0086】
さて、第2実施形態では、主制御部110は、取付位置選択手段として複数の取付溝36のうち、バランサ取付角度(θ+π)よりも大なる配置角度(αm+1)であって、最も近い配置角度を有する取付溝36と、バランサ取付角度(θ+π)よりも小なる配置角度(αm)であって、最も近い配置角度を有する取付溝36を選択するようにした。そして、主制御部110は、選択結果出力手段として、その選択結果に応じた選択信号を表示部170に出力するようにした。この結果、バランサ取付角度(θ+π)を挟む位置に位置する、2つの取付溝36が選択され、その選択結果に応じた選択信号が主制御部110により出力されるため、作業者はこの選択された2つの取付溝36にバランサをそれぞれ取着すると、回転テーブル30の振動をゼロにすることができる。
【0087】
なお、本発明の実施形態は前記実施形態に限定するものではない。例えば下記のようにしてもよい。
○前記実施形態では、複合加工機10に具体化したが、複合加工機に限定するものではなく、回転テーブルを備えたものであればよい。又、回転テーブルが、位置ドループの変動量を振動検出に使用する場合は、一軸方向に移動するものに限定されるものではなく、X軸や、Y軸の2軸方向に移動するタイプのものに具体化してもよい。
【0088】
○前記実施形態では、S60において、回転テーブル30が、予め設定された回転数(設定回数)分回転をしたか否かを判定するようにした。この代わりに、予め設定された回転数分に相当する時間(不良検知時間)を経過した否かを判定するためにタイマを設け、このタイマで計時した時間が不良検知時間に達したか否かを主制御部110が判定するようにしてもよい。
【0089】
この場合、前記不良検知間は、例えば下記の計算式で算出するようにする。
不良検知時間[ms]=(設定回数[rev])×60000/(目標回転速度[min-1])
○ 前記実施形態では、バランサ取付部を取付溝としたが、バランサ取付部は取付溝に限定するものではなく、バランサを取着できるものであればよい。
【0090】
○ 第1実施形態では、作業エリアArを、作業者がバランサを取付けするための空間とした。この代わりに、作業エリアArをバランサ自動取付装置(図示略)がバランサを取付するための空間としてもよい。
【0091】
この場合、選択結果出力手段としての主制御部110は、前記バランサ自動取付装置に対して、算出したバランサ重量m1、回転テーブル30の回転中心からのバランサ40を取付する距離r1、及び選択結果である、取付溝36(取付部位)の角度θ1(=αm)を示すデータを出力する。バランサ自動取付装置は、前記重量のデータに基づいて、バランサ重量m1を有するバランサを選択する。又、バランサ自動取付装置は、前記距離及び角度のデータに基づいて取付部位の角度θ1に最も近い取付溝36において、回転テーブル30の回転中心から距離r1の箇所に、選択したバランサを取付けする。
【0092】
なお、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、作業エリアArを、作業者がバランサを取付けするための空間とした。この代わりに、作業エリアArをバランサ自動取付装置(図示略)がバランサを取付するための空間としてもよい。
【符号の説明】
【0093】
10…複合加工機
30…回転テーブル
36…取付溝36(バランサ取付部)
100…加工制御装置
110…主制御部(振動検出手段、出力手段、算出手段、バランサ取付角度算出手段、取付位置選択手段、選択結果出力手段、バランサ重量算出手段)
170…表示部(表示手段)
Mx…X軸駆動モータ(移動駆動手段)
α…配置角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
回転テーブルを備えた工作機械では、例えば、回転テーブルは、直線方向に向かって進退移動自在に駆動されるとともに、モータにより、回転駆動されるようにされている。そして、前記工作機械では、刃物台に設けた工具により、回転テーブルに取付けられたワークの切削加工等が可能にされている(従来例)。
【0003】
特許文献1には、回転工具を備えた工具台を工作物に対して進退移動させるようにした工作機械が開示されているが、振動検出を具体的には開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−28858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来例では、回転テーブルに対するワークや、治具の取付けによっては、回転アンバランスが発生することにより、回転テーブルに振動が発生し、この状態で旋削加工を行うと、ワークが加工不良になる問題がある。又、振動によっては回転テーブルの破損(機械破損)が生じたり、強いてはワークの飛び出しが発生する可能性もある。
【0006】
ここで、従来例における問題を解消するために、回転テーブルの振動を検出する手段として、振動センサを回転テーブルに設けて、回転テーブルの回転アンバランスが生じて振動が発生した際に、その旨を報知することが考えられる。
【0007】
しかしながら、従来例では、振動センサを新たに設ける必要がある。
本発明の目的は、回転テーブルの振動を検出するための振動センサを新たに設ける必要が無く、又、回転テーブルに回転アンバランスが生じた場合に生じる回転テーブルの振動を正確に検出することができる工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、回転テーブルを回転駆動する回転駆動手段と、前記回転テーブルを移動方向に進退可能に駆動する移動駆動手段と、前記移動駆動手段を制御するために、位置フィードバックループを有するサーボ系を有する工作機械において、前記回転駆動手段にて回転中の前記回転テーブルの振動量を、前記サーボ系の位置フィードバックループに入力されて使用される入力値に基づいて検出する振動検出手段を備えたことを特徴とする工作機械を要旨としている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記振動検出手段は、前記入力値に基づいて前記サーボ系で算出される位置ドループの変動に基づいて回転テーブルの振動検出を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2において、前記入力値は、前記サーボ系に付与されて、前記回転テーブルを一定の位置に保持する位置指令と、前記回転テーブルの位置検出を行う位置検出手段からの出力信号であり、前記振動検出手段は、前記位置指令と、前記出力信号に基づき、前記サーボ系で算出された位置ドループの変動に基づいて振動検出を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、回転テーブルの振動を検出するための振動センサを新たに設ける必要が無く、又、回転テーブルに回転アンバランスが生じた場合に生じる回転テーブルの振動を正確に検出することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、回転テーブルの回転時の振動を、位置ドループの変動により、新たな振動検出のためのセンサを設けることなく、容易に検出することができる。
請求項3の発明によれば、回転テーブルを一定位置に保持した状態のとき、振動検出手段は、サーボ系が算出した位置ドループの変動量に基づいて振動検出を行うため、振動検出を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の複合加工機10の概略斜視図。
【図2】同じく加工制御装置100の電気ブロック図。
【図3】同じくX軸制御部200の制御ブロック図。
【図4】X軸駆動モータMx,ワーク主軸駆動モータMWS、及びそれらを制御する電気的構成の概略図。
【図5】回転テーブル30の振動検出プログラムを実行するときのフローチャート。
【図6】ワークが回転テーブルに対して偏位したときの遠心力Fxの説明図。
【図7】(a)はロータリエンコーダのパルスカウンタの説明図、(b)は、X軸駆動モータMxの位置ドループの説明図。
【図8】危険検知閾値γ1及び、不良検知閾値γ2の説明図。
【図9】(a)は、振幅と回転速度との相関を示す特性図、(b)は、X軸の位置ドループと、回転速度との相関を示す特性図。
【図10】(a)は、振幅と遠心力との相関を示す特性図、(b)は、X軸の位置ドループと、遠心力との相関を示す特性図。
【図11】振幅とX軸の位置ドループとの相関を示す特性図。
【図12】遠心力とX軸の位置ドループとの相関を示す特性図。
【図13】回転テーブル30の平面図。
【図14】(a),(b)はバランサ40の取付状態を示す断面図。
【図15】(a)は通常のオリエント位置を示す説明図、(b)は、取付位置が作業者(オペレータ)前に位置した状態を示す説明図。
【図16】バランサの取付位置の説明図。
【図17】(a)は、ワークWと、バランサとが釣り合うときの説明図、(b)は理想的な取付角度(θ+π)と、取付角度(θ+π)に最も近い取付位置Pmにおける配置角度αmとの差βの説明図。
【図18】表示画面172の説明図。
【図19】第2実施形態のワークWと、バランサとが釣り合うときの説明図。
【図20】第2実施形態の表示画面172の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、まず、第1実施形態を図1〜図18を参照して説明する。
複合加工機10は、図1に示すように、ベッド12を有しており、ベッド12の上面には、リニアガイドレール14が複数個、X軸方向に平行に設けられている。これらリニアガイドレール14上には、ワーク支持装置20が設けられている。ワーク支持装置20は、ベース22等を有している。ベース22は、リニアガイドレール14にガイドされて、X軸方向に移動駆動自在な形で設けられている。X軸方向は、本発明の移動方向に相当する。
【0015】
又、ベース22下面には、ナット23(図4参照)が設けられており、該ナットがベッド12に設けられたボールネジ16に螺合されている。そして、ベース22は、ベッド12に設けられたX軸駆動モータMxにてボールネジ16が正逆回転されることにより、X軸方向において、進退可能に、すなわち往復移動可能とされている。X軸駆動モータMxは、移動駆動手段に相当する。
【0016】
ベース22上には、円盤状に形成された回転テーブル30がZ軸に平行なC軸を回転中心として旋回駆動自在に設けられている。図4に示すようにベース22には、回転駆動手段としてのワーク主軸駆動モータMWSが設けられており、回転テーブル30を旋回駆動する。回転テーブル30の上部には、ワークWを搭載するワーク搭載面32が形成されている。図4及び図13に示すように、ワーク搭載面32上には、複数の治具34が搭載されている。治具34は、回転テーブル30の回転中心(C軸)を中心にして、略放射状に延びたガイド溝35に対して、往復移動自在に、かつ、ワーク搭載面32に対して、図示しない固定手段にて固定保持可能にされている。該治具34により、ワークWが、着脱自在に保持可能とされている。ワークW及び、治具34は、回転テーブル搭載物に相当する。
【0017】
又、図13、図14(a),図14(b)に示すように、ワーク搭載面32上には、回転テーブル30の回転中心(C軸)を中心にして、放射状に延びたバランサー用の取付溝36が形成されている。このように回転テーブル30の回転中心(C軸)を中心にして、放射状に取付溝36が設けられていることにより、各取付溝36は、回転テーブル30の後述するオリエント位置からの、配置角度α(図13参照)が互いに異なるようにされている。取付溝36は、バランサ取付部に相当する。各取付溝36は、図14(a)及び図14(b)に示すように、下部に幅広部を有し、上部に幅狭部を有して、断面が逆T字状に形成されており、回転テーブル30の周面とワーク搭載面32において、開口されている。取付溝36には、取付部材としてのボルト37の頭部37aが、回転テーブル30の周面の開口から挿入可能とされており、該ボルト37が、取付溝36の長さ方向に摺動自在とされている。
【0018】
又、該ボルト37の頭部37aは、取付溝36下部の幅広部に形成された段部36aに係合されて、ワーク搭載面32側の開口からは抜け出し不能とされている。ボルト37は、取付溝36に挿入された際、先端がワーク搭載面32から突出され、バランサ40に設けられた貫通孔42に挿入されるようにされている。なお、バランサ40には、複数の貫通孔42が形成されており、各貫通孔42にボルト37が挿入可能である。又、取付溝36に挿入されたボルト37は、バランサ40が挿入された状態で、その先端がバランサ40から突出可能とされており、該先端にナット44が取り外し可能に螺着可能である。
【0019】
図1に示すようにベッド12上には、リニアガイドレール14を跨ぐように門形状のコラム50が設けられている。コラム50の前面には、ガイド手段としての複数個のリニアガイドレール54が上下方向であるZ軸方向に平行に設けられている。リニアガイドレール54上には、サドル52がZ軸方向に移動駆動自在に設けられている。又、サドル52のコラム50側の側面には、図示しないナットが設けられており、該ナットがコラム50に設けられた複数のボールネジ(図示しない)に対してそれぞれ螺合されている。そして、サドル52は、コラム50上面に設けられた複数のZ軸駆動モータMzにてボールネジ(図示しない)が正逆回転されることにより、Z軸方向において往復移動可能とされている。
【0020】
サドル52の反コラム側側面には、リニアガイドレール58が複数個、Y軸方向に平行に設けられている。リニアガイドレール58上には、ヘッド支持装置60が設けられている。ヘッド支持装置60は、リニアガイドレール58にガイドされて、Y軸方向に移動駆動自在に設けられている。ヘッド支持装置60のサドル52側の側面には、図示しないナットが設けられており、該ナットがサドル52に設けられたボールネジ59に対して螺合されている。そして、ヘッド支持装置60は、サドル52に設けられたY軸駆動モータMyにてボールネジ59が正逆回転されることにより、Y軸方向において往復移動可能とされている。ヘッド支持装置60の下部には、工具主軸ヘッド70が、Y軸に平行なB軸を回転中心として旋回駆動自在に設けられている。すなわち、ヘッド支持装置60には、B軸駆動モータMb(図2参照)が設けられており、該B軸駆動モータMbにより、工具主軸ヘッド70が、回動される。工具主軸ヘッド70には、ビルトイン型の工具主軸モータMTS(図2参照)を備えており、該工具主軸モータMTSにて図示しないスピンドルが回転駆動可能とされている。又、工具主軸ヘッド70には、旋削加工を行うための加工工具が資癒着可能になっており、該加工工具を取り付けた状態で、図示しないロック機構により、特定角度でロック可能である。
【0021】
複合加工機10には、図2に示すCNC制御装置としての加工制御装置100が装着されている。同図に示すように加工制御装置100は、CPUからなる主制御部110を有している。主制御部110にはバス線105を介して加工プログラムメモリ120、システムプログラムメモリ130、バッファメモリ140、加工制御部150、キーボード等を有する操作盤160、液晶表示装置等からなる表示部170等が接続されている。主制御部110は、回転テーブル30の移動方向(本実施形態ではX軸方向)の位置制御手段に相当する。又、主制御部110は、振動検出手段、算出手段、バランサ取付角度算出手段、取付位置選択手段、選択結果出力手段、及びバランサ重量算出手段に相当する。表示部170は表示手段に相当する。
【0022】
又、主制御部110には、バス線105を介して、X軸制御部200、Y軸制御部210、Z軸制御部220、B軸制御部230、及びワーク主軸制御部240が接続されている。なお、Z軸制御部220、及び駆動回路222は、Z軸駆動モータMzの数と同じ個数分設けられているが、図2では、説明の便宜上、Z軸制御部220は、1つのみ図示し、他のものは省略している。各軸制御部は、主制御部110の各軸(5軸)の移動指令を受けて、各軸の移動指令を駆動回路202,212,222,232,242に出力する、各駆動回路は、この移動指令を受けて、各軸のモータ(X〜Z、B,及びワーク主軸駆動モータ)を駆動する。
【0023】
各軸のモータ(X〜Z、B,及びワーク主軸駆動モータ)には、位置検出器としてのロータリエンコーダ204,214,224,234,244が付設されている。各ロータリエンコーダは、各軸のモータの回転量に応じた出力パルスを各軸制御部(200,210,220,230,240)に出力する。これらの出力パルスは、それぞれの軸の位置フィードバック信号や、速度フィードバック信号の生成に利用される。ロータリエンコーダ204は、回転テーブル30の移動方向(本実施形態では、X軸方向)の位置検出手段に相当し、その出力パルスは出力信号に相当する。
【0024】
主制御部110は、回転テーブル30を停止させる際、ワーク主軸制御部240に対して、オリエント位置に停止させるための制御信号を、システムプログラムメモリ130に格納されたシステムプログラムにより、出力可能とされている。ワーク主軸制御部240は、この制御信号に基づいて、回転テーブル30を一定の回転停止位置(すなわち、オリエント位置)に位置させることが可能である。
【0025】
次に、本発明の特徴的な構成である、X軸制御部200を説明する。図3は、X軸制御部200の制御ブロック図を示している。
X軸制御部200は、速度検出部203、位置制御部205、速度制御部206、電流制御部207、及びラッチ部208を備えている。速度検出部203はロータリエンコーダ204の出力パルス(位置フィードバック)から速度フィードバックを作成する。位置制御部205は主制御部110からの位置指令とロータリエンコーダ204からの出力パルス(位置フィードバック)より速度指令を作成する。ここで,位置指令と位置フィードバックとの差を位置ドループといい、減算器205aにて算出される。前記位置指令及び、位置フィードバックは、本発明の位置フィードバックループに入力される入力値に相当する。このようにして、X軸制御部200は、位置フィードバックループを備えるサーボ系が構成されている。
【0026】
速度制御部206は前記速度指令と前記速度フィードバックとの差が零となるように電流指令を作成する。このようにして、X軸制御部200は、速度フィードバックループを備える。電流制御部207は前記電流指令と、後述する電流検出部(図3参照)が検出した電流値との誤差が零となるように電圧指令を作成する。なお、前記電流検出部は、図2では図示を省略しているが、駆動回路202からX軸駆動モータMxに対して流れる電流の大きさ(電流値)を検出するものである。このようにしてX軸制御部200は、電流フィードバックループを備えている。ラッチ部208は、位置制御部205で、その時々に算出された位置ドループをラッチし、主制御部110に出力する。
【0027】
なお、他のモータ(Y,Z、B,及びワーク主軸駆動モータ)の各制御部は、ラッチ部が省略されているだけであるため、詳細な説明は省略する。
駆動回路202は、前記電圧指令から実際のX軸駆動モータMxに印加する電圧を生成するインバータ回路からなり、パワー増幅を行う。他のモータ(Y,Z、B,及びワーク主軸駆動モータ)の各駆動回路は、駆動回路202と同じ構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0028】
又、主制御部110には、バス線105を介して、工具主軸制御部250が接続されている。工具主軸制御部250は、主制御部110からスピンドル回転指令を受けて、駆動回路252にスピンドル速度信号を出力する、駆動回路252は、このスピンドル速度信号に基づいて、工具主軸モータMTSをスピンドル回転指令に対応した回転速度で回転し、スピンドルと一体に回転する切削工具を回転させる。
【0029】
(実施形態の作用)
さて、上記のように構成された複合加工機10の回転テーブル30が回転したときの、振動検出の仕方を説明する。
【0030】
図5は、回転テーブル30の振動検出プログラムを実行するときのフローチャートである。図4は、X軸駆動モータMx,ワーク主軸駆動モータMWS、及びそれらを制御する電気的構成の概略図である。この振動検出プログラムは、システムプログラムメモリ130に格納されており、例えば、加工プログラムメモリ120に格納された種々の加工プログラムが実行される前に主制御部110の制御により実行される。なお、説明の便宜上、最初、回転テーブル30には、治具34にて、ワークWが保持されているものとし、バランサ40は、回転テーブル30には取着されていないものとする。又、ベース22は、初期位置(加工開始前の原点位置)に位置しているものとする。
【0031】
(S10)
S10では、主制御部110からのX軸方向の位置指令をX軸制御部200が受けると、X軸制御部200は、受けた位置指令に基づいてX軸駆動モータMxを駆動制御し、ベース22を初期位置からX軸方向に沿って移動させる。そして、X軸制御部200は、ロータリエンコーダ204の出力パルスを入力し、該出力パルスに基づいて位置フィードバック制御を行い、前記位置指令に相当する位置に、ベース22が移動したかを判定する。S10において、ベース22が、位置指令に対応した位置に位置(移動が完了)すると、主制御部110が出力する位置指令は、その停止した位置である一定の位置に保持する位置指令となる。
【0032】
なお、S10において、回転テーブル30が、X軸方向において、前記位置指令に対応する位置に位置している状態(すなわち、一定の位置に位置している状態)においても、X軸制御部200は、入力するロータリエンコーダ204からの出力パルスに基づく位置フィードバックと、前記位置指令との位置ドループを算出している。因みに、この回転テーブル30が、X軸方向において、前記位置指令に相当する位置に位置している状態で、回転テーブル30が、振動していない場合は、位置ドループは、0となる。
【0033】
(S20)
続いて、S20では、主制御部110から速度指令をワーク主軸制御部240に出力する。この速度指令は、所定の回転速度(すなわち、目標回転速度)になるように回転させるための指令である。ワーク主軸制御部240は、この速度指令と、ロータリエンコーダ244の出力バルスに基づいて、ワーク主軸駆動モータMWSを速度フィードバック制御する。
【0034】
(S30)
主制御部110は、前記速度指令を出力した後、目標回転速度に達するまでは、S30の危険検知ドループ監視処理を行う。ここで、主制御部110が行う振動検出について説明する。
【0035】
(振動検出)
回転テーブル30は、X軸上の定位置に位置(停止)している状態で、回転アンバランスが生ずると、回転テーブル30の回転速度とアンバランス量に応じて回転テーブル30が振動する。すなわち、回転テーブル30に働く遠心力の大きさに応じて振動の大きさも変化し、このときの振動はボールネジ16を介して、X軸方向の位置ドループの変動として現れる。回転テーブル30の遠心力と、回転テーブル30の振動時の振幅の間には、相関があり、又、前記遠心力と、X軸方向の位置ドループにも相関がある。言い換えると、前記振幅とX軸方向の位置ドループには相関があり、X軸方向の位置ドループの変動量を監視することにより、回転テーブル30の振動を検出することが可能である。
【0036】
図9(a)は、回転テーブル30の遠心力とX軸方向の振幅との相関関係を示す測定例を表している。図9(a)では、ワークWが回転テーブル30に対して偏心しない場合から、偏心量1〜4mmまで1mm毎に偏心した例(A〜E)であり、縦軸は測定して得た振幅を、横軸は、回転テーブル30の回転速度(m-1)である。
【0037】
図9(b)は、同じくA〜Eで示す例において回転テーブル30のX軸方向の位置ドループと、回転速度との相関関係を示している。同図において、縦軸は測定して得たX軸方向の位置ドループを、横軸は回転テーブル30の回転速度(m-1)である。このようにして各例において、測定して得られた数値に基づいて、遠心力を、下記計算式で算出し、前記振幅と遠心力の相関関係を示す図10(a)に、及びX軸方向の位置ドループと遠心力の相関関係を示す図10(b)に示す。
【0038】
遠心力[kN]=(π2・m・r・n2)/(9×108)
なお、上記式中、mはワークWの質量[kg]、rはワークWの回転テーブル30の回転中心(C軸)からの偏心量[mm]、nは回転テーブル30の回転速度[min-1]である。
【0039】
図10(a)、図10(b)の結果に基づいて、図11には、振幅と位置ドループとの相関関係を示す特性図を示している。同図では、縦軸に振幅、横軸にX軸方向の位置ドループをとっている。
【0040】
上記のように、振幅と位置ドループとは、密接な関係にあり、位置ドループを監視することにより振幅の大きさを正確に推定できるため、本実施形態での危険検知ドループ監視処理は、位置ドループの変動を監視するようにしている。ここで、位置ドループをDxで表すと、回転テーブル30の振動によって、位置ドループDxは正負の符号を有する。このため、主制御部110は、ラッチ部208からその時々に入力された位置ドループの絶対値(|Dx|)が、閾値及び第1閾値としての危険検知閾値γ1以下か否かを判定するようにしている。なお、危険検知閾値γ1は、後述する閾値及び第2閾値としての不良検知閾値γ2より、大きな値とされている(図8参照)。これは、回転テーブル30が、目標回転速度まで達するまでは回転テーブル30には加速度が加わり、ワークWの偏心量の程度により、目標回転速度で一定速回転となる場合よりは、振動が大きくなるため、許容できる振幅の範囲を大きくするためである。
【0041】
S30において、位置ドループの絶対値(|Dx|)が危険検知閾値γ1以下であれば、S40に移行し、位置ドループの絶対値(|Dx|)が危険検知閾値γ1を超えていればS70に移行する。
【0042】
なお、図8において、加速回転時危険検知領域が、位置ドループの変動を危険検知閾値で判定される時間帯を示している。
(S40)
S40では、主制御部110は、回転テーブル30の回転速度が、目標回転速度に達しているか否かを判定する。なお、回転テーブル30の回転速度は、ロータリエンコーダ244の出力パルスに基づいて算出される。S40で、回転テーブル30の回転速度が前記目標回転速度に達していない場合には、主制御部110は、S30に戻り、回転テーブル30の回転速度が前記目標回転速度に達した場合には、その回転速度を保持するように、すなわち、等速回転するように目標回転速度の速度指令をワーク主軸制御部240に出力し、S50に移行する。
【0043】
(S50)
S50では、主制御部110は、不良検知ドループ監視処理を行う。不良検知ドループ監視処理は、回転テーブル30が目標回転速度(すなわち、等速)で回転している場合に、X軸制御部200のラッチ部208にてその時々にラッチされて出力される位置ドループの変動を監視する処理である。主制御部110は、位置ドループの絶対値(|Dx|)が不良検知閾値γ2以下であれば、S60に移行し、位置ドループの絶対値(|Dx|)が不良検知閾値γ2を超えていればS70に移行する。
【0044】
(S60)
S60では、主制御部110は、回転テーブル30の回転が、予め設定された回転数分回転をしたか、否かを判定する。この設定回転数は、例えば、数回転であれば十分である。図8において、「速度到達」してから開始される等速回転時不良検知領域が、予め設定された回転数分の回転した時間に相当する。
【0045】
主制御部110は、ロータリエンコーダ244の出力パルスをカウントする図示しないパルスカウンタを備えている。図7(a)に示すように該パルスカウンタは、60/Nの間に入力されるロータリエンコーダ244の出力パルスをカウントし、そのカウントした値が、所定数(=h)に達すると、リセット(=0)して、カウントを再開する。Nは、回転テーブル30の回転速度[min-1]である。該パルスカウンタが、前記出力パルスを所定数カウントする毎に、主制御部110の図示しない回転数カウンタは、回転テーブル30の回転数のカウント値を1つインクリメントするようにしている。そして、回転数カウンタのカウント値が、予め設定回転数に達しない場合には、S60の判定を「NO」として、S30に戻る。又、回転数カウンタのカウント値が予め設定回転数に達したとき、主制御部110は、S60の判定を「YES」として、この振動検出プログラムを終了する。
【0046】
なお、本実施形態では、S60において「NO」と判定した場合に、S30に戻るようにしているが、S50に戻るようにしてもよい。
(S70、S80)
S70及びS80は、S30において、位置ドループの絶対値(|Dx|)が、危険検知閾値γ1を超えたか、又はS50において、位置ドループの絶対値(|Dx|)が、不良検知閾値γ2を超えた場合の処理である。そのため、S70で、主制御部110は回転テーブル30の回転をオリエント位置で停止すべく、ワーク主軸制御部240に停止制御信号を出力し、S80では、異常である旨の報知信号としてアラーム信号を表示部170に出力する。この結果、停止制御信号に基づく、ワーク主軸制御部240の制御により、ワーク主軸駆動モータMWSが停止制御されて回転テーブル30が、回転停止を行う。この結果、回転テーブル30は、オリエント位置に停止し、表示部170は、回転を停止した旨、及び振動がある旨等の警告表示を行う。ここで、前記停止制御信号及びアラーム信号は、回転テーブル30が異常である旨の信号に相当する。
【0047】
(S90)
続く、S90において、主制御部110は、バランサ取付角度等の算出処理を行う。バランサ取付角度等の算出処理は、ワーク重量Mと芯ずれ量Rの積であるアンバランス量MRの算出」、「芯ずれ角度θの算出」、及び「バランサ取付角度(θ+π)の算出」を含んでいる。アンバランス量MR及び芯ずれ角度θは、芯ずれ物理量に相当する。
【0048】
(アンバランス量MRの算出)
アンバランス量MRの算出の方法について説明する。なお、以下に説明中の式の中の記号は、下記の意味である(図6参照)。
【0049】
R:ワーク芯ずれ量[m]、N:回転テーブル30の回転速度[min-1]、ω:回転テーブル30の角速度[rad/s]、M:ワークWの重量[kg]、Fx:X軸方向にかかる遠心力、Dx:X軸駆動モータMxの位置ドループ、θ:オリエント位置からのワークWの芯ずれ角度[rad]、t:時間
なお、ワーク重量Mは、予め操作盤160を介して入力され、バッファメモリ140に格納され、システムプログラムが実行される際に、読み出される。
【0050】
まず、X軸方向にかかる遠心力は、(1)式、(2)式で求められる。
【0051】
【数1】
【0052】
【数2】
又、X軸方向の遠心力の最大値は、X軸方向の位置ドループ最大値の多項式Fxmaxで推定できる。図12は、本実施形態の複合加工機10に関して、X軸方向の位置ドループと遠心力の相関関係を示す図であり、前記図10(b)と実質は同じものであるが、縦軸を遠心力に、横軸を位置ドループとしたものである。図12で示される曲線は、(3)式の多項式Fxmaxで示される曲線である。この多項式Fxmaxは予め試験により得られた試験データに基づいて、求められ、システムプログラムメモリ130に格納されている。
【0053】
【数3】
上記(1)〜(3)式により、(4)式が、導出されるため、主制御部110は、(4)式を使用してアンバランス量MRを算出する。
【0054】
【数4】
(芯ずれ角度θの算出)
次に、主制御部110は、オリエント位置からの芯ずれ角度θを(5)式を使用して算出する。
【0055】
【数5】
Δtについて説明する。なお、本実施形態では、回転テーブル30のオリエント位置は、パルスカウンタが0にリセットされた位置とされている。図7(b)は、X軸駆動モータMx(X軸方向)の位置ドループの変動を示している。Δtは、同図に示すように、位置ドループDxの波高値に達した時点から、図7(a)のパルスカウンタが0にリセットした時点までの時間とされている。
【0056】
そして、主制御部110は、回転テーブル30において、バランサを取付けする角度(バランサ取付角度)を後述のように算出する。図15(a)は、回転テーブル30がオリエント位置に停止している状態を示している。図1の複合加工機10の概略斜視図では図示していないが、図15(a)に示すように、回転テーブル30のX軸方向の移動軌跡に沿うように、仕切壁500及びマシンドア510が配置されている。作業者は、マシンドア510を開けることにより、回転テーブル30に対してワークWやバランサ40の取付けや取り外し作業を行うことが可能とされている。又、マシンドア510を開けたとき、マシンドア510が開けられた空間とその周辺域は、作業者が位置することができる作業エリアArとされている。
【0057】
本実施形態では、回転テーブル30に回転アンバランスが生じた際に、バランサ40の回転テーブル30に対する好適な取付部位(取付溝36)を、このマシンドア510に、相対又は近接するように、ワーク主軸駆動モータMWSを制御する。具体的には、主制御部110は、算出した芯ずれ角度θに基づいて、バランサ取付角度(θ+π)を算出するとともに、そのバランサ取付角度(θ+π)を有する取付部位が、このマシンドア510に、相対又は近接する角度、すなわち、オリエント位置からの回転テーブルの回転角度(π/2−θ)を算出する。そして、回転角度(π/2−θ)に基づいて、主制御部110は、ワーク主軸駆動モータMWSを制御する。この結果、マシンドア510に、バランサ取付角度(θ+π)を有する取付部位(取付溝36)が、このマシンドア510に、相対又は近接する(図15(b)参照)。
【0058】
本実施形態では、バランサを1個使用して回転テーブル30の回転アンバランスを抑制するように補正しているため、この場合の補正方法、すなわち、バランサの取付部位の選択について説明する。図16は、バランサの取付部位の位置、すなわち取付位置の説明図である。又、図17(a)は、ワークWと、バランサとが釣り合うときの説明図である。図17(b)は、理想的なバランサ取付角度(θ+π)と、その取付角度(θ+π)に最も近いバランサの取付位置Pmの配置角度αmとの差βの説明図である。なお、回転テーブル30のバランサを取付可能な取付位置をPn、オリエント位置からその取付位置までの角度をαnとする。図16の例では、回転テーブル30が、オリエント位置に停止した状態で、取付可能な位置の数を12個とし、n=0,1,…,11である。mは、実際に取付する位置を示している。又、下記の式で使用される記号は、下記の通りである。
【0059】
rn:回転中心から取付位置までの距離[m]、mn:バランサ重量[kg]、αn:オリエント位置からバランサの取付位置までの角度[rad]、R:ワーク芯ずれ量[m]、M:ワークWの重量[kg]、θ:オリエント位置からのワークWの芯ずれ角度[rad]
まず、主制御部110は(6)式にて、取付けするバランサ40の重量を算出する。
【0060】
【数6】
rmは、バランサを取付けする場合の、回転テーブル30の回転中心(C軸)からバランサまでの距離であり、予めシステムプログラムメモリ130に格納されている。又、オリエント位置からの回転テーブル30上におけるバランサの取付可能な取付位置Pnの角度αnは、固定値としてシステムプログラムメモリ130に予め格納されている。
【0061】
主制御部110は、各Pnの角度αnと、バランサの理想的な取付角度(θ+π)の差βをそれぞれ算出し、その絶対値が最も小さい値となる位置を、(θ+π)に最も近い取付位置Pmとする。このように、バランサの理想的な取付角度(θ+π)に最も近い取付位置Pmを探索するために差βの算出が下記の(8)式にて行われる。
【0062】
この場合、バランサの理想的な取付角度(θ+π)に最も近い取付位置Pmで、バランサを取付けした後の回転アンバランスにより生じる遠心力FAは、(7)式で求まる。
【0063】
【数7】
【0064】
【数8】
主制御部110は、バランサの理想的な取付角度(θ+π)を算出すると、差βが下記バランス条件を満足しているか否かを判定する。
【0065】
−π/3<β<π/3
差βが上記バランス条件を満たしていれば、遠心力FAは、バランサ取付前の遠心力MRω2より小さくなって、振動を抑制できる。又、差βが上記バランス条件を満たしていない場合、逆にアンバランスが大きくなる。
【0066】
なお、上記バランス条件は下記のことから導出される。
バランサ取付前の遠心力は、MRω2であるから、(7)式がMRω2より小さくなれば、振動が抑制できる。(7)式をMRω2より小さくするためには、|2sinβ/2|<1である必要があり、この式から、|sinβ/2|<1/2が導出される。そして、この関係を満足するためには、−π/6<β/2<π/6が算出され、この式から、−π/3<β<π/3となる。
【0067】
ここで、話を元に戻して、本実施形態では、主制御部110は、前述したように、回転角度(π/2−θ)に基づいて、最も近い取付位置Pm(すなわち、差βが最も小さい取付溝36)を、マシンドア510に相対又は近接するように、ワーク主軸制御部240に選択信号としての制御信号を出力する。この結果、ワーク主軸駆動モータMWSが駆動制御されて、回転テーブル30がオリエント位置から回転されて停止する。
【0068】
図15(b)は、(θ+π)に最も近い取付位置Pmをマシンドア510に相対させた場合を示している。なお、図15(b)では、説明の便宜上、β=0の場合を図示している。
【0069】
(S100)
S100では、主制御部110は、S90で算出した結果に基づいて、補正方法を表示する表示信号を、表示部170に出力する。具体的には、差βが前記バランス条件を満足する場合、補正に使用するバランサ40のバランサ重量m1(=mm)、回転テーブル30の回転中心からのバランサ40を取付する距離r1(=rm)、及び選択結果である、取付溝36(取付部位)の角度θ1(=αm)を示す信号を主制御部110は、表示信号として出力する。表示部170は、この表示信号に基づいて表示部170に補正方法を表示する。又、前記各種データに基づいて、主制御部110は、表示部170に対して制御信号を出力し、表示画面172に、回転テーブル30に対するバランサの配置を示す表示を行わせる。主制御部110は、この補正方法を表示部170に表示した後、このフローチャートを終了する。図18に、表示部170の表示画面172には、例として、取付すべきバランサ40のバランサ重量m1(=mm)、距離r1(=rm)、取付部位の角度θ1(=αm)が示されている。
【0070】
この表示部170の表示画面172に表示された、バランサ重量mmにより、作業者は、この重量を備えたバランサ40を用意する。又、バランサ40が取付されるべき取付溝36は、マシンドア510に近接又は相対して配置されているため、作業者は、その取付溝36に対して、ボルト37を挿入するとともに、取付溝36から突出したボルト37の部位に対して、用意したバランサ40を貫通して取着する。そして、回転テーブル30の回転中心からの距離rmにバランサ40を移動した後、ナット44をボルト37に締め付けすることにより、バランサ40を回転テーブル30に対して固定する。
【0071】
又、差βが前記バランス条件を満足していない場合、主制御部110は、表示部170に、バランサの取付けでは、振動が抑制できないという注意喚起の旨の表示信号を出力する。表示部170は、この表示信号に基づいて、バランサでは補正できない旨と、ワークWの取付けを再度行う旨を表示する。
【0072】
以上のように構成された複合加工機によれば、回転テーブル30に対するワークWのアンバランス量MR、及び回転テーブル30のオリエント位置からの芯ずれ角度θを算出し、算出したワークWの芯ずれ角度θに基づいて、回転テーブル30におけるバランサ40のバランサ取付角度(θ+π)を算出する。このため、ワークWの回転テーブル30における振動抑制のためのバランサ40のバランサ取付角度(θ+π)を容易に得ることができる。さらに、本実施形態では、複数の取付溝36のうち、バランサ取付角度(θ+π)に最も近い配置角度αを有する取付溝36を選択するようにしているため、作業者はこの選択された取付溝36にバランサ40を取着すると、回転テーブル30の振動を容易に抑制できる。
【0073】
又、本実施形態では、アンバランス量MRに基づいて、バランサ重量mmを算出し、さらに、バランサ重量を表示部170で表示するため、取り付けるべきバランサ40の重量を作業者に容易に知らせることができる。又、本実施形態では、バランサ40を取り付けすべき対象の取付溝36を、表示部170に表示するようにしているため、バランサ40を取り付けすべき取付溝36を作業者に容易に知らせることができる。このため、作業者は表示された取付溝36に対して簡単にバランサ40を取付けすることができる。
【0074】
加えて、本実施形態の複合加工機10は、回転テーブル30の周囲の一部には、作業者が位置することが可能な作業エリアAr設けた。そして、回転テーブル30が停止した場合には、バランサ取付角度(θ+π)に最も近い取付溝36が作業エリアArに対応するように配置される。この結果、作業者は、作業エリアArに対応した取付溝36に対して容易にバランサ40を取付けできる。
【0075】
(第2実施形態)
次に第2実施形態を、図19及び図20を参照して説明する。なお、第2実施形態は、前記第1実施形態と、ハード構成は同じのため、同一構成については、同一符号を付してその説明を省略し、異なるところを中心に説明する。
【0076】
第2実施形態では、図5におけるS90及びS100における処理、すなわち、バランサ40の回転テーブル30に対する回転アンバランスの補正方法が異なっている。
第1実施形態では、バランサを1個のみ、回転テーブル30に対して取付することにより、行っている。この補正では、回転テーブル30の振動が許容値以内に抑制することは可能とはなっているが、理論上は振動をゼロにすることはできない。又、バランス条件があり、バランサ40の取付可能な位置との差βが(−π/3<β<π/3)に無ければ、振動を抑制できないことになる。
【0077】
第2実施形態では、バランサ40を2個、(9)式の条件を満たす取付位置Pm,Pm+1に取付けするようにしている。
【0078】
【数9】
取付位置Pnの回転中心(C軸)からの距離をrnとし、バランサ40の重量をmnとすると、図19に示すようにモーメントの釣り合いから、X軸方向においては、(10)式が成立し、Y軸方向では(11)式が成立する。
【0079】
【数10】
【0080】
【数11】
この連立方程式を、解くと、(12)式と(13)式が導出される。
【0081】
【数12】
【0082】
【数13】
第2実施形態では、主制御部110は、まず、バランサ取付角度(θ+π)を挟んで最も近いαm,αm+1を有する取付位置Pm,Pm+1を探索する。探索方法は、第1実施形態と同様に、各取付位置と、バランサ取付角度(θ+π)との差βをそれぞれ算出して、その差βの絶対値の大小関係に基づいて、バランサ取付角度(θ+π)よりも小なる配置角度αmと、大なる配置角度αm+1を有する取付位置Pm,Pm+1を選択する。
【0083】
そして、主制御部110は、(12)式、(13)式を演算して、取付位置Pm,Pm+1にそれぞれ取付するバランサ40のバランサ重量mm,mm+1を算出する。
なお、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、主制御部110は、「アンバランス量MRの算出」、「芯ずれ角度θの算出」、及び「バランサ取付角度(θ+π)の算出」は行っているものとする。
【0084】
又、第2実施形態は、S100では、主制御部110は、S90で算出した結果に基づいて、補正方法を表示する表示信号を、表示部170に出力する。
具体的には、補正に使用するバランサ40のバランサ重量m1(=mm)、m2(=mm+1)、回転テーブル30の回転中心からの距離r1(=rm),r2(=rm+1)、及び取付溝36(取付部位)の角度θ1(=αm),θ2(=αm+1)を示す信号を表示信号として出力する。なお、rm,rm+1の値は、予め予めシステムプログラムメモリ130に格納されている。表示部170は、この表示信号に基づいて表示部170に補正方法を表示する。又、前記各種データに基づいて、主制御部110は、表示部170に対して制御信号を出力し、表示画面172に、回転テーブル30に対するバランサの配置を示す表示を行わせる。主制御部110は、この補正方法を表示部170に表示した後、このフローチャートを終了する。図20には例として、表示部170の表示画面172に取付すべき2個のバランサ40のバランサ重量m1,m2、距離r1,r2、取付部位の角度θ1,θ2が示されている。
【0085】
この表示部170の表示画面172に表示された、バランサ重量mm,mm+1により、作業者は、この重量を備えた2個のバランサ40を用意する。又、各バランサ40が取付されるべき2つの取付溝36は、マシンドア510に近接又は相対して配置されているため、作業者は、各取付溝36に対して、ボルト37を挿入するとともに、取付溝36から突出したボルト37の部位に対して、用意したバランサ40をそれぞれ貫通して取着する。そして、回転テーブル30の回転中心からの距離rm,rm+1にバランサ40を移動した後、ナット44をボルト37に締め付けすることにより、各バランサ40を回転テーブル30に対して固定する。
【0086】
さて、第2実施形態では、主制御部110は、取付位置選択手段として複数の取付溝36のうち、バランサ取付角度(θ+π)よりも大なる配置角度(αm+1)であって、最も近い配置角度を有する取付溝36と、バランサ取付角度(θ+π)よりも小なる配置角度(αm)であって、最も近い配置角度を有する取付溝36を選択するようにした。そして、主制御部110は、選択結果出力手段として、その選択結果に応じた選択信号を表示部170に出力するようにした。この結果、バランサ取付角度(θ+π)を挟む位置に位置する、2つの取付溝36が選択され、その選択結果に応じた選択信号が主制御部110により出力されるため、作業者はこの選択された2つの取付溝36にバランサをそれぞれ取着すると、回転テーブル30の振動をゼロにすることができる。
【0087】
なお、本発明の実施形態は前記実施形態に限定するものではない。例えば下記のようにしてもよい。
○前記実施形態では、複合加工機10に具体化したが、複合加工機に限定するものではなく、回転テーブルを備えたものであればよい。又、回転テーブルが、位置ドループの変動量を振動検出に使用する場合は、一軸方向に移動するものに限定されるものではなく、X軸や、Y軸の2軸方向に移動するタイプのものに具体化してもよい。
【0088】
○前記実施形態では、S60において、回転テーブル30が、予め設定された回転数(設定回数)分回転をしたか否かを判定するようにした。この代わりに、予め設定された回転数分に相当する時間(不良検知時間)を経過した否かを判定するためにタイマを設け、このタイマで計時した時間が不良検知時間に達したか否かを主制御部110が判定するようにしてもよい。
【0089】
この場合、前記不良検知間は、例えば下記の計算式で算出するようにする。
不良検知時間[ms]=(設定回数[rev])×60000/(目標回転速度[min-1])
○ 前記実施形態では、バランサ取付部を取付溝としたが、バランサ取付部は取付溝に限定するものではなく、バランサを取着できるものであればよい。
【0090】
○ 第1実施形態では、作業エリアArを、作業者がバランサを取付けするための空間とした。この代わりに、作業エリアArをバランサ自動取付装置(図示略)がバランサを取付するための空間としてもよい。
【0091】
この場合、選択結果出力手段としての主制御部110は、前記バランサ自動取付装置に対して、算出したバランサ重量m1、回転テーブル30の回転中心からのバランサ40を取付する距離r1、及び選択結果である、取付溝36(取付部位)の角度θ1(=αm)を示すデータを出力する。バランサ自動取付装置は、前記重量のデータに基づいて、バランサ重量m1を有するバランサを選択する。又、バランサ自動取付装置は、前記距離及び角度のデータに基づいて取付部位の角度θ1に最も近い取付溝36において、回転テーブル30の回転中心から距離r1の箇所に、選択したバランサを取付けする。
【0092】
なお、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、作業エリアArを、作業者がバランサを取付けするための空間とした。この代わりに、作業エリアArをバランサ自動取付装置(図示略)がバランサを取付するための空間としてもよい。
【符号の説明】
【0093】
10…複合加工機
30…回転テーブル
36…取付溝36(バランサ取付部)
100…加工制御装置
110…主制御部(振動検出手段、出力手段、算出手段、バランサ取付角度算出手段、取付位置選択手段、選択結果出力手段、バランサ重量算出手段)
170…表示部(表示手段)
Mx…X軸駆動モータ(移動駆動手段)
α…配置角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転テーブルを回転駆動する回転駆動手段と、
前記回転テーブルを移動方向に進退可能に駆動する移動駆動手段と、
前記移動駆動手段を制御するために、位置フィードバックループを有するサーボ系を有する工作機械において、
前記回転駆動手段にて回転中の前記回転テーブルの振動量を、前記サーボ系の位置フィードバックループに入力されて使用される入力値に基づいて検出する振動検出手段を備えたことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記振動検出手段は、前記入力値に基づいて前記サーボ系で算出される位置ドループの変動に基づいて回転テーブルの振動検出を行うことを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記入力値は、前記サーボ系に付与されて、前記回転テーブルを一定の位置に保持する位置指令と、前記回転テーブルの位置検出を行う位置検出手段からの出力信号であり、前記振動検出手段は、前記位置指令と、前記出力信号に基づき、前記サーボ系で算出された位置ドループの変動に基づいて振動検出を行うことを特徴とする請求項2に記載の工作機械。
【請求項1】
回転テーブルを回転駆動する回転駆動手段と、
前記回転テーブルを移動方向に進退可能に駆動する移動駆動手段と、
前記移動駆動手段を制御するために、位置フィードバックループを有するサーボ系を有する工作機械において、
前記回転駆動手段にて回転中の前記回転テーブルの振動量を、前記サーボ系の位置フィードバックループに入力されて使用される入力値に基づいて検出する振動検出手段を備えたことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記振動検出手段は、前記入力値に基づいて前記サーボ系で算出される位置ドループの変動に基づいて回転テーブルの振動検出を行うことを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記入力値は、前記サーボ系に付与されて、前記回転テーブルを一定の位置に保持する位置指令と、前記回転テーブルの位置検出を行う位置検出手段からの出力信号であり、前記振動検出手段は、前記位置指令と、前記出力信号に基づき、前記サーボ系で算出された位置ドループの変動に基づいて振動検出を行うことを特徴とする請求項2に記載の工作機械。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−45996(P2011−45996A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266262(P2010−266262)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【分割の表示】特願2004−217615(P2004−217615)の分割
【原出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000114787)ヤマザキマザック株式会社 (80)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【分割の表示】特願2004−217615(P2004−217615)の分割
【原出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000114787)ヤマザキマザック株式会社 (80)
【Fターム(参考)】
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