説明

平版印刷材料

【課題】印刷時の耐汚れ性及び印刷画質に優れ、且つ耐傷性、耐刷性に優れた、銀錯塩拡散転写法を用いた平版印刷材料を提供することである。
【解決手段】 本発明の上記課題は、支持体上に下塗層、ハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層を少なくとも支持体側よりこの順に有する平版印刷材料において、該下塗り層が有機球形マット剤を含有し、該下塗り層に含有する有機球形マット剤全ての粒径の変動係数(CV値)が30%以下であり、該有機球形マット剤の平均粒径が3〜8μmである事を特徴とする平版印刷材料によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀錯塩拡散転写法を応用した平版印刷材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平版印刷材料は、油脂性のインキを受理する親油性の画線部分と、インキを受理しない撥油性の非画線部分とからなり、一般に該非画線部は水を受付ける親水性部分から構成されている。通常の平版印刷では、水とインキの両方を版面に供給し、画線部は着色性のインキを、非画線部は水を選択的に受け入れ、該画線上のインキを、例えば紙等の被印刷体に転写させることによって印刷がなされている。
【0003】
従って、良い印刷物を得るためには、画線部と非画線部の親油性及び親水性の差が十分に大きくて、水及びインキを版面に供給した時に、画線部は十分量のインキを受付け、非画線部は全くインキを受付けないことが必要である。
【0004】
銀錯塩拡散転写法(DTR法)を用いた平版印刷材料、特にハロゲン化銀乳剤層の上に物理現像核層を有する平版印刷材料は、例えば、米国特許第3,728,114号明細書、米国特許第4,134,769号明細書、米国特許第4,160,670号明細書、米国特許第4,336,321号明細書、米国特許第4,501,811号明細書、米国特許第4,510,228号明細書、米国特許第4,621,041号明細書等に記載されており、露光されたハロゲン化銀結晶は、DTR現像により化学現像を生起し黒色の銀となり親水性の非画線部を形成し、一方、未露光のハロゲン化銀結晶は現像液中の銀塩錯化剤により銀塩錯体となって表面の物理現像核層まで拡散し、核の存在により物理現像を生起してインキ受容性の物理現像銀を主体とする画線部を形成する。
【0005】
このような平版印刷材料ではハロゲン化銀乳剤層の上にある物理現像核層上に析出した銀画像をインキ受容性の画線部として利用するため、一般の平版印刷材料(例えばPS版等)に比して、画線部の機械的摩耗に対する抵抗性(耐刷力という)が不十分であり、画線部が欠落したり、画線部のインキ受容性が徐々に失われ易いという欠点を有している。
【0006】
この欠点を克服するために、ハロゲン化銀乳剤層あるいはハロゲン化銀乳剤層よりも支持体に近い側に設けられる下塗層にマット剤を含有させることが知られているが、地汚れが発生し易く、特に平版印刷材料を製造してから製版するまで長期に亘って保存することによって地汚れが発生したり、インキ受容性が劣化するという問題があった。また、製版後のハンドリングによって印刷面に傷が生じて画像の視認性が低下したり、あるいは製版物上の傷の部分で通常インキが乗る画像部ではインキが乗らなかったり、非画像部ではインキが乗って印刷汚れを生じるという問題もあった。
【0007】
米国特許第5,281,509号明細書には、平版印刷材料の表面粗さRaを1.2以下にすることによって、更に特開平8−137109号公報には、平版印刷材料の表面粗さRaを0.6以下にすることによって、耐汚れ性を改良する技術が開示されている。しかしながら、Raを小さくすれば、耐汚れ性は良くなるが、耐刷力や耐傷性が悪くなる問題があった。また、特開平11−84671号公報(特許文献1)に記載されている乳剤層と下塗層にマット剤を添加してRaを0.6〜1.2にする技術によっても、耐傷性の問題が発生し、Raを粗くするに従って印刷画質及び耐汚れ性が低下し、耐刷性や耐傷性との両立が困難であった。一方、特開平11−295897号公報(特許文献2)に記載のポリマーラテックスを乳剤層に添加する技術、特開平9−304933号公報(特許文献3)に記載の乳剤層に単分散シリカマット剤を含有する技術においては、非画像部の耐汚れ性や印刷画質を改善することが出来たが、同時に十分な耐傷性を得る事は困難であった。この様に耐汚れ性及び印刷画質の特性と、耐刷力及び耐傷性の特性とは、相矛盾する特性であるため、これらの特性を同時に高いレベルで満足させることは非常に困難なことであった。
【特許文献1】特開平11−84671号公報
【特許文献2】特開平11−295897号公報
【特許文献3】特開平9−304933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、印刷時の耐汚れ性及び印刷画質に優れ、且つ耐傷性、耐刷性に優れた、銀錯塩拡散転写法を用いた平版印刷材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は、支持体上に下塗層、ハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層を少なくとも支持体側よりこの順に有する平版印刷材料において、該下塗り層が有機球形マット剤を含有し、該下塗り層が含有する有機球形マット剤全ての粒径の変動係数(CV値)が30%以下であり、該有機球形マット剤の平均粒径が3〜8μmである事を特徴とする平版印刷材料によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の平版印刷材料によって印刷時の耐汚れ性及び印刷画質に優れ、且つ耐傷性、耐刷性に優れた、銀錯塩拡散転写法を用いた平版印刷材料を提供する事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において下塗層が含有するマット剤は、有機球形マット剤である。球形のマット剤としては、従来球形シリカマット剤が広く知られているが、球形シリカマット剤では硬度が堅すぎるため耐刷性が確保出来ない場合があり、更に比重が重く下塗層の塗布時に沈降し易いため、十分な耐傷性が確保出来ない場合があることが判明した。本発明では比較的に比重が重くなく、適度な弾性が得られることから、有機球形マット剤を使用する。更に有機球形マット剤は形状が球形であるため、均一な凹凸の表面形状を形成し易く、良好な画質が得られ易い特徴がある。
【0012】
本発明の下塗層に含む有機球形マット剤は、下塗層に含む有機球形マット剤全ての粒径の変動係数(CV値)が30%以下であることによって、製版後の表面の凹凸が均一となり、良好な印刷画質や耐傷性が得られる。変動係数の下限は2%である事が好ましい。また、該有機球形マット剤の平均粒径は大きすぎると、表面の凹凸が大きくなり印刷画質、耐刷性及び耐汚れ性が低下し、小さすぎると必要な表面形状が得られず、耐傷性や耐刷性が低下する。よって、該有機球形マット剤の平均粒径を3〜8μmとすることで、良好な耐刷性、耐印刷汚れ性及び耐傷性が得られる。更に好ましくは4〜6.5μmである。
【0013】
本発明におけるマット剤の粒径の変動係数は下記の式によって求められる。
変動係数(CV値)=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100(%)
平均粒径及び粒度分布は、公知のレーザー回折散乱法により測定される。
【0014】
本発明における有機球形マット剤の添加量は有機球形マット剤の粒径や比重によって適宜調整する必要があるが、下塗層及びハロゲン化銀乳剤層が含有するゼラチンやラテックス樹脂等のバインダー総固形分量、あるいは下塗層とハロゲン化銀乳剤層との間に必要に応じて設けられる中間層が含有するバインダーも加えた、バインダー総固形分量に対して5〜20質量%が好ましく、更に好ましくは7〜14質量%である。
【0015】
本発明の平版印刷材料は印刷画質、耐汚れ性及び耐傷性の確保のために、中心線表面粗さ(Ra)が0.3〜2.0が好ましく、更に好ましくは0.4〜0.55である。該中心線平均粗さは製版処理後の値であり、東京精密社製サーフコム500Bを用いることによって測定することが出来る。粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さlの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向をY軸とし、粗さ曲線をy=f(x)で表した時、中心線平均粗さRa値はマイクロメートル単位で表し、数1の式によって計算することが出来る。
【0016】
【数1】

【0017】
本発明に用いられる有機球形マット剤のポリマーとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸エステル、アクリルコポリマー、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂等のポリマー粒子等が挙げられる。市販品では綜研化学社製のアクリル単分散微粒子MX−300、MX−500、ケミスノー架橋ポリスチレン単分散粒子SX−350H、SX−500H、ガンツ化成社製の架橋単分散有機微粒子(MMA、スチレン)GMDS−050H、GMDS−050M、GMDM−050L、積水化成品工業社製のMBX−3SS、MBX−5SS、MBX−8SS(架橋ポリメタクリル酸メチル)、積水化学社製ミクロパールSP、ミクロパールEX、東芝シリコーン社製のトスパール130、トスパール145、トスパール240(シリコン樹脂)等がある。
【0018】
本発明の平版印刷材料はバインダーとしてゼラチンを含有することが好ましい。その含有層は下塗層であり、ハロゲン化銀乳剤層であり、また物理現像核層でもありうる。これらのゼラチン含有層は、ゼラチン硬膜剤で硬化することが出来る。ゼラチン硬膜剤としては、例えばクロム明ばん、ホルマリン、グリオキザール、N−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−s−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に2個以上有する化合物類、高分子硬膜剤としてのジアルデヒド澱粉等の種々の化合物の一種もしくは二種以上を用いることが出来る。
【0019】
硬膜剤は全ての層に添加することも出来、幾つか又は一層にのみ添加することも可能である。勿論、拡散性の硬膜剤は二層同時塗布の場合、何れか一層にのみ添加することが可能である。添加方法は塗布液製造時に添加したり、塗布時にインラインで添加することも出来る。
【0020】
含有するゼラチンは、その一部を、低分子ゼラチン、澱粉、デキストリン、アルブミン、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体等の親水性高分子の一種又は二種以上で置換することも出来る。更にビニル重合体水性分散物(ラテックス)をゼラチン層に添加することも出来る。
【0021】
下塗り層には、ハレーション防止の目的でカーボンブラック等の顔料、染料等を含むことが好ましい。また前記米国特許第5,281,509号明細書に記載のスチレン−ブタジエン系ラテックスのような非膨潤性ラテックスを含有することが特に好ましい。ラテックスの含有量(固形量)は0.5〜5g/m2が好ましい。ここで言う非膨潤性のラテックスとはTgが0℃以上のものが好ましく、塗布後乾燥すると非水溶性の皮膜を形成する。更にハイドロキノン、メチルハイドロキノン、カテコール等の現像主薬も含むことが出来る。
【0022】
ハロゲン化銀乳剤層は、例えば、塩化銀、臭化銀、塩臭化銀、及びこれらに沃化銀を含むハロゲン化銀結晶を含有する。ハロゲン化銀結晶は、ロジウム塩、イリジウム塩、パラジウム塩、ルテニウム塩、ニッケル塩、白金塩等の重金属塩を含んでいても良く、添加量はハロゲン化銀1モル当り10-8〜10-3モルである。ハロゲン化銀の結晶形態に特に制限はなく、立方体ないし14面体粒子、更にはコアシェル型、平板状粒子でも良い。ハロゲン化銀結晶は、単分散、多分散結晶であっても良く、その平均粒径は0.2〜0.8μmの範囲であることが好ましい。好ましい例の一つとしては、ロジウム塩もしくはイリジウム塩を含む、塩化銀が70モル%以上の単分散結晶がある。
【0023】
ハロゲン化銀結晶を含有するハロゲン化銀乳剤は、それが製造される時又は塗布される時に種々な方法で化学増感することが出来る。例えば、チオ硫酸ナトリウム、アルキルチオ尿素によって、又は金化合物、例えばロダン金、塩化金によって、又はこれらの両者の併用など当該技術分野において良く知られた方法で化学的に増感することが好ましい。ハロゲン化銀乳剤は又、例えばシアニン、メロシアニン等の色素によってポジティブにもネガティブにも増感又は減感され得る。その増感又は減感され得る波長域に特に制限はない。従って、オルソ増感、パンクロ増感、ヘリウム−ネオンレーザー用増感、アルゴンレーザー用増感、LED用増感、半導体レーザー用増感もなし得るし、明室用にUV増感、可視光減感もなし得る。更に前記したような現像主薬も含むことが出来る。
【0024】
ハロゲン化銀乳剤層の上部に存在する表面層である物理現像核層は物理現像核を含む。物理現像核としては銀、カドミウム、コバルト、鉛、ニッケル、パラジウム、ロジウム、金、白金等の金属コロイド微粒子や、これらの金属の硫化物、多硫化物、セレン化物、又はそれらの混合物であっても良い。物理現像核には、親水性バインダーを含んでいてもいなくても良いが、ゼラチン、澱粉、ジアルデヒド澱粉、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸、ビニルイミダゾールとアクリルアミドの共重合体、ポリビニルアルコール等の親水性高分子又はそのオリゴマーを含むことが出来、その含有量は0.5g/m2以下であることが好ましい。更に物理現像核層には、前記したような現像主薬や硬膜剤を含んでいても良い。
【0025】
下塗層、ハロゲン化銀乳剤層、物理現像核層等の各塗布層には、塗布助剤として陰イオン、陽イオンもしくは中性界面活性剤のいずれかを含んでいても良いし、カブリ防止剤、増粘剤、帯電防止剤等を含むことが出来る。
【0026】
本発明の平版印刷材料の支持体としては、紙、又は合成もしくは半合成高分子フィルム、アルミニウム、鉄等の金属板等で平版印刷に耐えるものであれば使用することが出来る。支持体の表面を一層又はそれ以上の高分子フィルム又は金属薄膜で、片面もしくは両面を被覆することも出来る。これらの支持体の表面を塗布層との接着を良くするために表面処理することも可能である。
【0027】
特に好ましく用いられる支持体は、両面もしくは片面をポリオレフィン重合体で被覆した紙、ポリエステルフィルム、表面を親水化処理したポリエステルフィルム、表面処理を行ったアルミニウム板等である。これらの支持体にはハレーション防止のための顔料や表面物性改良のために固形微粒子を含んでいても良い。又支持体は裏面露光が可能なように光透過性であっても良い。
【0028】
本発明の平版印刷材料の製版に用いる現像処理液は、アルカリ性物質、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等、保恒剤としての亜硫酸塩、ハロゲン化銀溶剤、例えばチオ硫酸塩、チオシアン酸塩、環状イミド、2−メルカプト安息香酸、アルカノールアミン、チオエーテル、メソイオン化合物等、粘稠剤、例えばヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等、カブリ防止剤、例えばメルカプトテトラゾール、臭化カリウム、特開昭47−26201号公報に記載の化合物等、現像剤、例えばハイドロキノン類、カテコール、1−フェニル−3−ピラゾリドン等、現像変性剤、例えばポリオキシアルキレン化合物、オニウム化合物等を含むことが出来る。更に現像処理液には、米国特許第3,776,728号明細書に記載の如き表面銀層のインキ乗りを良くする化合物等を使用することが出来る。
【0029】
本発明の平版印刷材料の現像後の表面は、任意の公知の表面処理剤でインキ受容性に変換ないしインキ受容性を増強せしめ得る事が好ましい。このような処理液としては、例えば特公昭48−29723号公報、米国特許第3,721,559号明細書等に記載されている。印刷方法、あるいは使用する不感脂化液、給湿液等は一般に良く知られた方法により、実施あるいは利用することが出来る。
【0030】
以下に本発明を実施例により説明するが、勿論本発明はこれだけに限定されるものではない。尚、実施例に示す重量は明示しない限り乾燥重量を示すものとする。
【実施例】
【0031】
<各変動係数の有機球形マット剤分散液の作製>
(有機球形マット剤分散液A)
綜研化学社製有機球形マット剤MX500(平均粒径5μm、変動係数9%、架橋アクリル粒子)を4.2gと綜研化学社製有機球形マット剤MR−7G(平均粒径5μm、変動係数65%、架橋アクリル粒子)を1.8gを混合して、平均粒径5μm、粒径の変動係数40%の10質量%の分散液を作製した。
(有機球形マット剤分散液B)
MX500を5.4gとMR−7Gを0.6g混合して、平均粒径5μm、粒径の変動係数30%の10質量%の分散液を作製した。
(有機球形マット剤分散液C)
MX500を5.7gとMR−7Gを0.3g混合して、平均粒径5μm、粒径の変動係数20%の10質量%の分散液を作製した。
(有機球形マット剤分散液D)
MX500の10質量%の分散液を作製した。
(有機球形マット剤分散液E)
綜研化学社製SX500H(平均粒径5μm、粒径の変動係数9%、架橋ポリスチレン)の10質量%の分散液を作製した。
(有機球形マット剤分散液F)
積水化成品工業社製MBX−5SS(平均粒径5μm、粒径の変動係数10%、架橋ポリメタクリル酸メチル)の10質量%の分散液を作製した。
(有機球形マット剤分散液G)
綜研化学社製有機球形マット剤MX300(平均粒径3μm、粒径の変動係数9%、架橋アクリル粒子)の10質量%の分散液を作製した。
(有機球形マット剤分散液H)
積水化成品工業社製のMBX−8SS(平均粒径8μm、粒径の変動係数10%、架橋ポリメタクリル酸メチル)の10質量%の分散液を作製した。
(有機球形マット剤分散液I)
綜研化学社製有機球形マット剤MX150(平均粒径1.5μm、粒径の変動係数9%、架橋アクリル粒子)の10質量%の分散液を作製した。
(有機球形マット剤分散液J)
綜研化学社製有機球形マット剤MP−2200(平均粒径0.35μm、粒径の変動係数9%、非架橋アクリル粒子)の10質量%の分散液を作製した。
(有機球形マット剤分散液K)
綜研化学社製有機球形マット剤MX1000(平均粒径10μm、粒径の変動係数9%、架橋アクリル粒子)の10質量%の分散液を作製した。
(有機球形マット剤分散液L)
綜研化学社製有機球形マット剤MR−7G(平均粒径5μm、粒径の変動係数60%、架橋アクリル粒子)の10質量%の分散液を作製した。
(有機球形マット剤分散液M)
ガンツ化成社製有機球形マット剤GM−0401S(平均粒径4μm、粒径の変動係数50%、架橋アクリル粒子)の10質量%の分散液を作製した。
【0032】
上記各分散液の粒度分布はレーザー回折散乱方式の粒度分布計HORIBA LA−920で測定し、粒径の変動係数(CV値)を計算式より求めた。
【0033】
(比較例1)
175μmの下引き済みポリエチレンテレフタレートフィルムの片面(裏面)に導電性カーボンを含む層(ゼラチン0.8g/m2)を塗設し、その上に平均粒径4.0μmのシリカ粒子0.02g/m2を含有する層(ゼラチン2g/m2)を塗設した。
【0034】
次に上記導電性カーボンを含む層及びシリカ粒子を含有する層が塗設された支持体の反対側の面(表面)をコロナ放電加工後、カーボンブラック0.3g/m2、ゼラチン3.2g/m2、スチレン−ブタジエンラテックス2.0g/m2及び有機球形マット剤分散液Aを固形分で0.6g/m2含有し、硬膜剤として2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウムを含む下塗層と、その上に赤色増感された高感度塩化銀乳剤(ゼラチン0.8g/m2、硬膜剤としてN−メチロールエチレン尿素含む)を硝酸銀として1.0g/m2になるように、二層同時塗布し乾燥した。更に40℃7日加温後、特開平8−211614号公報のP−2のポリマー5mg/m2を加えた物理現像核層(物理現像核として硫化パラジウムを1mg/m2の割合で含有し、現像主薬としてハイドロキノンを0.8g/m2の割合で含有する)を塗布し乾燥して、比較例1の平版印刷材料を作製した。
【0035】
(実施例1)
有機球形マット剤分散液Aの代わりに有機球形マット剤分散液Bを用いた以外は比較例1と同様にして実施例1の平版印刷材料を作製した。
【0036】
(実施例2)
有機球形マット剤分散液Aの代わりに有機球形マット剤分散液Cを用いた以外は比較例1と同様にして実施例2の平版印刷材料を作製した。
【0037】
(実施例3)
有機球形マット剤分散液Aの代わりに有機球形マット剤分散液Dを用いた以外は比較例1と同様にして実施例3の平版印刷材料を作製した。
【0038】
(実施例4)
有機球形マット剤分散液Aの代わりに有機球形マット剤分散液Gを用いた以外は比較例1と同様にして実施例4の平版印刷材料を作製した。
【0039】
(実施例5)
有機球形マット剤分散液Aの代わりに有機球形マット剤分散液Eを用いた以外は比較例1と同様にして実施例5の平版印刷材料を作製した。
【0040】
(実施例6)
有機球形マット剤分散液Aの代わりに有機球形マット剤分散液Fを用いた以外は比較例1と同様にして実施例6の平版印刷材料を作製した。
【0041】
(実施例7)
有機球形マット剤分散液Aの代わりに有機球形マット剤分散液Hを用いた以外は比較例1と同様にして実施例7の平版印刷材料を作製した。
【0042】
(比較例2)
有機球形マット剤分散液Aの代わりに有機球形マット剤分散液Iを用いた以外は比較例1と同様にして比較例2の平版印刷材料を作製した。
【0043】
(比較例3)
有機球形マット剤分散液Aの代わりに有機球形マット剤分散液Jを用いた以外は比較例1と同様にして比較例3の平版印刷材料を作製した。
【0044】
(比較例4)
有機球形マット剤分散液Aの代わりに有機球形マット剤分散液Kを用いた以外は比較例1と同様にして比較例4の平版印刷材料を作製した。
【0045】
(比較例5)
有機球形マット剤分散液Aの代わりに有機球形マット剤分散液Lを用いた以外は比較例1と同様にして比較例5の平版印刷材料を作製した。
【0046】
(比較例6)
有機球形マット剤分散液Aの代わりに有機球形マット剤分散液Mを用いた以外は比較例1と同様にして比較例6の平版印刷材料を作製した。
【0047】
(比較例7)
下塗層に有機球形マット剤を含まず、乳剤層に有機球形マット剤分散液Dを固形分で0.6g/m2含有する事以外は比較例1と同様にして比較例7の平版印刷材料を作製した。
【0048】
各実施例及び比較例の球形マット剤微粒子の粒径の変動係数(CV値)と平均粒径の詳細は下記表1参照。
【0049】
【表1】

【0050】
<製版・印刷>
これらの平版印刷材料を、下記の転写現像液及び中和液を内蔵する製版用イメージセッター(三菱製紙株式会社SDP−Eco1630)で製版した。転写現像液温度は30℃で転写現像液、中和液への浸漬時間は各30秒間で製版した。
【0051】
<転写現像液>
水 700ml
水酸化カリウム 20g
無水亜硫酸ナトリウム 50g
2−メルカプト安息香酸 1.5g
N−アミノエチルエタノールアミン 15g
2−メルカプト−5−ヘプチル−1,3,4−オキサジアゾール 0.5g
水を加えて1リットルとする。
【0052】
<中和液>
水 600ml
第一燐酸ナトリウム 50g
無水亜硫酸ナトリウム 10g
エチレングリコール 5ml
水を加えて1リットルとする(pH6に調整)。
【0053】
以上より作製した平版印刷材料をオフセット印刷機に装着し、下記の不感脂化液を版面にくまなく与え、下記給湿液を用いて印刷を行った。
【0054】
<不感脂化液>
水 600ml
クエン酸 2g
クエン酸ナトリウム 2g
ポリエチレングリコール 29g
N−アミノエチルエタノールアミン 20g
2−メルカプト−5−ヘプチル−1,3,4−オキサジアゾール 1g
【0055】
<給湿液>
o−リン酸10g硝酸ニッケル 5g
亜硝酸ナトリウム 5g
エチレングリコール 100g
コロイダルシリカ(20質量%液) 28g
水を加えて2リットルとする。
【0056】
<評価>
耐刷性はオフセット印刷機を使用し、銀画像部の欠落による画像飛びが生じて印刷に供せなくなった時の印刷枚数で、次の評価基準により判定した。尚インキはABdick3−1012を使用した。
◎ 20,000枚以上
○ 15,000〜20,000枚未満
△ 10,000〜15,000枚未満
△× 5,000〜10,000枚未満
× 5,000枚未満
【0057】
一方、非画像部の保水性(地汚れ)を見るために、市販のPS版用給湿液を使用し、地汚れが発生した時点の印刷枚数で、次の評価基準により判定した。
◎ 15,000〜20,000枚未満
○ 10,000〜15,000枚未満
△ 5,000〜10,000枚未満
△× 2,000〜5,000枚未満
× 500〜2000枚未満
【0058】
耐傷性は製版処理した印刷版を裏面と印刷面が重なる様にして2枚重ね、重ねた印刷版の上に200gの重りを乗せ擦り合わせて、版面に生じた傷のレベルで評価した。
◎ 全く傷が生じない。
○ 非常に薄く傷が認められるが実用上問題ない。
△ やや目立った傷があり実用上問題有り。
× 全面に傷が発生し実用不可。
【0059】
画質は、耐刷性と同じ印刷条件で印刷し、1000枚目の印刷物の網点の形状を顕微鏡で拡大し、網点の形状を目視で製版物と比較して評価した。
◎ ほぼ製版物と同じ。
○ ややエッジの形状が製版物に比べて悪い。
△ エッジの形状が悪い。
× エッジの形状が悪く網点内部に部分的にインクが乗っていない白色の斑点がある。
【0060】
上記の評価結果を表2に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
上記の結果から明らかな様に、本発明によれば、保水性、耐刷力、印刷画質及び耐傷性の良好な平版印刷材料が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に下塗層、ハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層を少なくとも支持体側よりこの順に有する平版印刷材料であって、該下塗り層が有機球形マット剤を含有し、該下塗り層が含有する有機球形マット剤の粒径の変動係数(CV値)が30%以下であり、該有機球形マット剤の平均粒径が3〜8μmである平版印刷材料。

【公開番号】特開2009−244374(P2009−244374A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88376(P2008−88376)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】