説明

平面型スピーカ

【課題】 新規な平面型スピーカを提供すること
【解決手段】 平面型スピーカ(1)を横置きに設置した場合、平面型スピーカの横方向(X方向)に長い概して楕円形状のフレキシブルプリント基板で形成された振動板(10)と、振動板に接近して、横方向(X方向)に延在する複数本のマグネット(14)を備え、複数本のマグネット(1411〜1455)は、N極の棒状マグネットとS極の棒状マグネットが交互にほぼ並行に設置されて、平面型スピーカの縦方向(+Y方向又は−Y方向)の磁束を発生し、振動板に形成された導体パターン(9)は、螺旋状に形成されたコイル状の一本の導体パターンであって、隣接する棒状マグメット間毎に複数回延在するパターン束(9F1〜9F6,9B1〜9B6)を形成し、各パターン束では音響電流は同じ横方向(+X方向又は−X方向)に流れ、複数本のマグネットが発生する前記縦方向(+Y方向又は−Y方向)の磁束と前記パターン束に流れる横方向(+X方向又は−X方向)の音響電流との相互作用によって振動板を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面型スピーカに関し、更に具体的には、ガムーゾン型平面型スピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スピーカユニットとして、多くの場合、コーン型が採用されている。コーン型スピーカでは、ボイスコイルで発生した振動は、ボイスコイル→接着剤→ボビン→振動板内周側→振動板外周側と伝搬される。そのため、ボイスコイルで発生した音響振動は、これらの伝搬過程で徐々に歪んでしまうおそれがある。また、周波数が高くなるほど、振動は伝搬され難くなる。
【0003】
コーン型の次に採用されているドーム型やホーン型でも、駆動部と振動板が分離されているため、駆動部で発生した音響振動を振動板へ伝搬させることが必要である。このため同じ問題が存在する。
【0004】
振動の伝搬によって発生する問題を解決するため、駆動部と振動板を一体化させたスピーカが提案されている。このようなスピーカの1つにガムーゾンスピーカがある。ガムーゾンスピーカは、一般に、フィルムの基盤材に導電材を形成した構造となっている。ガムーゾンスピーカは、駆動部と振動板が一体となっているため、コーン型スピーカ等と比較して、分割振動や固有振動が発生しにくい構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3159714号「平面型音響変換装置」(WO99/03304の国際公開日:1999年01月21日)
【特許文献2】特開2007-201974号「環状回路のスピーカ」(公開日:2007年8月9日) 特許文献1に記載された発明は、特許第3159714号の図8及び図11に示すように、小片磁石とその周辺に形成された導電回路の組(セル)が多数形成され、これらの組が個別に独立して振動する構造となっている。
【0006】
従って、セル単位での分割振動、セル間での振動の遅れ等の問題が生じるおそれがある。つまり小片正方形磁石の辺の中央部と角では磁束値の違いがあり、1セル単位での磁束の強弱が導電回路に電流が流れた時に力の受け方が変化し、波打ち運動を起こすおそれがある。更に、複数のセル構成では一単位では微小ではあるもののそれぞれのセルでの個体差が集約且つ増幅され均等な振幅を得にくく、音質にも影響を及ぼすおそれがある。
【0007】
これに対して、本発明では、磁石と振動板に形成された導体パターン(コイル)との関係は、セル単位でなく、全体を1つの単位とした纏まった構成となっている。更に、最も強い磁束を利用できるように、楕円形の振動板の長手方向に沿って位置決めされた複数本の棒状磁石間に生じる磁束を最大限に有効に利用し、振動板の短手方向に従って位置決めされた棒状磁石は短くして磁束の発生を抑制する構成を採用している。更に、振動板を楕円円弧形状に形成することにより振動板のバタツキ現象を分散・抑制している。
【0008】
特許文献2に記載された発明は、ヨーク上に環状に配置され、順次大きなサイズをとる矩形枠状の複数個の磁石(特許文献2の図3参照)と、振動膜上に形成され、全体形状は正方形に形成された渦巻き状環状回路(同図4参照)とを備えた平面型スピーカの構造である。特許文献2に関しては、後ほど図7A及び7Bに関連して議論する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1及び2は、コーン型、ドーム型及びホーン型と比較して、ガムーゾンスピーカの長所・利点を有している。しかし、本発明者等は、これらのスピーカに関して鋭意研究した結果、更に幾つかの点で改良の余地があることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、新規な平面型スピーカを提供することを目的とする。
【0011】
上記目的に鑑みて、本発明に係る平面型スピーカは、前記平面型スピーカを横置きに設置した場合、前記平面型スピーカの横方向(X方向)に長い概して楕円形状に形成された振動板と、前記振動板に接近して、横方向(X方向)に延在する複数本のマグネットを備え、前記複数本のマグネットは、N極の棒状マグネットとS極の棒状マグネットが交互にほぼ並行に設置されて、前記平面型スピーカの縦方向(+Y方向又は−Y方向)の磁束を発生し、前記振動板に形成された導体パターンは、螺旋状に形成されたコイル状の一本の導体パターンであって、前記隣接する棒状マグメット間毎に複数回延在するパターン束を形成し、各パターン束では音響電流は同じ横方向(+X方向又は−X方向)に流れ、前記複数本のマグネットが発生する前記縦方向(+Y方向又は−Y方向)の磁束と前記パターン束に流れる横方向(+X方向又は−X方向)の音響電流との相互作用によって前記振動板を駆動する。
【0012】
更に、上記平面型スピーカでは、前記振動板は、ほぼ全面に前記導体パターンが形成され、前記導体パターン束に、前記平面型スピーカの奥行き方向(−Z方向)から近接しながら沿って、一方の側に前記N極の棒状マグネット他方の側にS極の棒状マグネットが配置されていてもよい。
【0013】
更に、上記平面型スピーカでは、前記振動板は、フレキシブルプリント基板で形成されていてもよい。
【0014】
更に、上記平面型スピーカでは、前記振動板は、液晶ポリマーを基材にした導体層が2層のフレキシブルプリント基板で形成されていてもよい。
【0015】
更に、上記平面型スピーカでは、前記平面型スピーカは、横置きした場合に横長の小型平面型スピーカでああってよい。
【0016】
更に、上記平面型スピーカでは、前記マグネットは、ネオジウム磁石から成ってよい。
【0017】
更に、上記平面型スピーカでは、前記棒状マグネットは、複数本のマグネット小片を連結して形成されていてもよい。
【0018】
更に、上記平面型スピーカでは、前記楕円形状振動板は、その周辺部をゴムエッジで支持され、前記ゴムエッジは、比較的薄く且つ断面を波状に形成した弾性体であり、支持系のスティフネスを低く抑えていてもよい。
【0019】
更に、上記平面型スピーカでは、前記マグネットは、概して桶状のフレームの底部分に固定され、前記フレームは、前記マグネットから発生する磁束の内、前記振動板に作用する有用な磁束以外の磁束を誘導するヨークとして機能していてもよい。
【0020】
更に、上記平面型スピーカでは、前記平面型スピーカの前面をパンチンググリル、側面をスペーサ、裏面を概して桶状のフレームで形成されたハウジングを構成し、前記パンチンググリル及び前記フレームには複数個の開口が夫々形成され、前記ハウジング内の局部的に不均一な内部圧力が前記振動板に加わらないようにしていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に依れば、新規な平面型スピーカを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本実施形態に係る平面型スピーカの各要素を別個に表示した分解斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す平面型スピーカの一部の要素間の組み込み関係を表示した分解斜視図である。
【図3】図3は、図1に示す平面型スピーカの振動板を示す図であり、ここでは表面及び裏面のパターンを夫々詳細に示している。
【図4】図4は、図1に示す平面型スピーカのマグネットの配置状況を説明する図である。
【図5A】図5Aは、図4のIV−IV'切断面から見た分解斜視図である。但し、図5Aには、図1に示す全ての要素を示している。
【図5B】図5Bは、図5Aに示す振動板とマグネットとの関係を説明する図である。
【図6A】図6Aは、図4のV−V'切断面から見た分解斜視図である。但し、図6Aには、図1に示す全ての要素を示している。
【図6B】図6Bは、図6Aに示す振動板とマグネットとの関係を説明する図である。
【図7A】図7Aは、特開2007-201974号の図3を転記した図である。但し、XYZ方向を規定する軸が追記されている。
【図7B】図7Bは、特開2007-201974号の図4を転記した図である。但し、XYZ方向を規定する軸が追記されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る平面型スピーカの実施形態に関して、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図面では同じ要素に対して同じ参照符号を付して、重複した説明を省略する。なお、これらの実施形態は、本発明を理解するための例示であって、本発明はこの実施形態に限定されないことを承知されたい。
【0024】
[平面型スピーカの構成]
図1は、本実施形態に係る平面型スピーカ本体の各要素を別個に表示した分解斜視図である。図1に示す平面型スピーカ1の外形サイズは、例えば、利用時に横置き設置した場合、約153mm幅×約40mm高さ×約8.5mm厚さ(奥行き)程度の比較的小型のスピーカである。
【0025】
平面型スピーカ1は、パンチンググリル2と、ダンパ−B4と、スペーサ6と、ゴムエッジ8と、振動板10と、ダンパ−A12と、マグネット14と、フレーム16と、端子18とを備えている。端子18を除くこれらの各要素は、パンチンググリル2から各要素の四隅に形成されたねじ穴に通されたネジ20によって、ネジ留めされ固定される。
【0026】
ここで、スピーカ1の各要素の位置・方向を容易に特定できるように、横に寝かせて設置した場合、図に示すように、幅方向をX方向、縦方向(高さ方向)をY方向、厚さ方向(奥行き方向)をZ方向と呼ぶことにする。スピーカ1から発せられるサウンドは、+Z方向に拡がって進むことになる。
【0027】
スピーカ1の各要素について説明する。
【0028】
スピーカ1は、概して、薄型の直方体の外形形状である。ハウジング又はエンクロージャとして、前面(表面)をパンチンググリル2で形成し、側壁4面をスペーサ6で形成し、後面(裏面)をフレーム16で形成する。
【0029】
パンチンググリル2は、例えば、材質アルミニウムで形成される。パンチンググリル2は、サウンドが前方(+Z方向)に効率良く伝搬するように、前面にはパンチング工法で形成された複数個の六角形グリル(開口)2pが形成されている。このため「ハニカムグリル」(honeycomb grill)とも呼ばれる。パンチンググリル2は、複数個のグリル2pを形成してハウジング内を外気と流通させることや、ダンパ−B4のカバーとして、耐入力を超えた極度の振動に対してそれを抑制し、ハウジング内の局部的に不均一な内部圧力が振動板10に加わらないようにしている。又、振動板及びダンパ−B4の保護もかねている。
【0030】
ダンパ−B4は、シート状の吸音材である。ダンパ−B4は、例えば、エステルウールから成り、ポリエステル100%で出来ており、軽くて軟らかく、空気層を沢山含んだ材質で、効率よく吸音する。エステルウールは、薄くて加工も簡単で、主にスピーカボックスの充填用・吸音材に用いられている。更に、ダンパ−B4は、振動板10が振動した時、パンチンググリル2に直接に接触しないように保護する機能も有している。
【0031】
スペーサ6は、上下方向(±Z方向)が開放された概して矩形の枠状であり、例えば、材質ABSで形成される。
【0032】
ゴムエッジ8は、比較的薄い概して楕円形の枠形状の弾性体であり、例えば、材質ニトリルゴム(NBR)又は発泡ウレタン(P.U. Foam)で形成される。NBRは、ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体から成る。ゴムエッジ8の断面形状は、好ましくは波状に形成されている。
【0033】
振動板10は、典型的にはフレキシブルプリント基板によって形成されている。「ダイヤフラム」(diaphragm)とも呼ばれる。このプリント基板10に関しては、後で、図3、図5B及び図6Bに関連して詳細に説明する。
【0034】
ダンパ−A12は、ダンパ−B4と同じである。
【0035】
マグネット14は、棒状の複数個の永久磁石からなる。マグネット14は、好ましくは、磁束密度が高いネオジウム磁石(「ネオジム磁石」ともいう。)から形成される。ネオジウム磁石は、好ましくは、防錆と強度を高めるため表面をニッケルメッキされている。このマグネット14に関しては、後で、図4、図5B及び図6Bに関連して詳細に説明する。
【0036】
フレーム16は、上方向(+Z方向)が開放された概して矩形の桶状であり、例えば、材質絞り加工に適した防錆処理のSPCC(普通鋼JIS G3141等)で形成される。フレーム16は、「ヨーク」とも呼ばれる。フレーム16は、複数個の細長い溝(開口)18pを形成してハウジング内を外気と流通させることで、放熱とハウジングの局部的に不均一な内部圧力が振動板10に加わらないようにしている。
【0037】
これらの要素の内、スピーカ1が音を発するための必須の要素は、振動板10及びマグネット14である。
【0038】
図2は、図1に示す平面型スピーカの一部の要素間の組み込み関係を表示した分解斜視図である。
【0039】
スペーサ6が形成する内部空間に、ダンパ−B4が収納され、更に振動板10の振動時の振幅空間を確保している。
【0040】
振動板10は、その周辺端部を枠形状のゴムエッジ8に対して、例えば、接着剤を用いて固着され、支持されている。振動板10を、比較的薄く且つ断面を波状に形成した弾性体のゴムエッジ8で支持することにより、支持系のスティフネスを低く抑えている。このため、振動板10は、音響信号に応答してスムーズに振動することが出来る。
【0041】
ダンパ−A12は、フレーム16の凹状に形成された空間に収納される。更に、この凹状の空間は、振動板10の振動時の振幅空間を確保している。
【0042】
フレーム16の底部分には複数の列に平行に並んだ細長い複数個の溝18pが形成されている。マグネット14は、フレーム16の底部分に、例えば、接着剤を使用して、夫々固定されている。フレーム16は、マグネット14のN極からS極に向かう磁束の内、振動板10に作用する有用な磁束以外の磁束を誘導するヨークとして機能する。
【0043】
端子18は、フレーム16の底部に鳩目金具で圧着留めされる。端子18の端子部18in,18outは、振動板10であるプリント基板の導体パターンの入力ランド9Fin(9Bin)及び出力ランド9Fout(9Bout)に夫々電気的に接続される(図3参照)。
【0044】
この比較的小型のスピーカ1は、最終製品として、単独で使用してもよい。或いは、このスピーカ1は、音響的に最適なスピーカボックス、スピーカキャビネット等に収納して使用してもよい。或いは、このスピーカ1は、他のラジオ、カーラジオ、MD、CD、DVD、ステレオセット等の音響機器、又はフラット型テレビジョンセット、ホームシアター等の映像・音響機器(AV機器)、又はパーソナルコンピューターに組み込んで使用してもよい。
【0045】
(振動板)
図3は、図1に示す平面型スピーカの振動板10の導体パターン9を説明する図である。表面側導体パターン9Fを10F(表面)として、表面側から透過して見た裏面側導体パターン9Bを10B(裏面)として、夫々詳細に図示している。
【0046】
振動板10は、典型的にはフレキシブルプリント基板によって形成されている。このプリント基板10は、仕上がりは、概して楕円形の外形である。プリント基板10は、例えば、基材(ベースフィルム)約t=20ミクロン厚の液晶ポリマー(LCP)10cから成り、基材の表裏両面に導体厚約35ミクロンの導体パターン9F,9Bが夫々形成され、これら導体パターンは約10ミクロン厚のソルダーレジスト又はコーティング(図示せず。)で夫々被覆されている。表裏の導体パターン9F,9Bは、位置9pに形成されたスルーホール(PTH:plated through hole)で電気的に接続されている。即ち、このプリント基板10は、導体層が2層のプリント基板である。なお、基材12cとして、ポリイミド、ポリエステル、PEN(ポリエチレンナフタレート)等の他のベースフィルムを使用してもよい。
【0047】
本実施形態に係る振動板10の特徴は、外形仕上がりを概して楕円形としている点にある。本発明者等は、従来、スピーカのサウンドを高出力にした場合、振動板の端部が異常振動(バタツキ)を誘発しやすいことを経験している。この端部の異常振動に関して調査研究を重ねた結果、航空機の分野では、航空機(特に、プロペラ機)の主翼端部の異常振動を空気力学的に抑制するため、端部を楕円形に形成していることが分かった。更に、自然界では飛行中の鳥類、昆虫類等の羽根の先端形状は、全てカーブして形成されている。ここからヒントを得て、振動板10の外形仕上がりを概して楕円形にして試験した結果、サウンドを高出力にしても振動板端部の異常振動(バタツキ)を抑制できることを発見したのである。
【0048】
(振動板のパターン形状)
次に、パターン形状について、表面側10F及び表面側から透過して見た裏面側10Bを夫々説明する。
【0049】
表面側導体パターン10Fの下端部(−X方向端部)に入力ランド9Finと出力ランド9Foutが形成されている。裏面側導体パターン10Bの下端部(−X方向端部)に入力ランド9Binと出力ランド9Boutが形成されている。入力ランド9Finと入力ランド9Binとは、スルーホールによって電気的に接続されている。同様に、出力ランド9Foutと出力ランド9Boutとは、スルーホールによって電気的に接続されている。入力ランド9Finは、表面側導体パターン10Fに電気的に接続されている。出力ランド9Foutは、裏面側導体パターン10Bに電気的に接続されている。位置9pには、複数個の非常に小さなスルーホール(例えば、0.2mm径のPTHを5個)が形成され、表裏両面の導体パターンを電気的に接続している。
【0050】
全体的に言えば、入力ランド9Fin(9Bin)から始まる表面側導体パターン9Fは、プリント基板表面(10F)側を一筆書きのように進み(即ち、コイルを形成し)、位置9pで裏面側導体パターン9Bに移り、プリント基板裏面(9B)側を一筆書きのように進み(即ち、コイルを形成し)、出力ランド9Bout(9Fout)で終了する。入力ランド9Fin(9Bin)から出力ランド9Bout(9Fout)への接続は、表面側導体パターン9Fでは、パターン束9F6と9F1を外側から順次内側に周回し、反転してパターン束9F2と9F5を逆回りに外側から順次内側に周回し、再び反転してパターン束9F4と9F3を外側から順次内側に周回する。引き続き、裏面側導体パターン9Bに移り、パターン束9B4と9B3を内側から順次外側に周回し、反転してパターン束9B2と9B4を逆回りに内側から順次外側に周回し、再び反転してパターン束9B6と9B1を内側から順次外側に周回する。外観的には、パターン束(9F6と9F1)、(9F2と9F5)、(9F4と9F3)、(9B4と9B3)、(9B2と9B4)及び(9B6と9B1)は、各々が、概して楕円形となるように形成されている。
【0051】
詳細に説明すると、音響信号(交流電流)が入力ランド9Fin(9Bin)から出力ランド9Bout(9Fout)に向けて流れたと仮定する。入力ランド9Fin(9Bin)からの交流電流は、表面側導体パターン10Fのパターン束9F6及び9F1を外周から内側に反時計方向に渦巻き状に2周する。その後、X方向端部で反転して、パターン束9F2及び9F5を外周から内側に時計方向に渦巻き状に5周する。その後、X方向端部で反転して、パターン束9F4及び9F3を外周から内側に反時計方向に渦巻き状に5周する。
【0052】
その後、位置9pでスルーホールを経由して、表面側導体パターン10Fに進み、パターン束9B4及び9B3を内周から外周に反時計方向に渦巻き状に5周する。その後、X方向端部で反転して、パターン束9B2及び9B5を内周から外周に時計方向に渦巻き状に5周する。その後、X方向端部で反転して、パターン束9B6及び9B1を内周から外側に反時計方向に渦巻き状に2周する。最後に、交流電流は、出力ランド9Bout(9Fout)から流出する。
【0053】
従って、或る瞬間では、電流の向きに関しては太い矢印で図示するように、1個おきのパターン束9F1(9B1)に流れる電流iF1(iB1)、9F3(9B3)に流れる電流iF3(iB3)、9F5(9B5)流れる電流iF5(iB5)は、全て−X方向である。残りの1個おきのパターン束9F2(9B2)に流れる電流iF2(iB2)、9F4(9B4)に流れる電流iF4(iB4)、9F6(9B6)に流れる電流iF6(iB6)は、全て+X方向となる。次の瞬間、これらの電流の向きは逆方向に反転する。
【0054】
本実施形態に係る振動板10の特徴は、振動板の全面にわたって導体パターン(コイル)が形成されている点にある。従って、後で説明するように、磁界により導体パターンに力fがかかり駆動された場合、振動板全体が一様に振動することになる。
【0055】
更に、振動板10の導体パターンの走行方向は、全体的に楕円形状に形成されている、即ち、X方向成分のみでY方向成分が極めて少ない点にある。また、導体パターンのX方向両端部では、(i)基板の楕円形状端部に合わせた形状とし、(ii) Y方向成分が極めて少なくなる走行方向とし、(iii)コイル状に一筆書きにするため他の導体パターンに接続するため、楕円形状の端部に沿った走行方向となっている。
【0056】
このようなプリント基板10は、例えば、典型的なプリント基板の工法であるサブトラクティブ工法を利用して製造することができる。具体的には、図示していないが、フレキシブルプリント基板用の厚さ18ミクロン程度の銅箔が両面に張られた両面銅張液晶ポリマー基板に対して、スルーホール用の孔明けを行い、化学銅メッキ(無電解銅めっき)及び電解メッキを厚さ約18ミクロン程度行う。その後、リゾグラフィ法を利用して、表裏両面にエッチングレジストをラミネートし、導体パターン9F,9Bの形状に対応するマスクを重ねて焼き付け、現像し、その後、エッチングレジストを剥離する。最後に、導体パターン9F,9Bに対してソルダーレジスト又はコーティングを被覆する。その後、外形加工を行い完成する。しかし、勿論、プリント基板10を他の工法で製造してもよい。
【0057】
(マグネット)
図4は、図1に示す平面型スピーカのマグネット14の配置状況を説明する図である。マグネット14は、加工容易性及び所望の配置を容易に実現出来るように、棒状の複数個のマグネット小片から形成される。マグネット小片は、両端に配置された8個の比較的短いマグネット小片と、中央部に配置された15個の比較的長いマグネット小片とから成る。比較的短いマグネット小片は、長さ約6mm、幅約3mm、厚み約2.5mmであり、半数の3個がN極の磁性、残り半数の3個がS極の磁性を帯びている。比較的長いマグネット小片は、長さ約35mm、幅約3mm、厚み約2.5mmであり、6個がN極の磁性、9個がS極の磁性を帯びている。
【0058】
マグネット14の配置状況は、中央部に横方向(X方向)に3個の比較的長いマグネット小片を横方向に連続するように配置する。これを4列、夫々が平行になるように配置する。第1,2,4及び5列のマグネットの両端に、比較的短いマグネット小片を横方向に連続するように夫々配置する。これら比較的短いマグネット小片は、概して楕円形の振動板10の配線形状の両端部に合わせて、中央部に収束するように少し角度を持たせて位置決めされている。
【0059】
具体的には、第1列は、S極の比較的長いマグネット小片1412,1413,1414から成る。両端部には、S極の比較的短いマグネット小片1411,1415が夫々配置される。第2列は、N極の比較的長いマグネット小片1422,1423,1424から成る。両端部には、N極の比較的短いマグネット小片1421,1425が夫々配置される。第3列は、中心線(図示せず。)に沿って、S極の比較的長いマグネット小片1432,1433,1434から成る。両端部には、S極の比較的短いマグネット小片1431,1435が夫々配置される。第4列は、N極の比較的長いマグネット小片1442,1443,1444から成る。両端部には、N極の比較的短いマグネット小片1441,1445が夫々配置される。第5列は、S極の比較的長いマグネット小片1452,1453,1454から成る。両端部には、S極の比較的短いマグネット小片1451,1455が夫々配置される。
【0060】
本実施形態のマグネットの特徴は、振動板に前面に形成された導体パターンに合わせて、マグネット14が、フレーム16の底部前面に配置されている点にある。更に、5列の棒状永久磁石の全てが、実質的に幅方向(X方向)に沿って配置されていることにある。高さ方向(Y方向)に沿って配置されたマグネット小片は存在しない。N極の棒状マグネットから出る磁束は、平行に沿って位置する隣接S極の棒状マグネットへ向かう。従って、図4に示すように配置されたマグネット14が形成する磁束の方向は、ほぼ全て幅方向(±Y方向)に向かっている。
【0061】
(振動板とマグネットの位置関係)
図3に示すプリント基板10に形成された導体パターン9Fn,9Bn(n=1,2,…6)と、図4に示す第1列〜第5列のマグネット141m〜145m(m=1,2,…5)との位置関係について説明する。図1で説明したように、ネジ留めして組み立てた段階では、厚み方向(Z方向)に見て、第1列のマグネット141mの外側に沿って導体パターン束9F1,9B1が位置する。第1列〜第2列のマグネット141m,142mの間隙に沿って導体パターン束9F2,9B2が位置する。第2列〜第3列のマグネット142m,143mの間隙に沿って導体パターン束9F3,9B3が位置する。第3列〜第4列のマグネット143m〜144mの間隙に沿って導体パターン束9F4,9B4が位置する。第4列〜第5列のマグネット144m〜145mの間隙に沿って導体パターン束9F5,9B5位置する。第5列のマグネット145mの外側に沿って導体パターン束9F6,9B6が位置する。音響電流(交流電流)は、何時でも、9F1(9B1)、9F3(9B3)、9F5(PB5)には同じ方向に流れ、9F2(9B2)、9F4(9B4)、9F6(PB6)には反対方向に流れる。
【0062】
(マグネットによる振動板の駆動関係)
図5Aは、図4のIV−IV'切断面から見た分解斜視図である。但し、図5Aには、図1に示す全ての要素を示している。図1に関連して説明したように、平面型スピーカ1は、パンチンググリル2と、ダンパ−B4と、スペーサ6と、ゴムエッジ8と、振動板10と、ダンパ−A12と、マグネット14と、フレーム16とを備えている。
【0063】
図5Bは、図5Aに示す振動板10とマグネット14との関係を説明する図である。分かり易くするため、振動板10とマグネット14との間隙は拡大して広く描かれている。しかし、ネジ留めして組み立てた段階では、この間隙は、非常に狭く、本実施形態では約1.5mm程度である。図3に示す振動板10から分かるように、プリント基板の表裏両面に形成された導体パターン9F,9Bは、幅方向(X方向)に走行している。音響信号(交流電流)は、これら導体パターン9F,9Bを瞬時的に+X方向又は−X方向に向かって流れ、次の瞬間には流れる方向を一斉に逆方向に反転する。一方、フレーム16内に設置されたマグネット14は、図4に関連して説明したように、常時紙面に対して垂直方向(±Z方向)の磁束を発生している。
【0064】
或る瞬間を例にとって説明する。図5Bに示すように、第3列のマグネット143Mと第4列のマグネット144Mの間では+Y方向の磁束φが発生している。この時、導体パターン9F4,9B4に電流iF4,iB4が+X方向に向かって流れたとする。ここでは、導体パターン9F4,9B4、即ち、振動板10に−Z方向の力fが発生する。
【0065】
同時に、第1列のマグネット141Mと第2列のマグネット143Mの間では+Y方向の磁束φが発生している。導体パターン9F2,9B2には電流iF2,iB2が+X方向に向かって流れる。この時、導体パターン9F2,9B2、即ち、振動板10に−Z方向の力fが発生する。同様に、第2列のマグネット142Mと第3列のマグネット143Mの間では−Y方向の磁束φが発生している。導体パターン9F3,9B3には電流iF3,iB3が−X方向に向かって流れる。この時、導体パターン9F3,9B3、即ち、振動板10に−Z方向の力fが発生する。同様に、第4列のマグネット144Mと第5列のマグネット145Mの間では−Y方向の磁束φが発生している。導体パターン9F5,9B5には電流iF5,iB5が−X方向に向かって流れる。この時、導体パターン9F5,9B5、即ち、振動板10に−Z方向の力fが発生する。即ち、振動板10を全体的に−Z方向に駆動する力fが発止する。
【0066】
次の瞬間、磁束φの方向はそのままで、電流iの流れる方向が反転する。この時、振動板10を全体的に+Z方向に駆動する力fが発止する。このようにして、音響信号(交流電流)の大きさ及び方向に応答して、振動板10が振動する。
【0067】
図6Aは、図4のV−V'切断面から見た分解斜視図である。但し、図6Aには、図1に示す全ての要素を示している。図1に関連して説明したように、平面型スピーカ1は、パンチンググリル2と、ダンパ−B4と、スペーサ6と、ゴムエッジ8と、振動板10と、ダンパ−A12と、マグネット14と、フレーム16とを備えている。

図6Bは、図6Aに示す振動板とマグネットとの関係を説明する図である。図6Bに示す内容は、図5Bで説明した内容と技術的に同じ内容である。振動板10とマグネット14との間隙は、分かり易くするため拡大して広く描かれている。図3に示す振動板10から分かるように、プリント基板の表裏両面に形成された導体パターン9F,9Bは、Z方向に走行している。音響信号(交流電流)は、隣接する導体パターン9F,9Bを逆方向(+X方向又は−X方向)に向かって流れ、次の瞬間には流れる方向を逆方向に一斉に反転する。一方、フレーム16内に設置されたマグネット14は、±Y方向の磁束を発生している。
【0068】
或る瞬間を例にとって説明する。図6Bに示すように、第1列のマグネット141Mと第2列のマグネット142Mの間では+Y方向の磁束φが発生している。この時、導体パターン9F2,9B2に電流iF2,iB2が+X方向に向かって流れたとする。ここでは、導体パターン9F2,9B2、即ち、振動板10に−Z方向の力fが発生する。
【0069】
同時に、第2列のマグネット142Mと第3列のマグネット143Mの間では−Y方向の磁束φが発生している。導体パターン9F3,9B3には電流iF3,iB3が−X方向に向かって流れる。この時、導体パターン9F3,9B3、即ち、振動板10に−Z方向の力fが発生する。同様に、第3列のマグネット143Mと第4列のマグネット144Mの間では+Y方向の磁束φが発生している。導体パターン9F4,9B4には電流iF4,iB4が+X方向に向かって流れる。この時、導体パターン9F4,9B4、即ち、振動板10に−Z方向の力fが発生する。同様に、第4列のマグネット144Mと第5列のマグネット145Mの間では−Y方向の磁束φが発生している。導体パターン9F5,9B5には電流iF5,iB5が−X方向に向かって流れる。この時、導体パターン9F5,9B5、即ち、振動板10に−Z方向の力fが発生する。即ち、振動板10を全体的に−Z方向に駆動する力fが発止する。
【0070】
次の瞬間、磁束φの方向はそのままで、電流iの流れる方向が反転する。この時、振動板10を全体的に+Z方向に駆動する力fが発止する。このようにして、音響信号(交流電流)の大きさ及び方向に応答して、振動板10が振動する。
【0071】
(特許文献2との比較)
図7Aは、特開2007-201974号の図3を転記した図である。但し、XYZ方向を規定する軸が追記されている。図7Bは、特開2007-201974号の図4を転記した図である。但し、XYZ方向を規定する軸が追記されている。
【0072】
図7Aに示すように、段々と大きなサイズの正四角形の枠形状のS極磁石1c、N極磁石1d、S極磁石1e、N極磁石1f、S極磁石1gが、同心状に配置されている。これに対応する振動板1iには、段々と大きなサイズの正四角形の枠形状の誘導回路1hが形成されている。
【0073】
振動板1iがスムーズに振動するためには、磁石1c〜1gの配置は中心点に関して点対称であり、これに対応して誘導回路1hの走行形状も中心点に関して点対称であること、即ち、両者共に正方形に形成されていることが好ましい。従って、前面が横長のスピーカよりは、正方形のスピーカに一層適している。
【0074】
更に、図7Aから分かるように、中心部より周辺部の方が隣接するN−S磁石の長さが長くなっている。図7Bに示すように、これを受けるライン束も中心部より周辺部の方が長くなっている。従って、中心部より周辺部の方で、振動板にはより大きな力fが発生しているものとおもわれる。
【0075】
更に、図7Aから分かるように、隣接する磁石のX方向に延在する部分の間に発生する磁束φは、±Y方向となっている。同様に、隣接する磁石のY方向に延在する部分の間に発生する磁束φは、±X方向となっている。従って、特に、正四角形の四隅では、X方向の磁束とY方向の磁束が混在することになる。図7Bに示すように、隣接する磁石のX方向に延在する部分の間には、X方向に延在する誘導回路1hが形成されている。同様に、隣接する磁石のY方向に延在する部分の間には、Y方向に延在する誘導回路1hが形成されている。従って、特に、正四角形の四隅では、X方向に延在する誘導回路1hは、X方向とY方向の磁束の影響を受けることになる。従って、特に、正四角形の四隅では、振動板に対して複雑な力が発生すると思われる。
【0076】
[本実施形態の利点・特徴・効果]
本実施形態に係る平面型スピーカは、次のような利点・特徴・効果を有している。
【0077】
(1)振動板が楕円形に形成されている。従って、サウンドを高出力した時の振動板端部の異常振動(バタツキ)を抑制できる。
【0078】
(2)振動板が、フレキシブルプリント基板により形成されている。フレキシブルプリント基板の略全面にパターンを形成し、このパターンを直接駆動させているため、分離の良い高音質な低音の再生が可能となった。
【0079】
(3)振動板の全面に導体パターン(コイル)が形成されている。更に、両面に導体パターンを形成したプリント基板とすることで、振動板に一層多数の導体パターンを形成することができる。このため、振動板の略全体をコイルによる駆動部とすることが出来、理想的な全面駆動型平面型スピーカとすることが出来る。従来のガムーゾンスピーカでは、振動板に対するコイル部の割合が限られていた。本実施形態に係るガムーゾン型平面型スピーカは、振動板の表裏の略全面に形成された楕円コイルを採用することにより、振動板の全面を同位相で駆動させることが可能となり、広い帯域で過渡特性、位相特性の良好なスピーカが実現できる。
【0080】
(4)振動板の導体パターンは、ほぼ全て幅方向(±X方向)に延在している。音響信号(交流電流)の流れの方向を揃えて、一定方向の磁界中で受ける力fの方向を均一化することができる。
【0081】
(5)振動板の導体パターンは、外観的には、概して楕円形状に形成されている。振動板の楕円形と共に、高出力時の振動板端部の異常振動(バタツキ)を抑制している。
【0082】
(6)マグネットが、振動板の導体パターンに対応して、フレームの底部全面に配置されている。効率の良い磁界を形成している。
【0083】
(7)マグネットの配置は、振動板の隣接導体パターンの間隙に対応して、ほぼ全て幅方向(±X方向)に延在している。複数本のマグネットを使用し、N極のマグネットとS極のマグネットを交互に配置することで、磁束のほぼ全てが±Y方向に向かうようにしている。磁束の方向を揃えて、一定方向に延在する導体パターンに対して作用する力fの方向を均一化することができる。
【0084】
(8)振動板の導体パターンがほぼ全て幅方向(±X方向)に延在し、マグネットから発生する磁束が±Y方向に向かうため、効率の良いスピーカが実現できる。更に、振動板の全面に導体パターンが形成され、フレームの底部全面にマグネットが形成されているため、小型でも高出力のスピーカが実現できる。
【0085】
(9)マグネットの端部は、導体パターンの概して楕円形状の長手方向端部に対応して、短いマグネットを配置している。
【0086】
(10)マグネットは、桶状のフレームの底部に配置されている。フレームは、ヨークとなっていりため、マグネットから振動板に有用に作用する磁束以外の磁束を誘導している。即ち、無用・有害な磁束の発生が抑制されている。
【0087】
(11)本実施例では、横長の平面型スピーカを実現できる。振動板の形状及びマグネットの配置状況を横長の楕円形状としたためである。
【0088】
(12)振動板の両面サイドにダンパを配置することで、振動板の過度の振動を抑制し、更に振動板が他の部材(パンチンググリル、フレーム)に接触・衝突するのを防止している。
【0089】
(13)駆動部と振動板を一体化させているため、駆動部から振動板への振動伝搬がない。これにより、部品間の振動伝搬が無くなって、部品の材質に依存しない純粋な音質とすることが出来る。
【0090】
(14)磁気回路の一部にコイル部が組み込まれていないため、これまでの主要なスピーカのように磁気回路の影響を受けることがない。従って、透磁率の非直線性による歪み(電流歪み)が非常に少ない。
【0091】
(15)従来のガムーゾンスピーカは、振動板に薄いフィルムを使用していたため空気圧の変化に弱く、低温域を忠実に再現することは困難であった。本実施形態に係るガムーゾンスピーカは、振動板をフレキシブルプリント基板で形成し、或る程度の剛性をも確保している。更に、ハウジングを形成するパンチンググリル2及びフレーム16の前面に開口2p,16pを形成することにより、ハウジング内部の圧力の変化を受けにくい。
【0092】
(16)本実施形態に係るガムーゾンスピーカは、苦手とする周波数帯域が存在しないため、全周波数帯域で採用して音の特徴を統一させることが出来る。
【0093】
(17)振動板は、振動を伝搬させる必要がないため、伝搬させる部品の疲労が原因となる音質劣化が無くなる。また、コーン紙のような紙類を使用していないため、音質の経年劣化が非常に少ない。
【0094】
(18) 本実施形態に係るスピーカは、振動板10を、弾性の比較的薄く且つ断面を波状に形成したゴムエッジで支持することにより、支持系のスティフネスを低くできる。スティフネスを低くすることにより、支持系の非直線性を軽減でき、f0(最低共振周波数)を低下させることが出来る。
【0095】
(19)振動板の全てを頑丈なコイルで形成して駆動部としているため、キャビネット内部の圧力の変化を受けにくい。
【0096】
(20)振動板をコンパクトな(比較的小さなサイズの)フレキシブルプリント基板で形成して駆動部としているため薄型化が可能であり、平面薄型の小型スピーカが実現できる。
【0097】
(21)必要とされる部品点数が少ないため、構造的にシンプルである。そのため、振動に対しても、構造的に安定している。
【0098】
(22)振動板が薄く平らな構造であるため、放熱性に優れている。また、振動系のほとんどをコイル部とすることが出来るため、耐入力を大きくできる。
【0099】
(23)振動板10の振幅が限度を超える場合でも、ダンパ−A12及びダンパ−B4の存在により、マグネット14又はパンチンググリル2に直接接触しない。従って、振動板10は、破壊されない。
【0100】
[変形例・その他]
以上、本実施形態に係る平面型スピーカの実施形態に関して説明したが、これらは例示であって、本発明はこれに限定されない。当業者が容易になし得る実施形態に対する不可・変更・削除・改良等は、本発明の範囲内である。
【0101】
本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の記載によって定められる。
【符号の説明】
【0102】
1:平面型スピーカ、 2:パンチンググリル、 2p:開口,六角形グリル、 4:ダンパ−B、 6:スペーサ、 8:ゴムエッジ、 9:導体パターン、 9F:表面側導体パターン、 9F1〜9F6:表面側導体パターン束、 9B:裏面側導体パターン、 9B1〜9B6:裏面側導体パターン束、 9p:スルーホール、 10:振動板,フレキシブルプリント基板、 10F:振動板表面,フレキシブルプリント基板表面、 10B:振動板裏面,フレキシブルプリント基板裏面、12:ダンパ−A、 14:マグネット、 1411〜1455:マグネット小片、 16:フレーム、 16p:開口,溝、 18:端子、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面型スピーカに於いて、
前記平面型スピーカを横置きに設置した場合、
前記平面型スピーカの横方向(X方向)に長い概して楕円形状に形成された振動板と、
前記振動板に接近して、横方向(X方向)に延在する複数本のマグネットを備え、
前記複数本のマグネットは、N極の棒状マグネットとS極の棒状マグネットが交互にほぼ並行に設置されて、前記平面型スピーカの縦方向(+Y方向又は−Y方向)の磁束を発生し、
前記振動板に形成された導体パターンは、螺旋状に形成されたコイル状の一本の導体パターンであって、前記隣接する棒状マグメット間毎に複数回延在するパターン束を形成し、各パターン束では音響電流は同じ横方向(+X方向又は−X方向)に流れ、
前記複数本のマグネットが発生する前記縦方向(+Y方向又は−Y方向)の磁束と前記パターン束に流れる横方向(+X方向又は−X方向)の音響電流との相互作用によって前記振動板を駆動する、平面型スピーカ。
【請求項2】
請求項1に記載の平面型スピーカに於いて、
前記振動板は、ほぼ全面に前記導体パターンが形成され、
前記導体パターン束に、前記平面型スピーカの奥行き方向(−Z方向)から近接しながら沿って、一方の側に前記N極の棒状マグネット他方の側にS極の棒状マグネットが配置されている、平面型スピーカ。
【請求項3】
請求項1に記載の平面型スピーカに於いて、
前記振動板は、フレキシブルプリント基板で形成されている、平面型スピーカ。
【請求項4】
請求項1に記載の平面型スピーカに於いて、
前記振動板は、液晶ポリマーを基材にした導体層が2層のフレキシブルプリント基板で形成されている、平面型スピーカ。
【請求項5】
請求項1に記載の平面型スピーカに於いて、
前記平面型スピーカは、横置きした場合に横長の小型平面型スピーカである、平面型スピーカ。
【請求項6】
請求項1に記載の平面型スピーカに於いて、
前記マグネットは、ネオジウム磁石から成る、平面型スピーカ。
【請求項7】
請求項1に記載の平面型スピーカに於いて、
前記棒状マグネットは、複数本のマグネット小片を連結して形成されている、平面型スピーカ。
【請求項8】
請求項1に記載の平面型スピーカに於いて、
前記楕円形状振動板は、その周辺部をゴムエッジで支持され、
前記ゴムエッジは、比較的薄く且つ断面を波状に形成した弾性体であり、支持系のスティフネスを低く抑えている、平面型スピーカ。
【請求項9】
請求項1に記載の平面型スピーカに於いて、
前記マグネットは、概して桶状のフレームの底部分に固定され、
前記フレームは、前記マグネットから発生する磁束の内、前記振動板に作用する有用な磁束以外の磁束を誘導するヨークとして機能している、平面型スピーカ。
【請求項10】
請求項1に記載の平面型スピーカに於いて、
前記平面型スピーカの前面をパンチンググリル、側面をスペーサ、裏面を概して桶状のフレームで形成されたハウジングを構成し、
前記パンチンググリル及び前記フレームには複数個の開口が夫々形成され、前記ハウジング内の局部的に不均一な内部圧力が前記振動板に加わらないようにしている、平面型スピーカ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate


【公開番号】特開2010−258495(P2010−258495A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102686(P2009−102686)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(509352060)
【Fターム(参考)】