説明

建物の空調システム

【課題】人が建物から離れて移動している場合にその移動状態に合わせて建物内空間の自然換気を行い、しかも、自然換気の効率を高めつつ建物の防犯性が低下することを回避する。
【解決手段】建物10には窓部11が設けられており、窓部11はシャッタ装置21により開閉される。シャッタ装置21は、スラット式のシャッタカーテンを有しており、シャッタカーテンにおける上部のスラットが開放されることで通気部が確保される。また、建物10には、ホームサーバ51が設置されており、ホームサーバ51にはシャッタ制御部55等が接続されている。ホームサーバ51は、インターネット66に接続可能な通信部52を有しており、その通信部52を介して車両Cの位置情報を取得し、その位置情報に基づいてシャッタ制御部55の動作制御を行い、前記上部のスラットを開放させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
制御対象を遠隔操作するシステムとして、車両から建物設備を遠隔操作するシステムがある。例えば特許文献1に、車両側ネットワークシステムと建物側ネットワークシステムとを含んで構築された双方向交換情報システムにおいて、車両側から建物側に対して指令信号が出力されることでエアコンの動作制御が行われる構成が開示されている。この場合、人が建物内にいなくても建物内空間の温度調整を行うことが可能となる。
【特許文献1】特開2000−209674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、単にエアコンの動作制御を行うことで建物内空間の温度を調整する構成では、省エネルギ化を図ることが困難になる。そこで、省エネルギ化を実現するために、例えば、自然換気を行うことで建物内空間の温度調整を行う構成が考えられるが、通気口による自然換気ではその通気量が十分に得られないおそれがある。また、窓や出入口等を開放することで行う自然換気では防犯性が低下するおそれがあり、人が建物内にいない場合における建物内空間の温度調整としては好ましくない。つまり、自然換気に関して改善の余地がある。
【0004】
本発明は、人が建物から離れて移動している場合にその移動状態に合わせて建物内空間の自然換気を行い、しかも、自然換気の効率を高めつつ建物の防犯性が低下することを回避することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、第1の発明は、スラットが複数並べられることにより構成されたスラット式シャッタカーテンを有し、当該シャッタカーテンにより建物に形成された開口部を閉鎖可能とされており、その閉鎖状態において前記スラットが回転することにより他のスラットとの間に通気部が形成されるシャッタ装置と、前記建物からの移動体の距離に基づいて、前記通気部を確保するように前記シャッタ装置を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0006】
第1の発明によれば、スラット式シャッタカーテンの通気部を通じて自然換気が行われるため、省エネルギ化を図りつつ建物内空間の温度調整や湿度調整を行うことが可能となる。また、通気部はスラットに沿って延びるように形成されるため、例えば建物の外壁に小さな換気口が通気部として形成されている場合に比べて通気部の通気量を増加させることができる。つまり、自然換気の効率を高めることができる。また、移動体が、例えば車両や携帯機等のように帰宅時に人と一体に移動すると想定されるものであれば、帰宅時に住人の現在位置に合わせて通気部が確保されるため、住人が建物に到着する前に建物内空間を好適な温度や湿度に調整しておくことが可能となる。さらに、通気部は隣接するスラットの間の隙間に相当するため、不審者等が通気部から手や棒などを建物内に差し入れることが困難になっている。したがって、通気部による自然換気は住人が不在である場合において好適である。以上の結果、人が建物から離れて移動している場合にその移動状態に合わせて建物内空間の自然換気を行うことができ、しかも、自然換気の効率を高めつつ建物の防犯性が低下することを回避できる。
【0007】
第2の発明では、前記各スラットは上下に並ぶように配置されており、前記制御手段は、各スラットのうち前記開口部の上部に配置された一部のスラットを開放させることで前記通気部を確保する。
【0008】
第2の発明によれば、通気部は開口部の上部に確保されるため、不審者等にとっては通気部に手を届かせること自体が難しくなり、まして通気部から建物内を覗きこむことはより一層困難となる。したがって、建物内空間の自然換気を行うに際して、建物における防犯性をより一層高め、さらに住人等のプライバシーをも保護することができる。
【0009】
第3の発明では、前記開口部を開閉する窓サッシを有し、該窓サッシが前記スラット式カーテンと屋内側にて重なるように配置された窓サッシ装置を備え、前記制御手段は、前記通気部を確保するように前記シャッタ装置を制御する場合に、前記開口部を開放するように前記窓サッシ装置を制御する。
【0010】
第3の発明によれば、スラット式シャッタカーテンにおいて通気部が確保された場合に、窓サッシにより開口部が開放される。したがって、通気部が確保されているにもかかわらず、建物内空間の自然換気が行われないといった不都合の発生を回避できる。
【0011】
第4の発明では、前記建物内の空気環境を検出する環境検出手段と、建物内空間の空気環境の調整を行う空調装置とを備え、前記制御手段は、前記環境検出手段の検出結果に基づいて、前記シャッタ装置及び前記空調装置の動作制御を行う。
【0012】
第4の発明によれば、建物内空間から空気を排出しつつ温度調整が行われるため、建物内空間に冷気や暖気がこもっていても、それら冷気や暖気を排出することで温度調整を効率良く行うことができる。つまり、建物内の空気環境に合わせて温度調整を好適に行うことができる。
【0013】
第5の発明では、前記制御手段は、前記シャッタ装置を前記空調装置よりも優先して動作させる。
【0014】
第5の発明によれば、建物内空間について、自然換気による空調が優先的に行われるため、省エネルギ化を促進することができる。
【0015】
第6の発明では、降雨を検出する雨検出手段を備え、前記制御手段は、前記雨検出手段により降雨が検出された場合に前記通気部を閉じるように前記シャッタ装置を制御する。
【0016】
第6の発明によれば、降雨時には雨がスラットにより遮られるため、通気部から建物内に雨が降り込むことがない。したがって、建物内空間の自然換気を好適に行いつつ、建物内に雨水が浸入することを回避できる。
【0017】
第7の発明では、不審者を検出する不審者検出手段を備え、前記制御手段は、前記不審者検出手段により不審者が検出された場合に前記通気部を閉じるように前記シャッタ装置を制御する。
【0018】
第7の発明によれば、敷地内に侵入した不審者が手や棒などを通気部から建物内に差し込もうとしてもそれができないため、不審者が建物内に侵入することを回避できる。したがって、建物内空間の自然換気を好適に行いつつ、建物の防犯性を高めることができる。
【0019】
第8の発明では、前記移動体との通信が可能な通信手段と備え、前記制御手段は、前記不審者検出手段により不審者が検出された場合にその旨を前記移動体に報知するように前記通信手段を制御する。
【0020】
第8の発明によれば、敷地内に不審者がいることなどを移動体から住人に報知することができる。この場合、住人が外出中であっても敷地内に不審者が侵入したことを警察に通報することが可能となり、犯罪に対していち早く対応することができる。また、帰宅した住人が不審者と鉢合わせすることを回避したりすることが可能となり、住人の安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、建物10の空調システムの構成を示す概略図、図2は、窓部11周辺の構成を示す図である。なお、図2(a)は窓部11の側面図であり、図2(b)は屋内側から見た窓部11の正面図である。
【0022】
図1に示すように、住宅等の建物10は、外壁に形成された開口部としての窓部11を有している。建物10には、窓部11を開閉するシャッタ装置21が設けられている。図2(a)に示すように、シャッタ装置21は窓部11の屋外側に配置されており、横長箱状のシャッタケース22と、そのシャッタケース22に巻回された状態で収納されるシャッタカーテン23とを有している。シャッタケース22は、窓部11の上方に取り付けられており、シャッタカーテン23を下方に向けて繰り出す。シャッタカーテン23は、シャッタケース22から繰り出されることで下降し、シャッタケース22内にて巻き取られることで上昇する。つまり、シャッタカーテン23は、下方に移動することで窓部11を閉鎖し、上方に移動することで窓部11を開放する。
【0023】
シャッタ装置21について、図3を参照しつつ詳細に説明する。図3は、電気的な構成を含んだシャッタ装置21の正面図である。なお、図3は、シャッタ装置21を屋外側から見た図である。
【0024】
図3に示すように、シャッタ装置21において、シャッタカーテン23は、複数のスラット25を有するスラット式シャッタカーテンであり、各スラット25が上下に連結されて構成されている。各スラット25は、それぞれ横長板状に形成されており、上下に並ぶように配置されている。それらスラット25は、上下に隣接するスラットとそれぞれの一部が互いに係合されており、一体的に上昇したり下降したりする構成となっている。この結果、シャッタカーテン23として窓部11の開閉が可能となっている。シャッタカーテン23は、ガイドレール26に沿って昇降する構成となっており、ガイドレール26は、外壁における窓部11の左右両側に取り付けられている。なお、スラット25同士の結合連結の構成については周知であるため、ここでは図示による説明を省略する。
【0025】
多数のスラット25のうち最上部となるスラットは、シャッタケース22内に設置されている巻取ドラム27と連結されており、巻取ドラム27が回転することでシャッタカーテン23の巻き取りや繰り出しが行われる。シャッタ装置21には、電動モータ等を含んで構成されている巻取駆動部28が設けられており、その巻取駆動部28が駆動することで巻取ドラム27が回転する。したがって、巻取駆動部28の駆動に伴ってシャッタカーテン23の上昇や下降が行われ、窓部11の開閉が行われる。
【0026】
スラット25は、水平方向に延びる軸線を中心として回転する構成となっており、回転することで開状態及び閉状態に移行することが可能となっている。開状態は、スラット25が鉛直方向に起立した状態であり、閉状態は、開状態に比べてスラット25が水平方向に傾いた状態である。ここで、スラット25が開状態にある場合、スラット25が閉状態にある場合とは異なり、上下に隣接する他のスラット25との間に横長形状の通気部29(図2参照)が形成される。通気部29は、スラット25の長辺に沿って延びており、スラット25の間の隙間となっている。したがって、シャッタカーテン23により窓部11が閉鎖されている状態でも、通気部29を通じて建物10内空間の自然換気が行われる。ここで、スラット25の開状態を通気状態と称することができるとともに、閉状態を非通気状態と称することができる。なお、隣接するスラット25がそれぞれ閉状態にある場合、それらスラット25との間には隙間は形成されておらず、仮に隙間があってもその隙間は極めて小さくなっている。
【0027】
ガイドレール26には、シャッタカーテン23における上部3つのスラット25を開閉させる開閉ガイド機構31が設けられている。開閉ガイド機構31は、スラット25ごとにその一部と係合可能な係合リンク部32を有しており、係合リンク部32は、前記上部3つのスラット25と係合して動作することでそれらスラット25を開閉する。また、開閉ガイド機構31は、電動モータ等を含んで構成されているスラット駆動部33を有しており、そのスラット駆動部33が駆動することで係合リンク部32が動作し、スラット25の開閉が行われる。
【0028】
図2(a)に示すように、シャッタ装置21の屋内側には、窓部11を開閉するサッシ戸装置41が設けられている。サッシ戸装置41は、窓部11の内側を横方向にスライド移動する窓サッシとしてのサッシ戸42を有しており、サッシ戸42は、スライド移動することで窓部11を開閉する。
【0029】
サッシ戸装置41について、図4を参照しつつ詳細に説明する。図4は、電気的な構成を含んだサッシ戸装置41の正面図である。なお、図4は、サッシ戸装置41を屋内側から見た図である。
【0030】
図4に示すように、サッシ戸装置41は、例えば一対のサッシ戸42を有する引き違い式の窓サッシとなっており、それらサッシ戸42は水平方向にスライド移動するように配置されている。したがって、サッシ戸42は、シャッタカーテン23におけるスラット25の長手方向にスライド移動することになる。また、各サッシ戸42はそれぞれガラス戸により形成されており、それらサッシ戸42は窓部11のほぼ半分を塞ぐ大きさ及び形状となっている。窓部11には上下一対のレール部43が設けられており、サッシ戸42はレール部43に沿ってスライド移動する構成となっている。窓部11は、各サッシ戸42の少なくとも一方が、離れる方向にスライド移動することで閉鎖され、重なる方向にスライド移動することで開放される。サッシ戸装置41は、各サッシ戸42の全体が重なっている場合に全開状態にあり、この場合は窓部11のほぼ半分が開放されている(図2(b)参照)。
【0031】
サッシ戸42には、そのサッシ戸42を施錠する施錠装置44が取り付けられており、施錠装置44が施錠されることでサッシ戸42の開放が規制され、施錠装置44が解錠されることでサッシ戸42の開放が可能となる。また、施錠装置44は、不審者検出手段となっており、施錠されているか解錠されているかといった施錠状態を検出する機能を有している。
【0032】
サッシ戸装置41には、サッシ戸駆動部47が設けられており、そのサッシ戸駆動部47が駆動することでサッシ戸42がスライド移動する。具体的には、サッシ戸駆動部47は、リニア誘導電動機となっており、レール部43に沿って複数配置された1次巻線と、その1次巻線と非接触で対向するようにサッシ戸42に設けられた2次導体とを含んで構成されている。この場合、1次巻線が順次励磁されることで2次導体を移動させる駆動力が生じ、サッシ戸装置41がスライド移動する。また、サッシ戸駆動部47は、サッシ戸42をレール部43に対して非接触な状態でスライド移動させるため、住人等は、サッシ戸駆動部47が駆動していない場合に手作業によりサッシ戸42の開閉を行うことができる。ちなみに、サッシ戸駆動部47は、電動モータ等を含んで構成されていてもよい。
【0033】
なお、建物10には、図示しない車庫が設けられており、その車庫は移動体としての車両Cの駐車が可能な駐車スペースを有している。ここで、車庫は、建物10と一体的に構築された付属車庫でもよく、建物10とは独立して構築された車庫でもよい。また、駐車スペースは、車庫に形成されるのではなく、駐車場として敷地内に設けられていてもよい。さらに、車両Cは、敷地外の駐車スペースに駐車されてもよい。
【0034】
次に、空調システムに関する電気的な構成について、図1を参照しつつ説明する。
【0035】
図1に示すように、空調システムは、ホームサーバ51を含んで構成されている。ホームサーバ51は、パーソナルコンピュータ、キーボード等の入力手段、ディスプレイ等の表示手段などを含んで構成されており、例えばパーソナルコンピュータはCPUや各種メモリ等からなるマイクロコンピュータを有している。したがって、ホームサーバ51においては、住人等が入力手段を操作することで空調システムの制御内容を設定することが可能となっている。住人等は、入力手段に対して入力操作を行うことで建物10内空間の目標温度や目標湿度等を設定することができる。また、ホームサーバ51は、外部設備との無線通信や有線通信が可能な通信部52を有している。なお、ホームサーバ51は、建物10内に設置されている。
【0036】
ホームサーバ51には、シャッタ制御部55、サッシ戸制御部56及びエアコン57が接続されており、ホームサーバ51は、指令信号を出力することでそれらシャッタ制御部55、サッシ戸制御部56及びエアコン57の動作制御を行う。
【0037】
シャッタ制御部55には、図3に示すように巻取駆動部28及びスラット駆動部33が接続されており、シャッタ制御部55は、指令信号を出力することで巻取駆動部28及びスラット駆動部33の動作制御を行う。また、サッシ戸制御部56には、図4に示すようにサッシ戸駆動部47が接続されており、サッシ戸制御部56は、指令信号を出力することでサッシ戸駆動部47の動作制御を行う。エアコン57は、例えば居住空間に設置されており、その居住空間の空調を行う。エアコン57により行われる空調としては、冷房及び暖房による温度調整や、除湿による湿度調整が挙げられる。
【0038】
また、ホームサーバ51には、施錠装置44、建物10内空間の温度を検出する温度センサ61、建物10内空間の湿度を検出する湿度センサ62、雨滴を検出することで降雨を感知する降雨センサ63、屋外における風の強さを検出する風力センサ64、及び敷地内に人がいることを検出する不審者検出手段としての人感センサ65が接続されている。温度センサ61及び湿度センサ62は例えば居住空間にそれぞれ設置されており、建物10内空間の空気環境を検出する環境検出手段としての役割を果たしている。また、降雨センサ63、風力センサ64及び人感センサ65は例えば建物10における外壁の屋外側にそれぞれ設置されている。施錠装置44、温度センサ61、湿度センサ62、降雨センサ63、風力センサ64及び人感センサ65は、ホームサーバ51に対して検出信号を出力する。
【0039】
さらに、ホームサーバ51は、通信部52を介してインターネット66への接続が可能となっており、インターネット66を介して移動体である車両Cに関する位置情報を取得する構成となっている。より詳しく説明すると、車両Cにはナビゲーション装置が搭載されており、ナビゲーション装置はGPS端末を有している。GPS端末は、GPS衛星67から発信される電波を受信することで自身(車両C)の位置情報を生成する構成となっている。車両Cには車載通信装置が搭載されており、その車載通信装置はコントロールセンタとの無線通信が可能となっている。車載通信装置はコントロールセンタに対して前記位置情報を送信し、その位置情報はコントロールセンタからインターネット66を介してホームサーバ51の通信部52に送信される。このようにして、ホームサーバ51は車両Cに関する位置情報を取得し、その位置情報に基づいて建物10と車両Cとの離間距離Lや、車両Cが建物10に到着するまでに要する走行時間等を算出する。そして、それら離間距離Lや走行時間等をメモリに記憶する。
【0040】
ホームサーバ51は、建物10に関する建物情報を含む信号を通信部52から車両Cの車載通信装置に対して出力する。この場合、車両Cにおいては、ナビゲーション装置が建物情報を音声や画面表示により運転者等に報知する。
【0041】
次いで、ホームサーバ51によって実行される空調システムの制御処理について、図5のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0042】
図5において、ホームサーバ51は、ステップS101〜S104にて換気処理を行い、ステップS105,S106にて温度湿度調整処理を行い、ステップS107,S108にて防犯処理を行う。これらの処理は所定の時間周期で繰り返し行われる。
【0043】
まず、換気処理において、ステップS101では、降雨センサ63の検出信号に基づいて雨が降っているか否かを判定する。雨が降っている場合はそのまま換気処理を終了し、雨が降っていない場合はステップS102に進む。
【0044】
ステップS102では、空調処理として建物10内空間の換気を実行するか否かの判定を行う。具体的には、通信部52を介して車両Cの位置情報を取得し、その位置情報に基づいて、走行している車両Cと建物10との離間距離Lが所定距離より小さいか否かを判定する。この場合、離間距離Lが所定距離より小さければ換気を実行する判定とし、離間距離Lが所定距離以上であれば換気を実行しない判定とする。ちなみに、所定距離は、車両Cが建物10に到着するまでに自然換気の効果を十分に得ることができる時間を確保可能な距離(例えば1km程度)に設定する。なお、防犯の観点から見た場合、所定距離を極端に長い距離として設定することは好ましくない。これは、シャッタカーテン23においてスラット25があまりにも長い時間にわたって開放されていると不審者等がスラット25の開放に気付くおそれが生じるからである。
【0045】
ここでは、車両Cが建物10から離れた後の経過時間を計測し、経過時間が所定時間より大きくなった場合に換気実行の判定処理を行う。これにより、住人等が車両Cにて外出した後、その後の経過時間が所定時間より長い場合であって、しかも住人等が帰宅する場合に限って換気処理の実行判定を行うことができる。ここで、所定時間を、換気を行わなくても建物10内空間の空気環境が低下する可能性が低い時間(例えば3時間)に設定すれば、経過時間が所定時間以下の場合に必ずしも建物10内空間の換気を行う必要はない。これに対して、経過時間が所定時間より大きい場合は建物10内空間の換気を行うことで建物内の空気環境を好適な状態にすることができる。また、経過時間が所定時間より長い場合に換気実行の判定処理を行うため、住人等が外出した直後は離間距離Lが所定距離より小さくても換気処理を実行せず、住人等が帰宅する場合に換気処理を実行することになる。
【0046】
換気を実行しないと判定した場合はそのまま換気処理を終了し、換気を実行すると判定した場合はステップS103に進む。
【0047】
ステップS103では、シャッタ装置21の動作制御を行う。具体的には、図2に示すように、スラット25を開放させてシャッタカーテン23の上部に通気部29を確保する。この場合、高い位置のスラット25が開放されるため、不審者等が通気部29を通じて建物10内部を覗き込むことが困難になり、その結果、建物10内における住人等のプライバシーを保護することができる。また、不審者等が通気部29から手や棒などを建物10内に差し入れようとしても、不審者等の手が届かなかったり手元を見ながら作業することができなかったりするため、手や棒などを差し入れることが困難となり、建物10における防犯性を高めることができる。さらに、低い位置のスラット25が開放される場合と比べて、通気部29と屋根や庇等との距離が近いため、通気部29を通じて建物10内に雨が降り込む可能性を低くできる。
【0048】
なお、通気部29を確保する必要がない場合はスラット25を開放させない。具体的には、温度センサ61や湿度センサ62の検出信号に基づいて建物10内空間における実温度や実湿度を算出し、それら実温度や実湿度を目標温度や目標湿度と比較する。そして、実温度と目標温度との間に所定以上の温度差があったり実湿度と目標湿度との間に所定以上の湿度差があったりした場合にスラット25を開放させ、そうでない場合はスラット25を開放させない。また、スラット25を開放させた後、実温度や実湿度が目標温度や目標湿度に達した場合は、スラット25を閉鎖させる。
【0049】
ステップS104では、サッシ戸装置41の動作制御を行う。具体的には、風力センサ64の検出信号に基づいて屋外の風力情報を取得し、その風力に合わせてサッシ戸駆動部47を動作させる。例えば、風力の強さが弱レベルであればサッシ戸42を図2(b)に示すように最大量(窓部11の約1/2の大きさ)だけ開放させる。風力が強レベルであればサッシ戸42を窓部11の約1/8だけ開放させ、風力が中レベルであればサッシ戸42を窓部11の約3/8だけ開放させる。この場合、サッシ戸42を小さく開放させるとシャッタカーテン23において通気部29の閉鎖領域が大きくなる。つまり、通気部29の通気量が減少する。したがって、風力の強さに合わせてサッシ戸42の開放量を調整することで、建物10内に強風が大量に吹き込むことを回避できる。
【0050】
ちなみに、シャッタカーテン23においてスラット25を開放しなかった場合はサッシ戸42も開放しない。また、スラット25を閉鎖した場合はサッシ戸42も閉鎖する。つまり、サッシ戸装置41をシャッタ装置21に連動させて制御する。
【0051】
温度湿度調整処理において、ステップS105では、空調処理として建物10内空間の温度調整や湿度調整を実行するか否かの判定を行う。具体的には、シャッタ装置21及びサッシ戸42装置による自然換気時間が所定時間に達したか否かを判定するとともに、実温度や実湿度が目標温度や目標湿度に達したか否かを判定する。所定時間内に実温度や実湿度が目標温度や目標湿度に達した場合はそのまま温度湿度調整処理を終了し、自然換気を所定時間だけ行ったにもかかわらず実温度や実湿度が目標温度や目標湿度に達していない場合はステップS106に進む。
【0052】
ステップS106では、エアコン57の動作制御を行う。具体的には、建物10内空間において実温度や実湿度が目標温度や目標湿度に達するように、エアコン57に冷房や暖房、除湿等を行わせる。例えば、エアコン57により冷房を行う場合には、シャッタカーテン23の通気部29から暖気が屋外に排出されるため、建物10内空間の温度が効率良く低下する。
【0053】
なお、エアコン57による空調を開始した場合、それに伴って通気部29及びサッシ戸42をそれぞれ閉鎖させるようにシャッタ装置21及びサッシ戸装置41を制御する。
【0054】
防犯処理として、ステップS107では、施錠装置44及び人感センサ65の検出信号に基づいて、建物10内や敷地内に不審者が侵入したか否かを判定する。例えば、施錠装置44の検出信号がサッシ戸42の解錠を示す信号である場合、住人等が留守の建物10においてサッシ戸42が開放されて窓部11から不審者が侵入したと判定する。また、人感センサ65の検出信号に基づいて、敷地内に所定時間以上継続して人がいることを示す情報が取得された場合、不審者が敷地内に侵入していると判定する。建物10内や敷地内に不審者が侵入していない場合はそのまま防犯処理を終了し、不審者が侵入している場合はステップS108に進む。
【0055】
ステップS108では、報知処理を行う。具体的には、侵入者が建物10内や敷地内に侵入したことを示す信号を通信部52から車両C側に送信する。この場合、車両Cにおいてナビゲーション装置は、不審者が建物10内や敷地内に侵入したことを運転者や同乗車に対して表示画面や音声等により報知する。
【0056】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0057】
シャッタカーテン23の通気部29を通じて建物10内空間の自然換気が行われるため、例えば機械換気が行われる構成に比べて省エネルギ化を図りつつ、建物10内空間の温度調整や湿度調整を行うことができる。通気部29は、スラット25の長辺に沿うように延びているため、例えば建物10の外壁を貫通する貫通孔が通気部として形成されている構成に比べて、通気部29の通気量を大きく確保することができる。したがって、建物10内空間を対象とした自然換気を効率良く行うことができる。また、通気部29は、スラット25の間の隙間に相当するため、通気部29による建物10内空間の自然換気を行いつつ窓部11における防犯性低下を抑制できる。したがって、通気部29による自然換気は住人等が建物10から外出している場合において好適である。
【0058】
車両Cが建物10に近づいている場合に離間距離Lが所定距離より小さくなった時にホームサーバ51により換気処理の実行判定が行われるため、住人等が建物10に到着する前に建物10内空間の換気や温度調整などを行うことが可能となる。通常、住人等は、玄関ドアを施錠したりシャッタ装置21及びサッシ戸装置41にて窓部11を閉鎖したりすることで戸締りを行い、建物10の防犯性を高めてから外出する。一方で、防犯性が高められた状態では建物10内空間の換気が行われにくくなるため、住人等が帰宅した時には、暖気や冷気が建物内にこもっているおそれがある。そこで、前記離間距離Lが所定距離より小さくなった時に建物10内空間の換気を実行すれば、住人等が帰宅するより前に換気が開始され、帰宅した時には建物内に暖気や冷気がこもった状態を解消しておくことが可能となる。また、窓部11における防犯性低下が抑制されているため、住人等が不在であっても安全に且つ効率良く建物10内空間の自然換気を行うことができる。
【0059】
以上の結果、住人等が車両Cで外出している場合に建物10との距離が近づくと建物10内空間の自然換気を行うことができ、しかも自然換気の効率を高めつつ建物10の防犯性が低下することを回避できる。
【0060】
通気部29を確保する場合、シャッタカーテン23における上部のスラット25が開放されるため、不審者等にとっては通気部29を届かせること自体が難しくなり、まして通気部29から建物10内を覗き込むことはより一層困難となる。したがって、建物10内空間の自然換気を行うに際して、建物10における防犯性をより一層高め、さらに住人等のプライバシーをも保護することができる。また、雨が降っている場合はシャッタカーテン23のスラット25が開放されないため、通気部29から建物10内に雨が降り込むことを回避できる。
【0061】
シャッタカーテン23においてスラット25が開放された場合にサッシ戸42も開放されるため、通気部29が確保されているにもかかわらず建物10内空間の自然換気が行われないといった不都合の発生を回避できる。また、サッシ戸42が通気部29の長手方向にスライド移動するため、サッシ戸42の開放量を調整することで通気部29の通気量を調整することができる。つまり、屋外における風の強さなどに合わせた好適な状態で建物10内空間の自然換気を行うことができる。
【0062】
ホームサーバ51は、換気処理を行った後に必要時のみエアコン57による温度調整処理を行うため、シャッタ装置21及びサッシ戸装置41の動作制御をエアコン57の動作制御よりも優先的に行うことになる。この場合、建物10内空間において自然換気による温度調整がエアコン57による温度調整よりも優先的に行われるため、省エネルギ化を促進することができる。
【0063】
車両Cが建物10から離れて移動している場合に、不審者が建物10内や敷地内に侵入すると、その旨が車両Cの運転者等に対して報知される。この場合、住人が外出中であっても建物10内に不審者が侵入したことを警察に通報することが可能となり、犯罪に対していち早く対応することができる。また、帰宅する住人は不審者と鉢合わせすることを回避できる。つまり、住人の安全性を高めることができる。
【0064】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
【0065】
(1)移動体は、車両Cではなく人が携帯可能な携帯機でもよい。要は、ホームサーバ51が人と建物10との間の距離を離間距離Lとして算出可能な構成であればよい。これにより、住人等が徒歩や自転車で外出した場合でも、住人等の移動状態に合わせて建物10内空間の自然換気を行うことができる。
【0066】
(2)シャッタ装置21において、開閉ガイド機構31が動作した場合に開閉するスラット25は3つでなくてもよく、開閉するスラット25はシャッタカーテン23における上部でなくてもよい。要は、シャッタカーテン23において、少なくとも一部のスラット25が回転することで通気部29が確保される構成であればよい。また、雨が降っていてもスラット25が開放される構成としてもよく、この場合は、開放させるスラット25の数を雨量や風力に合わせて調整してもよい。
【0067】
(3)シャッタカーテン23においては、縦長板状のスラット25が横並びに配置されていてもよい。この場合でも、縦方向に延びる軸線を中心としてスラット25が回転する構成とすれば、通気部29は縦長形状となり、スラット25を開放しても防犯性が低下することを回避できる。
【0068】
(4)サッシ戸装置41において、サッシ戸42は縦方向にスライド移動するように配置されていてもよい。つまり、サッシ戸42は、シャッタカーテン23におけるスラット25が並ぶ方向にスライド移動してもよい。また、サッシ戸装置41は、3つ以上のサッシ戸42を有していてもよい。この場合、全てのサッシ戸42を1箇所にて重ねることが可能な構成であれば、重ねるサッシ戸42の数を調整することでサッシ戸42の開放量を調整することができる。さらに、窓部11はスライド式のサッシ戸42ではなく開き戸により開閉される構成でもよい。
【0069】
(5)サッシ戸装置41は、雨が降っている場合にサッシ戸42を開放させない構成としてもよく、風力の強さに関係なくサッシ戸42の開放量が一定となる構成としてもよい。
【0070】
(6)不審者検出手段としての施錠装置44は、建物10の玄関ドアや勝手口等に設けられていてもよい。この場合、玄関ドアや勝手口を開放して不審者が建物10内に侵入したことを検出できる。
【0071】
(7)車両C側において、例えばナビゲーション装置が車両Cの位置情報に基づいて建物10までの離間距離Lを算出したり、車両Cが建物10に到着する帰宅時刻を前記離間距離Lに基づいて算出したりする構成としてもよい。この場合、車両Cの車載通信装置は、それら離間距離Lや帰宅時刻といった演算結果を含む信号をホームサーバ51に対して送信するとよい。また、この場合、ホームサーバ51は、例えば予定帰宅時刻の1時間前から自然換気を開始させるべくシャッタ装置21やサッシ戸装置41を動作制御する。
【0072】
(8)車両Cにおける車内空気環境に合わせて建物10内空間の空気環境が制御される構成としてもよい。例えば、車載空調装置の運転状況を検出するセンサが車両Cに搭載されており、そのセンサにより検出された検出信号がホームサーバ51に対して送信され、ホームサーバ51が、前記検出信号に基づいてシャッタ装置21やサッシ戸装置41、エアコン57を動作制御する構成とする。この場合、車両Cにおける空気環境と建物10における空気環境とが同じ環境となる。通常、運転者は現時点において車内を快適な温度や湿度に調整していると考えられるため、建物10内空間を運転者が帰宅した時点で快適な温度や湿度に調整しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本実施形態における建物の空調システムの構成を示す概略図。
【図2】窓部周辺の構成を示す図。
【図3】電気的な構成を含んだシャッタ装置の正面図。
【図4】電気的な構成を含んだサッシ戸装置の正面図。
【図5】ホームサーバによって実行される空調システムの制御処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0074】
10…建物、11…開口部としての窓部、21…シャッタ装置、23…スラット式シャッタカーテンとしてのシャッタカーテン、25…スラット、29…通気部、41…窓サッシ装置としてのサッシ戸装置、42…窓サッシとしてのサッシ戸、44…不審者検出手段としての施錠装置、51…制御手段としてのホームサーバ、52…通信手段としての通信部、57…空調装置としてのエアコン、61…環境検出手段を構成する温度センサ、62…環境検出手段を構成する湿度センサ、63…雨検出手段としての降雨センサ、65…不審者検出手段としての人感センサ、C…移動体としての車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラットが複数並べられることにより構成されたスラット式シャッタカーテンを有し、当該シャッタカーテンにより建物に形成された開口部を閉鎖可能とされており、その閉鎖状態において前記スラットが回転することにより他のスラットとの間に通気部が形成されるシャッタ装置と、
前記建物からの移動体の距離に基づいて、前記通気部を確保するように前記シャッタ装置を制御する制御手段と
を備えていることを特徴とする建物の空調システム。
【請求項2】
前記各スラットは上下に並ぶように配置されており、
前記制御手段は、各スラットのうち前記開口部の上部に配置された一部のスラットを開放させることで前記通気部を確保することを特徴とする請求項1に記載の建物の空調システム。
【請求項3】
前記開口部を開閉する窓サッシを有し、該窓サッシが前記スラット式カーテンと屋内側にて重なるように配置された窓サッシ装置を備え、
前記制御手段は、前記通気部を確保するように前記シャッタ装置を制御する場合に、前記開口部を開放するように前記窓サッシ装置を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の空調システム。
【請求項4】
前記建物内の空気環境を検出する環境検出手段と、
建物内空間の空気環境の調整を行う空調装置と
を備え、
前記制御手段は、前記環境検出手段の検出結果に基づいて、前記シャッタ装置及び前記空調装置の動作制御を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の建物の空調システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記シャッタ装置を前記空調装置よりも優先して動作させることを特徴とする請求項4に記載の建物の空調システム。
【請求項6】
降雨を検出する雨検出手段を備え、
前記制御手段は、前記雨検出手段により降雨が検出された場合に前記通気部を閉じるように前記シャッタ装置を制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の建物の空調システム。
【請求項7】
不審者を検出する不審者検出手段を備え、
前記制御手段は、前記不審者検出手段により不審者が検出された場合に前記通気部を閉じるように前記シャッタ装置を制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の建物の空調システム。
【請求項8】
前記移動体との通信が可能な通信手段と備え、
前記制御手段は、前記不審者検出手段により不審者が検出された場合にその旨を前記移動体に報知するように前記通信手段を制御することを特徴とする請求項7に記載の建物の空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−71012(P2010−71012A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241424(P2008−241424)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】