説明

建設機械の油圧駆動装置

【課題】燃費を改善することができる建設機械の油圧駆動装置を提供する。
【解決手段】メインエンジン30によって駆動するメインポンプ32と、サブエンジン34によって駆動するサブポンプ36と、メインポンプ32及びサブポンプ36から吐出された圧油を、方向切換弁を介し油圧アクチュエータに供給する建設機械の油圧駆動装置であって、いずれかの油圧アクチュエータが操作状態にある場合、メインエンジン30を定常回転数に、全ての油圧アクチュエータが非操作状態であって所定時間が経過した場合、メインエンジン30を低速回転数に制御するメインエンジン制御装置31と、走行用油圧モータ12A及び12Bが操作状態にある場合、サブエンジン34を定常回転数に、走行用油圧モータ12A又は12Bが非操作状態であって所定時間が経過した場合、サブエンジン34を低速回転数に制御するサブエンジン制御装置35とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に係り、特に、エンジン及びこのエンジンによって駆動する油圧ポンプを備えた建設機械の油圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械に搭載された油圧駆動装置は、一般に、エンジンと、このエンジンによって駆動する油圧ポンプと、複数の油圧アクチュエータ(詳細には、例えば左右の走行用油圧モータ、旋回用油圧モータ、ブーム用油圧シリンダ、アーム用油圧シリンダ、及びバケット用油圧シリンダ等)と、これら油圧アクチュエータの動作をそれぞれ指示する複数の操作手段(詳細には、例えば操作レバーの操作量に対応したパイロット圧を出力する操作手段)と、これら操作手段の操作に応じて油圧ポンプから複数の油圧アクチュエータへの圧油の流れをそれぞれ制御する複数の方向切換弁とを備えている。
【0003】
ここで、エンジンの燃料消費(燃費)の低減を図るため、全ての油圧アクチュエータが非操作状態になると、エンジン回転数を所定の定常回転数から所定の低速回転数(例えばアイドル回転数)に低下させ、その後、いずれかの油圧アクチュエータが操作状態になると、エンジン回転数を所定の定常回転数に復帰させるオートアイドル制御が提唱されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の従来技術では、全ての操作手段の操作位置若しくは全ての方向切換弁の切換位置が中立位置にあるか否かを検出・判定し、中立位置にある場合は、エンジン回転数が所定の低速回転数となるようにガバナを制御するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−257184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術には以下のような改善の余地がある。
すなわち、例えば運転質量6トン未満の小型油圧ショベル(いわゆるミニショベル)においては、一般的に1つのエンジンを搭載しており、このエンジンの定格出力馬力は、油圧ポンプの必要吸収馬力が最大となる走行操作時(言い換えれば、走行用油圧モータの操作時)を考慮し、その走行操作時の油圧ポンプの必要吸収馬力に対し余裕をみて少し大きくなるように設定されている。これにより、所望の走行性能が得られるようになっている。しかし、走行操作以外の例えば旋回操作や作業機の操作時(言い換えれば、例えば旋回用油圧モータ、ブーム用油圧シリンダ、アーム用油圧シリンダ、又はバケット用油圧シリンダの操作時)における油圧ポンプの必要吸収馬力は、前述した走行操作時より小さい。そのため、このような操作時に、油圧ポンプの必要吸収馬力に対しエンジンの定格出力馬力が大幅に大きくなるので、燃費が悪くなってしまうという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、燃費を改善することができる建設機械の油圧駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、メインエンジンと、前記メインエンジンによって駆動するメインポンプと、サブエンジンと、前記サブエンジンによって駆動するサブポンプと、走行用油圧モータを含む複数の油圧アクチュエータと、前記複数の油圧アクチュエータへの圧油の流れをそれぞれ制御する複数の方向切換弁とを備え、前記メインポンプ及び前記サブポンプから吐出された圧油を、前記方向切換弁を介し前記油圧アクチュエータに供給する建設機械の油圧駆動装置であって、前記複数の油圧アクチュエータが全て非操作状態にあるかどうかを検出する第1の操作検出手段と、前記走行用油圧モータが非操作状態にあるかどうかを検出する第2の操作検出手段と、前記複数の油圧アクチュエータのうちのいずれかが操作状態にある場合、前記メインエンジンを所定の定常回転数となるように制御し、前記複数の油圧アクチュエータが全て非操作状態であって予め設定された所定時間が経過した場合、前記メインエンジンを所定の低速回転数となるように制御するメインエンジン制御手段と、前記走行用油圧モータが操作状態にある場合、前記サブエンジンを所定の定常回転数となるように制御し、前記走行用油圧モータが非操作状態であって予め設定された所定時間が経過した場合、前記サブエンジンを所定の低速回転数となるように制御するか若しくは停止するサブエンジン制御手段とを備える。
【0008】
このように本発明においては、例えばミニショベルに適用する場合のように、油圧ポンプの必要吸収馬力が最大となる走行操作時(言い換えれば、走行用油圧モータの操作状態)を考慮し、その走行操作時の油圧ポンプの必要吸収馬力を1つのエンジンの定格出力馬力で補えることが可能な場合であっても、メインエンジンとサブエンジンを搭載する。このとき、メインエンジンの定格出力馬力は、走行以外の他の操作時(言い換えれば、走行用油圧モータ以外の他の油圧アクチュエータの操作状態)における油圧ポンプの必要吸収馬力(詳細には、メインポンプの最大吸収馬力)に対し余裕をみて少し大きくなるように設定され、サブエンジンの定格出力馬力は、走行操作時の油圧ポンプの必要吸収馬力(詳細には、メインポンプの最大吸収馬力とサブポンプの最大吸収馬力との総和)に対しメインエンジンの定格出力馬力だけでは不足する分を補うように設定される。すなわち、メインエンジンの定格出力馬力とサブエンジンの定格出力馬力との総和は、メインポンプの最大吸収馬力とサブポンプの最大吸収馬力との総和に対し余裕をみて少し大きくなるように設定される。
【0009】
そして、走行操作時は、メインエンジン及びサブエンジンを所定の定常回転数に制御する。これにより、所望の走行性能を得ることができる。一方、走行以外の他の操作時は、メインエンジンを所定の定常回転数に制御し、サブエンジンを所定の低速回転数に制御するか若しくは停止する。これにより、燃費を改善することができる。
【0010】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記メインポンプは、スプリットフロー型であって、同じ吐出流量としつつ異なる吐出圧力を保持可能な第1出力ポート及び第2出力ポートを有し、前記サブポンプは、スプリットフロータイプ型であって、同じ吐出流量としつつ異なる吐出圧力を保持可能な第3出力ポート及び第4出力ポートを有しており、前記メインポンプの第1出力ポート及び前記サブポンプの第3出力ポートからそれぞれ吐出された圧油を合流させて左走行用方向切換弁を介し左の走行用油圧モータに供給し、且つ前記メインポンプの第2出力ポート及び前記サブポンプの第4出力ポートからそれぞれ吐出された圧油を合流させて右走行用方向切換弁を介し右の走行用油圧モータに供給するように構成する。
【0011】
(3)上記(2)において、好ましくは、前記メインポンプは、ポンプ吸収トルクが制限値を超えないように、前記第1出力ポートの吐出圧力及び前記第2出力ポートの吐出圧力に応じてポンプ容量を制御する吸収トルク制御機構を有し、前記サブポンプは、ポンプ吸収トルクが制限値を超えないように、前記第3出力ポートの吐出圧力及び前記第4出力ポートの吐出圧力に応じてポンプ容量を制御する吸収トルク制御機構を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、燃費を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の適用対象であるミニショベルの全体構造を表す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態における油圧駆動装置の要部の構成を表す油圧回路図である。
【図3】本発明の一実施形態における油圧駆動装置のパイロット部の構成を表す油圧回路図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるメインポンプの吸収トルク制御特性、サブポンプの吸収トルク制御特性、並びにメインポンプ及びサブポンプ全体の吸収トルク制御特性を表す、ポンプ吐出圧力(P)−ポンプ容量(q)の特性図である。
【図5】本発明の一実施形態におけるメインエンジン制御装置及びサブエンジン制御装置を関連機器とともに表すブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態におけるエンジン回転数が定格最大回転数にある場合のメインポンプの吸収馬力特性とメインエンジンの定格出力馬力との関係、並びにメインポンプ及びサブポンプ全体の吸収馬力特性とメインエンジン及びサブエンジン全体の定格出力馬力との関係を表す図である。
【図7】比較例における油圧駆動装置の要部の構成を表す油圧回路図である。
【図8】走行ステアリング時の負荷圧を説明するための図である。
【図9】比較例及び本発明の一実施形態におけるポンプ供給流量をそれぞれ説明するためのポンプ吸収馬力特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1は、本発明の適用対象であるミニショベルの全体構造を表す側面図である。なお、以降、ミニショベルが図1に示す状態にて運転者が運転席に着座した場合における運転者の前側(図1中左側)、後側(図1中右側)、左側(図1中紙面に向かって手前側)、右側(図1中紙面に向かって奥側)を、単に前側、後側、左側、右側と称する。
【0016】
この図1において、ミニショベルは、クローラ式の下部走行体1と、この下部走行体1上に旋回可能に設けた上部旋回体2と、この上部旋回体2の基礎下部構造をなす旋回フレーム3と、この旋回フレーム3の前側に左右方向に回動可能に設けられたスイングポスト4と、このスイングポスト4に上下方向に回動可能(俯仰可能)に連結された多関節型の作業機5と、旋回フレーム4上に設けたキャノピータイプの運転室6と、旋回フレーム4上の運転室6以外の大部分を覆う外装カバー7とを備えている。
【0017】
下部走行体1は、上方から見て略H字形状のトラックフレーム8と、このトラックフレーム8の左右両側の後端近傍に回転可能に支持された左右の駆動輪9,9と、トラックフレーム8の左右両側の前端近傍に回転可能に支持された左右の従動輪(アイドラ)10,10と、左右それぞれの駆動輪9と従動輪10とで掛けまわされた左右の履帯(クローラ)11,11とを備えており、左右の走行用油圧モータ12A,12B(後述の図2参照)により左右の駆動輪9,9が回転するようになっている。
【0018】
トラックフレーム8の前側には排土用のブレード13が上下動可能に設けられており、このブレード13はブレード用油圧シリンダ(図示せず)により上下動するようになっている。
【0019】
トラックフレーム8の中央部には旋回輪14が設けられ、この旋回輪14を介し上部旋回体2が旋回可能に設けられており、上部旋回体2は旋回用油圧モー15により旋回するようになっている。
【0020】
スイングポスト4は、上部旋回体2の前側に左右方向に回動可能に設けられ、スイング用油圧シリンダ(図示せず)により左右方向に回動するようになっている。これにより、作業機5が左右にスイングするようになっている。
【0021】
作業機5は、スイングポスト4に上下方向に回動可能に連結されたブーム16と、このブーム16に上下方向に回動可能に連結されたアーム17と、このアーム17に上下方向に回動可能に連結されたバケット18とを備えている。ブーム16、アーム17、及びバケット18は、ブーム用油圧シリンダ19、アーム用油圧シリンダ20、及びバケット用油圧シリンダ21により上下方向に回動するようになっている。なお、バケット18は、例えばオプション用油圧アクチュエータが組み込まれたアタッチメント(図示せず)と交換可能になっている。
【0022】
運転室6には、運転者が着座する運転席(座席)22が設けられている。運転席22の前方には、手または足で操作可能とし前後方向に操作することで左の旋回用油圧モータ12Aの動作を指示する左走行用操作レバー23Aと、手または足で操作可能とし前後方向に操作することで右の旋回用油圧モータ12Bの動作を指示する右走行用操作レバー23B(後述の図3参照)が設けられている。
【0023】
左走行用操作レバー23Aのさらに左側の足元部分には、オプション用アクチュエータの動作を指示するオプション用操作ペダル(図示せず)が設けられている。右走行用操作レバー23Bのさらに右側の足元部分には、左右方向に操作することでスイング用油圧シリンダの動作を指示するスイング用操作ペダル(図示せず)が設けられている。
【0024】
運転席22の左側には、前後方向に操作することでアーム用油圧シリンダ20の動作を指示し、左右方向に操作することで旋回用油圧モータ15の動作を指示する十字操作式のアーム・旋回用操作レバー24Aが設けられている。また、運転席22の左側(言い換えれば、運転室6の乗降口)には、ロック解除位置(詳細には、運転者の乗降を妨げる下降位置)とロック位置(詳細には、運転者の乗降を許容する上昇位置)に操作されるロックレバー25が設けられている。
【0025】
運転席22の右側には、前後方向に操作することでブーム用油圧シリンダ19の動作を指示し、左右方向に操作することバケット用油圧シリンダ21の動作を指示する十字操作式のブーム・バケット用操作レバー24B(後述の図3参照)が設けられている。また、運転席22の右側には、ブレード用油圧シリンダの動作を指示するブレード用操作レバー(図示せず)が設けられている。また、運転席22の右側には、エンジンの目標回転数を指示する回転数指示手段としての回転数ダイヤル26(後述の図5参照)設けられている。
【0026】
上述した左右の履帯11、ブレード14、上部旋回体2、スイングポスト5、ブーム15、アーム16、及びバケット17は、ミニショベルに搭載された油圧駆動装置により駆動される被駆動部材を構成している。図2は、この油圧駆動装置の要部の構成を表す油圧回路図であり、図3は、油圧駆動装置のパイロット部の構成を表す油圧回路図である。なお、図2においては、便宜上、旋回用油圧モータ15及びブーム用油圧シリンダ19等の図示を省略している。
【0027】
これら図2及び図3において、油圧駆動装置は、メインエンジン30と、このメインエンジン30を制御するメインエンジン制御装置31と、メインエンジン30によって駆動する可変容量型のメインポンプ32及び固定容量型のパイロットポンプ33と、サブエンジン34と、このサブエンジン34を制御するサブエンジン制御装置35と、サブエンジン34によって駆動する可変容量型のサブポンプ36と、メインポンプ32及びサブポンプ36から吐出された圧油が供給されるセンタバイパス形の第1方向切換弁群37及び第2方向切換弁群38とを備えている。
【0028】
第1方向切換弁群37は、左走行用油圧モータ12Aへの圧油の流れを制御する左走行用方向切換弁39Aを含み、その他、例えば旋回用油圧モータ15への圧油の流れを制御する旋回用方向切換弁40やアーム用油圧シリンダ20への圧油の流れを制御するアーム用方向切換弁等(図示せず)を含んでいる。第2方向切換弁群38は、右走行用油圧モータ12Bへの圧油の流れを制御する右走行用方向切換弁39Bを含み、その他、例えばブーム用油圧シリンダ19への圧油の流れを制御するブーム用方向切換弁41やバケット用油圧シリンダ21への圧油の流れを制御するバケット用方向切換弁等(図示せず)を含んでいる。
【0029】
メインポンプ32は、いわゆるスプリットフロー型であって、同じ吐出流量としつつ異なる吐出圧力を保持可能な2つの吐出ポート32a,32bを有している。同様に、サブポンプ36は、いわゆるスプリットフロー型であって、同じ吐出流量としつつ異なる吐出圧力を保持可能な2つの吐出ポート36a,36bを有している。
【0030】
そして、メインポンプ32の吐出ポート32a及びサブポンプ36の吐出ポート36aからそれぞれ吐出された圧油を合流して第1方向切換弁群37に供給する第1吐出ライン42が設けられている。この第1吐出ライン42には、第1方向切換弁群37への供給圧力(言い換えれば、メインポンプ32の吐出ポート32a及びサブポンプ36の吐出ポート36aの吐出圧力)Paの上限を規定する第1リリーフ弁43が設けられている。また、メインポンプ32の吐出ポート32b及びサブポンプ36の吐出ポート36bからそれぞれ吐出された圧油を合流して第2方向切換弁群38に供給する第2吐出ライン44が設けられている。この第2吐出ライン44には、第2方向切換弁群38への供給圧力(言い換えれば、メインポンプ32の吐出ポート32b及びサブポンプ36の吐出ポート36bの吐出圧力)Pbの上限を規定する第2リリーフ弁45が設けられている。
【0031】
また、メインポンプ32には、ポンプ吸収トルクが制限値(最大吸収トルク)を超えないように、吐出ポート32aの吐出圧力Pa及び吐出ポート32bの吐出圧力Pbに応じて斜板の傾転量(ポンプ容量)を制御する吸収トルク制御機構46が設けられている。吸収トルク制御機構46は、吐出ポート32aの吐出圧力Paが導かれて斜板の傾転量の減少方向に作用するアクチュエータ46aと、吐出ポート32bの吐出圧力Pbが導かれて斜板の傾転量の減少方向に作用するアクチュエータ46bと、斜板の傾転量の増大方向に作用するバネ46cとを有している。バネ46cは、メインポンプ32の最大吸収トルクを設定する手段として機能する。
【0032】
同様に、サブポンプ36には、ポンプ吸収トルクが制限値(最大吸収トルク)を超えないように、吐出ポート36aの吐出圧力Pa及び吐出ポート36bの吐出圧力Pbに応じて斜板の傾転量(ポンプ容量)を制御する吸収トルク制御機構47が設けられている。吸収トルク制御機構47は、吐出ポート36aの吐出圧力Paが導かれて斜板の傾転量の減少方向に作用するアクチュエータ47aと、吐出ポート36bの吐出圧力Pbが導かれて斜板の傾転量の減少方向に作用するアクチュエータ47bと、斜板の傾転量の増大方向に作用するバネ47cとを有している。バネ47cは、サブポンプ36の最大吸収トルクを設定する手段として機能する。
【0033】
吸収トルク制御機構46,47の機能を、図4(a)及び図4(b)を用いて説明する。図4(a)及び図4(b)は、メインポンプ32の吸収トルク制御特性、サブポンプ36の吸収トルク制御特性、並びにメインポンプ32及びサブポンプ36全体の吸収トルク制御特性を表す、ポンプ吐出圧力−ポンプ容量の特性図である。なお、これら図4(a)及び図4(b)において、横軸のポンプ吐出圧力は、吐出圧力Pa,Pbの平均値をとっている。
【0034】
メインポンプ32は、吐出ポート32aの吐出圧力Pa及び吐出ポート32bの吐出圧力Pbの平均値がP1以下である場合、吸収トルク制御機構46によってポンプ容量が最大値qa_maxに維持される。このとき、ポンプ吸収トルクは、吐出圧力Pa,Pbの平均値の上昇に従って増加し、吐出圧力Pa,Pbの平均値がP1になると最大吸収トルクTaとなる。そして、吐出圧力Pa,Pbの平均値がP1を超えると、吸収トルク制御機構46によってポンプ容量が減少させられ、ポンプ吸収トルクが最大吸収トルクTaを超えないように制御される。なお、図中のP2は、リリーフ弁43,45によって設定される吐出圧力Pa,Pbの平均値の最大値である。
【0035】
サブポンプ36は、吐出ポート36aの吐出圧力Pa及び吐出ポート36bの吐出圧力Pbの平均値がP1以下である場合、吸収トルク制御機構47によってポンプ容量が最大値qb_max(本実施形態では、qb_max<qa_max)に維持される。このとき、ポンプ吸収トルクは、吐出圧力Pa,Pbの平均値の上昇に従って増加し、吐出圧力Pa,Pbの平均値がP1になると最大吸収トルクTb(本実施形態では、Tb<Ta)となる。そして、吐出圧力Pa,Pbの平均値がP1を超えると、吸収トルク制御機構46によってポンプ容量が減少させられ、ポンプ吸収トルクが最大吸収トルクTbを超えないように制御される。
【0036】
したがって、メインポンプ32及びサブポンプ36を総合してみれば、吐出圧力Pa,Pbの平均値がP1以下である場合、メインポンプ32及びサブポンプ36全体のポンプ容量が最大値qt_max(=qa_max+qb_max)に維持される。このとき、メインポンプ32及びサブポンプ36全体のポンプ吸収トルクは、吐出圧力Pa,Pbの平均値の上昇に従って増加し、吐出圧力Pa,Pbの平均値がP1になると最大吸収トルクTt(=Ta+Tb)となる。そして、吐出圧力Pa,Pbの平均値がP1を超えると、全体のポンプ容量が減少させられ、全体のポンプ吸収トルクが最大吸収トルクTtを超えないように制御される。
【0037】
前述の図2及び図3に戻り、左走行用方向切換弁39Aは、操作装置48Aの操作によって切り換えられるようになっている。操作装置48Aは、左走行用操作レバー23Aと、この操作レバー23Aの前後方向の操作に応じパイロットポンプ33の吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成する一対のパイロット弁(図示せず)とを有している。そして、例えば操作レバー23Aを中立位置から前側に操作すると、その操作量に応じて一方のパイロット弁で生成されたパイロット圧が左走行用方向切換弁39Aの図2中左側の受圧部へ出力され、これによって左走行用方向切換弁39Aが図2中左側の切換位置に切換えられる。これにより、左の走行用油圧モータ12Aが前方向に回転し、左の駆動輪9及び履帯11が前方向に回転するようになっている。一方、例えば操作レバー23Aを中立位置から後側に操作すると、その操作量に応じて他方のパイロット弁で生成されたパイロット圧が左走行用方向切換弁39Aの図2中右側の受圧部へ出力され、これによって左走行用方向切換弁39Aが図2中右側の切換位置に切換えられる。これにより、左の走行用油圧モータ12Aが後方向に回転し、左の駆動輪9及び履帯11が後方向に回転するようになっている。
【0038】
右走行用方向切換弁39Bは、操作装置48Bの操作によって切り換えられるようになっている。操作装置48Bは、右走行用操作レバー23Bと、この操作レバー23Bの前後方向の操作に応じパイロットポンプ33の吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成する一対のパイロット弁(図示せず)とを有している。そして、例えば操作レバー23Bを中立位置から前側に操作すると、その操作量に応じて一方のパイロット弁で生成されたパイロット圧が右走行用方向切換弁39Bの図2中左側の受圧部へ出力され、これによって右走行用方向切換弁39Bが図2中左側の切換位置に切換えられる。これにより、右の走行用油圧モータ12Bが前方向に回転し、右の駆動輪9及び履帯11が前方向に回転するようになっている。一方、例えば操作レバー23Bを中立位置から後側に操作すると、その操作量に応じて他方のパイロット弁で生成されたパイロット圧が右走行用方向切換弁39Bの図2中右側の受圧部へ出力され、これによって右走行用方向切換弁39Bが図2中右側の切換位置に切換えられる。これにより、右の走行用油圧モータ12Bが後方向に回転し、右の駆動輪9及び履帯11が後方向に回転するようになっている。
【0039】
旋回用方向切換弁40は、操作装置49Aの操作によって切り換えられるようになっている。操作装置49Aは、アーム・旋回用操作レバー24Aと、この操作レバー24Aの左右方向の操作に応じパイロットポンプ33の吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成する一対のパイロット弁(図示せず)等を有している。そして、例えば操作レバー24Aを中立位置から左側に操作すると、その操作量に応じて一方のパイロット弁で生成されたパイロット圧が旋回用方向切換弁40の図2中左側の受圧部へ出力され、これによって旋回用方向切換弁40が図2中左側の切換位置に切換えられる。これにより、旋回用油圧モータ15が左方向に回転し、上部旋回体2が左方向に旋回するようになっている。一方、例えば操作レバー24Aを右側に操作すると、その操作量に応じて他方のパイロット弁で生成されたパイロット圧が旋回用方向切換弁40の図2中右側の受圧部へ出力され、これによって旋回用方向切換弁40が図2中右側の切換位置に切換えられる。これにより、旋回用油圧モータ15が右方向に回転し、上部旋回体2が右方向に旋回するようになっている。
【0040】
ブーム用方向切換弁41は、操作装置49Bの操作によって切り換えられるようになっている。操作装置49Bは、ブーム・バケット用操作レバー24Bと、この操作レバー24Bの前後方向の操作に応じパイロットポンプ33の吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成する一対のパイロット弁(図示せず)等を有している。そして、例えば操作レバー24Bを中立位置から前側に操作すると、その操作量に応じて一方のパイロット弁で生成されたパイロット圧がブーム用方向切換弁41の図2中左側の受圧部へ出力され、これによってブーム用方向切換弁41が図2中左側の切換位置に切換えられる。これにより、ブーム用油圧シリンダ19が縮短し、ブーム16が下がるようになっている。一方、例えば操作レバー24Bを後側に操作すると、その操作量に応じて他方のパイロット弁で生成されたパイロット圧がブーム用方向切換弁41の図2中右側の受圧部へ出力され、これによってブーム用方向切換弁41が図2中右側の切換位置に切換えられる。これにより、ブーム用油圧シリンダ19が伸張し、ブーム16が上がるようになっている。
【0041】
パイロットポンプ33の吐出ライン50には、パイロットポンプ33の吐出圧を一定に保持するパイロットリリーフ弁51が設けられている。また、パイロットポンプ33の吐出ライン50にはロック弁52が設けられており、このロック弁52は、ロックレバー25の操作に応じて切換えられるようになっている。詳細には、ロックレバー25がロック解除位置(下降位置)にある場合に開き状態、ロック位置(上昇位置)にある場合に閉じ状態となるロックスイッチ(図示せず)が設けられている。そして、例えばロックスイッチが閉じ状態になると、このロックスイッチを介してロック弁52のソレノイド部が通電されて、ロック弁52が図3中下側の切換位置に切換えられる。これにより、パイロットポンプ33の吐出ライン50を連通して、パイロットポンプ33の吐出圧が操作装置48A,48B,49A,49B等に導入される。一方、ロックスイッチが開き状態になると、ロック弁52のソレノイド部が通電されず、バネの付勢力で、ロック弁52が図3中上側の切換位置に切換えられる。これにより、パイロットポンプ33の吐出ライン50を遮断する。その結果、操作装置48A,48B,49A,49B等を操作してもパイロット圧が生成されず、油圧アクチュエータが作動しないようになっている。
【0042】
また、操作装置48Aから出力されるパイロット圧のうちの最高圧を抽出するシャトル弁53Aと、操作装置48Bから出力されるパイロット圧のうちの最高圧を抽出するシャトル弁53Bと、これらシャトル弁53A,53Bで抽出されたパイロット圧のうちの最高圧を抽出するシャトル弁53Cと、このシャトル弁53Cで抽出されたパイロット圧を検出する圧力センサ54が設けられている。すなわち、圧力センサ54は、操作装置48A,48Bから出力されるパイロット圧のうちの最高圧を検出しており、その検出信号をメインエンジン制御装置31及びサブエンジン制御装置35に出力するようになっている。
【0043】
また、操作装置49Aから出力されるパイロット圧のうちの最高圧を抽出するシャトル弁55Aと、操作装置49Bから出力されるパイロット圧のうちの最高圧を抽出するシャトル弁55Bと、これらシャトル弁55A,55Bで抽出されたパイロット圧のうちの最高圧を抽出するシャトル弁55Cとが設けられている。すなわち、シャトル弁55Cは、操作装置49A,49Bから出力されるパイロット圧のうちの最高圧を抽出するようになっている。また、操作装置48A,48B,49A,49B以外の残りの操作装置(図示せず)から出力されるパイロット圧のうちの最高圧を出力するためにシャトル弁群(図示せず)が設けられ、このシャトル弁群及びシャトル弁55Cで抽出されたパイロット圧のうちの最高圧を抽出するシャトル弁55Dと、このシャトル弁55Dで抽出されたパイロット圧を検出する圧力センサ56が設けられている。すなわち、圧力センサ56は、操作装置48A,48B以外の残り操作装置49A,49B等から出力されるパイロット圧のうちの最高圧を検出しており、その検出信号をメインエンジン制御装置31に出力するようになっている。
【0044】
図5は、メインエンジン制御装置31及びサブエンジン制御装置35を関連機器とともに表すブロック図である。
【0045】
この図5において、メインエンジン制御装置31は、圧力センサ54,56からの検出信号に基づき、全ての油圧アクチュエータ(詳細には、上述した走行用油圧モータ12A,12B、ブレード用油圧シリンダ、旋回用油圧モータ15、スイング用油圧シリンダ、ブーム用油圧シリンダ19、アーム用油圧シリンダ20、及びバケット用油圧シリンダ21等)が非操作状態にあるかどうかを判定する。詳細には、圧力センサ54の検出値及び圧力センサ56の検出値が共に閾値以下であれば、全ての油圧アクチュエータが非操作状態にあると判定し、圧力センサ54の検出値又は圧力センサ56の検出値が閾値を超えれば、いずれかの油圧アクチュエータが操作状態にあると判定する。
【0046】
そして、いずれかの油圧アクチュエータが操作状態にある場合は、メインエンジン30を所定の定常回転数となるように制御する。詳細には、回転数センサ57で検出されるメインエンジン30の実回転数が回転数ダイヤル26で指示された目標回転数(言い換えれば、所定の定常回転数)となるように、電子ガバナ58を制御する。ここで、所定の定常回転数とは、目標回転数が定格の最高回転数である場合、例えば2200rpm程度である。
【0047】
一方、全ての油圧アクチュエータが非操作状態にある場合は、予め設定された所定時間(例えば4秒)が経過するかどうかを判定する。そして、全ての油圧アクチュエータが非操作状態にあって所定時間が経過した場合は、メインエンジン30を所定の低速回転数となるように制御する。ここで、所定の低速回転数とは、例えばアイドリング回転数(例えば1000rpm程度)である。
【0048】
サブエンジン制御装置35は、圧力センサ54からの検出信号に基づき、走行用油圧モータ12A,12Bが非操作状態にあるかどうかを判定する。詳細には、圧力センサ54の検出値が閾値以下であれば、走行用油圧モータ12A及び12Bが非操作状態にあると判定し、圧力センサ54の検出値が閾値を超えれば、走行用油圧モータ12A又は12Bが操作状態にあると判定する。
【0049】
そして、走行用油圧モータ12A又は12Bが操作状態にある場合は、サブエンジン34を所定の定常回転数となるように制御する。詳細には、回転数センサ59で検出されるサブエンジン34の実回転数が回転数ダイヤル26で指示された目標回転数(言い換えれば、所定の定常回転数)となるように、電子ガバナ60を制御する。ここで、所定の定常回転数とは、目標回転数が定格の最高回転数である場合、例えば2200rpm程度である。
【0050】
一方、走行用油圧モータ12A及び12Bが非操作状態にある場合は、予め設定された所定時間(例えば4秒でもよいし、これより長い時間であってもよい)が経過するかどうかを判定する。そして、走行用油圧モータ12A及び12Bが非操作状態にあって所定時間が経過した場合は、サブエンジン34を所定の低速回転数となるように制御する。ここで、所定の低速回転数とは、例えばアイドリング回転数(例えば1000rpm程度)でもよいし、中間の1500rpm程度であってもよい。
【0051】
なお、上記において、圧力センサ54,56は、特許請求の範囲記載の複数の油圧アクチュエータが全て非操作状態にあるかどうかを検出する第1の操作検出手段を構成する。また、圧力センサ54は、走行用油圧モータが非操作状態にあるかどうかを検出する第2の操作検出手段を構成している。
【0052】
次に、本実施形態の作用効果を、図6を用いながら説明する。図6は、エンジン回転数が定格最大回転数にある場合のメインポンプ32の吸収馬力特性とメインエンジン30の定格出力馬力との関係、並びにメインポンプ32及びサブポンプ36全体の吸収馬力特性とメインエンジン30及びサブエンジン34全体の定格出力馬力との関係を表す図である。
【0053】
図6中点線で示す走行操作時(言い換えれば、走行用油圧モータ12A,12Bの操作時)の出力範囲や、走行操作以外の例えば旋回操作や作業機の操作時(言い換えれば、例えば旋回用油圧モータ15、ブーム用油圧シリンダ19、アーム用油圧シリンダ20、又はバケット用油圧シリンダ21の操作時)の出力範囲を見て明らかなように、走行操作時の油圧ポンプの必要吸収馬力は、その他の操作時の必要吸収馬力より大きく、最大となる。そして、本実施形態においては、走行操作時の油圧ポンプの必要吸収馬力を1つのエンジンの定格出力馬力で補えることが可能な場合であっても、メインエンジン30とサブエンジン34を搭載している。このとき、メインエンジン30の定格出力馬力H1_maxは、走行以外の他の操作時における油圧ポンプの必要吸収馬力(詳細には、メインポンプ32の最大吸収馬力)に対し余裕をみて少し大きくなるように設定され、サブエンジン34の定格出力馬力は、走行操作時の油圧ポンプの必要吸収馬力(詳細には、メインポンプ32の最大吸収馬力とサブポンプ36の最大吸収馬力との総和)に対しメインエンジン30の定格出力馬力だけでは不足する分を補うように設定されている。すなわち、メインエンジン30の定格出力馬力とサブエンジン34の定格出力馬力との総和Ht_maxは、メインポンプ32の最大吸収馬力とサブポンプ36の最大吸収馬力との総和に対し余裕をみて少し大きくなるように設定されている。
【0054】
そして、走行操作時は、メインエンジン30及びサブエンジン34を所定の定常回転数に制御する。これにより、所望の走行性能を得ることができる。一方、走行以外の他の操作時は、メインエンジン30を所定の定常回転数に制御し、サブエンジン34を所定の低速回転数に制御する。これにより、燃費を改善することができる。
【0055】
また、本実施形態においては、メインポンプ32及びサブポンプ36はスプリットフロー型を採用するので、下記の効果が得られる。
【0056】
(1)走行蛇行の防止
図7は、比較例における油圧駆動装置の要部の構成を表す油圧回路図である。
【0057】
この比較例では、メインエンジン30によって駆動するシンプルフロー型の第1メインポンプ61A及び第2メインポンプ61Bと、サブエンジン34によって駆動するシンプルフロー型の第1サブポンプ62A及び第2サブポンプ62Bとを備えている。そして、第1吐出ライン42は、第1メインポンプ61A及び第1サブポンプ62Aからそれぞれ吐出された圧油を合流して第1方向切換弁群37に供給し、第2吐出ライン44は、第2メインポンプ61B及び第1サブポンプ62Bからそれぞれ吐出された圧油を合流して第2方向切換弁群38に供給するようになっている。
【0058】
第1メインポンプ61Aには、ポンプ吸収トルクが制限値(最大吸収トルク)を超えないように、吐出圧力Paに応じて斜板の傾転量(ポンプ容量)を制御する吸収トルク制御機構63Aが設けられている。第2メインポンプ61Bには、ポンプ吸収トルクが制限値(最大吸収トルク)を超えないように、吐出圧力Pbに応じて斜板の傾転量(ポンプ容量)を制御する吸収トルク制御機構63Bが設けられている。また、詳細は図示しないが、吸収トルク制御機構63A,63Bは連動して、メインポンプ61A,61Bの全馬力制御を行うようになっている。すなわち、メインポンプ61A,61Bのうちの一方の吸収馬力が最大吸収馬力に達しない場合は、そのぶんだけ他方の最大吸収馬力を増加させるようになっている。
【0059】
同様に、第1サブポンプ62Aには、ポンプ吸収トルクが制限値(最大吸収トルク)を超えないように、吐出圧力Paに応じて斜板の傾転量(ポンプ容量)を制御する吸収トルク制御機構64Aが設けられている。第2サブポンプ62Bには、ポンプ吸収トルクが制限値(最大吸収トルク)を超えないように、吐出圧力Pbに応じて斜板の傾転量(ポンプ容量)を制御する吸収トルク制御機構64Bが設けられている。また、詳細は図示しないが、吸収トルク制御機構64A,64Bは連動して、サブポンプ62A,62Bの全馬力制御を行うようになっている。すなわち、サブポンプ62A,62Bのうちの一方の吸収馬力が最大吸収馬力に達しない場合は、そのぶんだけ他方の最大吸収馬力を増加させるようになっている。
【0060】
ここで、左の走行用油圧モータ12Aの走行速度(定格回転数)は、第1メインポンプ61A及び第1サブポンプ62Aの吐出流量並びに左の走行用油圧モータ12の容量により決定される。また、右の走行用油圧モータ12Bの走行速度(回転数)は、第2メインポンプ61B及び第2サブポンプ62Bの吐出流量並びに右の走行用油圧モータ12Bの容量により決定される。そのため、メインポンプ61A,61Bの仕様は同じ、サブポンプ62A,62Bの仕様は同じ、走行用油圧モータ12A,12Bの仕様は同じにする必要がある。しかし、実際の製品では加工誤差等のバラツキがあり、第1メインポンプ61Aの吐出流量Qcと第2メインポンプ61Bの吐出流量Qdに差が生じたり、第1サブポンプ62Aの吐出流量Qeと第2サブポンプ62Bの吐出流量Qfに差が生じたりする。
【0061】
そして、直進走行操作時に、上述した理由から、左右の走行用油圧モータ12A,12Bに速度差が発生する。このとき、左右の走行用油圧モータ12A,12Bのうち回転数の高いほうが駆動側となり低いほうが従動側となり、駆動側の負荷圧は従動側の負荷圧より高くなる。これは、左右のクローラ11,11が直進性を持ち、駆動側(高圧側)と従属側(低圧側)が発生することによる。この状態で駆動側と従動側の負荷圧差が左右のクローラ11,11の直進性により補えない大きさになると、走行蛇行し、意図する直進走行が行えなくなる。
【0062】
これに対し本実施形態においては、メインポンプ32及びサブポンプ36はスプリットフロー型を採用しており、メインポンプ32における吐出ポート32aの吐出流量と吐出ポート32bの吐出流量を同じ、サブポンプ36における吐出ポート36aの吐出流量と吐出ポート36bの吐出流量を同じとすることができる。これにより、直進走行操作時に発生する左右の走行用油圧モータ12A,12Bの速度差を抑えることができ、走行蛇行を防止することができる。
【0063】
(2)走行ステアリング時の供給流量
例えば図8で示すような走行ステアリング時(右折時)、左の走行用油圧モータ12Bが駆動側となり右の走行用油圧モータ12Aが従動側となり、駆動側の負荷圧は従動側の負荷圧より高くなる。このとき、左の走行用油圧モータ12Bの回転数を高くすることが好ましい。このような場合における左の走行用油圧モータ12Bへの供給流量として、メインポンプ及びサブポンプのうちメインポンプの吐出流量を例にとり、上記比較例と比較しながら説明する。
【0064】
図9(a)は、上記比較例における第1メインポンプ61Aの吐出流量Qc及び第2メインポンプ61Bの吐出流量Qdを説明するためのポンプ吸収馬力特性図であり、図9(b)は、本実施形態のメインポンプ32における吐出ポート32aの吐出流量を説明するためのポンプ吸収馬力特性図である。
【0065】
比較例においては、例えば右の走行用油圧モータ12Bの負荷圧(言い換えれば、第2メインポンプ61Bの吐出圧力)Pb=P3(ただし、P3<P1)である場合、吸収トルク制御機構63Bによって第2メインポンプ61Bの吐出流量QdはQ_maxとなる。このとき、第2メインポンプ61Bの吸収馬力は最大吸収馬力に達していないことから、全馬力制御によって第1メインポンプ61Aの最大吸収馬力が増加し、すなわち吸収馬力制御特性が図9中一点鎖線で示すように右側にシフトする。そして、例えば左の走行用油圧モータ12Bの負荷圧(言い換えれば、第1メインポンプ61Aの吐出圧力)Pa=P4(ただし、P4>P1)である場合、吸収トルク制御機構63Aによって第1メインポンプ61Aの吐出流量Qc=Q1(ただし、Q1<Q_max)となる。
【0066】
このとき、メインポンプ61A,61Bの吸収トルクの総和τ0は、下記の式(1)より得られる。この式(1)を変形すると、吐出流量Q1の式(2)が得られる。
【0067】
τ0=(Q_max×P3+Q1×P4)/(2×π)・・・(1)
Q1=2×π×τ0/P4−Q_max×P3/P4・・・(2)
一方、本実施形態においては、例えば右の走行用油圧モータ12Bの負荷圧(言い換えれば、メインポンプ32の吐出ポート32bの吐出圧力)Pb=P3(ただし、P3<P1)であって左の走行用油圧モータ12Bの負荷圧(言い換えれば、メインポンプ32の吐出ポート32aの吐出圧力)Pa=P4である場合、すなわち、それらの平均値(Pa+Pb)/2=P3+P4/2=P5である場合、吸収トルク制御機構46によってメインポンプ32の吐出流量Qa=Q2(ただし、Q2<Q_max)となる。
【0068】
このとき、メインポンプ32の吸収トルクτ0は、下記の式(3)より得られる。この式(3)を変形すると、吐出流量Q2の式(4)が得られる。
【0069】
τ0=Q2×(P3+P4)/(2×π)・・・(3)
Q2=2×π×τ0/(P3+P4)・・・(4)
そして、右折時の左走行用油圧モータ12Bへの供給流量を比較するために、本実施形態のポンプ吐出流量Qa=Q2と比較例のポンプ吐出流量Qc=Q1と差分を評価する。上記の式(2)及び(4)から下記の式(5)が得られる。
【0070】
Q2−Q1=2×π×τ0/(P3+P4)
−(2×π×τ0/P4−Q_max×P3/P4)
=P3/P4(Q_max−2×π×τ0/(P3+P4))
=P3/P4(Q_max−Q2)・・・(5)
したがって、Q_max>Q2により、Q2>Q1である。すなわち、本実施形態においては、上記比較例と比べて、走行ステアリング時の供給流量を高めることができる。
【0071】
なお、上記一実施形態においては、サブエンジン制御装置35は、走行用油圧モータ12A及び12Bが非操作状態であって予め設定された所定時間が経過した場合、サブエンジン34を所定の低速回転数となるように制御する構成を例にとって説明したが、これに限られず、サブエンジン34を停止するように構成してもよい。この場合には、サブエンジン34の再起動のレスポンスが若干落ちるものの、燃費をさらに改善することができる。
【0072】
なお、以上においては、本発明の適用対象である建設機械の一例としてミニショベル(運転質量6トン未満の小型油圧ショベル)を例にとって説明したが、これに限られず、小型油圧クレーン等に適用してもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0073】
12A 左の走行用油圧モータ
12B 右の走行用油圧モータ
15 旋回用油圧モータ
19 ブーム用油圧シリンダ
20 アーム用油圧シリンダ
21 バケット用油圧シリンダ
30 メインエンジン
31 メインエンジン制御装置(メインエンジン制御手段)
32 メインポンプ
34 サブエンジン
35 サブエンジン制御装置(サブエンジン制御手段)
36 サブポンプ
39A 左走行用方向切換弁
39B 右走行用方向切換弁
40 旋回用方向切換弁
41 ブーム用方向切換弁
54 圧力センサ(第1の操作検出手段、第2の操作検出手段)
56 圧力センサ(第2の操作検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインエンジンと、
前記メインエンジンによって駆動するメインポンプと、
サブエンジンと、
前記サブエンジンによって駆動するサブポンプと、
走行用油圧モータを含む複数の油圧アクチュエータと、
前記複数の油圧アクチュエータへの圧油の流れをそれぞれ制御する複数の方向切換弁とを備え、
前記メインポンプ及び前記サブポンプから吐出された圧油を、前記方向切換弁を介し前記油圧アクチュエータに供給する建設機械の油圧駆動装置であって、
前記複数の油圧アクチュエータが全て非操作状態にあるかどうかを検出する第1の操作検出手段と、
前記走行用油圧モータが非操作状態にあるかどうかを検出する第2の操作検出手段と、
前記複数の油圧アクチュエータのうちのいずれかが操作状態にある場合、前記メインエンジンを所定の定常回転数となるように制御し、前記複数の油圧アクチュエータが全て非操作状態であって予め設定された所定時間が経過した場合、前記メインエンジンを所定の低速回転数となるように制御するメインエンジン制御手段と、
前記走行用油圧モータが操作状態にある場合、前記サブエンジンを所定の定常回転数となるように制御し、前記走行用油圧モータが非操作状態であって予め設定された所定時間が経過した場合、前記サブエンジンを所定の低速回転数となるように制御するか若しくは停止するサブエンジン制御手段とを備えたことを特徴とする建設機械の油圧駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械の油圧駆動装置において、
前記メインポンプは、スプリットフロー型であって、同じ吐出流量としつつ異なる吐出圧力を保持可能な第1出力ポート及び第2出力ポートを有し、
前記サブポンプは、スプリットフロータイプ型であって、同じ吐出流量としつつ異なる吐出圧力を保持可能な第3出力ポート及び第4出力ポートを有しており、
前記メインポンプの第1出力ポート及び前記サブポンプの第3出力ポートからそれぞれ吐出された圧油を合流させて左走行用方向切換弁を介し左の走行用油圧モータに供給し、且つ前記メインポンプの第2出力ポート及び前記サブポンプの第4出力ポートからそれぞれ吐出された圧油を合流させて右走行用方向切換弁を介し右の走行用油圧モータに供給するように構成したことを特徴とする建設機械の油圧駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載の建設機械の油圧駆動装置において、
前記メインポンプは、ポンプ吸収トルクが制限値を超えないように、前記第1出力ポートの吐出圧力及び前記第2出力ポートの吐出圧力に応じてポンプ容量を制御する吸収トルク制御機構を有し、
前記サブポンプは、ポンプ吸収トルクが制限値を超えないように、前記第3出力ポートの吐出圧力及び前記第4出力ポートの吐出圧力に応じてポンプ容量を制御する吸収トルク制御機構を有することを特徴とする建設機械の油圧駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−31753(P2012−31753A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170121(P2010−170121)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】