説明

抵抗変化型メモリ

【課題】 メモリの動作特性の向上を図る。
【解決手段】実施形態の抵抗変化型メモリは、ビット線BLとワード線WLと、第1エミッタ21と、第1ベース23と、第1コレクタ22とを有する、第1駆動型の第1バイポーラトランジスタ2と、第2エミッタ31と、第2ベース33と、第2コレクタ32とを有する第2駆動型の第2バイポーラトランジスタ3と、第1及び第2端子を有する抵抗変化型メモリ素子1と、を具備し、メモリ素子1の第1端子は第1及び第2エミッタ21,31に接続され、メモリ素子1の第2端子は、ビット線BLに接続され、第1及び第2ベース23,33はワード線WLに接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、抵抗変化型メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MRAM(Magnetoresistive RAM)、ReRAM(Resistive RAM)、或いは、PCRAM(Phase Change RAM)などのような、メモリ素子の特性変化と記憶するデータとを対応づけた抵抗変化型メモリが、新たなメモリデバイスとして注目を集めている。
【0003】
抵抗変化型メモリのメモリセルは、例えば、抵抗変化型メモリ素子と選択スイッチとしての電界効果トランジスタとを含んでいる。
【0004】
記憶密度の増大のため、メモリセルの微細化が推進され、メモリ素子及び電界効果トランジスタのサイズが、縮小されている。しかし、電界効果トランジスタのサイズの縮小に起因して、電界効果トランジスタの特性劣化が生じる可能性がある。その結果として、抵抗変化型メモリの特性が劣化する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−244125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
抵抗変化型メモリの特性向上を図る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の抵抗変化型メモリは、第1方向に延在するビット線と、第2方向に延在するワード線と、第1エミッタと、第1ベースと、第1コレクタとを有する、第1駆動型の第1バイポーラトランジスタと、第2エミッタと、第2ベースと、第2コレクタとを有する、前記第1駆動型と異なる第2駆動型の第2バイポーラトランジスタと、第1及び第2端子を有する抵抗変化型メモリ素子と、を具備し、前記第1端子は、前記第1及び第2エミッタに接続され、前記第2端子は、前記ビット線に接続され、前記第1及び第2ベースは、前記ワード線に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態の抵抗変化型メモリのメモリセルの構成を示す等価回路図。
【図2】実施形態の抵抗変化型メモリのメモリセルの動作を説明するための図。
【図3】実施形態の抵抗変化型メモリのメモリセルの動作を説明するための図。
【図4】実施形態の抵抗変化型メモリのメモリセルの動作を説明するための図。
【図5】実施形態の抵抗変化型メモリのメモリセルの動作を説明するための図。
【図6】実施形態の抵抗変化型メモリのメモリセルの構造例を示す図。
【図7】実施形態の抵抗変化型メモリのメモリセルの構造例を示す図。
【図8】実施形態の抵抗変化型メモリのメモリセルアレイの構成を示す等価回路図。
【図9】実施形態の抵抗変化型メモリの動作を説明するための図。
【図10】実施形態の抵抗変化型メモリの動作を説明するための図。
【図11】実施形態の抵抗変化型メモリの動作を説明するための図。
【図12】実施形態の抵抗変化型メモリのメモリセルアレイの構造例を示す図。
【図13】実施形態の抵抗変化型メモリのメモリセルアレイの構造例を示す図。
【図14】実施形態の抵抗変化型メモリのメモリセルアレイの構造例を示す図。
【図15】実施形態の抵抗変化型メモリの製造方法の一工程を示す図。
【図16】実施形態の抵抗変化型メモリの製造方法の一工程を示す図。
【図17】実施形態の抵抗変化型メモリのメモリセルアレイの構造例を示す図。
【図18】実施形態の抵抗変化型メモリのメモリセルアレイの構造例を示す図。
【図19】実施形態の抵抗変化型メモリのメモリセルアレイの構造例を示す図。
【図20】実施形態の抵抗変化型メモリの製造方法の一工程を示す図。
【図21】実施形態の抵抗変化型メモリの製造方法の一工程を示す図。
【図22】実施形態の抵抗変化型メモリの製造方法の一工程を示す図。
【図23】実施形態の抵抗変化型メモリの変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態]
以下、図面を参照しながら、本実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については、同一符号を付し、重複する説明は必要に応じて行う。
【0010】
(1) 基本例
図1乃至図7を参照して、本実施形態の抵抗変化型メモリの基本例として、抵抗変化型メモリのメモリセルについて、説明する。
【0011】
(a) 回路構成
図1を用いて、本実施形態の抵抗変化型メモリのメモリセルの回路構成について、説明する。
【0012】
図1の(a)は、本実施形態の抵抗変化型メモリのメモリセルMCの等価回路図を示している。
【0013】
図1の(a)に示されるように、本実施形態の抵抗変化型メモリのメモリセルMCは、1つの抵抗変化型メモリ素子1と2つのバイポーラトランジスタ(BJT:Bipolar Junction Transistor)とを含んでいる。
【0014】
本実施形態において、抵抗変化型メモリとして、MRAM(Magnetoresistive RAM)を例示する。
【0015】
MRAMにおいて、抵抗変化型メモリ素子1は、例えば、磁気抵抗効果素子である。
【0016】
図1の(b)及び(c)は、磁気抵抗効果素子の構造を示している。メモリ素子1に用いられる磁気抵抗効果素子は、MTJ(Magnetic Tunnel Junction)素子である。
【0017】
MTJ素子1は、磁化の向きが不変な(固定された)第1の磁性層10Aと、磁化の向きが可変な第2の磁性層12Aと、2つの磁性層10A,12Aの間の非磁性層11Aとを有する。2つの磁性層10A,12Aと非磁性層11Aは、磁気トンネル接合を形成している。この磁気トンネル接合は、2つの電極18,19間に設けられている。
【0018】
本実施形態において、磁化の向きが不変な磁性層10Aのことを参照層10Aとよび、磁化の向きが可変な磁性層12Aのことを記録層12Aとよぶ。参照層10Aは、磁化不変層や固定層ともよばれ、記録層12Aは、磁化自由層、自由層ともよばれる。
【0019】
図1の(b)は、面内磁化型のMTJ素子1を示している。図1の(c)は、垂直磁化型のMTJ素子1を示している。面内磁化型のMTJ素子1は、磁性層10A,12Aの磁化の向きが膜面に対して平行方向になっている。
【0020】
記録層12Aの磁化の向きは、スピン注入磁化反転方式によって、変化される。すなわち、記録層12Aの磁化の向きは、素子1を流れる電流IW−AP,IW−Pが含むスピン偏極した電子が、記録層12Aの磁化(スピン)に作用することによって、変化する。
【0021】
「参照層10Aの磁化の向きが不変である」或いは「参照層10Aの磁化の向きが固定されている」とは、記録層12Aの磁化方向を反転させるために使用される磁化反転電流(反転しきい値電流)を、参照層10Aに流した場合に、参照層10Aの磁化の向きが変化しないことを意味する。したがって、MTJ素子1には、反転しきい値電流の大きな磁性層が参照層10Aとして用い、参照層10Aよりも反転しきい値電流の小さい磁性層が記録層12Aとして用いられる。これによって、磁化の向きが可変の記録層12Aと磁化の向きが不変の参照層10Aとを含むMTJ素子1が形成される。
【0022】
記録層12Aの磁化の向きと参照層10Aの磁化の向きとを、スピン注入磁化反転方式によって反平行状態から平行状態にする場合、つまり、記録層12Aの磁化の向きを参照層10Aの磁化の向きと同じにする場合、記録層12Aから参照層10Aに向かって流れる電流IW−Pが、MTJ素子1に供給される。この場合、電子は、トンネルバリア層11Aを経由して、参照層10Aから記録層12Aに向かって移動する。参照層10A及びトンネルバリア層11Aを通過した電子のうち、マジョリティーな電子(スピン偏極した電子)は、参照層10Aの磁化(スピン)の向きと同じ向きを有している。このスピン偏極した電子のスピン角運動量(スピントルク)が、記録層10Aの磁化に印加され、記録層12Aの磁化の向きが反転する。2つの磁性層10A,12Aの磁化配列が平行配列であるとき、MTJ素子1の抵抗値は最も小さくなる。例えば、磁化配列が平行配列のMTJ素子1に対して、“0”データが割り付けられる。
【0023】
記録層12Aの磁化の向きと参照層10Aの磁化の向きとを平行状態から反平行状態にする場合、つまり、記録層12Aの磁化の向きを参照層10Aの磁化の向きに対して反対にする場合、参照層10Aから記録層12Aに向かって流れる電流IW−APが、MTJ素子1に供給される。この場合、電子は、記録層12Aから参照層10Aに向かって移動する。参照層10Aの磁化の向きと反平行のスピンをもつ電子は、参照層10Aによって反射される。反射された電子は、スピン偏極した電子として、記録層12Aに注入される。このスピン偏極した電子(反射された電子)のスピン角運動量が、記録層12Aの磁化に印加され、記録層12Aの磁化の向きは、参照層10Aの磁化の向きと反対(反平行配列)になる。2つの磁性層10A,12Aの磁化配列が反平行配列であるとき、MTJ素子1の抵抗値は最も大きくなる。例えば、磁化配列が反平行配列のMTJ素子1に対して、“1”データが割り付けられる。
【0024】
メモリセルMC内のバイポーラトランジスタ2,3は、MTJ素子1に電流を供給するためのスイッチング素子(選択素子)として用いられる。
【0025】
メモリセルMC内の2つのバイポーラトランジスタ2,3のうち、一方のバイポーラトランジスタ2は、NPN型(第1駆動型)のバイポーラトランジスタ2であり、他方のバイポーラトランジスタ3は、PNP型(第2駆動型)のバイポーラトランジスタ3である。
【0026】
メモリセルMCには、1本のワード線WLと、1本のビット線BLと、2本の電源線SL1,SL2が接続される。
【0027】
メモリセルMC内の各素子1,2,3と各配線WL,BL,SL1,SL2との接続関係は、以下のとおりである。
【0028】
NPN型バイポーラトランジスタ2のエミッタ21(E)は、PNP型バイポーラトランジスタ3のエミッタ31(E)に接続される。互いに接続されたエミッタ21とエミッタ31とは、接続ノードN1を形成している。以下では、接続ノードN1のことを、共通エミッタともよぶ。
【0029】
NPN型バイポーラトランジスタ2のコレクタ22(C)は、電源線SL1に接続される。PNP型バイポーラトランジスタ3のコレクタ32(C)は、電源線SL2に接続される。NPN型バイポーラトランジスタ2は、そのコレクタ22と電源線SL1との間に接続ノードN2を形成し、PNP型バイポーラトランジスタ3は、そのコレクタ32と電源線SL2との間に接続ノードN3を形成している。
【0030】
NPN型バイポーラトランジスタ2のベース23(B)は、PNP型バイポーラトランジスタ3のベース33(B)に接続される。互いに接続されたベース23,33は、接続ノードN4を形成している。以下では、接続ノードN4のことを、共通ベースともよぶ。
【0031】
ビット線BLは、例えば、y方向(第1方向)に延在する。ワード線WLは、y方向に交差するx方向(第2方向)に延在する。
【0032】
2つの電源線SL1,SL2は、例えば、x方向に延在する。但し、電源線SL1,SL2の延在方向は、y方向でもよい。電源線SL1は、高電位端(電源Vdd)に接続され、電源線SL2は、低電位端(グランド端)に接続される。電源線SL1の電位(電圧)は、電源電位Vddに設定され、電源線SL2の電位はグランド電位Vssに設定される。以下では、グランド電位に設定される電源線SL2のことを、グランド線SL2とよぶ。
【0033】
抵抗変化型メモリ素子としてのMTJ素子1の一端(電極)は、2つのバイポーラトランジスタ2,3の接続ノード(共通エミッタ)N1に、接続される。MTJ素子1の他端は、ビット線BLに接続される。バイポーラトランジスタ2,3のエミッタ21,31は、MTJ素子1を経由して、ビット線BLに接続される。
ワード線WLは、2つのバイポーラトランジスタ2,3の接続ノード(共通ベース)N4に接続される。NPN型及びPNP型バイポーラトランジスタ2,3のベース23,33は、ワード線WLに接続される。
【0034】
本実施形態の抵抗変化型メモリにおいて、2つのバイポーラトランジスタ2,3のエミッタ21,31に接続されたビット線BLの電位及びバイポーラトランジスタ2,3のベース23,33に接続されたワード線WLの電位を制御することによって、抵抗変化型メモリ素子(例えば、MTJ素子)1に、その素子1の抵抗状態を変化させるための書き込み電流IW−P,IW−APを、双方向に流すことができる。
【0035】
ビット線及びワード線の電位を制御することによって、一方のバイポーラトランジスタがオン状態にされ、他方のバイポーラトランジスタがオフ状態にされる。例えば、PNP型バイポーラトランジスタ3がオンする場合、ビット線BL側から接続ノードN1側へ流れる電流が、MTJ素子1に供給される。NPN型バイポーラトランジスタ2がオンする場合、接続ノードN1側からビット線BL側へ流れる電流が、MTJ素子1に供給される。
【0036】
電界効果トランジスタがメモリセルに用いられた場合、メモリセルの微細化に伴って、電界効果トランジスタのサイズが小さくなると、電界効果トランジスタからの出力電流が小さくなる。その結果として、MTJ素子の抵抗状態を変化させるしきい値電流のマージンを確保できない可能性が生じる。
【0037】
本実施形態のように、バイポーラトランジスタ2,3が電界効果トランジスタの代わりにメモリセル内に設けられた場合、バイポーラトランジスタ2,3からの出力電流は、バイポーラトランジスタ2,3の端子間の電位差、バイポーラトランジスタ2,3を形成するための半導体層の不純物濃度に応じて設定される。それゆえ、それらを適宜設定することによって、バイポーラトランジスタ2,3がMTJ素子1の反転しきい値電流より大きい書き込み電流を出力し、MTJ素子1の反転しきい値電流に対してマージンを確保した書き込み電流を、メモリセル内のMTJ素子に供給できる。
複数のメモリセルMCによってメモリセルアレイが形成される場合、MTJ素子の特性はばらつきを考慮すると、本実施形態のようにバイポーラトランジスタ2,3からの出力電流によって、書き込み電流の上限値/下限値にマージンが確保されることは有効であり、それによって、動作の信頼性が向上する。
【0038】
また、バイポーラトランジスタは、電界効果トランジスタの短チャネル効果のようなメモリセルの微細化に伴う電気的特性の劣化が、電界効果トランジスタに比較して発現しにくい。それゆえ、抵抗変化型メモリ素子1に電流の供給を制御するデバイスとして、電界効果トランジスタの代わりに、バイポーラトランジスタを用いることによって、メモリセルの微細化に起因する悪影響を低減できる。
【0039】
したがって、本実施形態の抵抗変化型メモリによれば、メモリの動作特性を向上できる。
【0040】
(b) 動作
図1乃至図5を用いて、本実施形態の抵抗変化型メモリ(例えば、MRAM)の動作について説明する。
【0041】
(b−1) 書き込み動作
図1及び2を用いて、メモリセルMC内の抵抗変化型メモリ素子(MTJ素子)に対するデータの書き込みについて、説明する。
ここでは、ビット線BL側に、MTJ素子1の記録層12Aが配置され、接続ノード(共通エミッタ)N1側にMTJ素子1の参照層10Aが配置されている場合について、述べる。
【0042】
上述のように、スピン注入磁化反転方式によってMTJ素子1にデータが書き込まれる場合、MTJ素子1に書き込まれるデータに応じて、書き込み電流をMTJ素子1に双方向に流す必要がある。
【0043】
まず、図2の(a)を用いて、MTJ素子1の磁化配列を、反平行状態(AP状態)から平行状態(P状態)に変化させる場合について、説明する。
【0044】
MTJ素子1の2つの磁性層(参照層/記録層)10A,12Aの磁化配列が、反平行状態から平行状態にされる場合、参照層10Aから記録層12Aへ電子が注入される。つまり、電子の移動方向とは反対に、磁化配列を平行状態にするための書き込み電流IW−Pを、記録層12Aから参照層10Aへ流す。
【0045】
この場合、書き込み電流IW−Pは、ビット線BL側から接続ノードN1に向かって流れる電流となるため、NPN型バイポーラトランジスタ2をオフ状態にし、PNP型バイポーラトランジスタ3をオン状態にする。
【0046】
バイポーラトランジスタ2,3をオン/オフ状態にするために、ビット線BL及びワード線WLの電位が制御される。
【0047】
ワード線WLの電位が各トランジスタ2,3のベース電圧Vbに相当する。NPN型バイポーラトランジスタ2をオフ状態にし、PNP型バイポーラトランジスタ3をオン状態にする場合、各バイポーラトランジスタ2,3のベース電圧(ノードN4の電位)Vbが、各バイポーラトランジスタ2,3のエミッタ電圧(ノードN1の電位)Veよりも小さくされる。つまり、ワード線WLの電位が、ビット線BLの電位より低くされる。
【0048】
NPN型バイポーラトランジスタ2においてベース電圧Vbがエミッタ電圧Veよりも小さくなると、NPN型バイポーラトランジスタ2のエミッタ(E)−ベース(B)間の電圧Vebが、正の電圧になる。それゆえ、NPN型バイポーラトランジスタ2のエミッタ−ベースに対応するPN接合に、逆バイアスが印加され、NPN型バイポーラ型トランジスタ2は、オフ状態になる。
【0049】
したがって、MTJ素子1の磁化配列を反平行状態から平行状態にする場合、ベース電位Vbとしてのワード線WLの電位がエミッタ電圧VeとしてのノードN1の電位より小さい(つまり、Vb<Ve)条件下における、MTJ素子1とPNP型バイポーラトランジスタ3の動作を考えればよい。
【0050】
エミッタ電圧Veは、MTJ素子1を経由して、ビット線BLから印加される電圧に相当する。それゆえ、ビット線BLに対する印加電圧(例えば、電圧Vdd)が、MTJ素子1の抵抗値に起因して電圧降下するため、エミッタ電圧Veは、電圧Vddより小さくなる。また、エミッタ電圧Veは、接続ノード(共通エミッタ)N1を流れる電流量に依存するため、ベース電圧Vbによって変調される。
【0051】
図3を用いて、図2の(a)におけるPNP型バイポーラトランジスタ3のベース電圧Vbとエミッタ電圧Veとの関係、及び、ベース電圧Vbとエミッタ電流Ieとの関係について、説明する。
図3の(a)及び(b)は、メモリセルMCにおけるPNP型バイポーラトランジスタ3とMTJ素子1との回路に関して、MTJ素子1の抵抗値が、いくつかのパラメータ値として設定され、且つ、バイポーラトランジスタの動作モデルが適切なモデルに設定された場合におけるシミュレーション(ここでは、SPICEシミュレーション)結果が示されている。尚、図3の(a)及び(b)のシミュレーションにおいて、ベース電圧Vbがスイープ(sweep)された場合におけるエミッタ電圧Ve及びエミッタ電流Ieが示されている。
【0052】
PNP型バイポーラトランジスタ3のコレクタ電圧Vcは0Vに設定され、ベース電圧Vbは0Vから電源電圧Vdd(1.0V〜2.0V程度)まで変化されている。ビット線BLの電位は、電圧Vddに設定されている。MTJ素子1の抵抗値は、パラメータとしてそれぞれ変化されている。MTJ素子1の抵抗値は、それぞれ、10kΩ、15kΩ、20kΩ及び30kΩの場合を想定している。
【0053】
図3の(a)は、PNP型バイポーラトランジスタ3におけるベース電圧Vbとエミッタ電流Ieとの関係を示している。図3の(a)において、グラフの横軸はベース電圧Vbに対応し、グラフの縦軸はエミッタ電流Ieに対応する。
【0054】
図3の(b)は、PNP型バイポーラトランジスタ3におけるベース電圧Vbとエミッタ電圧Veとの関係を示している。図3の(b)において、グラフの横軸はベース電圧Vbに対応し、グラフの縦軸はエミッタ電圧Veに対応する。
【0055】
図3の(a)に示されるように、各MTJ素子の抵抗値において、PNP型バイポーラトランジスタ3のベース電圧Vbが0Vに設定されている場合、エミッタ電流Ieが最大値を示す。但し、MTJ素子1の抵抗値が大きくなると、PNP型バイポーラトランジスタ3のエミッタ電流Ieの電流値(絶対値)は、小さくなる。
【0056】
また、図3の(b)に示されるように、エミッタ電流Ieが流れることによって、PNP型バイポーラトランジスタ3のエミッタ電圧Veは増大する。エミッタ電圧Veの大きさは、MTJ素子1の抵抗値に依存せずに、ほとんど同じ傾向(大きさ)で変化する。
【0057】
図3のシミュレーション結果に示されるように、ベース電圧Vbが0Vのとき、ベース−エミッタ電圧Vbeは最大値となり、エミッタ電流Ieは最大値となる。
したがって、MTJ素子の磁化配列を反平行状態から平行状態にする場合、電源電圧Vdd(例えば、1.0V〜2.0V程度)のビット線BLの電位に対して、ワード線WLの電位を0V程度にする。これによって、PNP型バイポーラトランジスタ3の出力電流を用いたデータの書き込みの効率を向上できる。
【0058】
次に、図2の(b)を用いて、MTJ素子1の磁化配列を、平行状態(P状態)から反平行状態(AP状態)に変化させる場合について、説明する。この場合の動作は、反平行状態(AP状態)から平行状態(P状態)に変化させる場合と反対の動作となる。
【0059】
MTJ素子1の磁化配列が、平行状態から反平行状態にされる場合、記録層12Aから参照層10Aへ電子が注入される。つまり、磁化配列を反平行状態にするための書き込み電流IW−APを、参照層10Aから記録層12Aへ流す。
【0060】
図2の(b)に示されるように、平行状態から反平行状態への書き込み動作は、NPN型バイポーラトランジスタ2を用いて、図2の(a)に示される電流IW−Pとは反対の方向に流れる書き込み電流IW−APをMTJ素子1に流す。
【0061】
書き込み電流IW−APは、接続ノードN1側からビット線BL側に向かって流れる電流となるため、この動作の場合、NPN型バイポーラトランジスタ2をオン状態にし、PNP型バイポーラトランジスタ3をオフ状態にする。
【0062】
ビット線BLの電位は“L”レベル(0V)に設定され、電源線SL1の電位が“H”レベル(Vdd)に設定される。これによって、電源線SL1からビット線BLに向かって、電流IW−APを流す。
【0063】
バイポーラトランジスタ2,3のベース電圧Vb、つまり、ワード線WLの電位は、NPN型バイポーラトランジスタ2のみがオン状態で、PNP型バイポーラトランジスタ3がオフ状態となるように、設定される。
【0064】
PNP型バイポーラトランジスタ3においてベース電圧Vb(ワード線WLの電位)がエミッタ電圧(ノードN1の電位)Veより大きいと、PNP型バイポーラトランジスタ3のエミッタ−ベース間の電圧Vebが負の電圧になる。つまり、PNP型バイポーラトランジスタ3のエミッタ−ベースに対応するPN接合に、逆バイアスが印加され、PNP型バイポーラトランジスタ3はオフ状態になる。
【0065】
したがって、MTJ素子1の磁化配列の相対関係を平行状態から反平行状態にする場合、ベース電位Vb(ワード線WLの電位)がエミッタ電圧Ve(ノードN1の電位)より大きい(つまり、Vb>Ve)条件下における、MTJ素子1とNPN型バイポーラトランジスタ2の動作を考えればよい。
【0066】
ここで、エミッタ電圧Veは、MTJ素子に起因する電圧降下によってグランド電位Vssより大きくなる。また、エミッタ電圧Veは、ノードN1を流れる電流量に依存するため、ベース電圧Vbによって変調される。
【0067】
図4を用いて、図2の(b)におけるNPN型バイポーラトランジスタ2のベース電圧Vbとエミッタ電圧Veとの関係、及び、ベース電圧Vbとエミッタ電流Ieとの関係について、説明する。
図4は、メモリセルMCにおけるNPN型バイポーラトランジスタ2とMTJ素子1との回路に関して、MTJ素子1の抵抗値が任意の値に設定され、且つ、バイポーラトランジスタの動作モデルが適切なモデルに設定された場合におけるシミュレーション結果を示している。尚、図4の(a)及び(b)のシミュレーションにおいて、ベース電圧Vbがスイープ(sweep)された場合におけるエミッタ電圧Ve及びエミッタ電流Ieが示されている。
【0068】
NPN型バイポーラトランジスタ2のコレクタ電圧Vcは、電源電圧Vdd(1.0V〜2.0V程度)に設定され、ベース電圧Vbは0Vから電源電圧Vddまで変化されている。ビット線BLの電位は、グランド電位(0V)に設定されている。また、MTJ素子1の抵抗値は、パラメータとしてそれぞれ変化されている。MTJ素子1の抵抗値は、それぞれ、10kΩ、15kΩ、20kΩ及び30kΩに設定されている。
【0069】
図4の(a)は、NPN型バイポーラトランジスタ2におけるベース電圧Vbとエミッタ電流Ieとの関係を示している。図4の(a)において、グラフの横軸はベース電圧Vbに対応し、グラフの縦軸はエミッタ電流Ieに対応する。
図4の(b)は、NPN型バイポーラトランジスタ2におけるベース電圧Vbとエミッタ電圧Veとの関係を示している。図4の(b)において、グラフの横軸はベース電圧Vbに対応し、グラフの縦軸はエミッタ電圧Veに対応する。
【0070】
図4の(a)に示されるように、ベース電圧Vbが電源電圧Vddである場合に、エミッタ電流Ieが最高値を示す。MTJ素子1の抵抗値が増加すると、エミッタ電流Ieの絶対値は減少する。
【0071】
また、図4の(b)に示されるように、エミッタ電流Ieが流れることによって、エミッタ電圧Veは増大する。そして、図3の(b)と同様に、エミッタ電圧Veの大きさ及び変化の傾向はMTJ素子1の抵抗値にほとんど依存しない。
【0072】
図4のシミュレーション結果に示されるように、ベース電圧Vbが電源電圧Vddのとき、ベース−エミッタ間電圧Vbeが最大値となり、エミッタ電流Ieは最大値となる。
したがって、MTJ素子の磁化配列を平行状態から反平行状態にする場合、グランド電位程度のビット線BLの電位に対して、ワード線WLの電位を電源電圧Vdd程度にすることが好ましい。これによって、NPN型バイポーラトランジスタ2の出力を用いたデータの書き込みの効率を向上できる。
【0073】
通常のプッシュプル(Push-Pull)型の2つのパイポーラ型トランジスタの動作は、エミッタ−ベース間の電圧、及び、ベース−コレクタ間の電圧は一定されている。
これに対して、メモリセルMCのNPN型バイポーラトランジスタ2及びPNP型バイポーラトランジスタ3において、動作時にベース電圧は変調され、エミッタ−ベース間の電圧及びベース−コレクタ間の電圧は、抵抗変化型メモリ素子に供給する電流の向き及び大きさに応じて変化する。
【0074】
バイポーラトランジスタ2,3がMTJ素子1の反転しきい値電流より大きい書き込み電流を出力し、MTJ素子1の反転しきい値電流に対してマージンを確保した書き込み電流を、メモリセル内のMTJ素子に供給できる。また、書き込み電流のマージンの確保によって、書き込み動作の信頼性が向上する。
【0075】
以上のように、本実施形態において、メモリセル内に2つのバイポーラトランジスタ2,3を設けることによって、書き込むデータに応じてMTJ素子に対して双方向に流れる電流IW−P,IW−APを発生できる。
【0076】
(b−2) 読み出し動作
図5の(a)を用いて、本実施形態の抵抗変化型メモリのデータ保持動作について、説明する。本実施形態のMRAMの読み出し動作において、読み出し電流Iを、MTJ素子1の磁化配列を反平行状態から平行状態へ変化される場合と同じ方向に流す場合を例示する。
【0077】
MRAMの読み出し動作は、データを書き込み場合と同様に、MTJ素子1に電流を流すが、MTJ素子1が記憶しているデータが破壊されない(書き変わらない)ように、読み出し電流Iの電流値は、MTJ素子1の反転しきい値電流より小さくされる。
【0078】
例えば、図5の(a)に示されるように、ビット線BLの電位が、Vdd/2程度に設定され、ワード線の電位が0VからVdd/3程度に設定される。
【0079】
この場合、エミッタ電圧Veがベース電圧Vbより大きくなるので、PNP型バイポーラトランジスタ3はオン状態になり、NPN型バイポーラトランジスタ2はオフ状態になる。
【0080】
MTJ素子1の抵抗値の大きさに応じて、ビット線BLを流れる電流の大きさ、又は、読み出しノードN3の電位の大きさが変化する。この電流/電位の大きさが検知されることによって、MTJ素子1が記憶しているデータが判別される。
【0081】
ここでは、オン状態のPNP型バイポーラトランジスタ3を用いて、MTJ素子に読み出し電流Iを供給する例を示した。しかし、ビット線及びワード線の電位を制御し、PNP型バイポーラトランジスタ3をオフ状態にし、NPN型バイポーラトランジスタ2をオン状態にすることによって、NPN型バイポーラトランジスタ2の出力電流を読み出し電流Iとして用いてもよい。但し、読み出し動作において、NPN型バイポーラトランジスタ2からの読み出し電流の電流値が、MTJ素子1の反転しきい値電流より小さい値に設定されるのは、もちろんである。
【0082】
このように、メモリセルMC内に2つのバイポーラトランジスタ2,3が設けられた場合であっても、ビット線BL及びワード線WLの電位を制御することによって、バイポーラトランジスタの出力電流の大きさを制御できるので、読み出し電流Iによる誤書き込みを抑制して、MTJ素子1からデータを読み出せる。
【0083】
したがって、本実施形態の抵抗変化型メモリにおいて、2つのバイポーラトランジスタ2,3を含むメモリセルMCは、メモリセルMC内のMTJ素子からデータを読み出すことができる。
【0084】
(b−4) データ保持動作
図5の(b)を用いて、本実施形態の抵抗変化型メモリのデータ保持動作について、説明する。
【0085】
例えば、メモリセルをデータ保持状態(スタンバイ状態ともよぶ)にする場合、電源線SL1の電位(電圧)は、電源電位Vddに設定され、グランド線SL2の電位はグランド電位Vssに設定される。
【0086】
NPN型/PNP型バイポーラトランジスタ2,3のエミッタ21,31の電位が、NPN型/PNP型バイポーラトランジスタ2,3のベース23,33の電位が実質的に同じである場合、つまり、接続ノードN1と接続ノードN4との間の電位差が、実質的に0である場合、NPN型バイポーラトランジスタ2及びPNP型バイポーラトランジスタ3の両方が、オフ状態になる。
【0087】
ビット線BLに印加される電位が、ワード線WLに印加される電位と同じ大きさに設定されると、MTJ素子1に電流がほとんど供給されない。それゆえ、ビット線BL−ワード線WL間の電位差を0に設定することによって、MTJ素子1にデータが書き込まれることなしに、MTJ素子1にデータを保持できる。
【0088】
尚、シリコン(Si)を用いたバイポーラトランジスタの場合、エミッタ(E)−ベース(B)間のpn接合に対して、順方向(フォワード方向)に0.6V以上の電圧が印加されなければ、各バイポーラトランジスタ2,3はオン状態にならない。
【0089】
ビット線BL及びワード線WLの電位を0Vに設定して、ビット線−ワード線間の電位差を0Vにしてもよい。しかし、ビット線BL及びワード線WLの両方に、Vdd/3〜Vdd/2程度の中間電位(以下では、Vdd/2とする)を供給することが好ましい。これによって、メモリセルMCのデータ保持状態において、ビット線BL及びワード線WLが、中間電位Vdd/2によって充電される。それゆえ、配線遅延に起因するメモリの動作速度の低下を抑制できる。
【0090】
本実施形態のメモリセルMCを用いてメモリセルアレイが形成された場合(図8参照)、ビット線BL及びワード線WLの配線長は長くなるので、中間電位Vdd/2によるビット線及びワード線の充電は、抵抗変化型メモリの動作特性の向上に、有効である。したがって、データ保持時のビット線/ワード線の充電によって、メモリセルのデータ保持状態後の動作を高速化できる。
【0091】
(c) 構造
図6乃至図7を参照して、本実施形態の抵抗変化メモリのメモリセルMCの構造について説明する。
【0092】
(c−1) 構造例1
図6を用いて、本実施形形態の抵抗変化型メモリのメモリセルMCの構造例1について、説明する。
【0093】
図6の(a)は、構造例1における、1つのメモリセルMCの平面構造を示している。図6の(b)は、図6の(a)のVI−VI線に沿う断面構造を示している。
【0094】
図6の(a)及び(b)に示されるメモリセルMCにおいて、バイポーラトランジスタ2,3は、プレーナー(Planer)構造を有している。
【0095】
図6の(a)及び(b)に示されるように、ビット線BLは、バイポーラトランジスタ2,3の形成領域(以下、バイポーラトランジスタ形成領域とよぶ)の上方を、y方向に延在している。ワード線WL,WL’は、ビット線の延在方向に交差するx方向に延在している。
【0096】
メモリセルMC内の2つのバイポーラトランジスタ2,3は、半導体基板50内の不純物半導体層21,22,23,31,32,33によって、形成される。
【0097】
半導体基板50は、例えば、p型(第2導電型)半導体基板(p型シリコン基板)である。
半導体基板50内のトレンチには、素子分離絶縁膜51A,51Bが埋め込まれている。素子分離絶縁膜51A,51Bは、バイポーラトランジスタ形成領域を区画し、NPN型バイポーラトランジスタ形成領域(第1半導体領域)とPNP型バイポーラトランジスタ形成領域(第2半導体領域)とを互いに電気的に分離している。
【0098】
半導体基板50内には、n型(第1導電型)ウェル領域22が設けられている。
【0099】
n型ウェル領域22は、NPN型バイポーラトランジスタ2のコレクタ(C)として用いられる。NPN型バイポーラトランジスタ形成領域において、p型不純物層23が、n型ウェル領域22内に設けられる。p型不純物層23は、NPN型バイポーラ型トランジスタ2のベース(B)として用いられる。p型不純物層23内には、n型不純物層21が設けられている。n型不純物層21は、NPN型バイポーラトランジスタ2のエミッタ(E)として用いられる。
【0100】
PNP型バイポーラトランジスタ3が形成されるトランジスタ形成領域において、n型ウェル領域22内に、p型ウェル領域32が設けられている。p型ウェル領域32は、PNP型バイポーラトランジスタ3のコレクタ(C)として用いられる。p型ウェル領域32内には、n型不純物層33が設けられている。n型不純物層33は、PNP型バイポーラトランジスタ3のベース(B)として用いられている。n型不純物層33内に、p型不純物層31が設けられている。p型不純物層31は、PNP型バイポーラトランジスタ3のエミッタ(E)として用いられる。
【0101】
以下では、NPN型バイポーラトランジスタ2のコレクタとしてのn型ウェル領域22のことを、n型コレクタ層22とよぶ。NPN型バイポーラトランジスタ2のベースとしてのp型不純物層23のことを、p型ベース層23とよぶ。また、NPN型バイポーラトランジスタ2のエミッタとしてのn型不純物層21のことを、n型エミッタ層21とよぶ。
PNP型バイポーラトランジスタ3のコレクタとしてのp型ウェル領域32のことを、p型コレクタ層32とよぶ。PNP型バイポーラトランジスタ2のベースとしてのn型不純物層33のことを、n型ベース層33とよぶ。PNP型バイポーラトランジスタ3のエミッタとしてのp型不純物層31のことを、p型エミッタ層31とよぶ。
【0102】
NPN型バイポーラトランジスタ形成領域内において、n型エミッタ層21の底面とn型コレクタ層22の上面との間には、p型ベース層23が介在している。p型ベース層23の上面は基板50表面上に露出し、基板50表面上においてp型ベース層23の上面とn+型エミッタ層21の上面とがy方向に隣接している。
【0103】
PNP型バイポーラトランジスタ形成領域内において、p型エミッタ層31の底面とp型コレクタ層32の上面との間には、n型ベース層33が介在している。n型ベース層33の上面は基板50表面上に露出し、基板50表面上においてn型ベース層33の上面とp型エミッタ層31の上面とがy方向に隣接している。
【0104】
2つのエミッタ層21,31は、素子分離絶縁膜51Bを挟んで、y方向に隣接している。
【0105】
型エミッタ層21上には、コンタクトプラグ61Bが設けられている。また、p型エミッタ層31上には、コンタクトプラグ61Aが設けられている。コンタクトプラグ61A,61Bは、半導体基板50表面を覆う第1の層間絶縁膜(例えば、SiO)52内に、埋め込まれている。コンタクトプラグ61A,61Bは、例えば、タングステン(W)やモリブデン(Mo)が用いられている。
【0106】
2つのコンタクトプラグ61A,61B上には、中間配線63が設けられている。中間配線63は、2つのコンタクトプラグ61A,61B上で連続し、2つのコンタクトプラグ61A,61Bを接続する。コンタクトプラグ61A,61B及び中間配線63によって、n型エミッタ層21とp型エミッタ層31とが電気的に接続される。これによって、2つのバイポーラトランジスタ2,3のエミッタが接続される。中間配線63は、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、又は、窒化チタン(TiN)等を用いて形成される。
【0107】
MTJ素子1、中間配線63及びビアプラグ64は、第2の層間絶縁膜52に覆われている。ビット線BLは、ビアプラグ64上及び層間絶縁膜52上に設けられている。
【0108】
中間配線63上には、抵抗変化型メモリ素子(例えば、MTJ素子)1が設けられる。MTJ素子1上に、ビアプラグ64が設けられている。ビット線BLは、ビアプラグ64を経由して、MTJ素子1の他端に接続されている。中間配線63及びコンタクトプラグ61A,61Bを経由して、MTJ素子1の一端は、n型エミッタ層21及びp型エミッタ層31に接続される。
【0109】
例えば、上述のMTJ素子1の接続関係によれば、中間配線63上に、下部電極18を介して、参照層10Aが配置される。参照層10A上に、トンネルバリア層11Aが配置される。トンネルバリア層11A上に、記録層12Aが配置される。そして、記録層12上に、ビアプラグ64が設けられる。参照層10Aが、中間配線63及びコンタクトプラグ61A,61Bを介して、エミッタ層21,31に接続され、記録層12Aが、ビアプラグ64を介して、ビット線BLに接続されている。
【0110】
MTJ素子1は、例えば、エミッタ層21,31を分離するための素子分離絶縁膜51B上方に配置されている。
【0111】
p型ベース層23上には、第1の配線29が設けられている。n型ベース層33上には、第2の配線39が設けられている。配線29,39は、ベース層23,33にそれぞれ直接接触する。配線29,39は、コンタクトプラグ61A,61Bをy方向に挟むように、半導体基板50上にレイアウトされる。
【0112】
配線29,39は、例えば、x方向に延在する。配線29,39は、例えば、ポリシリコン、シリサイド、金属、又は、これらの積層体を用いて、形成される。
【0113】
2つの配線29,39は、その延在方向の少なくとも一端で、コンタクトプラグや中間配線を介して接続されている。配線29,39は、例えば、ベース層23,33とワード線とを接続するための配線である。それゆえ、配線29,39は実質的にワード線WL,WL’として機能し、2つの配線29,39は1組のワード線対を形成している。以下では、説明の簡単化のため、配線29,39のことを、ワード線WL,WL’ともよぶ。尚、配線29,39上に、側壁絶縁膜が設けられてもよい。
【0114】
n型コレクタ層22及びp型コレクタ層32は、トリプルウェル構造を介して、高電位(Vdd)側の電源線SL1及び低電位(Vss)側のグランド線SL2にそれぞれ接続される。n型コレクタ層22としてのn型ウェル領域22は、電源線SL1としても用いられ、p型コレクタ層32としてのp型ウェル領域32は、グランド線SL2としても用いられる。
【0115】
図6に示される構造において、MTJ素子1に対して、ビット線BL側から基板50側へ電流を供給する場合であっても、基板50側からビット線BL側へ電流を供給する場合であっても、電流が経由するコンタクトの数は共通である。これによって、メモリセルの書き込み動作が書き込み電流をMTJ素子1に双方向に流す動作であっても、コンタクトの寄生抵抗に起因した書き込み電流のばらつきは、抑制できる。
【0116】
本構造例1のメモリセルの製造方法については、後述する。
【0117】
以上のように、本構造例1において、メモリセルMC内のバイポーラトランジスタ2,3は、プレーナー構造を有している。それゆえ、本構造例1のメモリセルMCのバイポーラトランジスタ2,3は、半導体基板50内に設けられた不純物半導体領域21,22,23,31,32,33を用いて、形成できる。それゆえ、比較的簡単な製造プロセスを用いて、メモリセルMCのバイポーラトランジスタ2,3を形成でき、製造コストを低減できる。
【0118】
(c−2) 構造例2
図7を用いて、本実施形態の抵抗変化型メモリのメモリセルMCの構造例2について、説明する。尚、本構造例2において、上述の構造例1と共通する部材に関しては、共通の符号を付し、それらの詳細な説明は、必要に応じて行う。
【0119】
図7の(a)は、構造例2における1つのメモリセルMCの平面構造を示している。図7の(b)は、図7の(a)のVII−VII線に沿う断面構造を示している。
【0120】
図7の(a)及び(b)に示されるメモリセルMCにおいて、バイポーラトランジスタ2,3は、ラテラル(Lateral)構造を有している。
【0121】
ラテラル構造のバイポーラトランジスタ2,3は、SOI基板59上に設けられる。
【0122】
SOI基板54は、半導体基板55上の絶縁膜56と、絶縁膜56上の半導体層(SOI層とよぶ)57とから形成される。
【0123】
ラテラル構造のバイポーラトランジスタを用いたメモリセルにおいて、SOI層57内にウェル領域が設けられていると、リーク電流を低減できない。それゆえ、真性(Intrinsic)の半導体層がSOI層57に用いられることによって、不純物層同士が、電気的に分離される。真性のSOI層57の不純物濃度は、コレクタ層、ベース層及びエミッタ層の不純物濃度より十分低い。
【0124】
そのSOI層57内に、各バイポーラトランジスタ2,3のコレクタ層22,32、ベース層23,33及びエミッタ層21,31が設けられている。
【0125】
各バイポーラトランジスタ2,3が形成される領域AAは、y方向に連続している。バイポーラトランジスタ形成領域AAは、x方向において、2つの素子分離領域STIに挟まれている。
【0126】
NPN型バイポーラトランジスタ2のn型コレクタ層22上には、シリサイド層69Aが設けられている。シリサイド層69A上には、コンタクトプラグ65Aが設けられている。コンタクトプラグ65Aは、配線66Aに接続される。配線66Aは、例えば、電源Vddに接続され、配線66Aは電源線SL1として用いられる。配線66Aは、例えば、金属からなる。配線66Aは、例えば、x方向に延在する。このように、n型コレクタ層22が、金属の電源線SL1に接続される。
【0127】
NPN型バイポーラトランジスタ2のp型ベース層23は、SOI層57内において、n型コレクタ層22とn型エミッタ層21との間に設けられている。p型ベース層23上には、配線29が、設けられている。
【0128】
PNP型バイポーラトランジスタ3のp型コレクタ層32上には、シリサイド層69Bが設けられている。シリサイド層69B上には、コンタクトプラグ65Bが設けられている。コンタクトプラグ65Bは、配線66Bに接続される。配線66Bは、例えば、グランド電位Vssに接続され、配線66Bはグランド線SL2として用いられる。配線66Bは、例えば、金属からなる。配線66Bは、例えば、x方向に延在する。このように、p型コレクタ層32が、金属のグランド線SL2に接続される。
【0129】
PNP型バイポーラトランジスタ3のn型ベース層33は、SOI層57内において、p型コレクタ層32とp型エミッタ層31との間に設けられている。n型ベース層33上には、配線39が、設けられている。
【0130】
n型エミッタ層21及びp型エミッタ層31は、SOI層57内でy方向に隣接している。2つのエミッタ層21,31は、y方向において、2つのベース層23,33との間に挟まれている。尚、図7に示される例では、n型エミッタ層21とp型エミッタ層31とは直接接触しているが、n型エミッタ層21とp型エミッタ層31との間に、真性半導体層(SOI層)が介在していてもよい。
【0131】
n型エミッタ層21上及びp型エミッタ層31上には、シリサイド層69Cが設けられている。シリサイド層69は、n型エミッタ層21上及びp型エミッタ層31上でy方向に連続している。1つのコンタクトプラグ65Cは、シリサイド層69Cを介して、2つのエミッタ層21,31上に設けられている。
【0132】
コンタクトプラグ65C上には、中間配線66Cが設けられている。MTJ素子(抵抗変化型メモリ素子)1は、中間配線66C上に設けられている。MTJ素子1は、ビアプラグ67を介して、ビット線BLに接続されている。
【0133】
このように、2つのエミッタ層21,31は、共通のコンタクトプラグ65Cによって、MTJ素子1に接続される。
【0134】
エミッタ層21,31上のコンタクトプラグ65Cは、2つのベース層23,33上の配線29,39にy方向に挟まれるように、SOI基板54上にレイアウトされている。
【0135】
MTJ素子1は、2つのエミッタ層21,31にまたがるように、2つのエミッタ層21,31上方に配置されている。
【0136】
ベース層23,33上の配線29,39は、側壁絶縁膜54によって覆われている。側壁絶縁膜54は、例えば、窒化シリコン膜やシリコン酸化膜を用いて、形成される。例えば、側壁絶縁膜54の下端がベース層23,33とコレクタ層22,32との境界部にまたがるように、側壁絶縁膜54が配線29,39上に形成される。例えば、側壁絶縁膜54の下端がベース層23,33とエミッタ層21,31との境界部にまたがるように、側壁絶縁膜54が配線29,39上に形成される。これによって、ベース層23,33とシリサイド層69A,69B,69Cとが電気的に接続されることが、防止される。
【0137】
y方向におけるベース層23,33の寸法は、バイポーラトランジスタTrの特性向上のため、小さくすることが好ましい。y方向におけるコレクタ層22,33の寸法、又は、y方向におけるベース層23,33の寸法が、“F”という一単位で示される場合、y方向におけるエミッタ層21,31の寸法は、例えば、“F/2”で示される。
【0138】
配線29,39とエミッタ層/コレクタ層との接触を防止するために、y方向における配線(ワード線)29,39の寸法は、y方向におけるベース層23,33の寸法以下であることが好ましい。
【0139】
尚、本構造例2のメモリセルの製造方法については、後述する。
【0140】
ラテラル構造のバイポーラトランジスタ2,3は、プレーナー構造のバイポーラトランジスタと異なって、MTJ素子1にウェル領域を介して電流を供給しない。そのため、メモリセルMC内の2つのバイポーラトランジスタ2,3を素子分離領域(素子分離絶縁膜)によって分離せずともよくなる。それゆえ、素子分離領域の面積縮小によって、メモリセルMCの占有面積(セルサイズ)を縮小できる。
【0141】
また、プレーナー構造のバイポーラトランジスタを用いた場合とは異なって、本構造例2のラテラル構造のバイポーラトランジスタ2,3は、基板の深い位置におけるウェル領域の分離を行わなくともよい。それゆえ、ラテラル構造のバイポーラトランジスタを用いた場合、ウェル領域を分離するための寸法(素子分離幅)を確保せずともよくなり、y方向のメモリセルMCの寸法を小さくできる。
【0142】
以上のように、本構造例2において、メモリセルMC内のバイポーラトランジスタ2,3は、ラテラル構造を有している。それゆえ、本構造例2のメモリセルMCのバイポーラトランジスタ2,3は、プレーナー構造のバイポーラトランジスタ2,3に比較して、メモリセルのセルサイズを縮小できる。
【0143】
(2) 実施例
図8乃至図22を参照して、本実施形態の抵抗変化型メモリの実施例として、上述のメモリセルMCを用いたメモリセルアレイについて説明する。尚、図1乃至図7に示された部材と、共通する部材に関しては、共通又は類似した符号を付し、それらの詳細な説明は、必要に応じて行う。
【0144】
(a) 回路構成
図8を用いて、本実施形態の抵抗変化型メモリのメモリセルアレイの回路構成について、説明する。
【0145】
図8は、本実施形態の抵抗変化型メモリのメモリセルアレイの等価回路図である。
【0146】
図8に示されるように、メモリセルアレイは、複数のメモリセルMC1,MC2,MC3,MC4,MC5,・・・を含んでいる。
【0147】
また、メモリセルアレイ内には、複数のビット線BL0,BL1,BL2及び複数のワード線WL0,WL1,WL2が設けられている。
【0148】
ビット線BL0,BL1,BL2は、y方向(カラム方向)に延在する。各ビット線BL0,BL1,BL2は、x方向(ロウ方向)に隣接する。ワード線WL0,WL1,WL2は、x方向に延在する。各ワード線WL1,WL2,WL3は、y方向に隣接する。
【0149】
電源線SL1,SL3及びグランド線SL0,SL2は、例えば、x方向に延在する。
【0150】
電源線SL1,SL3には、電源電圧Vddが印加され、グランド線SL0,SL2には、グランド電位Vssが印加される。
【0151】
メモリセルアレイにおいて、y方向(共通のカラム)に配列されたメモリセルMC1,MC2,MC3,MC4は、共通のビット線BL0,BL1,BL2に接続される。また、メモリセルアレイにおいて、x方向(共通のロウ)に配列されたメモリセルMC1,MC2,MC3,MC4は、共通のワード線WL0,WL1,WL2に接続される。
【0152】
また、メモリセルアレイにおいて、y方向(共通のロウ)に配列されたメモリセルは、共通の電源線SL1,SL3及び共通のグランド線SL0,SL2に接続される。y方向に互いに隣接するメモリセルMC1,MC2,MC3,MC4は、電源線SL1,SL3及びグランド線SL0,SL2を共有する。
【0153】
例えば、電源線SL1は、y方向に互いに隣接するメモリセルMC1とメモリセルMC4とによって、共有される。メモリセルMC1のNPN型バイポーラトランジスタ2は、y方向において、メモリセルMC2のNPN型バイポーラトランジスタ2と隣り合う。メモリセルMC1のNPN型バイポーラトランジスタ2のコレクタ及びメモリセルMC4のNPN型バイポーラトランジスタ2のコレクタは、共通の電源線SL1に接続される。メモリセルMC1のNPN型バイポーラトランジスタ2のコレクタは、電源線SL1を介して、メモリセルMC2のNPN型バイポーラトランジスタ2のコレクタに接続される。
【0154】
例えば、グランド線SL2は、y方向に互いに隣接するメモリセルMC1とメモリセルMC5とによって、共有される。メモリセルMC1のPNP型バイポーラトランジスタ3は、y方向において、メモリセルMC5のPNP型バイポーラトランジスタ3に隣り合う。メモリセルMC1のPNP型バイポーラトランジスタ3のコレクタ、及び、メモリセルMC5のPNP型バイポーラトランジスタ3のコレクタは、共通のグランド線SL2に接続される。メモリセルMC1のPNP型バイポーラトランジスタ3のコレクタは、グランド線SL2を介して、メモリセルMC5のPNP型バイポーラトランジスタ3のコレクタに接続される。
【0155】
メモリセルMC1とメモリセルMC2とは、電源線SL1を対称軸として鏡像関係を有している。また、メモリセルMC1とメモリセルMC5とは、グランド線SL2を境界に、鏡像関係を有している。本実施形態において、鏡像関係とは、y方向に隣り合うメモリセルが電源線/グランド線を中心に線対称な関係や、互いに隣り合うメモリセルがy方向に反転した関係であることを意味する。
【0156】
このように、y方向に互いに隣接するメモリセルが鏡像関係を有するように、メモリセルアレイ内に配置されることによって、隣接するメモリセル間で電源線SL1,SL3及びグランド線SL0,SL2を共有できる。その結果として、メモリセルアレイの面積を縮小でき、配線レイアウトを簡素化できる。
【0157】
(b) 動作
図9乃至図11を用いて、図8のメモリセルアレイの動作について説明する。
【0158】
ここでは、選択されたメモリセル(以下、選択セルとよぶ)に対する書き込み動作を例示して、メモリセルアレイの動作について、説明する。メモリセルアレイ内において、選択セル以外のメモリセルのことを、非選択セルとよぶ。
【0159】
本例において、選択セルは、図8のメモリセルアレイ内のメモリセルMC1とする。ここでは、オン状態のPNP型バイポーラトランジスタ3からの出力電流(エミッタ電流)を用いて、選択セルMC1の抵抗変化型メモリ素子1にデータを書き込む場合について、説明する。そして、y方向又はx方向において選択セルMC1に隣接する非選択セルMC2,MC3,MC4の駆動状態についても、説明する。
【0160】
以下では、選択セルに接続されたビット線及びワード線のことを、選択ビット線及び選択ワード線とよぶ。選択ビット線以外のビット線のことを、非選択ビット線とよび、選択ワード線以外のワード線のことを、非選択ワード線とよぶ。また、非選択セルにおいて、選択ビット線と非選択ワード線とに接続された非選択セル、或いは、選択ワード線と非選択ビット線とに接続された非選択セルのことを、半選択セルとよぶ場合もある。
【0161】
書き込み動作時において、電源線SL1,SL3の電位は、電源電圧Vddに設定され、グランド線SL0,SL2の電位は、グランド電位Vssに設定される。尚、電源線SL1,SL2の電位及びグランド線SL0,SL2の電位を変化させて、メモリセルアレイを駆動することも可能である。しかし、電源線/グランド線の電位を変化させると、消費電力が増大し、且つ、メモリセルアレイの動作も複雑となる傾向がある。それゆえ、チップに対して電源電圧が投入されている間、電源線SL1,SL3及びグランド線SL0,SL2の電位は、固定されていることが好ましい。
【0162】
それゆえ、電源線/グランド線SL0,SL1,SL2,SL3の電位が所定の値に設定された状態において、複数のビット線BL0,BL1,BL2及び複数のワード線WL0,WL1,WL2の電位をそれぞれ調整することによって、選択セルに所定のデータが書き込まれ、非選択セルにデータが書き込まれないように、メモリセルアレイ全体の動作が制御される。
【0163】
尚、書き込み動作時、ビット線BL0,BL1,BL2の電位は、“H”レベル(“1”状態)と“L”レベル(“0”状態)との間を変化することになるので、例えば、データ保持状態において、ビット線の電位は、“H/2”レベル(“0.5”状態ともよぶ)であることが好ましい。“H/2”レベルは、例えば、Vdd/2程度の電位である。
【0164】
このように、ビット線BL0,BL1,BL2の電位が“H/2”レベルに設定された状態を、メモリセルの待機状態とすることによって、ビット線BL0,BL1,BL2の充電及び放電の時間を短縮できる。
【0165】
ビット線BL1及びバイポーラトランジスタ2,3に対してMTJ素子1が図1及び図2に示された例と同様の接続関係を有する場合において、PNP型バイポーラトランジスタ3の出力電流(エミッタ電流)は、MTJ素子の磁化配列を反平行状態から平行状態に変化させる。
【0166】
選択ビット線BL1の電位が“H”レベル(Vdd)に設定され、選択ワード線WL1の電位が“0”レベルに設定された場合、PNP型バイポーラトランジスタ3のエミッタ電流は、増大する。
しかし、選択セルMC1のx方向に隣接する非選択セルMC4に関して、ビット線及びワード線の電位を考慮する必要がある。つまり、選択ワード線WL1に接続された非選択セルMC4においても、バイポーラトランジスタ2,3からの電流が発生し、非選択セルMC4内のMTJ素子1にデータが書き込まれる可能性がある。
【0167】
選択セルMC1のx方向に隣接する非選択セル(半選択セル)MC4は、選択ワード線WL1に接続されるとともに、“H/2”レベルの非選択ビット線BL0に接続されている。それゆえ、図3に示されるように、非選択ビット線BL0の電位に応じたエミッタ電流が、半選択セルMC4内のPNP型バイポーラトランジスタ3から発生する。
【0168】
図9は、ビット線BLの電位が“H/2”レベル(=Vdd/2)である場合における、PNP型バイポーラトランジスタのベース電圧とエミッタ電流との関係、及び、ベース電圧とエミッタ電圧との関係を示している。
【0169】
図9の(a)は、PNP型バイポーラトランジスタにおけるベース電圧Vbとエミッタ電流Ieとの関係を示している。図9の(b)は、PNP型バイポーラトランジスタにおけるベース電圧Vbとエミッタ電流Ieとの関係を示している。図9の(b)は、PNP型バイポーラトランジスタにおけるベース電圧Vbとエミッタ電圧Veとの関係を示している。
図9の(a)において、グラフの横軸はベース電圧Vbに対応し、グラフの縦軸はエミッタ電流Ieに対応する。図9の(b)において、グラフの横軸はベース電圧Vbに対応し、グラフの縦軸はエミッタ電圧Veに対応する。
【0170】
図9に示されるように、ビット線の電位がVdd/2程度である場合、PNP型バイポーラトランジスタ3のベース電圧VbがVdd/6以上であれば、半選択セルMC4内のPNP型バイポーラトランジスタ3のエミッタ電流Ieは、ほぼ0になる。
【0171】
尚、半選択セルMC4内において、NPN型バイポーラトランジスタ2のベース−エミッタ間には、逆バイアスが印加されているので、NPN型バイポーラトランジスタ2はオフ状態になっている。
【0172】
このように、非選択ビット線BL0の電位がVdd/2である場合、選択ワード線WL1の電位が電源電圧Vddの20%程度の大きさ(Vdd/6程度)であれば、選択ワード線WL1に接続された半選択セルMC4に対するデータの誤書き込みを抑制できる。
また、図3に示されるように、選択セルMC1に対しても、選択ワード線WL1の電位がVdd/6(=0.2×Vdd)程度であれば、反転しきい値電流以上の書き込み電流を、MTJ素子1に供給できる。
【0173】
また、y方向において選択セルMC1に隣接する非選択セルMC2は、選択ビット線BL1に接続されている。選択ビット線BL1の電位は、電圧Vddに設定されている。それゆえ、選択ビット線BL1に接続された半選択セルMC2に関して、半選択セルMC2が接続された非選択ワード線WL0の電位が、電圧Vddに近い値(<Vdd)に設定されることで、半選択セルMC2内のPNP型バイポーラトランジスタ3のエミッタ電流はほとんど出力されない。つまり、PNP型バイポーラトランジスタ3の出力電流は、反転しきい値電流より十分小さい。また、半選択セルMC2のNPN型バイポーラトランジスタ2は、そのエミッタ−ベース間に逆バイアスが印加されているので、オフ状態である。それゆえ、半選択セルMC2に対する誤書き込みが抑制される。
【0174】
但し、非選択ワード線WL0の電位を、選択ビット線BL1の電位(電圧Vdd)に近い値にする場合、その非選択ワード線WL0に接続された非選択セルMC3の動作を考慮する必要がある。非選択セルMC3は、x方向において半選択セルMC2に隣接し、y方向において半選択セルMC4に隣接している。
【0175】
それゆえ、選択ビット線BL1に接続された半選択セルMC2に、データが書き込まれないだけでなく、半選択セルMC2と非選択ワード線WL0を共有する非選択セルMC3に、データが書き込まれないように、非選択ワード線WL0の電位を設定することが必要である。
【0176】
非選択セルMC3が接続された非選択ビット線BL0の電位は、Vdd/2程度になっている。それゆえ、非選択ワード線WL0の電位が“H”レベル、つまり、電圧Vddになると、ベース電圧Vbがエミッタ電圧Veより大きくなる。この場合、非選択セルMC3内のPNP型バイポーラトランジスタ3は、オフ状態であるが、非選択セルMC3内のNPN型バイポーラトランジスタ2は、オン状態となってしまう。
【0177】
NPN型バイポーラトランジスタ2がオンするのを防止するために、非選択ワード線WL0の電位は電圧Vddより低くされる。
【0178】
図10は、ビット線BLの電位が“H/2”レベル(=Vdd/2)である場合における、NPN型バイポーラトランジスタのベース電圧とエミッタ電流との関係、及び、ベース電圧とエミッタ電圧との関係を示している。
図10の(a)は、NPN型バイポーラトランジスタにおけるベース電圧Vbとエミッタ電流Ieとの関係を示している。図10の(b)は、NPN型バイポーラトランジスタにおけるベース電圧Vbとエミッタ電圧Veとの関係を示している。
【0179】
図10の(a)において、グラフの横軸はベース電圧Vbに対応し、グラフの縦軸はエミッタ電流Ieに対応する。図10の(b)において、グラフの横軸はベース電圧Vbに対応し、グラフの縦軸はエミッタ電圧Veに対応する。
【0180】
図10の(a)及び(b)に示されるように、非選択ビット線BL0の電位がVdd/2程度である場合、ベース電圧VbがVdd×5/6以下であれば、NPN型バイポーラトランジスタ3のエミッタ電流Ieは、ほぼ0になる。したがって、非選択ワード線WL0の電位は、“H”レベル(“1”状態)よりも低い電圧、例えば、電源電圧Vddの80%程度の大きさに設定されることが好ましい。
【0181】
これによって、非選択セルMC3に対する誤書き込みを抑制できる。
【0182】
図11の(a)は、PNP型バイポーラトランジスタのエミッタ電流が、MTJ素子に対する書き込み電流として用いられる場合における、図9及び図10に基づいた各制御線の設定電位の一例が示される。
【0183】
電源線SL1,SL3の電位VSL1は、電源電圧Vddに設定され、グランド線SL0,SL2の電位VSL2は、グランド電位(0V)に設定される。これらの電位が各メモリセルMC1,MC2,MC3,MC4に共通に印加される。
【0184】
図11の(a)に示されるように、選択セルとしてのメモリセルMC1に接続されたビット線の電位VBLは電源電圧Vddに設定され、メモリセルMC1に接続されたワード線の電位VWLは、0.2×Vdd程度に設定される。これによって、選択セルMC1内において、NPN型バイポーラトランジスタはオフし、PNP型バイポーラトランジスタはオンする。
【0185】
選択ビット線BL1と非選択ワード線WL0とに接続されたメモリセルMC2において、そのメモリセルMC2に接続された非選択ワード線WL0の電位VWLは、0.8×Vdd程度に設定される。これによって、ビット線の電位VBLがVddに設定され、非選択ワード線の電位VWLが0.8×Vddに設定されるため、半選択セルMC2内のバイポーラトランジスタの両方が、電流をほとんど出力せずに、実質的にオフ状態となる。
【0186】
選択ワード線WL1と非選択ビット線BL0とに接続されたメモリセルMC4において、その半選択セルMC4に接続された非選択ビット線BL0の電位VBLは、0.5×Vdd程度に設定される。ワード線の電位VWLが0.2×Vddに設定されるため、メモリセルMC4内のバイポーラトランジスタの両方が、実質的にオフ状態となる。
【0187】
また、非選択ワード線WL0及び非選択ビット線BL0に接続されたメモリセルMC3において、非選択ワード線WL0の電位VWLは0.8×Vddに設定され、非選択ビット線BL0の電位VBLは0.5×Vddに設定されている。それゆえ、メモリセルMC3内のバイポーラトランジスタの両方が、実質的にオフ状態となる。
【0188】
図11の(a)に示されるように、メモリセルアレイ内のビット線の電位VBL及びワード線の電位VWLを設定することによって、PNP型バイポーラトランジスタからの電流を用いて選択セルにデータを書き込むことができ、半選択セル及び非選択セルに対して誤書き込みを抑制できる。
【0189】
また、メモリセル内のNPN型バイポーラトランジスタの出力電流(エミッタ)が、MTJ素子に対する書き込み電流として用いられる場合もある。
この場合、PNP型バイポーラトランジスタのエミッタ電流が書き込み電流に用いられた場合と実質的に同様のことを考慮して、ビット線及びワード線の電位が、それぞれ設定される。
【0190】
図11の(b)は、NPN型バイポーラトランジスタのエミッタ電流が、MTJ素子に対する書き込み電流として用いられる場合における、図9及び図10に基づいた各制御線の設定電位の一例が示される。
【0191】
図11の(b)に示されるように、選択セル(ここでは、メモリセルMC1)において、NPN型バイポーラトランジスタがオンし、PNP型バイポーラトランジスタがオフするように、選択ビット線BLの電位VBLは0Vに設定され、選択ワード線の電位VWLが0.8×Vdd程度に設定される。
【0192】
選択ワード線に接続された半選択セル(ここでは、メモリセルMC4)において、非選択ビット線の電位VBLが、0.5×Vdd程度に設定される。これによって、半選択セルMC4内のバイポーラトランジスタ2,3の両方が、電流をほとんど出力せずに、実質的にオフ状態となる。
【0193】
選択ビット線に接続された半選択セル(ここでは、メモリセルMC2)において、非選択ワード線の電位VWLが、0.2×Vdd程度に設定される。これによって、半選択セルMC2内のバイポーラトランジスタ2,3の両方が、実質的にオフ状態となる。
【0194】
また、非選択セル(ここでは、メモリセルMC3)において、非選択ワード線の電位VWLが半選択セルMC2に対する電位と同じに設定され、非選択ビット線の電位VBLが、半選択セルMC4に対する電位と同じに設定される。これによって、非選択セルMC3内のバイポーラトランジスタ33,23の両方が実質的にオフ状態となる。
【0195】
以上のように、本実施形態の抵抗変化型メモリは、バイポーラトランジスタの出力電流(エミッタ電流)が、抵抗変化型メモリ素子(MTJ素子)に対する書き込み動作に用いられる。このようにバイポーラトランジスタからの電流が書き込み電流に用いられる回路構成であっても、図11に示される例のように、ビット線及びワード線の電位をそれぞれ制御することによって、選択セルと非選択セルとをそれぞれ駆動させることができる。
【0196】
また、バイポーラトランジスタがメモリセルの構成素子に用いられることによって、メモリセルの微細化が進んだとしても、電界効果トランジスタを経由して書き込み電流がMTJ素子に供給される場合に比較して、大きな書き込み電流をMTJ素子に供給できる。
【0197】
尚、ここでは、書き込み動作を例示して、メモリセルアレイ全体の動作について説明したが、選択セルに対する読み出し動作に関しても、ビット線及びワード線の設定電位を、書き込み動作に用いられる電位より小さくすることで、選択セルからデータを読み出すことができる。
【0198】
したがって、本実施形態の抵抗変化型メモリによれば、メモリの動作特性を向上できる。
【0199】
(c) 構造
(c−1) 構造例1
<構造>
図12乃至図14を用いて、本実施形態の抵抗変化型メモリ(ここでは、MRAM)のメモリセルアレイの構造例1について、説明する。図12乃至図14に示されるメモリセルアレイは、プレーナー構造のバイポーラトランジスタを用いたメモリセルを含んでいる。
【0200】
図12は、メモリセルアレイの平面構造(レイアウト)を示す平面図である。図13は、図12のXIII−XIII線に沿う断面を示す断面図である。図14の(a)は、図12のXIVa−XIVa線に沿う断面を示す断面図であり、図14の(b)は、図12のXIVb−XIVb線に沿う断面図を示す断面図である。
【0201】
尚、メモリセルアレイ内の1つのメモリセルの構造は、図6を用いて説明した構造と実質的に同じである。それゆえ、メモリセルの構造の詳細な説明は、必要に応じて行う。
【0202】
図12乃至図14に示されるように、x方向に隣接するメモリセルMCは、素子分離絶縁膜によって電気的に分離されている。また、y方向に隣接するメモリセルMCは、素子分離絶縁膜によって電気的に分離されている。
【0203】
上述のように、y方向に互いに隣接するメモリセルは、電源線SL1又はグランド線SL2を対称軸として線対称な関係(鏡像関係)を有するように、半導体基板50上にレイアウトされる。
【0204】
図12乃至図14に示される例では、y方向に隣接する2つのメモリセルにおいて、2つのPNP型バイポーラトランジスタ3,3が隣接する。なお、メモリセルアレイ内のy方向に隣接する2つのメモリセルにおいて、2つのNPN型バイポーラトランジスタ2が隣接するように、メモリセルアレイ内に配置されているのは、もちろんである。
【0205】
例えば、PNP型バイポーラトランジスタ3,3のコレクタ層としてのpウェル領域32,32は、グランド線SL2としても用いられる。そのため、pウェル領域39は、素子分離絶縁膜によって分断されずに、互いに隣接するメモリセルの2つのPNP型バイポーラトランジスタ形成領域にまたがるように、半導体基板(nウェル領域29)内に設けられる。また、pウェル領域39は、例えば、x方向に延在する。これによって、pウェル領域39が、グランド線SL2を共有する複数のメモリセル(PNP型バイポーラトランジスタ)によって共有される。
【0206】
また、nウェル領域29は、素子分離絶縁膜によって分断されずに、基板50内において、連続している。nウェル領域29は、NPN型バイポーラトランジスタのコレクタ層22,22として用いられるとともに、電源線SL1としても用いられる。
【0207】
ここで、nウェル領域29には、電源電圧Vddが印加され、pウェル領域39には、グランド電位Vssが印加される。それゆえ、2つのウェル領域29,39のpn接合には、逆バイアスが印加される。
【0208】
このように、トリプルウェル構造によって、n型コレクタ層22及びp型コレクタ層32は、高電位(Vdd)側の電源線SL1及び低電位(Vss)側のグランド線SL2としても用いられる。
【0209】
この場合、ウェル領域22,32の抵抗値(ウェル抵抗とよぶ)を考慮すると、ウェル抵抗に起因する電圧の降下の影響が大きいので、金属配線及びコンタクトを用いて、各電源とウェル領域22,32とを所定の間隔でシャント(Shunt)することが好ましい。これによって、メモリセルMC内に十分な電圧/電流を供給でき、メモリセルの動作を安定化できる。
【0210】
図14の(a)に示されるように、各配線29,29,39,39は、p型ベース層23,23上及びn型ベース層33,33上及び素子分離絶縁膜51上をx方向に延在し、複数のメモリセル(バイポーラトランジスタ)によって共有される。2本の配線29,29,39,39が1組のワード線対を形成し、それらの配線29,29,39,39が実質的にワード線WL1,WL1’,WL2,WL2’として機能する。
【0211】
図14の(b)に示されるように、n型エミッタ層21上のコンタクト61B及び中間配線63は、メモリセルごとに、電気的に分離されている。n型エミッタ層21上のコンタクト61A及び中間配線63も、メモリセルごとに、電気的に分離されている。
【0212】
半導体領域内に形成される部材(例えば、素子分離絶縁膜)の最小加工寸法(ハーフピッチとよぶ)をFとする。隣接する2つのメモリセルMCが、素子分離領域を共有するので、隣接するメモリセル間の素子分離領域の寸法は、1つのメモリセルあたり0.5Fとする。また、y方向におけるバイポーラトランジスタ形成領域の寸法は、例えば、2Fである。つまり、1つのバイポーラトランジスタにおいて、y方向におけるエミッタ層の寸法とベース層の寸法の和は、2Fになっている。x方向におけるバイポーラトランジスタ形成領域の寸法は、例えば、Fである。
【0213】
この場合、プレーナー型のバイポーラトランジスタ2,3を含むメモリセルMCにおいて、1つのメモリセルのセルサイズは、12Fとなる。
【0214】
<製造方法>
図15及び図16を参照して、本実施形態の抵抗変化型メモリの第1の製造方法について説明する。第1の製造方法において、プレーナー構造のバイポーラトランジスタがメモリセルに用いられた抵抗変化型メモリの製造方法が、述べられる。
【0215】
図15及び図16は、メモリセルアレイのy方向に沿う断面の製造工程が、それぞれ示されている。
【0216】
図15の(a)に示されるように、p型半導体基板50内に、n型ウェル領域27及びpウェル領域37が形成される。p型半導体基板50内に、トレンチが形成される。形成されたトレンチ内に、素子分離絶縁膜51が埋め込まれる。素子分離絶縁膜51のy方向の寸法は、例えば、F(ハーフピッチ)である。
【0217】
nウェル領域27のうちNPN型バイポーラトランジスタ形成領域内の部分は、NPN型バイポーラトランジスタのコレクタ層として用いられる。nウェル領域27は電源線SL1としても用いられる。pウェル領域37のうちPNP型バイポーラトランジスタ形成領域内の部分は、PNP型バイポーラトランジスタのコレクタとして用いられる。また、pウェル領域37は、グランド線としても用いられる。
【0218】
半導体基板50上面に、レジストが塗布される。そして、フォトリソグラフィ技術によってレジストがパターニングされ、開口部を有するレジストマスク90が、形成される。レジストマスク90の開口部は、PNP型バイポーラトランジスタ形成領域上に、形成される。開口部が形成された後、イオン注入によって、p型ウェル領域32,32内に、n型不純物層33,33が形成される。n型不純物層33,33は、PNP型バイポーラトランジスタのベース層として用いられる。
【0219】
例えば、図15の(a)に示されるように、y方向に隣接する2つのメモリセルMC間において、PNP型バイポーラトランジスタ形成領域が素子分離絶縁膜を挟んで隣接していることが、プロセス的な観点から好ましい。また、NPN型バイポーラトランジスタ形成領域も、素子分離絶縁膜を挟んで隣接していることが好ましい。
【0220】
この後、レジストマスク90が剥離される。
【0221】
図15の(b)に示されるように、フォトリソグラフィ技術を用いて、半導体基板50上に、レジストマスク91が形成される。NPN型バイポーラトランジスタ形成領域(nウェル領域)が露出するように、レジストマスク91には、開口部が形成される。レジストマスク91は、PNP型バイポーラトランジスタ形成領域の表面を覆っている。
【0222】
イオン注入によって、NPN型バイポーラトランジスタ形成領域のnウェル領域22内に、p型不純物層23,23が形成される。p型不純物層23,23は、NPN型バイポーラトランジスタのベース層として用いられる。
【0223】
p型不純物層23,23が形成された後、レジストマスク91は、剥離される。
【0224】
図16の(a)に示されるように、半導体基板50上に、レジストマスク92が形成される。PNP型バイポーラトランジスタ形成領域内においてエミッタが形成される領域(n型不純物層33,33)の表面の一部分が露出するように、レジストマスク92に開口部が形成されている。
【0225】
そして、イオン注入によって、PNP型バイポーラトランジスタのエミッタとしてのp型不純物層31,31が、n型不純物層33,33内に形成される。これによって、PNP型バイポーラトランジスタが、半導体基板50内に形成される。
【0226】
p型不純物層31,31が形成された後、レジストマスク92が剥離される。
【0227】
この後、同様の手法で、レジストマスクが半導体基板50上に形成される。NPN型バイポーラトランジスタ形成領域内においてエミッタが形成される領域(p型不純物層23,23)の表面が露出するように、そのレジストマスクに開口部が形成されている。そして、レジストマスクをマスクとして、イオン注入が実行される。
【0228】
すると、図16の(b)に示されるように、NPN型バイポーラトランジスタのエミッタとしてのn型不純物層21,21が、p型不純物層23,23内に形成される。これによって、NPN型バイポーラトランジスタが、半導体基板50内に形成される。エミッタ層のy方向の寸法31,31,21,21は、例えば、Fである。
【0229】
この後、半導体基板50の表面上に、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、例えば、ポリシリコンが堆積される。そして、フォトリソグラフィ技術及びRIE(Reactive Ion Etching)法を用いて、ポリシリコンが、例えば、x方向に延在するように加工される。これによって、NPN型/PNP型バイポーラトランジスタのベース層23,23,33,33上に、ワード線としての配線29,29,39,39が形成される。
【0230】
尚、配線29,29,39,39は、金属を用いて形成されてもよい。この場合、金属は、スパッタ法を用いて、半導体基板50上に堆積される。
配線29,29,39,39とエミッタ層21,21,31,31との接触を防止するために、配線29,29,39,39のy方向の寸法は、ベース層23,23,33,33の上面の寸法以下であることが好ましい。それゆえ、配線29,29,39,39は、スリミング技術や側壁転写加工技術を用いて形成されることが好ましい。
【0231】
配線29,29,39,39が形成された後、半導体基板50上に、例えば、CVD法によって、絶縁膜(例えば、窒化シリコン)が堆積される。その絶縁膜に対して、異方性エッチングによるエッチバックが施される。すると、側壁絶縁膜59が、配線29,29,39,39の上面上及び側面上に、選択的に残存する。
【0232】
この後、図13及び図14に示されるように、第1の層間絶縁膜52 が、CVD法によって、配線29,29,39,39上及び半導体基板50上に堆積される。
【0233】
エミッタとしてのn型/p型不純物層21,21,31,31表面が露出するように、層間絶縁膜52内にコンタクトホールが形成される。コンタクトホール内に、コンタクトプラグ61A,61Bが埋め込まれる。
【0234】
導電膜が、例えば、スパッタ法によって、層間絶縁膜52上及びコンタクトプラグ61A,61B上に堆積される。各メモリセルにおける2つのバイポーラトランジスタのエミッタ層が互いに接続されるように、導電膜が加工される。これによって、NPN型バイポーラトランジスタのn型エミッタ層21,21とPNP型バイポーラトランジスタのp型エミッタ31,31とを接続する中間配線63が形成される。
【0235】
抵抗変化型メモリ素子1,1の構成部材が、中間配線63上に、順次堆積される。例えば、抵抗変化型メモリ素子1,1がMTJ素子である場合、中間配線63上に、下部電極、第1の磁性層、トンネルバリア層、第2の磁性層及び上部電極が、例えば、スパッタ法によって、順次堆積される。MTJ素子に用いられる材料や回路構成に応じて、第1及び第2の磁性層のうち、一方が、参照層となり、他方が記録層となる。
【0236】
そして、MTJ素子1,1を覆うように、第2の層間絶縁膜53が、第1の層間絶縁膜52上に、堆積される。MTJ素子1,1の上部電極が露出するように、層間絶縁膜53内にコンタクトホールが形成され、そのコンタクトホール内に、ビアプラグ64が埋め込まれる。
【0237】
そして、第2の層間絶縁膜53上に、例えば、スパッタ法によって、金属膜が堆積される。金属膜は所定の形状に加工され、y方向に延在するビット線BLが形成される。
【0238】
以上の工程によって、本実施形態の抵抗変化型メモリが形成される。
【0239】
プレーナー構造のバイポーラトランジスタがメモリセルに用いられた場合、比較的容易なプロセスで、メモリセルアレイを形成でき、抵抗変化型メモリの製造コストを低減できる。
【0240】
以上のように、本実施形態の抵抗変化型メモリの第1の製造方法によれば、特性が向上した抵抗変化型メモリを提供できる。
【0241】
(c−2) 構造例2
<構造>
図17乃至図19を用いて、本実施形態の抵抗変化型メモリ(MRAM)のメモリセルアレイの構造例2について、説明する。
【0242】
図17は、メモリセルアレイの平面構造(レイアウト)を示す平面図である。図18は、図17のXVIII−XVIII線に沿う断面を示す断面図である。図19の(a)は、図17のXIXa−XIXa線に沿う断面を示す断面図であり、図19の(b)は、図17のXIXb−XIXb線に沿う断面図を示す断面図である。
【0243】
図17乃至図19に示されるメモリセルアレイは、ラテラル構造のバイポーラトランジスタを用いたメモリセルを含んでいる。
【0244】
尚、図17乃至図19のメモリセルアレイ内の1つのメモリセルの構造は、図7を用いて説明した構造と実質的に同じである。それゆえ、メモリセルの構造の詳細な説明は、必要に応じて行う。
【0245】
ラテラル構造のバイポーラトランジスタを用いたメモリセルは、ウェル領域を経由して電流をMTJ素子に供給する構造ではないので、y方向に隣接するメモリセル間に素子分離領域を設けずとも良くなる。それゆえ、メモリセルのサイズを縮小できる。ラテラル構造のバイポーラトランジスタを用いたメモリセルからなるメモリセルアレイは、真性半導体のSOI層57をバイポーラトランジスタ形成領域とすることによって、y方向に隣接する不純物層間の電気的分離を図り、メモリセル間のリーク電流を低減する。
【0246】
y方向に配列されたメモリセルは、共通のアクティブ領域AA内に設けられる。それゆえ、アクティブ領域AAは、y方向に連続している。
【0247】
図19の(a)及び(b)に示されるように、x方向に隣接する2つのアクティブ領域AAは、素子分離絶縁膜51によって電気的に分離されている。素子分離絶縁膜51は、x方向に隣接する2つのアクティブ領域AA間で、y方向に延在している。メモリセルアレイ内において、1つのアクティブ領域AAが、x方向において2つの素子分離領域に挟まれたレイアウトになっている。アクティブ領域AAをラインパターンとし、素子分離領域をスペースパターンとすると、メモリセルアレイの基板のレイアウトは、ラインアンドスペースのレイアウトになる。x方向におけるアクティブ領域AAの寸法は、例えば、Fであり、x方向における素子分離領域の寸法は、例えば、Fである。
【0248】
コレクタ層22,22,3212及びベース層23,23,33,33は、それぞれ、Fの寸法を有する。
【0249】
シリサイド層69は、コレクタ層22,22,3212上及びエミッタ層21,21,31,31上に、設けられる。シリサイド層69上には、コンタクトプラグ65A,65B,65Cがそれぞれ設けられている。シリサイド層69及びコンタクトプラグ65A,65B,65C及びを介して、コレクタ層22,22,3212及びエミッタ層21,21,31,31が、電源線SL1及びグランド線SL2にそれぞれ接続される。
【0250】
n型コレクタ層22,22上方の配線は、電源線SL1である。p型コレクタ層3212上方の配線は、グランド線SL2である。コレクタ層22,22,3212、コンタクトプラグ65A,65B,65C及び配線SL1,SL2は、y方向に隣接するメモリセル間で共有される。コンタクトプラグ65A,65B,65Cは、y方向に隣接する側壁絶縁膜59間に配置されている。
【0251】
MTJ素子1,1が、エミッタ層21,21,31,31上方に設けられる。上述のように、エミッタ層21,21,31,31は、n型及びp型の2つの不純物層がハーフピッチFの寸法内に収まるように、SOI層57内に形成されている。
【0252】
尚、上述のように、n型エミッタ層21,21,とp型エミッタ層31,31との間に、真性半導体層が介在していてもよい。
【0253】
ラテラル構造のバイポーラトランジスタを用いたメモリセルアレイにおいて、上述のように、y方向に隣接するメモリセル間でコレクタ層を共有でき、y方向に隣接するメモリセル間の素子分離領域を削減できる。また、本実施形態のラテラル構造のバイポーラトランジスタにおいて、2つのエミッタ層をハーフピッチ(F)内に形成できる。
【0254】
それゆえ、構成例2のメモリセルは、構成例1に比較して、メモリセルのセルサイズを縮小できる。構成例2のメモリセルのセルサイズは、例えば、8Fである。
【0255】
<製造方法>
図20乃至図22を参照して、本実施形態の抵抗変化型メモリの第2の製造方法について説明する。第2の製造方法において、ラテラル構造のバイポーラトランジスタがメモリセルに用いられた抵抗変化型メモリの製造方法が、述べられる。
【0256】
図20乃至図22は、メモリセルアレイのy方向に沿う断面の製造工程が、それぞれ示されている。
【0257】
図20の(a)に示されるように、SOI基板54上のSOI層(例えば、真性半導体層)57上に、レジストマスク95が形成される。
イオン注入法によって、SOI層57に、例えば、p型不純物層23,2312,23が形成される。これによって、NPN型バイポーラトランジスタのベース層、及び、PNP型バイポーラトランジスタのコレクタ層が形成される。p型不純物層23,2312,23は、y方向においてF(ハーフピッチ)の寸法を有する。
【0258】
レジストマスク95が剥離された後、図20の(b)に示されるように、新たなレジストマスク96が形成される。レジストマスク96には、開口部が形成され、NPN型バイポーラトランジスタのコレクタ層が形成される領域、及び、PNP型バイポーラトランジスタのベース層が形成される領域が、露出する。レジストマスク96は、p型不純物層23,2312,23の上面及びエミッタ層が形成される領域の上面を覆っている。
【0259】
イオン注入によって、n型不純物層22,22,33,33が、SOI層57内に形成される。n型不純物層22,22,33,33は、y方向において、Fの寸法を有する。
【0260】
尚、図20の(a)及び(b)に示される工程とは反対に、n型不純物層22,22,33,33が形成されてから、p型不純物層23,23,3212が形成されてもよい。
【0261】
図20の(c)に示されるように、導電層(例えば、ポリシリコン層)が、CVD法によって、SOI層57上に堆積される。導電層は、例えば、バイポーラトランジスタのエミッタ層を形成する前に、堆積される。
【0262】
導電層は、フォトリソグラフィ技術及びRIE法を用いて、所定の形状に加工される。これによって、配線(ワード線)29,29,39,39が、ベース層としてのp型/n型不純物層23,23,33,33上に、形成される。
【0263】
配線29,29,39,39及びSOI層57を覆うように、絶縁膜(例えば、窒化シリコン)が堆積され、その絶縁膜がエッチバックされる。これによって、配線29,29,39,39の側面上及び上面上に、側壁絶縁膜59が形成される。一方、SOI層57の上面から、絶縁膜は除去され、SOI層57の上面が露出する。
【0264】
この場合、バイポーラトランジスタのエミッタ層が形成される前に、各バイポーラトランジスタのベース層23,23,33,33上に、配線(ワード線)が形成される。
【0265】
図21の(a)に示されるように、SOI層57及び配線29,29,39,39が覆われるように、レジストマスク97が、形成される。例えば、レジストマスク97は、膜厚hを有する。エミッタ層が形成される領域が露出するように、レジストマスク97内に開口部が形成される。
【0266】
図21の(a)に示されるように、例えば、イオン注入によって、エミッタ層としてのp型不純物層31が、n型不純物層(ベース層)33に隣接するように、SOI層57内に形成される。
【0267】
ここで、イオンの入射方向が規範表面に対して斜め方向に設定されたイオン注入が実行される。イオンの入射角(イオン入射角とよぶ)θは、基板表面の垂直方向に対して斜め方向になっている。イオン入射角θは、基板表面に対して垂直方向とイオンの入射方向によって設定される。
【0268】
このように、斜め方向からのイオン注入によって、イオンの入射方向に対してレジストマスク97及び配線29の影になるSOI層57の内部には、イオンが添加されない。それゆえ、開口部によって露出した領域において、レジストマスク97の膜厚(高さ)とイオン入射角θとに応じた寸法で、イオンの入射方向の直線上に、エミッタ相としてのp型不純物層31が形成される。
【0269】
図21の(b)に示されるように、イオンの入射方向が反対方向に設定されて、斜め方向からのイオン注入が実行される。図21の(a)の工程において形成されたエミッタ層(p型不純物層)31がイオンの入射方向に対してレジストマスク97及び配線39の影に隠れるように、イオンの入射角θが設定される。これによって、NPN型バイポーラトランジスタのベース層23とPNP型バイポーラトランジスタのエミッタ層31との間に、n型不純物層21が形成される。
【0270】
図21の(a)及び(b)に示されるように、レジストマスク97(又は配線29,39)の高さhとイオン入射角θが適宜設定されることによって、所定の寸法(ハーフピッチ)F内に、2つの不純物層21,31が形成される。つまり、F/2の寸法の不純物層21,31をSOI層57内にそれぞれ形成できる。
【0271】
上述のように、隣接するメモリセルは、鏡像関係を有するようにレイアウトされるので、図22の(a)に示されるように、メモリセルのレイアウトに応じて、アクティブ領域の延在方向に対するn型エミッタ層及びp型エミッタ層の配列がメモリセルごとに互いに反対になっている領域がある。それゆえ、p型イオンの入射方向とn型イオンの入射方向とが、図21の(a)及び(b)とそれぞれ反対の方向になるように、斜め方向からのイオン注入が実行される。これによって、図22の(a)に示されるように、図21の(a)及び(b)に示される工程で形成された不純物層と同様に、ハーフピッチ内に、2つの不純物層21,31が形成される。
【0272】
ここで、エミッタ層21,31,21,31が、ベース層23,23,33,33に対してオーバーラップするようにイオン注入されることによって、基板表面に対して平行方向におけるベース層23,23,33,33の寸法を、ハーフピッチより小さくできる。ベース層23,23,33,33の寸法が小さくなることによって、バイポーラトランジスタの動作特性が向上する。
【0273】
型不純物層21,21とp型不純物層31,31との間に、真性半導体層(SOI層57)が残存していてもよい。
【0274】
尚、エミッタ層21,31,21,31が斜め方向のイオン注入と所定の膜厚のレジストマスクによって形成されてから、配線29,29,39,39が形成されてもよい。
【0275】
エミッタ層21,31,21,31が形成された後、レジストマスクが除去される。
【0276】
図22の(b)に示されるように、露出したSOI層57上に、シリサイド層69が形成される。例えば、配線29,29,39,39の側面に形成された側壁絶縁膜59は、シリサイド層によって不純物層同士が短絡するのを防止する。
【0277】
この後、層間絶縁膜52が、例えば、CVD法によって、SOI基板50上に堆積される。そして、第1の製造方法と同様の工程によって、コンタクトプラグ65A,65B,65C、抵抗変化型メモリ素子11,12及び配線63,SL1,SL2,BLが、順次形成される。コンタクトプラグ65Aは、2つのエミッタ層21,31,21,31をまたがるように、シリサイド層69上に形成される。
【0278】
これによって、図18及び図19に示されるように、本実施形態の抵抗変化型メモリが作製される。このように、ラテラル構造のバイポーラトランジスタがメモリセルに用いられた場合であっても、バイポーラトランジスタの構成部材をイオン注入によって形成できる。
【0279】
ラテラル構造のバイポーラトランジスタがメモリセルに用いられた場合、プレーナー構造のバイポーラトランジスタが用いられた場合に比較して、セルサイズの小さいメモリセルトランジスタを含む抵抗変化型メモリを提供できる。
【0280】
以上のように、本実施形態の抵抗変化型メモリの第2の製造方法によれば、特性が向上した抵抗変化型メモリを提供できる。
【0281】
(3) 変形例
上述の抵抗変化型メモリにおいて、MRAM(磁気メモリ)が例示され、磁気抵抗効果素子が、メモリセル内の抵抗変化型メモリ素子1として用いられている。
【0282】
但し、本実施形態の抵抗変化型メモリは、可変抵抗素子をメモリ素子に用いたメモリ(例えば、ReRAM)や相変化素子をメモリ素子に用いた相変化メモリ(例えば、PCRAM)でもよい。
【0283】
ReRAMに用いられる抵抗変化型メモリ素子(可変抵抗素子)1の基本構造を示している。
【0284】
図23に示されるように、メモリ素子としての可変抵抗素子1は、2つの電極13A,13Bと、電極13A,13B間に挟まれた抵抗変化膜14とを含んでいる。
【0285】
抵抗変化膜14は、電圧又は電流が与えられることによって、その膜の抵抗値が変化する性質(特性)を有する。例えば、抵抗変化膜14は、遷移金属酸化膜やペロブスカイト型金属酸化物からなる。
【0286】
例えば、遷移金属酸化膜として、NiO、TiO、CuOなど(例えば、1≦x≦2)が例示され、ペロブスカイト型金属酸化物としては、PCMO(Pr0.7Ca0.3MnO)、Nb添加SrTi(Zr)O、Cr添加SrTi(Zr)Oなどが例示される。
【0287】
抵抗変化膜14の抵抗値が変化する性質は、例えば、抵抗変化膜14と電極13A,13Bとの組み合わせによって、発現したり、或いは、安定に得られたりする。それゆえ、抵抗変化膜14の材料に応じて、電極13A,13Bの材料が適宜選択されることが好ましい。電極13A,13Bは、メモリ素子1の端子として用いられる。
【0288】
抵抗変化型メモリ素子1は、バイポーラ型とよばれる動作モード、或いは、ユニポーラ型とよばれる動作モードによって、その抵抗状態が変化する。
【0289】
バイポーラ型の抵抗変化型メモリ素子は、端子間に印加される電圧の極性に応じて、その抵抗変化型メモリ素子の抵抗状態が変化する。ユニポーラ型の抵抗変化型メモリ素子は、端子間に印加されるプログラム電圧の大きさに応じて、その抵抗変化型メモリ素子の抵抗状態が変化する。
【0290】
例えば、バイポーラ型の抵抗変化型メモリ素子は、抵抗変化膜14内のイオンの移動(濃度プロファイルの変化)によって抵抗値が変化する。例えば、ユニポーラ型の抵抗変化型メモリ素子は、抵抗変化膜14内の微細な電流経路(フィラメント)の生成又は消失(部分的な消失を含む)によって抵抗値が変化する。
【0291】
抵抗変化型メモリ素子が、ユニポーラ型であるかバイポーラ型であるかは、主として、抵抗変化膜14の材料に依存する。
【0292】
バイポーラ型及びユニポーラ型の抵抗変化型メモリ素子のいずれであっても、所定のプログラム電圧(又は電流)が端子間に印加されることによって、抵抗変化型メモリ素子(可変抵抗素子)の抵抗状態は、高抵抗状態から低抵抗状態、又は、低抵抗状態から高抵抗状態に、可逆的に変化される。そして、抵抗変化型メモリ素子の変化した抵抗状態は、所定のプログラム電圧が印加されるまで、実質的に不揮発である。
【0293】
抵抗変化型メモリ素子1が、バイポーラ型の抵抗変化型メモリ素子である場合、素子の抵抗状態を低抵抗状態(プログラム状態、“0”データ書き込み)にする場合と高抵抗状態(消去状態、“1”データ書き込み)にする場合とで、電極13A,13Bに印加される電圧の極性は反対である。
【0294】
バイポーラ型の抵抗変化型メモリ素子において、メモリ素子1の電極13Aが高電位側に設定され、メモリ素子1の電極13Bが低電位側に設定された場合、電極13Aから電極13Bへ向かう方向にバイアスが印加される。例えば、抵抗変化型メモリ素子1の抵抗状態は、高抵抗状態から低抵抗状態に変化する。この一方で、メモリ素子1の電極13Bが高電位側に設定され、メモリ素子1の電極13Aが低電位側に設定された場合、電極13Bから電極13Aへ向かう方向にバイアスが印加される。この場合、電極13Aが高電位側に設定された場合とは反対に、抵抗変化型メモリ素子1の抵抗状態は、低抵抗状態から高抵抗状態に変化する。
【0295】
このように、バイポーラ型の抵抗変化型メモリ素子(可変抵抗素子)では、変化させる抵抗状態に応じて、電圧(電流又は電界)の極性が反対になる。
【0296】
尚、バイポーラ型の抵抗変化型メモリ素子であっても、その抵抗状態を変化させるのに必要なしきい値(電圧値、電流値)が存在するのは、もちろんである。
【0297】
抵抗変化型メモリ素子1がユニポーラ型のメモリ素子である場合、素子の抵抗状態を低抵抗状態(プログラム状態、“0”データ書き込み)にする場合と高抵抗状態(消去状態、“1”データ書き込み)にする場合とで、電極13A,13Bに印加される電圧の大きさ(電圧値)、或いは、電圧のパルス幅、或いは、電圧値とパルス幅の両方が、異なる。ユニポーラ型の抵抗変化型メモリ素子では、端子に印加される電圧の極性は同じである。即ち、データ書き込み時(抵抗状態の変化時)、抵抗変化型メモリ素子の端子(電極)のうち、一方がカソード、他方がアノードとして、設定される。
【0298】
また、抵抗変化型メモリ素子1は、相変化素子でもよい。相変化素子は、抵抗変化膜14の結晶構造が、与えられた電流/電圧に起因する熱によって結晶相と非晶質相との間で変化する。この結果として、メモリ素子としての相変化素子の抵抗値が変化する。相変化素子の抵抗変化膜14は、例えば、Ge−Sb−Te、In−Sb−Te、Ag−In−Sb−Te、Ge−Sn−Teなどのカルコゲン化合物を用いて、形成される。メモリ素子1としての相変化素子において、抵抗変化膜14と電極13A,13Bとの間にヒータ層が設けられることが、消費電力の観点から好ましい。
【0299】
可変抵抗素子又は相変化素子を用いた抵抗変化型メモリ素子において、抵抗変化型メモリ素子の抵抗状態を高い状態から低い状態に変化させる動作は、セット動作とよばれる。抵抗変化型メモリ素子の抵抗状態を低い状態から高い状態にする変化させる動作は、リセット動作とよばれる。
【0300】
バイポーラ型の可変抵抗素子は、セット及びリセット動作において、極性が異なる電圧が用いられるので、MTJ素子と同様に、双方向に電流を供給することが好ましい。
【0301】
それゆえ、例えば、本実施形態の抵抗変化型メモリにおいて、バイポーラ型の可変抵抗素子がメモリ素子として用いられることが好ましい。
【0302】
以上のように、本実施形態の抵抗変化型メモリは、抵抗変化型メモリ素子がMTJ素子以外の素子であっても適用できる。
【0303】
[その他]
本実施形態の抵抗変化型メモリによれば、メモリの動作特性を向上できる。
【0304】
本実施形態において、本実施形態のメモリセルを用いたメモリセルアレイは、上述の例に限定されず、メモリセル間の接続関係又はメモリセルのレイアウトを適宜変更して、上述の例と回路構成及びレイアウトの異なるメモリセルアレイを形成してもよい。
【0305】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0306】
1:抵抗変化型メモリ素子、2,3:バイポーラトランジスタ、21,31:エミッタ、22,32:コレクタ、23,33:ベース、BL:ビット線、WL:ワード線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延在するビット線と、
第2方向に延在するワード線と、
第1エミッタと、第1ベースと、第1コレクタとを有する、第1駆動型の第1バイポーラトランジスタと、
第2エミッタと、第2ベースと、第2コレクタとを有する、前記第1駆動型と異なる第2駆動型の第2バイポーラトランジスタと、
第1及び第2端子を有する抵抗変化型メモリ素子と、を具備し、
前記第1端子は、前記第1及び第2エミッタに接続され、
前記第2端子は、前記ビット線に接続され、
前記第1及び第2ベースは、前記ワード線に接続される、
ことを特徴とする抵抗変化型メモリ。
【請求項2】
第1及び第2半導体領域上方を第1方向に延在するビット線と、
前記第1半導体領域内に設けられた第1導電型の第1コレクタ層と、前記第1コレクタ層内に設けられた前記第1導電型と異なる第2導電型の第1ベース層と、前記第1ベース層内に設けられた前記第1導電型の第1エミッタ層とを有する第1バイポーラトランジスタと、
前記第2半導体領域内に設けられた前記第2導電型の第2コレクタ層と、前記第2コレクタ層内に設けられた前記第1導電型の第2ベース層と、前記第2ベース層内に設けられた前記第2導電型の第2エミッタ層とを有する第2バイポーラトランジスタと、
前記第1及び第2エミッタ層に導電体を介して接続される第1端子と、前記ビット線に接続される第2端子とを有する抵抗変化型メモリ素子と、
第2方向に延在し、前記第1及び第2ベース層上に設けられるワード線と、
を具備することを特徴とする抵抗変化型メモリ。
【請求項3】
半導体領域上方を第1方向に延在するビット線と、
前記第1導電型の第1エミッタ層と、第1導電型の第1コレクタ層と、前記第1コレクタ層と前記第のエミッタ層との間に設けられた前記第1導電型と異なる第2導電型の第1ベース層とを有し、前記半導体領域内に設けられる第1バイポーラトランジスタと、
前記第1エミッタ層に隣接する前記第2導電型の第2エミッタ層と、前記第2導電型の第2コレクタ層と、前記第2コレクタ層と前記第2エミッタ層との間に設けられた前記第1導電型の第2ベース層とを有し、前記半導体領域内に設けられる第2バイポーラトランジスタと、
前記第1及び第2エミッタ層に導電体を介して接続される第1端子と、前記ビット線に接続される第2端子とを有する抵抗変化型メモリ素子と、
第2方向に延在し、前記第1及び第2ベース層上に設けられるワード線と、
を具備することを特徴とする抵抗変化型メモリ。
【請求項4】
前記抵抗変化型メモリ素子に対する書き込み動作において、
前記ビット線が第1電位に設定され、前記ワード線が前記第1電位より大きい第2電位に設定された場合、前記第1バイポーラトランジスタはオンされ、前記第2バイポーラトランジスタはオフされ、
前記ビット線が前記第2電位に設定され、前記ワード線が前記第1電位に設定された場合、前記第1バイポーラトランジスタはオフされ、前記第2バイポーラトランジスタはオンされる、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の抵抗変化型メモリ。
【請求項5】
前記抵抗変化型メモリ素子に対する読み出し動作において、
前記ビット線は前記第2電位と前記第1電位との間の第3電位に設定され、前記ワード線は前記第1電位に設定され、
前記第1バイポーラトランジスタはオフされ、前記第2バイポーラトランジスタはオンされる、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の抵抗変化型メモリ。
【請求項6】
前記抵抗変化型メモリ素子は第1抵抗値と前記第1抵抗値と異なる第2抵抗値を有し、
前記第1端子から前記第2端子に向かって前記第1バイポーラトランジスタからの出力電流が流れた場合に、前記第1抵抗値から前記第2抵抗値へ変化し、
前記第2端子から前記第1端子に向かって前記第2バイポーラトランジスタからの出力電流が流れた場合に、前記第2抵抗値から前記第1抵抗値へ変化する、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の抵抗変化型メモリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−89741(P2012−89741A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236448(P2010−236448)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】