説明

振動アクチュエータ、レンズユニットおよび撮像装置

【課題】電気機械変換部を有する振動アクチュエータを提供する。
【解決手段】筒型の弾性体と、弾性体を振れ回り振動させる電気機械変換部と、弾性体の内面に接触して振れ回り振動による駆動力を受けて回転する回転体と、弾性体の前記内面に開口して設けられた集塵穴とを備える。集塵穴は、振れ回り振動している弾性体が回転体に接触する領域である接触領域を含む駆動面または駆動面の近傍に設けられてもよい。また、駆動面は、弾性体の内面においてすり鉢状の環状面を有し、集塵穴は、内径が接触領域より大きい領域に設けられてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータに関する。より詳細には、電気機械変換素子等を用いて形成された電気機械変換部を有する振動アクチュエータと、それを備えるレンズユニットおよび撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波帯域の振動を回転運動または直線運動に変換して出力する振動アクチュエータがある。振動アクチュエータは、圧電材料等を用いて形成された電気機械変換部を備え、周期的に変化する駆動電圧を電気機械変換部に印加することより生じた振動を、回転運動または直線運動に変換して外部の被駆動部材に伝達する。
【0003】
下記の特許文献1には、送りネジ型超音波モータの構造が記載されている。この超音波モータは、両端付近の内面にネジ溝を切られた貫通穴を有する角柱状弾性体と、角柱状弾性体の側方4面に個々に装着された電気機械変換素子と、貫通穴に螺入挿通されたネジ棒とを備える。4枚の電気機械変換素子に位相が順次遅れた周期的な駆動電圧を印加することにより弾性体に振動が生じ、振動がネジ棒を軸方向に進退させる。
【0004】
下記の特許文献2にも、貫通穴を有すると共に側面に電気機械変換素子を装着された角柱状の弾性体と、貫通穴に挿通された回転子とを備えたチューブ型超音波モータが記載されている。弾性体はセラミックスにより形成される。
【特許文献1】米国特許第6940209号明細書
【特許文献2】特開2007−049897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような振動アクチュエータは、高い応答速度、高い駆動トルクを有する他、動作音が小さい等の産業上有利な特徴を有する。また、エネルギー効率が高く、部品点数が少ないので小型化に適していることも知られている。しかしながら、投入された電力に対する出力の効率が稼働時間の増加と共に不安定になるので、長時間の連続運転には適していない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、上記課題を解決すべく、本発明の第1の形態として、筒型の弾性体と、弾性体を振れ回り振動させる電気機械変換部と、弾性体の内面に接触して、振れ回り振動による駆動力を受けて回転する回転体と、弾性体の内面に開口して設けられた集塵穴とを備える振動アクチュエータが提供される。
【0007】
上記振動アクチュエータにおいて、集塵穴は、振れ回り振動している弾性体が回転体に接触する領域である接触領域を含む駆動面または駆動面の近傍に設けられてもよい。
【0008】
また、上記振動アクチュエータにおいて、駆動面は、弾性体の内面においてすり鉢状の環状面を有し、集塵穴は、内径が接触領域より大きい領域に設けられてもよい。
【0009】
更に、上記振動アクチュエータにおいて、集塵穴は、回転体の軸と略垂直の方向に延伸して設けられてもよい。
【0010】
また更に、上記振動アクチュエータにおいて、集塵穴は、弾性体の内面から外面まで貫通してもよい。
【0011】
また更に、上記振動アクチュエータにおいて、集塵穴の内部に設けられ、粉塵を付着させる粘着部材をさらに備えてもよい。
【0012】
また更に、上記振動アクチュエータにおいて、当該振動アクチュエータは、光学部材を収容するレンズ鏡筒の内部に設けられて、光学部材を駆動し、集塵穴は、光学部材の光軸と略垂直の方向に延伸して設けられてもよい。
【0013】
また、本発明の第2の形態として、光学部材、光学部材を収容するレンズ鏡筒、およびレンズ鏡筒の内部に設けられて、光学部材を駆動する振動アクチュエータを備えるレンズユニットであって、振動アクチュエータは、筒型の弾性体と、弾性体を振れ回り振動させる電気機械変換部と、弾性体の内面に接触して、振れ回り振動による駆動力を受けて回転する回転体と、弾性体の内面に開口し、光学部材の光軸と略垂直の方向に延伸して設けられた集塵穴とを有するレンズユニットが提供される。
【0014】
更に、本発明の第3の形態として、光学部材、光学部材を収容するレンズ鏡筒、およびレンズ鏡筒の内部に設けられて、光学部材を駆動する振動アクチュエータを備える撮像装置であって、振動アクチュエータは、筒型の弾性体と、弾性体を振れ回り振動させる電気機械変換部と、弾性体の内面に接触して、振れ回り振動による駆動力を受けて回転する回転体と、弾性体の内面に開口し、当該撮像装置が水平に構えられた場合における下方に延伸して設けられた集塵穴とを有する撮像装置が提供される。
【0015】
上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションも発明となり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明する。しかしながら、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、一実施形態に係る振動アクチュエータ100の分解斜視図である。なお、以下の記載においては、図面の表示に従って、各要素の軸方向の一端を上端、他端を下端と記載する。しかしながら、このような記載は、振動アクチュエータ100の使用を、図示の方向に限定するものではない。
【0018】
振動アクチュエータ100は、弾性体120と、弾性体120を振れ回り振動させる電気機械変換部130と、弾性体120の端部以外の振れ回り振動における腹で弾性体120に接触して振れ回り振動による駆動力を受けて回転する回転体140とを備える。また、振動アクチュエータ100は、回転体140を回転自在に支持する軸受け部材110、160と、回転体140を付勢する付勢部材150と、回転体140の回転を外部に伝達する出力ギア170とを備える。
【0019】
回転体140は、円柱状の回転伝達軸144と、回転伝達軸144の軸方向の中程に形成された、やはり円柱状の回転体接触部142とを一体的に有する。回転体接触部142の外径は、回転伝達軸144の外径よりも大きい。
【0020】
弾性体120は、長手方向に貫通する貫通穴を有して、回転体140よりも短い筒型をなす。貫通穴は、円形の断面形状を有して、上端において回転体接触部142の外径よりも大きな内径を有する。また、弾性体120は、貫通穴の端部近傍にネジ溝部122、222を有する。
【0021】
更に、弾性体120は、高さ方向の中程において外周面に開口する集塵穴119を有する。集塵穴119は外面から内面まで貫通する。なお、弾性体120の内面における集塵穴119の開口形状は、回転体140の円周方向より回転体140の軸方向に長くてもよい。例えば、集塵穴119の開口形状は長方形であってよく、長方形の長手方向が弾性体120の長手方向に沿って設けられてよい。
【0022】
電気機械変換部130は、3以上、好ましくは4以上の領域に個別に配置できる寸法を有する電気機械変換素子132、134、136、138を含む。互いに略同じ寸法を有する電気機械変換素子132、134、136、138の各々は、弾性体120の長手方向に長い矩形で、弾性体120の外周面に倣った曲面をなす。
【0023】
電気機械変換素子132、134、136、138は、駆動電圧を印加された場合に伸張する圧電材料を含む。具体的には、チタン酸ジルコン酸鉛、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、ポリフッ化ビニリデン、亜鉛ニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等の圧電材料を含む。
【0024】
なお、多くの圧電材料は脆いので、りん青銅等の高弾性金属材料で補強することが好ましい。あるいは、弾性体120自体を担体にして、弾性体120の表面に圧電材料層を形成して、電気機械変換素子132、134、136、138を形成してもよい。圧電材料に駆動電圧を印加する場合に用いる電極は、ニッケル、金等の電極材料を、鍍金、スパッタ、蒸着、厚膜印刷等の方法で、圧電材料の表面に直接に形成してもよい。
【0025】
軸受け部材110は、フランジ部111およびネジ山部112を有する。軸受け部材160も、フランジ部161およびネジ山部162を有する。軸受け部材110、160のそれぞれにおいて、フランジ部111、161は、弾性体120の貫通穴の内径よりも大きな外径を有する。また、フランジ部111、161は、弾性体120の貫通穴の内径よりも大きな外径を有する。
【0026】
更に、フランジ部111、161の中央には、回転伝達軸144の外径と略同じ内径を有する軸受け部114、164が形成される。ネジ山部112、162は、弾性体120のネジ溝部122、222に螺合する寸法を有する。
【0027】
付勢部材150は、回転体接触部142の外径よりも小さな外径と、回転伝達軸144の外径よりも大きな内径とを有する。図中では回転体140に挿入されたコイルばねとして描かれているが、この構造に限られるものではない。
【0028】
出力ギア170は、中心に軸穴172を有する。軸穴172は、回転体140の回転伝達軸144に嵌着する内径を有する。軸穴172に回転伝達軸144を嵌着させた場合に、出力ギア170は回転体140の回転と一体的に回転する。
【0029】
図2は、振動アクチュエータ100の縦断面図である。なお、図1と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0030】
電気機械変換素子132、134(不図示)、136、138(不図示)を含む電気機械変換部130は、弾性体120の周面上に接着されている。これにより、駆動電圧が印加されて電気機械変換素子132、134、136、138のいずれかが伸張した場合に、電気機械変換素子132、134、136、138が接着された部分において弾性体120も共に伸張する。なお、電気機械変換素子132、134(不図示)、136、138(不図示)が現れる断面には、集塵穴119は現れない。
【0031】
一方、弾性体120の貫通穴は、図中の上側において大きく、下側においては小さな内径を有する。また、貫通穴の中程に、異なる内径の内面を結合する傾斜した駆動面121をなす肩部118を有する。傾斜した駆動面121は、弾性体120の内周面に沿ってすり鉢状の環状面をなす。
【0032】
軸受け部材110、160のそれぞれは、ネジ溝部122、222に対してネジ山部112、162を螺着させることにより、弾性体120の長手方向両端に装着される。装着された軸受け部材110、160は、各々のフランジ部111、161が弾性体120の端面に当接することにより弾性体120の両端に停まる。
【0033】
なお、本実施形態では、軸受け部材110のネジ山部112を弾性体120のネジ溝部122に、軸受け部材160のネジ山部162を弾性体120のネジ溝部222にそれぞれ螺合させることにより軸受け部材110、160が固定される。しかしながら、軸受け部材110、160は、接着、嵌め合い等の他の方法により弾性体120に固定されてもよい。
【0034】
回転体140は、弾性体120の貫通穴に挿通される。ここで、回転伝達軸144の下端および上端は軸受け部材110、160の軸受け部114、164を通じて外部まで延在する。回転伝達軸144は、上端側においてより長く延在して、先端部に出力ギア170が装着される。
【0035】
なお、図示の例では回転体140の一端に出力ギア170を装着した。しかしながら、回転伝達軸144を下方にも延長して、回転体140の両端に出力ギア170を装着することもできる。
【0036】
回転伝達軸144は、軸受け部材110、160の軸受け部114、164により、回転自在に位置決めされる。軸受け部114、164は、転がり軸受け、滑り軸受け等であってもよい。
【0037】
回転体接触部142は、弾性体120の内面の駆動面121に当接する。換言すれば、弾性体120の貫通穴は、駆動面121よりも上側においては、回転体接触部142の外径よりも大きな内径を有する。また、駆動面121よりも下側においては、回転体接触部142の外径よりも小さな内径を有する。これにより、回転体接触部142外周の下側角部が、被駆動部141として駆動面121に当接する。
【0038】
付勢部材150は、回転伝達軸144を挿通させることにより弾性体120の内部に配置される。ここで、付勢部材150の上端は軸受け部材160の下面に、付勢部材150の下端は回転体接触部142の上面に、それぞれ当接する。
【0039】
更に、付勢部材150は、軸受け部材160および回転体接触部142の間で圧縮された状態で装着される。従って、付勢部材150は、回転体接触部142を下方に付勢する。
【0040】
回転体接触部142は、弾性体120の肩部118が形成する駆動面121に係止される。これにより、回転体接触部142の被駆動部141が、弾性体120の駆動面121に押し付けられる。このような構造により、弾性体120の振れ回り振動が回転体140を回転駆動する。
【0041】
なお、回転体接触部142は回転体140の一部として回転する。このため、付勢部材150両端の少なくとも一方において、当接する部材に対する摺動部が形成される。この摺動部における摩擦を低減することにより、振動アクチュエータ100の動損を低減し得る。具体的には、摺動部に潤滑材を塗布または貼付してもよい。
【0042】
図3は、弾性体120の振れ回り振動を説明する概念図である。なお、この実施形態においては、弾性体120は、長手方向について両端近傍で外部から支持されているものとするが、他の部位において支持されてもよい。
【0043】
電気機械変換素子132、134(不図示)、136、138(不図示)は、駆動電圧が印加された場合に、弾性体120の長手方向に伸張する。電気機械変換素子132、134、136、138のいずれかが伸張した場合、当該電気機械変換素子132、134、136、138が接着された箇所において弾性体120も伸張するので弾性体120は屈曲する。
【0044】
更に、電気機械変換素子132、134、136、138の各々に対して、弾性体120の周方向に沿って順次駆動電圧が印加されると、弾性体120の屈曲の向きが順次変化する。そこで、電気機械変換素子132、134、136、138に対して、順次π/2遅れた位相の交流電界を印加すると、紙面に直交する円を描く振れ回り振動が弾性体120に生じる。
【0045】
一方、弾性体120は、両端において外部から支持されている。従って、振れ回り振動を生じた弾性体120は、長手方向中央付近に、紙面に直交する円を描く腹Yを形成する。これらの現象により、図3(b)に示すように、弾性体120全体に、上下端の近傍に位置する節X、Zと、長手方向の中央付近に位置する腹Yとを形成する振れ回り振動が生じる。
【0046】
また、振れ回り振動により生じる弾性体120の水平方向の変位は、長手方向について略中央においてもっとも大きい。そこで、弾性体120に生じた振れ回り振動の腹Yにおいて回転体接触部142を接触させることにより、回転体接触部142を周方向に効率よく回転させることができる。
【0047】
即ち、回転体接触部142は、付勢部材150により下方に付勢されている。従って、被駆動部141は、駆動面121に押し付けられる。弾性体120の振れ回り振動による駆動面121の水平な変位は、傾斜した被駆動部141を介して回転体接触部142に作用する。被駆動部141に水平方向の変位が作用した場合、回転体接触部142は、付勢部材150の付勢に逆らって軸方向に変位する。
【0048】
回転体接触部142が軸方向に変位すると、被駆動部141および駆動面121の間に間隙が生じる。更に、振れ回り振動においては、駆動面121の変位の方向が回転するので、被駆動部141および駆動面121の間に回転体接触部142を回転させる摩擦が生じる。この摩擦により駆動されて生じた回転体接触部142の回転は、回転伝達軸144および出力ギア170を介して外部に伝えられる。
【0049】
また、電気機械変換部130に印加される駆動電圧の周波数は、弾性体120の固有振動数に応じた共振周波数を含むことが好ましい。これにより、弾性体120は、投入された駆動電力に対して効率よく振れ回り振動を生じてそれを継続できる。更に、弾性体120は、複数の腹および節を生じるような他の振動モードで振れ回り振動することもできる。また更に、等間隔に配置された4枚の電気機械変換素子132、134、136、138を含む電気機械変換部130を例示したが、電気機械変換部130の構造はこれに限定されない。
【0050】
被駆動部141および駆動面121は、相互に当接および離間を繰り返す。このため、被駆動部141または駆動面121の一部が磨耗して粉塵を生じる場合がある。発生した粉塵が被駆動部141および駆動面121の間に挟まった場合、駆動面121が被駆動部141を回転駆動する効率が低下して、振動アクチュエータ100の出力が変化する場合がある。
【0051】
しかしながら、被駆動部141に付着した粉塵は、回転体接触部142が回転した場合に、集塵穴119の内側開口縁部により掻き取られる。これにより、粉塵に起因する回転駆動力の効率低下は防止される。また、被駆動部141から掻き取られた粉塵は、集塵穴119を通じて弾性体120の外部に排除される。従って、粉塵の蓄積により被駆動部141から粉塵を掻き取る機能が低下することはない。
【0052】
なお、駆動面121は、弾性体120の内面においてすり鉢状の環状面をなす。一方、振動アクチュエータ100が動作しているとき、回転体接触部142は、駆動面121の変位から受けた駆動力により、付勢部材150の付勢に抗して弾性体120の内径がより大きい方へ変位する。従って、集塵穴119は、弾性体120の内径が接触領域よりも大きくなる領域に開口してもよい。
【0053】
また、弾性体120の内面における集塵穴119の開口は、振れ回り振動している弾性体120が回転体接触部142に接触する領域である接触領域を含む駆動面121か、駆動面121の近傍に設けてもよい。これにより、集塵穴119が被駆動部141から粉塵を直接に掻き取らない場合でも、接触領域において発生した粉塵が弾性体120の内部で拡散する前に収集される。従って、粉塵に起因する振動アクチュエータ100の特性変動は防止される。
【0054】
図4は、集塵穴119の他の形態を示す部分断面図である。なお、以下に説明する部分以外の構造および作用は、図1から図3までに示した振動アクチュエータ100と共通なので重複する説明は省く。
【0055】
集塵穴119は、駆動面121に一端を開口して、弾性体120の外周面まで貫通することなく弾性体120の内部で終端している。これにより、収集された粉塵は集塵穴119の内部に蓄積され、外部に放散されることがない。従って、振動アクチュエータ100の周辺に粉塵を飛散させて汚染することが防止される。特に、光学系を含む機器に振動アクチュエータ100を実装した場合に、粉塵の混入により光学系の特性が低下することが防止される。
【0056】
また、弾性体120の外周面において、弾性体120の周方向について集塵穴119が形成されている位置にも電気機械変換素子132を装着できる。これにより、電気機械変換部130のレイアウトの自由度が増すと共に、製造も容易になる。
【0057】
なお、粉塵を収集して蓄積するという機能に鑑みて、集塵穴119は、重力方向について粉塵の発生箇所の下方に開口して、更にその下方で終端することが好ましい。従って、例えば、回転伝達軸144の長手方向が水平になるように振動アクチュエータ100が実装されているか、少なくとも使用される状態において水平になる場合は、集塵穴119が、回転体140の軸に対して略垂直の方向に延伸して設けられることが好ましい。
【0058】
図5は、集塵穴119のさらに他の形態を示す部分断面図である。なお、以下に説明する部分以外の構造および作用は、ここまでに説明した他の振動アクチュエータ100と同じなので重複する説明は省く。
【0059】
弾性体120は、駆動面121に一端を開口する集塵穴119を有する。集塵穴119は、弾性体120の外周面まで貫通することなく、弾性体120の内部で終端している。これにより、収集された粉塵は集塵穴119の内部に蓄積され、弾性体120の外部に放散されることがない。
【0060】
更に、弾性体120は、粘着部材129の層を集塵穴119の内面に有する。粘着部材129は、集塵穴119の内部に進入した粉塵を付着して捕獲する。これにより、集塵穴119にいったん収集された粉塵が、再び放出されて弾性体120の内部で拡散することが防止される。なお、粘着部材129としては、アクリル系ポリマ、オレフィン系ポリマ、ウレタン系ポリマ等、感圧型接着機構を有する材料のシートを用いることができる。また、集塵穴119から流出しない粘度を有する不揮発性の液体を用いることもできる。
【0061】
なお、粘着部材129を有する集塵穴119も、重力方向について粉塵の発生箇所の下方に開口し、更にその下方に向かって延在することが好ましい。従って、例えば、回転伝達軸144の長手方向が水平になるように振動アクチュエータ100が実装されているか、少なくとも使用される状態において回転伝達軸144が水平になる場合は、集塵穴119が、回転体140の軸に対して略垂直の方向に延伸して設けられることが好ましい。これにより、収集した粉塵は効率よく粘着部材129に導かれる。また、いったん収集された粉塵が再拡散することもない。
【0062】
図6は、撮像装置400の構造を模式的に示す縦断面図である。撮像装置400は、レンズユニット410およびボディ460を含む。レンズユニット410は、マウント450を介して、ボディ460に対して着脱自在に装着される。レンズユニット410は、光学部材420、光学部材420を収容する鏡筒430、および、鏡筒430の内部に設けられて光学部材420を駆動する振動アクチュエータ100を備える。
【0063】
光学部材420は、図中で左側にあたる入射端から順次配列された、フロントレンズ422、コンペンセータレンズ424、フォーカシングレンズ426およびメインレンズ428を含む。フォーカシングレンズ426およびメインレンズ428の間には、アイリスユニット440が配置される。
【0064】
振動アクチュエータ100は、光軸方向について鏡筒430の中程にあって相対的に小径なフォーカシングレンズ426の下方に配置される。これにより、鏡筒430の径を拡大することなく、振動アクチュエータ100は鏡筒430内に収容される。振動アクチュエータ100は、例えば輪列を介してフォーカシングレンズ426を光軸方向に前進または後退させる。
【0065】
ボディ460は、メインミラー540、ペンタプリズム470、接眼系490を含む光学部材を収容する。メインミラー540は、レンズユニット410を介して入射した入射光の光路上に傾斜して配置される待機位置と、入射光を避けて上昇する撮影位置(図中に点線で示す)との間を移動する。
【0066】
待機位置にあるメインミラー540は、入射光の大半を、上方に配置されたペンタプリズム470に導く。ペンタプリズム470は、入射光の鏡映を接眼系490に向かって出射するので、フォーカシングスクリーン(不図示)の映像を接眼系490から正像として見ることができる。入射光の残りは、ペンタプリズム470により測光ユニット480に導かれる。測光ユニット480は、入射光の強度およびその分布等を測定する。
【0067】
なお、ペンタプリズム470および接眼系490の間には、ファインダ液晶494に形成された表示画像を、フォーカシングスクリーンの映像に重ねるハーフミラー492が配置される。表示画像は、ペンタプリズム470から投影された画像に重ねて表示される。
【0068】
また、メインミラー540は、入射光の入射面に対する裏面にサブミラー542を有する。サブミラー542は、メインミラー540を透過した入射光の一部を、下方に配置された測距ユニット530に導く。これにより、メインミラー540が待機位置にある場合は、測距ユニット530が被写体までの距離を測定する。なお、メインミラー540が撮影位置に移動した場合は、サブミラー542も入射光の光路から退避する。
【0069】
更に、入射光に対してメインミラー540の後方には、シャッタ520、光学フィルタ510および撮像素子500が順次配置される。シャッタ520が開放される場合、その直前にメインミラー540が撮影位置に移動するので、入射光は直進して撮像素子500に入射される。これにより、入射光の形成する画像が電気信号に変換される。
【0070】
撮像装置400において、レンズユニット410とボディ460とは電気的にも結合されている。従って、例えば、ボディ460側の測距ユニット530が検出した被写体までの距離の情報に基づいて振動アクチュエータ100の回転を制御することにより、オートフォーカス機構を形成できる。また、測距ユニット530が振動アクチュエータ100の動作量を参照することにより、フォーカスエイド機構を形成することもできる。
【0071】
なお、振動アクチュエータ100によりフォーカシングレンズ426を移動させる場合について例示したが、アイリスユニット440の開閉、ズームレンズのバリエータレンズの移動等を振動アクチュエータ100で駆動できることはいうまでもない。この場合も、電気信号を介して測光ユニット480、ファインダ液晶494等と情報を参照し合うことにより、振動アクチュエータ100は、露出の自動化、シーンモードの実行、ブラケット撮影の実行等に寄与する。
【0072】
また、振動アクチュエータ100は、レンズユニット410の光軸に長手方向が平行になるように実装される。換言すれば、振動アクチュエータ100は、回転伝達軸144が水平になるように実装される。従って、図3、図4および図5に示すように、回転体140の軸と略垂直の方向に延伸して設けられた集塵穴119が、回転伝達軸144に対して下方に位置するように配置することにより、撮像装置400を横位置撮影で使用する場合に、振動アクチュエータ100で発生した粉塵を効果的に収集できる。
【0073】
更に、振動アクチュエータ100は、撮像装置400の底部に近い側に配置されている。従って、振動アクチュエータ100から漏洩した粉塵が光学系の内部に拡散することがない。
【0074】
なお、撮像装置400を縦位置撮影に使用した場合に回転伝達軸144に対して下方に開口する他の集塵穴119を更に設けてもよい。これにより、縦位置撮影のために振動アクチュエータ100が動作した場合にも、粉塵を効果的に収集できる。
【0075】
振動アクチュエータ100は、内部に発生した粉塵を収集して排出または蓄積する集塵穴119を有するので、粉塵に起因する振動アクチュエータ100の特性劣化を防止できる。また、粉塵を蓄積する構造とした場合は、周囲を粉塵で汚染することがないので、粉塵により影響を受ける光学機器等において有利に使用できる。
【0076】
従って、例えば、撮影機、双眼鏡等の光学系において、合焦機構、ズーム機構、手振れ補正機構等の駆動に好適に使用できる。また、粉塵の発生を嫌う精密ステージの駆動力源としても好ましく使用できる。ただし、振動アクチュエータ100の用途がこれらに限られないことはいうまでもない。
【0077】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることは当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】一実施形態に係る振動アクチュエータ100の分解斜視図である。
【図2】振動アクチュエータ100の縦断面図である。
【図3】振動アクチュエータ100の動作を説明する概念図である。
【図4】作用部200の他の構造を示す部分断面図である。
【図5】作用部200の更に他の構造を示す部分断面図である。
【図6】振動アクチュエータ100を備える撮像装置400の構造を模式的に示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0079】
100 振動アクチュエータ
110、160 軸受け部材
111、161 フランジ部、
112、162 ネジ山部
114、164 軸受け部
118 肩部
119 集塵穴
120 弾性体
122、222 ネジ溝部
121 駆動面
129 粘着部材
130 電気機械変換部
132、134、136、138 電気機械変換素子
140 回転体
141 被駆動部
142 回転体接触部
144 回転伝達軸
146 回転伝達リブ
150 付勢部材
170 出力ギア
172 軸穴
400 撮像装置
410 レンズユニット
420 光学部材
422 フロントレンズ
424 コンペンセータレンズ
426 フォーカシングレンズ
428 メインレンズ
430 鏡筒
440 アイリスユニット
450 マウント
460 ボディ
470 ペンタプリズム
480 測光ユニット
490 接眼系
492 ハーフミラー
494 ファインダ液晶
500 撮像素子
510 光学フィルタ
520 シャッタ
530 測距ユニット
540 メインミラー
542 サブミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒型の弾性体と、
前記弾性体を振れ回り振動させる電気機械変換部と、
前記弾性体の内面に接触して、前記振れ回り振動による駆動力を受けて回転する回転体と、
前記弾性体の前記内面に開口して設けられた集塵穴と
を備える振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記集塵穴は、前記振れ回り振動している前記弾性体が前記回転体に接触する領域である接触領域を含む駆動面または前記駆動面の近傍に設けられる請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記駆動面は、前記弾性体の内面においてすり鉢状の環状面を有し、
前記集塵穴は、内径が前記接触領域より大きい領域に設けられる請求項2に記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記集塵穴は、前記回転体の軸と略垂直の方向に延伸して設けられる請求項3に記載の振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記集塵穴は、前記弾性体の前記内面から外面まで貫通している請求項4に記載の振動アクチュエータ。
【請求項6】
前記集塵穴の内部に設けられ、粉塵を付着させる粘着部材
をさらに備える請求項4に記載の振動アクチュエータ。
【請求項7】
当該振動アクチュエータは、光学部材を収容するレンズ鏡筒の内部に設けられて、前記光学部材を駆動し、
前記集塵穴は、前記光学部材の光軸と略垂直の方向に延伸して設けられる請求項3に記載の振動アクチュエータ。
【請求項8】
光学部材、前記光学部材を収容するレンズ鏡筒、および前記レンズ鏡筒の内部に設けられて、前記光学部材を駆動する振動アクチュエータを備えるレンズユニットであって、
前記振動アクチュエータは、
筒型の弾性体と、
前記弾性体を振れ回り振動させる電気機械変換部と、
前記弾性体の内面に接触して、前記振れ回り振動による駆動力を受けて回転する回転体と、
前記弾性体の前記内面に開口し、前記光学部材の光軸と略垂直の方向に延伸して設けられた集塵穴と
を有するレンズユニット。
【請求項9】
光学部材、前記光学部材を収容するレンズ鏡筒、および前記レンズ鏡筒の内部に設けられて、前記光学部材を駆動する振動アクチュエータを備える撮像装置であって、
前記振動アクチュエータは、
筒型の弾性体と、
前記弾性体を振れ回り振動させる電気機械変換部と、
前記弾性体の内面に接触して、前記振れ回り振動による駆動力を受けて回転する回転体と、
前記弾性体の前記内面に開口し、当該撮像装置が水平に構えられた場合における下方に延伸して設けられた集塵穴と
を有する撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−124805(P2009−124805A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293742(P2007−293742)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】