振動型アクチュエータの制御装置
【課題】 従来は回転速度検出において、光学式のエンコーダ等を用いずに速度検出を行う場合、移動体の形状を変える必要があった。
【解決手段】 振動型アクチュエータの振動検出用電極から検出されるS相信号に、振動体の複数の突起部の数に対応する周波数の振幅変動が生じることを利用して、回転速度情報を検出する。
【解決手段】 振動型アクチュエータの振動検出用電極から検出されるS相信号に、振動体の複数の突起部の数に対応する周波数の振幅変動が生じることを利用して、回転速度情報を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型アクチュエータの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動型アクチュエータは、発生する振動の種類によって定在波型と進行波型とに分けられる。図5は従来の進行波型の振動型アクチュエータの制御装置を示したものである。速度偏差検出器101には、エンコーダ等の速度検出器107で得られた速度信号と、不図示のコントローラーからの目標速度と、が入力され、速度偏差信号が出力される。速度偏差信号はPID補償器102に入力され、制御信号として出力される。
【0003】
PID補償器102から出力された制御信号は、駆動周波数パルス発生器103に入力される。駆動周波数パルス発生器103から出力された駆動周波数パルス信号は、駆動回路104に入力され、位相が90°異なる2相の交番電圧が出力される。交番電圧は、位相が90°ずれた2相の交番信号である。駆動回路104から出力された交番電圧は振動型アクチュエータ105の電気−機械エネルギー変換素子に入力され、振動型アクチュエータ105の移動体は一定速度で回転する。振動型アクチュエータ105の移動体に連結された被駆動体106(ギヤやスケール、シャフト等)は回転駆動され、前記速度検出器107によって回転速度が検出され、回転速度が常に目標速度に近づくようにフィードバック制御される。
【0004】
上記のように、従来は被駆動体の回転速度(移動体の回転速度と同じ)を検出する場合、光学式のエンコーダなどを用いる必要があり、スケールや受光素子によるコストアップが避けられない。また、実装スペースが必要なため、小型化が困難であった。このため、特許文献1、2には、エンコーダ等の光学素子を用いずに、速度検出を行なう方法が開示されている。
【0005】
特許文献1には、移動体であるロータの形状を工夫することにより、圧電素子に備えられた振動検出用の電極からの出力信号(以下、「S相信号」と呼ぶ)を利用して、駆動量を検出する方法が記載されている。これは、ロータの偏芯により、振動体のロータ接触部における圧力が変動するので、振動検出用の電極の振幅も回転に連動して変化することを利用したものである。S相信号の圧力変動分(1回転で1周期)をローパスフィルタによって信号処理した後に、波形整形された矩形信号のパルス数をカウントして駆動量を検出する。実施形態として、外周面に凹凸が形成されたロータ、または偏芯したロータ、溝があるロータ、摩擦係数が異なる区間を持つロータなどが挙げられている。
【0006】
特許文献2は、ロータの円周方向に不均一部を設け、この不均一部により強調される圧電素子への駆動電流の波高値の包絡線を、連続またはパルス状の信号に変換して、ロータの回転量を検出するものである。前記波高値の包絡線にロータの不均一部の数に対応した変調成分を生じさせるには、進行波の数と振動体の突起部の数を最適な条件で組み合わせる必要があると述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7439650号明細書
【特許文献2】特許第03060081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2に共通するのは、ロータの形状に周期的な突起や溝を設けて、振動検出電極からの検出信号であるS相信号の振幅に重畳される変調信号を検出して、ロータの回転速度情報や位置情報を得ることである。
【0009】
しかしながら、上記方法では、通常用いるロータに更なる加工を行う必要があった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、移動体の形状を変えることなく、エンコーダ等の光学素子を用いずに、振動体と移動体の相対移動速度情報や位置情報を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の振動型アクチュエータの制御装置は、電気−機械エネルギー変換素子を備えた振動体の前記電気−機械エネルギー変換素子に交番電圧を与えて前記振動体の複数の突起部に楕円運動を生成させることにより、前記複数の突起部に接触する移動体を前記振動体と相対的に回転させる振動型アクチュエータの制御装置であって、前記振動体に設けられた振動検出用の電気−機械エネルギー変換素子からの検出信号に含まれる前記複数の突起部の数に対応する周波数情報を用いて、前記移動体の回転速度情報を取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、移動体の形状は変えずに、エンコーダ等の光学素子を用いることなく、移動体の相対移動速度情報や位置情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態における、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。
【図2】振動型アクチュエータの例を示す模式図である。
【図3】振動体の裏面上に配された圧電素子の分極状態を示す模式図である。
【図4】測定したS相信号の振幅の時間的な変動と、周波数解析を行なった結果である。
【図5】従来の、進行波型の振動型アクチュエータの制御装置を示したブロック図である。
【図6】(a)4次のFIRフィルタの例を示すブロック図と、(b)36次のFIRフィルタで構成されるバンドパスフィルタの振幅応答を示すグラフである。
【図7】本発明の第1の実施形態における、信号処理回路の構成を示すブロック図と、S相信号から回転速度情報を検出する信号処理方法を説明するためのチャートである。
【図8】Arcsin演算によって周期を検出する信号処理回路を示すブロック図と、Arcsin演算によって周期を検出する方法を説明するためのチャートである。
【図9】本発明の第2の実施形態における、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施形態における、繰返し制御器の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第3の実施形態における、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。
【図12】振動型アクチュエータの駆動周波数と回転速度のテーブルデータの例である。
【図13】本発明の第4の実施形態における、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図と、フーリエ変換されたS相信号における、振幅の周波数特性を示すグラフである。
【図14】本発明の第5の実施形態における、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。
【図15】本発明の第6の実施形態における、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。
【図16】検出された駆動電圧信号とS相信号の位相差信号と、その信号処理の方法を説明するためのチャートである。
【図17】本発明の第7の実施形態における、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。
【図18】本発明の第7の実施形態における、制御装置の駆動シーケンスを示したフローチャートである。
【図19】周波数掃引時における、繰返し制御器から出力されたS相信号の振幅変化を示すグラフである。
【図20】第8の実施形態に用いる2つの振動型アクチュエータを組み合わせた構成を示す模式図である。
【図21】本発明の第8の実施形態における、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。
【図22】本発明の第8の実施形態に係る、絶対位置情報の検出方法を説明するためのチャートである。
【図23】本発明に適用できる、突起部が無い領域が1部設けられた振動体の構成を示す模式図である。
【図24】棒状の振動型アクチュエータの分解斜視図である。
【図25】弾性体に放射状の溝が設けられた振動体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の振動型アクチュエータの制御装置について、図面を参照しながら説明する。本発明の振動型アクチュエータの制御装置は、次のような振動型アクチュエータに対して適用される。即ち、本発明の制御装置の制御対象である振動型アクチュエータは、振動体と移動体とを有し、振動体の電気−機械エネルギー変換素子に交番電圧を与えることで振動体が振動する。そして、前記振動により、振動体の複数の突起に楕円運動を行わせ、振動体の複数の突起に接触する移動体を摩擦駆動によって振動体に対して相対的に移動させる。
【0015】
本発明者は、振動検出用の信号であるS相信号中に、「振動体の複数の突起部の数に対応した周波数成分」が含まれている事を実験により確認した。本発明は、これを移動体の相対速度情報として利用するものである。まず、S相信号に含まれる、振動体の複数の突起部の数に対応した周波数の信号成分について説明する。
【0016】
図2(a)は振動型アクチュエータ105の一部を示す斜視図である。振動型アクチュエータ105は、圧電素子等の電気−機械エネルギー変換素子201と弾性体202とから成る振動体203と、移動体204と、を備える。各部材は図中θ方向に円環形状を為している。電気−機械エネルギー変換素子201に2相の交番電圧が印加されると、振動体203に進行波が発生し、振動体203に接触する移動体204は摩擦駆動によって振動体と相対的に回転する。
【0017】
図2(b)は、弾性体202を示す斜視図である。弾性体202の移動体204と接触する側には、図2(b)に示すように、複数の突起301と溝302が交互に設けられている。図2(b)の例では1周あたりに各々32個設けられている。このような突起301を設けることにより、移動体204との接触部(突起301の先端部)で進行波の振幅を拡大することができ、十分な回転駆動力を得ることができる。以下、本発明において突起部とは、移動体204と接触する部分であり、突起301のように、溝302に対して相対的に凸部となる部分を指す。
【0018】
図2(c)は、駆動中の振動体203と移動体204の模式的な断面図である。振動体203には図中右方向に進行波が発生しており、移動体204は進行波の進行方向とは逆向きに移動する。進行波と移動体204との接触部を拡大すると、図2(c)の下部に示すように突起301先端部と移動体204表面とが接触する。
【0019】
駆動中において、接触部での接触圧力は理想的には常に一定であるが、実際には突起301及び移動体204ともに接触する表面には凹凸が存在するため、接触圧力は回転位置に応じて異なっている。つまり、接触圧力は移動体204の1回転あたりで、突起301の数だけ変化する。これにより、移動体204の回転と同期して、突起301の周方向の空間的な接触領域分布に応じた振動体203のメカ共振周波数の変動が生じる。このメカ共振周波数の変動は振動体203に生じる振動の振幅変動となり、移動体204の回転と同期して、接触領域分布、すなわち突起301の数に応じた周期的な振幅変動となって生じるものと考えられる。つまり、突起の数をエンコーダが検出するパルス数に相当するものと捉えることができる。従って、この振動の振幅変動を検出することができれば、移動体の回転速度情報を得ることができる。
【0020】
図3は、振動体の裏面上に配された電気−機械エネルギー変換素子である圧電素子の配設状態(圧電素子の配置位置と分極状態)の一例を示す模式図である。図中のA相及びB相は、それぞれ図3に示す位相及び分極状態で弾性体上に配される第1と第2の圧電素子群である。また、Sa相とSb相はA相とB相に対して、各々1/4波長ずれた位置に配される振動検出用の圧電素子である。これらA相、B相、Sa相、Sb相として機能する圧電素子は、それぞれ単独のものを振動体に設けてもよいし、又、一体的に分極処理にて形成してもよい。
【0021】
A相及びB相には夫々駆動電圧が印加される電極(以下、「A相電極」及び「B相電極」と呼ぶ)が形成されている。A相に印加される駆動電圧とB相に印加される駆動電圧とは位相が90°異なることにより、振動体の表面に進行波が形成される。Sa相とSb相にも夫々電極(以下、「振動検出電極」と呼ぶ)が形成されており、振動体の表面に前記振動が形成されると、この振動の振動状態に応じて振動検出電極から検出信号として電圧が出力される。
【0022】
尚、振動型アクチュエータは、その共振状態ではA相電極へ印加する駆動電圧と振動検出電極からの出力電圧である検出信号(以下、「S相信号」と呼ぶ)との位相関係が特定の関係となる特性を有している。すなわち、A相とSa相との位置関係によって決定され、A相に印加される駆動信号とS相から出力されるS相信号の位相が90°ずれた時に共振状態を示し、共振からずれるほど位相差関係がずれる、という特性を有している。
【0023】
本発明者は、上記S相信号を検出し、実際に振動体の突起部の数に応じた周期的な振幅変動が生じている事を確認した。以下にその結果について説明する。
【0024】
図4(a)は、測定したS相信号の振幅の時間的な変動を示すものである。横軸は時間であり、縦軸はS相信号の振幅である。この測定では、図5に示した従来の振動型アクチュエータの制御回路を用いた。また、130rpmで速度制御を行い、S相信号を不図示の外部回路によって抵抗分圧して電圧を小さくした後に、RMS−DC変換処理を行い、不図示の測定機器にて波形データを取り込んだものである。RMS−DC変換処理とは、AC信号の実効値変換を行なうものであり、汎用的にIC化されたものを実験では使用した。従って、S相信号のAC成分である駆動周波数成分が除去され、S相信号振幅の実効値のDC変動が出力される。ここで、実験では振動体の突起部の数は46個のものを使用した。図4(a)はSa相とSb相の振幅変動を示しており、これは振動体の突起部の数である46に対応した周波数で振幅変調されている。
【0025】
図4(b)は、RMS−DC変換処理を行ったS相信号をフーリエ変換して、振幅の周波数解析を行なった結果を示すものである。横軸は周波数であり、縦軸は振幅変動の振幅である。図4(b)より、周波数100Hzの位置にピークが生じているのがわかる。式(1)に示すように、これは振動体の突起部の数46に対応した周波数を示している。「突起部の数に対応した周波数」とは、式(1)に示すように、突起部の数と回転速度との積で求められる周波数である。
46×130(rpm)/60=100(Hz) ・・・式(1)
つまり、移動体の回転速度に応じて、突起部の数46に対応した周波数が検出されることになる。本発明者は、突起部の数を変更した場合や、回転速度を変更した場合についても測定を行い、いずれの場合においても、式(1)で計算される周波数の変動がピークとして生じることを確認した。
【0026】
これは、裏を返すと、振幅がピークを示す周波数或いは周期を駆動中に随時検出すれば、回転速度が逆算できることを意味している。振幅がピークを示す周期をT(sec)とすると、
回転速度(rpm)=(1/T)×60/46 ・・・式(2)
となる。これを回転速度周期として変換すると、回転速度周期は式(3)で示される。
回転速度周期(sec)=T×46 ・・・式(3)
【0027】
このように、S相信号に含まれる突起部の数に対応した信号成分の周波数や周期を検出することによって、移動体の回転速度情報を検出することが可能となる。本発明においては、回転速度や回転速度周期等の速度に関する情報を回転速度情報と表現する。また、突起部の数に対応する周波数や周期を周波数情報と表現する。回転速度情報を求める際の演算として、突起部の数に対応する周波数を用いてもよいし、突起部の数に対応する周期を用いてもよい。
【0028】
このような回転速度情報の検出方法により、移動体に周期的な突起等の不均一部の加工を行なわずに移動体の相対速度を検出することができる。また、移動体に不均一部を設けないため、不均一部による不要な振動も生じず、回転速度ムラも増大しにくい。
【0029】
以下、本発明の具体的な実施形態について説明を行う。
【0030】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。本実施形態の制御装置は、RMS−DC変換器702、A/D変換器703、フィルタ704、信号処理回路705、速度偏差検出器101、PID補償器102、駆動周波数パルス発生器103、駆動回路104を備える。
【0031】
速度偏差検出器101には、得られた回転速度情報と、不図示のコントローラーからの速度指令値等の目標速度情報と、が入力され、速度偏差信号が出力される。速度偏差信号はPID補償器102に入力され、制御信号として出力される。PID補償器102とは、比例(P)・積分(I)・微分(D)の各機能を有する補償器の出力を加算したものであり、制御対象の位相遅れやゲインを補償して、安定且つ高精度な制御装置を構築する為に一般的に用いられる。
【0032】
PID補償器102から出力された制御信号は、駆動周波数パルス発生器103に入力される。駆動周波数パルス発生器103は、入力された制御信号に応じて駆動周波数のパルス信号を発生させるものであり、デジタル分周回路やVCO(電圧制御発振器)などが用いられる。また、PWM(パルス幅変調)制御により、制御信号に応じてパルス幅が変化するパルス信号を発生させても良い。駆動周波数パルス発生器103から出力された駆動周波数パルス信号は、駆動回路104に入力され、位相が90°異なる2相の交番電圧が出力される。交番電圧は、位相が90°ずれた2相の交番信号である。駆動回路104には、例えばスイッチング機能を有するトランス型昇圧回路やLC昇圧回路等が用いられる。
【0033】
駆動回路104から出力された交番電圧は振動型アクチュエータ105の電気−機械エネルギー変換素子に入力され、振動型アクチュエータ105の移動体が相対的に回転する。振動型アクチュエータ105の移動体に連結された被駆動体106は移動体と一緒に回転駆動される。
【0034】
次に、本発明の特徴である、検出したS相信号から回転速度情報を検出する部分を説明する。
【0035】
まず、振動型アクチュエータに備えられた振動検出電極701からS相信号が検出される。図3では、Sa相とSb相からの出力を検出する例を述べたが、基本的にはどちらか1つで良い。S相信号はRMS−DC変換器702によって駆動周波数成分が除去され、実効的な振幅のDC変動成分が検出される。その後、A/D変換器703によってアナログ信号からデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換されたS相信号は、フィルタ704によって、振動体の突起部の数に対応した周波数の信号成分が抽出される。前記フィルタは一般的なデジタルフィルタによって構成され、FIR(有限インパルス応答)フィルタやIIR(無限インパルス応答)フィルタなどが用いられる。例えば前記FIRフィルタの特性をバンドパスフィルタ(帯域通過フィルタ)となるようにフィルタ係数を設定して帯域制限をかけ、S相信号の振動体の突起部の数に対応した周波数信号を抽出する。
【0036】
図6(a)は、4次のFIRフィルタの例を示すグラフである。FIRフィルタは、そのインパルス応答が有限時間長で表されるものであり、それがフィルタの係数となっている。入力信号はレジスタ801に順次格納され、1つのレジスタ801で1サンプリング周期遅延する。1サンプリング周期ずつ遅延した信号に各々h0からh4のフィルタ係数802が乗算され、全て加算された信号が出力される。h0からh4はフィルタ係数802であり、フィルタのインパルス応答、すなわち周波数特性を決めるものである。前記フィルタ係数802を調整することにより、所望の周波数帯域の通過帯域幅を有するバンドパスフィルタを構成することができる。前記通過帯域幅は、低域側のカットオフ周波数f1と高域側のカットオフ周波数f2の差によって決定される。
【0037】
図6(b)は、36次のFIRフィルタで構成される、バンドパスフィルタの振幅応答を示すグラフである。横軸は周波数(Hz)、縦軸は振幅応答(dB)を示す。このバンドパスフィルタは、低域側のカットオフ周波数f1を50Hz、高域側のカットオフ周波数f2を150Hzとして設計されている。通過帯域幅は100Hzである。図4(b)に示したように、振動体の突起部の数に対応した周波数は100Hzであるので、これを中心周波数として前後50Hzの帯域を通過させるように設定されている。このようなバンドパスフィルタを通過させることによって、S相信号に含まれる低周波のDC変動や高周波のノイズを除去することができ、回転速度情報を検出する精度、すなわちSN比を向上することができる。
【0038】
前記フィルタによって不要成分が除去されたS相信号は、信号処理回路705によって回転速度情報に変換される。図7(a)は、信号処理回路705の構成を示すブロック図である。バンドパスフィルタを通過したS相信号は、最初にデジタル比較器1001に入力され、パルス信号として出力される。入力されるS相信号波形を図7(b)、出力されるパルス信号を図7(c)に示す。前記デジタル比較器1001は一般的なデジタルコンパレータから成り、入力信号と基準値の大きさを比較してH又はLレベルが出力される。次に、パルス信号はエッジ検出器1002に入力され、パルス信号の立ち上りエッジが検出用クロックにて検出される。エッジ検出器1002は、図7(e)で示される検出用クロック信号で動作するフリップフロップ回路と論理ゲートによって構成される。前記エッジ検出器1002によって出力された立ち上りエッジ信号を、図7(d)に示す。前記立ち上りエッジ信号の1周期分が、振動体の突起部の数に対応する周期となる。
【0039】
次に、前記立ち上りエッジ信号の周期をカウンタ回路1003によって検出する。検出用クロック信号で動作するカウンタ回路1003は、立ち上りエッジ信号が入力されるごとにカウントアップを繰返し、信号周期を出力する。次に、カウントされた信号周期を移動体の回転速度周期に変換する為、乗算器1004に入力される。乗算器1004は前記立ち上りエッジ信号のタイミングで演算処理を行う。つまり、乗算機1004は、振動体の突起部の数46を乗数として、カウントされた信号周期に乗算し、移動体の回転速度周期情報として出力する。ここで、回転速度情報として移動体の1回転分の周期を出力したが、振動体の1つの突起に対応する周期として出力しても良い。この場合は目標速度周期を1/46に設定して速度周期偏差を取得すれば良い。
【0040】
また、信号周期の検出分解能を上げる為に、次のような方法を取っても良い。図8(a)は、Arcsin演算によって周期を検出する方法である。検出用クロック信号にて動作するArcsin演算器1201に、S相信号が入力される。図8(b)で示すSin波形信号を検出用クロックのタイミングで値を読み取り、Arcsin演算を行なう。演算結果は図8(c)で示すような0°〜360°の位相情報として検出され、1周期を検出用クロックの分解能まで上げることができる。但し、前記Arcsin演算器は、ある振幅値のArcsin演算結果に対して2つの位相(θと、180−θ)を取り得るので、常に1検出クロック前で検出した位相に対して、大きい値が選択されるような論理演算を行なうようにする。出力された演算結果はカウンタ回路1003に入力され、信号周期のカウンタ値として変換される。同様に、カウントされた信号周期は乗算器1004に入力され、移動体の回転速度周期に変換される。
【0041】
次に、信号処理回路705から出力された回転速度周期は、速度偏差検出器101に入力され、目標速度との速度偏差が検出される。この速度偏差に基づいて、振動型アクチュエータはフィードバック制御される。なお、速度偏差を本実施形態では検出用クロックでカウントされる周期として検出する例を示したが、もちろん周波数として検出しても良い。また、振動型アクチュエータを駆動周波数によって制御する例を示したが、他の方法、例えば駆動電圧によって制御する方法でも良い。
【0042】
(第2の実施形態)
本実施形態では、S相信号の振幅変動の検出において、前記振幅変化成分のSN比を大幅に上げ、回転速度情報をより高精度に検出する方法について説明する。具体的には、S相信号の振幅変動の検出において、繰返し制御器を用いる形態について説明する。図1に示した制御装置の構成と同様の構成については第1の実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0043】
図9は、本発明の第2の実施形態における、繰返し制御を用いた場合の振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。A/D変換器703によってデジタル信号に変換されたS相信号は、繰返し制御器1401に入力され、振動体の突起部の数に対応した周波数信号のSN比が大幅に上げられる。
【0044】
図10は、本発明の適用できる繰返し制御器の構成を示すブロック図である。繰返し制御器1401に入力されたS相信号は、サンプラ1501において特定の離散時間でサンプリングされてから出力される。サンプラ1501からの出力信号はフィルタ1502と遅延器1503を通過することで1繰返し周期分遅延され、加算器1504にてサンプラ1501からの出力信号に加算される。フィルタ1502は、例えば図6(a)のようなローパスフィルタが用いられる。また、遅延器1503は、レジスタを直列に接続し、レジスタ数を調整することで遅延量を変えることができる。
【0045】
ここで、繰返し周期は、回転速度として目標速度を設定した場合の振動体の突起部の数に対応する周波数の1周期分、又は半周期分に設定される。つまり、繰返し周期は、突起部の数と目標速度との積で表される周波数の1周期分、又は半周期分に設定される。例えば、振動体の突起部の数が46、目標速度が130rpmならば、S相信号の振幅変調成分の信号周波数は、
46×130(rpm)/60=100(Hz) ・・・式(4)
であるので、繰返し周期は、式(5)に示すように、変調成分の信号周波数の逆数に設定するか、又は変調成分の周波数の逆数の1/2に設定すれば良い。
繰返し周期=1/100=0.01(sec) ・・・式(5)
【0046】
具体的には、図9の繰返し周期調整器1402で繰返し周期用のクロックが生成され、サンプラ1501のクロックとして入力される。つまり、繰返し周期用のクロックは、目標速度と振動体の突起部の数とに基づいて設定されることになる。繰返し周期で加算された出力信号は、ゲイン1505にて乗算処理され、出力される。このように繰返し制御器1401は、繰返し周期が重ねられる毎に振動体の突起部の数に対応する周波数信号のみが積分されていき、SN比を大幅に上げることが可能となる。
【0047】
繰返し制御器1401によってSN比が上げられたS相信号は、信号処理回路705に入力され、第1の実施形態と同様に回転速度情報が検出される。これによって、より高精度に回転速度情報を検出することが可能となる。
【0048】
(第3の実施形態)
本実施形態は、振動型アクチュエータの駆動周波数と速度特性に基づくバンドパスフィルタの中心周波数の設定方法に特徴を有する。図11は、本発明の第3の実施形態に係る、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。基本的な構成は第1の実施形態と同様であり、図1に示した制御装置の構成と同様の構成については説明を省略する。
【0049】
振動型アクチュエータの駆動周波数−速度特性(以下、F−V特性と呼ぶ)に基づくバンドパスフィルタの中心周波数の設定方法について、以下に説明する。
【0050】
フィルタ704はバンドパスフィルタとして構成され、例えば、図6(a)、図6(b)で示したFIR型のデジタルフィルタが用いられる。前記バンドパスフィルタの通過帯域幅は、低域側のカットオフ周波数f1と高域側のカットオフ周波数f2の差によって決定され、これはフィルタ係数を変更することで調整することができる。ここで、図6(b)では通過帯域幅の中心周波数を100Hzに設定したが、起動時の移動体の速度は目標速度より低く、振動体の突起部の数に対応する周波数は50Hz程度である。つまり、起動速度から目標速度に至るまで、速度に応じてバンドパスフィルタの中心周波数を適宜調整する。これによってノイズをより効果的に除去することができる。
【0051】
バンドパスフィルタの中心周波数は、フィルタ定数調整器1601によってフィルタ係数が変更され、調整される。フィルタ定数調整器1601は、推定される移動体の回転速度(推定速度)に基づいて中心周波数を算出し、フィルタ係数を決定する。ここで、振動体の突起部の数を46とすると、中心周波数は式(6)で示される。
46×推定速度(rpm)/60=中心周波数(Hz) ・・・式(6)
ここで、フィルタ係数を駆動中に計算するのは難しいため、例えば、中心周波数に応じたフィルタ係数の値を予めテーブルとしてメモリに保存しておき、駆動中に読み出すようにすれば良い。
【0052】
フィルタ定数調整器1601に入力される推定速度は、F−V特性のテーブルに基づいて得られる。F−Vテーブル1602は、予め測定した、振動型アクチュエータの駆動周波数と回転速度のデータが保存されたテーブルである。尚、テーブルではなく、駆動周波数と回転速度の関係式をメモリに保存しておいてもよい。
【0053】
図12(a)は駆動周波数と回転速度の測定データである。図12(b)は、前記測定データに基づいて、設定周波数と推定速度のデータを離散的にテーブル化したものである。ここで、滑らかな起動を行うため、初期の駆動周波数は例えば50kHzとして設定される。従って、設定周波数50kHzの場合の推定速度は20rpmである。このように、駆動周波数パルス発生器103より駆動周波数データが入力され、前記駆動周波数データに基づいて推定速度がテーブルデータより読み出される。この結果、駆動中に振動体の突起部の数に対応する信号の周波数が変化しても、バンドパスフィルタの中心周波数を適宜調整することができ、精度よく回転速度情報を検出することが可能となる。
【0054】
(第4の実施形態)
本実施形態では、駆動中にS相信号を周波数解析して、振幅が最大(ピーク)となる周波数をバンドパスフィルタの中心周波数として設定することを特徴とする。図13(a)は、本発明の第4の実施形態に係る、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。基本的な構成は実施形態1と同様であり、図1に示した制御装置の構成と同様の構成については説明を省略する。
【0055】
本実施形態においては、A/D変換器703から出力されるS相信号はバンドパスフィルタに入力される一方で、フーリエ変換器1802に入力される。フーリエ変換器1802では、離散的な複数の周波数の乗算が行なわれ、図13(b)のような振幅の周波数特性が得られる。ここで、振幅がピークとなる周波数が検出され、ピーク周波数として出力される。ピーク周波数値はフィルタ定数調整器1601に入力され、バンドパスフィルタの中心周波数がピーク周波数と一致するようにフィルタ定数が調整される。この結果、駆動中に振動体の突起部の数に対応する信号の周波数が変化しても、バンドパスフィルタの中心周波数は適宜調整されて、精度よく回転速度情報を検出することが可能となる。
【0056】
(第5の実施形態)
本実施形態は、駆動中にS相信号を周波数解析して、振幅がピークとなる周波数に基づいて、繰返し制御器1401の繰返し周期を設定することを特徴とする。図14は、本発明の第5の実施形態に係る、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。基本的な構成は第2の実施形態と同様であり、図9で示した繰返し制御器を用いた制御装置と同様の構成については説明を省略する。
【0057】
本実施形態においては、A/D変換器703から出力されるS相信号は繰返し制御器に入力される一方で、フーリエ変換器1801に入力される。フーリエ変換器1801では、離散的な複数の周波数の乗算が行なわれ、前記図13(b)のような振幅の周波数特性が得られる。ここで、振幅がピークとなる周波数が検出され、ピーク周波数として出力される。ピーク周波数の逆数、すなわちピーク周波数の周期は、繰返し周期調整器1402に入力され、繰返し制御用のサンプリングクロックが生成される。この結果、駆動中に振動体の突起部の数に対応する信号の周波数が変化しても、繰返し制御器1401の繰返し周期は適宜調整されて、精度よく回転速度情報を検出することが可能となる。尚、繰返し制御器の繰返し周期は、ピーク周波数の逆数の1/2に設定しても、同様の効果を得ることができる。
【0058】
(第6の実施形態)
本実施形態は、振動型アクチュエータに入力される駆動電圧信号とS相信号の位相差を検出し、振動体の突起部の数に対応する周波数信号を検出することを特徴とする。図15は、本発明の第6の実施形態に係る、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。
【0059】
上述したように、振動体の突起部の数により、メカ的な共振周波数は変化する。よって、駆動電圧信号とS相信号との位相差の変動成分にも、同様の周波数変調が生じるものと考えられる。本実施形態はこのような考えのもと、振動型アクチュエータに入力される駆動電圧信号とS相信号の位相差を検出し、振動体の突起部の数に対応する周波数信号を検出する。
【0060】
一般的に、振動体の駆動電極に印加される駆動電圧信号とS相信号との位相差は、駆動周波数とメカ共振周波数との周波数差によって変化する特性を持っている。尚、用いる圧電素子は、出力されるS相信号と、印加される駆動電圧と、が同相となる圧電素子同士を用いる。例えば、A相に印加される駆動電圧信号とSa相から出力される振動検出信号(S相信号)との位相差を検出する。各信号は、電圧コンパレータ2101によってパルス信号に変換された後、位相差検出器2102に入力されて位相差信号として検出される。検出された位相差信号の波形を図16(a)に示す。位相差は、振動体の突起部の数に対応する周波数で変動する。
【0061】
つまり、位相差の変動周波数の周期は、第1の実施形態で説明したS相信号の振幅の変動周波数の周期と等価であり、第1の実施形態と同様のフィルタ704と信号処理回路705を用いて回転速度情報を得ることができる。第1の実施形態と同様に、フィルタ704を通過した図16(a)の位相差信号は、図7(a)に示されるように、最初にデジタル比較器1001に入力され、パルス信号として出力される。出力されるパルス信号を図16(b)に示す。次に、パルス信号はエッジ検出器1002に入力され、パルス信号の立ち上りエッジが検出用クロックにて検出される。検出用クロック信号を図16(d)に、エッジ検出器1002によって出力された立ち上りエッジ信号を図16(c)に示す。前記立ち上りエッジ信号の1周期分が、振動体の突起部の数に対応する周期となる。以降の回転速度情報を取得するまでの処理も、第1の実施形態で示した処理と同様であるため、説明を省略する。
【0062】
(第7の実施形態)
本実施形態は、速度制御を行なう前に駆動周波数を掃引して、掃引時に繰返し制御器1401から出力されるS相信号振幅がピークを示す駆動周波数を記憶してから、速度制御を開始することを特徴とする。図17は、本発明の第7の実施形態に係る、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。基本的な構成は第2の実施形態と同様であり、図9で示した繰返し制御器を用いた制御装置と同様の構成については説明を省略する。
【0063】
図18は、本実施形態の制御装置の駆動シーケンスを示したフローチャートである。最初に、不図示の指令装置より駆動開始命令が制御装置に入力される(S1)。次に、図17の駆動周波数掃引器2301より駆動可能な周波数範囲の信号が切替器2302で選択され、駆動周波数パルス発生器に入力される。駆動周波数掃引器2301は、図12(b)で示したF−Vテーブルのように、例えば50kHzから46kHzまで周波数を一定速度で掃引していく(S2)。
【0064】
周波数の掃引と同時に、繰返し制御器1401から出力されたS相信号は振幅検出器2303にて検出され、駆動周波数の変化に応じた振幅値がモニターされる。この様子を図19に示した。図19の横軸は駆動周波数で、左側の縦軸は繰返し制御後のS相振幅、右側の縦軸は移動体の速度を示す。ここで、繰返し制御器1401の繰返し周期は、目標速度と振動体の突起部の数から計算される値に固定されているので、移動体の回転速度が目標速度と同じ場合のみ、S相信号の振幅は拡大される。従って、周波数掃引時に移動体の回転速度が目標速度を通過することで、振幅がピークを示すピーク周波数が得られる。検出されたピーク周波数は、周波数データレジスタ2304に記憶される(S3)。
【0065】
次に、記憶されたピーク周波数値は駆動周波数パルス発生器103に入力され、前記ピーク周波数を駆動周波数に設定して速度制御が開始される(S4)。
【0066】
この結果、制御開始の時点から目標速度に近い駆動周波数で駆動できるので、振動体の突起部の数に対応する周波数信号は繰返し制御器1401によって十分にSN比が上げられ、精度よく回転速度情報を検出することが可能となる。
【0067】
(第8の実施形態)
本発明においては、移動体の回転速度情報の検出だけでなく、移動体の絶対位置情報の検出を行うことも可能である。本実施形態では、振動体の複数の突起に対応する周波数情報を用いて、移動体の絶対位置を求めることを特徴とする。本発明において絶対位置とは、所定の原点位置に対する相対位置を示す。
【0068】
まず、2つの振動型アクチュエータを同時に駆動した場合に、2つの移動体の絶対位置を検出する形態について説明する。2つの移動体は同じ速度で回転するので、回転位置は2つの移動体とも同じ位置となる。
【0069】
図20は、2つの振動型アクチュエータを組み合わせた構成の断面を示す模式図である。共用されたハウジング2601上に、2つの振動型アクチュエータ1051、1052は上下対象に1つの出力軸2602を介して接続されている。各振動型アクチュエータの基本的な構成は図2で示した構成と同様とのため、以下では本実施形態の特徴的な構成のみ説明する。
【0070】
2つの振動型アクチュエータ1501、1502の駆動電極に同一の駆動回路から出力された交流電圧を、A相とB相を入れ替えて印加することによって、移動体204は同一方向に回転駆動する。被駆動体(不図示)は1つの出力軸2602を介して回転する。
【0071】
通常、2つの振動型アクチュエータを用いる場合、2つの振動型アクチュエータの構成は同一とするが、本実施形態では移動体の絶対位置を検出するために、振動体毎に突起部の数が異なる構成となっている。本実施形態では一例として、振動型アクチュエータ1051の振動体の突起部の数を47個、振動型アクチュエータ1502の振動体の突起部の数を46個とした例を用いて説明する。
【0072】
図21は、本発明の第8の実施形態に係る、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。絶対位置を検出するために、2つの振動型アクチュエータにそれぞれ設けられた振動検出電極701からS相信号を検出し、2つのS相信号の位相差を検出することを特徴とする。
【0073】
2つの振動型アクチュエータから検出されたS相信号は、それぞれRMS−DC変換された後にA/D変換され、フィルタ処理が行なわれる。フィルタ出力後の各S相信号波形を図22(a)に示す。振動型アクチュエータ1501のS相信号波形1は、移動体の1回転周期において47波分のSin波形が突起部の数に応じて生じる。対して、振動型アクチュエータ1502のS相信号波形2は、移動体の1回転周期において46波分のSin波形が生じる。説明を簡略化するため、図22(a)では7波と6波として表現する。
【0074】
2つのS相信号1、2は、絶対位置検出器2701に入力される。絶対位置検出器での信号処理の方法を説明する。図22(b)は、2つのS相信号波形の立ち上りエッジを検出したパルス信号である。エッジ検出信号1、2のパルスの位相差を比較すると、原点位置で同位相で重なり、位置の変化に応じて位相がずれていき、1回転周期で位相差が360°となり、再び原点位置にリセットされる。
【0075】
つまり、1回転周期で突起部の数の差1個分の位相が変化することになる。図22(c)の位相差信号は、エッジ検出信号2のパルスがHになるタイミングでのエッジ検出信号1との位相差を検出し、線形補間したものである。この位相差信号に基づいて、位相から位置に変換することで、原点位置に対する絶対位置情報を検出することができる。また、本実施例においては、2つの振動体で1つの移動体を回転させる場合でも適用できる。
【0076】
次に、1つの振動型アクチュエータを用いて簡易的に原点位置を検出し、絶対位置情報を取得する形態について説明する。
【0077】
図23(a)は、周期的に設けられた突起部が一部存在しない領域を有する振動体の構成を示す模式図である。尚、突起部が移動体と接触しない領域があれば良いので、例えば突起部の高さを一部だけ相対的に低くする構成としても良い。図23(b)は、図23(a)の振動体を用いた振動型アクチュエータを駆動した場合のS相信号の波形を示すグラフである。突起部が移動体と接触しない領域がある為、1回転周期でSin波が一波分生じない箇所が常に同じ位置で生じる。図23(c)はエッジ検出信号である。本実施形態では、パルスが出力されない箇所を検知することで、原点位置を特定することができる。つまり、突起部の数に対応する周波数情報を用いることで、原点位置を特定することができる。原点位置を検出できれば、エッジ検出信号のパルス数をカウントすることで、絶対位置情報を取得することが可能となる。
【0078】
(第9の実施形態)
本発明の振動型アクチュエータの制御回路は、第1の実施形態で説明した振動型アクチュエータ以外の振動型アクチュエータにも適用することが可能である。本実施形態では、第1の実施形態の図2で示した、進行波を振動体に形成して移動体を相対移動させる円環型の振動型アクチュエータとは異なる振動型アクチュエータについて説明する。
【0079】
図24は、カメラレンズのオートフォーカス駆動などに用いられる、棒状の振動型アクチュエータの分解斜視図である。振動型アクチュエータは、振動体3001と、移動体3002と、を備えている。振動体3001には、摩擦材料を兼ねた第1の弾性体3003、電気−機械エネルギー変換素子である圧電素子3004への給電用のフレキシブルプリント基板3005、第2の弾性体3006が設けられている。これら部材は、シャフト3007の突き当てフランジ部3007aとシャフト3007下部のネジ部3007bに嵌る下ナット3008で挟み、加圧締結されている。
【0080】
第1の弾性体3003は、例えばアルミナを主成分とする焼結セラミックであり、上下両面を両刀研削した後に上面の摩擦面側を仕上げポリッシュしている。移動体3002は、接触ばね3009がロータ3010に接着固定されている。これにより、移動体3002は、フランジ3011の軸受部によって回転自在に支持された出力ギア3012と加圧ばね3013によって振動体3001の摩擦面3014に加圧接触されている。
【0081】
移動体3002の接触ばね3009は、ステンレスの絞り加工で小さなクランク断面を持つ円筒形状に形成されており、下端面が移動体の摩擦面として振動体の第1の弾性体の摩擦面3014と当接している。フレキシブルプリント基板3005を介して、不図示の電源から圧電素子3004に交番信号を印加する。それにより第1の弾性体3003の摩擦面には直交する2方向の1次の曲げ振動が励起され、時間位相π/2を持って重ね合せることによって、摩擦面3014に回転楕円運動を生じさせる。これにより、摩擦面に加圧接触する接触ばね3009を振動体3001に対して相対移動させる。
【0082】
図25は、弾性体に放射状の溝が設けられた振動体の斜視図である。図25(a)に示す振動体3001は、第1の弾性体3003の上下面の締結面近傍に、放射状の溝(本例では2個)3101と3102がそれぞれ設けてある。また、図25(b)に示す振動体3001は、第1の弾性体3003の上面に放射状の溝3101が8個設けられている。このような放射状の溝3101を設けることで、大気中の湿度の影響によるトルク低下を防止することができる。
【0083】
前記複数の放射状の溝3101によって形成される摩擦面3014(本発明の突起部に対応)と、移動体3002の接触領域分布と、に基づくS相信号の振幅変動は、図25(a)の例では振動体の溝数である2個(突起部の数も2個)に対応する周波数にピークが生じる。また、図25(b)の例では振動体の溝数である8個(突起部の数も8個)に対応する周波数にピークが生じる。
【0084】
このような振動体を用いた場合でも、第1〜第7の実施形態と同様に、突起部の数に対応する周波数情報を用いて、回転速度情報を取得することができる。
【符号の説明】
【0085】
101 速度偏差検出器
102 PID制御器
103 駆動周波数パルス発生器
104 駆動回路
105 振動型アクチュエータ
106 被駆動体
107 速度検出器
201 電気−機械エネルギー変換素子
202 弾性体
203 振動体
204 移動体
301 突起
302 溝
701 振動検出電極
702 RMS−DC変換器
703 A/D変換器
704 フィルタ
705 信号処理回路
1401 繰返し制御器
1801 フーリエ変換器
2101 電圧コンパレータ
2102 位相差検出器
2303 振幅検出器
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型アクチュエータの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動型アクチュエータは、発生する振動の種類によって定在波型と進行波型とに分けられる。図5は従来の進行波型の振動型アクチュエータの制御装置を示したものである。速度偏差検出器101には、エンコーダ等の速度検出器107で得られた速度信号と、不図示のコントローラーからの目標速度と、が入力され、速度偏差信号が出力される。速度偏差信号はPID補償器102に入力され、制御信号として出力される。
【0003】
PID補償器102から出力された制御信号は、駆動周波数パルス発生器103に入力される。駆動周波数パルス発生器103から出力された駆動周波数パルス信号は、駆動回路104に入力され、位相が90°異なる2相の交番電圧が出力される。交番電圧は、位相が90°ずれた2相の交番信号である。駆動回路104から出力された交番電圧は振動型アクチュエータ105の電気−機械エネルギー変換素子に入力され、振動型アクチュエータ105の移動体は一定速度で回転する。振動型アクチュエータ105の移動体に連結された被駆動体106(ギヤやスケール、シャフト等)は回転駆動され、前記速度検出器107によって回転速度が検出され、回転速度が常に目標速度に近づくようにフィードバック制御される。
【0004】
上記のように、従来は被駆動体の回転速度(移動体の回転速度と同じ)を検出する場合、光学式のエンコーダなどを用いる必要があり、スケールや受光素子によるコストアップが避けられない。また、実装スペースが必要なため、小型化が困難であった。このため、特許文献1、2には、エンコーダ等の光学素子を用いずに、速度検出を行なう方法が開示されている。
【0005】
特許文献1には、移動体であるロータの形状を工夫することにより、圧電素子に備えられた振動検出用の電極からの出力信号(以下、「S相信号」と呼ぶ)を利用して、駆動量を検出する方法が記載されている。これは、ロータの偏芯により、振動体のロータ接触部における圧力が変動するので、振動検出用の電極の振幅も回転に連動して変化することを利用したものである。S相信号の圧力変動分(1回転で1周期)をローパスフィルタによって信号処理した後に、波形整形された矩形信号のパルス数をカウントして駆動量を検出する。実施形態として、外周面に凹凸が形成されたロータ、または偏芯したロータ、溝があるロータ、摩擦係数が異なる区間を持つロータなどが挙げられている。
【0006】
特許文献2は、ロータの円周方向に不均一部を設け、この不均一部により強調される圧電素子への駆動電流の波高値の包絡線を、連続またはパルス状の信号に変換して、ロータの回転量を検出するものである。前記波高値の包絡線にロータの不均一部の数に対応した変調成分を生じさせるには、進行波の数と振動体の突起部の数を最適な条件で組み合わせる必要があると述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7439650号明細書
【特許文献2】特許第03060081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2に共通するのは、ロータの形状に周期的な突起や溝を設けて、振動検出電極からの検出信号であるS相信号の振幅に重畳される変調信号を検出して、ロータの回転速度情報や位置情報を得ることである。
【0009】
しかしながら、上記方法では、通常用いるロータに更なる加工を行う必要があった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、移動体の形状を変えることなく、エンコーダ等の光学素子を用いずに、振動体と移動体の相対移動速度情報や位置情報を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の振動型アクチュエータの制御装置は、電気−機械エネルギー変換素子を備えた振動体の前記電気−機械エネルギー変換素子に交番電圧を与えて前記振動体の複数の突起部に楕円運動を生成させることにより、前記複数の突起部に接触する移動体を前記振動体と相対的に回転させる振動型アクチュエータの制御装置であって、前記振動体に設けられた振動検出用の電気−機械エネルギー変換素子からの検出信号に含まれる前記複数の突起部の数に対応する周波数情報を用いて、前記移動体の回転速度情報を取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、移動体の形状は変えずに、エンコーダ等の光学素子を用いることなく、移動体の相対移動速度情報や位置情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態における、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。
【図2】振動型アクチュエータの例を示す模式図である。
【図3】振動体の裏面上に配された圧電素子の分極状態を示す模式図である。
【図4】測定したS相信号の振幅の時間的な変動と、周波数解析を行なった結果である。
【図5】従来の、進行波型の振動型アクチュエータの制御装置を示したブロック図である。
【図6】(a)4次のFIRフィルタの例を示すブロック図と、(b)36次のFIRフィルタで構成されるバンドパスフィルタの振幅応答を示すグラフである。
【図7】本発明の第1の実施形態における、信号処理回路の構成を示すブロック図と、S相信号から回転速度情報を検出する信号処理方法を説明するためのチャートである。
【図8】Arcsin演算によって周期を検出する信号処理回路を示すブロック図と、Arcsin演算によって周期を検出する方法を説明するためのチャートである。
【図9】本発明の第2の実施形態における、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施形態における、繰返し制御器の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第3の実施形態における、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。
【図12】振動型アクチュエータの駆動周波数と回転速度のテーブルデータの例である。
【図13】本発明の第4の実施形態における、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図と、フーリエ変換されたS相信号における、振幅の周波数特性を示すグラフである。
【図14】本発明の第5の実施形態における、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。
【図15】本発明の第6の実施形態における、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。
【図16】検出された駆動電圧信号とS相信号の位相差信号と、その信号処理の方法を説明するためのチャートである。
【図17】本発明の第7の実施形態における、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。
【図18】本発明の第7の実施形態における、制御装置の駆動シーケンスを示したフローチャートである。
【図19】周波数掃引時における、繰返し制御器から出力されたS相信号の振幅変化を示すグラフである。
【図20】第8の実施形態に用いる2つの振動型アクチュエータを組み合わせた構成を示す模式図である。
【図21】本発明の第8の実施形態における、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。
【図22】本発明の第8の実施形態に係る、絶対位置情報の検出方法を説明するためのチャートである。
【図23】本発明に適用できる、突起部が無い領域が1部設けられた振動体の構成を示す模式図である。
【図24】棒状の振動型アクチュエータの分解斜視図である。
【図25】弾性体に放射状の溝が設けられた振動体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の振動型アクチュエータの制御装置について、図面を参照しながら説明する。本発明の振動型アクチュエータの制御装置は、次のような振動型アクチュエータに対して適用される。即ち、本発明の制御装置の制御対象である振動型アクチュエータは、振動体と移動体とを有し、振動体の電気−機械エネルギー変換素子に交番電圧を与えることで振動体が振動する。そして、前記振動により、振動体の複数の突起に楕円運動を行わせ、振動体の複数の突起に接触する移動体を摩擦駆動によって振動体に対して相対的に移動させる。
【0015】
本発明者は、振動検出用の信号であるS相信号中に、「振動体の複数の突起部の数に対応した周波数成分」が含まれている事を実験により確認した。本発明は、これを移動体の相対速度情報として利用するものである。まず、S相信号に含まれる、振動体の複数の突起部の数に対応した周波数の信号成分について説明する。
【0016】
図2(a)は振動型アクチュエータ105の一部を示す斜視図である。振動型アクチュエータ105は、圧電素子等の電気−機械エネルギー変換素子201と弾性体202とから成る振動体203と、移動体204と、を備える。各部材は図中θ方向に円環形状を為している。電気−機械エネルギー変換素子201に2相の交番電圧が印加されると、振動体203に進行波が発生し、振動体203に接触する移動体204は摩擦駆動によって振動体と相対的に回転する。
【0017】
図2(b)は、弾性体202を示す斜視図である。弾性体202の移動体204と接触する側には、図2(b)に示すように、複数の突起301と溝302が交互に設けられている。図2(b)の例では1周あたりに各々32個設けられている。このような突起301を設けることにより、移動体204との接触部(突起301の先端部)で進行波の振幅を拡大することができ、十分な回転駆動力を得ることができる。以下、本発明において突起部とは、移動体204と接触する部分であり、突起301のように、溝302に対して相対的に凸部となる部分を指す。
【0018】
図2(c)は、駆動中の振動体203と移動体204の模式的な断面図である。振動体203には図中右方向に進行波が発生しており、移動体204は進行波の進行方向とは逆向きに移動する。進行波と移動体204との接触部を拡大すると、図2(c)の下部に示すように突起301先端部と移動体204表面とが接触する。
【0019】
駆動中において、接触部での接触圧力は理想的には常に一定であるが、実際には突起301及び移動体204ともに接触する表面には凹凸が存在するため、接触圧力は回転位置に応じて異なっている。つまり、接触圧力は移動体204の1回転あたりで、突起301の数だけ変化する。これにより、移動体204の回転と同期して、突起301の周方向の空間的な接触領域分布に応じた振動体203のメカ共振周波数の変動が生じる。このメカ共振周波数の変動は振動体203に生じる振動の振幅変動となり、移動体204の回転と同期して、接触領域分布、すなわち突起301の数に応じた周期的な振幅変動となって生じるものと考えられる。つまり、突起の数をエンコーダが検出するパルス数に相当するものと捉えることができる。従って、この振動の振幅変動を検出することができれば、移動体の回転速度情報を得ることができる。
【0020】
図3は、振動体の裏面上に配された電気−機械エネルギー変換素子である圧電素子の配設状態(圧電素子の配置位置と分極状態)の一例を示す模式図である。図中のA相及びB相は、それぞれ図3に示す位相及び分極状態で弾性体上に配される第1と第2の圧電素子群である。また、Sa相とSb相はA相とB相に対して、各々1/4波長ずれた位置に配される振動検出用の圧電素子である。これらA相、B相、Sa相、Sb相として機能する圧電素子は、それぞれ単独のものを振動体に設けてもよいし、又、一体的に分極処理にて形成してもよい。
【0021】
A相及びB相には夫々駆動電圧が印加される電極(以下、「A相電極」及び「B相電極」と呼ぶ)が形成されている。A相に印加される駆動電圧とB相に印加される駆動電圧とは位相が90°異なることにより、振動体の表面に進行波が形成される。Sa相とSb相にも夫々電極(以下、「振動検出電極」と呼ぶ)が形成されており、振動体の表面に前記振動が形成されると、この振動の振動状態に応じて振動検出電極から検出信号として電圧が出力される。
【0022】
尚、振動型アクチュエータは、その共振状態ではA相電極へ印加する駆動電圧と振動検出電極からの出力電圧である検出信号(以下、「S相信号」と呼ぶ)との位相関係が特定の関係となる特性を有している。すなわち、A相とSa相との位置関係によって決定され、A相に印加される駆動信号とS相から出力されるS相信号の位相が90°ずれた時に共振状態を示し、共振からずれるほど位相差関係がずれる、という特性を有している。
【0023】
本発明者は、上記S相信号を検出し、実際に振動体の突起部の数に応じた周期的な振幅変動が生じている事を確認した。以下にその結果について説明する。
【0024】
図4(a)は、測定したS相信号の振幅の時間的な変動を示すものである。横軸は時間であり、縦軸はS相信号の振幅である。この測定では、図5に示した従来の振動型アクチュエータの制御回路を用いた。また、130rpmで速度制御を行い、S相信号を不図示の外部回路によって抵抗分圧して電圧を小さくした後に、RMS−DC変換処理を行い、不図示の測定機器にて波形データを取り込んだものである。RMS−DC変換処理とは、AC信号の実効値変換を行なうものであり、汎用的にIC化されたものを実験では使用した。従って、S相信号のAC成分である駆動周波数成分が除去され、S相信号振幅の実効値のDC変動が出力される。ここで、実験では振動体の突起部の数は46個のものを使用した。図4(a)はSa相とSb相の振幅変動を示しており、これは振動体の突起部の数である46に対応した周波数で振幅変調されている。
【0025】
図4(b)は、RMS−DC変換処理を行ったS相信号をフーリエ変換して、振幅の周波数解析を行なった結果を示すものである。横軸は周波数であり、縦軸は振幅変動の振幅である。図4(b)より、周波数100Hzの位置にピークが生じているのがわかる。式(1)に示すように、これは振動体の突起部の数46に対応した周波数を示している。「突起部の数に対応した周波数」とは、式(1)に示すように、突起部の数と回転速度との積で求められる周波数である。
46×130(rpm)/60=100(Hz) ・・・式(1)
つまり、移動体の回転速度に応じて、突起部の数46に対応した周波数が検出されることになる。本発明者は、突起部の数を変更した場合や、回転速度を変更した場合についても測定を行い、いずれの場合においても、式(1)で計算される周波数の変動がピークとして生じることを確認した。
【0026】
これは、裏を返すと、振幅がピークを示す周波数或いは周期を駆動中に随時検出すれば、回転速度が逆算できることを意味している。振幅がピークを示す周期をT(sec)とすると、
回転速度(rpm)=(1/T)×60/46 ・・・式(2)
となる。これを回転速度周期として変換すると、回転速度周期は式(3)で示される。
回転速度周期(sec)=T×46 ・・・式(3)
【0027】
このように、S相信号に含まれる突起部の数に対応した信号成分の周波数や周期を検出することによって、移動体の回転速度情報を検出することが可能となる。本発明においては、回転速度や回転速度周期等の速度に関する情報を回転速度情報と表現する。また、突起部の数に対応する周波数や周期を周波数情報と表現する。回転速度情報を求める際の演算として、突起部の数に対応する周波数を用いてもよいし、突起部の数に対応する周期を用いてもよい。
【0028】
このような回転速度情報の検出方法により、移動体に周期的な突起等の不均一部の加工を行なわずに移動体の相対速度を検出することができる。また、移動体に不均一部を設けないため、不均一部による不要な振動も生じず、回転速度ムラも増大しにくい。
【0029】
以下、本発明の具体的な実施形態について説明を行う。
【0030】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。本実施形態の制御装置は、RMS−DC変換器702、A/D変換器703、フィルタ704、信号処理回路705、速度偏差検出器101、PID補償器102、駆動周波数パルス発生器103、駆動回路104を備える。
【0031】
速度偏差検出器101には、得られた回転速度情報と、不図示のコントローラーからの速度指令値等の目標速度情報と、が入力され、速度偏差信号が出力される。速度偏差信号はPID補償器102に入力され、制御信号として出力される。PID補償器102とは、比例(P)・積分(I)・微分(D)の各機能を有する補償器の出力を加算したものであり、制御対象の位相遅れやゲインを補償して、安定且つ高精度な制御装置を構築する為に一般的に用いられる。
【0032】
PID補償器102から出力された制御信号は、駆動周波数パルス発生器103に入力される。駆動周波数パルス発生器103は、入力された制御信号に応じて駆動周波数のパルス信号を発生させるものであり、デジタル分周回路やVCO(電圧制御発振器)などが用いられる。また、PWM(パルス幅変調)制御により、制御信号に応じてパルス幅が変化するパルス信号を発生させても良い。駆動周波数パルス発生器103から出力された駆動周波数パルス信号は、駆動回路104に入力され、位相が90°異なる2相の交番電圧が出力される。交番電圧は、位相が90°ずれた2相の交番信号である。駆動回路104には、例えばスイッチング機能を有するトランス型昇圧回路やLC昇圧回路等が用いられる。
【0033】
駆動回路104から出力された交番電圧は振動型アクチュエータ105の電気−機械エネルギー変換素子に入力され、振動型アクチュエータ105の移動体が相対的に回転する。振動型アクチュエータ105の移動体に連結された被駆動体106は移動体と一緒に回転駆動される。
【0034】
次に、本発明の特徴である、検出したS相信号から回転速度情報を検出する部分を説明する。
【0035】
まず、振動型アクチュエータに備えられた振動検出電極701からS相信号が検出される。図3では、Sa相とSb相からの出力を検出する例を述べたが、基本的にはどちらか1つで良い。S相信号はRMS−DC変換器702によって駆動周波数成分が除去され、実効的な振幅のDC変動成分が検出される。その後、A/D変換器703によってアナログ信号からデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換されたS相信号は、フィルタ704によって、振動体の突起部の数に対応した周波数の信号成分が抽出される。前記フィルタは一般的なデジタルフィルタによって構成され、FIR(有限インパルス応答)フィルタやIIR(無限インパルス応答)フィルタなどが用いられる。例えば前記FIRフィルタの特性をバンドパスフィルタ(帯域通過フィルタ)となるようにフィルタ係数を設定して帯域制限をかけ、S相信号の振動体の突起部の数に対応した周波数信号を抽出する。
【0036】
図6(a)は、4次のFIRフィルタの例を示すグラフである。FIRフィルタは、そのインパルス応答が有限時間長で表されるものであり、それがフィルタの係数となっている。入力信号はレジスタ801に順次格納され、1つのレジスタ801で1サンプリング周期遅延する。1サンプリング周期ずつ遅延した信号に各々h0からh4のフィルタ係数802が乗算され、全て加算された信号が出力される。h0からh4はフィルタ係数802であり、フィルタのインパルス応答、すなわち周波数特性を決めるものである。前記フィルタ係数802を調整することにより、所望の周波数帯域の通過帯域幅を有するバンドパスフィルタを構成することができる。前記通過帯域幅は、低域側のカットオフ周波数f1と高域側のカットオフ周波数f2の差によって決定される。
【0037】
図6(b)は、36次のFIRフィルタで構成される、バンドパスフィルタの振幅応答を示すグラフである。横軸は周波数(Hz)、縦軸は振幅応答(dB)を示す。このバンドパスフィルタは、低域側のカットオフ周波数f1を50Hz、高域側のカットオフ周波数f2を150Hzとして設計されている。通過帯域幅は100Hzである。図4(b)に示したように、振動体の突起部の数に対応した周波数は100Hzであるので、これを中心周波数として前後50Hzの帯域を通過させるように設定されている。このようなバンドパスフィルタを通過させることによって、S相信号に含まれる低周波のDC変動や高周波のノイズを除去することができ、回転速度情報を検出する精度、すなわちSN比を向上することができる。
【0038】
前記フィルタによって不要成分が除去されたS相信号は、信号処理回路705によって回転速度情報に変換される。図7(a)は、信号処理回路705の構成を示すブロック図である。バンドパスフィルタを通過したS相信号は、最初にデジタル比較器1001に入力され、パルス信号として出力される。入力されるS相信号波形を図7(b)、出力されるパルス信号を図7(c)に示す。前記デジタル比較器1001は一般的なデジタルコンパレータから成り、入力信号と基準値の大きさを比較してH又はLレベルが出力される。次に、パルス信号はエッジ検出器1002に入力され、パルス信号の立ち上りエッジが検出用クロックにて検出される。エッジ検出器1002は、図7(e)で示される検出用クロック信号で動作するフリップフロップ回路と論理ゲートによって構成される。前記エッジ検出器1002によって出力された立ち上りエッジ信号を、図7(d)に示す。前記立ち上りエッジ信号の1周期分が、振動体の突起部の数に対応する周期となる。
【0039】
次に、前記立ち上りエッジ信号の周期をカウンタ回路1003によって検出する。検出用クロック信号で動作するカウンタ回路1003は、立ち上りエッジ信号が入力されるごとにカウントアップを繰返し、信号周期を出力する。次に、カウントされた信号周期を移動体の回転速度周期に変換する為、乗算器1004に入力される。乗算器1004は前記立ち上りエッジ信号のタイミングで演算処理を行う。つまり、乗算機1004は、振動体の突起部の数46を乗数として、カウントされた信号周期に乗算し、移動体の回転速度周期情報として出力する。ここで、回転速度情報として移動体の1回転分の周期を出力したが、振動体の1つの突起に対応する周期として出力しても良い。この場合は目標速度周期を1/46に設定して速度周期偏差を取得すれば良い。
【0040】
また、信号周期の検出分解能を上げる為に、次のような方法を取っても良い。図8(a)は、Arcsin演算によって周期を検出する方法である。検出用クロック信号にて動作するArcsin演算器1201に、S相信号が入力される。図8(b)で示すSin波形信号を検出用クロックのタイミングで値を読み取り、Arcsin演算を行なう。演算結果は図8(c)で示すような0°〜360°の位相情報として検出され、1周期を検出用クロックの分解能まで上げることができる。但し、前記Arcsin演算器は、ある振幅値のArcsin演算結果に対して2つの位相(θと、180−θ)を取り得るので、常に1検出クロック前で検出した位相に対して、大きい値が選択されるような論理演算を行なうようにする。出力された演算結果はカウンタ回路1003に入力され、信号周期のカウンタ値として変換される。同様に、カウントされた信号周期は乗算器1004に入力され、移動体の回転速度周期に変換される。
【0041】
次に、信号処理回路705から出力された回転速度周期は、速度偏差検出器101に入力され、目標速度との速度偏差が検出される。この速度偏差に基づいて、振動型アクチュエータはフィードバック制御される。なお、速度偏差を本実施形態では検出用クロックでカウントされる周期として検出する例を示したが、もちろん周波数として検出しても良い。また、振動型アクチュエータを駆動周波数によって制御する例を示したが、他の方法、例えば駆動電圧によって制御する方法でも良い。
【0042】
(第2の実施形態)
本実施形態では、S相信号の振幅変動の検出において、前記振幅変化成分のSN比を大幅に上げ、回転速度情報をより高精度に検出する方法について説明する。具体的には、S相信号の振幅変動の検出において、繰返し制御器を用いる形態について説明する。図1に示した制御装置の構成と同様の構成については第1の実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0043】
図9は、本発明の第2の実施形態における、繰返し制御を用いた場合の振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。A/D変換器703によってデジタル信号に変換されたS相信号は、繰返し制御器1401に入力され、振動体の突起部の数に対応した周波数信号のSN比が大幅に上げられる。
【0044】
図10は、本発明の適用できる繰返し制御器の構成を示すブロック図である。繰返し制御器1401に入力されたS相信号は、サンプラ1501において特定の離散時間でサンプリングされてから出力される。サンプラ1501からの出力信号はフィルタ1502と遅延器1503を通過することで1繰返し周期分遅延され、加算器1504にてサンプラ1501からの出力信号に加算される。フィルタ1502は、例えば図6(a)のようなローパスフィルタが用いられる。また、遅延器1503は、レジスタを直列に接続し、レジスタ数を調整することで遅延量を変えることができる。
【0045】
ここで、繰返し周期は、回転速度として目標速度を設定した場合の振動体の突起部の数に対応する周波数の1周期分、又は半周期分に設定される。つまり、繰返し周期は、突起部の数と目標速度との積で表される周波数の1周期分、又は半周期分に設定される。例えば、振動体の突起部の数が46、目標速度が130rpmならば、S相信号の振幅変調成分の信号周波数は、
46×130(rpm)/60=100(Hz) ・・・式(4)
であるので、繰返し周期は、式(5)に示すように、変調成分の信号周波数の逆数に設定するか、又は変調成分の周波数の逆数の1/2に設定すれば良い。
繰返し周期=1/100=0.01(sec) ・・・式(5)
【0046】
具体的には、図9の繰返し周期調整器1402で繰返し周期用のクロックが生成され、サンプラ1501のクロックとして入力される。つまり、繰返し周期用のクロックは、目標速度と振動体の突起部の数とに基づいて設定されることになる。繰返し周期で加算された出力信号は、ゲイン1505にて乗算処理され、出力される。このように繰返し制御器1401は、繰返し周期が重ねられる毎に振動体の突起部の数に対応する周波数信号のみが積分されていき、SN比を大幅に上げることが可能となる。
【0047】
繰返し制御器1401によってSN比が上げられたS相信号は、信号処理回路705に入力され、第1の実施形態と同様に回転速度情報が検出される。これによって、より高精度に回転速度情報を検出することが可能となる。
【0048】
(第3の実施形態)
本実施形態は、振動型アクチュエータの駆動周波数と速度特性に基づくバンドパスフィルタの中心周波数の設定方法に特徴を有する。図11は、本発明の第3の実施形態に係る、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。基本的な構成は第1の実施形態と同様であり、図1に示した制御装置の構成と同様の構成については説明を省略する。
【0049】
振動型アクチュエータの駆動周波数−速度特性(以下、F−V特性と呼ぶ)に基づくバンドパスフィルタの中心周波数の設定方法について、以下に説明する。
【0050】
フィルタ704はバンドパスフィルタとして構成され、例えば、図6(a)、図6(b)で示したFIR型のデジタルフィルタが用いられる。前記バンドパスフィルタの通過帯域幅は、低域側のカットオフ周波数f1と高域側のカットオフ周波数f2の差によって決定され、これはフィルタ係数を変更することで調整することができる。ここで、図6(b)では通過帯域幅の中心周波数を100Hzに設定したが、起動時の移動体の速度は目標速度より低く、振動体の突起部の数に対応する周波数は50Hz程度である。つまり、起動速度から目標速度に至るまで、速度に応じてバンドパスフィルタの中心周波数を適宜調整する。これによってノイズをより効果的に除去することができる。
【0051】
バンドパスフィルタの中心周波数は、フィルタ定数調整器1601によってフィルタ係数が変更され、調整される。フィルタ定数調整器1601は、推定される移動体の回転速度(推定速度)に基づいて中心周波数を算出し、フィルタ係数を決定する。ここで、振動体の突起部の数を46とすると、中心周波数は式(6)で示される。
46×推定速度(rpm)/60=中心周波数(Hz) ・・・式(6)
ここで、フィルタ係数を駆動中に計算するのは難しいため、例えば、中心周波数に応じたフィルタ係数の値を予めテーブルとしてメモリに保存しておき、駆動中に読み出すようにすれば良い。
【0052】
フィルタ定数調整器1601に入力される推定速度は、F−V特性のテーブルに基づいて得られる。F−Vテーブル1602は、予め測定した、振動型アクチュエータの駆動周波数と回転速度のデータが保存されたテーブルである。尚、テーブルではなく、駆動周波数と回転速度の関係式をメモリに保存しておいてもよい。
【0053】
図12(a)は駆動周波数と回転速度の測定データである。図12(b)は、前記測定データに基づいて、設定周波数と推定速度のデータを離散的にテーブル化したものである。ここで、滑らかな起動を行うため、初期の駆動周波数は例えば50kHzとして設定される。従って、設定周波数50kHzの場合の推定速度は20rpmである。このように、駆動周波数パルス発生器103より駆動周波数データが入力され、前記駆動周波数データに基づいて推定速度がテーブルデータより読み出される。この結果、駆動中に振動体の突起部の数に対応する信号の周波数が変化しても、バンドパスフィルタの中心周波数を適宜調整することができ、精度よく回転速度情報を検出することが可能となる。
【0054】
(第4の実施形態)
本実施形態では、駆動中にS相信号を周波数解析して、振幅が最大(ピーク)となる周波数をバンドパスフィルタの中心周波数として設定することを特徴とする。図13(a)は、本発明の第4の実施形態に係る、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。基本的な構成は実施形態1と同様であり、図1に示した制御装置の構成と同様の構成については説明を省略する。
【0055】
本実施形態においては、A/D変換器703から出力されるS相信号はバンドパスフィルタに入力される一方で、フーリエ変換器1802に入力される。フーリエ変換器1802では、離散的な複数の周波数の乗算が行なわれ、図13(b)のような振幅の周波数特性が得られる。ここで、振幅がピークとなる周波数が検出され、ピーク周波数として出力される。ピーク周波数値はフィルタ定数調整器1601に入力され、バンドパスフィルタの中心周波数がピーク周波数と一致するようにフィルタ定数が調整される。この結果、駆動中に振動体の突起部の数に対応する信号の周波数が変化しても、バンドパスフィルタの中心周波数は適宜調整されて、精度よく回転速度情報を検出することが可能となる。
【0056】
(第5の実施形態)
本実施形態は、駆動中にS相信号を周波数解析して、振幅がピークとなる周波数に基づいて、繰返し制御器1401の繰返し周期を設定することを特徴とする。図14は、本発明の第5の実施形態に係る、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。基本的な構成は第2の実施形態と同様であり、図9で示した繰返し制御器を用いた制御装置と同様の構成については説明を省略する。
【0057】
本実施形態においては、A/D変換器703から出力されるS相信号は繰返し制御器に入力される一方で、フーリエ変換器1801に入力される。フーリエ変換器1801では、離散的な複数の周波数の乗算が行なわれ、前記図13(b)のような振幅の周波数特性が得られる。ここで、振幅がピークとなる周波数が検出され、ピーク周波数として出力される。ピーク周波数の逆数、すなわちピーク周波数の周期は、繰返し周期調整器1402に入力され、繰返し制御用のサンプリングクロックが生成される。この結果、駆動中に振動体の突起部の数に対応する信号の周波数が変化しても、繰返し制御器1401の繰返し周期は適宜調整されて、精度よく回転速度情報を検出することが可能となる。尚、繰返し制御器の繰返し周期は、ピーク周波数の逆数の1/2に設定しても、同様の効果を得ることができる。
【0058】
(第6の実施形態)
本実施形態は、振動型アクチュエータに入力される駆動電圧信号とS相信号の位相差を検出し、振動体の突起部の数に対応する周波数信号を検出することを特徴とする。図15は、本発明の第6の実施形態に係る、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。
【0059】
上述したように、振動体の突起部の数により、メカ的な共振周波数は変化する。よって、駆動電圧信号とS相信号との位相差の変動成分にも、同様の周波数変調が生じるものと考えられる。本実施形態はこのような考えのもと、振動型アクチュエータに入力される駆動電圧信号とS相信号の位相差を検出し、振動体の突起部の数に対応する周波数信号を検出する。
【0060】
一般的に、振動体の駆動電極に印加される駆動電圧信号とS相信号との位相差は、駆動周波数とメカ共振周波数との周波数差によって変化する特性を持っている。尚、用いる圧電素子は、出力されるS相信号と、印加される駆動電圧と、が同相となる圧電素子同士を用いる。例えば、A相に印加される駆動電圧信号とSa相から出力される振動検出信号(S相信号)との位相差を検出する。各信号は、電圧コンパレータ2101によってパルス信号に変換された後、位相差検出器2102に入力されて位相差信号として検出される。検出された位相差信号の波形を図16(a)に示す。位相差は、振動体の突起部の数に対応する周波数で変動する。
【0061】
つまり、位相差の変動周波数の周期は、第1の実施形態で説明したS相信号の振幅の変動周波数の周期と等価であり、第1の実施形態と同様のフィルタ704と信号処理回路705を用いて回転速度情報を得ることができる。第1の実施形態と同様に、フィルタ704を通過した図16(a)の位相差信号は、図7(a)に示されるように、最初にデジタル比較器1001に入力され、パルス信号として出力される。出力されるパルス信号を図16(b)に示す。次に、パルス信号はエッジ検出器1002に入力され、パルス信号の立ち上りエッジが検出用クロックにて検出される。検出用クロック信号を図16(d)に、エッジ検出器1002によって出力された立ち上りエッジ信号を図16(c)に示す。前記立ち上りエッジ信号の1周期分が、振動体の突起部の数に対応する周期となる。以降の回転速度情報を取得するまでの処理も、第1の実施形態で示した処理と同様であるため、説明を省略する。
【0062】
(第7の実施形態)
本実施形態は、速度制御を行なう前に駆動周波数を掃引して、掃引時に繰返し制御器1401から出力されるS相信号振幅がピークを示す駆動周波数を記憶してから、速度制御を開始することを特徴とする。図17は、本発明の第7の実施形態に係る、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。基本的な構成は第2の実施形態と同様であり、図9で示した繰返し制御器を用いた制御装置と同様の構成については説明を省略する。
【0063】
図18は、本実施形態の制御装置の駆動シーケンスを示したフローチャートである。最初に、不図示の指令装置より駆動開始命令が制御装置に入力される(S1)。次に、図17の駆動周波数掃引器2301より駆動可能な周波数範囲の信号が切替器2302で選択され、駆動周波数パルス発生器に入力される。駆動周波数掃引器2301は、図12(b)で示したF−Vテーブルのように、例えば50kHzから46kHzまで周波数を一定速度で掃引していく(S2)。
【0064】
周波数の掃引と同時に、繰返し制御器1401から出力されたS相信号は振幅検出器2303にて検出され、駆動周波数の変化に応じた振幅値がモニターされる。この様子を図19に示した。図19の横軸は駆動周波数で、左側の縦軸は繰返し制御後のS相振幅、右側の縦軸は移動体の速度を示す。ここで、繰返し制御器1401の繰返し周期は、目標速度と振動体の突起部の数から計算される値に固定されているので、移動体の回転速度が目標速度と同じ場合のみ、S相信号の振幅は拡大される。従って、周波数掃引時に移動体の回転速度が目標速度を通過することで、振幅がピークを示すピーク周波数が得られる。検出されたピーク周波数は、周波数データレジスタ2304に記憶される(S3)。
【0065】
次に、記憶されたピーク周波数値は駆動周波数パルス発生器103に入力され、前記ピーク周波数を駆動周波数に設定して速度制御が開始される(S4)。
【0066】
この結果、制御開始の時点から目標速度に近い駆動周波数で駆動できるので、振動体の突起部の数に対応する周波数信号は繰返し制御器1401によって十分にSN比が上げられ、精度よく回転速度情報を検出することが可能となる。
【0067】
(第8の実施形態)
本発明においては、移動体の回転速度情報の検出だけでなく、移動体の絶対位置情報の検出を行うことも可能である。本実施形態では、振動体の複数の突起に対応する周波数情報を用いて、移動体の絶対位置を求めることを特徴とする。本発明において絶対位置とは、所定の原点位置に対する相対位置を示す。
【0068】
まず、2つの振動型アクチュエータを同時に駆動した場合に、2つの移動体の絶対位置を検出する形態について説明する。2つの移動体は同じ速度で回転するので、回転位置は2つの移動体とも同じ位置となる。
【0069】
図20は、2つの振動型アクチュエータを組み合わせた構成の断面を示す模式図である。共用されたハウジング2601上に、2つの振動型アクチュエータ1051、1052は上下対象に1つの出力軸2602を介して接続されている。各振動型アクチュエータの基本的な構成は図2で示した構成と同様とのため、以下では本実施形態の特徴的な構成のみ説明する。
【0070】
2つの振動型アクチュエータ1501、1502の駆動電極に同一の駆動回路から出力された交流電圧を、A相とB相を入れ替えて印加することによって、移動体204は同一方向に回転駆動する。被駆動体(不図示)は1つの出力軸2602を介して回転する。
【0071】
通常、2つの振動型アクチュエータを用いる場合、2つの振動型アクチュエータの構成は同一とするが、本実施形態では移動体の絶対位置を検出するために、振動体毎に突起部の数が異なる構成となっている。本実施形態では一例として、振動型アクチュエータ1051の振動体の突起部の数を47個、振動型アクチュエータ1502の振動体の突起部の数を46個とした例を用いて説明する。
【0072】
図21は、本発明の第8の実施形態に係る、振動型アクチュエータの制御装置を示すブロック図である。絶対位置を検出するために、2つの振動型アクチュエータにそれぞれ設けられた振動検出電極701からS相信号を検出し、2つのS相信号の位相差を検出することを特徴とする。
【0073】
2つの振動型アクチュエータから検出されたS相信号は、それぞれRMS−DC変換された後にA/D変換され、フィルタ処理が行なわれる。フィルタ出力後の各S相信号波形を図22(a)に示す。振動型アクチュエータ1501のS相信号波形1は、移動体の1回転周期において47波分のSin波形が突起部の数に応じて生じる。対して、振動型アクチュエータ1502のS相信号波形2は、移動体の1回転周期において46波分のSin波形が生じる。説明を簡略化するため、図22(a)では7波と6波として表現する。
【0074】
2つのS相信号1、2は、絶対位置検出器2701に入力される。絶対位置検出器での信号処理の方法を説明する。図22(b)は、2つのS相信号波形の立ち上りエッジを検出したパルス信号である。エッジ検出信号1、2のパルスの位相差を比較すると、原点位置で同位相で重なり、位置の変化に応じて位相がずれていき、1回転周期で位相差が360°となり、再び原点位置にリセットされる。
【0075】
つまり、1回転周期で突起部の数の差1個分の位相が変化することになる。図22(c)の位相差信号は、エッジ検出信号2のパルスがHになるタイミングでのエッジ検出信号1との位相差を検出し、線形補間したものである。この位相差信号に基づいて、位相から位置に変換することで、原点位置に対する絶対位置情報を検出することができる。また、本実施例においては、2つの振動体で1つの移動体を回転させる場合でも適用できる。
【0076】
次に、1つの振動型アクチュエータを用いて簡易的に原点位置を検出し、絶対位置情報を取得する形態について説明する。
【0077】
図23(a)は、周期的に設けられた突起部が一部存在しない領域を有する振動体の構成を示す模式図である。尚、突起部が移動体と接触しない領域があれば良いので、例えば突起部の高さを一部だけ相対的に低くする構成としても良い。図23(b)は、図23(a)の振動体を用いた振動型アクチュエータを駆動した場合のS相信号の波形を示すグラフである。突起部が移動体と接触しない領域がある為、1回転周期でSin波が一波分生じない箇所が常に同じ位置で生じる。図23(c)はエッジ検出信号である。本実施形態では、パルスが出力されない箇所を検知することで、原点位置を特定することができる。つまり、突起部の数に対応する周波数情報を用いることで、原点位置を特定することができる。原点位置を検出できれば、エッジ検出信号のパルス数をカウントすることで、絶対位置情報を取得することが可能となる。
【0078】
(第9の実施形態)
本発明の振動型アクチュエータの制御回路は、第1の実施形態で説明した振動型アクチュエータ以外の振動型アクチュエータにも適用することが可能である。本実施形態では、第1の実施形態の図2で示した、進行波を振動体に形成して移動体を相対移動させる円環型の振動型アクチュエータとは異なる振動型アクチュエータについて説明する。
【0079】
図24は、カメラレンズのオートフォーカス駆動などに用いられる、棒状の振動型アクチュエータの分解斜視図である。振動型アクチュエータは、振動体3001と、移動体3002と、を備えている。振動体3001には、摩擦材料を兼ねた第1の弾性体3003、電気−機械エネルギー変換素子である圧電素子3004への給電用のフレキシブルプリント基板3005、第2の弾性体3006が設けられている。これら部材は、シャフト3007の突き当てフランジ部3007aとシャフト3007下部のネジ部3007bに嵌る下ナット3008で挟み、加圧締結されている。
【0080】
第1の弾性体3003は、例えばアルミナを主成分とする焼結セラミックであり、上下両面を両刀研削した後に上面の摩擦面側を仕上げポリッシュしている。移動体3002は、接触ばね3009がロータ3010に接着固定されている。これにより、移動体3002は、フランジ3011の軸受部によって回転自在に支持された出力ギア3012と加圧ばね3013によって振動体3001の摩擦面3014に加圧接触されている。
【0081】
移動体3002の接触ばね3009は、ステンレスの絞り加工で小さなクランク断面を持つ円筒形状に形成されており、下端面が移動体の摩擦面として振動体の第1の弾性体の摩擦面3014と当接している。フレキシブルプリント基板3005を介して、不図示の電源から圧電素子3004に交番信号を印加する。それにより第1の弾性体3003の摩擦面には直交する2方向の1次の曲げ振動が励起され、時間位相π/2を持って重ね合せることによって、摩擦面3014に回転楕円運動を生じさせる。これにより、摩擦面に加圧接触する接触ばね3009を振動体3001に対して相対移動させる。
【0082】
図25は、弾性体に放射状の溝が設けられた振動体の斜視図である。図25(a)に示す振動体3001は、第1の弾性体3003の上下面の締結面近傍に、放射状の溝(本例では2個)3101と3102がそれぞれ設けてある。また、図25(b)に示す振動体3001は、第1の弾性体3003の上面に放射状の溝3101が8個設けられている。このような放射状の溝3101を設けることで、大気中の湿度の影響によるトルク低下を防止することができる。
【0083】
前記複数の放射状の溝3101によって形成される摩擦面3014(本発明の突起部に対応)と、移動体3002の接触領域分布と、に基づくS相信号の振幅変動は、図25(a)の例では振動体の溝数である2個(突起部の数も2個)に対応する周波数にピークが生じる。また、図25(b)の例では振動体の溝数である8個(突起部の数も8個)に対応する周波数にピークが生じる。
【0084】
このような振動体を用いた場合でも、第1〜第7の実施形態と同様に、突起部の数に対応する周波数情報を用いて、回転速度情報を取得することができる。
【符号の説明】
【0085】
101 速度偏差検出器
102 PID制御器
103 駆動周波数パルス発生器
104 駆動回路
105 振動型アクチュエータ
106 被駆動体
107 速度検出器
201 電気−機械エネルギー変換素子
202 弾性体
203 振動体
204 移動体
301 突起
302 溝
701 振動検出電極
702 RMS−DC変換器
703 A/D変換器
704 フィルタ
705 信号処理回路
1401 繰返し制御器
1801 フーリエ変換器
2101 電圧コンパレータ
2102 位相差検出器
2303 振幅検出器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気−機械エネルギー変換素子を備えた振動体の前記電気−機械エネルギー変換素子に交番電圧を与えて前記振動体の複数の突起部に楕円運動を生成させることにより、前記複数の突起部に接触する移動体を前記振動体と相対的に回転させる振動型アクチュエータの制御装置であって、
前記振動体に設けられた振動検出用の電気−機械エネルギー変換素子からの検出信号に含まれる前記複数の突起部の数に対応する周波数情報を用いて、前記移動体の回転速度情報を取得することを特徴とする振動型アクチュエータの制御装置。
【請求項2】
前記複数の突起部の数に対応する周波数情報を検出するため、前記検出信号に対して繰返し制御を行う繰返し制御器を有し、
前記繰返し制御器の繰返し周期が、前記突起部の数と目標速度との積で表される周波数の逆数又は前記逆数の1/2に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の振動型アクチュエータの制御装置。
【請求項3】
前記複数の突起部の数に対応する周波数情報を検出するための、前記検出信号に帯域制限をかける帯域通過フィルタと、
前記帯域通過フィルタの通過させる周波数帯域を前記交番電圧の周波数に応じて変化させる調整器と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の振動型アクチュエータの制御装置。
【請求項4】
前記交番電圧の周波数と前記移動体の回転速度との関係を示す関係式又はテーブルを備えたメモリを有し、
前記帯域通過フィルタの通過させる周波数帯域の中心周波数を、前記関係式又はテーブルから得られる回転速度情報と前記複数の突起部に対応する周波数情報とを用いて算出される値に設定することを特徴とする請求項3に記載の振動型アクチュエータの制御装置。
【請求項5】
前記複数の突起部の数に対応する周波数情報を検出するための、前記検出信号に帯域制限をかける帯域通過フィルタと、
前記帯域通過フィルタの通過させる周波数帯域を前記検出信号に応じて変化させる調整器と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の振動型アクチュエータの制御装置。
【請求項6】
前記検出信号を周波数解析するフーリエ変換器を有し、
前記帯域通過フィルタの通過させる周波数帯域の中心周波数を、前記周波数解析により検出される振幅が最大となる周波数に設定することを特徴とする請求項5に記載の振動型アクチュエータの制御装置。
【請求項7】
前記複数の突起部の数に対応する周波数情報を検出するための、前記検出信号に対して繰返し制御を行う繰返し制御器と、
前記検出信号を周波数解析するフーリエ変換器と、を有し、
前記繰返し制御器の繰返し周期が、前記周波数解析により検出される振幅が最大となる周波数の逆数又は前記逆数の1/2に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の振動型アクチュエータの制御装置。
【請求項8】
前記交番電圧と前記検出信号との位相差を検出する位相差検出器を有し、
前記位相差を用いて前記複数の突起部の数に対応する周波数情報を検出し、前記移動体の回転速度情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の振動型アクチュエータの制御装置。
【請求項9】
前記繰返し制御器の繰返し周期が、目標速度と前記複数の突起部の数との積で表される周波数の逆数又は1/2に設定されており、
前記交番電圧の周波数が掃引された際に前記繰返し制御器の出力信号の振幅を検出する振幅検出器と、前記振幅が最大となる周波数を前記交番電圧の周波数として設定するパルス発生器と、を有することを特徴とする請求項2に記載の振動型アクチュエータの制御装置。
【請求項10】
互いに異なる数の突起部が形成された複数の振動体の電気−機械エネルギー変換素子の夫々に交番電圧を与えて、前記複数の振動体の複数の突起部に楕円運動を生成させることにより、前記複数の突起部に接触する移動体を前記複数の振動体と相対的に回転させる振動型アクチュエータの制御装置であって、
前記複数の振動体に設けられた振動検出用の電気−機械エネルギー変換素子からの各検出信号に含まれる前記振動体毎の複数の突起部の数に対応する周波数情報を夫々用いて、前記振動体毎の複数の突起部の数に対応する周波数成分の信号の位相差を検出し、前記移動体の絶対位置情報を取得することを特徴とする振動型アクチュエータの制御装置。
【請求項11】
周期的に設けられた複数の突起部が一部存在しない領域を有する振動体の電気−機械エネルギー変換素子に交番電圧を与えて、前記複数の突起部に楕円運動を生成させることにより、前記複数の突起部に接触する移動体を前記振動体と相対的に回転させる振動型アクチュエータの制御装置であって、
前記振動体に設けられた振動検出用の電気−機械エネルギー変換素子からの検出信号に含まれる前記複数の突起部の数に対応する周波数情報を用いて、前記移動体の絶対位置情報を取得することを特徴とする振動型アクチュエータの制御装置。
【請求項1】
電気−機械エネルギー変換素子を備えた振動体の前記電気−機械エネルギー変換素子に交番電圧を与えて前記振動体の複数の突起部に楕円運動を生成させることにより、前記複数の突起部に接触する移動体を前記振動体と相対的に回転させる振動型アクチュエータの制御装置であって、
前記振動体に設けられた振動検出用の電気−機械エネルギー変換素子からの検出信号に含まれる前記複数の突起部の数に対応する周波数情報を用いて、前記移動体の回転速度情報を取得することを特徴とする振動型アクチュエータの制御装置。
【請求項2】
前記複数の突起部の数に対応する周波数情報を検出するため、前記検出信号に対して繰返し制御を行う繰返し制御器を有し、
前記繰返し制御器の繰返し周期が、前記突起部の数と目標速度との積で表される周波数の逆数又は前記逆数の1/2に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の振動型アクチュエータの制御装置。
【請求項3】
前記複数の突起部の数に対応する周波数情報を検出するための、前記検出信号に帯域制限をかける帯域通過フィルタと、
前記帯域通過フィルタの通過させる周波数帯域を前記交番電圧の周波数に応じて変化させる調整器と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の振動型アクチュエータの制御装置。
【請求項4】
前記交番電圧の周波数と前記移動体の回転速度との関係を示す関係式又はテーブルを備えたメモリを有し、
前記帯域通過フィルタの通過させる周波数帯域の中心周波数を、前記関係式又はテーブルから得られる回転速度情報と前記複数の突起部に対応する周波数情報とを用いて算出される値に設定することを特徴とする請求項3に記載の振動型アクチュエータの制御装置。
【請求項5】
前記複数の突起部の数に対応する周波数情報を検出するための、前記検出信号に帯域制限をかける帯域通過フィルタと、
前記帯域通過フィルタの通過させる周波数帯域を前記検出信号に応じて変化させる調整器と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の振動型アクチュエータの制御装置。
【請求項6】
前記検出信号を周波数解析するフーリエ変換器を有し、
前記帯域通過フィルタの通過させる周波数帯域の中心周波数を、前記周波数解析により検出される振幅が最大となる周波数に設定することを特徴とする請求項5に記載の振動型アクチュエータの制御装置。
【請求項7】
前記複数の突起部の数に対応する周波数情報を検出するための、前記検出信号に対して繰返し制御を行う繰返し制御器と、
前記検出信号を周波数解析するフーリエ変換器と、を有し、
前記繰返し制御器の繰返し周期が、前記周波数解析により検出される振幅が最大となる周波数の逆数又は前記逆数の1/2に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の振動型アクチュエータの制御装置。
【請求項8】
前記交番電圧と前記検出信号との位相差を検出する位相差検出器を有し、
前記位相差を用いて前記複数の突起部の数に対応する周波数情報を検出し、前記移動体の回転速度情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の振動型アクチュエータの制御装置。
【請求項9】
前記繰返し制御器の繰返し周期が、目標速度と前記複数の突起部の数との積で表される周波数の逆数又は1/2に設定されており、
前記交番電圧の周波数が掃引された際に前記繰返し制御器の出力信号の振幅を検出する振幅検出器と、前記振幅が最大となる周波数を前記交番電圧の周波数として設定するパルス発生器と、を有することを特徴とする請求項2に記載の振動型アクチュエータの制御装置。
【請求項10】
互いに異なる数の突起部が形成された複数の振動体の電気−機械エネルギー変換素子の夫々に交番電圧を与えて、前記複数の振動体の複数の突起部に楕円運動を生成させることにより、前記複数の突起部に接触する移動体を前記複数の振動体と相対的に回転させる振動型アクチュエータの制御装置であって、
前記複数の振動体に設けられた振動検出用の電気−機械エネルギー変換素子からの各検出信号に含まれる前記振動体毎の複数の突起部の数に対応する周波数情報を夫々用いて、前記振動体毎の複数の突起部の数に対応する周波数成分の信号の位相差を検出し、前記移動体の絶対位置情報を取得することを特徴とする振動型アクチュエータの制御装置。
【請求項11】
周期的に設けられた複数の突起部が一部存在しない領域を有する振動体の電気−機械エネルギー変換素子に交番電圧を与えて、前記複数の突起部に楕円運動を生成させることにより、前記複数の突起部に接触する移動体を前記振動体と相対的に回転させる振動型アクチュエータの制御装置であって、
前記振動体に設けられた振動検出用の電気−機械エネルギー変換素子からの検出信号に含まれる前記複数の突起部の数に対応する周波数情報を用いて、前記移動体の絶対位置情報を取得することを特徴とする振動型アクチュエータの制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−115102(P2012−115102A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264218(P2010−264218)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]